(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115455
(43)【公開日】2024-08-26
(54)【発明の名称】車載充電装置
(51)【国際特許分類】
B60L 53/24 20190101AFI20240819BHJP
H02P 27/06 20060101ALI20240819BHJP
B60L 9/18 20060101ALI20240819BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20240819BHJP
B60L 53/14 20190101ALI20240819BHJP
B60L 58/10 20190101ALI20240819BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240819BHJP
H02J 7/10 20060101ALI20240819BHJP
H02M 3/155 20060101ALI20240819BHJP
【FI】
B60L53/24
H02P27/06
B60L9/18 J
B60L50/60
B60L53/14
B60L58/10
H02J7/00 P
H02J7/10 A
H02M3/155 W
H02M3/155 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021162
(22)【出願日】2023-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(71)【出願人】
【識別番号】304021277
【氏名又は名称】国立大学法人 名古屋工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】サハ スブラタ
(72)【発明者】
【氏名】高橋 充
(72)【発明者】
【氏名】平野 智也
(72)【発明者】
【氏名】田口 真
(72)【発明者】
【氏名】小坂 卓
(72)【発明者】
【氏名】松盛 裕明
【テーマコード(参考)】
5G503
5H125
5H505
5H730
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BB02
5G503CA10
5G503CA12
5G503CC02
5G503DA07
5G503FA06
5G503GB03
5G503GB06
5H125AA01
5H125AC12
5H125BA00
5H125BB00
5H125BB05
5H125BC01
5H125BC03
5H125BC05
5H125BC21
5H125DD02
5H125EE22
5H125EE23
5H125FF16
5H505AA16
5H505CC04
5H505CC05
5H505CC09
5H505DD03
5H505DD08
5H505EE41
5H505EE48
5H505EE49
5H505GG04
5H505GG05
5H505GG06
5H505HA05
5H505HA06
5H505HA09
5H505HA10
5H505HB01
5H505JJ03
5H505JJ24
5H505LL01
5H505LL22
5H505LL24
5H505LL41
5H505LL58
5H730AA14
5H730AS05
5H730AS17
5H730BB13
5H730BB57
5H730BB82
5H730BB88
5H730CC01
5H730DD04
5H730DD16
5H730EE13
5H730FD01
5H730FD11
5H730FD31
5H730FD41
5H730FF09
(57)【要約】
【課題】車両用駆動装置の直流電源を、回転電機のコイル及びインバータを利用して、外部交流電源からの電力により、高い効率で充電可能な車載充電装置を実現する。
【解決手段】車載充電装置は、外部交流電源からの交流電力を直流電力に変換する交流直流コンバータと直流直流コンバータと制御装置を備え、何れか一方のコンバータは、車両用駆動装置のインバータと複数相のコイルとを用いて構成され、これらのコンバータの間には平滑コンデンサが配置されている。制御装置は、直流電源の端子電圧Vbatが、満充電状態の電圧Vbat_fよりも低い第2電圧Vbat_sよりも低い状態から第2電圧Vbat_sに達するまでは、充電電力Pbatが一定となるように定電力充電制御を実行し、定電力充電制御においては直流電源の端子電圧Vbatが上昇することに応じて、平滑コンデンサの端子電圧Vdcが上昇するように可変直流電圧制御を実行する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中性点で互いに接続された複数相のコイルを備え、車輪の駆動力源となる回転電機と、直流と複数相の交流との間で電力を変換するインバータと、前記インバータに接続された直流電源と、を備えた車両用駆動装置の前記直流電源を、単相の外部交流電源から供給される電力によって充電する車載充電装置であって、
前記外部交流電源からの交流電力を直流電力に変換する交流直流コンバータと、
前記交流直流コンバータにより変換された直流電力の電圧を変換する直流直流コンバータと、
前記交流直流コンバータと前記直流直流コンバータとの間に配置され、前記交流直流コンバータにより変換された直流電力の電圧を平滑する平滑コンデンサと、
前記交流直流コンバータ及び前記直流直流コンバータを制御する制御装置と、を備え、
前記交流直流コンバータ及び前記直流直流コンバータの何れか一方は、前記インバータと複数相の前記コイルとを用いて構成され、
前記交流直流コンバータの交流側端子は、前記外部交流電源に接続され、
前記交流直流コンバータの直流側端子は、前記直流直流コンバータの第1端子に接続され、
前記直流直流コンバータの前記第1端子とは異なる第2端子は、前記直流電源に接続され、
前記制御装置は、
前記直流電源が満充電状態の場合の前記直流電源の端子電圧を第1電圧とし、前記第1電圧よりも低く予め設定された電圧を第2電圧として、
前記直流電源の端子電圧が、前記第2電圧よりも低い状態から前記第2電圧に達するまでは、充電制御として、前記直流電源に流れる電流と前記直流電源の端子電圧に基づく充電電力が一定となるように定電力充電制御を実行し、
前記定電力充電制御においては、前記直流電源の端子電圧が上昇することに応じて、前記平滑コンデンサの端子電圧が上昇するように可変直流電圧制御を実行する、車載充電装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記充電制御として、前記端子電圧が前記第2電圧に達した後、前記第1電圧に達するまでは、前記端子電圧が上昇することに応じて前記充電電力が小さくなるように、前記充電電力を次第に減少させる可変電力充電制御を実行する、請求項1に記載の車載充電装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記充電制御の実行前に、前記平滑コンデンサを充電するプリチャージ制御を実行する、請求項1又は2に記載の車載充電装置。
【請求項4】
前記直流電源に対して前記インバータの直流側端子と前記直流直流コンバータの前記第2端子とを選択的に接続するコンタクタを備え、
前記制御装置は、
前記プリチャージ制御では、前記直流電源と前記インバータの直流側端子とが接続されるように前記コンタクタを制御し、
前記充電制御では、前記直流電源と前記直流直流コンバータの前記第2端子とが接続されるように前記コンタクタを制御する、請求項3に記載の車載充電装置。
【請求項5】
前記直流電源に対して前記インバータの直流側端子と前記直流直流コンバータの前記第2端子とを選択的に接続するコンタクタを備え、
前記直流直流コンバータは、前記インバータと複数相の前記コイルとにより構成され、
前記インバータの直流側端子は、前記第1端子であり、
