(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115426
(43)【公開日】2024-08-26
(54)【発明の名称】電源制御回路、及び電源の出力電圧調整方法
(51)【国際特許分類】
G05F 1/56 20060101AFI20240819BHJP
【FI】
G05F1/56 310C
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021118
(22)【出願日】2023-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松尾 裕介
(72)【発明者】
【氏名】長▲浜▼ 顕仁
【テーマコード(参考)】
5H430
【Fターム(参考)】
5H430BB01
5H430BB09
5H430BB11
5H430EE02
5H430FF02
5H430HH03
(57)【要約】
【課題】発振を起こし難く、例えば音響装置などに用いられた場合に良好な音質をもたらし得る電源の出力電圧の精度を高めること。
【解決手段】実施形態の電源制御回路100は、出力素子Qを有する定電圧電源Epの出力電圧Voを制御する。電源制御回路100は、定電圧電源Epから出力されている電圧と相関する電気量を有する第1信号S1を受ける第1端子31と、出力電圧Voの調整時期を示す第2信号S2を受ける第2端子32と、第1信号S1に基づいて、出力電圧Voを制御する制御電圧Vcを調整する電圧調整部2と、制御電圧Vcを保持すると共に、制御電圧Vcに基づく出力素子Qの駆動電圧Vdを出力する電圧保持部1と、電圧調整部2と電圧保持部1とを分離し、第2信号S2に基づいて、出力電圧Voの調整時期に電圧調整部2と電圧保持部1とを一時的に接続する第1スイッチング素子41と、を含んでいる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力素子を有する定電圧電源の出力電圧を制御する電源制御回路であって、
前記定電圧電源から出力されている電圧と相関する電気量を有する第1信号を受ける第1端子と、
前記出力電圧の調整時期を示す第2信号を受ける第2端子と、
前記第1信号に基づいて、前記出力電圧の制御電圧を調整する電圧調整部と、
前記制御電圧を保持すると共に、前記制御電圧に基づく前記出力素子の駆動電圧を出力する電圧保持部と、
前記電圧調整部と前記電圧保持部とを分離し、前記第2信号に基づいて前記調整時期に前記電圧調整部と前記電圧保持部とを一時的に接続する第1スイッチング素子と、
を含んでいる、電源制御回路。
【請求項2】
前記電圧調整部と前記第1端子とを分離し、前記第2信号に基づいて前記調整時期に前記電圧調整部と前記第1端子とを一時的に接続する第2スイッチング素子をさらに含んでいる、請求項1記載の電源制御回路。
【請求項3】
前記電圧保持部は、前記制御電圧の変化に応じて、保持している電圧を、前記変化の前の大きさから前記変化の後の大きさまで、50ミリ秒よりも長い時間をかけて変化させるように構成されている、請求項1又は2記載の電源制御回路。
【請求項4】
前記電圧調整部は、
前記出力電圧の目標値に対応する電圧を生成する基準電圧源と、
前記第1信号の前記電気量が示す電圧と前記基準電圧源が生成する電圧との差に応じて変化する電圧を前記制御電圧として出力する誤差増幅器と、
を含んでいる、請求項1又は2記載の電源制御回路。
【請求項5】
前記電圧保持部は、
前記制御電圧で充電されるキャパシタと、
前記制御電圧で駆動されるゲートを有する第1電界効果型トランジスタと、
前記第1電界効果型トランジスタのソースから電流を引き込む第1定電流源と、を含み、
前記ソースから前記駆動電圧が出力される、請求項1又は2記載の電源制御回路。
【請求項6】
前記電圧保持部が、前記キャパシタに充電電流を供給するトランスコンダクタンスアンプをさらに含んでいる、請求項5記載の電源制御回路。
【請求項7】
前記電圧保持部は、
前記制御電圧で充電されるキャパシタと、
前記キャパシタがゲートとドレインとの間に接続されていて前記制御電圧で前記ゲートが駆動される第2電界効果型トランジスタと、
前記第2電界効果型トランジスタのソースと接続されているゲートを有していて、前記第2電界効果型トランジスタの導電型と異なる導電型の第1電界効果型トランジスタと、
前記第1電界効果型トランジスタのソースから電流を引き込む第1定電流源と、
前記第1電界効果型トランジスタのドレインとゲートとの間に接続されていて前記第2電界効果型トランジスタのソースに電流を流し込む第2定電流源と、を含んでいる請求項1又は2記載の電源制御回路。
【請求項8】
前記電圧保持部が、前記キャパシタに充電電流を供給するトランスコンダクタンスアンプをさらに含んでいる、請求項7記載の電源制御回路。
【請求項9】
前記第2信号のレベルの遷移に応じてパルスを出力するタイマ部をさらに含み、
前記第1スイッチング素子は、前記パルスが出力されている間、前記電圧調整部と前記電圧保持部とを接続するように構成されている、請求項1又は2記載の電源制御回路。
【請求項10】
前記定電圧電源の出力端子と抵抗を介して接続される第3端子と、
前記第3端子に接続されていて前記出力素子を通る電流が流れる電流経路と、
前記電流経路を開放する第3スイッチング素子と、
をさらに含み、
前記第3スイッチング素子は、前記パルスが出力されている間、前記電流経路を閉じるように構成されている、請求項9記載の電源制御回路。
【請求項11】
内部の電圧保持部で保持される電圧に基づく定電圧を出力する電源の出力電圧の調整方法であって、
前記出力電圧を調整するときに、前記電源から出力されている電圧に基づいている制御電圧の前記電圧保持部への入力を開始することと、
前記電圧保持部で前記制御電圧を保持すると共に、前記電圧保持部で保持される電圧の変化に応じて前記出力電圧を変化させることと、
前記出力電圧を変化させた後に前記電圧保持部への前記制御電圧の入力を停止することと、
を含んでいる、電源の出力電圧調整方法。
【請求項12】
前記電源の起動を検出することをさらに含み、
前記電源の起動時から所定時間の間に前記出力電圧を調整する、請求項11記載の電源の出力電圧調整方法。
【請求項13】
前記所定時間の間、前記電源の使用時に前記電源から前記電源の負荷に流れる電流に相当する大きさの電流を前記負荷とは別の経路で前記電源内に流すことをさらに含む、請求項12記載の電源の出力電圧調整方法。
【請求項14】
音響装置に用いられる電源の出力電圧の調整方法であって、
