(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115573
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】硬化性組成物及び接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
C08G 75/08 20060101AFI20240820BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20240820BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
C08G75/08
C09J201/00
C09J11/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021250
(22)【出願日】2023-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】000125370
【氏名又は名称】学校法人東京理科大学
(71)【出願人】
【識別番号】000216243
【氏名又は名称】田岡化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】有光 晃二
(72)【発明者】
【氏名】河村 芳範
【テーマコード(参考)】
4J030
4J040
【Fターム(参考)】
4J030BA02
4J030BA44
4J030BA47
4J030BB03
4J030BB06
4J030BC12
4J030BC21
4J030BC43
4J030BG03
4J030BG04
4J030BG10
4J030BG25
4J030BG30
4J040HD03
4J040HD10
4J040HD28
4J040JB08
4J040KA16
4J040NA17
4J040NA19
(57)【要約】
【課題】
エピスルフィド化合物及び光塩基発生型の硬化剤を含む硬化性組成物であって、光照射後、加熱せずとも充分硬化した硬化物を与える硬化性組成物の提供。
【解決手段】
エピスルフィド化合物及び下記する特定構造を有する光塩基発生型の硬化剤(化合物)を含む硬化性組成物によれば、上記課題が解決可能となる。
(上記一般式(1)中、R
1~R
9はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基を表す。Xは酸素原子または硫黄原子を表す。Z
q+はq価のフォスファゼン化合物カチオンを表し、qは1~10の整数を表す。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エピスルフィド化合物、及び以下一般式(1):
【化1】
(上記一般式(1)中、R
1~R
9はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基を表す。Xは酸素原子または硫黄原子を表す。Z
q+はq価のフォスファゼン化合物カチオンを表し、qは1~10の整数を表す。)
で表される化合物を含む硬化性組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の硬化性組成物を硬化させてなる硬化物。
【請求項3】
請求項1に記載の硬化性組成物を含む、接着剤組成物。
【請求項4】
更に、多官能チオール化合物を含む、請求項3に記載の接着剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エピスルフィド化合物を含む硬化性組成物、具体的にはエピスルフィド化合物および光塩基発生型の硬化剤を含む硬化性組成物、及び該硬化性組成物を硬化させてなる硬化物、並びに該硬化性組成物を含む接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
エピスルフィド化合物を硬化剤で硬化させた硬化物は一般的に耐熱性が高く、耐湿性も良好であり、更には透明性や屈折率等の光学特性にも優れることが知られており、広範な用途に応用展開が可能である。
【0003】