前記中性点は、前記第2端子である、請求項1又は2に記載の車載充電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載充電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2015-201382号公報には、直流電源(二次電池)を外部電源から供給される電力により充電する際の充電制御方法として、定電流定電圧充電制御が開示されている。具体的には、直流電源の充電状態(SOC:state of charge)が低い場合には、直流電源に一定の電流を供給する定電流充電制御によって直流電源が充電される。定電流充電制御による充電が進むに従って、SOCの値は上昇し、直流電源の端子電圧(バッテリ電圧)も上昇する。SOCが予め設定された値まで上昇すると、或いはバッテリ電圧が予め設定された値まで上昇すると、定電流充電制御から定電圧充電制御に制御方法が切り替えられる。定電圧充電制御では、直流電源に印加される電圧を一定に保ちながら充電を継続する。直流電源への印加電圧が一定に保持されるため、充電電流は次第に低下し、充電電流が予め設定された電流値まで減少すると充電が終了される。定電流定電圧充電制御では、直流電源の過充電(過電圧)を抑制しつつ、比較的短い時間で直流電源を充電することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば電気自動車やハイブリッド自動車などの車輪の駆動力源として回転電機を備えた車両には、車両に搭載された状態で直流電源を充電する車載充電装置(オンボードチャージャ)が備えられている場合がある。そして、この場合には、車載充電装置を構成する回路の一部が、回転電機のコイル(ステータコイル)を含む回転電機の駆動系回路を利用して構成されることがある。多くの場合、回転電機と直流電源との間には、直流と交流との間で電力を変換するインバータが配置され、インバータと直流電源との間には直流電圧を平滑する平滑コンデンサが配置される。インバータ及び平滑コンデンサが車載充電装置に利用される回転電機の駆動系回路に含まれる場合、定電流定電圧充電において平滑コンデンサの端子間電圧(直流リンク電圧)は一定の電圧値に保持されることが多い。一方、直流電源の端子間電圧(バッテリ電圧)は、SOCが低い充電制御の開始時には低く、定電流充電制御の進行に伴って上昇する。従って、充電制御の開始時には、直流リンク電圧とバッテリ電圧との電圧差が大きく、車載充電装置におけるスイッチング損失などの損失が大きくなる傾向がある。即ち、従来の定電流定電圧充電制御では、車載充電装置における損失が大きくなる傾向がある。
【0005】
また、定電流充電制御では、制御の経過に伴ってバッテリ電圧が上昇する。このため直流電源に流れる電流とバッテリ電圧とに基づく充電電力は一定ではなく、制御の経過に伴って上昇する。充電制御の初期には充電電力は小さく、定電流充電制御の経過に伴って充電電力が大きくなる。つまり、直流電源は、許容される最大充電電力で充電されないため、充電時間が長くなる傾向がある。従って、従来の定電流定電圧制では、充電効率及び上述したスイッチング素子の損失を含めた車載充電装置のシステム効率に向上の余地がある。
【0006】
上記に鑑みて、回転電機とインバータと直流電源とを備えた車両用駆動装置の当該直流電源を、当該回転電機のコイル及び当該インバータを利用して、外部交流電源からの電力により、高い効率で充電することができる車載充電装置の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記に鑑みた車載充電装置は、中性点で互いに接続された複数相のコイルを備え、車輪の駆動力源となる回転電機と、直流と複数相の交流との間で電力を変換するインバータと、前記インバータに接続された直流電源と、を備えた車両用駆動装置の前記直流電源を、単相の外部交流電源から供給される電力によって充電する車載充電装置であって、前記外部交流電源からの交流電力を直流電力に変換する交流直流コンバータと、前記交流直流コンバータにより変換された直流電力の電圧を変換する直流直流コンバータと、前記交流直流コンバータと前記直流直流コンバータとの間に配置され、前記交流直流コンバータにより変換された直流電力の電圧を平滑する平滑コンデンサと、前記交流直流コンバータ及び前記直流直流コンバータを制御する制御装置と、を備え、前記交流直流コンバータ及び前記直流直流コンバータの何れか一方は、前記インバータと複数相の前記コイルとを用いて構成され、前記交流直流コンバータの交流側端子は、前記外部交流電源に接続され、前記交流直流コンバータの直流側端子は、前記直流直流コンバータの第1端子に接続され、前記直流直流コンバータの前記第1端子とは異なる第2端子は、前記直流電源に接続され、前記制御装置は、前記直流電源が満充電状態の場合の前記直流電源の端子電圧を第1電圧とし、前記第1電圧よりも低く予め設定された電圧を第2電圧として、前記直流電源の端子電圧が、前記第2電圧よりも低い状態から前記第2電圧に達するまでは、充電制御として、前記直流電源に流れる電流と前記直流電源の端子電圧に基づく充電電力が一定となるように定電力充電制御を実行し、前記定電力充電制御においては、前記直流電源の端子電圧が上昇することに応じて、前記平滑コンデンサの端子電圧が上昇するように可変直流電圧制御を実行する。
【0008】
この構成によれば、直流電源の充電状態(SOC:State of Charge)が低く、直流電源の端子電圧が第2電圧未満の状態から、端子電圧が第2電圧に達するまでは、充電電力が一定となるように定電力充電制御が実行される。従って、直流電源は、許容される最大充電電力で充電されることも可能となるため、充電時間の短縮が可能となる。また、定電力充電制御の実行中には、可変直流電圧制御も実行される。定電力充電制御の実行に伴って第2電圧未満から第2電圧へ向かって上昇する直流電源の端子電圧と同様に、平滑コンデンサの端子電圧も上昇するように制御されるので、平滑コンデンサの端子電圧が第2電圧よりも高い一定の電圧に保持される場合に比べて、直流直流コンバータの入力側と出力側との電圧差を比較的小さく保持し易い。その結果、車載充電装置におけるスイッチング損失などの損失を低減し易い。このように、本構成によれば、回転電機とインバータと直流電源とを備えた車両用駆動装置の当該直流電源を、当該回転電機のコイル及び当該インバータを利用して、外部交流電源からの電力により、高い効率で充電することができる車載充電装置を実現することができる。
【0009】
車載充電装置のさらなる特徴と利点は、図面を参照して説明する例示的且つ非限定的な実施形態についての以下の記載から明確となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】回転電機の駆動制御システムの模式的な回路ブロック図
【
図2】車載充電装置のシステム構成の模式的ブロック図
【
図3】回転電機の駆動制御システムを利用した車載充電装置の一例を示す回路ブロック図
【
図8】プリチャージ制御における電流の経路の一例を示す図
【
図9】プリチャージ制御における電流の経路の比較例を示す図
【
図10】プリチャージ制御における電流の経路の他の比較例を示す図
【
図11】回転電機の駆動制御システムを利用した車載充電装置の他の例を示す回路ブロック図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、車載充電装置の実施形態を図面も参照して説明する。車載充電装置10は、
図1に示すような車両用駆動装置9に備えられた直流電源3を、車両に搭載された状態で充電する装置である。
図1は、車両用駆動装置9に含まれる回転電機70の駆動制御システムの模式的な回路ブロック図であり、
図2は、車載充電装置10のシステム構成の模式的ブロック図である。
図1に示すように、本実施形態の車両用駆動装置9は、ハイブリッド自動車や電気自動車等の車輪の駆動力源となる回転電機70と、直流と複数相の交流との間で電力を変換するインバータ5と、インバータ5に接続された直流電源3とを備えている。尚、車両用駆動装置9が、回転電機70に加えて不図示の内燃機関などの他の駆動力源も備えていることを妨げるものではない。
図2に示すように、車載充電装置10は、車両用駆動装置9の直流電源3を、単相の外部交流電源4(グリッド電源)から供給される電力によって充電する装置であり、いわゆるオンボードチャージャー(Onboard charger)と称される装置である。本実施形態では、車載充電装置10は、車両用駆動装置9と一部を共用して構成されている。具体的には、インバータ5、回転電機70のコイル7が共用されている。好ましくは、後述するように、インバータ5を駆動する制御装置8や、直流電圧を平滑する平滑コンデンサ(直流リンクコンデンサ6)も共用されている。
【0012】
図1に示すように、車両用駆動装置9は、車両の駆動力源となる回転電機70を制御対象とする制御装置8を備え、制御装置8は、電流フィードバック制御を行うことによって回転電機70を駆動制御する。駆動対象の回転電機70は、ステータコアに複数相(Nを任意の自然数としてN相、本実施形態ではN=3の3相の形態を例示する)のコイル7(ステータコイル)が配置されたステータと、ロータコアに永久磁石が配置されたロータとを有する埋め込み永久磁石型回転電機(IPMSM : Interior Permanent Magnet Synchronous Motor)である。このような構成は公知であり、本実施形態では、ステータコア、ステータ、ロータコア、ロータ、永久磁石等の図示は省略している。本実施形態では、3相のコイル7(U相コイル7u、V相コイル7v、W相コイル7w:
