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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011527
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】作物の高さ計測器
(51)【国際特許分類】
   G01B 21/02 20060101AFI20240118BHJP
   G01B 11/02 20060101ALI20240118BHJP
   A01G 7/00 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
G01B21/02 Z
G01B11/02 Z
A01G7/00 603
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022113564
(22)【出願日】2022-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100133547
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 基文
(72)【発明者】
【氏名】坂本 利弘
【テーマコード(参考)】
2F065
2F069
【Fターム(参考)】
2F065AA24
2F065BB05
2F065DD06
2F065FF41
2F065GG04
2F065MM06
2F065PP01
2F065QQ25
2F065SS03
2F065SS13
2F069AA42
2F069BB40
2F069DD16
2F069DD25
2F069GG04
2F069GG07
2F069GG09
2F069HH09
2F069JJ04
2F069MM04
2F069PP01
2F069QQ05
2F069QQ08
(57)【要約】
【課題】地面から葉先までの間に発射した波動を遮る葉や、発射した波動を反射する水面があっても、作物の地上部の高さを測れる作物の高さ計測器を提供する。
【解決手段】草丈や草高のような作物の地上部の高さを測る作物の高さ計測器1を、非接触距離計4と反射板5が、計測面3aの向きとは反対に向けて可視レーザー光を発射するように配置し、可視レーザー光の道筋に、可視レーザー光を遮る葉や可視レーザー光を反射する水面が入り込まないようにして、下草が生い茂っていたり、水が張られていたりしても、草丈や草高を測れようにする。また、非接触距離計4に、計測結果を記録する記録部43を設け、計測結果を野帳に記入しなくてすむようにして、一人で草丈や草高を測れようにする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
草丈や草高のような作物の地上部の高さを測る作物の高さ計測器であって、
支柱と、
前記支柱に擦り動くように支持された計測面を有する当て板と、
前記支柱に当て板と連動して擦り動くように支持された、空気中で発射した波動の反射を用いた非接触距離計と、
前記支柱の一端側に固定された、波動を反射する反射板とからなり、
前記非接触距離計と反射板が、計測面の向きとは反対に向けて波動を発射するように配置されていることを特徴とする作物の高さ計測器。
【請求項2】
前記支柱が、支柱の一端又は両端の端部に、台座を備えることを特徴とする請求項1に記載の作物の高さ計測器。
【請求項3】
前記非接触距離計が、計測結果を記録する記録部を備えていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の作物の高さ計測器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、草丈や草高(そうこう)のような作物の地上部の高さを測る作物の高さ計測器に関し、空気中で発射した波動の反射を用いた非接触の距離計測技術を採用しながら、土地の表面(以下、地面という。)から葉先までの間に発射した波動を遮る葉や、発射した波動を反射する水面があっても、作物の地上部の高さを測れる作物の高さ計測器に関する。
【背景技術】
【0002】
