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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115247
(43)【公開日】2024-08-26
(54)【発明の名称】加工装置
(51)【国際特許分類】
   B23Q 11/12 20060101AFI20240819BHJP
   B24B 49/14 20060101ALI20240819BHJP
   B24B 7/04 20060101ALI20240819BHJP
   B24B 55/02 20060101ALI20240819BHJP
   B23Q 17/00 20060101ALI20240819BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20240819BHJP
【FI】
B23Q11/12 C
B24B49/14
B24B7/04 A
B24B55/02 B
B23Q17/00 A
H01L21/304 631
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023020854
(22)【出願日】2023-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 貴之
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(72)【発明者】
【氏名】山中 聡
【テーマコード(参考)】
3C011
3C029
3C034
3C043
3C047
5F057
【Fターム(参考)】
3C011FF01
3C029EE01
3C034AA08
3C034BB92
3C034CA19
3C034CB03
3C034DD18
3C043BA03
3C043BA16
3C043CC04
3C043DD02
3C043DD04
3C043DD05
3C043DD06
3C047BB18
3C047FF04
3C047FF11
3C047GG19
5F057AA39
5F057CA14
5F057DA11
5F057FA45
5F057GA05
5F057GB07
5F057GB40
(57)【要約】
【課題】スピンドルの加熱に起因した被加工物の加工精度の悪化を抑制することが可能な加工装置を提供する。
【解決手段】加工装置は、冷却水路から排出された冷却水の温度を測定するための水温計を備える。そして、この加工装置においては、被加工物を加工中に水温計によって測定された温度がしきい値を超えない場合に、冷却水路への冷却水の供給条件を変更することなく、被加工物の加工が継続される。ここで、当該測定された温度は、被加工物を加工中のスピンドルの温度を反映した温度となる。そのため、この加工装置においては、スピンドルの加熱が抑制されていることを確認した状態で被加工物の加工が継続される。その結果、この加工装置においては、スピンドルの加熱に起因した被加工物の加工精度の悪化を抑制することが可能である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を加工するための加工装置であって、
該被加工物を保持するためのチャックテーブルと、
該チャックテーブルに保持された該被加工物を加工するための加工具が先端部に装着されているスピンドルと、
該スピンドルを回転させるためのモータと、
該スピンドルの該先端部以外の少なくとも一部及び該モータを囲繞し、かつ、所定の温度の冷却水が供給される冷却水路が内部に形成されているハウジングと、
該冷却水路から排出された該冷却水の温度を測定するための水温計と、
該被加工物を加工中に、該冷却水路への該冷却水の供給条件を調整するとともに該被加工物の加工を継続させるか否かを選択することが可能なコントローラと、を備え、
該コントローラは、
該所定の温度よりも高い温度のしきい値を記憶するメモリと、
該被加工物を加工中に該水温計によって測定された温度が該しきい値を超えない場合に、該供給条件を変更することなく、該被加工物の加工を継続させるプロセッサと、
を含む加工装置。
【請求項2】
該プロセッサは、該被加工物を加工中に該水温計によって測定された温度が該しきい値を超える場合に、該冷却水路への該冷却水の供給が停止されるように該供給条件を変更するとともに該被加工物の加工を停止させる請求項1に記載の加工装置。
【請求項3】
