IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 新日本無線株式会社の特許一覧 ▶ 学校法人立命館の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115386
(43)【公開日】2024-08-26
(54)【発明の名称】固体撮像装置及び画像処理システム
(51)【国際特許分類】
   H04N 25/77 20230101AFI20240819BHJP
   H01L 27/146 20060101ALI20240819BHJP
【FI】
H04N25/77
H01L27/146 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021056
(22)【出願日】2023-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】593006630
【氏名又は名称】学校法人立命館
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100135703
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 英隆
(72)【発明者】
【氏名】大倉 俊介
(72)【発明者】
【氏名】吉田 康太
(72)【発明者】
【氏名】氏家 隆一
(72)【発明者】
【氏名】森川 大輔
【テーマコード(参考)】
4M118
5C024
【Fターム(参考)】
4M118BA14
4M118CA02
4M118CA22
4M118DD04
4M118FA38
4M118GC08
4M118GC14
5C024CY25
5C024EX52
5C024GX03
5C024GX16
5C024GX18
5C024GY31
5C024GY39
5C024HX23
5C024HX28
5C024HX50
5C024HX51
(57)【要約】
【課題】従来技術に比較して演算コストを小さくすることで、消費電力を低減できる固体撮像装置を提供する。
【解決手段】固体撮像装置は、それぞれ所定の画素色を有する光信号を光電変換して画素信号を出力する複数の光電変換素子と、前記複数の光電変換素子からの各画素信号を同時に出力端子に転送するように制御することで、所定の特徴量を有する画素輝度信号を出力する制御回路と、を備える。ここで、前記特徴量は水平エッジ量である。前記複数の光電変換素子は、赤色の信号レベルRを有する光信号を光電変換して画素信号を出力する光電変換素子と、緑色の信号レベルGを有する光信号を光電変換して画素信号を出力する2個の光電変換素子と、青色の信号レベルBを有する光信号を光電変換して画素信号を出力する光電変換素子と、を含み、前記固体撮像装置は、例えば輝度変換式がY=2G+R+Bである画素輝度信号を出力する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ所定の画素色を有する光信号を光電変換して画素信号を出力する複数の光電変換素子と、
前記複数の光電変換素子からの各画素信号を同時に出力端子に転送するように制御することで、所定の特徴量を有する画素輝度信号を出力する制御回路と、
を備える固体撮像装置。
【請求項2】
前記特徴量は水平エッジ量である、
請求項1に記載の固体撮像装置。
【請求項3】
前記複数の光電変換素子は、
赤色の信号レベルRを有する光信号を光電変換して画素信号を出力する光電変換素子と、
緑色の信号レベルGを有する光信号を光電変換して画素信号を出力する2個の光電変換素子と、
青色の信号レベルBを有する光信号を光電変換して画素信号を出力する光電変換素子と、
を含み、
前記固体撮像装置は、輝度変換式がY=2G+R+Bである画素輝度信号を出力する、
請求項1に記載の固体撮像装置。
【請求項4】
前記複数の光電変換素子は、
赤色の信号レベルRを有する光信号を光電変換して画素信号を出力する2個の光電変換素子と、
緑色の信号レベルGを有する光信号を光電変換して画素信号を出力する光電変換素子と、
青色の信号レベルBを有する光信号を光電変換して画素信号を出力する光電変換素子と、
を含み、
前記固体撮像装置は、輝度変換式がY=G+2R+Bである画素輝度信号を出力する、
請求項1に記載の固体撮像装置。
【請求項5】
前記複数の光電変換素子は、
赤色の信号レベルRを有する光信号を光電変換して画素信号を出力する光電変換素子と、
緑色の信号レベルGを有する光信号を光電変換して画素信号を出力する光電変換素子と、
青色の信号レベルBを有する光信号を光電変換して画素信号を出力する2個の光電変換素子と、
