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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115393
(43)【公開日】2024-08-26
(54)【発明の名称】ガラス振動板
(51)【国際特許分類】
   H04R 7/04 20060101AFI20240819BHJP
   H04R 1/00 20060101ALI20240819BHJP
   H04R 1/02 20060101ALI20240819BHJP
   B60J 1/00 20060101ALI20240819BHJP
【FI】
H04R7/04
H04R1/00 310F
H04R1/02 102B
B60J1/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021065
(22)【出願日】2023-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 研人
(72)【発明者】
【氏名】秋山 順
【テーマコード(参考)】
5D016
5D017
【Fターム(参考)】
5D016AA01
5D016FA02
5D017AE11
(57)【要約】
【課題】ガラス板構成体を振動させて音を発生させる構成において、所望の音圧を実現できるガラス振動板を得る。
【解決手段】ガラス振動板10は、ガラス板構成体18と、ガラス板構成体18に取付けられてガラス板構成体18を加振させると共に、ガラス板構成体18を一体として振動可能なピストン振動域が100[Hz]以上であるアクチュエータ22と、を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス板構成体と、
前記ガラス板構成体に取付けられて前記ガラス板構成体を加振させると共に、前記ガラス板構成体を一体として振動可能なピストン振動域が100[Hz]以上であるアクチュエータと、
を有するガラス振動板。
【請求項2】
前記ガラス板構成体は、一枚又は複数枚のガラス板を含んで構成され、
前記アクチュエータが取付けられた一枚の前記ガラス板は、厚さが0.5[mm]以上である、請求項1に記載のガラス振動板。
【請求項3】
前記ガラス板構成体には、前記アクチュエータが複数取付けられる、請求項1に記載のガラス振動板。
【請求項4】
前記アクチュエータは、前記ガラス板構成体における周端部分を除く領域に取り付けられる、請求項1に記載のガラス振動板。
【請求項5】
前記アクチュエータは、前記ガラス板構成体における周端部分に複数取り付けられる、請求項1に記載のガラス振動板。
【請求項6】
前記アクチュエータは、マウント部を介して前記ガラス板構成体に取付けられており、
前記マウント部は、前記アクチュエータよりも外形が大きく形成されている、請求項1に記載のガラス振動板。
【請求項7】
前記ガラス板構成体は、車両のウィンドシールド、サイドガラス、リアガラス、リアクォーターガラス、フロントベンチガラス及びルーフガラスの少なくとも1つとして用いられる、請求項1に記載のガラス振動板。
【請求項8】
前記ガラス板構成体の周端部分には遮光層が設けられており、
前記遮光層と重なる位置に前記アクチュエータが取付けられる、請求項1に記載のガラス振動板。
【請求項9】
前記ガラス板構成体は、一対のガラス板と、該一対のガラス板に挟持された中間層とを含んで構成されている、請求項1~7の何れか1項に記載のガラス振動板。
【請求項10】
前記アクチュエータは、前記ガラス板構成体と車体とに跨って配置されている、請求項7に記載のガラス振動板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス振動板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ガラス板を振動させることでスピーカとして機能させる技術が検討されている。特許文献1には、外側ガラス層、内側ガラス層及び中間層を備えた合わせガラスにトランデューサを封入することで、合わせガラスをスピーカとして機能させる構造が開示されている。また、特許文献2には、車両のウィンドシールドに複数のエキサイタを取り付けることで、ウィンドシールドをスピーカとして機能させる構造が開示されている。特許文献3には、車両用窓ガラスに音響発生器を配置し、車両用窓ガラスを振動させて音響を出力する構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2022/009180号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2015/0298656号明細書
【特許文献3】特開2021-180486号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1~3のようにガラス板にアクチュエータを取付けたガラス振動板において、加振部分とガラス板のエッジとで振動の方向が逆になる分割振動域では、振動が打ち消される可能性がある。このため、所望の音圧を得るためには、ガラス板の表面が一様に振動するピストン振動域において加振させることが重要である。
【0005】
本発明は、ガラス板構成体を振動させて音を発生させる構成において、所望の音圧を実現できるガラス振動板を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るガラス振動板は、ガラス板構成体と、前記ガラス板構成体に取付けられて前記ガラス板構成体を加振させると共に、前記ガラス板構成体を一体として振動可能なピストン振動域が100[Hz]以上であるアクチュエータと、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るガラス振動板では、所望の音圧を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係るガラス振動板を備えた車両を斜め後方から見た概略斜視図である。
図2】第1実施形態に係るガラス振動板を車両前方側から見た図である。
図3図2の3-3線で切断した状態を拡大して示す要部拡大断面図である。
図4】変形例1のガラス振動板を示す図である。
図5】変形例2のガラス振動板を示す図である。
図6】変形例3のガラス振動板を示す図である。
図7】変形例4のガラス振動板を示す図である。
図8】変形例5のガラス振動板を示す図である。
図9】第2実施形態に係るガラス振動板を車両幅方向内側から見た図である。
図10】変形例6のガラス振動板を示す図である。
図11】第3実施形態に係るガラス振動板を車両幅方向内側から見た図である。
図12】変形例7のガラス振動板を示す図である。
図13】変形例8のガラス振動板を示す図である。
図14】変形例9のガラス振動板を示す図である。
図15】第4実施形態に係るガラス振動板を車両幅方向外側から見た図である。