該プロセッサは、該被加工物を加工中に該水温計によって測定された温度が該しきい値を超える場合に、該冷却水路へ供給される該冷却水の流量を増加させるように該供給条件を変更するとともに該被加工物の加工を継続させる請求項1に記載の加工装置。
【請求項4】
該プロセッサは、該被加工物を加工中に該水温計によって測定された温度が該しきい値を超える場合に、該冷却水路へ供給される該冷却水の温度を低下させるように該供給条件を変更するとともに該被加工物の加工を継続させる請求項1に記載の加工装置。
【請求項5】
該メモリには、該被加工物を加工するための複数の加工条件が記憶され、
該複数の加工条件毎に該しきい値が設定される請求項1乃至4のいずれかに記載の加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物を加工するための加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
IC(Integrated Circuit)等のデバイスのチップは、携帯電話及びパーソナルコンピュータ等の各種電子機器において不可欠の構成要素である。このようなチップは、例えば、以下の順序で製造される。
【0003】
まず、フォトリソグラフィ等を実施してウェーハ等の被加工物の表面に多数の素子を形成することで複数のデバイスを形成する。次いで、研削ホイールを利用して被加工物の裏面側を研削して被加工物を薄化する。次いで、切削ブレードを利用して複数のデバイスの境界に沿って被加工物を切削して被加工物を複数のチップへと分割する。
【0004】
被加工物を研削する研削装置又は切削する切削装置等の加工装置は、一般的に、研削ホイール又は切削ブレード等の加工具が先端部に装着されているスピンドルと、このスピンドルを回転させるためのモータと、を備える。そして、これらの加工装置においては、スピンドルを回転させるようにモータを動作させた状態で、加工具を被加工物に接触させることによって被加工物が加工される。
【0005】
加工具が被加工物に接触した状態でスピンドルを回転させる場合には、両者が接触していない状態と比較して、モータを動作させるために必要な電流も大きくなる。また、モータに供給される電流が大きくなると、モータが加熱されるのみならず、モータに近接して設けられているスピンドルも加熱される。
【0006】
そして、スピンドルが加熱されると、その体積が膨張して、スピンドルが伸びる。この場合、スピンドルの先端部に装着されている加工具の位置が変動して、被加工物を精度良く加工することが困難になる。そのため、加工装置においては、一般的に、モータ及びスピンドルを冷却しながら被加工物が加工される。
【0007】
例えば、加工装置においては、スピンドルの先端部以外の少なくとも一部及びモータを囲繞するハウジングの内部に冷却水路が形成されている(例えば、特許文献1参照)。そして、この加工装置においては、冷却水路に冷却水を流しながら被加工物を加工することによって、モータ及びスピンドルの加熱が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2011-214605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した加工装置においては、所定の温度の冷却水を所定の流量で冷却水路に流しながら被加工物が加工されることが多い。他方、モータに供給される電流は、被加工物を加工中に変動することがある。例えば、被加工物の加工に伴って加工具が摩耗すると、このモータに供給される電流が大きくなる。
【0010】
このような場合、所定の温度の冷却水を所定の流量で冷却水路に流したとしても、スピンドルの加熱を抑制することができず、被加工物の加工精度が悪化するおそれがある。この点に鑑み、本発明の目的は、スピンドルの加熱に起因した被加工物の加工精度の悪化を抑制することが可能な加工装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明においては、被加工物を加工するための加工装置であって、該被加工物を保持するためのチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された該被加工物を加工するための加工具が先端部に装着されているスピンドルと、該スピンドルを回転させるためのモータと、該スピンドルの該先端部以外の少なくとも一部及び該モータを囲繞し、かつ、所定の温度の冷却水が供給される冷却水路が内部に形成されているハウジングと、該冷却水路から排出された該冷却水の温度を測定するための水温計と、該被加工物を加工中に、該冷却水路への該冷却水の供給条件を調整するとともに該被加工物の加工を継続させるか否かを選択することが可能なコントローラと、を備え、該コントローラは、該所定の温度よりも高い温度のしきい値を記憶するメモリと、該被加工物を加工中に該水温計によって測定された温度が該しきい値を超えない場合に、該供給条件を変更することなく、該被加工物の加工を継続させるプロセッサと、を含む加工装置が提供される。
