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特開2024-115239状態推定装置、システム、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115239
(43)【公開日】2024-08-26
(54)【発明の名称】状態推定装置、システム、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/00 20060101AFI20240819BHJP
   G01B 11/24 20060101ALI20240819BHJP
   A61B 5/107 20060101ALI20240819BHJP
   A61B 10/00 20060101ALI20240819BHJP
【FI】
A61B5/00 M
G01B11/24 K
A61B5/107 800
A61B5/00 101A
A61B10/00 U
A61B10/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023020838
(22)【出願日】2023-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】000125370
【氏名又は名称】学校法人東京理科大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小椋 凛
(72)【発明者】
【氏名】泉野目 伎
(72)【発明者】
【氏名】山本 征孝
(72)【発明者】
【氏名】竹村 裕
【テーマコード(参考)】
2F065
4C038
4C117
【Fターム(参考)】
2F065AA52
2F065AA58
2F065CC16
2F065FF04
2F065GG21
4C038VA04
4C038VA05
4C038VA11
4C038VB14
4C038VB23
4C038VC05
4C117XB01
4C117XB12
4C117XB17
4C117XD38
4C117XE27
4C117XE43
4C117XJ35
4C117XK09
(57)【要約】
【課題】非侵襲で、かつ、簡易に被験者の足裏状態を推定することができるようにする。
【解決手段】状態推定装置は、透明な支持面上に被験者の足裏が載置され、かつ、前記支持面に垂直な方向に対応する光を照射したときに前記支持面を介して撮影された画像である第1足裏画像、及び前記支持面上に被験者の足裏が載置され、かつ、前記支持面の側面から光を照射したときに前記支持面を介して撮影された画像である第2足裏画像を取得する画像取得部と、前記第1足裏画像及び前記第2足裏画像を比較して、前記被験者の足裏状態を推定する足裏状態推定部と、を含む。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明な支持面上に被験者の足裏が載置され、かつ、前記支持面に垂直な方向に対応する光を照射したときに前記支持面を介して撮影された画像である第1足裏画像、及び前記支持面上に被験者の足裏が載置され、かつ、前記支持面の側面から光を照射したときに前記支持面を介して撮影された画像である第2足裏画像を取得する画像取得部と、
前記第1足裏画像及び前記第2足裏画像を比較して、前記被験者の足裏状態を推定する足裏状態推定部と、
を含む状態推定装置。
【請求項2】
前記足裏状態推定部は、前記第1足裏画像及び前記第2足裏画像における足裏領域の面積の変化率に基づいて、前記被験者の足裏状態を推定する請求項1記載の状態推定装置。
【請求項3】
前記足裏状態推定部は、前記被験者の足裏状態として、足裏の硬度を推定する請求項1記載の状態推定装置。
【請求項4】
前記支持面に垂直な方向に対応して照射する光と、前記支持面の側面から照射する光とは色が異なり、
前記画像取得部は、
前記支持面を介して撮影された画像から、前記支持面に垂直な方向に対応して照射する光の色を表す成分を抽出して、前記第1足裏画像を取得し、
前記支持面を介して撮影された画像から、前記支持面の側面から照射する光の色を表す成分を抽出して、前記第2足裏画像を取得する請求項1記載の状態推定装置。
【請求項5】
前記支持面を介して撮影された画像から、エッジ検出を行い、前記エッジ検出の結果から、しわの割合を算出し、足裏の乾燥度を推定する乾燥度推定部を更に含む請求項1記載の状態推定装置。
【請求項6】
前記足裏状態推定部によって推定された足裏状態、及び前記乾燥度推定部によって推定された足裏の乾燥度に基づいて、前記被験者の異常状態を推定する異常状態推定部を更に含む請求項5記載の状態推定装置。
