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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115454
(43)【公開日】2024-08-26
(54)【発明の名称】車載充電装置
(51)【国際特許分類】
   B60L 53/24 20190101AFI20240819BHJP
   H02P 27/06 20060101ALI20240819BHJP
   B60L 9/18 20060101ALI20240819BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20240819BHJP
   B60L 53/14 20190101ALI20240819BHJP
   B60L 58/10 20190101ALI20240819BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240819BHJP
   H02M 7/12 20060101ALI20240819BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20240819BHJP
【FI】
B60L53/24
H02P27/06
B60L9/18 J
B60L50/60
B60L53/14
B60L58/10
H02J7/00 P
H02M7/12 Q
H02M7/48 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021161
(22)【出願日】2023-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(71)【出願人】
【識別番号】304021277
【氏名又は名称】国立大学法人 名古屋工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】サハ スブラタ
(72)【発明者】
【氏名】高橋 充
(72)【発明者】
【氏名】平野 智也
(72)【発明者】
【氏名】田口 真
(72)【発明者】
【氏名】小坂 卓
(72)【発明者】
【氏名】松盛 裕明
【テーマコード(参考)】
5G503
5H006
5H125
5H505
5H770
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BB02
5G503CC02
5G503DA07
5G503FA06
5G503GB03
5G503GB06
5H006AA02
5H006BB05
5H006CA02
5H006CB08
5H006CC02
5H006DA04
5H006DC05
5H125AA01
5H125AC12
5H125AC24
5H125BA00
5H125BB00
5H125BC05
5H125BC21
5H125DD02
5H125FF16
5H505AA16
5H505CC04
5H505CC05
5H505CC09
5H505DD03
5H505DD08
5H505EE41
5H505EE48
5H505GG04
5H505HA03
5H505HA05
5H505HA06
5H505HA09
5H505HA10
5H505HB01
5H505JJ03
5H505LL01
5H505LL22
5H505LL24
5H505LL41
5H505LL58
5H505MM01
5H770BA02
5H770CA02
5H770CA06
5H770DA03
5H770DA10
5H770DA41
5H770HA03W
5H770JA10X
5H770JA11W
5H770JA17Z
(57)【要約】
【課題】回転電機のコイル及び回転電機を駆動するインバータを利用し、外部交流電源により直流電源を充電する車載充電装置をシステムコストの増加を抑制して構成する。
【解決手段】車載充電装置10は、外部交流電源4からの交流電力を直流電力に変換する交流直流コンバータ1と、インバータ5と複数相のコイル7とにより構成され、インバータ5の直流側端子T5dと複数相のコイル7の中性点7Nとの一方が第1端子T21であり、他方が第2端子T22である直流直流コンバータ2とを備える。交流直流コンバータ1の交流側端子T1aは、外部交流電源4に接続され、交流直流コンバータ1の直流側端子T1dは、第1端子T21に接続され、第2端子T22は、直流電源3に接続されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中性点で互いに接続された複数相のコイルを備え、車輪の駆動力源となる回転電機と、直流と複数相の交流との間で電力を変換するインバータと、前記インバータに接続された直流電源と、を備えた車両用駆動装置の前記直流電源を、単相の外部交流電源から供給される電力によって充電する車載充電装置であって、
前記外部交流電源からの交流電力を直流電力に変換する交流直流コンバータと、
前記インバータと複数相の前記コイルとにより構成され、前記インバータの直流側端子と複数相の前記コイルの前記中性点との一方が第1端子であり、他方が第2端子である直流直流コンバータと、を備え、
前記交流直流コンバータの交流側端子は、前記外部交流電源に接続され、
前記交流直流コンバータの直流側端子は、前記直流直流コンバータの前記第1端子に接続され、
前記直流直流コンバータの前記第2端子は、前記直流電源に接続されている、車載充電装置。
【請求項2】