【0012】
さらに、該プロセッサは、該被加工物を加工中に該水温計によって測定された温度が該しきい値を超える場合に、該冷却水路への該冷却水の供給が停止されるように該供給条件を変更するとともに該被加工物の加工を停止させることが好ましい。あるいは、該プロセッサは、該被加工物を加工中に該水温計によって測定された温度が該しきい値を超える場合に、該冷却水路へ供給される該冷却水の流量を増加させるように該供給条件を変更するとともに該被加工物の加工を継続させることが好ましい。あるいは、該プロセッサは、該被加工物を加工中に該水温計によって測定された温度が該しきい値を超える場合に、該冷却水路へ供給される該冷却水の温度を低下させるように該供給条件を変更するとともに該被加工物の加工を継続させることが好ましい。
【0013】
また、本発明においては、該メモリには、該被加工物を加工するための複数の加工条件が記憶され、該複数の加工条件毎に該しきい値が設定されることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の加工装置は、冷却水路から排出された冷却水の温度を測定するための水温計を備える。そして、この加工装置においては、被加工物を加工中に水温計によって測定された温度がしきい値を超えない場合に、冷却水路への冷却水の供給条件を変更することなく、被加工物の加工が継続される。
【0015】
ここで、当該測定された温度は、被加工物を加工中のスピンドルの温度を反映した温度となる。そのため、この加工装置においては、スピンドルの加熱が抑制されていることを確認した状態で被加工物の加工が継続される。その結果、この加工装置においては、スピンドルの加熱に起因した被加工物の加工精度の悪化を抑制することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、被加工物を加工するための加工装置の一例を模式的に示す斜視図である。
図2図2は、スピンドルユニット及びスピンドルユニットに接続されている構成要素を模式的に示す一部断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。図1は、被加工物を加工するための加工装置(具体的には、研削装置)の一例を模式的に示す斜視図である。なお、図1に示されるX軸方向(前後方向)及びY軸方向(左右方向)は、水平面上において互いに直交する方向であり、また、Z軸方向(上下方向)は、X軸方向及びY軸方向に直交する方向(鉛直方向)である。
【0018】
図1に示される研削装置2は、各構成要素を支持する基台4を有する。この基台4の上面には、X軸方向に沿って延在する直方体状の溝4aが形成されている。そして、この溝4aの上方には、被加工物を保持するためのチャックテーブル6が設けられている。
【0019】
また、溝4aの内側には、チャックテーブル6に連結されているX軸方向移動機構(不図示)、回転駆動源(不図示)及び吸引源(不図示)が設けられている。このX軸方向移動機構は、例えば、モータ及びボールねじ等を含み、チャックテーブル6をX軸方向に沿って移動させる。
【0020】
また、回転駆動源は、例えば、モータ及びプーリ等を含み、チャックテーブル6の上面(保持面)の中心を通る直線を回転軸としてチャックテーブル6を回転させる。また、吸引源は、エジェクタ等を含み、チャックテーブル6の保持面近傍の空間に吸引力を作用させる。
【0021】
チャックテーブル6の周囲には、その保持面6aが露出するようにチャックテーブル6を囲む直方体状のテーブルカバー8が設けられている。このテーブルカバー8の幅(Y軸方向に沿った長さ)は基台4の上面に形成されている溝4aの幅と概ね等しい。
【0022】
また、テーブルカバー8の前後には、X軸方向に沿って伸縮可能な防塵防滴カバー10が設けられている。そして、X軸方向移動機構によってチャックテーブル6をX軸方向に沿って移動させると、テーブルカバー8がX軸方向に沿って移動するとともに防塵防滴カバー10が伸縮する。
