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特開2024-115224伸縮性材料の貼り合わせ構造、衣類及び伸縮性材料の貼り合わせ方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115224
(43)【公開日】2024-08-26
(54)【発明の名称】伸縮性材料の貼り合わせ構造、衣類及び伸縮性材料の貼り合わせ方法
(51)【国際特許分類】
   A41D 27/06 20060101AFI20240819BHJP
   A41H 43/04 20060101ALI20240819BHJP
   A41D 31/00 20190101ALI20240819BHJP
   A41D 31/04 20190101ALI20240819BHJP
   A41D 31/18 20190101ALI20240819BHJP
   A41D 27/00 20060101ALI20240819BHJP
【FI】
A41D27/06 H
A41H43/04
A41D31/00 502A
A41D31/04 F
A41D31/18
A41D27/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023020810
(22)【出願日】2023-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】角 奈那子
(72)【発明者】
【氏名】小宮 聡一郎
(72)【発明者】
【氏名】大和 亮介
(72)【発明者】
【氏名】菊地 直行
【テーマコード(参考)】
3B035
【Fターム(参考)】
3B035AB05
3B035AB15
3B035AC10
3B035AC13
(57)【要約】
【課題】接着剤を介して伸縮性材料同士を貼り合わせる場合において、接着剤の使用量の削減を図りつつ、所定の伸長方向への伸長性を抑制することができる伸縮性材料の貼り合わせ構造、衣類及び伸縮性材料の貼り合わせ方法を提供する。
【解決手段】伸縮性材料同士を接着剤により形成される接着パターンを介して貼り合わせる伸縮性材料の貼り合わせ構造であって、前記接着パターンは、接着剤をドット状に形成した複数の接着部からなり、前記複数の接着部は、所定の伸長方向に沿って配列された配列部を形成し、当該配列部が複数列設けられることにより全体として帯状をなしている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸縮性材料同士を接着剤により形成される接着パターンを介して貼り合わせる伸縮性材料の貼り合わせ構造であって、
前記接着パターンは、
接着剤をドット状に形成した複数の接着部からなり、
前記複数の接着部は、所定の伸長方向に沿って配列された配列部を形成し、当該配列部が複数列設けられることにより全体として帯状をなしている、
伸縮性材料の貼り合わせ構造。
【請求項2】
前記接着パターンは、複数列設けられた前記配列部のうち、所定の配列部において、隣接する他の配列部よりも前記複数の接着部が密に配置され、所定の伸長方向に対して接着面積の占める割合が多い、
請求項1に記載の伸縮性材料の貼り合わせ構造。
【請求項3】
前記接着パターンは、複数列設けられた前記配列部のうち、所定の配列部において、接着部間の距離が近づけられることで纏りのある集合部を有し、当該集合部が所定の伸長方向に沿って繰り返し設けられている、
請求項1に記載の伸縮性材料の貼り合わせ構造。
【請求項4】
前記接着パターンは、複数列設けられた前記配列部のうち、所定の配列部において、当該所定の配列部を構成する前記複数の接着部は、隣接する他の配列部を構成する前記複数の接着部に対して所定の伸長方向に沿った位置が、異なるように配置されている、
請求項2又は請求項3に記載の伸縮性材料の貼り合わせ構造。
【請求項5】
前記伸縮性材料からなる複数又は単一のパーツによって形成され、当該パーツ同士の接着部の少なくとも一部に、請求項1~請求項3の何れか1項に記載の伸縮性材料の貼り合わせ構造が設けられた衣類。
【請求項6】
伸縮性材料同士を接着剤により形成される接着パターンを介して貼り合わせる伸縮性材料の貼り合わせ方法であって、
前記伸縮性材料同士の少なくとも一方の伸縮性材料に、前記接着パターンで接着剤を塗
布する工程と、
前記伸縮性材料同士を前記接着パターンを介して貼り合わせて接着する工程と、
を含み、
前記接着パターンは、
接着剤をドット状に形成した複数の接着部からなり、
