(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115355
(43)【公開日】2024-08-26
(54)【発明の名称】加工装置
(51)【国際特許分類】
B23Q 11/00 20060101AFI20240819BHJP
B24B 55/02 20060101ALI20240819BHJP
B24B 55/06 20060101ALI20240819BHJP
B24B 7/04 20060101ALI20240819BHJP
B23Q 11/10 20060101ALI20240819BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20240819BHJP
【FI】
B23Q11/00 Q
B24B55/02 B
B24B55/06
B24B7/04 A
B23Q11/10 E
H01L21/304 631
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021010
(22)【出願日】2023-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】兼子 鉄矢
【テーマコード(参考)】
3C011
3C043
3C047
5F057
【Fターム(参考)】
3C011BB21
3C011BB31
3C011EE02
3C011EE08
3C011EE09
3C043BA03
3C043CC04
3C043DD02
3C043DD04
3C043DD05
3C047FF04
3C047GG00
3C047HH11
3C047HH18
5F057AA21
5F057CA14
5F057DA11
5F057EC27
5F057FA42
(57)【要約】
【課題】加工水ケースを容易に取り外して作業性良く短時間で効率よく洗浄することができるとともに、洗浄後は加工水ケースを容易に装着することができる加工装置を提供すること図ること。
【解決手段】ウェーハ(被加工物)を加工する研削装置(加工装置)1は、ウェーハを保持するチャックテーブル10と、粗研削ユニット20と仕上げ研削ユニット30(加工ユニット)と、チャックテーブル10に保持された被加工物もしくは研削砥石25b,35b(加工具)に加工水を供給する加工水供給ユニット40と、該加工水供給ユニット40から供給された加工水を受け入れる加工水ケース50とを備え、該加工水ケース50は、複数のケースユニット51,52,53を複数連結することによって当該研削装置1内に装着されるとともに、それぞれのケースユニット51,52,53に分割することによって当該研削装置1から取り外し可能である。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を加工する加工装置であって、
被加工物を保持するチャックテーブルと、
スピンドルの先端に加工具を装着可能な加工ユニットと、
該チャックテーブルに保持された被加工物もしくは該加工具に加工水を供給する加工水供給ユニットと、
該加工水供給ユニットから供給された加工水を受け入れる加工水ケースと、
を備え、
該加工水ケースは、
底板と側板とから形成されるケースユニットを複数連結することによって当該加工装置内に装着されるとともに、それぞれのケースユニットに分割することによって当該加工装置から取り外し可能であることを特徴とする加工装置。
【請求項2】
該ケースユニットは、
複数の該ケースユニットを連結するための連結部をさらに備え、
該連結部は、
磁石と、
弾性部材と、を備え、
一方のケースユニットに装着されたS極磁石と他方のケースユニットに装着されたN極磁石とによって、該S極磁石とN極磁石との間に該弾性部材を介在させた状態で両ケースユニットを連結することを特徴とする請求項1記載の加工装置。
【請求項3】
該加工ユニットは、
第1加工具を該スピンドルの先端に装着可能な第1加工ユニットと、
第2加工具を該スピンドルの先端に装着可能な第2加工ユニットと、
を備え、
該加工水供給ユニットは、
該チャックテーブルに保持された被加工物もしくは該第1加工部に加工水を供給する第1加工水供給ユニットと、
該チャックテーブルに保持された被加工物もしくは該第2加工部に加工水を供給する第2加工水供給ユニットと、
を備え、
該加工水ケースは、
該第1加工水供給ユニットから供給される加工水を受け入れる第1ケースユニットと、
該第2加工水供給ユニットから供給される加工水を受け入れる第2ケースユニットと、を含み、