エピスルフィド化合物用硬化剤としては、例えば、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンや1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン等の、アニオン硬化性化合物用硬化剤として一般的な塩基化合物が用いられる。しかし、これらの塩基化合物は反応性が非常に高いため、エピスルフィド化合物と合わせて硬化性組成物とした場合、貯蔵安定性が悪く、ポットライフが非常に短くなるという問題があることから、該問題を解決する手段として、例えば、硬化剤として光塩基発生剤を使用する方法が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されているエピスルフィド化合物および光塩基発生型の硬化剤を含む硬化性組成物は、光(紫外線)照射後、該硬化性組成物を完全に硬化させる為に更に80~140℃で1時間加熱する必要がある旨記載されているが(例えば、特許文献1の明細書[0089]及び[0091]表1)、特に該硬化性組成物を接着剤として用いる場合、被着体によっては加熱を嫌うものも多く、斯かる用途では使用が困難な場合があった。
【0006】
本発明は、エピスルフィド化合物及び光塩基発生型の硬化剤を含む硬化性組成物であって、光照射後、加熱せずとも充分硬化した硬化物を与える硬化性組成物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討した結果、エピスルフィド化合物及び下記する特定構造を有する光塩基発生型の硬化剤(化合物)を含む硬化性組成物によれば、上記課題が解決可能であることを見出した。具体的には、本発明は以下の発明を含む。
【0008】
〔1〕
エピスルフィド化合物、及び以下一般式(1):
【0009】
【化1】
(上記一般式(1)中、R
1~R
9はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基を表す。Xは酸素原子または硫黄原子を表す。Z
q+はq価のフォスファゼン化合物カチオンを表し、qは1~10の整数を表す。)
で表される化合物を含む硬化性組成物。
【0010】
〔2〕
〔1〕に記載の硬化性組成物を硬化させてなる硬化物。
【0011】
〔3〕
〔1〕に記載の硬化性組成物を含む、接着剤組成物。
【0012】
〔4〕
更に、多官能チオール化合物を含む、〔3〕に記載の接着剤組成物。
【発明の効果】
【0013】
本発明の硬化性組成物は、光照射後に加熱せずとも室温(25℃)で重合反応が進行し、充分に硬化した硬化物を得ることができるため、例えば、3Dプリンタ用の樹脂材料等、光照射後に加熱が困難、あるいは加熱を避けたい用途で使用可能である。
【0014】
また、本発明の硬化性組成物は光照射を行ってから一定時間後に充分に硬化した硬化物が得られるため、例えば該硬化性組成物を接着剤組成物として用いると、その時間を利用して、光照射後、位置合わせが可能な接着剤として利用することが可能である。また、室温であっても重合反応が進行することから、加熱を嫌う被着体(例えば耐熱性が低い被着体、寸法安定性の観点から加熱を避けたい被着体等)への接着等にも好適に使用することができる。
【0015】
また、本発明の硬化性組成物は主剤としてエピスルフィド化合物を用いている為、該組成物から得られる硬化物は耐熱性が高く、耐湿性も良好であり、更には透明性や屈折率等の光学特性にも優れることから、例えば、光学分野(レンズユニットの構成部材や、該部材の接着に使用する接着剤組成物等)及び電気・電子分野(半導体の封止材、電気絶縁材料の接着等)等において好適に用いることができる。
【0016】
更には、本発明の硬化性組成物は従来の紫外線(254nm)のみならず、汎用LED光源で発せられるI線(365nm)を用いても硬化させることが可能であることから、より汎用性に優れる組成物であるといえ、例えばUV硬化型接着剤として用いた場合、従来公知の紫外線硬化型接着剤に比し、より簡便に使用することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明について詳細に記載する。なお、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。また、本明細書において、数値範囲を「A~B」で示す場合、A以上B以下を意味する。
【0018】
<本発明の硬化性組成物>
本発明の硬化性組成物はエピスルフィド化合物及び上記一般式(1)で表される化合物を含み、上記一般式(1)で表される化合物はエピスルフィドを硬化させる硬化剤、より具体的には光塩基発生型の硬化剤として作用する。
【0019】