【請求項7】
前記異常状態推定部は、前記被験者の異常状態として、糖尿病の有無又は糖尿病における神経障害の有無を推定する請求項6項記載の状態推定装置。
【請求項8】
前記異常状態推定部は、前記被験者の異常状態として、糖尿病の重症度又は糖尿病における神経障害の度合いを推定する請求項6項記載の状態推定装置。
【請求項9】
被験者の足裏が載置される透明な支持面を有し、前記支持面に垂直な方向に対応する光を照射したときに前記支持面を介して足裏画像を撮影し、前記支持面の側面から光を照射したときに前記支持面を介して足裏画像を撮影する足裏撮影装置と、
請求項1~請求項8の何れか1項記載の状態推定装置と、
を含む状態推定システム。
【請求項10】
コンピュータを、
透明な支持面上に被験者の足裏が載置され、かつ、前記支持面に垂直な方向に対応する光を照射したときに前記支持面を介して撮影された画像である第1足裏画像、及び前記支持面上に被験者の足裏が載置され、かつ、前記支持面の側面から光を照射したときに前記支持面を介して撮影された画像である第2足裏画像を取得する画像取得部、及び
前記第1足裏画像及び前記第2足裏画像を比較して、前記被験者の足裏状態を推定する足裏状態推定部
として機能させるための状態推定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、状態推定装置、システム、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、硬度が異なる2つの透明な支持面上の各々に被験者の足裏が載置されたときに前記支持面を介して撮影された画像である2つの足裏画像を取得する画像取得部と、前記2つの足裏画像を比較して、前記被験者の異常状態を推定する異常状態推定部と、を含む異常状態推定装置が知られている(特許文献1)。
【0003】
また、被測定者の部位の画像情報を読み取る画像読取装置と、画像情報を用いて部位に関する解析を行う画像解析装置と、を備える画像解析システムであって、画像読取装置が、被測定者の部位が接触する接触板と、接触板に対して、部位が接触している面の反対側の面に光を照射することにより、画像情報を取得する画像取得部と、を備え、画像解析装置が、画像情報に含まれ、少なくとも赤色に関する情報を含む色情報を用いて、部位の圧力分布を求める圧力検出部を備える画像解析システムが知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO2021/039923号
【特許文献2】特許第7133245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1では、硬度が異なる2つの透明な支持面上の各々に被験者の足裏を載置する必要があるため、煩わしい。
【0006】
また、上記特許文献2では、足裏の圧力分布を求めることが記載されているものの、被験者の足裏の硬さなどの足裏状態を推定することについては記載されていない。
【0007】
本発明は、上記の事情を鑑みてなされたもので、非侵襲で、かつ、簡易に被験者の足裏状態を推定することができる状態推定装置、システム、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために本発明に係る状態推定装置は、透明な支持面上に被験者の足裏が載置され、かつ、前記支持面に垂直な方向に対応する光を照射したときに前記支持面を介して撮影された画像である第1足裏画像、及び前記支持面上に被験者の足裏が載置され、かつ、前記支持面の側面から光を照射したときに前記支持面を介して撮影された画像である第2足裏画像を取得する画像取得部と、前記第1足裏画像及び前記第2足裏画像を比較して、前記被験者の足裏状態を推定する足裏状態推定部と、を含んで構成されている。
【0009】
本発明に係る状態推定システムは、被験者の足裏が載置される透明な支持面を有し、前記支持面に垂直な方向に対応する光を照射したときに前記支持面を介して足裏画像を撮影し、前記支持面の側面から光を照射したときに前記支持面を介して足裏画像を撮影する足裏撮影装置と、上記の状態推定装置と、を含んで構成されている。
【0010】
本発明に係る状態推定プログラムは、コンピュータを、透明な支持面上に被験者の足裏が載置され、かつ、前記支持面に垂直な方向に対応する光を照射したときに前記支持面を介して撮影された画像である第1足裏画像、及び前記支持面上に被験者の足裏が載置され、かつ、前記支持面の側面から光を照射したときに前記支持面を介して撮影された画像である第2足裏画像を取得する画像取得部、及び前記第1足裏画像及び前記第2足裏画像を比較して、前記被験者の足裏状態を推定する足裏状態推定部として機能させるためのプログラムである。