請求項11~13のいずれか1項に記載の出力電圧調整方法を用いて前記出力電圧を調整することを含み、
前記出力電圧の調整を、前記音響装置の音量が変化するとき、又は前記音響装置から音が発せられていないときに行う、電源の出力電圧調整方法。
【請求項15】
音響装置に用いられる電源の出力電圧の調整方法であって、
請求項11~13のいずれか1項に記載の出力電圧調整方法を用いて前記出力電圧を調整することと、
前記音響装置の周囲で発せられている音の大きさを検知することと、を含み、
前記出力電圧の調整を、前記周囲で所定値を超える大きさの音が発せられているときに行う、電源の出力電圧調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源制御回路、及び電源の出力電圧調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、パーソナルコンピュータや携帯端末機器のような情報処理機器、白物家電と呼ばれる各種家庭用電化機器、並びに、各種媒体に記録される若しくは通信により送られる映像データや音声データを再生する映像機器及び音響機器などの電気機器には、供給される電力を安定した電圧で各機器内外の負荷に提供する電源装置が用いられる。電源装置には、現に出力されている電圧のフィードバック経路を設けて、フィードバックされる電圧と基準電圧との差に基づいて出力電圧を常に調整する帰還型の制御回路が多く用いられている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1のような帰還型の制御回路は、構成要素の特性ばらつきや電源装置の周囲環境や動作状態に変動があっても、出力電圧を目標値付近で高度に安定させることができる。その反面、比較的多くの回路素子と複雑な回路構成を必要とすることがある。また、出力電圧のフィードバックを含むため原理的に発振のリスクが潜在し、そのため、回路素子の定数選択などに熟練者による慎重な回路設計が必要になることがある。
【0004】
このような帰還型の制御回路を含む電源に対して、出力電圧をフィードバックさせない、所謂無帰還型の電源回路も存在する(例えば特許文献2の第7図参照)。従来の無帰還型の電源回路の一例を
図13に示す。
図13に示される従来の電源回路900は、入力端子90iにコレクタが接続されたエミッタフォロワ形式のトランジスタ901と、入力端子90iとGND端子90gとの間に直列接続された抵抗902及びツェナーダイオード903と、を含んでいる。抵抗902は、トランジスタ901のベース-コレクタ間に接続されており、抵抗902とツェナーダイオード903との接続点がトランジスタ901のベースに接続されている。ツェナーダイオード903のツェナー電圧(Vz)よりも大きな入力電圧(電源電圧)VDDが入力端子90iとGND端子90gとの間に印加されると、ツェナーダイオード903に電流が流れて、トランジスタ901のベースにはツェナー電圧Vzが印加される。トランジスタ901のエミッタから出力電圧Voが出力されて負荷90Lに供給される。
【0005】
図13に示されるような無帰還型の電源回路は、前述した帰還型の制御回路を含む電源と比べて、少ない回路素子、及び、よりシンプルな構成で実現され得る。また、出力電圧をフィードバックしないので原理的に発振が生じ得ない。さらに、シリーズ型の電源回路において増幅段の段数が少ない無帰還型の電源回路は、音響装置に用いられると良好な音質をもたらすとの定評があるため、特に、音を発する機器の分野において広く用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002-157030号公報
【特許文献2】特開平2-121011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、
図13に示されるような無帰還型の電源回路は、帰還型の電源回路と比べて出力電圧の精度が低く、求められる精度を有し得ないことがある。例えば
図13に示される電源回路900の出力電圧Voは、Vo=Vz-V
BE=Vz-(Vt×ln(Ic/Is))で定まる。ここで、V
BE、Vt、及びIcは、それぞれ、トランジスタ901のベース-エミッタ間電圧、熱電圧(kT/qであって、kはボルツマン定数、Tは周囲の絶対温度、qは電気素量)、及びコレクタ電流(すなわち電源回路900の出力電流)であり、Isはトランジスタ901固有の飽和電流である。
【0008】
この式から解るように、出力電圧Voは、ツェナー電圧Vzの個体間ばらつき、及びトランジスタ901固有の特性の個体間ばらつき、さらに、トランジスタ901の周囲温度及び出力電流といったあらゆる外乱の影響を受けて変動する。一例として出力電圧Voは±1.5V程ばらつくこともある。このような出力電圧のばらつきは、無帰還型電源回路が用いられる電気機器において、電源電圧の不足、過電圧による耐圧破壊、又は特性の変動をもたらしたり、その電気機器の製造工程において調整を必要にさせたりすることがある。特に、近年増加する携帯機器にみられるような低い電源電圧で動作する機器の電源として用いられる電源回路では、出力電圧のばらつきがもたらす影響は大きく、問題となり易い。
【0009】
本発明は、このような問題に鑑み、発振を起こし難く、一例として音響装置に用いられた場合に良好な音質をもたらし得る電源において、出力電圧の精度を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態の電源制御回路は、出力素子を有する定電圧電源の出力電圧を制御する電源制御回路であって、前記定電圧電源から出力されている電圧と相関する電気量を有する第1信号を受ける第1端子と、前記出力電圧の調整時期を示す第2信号を受ける第2端子と、前記第1信号に基づいて、前記出力電圧の制御電圧を調整する電圧調整部と、前記制御電圧を保持すると共に、前記制御電圧に基づく前記出力素子の駆動電圧を出力する電圧保持部と、前記電圧調整部と前記電圧保持部とを分離し、前記第2信号に基づいて前記調整時期に前記電圧調整部と前記電圧保持部とを一時的に接続する第1スイッチング素子と、を含んでいる。
【0011】