前記交流直流コンバータは、インダクタと、フルブリッジ回路と、を備える、請求項1に記載の車載充電装置。
【請求項3】
前記直流電源に対して前記インバータの直流側端子と前記中性点とを選択的に接続するコンタクタを備え、
前記インバータの直流側端子は、前記第1端子であり、
前記中性点は、前記第2端子であり、
前記中性点は、前記コンタクタを介して前記直流電源に接続される、請求項1又は2に記載の車載充電装置。
【請求項4】
前記中性点と前記交流直流コンバータの直流側端子とを選択的に接続するコンタクタを備え、
前記中性点は、前記第1端子であり、
前記インバータの直流側端子は、前記第2端子であり、
前記中性点は、前記コンタクタを介して前記交流直流コンバータの直流側端子に接続される、請求項1又は2に記載の車載充電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載充電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特表2022-503713号には、電気自動車やハイブリッド自動車などの車輪の駆動力源として回転電機を備えた車両に搭載された直流電源を、車両に搭載された状態で充電する車載充電装置(オンボードチャージャー、Onboard charger)が開示されている(背景技術において括弧内の符号は参照する文献のもの。)。この文献の図3には、単相の外部交流電源(310)がY字接続された3相のコイルの中性点に接続され、当該3相のコイルのそれぞれにインバータ(220)の交流側のそれぞれのアームが接続され、インバータ(220)の直流側端子に直流直流コンバータ(DC/DCコンバータ)の入力側端子が接続され、直流直流コンバータの出力側端子に直流電源が接続された車載充電装置が例示されている。3相のコイル及びインバータ(220)は、外部交流電源(310)からの正弦波のグリッド電流を直流に変換する交流直流コンバータ(AC/DCコンバータ)を形成している。インバータ(220)がスイッチング制御されることにより、この交流直流コンバータは交流電力から変換される直流電力の力率を改善する力率改善(PFC:power factor correction)回路としても機能する。交流直流変換後の電流には、外部交流電源(310)の周波数(系統周波数)の2倍の周波数のリップルが生じる。直流直流コンバータは、このリップルを低減して直流電源を充電するためのバッテリ電流を生成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2022-503713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、例えば電気自動車やハイブリッド自動車における車載充電装置では、3相のコイルとして、当該車両における駆動力源の回転電機のステータに備えられたコイル(ステータコイル)を用いることができる。しかし、このような回転電機は、高電力密度となるように設計されており、インダクタンスが小さい。上記文献の図3にも例示されているように、中性点に単相の外部交流電源が接続されて交流直流コンバータが形成された場合、交流直流変換の際に、外部交流電源の系統電流の高調波電流のピーク値が大きくなる傾向がある。
【0005】
これを抑制するための1つの方法として、交流直流コンバータを構成するインバータの制御周波数を高くすることが考えられる。或いは、直流直流コンバータの側でリップルを軽減するべく、直流直流コンバータの制御周波数を高くことが考えられる。但し、制御周波数を高くする場合には、インバータや直流直流コンバータを制御する制御装置の制御周期(動作周波数)も短くする必要がある。また、早い制御周期に伴う高い周波数でのスイッチングは、インバータ及び直流直流コンバータが備えるスイッチング素子における損失を増大させ、車載充電装置の効率の低下に繋がる。また、制御装置として、高速動作が可能なマイクロコンピュータ等を用いる必要が生じ、車載充電装置のコストの上昇に繋がる。あるいは別の方法として、外部交流電源と複数相のコイルの中性点との間に、インダクタを追加することも考えられる。しかし、この場合も、インダクタの追加により車載充電装置のコストが上昇する。
【0006】
上記に鑑みて、回転電機とインバータと直流電源とを備えた車両用駆動装置の当該直流電源を、当該回転電機のコイル及び当該インバータを利用して、外部交流電源からの電力により充電する車載充電装置をシステムコストの増加を抑制して構成することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記に鑑みた車載充電装置は、中性点で互いに接続された複数相のコイルを備え、車輪の駆動力源となる回転電機と、直流と複数相の交流との間で電力を変換するインバータと、前記インバータに接続された直流電源と、を備えた車両用駆動装置の前記直流電源を、単相の外部交流電源から供給される電力によって充電する車載充電装置であって、前記外部交流電源からの交流電力を直流電力に変換する交流直流コンバータと、前記インバータと複数相の前記コイルとにより構成され、前記インバータの直流側端子と複数相の前記コイルの前記中性点との一方が第1端子であり、他方が第2端子である直流直流コンバータと、を備え、前記交流直流コンバータの交流側端子は、前記外部交流電源に接続され、前記交流直流コンバータの直流側端子は、前記直流直流コンバータの前記第1端子に接続され、 前記直流直流コンバータの前記第2端子は、前記直流電源に接続されている。