【0023】
さらに、基台4の上面のうち溝4aの後方に位置する領域には、四角柱状の支持構造12が設けられている。そして、支持構造12の前面には、Z軸方向移動機構14が設けられている。このZ軸方向移動機構14は、それぞれがZ軸方向に沿って延在する一対のガイドレール16を有する。
【0024】
そして、一対のガイドレール16のそれぞれの前側には、Z軸方向に沿ってスライド可能な態様でスライダ(不図示)が設けられている。また、このスライダの前端部は、直方体状のZ軸移動プレート18の後面側に固定されている。さらに、一対のガイドレール16の間には、Z軸方向に沿って延在するねじ軸20が配置されている。
【0025】
そして、ねじ軸20の上端部には、ねじ軸20を回転させるためのモータ22が連結されている。また、ねじ軸20のねじ山が形成された外周面上には、ねじ軸20の回転に応じて循環する多数のボールを収容するナット(不図示)が設けられ、ボールねじが構成されている。
【0026】
さらに、このナットは、Z軸移動プレート18の後面側に固定されている。そのため、モータ22でねじ軸20を回転させれば、ナットとともにZ軸移動プレート18がZ軸方向に沿って移動する。
【0027】
また、Z軸移動プレート18の前側には、研削ユニット24が設けられている。この研削ユニット24は、Z軸移動プレート18の前面に固定されている円筒状の保持部材26を有する。そして、保持部材26は、スピンドルユニット28を保持する。
【0028】
図2は、スピンドルユニット28及びスピンドルユニット28に接続されている構成要素を模式的に示す一部断面側面図である。なお、図2においては、スピンドルユニット28及びスピンドルユニット28に接続されている構成要素の一部がブロックで示されている。
【0029】
スピンドルユニット28は、円筒状のハウジング30を有する。このハウジング30の底壁30aの中央には、円柱状の貫通孔30bが形成されている。また、ハウジング30の底壁30aには、エア供給源32と連通するエア供給路30cが形成されている。
【0030】
そして、このエア供給路30cは、底壁30aの上面において開口する複数のエア噴出口30dと、底壁30aの内側面において開口する複数のエア噴出口30eと、底壁30aの下面において開口する複数のエア噴出口30fとに連通する。
【0031】
また、ハウジング30は、スピンドル34の先端部(下端部)34a以外の少なくとも一部を囲繞する。このスピンドル34の先端部34aは、円板状の形状を有し、後述する研削ホイール48を装着するためのマウントとして機能する。
【0032】
また、このマウントの上面の中央には、Z軸方向に沿って延在する円柱状の軸部34bが垂設されている。この軸部34bは、底壁30aに形成されている貫通孔30bを通ってハウジング30の内側に挿入されている。
【0033】
また、軸部34bのうちハウジング30の内側に位置する部分からは、軸部34bの径方向に沿って軸部34bから突出するようにフランジ部34cが設けられている。なお、スピンドル34の先端部34aとフランジ部34cとの間隔は、ハウジング30の底壁30aの厚さよりも僅かに大きい。
【0034】
また、スピンドル34の基端部(上端部)の周囲には、スピンドル34を回転させるためのモータ36が設けられている。このモータ36は、スピンドル34の基端部に固定されているロータ36aと、隙間を介してロータ36aを取り囲むステータ36bとを有する。また、ステータ36bは、ハウジング30に固定されている。
【0035】
また、ハウジング30のうちステータ36bが固定されている部分には、スピンドル34及びモータ36を冷却するための冷却水が供給される冷却水路38が形成されている。そして、冷却水路38の一端及び他端には、給水口40及び排水口42がそれぞれ設けられている。
【0036】
さらに、給水口40及び排水口42のそれぞれは、配管等を介して冷却水循環装置44に接続されている。この冷却水循環装置44は、冷却水路38に供給される冷却水の温度を調整するためのヒータ及び/又はクーラ並びに冷却水の流量を調整するためのポンプ等を含む。
【0037】
そして、この冷却水循環装置44が動作すると、所定の温度の冷却水が所定の流量で給水口40を通って冷却水路38に供給される。なお、当該所定の温度は、例えば、21℃~25℃である。また、当該所定の流量は、例えば、2L/min~3L/minである。
