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特開2024-115301半導体光デバイスおよびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115301
(43)【公開日】2024-08-26
(54)【発明の名称】半導体光デバイスおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/22 20060101AFI20240819BHJP
   H01S 5/227 20060101ALI20240819BHJP
【FI】
H01S5/22
H01S5/227
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023020922
(22)【出願日】2023-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】八尾 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】吉田 匡廣
【テーマコード(参考)】
5F173
【Fターム(参考)】
5F173AA22
5F173AA48
5F173AD15
5F173AD30
5F173AF92
5F173AH14
5F173AP43
5F173AR93
5F173AS01
(57)【要約】
【課題】例えば、実装性に優れたような、新規な改善された半導体光デバイスおよびその製造方法を得る。
【解決手段】半導体光デバイスは、第一方向と交差して広がる基板と、前記基板上で前記第一方向に積層された、コア層を含む複数の半導体層を有する積層部と、を備え、前記積層部は、前記第一方向と交差した第二方向に離れて設けられた、互いに異なる第一導波路構造と第二導波路構造とを有し、前記第一導波路構造と前記第二導波路構造との間に、前記積層部の表面側から前記基板側に延びた溝が形成されており、前記溝の底部に、当該溝に沿って延びるとともに前記第一方向に突き出た突起部を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一方向と交差して広がる基板と、
前記基板上で前記第一方向に積層された、コア層を含む複数の半導体層を有する積層部と、
を備え、
前記積層部は、前記第一方向と交差した第二方向に離れて設けられた、互いに異なる第一導波路構造と第二導波路構造とを有し、
前記第一導波路構造と前記第二導波路構造との間に、前記積層部の表面側から前記基板側に延びた溝が形成されており、
前記溝の底部に、当該溝に沿って延びるとともに前記第一方向に突き出た突起部を有する
半導体光デバイス。
【請求項2】
前記第一導波路構造と前記第二導波路構造とが、前記第一方向および前記第二方向と交差した第三方向に延びている
請求項1に記載の半導体光デバイス。
【請求項3】
前記第一導波路構造と前記第二導波路構造の少なくとも一方が折り返し構造を有する
請求項1に記載の半導体光デバイス。
【請求項4】
前記第一導波路構造はアクティブ機能を有し、前記第二導波路構造はパッシブ機能を有する
請求項1に記載の半導体光デバイス。
【請求項5】
前記第一導波路構造は埋め込みメサ構造を有し、前記第二導波路構造はハイメサ構造を有する
請求項1に記載の半導体光デバイス。
【請求項6】
前記溝の側壁および底面に沿って延びた配線をさらに備え、
前記第一導波路構造および前記第二導波路構造の少なくとも一方が、前記第一方向における前記積層部の端部側に設けられて前記配線と電気的に接続する電極を有する
請求項1に記載の半導体光デバイス。
【請求項7】
前記溝に掛け渡された配線をさらに備え、
前記第一導波路構造および前記第二導波路構造の少なくとも一方が、前記第一方向における前記積層部の端部側に設けられて前記配線と電気的に接続する電極を有する
請求項1に記載の半導体光デバイス。
【請求項8】
前記積層部は、前記第一導波路構造を前記第二方向において挟むように設けられた2つの突当部を備え、
前記2つの突当部は、前記第一導波路構造のメサの積層構造と同じ積層構造を有する
請求項1に記載の半導体光デバイス。
【請求項9】
第一方向と交差して広がる基板上に、前記第一方向に積層された、コア層を含む複数の半導体層を有する積層部を形成する積層部形成工程と、
前記積層部の表面側から前記基板側に延びるように溝を形成する溝形成工程と、
を備え、
前記積層部形成工程では、前記第一方向と交差した第二方向に離れた位置に、互いに異なる第一導波路構造および第二導波路構造のそれぞれの基となる二つのプレ構造を形成し、
前記溝形成工程では、前記二つのプレ構造の間の領域の前記積層部の表面に形成された突起部を含む領域に溝を形成する