該第1ケースユニットと該第2ケースユニットとを着脱可能に連結して構成されることを特徴とする請求項1または2記載の加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャックテーブルに保持されたウェーハなどの被加工物を加工する加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、電子機器に用いられるICやLSIなどの半導体デバイスの製造工程においては、半導体デバイスの小型化と軽量化のために、ウェーハの裏面が研削装置によって研削されて該ウェーハが所定の厚みまで薄化されている。特に、近年は電子機器の薄型化や小型化などの要求に応えるため、半導体デバイスを薄く形成することが求められている。
【0003】
ここで、ウェーハの研削装置は、ウェーハを保持するチャックテーブルと、スピンドルの先端に加工具である研削砥石を装着可能な研削ユニットと、チャックテーブルに保持されたウェーハもしくは研削砥石に加工水(研削水)を供給する加工水供給ユニットを備えている。ここで、研削ユニットにおいては、スピンドルの下端にマウントが固定されており、このマウントの下面には、研削ホイールが着脱可能に取り付けられている。そして、研削ホイールは、円板状の基台の下面に、複数のブロック状の研削砥石を周方向に等間隔で取り付けて構成されている。
【0004】
ところで、斯かる研削装置においては、ウェーハもしくは研削砥石に供給される加工水や該加工水に含まれる加工屑は、研削ホイールの回転による遠心力によって周囲に飛散するが、この加工水や該加工水に含まれる研削屑のマウントへの付着を防ぐため、特許文献1には、マウントの周囲をマウントカバーで覆う構成が提案されている。
【0005】
また、特許文献2には、チャックテーブルやマウント、研削ホイールなどの周囲をカバー部材で覆う構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013-141738号公報
【特許文献2】特開2021-175586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、研削装置には、研削加工中にウェーハや研削砥石が接触する加工領域に供給されて洗浄や冷却に供された加工水を受け入れるための容器状の加工水ケースが設けられているが、この加工水ケース内においては、研削屑を含んだ加工水が周囲に飛び散る結果、この研削屑を含んだ加工水が加工水ケースの内壁に付着する。また、ウェーハの表面で跳ね返った加工水などが噴霧となって加工水ケース内を漂う。
【0008】
そして、研削屑を含んだ加工水は、加工水ケースの内壁に付着した後、やがて大きな水滴となってウェーハの上面に落下することがある。このとき、加工水に含まれる研削屑がウェーハの粗研削時に大きなものである場合には、この大きな研削屑がウェーハの上面に落下した状態で次の仕上げ研削がなされると、仕上げ用の研削砥石やウェーハを傷つけてしまう。
【0009】
また、加工水ケースの内壁に研削屑が付着した状態で長期間放置されると、加工水ケースの内壁に付着した水滴に含まれる研削屑同士が固着して大きな研削屑が生成される。そして、大きくなった研削屑が自重に耐えられなくなって加工水ケースの内壁からウェーハの上に落下し、ウェーハや研削砥石を傷つけるという問題が発生する。
【0010】
そこで、従来、定期的に加工水ケースの内壁を作業者が手作業で洗浄し、この内壁に付着した水滴や研削屑を除去する必要があり、この加工水ケースの洗浄は、作業性が悪く、洗浄に多大な時間を要するという問題があった。そして、加工水ケース内には、研削砥石やチャックテーブルなどの様々な機構が収容されているため、加工水ケースの清掃中に加工屑が各機構に付着するという問題もあった。例えば、チャックテーブルの保持面に研削屑が付着した場合に保持面がウェーハを保持すると、該ウェーハが割れるという問題が発生する。また、その他の各機構に研削屑が付着すると、各機構に動作不良が発生するという問題もあった。
【0011】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたもので、その目的は、加工水ケースを容易に取り外して作業性良く短時間で効率よく洗浄することができるとともに、洗浄後は加工水ケースを容易に装着することができる加工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するための本発明は、被加工物を加工する加工装置であって、被加工物を保持するチャックテーブルと、スピンドルの先端に加工具を装着可能な加工ユニットと、該チャックテーブルに保持された被加工物もしくは該加工具に加工水を供給する加工水供給ユニットと、該加工水供給ユニットから供給された加工水を受け入れる加工水ケースと、