【0038】
また、冷却水路38から排水口42を通って排出された冷却水は、冷却水循環装置44に戻されて、冷却水路38に供給される冷却水として再利用される。また、排水口42と冷却水循環装置44との間の配管には、排水口42から排出された冷却水の温度を測定するための水温計46が接続されている。
【0039】
また、スピンドル34の先端部34aには、この先端部34aと概ね等しい径を有する研削ホイール(加工具)48が装着されている。この研削ホイール48は、複数の研削砥石48aと、複数の研削砥石48aが環状に離散して配置されている下面を有するホイール基台48bとを有する。
【0040】
さらに、研削ホイール48の近傍には、複数の研削砥石48aによって被加工物を研削する際に純水等の液体(加工液)を加工点に供給する加工液供給ノズル(不図示)が設けられている。
【0041】
上述した研削装置2の構成要素は、研削装置2に内蔵されたコントローラ50によって制御される(図1参照)。このコントローラ50は、プロセッサ50aとメモリ50bとを含む。プロセッサ50aは、例えば、CPU(Central Processing Unit)等によって構成される。
【0042】
また、メモリ50bは、例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)又はSRAM(Static Random Access Memory)等の揮発性メモリと、SSD(Solid State Drive)(NAND型フラッシュメモリ)又はHDD(Hard Disk Drive)(磁気記憶装置)等の不揮発性メモリとによって構成される。
【0043】
そして、メモリ50bは、プロセッサ50aにおいて用いられる各種の情報(データ及びプログラム等)を記憶する。例えば、メモリ50bには、研削装置2において被加工物の加工が適切に実施されているか否か、具体的には、水温計46によって測定された温度が適切な範囲にあるか否かの判定に利用される温度のしきい値が記憶されている。このしきい値は、冷却水循環装置44から冷却水路38に供給される冷却水の温度よりも、例えば、2℃~5℃だけ高い温度に設定される。
【0044】
また、プロセッサ50aは、例えば、メモリ50bに記憶されたプログラムを読みだして実行するように研削装置2の構成要素を制御する。例えば、プロセッサ50aは、被加工物を加工中に、冷却水路38への冷却水の供給条件を調整するとともに被加工物の加工を継続させるか否かを選択するためのプログラムをメモリ50bから読み出して実行するように研削装置2の構成要素を制御する。
【0045】
上述した研削装置2において被加工物を研削する際には、まず、被加工物がチャックテーブル6の保持面6aに置かれた状態で、チャックテーブル6に連結されている吸引源を動作させる。これにより、被加工物がチャックテーブル6によって保持される。
【0046】
次いで、スピンドル34とともに研削ホイール48を回転させた時の複数の研削砥石48aの軌跡がチャックテーブル6の保持面6aの中心と重なるように、チャックテーブル6に連結されているX軸方向移動機構を動作させる。
【0047】
次いで、エア供給路30cを介してエア供給源32から供給されるエアをハウジング30のエア噴出口30d,30e,30fからスピンドル34に向かって噴出する。これにより、ハウジング30とスピンドル34との間にエアベアリングが形成される。
【0048】
次いで、チャックテーブル6を回転させるようにチャックテーブル6に連結されている回転駆動源を動作させ、かつ、スピンドル34とともに研削ホイール48を回転させるようにモータ36を動作させる。次いで、所定の温度の冷却水が所定の流量で給水口40を通って冷却水路38に供給されるように、冷却水循環装置44を動作させる。
【0049】
次いで、複数の研削砥石48aを被加工物に接触させるように、Z軸方向移動機構14を動作させる。具体的には、Z軸移動プレート18を下降させるようにモータ22を動作させる。また、複数の研削砥石48aと被加工物との接触界面に加工液供給ノズルから加工液を供給する。
【0050】
これにより、被加工物が研削される。この時、モータ36に供給される電流が、例えば、複数の研削砥石48aの摩耗等に起因して大きくなることがある。この場合、モータ36とともにスピンドル34が加熱されることに起因して被加工物の加工精度が悪化するおそれがある。
【0051】