半導体光デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体光デバイスおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、埋め込みメサ構造の導波路とハイメサ構造の導波路のような、導波路構造が互いに異なる複数の導波路が一つの基板上に集積された半導体光デバイスが、知られている(例えば、特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2016/152274号
【特許文献2】特開2021-27314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の半導体光デバイスは、プラットフォームにフリップチップで実装がされたり、表面に温度調節素子やヒートシンクなどの他の素子の実装をしたりする場合がある。しかしながら、本発明者による鋭意検討によれば、従来のこの種の半導体光デバイスには、基板の裏面とは反対側の表面に突起が形成されている場合がある。このような突起があると、上記実装において実装対象との密着性を悪化させたり、実装した半導体光デバイスの高さが予定された高さよりもずれたりする虞がある。例えば、温度調節素子との密着性の悪化は半導体光デバイスの放熱性の低下を招く虞がある。また、高さのずれはプラットフォーム上の他の素子との光学的な位置ずれを招く虞がある。また、突起の高さが高すぎる場合は、上記実装が不可能になる虞もある。
【0005】
そこで、本発明の課題の一つは、例えば、実装性に優れたような、新規な改善された半導体光デバイスおよびその製造方法を得ること、である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の半導体光デバイスは、例えば、第一方向と交差して広がる基板と、前記基板上で前記第一方向に積層された、コア層を含む複数の半導体層を有する積層部と、を備え、前記積層部は、前記第一方向と交差した第二方向に離れて設けられた、互いに異なる第一導波路構造と第二導波路構造とを有し、前記第一導波路構造と前記第二導波路構造との間に、前記積層部の表面側から前記基板側に延びた溝が形成されており、前記溝の底部に、当該溝に沿って延びるとともに前記第一方向に突き出た突起部を有する。
【0007】
前記第一導波路構造と前記第二導波路構造とが、前記第一方向および前記第二方向と交差した第三方向に延びてもよい。
【0008】
前記第一導波路構造と前記第二導波路構造の少なくとも一方が折り返し構造を有してもよい。
【0009】
前記第一導波路構造はアクティブ機能を有し、前記第二導波路構造はパッシブ機能を有してもよい。
【0010】
前記第一導波路構造は埋め込みメサ構造を有し、前記第二導波路構造はハイメサ構造を有してもよい。
【0011】
前記半導体光デバイスは、前記溝の側壁および底面に沿って延びた配線をさらに備え、前記第一導波路構造および前記第二導波路構造の少なくとも一方が、前記第一方向における前記積層部の端部側に設けられて前記配線と電気的に接続する電極を有してもよい。
【0012】
前記半導体光デバイスは、前記溝に掛け渡された配線をさらに備え、前記第一導波路構造および前記第二導波路構造の少なくとも一方が、前記第一方向における前記積層部の端部側に設けられて前記配線と電気的に接続する電極を有してもよい。
【0013】
前記積層部は、前記第一導波路構造を前記第二方向において挟むように設けられた2つの突当部を備え、前記2つの突当部は、前記第一導波路構造のメサの積層構造と同じ積層構造を有してもよい。
【0014】
本発明の半導体光デバイスの製造方法は、例えば、第一方向と交差して広がる基板上に、前記第一方向に積層された、コア層を含む複数の半導体層を有する積層部を形成する積層部形成工程と、前記積層部の表面側から前記基板側に延びるように溝を形成する溝形成工程と、を備え、前記積層部形成工程では、前記第一方向と交差した第二方向に離れた位置に、互いに異なる第一導波路構造および第二導波路構造のそれぞれの基となる二つのプレ構造を形成し、前記溝形成工程では、前記二つのプレ構造の間の領域の前記積層部の表面に形成された突起部を含む領域に溝を形成する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、例えば、実装性に優れたような、新規な改善された半導体光デバイスおよびその製造方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、第1実施形態の半導体光デバイスの例示的かつ模式的な断面図である。
図2図2は、第1実施形態の半導体光デバイスの例示的かつ模式的な平面図である。
図3図3は、第1実施形態の半導体光デバイスの製造方法を説明する図である。
図4図4は、第1実施形態の半導体光デバイスの製造方法を説明する図である。