本発明の一実施形態の電源の出力電圧の調整方法は、内部の電圧保持部で保持される電圧に基づく定電圧を出力する電源の出力電圧の調整方法であって、前記出力電圧を調整するときに、前記電源から出力されている電圧に基づいている制御電圧の前記電圧保持部への入力を開始することと、前記電圧保持部で前記制御電圧を保持すると共に、前記電圧保持部で保持される電圧の変化に応じて前記出力電圧を変化させることと、前記出力電圧を変化させた後に前記電圧保持部への前記制御電圧の入力を停止することと、を含んでいる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の電源制御回路及び電源の出力電圧の調整方法によれば、発振を起こし難く、一例として音響装置に用いられた場合に良好な音質をもたらし得る電源において、出力電圧の精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1実施形態の電源制御回路の一例を示すブロック図である。
【
図2】本発明の電源制限回路における出力電圧などの推移の一例を示すタイミング図である。
【
図3】本発明における電圧調整部の一具体例を示す回路図である。
【
図4】本発明における電圧保持部の一具体例を示す回路図である。
【
図5】本発明における電圧保持部の他の具体例を示す回路図である。
【
図6】本発明における電圧保持部のさらに他の具体例を示す回路図である。
【
図7】
図6の電圧保持部での保持電圧の変化の一例を示すタイミング図である。
【
図8】本発明の第2実施形態の電源制御回路の一例を示すブロック図である。
【
図9】
図8の電源制御回路における第2信号のレベル遷移に対する出力電圧などの推移の一例を示すタイミング図である。
【
図10】
図8の電源制御回路の変形例を示すブロック図である。
【
図11】
図10の例におけるタイマ部の出力パルスに対する出力電圧の推移の一例を示すタイミング図である。
【
図12】本発明の一実施形態の電源の出力電圧の調整方法の一例を示すフロー図である。
【
図13】従来の無帰還型電源回路の一例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図面を参照しながら本発明の電源制御回路及び電源の出力電圧の調整方法を説明する。しかし、本発明は、以下に説明される実施形態に限定されない。また、
図3~
図6に示される電圧調整部及び電圧保持部の回路の具体例は、それぞれ、単なる一例に過ぎず、これら各部の回路構成は、
図3~
図6の例に限定されない。
【0015】
<第1実施形態の電源制御回路>
図1には、第1実施形態の電源制御回路の一例である電源制御回路100の構成がブロック図で模式的に示されている。
図1において電源制御回路100は定電圧電源Epの出力電圧Voを制御する。定電圧電源Epは、電源制御回路100の他に、出力素子Q、並びに、出力素子Qとグランド電位(GND)との間に直列に接続されている抵抗Re1及び抵抗Re2を含んでいる。電源制御回路100は、第1信号S1を受ける第1端子31と、第2信号S2を受ける第2端子32と、出力電圧Voの制御電圧Vcを調整する電圧調整部2と、制御電圧Vcを保持する電圧保持部1と、電圧調整部2と電圧保持部1との間に配置されている第1スイッチング素子41と、を含んでいる。
図1の電源制御回路100は、さらに、電圧調整部2と第1端子31との間に配置されている第2スイッチング素子42を含んでいる。
【0016】
電源制御回路100は、さらに、外部の電源Eから電源電圧(入力電圧)VDDがGNDとの間に印加される入力端子VINと、出力端子VOUTとを有している。入力端子VINに印加された電源電圧VDDは、適宜所望の電圧に変換されて、電圧保持部1や電圧調整部2などの電源制御回路100を構成する各機能ブロックや各素子に供給される。出力端子VOUTは、定電圧電源Epの出力素子Qに接続されており、出力素子Qを駆動する駆動電圧Vdを出力する。
【0017】
図1に例示の定電圧電源Epにおいて出力素子QはnpnトランジスタTであり、出力端子VOUTはトランジスタTのベースに接続されている。トランジスタTのコレクタは電源Eに接続され、そのエミッタは抵抗Re1の一端に接続されている。抵抗Re1の他端が抵抗Re2の一端に接続され、抵抗Re2の他端がGNDに接続されている。抵抗Re1の一端に接続されているトランジスタTのエミッタが電源Epの出力端子VOに接続されており、出力端子VOから出力電圧Voが出力されて負荷Lに供給される。なお、出力素子Qは、npnトランジスタに限定されず、n型電界効果型トランジスタでもよく、電源制御回路100の回路構成次第ではpnpトランジスタでもp型電界効果型トランジスタでもよい。
【0018】
図1の電源制御回路100の第1端子31は、抵抗Re1と抵抗Re2との接続点に接続されている。本実施形態の電源制御回路100の第1端子31には、定電圧電源Epから出力されている電圧と相関する電気量を有する第1信号S1が入力される。なお、「出力電圧Vo」は、定電圧電源Epから出力される電圧の総称であり、「定電圧電源Epから出力されている電圧」は、定電圧電源Epから、その時その時に現に出力されている電圧を意味している。
図1の電源制御回路100の第1端子31には、出力電圧Voが抵抗Re1と抵抗Re2とで分圧された電圧である直流電圧Vdvが第1信号S1として入力される。電圧Vdvが、定電圧電源Epから出力されている電圧と相関する、第1信号S1が有している電気量である。
【0019】
第1信号S1は、定電圧電源Epから出力されている電圧と相関する電気量を有するものであればよく、
図1の例のような出力電圧Voの分圧によって生成される信号に限定されない。例えば、無帰還型の電源装置から出力される電圧は、前述したように出力電流や周囲温度の影響を受けて変動するので、出力電流や周囲温度を検知するセンサの検知信号が第1端子31に入力されてもよい。
【0020】
一方、第2端子32には第2信号S2が入力される。第2信号S2は、後述されるように本実施形態の電源制御回路において行われる、出力電圧Voの調整の実施時期を示す信号である。第2信号S2は、電源制御回路100の外部で生成される。
図1の例において第2信号S2は、外部の制御装置Mで生成されて第2端子32に入力される。制御装置Mとしては、定電圧電源Epが用いられる電気機器の動作を制御するマイクロコンピュータやASICなどの半導体装置が例示されるが、第2信号S2を生成する制御装置Mはこれらに限定されない。
【0021】
制御装置Mによって、定電圧電源Epが用いられる電気機器において好ましい出力電圧Voの調整時期が選択され、例えばその調整時期において信号レベルの遷移や周波数若しくは位相などの変化を伴う信号が生成されて、電源制御回路100へと送られる。例えば、音響装置に定電圧電源Epが用いられる場合、音響装置から発せられる音に出力電圧Voの調整が影響を与えない、若しくはその影響を使用者が実感し難いように、設定音量の変更時や、音が発せられていない期間、若しくは周囲に雑音が生じている期間が、出力電圧Voの調整時期として選択される。