前記複数の接着部は、所定の伸長方向に沿って配列された配列部を形成し、当該配列部が複数列設けられることにより全体として帯状をなしている、
伸縮性材料の貼り合わせ方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、伸縮性材料の貼り合わせ構造、衣類及び伸縮性材料の貼り合わせ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インナー、スポーツウェア等の衣類において、接着剤を用いた生地同士の接着により製造される無縫製製品が注目されている。これらの無縫製製品では、伸縮性材料を使用した生地を所定の接着パターンで貼り合わせることにより、接着部分の伸縮性を調整することが行われている。
【0003】
特許文献1には、接着剤を所定形状に形成してなる接着部が連続して繰り返し設けられる接着パターンが提案されている。この接着パターンでは、接着部の所定形状によって平面視で開口形成される非接着部を有しており、接着部と非接着部とが伸縮性素材の縁方向に繰り返し設けられることにより、接着強度を確保しつつ、伸縮性材料の持つ伸縮性を阻害することなく貼り合わせることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6153544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1のように、接着剤が連続的に塗布される接着パターンの場合、接着剤の使用量の増加や、製品が衣服である場合、接着部分に起因する衣服内外の通気性能の低下といった点が課題となる。このため、伸縮性材料同士の接着箇所にドット状の接着部を非連続的に設け、これらの課題を解決することが行われている。しかしながら、非連続的な接着パターンの場合、ドット間に設けられる非接着部において材料の伸長性が高められるため、所定の伸長方向への伸長性を抑制することが困難であるという課題がある。
【0006】
本開示は、上記事情に鑑みてなされたものであり、接着剤を介して伸縮性材料同士を貼り合わせる場合において、接着剤の使用量の削減を図りつつ、所定の伸長方向への伸長性を抑制することができる伸縮性材料の貼り合わせ構造、衣類及び伸縮性材料の貼り合わせ方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を達成するための具体的手段は以下の通りである。
<1>
伸縮性材料同士を接着剤により形成される接着パターンを介して貼り合わせる伸縮性材料の貼り合わせ構造であって、
前記接着パターンは、
接着剤をドット状に配置した複数の接着部からなり、
前記複数の接着部は、所定の伸長方向に沿って配列された配列部が複数列設けられることにより全体として帯状をなしている、
伸縮性材料の貼り合わせ構造。
<2>
前記接着パターンは、複数列設けられた前記配列部のうち、所定の配列部において、隣接する他の配列部よりも前記複数の接着部が密に配置され、所定の伸長方向に対して接着面積の占める割合が多い、
<1>に記載の伸縮性材料の貼り合わせ構造。
<3>
前記接着パターンは、複数列設けられた前記配列部のうち、所定の配列部において、接着部間の距離が近づけられることで纏りのある集合部を有し、当該集合部が所定の伸長方向に沿って繰り返し設けられている、
<1>に記載の伸縮性材料の貼り合わせ構造。
<4>
前記接着パターンは、複数列設けられた前記配列部のうち、所定の配列部において、当該所定の配列部を構成する前記複数の接着部は、隣接する他の配列部を構成する前記複数の接着部に対して所定の伸長方向に沿った位置が、異なるように配置されている、
<2>又は<3>に記載の伸縮性材料の貼り合わせ構造。
<5>
前記伸縮性材料からなる複数又は単一のパーツによって形成され、当該パーツ同士の接着部の少なくとも一部に、<1>~<4>何れか1つに記載の伸縮性材料の貼り合わせ構造が設けられた衣類。
<6>
伸縮性材料同士を接着剤により形成される接着パターンを介して貼り合わせる伸縮性材料の貼り合わせ方法であって、
前記伸縮性材料同士の少なくとも一方の伸縮性材料に、前記接着パターンで接着剤を塗
布する工程と、
前記伸縮性材料同士を前記接着パターンを介して貼り合わせて接着する工程と、
を含み、
前記接着パターンは、
接着剤をドット状に形成した複数の接着部からなり、
前記複数の接着部は、所定の伸長方向に沿って配列された配列部を形成し、当該配列部が複数列設けられることにより全体として帯状をなしている、