作物の高さ計測器としては、竹やプラスチックなどを細長い板状に作り、目盛りを付けた物差し(以下、竹尺という。)が実際に使われている。竹尺は、例えばイネの草丈を測る場合には、片手で竹尺を地面に立てて持って、もう一方の手で竹尺とイネの株を一緒に軽く握って、イネの株を葉先にしごいて垂れている葉を垂直に起こし、地面から一番高い葉を見つけて、その葉先の高さの目盛りを読んで草丈を測っている。
【0003】
別の作物の高さ計測器としては、空気中で発射した波動の反射を用いた非接触の距離計測技術を採用した草丈計測装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この草丈計測装置では、非接触距離計と地面に置く土台(特許文献1では、ベースという。)との間であって水面上に位置する既知の高さに、波動を反射させる反射部を備えていて、非接触距離計から反射部までの距離を計測して、この計測値に既知の高さを足してイネの草丈を算出できるようになっている。
【0004】
作物の高さ計測器ではないものの、非接触距離計から下に向けて、波動を発射する身長測定装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。この身長測定装置では、非接触距離計を既知の高さに固定することで、頭頂部に軽く着くまでゆっくり降ろした当て板(引用文献2では、足プラットホームという。)の移動距離を計測して、既知の高さから当て板の移動距離を引いて身長を算出できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-151301号公報(段落0008、図5
【特許文献2】特表2019-517660号公報(段落0016、図5
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記実際に使われている竹尺では、目盛りを読んでいるために、誤差や読み間違いが生じやすい。特に、作物を栽培する田畑は、株が混み合っていたり、地面に凹凸があったりして、目盛りを正面から読みにくいために、視差による誤差が生じやすくなってしまう。
【0007】
また、前記実際に使われている竹尺では、竹尺が細長い板状のものであるために、竹尺の先端が土の中に入り込むことがあり、正確に測れないことがある。
【0008】
さらに、前記実際に使われている竹尺では、片手で竹尺を持って、もう一方の手で竹尺とイネの株を一緒に握るために、両手がふさがってしまう。そのため、前記実際に使われている竹尺では、高さを野帳に記入する人と二人一組で計測作業を行うことが多い。
【0009】
前記特許文献1に係る草丈計測装置では、非接触距離計から水面上に位置する反射部までの距離を計測しているところ、非接触距離計から下に向けて波動を発射しているために、波動の道筋に下の方にある葉が入り込んでしまいやすく、発射した波動が遮られてしまう。そのため、前記特許文献1に係る草丈計測装置では、作物の株と株の間が狭かったり、下草が生い茂っていたりすると、作物の地上部の高さを測れないことがある。
【0010】
また、前記特許文献1に係る草丈計測装置では、地面に置く土台が支柱を自立するように支えているために、手で持つ竹尺と比べて大がかりな装置になってしまう。特に、前記特許文献1に係る草丈計測装置では、土台の幅が広いために、株が混み合っている田畑に持ち込みにくく、無理に持ち込もうとすると周囲の株を押し倒してしまう。
【0011】
前記特許文献2に係る身長測定装置では、非接触距離計を室内の壁に固定するようにしているために、固定する壁のない野外では設置することができない。
【0012】
そこで、この発明では、前記した課題を解決し、地面から葉先までの間に発射した波動を遮る葉や、発射した波動を反射する水面があっても、作物の地上部の高さを測れる作物の高さ計測器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するため、請求項1に係る発明では、草丈や草高のような作物の地上部の高さを測る作物の高さ計測器を、支柱と、計測面を有する当て板と、当て板と連動して擦り動く、空気中で発射した波動の反射を用いた非接触距離計と、支柱の一端側に固定された、波動を反射する反射板とで構成した。そして、非接触距離計と反射板を、計測面の向きとは反対に向けて波動を発射するように配置した。