【0022】
第1スイッチング素子41は、その内部の導通状態を第2信号S2によって制御され、電圧調整部2と電圧保持部1との間の接続と分離とを切り替える。すなわち第1スイッチング素子41は、第2信号S2の例えばレベルなどに応じて電圧調整部2と電圧保持部1とを分離する。そして第1スイッチング素子41は、第2信号S2に基づいて、第2信号S2によって示される出力電圧Voの調整時期に、電圧調整部2と電圧保持部1とを一時的に接続する。
【0023】
第2スイッチング素子42は、その内部の導通状態を第2信号S2によって制御され、電圧調整部2と第1端子31との間の接続と分離とを切り替える。すなわち第2スイッチング素子42は、第2信号S2の例えばレベルなどに応じて電圧調整部2と第1端子31とを分離する。そして第2スイッチング素子42は、第2信号S2に基づいて、第2信号S2に示される出力電圧Voの調整時期に、電圧調整部2と第1端子31とを一時的に接続する。
【0024】
従って、電源制御回路100によれば、所望の時期に例えばレベルを変化させる信号を第2信号S2として第2端子32に入力することによって、所望の時期に、電圧調整部2と電圧保持部1とを分離することができ、また接続することができる。さらに、
図1の例の電源制御回路100によれば、所望の時期に、電圧調整部2と第1端子31とを分離することができ、また接続することができる。
【0025】
第1スイッチング素子41、第2スイッチング素子42、及び後述する第3スイッチング素子43は、それぞれ、バイポーラトランジスタ、電界効果型トランジスタ(FET)、及びアナログスイッチなどであり得る。しかし、各スイッチング素子は、少なくとも二つの被制御端子及び一つの制御端子を備え、二つの被制御端子間の導通状態と非導通状態とが、制御端子に入力される信号の例えばレベルによって切り換えられさえすれば、これらに限定されない。各スイッチング素子が、例えばn型FET又はnpnトランジスタである場合、ハイレベルの第2信号S2が、各スイッチング素子であるn型FETのゲート又はnpnトランジスタのベースに入力することによって、各スイッチング素子が導通状態へと遷移する。
【0026】
電圧調整部2には、第1信号S1が入力される。
図1の例では、第2スイッチング素子42を介して、第1信号S1が電圧調整部2に入力される。電圧調整部2は、第1信号S1に基づいて、出力電圧Voの制御電圧Vcを調整する。制御電圧Vcは、出力電圧Voを目標値に近付けるべく出力素子Qに印加する電気量を定める電圧であって、定電圧電源Epから出力される電圧の大きさを間接的に示している。すなわち、定電圧電源Epから出力される電圧は制御電圧Vcと一定の関係性を有していて、制御電圧Vcに基づく電圧が出力電圧Voとして出力される。前述したように、第1信号S1は定電圧電源Epから出力されている電圧と相関する電気量(
図1の例では、出力電圧Voが抵抗Re1と抵抗Re2とで分圧された電圧Vdv)を有しているので、その電気量の変化から、出力電圧Voを目標値へと近づける制御電圧Vcを調整することができる。
【0027】
図1の例の電圧調整部2は、検出部2bと調整部2aとを含んでいる。検出部2bによって、例えば第1信号S1のレベルや周波数などの特性値が検出される。調整部2aでは、検出部2bの検出結果と、出力電圧Voの目標値に対応する基準値との比較などを通じて、制御電圧Vcが、出力電圧Voを目標値に近付けるのに適した電圧値へと調整される。
【0028】
電圧保持部1には、第1スイッチング素子41を介して、電圧調整部2で調整された制御電圧Vcが入力される。電圧保持部1は、後述されるようにキャパシタなどで制御電圧Vcを保持する。電圧保持部1は、制御電圧Vcを保持すると共に、制御電圧Vcに基づく、定電圧電源Epの出力素子Qの駆動電圧Vdを出力する。そして駆動電圧Vdが、出力素子Qを構成するトランジスタTのベースに入力され、トランジスタTのエミッタからは駆動電圧Vdに応じた出力電圧Voが出力される。駆動電圧Vdは、出力電圧Voを目標値に近付けるように電圧調整部2で調整された制御電圧Vcに基づいているので、出力電圧Voが、一時的に目標値からシフトしていても目標値へと近づくように制御される。
【0029】
換言すると、電圧調整部2と電圧保持部1とが第1スイッチング素子41によって接続され、且つ、第1端子31と電圧調整部2とが第2スイッチング素子42によって接続された状態では、出力端子VOから、第1端子31、電圧調整部2、電圧保持部1、及び出力素子Qへと繋がる帰還回路が形成される。よって、出力電圧Voが目標値へと制御される。前述したように、電源制御回路100では、第2信号S2が示す出力電圧Voの調整時期に、第1スイッチング素子41が電圧調整部2と電圧保持部1とを接続し、第2スイッチング素子42が第1端子31と電圧調整部2とを接続する。従って、本実施形態の電源制御回路100によれば、第2信号S2が示す出力電圧Voの調整時期において、帰還型の電源装置のように、定電圧電源Epの出力電圧Voを目標値へと調整することができる。よって出力電圧の精度を高めることができる。
【0030】
加えて、電源制御回路100では、第1スイッチング素子41は、第2信号S2に応じて電圧調整部2と電圧保持部1とを分離する。好ましくは、第1スイッチング素子41は、第2信号S2によって示される出力電圧Voの調整時期を除いて常に、電圧調整部2と電圧保持部1とを分離する。電圧調整部2と電圧保持部1とが分離されても、電源制御回路100では、電圧保持部1によって制御電圧Vcが保持されるので、制御電圧Vcに基づく駆動電圧Vdの出力が継続される。従って、本実施形態の電源制御回路100によれば、適切な信号を第2信号S2として入力することによって、電圧調整部2と電圧保持部1との間を分離して、定電圧電源Epを前述した無帰還型の電源として動作させることができる。定電圧電源Epを、発振し難く、例えば音響装置に用いられた場合に良好な音質をもたらし得る電源とすることができる。
【0031】
このように、電源制御回路100は、出力電圧Voの調整時以外は、定電圧電源Epを無帰還型の電源として動作させることができる。そして電源制御回路100は、例えば出力電圧Voが目標値からシフトしてきたときなど、必要に応じて、出力電圧Voが調整され得る帰還型の電源として定電圧電源Epを動作させることができる。従って、本実施形態の電源制御回路100によれば、発振を起こし難く、音響装置に用いられた場合に良好な音質をもたらし得る電源において、出力電圧の精度を高めることができる。
