(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115582
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】演算増幅器
(51)【国際特許分類】
H03F 3/45 20060101AFI20240820BHJP
【FI】
H03F3/45 220
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021264
(22)【出願日】2023-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099818
【弁理士】
【氏名又は名称】安孫子 勉
(72)【発明者】
【氏名】徳永 光紀
(72)【発明者】
【氏名】彌永 大児
(72)【発明者】
【氏名】小川 正訓
【テーマコード(参考)】
5J500
【Fターム(参考)】
5J500AA01
5J500AA12
5J500AA47
5J500AC35
5J500AC54
5J500AF12
5J500AF15
5J500AF17
5J500AH02
5J500AH25
5J500AH29
5J500AK02
5J500AK05
5J500AK47
5J500AM01
5J500AM06
5J500AM08
5J500AM13
5J500AM21
5J500AT01
5J500AT03
5J500DP01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ゲインピーク(利得戻り)を生ずることなく高い回路利得を確保しつつ、周波数特性の安定性を維持可能とする演算増幅器を提供する。
【解決手段】入力信号を増幅する前段アンプ101と、前段アンプ101の出力信号を増幅出力する出力回路102とを備える演算増幅器において、出力回路102は、第1のトランジスタ11~第3のトランジスタ13がダーリントン接続され、第1のトランジスタ11のベースと、第3のトランジスタ13のコレクタとの間には第1の位相補償回路30が設けられ、第1のトランジスタ11のベースと、第3のトランジスタ13のベースとの間には第2の位相補償回路40が設けられて、位相補償がなされる。このため、周波数特性に影響する2つのパラメータである位相余裕及び利得余裕の双方をバランス良く実現可能となっている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号を増幅する前段アンプと、前記前段アンプの出力信号を増幅出力する出力回路とを具備してなる演算増幅器であって、
前記出力回路は、3つのトランジスタである第1乃至第3のトランジスタがダーリントン接続されて構成され、
前記ダーリントン接続の入力段となる前記第1のトランジスタのベースと、前記ダーリントン接続の出力段となる前記第3のトランジスタのコレクタとの間に、第1の位相補償回路が、
前記ダーリントン接続の入力段となる前記第1のトランジスタのベースと、前記ダーリントン接続の出力段となる前記第3のトランジスタのベースとの間に、第2の位相補償回路が、それぞれ設けられると共に、前記第2のトランジスタのエミッタと前記第3のトランジスタのベースとの間に段間抵抗器が設けられ、
前記第1の位相補償回路は、前記第1のトランジスタのベース側から第1の位相補償用のコンデンサと第1の位相補償用の抵抗器とが直列接続されて構成され、
前記第2の位相補償回路は、前記第1のトランジスタのベースと前記第3のトランジスタのベースとの間に、第2の位相補償用のコンデンサが直列接続されてなることを特徴とする演算増幅器。
【請求項2】
前記第2の位相補償回路の前記第2の位相補償用のコンデンサと前記第3のトランジスタのベースとの間に、第2の位相補償用の抵抗器を直列接続してなることを特徴とする請求項1記載の演算増幅器。
【請求項3】
前記第2の位相補償用のコンデンサは、前記第1の位相補償用のコンデンサの容量値以上の容量値に設定されることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の演算増幅器。
【請求項4】
前記第2の位相補償用の抵抗器は、前記段間抵抗器の抵抗値以上の抵抗値に設定されることを特徴とする請求項2記載の演算増幅器。
【請求項5】
前記第2の位相補償用の抵抗器は、前記段間抵抗器の抵抗値以上の抵抗値に設定されることを特徴とする請求項3記載の演算増幅器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、演算増幅器に係り、特に、利得余裕と位相余裕の適切な均衡の確保を図ったものに関する。
