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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115586
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】触媒の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/887 20060101AFI20240820BHJP
   B01J 37/04 20060101ALI20240820BHJP
   C07C 51/25 20060101ALI20240820BHJP
   C07C 57/05 20060101ALI20240820BHJP
   C07C 45/35 20060101ALI20240820BHJP
   C07C 47/22 20060101ALI20240820BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20240820BHJP
【FI】
B01J23/887 Z
B01J37/04 102
C07C51/25
C07C57/05
C07C45/35
C07C47/22 A
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021272
(22)【出願日】2023-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 宏透
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA02
4G169AA03
4G169AA08
4G169AA09
4G169BA01B
4G169BA02B
4G169BA03B
4G169BA04A
4G169BA06A
4G169BB06A
4G169BB06B
4G169BB12C
4G169BC02A
4G169BC02C
4G169BC03A
4G169BC03C
4G169BC05A
4G169BC05C
4G169BC06A
4G169BC06C
4G169BC09A
4G169BC09C
4G169BC10A
4G169BC10C
4G169BC12A
4G169BC12C
4G169BC13A
4G169BC13C
4G169BC25A
4G169BC25B
4G169BC25C
4G169BC27A
4G169BC27C
4G169BC35A
4G169BC35C
4G169BC50A
4G169BC50C
4G169BC55A
4G169BC55C
4G169BC59A
4G169BC59B
4G169BC59C
4G169BC60A
4G169BC60C
4G169BC62A
4G169BC62C
4G169BC66A
4G169BC66B
4G169BC66C
4G169BC67A
4G169BC67B
4G169BC67C
4G169BC68A
4G169BC68B
4G169BC68C
4G169BD03A
4G169BD03C
4G169BD07A
4G169BD07C
4G169BD12A
4G169BD12C
4G169BD15A
4G169BD15C
4G169CB07
4G169CB10
4G169CB17
4G169CB72
4G169CB74
4G169DA06
4G169EA04Y
4G169EB18Y
4G169FA01
4G169FA02
4G169FB05
4G169FB30
4G169FC02
4G169FC06
4G169FC10
4H006AA02
4H006AC45
4H006AC46
4H006BA13
4H006BA14
4H006BA19
4H006BA20
4H006BA21
4H006BA30
4H006BA55
4H006BE30
4H006BS10
4H039CA62
4H039CA65
4H039CC40
(57)【要約】
【課題】プロピレン等のオレフィン又はターシャリーブタノールから、アクロレイン又は
メタクロレイン等の不飽和アルデヒド及び、アクリル酸又はメタクリル酸等の不飽和カル
ボン酸を製造する気相接触酸化反応に用いられる触媒として、原料転化率が高く、生成物
収率が優れる触媒を効率よく提供することを目的とする。
【解決手段】複数の触媒活性元素の供給源化合物を水系液体に添加し、溶解又は分散して
調製液とする調液工程を含む、不飽和アルデヒド及び不飽和カルボン酸製造用触媒を製造
する方法であって、該調液工程は、供給源化合物である固体の硝酸塩を、他の供給源化合
物が溶解又は分散した水系液体に添加し、溶解又は分散する過程を含み、該固体の硝酸塩
の添加速度を1分あたり40kg以下とする触媒の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の触媒活性元素の供給源化合物を水系液体に添加し、溶解又は分散して調製液とす
る調液工程を含む、不飽和アルデヒド及び不飽和カルボン酸製造用触媒を製造する方法で
あって、
該調液工程は、供給源化合物である固体の硝酸塩を、他の供給源化合物が溶解又は分散