【0032】
さらに、
図1の電源制御回路100では、第2スイッチング素子42が、第2信号S2に応じて電圧調整部2と第1端子31とを分離する。好ましくは、第2スイッチング素子42は、第2信号S2によって示される出力電圧Voの調整時期を除いて常に、電圧調整部2と第1端子31とを分離する。従って、本実施形態の電源制御回路100によれば、適切な信号を第2信号S2として入力することによって、電圧調整部2と定電圧電源Epの出力素子Qとの間を分離することができる。従って、第1スイッチング素子41の作用によって無帰還型電源として動作する定電圧電源Epに、例えば電圧調整部2へのリーク電流などが及ぼし得る影響を原理的に無くすことができる。従って、より安定していて良好な精度の出力電圧Voが得られることがある。
【0033】
なお、本実施形態の電源制御回路において、第2スイッチング素子42は、必ずしも必要ではない。第1スイッチング素子41が電圧調整部2と電圧保持部1とを分離するだけでも、定電圧電源Epを無帰還型電源として動作させることができる。すなわち、第1端子31と電圧調整部2とは直接接続されていてもよい。
【0034】
図2には、本実施形態の電源制御回路100を用いた定電圧電源Epの出力電圧Vo、第1信号S1、第2信号S2、及び電圧保持部1に保持されている電圧(保持電圧)Vchの推移の一例が概略的に示されている。
図2の例では、第2信号S2がハイレベルのときに、第1スイッチング素子41及び第2スイッチング素子42が導通状態となる。
図2において時点T1までの期間で、例えば周囲温度の影響によって出力電圧Voが目標値VTから外れて上昇している。それに伴って第1信号S1も上昇している。この期間では、第2信号S2がロウレベルのため、第1スイッチング素子41及び第2スイッチング素子42のいずれも導通しておらず、よって保持電圧Vchは一定である。
【0035】
時点T1において第2信号S2がハイレベルに遷移すると、各スイッチング素子が導通状態となる。帰還動作、及び、電圧保持部1と電圧調整部2との接続により、定電圧電源Epから出力されている目標値VTよりも高い電圧に対して、保持電圧Vchが下降を始める。その保持電圧Vchに基づいて出力電圧Voも下降し始め、追随して第1信号S1も下降する。そして時点T2において第2信号S2がロウレベルに遷移すると、各スイッチング素子が非導通状態となり、保持電圧Vchは時点T2での大きさで一定となる。時点T2から時点T3にかけて保持電圧Vchは一定であるが、例えば周囲温度の影響などにより出力電圧Voが上昇している。しかし第2信号S2がロウレベルであって各スイッチング素子が導通していないので、保持電圧Vchは変化しない。そのため、出力電圧Voは調整されないまま上昇を続ける。そして時点T3で、第2信号S2がロウレベルに遷移すると、再度保持電圧Vchが下降し、出力電圧Voが目標値VTへと調整される。
【0036】
<電圧調整部の具体例>
図3には、
図1の電源制御回路100の電圧調整部2の、より具体的な回路の一例が示されている。
図3の電圧調整部2は、基準電圧源22と、誤差増幅器21とを含んでいる。基準電圧源22は、定電圧電源Epの出力電圧Voの目標値に対応する電圧Vrを生成する。
図3の例では、出力電圧Voが目標値の電圧であるときの第1信号S1の電圧と略等しい電圧Vrを生成する基準電圧源22が備えられる。すなわち、
図3の例の基準電圧源22は、出力電圧Voの目標値の電圧を抵抗Re1と抵抗Re2とで分圧して得られる電圧値の電圧Vrを出力する。基準電圧源22は、一例として、バンドギャップリファレンスで構成される。
【0037】
誤差増幅器21は、演算増幅器によって構成されている。誤差増幅器21の非反転入力に基準電圧源22の電圧Vrが入力され、反転入力には第1信号S1が入力される。誤差増幅器21の出力から、電圧保持部1へと制御電圧Vcが出力される。誤差増幅器21は、第1信号S1が有する電気量が示す電圧と基準電圧源22が生成する電圧Vrとの差に応じて変化する電圧を制御電圧Vcとして出力する。第1信号S1が有する電気量は、定電圧電源Epから出力されている電圧と相関する電圧又は電流などであって、
図3の例では電圧Vdvである。誤差増幅器21は、第1信号S1が反転入力に入力されるため、第1信号S1のレベル(電圧Vdv)が大きくなるほど、低い電圧を出力する。従って、第1スイッチング素子41及び第2スイッチング素子42が導通状態のときには、誤差増幅器21、電圧保持部1、及び出力素子Qなどによって負帰還回路が形成され、出力電圧Voが目標値へと調整される。
【0038】
<電圧保持部の具体例>
図4~
図6には、それぞれ、
図1及び
図3の電圧保持部1の具体例が示されている。
図4の例の電圧保持部1aは、キャパシタ13と、第1FET11と、第1定電流源14と、を含んでいる。
図4の例において第1FET11はn型FETであり、第1FET11のゲートは、キャパシタ13の一端と共に第1スイッチング素子41を介して電圧調整部2(
図1参照)の出力に接続され、制御電圧Vcで駆動される。キャパシタ13の他端はGNDに接続されており、キャパシタ13は制御電圧Vcで充電される。第1FET11のドレインには、電源電圧VDD又は電源電圧VDDから所定の大きさに変換された電圧(以下では、これらの電圧を「電源電圧VDD等」と称する)が印加される。第1FET11のソースは第1定電流源14の一端に接続され、第1定電流源14の他端がGNDに接続されている。第1定電流源14は、第1FET11のソースから電流を引き込む。第1FET11のソースから駆動電圧Vdが出力端子VOUTに出力される。電圧保持部1aでは、電圧調整部2と電圧保持部1とが第1スイッチング素子41で分離されても、制御電圧Vcはキャパシタ13によって保持される。ソースフォロワ接続の第1FET11のソースからは、キャパシタ13で保持されている電圧に応じた駆動電圧Vd(キャパシタ13で保持されている電圧よりも第1FET11のゲート-ソース間電圧だけ低い電圧)が出力される。
【0039】
図5の例の電圧保持部1bは、
図4の電圧保持部1aと同様に、キャパシタ13と、第1FET11と、第1定電流源14と、を含み、さらに、第2FET12及び第2定電流源15を含んでいる。第2FET12と第1FET11は互いに異なる導電型を有している。