【背景技術】
【0002】
演算増幅器の電気的特性において、オープンループ利得(DC電圧利得)は、高利得であることが求められることが一般的である。
演算増幅器の基本的な構成例としては、例えば、非特許文献1等に開示されたものなどが良く知られているところである。
図4には、非特許文献1に開示された演算増幅器の回路構成例が示されており、以下、同図を参照しつつ、この従来の演算増幅器について説明する。
この演算増幅器は、前段アンプ101Xと後段アンプとしての出力回路102Xとに大別されて構成されたものとなっている。
【0003】
この演算増幅器において、特に、出力回路は、その電流能力向上のため、ダーリントン接続された2つのトランジスタQ1,Q2により構成されている。
また、この演算増幅器においては、第1のトランジスタQ1のベースと第2のトランジスタQ2のコレクタとの間には、コンデンサC1と抵抗器R1の直列接続により構成された第1の位相補償回路30Xが設けられている。
さらに、第1のトランジスタQ1のエミッタと第2のトランジスタQ2のベースとの間には、第2の位相補償抵抗器R0が、第1のトランジスタQ1のベースと第2のトランジスタQ2のベースとの間には、第2の位相補償コンデンサC0が、それぞれ設けられている。
【0004】
このようなダーリントン型の出力回路構成において、第2の位相補償抵抗器R0の抵抗値、第2の位相補償コンデンサC0の容量値を、
図5に示されたように共に零とした構成で出力電流を流した場合、周波数特性の安定性を阻害するピーキングが発生する。
このピーキングの発生について、
図7に示された位相・利得特性線図を参照しつつ、以下に説明する。
【0005】
最初に、
図7において、横軸は入力信号の周波数変化を示し、
図7の紙面右側の縦軸は位相変化を、
図7の紙面左側の縦軸は利得変化を、それぞれ示している。
同図において、符号p1が付された実線の特性線は、
図4の構成において、第2の位相補償抵抗器R0の抵抗値、第2の位相補償コンデンサC0の容量値を、零以外の適宜な値に設定し、位相補償によるピーキングの抑制を施した場合における入力信号の周波数変化に対する位相変化を表した周波数・位相特性線である。また、
図7において、符号p2が付された実線の特性線は、上述の符号p1が付された特性線と同様に、第2の位相補償抵抗器R0の抵抗値、第2の位相補償コンデンサC0の容量値を、零以外の適宜な値に設定し、位相補償によるピーキングの抑制を施した場合における入力信号の周波数変化に対する利得変化を表した周波数・利得特性線である。
【0006】
これに対して、先に述べたように、第2の位相補償抵抗器R0の抵抗値、第2の位相補償コンデンサC0の容量値を、共に零とした場合の位相特性及び利得特性は、上述の符号p1が付された位相特性線や、符号p2が付された利得特性線と重複する箇所を有しながらも、それぞれ点線で示されたように、実線の特性線と乖離する箇所が現れてピーキングの発生が確認できるものとなっている。
【0007】
ところが、上述した第2の位相補償抵抗器R0及び第2の位相補償コンデンサC0を用いた位相補償を施した場合、これにより周波数特性の安定性の改善は果たせるが、
図7に示されたようにオープンループ利得(DC電圧利得)は80dB程度となり、通常、演算増幅器に求められる規格を十分に満たせない可能性が生ずる。
【0008】
そこで、上述の問題の対応策として、
図6に示されたように、出力回路を3つのトランジスタQ1~Q3を用いたダーリントン接続で構成することが考えられる。
かかる構成において、第1の位相補償回路30Xは、第1のトランジスタQ1のベースと第3のトランジスタQ3のコレクタとの間に設けられている。
また、第2のトランジスタQ2のエミッタと第3のトランジスタQ3のベースとの間には、第2の位相補償抵抗器R3が、第2のトランジスタQ2のベースと第3のトランジスタQ3のベースとの間には、第2の位相補償コンデンサC2が、それぞれ設けられている。
【0009】
かかる構成の演算増幅器においては、利得は、各々のトランジスタQ1~Q3の電流増幅率(β)の積に比例するため、β0≒β1・β2・β3となり、
図8に示された周波数・利得変化特性線図から確認できるように、オープンループ利得(DC電圧利得)は120dB以上を実現することができる。
なお、
図8は、
図6に示された構成の演算増幅器における