この点を踏まえて、プロセッサ50aは、水温計46によって測定された温度がメモリ50bに記憶されたしきい値を超えない場合に、冷却水循環装置44から冷却水路38に供給される冷却水の供給条件を変更することなく、被加工物の研削を継続するように、研削装置2の構成要素を制御する。
【0052】
他方、水温計46によって測定された温度がメモリ50bに記憶されたしきい値を超える場合には、プロセッサ50aは、例えば、冷却水循環装置44から冷却水路38への冷却水の供給が停止されるように当該供給条件を変更するとともに被加工物の研削が停止されるように、研削装置2の構成要素を制御する。
【0053】
あるいは、この場合には、プロセッサ50aは、冷却水循環装置44から冷却水路38へ供給される冷却水の流量を増加させ、かつ/又は、その温度を低下させるように当該供給条件を変更するとともに被加工物の加工を継続させるように、研削装置2の構成要素を制御してもよい。
【0054】
上述した研削装置2は、冷却水路38から排出された冷却水の温度を測定するための水温計46を備える。そして、この研削装置2においては、被加工物を加工中に水温計46によって測定された温度がしきい値を超えない場合に、冷却水路38への冷却水の供給条件を変更することなく、被加工物の加工が継続される。
【0055】
ここで、当該測定された温度は、被加工物を加工中のスピンドル34の温度を反映した温度となる。そのため、この研削装置2においては、スピンドル34の加熱が抑制されていることを確認した状態で被加工物の加工が継続される。その結果、この研削装置2においては、スピンドル34の加熱に起因した被加工物の加工精度の悪化を抑制することが可能である。
【0056】
なお、上述した内容は本発明の一態様であって、本発明は上述した内容に限定されない。例えば、本発明は、その先端部に加工具が装着されているスピンドルと、このスピンドルを回転させるためのモータと、を備える加工装置であればよく、例えば、切削装置であってもよい。
【0057】
また、本発明の加工装置においては、冷却水循環装置44は必須の構成要素ではない。具体的には、本発明においては、モータ36及びスピンドル34を冷却するために利用された冷却水が再利用されることなく廃棄されてもよい。あるいは、本発明は、独立して存在する冷却水を循環するための機構に接続可能であり、この機構に接続された状態で被加工物を加工する加工装置であってもよい。
【0058】
また、本発明においては、被加工物の加工条件に応じて、研削装置2において被加工物の加工が適切に実施されているか否かに利用されるしきい値が設定されてもよい。例えば、研削装置2において被加工物を研削する際の研削ホイール48の下降速度(研削送り速度)が大きい条件(前者の条件)においては、それが小さい条件(後者の条件)と比較して、被加工物を研削中にモータ36に供給される電流も大きくなりやすい。
【0059】
そのため、前者の条件で被加工物を研削する際に設定されるしきい値は、後者の条件で被加工物を研削する際に設定されるしきい値よりも大きくなってもよい。この場合、メモリ50bには、被加工物を加工するための複数の加工条件と、複数の加工条件毎に設定されるしきい値と、が紐付けて記憶されてもよい。
【0060】
なお、被加工物の加工条件に含まれるパラメータとしては、研削送り速度以外に、例えば、被加工物の材質、チャックテーブル6の回転速度、スピンドル34の回転速度及び加工液供給ノズルから供給される加工液の流量等が挙げられる。
【0061】
その他、上述した実施形態にかかる構造及び方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0062】
2 :研削装置
4 :基台(4a:溝)
6 :チャックテーブル(6a:保持面)
8 :テーブルカバー
10:防塵防滴カバー
12:支持構造
14:Z軸方向移動機構
16:ガイドレール
18:Z軸移動プレート
20:ねじ軸
22:モータ
24:研削ユニット
26:保持部材
28:スピンドルユニット
30:ハウジング(30a:底壁、30b:貫通孔、30c:エア供給路)
(30d,30e,30f:エア噴出口)
32:エア供給源
34:スピンドル(34a:先端部、34b:軸部、34c:フランジ部)
36:モータ(36a:ロータ、36b:ステータ)
38:冷却水路
40:給水口
42:排水口
44:冷却水循環装置
46:水温計
48:研削ホイール(48a:研削砥石、48b:ホイール基台)
50:コントローラ(50a:プロセッサ、50b:メモリ)
図1
図2