図3、
図11等参照)が中性点7Nで短絡されたY型の形態を例示している。しかし、回転電機70は、例えば3相のコイル7を2組備え、6相の交流により駆動される形態であってもよい。尚、回転電機70は、電動機としても発電機としても機能することができる。回転電機70が電動機として機能するとき、回転電機70は力行状態であり、回転電機70が発電機として機能するとき、回転電機70は回生状態である。
【0013】
図1に示すように、車両用駆動装置9は、インバータ5を備えている(
図3、
図11等も参照)。インバータ5は、交流の回転電機70及び直流電源3に接続されて、複数相の交流と直流との間で電力を変換する。インバータ5の一対の直流側端子(直流リンク端子T5d)は、直流電源3の正負両極端子に接続されている。具体的には、一対の直流リンク端子T5dの内の正極側の端子(直流リンク正極端子T5P)が直流電源3の正極に接続され、一対の直流リンク端子T5dの内の負極側の端子(直流リンク負極端子T5N)が直流電源3の負極に接続されている。また、インバータ5の複数相の交流側端子(コイル側端子T5a)は、複数相のコイル7のそれぞれに接続されている。本実施形態では、インバータ5が、複数相のアームとして、U相アーム、V相アーム、W相アームを備えており、それぞれのアームの中点がコイル側端子T5aに接続されている。U相アームの中点とU相コイル7uとが接続され、V相アームの中点とV相コイル7vとが接続され、W相アームの中点とW相コイル7wとが接続される。
【0014】
インバータ5の直流側には、正極と負極との間の電圧(直流リンク電圧Vdc)を平滑する平滑コンデンサ(直流リンクコンデンサ6)が備えられている。また、インバータ5の直流側には、直流リンク電圧Vdcを検出する電圧センサ(直流リンク電圧センサ61)も備えられている。尚、直流リンクコンデンサ6は、回転電機70の駆動系回路(インバータ5、コイル7等)が車載充電装置10として用いられる際に、
図2、
図3、
図11等を参照して後述する交流直流コンバータ1と直流直流コンバータ2との間に配置され、交流直流コンバータ1により変換された直流電力の電圧(直流リンク電圧Vdc)を平滑する平滑コンデンサとしても機能する。
【0015】
直流電源3は、例えば、リチウムイオン電池などの充電可能な二次電池(バッテリ)や、電気二重層キャパシタなどにより構成されている。本実施形態のように、回転電機70が車両の駆動力源の場合、直流電源3は、大電圧大容量の直流電源であり、定格の電源電圧は、例えば200~400[V]である。また、直流電源3には、直流電源3に対する入出力電流(バッテリ電流Ibat:
図4等参照)を検出する電流センサ(バッテリ電流センサ31)や、直流電源3の端子電圧(バッテリ電圧Vbat:
図4等参照)を検出する電圧センサ(バッテリ電圧センサ32)も備えられている。
【0016】
図示は省略するが、例えば直流電源3がリチウムイオンバッテリなどの場合には、BMS(バッテリマネジメントシステム(Battery Management System))が備えられていることが多い。リチウムイオンバッテリなどの二次電池は、複数のセル(バッテリセル)により構成されている。BMSは、(1)セルの過充電、過放電の防止、(2)セルに過電流が流れることの防止、(3)セルの温度管理、(4)充電状態(SOC:State of Charge)の算出、(5)セル電圧の均一化、等を行うバッテリの管理制御システムである。上述したバッテリ電流センサ31やバッテリ電圧センサ32は、BMSの一部として構成されていてもよい。
【0017】
図3等に示すように、インバータ5は、複数のスイッチング素子5Sを有して構成されている。スイッチング素子5Sには、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)やパワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)やSiC-MOSFET(Silicon Carbide - Metal Oxide Semiconductor FET)やSiC-SIT(SiC - Static Induction Transistor)、GaN-MOSFET(Gallium Nitride - MOSFET)などの高周波での動作が可能なパワー半導体素子を適用すると好適である。本実施形態では、スイッチング素子5SとしてFETが用いられる形態を例示している。尚、各スイッチング素子5Sは、負極から正極へ向かう方向(下段側から上段側へ向かう方向)を順方向として、並列にフリーホイールダイオードを備えている。
【0018】
図1に示すように、インバータ5は、制御装置8により制御される。制御装置8は、マイクロコンピュータ等の論理回路を中核部材として構築されている。例えば、制御装置8は、上位の制御装置の1つである車両制御装置90等の他の制御装置等から要求信号として提供される回転電機70の目標トルク(トルク指令)に基づいて、ベクトル制御法を用いた電流フィードバック制御を行って、インバータ5を介して回転電機70を駆動する。ベクトル制御法では、各相のコイル7に流れる電流(本実施形態ではU相電流Iu,V相電流Iv,W相電流Iw:
図3等参照)を、ロータに配置された永久磁石が発生する磁界の方向であるd軸と、d軸に直交する方向(磁界の向きに対して電気角でπ/2進んだ方向)のq軸とのベクトル成分に座標変換してフィードバック制御を行う。座標変換先の座標系をdq軸直交座標系と称する。尚、マイクロコンピュータ等の論理回路素子の動作電圧は3.3~5ボルト程度である。本実施形態では、簡略化のため、図示を省略していつが、当該論理回路素子で生成された制御信号はドライブ回路を介してインバータ5に伝達される。或いは、制御装置8にドライブ回路が含まれると考えてもよい。
【0019】
回転電機70の各相のコイル7を流れる実電流は電流センサ(モータ電流センサ81)により検出され、制御装置8はその検出結果を取得する。また、回転電機70のロータの各時点での磁極位置(電気角)やロータの回転速度(角速度)は、例えばレゾルバなどの回転センサ82により検出され、制御装置8はその検出結果を取得する。制御装置8は、モータ電流センサ81及び回転センサ82の検出結果を用いて、電流フィードバック制御を実行する。制御装置8は、電流フィードバック制御のために種々の機能部を有して構成されており、各機能部は、マイクロコンピュータ等のハードウエアとソフトウエア(プログラム)との協働により実現される。
【0020】
上述したように、インバータ5を介して直流電源3に接続される回転電機70は、直流電源3から供給される電力により電動機として機能すると共に、発電機として機能して直流電源3を充電することもできる。例えば、ハイブリッド自動車では内燃機関などの動力により、回転電機70に機械エネルギーを供給して回転電機70に発電させることも可能であるが、発電の機会が少なく直流電源3を充分に充電できない場合がある。また、駆動力源として回転電機70しか搭載されていない電気自動車では、慣性走行等における車輪からの機械エネルギーによる発電に留まり、直流電源3を充分に充電できないことが多い。また、ハイブリッド自動車においても、回転電機70に発電させるよりも外部から電力を供給する方が、エネルギー効率がよい場合がある。このため、直流電源3が車両に搭載された状態で、直流電源3を外部電源によって充電可能に構成されていることが好ましい。
【0021】
本実施形態の車載充電装置10は、車両用駆動装置9の直流電源3を、単相の外部交流電源4から供給される電力によって充電する。
図2に示すように、車載充電装置10は、外部交流電源4に接続されて、外部交流電源4からの交流電力を直流電力に変換する交流直流コンバータ1(AC/DCコンバータ)と、交流直流コンバータ1により変換された直流の電圧を変換する直流直流コンバータ2(DC/DCコンバータ)とを備えている。交流直流コンバータ1は、一対の交流側端子T1aと一対の直流側端子T1dとを備えており、交流直流コンバータ1の交流側端子T1aは、外部交流電源4に接続される。直流直流コンバータ2は、一対の第1端子T21と、一対の第2端子T22とを備えており、一対の第1端子T21と交流直流コンバータ1の一対の直流側端子T1dとが接続されると共に、一対の第2端子T22と直流電源3の正負両極端子とが接続される。