図16】変形例10のガラス振動板を示す図である。
図17】第5実施形態に係るガラス振動板を車両下方側から見た図である。
図18】変形例11のガラス振動板を示す図である。
図19】第6実施形態に係るガラス振動板を車両下方側から見た図である。
図20】変形例12のガラス振動板を示す図である。
図21】他の例のガラス振動板を示す図である。
図22】他の例のガラス振動板を示す図である。
図23】ピストン振動域と分割振動域を説明するためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面に従って本発明に係るガラス振動板の好ましい実施形態について説明する。なお、以下においては車両用窓ガラスにガラス振動板を適用した場合について説明するが、本発明に係るガラス振動板は車両に関わらず、飛行機、ヘリコプター、船舶及び電車などの移動体に適用されてもよい。
【0010】
<第1実施形態>
第1実施形態に係るガラス振動板について、図面を参照して説明する。
【0011】
図1は、ガラス振動板を備えた車両Vを斜め後方から見た概略斜視図である。図1に示されるように、本実施形態のガラス振動が適用された車両Vの車体側面には、車両前方側から順に、フロントサイドガラス12、リアサイドガラス14及びリアクォータ―ガラス16が設けられている。フロントサイドガラス12、リアサイドガラス14及びリアクォータ―ガラス16は、車両Vの左右両側の車体側面に設けられて車室内と車室外とを隔成する窓ガラスである。
【0012】
フロントサイドガラス12は、車両本体に昇降可能に取り付けられている。なお、フロントサイドガラス12は、単板ガラスでもよいし、2枚のガラス板が樹脂製の中間層により接着された合わせガラスでもよい。
【0013】
リアサイドガラス14は、フロントサイドガラス12よりも車両後方側に取り付けられており、車両本体に昇降可能に取り付けられている。なお、リアサイドガラス14は、単板ガラスでもよいし、2枚のガラス板が樹脂製の中間層により接着された合わせガラスでもよい。
【0014】
リアクォータ―ガラス16は、リアサイドガラス14よりも車両後方側に取り付けられており、車両本体に対して昇降不能な状態で固定された固定窓である。また、本実施形態のリアクォータ―ガラス16は単板ガラスでもよいが、一例として、2枚のガラス板が樹脂製の中間層により接着された合わせガラスによって形成されている。
【0015】
車両Vの後面には、リアガラス18が取り付けられている。リアガラス18は、車両本体に対して昇降不能な状態で固定されている。なお、リアガラス18は単板ガラスである場合が多いが、2枚のガラス板が樹脂製の中間層により接着された合わせガラスでもよい。
【0016】
車両Vの前面には、図示しないウィンドシールドが取り付けられている。ウィンドシールドは、2枚のガラス板が樹脂製の中間層により接着された合わせガラスによって形成されており、車両本体に対して昇降不能な状態で固定されている。
【0017】
ウィンドシールドとフロントサイドガラス12との間には、図示しないフロントベンチガラスが車両Vの左右両側に取り付けられており、車両本体に対して昇降不能な状態で固定されている。なお、フロントベンチガラスは、単板ガラスでもよいが、2枚のガラス板が樹脂製の中間層によって接着された合わせガラスでもよい。
【0018】
車両Vの天井には、ルーフガラス20が取り付けられている。ルーフガラス20は、車両本体に対して移動不能な状態で固定されている。なお、ルーフガラス20は、開閉可能に構成されてもよい。また、ルーフガラス20は、単板ガラスでもよいが、2枚のガラス板が樹脂製の中間層で接着された合わせガラスでもよい。
【0019】
以下に説明する第1実施形態では、リアガラス18にガラス振動板を適用した場合について説明し、第2実施形態では、リアクォータ―ガラス16にガラス振動板を適用した場合について説明する。また、第3実施形態では、ハッチバック車両におけるフロントサイドガラスにガラス振動板を適用した場合について説明し、第4実施形態では、ハッチバック車両におけるリアサイドガラスにガラス振動板を適用した場合について説明する。さらに、第5実施形態では、円形のルーフガラスにガラス振動板を適用した場合について説明する。
【0020】
なお、ガラス振動板は、第1実施形態から第5実施形態に限定されず、他の窓ガラスに適用してもよい。例えば、ウィンドシールド及びフロントベンチガラスなどにアクチュエータとしての振動子を取り付けることでガラス振動板として機能させてもよい。また、車両以外の窓ガラスにガラス振動板を適用してもよく、建築物の窓ガラスにガラス振動板を適用してもよい。
【0021】
図2は、第1実施形態に係るガラス振動板10を車両前方側から見た図であり、図3は、図2の3-3線で切断した状態を拡大して示す要部拡大断面図である。なお、図2及び図3において、X軸は、ガラス振動板10を車両に組付けた状態の車両幅方向を示しており、車両右側がX軸の正方向と一致する。また、Y軸は、車両前後方向を示しており、車両前側がY軸の正方向と一致する。さらに、Z軸は、鉛直方向を示しており、車両上方側がZ軸の正方向と一致する。図4図18についても同様である。
【0022】
図2に示すように、ガラス振動板10は、ガラス板構成体としてのリアガラス18と、アクチュエータとしての振動子22とを含んで構成されている。リアガラス18は、単板ガラスによって構成されているが、合わせガラスによって構成してもよい。リアガラス18は、透明又は半透明の無機ガラスによって形成されている。無機ガラスとしては、例えば、ソーダライムガラス、アルミノシリケートガラス、ホウ珪酸ガラス、無アルカリガラス及び石英ガラスなどが使用できる。
【0023】
リアガラス18が、無機ガラスであり、かつ単板ガラスである場合、リアガラス18は強化ガラスであることが好ましい。強化ガラスは、強化処理されていないガラスの表面に圧縮応力層を形成したものであり、風冷強化ガラス、化学強化ガラスのいずれでもよい。強化ガラスが物理強化ガラス(例えば、風冷強化ガラス)である場合、曲げ成形において均一に加熱したガラス板を軟化点付近の温度から急冷させるなど、徐冷以外の操作により、ガラス表面とガラス内部との温度差によってガラス表面に圧縮応力層を生じさせることで、ガラス表面を強化してもよい。強化ガラスが化学強化ガラスである場合、曲げ成形の後、イオン交換法などによってガラス表面に圧縮応力を生じさせることでガラス表面を強化してもよい。
【0024】
リアガラス18が2枚のガラス板が樹脂製の中間層で接着された合わせガラスの場合、2枚のガラスとも未強化ガラスであってもよいし、一方のみ強化ガラスであってもよいし、2枚とも強化ガラスであってもよい。2枚とも強化ガラスの場合は、2枚とも風冷強化ガラスであってもよいし、2枚とも化学強化ガラスであってもよいし、一方が冷強化ガラスで他方が化学強化ガラスであってもよい。
【0025】