【0008】
この構成によれば、車載充電装置を構成する交流直流コンバータと直流直流コンバータとの内、適切なインダクタンスが必要な交流直流コンバータが、回転電機の駆動系回路(回転電機のコイル及び回転電機を駆動するインバータ)を用いることなく構成される。車載充電装置に回転電機のコイルを用いる場合、当該コイルのイダクタンスが小さいことにより、必要な性能を確保することが困難となる場合がある。しかし、本構成によれば、回転電機のコイルを用いることなく、適切なインダクタンスが設定可能な交流直流コンバータにより、力率改善機能などの充分な性能を確保して交流直流変換が可能な交流直流コンバータを構成することができる。また、高いインダクタンスが必要ない直流直流コンバータを、回転電機の駆動系回路を用いて構成することができ、車載充電装置のコストを低減することができる。さらに、交流直流コンバータに適切なインダクタンスを設定可能なことにより、交流直流コンバータを短い制御周期(高い制御周波数)で制御する必要もなく、交流直流コンバータを構成するスイッチング素子の損失も低減し易い。従って、車載充電装置のシステム効率も高くし易い。このように、本構成によれば、回転電機とインバータと直流電源とを備えた車両用駆動装置の当該直流電源を、当該回転電機のコイル及び当該インバータを利用して、外部交流電源からの電力により充電する車載充電装置をシステムコストの増加を抑制して構成することができる。
【0009】
車載充電装置のさらなる特徴と利点は、図面を参照して説明する例示的且つ非限定的な実施形態についての以下の記載から明確となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】回転電機の駆動制御システムの模式的な回路ブロック図
図2】車載充電装置のシステム構成の模式的ブロック図
図3】回転電機の駆動制御システムを利用した車載充電装置の第1の例を示す回路ブロック図
図4】回転電機の駆動制御システムを利用した車載充電装置の第2の例を示す回路ブロック図
図5】回転電機の駆動制御システムを利用した車載充電装置の比較例を示す回路ブロック図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、車載充電装置の実施形態を図面も参照して説明する。車載充電装置10は、図1に示すような車両用駆動装置9に備えられた直流電源3を、車両に搭載された状態で充電する装置である。図1は、車両用駆動装置9に含まれる回転電機70の駆動制御システムの模式的な回路ブロック図であり、図2は、車載充電装置10のシステム構成の模式的ブロック図である。図1に示すように、本実施形態の車両用駆動装置9は、ハイブリッド自動車や電気自動車等の車輪の駆動力源となる回転電機70と、直流と複数相の交流との間で電力を変換するインバータ5と、インバータ5に接続された直流電源3とを備えている。尚、車両用駆動装置9が、回転電機70に加えて不図示の内燃機関などの他の駆動力源も備えていることを妨げるものではない。図2に示すように、車載充電装置10は、車両用駆動装置9の直流電源3を、単相の外部交流電源4(グリッド電源)から供給される電力によって充電する装置であり、いわゆるオンボードチャージャー(Onboard charger)と称される装置である。本実施形態では、車載充電装置10は、車両用駆動装置9と一部を共用して構成されている。具体的には、インバータ5、回転電機70のコイル7が共用されている。好ましくは、後述するように、インバータ5を駆動する制御装置8や、直流電圧を平滑する平滑コンデンサ(直流リンクコンデンサ6)も共用されている。
【0012】
図1に示すように、車両用駆動装置9は、車両の駆動力源となる回転電機70を制御対象とする制御装置8を備え、制御装置8は、電流フィードバック制御を行うことによって回転電機70を駆動制御する。駆動対象の回転電機70は、ステータコアに複数相(Nを任意の自然数としてN相、本実施形態ではN=3の3相の形態を例示する)のコイル7(ステータコイル)が配置されたステータと、ロータコアに永久磁石が配置されたロータとを有する埋め込み永久磁石型回転電機(IPMSM : Interior Permanent Magnet Synchronous Motor)である。このような構成は公知であり、本実施形態では、ステータコア、ステータ、ロータコア、ロータ、永久磁石等の図示は省略している。本実施形態では、3相のコイル7(U相コイル7u、V相コイル7v、W相コイル7w:図2図4等参照)が中性点7Nで短絡されたY型の形態を例示している。しかし、回転電機70は、例えば3相のコイル7を2組備え、6相の交流により駆動される形態であってもよい。尚、回転電機70は、電動機としても発電機としても機能することができる。回転電機70が電動機として機能するとき、回転電機70は力行状態であり、回転電機70が発電機として機能するとき、回転電機70は回生状態である。
【0013】
図1に示すように、車両用駆動装置9は、インバータ5を備えている(図3図4等も参照)。インバータ5は、交流の回転電機70及び直流電源3に接続されて、複数相の交流と直流との間で電力を変換する。インバータ5の一対の直流側端子(直流リンク端子T5d)は、直流電源3の正負両極端子に接続されている。具体的には、一対の直流リンク端子T5dの内の正極側の端子(直流リンク正極端子T5P)が直流電源3の正極に接続され、一対の直流リンク端子T5dの内の負極側の端子(直流リンク負極端子T5N)が直流電源3の負極に接続されている。また、インバータ5の複数相の交流側端子(コイル側端子T5a)は、複数相のコイル7のそれぞれに接続されている。本実施形態では、インバータ5が、複数相のアームとして、U相アーム、V相アーム、W相アームを備えており、それぞれのアームの中点がコイル側端子T5aに接続されている。U相アームの中点とU相コイル7uとが接続され、V相アームの中点とV相コイル7vとが接続され、W相アームの中点とW相コイル7wとが接続される。