図5図5は、第1実施形態の半導体光デバイスの製造方法を説明する図である。
図6図6は、第2実施形態の半導体光デバイスの例示的かつ模式的な断面図である。
図7図7は、第2実施形態の半導体光デバイスの例示的かつ模式的な平面図である。
図8図8は、第3実施形態の半導体光デバイスの例示的かつ模式的な断面図である。
図9図9は、第4実施形態の半導体光デバイスの例示的かつ模式的な断面図を含み、かつ半導体光デバイスの使用方法を説明する図である。
図10図10は、第4実施形態の半導体光デバイスの例示的かつ模式的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の例示的な実施形態が開示される。以下に示される実施形態の構成、ならびに当該構成によってもたらされる作用および結果(効果)は、一例である。本発明は、以下の実施形態に開示される構成以外によっても実現可能である。また、本発明によれば、構成によって得られる種々の効果(派生的な効果も含む)のうち少なくとも一つを得ることが可能である。
【0018】
以下に示される複数の実施形態は、同様の構成を備えている。よって、各実施形態の構成によれば、当該同様の構成に基づく同様の作用および効果が得られる。また、以下では、それら同様の構成には同様の符号が付与されるとともに、重複する説明が省略される場合がある。
【0019】
本明細書において、序数は、方向や、部位等を区別するために便宜上付与されており、優先順位や順番を示すものではないし、個数を限定するものでもない。
【0020】
各図において、X方向を矢印Xで表し、Y方向を矢印Yで表し、Z方向を矢印Zで表す。X方向、Y方向、およびZ方向は、互いに交差するとともに互いに直交している。また、以下では、X方向を長手方向若しくは延び方向、Y方向を短手方向若しくは幅方向、Z方向を積層方向若しくは高さ方向と称する。
【0021】
また、各図は説明を目的とした模式図であって、各図と実物とでスケールや比率は、必ずしも一致しない。
【0022】
[第1実施形態]
[基本構成]
図1は、第1実施形態の半導体光デバイス100Aの断面図であり、図2は、半導体光デバイス100Aの平面図である。図1は、図2のI-I断面図である。
【0023】
図1,2に示されるように、半導体光デバイス100Aは、基板101と、積層部102と、絶縁層23と、電極30と、電極40と、を備えている。また、積層部102は、二つの導波路構造20-1,20-2を備えている。導波路構造20-1は、第一導波路構造の例であり、導波路構造20-2は、第二導波路構造の例である。
【0024】
基板101は、Z方向に略一定の厚さを有し、Z方向と交差して広がっている。基板101は、例えば、n-InPで作られる。導波路構造20、絶縁層23、および電極30を構成する各層は、公知の半導体プロセスによって、基板101上に、Z方向に積層される。Z方向は、積層方向、厚さ方向、または高さ方向と称されうる。Z方向は第一方向の一例である。
【0025】
基板101のZ方向の反対側の面上には、電極40が設けられる。電極40は、例えば、AuGe、Ni、およびAuを含んだ積層構造を有している。
【0026】
導波路構造20-1において、基板101の電極40とは反対側の面上には、クラッド層21a、活性コア層21b、およびクラッド層21cを有したメサ21-1が形成される。クラッド層21a、活性コア層21b、およびクラッド層21cは、基板101上に、Z方向にこの順に積層される。メサ21-1は、Y方向における略一定の幅およびZ方向における略一定の高さで、X方向に延びている。活性コア層21bはコア層の一例である。クラッド層21a、活性コア層21b、およびクラッド層21cは半導体層の一例である。
【0027】
クラッド層21aは、基板101上に積層される。クラッド層21aは、例えば、n-InPで作られる。活性コア層21bは、クラッド層21a上に積層される。活性コア層21bは、例えば、n-InGaAsPを含んだ積層構造を有する。クラッド層21cは、活性コア層21b上に積層される。クラッド層21cは、例えば、p-InPで作られる。
【0028】
メサ21-1は、Y方向およびY方向の反対方向に隣接した電流阻止層22a,22b、ならびにZ方向に隣接したクラッド層22cによって囲まれている。電流阻止層22aは、例えば、p-InPで作られ、電流阻止層22bは、例えば、n-InPで作られる。また、クラッド層22cは、例えば、p-InPで作られる。導波路構造20-1は、埋め込みメサ構造を有する導波路構造の一例である。
【0029】
導波路構造20-1は、絶縁層23で覆われている。絶縁層23には、メサ21-1に対してZ方向に重なる位置に、開口23aが設けられている。絶縁層23は、例えば、SiNで作られる。なお、導波路構造20-1および絶縁層23の構成は、この例には限定されない。