を備え、該加工水ケースは、底板と側板とから形成されるケースユニットを複数連結することによって当該加工装置内に装着されるとともに、それぞれのケースユニットに分割することによって当該加工装置から取り外し可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、加工水ケースを着脱可能な複数のケースユニットで構成し、該加工水ケースの洗浄が必要な場合には、該加工水ケースの複数のケースユニットを分割して加工装置から取り外し、取り外された各ケースユニットを作業性良く簡単に洗浄することができる。そして、洗浄後の各ケースユニットを連結一体化することによって、加工水ケースを加工装置に容易に取り付けることができる。したがって、加工水ケースを加工装置から容易に取り外して各ケースユニットを作業性良く短時間で効率よく洗浄することができるとともに、洗浄後の各ケースユニットを連結することによって加工水ケースを加工装置に作業性よく簡単に取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る加工装置(研削装置)の斜視図である。
【
図2】本発明に係る加工装置(研削装置)の構成を示すブロック図である。
【
図3】本発明に係る加工装置(研削装置)要部の斜視図である。
【
図4】本発明に係る加工装置(研削装置)要部の分解斜視図である。
【
図5】本発明に係る加工装置(研削装置)要部の分解縦断面図である。
【
図6】本発明に係る加工装置(研削装置)要部の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
[加工装置の構成]
まず、本発明に係る加工装置の一形態としてのウェーハの研削装置の構成を
図1及び
図2に基づいて説明する。なお、以下の説明においては、
図1に示す矢印方向をそれぞれX軸方向(左右方向)、Y軸方向(前後方向)、Z軸方向(上下方向)とする。
【0016】
図1に示す研削装置1は、被加工物である円板状の不図示のウェーハを研削する装置であって、回転可能な円盤状のターンテーブル2上に配置された3つのチャックテーブル10と、チャックテーブル10上に保持されたウェーハを研削する加工ユニットである粗研削ユニット(第1加工ユニット)20と仕上げ研削ユニット(第2加工ユニット)30、チャックテーブル10に保持されたウェーハの研削領域に加工水(研削水)を供給する加工水供給ユニット40と、該加工水供給ユニット40から供給される加工水を受け入れる加工水ケース50を主要な構成要素として備えている。ここで、ウェーハは、薄い円板状の部材であって、単結晶のシリコン母材で構成されており、その表面には、複数の不図示のデバイスが形成されている。そして、これらのデバイスは、ウェーハの表面に貼着された不図示の保護テープによって保護されている。
【0017】
なお、研削装置1には、その他の構成要素として、研削加工中のウェーハの厚みを測定する厚み測定器61,62と、研削加工されたウェーハを洗浄する洗浄ユニット70と、研削加工前の複数のウェーハを収納するカセット71と、研削加工後のウェーハを収納するカセット72と、カセット71から取り出したウェーハを位置合わせする位置合わせテーブル73と、カセット71,72に対してウェーハを出し入れするとともに、カセット71から取り出したウェーハを位置合わせテーブル73へと搬送する搬出入ロボット74と、位置合わせテーブル73において位置合わせされたウェーハをウェーハ搬出入領域R1に位置するチャックテーブル10へと搬送する第1搬送手段75と、仕上げ研削領域R3において仕上げ研削されたウェーハをチャックテーブル10から取り外して洗浄ユニット70へと搬送する第2搬送手段76などが備えられているが、これらについての詳細な説明は省略する。
【0018】
ここで、研削装置1の主要な構成要素であるチャックテーブル10、粗研削ユニット20と仕上げ研削ユニット30、加工水供給ユニット40及び加工水ケース50の構成についてそれぞれ説明する。
【0019】
(チャックテーブル)
3つのチャックテーブル10は、円板状の部材であって、Z軸方向に垂直な中心軸回りに間欠的に回転(公転)するターンテーブル2上に周方向に等角度ピッチ(120°ピッチ)で配置されている。そして、これらのチャックテーブル10は、ターンテーブル2の間欠的な回転によって該ターンテーブル2のZ軸方向に垂直な軸中心回りに角度120°ずつ公転してウェーハ搬出入領域R1と粗研削領域R2及び仕上げ研削領域R3の間を順次移動するとともに、
図5及び
図6に示す回転駆動機構11によってZ軸方向の垂直な軸中心回りに所定の速度で回転(自転)する。
【0020】
ここで、各チャックテーブル10は、
図5及び