【0014】
インバータ5の直流側には、正極と負極との間の電圧(直流リンク電圧Vdc)を平滑する平滑コンデンサ(直流リンクコンデンサ6)が備えられている。また、インバータ5の直流側には、直流リンク電圧Vdcを検出する電圧センサ(直流リンク電圧センサ61)も備えられている。
【0015】
直流電源3は、例えば、リチウムイオン電池などの充電可能な二次電池(バッテリ)や、電気二重層キャパシタなどにより構成されている。本実施形態のように、回転電機70が車両の駆動力源の場合、直流電源3は、大電圧大容量の直流電源であり、定格の電源電圧は、例えば200~400[V]である。また、直流電源3には、直流電源3に対する入出力電流(バッテリ電流)を検出する電流センサ(バッテリ電流センサ31)や、直流電源3の端子電圧(バッテリ電圧)を検出する電圧センサ(バッテリ電圧センサ32)も備えられている。
【0016】
図示は省略するが、例えば直流電源3がリチウムイオンバッテリなどの場合には、BMS(バッテリマネジメントシステム(Battery Management System))が備えられていることが多い。リチウムイオンバッテリなどの二次電池は、複数のセル(バッテリセル)により構成されている。BMSは、(1)セルの過充電、過放電の防止、(2)セルに過電流が流れることの防止、(3)セルの温度管理、(4)充電状態(SOC:State of Charge)の算出、(5)セル電圧の均一化、等を行うバッテリの管理制御システムである。上述したバッテリ電流センサ31やバッテリ電圧センサ32は、BMSの一部として構成されていてもよい。
【0017】
図3図4等に示すように、インバータ5は、複数のスイッチング素子5Sを有して構成されている。スイッチング素子5Sには、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)やパワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)やSiC-MOSFET(Silicon Carbide - Metal Oxide Semiconductor FET)やSiC-SIT(SiC - Static Induction Transistor)、GaN-MOSFET(Gallium Nitride - MOSFET)などの高周波での動作が可能なパワー半導体素子を適用すると好適である。本実施形態では、スイッチング素子5SとしてFETが用いられる形態を例示している。尚、各スイッチング素子5Sは、負極から正極へ向かう方向(下段側から上段側へ向かう方向)を順方向として、並列にフリーホイールダイオードを備えている。
【0018】
図1に示すように、インバータ5は、制御装置8により制御される。制御装置8は、マイクロコンピュータ等の論理回路を中核部材として構築されている。例えば、制御装置8は、上位の制御装置の1つである車両制御装置90等の他の制御装置等から要求信号として提供される回転電機70の目標トルク(トルク指令)に基づいて、ベクトル制御法を用いた電流フィードバック制御を行って、インバータ5を介して回転電機70を駆動する。ベクトル制御法では、各相のコイル7に流れる電流(本実施形態ではU相電流Iu,V相電流Iv,W相電流Iw:図3図4等参照)を、ロータに配置された永久磁石が発生する磁界の方向であるd軸と、d軸に直交する方向(磁界の向きに対して電気角でπ/2進んだ方向)のq軸とのベクトル成分に座標変換してフィードバック制御を行う。座標変換先の座標系をdq軸直交座標系と称する。尚、マイクロコンピュータ等の論理回路素子の動作電圧は3.3~5ボルト程度である。本実施形態では、簡略化のため、図示を省略しているが、当該論理回路素子で生成された制御信号はドライブ回路を介してインバータ5に伝達される。或いは、制御装置8にドライブ回路が含まれると考えてもよい。
【0019】
回転電機70の各相のコイル7を流れる実電流は電流センサ(モータ電流センサ81)により検出され、制御装置8はその検出結果を取得する。また、回転電機70のロータの各時点での磁極位置(電気角)やロータの回転速度(角速度)は、例えばレゾルバなどの回転センサ82により検出され、制御装置8はその検出結果を取得する。制御装置8は、モータ電流センサ81及び回転センサ82の検出結果を用いて、電流フィードバック制御を実行する。制御装置8は、電流フィードバック制御のために種々の機能部を有して構成されており、各機能部は、マイクロコンピュータ等のハードウエアとソフトウエア(プログラム)との協働により実現される。
【0020】
上述したように、インバータ5を介して直流電源3に接続される回転電機70は、直流電源3から供給される電力により電動機として機能すると共に、発電機として機能して直流電源3を充電することもできる。例えば、ハイブリッド自動車では内燃機関などの動力により、回転電機70に機械エネルギーを供給して回転電機70に発電させることも可能であるが、発電の機会が少なく直流電源3を充分に充電できない場合がある。また、駆動力源として回転電機70しか搭載されていない電気自動車では、慣性走行等における車輪からの機械エネルギーによる発電に留まり、直流電源3を充分に充電できないことが多い。また、ハイブリッド自動車においても、回転電機70に発電させるよりも外部から電力を供給する方が、エネルギー効率がよい場合がある。このため、直流電源3が車両に搭載された状態で、直流電源3を外部電源によって充電可能に構成されていることが好ましい。