【0022】
交流直流コンバータ1及び直流直流コンバータ2は、スイッチング素子(
図3、
図11において符号1S、5S、15Sで示すスイッチング素子)を備えて構成されており、これらのスイッチング素子は、インバータ5を介して回転電機70を駆動制御する制御装置8によって制御される。従って、制御装置8は、交流直流コンバータ1及び直流直流コンバータ2も制御対象とする。また、後述するように、車載充電装置10は、コンタクタ(
図3、
図11において、符号11,12,13で示すコンタクタ)を備えて構成されている。これらのコンタクタも制御装置8、或いは制御装置8及び車両制御装置90によって制御される。
図1を参照して上述したように、制御装置8は回転電機の駆動制御システムに含まれており、制御装置8も回転電機70の駆動制御と直流電源3の充電制御とに共用される。
【0023】
直流電源3を充電する際には、外部交流電源4から直流電源3へ電力が供給される。従って、回路構成上、相対的に外部交流電源4の側(上流側)に配置される交流直流コンバータ1をフロントエンドコンバータ或いはフロントコンバータ、相対的に直流電源3の側(下流側)に配置される直流直流コンバータ2をバックエンドコンバータ或いはバックコンバータと称する場合がある。本実施形態では、交流直流コンバータ1(フロントコンバータ)及び直流直流コンバータ2(バックコンバータ)の何れか一方が、インバータ5と複数相のコイル7とを用いて構成されている。また、
図2に示すように、交流直流コンバータ1には、交流電流及び交流電圧を検出するために、グリッド電流センサ41及びグリッド電圧センサ42が備えられている。
【0024】
図3の回路ブロック図は、回転電機70の駆動系回路(コイル7,インバータ5等)を含む、回転電機70の駆動制御システムを利用した車載充電装置10の構成例(第1の例)を示しており、
図11の回路ブロック図は、回転電機70の駆動系回路を含む、回転電機70の駆動制御システムを利用した車載充電装置10の他の構成例(第2の例)を示している。
図3に示す第1の例では、外部交流電源4に接続されるフロントコンバータである交流直流コンバータ1が、車両用駆動装置9とは別に形成された回路によって構成され、直流電源3に接続されるバックコンバータである直流直流コンバータ2が、回転電機70の駆動系回路(コイル7及びインバータ5)を共用して構成されている。
図11に示す第2の例では、外部交流電源4に接続されるフロントコンバータである交流直流コンバータ1が、回転電機70の駆動系回路(コイル7及びインバータ5)を共用して構成され、直流電源3に接続されるバックコンバータである直流直流コンバータ2が、車両用駆動装置9とは別に形成された回路によって構成されている。
【0025】
図3、
図11に示すように、交流直流コンバータ1は、スイッチング素子1Sを備えて構成されている。交流直流変換においては、誘導性インピーダンスや容量性インピーダンスにより、電圧位相と電流位相との間に位相差が生じ、当該位相差によって力率が低下する。スイッチング素子1Sが制御されることによって、例えば電流位相が調整され、位相差が補償されて力率を改善することができる。交流直流コンバータ1は、外部交流電源4ら供給される交流電力から変換される直流電力の力率を改善する力率改善(PFC:power factor correction)回路としても機能するように構成されている。
【0026】
第1の例及び第2の例に共通して、交流直流コンバータ1は、インダクタL1と、スイッチング素子1Sを用いたフルブリッジ回路とを備えて構成されている。
図11に示すように、第2の例は、見掛け上、4つのアームを有して構成されているが、第2の例も等価的にフルブリッジ回路が形成されたものであり、この詳細については後述する。力率改善機能も備えた交流直流コンバータ1が、インダクタL1を備えていることにより、力率改善機能の実現に必要なインダクタンスを、インダクタL1によって適切に設定することができる。また、フルブリッジ回路を備えることにより、交流直流コンバータ1を交流直流変換及び直流交流変換が可能な双方向コンバータとして機能させることができる。例えば、車載充電装置10を、外部交流電源4から供給される電力により直流電源3を充電するための機能と、直流電源3に蓄えられた電力により車両外の装置に交流電力を供給する機能との2つの機能を有する装置として利用することができる。
【0027】
近年、災害時等において電動車両やハイブリッド車両の直流電源3を非常用電源として用いることが提唱されている。交流直流コンバータ1がフルブリッジ回路を備えることにより、直流電源3をそのような非常用電源として利用することができる。当然ながら、このような直流電源3の利用を考慮しないような場合には、交流直流コンバータ1が、交流直流変換のみを行う一方向コンバータとして構成されていてもよい。この場合には、交流直流コンバータ1は、例えばハーフブリッジ回路を有して構成されていてもよい。
【0028】
図2を参照して上述したように、直流直流コンバータ2は、第1端子T21が交流直流コンバータ1の直流側端子T1dに接続され、第2端子T22が、直流電源3に接続されている。
図3に例示する第1の例では、インバータ5の直流側端子である直流リンク端子T5dが、第1端子T21であり、中性点7Nが、第2端子T22である。
【0029】
図3に示すように、車載充電装置10は、交流直流コンバータ1の交流側端子T1aと、外部交流電源4とを選択的に接続する(交流側端子T1aと外部交流電源4とを断接する)フロントエンドコンタクタ11を備えている。フロントエンドコンタクタ11は、外部交流電源4に接続された接点(フロントエンドコンタクタ第1接点11a)と、交流直流コンバータ1に接続された接点(フロントエンドコンタクタ第2接点11b)とを備えている。フロントエンドコンタクタ第1接点11aとフロントエンドコンタクタ第2接点11bとが接続された場合に、フロントエンドコンタクタ11が導通状態となり、外部交流電源4と車載充電装置10(交流直流コンバータ1)とが電気的に接続される。
【0030】
図3に示すように、第1の例の車載充電装置10は、直流電源3に対してインバータ5の直流側端子である直流リンク端子T5dと中性点7Nとを選択的に接続するバッテリコンタクタ12を備えている。本実施形態では、バッテリコンタクタ12は、直流電源3の正極に対して直流リンク正極端子T5Pと中性点7Nとを選択的に接続する。バッテリコンタクタ12は、直流電源3の正極に接続されたバッテリコンタクタ第1接点12aと、中性点7Nに接続されたバッテリコンタクタ第2接点12bと、直流リンク正極端子T5Pに接続されたバッテリコンタクタ第3接点12cとを備えている。バッテリコンタクタ第1接点12aとバッテリコンタクタ第2接点12bとが接続されると、中性点7Nがバッテリコンタクタ12を介して直流電源3に接続される。バッテリコンタクタ第3接点12cは開放されている。インバータ5が車載充電装置10として機能する場合には、バッテリコンタクタ12がこのように接続される。
【0031】
インバータ5が回転電機70の駆動制御に用いられる場合には、バッテリコンタクタ第1接点12aとバッテリコンタクタ第3接点12cとが接続され、インバータ5の直流リンク正極端子T5Pが、バッテリコンタクタ12を介して直流電源3に接続される。バッテリコンタクタ第2接点12bは開放されている。また、車両が駐車される場合や、異常等によって回転電機70への電力供給を遮断する必要があるような場合には、バッテリコンタクタ第1接点12aに対して、バッテリコンタクタ第2接点12b及びバッテリコンタクタ第3接点12cの何れも接続されない状態とすることができる。
【0032】
このように、バッテリコンタクタ12により、直流電源3に対する接続形態を変更するだけで、回転電機70を駆動制御する機能と、直流電源3を外部交流電源4により充電する機能とを切り替え可能な回路を実現することができる。即ち、簡単な構成で、車載充電装置10を構成することができる。
【0033】
尚、フロントエンドコンタクタ11、バッテリコンタクタ12、
図11を参照して後述するバックエンドコンタクタ13は、制御装置8によって開閉制御される。或いは、これらのコンタクタは、車両制御装置90によって制御されてもよい。例えば、これらのコンタクタは、メカニカルリレーを用いて構成することができる。メカニカルリレーは、接点が開放された場合の絶縁性が高く、接点が閉成された場合に流すことができる電流も大きく確保し易い。しかし、これらのコンタクタは、メカニカルリレーに限らず、ソリッドステートリレーなど、半導体を用いて構成されていてもよい。