図7と同様の周波数変化に対する位相・利得変化特性線図であり、縦軸、横軸の各々は
図7の場合と同様であるので、再度の説明は省略する。
同図において、符号p3が付された実線の特性線は、入力信号の周波数変化に対する位相変化を表した周波数・位相特性線であり、符号p4が付された実線の特性線は、入力信号の周波数変化に対する利得変化を表した周波数・利得特性線である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Johan H.Huijsing著、Kluwer Academic Publishers社、”OPERATIONAL-AMPLIFIERS and Design”
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上述のように出力回路を3つのトランジスタによるダーリントン接続で構成することで所望のオープンループ利得を確保することはできるものの、寄生容量の影響で周波数特性の安定性を阻害するピーキング(利得戻り)が発生するという問題が生ずる。
【0012】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたもので、ゲインピーク(利得戻り)を生ずることなく高い回路利得を確保しつつ、周波数特性の安定性を維持することができる演算増幅器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記本発明の目的を達成するため、本発明に係る演算増幅器は、
入力信号を増幅する前段アンプと、前記前段アンプの出力信号を増幅出力する出力回路とを具備してなる演算増幅器であって、
前記出力回路は、3つのトランジスタである第1乃至第3のトランジスタがダーリントン接続されて構成され、
前記ダーリントン接続の入力段となる前記第1のトランジスタのベースと、前記ダーリントン接続の出力段となる前記第3のトランジスタのコレクタとの間に、第1の位相補償回路が、
前記ダーリントン接続の入力段となる前記第1のトランジスタのベースと、前記ダーリントン接続の出力段となる前記第3のトランジスタのベースとの間に、第2の位相補償回路が、それぞれ設けられると共に、前記第2のトランジスタのエミッタと前記第3のトランジスタのベースとの間に段間抵抗器が設けられ、
前記第1の位相補償回路は、前記第1のトランジスタのベース側から第1の位相補償用のコンデンサと第1の位相補償用の抵抗器とが直列接続されて構成され、
前記第2の位相補償回路は、前記第1のトランジスタのベースと前記第3のトランジスタのベースとの間に、第2の位相補償用のコンデンサが直列接続されてなるものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、第1の位相補償回路と第2の位相補償回路とを設け、2つの回路の回路定数の適宜な選定によって、周波数特性に影響する位相余裕と利得余裕の2つのパラメータを適切な均衡状態とすることができ、ゲインピーク(利得戻り)を生ずることなく高い回路利得を確保しつつ、安定な周波数特性を維持可能とする演算増幅器を提供することができるという効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施の形態における演算増幅器の第1の回路構成例を示す回路図である。
【
図2】本発明の実施の形態における演算増幅器の第2の回路構成例を示す回路図である。
【
図3】本発明の実施の形態における演算増幅器の周波数変化に対する利得及び位相変化特性を示す特性線図である。
【
図4】従来の演算増幅器の一回路構成例を示す回路図である。
【
図5】
図4に示された従来の演算増幅器において、第2の位相補償抵抗器R0の抵抗値及び第2の位相補償コンデンサC0の容量値を、共に零とした場合の回路構成例を示す回路図である。
【
図6】利得確保を図った従来の演算増幅器の一回路構成例を示す回路図である。
【
図7】
図4及び
図5に示された演算増幅器の周波数変化に対する利得及び位相変化特性を示す特性線図である。
【
図8】
図6に示された演算増幅器の周波数変化に対する利得及び位相変化特性を示す特性線図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、
図1乃至
図3を参照しつつ説明する。
なお、以下に説明する部材、配置等は本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨の範囲内で種々改変することができるものである。