【0014】
請求項2に係る発明では、支柱の一端又は両端の端部に、台座を備えるようにした。
【0015】
請求項3に係る発明では、非接触距離計に、計測結果を記録する記録部を備えるようにした。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る発明によれば、草丈や草高のような作物の地上部の高さを測る作物の高さ計測器を、非接触距離計と反射板が、計測面の向きとは反対に向けて波動を発射するように配置したので、波動の道筋に、波動を遮る葉や波動を反射する水面が入り込まないようにすることができる。
【0017】
ここで、請求項1に係る発明によれば、波動の道筋に、波動を遮る葉や波動を反射する水面が入り込まないことを詳しく説明する。この発明に係る作物の高さ計測器は、身長計のように、計測面が頭頂部のような一番高い部分に軽く着くまで、当て板をゆっくり降ろして計測面の高さを測るものであり、計測面を一番高い葉の葉先に合わせると、計測面の向きとは反対の、計測面の裏側には葉が存在しなくなる。そして、請求項1に係る発明によれば、計測面の向きとは反対に、天に向けて波動を発射するため、波動の道筋に、水面も存在しなくなる。そのため、請求項1に係る発明によれば、非接触距離計から計測面の向きとは反対に向けて、言い換えると上に向けて波動を発射するので、作物の株と株の間が狭かったり、下草が生い茂っていたりしていても、下の方にある葉によって波動が遮られることがない。そこで、請求項1に係る発明によれば、非接触距離計から発射した波動が下の方にある葉によって遮られることがないので、非接触の距離計測技術を作物の地上部の高さを測る手段に適用することができる。
【0018】
また、請求項1に係る発明によれば、非接触距離計から計測面の向きとは反対に向けて、言い換えると上に向けて波動を発射するので、水田のように発射した波動を反射する水面があっても、水面によって波動が反射することがない。そこで、請求項1に係る発明によれば、イネのように水底からの高さを測る場合にも、非接触距離計から発射した波動が水面に反射してしまうことがないので、イネのような水田作物の草丈や草高を正確に測ることもできる。
【0019】
さらに、請求項1に係る発明によれば、非接触の距離計測技術を作物の地上部の高さを測る手段に適用したので、計測をデジタル化することができる。そのため、請求項1に係る発明によれば、竹尺で生じやすい誤差や読み間違いをなくせるので、計測の正確さを実現することができる。合わせて、請求項1に係る発明によれば、計測をデジタル化して0.1mm単位で計測できるので、目盛りが1mm単位の竹尺に対して、計測の精緻化も実現することができる。
【0020】
加えて、請求項1に係る発明によれば、支柱にすべての部材を取り付けたので、竹尺と同じ細長い形状になる。そのため、請求項1に係る発明によれば、竹尺と同じ要領で、株が混み合っている田畑に持ち込むことができる。また、請求項1に係る発明によれば、計測面を一番高い葉の葉先に合わせて測るので、目盛りを一番高い葉の葉先に合わせる竹尺と同じ手順で測ることもできる。そこで、請求項1に係る発明によれば、竹尺と形状と手順が同じなので、竹尺に慣れ親しんだ人でも使いやすく、竹尺に代わるものとして導入しやすい。
【0021】
そのほかにも、請求項1に係る発明によれば、非接触距離計から計測面の向きとは反対に向けて、言い換えると上に向けて波動を発射するので、波動は下向きの反射板に当たる。そのため、請求項1に係る発明によれば、波動は下向きの反射板に、言い換えると太陽光が直接当たらない、日傘に例えると内側の日陰になる部分に当たるので、明るい野外で使っても、可視レーザー光が反射板に正しく当たっていることを確認しながら測ることができる。
【0022】
また、請求項1に係る発明によれば、非接触距離計と反射板との間で波動が反射するので、波動が非接触距離計と反射板との間から外れることない。そのため、請求項1に係る発明によれば、波動、例えば可視レーザー光は必ず反射板に当たるので、誤って可視レーザー光が目に当たる事故も起こらない。
【0023】