【0011】
本発明によれば、画像取得部が、透明な支持面上に被験者の足裏が載置され、かつ、前記支持面に垂直な方向に対応する光を照射したときに前記支持面を介して撮影された画像である第1足裏画像、及び前記支持面上に被験者の足裏が載置され、かつ、前記支持面の側面から光を照射したときに前記支持面を介して撮影された画像である第2足裏画像を取得する。そして、足裏状態推定部が、前記第1足裏画像及び前記第2足裏画像を比較して、前記被験者の足裏状態を推定する。
【0012】
このように、透明な支持面上に被験者の足裏が載置され、かつ、前記支持面に垂直な方向に対応する光を照射したときに前記支持面を介して撮影された画像である第1足裏画像、及び前記支持面上に被験者の足裏が載置され、かつ、前記支持面の側面から光を照射したときに前記支持面を介して撮影された画像である第2足裏画像を比較して、前記被験者の足裏状態を推定することにより、非侵襲で、かつ、簡易に被験者の足裏状態を推定することができる。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明の状態推定装置、システム、及びプログラムによれば、非侵襲で、かつ、簡易に被験者の足裏状態を推定することができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施の形態に係る状態推定システムを示すブロック図である。
図2】(A)本発明の実施の形態に係る足裏撮影装置の構成を示す正面図、及び(B)本発明の実施の形態に係る足裏撮影装置の構成を示す側面図である。
図3A】本発明の実施の形態に係る足裏撮影装置の支持面を示す斜視図である。
図3B】第2光源により支持面内を照射した光を説明するための図である。
図4】本発明の実施の形態に係る足裏撮影装置のスキャナの撮影部及び照射部を示す斜視図である。
図5】本発明の実施の形態に係る状態推定装置として機能するコンピュータの一例の概略ブロック図である。
図6】本発明の実施の形態に係る状態推定装置を示す機能ブロック図である。
図7】足裏画像の一例を示す図である。
図8】(A)足裏画像の一例を示す図、(B)緑成分の面積の一例を示す図、及び(C)赤成分の面積の一例を示す図である。
図9】(A)足裏画像の一例を示す図、(B)かかと全体の面積の一例を示す図、(C)エッジ検出によるしわの面積の一例を示す図、及び(D)エッジ検出による輪郭の面積の一例を示す図である。
図10】本発明の実施の形態に係る状態推定装置の状態推定処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
図11】(A)しわの割合と足裏の乾燥度との相関を表すグラフ、及び(B)非密着割合と足裏の硬度との相関を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。以下では、被験者の糖尿病の有無及び糖尿病における神経障害の有無を推定するか、又は被験者の糖尿病の重症度及び糖尿病における神経障害の度合いを推定する状態推定装置に本発明を適用した場合を例に説明する。
【0016】
<本発明の実施の形態の概要>
本発明の実施の形態では、1度のスキャンで足裏の乾燥度や硬度を同時に推定し、被験者の糖尿病又は糖尿病神経障害を推定する。
【0017】
<本発明の実施の形態の状態推定システムの構成>
図1に示すように、本発明の実施の形態の状態推定システム100は、状態推定装置10と、足裏撮影装置50とを備えている。状態推定装置10と、足裏撮影装置50とは、有線又は無線で接続されている。なお、状態推定装置10と、足裏撮影装置50とは、LAN(Local Area Network)又はインターネット等のネットワークを介して接続されていてもよい。
【0018】
図2(A)、(B)に示すように、足裏撮影装置50は、被験者の足裏が載置される透明な支持面52を有し、スキャナ54により、支持面52を介して足裏画像を撮影し、状態推定装置10へ送信する。図3Aに示すように、支持面52の側面には、支持面52内を照射するように第2光源58が設けられている。図3Bの断面図に示すように、第2光源58により支持面52の側面から支持面52内を照射すると、照射された光は、支持面52内部で全反射し、支持面52に物体が接触すると、接触面で光が乱反射し、接触面が発光する。