最初に、第1の回路構成例について、
図1を参照しつつ説明する。
本発明の実施の形態における演算増幅器は、前段アンプ101と、出力回路102とに大別されて構成されたものとなっている。
【0017】
前段アンプ101は、入力信号が印加される反転入力端子(
図1においては「INM」と表記)1と、非反転入力端子(
図1においては「INP」と表記)2とを有している。また、前段アンプ101は、正電源電圧端子3を介して正電源電圧VCCが印加される一方、負電源電圧端子4を介して負電源電圧VEEが印加されるようになっている。
そして、前段アンプ101の出力端子は、次述する出力回路102の入力段に接続されている。
【0018】
後段アンプとしての出力回路102は、第1乃至第3のトランジスタ(
図1においては、それぞれ「Q1」、「Q2」、「Q3」と表記)11~13がダーリントン接続されると共に、第1及び第2の位相補償回路30,40が設けられた構成となっている。かかる出力回路102は、前段アンプ101の出力信号を増幅出力するものとなっている。
この第1の回路構成例においては、第1乃至第3のトランジスタ11~13には、PNP型のバイポーラトランジスタが用いられている。
第1のトランジスタ11は、この出力回路102の入力段を構成し、そのベースには、上述した前段アンプ101の出力端子が接続されて、前段アンプ101の出力信号が印加されるようになっている。
【0019】
また、第1のトランジスタ11のエミッタと、正電源電圧端子3との間には、第1の定電流源21が接続される一方、コレクタは、負電源電圧端子4に接続されている。
さらに、第1のトランジスタ11のエミッタは、第2のトランジスタ12のベースに接続されている。
第2のトランジスタ12のエミッタと、正電源電圧端子3との間には、第2の定電流源22が接続される一方、コレクタは、負電源電圧端子4に接続されている。
【0020】
また、第2のトランジスタ12のエミッタは、段間抵抗器(
図1においては「Reb」と表記)25を介して第3のトランジスタ13のベースに接続されている。
出力回路102の出力段となる第3のトランジスタ13のエミッタは、正電源電圧端子3に接続される一方、コレクタには、出力端子5が接続されると共に、このコレクタと負電源電圧端子4との間には、第3の定電流源23が接続されている。
【0021】
また、第1のトランジスタ11のベースと第3のトランジスタ13のコレクタとの間には、第1の位相補償回路30が、第1のトランジスタ11のベースと第3のトランジスタ13のベースとの間には、第2の位相補償回路40が、それぞれ設けられている。
すなわち、まず、第1の位相補償回路30は、第1の位相補償用のコンデンサとしての第1のコンデンサ(
図1においては「C1」と表記)31と、第1の位相補償用の抵抗器としての第1の抵抗器(
図1においては「R1」と表記)32の直列接続回路により構成されている。
この第1の回路構成例においては、第1のコンデンサ31の一端が第1のトランジスタ11のベースに、第1の抵抗器32の一端が第3のトランジスタ13のコレクタに、それぞれ接続されたものとなっている。
【0022】
第2の位相補償回路40は、第2の位相補償用のコンデンサとしての第2のコンデンサ(
図1においては「C2」と表記)41により構成されている。
すなわち、第2のコンデンサ41の一端は、第1のトランジスタ11のベースに接続される一方、第2のコンデンサ41の他端は、第3のトランジスタ13のベースに接続されている。
【0023】
かかる構成において、第1及び第2のコンデンサ31,41の容量値を、それぞれC1、C2、第1の抵抗器32の抵抗値をR1、段間抵抗器25の抵抗値をRebとする。まず、C1は、演算増幅器の利得帯域幅積により設定する。次に、R1は、C1に応じて周波数特性の位相余裕及び利得余裕が適切となるように設定する。また、C2及びRebは、第2のコンデンサ41及び段間抵抗器25で構成されるフィルターにより通過させたい信号の帯域に応じて設定する。
なお、第1の回路構成例においては、C2≧C1の関係を満たすように選定するのが好適である。
このような回路定数の設定により、周波数特性に影響する利得余裕(利得戻り)を抑制すると共に、セカンドポールによる位相のまわりも抑制でき、位相余裕及び利得余裕の双方をバランス良く実現可能となる。
また、上述のような回路定数の設定により、前段アンプ101から出力された高周波信号は、第1及び第2のトランジスタ11,12を介することなく第2のコンデンサ41によりバイパスされて第3のトランジスタ13のベースに入力されることとなる。これによって、第1及び第2のトランジスタ11,12による信号遅延が生じないため、安定した高速動作が確保されることとなる。