を含み、
前記固体撮像装置は、輝度変換式がY=G+R+2Bである画素輝度信号を出力する、
請求項1に記載の固体撮像装置。
【請求項6】
前記固体撮像装置からの画素輝度信号を、隣接する列の画素輝度信号をしきい値として用いて、2値化して出力する2値化器をさらに備える、
請求項1~5のうちのいずれか1つに記載の固体撮像装置。
【請求項7】
前記2値化器は、前記複数の光電変換素子をそれぞれ含む各列の画素回路の後段に設けられる、
請求項6に記載の固体撮像装置。
【請求項8】
前記2値化器は、前記複数の光電変換素子をそれぞれ各列の画素回路からの画素輝度信号を読み出す読み出し回路に設けられる、
請求項6に記載の固体撮像装置。
【請求項9】
請求項1~5のうちのいずれか1つに記載の固体撮像装置と、
前記固体撮像装置からの画素輝度信号に基づいてクラスタリング処理を実行するニューラルネットワークとを備える画像処理システムであって、
前記ニューラルネットワークは、正解ラベル付き公開データセットから抽出された特徴量を含む正解ラベル付き特徴量データセットに基づいて学習された、
画像処理システム。
【請求項10】
請求項1~5のうちのいずれか1つに記載の固体撮像装置と、
前記固体撮像装置からの画素輝度信号に基づいて画像認識処理を実行する画像認識装置と、
を備える画像処理システム。
【請求項11】
前記画像認識装置は、正解ラベル付き公開データセットに基づいて学習された、
請求項10に記載の画像処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばイメージセンサなどの固体撮像装置と、前記固体撮像装置を備える画像処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
画像認識システムにおいて、画像の特徴量抽出がなされる。画像認識には、例えば、機械学習モデルを用いる方式がある。機械学習モデルを用いた画像認識の場合、一例として、入力画像としての高解像度画像の特徴量が抽出され、特徴量に基づいて画像のクラス分け(クラスタリング)がなされる。
【0003】
例えば非特許文献1は、チップ内部で特徴量演算(畳み込み演算)を行うイメージセンサを開示している。イメージセンサは、複数の画素を備える。各画素は、光電変換素子であるフォトダイオード及び読み出し回路を備える。各画素の読み出し回路は、受光強度に応じた電気信号である画素信号を出力する。非特許文献1に開示されたイメージセンサは、畳み込み演算を行うための光電変換素子の蓄積及び乗算のために、特殊な製造プロセス(IGZO)を必要とする。
【0004】
チップ内部での特徴量演算を大規模集積回路の適したCMOSプロセスで実現するためのイメージセンサが例えば特許文献1において開示されている。このイメージセンサは、画像認識のための特徴量を出力するイメージセンサであって、複数の画素回路と、前記複数の画素回路を制御する第1モード制御を実行するよう構成されたコントローラと、を備え、前記複数の画素回路それぞれは、光電変換素子と、前記光電変換素子から電荷の転送を受ける電荷蓄積部と、を備えており、前記電荷蓄積部に蓄積された電荷量に応じた画素信号を出力するよう構成され、前記第1モード制御は、前記特徴量を求める演算のために、前記光電変換素子と前記電荷蓄積部との間における前記電荷の転送を制御することを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-102604号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Seiichi Yoneda et al., "Image Sensor Capable of Analog Convolution for Real-time Image Recognition System Using Crystalline Oxide Semiconductor FET", International Image Sensor Workshop(IISW), 2019, pp.322-325.
【非特許文献2】山本航平ほか,「特徴量抽出可能なCMOSイメージセンサのためのニューラルネットワークを用いた画像分類」,映像情報メディア学会研究技術報告,Vol.46,No.29,pp.21-24,2022年9月15日発行
【非特許文献3】奥村周平ほか,「特徴量抽出可能な低コストCMOSカラーイメージセンサに関する検討」,電子情報通信学会集積回路研究会(ICD),学生・若手研究会,2022年3月22日発表