図6に示すように、多孔質のセラミックなどで構成された円板状のポーラス部材10Aが中央部にそれぞれ組み込まれており、各ポーラス部材10Aの上面は、円板状のウェーハを吸引保持する保持面を構成している。そして、各チャックテーブル10のポーラス部材10Aは、真空ポンプなどの不図示の吸引源に選択的に接続される。
【0021】
(粗研削ユニットと仕上げ研削ユニット)
本実施形態に係る研削装置1は、第1加工ユニットとしての粗研削ユニット20と第2研削ユニットとしての仕上げ研削ユニット30を備えている。これらの粗研削ユニット20と仕上げ研削ユニット30は、
図1に示すように、Y軸方向(前後方向)に長い矩形ボックス状のベース100の+Y軸方向端部(後端部)にX軸方向(左右方向)に並設される状態で垂直に配置されている。ここで、粗研削ユニット20は、粗研削領域R2に位置するチャックテーブル10の保持面に保持されたウェーハの上面(裏面)を粗研削するユニットであり、仕上げ研削ユニット30は、仕上げ研削領域R3に位置するチャックテーブル10の保持面に保持されたウェーハの上面(裏面)を仕上げ研削するユニットであって、両者の基本構成は同じである。
【0022】
すなわち、粗研削ユニット20は、
図3及び
図4に示すように、ホルダ21に固定されたスピンドルモータ22と、該スピンドルモータ22によって回転駆動される垂直なスピンドル23(
図5及び
図6参照)と、該スピンドル23の下端に取り付けられた円板状のマウント24と、該マウント24の下面に着脱可能に装着された研削ホイール25とを備えている。ここで、研削ホイール25は、円板状の基台25aと、該基台25aの下面に円環状に取り付けられた第1加工具である複数の研削砥石25bによって構成されている。
【0023】
また、仕上げ研削ユニット30も粗研削ユニット20と同様に、ホルダ31に固定されたスピンドルモータ32と、該スピンドルモータ32によって回転駆動される垂直なスピンドル33(
図5及び
図6参照)と、該スピンドル33の下端に取り付けられた円板状のマウント34と、該マウント34の下面に着脱可能に装着された研削ホイール35とを備えている。ここで、研削ホイール35は、円板状の基台35aと、該基台35aの下面に円環状に取り付けられた第2加工具である複数の研削砥石35bによって構成されているが、これらの研削砥石35bは、粗研削ユニット20の研削砥石25bよりも細かい砥粒によって構成されている。
【0024】
ところで、粗研削ユニット20と仕上げ研削ユニット30は、ベース100の+Y軸方向端部(後端部)にX軸方向(左右方向)に沿って垂直に立設された一対のブロック状のコラム101の各-Y軸方向端面(前面)にそれぞれ設けられた昇降機構3によって昇降可能に支持されている。ここで、両昇降機構3の構成は同じであるため、以下、対応する構成要素には同一符号を付して説明する。
【0025】
各昇降機構3は、
図3及び
図4に示すように、粗研削ユニット20と仕上げ研削ユニット30をそれぞれ独立にZ軸方向(上下方向)に沿って昇降動させるものであって、矩形プレート状の昇降板4と、該昇降板4の昇降動をガイドするためのガイドレール5をそれぞれ備えている。ここで、各昇降板4には、粗研削ユニット20と仕上げ研削ユニット30がそれぞれ取り付けられている。また、ガイドレール5は、コラム101の前面に垂直に配設されている。
【0026】
そして、各ガイドレール5の横には、回転可能なボールネジ6がZ軸方向(上下方向)に沿って垂直に立設されており、該ボールネジ6の上端は、駆動源である正逆転可能なサーボモータ7に連結されている。また、ボールネジ6の下端は、不図示の軸受によってコラム101に回転可能に支持されており、このボールネジ6には、昇降板4の背面に後方(+Y軸方向)に向かって水平に突設された不図示のナット部材が螺合している。
【0027】
したがって、以上のように構成された各昇降機構3のサーボモータ7を起動して各ボールネジ6を正逆転させると、各ボールネジ6に螺合する不図示のナット部材が突設された各昇降板4がガイドレール5に沿って昇降するため、該昇降板4に取り付けられた粗研削ユニット20と仕上げ研削ユニット30もそれぞれZ軸方向(上下方向)に沿って互いに独立して昇降動する。
【0028】
(加工水供給ユニット)
加工水供給ユニット40は、
図1に示すように、研削加工中に粗研削ユニット20の研削砥石25bとウェーハとの接触領域(加工領域)に加工水(研削水)を供給する第1加工水供給ユニット41と、仕上げ研削ユニット30の研削砥石35bとウェーハとの接触領域(加工領域)に加工水(研削水)を供給する第2加工水供給ユニット42を備えている。本実施形態では、第1加工水供給ユニット41と第2加工水供給ユニット42は、1つ(共通)の加工水供給源43を備えており、この加工水供給源43から延びる配管44,45にそれぞれ設けられた開閉弁V1,V2を開閉操作することによって、加工水供給源43からの加工水を粗研削ユニット20または仕上げ研削ユニット30へと選択的に供給することができる。すなわち、第1加工水供給ユニット41は、共通の加工水供給源43と配管44及び開閉弁V1を含んで構成され、第2加工水供給ユニット42は、加工水供給源43と配管45及び開閉弁V2を含んで構成されている。