【0030】
導波路構造20-1のクラッド層22cに対して基板101とは反対側には、導体で作られた電極30が設けられる。電極30は、P側電極であって、活性コア層21bに対してZ方向に離間している。電極30は、絶縁層23に設けられた開口23aを介してクラッド層22cと接している。電極30は、電極40とともに、活性コア層21bに電流を注入するための電極対を構成している。
【0031】
上述した構成の導波路構造20-1は、例えば、半導体光増幅器として機能することができる。この半導体光増幅器は、活性コア層21bの一端から入力された光を光増幅して、活性コア層21bの他端から出力する。したがって、活性コア層21bの組成は、入力される所定波長の光を光増幅するように設計されている。半導体光増幅器として機能する導波路構造20-1は、アクティブ機能を有する第一導波路構造の一例である。
【0032】
導波路構造20-2において、基板101の電極40とは反対側の面上には、クラッド層21a、導波コア層21d、およびクラッド層21eを有したメサ21-2が形成される。クラッド層21a、導波コア層21d、およびクラッド層21eは、基板101上に、Z方向にこの順に積層される。メサ21-2は、Y方向における略一定の幅およびZ方向における略一定の高さで、X方向に延びている。導波コア層21dはコア層の一例である。導波コア層21d、およびクラッド層21eは半導体層の一例である。
【0033】
導波コア層21dは、クラッド層21a上に積層される。導波コア層21dは、例えば、n-InGaAsPで作られる。クラッド層21eは、導波コア層21d上に積層される。クラッド層21eは、例えば、p-InPで作られる。
【0034】
導波路構造20-2は、積層部102の表面102a側から基板101側に延びた2つの溝100aによって、ハイメサ導波路構造とされている。2つの溝100aの一方は、第一導波路構造と第二導波路構造との間に形成された溝の一例である。
【0035】
導波路構造20-2は、絶縁層23で覆われている。
【0036】
上述した構成の導波路構造20-2は、例えば、導波コア層21dの一端から入力された光を殆ど透過する導波路として機能する。したがって、導波コア層21dの組成は、入力される所定波長の光を吸収せず、殆ど透過するように設計されている。このような導波路構造20-2は、パッシブ機能を有する第二導波路構造の一例である。
【0037】
二つの導波路構造20-1,20-2は、それぞれ、X方向に延びており、光をX方向またはX方向の反対方向に導波する。また、二つの導波路構造20-1,20-2は、互いにY方向に離れており、溝100aを挟んでY方向に並んでいる。Y方向は、第二方向の一例であり、X方向は、第三方向の一例である。
【0038】
以上のように、導波路構造20-1,20-2は、半導体の組成の一部や導波路構造が互いに異なっている。そのため、導波路構造20-1,20-2は、それぞれ異なる半導体プロセスで製造される。導波路構造20-1,20-2は、互いに異なる第一導波路構造および第二導波路構造の一例である。
【0039】
[突起部の構成]
ここで、半導体光デバイス100Aは、溝100aの底部に、当該溝100aに沿って延びるとともにZ方向に突き出た突起部101aを有する。なお、本実施形態では、基板101の一部が突起部101aを形成しているが、溝100aの深さによっては、基板101の一部およびクラッド層21aの一部が突起部を形成する場合もある。
【0040】
このような突起部101aは、導波路構造20-1,20-2が互いに異なり、それぞれ異なる半導体プロセスで製造されることによって形成され得るものである。仮にこのようなZ方向に突き出た突起部101aが、積層部102の表面102aに存在すると、半導体光デバイス100Aの実装性を低下させる場合がある。
【0041】
これに対して、半導体光デバイス100Aでは、突起部101aが溝100aの底部に存在するので、突起部101aが積層部102の表面102aよりもZ方向に突き出ることが容易に防止できる。
【0042】
以上説明したように、本実施形態によれば、例えば実装性に優れた、新規な改善された半導体光デバイス100Aを得ることができる。
【0043】
[製造方法]
以下では、突起部101aが形成される理由も含めて、半導体光デバイス100Aの製造方法の一例について説明する。
【0044】
はじめに、積層部形成工程を行う。すなわち、基板101を含むウエハの全面に、クラッド層21a、活性コア層21b、およびクラッド層21cを順次成長する。つづいて、導波路構造20-1において活性コア層21bを残す領域およびその周辺の領域をエッチングマスクでマスクし、残りの領域での活性コア層21bおよびクラッド層21cをエッチング除去する。つづいて、エッチングマスクを成長マスクとして、エッチング除去した領域に導波コア層21dおよびクラッド層21eの一部を成長する。これにより、活性コア層21bと導波コア層21dとはZ方向で同じ位置となる。