請求項2に係る発明によれば、支柱の一端又は両端の端部に台座を備えるようにしたので、例えば、支柱の地面に立てる側(がわ)の端部に台座を取り付けると、支柱の端部が土の中に入り込みにくくなる。そのため、請求項2に係る発明によれば、地面が柔らかく耕された畑や、ぬかるんだ田でも、草丈や草高を正確に測ることができる。
【0024】
また、請求項2に係る発明によれば、例えば、支柱の両端の端部に台座を取り付けると、支柱を横に倒した状態で置くことができる。そこで、請求項2に係る発明によれば、支柱を横に倒した状態で置いて、抜き取った作物の草丈を測ることもできる。
【0025】
請求項3に係る発明によれば、非接触距離計に、計測結果を記録する記録部を備えるようにしたので、竹尺のように計測結果を野帳に記入しなくてすむ。そのため、請求項3に係る発明によれば、一人(ワンオペレーションともいう。)で計測作業ができるので、計測の省力化を実現することができる。
【0026】
以上、請求項1から請求項3に係る発明に分けてこの発明の効果について説明したところ、この発明によれば、測り方は竹尺と同じままで、計測をデジタル化したので、竹尺を使った過去のデータと比較したり、竹尺を使った過去のデータを引き継いだりすることもできる。また、この発明によれば、慣れ親しんだ竹尺感覚で使うことができるので、アナログからデジタルへと、ロボット技術や情報通信技術(ICT)を活用したスマート農業への過渡期を埋める技術として、スマート農業への橋渡し役になることも期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】実施形態に係る作物の高さ計測器の斜視図である。
図2】(a)は、実施形態に係る作物の高さ計測器で作物の高さを算出する仕組みの説明図のうち、初期設定時の説明図であり、(b)は、計測時の説明図である。
図3】実施形態に係る作物の高さ計測器の使用状態を示す斜視図である。
図4】(a)は、他の実施形態に係る作物の高さ計測器の使用状態を示す斜視図のうち、計測前の斜視図であり、(b)は、計測時の斜視図である。
図5】(a)は、実施形態に係る作物の高さ計測器の他の使用状態を示す斜視図のうち、ピンポイントで高さを測るときの斜視図であり、(b)は、長尺作物の高さを測るときの斜視図である。
図6】実施形態に係る作物の高さ計測器の他の使用状態を示す斜視図のうち、短尺(たんじゃく)作物の高さを測るときの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
まず、この発明の創作の基礎となる事項について簡単に説明する。出願人は、我が国の農業と食品産業の発展のため、基礎から応用まで幅広い分野で研究開発を行う独立行政法人で、この分野における我が国最大の研究機関である。その中で、発明者の所属する農業環境研究部門は、環境変動に柔軟に対応するための応用技術や環境保全を重視した持続可能な農業生産に資する技術を開発し発信している。
【0029】
発明者の研究グループでは、人工衛星、航空機、ドローンなどのリモートセンシング情報と地図を利用した研究を行っている。その中で、発明者は、人工衛星などの画像データを解析して、作物の生育状態などを時系列で比較することに取り組んできた。
【0030】
発明者は、画像データを解析する中で、画像データを農業に活用するには、作物の生育経過を観察したり、作物の生育状態を過去のものと比較したりできるように、作物の生育状態を判断する指標を蓄積し共有化して、社会全体で活用できるようにすることが必要だと考えるようになった。
【0031】
ここで、草丈は、作物の生育状態を判断する指標として優れた形質で、生育状態を判断したり、品種を選抜したりする上で、調査を必要とする場面が極めて多く、発明者も日頃から草丈を調査してきた。発明者は、草丈を調査する中で、デジタル化が進む令和においても、竹尺の目盛りを読んで、読んだ目盛りを野帳に手書きする方法が、100年以上も、例えば奈良時代から変わっていないことに疑問を感じ、「竹尺からの解放」を目標に、竹尺に代わる作物の高さ計測器の開発に取り組み始めた。
【0032】