した水系液体に添加し、溶解又は分散する過程を含みて、該固体の硝酸塩の添加速度を1
分あたり40kg以下とする触媒の製造方法。
【請求項2】
前記固体の硝酸塩の添加量が2kg以上である請求項1に記載の触媒の製造方法。
【請求項3】
前記固体の硝酸塩が硝酸ビスマス、硝酸鉄、硝酸コバルト及び硝酸ニッケルからなる群
より選ばれた少なくとも一つの化合物である、請求項1又は2に記載の触媒の製造方法。
【請求項4】
前記触媒の触媒成分元素が下記式(1)で表される、請求項1又は2に記載の触媒の製
造方法。
Mo12BiFeCoNiSi (1)
(式(1)中、XはNa、K、Rb、Cs及びTiからなる群より選ばれた少なくとも一
種の元素を示し、YはMg、Ca、Sr、Ba、Mn及びZnからなる群より選ばれた少
なくとも一種の元素を示し、ZはF、Cl、B,P、As、W及びNbからなる群より選
ばれた少なくとも一種の元素を示す。a~iはそれぞれの元素の原子比を示し、0.5≦
a≦7、0≦b≦5、0≦c≦10、0≦d≦10、0≦e≦2、0≦f≦5、0≦g≦
5、0≦h≦500の範囲にあり、iは他の元素の酸化状態を満足させる値である。)
【請求項5】
請求項1又は2に記載の触媒の製造方法により製造された触媒の存在下、プロピレンと
酸素含有ガスを含む混合ガスを気相接触酸化するアクロレイン及びアクリル酸の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、プロピレン等のオレフィン又はターシャリーブタノールを気相接触酸化し
、アクロレイン又はメタクロレイン等の不飽和アルデヒド及び、アクリル酸又はメタクリ
ル酸等の不飽和カルボン酸を製造する際に用いられる触媒の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オレフィン又はターシャリーブタノールを気相接触酸化し、アクロレイン又はメタクロ
レイン等の不飽和アルデヒド及び、アクリル酸又はメタクリル酸等の不飽和カルボン酸を
製造する際に用いられる触媒としてモリブデン系触媒が有用であることはよく知られてお
り、工業的にも広く実用化されている。
【0003】
これら各種反応におけるモリブデン系触媒の組成及び製造方法に関する特許文献として
は、特許文献1等が知られている。特許文献1では、触媒原料を温水等により混合してな
る、原料スラリーの調製において、スラリー温度を制御することにより、原料スラリーが
均一となり、触媒組成が均質化されるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-140326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これら従前知られた製造方法では触媒原料が溶解又は分散した後のスラ
リー温度しか制御しておらず、製造された触媒では、原料転化率が不十分であり、収率が
満足いくものではなかった。特に、調液工程により得られる調製液の量が増えるにつれて
原料転化率の低下、収率の低下が顕著であった。
【0006】
そこで、本発明は、プロピレン等のオレフィン又はターシャリーブタノールから、アク
ロレイン又はメタクロレイン等の不飽和アルデヒド及び、アクリル酸又はメタクリル酸等
の不飽和カルボン酸を製造する気相接触酸化反応に用いられる触媒として、原料転化率が
高く、生成物収率が優れる触媒を効率よく提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らが検討を行った結果、複数の触媒活性元素の供給源化合物を水系液体に添加
し、溶解又は分散して調製液とする調液工程を含む、不飽和アルデヒド及び不飽和カルボ
ン酸製造用触媒を製造する方法であって、該調液工程は、供給源化合物である固体の硝酸
塩を、他の供給源化合物が溶解又は分散した水系液体に添加し、溶解又は分散する過程を
含み、該固体の硝酸塩の添加速度を特定範囲とすることにより、前記課題を解決すること
ができることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は以下を要旨とする。
【0008】
[1]複数の触媒活性元素の供給源化合物を水系液体に添加し、溶解又は分散して調製液
とする調液工程を含む、不飽和アルデヒド及び不飽和カルボン酸製造用触媒を製造する方
法であって、該調液工程は、供給源化合物である固体の硝酸塩を、他の供給源化合物が溶
解又は分散した水系液体に添加し、溶解又は分散する過程を含み、該固体の硝酸塩の添加
速度を1分あたり40kg以下とする触媒の製造方法。
[2]前記固体の硝酸塩の添加量が2kg以上である[1]に記載の触媒の製造方法。
[3]前記固体の硝酸塩が硝酸ビスマス、硝酸鉄、硝酸コバルト及び硝酸ニッケルからな
る群より選ばれた少なくとも一つの化合物である、[1]又は[2]に記載の触媒の製造方法
【0009】
[4]前記触媒の触媒成分元素が下記式(1)で表される、[1]乃至[3]のいずれかに記
載の触媒の製造方法。
Mo12BiFeCoNiSi (1)
(式(1)中、XはNa、K、Rb、Cs及びTlからなる群より選ばれた少なくとも一