本発明のエピスルフィド化合物は一分子内に1個以上のエピスルフィド基を有するものである。本発明のエピスルフィド化合物は例えば、市販品を用いてもよいし、必要に応じ公知のエポキシ化合物(樹脂)と、チオシアン酸塩、チオ尿素等の硫化剤とを定法により反応させ、エポキシ基の酸素原子を硫黄原子に置換することにより製造してもよい。また、本発明のエピスルフィド化合物は、すべてのエポキシ基の酸素原子が硫黄原子に置換されていてもよいし、一部のエポキシ基のみ酸素原子が硫黄原子に置換されていてもよい。
【0020】
本発明のエピスルフィド化合物として具体的には、下記(1)~(15)群のエピスルフィド化合物が例示される。
【0021】
(1)ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールAD、テトラメチルビスフェノールS、テトラブロモビスフェノールA等をグリシジル化することにより得られるビスフェノール型エポキシ樹脂を、更にチオグリシジル化したビスフェノール型エピスルフィド化合物
【0022】
(2)ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールAD、テトラメチルビスフェノールS、テトラブロモビスフェノールA等のビスフェノール類の核水添化物をグリシジル化することにより得られる水素化ビスフェノール型エポキシ樹脂を、更にチオグリシジル化した水素化ビスフェノール型エピスルフィド化合物
【0023】
(3)ビフェノール、ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシアントラセン、9,9-ビス(4 -ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン等のその他の2価フェノール類、及び9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル]フルオレン等の2価アルコール類をグリシジル化することにより得られるエポキシ樹脂を、更にチオグリシジル化したエピスルフィド化合物
【0024】
(4)1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、4,4-(1-(4-(1-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル)フェニル)エチリデン)ビスフェノール等のトリスフェノール類をグリシジル化することにより得られるエポキシ樹脂を、更にチオグリシジル化したエピスルフィド化合物
【0025】
(5)1,1,2,2-テトラキス(4-ヒドロキシフェニル)エタン等のテトラキスフェノール類をグリシジル化することにより得られるエポキシ樹脂を、更にチオグリシジル化したエピスルフィド化合物
【0026】
(6)フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ビスフェノールAノボラック、臭素化フェノールノボラック、臭素化ビスフェノールAノボラック等をグリシジル化することにより得られるノボラック型エポキシ樹脂を、更にチオグリシジル化したノボラック型エピスルフィド化合物
【0027】
(7)グリセリンやポリエチレングリコール等の多価アルコールをグリシジル化することにより得られる脂肪族エーテル型エポキシ樹脂を、更にチオグリシジル化した脂肪族エーテル型エピスルフィド化合物
【0028】
(8)p-オキシ安息香酸、β-オキシナフトエ酸等のヒドロキシカルボン酸をグリシジル化することにより得られるエーテルエステル型エポキシ樹脂を、更にチオグリシジル化したエーテルエステル型エピスルフィド化合物
【0029】
(9)フタル酸、テレフタル酸等のポリカルボン酸をグリシジル化することにより得られるエステル型エポキシ樹脂を、更にチオグリシジル化したエステル型エピスルフィド化合物
【0030】
(10)4,4-ジアミノジフェニルメタン、m-アミノフェノール等のアミン化合物をグリシジル化することにより得られるアミン型エポキシ樹脂、又はトリグリシジルイソシアヌレート等を更にチオグリシジル化したアミン型エピスルフィド化合物
【0031】
(11)ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等のポリアルキレンポリアミンとアジピン酸等のジカルボン酸とのポリアミドポリアミンのチオグリシジル化物
【0032】
(12)3,4-エピチオシクロヘキシルメチル-3’,4’-エピチオシクロヘキサンカルボキシレート、ビス-(3,4-エピチオシクロヘキシル)アジペート、1,2-エピチオ-4-ビニルシクロヘキサン等の脂環式エピスルフィド化合物
【0033】