【0045】
つづいて、メサ21-1、21-2を形成する領域およびその周辺領域をメサ形状にエッチングする。この時のエッチングは、Y方向におけるメサ21-1のメサ幅、メサ21-2のメサ幅よりも広いメサ幅のメサ形状にエッチングする。なお、このとき形成されたメサをプレメサとする。つづいて、エッチングマスクを形成し、メサ21-1を形成する領域のプレメサのメサ幅がメサ21-1のメサ幅となるようにエッチングする。
【0046】
つづいて、メサ21-1を埋め込むために電流阻止層22aを成長する。このとき、メサ21-2を形成する領域のプレメサも電流阻止層22aで埋め込まれることとなる。しかし、電流阻止層22aは、成長中に、当該プレメサにすでに形成されている導波コア層21dおよびクラッド層21eの一部であるクラッド層21eaと干渉する。このため、電流阻止層22aは平坦な成長がしづらく、プレメサ21-6に近い位置でプレメサ21-6に沿って突起部P1が形成される(図3参照)。このような突起部P1は、特に結晶成長において原子の取り込みが起こりやすい(0-1-1)面に沿った方向に延びやすい。なお、(0-1-1)面は、例えば基板101を含むウエハのオリエンテーションフラット面に平行である。
【0047】
つづいて、電流阻止層22b、クラッド層22c、クラッド層21eの残部を成長し、積層部102の積層を終了する。このとき、二つのプレ構造25-1,25-2の間の領域の表面102aには突起部P1に起因する突起部P2が残留する(図4参照)。ここで、プレ構造25-1、25-2とは、それぞれ、導波路構造20-1、20-2の基となる構造である。プレ構造25-1,25-2はY方向に離れた位置に形成される。
【0048】
つづいて、積層部102をエッチングして、積層部102の表面102a側から基板101側に延びるように溝100aを形成する(溝形成工程、図5参照)。このとき、二つのプレ構造25-1、25-2の間の領域の積層部102の表面102aに形成された突起部を含む領域に溝100aを形成する。この溝100aにより、導波路構造20-2のメサ形状が確定する。また、突起部P2が形成された領域に溝100aを形成することによって、突起部P2の形状が溝100aの底部に転写されて、突起部101aが形成される。
【0049】
その後、絶縁層23、電極30,40Aを公知の方法にて形成し、ウエハからデバイスを個片化して、半導体光デバイス100Aが完成する。
【0050】
以上のように製造された半導体光デバイス100Aは、例えば実装性に優れた、新規な改善された半導体光デバイスとなる。
【0051】
[第2実施形態]
図7は、第2実施形態の半導体光デバイス100Bの平面図である。また、図6は、図7のVI-VI断面図である。
【0052】
半導体光デバイス100Bは、基板101と、積層部102Bと、絶縁層23と、電極30Bと、電極40Bと、電極パッド51,52と、配線61,62と、を備えている。積層部102Bは、三つの導波路構造20-3,20-4,20-5を備えている。導波路構造20-3,20-4は、第一導波路構造の例であり、導波路構造20-5は、第二導波路構造の例である。
【0053】
導波路構造20-3は、第1実施形態における導波路構造20-1と同様の構成を有し、メサ21-3を有している。導波路構造20-4も、導波路構造20-3と同様の構成を有している。導波路構造20-3,20-4は、いずれもX方向に延びている。導波路構造20-3,20-4は、例えば、半導体光増幅器として機能することができる。導波路構造20-3,20-4は埋め込みメサ構造を有する導波路構造の一例であって、アクティブ機能を有する第一導波路構造の一例である。
【0054】
電極30Bは、導波路構造20-3,20-4に電流を注入する際に用いられる共通のP側電極である。
【0055】
導波路構造20-5は、第1実施形態における導波路構造20-2と同様の構成を有し、メサ21-5を有している。導波路構造20-5は、導波路構造20-3,20-4に対して、X方向の反対方向に配置されている。導波路構造20-5は、平面視でU字形状の折り返し構造を有しており、二つの端部のうち一つの端部が導波路構造20-3に接続され、別の端部が導波路構造20-4に接続されている。導波路構造20-5は、二つの溝100aによってハイメサ導波路構造とされている。また、半導体光デバイス100Bも半導体光デバイス100Aと同様に、溝100aの底部に、当該溝100aに沿って延びるとともにZ方向に突き出た突起部101aを有する。導波路構造20-5はハイメサ構造かつ折り返し構造を有する導波路構造の一例であって、パッシブ機能を有する第二導波路構造の一例である。