種の元素を示し、YはMg、Ca、Sr、Ba、Mn及びZnからなる群より選ばれた少
なくとも一種の元素を示し、ZはF、Cl、B,P、As、W及びNbからなる群より選
ばれた少なくとも一種の元素を示す。a~iはそれぞれの元素の原子比を示し、0.5≦
a≦7、0≦b≦5、0≦c≦10、0≦d≦10、0≦e≦2、0≦f≦5、0≦g≦
5、0≦h≦500の範囲にあり、iは他の元素の酸化状態を満足させる値である。)
[5][1]乃至[4]のいずれかに記載の触媒の製造方法により製造された触媒の存在下、
プロピレンと酸素含有ガスを含む混合ガスを気相接触酸化するアクロレイン及びアクリル
酸の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、プロピレン等のオレフィン又はターシャリーブタノールから、アクロ
レイン又はメタクロレイン等の不飽和アルデヒド及び、アクリル酸又はメタクリル酸等の
不飽和カルボン酸を製造する気相接触酸化反応に用いられる、原料転化率が高く、生成物
収率が優れる触媒を効率よく提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る不飽和アルデヒド及び不飽和カルボン酸製造用の触媒(以下「触媒」と称
する場合がある。)の製造方法について詳細に説明する。
触媒は、プロピレン等のオレフィン又はターシャリーブタノールを原料とし、酸素含有
ガスにより気相接触酸化して、アクロレイン又はメタクロレイン等の不飽和アルデヒド及
び、アクリル酸又はメタクリル酸等の不飽和カルボン酸を製造する、不飽和アルデヒド及
び不飽和カルボン酸製造用の触媒である。
【0012】
[触媒の製造方法]
本発明の触媒の製造は、触媒を構成する各成分として、その成分たる元素(以下、「触
媒成分元素」と称する場合がある。)を有する所定の化合物を、触媒の供給源となる化合
物(以下、「供給源化合物」と称する場合がある。)として用い、この触媒成分元素の供
給源化合物を水性液体に溶解又は分散して調製液とすること(調液工程)を含む。
尚、該調製液を乾燥処理して粉体とし(乾燥工程)、次いで、該粉体を成型して触媒前
駆体とし(成型工程)、そして、該触媒前駆体を焼成すること(焼成工程)をさらに含み
、製造することができる。
【0013】
[調液工程]
前記調液工程は、前記触媒成分元素の供給源化合物を水性液体に溶解又は分散して調製
液を得る工程である。
前記水性液体とは、水及び水と相溶性を有する有機溶媒を含む液体であり、さらに無機
酸、無機塩基、無機塩が溶解していてもよい。水性液体中の水の含有量は好ましくは40
質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは100質量%である。水
と相溶性を有する有機溶媒とはメタノール、エタノール、グリセリン、(ポリ)アミン類
など、又はこれらの混合物が挙げられる。
【0014】
本発明の触媒製造における調液工程は、複数の触媒活性元素の供給源化合物を水系液体
に添加し、溶解又は分散して調製液とする工程であり、供給源化合物である固体の硝酸塩
を、他の供給源化合物が溶解又は分散した水系液体に添加し、溶解又は分散する過程を含
み、該固体の硝酸塩の添加速度を1分あたり40kg以下とする。該添加速度は1分あた
り30kg以下が好ましく、25kg以下がより好ましく、20kg以下がさらに好まし
い。該添加速度の1分あたりの下限量は特に制限はないが、1kg以上が好ましく、2k
g以上がより好ましく、3kg以上がさらに好ましい。前記添加速度で固体の硝酸塩を添
加することにより、硝酸塩の形態で添加された触媒成分元素と、水性液体中に存在する他
の触媒成分元素との分散性が促進され、製造された触媒は原料転化率が高く、生成物収率
が優れた触媒とすることができる。
該水系液体の重量は好ましくは10kg以上、より好ましくは30kg以上、さらに好
ましくは50kg以上である。又該水系液体の重量は好ましくは5000kg以下、より
好ましくは1000kg以下、さらに好ましくは500kg以下である。前記範囲内とす
ることにより、硝酸塩の形態で添加された触媒成分元素と、水性液体中に存在する他の触
媒成分元素との分散性が促進され、製造された触媒は原料転化率が高く、生成物収率が優
れた触媒とすることができる。
【0015】
前記固体の硝酸塩の添加速度を制御する必要性は以下と考えている。一般的に、固体の
硝酸塩は水系液体への溶解又は分散は吸熱を伴うことが知られている。固体の硝酸塩の添
加速度が大きい、すなわち1分あたりの添加量が大きい場合、水系液体内部において、未
溶解又は未分散の硝酸塩が水系液体内で多量に存在することとなる。すると、未溶解又は
未分散の硝酸塩近傍の液体の液温は、他の部分の液体よりも温度が低くなり、且つ硝酸塩
濃度が非常に高い液体となる可能性がある。すなわち、温度及び濃度の2重の不均一化が
生じる可能性がある。本発明はそのような局所的な不均一化を抑制し、水性液体内部に未
溶解又は未分散で存在する硝酸塩を少なくすることにより、硝酸塩の形態で添加された触
媒成分元素と、水性液体中に存在する他の触媒成分元素との分散性が促進され、製造され