【非特許文献4】大須賀裕宇ほか,「CMOSイメージセンサ内で抽出可能な特徴量が画像認識に与える影響の解析」,電子情報通信学会集積回路研究会(ICD),学生・若手研究会,2022年3月22日発表
【非特許文献5】江上典文,「画像入力デバイスの基礎(第1回)光電変換の基礎」、映像情報メディア学会誌,Vol.68,No.1,2014年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のような従来例に係る特徴量抽出可能なイメージセンサは、特徴量演算のみをチップ内で行い、それ以外の処理は画像認識器で行うため、固体撮像装置の出力データ量が大きいので、演算コストが比較的大きく、消費電力を低減することが難しいという課題があった。
【0008】
本発明の目的は以上の課題を解決し、従来技術に比較して演算コストを小さくすることで、消費電力を低減できる固体撮像装置、及び固体撮像装置を備える画像処理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様に係る固体撮像装置は、
それぞれ所定の画素色を有する光信号を光電変換して画素信号を出力する複数の光電変換素子と、
前記複数の光電変換素子からの各画素信号を同時に出力端子に転送するように制御することで、所定の特徴量を有する画素輝度信号を出力する制御回路と、
を備える。
【発明の効果】
【0010】
従って、本開示の一態様に係る固体撮像装置によれば、従来技術に比較して演算コストを小さくすることで、消費電力を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態1に係る固体撮像装置であるイメージセンサの構成例を示すブロック図である。
図2図1の画素部の構成例を示すブロック図である。
図3図1の画素回路とその周辺回路の構成例を示す回路図である。
図4】従来例の画素回路とその周辺回路の動作例を示すタイミングチャートである。
図5図3の画素回路とその周辺回路の動作例を示すタイミングチャートである。
図6A図3の4個のフォトダイオードに対するベイヤー配列のカラーフィルタの配置例を示す図である。
図6B図3の4個のフォトダイオードに対するRGBR配列のカラーフィルタの配置例を示す図である。
図6C図3の4個のフォトダイオードに対するRBBG配列のカラーフィルタの配置例を示す図である。
図7】一般的なイメージセンサにおける光が侵入する深さに対する光強度の特性を示すグラフである。
図8】実施形態2に係る画素回路とその周辺回路の構成例を示す回路図である。
図9図8の画素回路とその周辺回路の動作例を示すタイミングチャートである。
図10A】一般的な水平エッジ信号の確率密度分布を示すグラフである。
図10B図8のコンパレータの入出力特性を示すグラフである。
図11】実施形態3に係る画素回路とその周辺回路の構成例を示す回路図である。
図12】実施形態4に係る図1のイメージセンサを用いた画像分類システムの構成例を示すブロック図である。
図13】実施形態5に係る図1のイメージセンサを用いた画像認識システムの構成例を示すブロック図である。
図14】実施形態6に係る図1のイメージセンサを用いた画像認識システムの構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る実施形態及び変形例について図面を参照して説明する。なお、同一又は同様の構成要素については同一の符号を付している。
【0013】
(実施形態1)
図1は実施形態1に係る固体撮像装置であるイメージセンサ100の構成例を示すブロック図である。図1のイメージセンサ100は、例えば画像認識システムなどのためのイメージセンサである。
【0014】
図1において、イメージセンサ100は、例えばCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサである。イメージセンサ100は、撮像部としての画素部110及びコントローラ120を備える。イメージセンサ100は、さらに、読み出し回路130、垂直走査回路140、及び水平走査回路150を備える。読み出し回路130は、画素部110からの画素信号の読み出しを制御する。垂直走査回路140は、画素部110に含まれる画素回路111(画素)のうち、画素信号が読みされる対象画素回路(対象画素)を選択するための信号を画素部110に与える。水平走査回路150は,読み出し回路130のうち,画素信号が出力される対象画素列を選択するためのコラム選択信号を与える。これにより、読み出し回路130は、画素部110からの特徴量画素信号を含む特徴量画像データを出力する。ここで、特徴量画像データは、後述するように例えば水平エッジ輝度信号を含む画像データである。