そして、発明者は、非接触の距離計測技術は、発射した波動を遮る葉や、発射した波動を反射する水面がある田畑では使えないと考えられているが、対象物に向けて波動を発射するという非接触の距離計測技術の常識にとらわれない手段を取れば、対象物との間に下草が生い茂っていたり、水が張られていたりしても、正確に計測できることを見いだし、この発明を創作するに至ったものである。
【0033】
次に、この発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、実施形態に係る作物の高さ計測器の斜視図である。図1に示すように、作物の高さ計測器1は、支柱2と、計測面3aを有する当て板3と、非接触距離計4と、反射板5と、台座6とで構成されていて、ここでは、全球測位衛星システム(以下、GNSSともいう。)からの信号を受信するGNSS受信機7を備えている。そして、実施形態に係る作物の高さ計測器1では、非接触距離計4と反射板5が、計測面3aの向きとは反対に向けて波動を発射するように配置されている。
【0034】
支柱2は、手で持てるほどの細長い棒で、ここでは1.5mほどの長さで、50cmほどの長さに3本に分けることができるようになっている。
【0035】
当て板3は、薄く平たい板で、計測する対象物に軽く当てる側の面を計測面3aと呼んでいる。当て板3は、ここでは平たい板をL字に折り曲げた形状で、非接触距離計4に取り外せるように取り付けられるよう、ねじ穴が形成させている。
【0036】
非接触距離計4は、計測部41と、制御部42と、記録部43とで構成されていて、ここでは、計測ボタン45を備えた取っ手が46が設けられている。非接触距離計4は、磁石を介して支柱2に、手の力で擦り動かせるように取り付けられている。そして、実施形態に係る作物の高さ計測器1では、計測部41で計測した計測値を、液晶画面に表示するとともに、制御部42が管理している日時と位置情報と合わせて、記録部43に記録できるようになっている。
【0037】
計測部41は、光や超音波などの波動を利用して対象物との距離を計測する部分で、対象物に波動を当て、返ってきた波動を解析して対象物までの距離を算出するものである。計測部41は、ここでは可視レーザー光を利用したもので、レーザー出力口41aと受光レンズ41bが、計測面3aの向きとは反対に向けられている。
【0038】
反射板5は、光や超音波などの波動を反射する薄く平たい板で、ここでは円形の板で、中心の孔(あな)に支柱2を通して、支柱2の一端側に、より詳しくは、支柱2を地面に立てて持ったときに上側になる端部近くに固定されている。
【0039】
台座6は、支柱2を一時的に置いておくための台で、ここでは円形の板で、中央の穴に支柱2を差し込んで、支柱2の一端の端部に、より詳しくは、支柱2を地面に立てて持ったときに地面と接する側の端部に取り外せるように取り付けられている。
【0040】
GNSS受信機7は、衛星が発する電波を受信する装置であり、ここでは支柱2に取り外せるように取り付けられるようになっている。
【0041】
図2の(a)は、実施形態に係る作物の高さ計測器1で作物の高さを算出する仕組みの説明図のうち、初期設定時の説明図である。図2の(a)に示すように、実施形態に係る作物の高さ計測器1では、測り始める前に、計測面3aが基準の高さ、例えば高さ50cmのときの非接触距離計4から、より正しくはレーザー出力口41aと受光レンズ41bの位置から反射板5までの距離(z1)を計測しておく。
【0042】
図2の(b)は、実施形態に係る作物の高さ計測器1で作物の高さを算出する仕組みの説明図のうち、計測時の説明図である。図2の(b)に示すように、実施形態に係る作物の高さ計測器1では、作物の高さ(y)を測るときには、当て板3を作物に軽く着くまでゆっくり降ろして、計測面3aが作物に軽く着いたときの非接触距離計4から、より正しくはレーザー出力口41aと受光レンズ41bの位置から反射板5までの距離(z2)を計測する。
【0043】
そして、実施形態に係る作物の高さ計測器1では、下記の式のように、基準の高さである50cmに、高さ50cmのときの非接触距離計4から反射板5までの距離(z1)から、作物の高さを測ったときの非接触距離計4から反射板5までの距離(z2)を引いた値(Δz)を足して、作物の高さ(y)を算出するようになっている。

作物の高さ(y)=50cm+Δz=50cm+(z1-z2)