【0034】
このような車載充電装置10を用いて、直流電源3の過充電(過電圧)を抑制しつつ、外部交流電源4から供給される電力により直流電源3を充電する際の制御方法として、
図5に例示するような定電流定電圧充電制御が知られている。定電流定電圧充電制御では、直流電源3の充電状態(SOC)が低い場合には、直流電源3に一定の電流を供給する定電流充電制御によって直流電源が充電される。直流電源3には一定の値の電流(バッテリ電流Ibat)が流れる。
図5では、第1フェーズPH1が、定電流充電制御が実行される期間に相当する。定電流充電制御による充電が進むに従って、SOCの値は上昇していき、直流電源3の端子電圧(バッテリ電圧Vbat)も充電開始時の電圧(充電開始電圧Vbat_e)から上昇する。
【0035】
SOCが予め規定された値(例えば80~90%など)まで上昇すると、或いはバッテリ電圧Vbatが予め設定された値(切替電圧Vbat_s)まで上昇すると、定電流充電制御から定電圧充電制御に制御方法が切り替えられる。
図5では、第2フェーズPH2が、定電圧充電制御が実行される期間に相当する。定電圧充電制御では、直流電源3に印加される電圧を一定に保ちながら充電を継続する。直流電源3への印加電圧が一定に保持されるため、バッテリ電流Ibatは次第に低下する。バッテリ電圧Vbatは上昇速度を鈍化させながら上昇する。バッテリ電圧Vbatが予め規定された値(例えば、満充電電圧Vbat_f)まで上昇した場合、或いはバッテリ電流Ibatが予め規定された値まで減少した場合、或いはSOCが予め規定された値(例えば98~100%など)まで上昇した場合に、定電圧充電制御が終了し、充電制御も終了する。
【0036】
ところで、上述したように、本実施形態では、回転電機70の駆動系回路(コイル7,インバータ5等)を利用した車載充電装置10を用いて直流電源3が充電される。
図2、
図3、
図11等に示すように、直流リンクコンデンサ6は、交流直流コンバータ1と直流直流コンバータ2との間に配置されている。そして、一般的には、
図5に示すように定電流定電圧充電制御の全期間に亘って直流リンクコンデンサ6の端子電圧に相当する直流リンク電圧Vdcは一定の電圧値に保持される。上述したように、バッテリ電圧Vbatは、SOCが低い充電制御の開始時には低い値(Vbat_e)であり、定電流充電制御の進行に伴って上昇する。従って、充電制御の開始時には、直流リンク電圧Vdcとバッテリ電圧Vbatとの電圧差が大きく、車載充電装置10(この場合、特に直流直流コンバータ2)におけるスイッチング損失などの損失が大きくなる傾向がある。また、定電流充電制御では、制御の経過に伴ってバッテリ電圧Vbatが上昇する。バッテリ電流Ibatは一定であるから、
図5に示すように、バッテリ電力Pbatは、充電制御(定電流充電制御)の初期には小さく、定電流充電制御の経過に伴って大きくなる。つまり、直流電源3は、許容される最大充電電力で充電されないため、充電時間が長くなる傾向がある。
【0037】
この点に鑑み、本実施形態では、従来の定電流定電圧充電制御に対して高い効率で充電することができる車載充電装置10を実現している。
図4に示すように、制御装置8は、直流電源3の端子電圧(バッテリ電圧Vbat)が、切替電圧Vbat_sよりも低い状態(例えば、充電開始電圧Vbat_e)から切替電圧Vbat_sに達するまでは、充電制御として、直流電源3に流れる電流(バッテリ電流Ibat)と直流電源3の端子電圧(バッテリ電圧Vbat)に基づく充電電力(バッテリ電力Pbat)が一定となるように定電力充電制御を実行する(第1フェーズPH1)。また、制御装置8は、定電力充電制御においては、直流電源3の端子電圧(バッテリ電圧Vbat)が上昇することに応じて、直流リンクコンデンサの6端子電圧(直流リンク電圧Vdc)が上昇するように可変直流電圧制御を実行する。
【0038】
また、制御装置8は、充電制御として、バッテリ電圧Vbatが切替電圧Vbat_sに達した後、満充電電圧Vbat_fに達するまで、或いはバッテリ電流Ibatが予め規定された値まで減少するまで、或いは、SOCが予め規定された値(例えば98~100%など)まで上昇するまで、バッテリ電圧Vbatが上昇することに応じてバッテリ電力Pbatが小さくなるように、バッテリ電力Pbatを次第に減少させる可変電力充電制御を実行する。好ましくは、制御装置8は、可変電力充電制御において、バッテリ電力Pbatがゼロになるまで減少させる、或いはバッテリ電流Ibatがゼロになるまで減少させる。
【0039】
尚、直流電源3が満充電状態の場合の直流電源3の端子電圧(バッテリ電圧Vbat)である満充電電圧Vbat_fは「第1電圧」に相当し、切替電圧Vbat_sは「第1電圧」よりも低く予め設定された電圧である「第2電圧」に相当する。また、「第2電圧」よりも低く、充電が開始される際のバッテリ電圧Vbatである充電開始電圧Vbat_eは、「第3電圧」と称することもできる。満充電電圧Vbat_f及び切替電圧Vbat_sは、直流電源3の仕様に応じて予め規定された電圧値である。一方、充電開始電圧Vbat_eは、充電を行う際の任意の値であり、変動する値であって予め規定された電圧値ではない。
【0040】
充電電力(バッテリ電力Pbat)を一定にしたまま充電制御を継続すると、直流電源3の端子電圧(バッテリ電圧Vbat)が第1電圧(満充電電圧Vbat_f)に近づいても同じ電力で充電され、直流電源3に電流が供給され続けて過充電を招く恐れがある。直流電源3の端子電圧が第2電圧(切替電圧Vbat_s)に達した後、可変電力充電制御が実行されることにより、そのような過充電を抑制し易い。
【0041】
尚、制御装置8は、充電制御として、バッテリ電圧Vbatが切替電圧Vbat_sに達した後、満充電電圧Vbat_fに達するまで、或いはバッテリ電流Ibatが予め規定された値まで減少するまで、或いは、SOCが予め規定された値(例えば98~100%など)まで上昇するまで、可変電力充電制御ではなく、
図5を参照して上述したような定電圧充電制御を実行してもよい。
【0042】
図4に示すように、本実施形態の充電制御では、直流電源3の充電状態(SOC)が低い場合には、バッテリ電力Pbatが一定となるように、定電力充電制御が実行される。
図4において、第1フェーズPH1が、定電電力充電制御が実行される期間に相当する。バッテリ電力Pbatは、バッテリ電流Ibatとバッテリ電圧Vbatとの積である。充電制御の開始直後は、バッテリ電圧Vbatが低い電圧であるから、定電流充電制御におけるバッテリ電流Ibatに比べて大きい電流値のバッテリ電流Ibatを流して直流電源3を充電することができる。上述したように、充電の進行に伴ってバッテリ電圧Vbatは上昇するから、バッテリ電力Pbatを一定とすると、バッテリ電流Ibatは充電制御に伴って減少していく。また、上述したように、定電力充電制御が実行される際には、並行してバッテリ電圧Vbatが上昇することに応じて、直流リンク電圧Vdcが上昇するように可変直流電圧制御も実行されている。直流リンク電圧Vdcは、バッテリ電圧Vbatと平行するように、バッテリ電圧Vbatよりも概ね一定の差電圧分高い電圧となるように制御される。
【0043】
SOCが予め規定された値(例えば80~90%など)まで上昇すると、或いはバッテリ電圧Vbatが予め設定された値(切替電圧Vbat_s)まで上昇すると、定電力充電制御から可変電力充電制御に制御方法が切り替えられる。
図4では、第2フェーズPH2が、可変電力充電制御が実行される期間に相当する。可変電力充電制御では、可変直流電圧制御は実行されず、直流リンク電圧Vdcは、ほぼ一定の電圧に維持される。従って、可変電力充電制御では、概ね直流電源3に印加される電圧が一定に保たれながら充電が継続される。バッテリ電圧Vbatは上昇速度を鈍化させながら上昇する。バッテリ電流Ibatは、バッテリ電圧Vbatよりも高い変化率で減少し、バッテリ電力Pbatも減少する。バッテリ電圧Vbatが予め規定された値(例えば、満充電電圧Vbat_f)まで上昇した場合、或いはバッテリ電流Ibatが予め規定された値(ゼロ或いはゼロの近傍)まで減少した場合、或いはバッテリ電力Pbatが予め規定された値(ゼロ或いはゼロの近傍)まで減少した場合、或いはSOCが予め規定された値(例えば98~100%など)まで上昇した場合に、可変電力充電制御が終了し、充電制御も終了する。
【0044】