【0015】
コントローラ120は、垂直走査回路140及び水平走査回路150を介して画素部110及び読み出し回路130の動作を制御する制御回路である。なお、コントローラは、前述のコントローラ120だけでなく、垂直走査回路140及び水平走査回路150をも含む概念であってもよい。
【0016】
図2図1の画素部110の構成例を示すブロック図である。図2において、画素部110は、2次元アレイ状に配置された複数の画素回路111,111A,111B,111Cを備える。なお、画素回路は、単に、画素とも呼ばれる。
【0017】
図3図1の画素回路111A,111Cとその周辺回路の構成例を示す回路図である。図3において、J行目の1つの画素回路111A、及びJ+1行目の一つの画素回路111Cが示されている。画素部110に含まれる複数の画素回路111,111A,111Cは、共通の構造を有している。なお、図3では、画素回路111Cは、便宜的に、画素回路111Aに比べて簡略化されて描かれているが、実際には、画素回路111Aと同様の構造を有する。
【0018】
ここで、画素回路の構造について、J行目の画素回路111Aを例にして説明する。画素回路111Aは、4個の光電変換素子PD1~PD4を備える。光電変換素子PD1~PD4は、例えばフォトダイオードである。光電変換素子PD1~PD4は、光量に応じた量の電子の電荷を蓄積する。ここで、光電変換によって発生した電荷を、光電変換電荷といい、光電変換によって発生した電子を光電変換電子という。
【0019】
画素回路111Aは、光電変換素子PD1~PD4にそれぞれ接続された転送ゲートTG1~TG4を備える。転送ゲートTG1~TG4はそれぞれ、光電変換素子PD1~PD4に蓄積された電荷を転送する。なお、以下の各ゲートは例えばMOSトランジスタで構成され、ゲート・ソース間にHレベル信号が与えられると、ドレイン・ソース間が導通状態になってMOSトランジスタがオンされ、ゲート・ソース間にLレベル信号が印加されると、ドレイン・ソース間が非導通状態になりMOSトランジスタがオフされる。各転送ゲートTG1~TG4は、オンされると、光電変換素子PD1~PD4に蓄積された電荷を、後述する電荷蓄積部へ転送する。転送ゲートTGは、オフされると、光電変換素子PD1~PD4に蓄積された電荷の転送が阻止される。
【0020】
画素回路111Aは、光電変換素子PD1~PD4から、転送ゲートTGを介して、電荷の転送を受ける電荷蓄積部を備える。実施形態において、電荷蓄積部は、少なくとも、転送ゲートTG1~TG4に接続されたキャパシタであるフローティングディフュージョンFD(浮遊拡散層)を有する。ここで、フローティングディフュージョンFDは、光電変換素子PD1~PD4からの電荷の転送を受けられるようにそれぞれ転送ゲートTG1~TG4に接続される。
【0021】
画素回路111Aは、電荷蓄積部に接続されたリセットゲートRSTを備える。電荷蓄積部は、フローティングディフュージョンFD及びスイッチングゲートSGに接続されている。リセットゲートRSTは、フローティングディフュージョンFDと電源電圧VDDの間に接続され、電荷蓄積部に蓄積された電荷を排出する。ここで、リセットゲートRSTは、オンされると、電荷蓄積部であるフローティングディフュージョンFD又はスイッチングゲートSGに蓄積された電荷を電源へ排出する。このような電荷の排出をリセットという。リセットにより、電荷蓄積部の電位は、電源電圧VDDになる。リセットゲートRSTはオフされると、電荷の排出が阻止される。
【0022】
画素回路111Aは、後述の定電流源CSとともにソースフォロワ回路20を構成するソースフォロワトランジスタSFを備える。ソースフォロワトランジスタSFは、増幅トランジスタとも呼ばれる。ソースフォロワトランジスタSFは、ゲート端子がフローティングディフュージョンFD(電荷蓄積部)に接続され、ドレイン端子が電源電圧VDDに接続される。ソースフォロワトランジスタSFは、電荷蓄積部に蓄積された電荷量(及び電荷蓄積部のキャパシタ)に応じた電圧vx(画素信号)を、ソース端子に生じさせる。ソースフォロワトランジスタSFのソース端子に生じる電圧vx(画素信号)は、フローティングディフュージョンFDにおける電圧VFDからソースフォロワトランジスタSFのドレイン・ソース間電圧VGS分、低下した電圧(VFD-VGS)である。
【0023】