リアガラス18は、有機ガラスによって形成されてもよい。有機ガラスとしては、例えば、PMMA(polymethyl methacrylate)系樹脂、PC(polycarbonate)系樹脂、PS(polystyrene)系樹脂、PET(polyethyleneterephthalate)系樹脂、PVC(polyvinyl chloride)系樹脂、及びセルロース系樹脂などが使用できる。
【0026】
リアガラス18が1枚の単板ガラスである場合、リアガラス18の厚さは、0.5[mm]以上が好ましく、1.0[mm]以上がより好ましく、1.5[mm]以上がさらに好ましい。これにより、リアガラス18の剛性及び強度が向上し、ピストン振動しやすくなる。また、リアガラス18が1枚の単板ガラスである場合、ガラス振動板10を軽量化させる観点で、リアガラス18の厚さは、10.0[mm]以下が好ましく、7.0[mm]以下がより好ましく、5.0[mm]以下がさらに好ましい。
【0027】
リアガラス18を2枚のガラス板が樹脂製の中間層により接着された合わせガラスで構成する場合、リアガラス18を構成する一対のガラス板の厚さはそれぞれ、0.5[mm]以上が好ましく、1.0[mm]以上がより好ましく、1.5[mm]以上がさらに好ましい。なお、リアガラス18を構成する一対のガラス板の厚さは、同じでもよく異なっていてもよいが、音圧を安定させる観点で同じ厚さが好ましい。さらに、リアガラス18の総厚は、1.0[mm]以上が好ましく、2.0[mm]以上がより好ましく、3.0[mm]以上がさらに好ましい。また、ガラス振動板10を軽量化させる観点で、10.0[mm]以下が好ましく、8.0[mm]以下がより好ましく、6.0[mm]以下がさらに好ましい。
【0028】
リアガラス18を合わせガラスとする場合の中間層は、透明のポリビニルブチラール(PVB)系やエチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)系樹脂膜、シリコーン(PDMS)系、ポリウレタン系、フッ素系、ポリエチレンテレフタレート系、ポリカーボネート系等の熱硬化型接着材料を含む樹脂膜が例示できる。また、中間層には、遮音性を高める材料、剛性を高める材料、及び紫外線や赤外線を吸収する材料などを添加してもよい。なお、中間層は、液状やゲル状の中間層であってもよい。液状の中間層としては、具体的には、水、オイル、有機溶剤、液状ポリマー、イオン性液体及びそれらの混合物等が挙げられる。より具体的には、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ストレートシリコーンオイル(ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル)、変性シリコーンオイル、アクリル酸系ポリマー、液状ポリブタジエン、グリセリンペースト、フッ素系溶剤、フッ素系樹脂、アセトン、エタノール、キシレン、トルエン、水、鉱物油、及びそれらの混合物、等が挙げられる。中でも、プロピレングリコール、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル及び変性シリコーンオイルからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、プロピレングリコール又はシリコーンオイルを主成分とすることがより好ましい。ゲル状の中間層としては、具体的には、炭素系、フッ素系、またはシリコーン系の高分子系材料が挙げられる。具体的には、ABS、AES、AS、CA、CN、CPE、EEA、EVA、EVOH、IO、PMMA、PMP、PP、PS、PVC、RB、TPA、TPE、TPEE、TPF、TPO、TPS、TPU、TPVC、AAS、ACS、PET、PPE、PA6、PA66、PBN、PBT、PC、POM、PPO、ETFE、FEP、LCP、PEE
K、PEI、PES、PFA、PPS、PSV、PTFE、PVDF、シリコーン、ポリウレタン、PI、PFなどが挙げられる。または上記材料を組み合わせた複合材料などが挙げられる。上記材料は1種のみを用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中間層の厚さは、例えば、0.1[μm]以上3.0[mm]以下で設定してもよく、1.0[μm]以上2.8[mm]以下で設定してもよく、3.0[μm]以上2.6[mm]以下で設定してもよい。
【0029】
リアガラス18の周端部分には、黒色または暗色、その他白色などのカラーセラミックス層や、有機インク、無機インクを印刷したカラーインク層などで形成された所定幅の遮光層32が設けられている。遮光層32は、リアガラス18の外周端部に沿って一周に亘って連続して設けられているが、少なくとも一部に遮光層32を備えない領域を有してもよい。遮光層32は、例えば、リアガラス18と車体とを接合する接着剤を重なる位置に設けられており、遮光層32によって車両Vの外部から接着剤などが視認できない構造となっている。
【0030】
リアガラス18において、周端部分を除く領域には、振動子22が取り付けられている。具体的には、振動子22は、リアガラス18の中央部分に取り付けられている。
【0031】
振動子22は、ガラスに直接接着されていてもよいが、図3に示すように、振動子22は、マウント部24を介してリアガラス18に取付けられると、故障時の部品交換の面などからより好ましい。マウント部24は、ステンレス、アルミニウム、チタンなどを含む金属で形成されてもよく、マウント部24の少なくとも一部がプラスチックなどの樹脂で形成されてもよい。プラスチックとしては、ABS系、PVC系、PC系、PP系、PBT系、PA66系及びPPS系などの一般的なエンジニアリングプラスチックが使用されてもよく、ガラス繊維や炭素繊維を含む繊維強化プラスチックなどが使用されてもよい。また、マウント部24のヤング率Eは、1×10[Pa]以上であればよく、5×10[Pa]以上が好ましく、1×10[Pa]以上がより好ましい。
【0032】
マウント部24の厚さは薄いほど低背化できる点で好ましく、50[mm]以下が好ましく、30[mm]以下がより好ましく、20[mm]以下がさらに好ましく、10[mm]以下がとくに好ましい。
【0033】
マウント部24は、扁平の円柱状に形成されているが、平面視で円形以外の形状に形成されもよく、例えば、矩形状及び多角形状に形成されてもよい。また、マウント部24は、振動子22と同じ径に形成されているが、振動子22よりも大径に形成してもよい。マウント部24の直径を振動子22の直径よりも大きく形成すれば、マウント部24を介して振動子22がリアガラス18を加振する領域を広げることができ、ピストン振動しやすくなる。一方で、マウント部24を振動子22と同じ直径に形成すれば、透明な領域が広くなり、視認性が向上する。
【0034】
マウント部24には、振動子22を機械的に締結するための孔部24Aが形成されている。孔部24Aは、マウント部24の中央における振動子22側の面に形成されており、振動子22が安定して取付けられるネジ孔が例示できる。
【0035】