【0029】
ここで、本実施形態では、共通の加工水供給源43から延びる一方の配管44は、粗研削ユニット20のスピンドルモータ22、スピンドル23、マウント24及び研削ホイール25(
図5及び
図6参照)の各軸中心に垂直に形成された不図示の供給路に選択的に接続され、他方の配管45は、仕上げ研削ユニット30のスピンドルモータ32、スピンドル33、マウント34及び研削ホイール35(
図5及び
図6参照)の各軸中心に垂直に形成された不図示の供給路に選択的に接続される。なお、加工水には、純水が好適に用いられる。
【0030】
(加工水ケース)
加工水ケース50は、第1加工水供給ユニット41から粗研削ユニット20によるウェーハの加工領域へと供給される加工水、または第2加工水供給ユニット42から仕上げ研削ユニット30によるウェーハの加工領域へと供給される加工水を受ける矩形の容器であって、
図3及び
図6に示すように、その内部には加工室カバー80によって区画された第1加工室S1と第2加工室S2が形成されている。
【0031】
上記加工室カバー80は、
図3~
図5に示すように、左右の第1カバー81と第2カバー82を連結一体化して構成されており、第1カバー81と第2カバー82は、
図4に示すように、平面視五角形の天板81a,82aと、各天板81a,82aの前端縁から垂直下方に延びる側板81b,82bをそれぞれ備えており、これらの第1カバー81と第2カバー82の左右と後方はそれぞれ開口している。そして、第1カバー81と第2カバー82の各天板81a,82aには、
図4に示すように、粗研削ユニット20と仕上げ研削ユニット30の各研削ホイール25,35が上方から貫通するための円孔81c,82cがそれぞれ開口している。また、第1カバー81と第2カバー82を仕切る垂直な仕切り板83の下端部には、ターンテーブル2と共に回転(公転)するチャックテーブル10の通過を許容するための矩形の通過孔83aが形成されている(
図4及び
図5参照)。
【0032】
ところで、
図3及び
図4に示すように、ターンテーブル2の上面には、中心から径方向に放射状に延びる3つの仕切り板8が周方向に等角度ピッチ(120ピッチ)で立設されており、ターンテーブル2の上面の3つの仕切り板8によって区画される扇形の領域には、チャックテーブル10がそれぞれ臨んでおり、各チャックテーブル10の周囲は、
図5及び
図6に示すように、扇カバー84によってそれぞれ覆われている。なお、各仕切り板8の高さは、各チャックテーブル10の高さよりも高く設定されている。
【0033】
而して、上面が開口する矩形容器状の加工水ケース50は、本実施形態においては、
図7に示すように、着脱可能な平面視L字状の左右一対の第1ケースユニット51と第2ケースユニット52及び前側(-Y軸側)に位置する平面視コの字状の第3ケースユニット53とに3分割されており、これらの第1ケースユニット51と第2ケースユニット52及び第3ケースユニット53を連結一体化することによって、
図4に示すように、矩形の容器として組み立てられる。なお、第1ケースユニット51は、第1加工水供給ユニット41から粗研削ユニット20によるウェーハの加工領域に供給される加工水を受け入れるものであり、第2ケースユニット53は、第2加工水供給ユニット42から仕上げ研削ユニット30によるウェーハの加工領域に供給される加工水を受け入れるものである。
【0034】
ここで、第1ケースユニット51と第2ケースユニット52及び第3ケースユニット53は、
図9に示すように、水平な底板51a,52a,53aと垂直な側板51b,52b,53bをそれぞれ備えており、これらの第1~第3ケースユニット51~53を連結一体化して構成される加工水ケース50の底板51a~53aには、
図4、
図6及び
図9に示すように、各チャックテーブル10を回転駆動するための回転駆動機構11が貫通する円孔50aが形成されている。なお、
図6に示すように、円孔50aの周縁には、円環状の縦壁50bが立設されており、この縦壁50bの外周側には、ターンテーブル2の外周縁から垂直下方に延びる円環状の側壁2aが臨んでいる。したがって、縦壁50bと側壁2aとは、ラビリンス状のシール構造を構成しており、両者の間からの加工水の漏れを抑制するシール機能を果たす。
【0035】
ところで、加工水ケース50は、3分割された第1~第3ケースユニット51~53を着脱可能に連結一体化して構成されているが、この加工水ケース50には、