画素回路111Aはさらに、選択ゲートSELを備える。選択ゲートSELは、オンされると、ソースフォロワトランジスタSFのソース端子と画素信号の読み出しのための信号線21とを接続する。選択ゲートSELは、複数の画素回路111A,111C,111のうち、電荷蓄積部における電圧の読み出しの対象となる対象画素回路(対象画素)の選択のための素子である。対象画素回路が備える電荷蓄積部における電圧が、読み出し回路130によって読み出される。選択ゲートSELがオフされると、ソースフォロワトランジスタSFと信号線135との間を非接続にする。
【0024】
画素回路111Aはさらに、スイッチングゲートSGを備える。スイッチングゲートSGはオンされると、画素回路111Aの電荷蓄積部と、他の画素回路111Cの電荷蓄積部と、を接続する。スイッチングゲートSGはオフされると、画素回路111Aの電荷蓄積部と、他の画素回路111Cの電荷蓄積部とを非接続にする。すなわち、スイッチングゲートSGは、そのスイッチングゲートSGが設けられている画素回路111Aに設けられた電荷蓄積部と、画素回路111Aに隣接する他の画素回路111Cに設けられた電荷蓄積部と、の接続/非接続とを切り替えるための素子である。また、画素回路111AのスイッチングゲートSGがオンされると、画素回路111Aの電荷蓄積部(フローティングディフュージョンFD)と、画素回路111Cの電荷蓄積部(フローティングディフュージョンFD)とが接続される。
【0025】
読み出し回路130は、前述のソースフォロワトランジスタSFとともにソースフォロワ回路20を構成する定電流源CSを備える。定電流源CSは、信号線135に接続される。読み出し回路130は、定電流源CSに対して並列に、信号線135の中途に介在して設けられたCDSキャパシタCCDSを備える。CDSキャパシタCCDSは、後述の相関二重サンプリングに用いられる。読み出し回路130はさらに、クリップゲートCLPを備える。クリップゲートCLPは、オンされると、信号線135とグランドGNDとを接続する。クリップゲートCLPは、オフされると、信号線135とグランドGNDとを非接続にする。なお、前述の各ゲートは、コントローラ120によって、駆動制御される。
【0026】
以上のように構成されたイメージセンサ100では、一般的にベイヤー配列などの画素配置が用いられ、4画素(光電変換素子PD1~PD4)がひとつのセルを構成する。これらの4画素には、赤(R)、緑(G)、青(B)などのカラーフィルタが割当てられ、それぞれ、以下、Rフィルタ、Gフィルタ、Bフィルタという。例えば、光電変換素子PD1にRフィルタを、光電変換素子PD2,PD3にGフィルタを、光電変換素子PD4にBフィルタを配置する(後述する図6参照)。それぞれの画素には、カラーフィルタを通過した特定波長の光が入射され、光電変換電子が各光電変換素子PD1~PD4に蓄積される。各光電変換素子PD1~PD4に蓄積した電子をフローティングディフュージョンFDのノードに読み出すために、転送ゲートTG1~TG4が接続される。フローティングディフュージョンFDのノードに転送された電子を読み出すためのソースフォロワトランジスタSF、特定画素を選択するための選択ゲートSEL、フローティングディフュージョンFDをリセットするためのリセットゲートRSTは各PD1~PD4で共有される。また、画素セル間を接続するスイッチングゲートSGも各PD1~PDで共有される。
【0027】
図4は従来例の画素回路とその周辺回路の動作例を示すタイミングチャートである。また、図5図3の画素回路111A,111Cとその周辺回路の動作例を示すタイミングチャートである。
【0028】
図4の従来例のタイミングチャートに示すように、特徴量画像を出力するためには、まずJ行目のスイッチングゲートSGをオンした後、J行目のリセットゲートRSTをオンしてフローティングディフュージョンFDをリセットする。次に、J行目の転送ゲートTG1をオンして、R画素の蓄積電荷をフローティングディフュージョンFDに転送する。ここで、ソースフォロワトランジスタSFを介して画素アレイ(光電変換素子PD1)から出力された信号はクリップゲートCLPをオフすると、CDSキャパシタCCDSに保持される。
【0029】
再度J行目のリセットゲートRSTをオンしてフローティングディフュージョンFDをリセットする。次に、J+1行目の転送ゲートTG1をオンして、R画素の蓄積電荷をフローティングディフュージョンFDに転送する。ソースフォロワトランジスタSFを介して画素アレイ(光電変換素子PD1)から出力された信号と、CDSキャパシタCCDSに保持された信号から、出力信号voutはJ+1行目とJ行目のR画素(光電変換素子PD1)の差分信号(=水平エッジ信号)になる。
【0030】