振動子22におけるマウント部24側には、接続部28が設けられている。接続部28は、マウント部24の孔部24Aと螺合される雄ネジ部が例示できる。また、接続部28が孔部24Aに螺合された状態で、マウント部24と振動子22とが面接触される。なお、マウント部24の一部をプラスチックなどの樹脂で形成する場合、マウント部24において少なくとも孔部24Aとなるネジ孔の周辺がヘリサート挿入等により、ステンレスなどの硬質金属で形成され、他の部分以外がアルミニウムなどの軟質金属やプラスチックなどの樹脂で形成されてもよい。
【0036】
また、振動子22の中央部分に接続部28を設けず、振動子22の周端部及びマウント部24の周端部からそれぞれ外周側へ取付片を延出させ、取付片同士を締結してもよい。この場合、マウント部24における振動子22との接触部分の厚さを薄く形成できる。
【0037】
マウント部24は、接着層26を介してリアガラス18の主面に固定されている。接着層26は、マウント部24と同じ外形に形成されており、接着剤及び粘着剤などを適宜使用できる。粘着剤として、シート状に形成された粘着テープを使用できる。また、接着剤として、シート状の熱硬化型樹脂材料等を用いてもよい。
【0038】
接着層26の厚さは、薄い方が振動子22からの振動をリアガラス18に効果的に伝達できるので、3.0[mm]以下であればよく、1.0[mm]以下が好ましく、0.5[mm]以下がより好ましく、0.2[mm]以下が特により好ましい。
【0039】
また、マウント部24を設けずに接着層26を介して振動子22を直接リアガラス18に(接着)固定してもよい。
【0040】
なお、リアガラス18が、導電性金属を含有するペースト(例えば、銀ペースト等)をリアガラス18の車内側の主面に印刷して焼付けることによって形成された導電線(例えば、デフォッガやアンテナ等)を備えている場合、振動子22、および/またはマウント部24は導電線と重ならないように取り付けられることが好ましい。
【0041】
また、リアガラス18には、コーティング材がコーティングされていてもよい。コーティング材としては、Low-E(Low Emissivity)材、AG(Anti-Glare)コーティング材、AR(Anti-Reflection)コーティング材、AF(Anti-Fingerprint)コーティング材、UV(ultraviolet)カットコーティング材、防曇コーティング材、防カビコーティング材及び撥水コーティング材等を用いてもよい。
【0042】
さらに、リアガラス18は、青色、赤色、緑色、灰色等で焼付けされたカラーガラスでもよく、調光ガラスでもよい。例えば、PDLC(Polymer Dispersed Liquid Crystal)フィルム、エレクトロクロミック材料、フォトクロミック材料などが用いられる。
【0043】
振動子22は、図示しない電源に接続されており、入力される電気信号に応じてガラス板構成体であるリアガラス18を振動させる。本実施形態の振動子22は一例として、コイル部と磁気回路とを含んだボイスコイルモータとされており、コイル部及び磁気回路の一方がリアガラス18に固定され、他方がリアガラス18に対して相対移動可能に配置されている。そして、コイル部に電流が流れることで、コイル部と磁気回路との相互作用によって振動が発生し、マウント部24を介してリアガラス18を振動(加振)させる。振動方向は、振動子22の厚さ方向である。なお、振動子22は、ボイスコイルモータに限定されず、リアガラス18へ所望の振動を伝達可能なアクチュエータであれば、ピエゾ方式等、ボイスコイルモータ以外のアクチュエータを採用し得る。
【0044】
ここで、振動子22のピストン振動域は、100[Hz]以上に設定されている。ピストン振動域とは、リアガラス18を一体として振動可能な振動域を指しており、リアガラス18の表面が一様に振動する振動域である。このピストン振動域について、図23のグラフを参照して説明する。
【0045】
図23は、ピストン振動域と分割振動域を説明するためのグラフである。図23に示すように、グラフの横軸は、周波数を示している。グラフの縦軸は、音圧レベル及びインピーダンスを示しており、グラフ中の実線L1は、周波数と音圧レベルとの関係を示している。また、グラフ中の破線L2は、周波数とインピーダンスとの関係を示している。なお、グラフの詳細については、「スピーカー&エンクロージャー大全」(佐伯多門著、誠文堂新光社、2018年)などに記載されている。
【0046】
例えば、実線L1は、振動子22にスイープ信号を印加し、マイクロフォンによる音圧測定と加速度センサによる振動測定の結果から周波数レスポンスを測定したものである。実線L1を見ると、最低共振周波数よりも高い周波数域で音圧レベル及び振動レベルが大きく低下する周波数が存在する(一点鎖線C)。
【0047】
破線L2は、振動子22にかかる周波数ごとのインピーダンスを測定したものであり、音圧レベル及び振動レベルが大きく低下する周波数で、インピーダンスが僅かに上昇するピークが存在する(一点鎖線C)。このときの周波数は、所謂「中音の谷」であり、ピストン振動域と分割振動域との境界となる。
【0048】
すなわち、中音の谷よりも低周波数の領域は、ガラス振動板10が剛体として動作するピストン振動域であり、ガラス板(リアガラス18)の表面が一様に振動することで、音圧レベルが比較的フラットな性能を有する。
【0049】
これに対して、中音の谷よりも高周波数の領域は、ガラス板(リアガラス18)が一体として動作しなくなり、音圧レベルが安定しない分割領域となる。
【0050】
本実施形態では、ピストン振動域が100[Hz]以上に設定されているため、高い周波数までピストン振動が可能となり、所望の音圧を得ることができる。特に、自動車用ガラスや建築用ガラスなどに用いるガラス板のように、厚さが0.5[mm]以上のガラス板構成に振動子22を取付けることで、ガラス振動板10を剛体として動作させやすくなり、高い周波数までピストン振動が可能となる。
【0051】
逆に、厚さが0.5[mm]未満の比較的薄いガラス板(ガラスシート)に振動子22を取付けた場合、自動車用ガラスや建築用ガラスなどに用いるガラスのように面積が大きいガラスでは、ガラス板が一体として動作しなくなり、容易に分割振動することがある。
【0052】
また、図2に示すように、本実施形態では、リアガラス18の中央部分に振動子22が取付けられているため、リアガラス18の周端部分に振動子22を取付けた構造と比較して、リアガラス18の表面を一様に振動させやすい。すなわち、比較的厚いガラス板に振動子22を取付ける場合でも、適切な加振位置に振動子22を取付けなければ所望のピストン振動が得られない。本実施形態では、振動子22の取付位置を上記の範囲に設定することで、音圧レベルが安定し、所望の音圧を得ることができる。
【0053】
(変形例1)
図4は、変形例1のガラス振動板10を示す図である。図4に示すように、本変形例では、振動子22は、リアガラス18の中央部分よりも上方に配置されている。具体的には、振動子22は、リアガラス18の中央部分よりも上方で、かつ、遮光層32が設けられた周端部分よりも下方に配置されている。