【0044】
実施形態に係る作物の高さ計測器1では、計測面3aが基準の高さ、例えば高さ50cmのときの非接触距離計4から反射板5までの距離を基準にするので、言い換えると支柱2ごとに、ある高さの非接触距離計4から反射板5までの距離を基準にするので、支柱2の長さが支柱ごとに違っていても、反射板5の固定位置が支柱ごとにずれても、正確に計測することができる。また、実施形態に係る作物の高さ計測器1では、ある高さの非接触距離計4から反射板5までの距離を基準にするので、支柱2に台座6を取り付けたり、取り外したりして支柱2の長さが変わっても、支柱2の長さが変わるたびに、ある高さの非接触距離計4から反射板5までの距離を計測してから、作物の高さを測るようにすれば、草丈や草高を正確に測れる。
【0045】
図3は、実施形態に係る作物の高さ計測器1の使用状態を示す斜視図である。図3に示すように、実施形態に係る作物の高さ計測器1では、作物の高さ、例えばイネRの草丈を測るときには、片手で作物の高さ計測器1を地面に立てて持って、もう一方の手で支柱2とイネRの株を一緒に軽く握って、イネRの株を葉先にしごいて垂れている葉を垂直に起こす。そして、イネRの葉を垂直に起こしておいて、計測面3aが地面から一番高い葉の葉先に軽く着くまで当て板3をゆっくり降ろして、計測ボタン45(図1参照)を押す。実施形態に係る作物の高さ計測器1では、計測面3aを一番高い葉の葉先に合わせて測るので、目盛りを一番高い葉の葉先に合わせる竹尺と同じ手順になるため、竹尺に慣れ親しんだ人でも使いやすい。
【0046】
また、図3に示すように、実施形態に係る作物の高さ計測器1では、計測ボタン45(図1参照)を押して計測、言い換えると計測をデジタル化しているため、竹尺で生じやすい誤差や読み間違いがなく、目盛りが1mm単位の竹尺に対して0.1mm単位で測れる。
【0047】
さらに、図3に示すように、実施形態に係る作物の高さ計測器1では、支柱2にすべての部材が取り付けられているために、竹尺と同じ細長い形状である。そのため、実施形態に係る作物の高さ計測器1では、竹尺と同じ要領で、株が混み合っている田畑に持ち込める。
【0048】
加えて、図3に示すように、実施形態に係る作物の高さ計測器1では、非接触距離計4と反射板5が、計測面3aの向きとは反対に向けて可視レーザー光を発射するように配置されているため、可視レーザー光の道筋に、可視レーザー光を遮る葉や可視レーザー光を反射する水面が入り込まない。そのため、実施形態に係る作物の高さ計測器1では、イネRの株と株の間が狭かったり、下草が生い茂っていたりしていても、下の方にある葉によって可視レーザー光が遮られることがない。また、実施形態に係る作物の高さ計測器1では、水田のように発射した可視レーザー光を反射する水面があっても、水面によって可視レーザー光が反射することもない。
【0049】
また、図3に示すように、実施形態に係る作物の高さ計測器1では、支柱2の一端の端部に、より詳しくは作物の高さ計測器1を地面に立てて持ったときに地面と接する側の端部に台座6が取り付けられているため、支柱2の端部が土の中に入り込みにくい。そのため、実施形態に係る作物の高さ計測器1では、地面が柔らかく耕された畑や、ぬかるんだ田でも、イネRの草丈や草高を正確に測れる。
【0050】
さらに、図3に示すように、実施形態に係る作物の高さ計測器1では、非接触距離計4に、計測結果を記録する記録部43(図1参照)を備えるために、竹尺のように計測結果を野帳に記入しなくてすむ。そのため、実施形態に係る作物の高さ計測器1では、一人で草丈や草高を測れる。
【0051】
そのほかにも、実施形態に係る作物の高さ計測器1では、非接触距離計4から計測面3aの向きとは反対に向けて、言い換えると上に向けて可視レーザー光を発射するので、可視レーザー光は下向きの反射板5に当たる。そのため、実施形態に係る作物の高さ計測器1では、可視レーザー光は下向きの反射板5に、言い換えると太陽光が直接当たらない、日傘に例えると内側の日陰になる部分に当たるので、明るい野外で使っても、可視レーザー光が反射板5に正しく当たっていることを確認しながら測れる。
【0052】