(13)オルガノポリシロキサンとエピスルフィド樹脂、又はフェノールノボラック型エピスルフィド樹脂との反応で得られるシリコーン変性エピスルフィド化合物
【0034】
(14)チオグリシジルメタクリレート、3,4-エピチオシクロヘキシルメチルメタクリレート、プロピレンスルフィド、シクロヘキサンスルフィド等のエピスルフィド化合物及びその重合体
【0035】
(15)ビス(2,3-エピチオプロピル)スルフィド、ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)エタン、ビス(5,6-エピチオ-3-チオヘキサン)スルフィド等のエピスルフィド化合物
【0036】
これらエピスルフィド化合物は硬化物の用途に応じて適宜選択されるが、該硬化物を後述する本発明の硬化性組成物を含む接着剤組成物として用いるに際しては、ビスフェノール類の核水添化物をグリシジル化することにより得られる水素化ビスフェノール型エポキシ樹脂を、更にチオグリシジル化した水素化ビスフェノール型エピスルフィド化合物(上記(2)群)が好適に用いられる。また、これらエピスルフィド化合物は1種、あるいは必要に応じ2種以上併用してもよい。
【0037】
本発明の硬化性組成物に含まれる上記一般式(1)で表される化合物における置換基R1~R9において、ハロゲン原子としては例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子等が挙げられ、アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル、イソプロピル、ブチル基等の分岐を有してもよい鎖状アルキル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等の環状アルキル基等が挙げられ、これらアルキル基の中でも炭素数1~4の分岐を有してもよいアルキル基が好ましい。これら置換基の中でも、R1~R7のすべてが水素原子であり、R8及び/又はR9が炭素数1~4の分岐を有してもよいアルキル基及び/又は水素原子であることが好ましい。また、Xは酸素原子または硫黄原子を表し、入手性の観点から酸素原子が好ましい。なお、上記一般式(1)で表される化合物のアニオン部が上述した構造を有していることにより、従来の紫外線(254nm)のみならず、汎用LED光源で発せられるI線(365nm)を用いても塩基が発生し、本発明の硬化性組成物を硬化させることが可能となる。
【0038】
上記一般式(1)におけるフォスファゼン化合物カチオンを与えるフォスファゼン化合物としては、試薬等で市販されているフォスファゼン化合物が使用可能であり、具体的に例えば下記(P-1)~(P-14)で表される化合物が挙げられる。
【0039】
【0040】
【0041】
上記一般式(1)で表される化合物は例えば、アニオン部を与えるカルボン酸と、カチオン部を与えるフォスファゼン化合物とを混合することにより製造することができる。その際、カルボン酸をフォスファゼン化合物に対し過剰量、具体的に例えばフォスファゼン化合物1当量に対しカルボン酸を1.4~2当量使用することにより、本発明の硬化性組成物の暗反応(紫外線を照射せずとも自然に硬化が進行する現象)を抑制することが可能となり、好ましい。
【0042】
本発明の硬化性組成物に含まれる上記一般式(1)で表される化合物は、例えばエピスルフィド化合物100重量部に対し0.1~20重量部、好ましくは0.5~10重量部である。特に、本発明の硬化性組成物を後述する接着剤組成物として用いる場合は、より接着性が向上することから、エピスルフィド化合物100重量部に対し0.5~5重量部とすることが好ましい。また、上記一般式(1)で表される化合物は1種、あるいは必要に応じ2種以上併用してもよい。
【0043】
本発明の硬化性組成物には、必要に応じて、塩基の作用で増殖的に塩基を発生する塩基増殖剤、及び/又は増感剤が含まれていてもよい。
【0044】
また本発明の硬化性組成物には必要に応じて、溶剤を含有させることができる。かかる溶剤としては、例えば、芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類、ケトン類、エステル類、アルコール類が挙げられる。芳香族炭化水素類としては例えばトルエン、キシレン等が、脂肪族炭化水素類としては例えばヘキサン、ヘプタン等の鎖状炭化水素類、クロロホルム等の含ハロゲン炭化水素類、シクロヘキサン、シクロヘプタン等の脂環式炭化水素類等が、ケトン類としては例えばアセトン、メチルエチルケトン等が、エステル類としては例えば酢酸エチル、酢酸ブチル等が、アルコール類としては例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等が挙げられる。これら溶剤は1種、あるいは必要に応じ2種以上併用してもよい。