【0054】
リアガラス18の図心(重心)に振動子22を配置した場合、定在波(定常波)が生じる可能性がある。本変形例では、振動子22をリアガラス18の図心(重心)から離れた位置に配置することで、定在波(定常波)が生じるのを抑制できる。
【0055】
また、振動子22をリアガラス18の上部に配置することで、車両Vの乗員が振動子22を視認しにくくなり、意匠性を高められる。
【0056】
なお、第1実施形態と同様に、リアガラス18が、導電性金属を含有するペースト(例えば、銀ペースト等)をリアガラス18の車内側の主面に印刷して焼付けることによって形成された導電線(例えば、デフォッガやアンテナ等)を備えている場合、振動子22、および/またはマウント部24は導電線と重ならないように取り付けられることが好ましい。
【0057】
また、第1実施形態と同様に、リアガラス18は、コーティング材がコーティングされていてもよい。さらに、リアガラス18は、カラーガラスでもよく、調光ガラスでもよい。
【0058】
(変形例2)
図5は、変形例2のガラス振動板10を示す図である。図5に示すように、本変形例では、振動子22は、リアガラス18の中央部分よりも下方に配置されている。具体的には、振動子22は、リアガラス18の中央部分よりも下方で、かつ、遮光層32が設けられた周端部分よりも上方に配置されている。
【0059】
本変形例では、変形例1と同様に定在波(定常波)が生じるのを抑制できる。また、振動子22をリアガラス18の下部に配置することで、車両Vの乗員が振動子22を視認しにくくなり、意匠性を高められる。
【0060】
なお、変形例1と同様に、リアガラス18が、導電性金属を含有するペースト(例えば、銀ペースト等)をリアガラス18の車内側の主面に印刷して焼付けることによって形成された導電線(例えば、デフォッガやアンテナ等)を備えている場合、振動子22、および/またはマウント部24は導電線と重ならないように取り付けられることが好ましい。
【0061】
また、第1実施形態と同様に、リアガラス18は、コーティング材がコーティングされていてもよい。さらに、リアガラス18は、カラーガラスでもよく、調光ガラスでもよい。
【0062】
(変形例3)
図6は、変形例3のガラス振動板10を示す図である。図6に示すように、本変形例では、2つの振動子22がリアガラス18に取付けられており、それぞれ遮光層32が設けられた周端部分に配置されている。
【0063】
一方の振動子22は、リアガラス18の上端部分の遮光層32と重なる位置に配置されており、他方の振動子22は、リアガラス18の下端部分の遮光層32と重なる位置に配置されている。
【0064】
また、本変形例では、一方の振動子22と他方の振動子22に送信する信号のタイミングをずらすことで位相差をつけて振動させ、リアガラス18の表面が一様に振動するように制御されている。これにより、振動子22をリアガラス18の周端部分に配置した場合であっても、ガラス振動板10が剛体として動作するピストン振動域を100[Hz]で実現できる。
【0065】
また、2つの振動子22を遮光層32と重なる位置に配置することで、振動子22を隠すことができ、意匠性を高められる。なお、振動子22は、車室内側からガーニッシュなどの内装材で覆ってもよい。この場合、ガーニッシュは、金属又は樹脂などで構成されてもよく、ガーニッシュにおける車室内側の表層はメッシュなどの多孔質材料や不織布、布、繊維などで保護されてもよい。ガーニッシュを音透過性の材料で形成すれば、スピーカ一体型アクチュエータの場合、アクチュエータから直接発振される音を車室内に放出できる。また、ガーニッシュを遮音性の材料で形成すれば、アクチュエータからの発振音が遮断されるため、ガラス板から出力された音のみが車内に放出される。
【0066】
なお、リアガラス18が、導電性金属を含有するペースト(例えば、銀ペースト等)を遮光層32の車内側の主面に印刷して焼付けることによって形成され、リアガラス18の主面に形成された導電線(例えば、デフォッガやアンテナ等)へ給電するためのバスバーを備えている場合、振動子22、および/またはマウント部24はバスバーと重ならないように取り付けられることが好ましい。
【0067】
また、第1実施形態と同様に、リアガラス18は、コーティング材がコーティングされていてもよい。さらに、リアガラス18は、カラーガラスでもよく、調光ガラスでもよい。
【0068】
(変形例4)
図7は、変形例4のガラス振動板10を示す図である。図7に示すように、本変形例では、2つの振動子22がリアガラス18に取付けられており、それぞれ遮光層32が設けられた周端部分に配置されている。
【0069】
一方の振動子22は、リアガラス18の上端かつ前端の遮光層32と重なる位置に配置されており、他方の振動子22は、リアガラス18の下端かつ後端の遮光層32と重なる位置に配置されている。すなわち、2つの振動子22は、リアガラス18の対角に配置されている。
【0070】
また、本変形例では、一方の振動子22と他方の振動子22に送信する信号のタイミングをずらすことで位相差をつけて振動させ、リアガラス18の表面が一様に振動するように制御されている。これにより、振動子22をリアガラス18の周端部分に配置した場合であっても、ガラス振動板10が剛体として動作するピストン振動域を100[Hz]で実現できる。また、振動子22を隠すことができ、意匠性を高められる。
【0071】
なお、変形例4と同様に、リアガラス18が、導電性金属を含有するペースト(例えば、銀ペースト等)を遮光層32の車内側の主面に印刷して焼付けることによって形成され、リアガラス18の主面に形成された導電線(例えば、デフォッガやアンテナ等)へ給電するためのバスバーを備えている場合、振動子22、および/またはマウント部24はバスバーと重ならないように取り付けられることが好ましい。
【0072】
また、第1実施形態と同様に、リアガラス18は、コーティング材がコーティングされていてもよい。さらに、リアガラス18は、カラーガラスでもよく、調光ガラスでもよい。
【0073】
(変形例5)
図8は、変形例5のガラス振動板10を示す図である。図8に示すように、本変形例では、4つの振動子22がリアガラス18に取付けられており、それぞれ遮光層32が設けられた周端部分に配置されている。
【0074】
一つ目の振動子22は、リアガラス18の上端かつ前端の遮光層32と重なる位置に配置されており、二つ目の振動子22は、リアガラス18の下端かつ後端の遮光層32と重なる位置に配置されている。また、三つ目の振動子22は、リアガラス18の上端かつ後端の遮光層32と重なる位置に配置されており、四つ目の振動子22は、リアガラス18の下端かつ前端の遮光層32と重なる位置に配置されている。すなわち、4つの振動子22は、リアガラス18の四隅にそれぞれ配置されている。
【0075】