以下、定電力充電制御、可変電力充電制御、可変直流電圧制御を実現するための制御装置8における制御形態について説明する。
図6は、交流直流コンバータ1(フロントコンバータ)を制御するフロントエンド制御部810の模式的制御ブロック図を示し、
図7は、直流直流コンバータ2(バックコンバータ)を制御するバックエンド制御部820の模式的制御ブロック図を示している。
【0045】
図6において、“グリッド電圧Vgrid”は、“Vsinωt”で示される、外部交流電源4から入力される交流電圧である。ここで“ω”は角速度、“t”は時間である。尚、ここでは制御装置8が、dp軸ベクトル座標系におけるベクトル制御ではなく、正弦波制御を行う場合を例示している。ベクトル制御の場合には、グリッド電圧Vgridは、“Vcosωt”で示される。また、“グリッド電流Igrid”は、外部交流電源4から入力される交流電流である。“V
*dc”は直流リンク電圧Vdcの指令値である。上述した可変直流電圧制御では、直流リンク電圧Vdcの値が可変制御される。直流リンク電圧Vdcは、
図3からも明らかなように、交流直流コンバータ1から出力される電圧であるから、交流直流コンバータ1は、直流リンク電圧指令V
*dcに基づいて制御装置8により制御される。
【0046】
図6に示すように、フロントエンド制御部810は、グリッド電流指令演算部815と、フロントエンドフィードバック演算部811と、フロントエンドフィードフォワード演算部812と、フロントエンドパルス生成部813と、グリッド電圧検出部819とを備えている。フロントエンド制御部810は、上述したグリッド電流センサ41、グリッド電圧センサ42、直流リンク電圧センサ61等により検出された情報を用いて演算を実行する。
【0047】
グリッド電圧検出部819は、後段の制御ブロックにおいて用いるために、グリッド電圧Vgridから、ピーク電圧(グリッド電圧波高値Vgrid_pk)、角速度ω、波形“sinωt”を検出する。本実施形態では、グリッド電圧検出部819が位相同期回路(PLL:Phase Locked Loop)を用いて構成されている形態を例示している。上述したように、ベクトル制御の場合には、波形として“cosωt”が検出される。
【0048】
グリッド電流指令演算部815は、直流リンク電圧Vdcと直流リンク電圧指令V
*dcとの偏差に基づいて比例積分制御(PI制御)を行って電力値を演算すると共に、当該電力値とグリッド電圧Vgridとに基づいてグリッド電流指令I
*gridを演算する。
図6に示すように、グリッド電圧Vgridをグリッド電圧Vgridの実効値(グリッド電圧実効値Vgrid_rms)の2乗で除した値と、直流リンク電圧Vdcの偏差に基づくPI制御の演算結果との積が、グリッド電流指令I
*gridとなる。
【0049】
フロントエンドフィードバック演算部811は、グリッド電流Igridと、グリッド電流指令I*gridとの偏差に基づいて比例積分制御(PI制御)を行ってフロントエンドフィードバック電圧指令Vfe_fb0を演算する。また、フロントエンドフィードバック演算部811は、フロントエンドフィードバック電圧指令Vfe_fb0を、直流リンク電圧Vdcで除することによって、フロントエンドフィードバックデューティVfe_fbを演算する。
【0050】
フロントエンドフィードフォワード演算部812は、フロントエンドフィードフォワードデューティVfe_ffを演算する。ここでは、正弦波状の電圧指令を生成するため、波の大きさ(振幅或いは波高値)及び位相が演算される。電圧指令の大きさは、入力電圧と出力電圧との比率(入力電圧Vin/出力電圧Vout)で定義され、グリッド電圧波高値Vgrid_pkを直流リンク電圧指令V*dcで除することによって演算される。位相は、グリッド電圧Vgridの位相“ωt”、インダクタL1による位相遅れ(“θ1”とする)、グリッド電流制御の遅れに伴う位相遅れ(“θ2”とする)、の3要素を考慮して決定される。尚、グリッド電流制御の遅れとは、グリッド電流Igridが検出されてから制御装置8の1つの制御周期においてグリッド電流指令I*gridが演算され、次の制御周期において算出された電圧指令により交流直流コンバータ1が制御されることに伴う遅れ時間に相当する。
【0051】
インダクタL1による位相遅れ“θ1”は、インダクタL1のインダクタンスを“L”として、下記式で表される。尚、“I*grid_pk”は、グリッド電流指令波高値である。
【0052】
θ1=-I*grid_pk・(ωL/Vgrid_pk)
【0053】
グリッド電流制御の遅れに伴う位相遅れ“θ2”は、電圧指令の算出に制御周期の1周期分の遅れが生じることから、1.5周期分に相当する位相として下記のように算出される。ここで、1.5周期分の補正を実施することで、制御演算結果が反映される1周期先のキャリア周期全体における平均電圧を補正することが可能となる。
【0054】
θ2=ω・(グリッド電流制御1.5周期の時間/1[s])
【0055】
これらに基づき、正弦波状のフロントエンドフィードフォワード電圧指令Vfe_ff0が、以下のように定義される。
【0056】
Vfe_ff0=1-(Vgrid_pk/V*dc)sin(ωt-θ1+θ2)
【0057】
通常の正弦波は、ゼロを振幅中心として正負の値を有するため、シフト処理等、正のデジタル値でパルスを生成するための公知の変換処理等が実施される。尚、上述した演算例では、フロントエンドフィードフォワード電圧指令Vfe_ff0は、負の値がないようにオフセットされた状態で算出されているので振幅を調整するのみでよい。
図6のフロントエンドフィードフォワード演算部812における「1/2」の制御器は振幅調整器であり、当該振幅調整器を経てフロントエンドフィードフォワードデューティVfe_ffが生成される
【0058】
Vfe_ff=Vfe_ff0/2
【0059】
フロントエンドパルス生成部813は、フロントエンドフィードバックデューティVfe_fbとフロントエンドフィードフォワードデューティVfe_ffとを加算して得られる最終的なデューティ(フロントエンドデューティVfe)に基づいて、交流直流コンバータ1を構成するスイッチング素子1Sをスイッチング制御するパルス(パルス幅変調用パルス)を生成する。フロントエンドデューティVfeは、下記のように求められる。
【0060】
Vfe=Vfe_fb+Vfe_ff
【0061】
このフロントエンドデューティVfeは、パルス幅変調制御におけるデューティに相当する。最終的なスイッチングパルスは、キャリア波(フロントエンドキャリアCA_fe)とフロントエンドデューティVfeとに基づく公知の演算によって生成されるため、詳細な説明は省略する。
【0062】
尚、ここでは、理解を容易にするために、正弦波制御による形態を例示して説明した。しかし、dq軸ベクトル座標系において演算が実行されるように、フロントエンド制御部810を構築することも可能である。当業者であれば、
図6の制御ブロック図から容易に置換が可能であるから、ここでは詳細な説明は省略する。
【0063】
図7において、“Ia”は複数相のコイル7を流れる電流の総和である“コイル電流”を示している。本実施形態では、3相のコイル7を備えており、
図3に例示する形態では、コイル電流Iaは、U相電流Iu、V相電流Iv、W相電流Iwの総和となる。“P
*bat”は、定電力充電制御におけるバッテリ電力Pbatの指令値(バッテリ電力指令)である。“V
*bat”はバッテリ電圧Vbatの指令値(バッテリ電圧指令)である。
【0064】
図7に示すように、バックエンド制御部820は、バックエンドフィードバック演算部821と、バックエンドフィードフォワード演算部822と、バックエンドパルス生成部823とを備えている。バックエンド制御部820は、上述したモータ電流センサ81、バッテリ電流センサ31、バッテリ電圧センサ32、直流リンク電圧センサ61等により検出された情報を用いて演算を実行する。尚、バッテリ電力Pbatについては、バッテリ電流Ibatとバッテリ電圧Vbatとの積によって求めることができる。
【0065】
バックエンドフィードバック演算部821は、バッテリ電力指令P*batをバッテリ電圧Vbatで除して得られるバッテリ電流指令(I*bat)と、直流電源3に流す電流(バッテリ電流Ibat)に相当するコイル電流Iaとの偏差に基づいて比例積分制御(PI制御)を行ってバックエンドフィードバック電圧指令Vbe_fb0を演算する。また、バックエンドフィードバック演算部821は、バックエンドフィードバック電圧指令Vbe_fb0を、直流リンク電圧Vdcで除することによって、バックエンドフィードバックデューティVbe_fbを演算する。