伸縮性材料の貼り合わせ方法。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、接着剤を介して伸縮性材料同士を貼り合わせる場合において、接着剤の使用量の削減を図りつつ、所定の伸長方向への伸長性を抑制することができる伸縮性材料の貼り合わせ構造が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の一実施形態に係る生地の貼り合わせ構造を示した図であり、(A)は、貼り合わせ前の生地の貼り合わせ構造を示した平面図であり、(B)は、貼り合わせ後の生地の貼り合わせ構造を示した平面図である。
図2図1(B)中の矢印Sの方向からみた断面図である。
図3】接着パターンの実施例を示した平面図である。
図4】実施例に係る接着パターンに発生するひずみの分布図である。
図5】集合部を有する接着パターンの例を示した平面図である。
図6】(A)~(F)は、接着パターンの例を示した平面図である。
図7】(A)~(B)は、本開示に係る伸縮性材料の貼り合わせ構造を適用した衣類の例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施形態について図1図6を参照して説明する。以下では、本開示の伸縮性材料の貼り合わせ構造に係る実施形態の一例として、伸縮性生地の貼り合わせ構造10(以下、単に「貼り合わせ構造10」とも称する。)を挙げて説明する。
但し、本開示は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本開示を制限するものではない。
本開示において「工程」との語には、他の工程から独立した工程に加え、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、当該工程も含まれる。
【0011】
なお、前記伸縮性材料としては、特に限定するものではないが、シート状で伸縮性を有する材料(素材)が好ましく、本実施形態で例として挙げる伸縮性生地や、その他、ストレッチ素材、ゴム素材、ポリウレタンフィルム等の伸縮性フィルム類、及びこれらを複合して構成した複合体等が挙げられる。
また、同種の伸縮性材料同士に限らず異なる伸縮性材料同士を貼り合わせてもかまわない。
【0012】
本実施形態における貼り合わせ構造10は、伸縮性材料同士となる伸縮性生地12及び伸縮性生地14を接着剤により形成される接着パターンPを介して貼り合わせる生地の貼り合わせ構造である。
【0013】
接着パターンPは、図1に示されるように、接着剤をドット状に形成した複数の接着部20で構成される。伸縮性生地12及び伸縮性生地14は、複数の接着部20によって非連続的に接着されることにより、各接着部20の周囲に非接着部が形成される。これにより、線形状に連続した接着パターンと比較して、生地本来の伸縮性を損なわず、生地同士を貼り合わせることができる。また、伸縮性生地12,14からなる複数のパーツで衣服を製造する場合、生地同士の接着部に起因する衣服内外の通気性能の低下を抑制することができる。さらに、線形状に連続した接着パターンと比較して、接着剤の使用量の削減を図り、製品の軽量化を図ることができる。
【0014】
なお、「ドット状」とは、接着剤が島状に点在して形成される状態であればよい。本実施形態の図示では、各接着部20が平面視で円形状に形成されているが、特に限定されず、三角形状や四角形状に形成してもよい。
【0015】
ここで、接着パターンPにおいて、複数の接着部20は、所定の伸長方向Lに沿って配列された配列部30を形成し、当該配列部30が複数列設けられることにより全体として帯状をなしている。これにより、伸縮性生地12及び伸縮性生地14に所定の伸長方向Lに沿った引っ張り力が作用すると、帯状をなす接着パターンPによって所定の伸長方向Lに対する応力が高められる。その結果、所定の伸長方向Lへの伸縮性生地12及び伸縮性生地14の伸長性を抑制することができる。
【0016】
なお、「所定の伸長方向」とは、伸縮性の大小は問わずに伸縮性生地12及び伸縮性生地14が伸縮性を有している方向に含まれる任意の方向である。
【0017】
また、接着パターンPは、図1に示されるように平面上に直進して延在する形状に限定するものではなく、伸縮性生地12,14からなるパーツの表面形状に沿った形状であればよい。例えば、貼り合わせるパーツ同士の形状に応じて、屈曲状、湾曲状、蛇行状、ループ状等適宜変更することができる。
また、接着パターンPは、必ずしも伸縮性生地12,14からなるパーツの輪郭形状に沿って設ける必要はない。例えば、パーツの輪郭部分に近接せず、パーツの中央部分に接着パターンPを設け、生地同士の接着エリアとしてもよい。