同様に、光電変換素子PD2、PD3、PD4画素の差分信号を得る。各色の差分信号は、例えば画像認識装置(図13の40、図14の40A)にて次式を用いて輝度信号に変換した後、例えば深層機械学習の人工知能(AI)による画像認識を行う。
【0031】
Y=0.299R+0.587G+0.114B (1)
【0032】
一方、本実施形態に係る図5のタイミングチャートに示すように、転送ゲートTG1,TG2,TG3,TG4を同時にオンすることで、フローティングディフュージョンFDで4個の光電変換素子PD1~PD4の蓄積電荷を、簡易的に次式を用いて画素輝度信号Yに変換することができる。
【0033】
Y=R+2G+B (2)
【0034】
ここで、R,G,Bはそれぞれ各色の信号レベルを表す。
【0035】
以上説明したように、従来例では、光電変換素子PD1~PD4の4画素の水平エッジ信号を順次出力するために、合計4回水平エッジ信号を出力する必要がある。これに対して、本実施形態では、水平エッジ信号を1回出力するのみであり、信号量を1/4に減らすことができる。また、4個の光電変換素子PD1~PD4の蓄積をフローティングディフュージョンFDで合算するため、従来例と同等の信号量を得るための露光時間は1/4に短縮することが可能であり、感度を向上することができる。露光時間が一定の場合は信号量が4倍になるため、フローティングディフュージョンFDのリセットノイズに対するSN比は4倍に向上することができる。
【0036】
図6A図3の4個のフォトダイオードに対するベイヤー配列のカラーフィルタの配置例を示す図である。図6Aは上述の実施形態1で説明したカラーフィルタの配置である。このベイヤー配列以外にも、Rフィルタの数を多くする図6BのRGBR配列、あるいは、Bフィルタの数を多くする図6CのRBBG配列を用いることができる。
【0037】
図7は一般的なイメージセンサにおける光が侵入する深さに対する光強度の特性を示すグラフである(例えば、非特許文献5参照)。
【0038】
人間は緑の輝度変化に感度が高いため、Gフィルタの数を多くすることで、視覚的な解像度が高めることができる。しかし、機械学習による画像分類を考慮した場合、RGBR配列やRBBG配列を採用することができる。これは、イメージセンサにおける光が侵入する深さと光強度の関係に基づいている。一般的なイメージセンサでは光電変換素子PDの深さは2μm程度であり、波長の短い青色光は十分に吸収されるが、波長の長い赤色光は60%以上も透過する。これは、青色光は100%近く光電変換されるが、赤色光は40%程度しか光電変換されないことを意味する。
【0039】
したがって、RGBR配列を採用した場合、輝度変換式がY=2R+G+Bとなり、赤色光の感度不足を補うことができる。また、RGGB配列を採用した場合、輝度変換式がY=R+G+2Bとなり、感度の高い青色光を強調して高い輝度信号を得ることができる。
【0040】
以上説明したように、本実施形態によれば、例えば水平エッジ信号(水平エッジの特徴量を含む)を含む特徴量画像データを生成して出力することができ、RGBR配列により赤色光の感度不足を補うことができ、また、RGGB配列により高い輝度信号を得ることにより、アプリケーションや画像分類対象に応じて分類(クラスタリング)精度を向上することができる。すなわち、輝度変換式がY=2R+G+B又はY=R+G+2Bなどの特徴量を抽出可能なイメージセンサを構成できる。
【0041】
(実施形態2)
図8は実施形態2に係る画素回路111とその周辺回路の構成例を示す回路図であり、図9図8の画素回路111とその周辺回路の動作例を示すタイミングチャートである。図8の回路は、図3の回路に比較して以下の相違点を有する。
(1)各列の画素回路111の出力端子と信号線22との間に、AD変換器(ADC)11及びコラムスイッチCOLを備える。ここで、コラムスイッチCOLは前記コントローラにより制御される例えばMOSトランジスタで構成される。
(2)信号線22と、読み出し回路130の出力端子25との間に、フリップフロップ13の帰還回路(しきい値設定回路)を有するヒステリシス特性(図10B)のコンパレータ12を備える。すなわち、コンパレータ12は読み出し回路130に設けられる。
以下、相違点について説明する。
【0042】
図8において、各列の画素回路111からの水平エッジ信号は、各列に備えるAD変換器11によりアナログ/デジタル変換される。例えばAD変換分解能を10ビットとする。各列の画素回路111からのデジタル出力信号は、図9のタイミングチャートに示すように、各列のコラムスイッチCOLを順次オンして信号線22に選択的に読み出される。読み出された10ビットのデジタル信号はコンパレータ12で1ビットのデジタル信号に二値化変換された後、出力端子25を介して出力信号(画素信号)として出力される。すなわち、コンパレータ12はバイナライザ(2値化器)として機能する。ここで、フリップフロップ13は、I+1行目の信号を二値化する際には、既に二値化して格納されたI列目の信号を、二値化のしきい値として設定する。