【0024】
次に、第2の回路構成例について、
図2を参照しつつ説明する。
なお、
図1に示された第1の回路構成例と同一の構成要素については、 同一の符号を付して、その詳細な説明を省略し、以下、異なる点を中心に説明する。
この第2の回路構成例における演算増幅器は、
図1に示された第1の回路構成例における第2の位相補償回路40と異なる回路構成の第2の位相補償回路40Aが設けられた点が、第1の回路構成例における演算増幅器と異なるもので、他の構成は、基本的に
図1に示された第1の回路構成例と同一である。
【0025】
すなわち、第2の位相補償回路40Aは、第2のコンデンサ41と、第2の位相補償用の抵抗器としての第2の抵抗器(
図2においては「R2」と表記)42の直列接続回路により構成されている。
この第2の回路構成例においては、第2のコンデンサ41の一端が第1のトランジスタ11のベースに、第2の抵抗器42の一端が第3のトランジスタ13のベースに、それぞれ接続されたものとなっている。
【0026】
かかる構成において、第1及び第2のコンデンサ31,41の容量値を、それぞれC1、C2とする。これらは、第1の回路構成例と同様に、C2≧C1の関係を満たすように選定するのが好適である。
また、Rebは、第2のコンデンサ41,第2の抵抗器42及び段間抵抗器25で構成されるフィルターにより、第1の回路構成例と同様に通過させたい信号に応じて設定する。第1の回路構成例に加えて、第2の回路構成例においては、R2≧Rebの関係を満たすように選定するのが好適である。
このような回路定数の設定を行うことにより、第1の回路構成例同様、周波数特性に影響する利得余裕(利得戻り)を抑制すると共に、セカンドポールによる位相のまわりも抑制でき、位相余裕及び利得余裕の双方をバランス良く実現可能となる。
【0027】
また、上述のような回路定数の設定により、前段アンプ101から出力された高周波信号は、第1及び第2のトランジスタ11,12を介することなく第2のコンデンサ41によりバイパスされて第3のトランジスタ13のベースに入力されることとなる。これによって、第1及び第2のトランジスタ11,12による信号遅延が生じないため、安定した高速動作が確保されることとなる。
【0028】
図3には、本発明の実施の形態における演算増幅器の周波数変化に対する位相・利得特性線図が示されており、以下、同図について説明する。
最初に、
図3において、横軸は入力信号の周波数変化を示し、
図3の紙面右側の縦軸は位相変化を、
図3の紙面左側の縦軸は利得変化を、それぞれ示している。
また、同図において、符号aが付された実線の特性線は、入力信号の周波数変化に対する位相変化を表した周波数・位相特性線であり、符号bが付された実線の特性線は、入力信号の周波数変化に対する周波数・利得変化を表した利得特性線である。
【0029】
さらに、
図3において、点線の特性線は、従来回路(
図6参照)における入力信号の周波数変化に対する位相変化を表した周波数・位相特性線と、入力信号の周波数変化に対する利得変化を表した周波数・利得特性線である。
図3によれば、本発明の実施の形態における演算増幅器にあっては、従来回路と異なり、周波数変化に対する位相余裕と利得余裕の均衡のとれた特性が確保されることが確認できる。
【0030】
なお、上述の実施の形態においては、第1乃至第3のトランジスタ11~13として、PNP型トランジスタを用いたが、これに限定される必要はなく、NPN型トランジスタを用いても同様の特性を有する演算増幅器を実現することができる。なお、この場合、当然の事ながら、
図1における電源電圧の位置を基準とすると、第1乃至第3の定電流源21~23や第1及び第2の位相補償回路30,40は、
図1とは上下反転したような配置構成となる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
ゲインピーク(利得戻り)を生ずることなく高い回路利得を確保しつつ、周波数特性の安定性の維持が所望される演算増幅器に適用できる。
【符号の説明】
【0032】
11…第1のトランジスタ
12…第2のトランジスタ
13…第3のトランジスタ
30…第1の位相補償回路
31…第1のコンデンサ
32…第1の抵抗器
40,40A…第2の位相補償回路
41…第2のコンデンサ
42…第2の抵抗器
101…前段アンプ
102…出力回路