また、図1においては、伸縮性生地12及び伸縮性生地14の平面視形状を長方形としているが、特に限定するものではなく、伸縮性生地の形状は任意のものを選択できる。
【0018】
本実施形態の伸縮性生地としては、伸縮性を有する編物(経編地、丸編地、緯編地などの編地)や織物、不織布、メッシュ等を用いることができる。
これらの伸縮性生地において、生地の繊維自体が弾性を有するものでもよいが、必須ではない。生地の繊維自体が弾性を有しないものであってもよい。この場合、織や編で構築される生地の組織によって、生地としての伸縮性を有するものであればよい。
より具体的には、伸縮性を有する編物としてはベロア、天竺(綿天竺、ウール天竺)、フライス、パワーネット、トリコット、ツーウェイトリコットなどが挙げられる。また、伸縮性を有する織物としては、ポリウレタン弾性繊維、ポリウレタン弾性繊維を含む混合繊維あるいはポリウレタン弾性繊維以外の弾性繊維を交織した伸縮性を有する織物などが挙げられる。
【0019】
伸縮性生地としては少なくとも一方向に伸縮性を有していればよく、複数方向に伸縮性を有する編物や織物であってもよい。
なお、本実施形態では、伸縮性生地12及び伸縮性生地14の素材は一方向に伸縮性を有する同種の編物からなるが、特に限定するものではなく、異なる種類の素材(編物や織物)を組み合わせて用いてもかまわない。
【0020】
接着パターンPは、上述したように、複数の接着部20が所定の伸長方向Lに沿って配列されてなる配列部30を有しており、当該配列部30が複数列設けられて全体として帯状をなしている。ここでいる「帯状」とは、接着剤が伸縮性生地12及び伸縮性生地14のそれぞれの接着面12A及び接着面14A(図2参照)に熱接着して固着した接着部位の平面視形状のことをいう。
【0021】
なお、接着パターンPを形成する接着剤は、ホットメルト接着剤で構成することができ、好ましくは、反応型ホットメルト接着剤で構成される。反応型ホットメルト接着剤は、湿気、光等によって3次元架橋構造を形成するため、耐熱性及び接着強度を向上させる点において好適である。
【0022】
ここで、発明者は、ドット状に配置された複数の接着部20によって全体として帯状をなす接着パターンPを複数種用意して、各パターンによって貼り合わされた生地の伸長性を観測したところ、接着部20の配列方法に所定の規則性を盛り込むことで、生地の伸長性を抑制できることを発見した。以下、実施例の詳細について説明する。
【0023】
<実施例の説明>
実施系例では、4種の接着パターンについて生地の伸長性を観測した。図3には、観測に用いられた接着パターンが示されている。実施例では、一例として、ウレタンプレポリマーを含む湿気硬化型ホットメルト接着剤によって各接着パターンが形成されている。
【0024】
各接着パターンは、ディスペンサに代表される塗布装置を用いて生地に塗布された後、生地同士を重ね合わせた状態で加熱圧着することで接着剤を硬化させる。従って、伸縮性材料同士の少なくとも一方の伸縮性材料に、接着パターンで接着剤を塗布する工程と、伸縮性材料同士を接着パターンを介して貼り合わせて熱接着する工程とを経て伸縮性生地同士の貼り合わせ構造が形成されている。
【0025】
図3に示されるように、比較例に係る接着パターンは、接着剤を所定の伸長方向Lに沿って線状かつ連続的に塗布することで形成された接着パターンである。この比較例では、伸縮性生地同士の接着面積(接着剤の塗布面積に近似する。)が、546[mm]に設定されている。
【0026】
実施例1~3の接着パターンA~Cについて説明する。各接着パターンは、接着剤の塗布により円形ドット状に形成された複数の接着部20によって形成されている。各接着パーンには、共通の形状及び面積を有する接着部20が使用されており、伸長方向Lの所定の長さに配置される接着部20の数(即ち、接着面積)が共通している。
【0027】
実施例1に係る接着パターンAは、本実施形態に係る接着パターンPの一例であり、観測上の基準となる接着パターンとした。この接着パターンAでは、三つの配列部30(A~C)が、帯状に延在する接着パターンPの幅方向に所定の間隔U1を設けて配置されている。また、各配列部30では、複数の接着部20が、所定の伸長方向L(接着パターンPの延在方向)に沿って所定の間隔T1を設けて配置されている。各配列部30では、接着部20の伸長方向に沿った位置が近似しているため、接着パターンPの幅方向に沿って、各配列部30の接着部20が横並びに配置されている。
【0028】