【0019】
また、図4に示すように、スキャナ54は、走査方向に走査する撮影部54Aを備え、撮影部54Aは、支持面52に垂直に光を照射する第1光源54Bを備える。
【0020】
スキャナ54は、第1光源54Bにより支持面52に垂直に光を照射すると共に、第2光源58により支持面52の側面から光を照射したときに、撮影部54Aにより、支持面52を介して撮影された足裏画像を撮影する。
【0021】
第2光源58と第1光源54Bとは照射する光の色が異なっている。例えば、第2光源58は、赤色の光を照射し、第1光源54Bは、緑色の光を照射する。これにより、支持面52を介した、第1光源54Bにより支持面52に垂直に緑色の光を照射したときの足裏画像、及び第2光源58により支持面52の側面から赤色の光を照射したときの足裏画像を同時に撮影することができる。
【0022】
なお、第2光源58と第1光源54Bとにより同時に照射するのではなく、支持面52を介した、第1光源54Bにより支持面52に垂直に緑色の光を照射したときの足裏画像を撮影する足裏撮影装置50と、第2光源58により支持面52の側面から赤色の光を照射したときの足裏画像を撮影する足裏撮影装置50との2つの装置を設けるようにしてもよい。
【0023】
また、足裏撮影装置50のスキャナ54の下部の4か所に、荷重を測定するためのロードセル60が設けられている。
【0024】
図5は、本実施の形態の状態推定装置10のハードウェア構成を示すブロック図である。
【0025】
図5に示すように、状態推定装置10は、コンピュータであり、CPU(Central Processing Unit)11、ROM(Read Only Memory)12、RAM(Random Access Memory)13、ストレージ14、入力部15、表示部16及び通信インタフェース(I/F)17を有する。各構成は、バス19を介して相互に通信可能に接続されている。
【0026】
CPU11は、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU11は、ROM12又はストレージ14からプログラムを読み出し、RAM13を作業領域としてプログラムを実行する。CPU11は、ROM12又はストレージ14に記憶されているプログラムに従って、上記各構成の制御及び各種の演算処理を行う。本実施形態では、ROM12又はストレージ14には、被験者の異常状態を推定するための状態推定プログラムが格納されている。状態推定プログラムは、1つのプログラムであっても良いし、複数のプログラム又はモジュールで構成されるプログラム群であっても良い。
【0027】
ROM12は、各種プログラム及び各種データを格納する。RAM13は、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。ストレージ14は、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)により構成され、オペレーティングシステムを含む各種プログラム、及び各種データを格納する。
【0028】
入力部15は、マウス等のポインティングデバイス、及びキーボードを含み、各種の入力を行うために使用される。
【0029】
表示部16は、例えば、液晶ディスプレイであり、各種の情報を表示する。表示部16は、タッチパネル方式を採用して、入力部15として機能しても良い。
【0030】
通信インタフェース17は、足裏撮影装置50を含む他の機器と通信するためのインタフェースであり、例えば、イーサネット(登録商標)、FDDI、Wi-Fi(登録商標)等の規格が用いられる。
【0031】
次に、状態推定装置10の機能構成について説明する。図6は、状態推定装置10の機能構成の例を示すブロック図である。
【0032】
状態推定装置10は、機能的には、図6に示すように、画像取得部30、足裏状態推定部32、乾燥度推定部34、情報取得部36、重心動揺測定部38、及び異常状態推定部40を備えている。
【0033】
画像取得部30は、足裏撮影装置50によって撮影された、図7に示すような足裏画像を取得し、取得した足裏画像から、第1光源54Bにより垂直に光を照射したときに撮影された画像である第1足裏画像、及び第2光源58により支持面52の側面から光を照射したときに撮影された画像である第2足裏画像を取得する。
【0034】