図5の例において、第1FET11はn型FETであり、第2FET12はp型FETである。
図4の例と同様に、第1FET11のソースは、第1定電流源14の一端に接続され、第1定電流源14の他端はGNDに接続されており、第1定電流源14は、第1FET11のソースから電流を引き込む。第2FET12と第2定電流源15は、キャパシタ13と第1FET11との間に配置されている。
【0040】
キャパシタ13は、第2FET12のゲートとドレインとの間に接続されていて、
図4の例と同様に制御電圧Vcで充電される。第2FET12のゲートは制御電圧Vcで駆動される。第2FET12のドレインはGNDに接続されていて、ソースは第2定電流源15の一端に接続されている。第2定電流源15の他端には、第1FET11のドレインと共に、VDD等が印加される。第1FET11のゲートは第2FET12のソースと接続されている。すなわち、第2定電流源15は、第1FET11のドレインとゲートとの間に接続されていて、第2FET12のソースに電流を流し込む。
【0041】
電圧保持部1bでは、キャパシタ13が保持する電圧よりも第2FET12のゲート-ソース間電圧(Vgs)だけ高い電圧が第1FET11のゲートに印加される。そのゲートに印加される電圧よりも第1FET11のVgsだけ低い電圧が駆動電圧Vdとして出力される。FETのVgsは温度に対して変化する特性を有する。
図5の電圧保持部1bでは、第1FET11のVgsの温度特性と第2FET12のVgsの温度特性とが相殺される。周囲温度の変化に対する変動の少ない出力電圧Voが得られる。
【0042】
図6の例の電圧保持部1cは、
図5の電圧保持部1bが含む構成要素に加えて、さらに、トランスコンダクタンスアンプ16を含んでいる。トランスコンダクタンスアンプは演算増幅器の一種であり、gmアンプとも呼ばれ、入力電圧に応じた電流を出力する。制御電圧Vcはトランスコンダクタンスアンプ16の非反転入力に入力される。
図6のトランスコンダクタンスアンプ16では、ボルテージフォロワを構成するように反転入力と出力とが接続されている。トランスコンダクタンスアンプ16の出力は第2FET12のゲート、及びキャパシタ13の一端に接続されている。従ってトランスコンダクタンスアンプ16が、制御電圧Vcで、第2FET12のゲートを駆動すると共に、キャパシタ13に充電電流を供給する。
【0043】
なお、
図6の例のトランスコンダクタンスアンプ16のようなトランスコンダクタンスアンプは、
図4の例の電圧保持部1aに備えられてもよい。電圧保持部1aに備えられるトランスコンダクタンスアンプの出力は、第1FET11のゲート及びキャパシタ13の一端に接続され、その非反転入力には、
図6の例と同様に制御電圧Vcが入力される。電圧保持部1aに備えられるトランスコンダクタンスアンプは、制御電圧Vcで、第1FET11のゲートを駆動すると共に、キャパシタ13に充電電流を供給する。
【0044】
トランスコンダクタンスアンプ(若しくはgmアンプ)は、カレントミラータイプの出力形式を有し、各種の演算増幅器の中で比較的低い電流出力能力を有する。例えば、
図6のトランスコンダクタンスアンプ16の電流出力能力、すなわちキャパシタ13を充電する電流の大きさは、0.1μA以下であり得る。このような低い電流でキャパシタ13を充電し、電圧保持部1が保持している電圧(保持電圧)Vchをゆっくり変化させることにより、電圧調整時の出力電圧Vo(
図1参照)を、制御電圧Vcの変化に応じて、
図7に示されるように、低速で時間を掛けて変化させることができる。
【0045】
図7において、時点T4で第2信号S2がハイレベルとなって出力電圧Voの調整が開始されると、制御電圧Vcは、時点T5で、新たなレベルへの変化を終えている。これに対して保持電圧Vchは、制御電圧Vcの変化前の大きさVchbから変化後の大きさVchaまで、時点T6まで時間Taをかけて変化しており、それに伴って出力電圧Voも時間Taをかけて変化している。低速での出力電圧Voの変化は、例えば定電圧電源Epが音響装置に用いられたときに、発せられる音に影響を与え難く、影響が表れた場合でも、音響装置の使用者が気づき難い。
【0046】
そのため、本実施形態の電源制御回路100において電圧保持部1は、制御電圧Vcの変化に応じて、保持している電圧Vchを、制御電圧Vcの変化の前の大きさから制御電圧Vcの変化の後の大きさまで、50ミリ秒よりも長い時間をかけて変化させるように構成されていてもよい。50ミリ秒という時間は、ヒトの可聴周波数の下限とされる20Hzの逆数の時間である。定電圧電源Epが音響装置に用いられる場合、出力電圧Voの50ミリ秒よりも長い時間をかけたゆっくりとした変化には、音響装置の使用者が気づき難いと考えられる。或いは、定電圧電源Epが音響装置に用いられる場合、電圧保持部1は、保持電圧Vchを、その音響装置の出力可能帯域の下限周波数(例えば100Hz)の逆数の時間よりも長い時間を掛けて、制御電圧Vcの変化前の大きさから変化後の大きさまで変化させるように構成されていてもよい。使用者における出力電圧Voの変化の気づき難さの観点から、保持電圧Vchの変化速度は、一例として、20mV/msec未満であり得る。
【0047】
<第2実施形態の電源制御回路>
図8には、第2実施形態の電源制御回路の一例である電源制御回路101の構成がブロック図で模式的に示されている。電源制御回路101は、タイマ部5を備えている点で、第1実施形態の電源制御回路100と異なっている。
図9には、
図8の電源制御回路101における第2信号S2のレベル遷移に対する定電圧電源Epの出力電圧Voの推移と、タイマ部5から出力されるパルスPとの関係の一例のタイミング図が示されている。
図8の電源制御回路101の構成は、タイマ部5を除いて、
図1の電源制御回路100の構成と同じである。電源制御回路100に含まれる構成要素と同様の構成要素については
図1において付されている符号と同じ符号が
図8において付され、それら同様の構成要素についての重複する説明は省略される。
【0048】
タイマ部5には、第2信号S2が入力される。第2信号S2は、外部の制御装置Mで生成されてタイマ部5に入力される。
図1の電源制御回路100と同様に、外部の制御装置Mは、例えば、定電圧電源Epが用いられる電気機器の動作を制御するマイクロコンピュータやASICなどの半導体装置であり得る。制御装置Mは、一例として、定電圧電源Epの起動や定電圧電源Epが用いられる電気機器の起動を検出し、その起動時にレベルを遷移する第2信号S2を生成する。
【0049】