実施例2に係る接着パターンBは、本実施形態に係る接着パターンPの一例であり、実施例1と同様に、三つの配列部30(A~C)が、接着パターンPの幅方向に所定の間隔U1を空けて配置されている。また、各配列部30では、複数の接着部20が所定の伸長方向Lに沿って所定の間隔T1を空けて配置されている。但し、接着パターンBでは、中央の配列部30Bにおいて、複数の接着部20のそれぞれは、隣接する左右の配列部30A,30Cを構成する接着部20に対して所定の伸長方向Lに沿った位置が、異なるように配置されている。即ち、接着パターンPの幅方向に沿って、中央の配列部30を構成する接着部20の隣には左右の配列部30の非接着部が配置される。
【0029】
実施例3に係る接着パターンCは、本実施形態に係る接着パターンPの一例であり、実施例1と同様に、三つの配列部30が、帯状に延在する接着パターンPの幅方向に所定の間隔U1を空けて配置されている。また、図示の例において、左右を構成する配列部30A,30Cでは、複数の接着部20が、所定の伸長方向Lに沿って所定の間隔T2(>T1)を空けて配置されている。一方、中央の配列部30Bでは、複数の接着部20が、所定の伸長方向Lに沿って所定の間隔T3(<T1)を空けて配置されている。即ち、接着パターンCでは、左右を構成する配列部30A,30Cで接着部20が疎に配置されているのに対して、中央の配列部30Bで、隣接する左右の配列部30A,30Cよりも接着部20が密に配置されている、従って、中央の配列部30Bでは、所定の伸長方向Lに対する接着面積の占める割合が他の配列部30A,30Cよりも多い。
【0030】
更に、接着パターンCでは、左右の配列部30A,30Cを構成する接着部20は、隣接する中央の配列部30Bを構成する接着部20に対して所定の伸長方向Lに沿った位置が、異なるように配置されている。即ち、実施例3に係る接着パターンCには、実施例2に係る接着パターンBの規則性も有している。
【0031】
なお、上記実施例3では、中央の配列部30Bの接着部20間の間隔T3がT1よりも小さくなる(T3<T1)ように構成したが、間隔T3は、T2よりも小さい値(T3<T2)であればよい。但し、各実施例との比較において、伸張性を抑制する作用を高めるためには、間隔T3がT1よりも小さい値とされることがより好ましい。
【0032】
下記の(表1)は、上記の比較例及び実施例1~3について、接着剤による伸縮性生地同士の接着面積[mm]と、所定の引っ張り力を作用させた場合の伸長量[mm]との関係が示されている。
【0033】
この表に示される観測例では、所定の伸長方向Lに沿って長尺帯状に形成された伸縮性生地12に、比較例及び実施例1~3の接着パターンをそれぞれ塗布した後、伸縮性生地14を重ねて貼り合わせ、生地同士を熱接着することにより貼り合わせ構造を形成した。この状態で、比較例及び各実施例の生地12及び14の一方側の端部を固定し、他方側の端部には、所定の伸長方向Lに沿ってF=14.7[N]の大きさの引張荷重を付与した。
【0034】

【表1】
【0035】
(表1)に示されるように、比較例に係る接着パターンでは、伸長性の基準とした接着パターンAにくらべ、伸長量[mm]が約-45[%]の減少値となっており、伸長性が最も低いことが分かる。一方で、比較例の接着面積は、546[mm]となっており、実施例1~3の接着面積302[mm]に対して約80[%]の増加となっている。このため、接着剤の使用量も実施例1~3に対し、1.8倍の増加が想定される。
【0036】
一方、実施例1~3では、実施例1及び2の伸長量[mm]が近似しているのに対し、実施例3の伸長量[mm]は、実施例1及び2に対して-7[%]の減少値となっている。
【0037】
実施例3は、実施例1及び2と接着面積(302[mm])が近似され、接着剤の使用量に実質的な差が無いにもかかわらず、伸張性が異なっている。原因を考察するべく、発明者は、接着パターンA~Cに発生するひずみの分布について解析した。
【0038】
図4には、所定の伸長方向Lに沿ってF=14.7[N]の大きさの引張荷重を付与した場合に、接着パターンA~Cに発生するひずみが分布図で示されている。この分布図では、接着部20の周囲において濃い色彩で示される部分ほど、引張荷重を付与する前と比べてひずみ(伸長量)が大きくなっている。図4では、特に、ひずみの大きな箇所を破線領域Xで囲っている。
【0039】
この図に示されるように、接着パターンAでは、各接着部20において、伸長方向Lの両側の部位でひずみが最も大きくなることが分かる。このようにひずみが大きくなる部位(領域X)では、伸長に対する応力が高められているが、生地の伸長に従って、各配列部30(A~C)内の接着部20間の距離が長くなるため、ひずみの集中箇所に連続性がなく、分散している。