【0021】
本実施形態の車載充電装置10は、車両用駆動装置9の直流電源3を、単相の外部交流電源4から供給される電力によって充電する。図2に示すように、車載充電装置10は、外部交流電源4に接続されて、外部交流電源4からの交流電力を直流電力に変換する交流直流コンバータ1(AC/DCコンバータ)と、交流直流コンバータ1により変換された直流の電圧を変換する直流直流コンバータ2(DC/DCコンバータ)とを備えている。交流直流コンバータ1は、一対の交流側端子T1aと一対の直流側端子T1dとを備えており、交流直流コンバータ1の交流側端子T1aは、外部交流電源4に接続される。直流直流コンバータ2は、一対の第1端子T21と、一対の第2端子T22とを備えており、一対の第1端子T21と交流直流コンバータ1の一対の直流側端子T1dとが接続されると共に、一対の第2端子T22と直流電源3の正負両極端子とが接続される。
【0022】
交流直流コンバータ1及び直流直流コンバータ2は、スイッチング素子(図3図4において符号1S、5Sで示すスイッチング素子)を備えて構成されており、これらのスイッチング素子は、インバータ5を介して回転電機70を駆動制御する制御装置8によって制御される。また、後述するように、車載充電装置10は、コンタクタ(図3図4において、符号11,12で示すコンタクタ)を備えて構成されている。これらのコンタクタも制御装置8、或いは制御装置8及び車両制御装置90によって制御される。図1を参照して上述したように、制御装置8は回転電機の駆動制御システムに含まれており、制御装置8も回転電機70の駆動制御と直流電源3の充電制御とに共用される。
【0023】
直流電源3を充電する際には、外部交流電源4から直流電源3へ電力が供給される。従って、回路構成上、相対的に外部交流電源4の側(上流側)に配置される交流直流コンバータ1をフロントエンドコンバータ或いはフロントコンバータ、相対的に直流電源3の側(下流側)に配置される直流直流コンバータ2をバックエンドコンバータ或いはバックコンバータと称する場合がある。本実施形態では、外部交流電源4に接続されるフロントコンバータである交流直流コンバータ1が、車両用駆動装置9とは別に形成された回路によって構成され、直流電源3に接続されるバックコンバータである直流直流コンバータ2が、回転電機70の駆動系回路(コイル7及びインバータ5)を共用して構成されている。
【0024】
図3図4に示すように、交流直流コンバータ1は、スイッチング素子1Sを備えて構成されている。交流直流変換においては、誘導性インピーダンスや容量性インピーダンスにより、電圧位相と電流位相との間に位相差が生じ、当該位相差によって力率が低下する。スイッチング素子1Sが制御されることによって、例えば電流位相が調整され、位相差が補償されて力率を改善することができる。交流直流コンバータ1は、外部交流電源4から供給される交流電力から変換される直流電力の力率を改善する力率改善(PFC:power factor correction)回路としても機能するように構成されている。
【0025】
本実施形態では、交流直流コンバータ1は、インダクタL1と、スイッチング素子1Sを用いたフルブリッジ回路とを備えて構成されている。フルブリッジ回路を備えることにより、交流直流コンバータ1を交流直流変換及び直流交流変換が可能な双方向コンバータとして機能させることができる。例えば、車載充電装置10を、外部交流電源4から供給される電力により直流電源3を充電するための機能と、直流電源3に蓄えられた電力により車両外の装置に交流電力を供給する機能との2つの機能を有する装置として利用することができる。
【0026】
近年、災害時等において電動車両やハイブリッド車両の直流電源3を非常用電源として用いることが提唱されている。交流直流コンバータ1がフルブリッジ回路を備えることにより、直流電源3をそのような非常用電源として利用することができる。当然ながら、このような直流電源3の利用を考慮しないような場合には、交流直流コンバータ1が、交流直流変換のみを行う一方向コンバータとして構成されていてもよい。この場合には、交流直流コンバータ1は、例えばハーフブリッジ回路を有して構成されていてもよい。
【0027】
詳細は後述するが、本実施形態では、車載充電装置10の好適な構成例として、図3の第1の例と、図4の第2の例とを示している。第1の例及び第2の例は、交流直流コンバータ1の構成は同一であり、直流直流コンバータ2の構成が相違する。図3及び図4に示すように、力率改善機能も備えた交流直流コンバータ1は、インダクタL1と、フルブリッジ回路とを備えている。従って、力率改善機能の実現に必要なインダクタンスを、インダクタL1によって適切に設定することができる。
【0028】
図2を参照して上述したように、直流直流コンバータ2は、第1端子T21が交流直流コンバータ1の直流側端子T1dに接続され、第2端子T22が、直流電源3に接続されている。図3に例示する第1の例では、インバータ5の直流側端子である直流リンク端子T5dが、第1端子T21であり、中性点7Nが、第2端子T22である。また、図4に例示する第2の例では、中性点7Nが、第1端子T21であり、インバータ5の直流側端子である直流リンク端子T5dが、第2端子T22である。