図9に示すように、3つの第1~第3ケースユニット51~53を連結するための3つの連結部a,b,cが設けられている。ここで、連結部aは、第1ケースユニット51と第3ケースユニット53とを連結するものであり、連結部bは、第2ケースユニット52と第3ケースユニット53とを連結するものである。また、連結部cは、第1ケースユニット51と第2ケースユニット52とを連結するものである。
【0036】
本発明の主要な特徴は、加工水ケース50を構成する第1~第3ケースユニット51~53同士を連結する連結部a,b,c、例えば、連結部bにおいては、
図7~
図10に示すように、互いに連結される第2ケースユニット52と第3ケースユニット53の各連結端面には、磁極(S極とN極)が互いに異なる磁石M1,M2が装着されるとともに、各磁石M1,M2の各端面にはゴムなどの弾性部材12,13がそれぞれ接着されている。同様に、連結部aにおいては、
図7及び
図9に示すように、互いに連結される第1ケースユニット51と第3ケースユニット53の各連結端面には、磁極(S極とN極)が互いに異なる磁石M2,M1がそれぞれ装着されるとともに、各磁石M2,M1の表面にはゴムなどの弾性部材13,12がそれぞれ接着されている。また、連結部cにおいては、
図7及び
図9に示すように、互いに連結される第1ケースユニット51と第2ケースユニット52の各連結端面には、磁極(S極とN極)が互いに異なる磁石M1,M2がそれぞれ装着されるとともに、各磁石M1,M2の表面にはゴムなどの弾性部材12,13がそれぞれ接着されている。
【0037】
したがって、
図7に示すように3つに分解された第1~第3ケースユニット51,52,53において、第1ケースユニット51と第2ケースユニット52の各端面(
図9の各左端面)を第3ケースユニット53の左右の端面に近づければ、各端面に装着された互いに逆極性の磁石M1,M2の互いに引き合う磁力によって第1ケースユニット51と第2ケースユニット52が連結部a,bにおいて間に弾性部材12,13を介在させた状態で第3ケースユニット53に連結される。
【0038】
同様に、
図7に示すように3つに分解された第1~第3ケースユニット51,52,53において、第1ケースユニット51と第2ケースユニット52の各端面を互いに近づければ、各端面に装着された互いに逆極性の磁石M1と磁石M2の互いに引き合う磁力によって第1ケースユニット51と第2ケースユニット52が連結部cにおいて間に弾性部材12,13を介在させた状態で互いに連結される。
【0039】
以上のように構成された矩形容器状の加工水ケース50とその内部に配置された加工水カバー80の第1カバー81と第2カバー82とによって区画される第1加工室S1と第2加工室S2には、
図6に示すように、粗研削ユニット20の研削ホイール25の一部と仕上げ研削ユニット30の研削ホイール35の一部が上方から第1カバー81と第2カバー82の各円孔81c,82cを貫通して臨むとともに、チャックテーブル10がそれぞれ収容されている。また、第1加工室S1と第2加工室S2の底部には、ターンテーブル2が収容されている。
【0040】
[研削装置の作用]
次に、以上のように構成された研削装置1によるウェーハの研削加工について説明する。
【0041】
ウェーハを研削加工する際には、
図1に示す搬出入ロボット74によってカセット71から加工前の1枚のウェーハが取り出され、取り出されたウェーハが位置合わせテーブル73へと移送される。すると、位置合わせテーブル73においては、ウェーハが位置合わせされ、位置合わせされたウェーハは、第1搬送手段75によってウェーハ搬出入領域R1に位置するチャックテーブル10へと移送されて該チャックテーブル10上に表面を下にして吸引保持される。すなわち、ウェーハが載置されたチャックテーブル10のポーラス部材10A(
図5及び
図6参照)が不図示の吸引源に接続されて該ポーラス部材10Aに負圧が発生するため、この負圧に引かれてウェーハがチャックテーブル10の保持面上に吸引保持される。
【0042】
すると、ターンテーブル2がその垂直な軸中心回りに矢印方向(反時計方向)に角度120°だけ回転してウェーハと共に粗研削領域R2へと移動する。この粗研削領域R2においては、チャックテーブル10の保持面に保持されたウェーハWの裏面(上面)が粗研削ユニット20によって粗研削される。
【0043】
すなわち、
図5及び
図6に示す回転駆動機構11によってチャックテーブル10が所定の回転速度(例えば、300rpm)で回転駆動されるとともに、粗研削ユニット20のスピンドルモータ22が起動されて研削砥石25bが所定の速度(例えば、1000rpm)で回転駆動される。
【0044】