【0040】
接着パターンBも同様に、各接着部20において、伸長方向Lの両側の部位でひずみが最も大きくなることが分かる(領域X)。また、接着パターンBにおいても、生地の伸長に従って、各配列部30内の接着部20間の距離が長くなるため、ひずみの集中箇所が分散している。
【0041】
一方接着パターンCにおいては、中央の配列部30Bに沿って、ひずみの集中箇所が連続していることが分かる(領域X)。従って、接着パターンCでは、中央の配列部30Bに沿って、即ち、伸長方向Lに沿った線状に応力が高められている。また、各実施例の比較では、実施例3では、ひずみの集中箇所Xが線状に延在することにより、実施例1及び2の接着パターンA及びBと比べ、ひずみの絶対値が大きくなっている。従って、実施例3では、ひずみの集中領域Xに発生する応力が実施例1及び2よりも大きくなることが分かる。
一方で、実施例3は、左右の配列部30A,30Cを構成する接着部20の周囲のひずみが実施例2よりも小さくなっている。
【0042】
このような応力の集中は、第1に、中央の配列部30は、隣接する左右の配列部30A,30Cよりも接着部20が密に配置されることから、ドット状の接着部20間に設けられる非接着部において、所定の伸長方向Lに沿ったひずみが顕著になり、応力が高められたことが原因として考えられる。また、第2に、中央の配列部30Bの接着部20は、隣接する左右の配列部30A,30Cの接着部20に対して、所定の伸長方向Lに異なる位置に配置されているため、中央の配列部30Bで高められた応力によって、左右の配列部30A,30Cの非接着部の伸長量が制限されていることが原因として考えられる。これにより、実施例3に係る接着パターンCは、接着剤の使用量を削減しつつ、所定の伸長方向への伸張性を効果的に抑制する上で高い効果を奏することがわかる。
【0043】
以上説明した各実施例の観測結果により、接着剤の使用量を削減しつつ、所定の伸長方向Lへの生地の伸長性を抑制するという観点では、複数の接着部20が以下の配列規則(1)(2)を適用した方法で配列されることが有効であることが分かる。

(1)複数列設けられる配列部30のうち所定の配列部30において、隣接する他の配列部30よりも複数の接着部20を密に配置する。

(2)配列規則(1)を備えた上で、所定の配列部30において、接着部20の位置を、隣接する他の配列部30の接着部20に対して所定の伸長方向Lに異なる位置に配置する。
【0044】
(作用並びに効果)
次に、上記実施形態に係る貼り合わせ構造10の作用効果について、本実施形態に係る接着パターンPの他のバリエーションとともに説明する。
【0045】
本実施形態に係る貼り合わせ構造10では、接着パターンPは、接着剤をドット状に形成した複数の接着部20で構成されている。また、複数の接着部20は、所定の伸長方向に沿って配列された配列部30を形成し、当該配列部30が複数列設けられることにより全体として帯状をなしている。これにより、伸縮性生地12及び伸縮性生地14に所定の伸長方向Lに沿った引っ張り力が作用した場合に、帯状をなす接着パターンPにより所定の伸長方向Lに対する応力が高められる。その結果、所定の伸長方向Lへの伸縮性生地12及び伸縮性生地14の伸長性を抑制することができる。
【0046】
ここで、接着剤を用いて伸縮性材料からなる複数のパーツの接着により製造される無縫製の衣類では、パーツ同士が貼り合わされた接着箇所において、伸縮性を抑制した設計を適切に配置することにより、着用時のずれ防止、着用者の関節運動範囲の最適化、衣類の伸長力を利用したトレーニング効果の促進、衣類の型崩れ防止、着脱性能の向上等に有効である。
【0047】
一例として、図7(A)に示されるように、伸縮性材料を用いて製造されたトレーニング用のブラジャー50の設計において、着用者のアンダーバスト50Aに沿って配置される生地同士の接着に本実施形態に係る貼り合わせ構造10を適用することができる。図示の例によれば、トレーニング中におけるアンダーバスト位置の生地の伸長性を抑制し、着用者の胸部を安定して保持することができる。
【0048】
また、図7(B)に示されるように、伸縮性材料を用いて製造されたインナーショーツ60の設計において、前身頃の位置に設けられる生地同士重なり部60Aに本実施形態に係る貼り合わせ構造10を適用することができる。図示の例によれば、着用の際に生地が引っ張られる方向に沿って、生地の伸長性を抑制することができるので、繰り返しの着脱動作時に身生地へ過度な伸長負荷が加わり型崩れすることを防ぎ、かつショーツの上げ下ろしがし易く着脱性能を向上させることができる。