例えば、図8(A)に示すような足裏画像から、第1光源54Bにより照射された光の色(緑)を表す成分を抽出して、図8(B)に示すような第1足裏画像を取得し、第2光源58により照射された光の色(赤)を表す成分を抽出して、図8(C)に示すような第2足裏画像を取得する。図7図8では、ドット領域が赤色の領域を示し、斜線領域が緑色の領域を示している。
【0035】
足裏状態推定部32は、第1足裏画像及び第2足裏画像を比較して、被験者の足裏状態として、足裏の硬度を推定する。
【0036】
具体的には、第1足裏画像及び第2足裏画像における足裏領域の面積の変化率に基づいて、足裏の硬度を推定する。
【0037】
より具体的には、第1足裏画像、第2足裏画像を足裏の長さ方向に3分割し、図8(B)に示すような、足裏後部に関する第1足裏画像と、図8(C)に示すような、足裏後部に関する第2足裏画像とを得る。足裏後部に関する第1足裏画像から、緑を抽出したかかと全体の面積SAと、足裏後部に関する第2足裏画像から、赤を抽出した密着面積SCとに基づいて、以下の式に従って、非密着割合を算出する。硬い足は変形しにくいため、非密着割合が大きいほど、足裏の硬度が大きくなるため、非密着割合を足裏の硬度とする。
【0038】
非密着割合=(S-S)/S
【0039】
ここで、図8(B)、(C)は、図8(A)に示す足裏後部に関する足裏画像に対応する、足裏後部に関する第1足裏画像、足裏後部に関する第2足裏画像を示している。なお、全体の面積Sは、第1足裏画像の足裏領域の面積の一例であり、密着面積Sは、第2足裏画像の足裏領域の面積の一例である。
【0040】
乾燥度推定部34は、足裏撮影装置50によって撮影された足裏画像から、エッジ検出を行い、エッジ検出の結果から、しわの割合を算出し、足裏の乾燥度を推定する。
【0041】
具体的には、足裏画像を足裏の長さ方向に3分割し、図9(A)に示すような、足裏後部に関する足裏画像を得る。
【0042】
足裏後部に関する足裏画像から、図9(B)に示すような、かかと全体の面積Sと、足裏後部に関する足裏画像に対するエッジ検出によるしわの面積S図9(C)参照))及び輪郭の面積S図9(D)参照))とに基づいて、以下の式に従って、しわの割合を算出する。乾燥している足ほど、しわの量が増えるため、しわの割合が大きいほど、足裏の乾燥度が大きくなるため、しわの割合を足裏の乾燥度とする。
【0043】
しわの割合=(S-S)/S
【0044】
ここで、かかと全体の面積は、足裏画像の二値化画像を用いて求めればよい。
【0045】
情報取得部36は、所定期間(例えば、30秒間)だけ、各ロードセル60によって計測された荷重を取得する。なお、各ロードセル60の荷重の合計で体重を計測してもよい。
【0046】
重心動揺測定部38は、各ロードセル60の荷重の分布から重心を計測し、所定期間だけ、重心の軌跡を解析する。重心動揺測定部38は、解析された重心の軌跡から、重心動揺を測定する。
【0047】
異常状態推定部40は、足裏状態推定部32によって推定された足裏の硬度、乾燥度推定部34によって推定された足裏の乾燥度、及び重心動揺測定部38によって測定された重心動揺に基づいて、被験者の異常状態として、糖尿病の有無及び糖尿病における神経障害の有無、又は糖尿病の重症度及び糖尿病における神経障害の度合いを推定する。
【0048】
例えば、異常状態推定部40は、足裏の硬度、足裏の乾燥度、及び重心動揺を説明変数とし、糖尿病の有無又は重症度を目的変数とした回帰式を用いて、糖尿病の有無又は重症度を推定し、足裏の硬度、足裏の乾燥度、及び重心動揺を説明変数とし、糖尿病における神経障害の有無又は度合いを目的変数とした回帰式を用いて、糖尿病における神経障害の有無又は度合いを推定する。
【0049】
<状態推定システムの動作>
次に、本発明の実施の形態に係る状態推定システム100の動作について説明する。
【0050】
足裏撮影装置50において、被験者が、支持面52に足を載置し、静止立位状態となったときに、スキャナ54により、足裏画像を撮影し、足裏画像を、状態推定装置10へ送信する。
【0051】
また、足裏撮影装置50において、被験者が、支持面52に足を載置し、静止立位状態となったときに、4か所に設置されたロードセル60によって、所定期間、荷重を測定し、状態推定装置10へ送信する。
【0052】
このとき、状態推定装置10によって、図10に示す状態推定処理ルーチンが実行される。
【0053】
まず、ステップS100において、画像取得部30は、足裏撮影装置50から受信した足裏画像を取得する。
【0054】
ステップS102において、画像取得部30は、上記ステップS100で取得した足裏画像から、第1光源54Bにより垂直に照射した光の色(緑)を表す成分を抽出して第1足裏画像を取得すると共に、第2光源58により支持面52の側面から照射した光の色(赤)を表す成分を抽出して第2足裏画像を取得する。