た触媒は原料転化率が高く、生成物収率が優れた触媒とすることができる。
【0016】
尚、該固体の硝酸塩の水系液体への添加は、所望の硝酸塩全量を連続的に添加しても間
欠的に添加しても構わない。いずれの場合でも、添加速度は、時間当たりの添加量の増減
に関わりなく、全添加量を添加時間で割った値である。又、該固体の硝酸塩が複数箇所に
分かれて水系液体に添加されていても添加量は各箇所で添加した総量で算出する。
前記した通り、固体の硝酸塩の水系液体への溶解は吸熱を伴うことから、溶解して調製
液とするための装置(以下「調液装置」と称する場合がある。)として、吸熱を補うため
の加熱を効率的に行える付帯設備を具備することが好ましい。
【0017】
本発明の触媒の製造方法は、調液工程においては、他の供給源化合物が溶解又は分散し
た水系液体に添加する前記固体の硝酸塩の量は2kg以上であることが好ましく、5kg
以上であることがより好ましく、10kg以上であることがさらに好ましい。上限は特に
制限はないが、1000kgであることが好ましく、500kgであることがより好まし
い。前記範囲内であることにより、一度に大量の調製液とすることができ、原料転化率が
高く、生成物収率が優れる触媒を効率よく提供することができる。
【0018】
[供給源化合物]
触媒は、触媒成分元素としてモリブデン(Mo)、ビスマス(Bi)を含有することが
好ましく、それ以外の触媒成分元素として、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(
Ni)を含有することがより好ましく、さらに、ナトリウム(Na),カリウム(K)、
ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)、チタン(Ti)、マグネシウム(Mg)、カル
シウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、マンガン(Mn)、亜鉛
(Zn)、フッ素(F)、塩素(Cl)、ホウ素(B)、リン(P)、ヒ素(As)、タ
ングステン(W)、ニオブ(Nb)、ケイ素(Si)等の成分を1種又は複数種含有して
もよい。
【0019】
前記モリブデン(Mo)の供給源化合物としては、パラモリブデン酸アンモニウム、三
酸化モリブデン、モリブデン酸、リンモリブデン酸アンモニウム、リンモリブデン酸等が
挙げられる。
【0020】
前記ビスマス(Bi)の供給源化合物としては、塩化ビスマス、硝酸ビスマス、酸化ビ
スマス、次炭酸ビスマス等が挙げられる。ビスマスの添加量は、触媒成分元素の原子数比
として、モリブデン原子を12としたとき、0.5以上7以下となるように添加すること
が好ましく、より好ましくは0.5以上5以下、更に好ましくは0.5以上4以下、特に
好ましくは0.5以上3以下となるように添加する。この範囲内であることにより原料転
化率が高く、高収率で不飽和アルデヒド及び不飽和カルボン酸を製造することができる触
媒とすることができる。
【0021】
前記鉄(Fe)の供給源化合物としては、硝酸第二鉄、硫酸第二鉄、塩化第二鉄、酢酸
第二鉄等が挙げられる。鉄の添加量は、触媒成分元素の原子数比として、モリブデン原子
を12としたとき、0以上5以下となるように添加することが好ましく、より好ましくは
0.1以上4以下、更に好ましくは0.2以上3以下、特に好ましくは0.3以上3以下
となるように添加する。この範囲内であることにより原料転化率が高く、高収率で不飽和
アルデヒド及び不飽和カルボン酸を製造することができる触媒とすることができる。
【0022】
前記コバルト(Co)の供給源化合物としては、硝酸コバルト、硫酸コバルト、塩化コ
バルト、炭酸コバルト、酢酸コバルト等が挙げられる。コバルトの添加量は、触媒成分元
素の原子数比として、モリブデン原子を12としたとき、0以上10以下となるように添
加することが好ましく、より好ましくは0.5以上9以下、更に好ましくは1以上8以下
、特に好ましくは2以上7以下となるように添加する。この範囲内であることにより原料
転化率が高く、高収率で不飽和アルデヒド及び不飽和カルボン酸を製造することができる
触媒とすることができる。
【0023】
前記ニッケル(Ni)の供給源化合物としては、硝酸ニッケル、硫酸ニッケル、塩化ニ
ッケル、炭酸ニッケル、酢酸ニッケル等が挙げられる。ニッケルの添加量は、触媒成分元
素の原子数比として、モリブデン原子を12としたとき、0以上10以下となるように添
加することが好ましく、より好ましくは0.5以上9以下、更に好ましくは1以上8以下
、特に好ましくは2以上7以下となるように添加する。この範囲内であることにより原料
転化率が高く、高収率で不飽和アルデヒド及び不飽和カルボン酸を製造することができる
触媒とすることができる。
【0024】
前記ナトリウム(Na)の供給源化合物としては、塩化ナトリウム、炭酸ナトリウム、
硝酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム等が挙げられる。
前記カリウム(K)の供給源化合物としては、硝酸カリウム、硫酸カリウム、塩化カリウ