【0029】
図3は、回転電機70の駆動系回路(コイル7,インバータ5等)を含む、回転電機70の駆動制御システムを利用した車載充電装置10の第1の例を示す回路ブロック図であり、図4は、回転電機70の駆動系回路を含む、回転電機70の駆動制御システムを利用した車載充電装置10の第2の例を示す回路ブロック図である。上述したように、第1の例及び第2の例は、交流直流コンバータ1の構成は同一であり、直流直流コンバータ2の構成が相違する。しかし、第1の例及び第2の例に共通して、直流直流コンバータ2は、回転電機70の駆動回路(インバータ5及び複数相のコイル7)を用いて構成されている。
【0030】
図3に示すように、車載充電装置10は、交流直流コンバータ1の交流側端子T1aと、外部交流電源4とを選択的に接続する(交流側端子T1aと外部交流電源4とを断接する)フロントエンドコンタクタ11を備えている。フロントエンドコンタクタ11は、外部交流電源4に接続された接点(フロントエンドコンタクタ第1接点11a)と、交流直流コンバータ1に接続された接点(フロントエンドコンタクタ第2接点11b)とを備えている。フロントエンドコンタクタ第1接点11aとフロントエンドコンタクタ第2接点11bとが接続された場合に、フロントエンドコンタクタ11が導通状態となり、外部交流電源4と車載充電装置10(交流直流コンバータ1)とが電気的に接続される。
【0031】
図3に示すように、第1の例の車載充電装置10は、直流電源3に対してインバータ5の直流側端子である直流リンク端子T5dと中性点7Nとを選択的に接続するバッテリコンタクタ12を備えている。本実施形態では、バッテリコンタクタ12は、直流電源3の正極に対して直流リンク正極端子T5Pと中性点7Nとを選択的に接続する。バッテリコンタクタ12は、直流電源3の正極に接続されたバッテリコンタクタ第1接点12aと、中性点7Nに接続されたバッテリコンタクタ第2接点12bと、直流リンク正極端子T5Pに接続されたバッテリコンタクタ第3接点12cとを備えている。バッテリコンタクタ第1接点12aとバッテリコンタクタ第2接点12bとが接続されると、中性点7Nが、バッテリコンタクタ12を介して直流電源3に接続される。バッテリコンタクタ第3接点12cは開放されている。インバータ5が車載充電装置10として機能する場合には、バッテリコンタクタ12がこのように接続される。
【0032】
インバータ5が回転電機70の駆動制御に用いられる場合には、バッテリコンタクタ第1接点12aとバッテリコンタクタ第3接点12cとが接続され、インバータ5の直流リンク正極端子T5Pが、バッテリコンタクタ12を介して直流電源3に接続される。バッテリコンタクタ第2接点12bは開放されている。また、車両が駐車される場合や、異常等によって回転電機70への電力供給を遮断する必要があるような場合には、バッテリコンタクタ第1接点12aに対して、バッテリコンタクタ第2接点12b及びバッテリコンタクタ第3接点12cの何れも接続されない状態とすることができる。
【0033】
このように、バッテリコンタクタ12により、直流電源3に対する接続形態を変更するだけで、回転電機70を駆動制御する機能と、直流電源3を外部交流電源4により充電する機能とを切り替え可能な回路を実現することができる。即ち、簡単な構成で、車載充電装置10を構成することができる。
【0034】
図3を参照して上述した第1の例の車載充電装置10では、交流直流コンバータ1の交流側端子T1aと、外部交流電源4とを選択的に接続する(交流側端子T1aと外部交流電源4とを断接する)コンタクタとして、フロントエンドコンタクタ11が配置されていた。図4に示す第2の例の車載充電装置10では、フロントエンドコンタクタ11は、交流直流コンバータ1の直流側端子T1dと、直流直流コンバータ2の第1端子T21としての中性点7Nとを選択的に接続する(直流側端子T1dと第1端子T21としての中性点7Nとを断接する)コンタクタとして配置されている。
【0035】
フロントエンドコンタクタ11は、一対の直流側端子T1dの内の直流側正極端子T1Pに接続された接点(フロントエンドコンタクタ第1接点11a)と、中性点7Nに接続された接点(フロントエンドコンタクタ第2接点11b)とを備えている。フロントエンドコンタクタ第1接点11aとフロントエンドコンタクタ第2接点11bとが接続された場合に、フロントエンドコンタクタ11が導通状態となり、交流直流コンバータ1と直流直流コンバータ2とが電気的に接続される。より具体的には、中性点7Nが、フロントエンドコンタクタ11を介して交流直流コンバータ1の直流側端子T1d(直流側正極端子T1P)に接続される。
【0036】
図4に示すように、第2の例の車載充電装置10も直流電源3に対してインバータ5の直流側端子である直流リンク端子T5dを選択的に接続する(直流電源3と直流リンク端子T5dとを断接する)バッテリコンタクタ12を備えている。図3を参照して上述した第1の例の車載充電装置10のバッテリコンタクタ12は、直流電源3に対して、直流リンク端子T5dと、中性点7Nを選択的に接続するコンタクタであり、直流電源3の正極に接続されたバッテリコンタクタ第1接点12aと、中性点7Nに接続されたバッテリコンタクタ第2接点12bと、直流リンク正極端子T5Pに接続されたバッテリコンタクタ第3接点12cとを備えている。第2の例のバッテリコンタクタ12は、中性点7Nに接続されたバッテリコンタクタ第2接点12bを備えず、バッテリコンタクタ第1接点12a及びバッテリコンタクタ第3接点12cのみを備えている。バッテリコンタクタ第1接点12aとバッテリコンタクタ第3接点12cとが接続されると、直流リンク正極端子T5Pが、バッテリコンタクタ12を介して直流電源3に接続される。