また、本変形例では、4つの振動子22のうち、2つ以上の振動子22に送信する信号のタイミングをずらすことで位相差をつけて振動させ、リアガラス18の表面が一様に振動するように制御されている。これにより、振動子22をリアガラス18の周端部分に配置した場合であっても、ガラス振動板10が剛体として動作するピストン振動域を100[Hz]で実現できる。また、振動子22を隠すことができ、意匠性を高められる。
【0076】
さらに、本変形例では、状況に応じて4つの振動子22のうち、駆動させる振動子22の数を選択できる。
【0077】
なお、変形例5と同様に、リアガラス18が、導電性金属を含有するペースト(例えば、銀ペースト等)を遮光層32の車内側の主面に印刷して焼付けることによって形成され、リアガラス18の主面に形成された導電線(例えば、デフォッガやアンテナ等)へ給電するためのバスバーを備えている場合、振動子22、および/またはマウント部24はバスバーと重ならないように取り付けられることが好ましい。
【0078】
また、第1実施形態と同様に、リアガラス18は、コーティング材がコーティングされていてもよい。さらに、リアガラス18は、カラーガラスでもよく、調光ガラスでもよい。
【0079】
<第2実施形態>
第2実施形態に係るガラス振動板40について図9を参照して説明する。なお、第1実施形態と同様の構成については同じ符号を付し、適宜説明を省略する。
【0080】
図9は、第2実施形態に係るガラス振動板40を車両幅方向内側から見た図である。図9に示すように、本実施形態のガラス振動板40は、ガラス板構成体としてのリアクォータ―ガラス16と、アクチュエータとしての振動子22とを含んで構成されている。
【0081】
リアクォータ―ガラス16は、単板ガラスによって構成されているが、合わせガラスによって構成してもよい。また、リアクォータ―ガラス16は、透明又は半透明の無機ガラスによって形成されており、上述したリアガラス18と同様の材料を使用できる。
【0082】
また、第1実施形態と同様に、リアクォーターガラス16は、コーティング材がコーティングされていてもよい。さらに、リアクォーターガラス16は、カラーガラスでもよく、調光ガラスでもよい。
【0083】
リアクォータ―ガラス16は、正面視で後端かつ上端の角が切欠かれた略矩形状に形成されているが、他の形状に形成されてもよい。また、リアクォータ―ガラス16の周端部分には、黒色セラミックス層などで形成された所定幅の遮光層42が設けられていてもよい。遮光層42は、リアクォータ―ガラス16の外周端部に沿って一周に亘って連続して設けられていてもよいし、少なくとも一部に遮光層42を備えない領域を有してもよい。遮光層42は、例えば、リアクォータ―ガラス16と車体とを接合する接着剤を重なる位置に設けられており、遮光層42によって車両Vの外部から接着剤などが視認できない構造となっている。
【0084】
リアクォータ―ガラス16の外周縁には、樹脂モールを備えていてもよい。リアクォータ―ガラス16と樹脂モールとは一体成形品であってもよい。このような車両窓用窓ガラスは、MAW(Module Assy Window:登録商標)とも称される。樹脂モールの材料としては、ポリ塩化ビニル(PVC)及び熱可塑性エラストマー(TPE)などの合成樹脂であってよい。樹脂モールは、その形状に対応したキャビティを有する金型にリアクォータ―ガラス16を装着し、キャビティに上記の合成樹脂(溶融した合成樹脂)を射出することにより、リアクォータ―ガラス16の周囲に設けられてもよい。なお、リアクォータ―ガラス16とは別に形成された樹脂モールをリアクォータ―ガラス16の外周に嵌合させてもよい。
【0085】
振動子22は、リアクォータ―ガラス16の中央部分にマウント部24(図3参照)を介して取付けられている。振動子22のピストン振動域は、第1実施形態と同様に100[Hz]以上に設定されている。
【0086】
(変形例6)
図10は、変形例6のガラス振動板40を示す図である。図10に示すように、本変形例では、2つの振動子22がリアクォータ―ガラス16に取付けられており、それぞれ遮光層42が設けられた周端部分に配置されている。
【0087】
一方の振動子22は、リアクォータ―ガラス16の下端かつ前端の遮光層42と重なる位置に配置されており、他方の振動子22は、リアクォータ―ガラス16の下端かつ後端の遮光層42と重なる位置に配置されている。すなわち、2つの振動子22は、リアクォータ―ガラス16の下端の前後に配置されている。
【0088】
また、本変形例では、一方の振動子22と他方の振動子22に送信する信号のタイミングをずらすことで位相差をつけて振動させ、リアクォータ―ガラス16の表面が一様に振動するように制御されている。これにより、振動子22をリアクォータ―ガラス16の周端部分に配置した場合であっても、ガラス振動板40が剛体として動作するピストン振動域を100[Hz]で実現できる。また、振動子22を隠すことができ、意匠性を高められる。
【0089】
なお、リアクォータ―ガラス16の外周縁には、樹脂モールを備えている場合、振動子22、および/またはマウント部24は樹脂モールと接しないように取り付けられることが好ましい。
【0090】
<第3実施形態>
第3実施形態に係るガラス振動板50について図11を参照して説明する。なお、第1実施形態と同様の構成については同じ符号を付し、適宜説明を省略する。
【0091】
図11は、第3実施形態に係るガラス振動板50を車両幅方向外側から見た図である。図11に示すように、本実施形態のガラス振動板50は、ガラス板構成体としてのフロントサイドガラス52と、アクチュエータとしての振動子22とを含んで構成されている。
【0092】
フロントサイドガラス52は、ハッチバックの車両Vにおける車両側部に設けられており、単板ガラスによって構成されているが、合わせガラスによって構成してもよい。また、フロントサイドガラス52は、透明又は半透明の無機ガラスによって形成されており、上述したリアガラス18と同様の材料を使用できる。
【0093】
また、第1実施形態と同様に、フロントサイドガラス52は、コーティング材がコーティングされていてもよい。さらに、フロントサイドガラス52は、カラーガラスでもよく、調光ガラスでもよい。
【0094】
フロントサイドガラス52は、正面視で略三角形状に形成されているが、他の形状に形成されてもよい。また、フロントサイドガラス52は、車体に対して昇降可能に取付けられている。例えば、フロントサイドガラス52の下端部に図示しないホルダを固定し、昇降機構を介してホルダを車体に取付けることで、フロントサイドガラス52が昇降可能となる。なお、図11における仮想線BLは、ベルトラインを示す線である。ベルトラインとは、フロントサイドガラス52を車両Vのドアに取り付け、かつフロントサイドガラス52が最上部まで移動した閉状態であるときに、ドアの開口部(窓部)の下縁に取り付けられるベルトラインモールと、フロントサイドガラス52とが密着する部分である。フロントサイドガラス52が最上部まで移動した閉状態において、フロントサイドガラス52のベルトラインBLよりも下側の部分はドアパネルによって隠れている。