【0066】
バックエンドフィードフォワード演算部822は、バックエンドフィードフォワードデューティVbe_ffを演算する。バックエンドフィードフォワードデューティVbe_ffは、入力電圧と出力電圧との比率(入力電圧Vin/出力電圧Vout)で定義され、バックエンドフィードフォワード演算部822は、バッテリ電圧指令V*batを直流リンク電圧Vdcで除することによってバックエンドフィードフォワードデューティVbe_ffを演算する。
【0067】
バックエンドパルス生成部823は、バックエンドフィードバックデューティVbe_fbとバックエンドフィードフォワードデューティVbe_ffとの和であるバックエンドデューティVbeに基づいて、直流直流コンバータ2を構成するスイッチング素子であるインバータ5のスイッチング素子5Sをスイッチング制御するパルス(パルス幅変調用パルス)を生成する。バックエンドデューティVbeは、パルス幅変調制御におけるデューティに相当する。最終的なスイッチングパルスは、キャリア波(バックエンドキャリアCA_be)とバックエンドデューティVbeとに基づく公知の演算によって生成されるため、詳細な説明は省略する。
【0068】
尚、
図3に示すように、直流直流コンバータ2がインバータ5を利用して構成されている場合、制御対象のスイッチング素子5Sは6つ存在する。しかし、上述したように、直流電源3の正極にコイル7の中性点7Nが接続されていることから、インバータ5の3相のアームは1つのアームとして考えることができる。従って、各相の上段側のスイッチング素子5Sを同じスイッチングパルスで制御し、下段側のスイッチング素子5Sを同じスイッチングパルスで制御することができる。
【0069】
図3を参照して上述したように、車載充電装置10は、交流直流コンバータ1の交流側端子T1aと、外部交流電源4とを選択的に接続する(交流側端子T1aと外部交流電源4とを断接する)フロントエンドコンタクタ11を備えている。車載充電装置10は、直流電源3に対してインバータ5の直流側端子である直流リンク端子T5dと中性点7Nとを選択的に接続するバッテリコンタクタ12を備えている。充電制御を実行する場合、制御装置8は、フロントエンドコンタクタ11を閉成させると共に、バッテリコンタクタ第1接点12aとバッテリコンタクタ第2接点12bとが接続されるように、バッテリコンタクタ12を制御する。このとき、例えば車両が長時間停車状態であったような場合には、直流リンクコンデンサ6が放電して、直流リンク電圧Vdcがほぼゼロとなっている。ここで、充電制御が開始された場合、過渡的に大きな電流が流れ込んで、直流リンクコンデンサ6を充電することになる。
図3に例示するような構成の場合、交流直流コンバータ1は充電にしか用いられないため、交流直流コンバータ1を構成するスイッチング素子1Sには、回転電機70を駆動するような大電流を許容できるような性能は求められない。即ち、直流リンクコンデンサ6を充電するための過渡的な電流が、このような電流耐性が高くない素子に流れることは好ましくない。
【0070】
このため、本実施形態では、制御装置8は、充電制御の実行前に、直流リンクコンデンサ6を充電するプリチャージ制御を実行する。
【0071】
平滑コンデンサ(ここでは直流リンクコンデンサ6)に蓄えられた電荷は、電荷の供給元と平滑コンデンサとの電気的接続が遮断された後、放電によって次第に減少する。平滑コンデンサがほぼ完全に放電した状態から、充電制御が開始されると、平滑コンデンサが急速に充電されることになる。つまり、充電制御の開始時に電荷の供給元から平滑コンデンサへの経路には過渡的に大きな電流が流れることになる。充電制御の実行中に当該経路を流れる定常的な電流はそのような過渡的な電流に比べて遙かに小さいことから、このような過渡的な電流に備えて当該経路に流すことのできる電流の許容値を高くするなどの対策が必要となり装置規模の増大を招く可能性もある。充電制御に先だって平滑コンデンサを充電するプリチャージ制御が実行されると、充電制御の開始に伴って大きな過渡的な電流が流れることを抑制することができ、車載充電装置10を簡素に構成し易い。
【0072】
上述したように、制御装置8は、充電制御の実行前に、直流リンクコンデンサ6を充電するプリチャージ制御を実行する。この際、制御装置8は、充電制御の実行時に直流リンクコンデンサ6に電荷を供給する経路とは異なる経路で直流リンクコンデンサ6に電荷が供給されるようにプリチャージ制御を実行すると好適である。
【0073】
上述したように、車載充電装置10は、直流電源3に対してインバータ5の直流側端子である直流リンク端子T5dと直流直流コンバータ2の第2端子T22とを選択的に接続するコンタクタであるバッテリコンタクタ12を備えている。制御装置8は、プリチャージ制御では、直流電源3と直流リンク端子T5dとが接続されるようにバッテリコンタクタ12を制御し、充電制御では、直流電源3と直流直流コンバータ2の第2端子T22とが接続されるようにバッテリコンタクタ12を制御する。尚、プリチャージ制御の実行中には、フロントエンドコンタクタ11は、開放状態に制御されている。
【0074】
図8に示すように、プリチャージ制御において、直流電源3と直流リンク端子T5dとが接続されるようにバッテリコンタクタ12が制御されると、直流電源3と直流リンクコンデンサ6とが直接接続され、直流電源3により直流リンクコンデンサ6が充電される。この経路には、スイッチング素子等の素子が介在していないため、安全且つ迅速に直流リンクコンデンサ6を充電することができる。尚、直流電源3は、充電制御が必要な程度にSOCが低下している状態ではあるが、直流リンクコンデンサ6を充電する程度の電荷は残っていることが多い。従って、適切に直流リンクコンデンサ6を充電することができる。
【0075】
平滑コンデンサ(ここでは直流リンクコンデンサ6)は、交流直流コンバータ1と直流直流コンバータ2との間に配置され、インバータ5の直流側端子(直流リンク端子T5d)の正負両極間に接続されている。コンタクタ(バッテリコンタクタ12)により、直流電源3とインバータ5の直流側端子とが接続されることで、プリチャージ制御において、直流電源3から直接に平滑コンデンサに電荷を供給することができる。直流電源3から平滑コンデンサへの経路には、スイッチング素子など、流すことが可能な電流の大きさを考慮する必要のある部品が配置されていないため、簡単な構成で安全且つ迅速に平滑コンデンサを充電することができる。
【0076】
ここで、プリチャージ制御を含む統合充電制御の開始時のシーケンスであるスタートシーケンスの一例について説明する。統合充電制御とは、プリチャージ制御と充電制御とを合わせた制御である。統合充電制御の開始前には、バッテリコンタクタ12、フロントエンドコンタクタ11、交流直流コンバータ1の全てのスイッチング素子1S、直流直流コンバータ2の全てのスイッチング素子2Sはオフ状態である。制御装置8は、統合充電制御を開始すると、まずバッテリコンタクタ12のバッテリコンタクタ第1接点12aとバッテリコンタクタ第3接点12cとが閉成されるように制御する。これにより、
図8に示すように、直流電源3により直流リンクコンデンサ6が充電される。直流電源3のSOCが低い場合、直流リンク電圧Vdcは、満充電時のバッテリ電圧Vbatよりも低い電圧まで上昇する。制御装置8は、例えば、直流リンク電圧センサ61の検出結果に基づいて、直流リンク電圧Vdcがバッテリ電圧Vbatに達して電圧が上昇しなくなったことにより、プリチャージ制御の終了を判定することができる。
【0077】
次に制御装置8は、充電制御を開始する。具体的には、制御装置8は、フロントエンドコンタクタ11及びバッテリコンタクタ12を制御して、フロントエンドコンタクタ第1接点11aとフロントエンドコンタクタ第2接点11bとを接続させると共に、バッテリコンタクタ第1接点12aとバッテリコンタクタ第2接点12bとを接続させる。制御装置8は、フロントエンドコンタクタ11及びバッテリコンタクタ12を同じタイミングで制御しても良いし、順番に制御してもよい。制御装置8が順番に制御する場合、何れのコンタクタを先に制御してもよい。ところで、バッテリコンタクタ12は、バッテリコンタクタ第2接点12b及びバッテリコンタクタ第3接点12cが、バッテリコンタクタ第1接点12aに対して排他的に接続される。従って、制御装置8は、プリチャージ制御に続いてバッテリコンタクタ第1接点12aとバッテリコンタクタ第2接点12bとを接続させる際には、バッテリコンタクタ第1接点12aとバッテリコンタクタ第3接点12cとの接続を開放すると共に、バッテリコンタクタ第1接点12aとバッテリコンタクタ第2接点12bとを接続させる。また、上述したように、制御装置8は、直流リンク電圧Vdcがバッテリ電圧Vbatに達して電圧が上昇しなくなったことにより、プリチャージ制御の終了を判定し、予めバッテリコンタクタ第1接点12aとバッテリコンタクタ第3接点12cとの接続を開放し、バッテリコンタクタ12の全ての接点を開放状態に制御しておいてもよい。