【0045】
本発明の硬化性組成物には、さらに、本発明の目的及び効果を妨げない範囲において、上記一般式(1)で表される化合物以外の硬化剤及び/又は各種添加剤を適宜含有させることができる。かかる添加剤としては、例えば、充填剤、顔料、染料、レベリング剤、消泡剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、pH調整剤、分散剤、分散助剤、表面改質剤、可塑剤、可塑促進剤、タレ防止剤、硬化促進剤、光酸発生剤等が挙げられる。これら硬化剤及び/又は添加剤は1種、あるいは必要に応じ2種以上併用してもよい。
【0046】
本発明の硬化性組成物は、エピスルフィド化合物及び上記一般式(1)で表される化合物、並びに必要に応じ上述した他の成分を公知の手段、条件で物理的に混合することにより製造される。混合する方法としては例えば、ミキシングロール、ディゾルバ、プラネタリミキサ、ニーダ、押出機等が挙げられる。
【0047】
<本発明の接着剤組成物>
本発明の接着剤組成物は、上述した本発明の硬化性組成物を含む。更に、多官能チオール化合物を含むと、該接着剤組成物の接着性が向上することから好ましい。
【0048】
本発明の接着剤組成物に含まれる得る多官能チオール化合物とは、チオール基(-SH基)が二つ以上含まれる化合物である。具体的に例えば、以下(S-1)~(S-10)で表される化合物が挙げられる。
【0049】
【化4】
(上記式中、n1及びn2はそれぞれ1以上の整数を表す。)
【0050】
【0051】
【0052】
多官能チオール化合物は1種、あるいは必要に応じ2種以上併用することができる。また、これら多官能チオール化合物を含む場合、その含有量は例えば、エピスルフィド化合物100重量部に対し0.5~20重量部、好ましくは1~10重量部である。
【0053】
<本発明の硬化物及びその製造方法>
本発明の硬化物は上述した硬化性組成物を硬化することによって得られる。硬化方法として例えば、本発明の硬化性組成物に光を照射する方法、及び/又は加熱する方法が挙げられるが、光を照射する方法が好ましい。
【0054】
本発明の硬化性組成物を紫外線照射により硬化させる場合には、通常、積算照射量(積算光量)10~10000mJ/cm2、好ましくは10~8000mJ/cm2の紫外線を照射することにより硬化させることができる。出力波長は、波長400nm以下に発光分布を有する紫外線が好ましい。
【0055】
紫外線照射に使用する紫外線源としては、256~365nm付近の波長を出力できるものであれば特に限定されず、例えば、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、ハイパワーメタルハライドランプ、キセノンランプ、LED等、各種公知のものを使用できる。特に本発明の硬化性組成物は、汎用LED光源で発せられるI線(365nm)を用いても硬化させることが可能であることであることから、LEDが好ましい。
【0056】
本発明の硬化性組成物は、紫外線照射後、室温(例えば25℃)でも重合反応(硬化)が進行し、充分硬化した硬化物が得られる。なお、光照射後、加熱しても同様に硬化物を得ることが可能であるので、必要に応じ加熱してもよい。
【0057】
特に本発明の硬化性組成物は光照射後、速やかに硬化するのではなく、室温で徐々に重合反応が進行するため、特に本発明の硬化性組成物は被着体の接着位置が調整可能な接着剤組成物として好適に使用することができる。前記接着剤組成物は光照射後、通常5分程度は硬化があまり進行しない為、位置合わせが可能であり、その後1時間程度室温で静置することにより充分な接着強度を示し得る。
【0058】
本発明の硬化性組成物及び該組成物を硬化してなる硬化物は、前述した接着剤の他、例えば、カラーフィルター、有機EL等の光取出し層および光取出しフィルム、ディスプレイ基板、フレキシブルディスプレイ基板、フレキシブルディスプレイ用フィルム、半導体装置、電子部品、層間絶縁膜、配線被覆膜、光回路、光回路部品、反射防止膜、ホログラム、光学部材又は建築材料の構成部材として用いることができる。
【実施例0059】
以下、実施例等を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
【0060】
(合成例1)化合物(1-1)の合成例