【0037】
図4に示す第2の例では、インバータ5が車載充電装置10として機能する場合、及びインバータ5が回転電機70の駆動制御に用いられる場合の双方において、バッテリコンタクタ第1接点12aとバッテリコンタクタ第3接点12cとが接続され、インバータ5の直流リンク正極端子T5Pが、バッテリコンタクタ12を介して直流電源3に接続される。つまり、第2の例では、インバータ5が車載充電装置10として機能する場合、及びインバータ5が回転電機70の駆動制御に用いられる場合の双方において、直流電源3がインバータ5に接続される。尚、車両が駐車される場合や、異常等によって回転電機70への電力供給を遮断する必要があるような場合には、バッテリコンタクタ第1接点12aと、バッテリコンタクタ第3接点12cとの接続を遮断することで、バッテリコンタクタ12を開放状態として、インバータ5から直流電源3を切り離すことができる。
【0038】
第1の例では、電気的に交流直流コンバータ1から直流電源3への方向にみた場合に、中性点7Nが出力側の直流電源3に接続され、コイル7が直流直流コンバータ2の出力側に配置されている。つまり、インダクタ(コイル7)と、出力用平滑コンデンサC2とが、直流直流変換回路の出力側に配置されており、直流直流コンバータ2は、降圧コンバータとして形成されている。第2の例では、中性点7Nが、交流直流コンバータ1の直流側端子T1dに接続され、コイル7が直流直流コンバータ2の入力側に配置されている。つまり、インダクタ(コイル7)が直流直流変換回路の入力側に配置され、インバータ5の直流側端子である直流リンク端子T5dが直流直流変換回路の出力側に配置されて直流リンクコンデンサ6が、第1例における出力用平滑コンデンサC2として機能している。これにより、第2の例の直流直流コンバータ2は、昇圧コンバータとして形成されている。尚、第2の例では、直流リンクコンデンサ6が直流直流変換回路の出力用平滑コンデンサとして機能するため、交流直流コンバータ1の出力側である一対の直流側端子T1dの端子間には、直流電圧を平滑するために平滑コンデンサC1が配置されている。
【0039】
第2の例の構成によれば、直流直流コンバータ2を昇圧コンバータとして用いることができる。
【0040】
尚、フロントエンドコンタクタ11、バッテリコンタクタ12は、制御装置8によって開閉制御される。或いは、これらのコンタクタは、車両制御装置90によって制御されてもよい。例えば、これらのコンタクタは、メカニカルリレーを用いて構成することができる。メカニカルリレーは、接点が開放された場合の絶縁性が高く、接点が閉成された場合に流すことができる電流も大きく確保し易い。しかし、これらのコンタクタは、メカニカルリレーに限らず、ソリッドステートリレーなど、半導体を用いて構成されていてもよい。
【0041】
一般的に、非絶縁型の交流直流コンバータや直流直流コンバータは、スイッチング素子やインダクタ(コイル)を備えて構成されることが知られている。図1を参照して上述したように、車両用駆動装置9には、インバータ5や回転電機70のコイル7が備えられている。また、外部交流電源4により直流電源3を充電する際には、車両は停車しており、回転電機70は駆動されない。従って、インバータ5を交流直流コンバータ1や直流直流コンバータ2におけるスイッチングを備えた回路として利用し、コイル7をインダクタとして利用することによって、車載充電装置10の搭載コストを低減することができる。また、制御装置8の制御対象に回転電機70に加えて車載充電装置10を加えることができ、システムの簡素化を図ることができる。つまり、本実施形態のように、回転電機70の駆動系回路の一部を車載充電装置10の一部として共用することによって、低コストで車載充電装置10を構築することができる。
【0042】
図5は、本実施形態の車載充電装置10の比較例の充電装置10Xを示している。図2から図4を参照して上述した本実施形態の車載充電装置10では、直流直流コンバータ2に、回転電機70の駆動系回路が共用されているが、比較例の充電装置10Xでは、交流直流コンバータ(比較用フロントエンドコンバータ100)に、回転電機70の駆動系回路が共用されている。比較用フロントエンドコンバータ100は、インバータ5と、複数相のコイル7と、インバータ5に並列に接続された単相アーム105と、インダクタL0とを備えて構成されている。複数相のコイル7は中性点7Nで短絡され、中性点7Nと単相アーム105の中点との間に、インダクタL0(フロントエンドインダクタ)と外部交流電源4とが直列に接続されている。インバータ5を構成する3相のアームは、並列接続されて見かけ上1つのアームを構成しており、単相アーム105と共に、フルブリッジ回路を形成している。
【0043】
比較例の充電装置10Xでは、直流直流コンバータ(比較用バックエンドコンバータ200)は、回転電機70の駆動系回路を共用することなく独立して形成されている。比較用バックエンドコンバータ200は、相補的にスイッチング制御されるようにスイッチング素子が直列接続されたアームと、当該アームの中点に接続されたバックエンドインダクタL2を備えて降圧型の直流直流コンバータとして構成されている。尚、比較用バックエンドコンバータ200は昇圧コンバータや昇降圧型コンバータとして構成されていてもよい。