上述のように、チャックテーブル10とこれに保持されたウェーハ及び研削砥石25bがそれぞれ回転している状態で、昇降機構3を駆動して研削砥石25bを-Z軸方向に下降させる。すなわち、サーボモータ7が駆動されてボールネジ6が回転すると、このボールネジ6に螺合する不図示のナット部材が設けられた昇降板4が粗研削ユニット20と共に-Z軸方向に下降する。すると、研削砥石25bの下面(研削面)がウェーハの上面(裏面)に接触する。このとき、
図1に示す第1加工水供給ユニット41の開閉弁V1が開く一方、第2加工水供給ユニット42の開閉弁V2が閉じられ、加工水供給源43からの加工水が配管44と粗研削ユニット20のスピンドルモータ22、スピンドル23、マウント24及び研削ホイール25の各軸心に形成された不図示の供給路を通って研削ホイール25の中心からウェーハに向かって供給される。すると、この研削水の供給を受けながら、ウェーハの上面(裏面)が研削砥石25bによって粗研削され、その厚みが厚み測定器61によって測定される。
【0045】
ところで、ウェーハの粗研削中に第1加工水供給ユニット41から供給され、研削砥石25bとウェーハとの接触領域(加工領域)の冷却と洗浄に供された加工水は、主に加工水ケース50の第1ケースユニット51によって受けられ、該第1ケースユニット51から排出される。そして、第1ケースユニット51から排出された加工水は、これに含まれる研削屑が除去された後、加工水供給源43へと戻されて再利用される。
【0046】
そして、前述のように粗研削ユニット20によってウェーハが所定厚みに粗研削されると、昇降機構3によって粗研削ユニット20が+Z軸方向に上昇して研削砥石25bがウェーハの上面から離間する。すると、ターンテーブル2がその垂直な軸中心回りに角度120°だけ回転し、粗研削領域R2において粗研削されたウェーハとこれを保持するチャックテーブル10が仕上げ研削領域R3へと移動し、この仕上げ研削領域R3においてウェーハの上面(裏面)が仕上げ研削ユニット30によって仕上げ研削される。なお、仕上げ研削ユニット30によるウェーハの仕上げ研削は、粗研削ユニット20によるウェーハの粗研削と同様になされため、この仕上げ研削についての説明は省略するが、この仕上げ研削においては、第1加工水供給ユニット41の開閉弁V1が閉じられる一方、第2加工水供給ユニット42の開閉弁V2が開けられる。すると、加工水供給源43からの加工水が配管45と仕上げ研削ユニット30のスピンドルモータ32、スピンドル33、マウント34及び研削ホイール35の各軸心に形成された不図示の供給路を通って研削ホイール35の中心からウェーハに向かって供給される。すると、この加工水の供給を受けながら、ウェーハの上面(裏面)が研削砥石35bによって仕上げ研削され、その厚みが厚み測定器62によって測定される。
【0047】
ところで、ウェーハの仕上げ研削中に第2加工水供給ユニット42から供給され、研削砥石35bとウェーハとの接触領域(加工領域)の冷却と洗浄に供された加工水は、加工水ケース50の第2ケースユニット52によって主に受けられ、この第2ケースユニット52によって受けられた加工水は、第2ケースユニット52から排出される。そして、第2ケースユニット52から排出された加工水は、これに含まれる研削屑が除去された後、加工水供給源43へと戻されて再利用される。
【0048】
そして、仕上げ研削ユニット30によってウェーハが所定厚みに仕上げ研削されると、昇降機構3によって仕上げ研削ユニット30が+Z軸方向に上昇して研削砥石35bがウェーハの上面から離間する。すると、ターンテーブル2がその垂直な軸中心回りに角度120°だけ回転し、仕上げ研削領域R3において仕上げ研削されたウェーハとこれを保持するチャックテーブル10がウェーハ搬出入領域R1へと移動し、このウェーハ搬出入領域R1においてウェーハが第2搬送手段76によってチャックテーブル10から取り外されて洗浄ユニット70へと移送される。洗浄ユニット70においては、仕上げ研削ユニット30によって仕上げ研削されたウェーハが不図示のスピンナテーブルの保持面上に載置される。この状態からスピンナテーブルがこれに保持されたウェーハと共に垂直な中心軸回りに所定の速度によって回転し、回転するウェーハの上面に向かって不図示の洗浄水ノズルから洗浄水(本実施形態では、純水)が噴射されて該ウェーハの上面が洗浄される。
【0049】
上述のように、回転するウェーハの上面が洗浄水によって洗浄されると、
図1に示す搬出入ロボット74によってウェーハが不図示のスピンナテーブルから取り外されてカセット72へと収納され、ウェーハに対する一連の研削加工と洗浄が終了する。
【0050】