【0043】
図10Aは一般的な水平エッジ信号の確率密度分布を示すグラフであり、図10B図8のコンパレータ12の入出力特性を示すグラフである。
【0044】
前記水平エッジ信号は、図10Aに示すように、その値がエッジのない0を中心に分布する。しかし、0付近には微小なエッジの他に、ノイズが含まれる。そのため、単純に0以上/以下で二値化すると、ノイズを増幅してしまい水平エッジ信号が劣化する。そこで、I+1行目を二値化する際には、I行目の信号の値が0の場合はしきい値を高く設定して0(Lレベル)と判定する確率を上げる。逆に、I行目の信号の値が1の場合はしきい値を高く設定して1(Hレベル)と判定する確率を上げる。
【0045】
以上説明したように、実施形態2によれば、隣接画素の水平エッジ信号をもとに二値化することで、同じコードが連続しやすくなり、高周波ノイズを低減する。ノイズを低減することで、画像分類の精度を向上する。また、二値化することで、データ量を1/10に削減することができる。
【0046】
(実施形態3)
図11は実施形態3に係る画素回路111とその周辺回路の構成例を示す回路図である。図11の回路は、図8の回路に比較して以下の相違点を有する。
(1)出力端子25の直前に設けたコンパレータ12及びフリップフロップ13に代えて、各列のAD変換器11と出力端子25との間に、コンパレータ12とコラムスイッチCOLを挿入するように備える。ここで、例えばI列目のコンパレータ12の出力信号を、隣接する(I+1)列目のコンパレータ12のしきい値として用いることで、図8のフリップフロップ13と同様の機能を実現する。隣接するコンパレータ12は同様に前方向に隣接する列のコンパレータ12からしきい値を入力するように構成される。
【0047】
以上説明したように、実施形態3によれば、隣接画素の水平エッジ信号をもとに二値化することで、同じコードが連続しやすくなり、高周波ノイズを低減する。ノイズを低減することで、画像分類の精度を向上する。また、二値化することで、データ量を1/10に削減することができる。さらに、水平転送信号のビット数を10ビットから1ビットに低減することで、水平転送に必要な消費電力を低減する。
【0048】
(実施形態4)
図12は実施形態4に係る図1のイメージセンサ100を用いた画像分類システムの構成例を示すブロック図である。図12の画像分類システムは、特徴量を抽出可能な図1のイメージセンサ100と、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)30と、特徴量抽出回路31と、ラベル付き公開データセットメモリ32と、ラベル付き特徴量データセットメモリ33とを備える。
【0049】
図12において、ラベル付き公開データセットメモリ32は、一般的なカラー画像データからなるラベル付公開データセット(クラスタリングのための正解ラベルと、カラー画像データとが対となったデータセットをいう)を格納する。特徴量抽出回路31は、ラベル付公開データセットに基づいて、所定の特徴量を計算して抽出してラベル付き特徴量データセットメモリ33に格納する。すなわち、ラベル付き特徴量データセットメモリ33は、クラスタリングのための正解ラベルと、カラー画像データと、特徴量とが対となったデータセットを格納する。
【0050】
畳み込みニューラルネットワーク(CNN)30は公知のCNNであって、学習時に、ラベル付き特徴量データセットメモリ33に格納された複数のデータセットを用いて学習された後、分類時には、例えば水平エッジなどの特徴量を抽出可能な図1のイメージセンサ100からのカラー画像データに基づいてクラスタリング処理を実行することで、分類結果データを得て出力する。
【0051】
本実施形態では、ラベル付き特徴量データセットから特徴量を抽出することで、低コストで画像分類装置であるCNN30を学習させるための特徴量学習データセットを生成する。この特徴量学習データセットを用いてCNN30を学習させることで、特徴量抽出可能なCMOSイメージセンサを用いた画像分類の精度を向上させる。
【0052】
以上説明したように、本実施形態によれば、深層学習による画像分類器であるCNN30の学習のためには、多量の画像の収集および熟練者による画像への正解ラベル付作業が必要であり、大きなコストが必要となる。しかし、カラー画像データを含むラベル付公開データセットに基づいて特徴量学習データセットを生成することで、大幅に人的コストを削減し、低コストで高精度な特徴量に係る画像分類システムを実現することができる。