タイマ部5は、第2信号S2のレベルの遷移に応じてパルスPを出力する。すなわち、タイマ部5は、第2信号S2のレベルが遷移すると、自身の出力信号のレベルを変化させ、そして第2信号S2のレベル遷移から所定の時間(Tb)が経過すると、その出力信号のレベルを、第2信号S2のレベル遷移前のレベルに復帰させる。タイマ部5は、例えば、ワンショットマルチバイブレータ又は単安定マルチバイブレータと呼ばれるディジタル回路で構成される。
【0050】
そして電源制御回路101では、第1スイッチング素子41は、パルスPが出力されている間、電圧調整部2と電圧保持部1とを接続するように構成されている。また
図8の例において第2スイッチング素子42は、パルスPが出力されている間、電圧調整部2と第1端子31とを接続するように構成されている。なお、パルスPは、
図9の例のように所定時間Tbの間ハイレベルとなるパルスであってもよく、所定時間Tbの間ロウレベルとなるパルスであってもよい。パルスPがハイレベルのパルスである場合、第1スイッチング素子41及び第2スイッチング素子42は、それぞれn型FET又npnトランジスタであり得、パルスPがロウレベルのパルスである場合、第1スイッチング素子41及び第2スイッチング素子42は、それぞれp型FET又pnpトランジスタであり得る。
【0051】
図9の例において、時点T7で第2信号S2がロウレベルからハイレベルに遷移すると、所定時間Tbのパルス幅のパルスPが出力される。時点T7から時点T8までの間、第1スイッチング素子41及び第2スイッチング素子42が導通状態となって、電圧調整部2と電圧保持部1とが接続され、第1端子31と電圧調整部2とが接続される。そのため、出力電圧Voが目標値VTへと調整される。好ましくは、
図9の例のように、パルスPの出力中に、出力電圧Voが目標値VTまで調整される。
【0052】
所定時間(パルス幅)Tbは、出力電圧Voが任意の電圧値から目標値VTまで調整されるのに要する時間以上の時間であることが好ましく、例えば、パルス幅Tbは、出力電圧VoがゼロVの状態から目標値VTまで調整されるのに要する時間以上であってもよい。また、第2信号S2がパルスPを生成する第2信号S2のレベル遷移は、
図9の例のようなロウレベルからハイレベルへの遷移であってもよく、ハイレベルからロウレベルへの遷移であってもよい。
【0053】
本実施形態によれば、外部の制御装置Mが、出力電圧Voの調整時期として適した時間の間ハイレベル又はロウレベルとなる信号(例えば
図2の第2信号S2)を出力しなくても、レベルを遷移させる任意の信号を第2信号S2として用いることができる。そして、パルスPが出力されている所定の時間だけ出力電圧Voを調整することができ、パルスPの出力終了後、定電圧電源Epを無帰還型の電源として動作せることができる。なお、本実施形態においても、第1実施形態と同様に、第2スイッチング素子42は、必ずしも必要ではなく、第1端子31と電圧調整部2とは直接接続されていてもよい。
【0054】
<第2実施形態の電源制御回路の変形例>
図10には、
図8の第2実施形態の電源制御回路101の変形例である電源制御回路102が示されている。電源制御回路102は、
図8の電源制御回路101に加えて、第3端子33と、第3端子33に接続されている電流経路Cと、電流経路Cを開放する第3スイッチング素子43と、を含んでいる。
図10の電源制御回路102の構成は、第3端子33、電流経路C、及び第3スイッチング素子43を除いて、
図8の電源制御回路101の構成と同じである。電源制御回路101、又は
図1の電源制御回路100に含まれる構成要素と同様の構成要素については、
図1又は
図8において付されている符号と同じ符号が
図10において付され、それら同様の構成要素についての重複する説明は省略される。
【0055】
第3端子33は、定電圧電源Epの出力端子VOと抵抗53を介して接続される。電流経路Cの一端は、第3端子33に接続され、他端はGNDに接続されている。従って、電流経路Cには、定電圧電源Epの出力素子Qを通る電流が、抵抗53及び第3端子33を経由して流れる。
【0056】
前述したように、定電圧電源Epの起動時や、定電圧電源Epが用いられている電気機器の起動時にレベルを遷移させる第2信号S2がタイマ部5に入力されると、タイマ部5からパルスPが出力されている間に、定電圧電源Epの負荷Lがまだ起動していないことがある。すなわち、出力電圧Voの調整時期の間、定電圧電源Epの出力素子Qには、負荷Lが起動しているときよりも小さな電流が流れることがある。出力素子Qに流れる電流が小さいと、出力素子Qを構成するトランジスタTのベース-エミッタ間電圧が小さいため、より大きな電流が出力素子Qに流れているときよりも小さい電圧が出力端子VOに現れる。その状態で出力電圧Voが調整され、調整時期の終了後に負荷Lが起動すると、出力電圧Voは、調整された電圧値から低下してしまうことがある。
【0057】
そこで、電源制御回路102では、出力電圧の調整時期に負荷Lが起動していなくても、出力素子Qから電流経路Cを通って電流が流れるように構成されている。すなわち、第3スイッチング素子43は、タイマ部5からパルスPが出力されている間、第1スイッチング素子41及び第2スイッチング素子42と同様に導通状態となって、電流経路Cを閉じるように構成されている。負荷Lの起動時に目標値通りの出力電圧Voが得られるように、好ましくは、負荷Lと同等の抵抗値を有している抵抗53が、第3端子33と出力端子VOとの間に接続される。
【0058】
図11には、
図10の電源制御回路102におけるタイマ部5から出力されるパルスPに対する出力電圧Voの推移の一例のタイミング図が示されている。時点T7での第2信号S2のレベル遷移と共にパルスPの出力が開始され、出力電圧Voが目標値VTへと調整される。この調整時期の間、第3スイッチング素子43が導通状態となって電流経路Cを閉じているので、出力素子Qには、電流経路Cに流入する電流が流れている。そして、時点T8でパルスPの出力が終了し、第3スイッチング素子43が開放状態となると、出力素子Qに流れる電流が減少するため、出力電圧Voは目標値VTよりも上昇する。しかし、時点T9で負荷Lが起動すると、出力電圧Voは下降し、より目標値VTに近い電圧値、好ましくは目標値VTの出力電圧Voが出力される。
【0059】
<電源の出力電圧調整方法>
図12には、本発明の一実施形態の電源の出力電圧調整方法の一例がフロー図にて示されている。
図12を参照すると共に、適宜、
図1、
図2、及び
図8~