【0056】
N側電極としての電極40Bの構成は、第1実施形態の電極40と相違している。
【0057】
具体的に、半導体光デバイス100Bには、導波路構造20-3,20-4に対して溝100bを挟んで反対側に、Z方向の反対方向に凹み基板101に至る凹部100cが設けられており、電極40Bは、当該凹部100cの底面100c1および側面100c2に沿うように設けられている。なお、溝100bは、電極30Bと電極40Bとが電気的に絶縁されるようにする機能を有する。
【0058】
また、凹部100cを覆う絶縁層23のうち、底面100c1と重なる位置には、開口23bが設けられている。電極40Bは、開口23bを介して基板101と接している。
【0059】
電極パッド51は、導波路構造20-5に対して、X方向の反対方向に配置されている。電極パッド51は、例えばボンディングワイヤで外部の電源と接続される。
【0060】
配線61は、導波路構造20-3,20-4への電流の供給のために電極パッド51と電極30Bとを電気的に接続する配線である。電極30Bは、Z方向における積層部102Bの端部側(表面102Ba側)に設けられて、配線61と電気的に接続する電極である。配線61は、電極パッド51から電極30BまでX方向に延びている。このとき、配線61は、途中で溝100aの側壁100aaおよび底面100abに沿って、また導波路構造20-5、および、溝100aの底部の突起部101aを跨いで延びている。
【0061】
電極パッド52は、電極40Bに対して、X方向の反対方向に配置されている。電極パッド52は、例えばボンディングワイヤで外部の電源と接続される。
【0062】
配線62は、導波路構造20-3,20-4への電力の供給のために電極パッド51と電極40Bとを電気的に接続する配線である。配線62は、電極パッド52から電極40BまでX方向に延びている。
【0063】
このような構成により、半導体光デバイス100Bは、全体として、半導体光増幅器として機能する。この半導体光増幅器は、一方の導波路構造20-3の活性コア層21bの一端から入力された光を光増幅して、導波路構造20-4の活性コア層21bの一端から出力する。導波路構造20-5は導波路構造20-3で増幅された光を導波路構造20-4に導波する。
【0064】
導波路構造20-5のように折り返し構造を有している導波路構造の場合、導波路構造20-5の延びる方向は結晶方位に対して様々は方向を向き得る。そのため、突起部101aが生じにくい方向だけに導波路構造が延びるようにすることは困難である。これに対して、第2実施形態に係る半導体光デバイス100Bでも、突起部101aは、第1実施形態と同様に溝100aの底部に位置する。よって、第2実施形態によっても、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0065】
また、例えば、図4に示すような突起部P2が形成されている状態の表面102aに、配線61のような配線を形成した場合、不規則な結晶成長のために例えばp-InPで作られた電流阻止層22aとp-InPで作られたクラッド層22c,21eとが近づいている近接部分がある。仮に絶縁層23が突起部101aによって形成不良となり結果として絶縁性が低くなり、配線61がクラッド層22cに電気的に接続してしまった場合、上記近接部分で生じ得るリークパスが問題となる虞がある。これに対して半導体光デバイス100Bでは、突起部101aは例えばn-InPのみで作られるので、リークパスが生じない状態にすることができる。
【0066】
[第3実施形態]
図8は、第3実施形態の半導体光デバイス100Cの平面図である。
【0067】
半導体光デバイス100Cは、半導体光デバイス100Bにおける配線61を配線61Cに置き換えた構成を有する。配線61Cは、溝100aに掛け渡されている点で配線61と異なる。
【0068】
第3実施形態に係る半導体光デバイス100Bでも、突起部101aは、第1,第2実施形態と同様に溝100aの底部に位置する。よって、第3実施形態によっても、第1,第2実施形態と同様の効果が得られる。
【0069】
また、半導体光デバイス100Bでは、配線61Cが溝100aに掛け渡されているので、仮に絶縁層23が突起部101a上で絶縁性が低くても、配線61Cが突起部101aの半導体に電気的に接続する虞が無い。
【0070】
[第4実施形態]
図9は、第4実施形態の半導体光デバイス100D(100)の断面図を含み、半導体光デバイス100D(100)の使用方法を説明する図であり、図10は、半導体光デバイス100A(100)の平面図である。図9は、図10のIX-IX断面図である。
【0071】
半導体光デバイス100Dは、第1実施形態の半導体光デバイス100Aの積層部102を積層部102Dに置き換えた構成を有する。積層部102Dは積層部102に2つの突当部71を追加した構成を有する。すなわち、積層部102Dは2つの突当部71を備えている。