ム、炭酸カリウム、酢酸カリウム等が挙げられる。前記ルビジウム(Rb)の供給源化合
物としては、硝酸ルビジウム、硫酸ルビジウム、塩化ルビジウム、炭酸ルビジウム、酢酸
ルビジウム等を挙げられる。前記セシウム(Cs)の供給源化合物としては、硝酸セシウ
ム、硫酸セシウム、塩化セシウム、炭酸セシウム、酢酸セシウム等を挙げられる。前記チ
タン(Ti)の供給源化合物としては、酸化チタン、塩化チタン等が挙げられる。
【0025】
ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム及びチタンから選ばれる少なくとも一種
の元素の添加量は、モリブデンが12のとき、0以上2以下となるように添加することが
好ましく、より好ましくは0.01以上2以下、更に好ましくは0.02以上2以下とな
るように添加する。この範囲内であることにより原料転化率が高く、高収率で不飽和アル
デヒド及び不飽和カルボン酸を製造することができる触媒とすることができる。
【0026】
前記マグネシウム(Mg)の供給源化合物としては、酸化マグネシウム、炭酸マグネシ
ウム、または硫酸マグネシウム等が挙げられる。前記カルシウム(Ca)の供給源化合物
としては、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、または水酸化カルシウム等が挙げられる。
前記ストロンチウム(Sr)の供給源化合物としては、酸化ストロンチウム、炭酸ストロ
ンチウム、水酸化ストロンチウム、または硝酸ストロンチウム等が挙げられる。前記バリ
ウム(Ba)の供給源化合物としては、酸化バリウム、炭酸バリウム、硝酸バリウム、酢
酸バリウム、または硫酸バリウム等が挙げられる。前記マンガン(Mn)の供給源化合物
としては、二酸化マンガン、炭酸マンガン等が挙げられる。前記亜鉛(Zn)の供給源化
合物としては、酸化亜鉛、炭酸亜鉛、水酸化亜鉛、または硝酸亜鉛等が挙げられる。
【0027】
マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、マンガン及び亜鉛からなる群
より選ばれる少なくとも一種の元素の添加量は、触媒成分元素の原子数比として、モリブ
デンが12のとき、0以上5以下となるように添加することが好ましく、より好ましくは
0以上4以下、更に好ましくは0以上3以下となるように添加する。この範囲内であるこ
とにより原料転化率が高く、高収率で不飽和アルデヒド及び不飽和カルボン酸を製造する
ことができる触媒とすることができる。
【0028】
前記フッ素(F)の供給源化合物としては、フッ化カルシウム、フッ化ナトリウム等が
挙げられる。前記塩素(Cl)の供給源化合物としては、塩化ナトリウム、塩化アンモニ
ウム等が挙げられる。前記ホウ素(B)の供給源化合物としては、ホウ砂、ホウ酸アンモ
ニウム及びホウ酸等が挙げられる。前記リン(P)の供給源化合物としては、リンモリブ
デン酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、リン酸及び五酸化リン等が挙げられる。ヒ素
(As)の供給源化合物としては、ジアルセノ十八モリブデン酸アンモニウム及びジアル
セノ十八タングステン酸アンモニウム等が挙げられる。前記タングステン(W)の供給源
化合物としては、タングステン酸、またはその塩等が挙げられる。前記ニオブ(Nb)の
供給源化合物としては、水酸化ニオブ等が挙げられる。
【0029】
フッ素、塩素、ホウ素、リン、ヒ素、タングステン及びニオブから選ばれる少なくとも
一種の元素の添加量は、モリブデンが12のとき、0以上5以下となるように添加するこ
とが好ましく、より好ましくは0以上4以下、更に好ましくは0以上3以下となるように
添加する。この範囲内であることにより原料転化率が高く、高収率で不飽和アルデヒド及
び不飽和カルボン酸を製造することができる触媒とすることができる。
【0030】
前記ケイ素(Si)の供給源化合物としては、シリカ、粒状シリカ、コロイダルシリカ
、ヒュームドシリカ等が挙げられる。ケイ素の添加量は、触媒成分元素の原子数比として
、モリブデン原子を12としたとき、0以上500以下となるように添加することが好ま
しく、より好ましくは0以上400以下、更に好ましくは0以上300以下となるように
添加する。この範囲内であることにより原料転化率が高く、高収率で不飽和アルデヒド及
び不飽和カルボン酸を製造することができる触媒とすることができる。
【0031】
本発明の触媒の製造方法において、前記供給源化合物は固体の硝酸塩を含み、固体の硝
酸塩としては硝酸ビスマス、硝酸鉄、硝酸コバルト及び硝酸ニッケルからなる群より選ば
れた少なくとも一つの化合物であることが好ましく、硝酸鉄、硝酸コバルト及び硝酸ニッ
ケルからなる群より選ばれた少なくとも一つの化合物であることがより好ましい。前記固
体の硝酸塩を使用することにより、原料転化率が高く、高収率で不飽和アルデヒド及び不
飽和カルボン酸を製造することができる触媒とすることができる。
【0032】
[供給源化合物の添加方法]
前記の調液工程において、各供給源化合物の全てを1つの調製液としてもよく、各供給