【0095】
振動子22は、フロントサイドガラス52の中央部分にマウント部24(図3参照)を介して取付けられている。振動子22のピストン振動域は、第1実施形態と同様に100[Hz]以上に設定されている。
【0096】
(変形例7)
図12は、変形例7のガラス振動板50を示す図である。図12に示すように、本変形例では、振動子22は、フロントサイドガラス52の中央部分よりも上方に配置されている。
【0097】
フロントサイドガラス52の図心(重心)に振動子22を配置した場合、定在波(定常波)が生じる可能性がある。本変形例では、振動子22をフロントサイドガラス52の図心(重心)から離れた位置に配置することで、定在波(定常波)が生じるのを抑制できる。
【0098】
(変形例8)
図13は、変形例8のガラス振動板50を示す図である。図13に示すように、本変形例では、振動子22は、フロントサイドガラス52の中央部分よりも下方に2つ配置されている。具体的には、一方の振動子22は、フロントサイドガラス52の下端かつ前端に配置されており、他方の振動子22は、フロントサイドガラス52の下端かつ後端に配置されている。このため、一対の振動子22はそれぞれ、ベルトラインBLよりも下方に配置されている。
【0099】
本変形例では、一方の振動子22と他方の振動子22に送信する信号のタイミングをずらすことで位相差をつけて振動させ、フロントサイドガラス52の表面が一様に振動するように制御されている。
【0100】
また、本変形例では、2つの振動子22がベルトラインBLよりも下方に配置されているため、車両Vの乗員から振動子22が視認されず、意匠性が高められる。
【0101】
(変形例9)
図14は、変形例9のガラス振動板50を示す図である。図14に示すように、本変形例では、2つの振動子22がフロントサイドガラス52に取付けられている。
【0102】
一方の振動子22は、フロントサイドガラス52の下端かつ前端に配置されており、他方の振動子22は、フロントサイドガラス52の上端かつ後端に配置されている。また、本変形例では、一方の振動子22と他方の振動子22に送信する信号のタイミングをずらすことで位相差をつけて振動させ、フロントサイドガラス52の表面が一様に振動するように制御されている。
【0103】
<第4実施形態>
第4実施形態に係るガラス振動板60について図15を参照して説明する。なお、第1実施形態と同様の構成については同じ符号を付し、適宜説明を省略する。
【0104】
図15は、第4実施形態に係るガラス振動板60を車両幅方向外側から見た図である。図15に示すように、本実施形態のガラス振動板60は、ガラス板構成体としてのリアサイドガラス62と、アクチュエータとしての振動子22とを含んで構成されている。
【0105】
リアサイドガラス62は、ハッチバックの車両Vにおける車両側部に設けられており、単板ガラスによって構成されているが、合わせガラスによって構成してもよい。また、リアサイドガラス62は、透明又は半透明の無機ガラスによって形成されており、上述したリアガラス18と同様の材料を使用できる。
【0106】
リアサイドガラス62は、正面視で略三角形状に形成されているが、他の形状に形成されてもよい。また、リアサイドガラス62は、車体に対して昇降不能に取付けられている。
【0107】
振動子22は、リアサイドガラス62の中央部分にマウント部24(図3参照)を介して取付けられている。振動子22のピストン振動域は、第1実施形態と同様に100[Hz]以上に設定されている。
【0108】
また、第1実施形態と同様に、リアサイドガラス62は、コーティング材がコーティングされていてもよい。さらに、リアサイドガラス62は、カラーガラスでもよく、調光ガラスでもよい。
【0109】
(変形例10)
図16は、変形例10のガラス振動板60を示す図である。本変形例では、3つの振動子22がリアサイドガラス62に取付けられている。
【0110】
一つ目の振動子22は、リアサイドガラス62の上端かつ前端に配置されており、二つ目の振動子22は、リアサイドガラス62の下端かつ前端に配置されている。また、三つ目の振動子22は、リアサイドガラス62の下端かつ後端に配置されている。
【0111】
ここで、それぞれの振動子22は、リアサイドガラス62と車体とに跨って配置されており、振動子22の一部はリアサイドガラス62の外側に位置しているが、これに限定されず、振動子22の全体がリアサイドガラス62と重なる位置に配置されてもよい。
【0112】
また、本変形例では、3つの振動子22に送信する信号のタイミングをずらすことで位相差をつけて振動させ、リアサイドガラス62の表面が一様に振動するように制御されている。
【0113】
<第5実施形態>
第5実施形態に係るガラス振動板70について図17を参照して説明する。なお、第1実施形態と同様の構成については同じ符号を付し、適宜説明を省略する。
【0114】
図17は、第5実施形態に係るガラス振動板70を車両下方側から見た図である。図17に示すように、本実施形態のガラス振動板70は、ガラス板構成体としてのルーフガラス72と、アクチュエータとしての振動子22とを含んで構成されている。
【0115】
ルーフガラス72は、車両Vの天井部に設けられており、単板ガラスによって構成されているが、合わせガラスによって構成してもよい。また、ルーフガラス72は、透明又は半透明の無機ガラスによって形成されており、上述したリアガラス18と同様の材料を使用できる。
【0116】
また、第1実施形態と同様に、ルーフガラス72は、コーティング材がコーティングされていてもよい。さらに、ルーフガラス72は、カラーガラスでもよく、調光ガラスでもよい。
【0117】
ルーフガラス72は、ルーフパネル74に嵌め込まれて昇降不能に取り付けられており、正面視で略円形状に形成されているが、他の形状に形成されてもよい。また、ルーフガラス72は、前後左右にスライド可能に構成されてもよい。
【0118】
振動子22は、ルーフガラス72の中央部分にマウント部24(図3参照)を介して取付けられている。振動子22のピストン振動域は、第1実施形態と同様に100[Hz]以上に設定されている。
【0119】
本実施形態では、ルーフガラス72を円形に形成したため、矩形状のガラス板を用いた構成と比較して、ルーフガラス72が撓みにくくなり、ピストン振動しやすくなる。
【0120】
(変形例11)
図18は、変形例11のガラス振動板70を示す図である。図18に示すように、本変形例では、2つの振動子22がルーフガラス72に取付けられている。
【0121】
一方の振動子22は、ルーフガラス72の前端に配置されており、他方の振動子22は、ルーフガラス72の後端に配置されている。
【0122】
また、本変形例では、2つの振動子22に送信する信号のタイミングをずらすことで位相差をつけて振動させ、ルーフガラス72の表面が一様に振動するように制御されている。
【0123】
<第6実施形態>