【0072】
2つの突当部71は、基板101からZ方向に突出しており、Y方向における略一定の幅およびZ方向における略一定の高さで、X方向に延びている。2つの突当部71は、導波路構造20-1をY方向において挟むように設けられている。
【0073】
2つの突当部71は、導波路構造20-1のメサ21-1の積層構造と同じ積層構造を有する。すなわち、2つの突当部71は、クラッド層21a、活性コア層21b、およびクラッド層21cを有する。
【0074】
第4実施形態に係る半導体光デバイス100Dでも、突起部101aは、第1~第3実施形態と同様に溝100aの底部に位置する。よって、第4実施形態によっても、第1~第3実施形態と同様の効果が得られる。
【0075】
また、半導体光デバイス100Dは、2つの突当部71は、導波路構造20-1のメサ21-1の積層構造と同じ積層構造を有する。これにより、2つの突当部71のZ方向における端面71aの基板101からの高さは、メサ21-1の活性コア層21bのZ方向における高さからのばらつきが小さい。その結果、2つの突当部71の端面71aは、活性コア層21bのZ方向における高さの精度高い基準として使用できる。したがって、例えば図9に示すように半導体光デバイス100Dをシリコンなどで作られたプラットフォーム200に実装する場合に、突当部71の端面71aがプラットフォーム200の突当部201に当接するように、半導体光デバイス100Dとプラットフォーム200とを接合することで、メサ21-1の活性コア層21bの高さをプラットフォーム200に対して高精度に高さ合わせできる。したがって、プラットフォーム200に設けられた導波路などの光素子と、メサ21-1の活性コア層21bとの光軸合わせを高精度に行うことができる。
【0076】
なお、2つの突当部71は、上述した製造方法においてメサ21-1を作製するプロセスにてメサ21-1と同時に形成することができる。
【0077】
以上、本発明の実施形態が例示されたが、上記実施形態は一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。また、各構成や、形状、等のスペック(構造や、種類、方向、型式、大きさ、長さ、幅、厚さ、高さ、数、配置、位置、材質等)は、適宜に変更して実施することができる。
【0078】
例えば、上記実施形態では、第一導波路構造と第二導波路構造とが、半導体の組成の一部や導波路構造について互いに異なっている。第一導波路構造と第二導波路構造とが互いに異なっている場合は、上記実施形態には限定されない。例えば、第一導波路構造がシリコンなどのプラットフォームに形成された導波路構造であって、当該プラットフォームにシリコンとは異種の化合物半導体を成長させて第二導波路構造を形成した場合などは、第一導波路構造と第二導波路構造とは互いに異なる。
【0079】
また、上記第2、第3実施形態では、第二導波路構造の一例である導波路構造20-5が折り返し構造を有するが、第一導波路構造の一例である導波路構造20-3,20-4が折り返し構造を有していてもよい。また、第一導波路構造および第二導波路構造の少なくとも一方が平面視でS字状の導波路構造でもよい。S字状の導波路構造は折り返し構造の一例である。
【0080】
また、上記実施形態では、導波路構造20-1,20-3,20-4がアクティブ機能として光増幅機能を有するが、第一導波路構造のアクティブ機能は光増幅機能に限られない。例えば、第一導波路構造は、レーザ発振、光変調などの他のアクティブ機能を有していてもよい。
【0081】
また、第2,第3実施形態における電極40Bの構成を、第1,第4実施形態において電極40の代わりに適用してもよい。
【符号の説明】
【0082】
20-1、20-2、20-3、20-4、20-5:導波路構造
21-1、21-2、21-3、21-5:メサ
21-6 :プレメサ
21a、21c、21e、21ea、22c:クラッド層
21b :活性コア層
21d :導波コア層
22a、22b:電流阻止層
23 :絶縁層
23a、23b:開口
25-1、25-2:プレ構造
30、30B、40、40B:電極
51、52 :電極パッド
61、61C、62:配線
71、201:突当部
71a :端面
100A、100B、100C、100D:半導体光デバイス
100a、100b:溝
100aa:側壁
100ab、100c1:底面
100c :凹部
100c2 :側面
101 :基板
101a、P1、P2:突起部
102、102B、102D:積層部
102a、102Ba:表面
200 :プラットフォーム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10