源化合物をそれぞれ単独で又はいくつかのグループに分けて複数の調製液とし、該複数の
調製液を一度に、若しくは順番に混合して1つの調製液としてもよく、また、1つ若しく
は複数の調製液を乾燥、さらには焼成して固形物とし、該固形物を残りの供給源化合物に
よる調製液に添加し、新たな調製液としてもよい。
【0033】
[乾燥工程]
得られた調製液は、乾燥工程にて乾燥処理することにより、粉体が得られる。この乾燥
工程における乾燥処理方法については特に限定はなく、例えば、通常のスプレードライヤ
ー、スラリードライヤー、ドラムドライヤー等を用いて粉体を得てもよい。尚、粉体は適
宜、粉砕処理を施してもよい。
【0034】
前記乾燥処理で得られた粉体は、必要に応じて、さらに加熱処理をしてもよい。この加
熱処理は、空気中で好ましくは200℃~470℃、より好ましくは250℃~450℃
の温度域で短時間に行われる処理である。その方法については特に限定はなく、例えば、
通常の箱型加熱炉、トンネル型加熱炉等を用いて粉体を固定した状態で加熱してもよいし
、また、ロータリーキルン等を用いて粉体を流動させながら加熱してもよい。
尚、該乾燥工程により得られた粉体はモリブデン及びビスマスを含有することが好まし
く、なかでも、下記の一般式(1)で表される粉体であることがより好ましい。
【0035】
Mo12BiFeCoNiSi (1)
(式(1)中、XはNa、K、Rb、Cs及びTiからなる群より選ばれた少なくとも一
種の元素を示し、YはMg、Ca、Sr、Ba、Mn及びZnからなる群より選ばれた少
なくとも一種の元素を示し、ZはF、Cl、B,P、As、W及びNbからなる群より選
ばれた少なくとも一種の元素を示す。a~iはそれぞれの元素の原子比を示し、0.5≦
a≦7、0≦b≦5、0≦c≦10、0≦d≦10、0≦e≦2、0≦f≦5、0≦g≦
5、0≦h≦500の範囲にあり、iは他の元素の酸化状態を満足させる値である。)
【0036】
[成型工程]
成型工程は前記の乾燥工程で得られた粉体を成型し、触媒前駆体とする工程である。成
型方法は、従前知られるいかなる方法でも構わないが、例えば、以下2通りの方法がある
。一つが不飽和アルデヒド及び不飽和カルボン酸製造反応には不活性である担体を流動さ
せながら、該粉体を流動している担体に供給し、担体の表面に該粉体を担持させ、造粒し
て成型し触媒前駆体とする方法(以下「転動造粒法」と称する場合がある。)。もう一つ
が該粉体を型枠に入れ機械的に圧力をかけて造粒して成型し、触媒前駆体とする方法(以
下「打錠成型法」と称する場合がある。)であるが、転動造粒法が好ましい。
【0037】
転動造粒法に用いる担体は、シリカ、炭化珪素、アルミナ、ムライト、アランダム等の
長軸径が好ましくは2.5mm~10mm、更に好ましくは2.5mm~6mmの球形担
体等が挙げられる。これらのうち、担体の気孔率は、好ましくは20%~60%、より好
ましくは30%~57%、更に好ましくは40%~55%である。また、担体の吸水率は
、好ましくは10%~60%、より好ましくは12%~50%、更に好ましくは15%~
40%である。担体の気孔率及び吸水率を前記範囲内とすることで、触媒成分元素を含む
粉体を容易に担体に担持することができる。
【0038】
前記転動造粒法とは、例えば固定容器内の底部に、平らな又は凹凸のある円盤を有する
造粒機中で、円盤を高速で回転することにより、容器内の担体を自転運動と公転運動の繰
り返しにより激しく撹拌させ、ここに触媒成分元素を含む粉体、及び添加物を添加するこ
とにより該粉体を担体に担持する方法である。添加物の添加方法としては、(1)前記触
媒成分元素を含む粉体等と添加物とを混合して均一混合物を準備し、該均一混合物を造粒
機に投入して攪拌する方法、(2)触媒成分元素を含む粉体等及び添加物を同時に造粒機
に投入して攪拌する方法、(3)触媒成分元素を含む粉体等を造粒機内で撹拌した後、該
造粒機に添加物を投入し、更に撹拌する方法、(4)触媒成分元素を含む粉体等に添加物
を添加して不均一混合物を準備し、該不均一混合物を造粒機に投入して攪拌する方法、(
5)触媒成分元素を含む粉体等と添加物をそれぞれ分割して同時、交互又は順不同で造粒
機に投入しながら攪拌する方法が挙げられる。(1)~(5)を適宜組み合わせて全量添
加する等の方法が任意に採用しうる。このうち(5)においては、例えば触媒成分元素を
含む粉体等の固定容器壁への付着、触媒成分元素を含む粉体同士の凝集がなく担体上に所
定量が担持されるようオートフィーダー等を用いて添加速度を調節して行うのが好ましい
【0039】
成型工程において、有機化合物を添加して成型することが成形体の強度を向上させる観
点で好ましい。有機化合物としては、エチレングリコール、グリセリン、プロピオン酸、
マレイン酸、ベンジルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、セルロース
、メチルセルロース、でんぷん、ポリビニルアルコール、ステアリン酸またはフェノール
等が挙げられるが、原料転化率、生成物収率が優れることから、グリセリンがより好まし
い。前記有機化合物の添加量は前記粉体100重量部に対し、0.3重量部以上15重量