ところで、以上のように粗研削ユニット20と仕上げ研削ユニット30によってウェーハを粗研削及び仕上げ研削する研削装置1においては、研削加工中の加工室S1,S2内は、加工水の供給を受けながら回転する研削砥石25b,35bによるウェーハの研削によって、研削屑を含む加工水の噴霧が加工室S1,S2内で飛散して加工水ケース50の内壁に付着する。
【0051】
そこで、加工水ケース50の内壁を定期的に洗浄する必要があるが、本実施形態では、加工水ケース50を
図7に示すように第1~第3ケースユニット51,52,53に3分割し、これらの第1~第3ケースユニット51~53を連結部a,b,cにおいて着脱可能としたため、加工水ケース50の洗浄が必要な場合には、該加工水ケース50を
図7に示すように第1~第3ケースユニット51,52,53に分割して研削装置1から取り外し、取り外された第1~第3ケースユニット51,52,53をそれぞれ作業性良く短時間で効率よく洗浄することができる。ここで、第1~第3ケースユニット51,52,53は、連結部a,b,cにおいて磁極(S極とN極)が互いに異なる磁石M1,M2の互いに引き合う磁力によって連結されていたため、これらの第1~第3ケースユニット51,52,53を磁力よりも強い力で容易に引き離して分割することができる。
【0052】
そして、上述のように第1~第3ケースユニット51,52,53が研削装置1から取り外されてそれぞれ洗浄されると、これらの第1~第3ケースユニット51,52,53を連結部a,b,cにおいて磁石M1,M2の磁力によって互いに連結することによって、研削装置1において、
図4及び
図9に示すような矩形容器状の加工水ケース50を容易に組み立てて研削装置1に装着することができる。なお、このように組み立てられた矩形容器状の加工水ケース50においては、連結部a,b,cにおける弾性部材12,13が磁石M1,M2の磁力によって互いに密着するため、シール部材として機能して連結部a,b,cからの水漏れを確実に防ぐ。
【0053】
以上の説明で明らかなように、本実施形態に係る研削装置1においては、加工水ケース50を容易に取り外して作業性良く短時間で効率よく洗浄することができるとともに、洗浄後は加工水ケース50を容易に装着することができるという効果が得られる。
【0054】
なお、以上の実施の形態に係る研削装置1においては、加工水を粗研削ユニット20と仕上げ研削ユニット30の各軸中心からウェーハに向けてそれぞれ供給する方式を採用しているが、チャックテーブル10の側部に配置されたノズルからウェーハに向けて加工水を側方から供給する方式を採用することもできる。
【0055】
また、以上は本発明に係る加工装置としてウェーハの研削装置を例として説明したが、本発明は、ウェーハ以外の他の任意の被加工物の研削装置の他、研削装置以外の他の任意の加工装置、例えば、研磨装置や切削装置などもその適用対象に含む。
【0056】
その他、本発明は、以上説明した実施の形態に適用が限定されるものではなく、特許請求の範囲及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0057】
1:研削装置(加工装置)、2:ターンテーブル、2a:ターンテーブルの側壁、
3:昇降機構、4:昇降板、5:ガイドレール、6:ボールネジ、7:サーボモータ、
8:仕切り板、10:チャックテーブル、10A:ポーラス部材、11:回転駆動機構、
20:粗研削ユニット(第1加工ユニット)、21:ホルダ、22:スピンドルモータ、
23:スピンドル、24:マウント、25:研削ホイール、25a:基台、
25b:研削 砥石(第1加工具)、30:仕上げ研削ユニット(第2加工ユニット)、
31:ホルダ、32:スピンドルモータ、33:スピンドル、34:マウント、
35:研削ホイール、35a:基台、35b:研削砥石(第2加工具)、
40:加工水供給ユニット、41:第1加工水供給ユニット、
42:第2加工水供給ユニット、43:加工水供給源、44,45:配管、
50:加工水ケース、50a:円孔、50b:縦壁、51:第1ケースユニット、
51a:底板、52b:側板、52:第2ケースユニット、52a:底板、
52b:側板、53:第3ケースユニット、53a:底板、53b:側板、61,
62:厚み測定器、70:洗浄ユニット、71,72:カセット、
73:位置合わせテーブル、74:搬出入ロボット、75:第1搬送手段、
76:第2搬送手段、80:加工室カバー、81a:第1カバー、81a:天板、
81b:側板、81c:円孔、82:第2カバー、82a:天板、82b:側板、
82c:円孔、83:仕切り板、83a:通過孔、84:扇カバー、100:ベース、
101:コラム、a,b,c:連結部、
R1:ウェーハ搬出入領域、R2:粗研削領域、R3:仕上げ研削領域、
S1:第1加工室、S2:第2加工室、V1,V2:開閉弁