【0078】
制御装置8は、フロントエンドコンタクタ第1接点11aとフロントエンドコンタクタ第2接点11bとを接続させ、バッテリコンタクタ第1接点12aとバッテリコンタクタ第2接点12bとを接続させた後、交流直流コンバータ1のスイッチング制御を開始する。外部交流電源4から交流直流コンバータ1を介して供給される電力によって、直流リンク電圧Vdcはバッテリ電圧Vbatから充電制御における直流リンク電圧Vdcの目標電圧まで上昇する。制御装置8は、直流リンク電圧センサ61の検出結果に基づいて、直流リンク電圧Vdcが、当該目標電圧に達したと判定すると、直流直流コンバータ2のスイッチング制御を開始する。
【0079】
図9及び
図10は、比較例として
図8とは異なる経路を通って直流リンクコンデンサ6が充電される場合を例示している。
図9の例では、フロントエンドコンタクタ11が閉成され、バッテリコンタクタ12は何れの接点も開放されている。この場合、交流直流コンバータ1のスイッチング素子1Sに備えられたフリーホイールダイオードにより、交流直流コンバータ1がダイオード全波整流回路として機能する。その結果、外部交流電源4からスイッチング素子1S(フリーホイールダイオード)を通って直流リンクコンデンサ6に過渡的な充電電流が流れる。
【0080】
交流直流コンバータ1は、直流電源3の充電のみに使用されるため、回転電機70を駆動するインバータ5に比べて流すことが可能な電流の値が小さいスイッチング素子で構成される。このため、過渡的であってもそのような電流が流れることは好ましくはない。但し、部品コストは増加するが、流すことが可能な電流の値が大きいスイッチング素子を用いて交流直流コンバータ1を構成することにより、
図9に例示するような経路を形成させてプリチャージ制御が行われることを妨げるものではない。また、
図9に例示する経路での直流リンクコンデンサ6の充電が許容されるように交流直流コンバータ1が構成されている場合には、制御装置8は、プリチャージ制御を実行することなく充電制御を実行してもよい。
【0081】
図10の例では、フロントエンドコンタクタ11が開放され、バッテリコンタクタ12は充電制御が実行される場合と同様にバッテリコンタクタ第1接点12aとバッテリコンタクタ第2接点12bとが接続されている。この場合、直流直流コンバータ2を構成するインバータ5のスイッチング素子5Sに備えられたフリーホイールダイオードを通って直流リンクコンデンサ6に過渡的な充電電流が流れる。インバータ5のスイッチング素子5Sは、回転電機70を駆動するため、流すことが可能な電流の値が大きい。従って、電流の大きさの観点からは、この経路で直流リンクコンデンサ6を充電することが可能と考えられる。しかし、発明者らによるシミュレーションによれば、プリチャージ制御の開始時にコイル電流Iaや、直流リンク電圧Vdcが大きく振動し、ピーク値が高くなることが観測された。従って、
図10に示すような直流直流コンバータ2を経由したプリチャージ制御に比べて、
図8に示すように、直流直流コンバータ2を経由することなく、直流電源3と直流リンクコンデンサ6を直接接続してプリチャージ制御が好ましい。
【0082】
上述したような充電制御(定電力充電制御、可変電力充電制御、可変直流電圧制御、プリチャージ制御)は、
図3を参照して上述した形態の回路構成を有する第1の例の車載充電装置10に限らず、
図11に示すような形態の回路構成を有する第2の例の車載充電装置10でも実施することができる。
【0083】
図11に示す第2の例の車載充電装置10では、交流直流コンバータ1に、回転電機70の駆動系回路(インバータ5、コイル7)が共用されている。この交流直流コンバータ1は、インバータ5と、複数相のコイル7と、インバータ5に並列に接続された単相アーム15と、インダクタL1とを備えて構成されている。複数相のコイル7の中性点7Nと単相アーム15の中点との間に、インダクタL1と外部交流電源4とが直列に接続されている。インバータ5を構成する3相のアームは、並列接続されて見かけ上1つのアームを構成しており、単相アーム15と共に、フルブリッジ回路を形成している。尚、インバータ5を構成するスイッチング素子5Sと、単相アーム15のスイッチング素子15Sとは、電気的な仕様が同等の素子である。尚、インダクタL1は、外部交流電源4に接続される配置が同じであるため、
図3に示す第1の例と同一符号で示しており、回路定数が同じであることを意味するものではない。
【0084】
第2の例の車載充電装置10の直流直流コンバータ2は、回転電機70の駆動系回路を共用することなく独立して形成されている。この直流直流コンバータ2は、相補的にスイッチング制御されるようにスイッチング素子が直列接続されたアームと、当該アームの中点に接続されたバックエンドインダクタL2と、直流電源3に並列に接続された出力用平滑コンデンサC2とを備えて降圧型の直流直流変換回路として構成されている。尚、直流直流コンバータ2は昇圧型コンバータとして構成されていてもよいし、昇降圧型コンバータとして構成されていてもよい。
【0085】
第2の例の車載充電装置10は、第1の例の車載充電装置10と同様のフロントエンドコンタクタ11及びバッテリコンタクタ12を備えている。接続形態や開閉制御については、第1の例の車載充電装置10と同様であるから説明は省略する。また、第2の例の車載充電装置10は、選択的に、交流直流コンバータ1(インバータ5)と直流電源3とを接続する、或いは、交流直流コンバータ1(インバータ5)と直流直流コンバータ2とを接続するバックエンドコンタクタ13も備えている。バックエンドコンタクタ13は、交流直流コンバータ1(インバータ5)の正極に接続されたバックエンドコンタクタ第1接点13aと、直流直流コンバータ2の入力側の正極に接続されたバックエンドコンタクタ第2接点13bと、バッテリコンタクタ第3接点12cに接続されて選択的に直流電源3の正極に接続されるバックエンドコンタクタ第3接点13cとを備えている。バックエンドコンタクタ第1接点13aとバックエンドコンタクタ第2接点13bとが接続されると、交流直流コンバータ1(インバータ5)と直流直流コンバータ2とが接続される。
【0086】
インバータ5が回転電機70の駆動制御に用いられる場合には、
図3を参照して上述したように、バッテリコンタクタ第1接点12aとバッテリコンタクタ第3接点12cとが接続される。この状態において、バックエンドコンタクタ第1接点13aとバックエンドコンタクタ第3接点13cとが接続されると、インバータ5と直流電源3とが、バックエンドコンタクタ13及びバッテリコンタクタ12を介して接続される。
【0087】
この車載充電装置10のように、中性点7Nに単相の外部交流電源4が接続される形態の場合、3相のコイル7には、同じ電流が流れる。その結果、磁気飽和等により、コイル7におけるインダクタンスが小さくなり、外部交流電源4の系統電流の高調波電流や、直流変換後のリップル電流のピーク値が大きくなることが考えられる。このため、第2の例の車載充電装置10では、外部交流電源4と複数相のコイル7の中性点7Nとの間に、インダクタL1を追加して必要なインダクタンスを確保している。
【0088】
この第2の例の車載充電装置10も、
図6及び
図7を参照して上述したような制御形態により、交流直流コンバータ1及び直流直流コンバータ2が制御される。回路構成が異なるため、相違点は存在するが、当業者であれば適宜置換が可能であるから、詳細な説明は省略する。
【符号の説明】
【0089】
1:交流直流コンバータ、2:直流直流コンバータ、3:直流電源、4:外部交流電源、5:インバータ、6:直流リンクコンデンサ(平滑コンデンサ)、7:コイル、7N:中性点、8:制御装置、9:車両用駆動装置、10:車載充電装置、12:バッテリコンタクタ(コンタクタ)、70:回転電機、Pbat:バッテリ電力(充電電力)、T1a:交流側端子、T1d:直流側端子、T21:第1端子、T22:第2端子、T5d:直流リンク端子(インバータの直流側端子)、Vbat:バッテリ電圧(直流電源の端子電圧)、Vbat_f:満充電電圧(第1電圧)、Vbat_s:切替電圧(第2電圧)、Vdc:直流リンク電圧(平滑コンデンサの端子電圧)