部以下が好ましい。下限はより好ましくは0.4重量部、さらに好ましくは0.5重量部
、特に好ましくは0.6重量部である。上限はより好ましくは13重量部、さらに好まし
くは11重量部、特に好ましくは9重量部である。有機化合物の添加量が前記範囲内であ
ることにより、原料転化率が高く、生成物収率が良好となる可能性がある。添加する有機
化合物の形態は、水溶液であることが好ましく、濃度は、2重量%以上40重量%以下が
好ましい。下限は3重量%がより好ましい。上限は30重量%がより好ましい。前記範囲
であることにより溶液に対して有機化合物を良好に分散することができる。
【0040】
尚、成型工程において、前記有機化合物以外の成型助剤を添加してもよい。前記有機化
合物以外の成型助剤としては例えば、シリカ、アルミナ、ガラス繊維、炭化珪素、窒化珪
素、グラファイトなどが挙げられる。
【0041】
[焼成工程]
前記触媒前駆体を、好ましくは300℃~600℃、より好ましくは350℃~550
℃の温度条件にて1時間~16時間程度、焼成する。焼成方法としては、前記加熱処理で
用いられる方法を採用することができる。
以上のようにして、高活性な触媒が得られる。
得られた触媒の触媒を構成する触媒成分元素は下記一般式(2)で表されることが好ま
しい。
【0042】
Mo12BiFeCoNiSi (1)
(式(1)中、XはNa、K、Rb、Cs及びTiからなる群より選ばれた少なくとも一
種の元素を示し、YはMg、Ca、Sr、Ba、Mn及びZnからなる群より選ばれた少
なくとも一種の元素を示し、ZはF、Cl、B,P、As、W及びNbからなる群より選
ばれた少なくとも一種の元素を示す。a~iはそれぞれの元素の原子比を示し、0.5≦
a≦7、0≦b≦5、0≦c≦10、0≦d≦10、0≦e≦2、0≦f≦5、0≦g≦
5、0≦h≦500の範囲にあり、iは他の元素の酸化状態を満足させる値である。)
【0043】
[用途]
本発明の製造方法により製造された触媒を用いることにより、原料転化率が高く、生成
物収率が優れた結果を得ることができ、プロピレン等のオレフィン又はターシャリーブタ
ノールを酸素含有ガスにより気相接触酸化して、対応するアクロレイン又はメタクロレイ
ン等の不飽和アルデヒド及び、アクリル酸又はメタクリル酸等の不飽和カルボン酸を高収
率で製造することができる。
【実施例0044】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない
限り、以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0045】
<担持率の測定>
触媒を30粒採取し、合計重量を測定した(重量A)。担体を30粒採取し、合計重量
を測定した(重量B)。以下の式により担持率を算出した。
担持率(%)=(重量A-重量B)/重量A×100
【0046】
<転化率、選択率、収率>
プロピレン転化率、(アクロレイン+アクリル酸)選択率、(アクロレイン+アクリル
酸)収率の定義は、各々下記の通りである。
・プロピレン転化率(モル%)=(反応したプロピレンのモル数/供給したプロピレンの
モル数)×100
・(アクロレイン+アクリル酸)選択率(モル%)=((生成したアクロレインのモル数
+生成したアクリル酸のモル数)/反応したプロピレンのモル数)×100
・(アクロレイン+アクリル酸)収率(モル%)=(アクロレイン+アクリル酸)転化率
×(アクロレイン+アクリル酸)選択率/100
【0047】
<プロピレンの気相接触酸化反応>
各実施例及び比較例で得られた触媒を用いて、以下の通りの条件でプロピレンの気相接
触酸化反応を行った。
ナイターを入れたジャケット付き反応管(内径21mm)に、前記触媒40mlと直径
5mmのムライトポール52mlとを混合した混合物を充填した。原料ガス(プ口ピレン
10容量%、スチーム17容量%、空気73容量%)を導入し、70kPaにて、プ口ピ
レンの酸化反応を実施した。プロピレンの空間速度は100/hであった。尚、反応管は
ナイタ-浴で加熱しており、浴温は320℃であった。反応生成物の分析は、反応管出口
より反応生成物を回収し、ガスクロマ卜グラフイーにより実施した。
【0048】
(実施例1)
<触媒の調製>
温度を測定できる温度センサを底部に具備したジャケット(80℃)付き容器(1)に
、80℃の温水400kgを入れた。次いで、パラモリブデン酸アンモニウム四水和物6
3.8kgを加えて溶解させ溶液とした。溶解後、液温が78℃となったが、ほどなく8
0℃に戻った。次いで、該溶液にヒュームドシリカ水分散液109.8kgを加え、撹拌
して懸濁液とし、A液を得た。尚、該ヒュームドシリカ水分散液は、ヒュームドシリカ3
0kg(比表面積200m/g)をイオン交換水120kgに加えてヒュームドシリカ
懸濁液とした後に、該ヒュームドシリカ懸濁液を、ホモジナイザーであるULTRA-TURRAX T
115KT(IKA社製)により、60分間分散処理を行い、水分散液としたものであり、ケ
イ素の供給源化合物である。
【0049】
温度を測定できる温度センサを底部に具備したジャケット付き容器(2)に純水98.