【0055】
ステップS104において、情報取得部36は、所定期間だけ各ロードセル60によって計測された荷重を取得する。
【0056】
ステップS106において、足裏状態推定部32は、上記ステップS102で取得した第1足裏画像及び第2足裏画像を比較して、被験者の足裏状態として、足裏の硬度を推定する。
【0057】
ステップS108において、乾燥度推定部34は、上記ステップS100で取得した足裏画像から、エッジ検出を行い、エッジ検出の結果から、しわの割合を算出し、足裏の乾燥度を推定する。
【0058】
ステップS110において、重心動揺測定部38は、上記ステップS104で取得した各ロードセル60の荷重の分布から重心を計測し、所定期間だけ、重心の軌跡を解析する。重心動揺測定部38は、解析された重心の軌跡から、重心動揺を測定する。
【0059】
ステップS112において、異常状態推定部40は、足裏状態推定部32によって推定された足裏の硬度、乾燥度推定部34によって推定された足裏の乾燥度、及び重心動揺測定部38によって測定された重心動揺に基づいて、被験者の異常状態として、糖尿病の有無及び糖尿病における神経障害の有無、又は糖尿病の重症度及び糖尿病における神経障害の度合いを推定する。異常状態推定部40は、推定結果を、表示部16により表示し、状態推定処理ルーチンを終了する。
【0060】
以上説明したように、本発明の実施の形態に係る状態推定システムによれば、透明な支持面上に被験者の足裏が載置され、かつ、支持面に垂直な方向に対応する光を照射したときに支持面を介して撮影された画像である第1足裏画像、及び支持面上に被験者の足裏が載置され、かつ、支持面の側面から光を照射したときに支持面を介して撮影された画像である第2足裏画像を比較して、被験者の足裏の硬度を推定することにより、非侵襲で、かつ、簡易に被験者の足裏の硬度を推定することができる。
【0061】
また、1枚の足裏画像から、第1足裏画像及び第2足裏画像を取得するため、より簡易に被験者の足裏の硬度を推定することができる。
【0062】
<実験例>
上記の実施の形態で説明した方法の有効性を説明するために、しわの割合と足裏の乾燥度との相関を調べた結果について説明する。具体的には、しわの割合の算出方法として、上記の実施の形態で説明した方法を用い、足裏の乾燥度に、水分計の測定結果を用いた。測定人数は、健常成人38名であり、測定箇所をかかととした。図11(A)に示すような有意な正の相関が見られた(相関係数は、0.58)。
【0063】
また、上記の実施の形態で説明した方法の有効性を説明するために、非密着割合と足裏の硬度との相関を調べた結果について説明する。具体的には、非密着割合の算出方法として、上記の実施の形態で説明した方法を用い、足裏の硬度に、硬度計の測定結果を用いた。測定人数は、健常成人38名であり、測定箇所をかかととした。図11(B)に示すような有意な正の相関が見られた(相関係数は、0.59)。
【0064】
以上より、乾燥度としわの割合の組み合わせ、硬度と非密着割合の組み合わせの2つともに相関を確認できた。従って、1枚の足裏画像から、足裏の乾燥度と硬度を同時推定できることが分かった。
【0065】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。
【0066】
<変形例1>
足裏画像、第1足裏画像、及び第2足裏画像を入力とし、糖尿病の有無、及び糖尿病における神経障害の有無を推定するニューラルネットワークを用いて、糖尿病の有無、及び糖尿病における神経障害の有無を推定するようにしてもよい。
【0067】
<変形例2>
また、被験者の異常状態として、糖尿病、又は糖尿病における神経障害を推定する場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、第1足裏画像及び第2足裏画像の比較によって推定できる異常状態であれば、糖尿病、糖尿病における神経障害以外の被験者の異常状態を推定するようにしてもよい。
【0068】
<変形例3>
また、1つの足裏撮影装置と、1つの状態推定装置とからなるシステムで構成される場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、複数の足裏撮影装置と、サーバとして構成される、1つの状態推定装置とからなるシステムであってもよい。
【0069】
<変形例4>