【0049】
また、本実施形態において、接着パターンPは、所定の配列部30において、複数の接着部20が上述の配列規則(1)に従って、配列されることで、伸張性の抑制効果を一層高めることができる。
【0050】
配列規則(1)では、所定の配列部30において、隣接する他の配列部30よりも複数の接着部20が密に配置され、その結果、所定の伸長方向に対して接着面積の占める割合が多く設定されることになる。上記実施例3に示すように、複数の接着部20が密に配置されると、貼り合わせ構造10では、配列部30の延在方向に沿って連続的に応力が高められる。その結果、全体の伸長量がより一層に低減される。
【0051】
なお、上記の観点では、複数の接着部20が密に配置される部位は、接着パターンPの全体でなくてもよい。図5に示されるように、所定の配列部30(A~C)に、複数の接着部20の距離が近づけられることで纏りのある集合部24を形成した場合も同様の作用を奏する。図示の例では、三つの配列部30のそれぞれにおいて、二つの接着部20の距離を近づけて一つの纏りとした集合部24が形成されている。また、各配列部30では、当該集合部24が所定の伸長方向Lに沿って繰り返し設けられている。
【0052】
各集合部24では、複数(図5では二つ)の接着部20が間隔T4を空けて配置されている。また、各集合部24同士の間には間隔T5(>T4)が設けられている。これにより、所定の伸長方向Lに沿って引っ張り力が作用した場合に、集合部24に沿って連続的に応力が高められ、全体の伸長量がより一層に低減される。
【0053】
なお、図示の例では、一つの集合部24が二つの接着部20によって構成されているが、これに限定されず、三つ以上の接着部によって集合部を構成してもよい。
【0054】
また、接着パターンPは、所定の配列部30において、複数の接着部20が上述の配列規則(2)に従って、配列されることで、伸張性の抑制効果を一層高めることができる。
【0055】
配列規則(2)では、所定の配列部30において、当該配列部30を構成する複数の接着部20は、隣接する他の配列部30を構成する複数の接着部20に対して所定の伸長方向Lに沿った位置が、異なるように配置されていてもよい。これにより、接着部20が密に配置された部位によって高められた応力が、隣接する配列部30の非接着部のひずみを抑制し、全体として伸長量が制限される。上記実施例3の接着パターンC、及び図5の接着パターンPは、配列規則(1)と配列規則(2)の両方の規則を取り入れた例である。
【0056】
このように、上記実施形態に記載された接着部20の種々の配列方法を適宜組み合わせて実施することで種々の接着パターンPを設計することができる。例えば、接着パターンPは、図6(A)~(C)に示されるように、二つの配列部30を用いて帯状に形成してもよい。このうち、図6(B)に示される接着パターンPは、上述の配列規則(1)及び配列規則(2)の両方を取り入れた一例である。また、図6(C)に示される接着パターンPは、上述の配列規則(2)を取り入れた一例である。
【0057】
また、図6(D)~(E)に示される接着パターンPは、上述の配列規則(1)及び配列規則(2)の両方を取り入れた例である。図6(D)に示されるように、所定の配列部30で接着部20を密に配置する場合、当該配列部30は、帯状をなす接着パターンPの幅方向の端部に設けられてもよいし、図(E)6に示されるように、幅方向の中心部に設けられてもよい。また、図6(F)に示されるように、接着パターンPは、四つ以上の配列部30を備える構成としてもよい。図示の例では、接着パターンPは、六つの配列部30によって構成されている。この例も、上述の配列規則(1)及び配列規則(2)の両方を取り入れた例である。
【0058】
なお、上記実施形態では、二枚の伸縮性生地12,14を接着パターンPを形成した接着剤で貼り合わせる構成について説明したが、これに限定されない。単一のパーツを構成する一枚の伸縮性生地の端部の折り返しや生地同士の重なり部に接着パターンPを形成し、貼り合わせてもよい。
【0059】
[符号の説明]
10 伸縮性生地の貼り合わせ構造(伸縮性材料の貼り合わせ構造)
12 伸縮性生地(伸縮性材料)
14 伸縮性生地(伸縮性材料)
P 接着パターン
20 接着部
24 集合部
30 配列部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7