【0044】
比較例の充電装置10Xも、車載充電装置10の第1の例の実施形態と同様のフロントエンドコンタクタ11及びバッテリコンタクタ12を備えている。接続形態や開閉制御については、第1の例の車載充電装置10と同様であるから説明は省略する。また、比較例の充電装置10Xは、選択的に、交流直流コンバータとしての比較用フロントエンドコンバータ100(インバータ5)と直流電源3とを接続する、或いは、比較用フロントエンドコンバータ100(インバータ5)と直流直流コンバータとしての比較用バックエンドコンバータ200とを接続するバックエンドコンタクタ13も備えている。バックエンドコンタクタ13は、比較用フロントエンドコンバータ100(インバータ5)の正極に接続されたバックエンドコンタクタ第1接点13aと、比較用バックエンドコンバータ200の入力側の正極に接続されたバックエンドコンタクタ第2接点13bと、バッテリコンタクタ第3接点12cに接続されて選択的に直流電源3の正極に接続されるバックエンドコンタクタ第3接点13cとを備えている。バックエンドコンタクタ第1接点13aとバックエンドコンタクタ第2接点13bとが接続されると、比較用フロントエンドコンバータ100(インバータ5)と直流直流コンバータ2とが接続される。
【0045】
インバータ5が回転電機70の駆動制御に用いられる場合には、図3を参照して上述したように、バッテリコンタクタ第1接点12aとバッテリコンタクタ第3接点12cとが接続される。この状態において、バックエンドコンタクタ第1接点13aとバックエンドコンタクタ第3接点13cとが接続されると、インバータ5と直流電源3とが、バックエンドコンタクタ13及びバッテリコンタクタ12を介して接続される。
【0046】
車両の駆動力源となる回転電機は、高電力密度となるように設計されており、インダクタンスが小さい。このため、比較例の充電装置10Xのように、中性点7Nに単相の外部交流電源4が接続されて交流直流コンバータが形成された場合、交流直流変換の際に、外部交流電源4の系統電流の高調波電流のピーク値が大きくなる傾向がある。
【0047】
これを抑制するための1つの方法として、比較用フロントエンドコンバータ100に含まれるインバータ5や比較用バックエンドコンバータ200の制御周波数を高くことが考えられる。これらの制御周波数を高くする場合には、インバータ5や比較用バックエンドコンバータ200を制御する制御装置8の制御周期(制御周波数)も短くする必要がある。高い周波数でのスイッチングは、比較用フロントエンドコンバータ100(インバータ5)及び比較用バックエンドコンバータ200が備えるスイッチング素子における損失を増大させ、充電装置10Xの効率の低下に繋がる。また、制御装置8として、高速動作が可能なマイクロコンピュータ等を用いる必要が生じ、充電装置10Xのコストの上昇に繋がる。この点に鑑み、比較例の充電装置10Xでは、外部交流電源4と複数相のコイル7の中性点7Nとの間に、インダクタL0を追加して必要なインダクタンスを確保している。しかし、この場合も、インダクタL0の追加により充電装置10Xのコストが上昇する。
【0048】
本実施形態の車載充電装置10は、この点に鑑み、車載充電装置10がシステムコストの増加を抑制して構成されている。本実施形態によれば、車載充電装置10を構成する交流直流コンバータ1と直流直流コンバータ2との内、適切なインダクタンスが必要な交流直流コンバータ1が、回転電機70の駆動系回路(回転電機70のコイル7及び回転電機70を駆動するインバータ5)を用いることなく構成される。車載充電装置10に回転電機70のコイル7を用いる場合、当該コイル7のイダクタンスが小さいことにより、必要な性能を確保することが困難となる場合がある。しかし、本実施形態では、コイル7を用いることなく、適切なインダクタンスが設定可能な交流直流コンバータ1により、力率改善機能などの充分な性能を確保して交流直流変換が可能な交流直流コンバータ1を構成することができる。また、高いインダクタンスが必要ない直流直流コンバータ2を、回転電機70の駆動系回路を共用して構成することができ、車載充電装置10のコストを低減することができる。また、交流直流コンバータ1に適切なインダクタンスを設定可能なことにより、交流直流コンバータ1を短い制御周期(高い制御周波数)で制御する必要もなく、交流直流コンバータ1を構成するスイッチング素子1Sの損失も低減し易い。従って、車載充電装置10のシステム効率も高くし易い。
【0049】
以上説明したように、本実施形態によれば、回転電機70とインバータ5と直流電源3とを備えた車両用駆動装置9の直流電源3を、回転電機70のコイル7及びインバータ5を利用して、外部交流電源4からの電力により充電する車載充電装置10をシステムコストの増加を抑制して構成することができる。
【符号の説明】
【0050】
1:交流直流コンバータ、2:直流直流コンバータ、3:直流電源、4:外部交流電源、5:インバータ、7:コイル、7N:中性点、9:車両用駆動装置、10:車載充電装置、11:フロントエンドコンタクタ(コンタクタ)、12:バッテリコンタクタ(コンタクタ)、70:回転電機、L1:インダクタ、T1a:交流側端子(交流直流コンバータの直流側端子)、T1d:直流側端子、T21:第1端子、T22:第2端子、T5d:直流リンク端子(インバータの直流側端子)
図1
図2
図3
図4
図5