図11を再度参照して、本実施形態の電源の出力電圧の調整方法(以下、単に「本実施形態の方法」とも称する)を説明する。本実施形態の方法は、
図1及び
図8に示される定電圧電源Epのような、内部の電圧保持部で保持される電圧に基づく定電圧を出力する電源の出力電圧の調整方法である。以下の説明では、
図1の定電圧電源Ep(以下では単に「電源Ep」とも称する)の出力電圧Voが調整される場合を例に、本実施形態の方法を説明する。
【0060】
本実施形態の方法は、出力電圧Voを調整するときに、電源Epから出力されている電圧に基づいている制御電圧Vcの電圧保持部1への入力を開始することと(
図12のステップS10)、電圧保持部1で制御電圧Vcを保持すると共に、電圧保持部1で保持される電圧(保持電圧)の変化に応じて出力電圧Voを変化させることと(ステップS20)、出力電圧Voを変化させた後に電圧保持部1への制御電圧Vcの入力を停止することと(ステップS30)、を含んでいる。
【0061】
本実施形態の方法によれば、出力電圧を変化させた後、電源Epから出力されている電圧に基づく制御電圧Vcの電圧保持部1への入力が停止されるので、電源Epを、出力電圧Voの調整時期以外は、無帰還型電源として動作させることができる。そして、出力電圧Voの調整時には、電圧保持部1への制御電圧Vcの入力が開始されるので、電源Epを帰還型電源として動作させて、自律的に出力電圧Voの調整をさせることができる。そのため、発振を起こし難く、一例として音響装置に用いられた場合に良好な音質をもたらし得る電源において、出力電圧の精度を高めることができる。
【0062】
本実施形態の方法では、電圧保持部1への制御電圧Vcの入力を開始することにおいて、
図1及び
図2を参照して説明したように、電源Epから出力されている電圧に基づいて制御電圧Vcを調整する電圧調整部2と電圧保持部1とをスイッチング素子(
図1において第1スイッチング素子41)を介して接続してもよい。電源Epからその時その時に現に出力されている電圧に基づく適切な制御電圧Vcの電圧保持部への入力を容易に開始することができ、また、その入力の停止も容易に行うことができると考えられる。
【0063】
本実施形態の方法では、電圧保持部1への制御電圧Vcの入力を開始することにおいて、さらに、
図1及び
図2を参照して説明したように電源Epから出力されている電圧と相関する電気量を有する信号(
図1において第1信号S1)を受ける端子(第1端子31)と電圧調整部2とを、スイッチング素子(
図1において第2スイッチング素子42)を介して接続してもよい。そして、電圧保持部1への制御電圧Vcの入力を停止することにおいて、この端子と電圧調整部2とをスイッチング素子を用いて分離してもよい。出力電圧Vo調整時以外は、その調整用の帰還回路と電源Epの出力段の回路とを分離することができ、より精度の高い出力電圧Voが得られることがある。しかも、出力電圧Voの調整時には、調整用の帰還回路と電源Epの出力段の回路とを容易に接続することができ、出力電圧Voを精度良く調整することができる。
【0064】
本実施形態の方法は、さらに、
図8及び
図9を参照して説明したように、電源Epの起動を、例えば電源Epが用いられる機器の制御装置を用いて検出することをさらに含んでいてもよい。そして、電源Epの起動時から所定時間の間に出力電圧Voを調整してもよい。電源Epの起動後の稼働中に出力電圧Voを調整することによって電源Epを用いる機器に影響を与えることを回避できることがある。
【0065】
また、このように電源Epの起動時から所定時間の間に、電源Epに負荷を繋がずに出力電圧Voを調整する場合、本実施形態の方法は、出力電圧Voを調整する所定時間の間、電源Epの使用時に電源Epから電源Epの負荷(例えば
図10の負荷L)に流れる電流に相当する大きさの電流を、この負荷とは別の経路で電源Ep内に流すことをさらに含んでいてもよい。さらに、本実施形態の方法は、
図10及び
図11を参照して説明したように、出力電圧Voの調整後、この別の経路への通電を、スイッチング素子を用いて遮断してもよい。電源Epの使用時において負荷を接続した状態で、より目標値に近い出力電圧Voが得られることがある。なお「電源Epの負荷に流れる電流に相当する電流」の大きさは、電源Epの使用時にその負荷に流れる電流の最小値から最大値までのいずれかであり得、好ましくは、電源Epの使用時に負荷に流れる電流の平均値である。
【0066】
<音響装置に用いられる電源の出力電圧の調整方法>
前述した一実施形態の電源の出力電圧調整方法は、音響装置(図示せず)に用いられる電源の出力電圧の調整に用いられてもよい。その場合の電源の出力電圧の調整方法は、前述した一実施形態の電源の出力電圧調整方法を用いて出力電圧を調整することを含み、この出力電圧の調整を、音響装置の音量が変化するとき、又は音響装置から音が発せられていないときに行ってもよい。音響装置から発せられる音に大きな影響を与えずに出力電圧を調整できることがある。
【0067】
或いは、前述した一実施形態の電源の出力電圧調整方法を用いた、音響装置に用いられる電源の出力電圧の調整方法は、一実施形態の電源の出力電圧調整方法を用いて出力電圧を調整することと、音響装置の周囲で発せられている音の大きさを検知することと、を含んでもよい。そして出力電圧の調整を、音響装置の周囲で所定値を超える大きさの音が発せられているときに行ってもよい。出力電圧の調整が音響装置から発せられる音に与え得る影響を使用者に実感させずに調整を行い得ることがある。なお、出力電圧の調整の実施の判断基準となる、周囲で発せられる音の「所定値」は、例えば、音圧レベルで約50dBである。
【符号の説明】
【0068】
100~102 電源制御回路
1、1a~1c 電圧保持部
11 第1電界効果型トランジスタ(第1FET)
12 第2電界効果型トランジスタ(第2FET)
13 キャパシタ
14 第1定電流源
15 第2定電流源
16 トランスコンダクタンスアンプ
2 電圧調整部
21 誤差増幅器(演算増幅器)
22 基準電圧源
31 第1端子
32 第2端子
33 第3端子
41 第1スイッチング素子
42 第2スイッチング素子
43 第3スイッチング素子
5 タイマ部
53 抵抗
C 電流経路
Ep 定電圧電源
L 負荷
P パルス
Q 定電圧電源の出力素子
S1 第1信号
S2 第2信号
Tb 所定の時間(パルス幅)
Vc 制御電圧
Vch 電圧保持部が保持している電圧
Vd 駆動電圧
Vo 定電圧電源の出力電圧
VO 定電圧電源の出力端子
Vr 基準電圧
VT 出力電圧の目標値