200mLナスフラスコに、2-(9-オキソキサンテン-2-イル)プロピオン酸3.46mmоl(0.929g)を入れ、超脱水アセトンで溶解させた。その後、撹拌している状態で、PP製使い捨て注射器を用いてフォスファゼン化合物(P-10)2.08mmоl(1.04mL)を加え、室温(25℃)で15分間撹拌した後、アセトンを減圧留去して下記式(1-1)で表される化合物を得た。
【0061】
(合成例2)化合物(1-2)の合成例
フォスファゼン化合物を(P-10)から(P-11)に変更する以外は合成例1と同様に実施することにより、下記式(1-2)で表される化合物を製造した。
【0062】
(合成例3)化合物(b-1)の合成例
2-(9-オキソキサンテン-2-イル)プロピオン酸を2-(3-ベンゾイルフェニル)プロピオン酸に、フォスファゼン化合物を1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセンに変更する以外は合成例1と同様に実施することにより、下記式(b-1)で表される化合物を製造した。
【0063】
(合成例4)化合物(b-2)の合成例
1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセンの代わりに1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エンを用いる以外は合成例3と同様に実施することにより、下記式(b-2)で表される化合物を製造した。
【0064】
(合成例5)化合物(b-3)の合成例
2-(9-オキソキサンテン-2-イル)プロピオン酸を2-(3-ベンゾイルフェニル)プロピオン酸に変更する以外は合成例2と同様に実施することにより、下記式(b-3)で表される化合物を製造した。
【0065】
【0066】
【0067】
<硬化性樹脂組成物の調製>
超脱水アセトン、及び表1に示す各成分(重量部)をフラスコにて混合し、混合後、減圧下、ロータリーエバポレーターを用いてアセトンを留去することにより硬化性組成物を調製した。なお、表1~表3中の各成分の略称は下記の通りである。
【0068】
(A)成分:エピスルフィド化合物
a1:水素化(水添)ビスフェノールA型エピスルフィド樹脂(商品名:TBIS-AHSP、田岡化学工業株式会社、エピスルフィド当量:220g/eq)
【0069】
(B)成分:光塩基発生剤(上記式(1-1)及び(1-2)で表される化合物、並びに式(b-1)~(b-3)で表される化合物)
【0070】
(C)成分:多官能チオール化合物
c1:3,6-ジオキサ-1,8-オクタンジチオール(DODT、東京化成工業株式会社製、チオール官能基当量:93g/eq)
【0071】
<光硬化性の評価>
下記表1記載の硬化性組成物を、シリコン基板上にバーコーターにより厚み1~2μm塗布し、波長365nmのLEDランプ(照度65mW/cm2)を積算光量が500mJ/cm2になるまで照射した。25℃で24時間静置後、硬化性組成物が硬化していたものを「光硬化性:〇」、硬化せず液状であったものを「光硬化性:×」と評価した。結果を表1に示す。
【0072】
【0073】
<接着性評価(銅板)>
下記表2に示す各成分(重量部)を用いて上記硬化性樹脂組成物の調製例と同様に硬化性組成物を調製した後、調製した硬化性組成物を2枚の被着体(銅板)の一方に塗布し、波長365nmのLEDランプ(照度65mW/cm2)を用い、積算光量が表2に示す値となるまで紫外線を照射した。照射後、光硬化性樹脂組成物を塗布していない被着体と貼り合わせ、25℃で24時間静置することにより試験片を作成した。作成した試験片を25℃の室内で、JIS K 6850における引張剪断接着強さの測定方法に準拠して、銅-銅引張剪断接着強さを測定した。結果を表2に示す。
【0074】
【0075】
<接着性評価2(他の被着体)>
表3に示す各成分(重量部)を用いて上記硬化性樹脂組成物の調製例と同様に硬化性組成物を調製した後、調製した硬化性組成物を2枚の被着体(アルミ板及びポリカーボネート板)の一方に塗布し、波長365nmのLEDランプ(照度65mW/cm2)を用い、積算光量が表3に示す値となるまで紫外線を照射した。照射後、光硬化性樹脂組成物を塗布していない被着体と貼り合わせ、25℃で24時間静置することにより試験片を作成した。作成した試験片を25℃の室内で、JIS K 6850における引張剪断接着強さの測定方法に準拠して、アルミ-アルミ及びポリカーボネート-ポリカーボネート引張剪断接着強さを測定した。結果を表3に示す。
【0076】