また、実施形態に係る作物の高さ計測器1では、非接触距離計4と反射板5との間で可視レーザー光が反射するので、可視レーザー光が非接触距離計4と反射板5との間から外れることない。そのため、実施形態に係る作物の高さ計測器1では、可視レーザー光は必ず反射板5に当たるので、誤って可視レーザー光が目に当たる事故も起こらない。
【0053】
図4は、他の実施形態に係る作物の高さ計測器の使用状態を示す斜視図であり、図4の(a)は、計測前の斜視図であり、図4の(b)は、計測時の斜視図である。図4に示すように、他の実施形態に係る作物の高さ計測器1′では、支柱2の両端の端部に台座6′,6′が取り外せるように取り付けられている。図4に示すように、他の実施形態に係る作物の高さ計測器1′では、支柱2の両端の端部に台座6′,6′取り付けられているために、支柱2を横に倒した状態で置ける。そのため、他の実施形態に係る作物の高さ計測器1′では、支柱2を横に倒した状態で置いて、抜き取ったイネRの草丈を測れる。
【0054】
このように、他の実施形態に係る作物の高さ計測器1′では、支柱2の両端の端部に台座6′,6′を取り付けて、作物を抜き取っての破壊計測にも、台座6′,6′を台座6とGNSS受信機7に交換して(図3参照)、作物を傷つけない非破壊計測にも使える。
【0055】
図5の(a)は、実施形態に係る作物の高さ計測器1の他の使用状態を示す斜視図のうち、ピンポイントで高さを測るときの斜視図である。図5の(a)に示すように、ピンポイントで高さを測るときには、当て板3(図3参考)を、先端が細い当て板3′に交換する。実施形態に係る作物の高さ計測器1の他の使用状態では、当て板3′の先端が細いために、例えば地面から穂首までの長さである桿長(かんちょう)など、極小のねらい目に計測面3a′を合わせやすい。
【0056】
図5の(b)は、実施形態に係る作物の高さ計測器1の他の使用状態を示す斜視図のうち、長尺作物の高さを測るときの斜視図である。図5の(b)に示すように、長尺作物の高さを測るときには、当て板3(図3参考)を、縦に長い当て板3″に交換する。実施形態に係る作物の高さ計測器1の他の使用状態では、当て板3″が縦に長いために、例えばソルガムSのように草高が2mを超えるような長尺作物の高さ計測器としても使える。このように、実施形態に係る作物の高さ計測器1では、当て板3(図3参照)が非接触距離計4に取り外せるように取り付けられるようになっているために、当て板3を交換して、一台の作物の高さ計測器1で、ピンポイントで作物の高さを測ったり、長尺作物の高さを測ったりできる。
【0057】
図6は、実施形態に係る作物の高さ計測器1の他の使用状態を示す斜視図のうち、短尺作物の高さを測るときの斜視図である。図6に示すように、短尺作物の高さを測るときには、作物の高さ計測器1(図1参照)を地面に立てて持ったときに下側にあたる支柱を外して50cmほどの長さに短くなっている。実施形態に係る作物の高さ計測器1の他の使用状態では、支柱2を短くして、ホウレンソウsやハクサイなどの短尺作物の草高を測れる。このように、実施形態に係る作物の高さ計測器1では、支柱2(図1参照)が50cmほどの長さに分けられるようになっているために、支柱を外して、一台の作物の高さ計測器1で、イネの草丈を測ったり、ホウレンソウやハクサイなどの草高を測ったりできる。
【0058】
以上、この発明の実施形態について説明したが、この発明は前記実施形態には限定されない。例えば、実施形態に係る作物の高さ計測器1では、波動を可視レーザー光と説明したところ、近赤外レーザー光や超音波でもかまわない。
【0059】
また、実施形態に係る作物の高さ計測器1では、非接触距離計4に当て板3が取り付けられていると説明したところ、当て板3と非接触距離計4が連動して擦り動けば、当て板3と非接触距離計4が分かれて離れていてもかまわない。
【0060】
さらに、実施形態に係る作物の高さ計測器1では、作物をイネやホウレンソウなどを例示して説明したところ、田畑に栽培する農作物に限られず、植物であればかまわない。
【符号の説明】
【0061】
1 作物の高さ計測器
2 支柱
3 当て板
3a 計測面
4 非接触距離計
41 計測部
41a レーザー出力口
41b 受光レンズ
42 制御部
43 記録部
5 反射板
6 台座
図1
図2
図3
図4
図5
図6