【0053】
以上の実施形態において、CNN30を備えているが、本発明はこれに限らず、公知の深層学習モデルで構成されたディープニューラルネットワーク(DNN)を備えてもよい。
【0054】
(実施形態5)
図13は実施形態5に係る図1のイメージセンサ100を用いた画像認識システムの構成例を示すブロック図である。図13の画像認識システムは、例えば水平エッジなどの特徴量を抽出可能な図1のイメージセンサ100と、認識検知回路41を有する画像認識装置40とを備えて構成される。
【0055】
図13において、イメージセンサ100は、例えばエッジ抽出で使用されるようなエッジ(微分)を含む画像フィルタ処理された特徴量画像データを画像認識装置40の認識検知回路41に出力する。認識検知回路41は例えば機械学習モデルを用いて構成され、入力された特徴量画像データから画像データの認識結果を出力する。
【0056】
以上説明したように、本実施形態によれば、イメージセンサ100内で完結して画素フィルタを構成でき、画像認識装置40等の画像処理回路で必要なフィルタ処理を軽減できる。フィルタ機能と同時にデータ量を圧縮することでイメージセンサ100の固体撮像素子と画像認識装置40間のインターフェイス速度を落とすことで消費電流を低減できる。
【0057】
(実施形態6)
図14は実施形態6に係る図1のイメージセンサ100を用いた画像認識システムの構成例を示すブロック図である。図14の画像認識システムは図13の画像認識システムに比較して以下の点が異なる。
(1)画像認識装置40に代えて、学習結果メモリ42と認識検知回路41Aとを備える画像認識装置40Aを備える。
以下、相違点について説明する。
【0058】
図14において、学習結果メモリ42は例えば水平エッジなどの特徴量抽出後のラベル付きデータセットを格納する。認識検知回路41Aは例えば機械学習モデルを用いて構成され、学習時に、学習結果メモリ42内のデータセットに基づいて学習された後、認識時に、イメージセンサ100から入力された特徴量画像データに基づいて画像データの認識結果を出力する。
【0059】
以上説明したように、本実施形態によれば、特徴量抽出後のラベル付きデータセットを用いた学習された認識検知回路41Aを使用することで、認識検知回路41Aは、イメージセンサ100に最適な学習モデルを備え、高精度に認識/検知をすることができる。
【0060】
(変形例)
実施形態4に係る画像分類システムと、実施形態5又は6に係る画像認識システムとは、例えば画像処理システムの一例である。
【産業上の利用可能性】
【0061】
以上詳述したように、本発明に係る固体撮像装置によれば、固体撮像装置における画素の制御タイミングを変更するだけで簡易的な輝度信号変換ができ、簡単な回路により低ノイズで二値化を行うことができる。これにより、画素制御方法の変更と小規模な回路追加によって、従来技術に比較して大幅にデータ量を削減でき、演算コストを小さくすることで、消費電力を低減できる。特に、固体撮像装置のイメージセンサ内での特徴量演算に加えて、輝度信号変換と二値化処理を行うことで、イメージセンサと画像認識器の間のデータ通信量を削減し、画像認識システムの消費電力を大幅に低減できる。
【符号の説明】
【0062】
11 AD変換器(ADC)
12 コンパレータ
13 フリップフロップ
20 ソースフォロワ回路
21,22,23 信号線
25 出力端子
30 畳み込みニューラルネットワーク(CNN)
31 特徴量抽出回路
32 ラベル付き公開データセットメモリ
33 ラベル付き特徴量データセットメモリ
40,40A 画像認識装置
41,41A 認識検知回路
42 学習結果メモリ
100 イメージセンサ(固体撮像装置)
110 画素部
111,111A,111B,111C 画素回路
120 コントローラ
130 読み出し回路
140 垂直走査回路
150 水平走査回路
CDS CDSキャパシタ
COL コラムスイッチ
CLP クリップゲート
CS 定電流源
FD フローティングディフュージョン
PD1~PD4 光電変換素子
Q1~Q15 MOSトランジスタ
RST リセットゲート
SF ソースフォロワトランジスタ
SEL 選択ゲート
SG スイッチングゲート
TG,TG1~TG4 転送ゲート
vout 出力信号(画素信号)
vx 画素信号
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11
図12
図13
図14