第6実施形態に係るガラス振動板80について図19を参照して説明する。なお、第1実施形態と同様の構成については同じ符号を付し、適宜説明を省略する。
【0124】
図19は、第6実施形態に係るガラス振動板80を車両下方側から見た図である。図19に示すように、本実施形態のガラス振動板80は、ガラス板構成体としてのルーフガラス82と、アクチュエータとしての振動子22とを含んで構成されている。
【0125】
ルーフガラス82は、車両Vの天井部に設けられており、単板ガラスによって構成されているが、合わせガラスによって構成してもよい。また、ルーフガラス82は、透明又は半透明の無機ガラスによって形成されており、上述したリアガラス18と同様の材料を使用できる。
【0126】
また、第1実施形態と同様に、ルーフガラス82は、コーティング材がコーティングされていてもよい。さらに、ルーフガラス82は、カラーガラスでもよく、調光ガラスでもよい。
【0127】
ルーフガラス82は、ルーフパネル84に嵌め込まれて昇降不能に取り付けられており、正面視で略矩形状に形成されているが、多角形状に形成されてもよい。また、ルーフガラス82は、前後左右にスライド可能に構成されてもよい。また、ルーフガラス82の周端部分には、黒色セラミックス層などで形成された所定幅の遮光層86が設けられていてもよい。遮光層86は、ルーフガラス82の外周端部に沿って一周に亘って連続して設けられていてもよいが、少なくとも一部に遮光層86を備えない領域を有してもよい。遮光層86は、例えば、ルーフガラス82と車体とを接合する接着剤を重なる位置に設けられており、遮光層86によって車両Vの外部から接着剤などが視認できない構造となっている。
【0128】
振動子22は、ルーフガラス82の中央部分にマウント部24(図3参照)を介して取付けられている。振動子22のピストン振動域は、第1実施形態と同様に100[Hz]以上に設定されている。
(変形例12)
図20は、変形例12のガラス振動板80を示す図である。図20に示すように、本変形例では、2つの振動子22がルーフガラス82に取付けられている。
【0129】
一方の振動子22は、ルーフガラス82の前端に配置されており、他方の振動子22は、ルーフガラス82の後端に配置されている。
【0130】
また、本変形例では、2つの振動子22に送信する信号のタイミングをずらすことで位相差をつけて振動させ、ルーフガラス82の表面が一様に振動するように制御されている。
【0131】
以上、実施形態に係るガラス振動板10,40,50,60,70,80について説明したが、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【0132】
例えば、図8に示す変形例5では、4つの振動子22がリアガラス18に取付けられた構造について説明したが、図21に示すように、さらに多くの振動子22を取付けた構造を採用してもよい。図21は、他の例のガラス振動板を示す図である。図21に示す例では、リアガラス18の周端部分に8つの振動子22が取付けられている。
【0133】
また、8つの振動子22のうち、2つ以上の振動子22に送信する信号のタイミングをずらすことで位相差をつけて振動させ、リアガラス18の表面が一様に振動するように制御してもよい。さらに、状況に応じて8つの振動子22のうち、駆動させる振動子22の数を選択できるようにしてもよい。
【0134】
また、上記実施形態では、振動子22とマウント部24とを同じ径に形成したが、図22に示すように、マウント部90の外形を振動子22よりも大きく形成してもよい。図22は、他の例のガラス振動板を示す図である。図22に示す例では、リアガラス18の右端及び左端にそれぞれ振動子22が取付られている。それぞれの振動子22は、マウント部90を介してリアガラス18に取付けられており、マウント部90は、上下を長手方向として長尺状に形成されている。マウント部90の外形を振動子22よりも大きく形成すれば、マウント部90を介して振動子22がリアガラス18を加振する領域を広げることができ、ピストン振動しやすくなる。
【0135】
以上の上記実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
【0136】
(付記1)
ガラス板構成体と、
前記ガラス板構成体に取付けられて前記ガラス板構成体を加振させると共に、前記ガラス板構成体を一体として振動可能なピストン振動域が100[Hz]以上であるアクチュエータと、
を有するガラス振動板。
【0137】
(付記2)
前記ガラス板構成体は、一枚又は複数枚のガラス板を含んで構成され、
前記アクチュエータが取付けられた一枚の前記ガラス板は、厚さが0.5[mm]以上である、付記1に記載のガラス振動板。
【0138】
(付記3)
前記ガラス板構成体には、前記アクチュエータが複数取付けられる、付記1又は2に記載のガラス振動板。
【0139】
(付記4)
前記アクチュエータは、前記ガラス板構成体における周端部分を除く領域に取り付けられる、付記1~3の何れか1に記載のガラス振動板。
【0140】
(付記5)
前記アクチュエータは、前記ガラス板構成体における周端部分に複数取り付けられる、付記1~3の何れか1に記載のガラス振動板。
【0141】
(付記6)
前記アクチュエータは、マウント部を介して前記ガラス板構成体に取付けられており、
前記マウント部は、前記アクチュエータよりも外形が大きく形成されている、付記1~5の何れか1に記載のガラス振動板。
【0142】
(付記7)
前記ガラス板構成体は、車両のウィンドシールド、サイドガラス、リアガラス、リアクォーターガラス、フロントベンチガラス及びルーフガラスの少なくとも1つとして用いられる、付記1~6の何れか1に記載のガラス振動板。
【0143】
(付記8)
前記ガラス板構成体の周端部分には遮光層が設けられており、
前記遮光層と重なる位置に前記アクチュエータが取付けられる、付記1~7の何れか1に記載のガラス振動板。
【0144】
(付記9)
前記ガラス板構成体は、一対のガラス板と、該一対のガラス板に挟持された中間層とを含んで構成されている、付記1~8の何れか1項に記載のガラス振動板。
【0145】
(付記10)
前記アクチュエータは、前記ガラス板構成体と車体とに跨って配置されている、付記7に記載のガラス振動板。
【符号の説明】
【0146】
10,40,50,60,70,80 ガラス振動板
16 リアクォータ―ガラス(ガラス板構成体、ガラス板)
18 リアガラス(ガラス板構成体、ガラス板)
22 振動子(アクチュエータ)
24 マウント部
32 遮光層
42 遮光層
52 フロントサイドガラス(ガラス板構成体、ガラス板)
62 リアサイドガラス(ガラス板構成体、ガラス板)
72 ルーフガラス(ガラス板構成体、ガラス板)
82 ルーフガラス(ガラス板構成体、ガラス板)
86 遮光層
V 車両
図1
図2
図3
図4
図5
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