また、足裏の硬度、足裏の乾燥度、及び重心動揺を用いて、糖尿病の有無、糖尿病における神経障害の有無、糖尿病の重症度、又は糖尿病における神経障害の度合いを推定する場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、足裏の硬度を用いて、あるいは、足裏の硬度と、足裏の乾燥度及び重心動揺の一方とを用いて、糖尿病の有無、糖尿病における神経障害の有無、糖尿病の重症度、又は糖尿病における神経障害の度合いを推定するようにしてもよい。
【0070】
<変形例5>
また、上記の実施の形態では、糖尿病の有無及び糖尿病における神経障害の有無を推定する場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。糖尿病の有無及び糖尿病における神経障害の有無の何れか一方を推定するようにしてもよい。また、糖尿病の重症度、及び糖尿病における神経障害の度合いの少なくとも一方を推定するようにしてもよい。
【0071】
<変形例6>
足裏状態推定部は、第1足裏画像、第2足裏画像を足裏の長さ方向に3分割して、足裏後部に関する第1足裏画像と、足裏後部に関する第2足裏画像と、から非密着割合を算出する場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、足裏前部に関する第1足裏画像と、足裏前部に関する第2足裏画像とのペア、足裏中部に関する第1足裏画像と、足裏中部に関する第2足裏画像とのペア、及び足裏後部に関する第1足裏画像と、足裏後部に関する第2足裏画像とのペア、の各々から非密着割合を算出して、統合してもよい。また、第1足裏画像全体と、第2足裏画像全体とから非密着割合を算出してもよい。
【0072】
<変形例7>
乾燥度推定部は、足裏画像を足裏の長さ方向に3分割して、足裏後部に関する足裏画像からしわの割合を算出する場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、足裏前部に関する第1足裏画像と、足裏前部に関する第2足裏画像とのペア、足裏中部に関する第1足裏画像と、足裏中部に関する第2足裏画像とのペア、及び足裏後部に関する第1足裏画像と、足裏後部に関する第2足裏画像とのペア、の各々からしわの割合を算出して、統合してもよい。また、第1足裏画像全体と、第2足裏画像全体とからしわの割合を算出してもよい。
【0073】
上記実施形態でCPUがソフトウェア(プログラム)を読み込んで実行した各種処理を、CPU以外の各種のプロセッサが実行してもよい。この場合のプロセッサとしては、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なPLD(Programmable Logic Device)、及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が例示される。また、状態推定処理を、これらの各種のプロセッサのうちの1つで実行してもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGA、及びCPUとFPGAとの組み合わせ等)で実行してもよい。また、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路である。
【0074】
また、上記各実施形態では、状態推定プログラムがストレージ14に予め記憶(インストール)されている態様を説明したが、これに限定されない。プログラムは、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disk Read Only Memory)、及びUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の非一時的(non-transitory)記憶媒体に記憶された形態で提供されてもよい。また、プログラムは、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【符号の説明】
【0075】
10 状態推定装置
15 入力部
16 表示部
30 画像取得部
32 足裏状態推定部
34 乾燥度推定部
36 情報取得部
38 重心動揺測定部
40 異常状態推定部
50 足裏撮影装置
52 支持面
54 スキャナ
54A 撮影部
54B 第1光源
58 第2光源
60 ロードセル
100 状態推定システム
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11