3kgを入れた。液温が80℃となった後に、硝酸鉄九水和物12.9kgを添加して溶
解し、水溶液とした。該水溶液の液温が80℃となった後に、該水溶液に、硝酸コバルト
六水和物38.8kgを、1分間当たり約16kgの添加速度で連続的に添加して溶解し
た。硝酸コバルトが完全に溶解し、液温が80℃となった後に、さらに、硝酸ニッケル六
水和物39.5kgを、1分間当たり約16kgの添加速度で連続的に添加して溶解し、
B液を得た。
次いで該B液を、80℃に加温した該A液に添加し、均一になるように攪拌してスラリ
ーであるC液を得た。C液の液温は約80℃であった。その後、温度を維持しつつ、約5
時間攪拌した。該C液を加熱により水分を除去し、乾燥物Aとし、次いで該乾燥物Aを粉
砕し、粉体Aを得た。
【0050】
温度を測定できる温度センサを底部に具備したジャケット付きの容器(3)に純水21
6kgを入れ、液温を30℃とした。次いでアンモニア水8.2kg、パラモリブデン酸
アンモニウム四水和物16.4kgを順次添加して溶解し、さらに、炭酸ナトリウム0.
37kg、炭酸カリウム0.31kgを添加して溶解してD液とした。
該D液へ粉体Aを79.2kg添加して懸濁させ、E液とした。次いでE液に、Naを
0.53%固溶した次炭酸ビスマス24.3kgを添加して30分間混合し、触媒成分元
素を含む混合物とした。
【0051】
該触媒成分元素を含む混合物を加熱して水分を除去し、乾燥物Bとし、次いで該乾燥物
Bを粉砕し、粉体Bを得た。
粉体Bに、粉体Bに対して5重量%に相当する結晶セルロースを添加し、混合物とした
。該混合物、30%グリセリン水溶液、アルミナ及びシリカを主成分とする球状の担体を
用いて、転動造粒法により、担持成形体を調製した。尚、該担持成形体の直径は5mmで
あった。該担持成型体を空気雰囲気下、515℃で2時間、焼成を行い、触媒Aを得た。
触媒Aは球状であり直径は5mmであり、担持率は50%であった。また、触媒Aの触媒
成分元素の組成比(モル比)は以下の通りであった。
Mo/Bi/Co/Ni/Fe=12/2.9/3.4/3.4/0.8
【0052】
(比較例1)
<触媒の調製>
温度を測定できる温度センサを底部に具備したジャケット(80℃)付き容器(1)に
、80℃の温水480kgを入れた。次いで、パラモリブデン酸アンモニウム四水和物7
6.6kgを加えて溶解させ溶液とした。溶解後、液温が77℃となったが、ほどなく8
0℃に戻った。次いで、該溶液にヒュームドシリカ水分散液132kgを加え、撹拌して
懸濁液とし、F液を得た。尚、ヒュームドシリカ水分散液は、ヒュームドシリカ30kg
(比表面積200m/g)をイオン交換水120kgに加えてヒュームドシリカ懸濁液
とした後に、該ヒュームドシリカ懸濁液を、ホモジナイザーであるULTRA-TURRAX T115KT
(IKA社製)により、60分間分散処理を行い、水分散液としたものであり、ケイ素の
供給源化合物である。
【0053】
温度を測定できる温度センサを底部に具備したジャケット付き容器(2)に純水118
kgを入れた。液温が80℃となった後に、硝酸鉄九水和物15.5kgを添加して溶解
し、水溶液とした。該水溶液の液温が80℃となった後に、該水溶液に硝酸コバルト六水
和物46.6kgを約1分間かけて連続的に添加して溶解した。硝酸コバルトが完全に溶
解し、液温が80℃となった後に、さらに、硝酸ニッケル六水和物47.4kgを約1分
間かけて添加して溶解し、G液を得た。
次いで該G液を、80℃に加温した前記F液に添加し、均一になるように攪拌してスラ
リーであるH液を得た。H液の液温は約80℃であった。その後、温度を維持しつつ、約
5時間攪拌した。該H液を加熱により水分を除去し、乾燥物Cとし、次いで該乾燥物Cを
粉砕し、粉体Cを得た。
【0054】
温度を測定できる温度センサを底部に具備したジャケット付きの容器(3)に純水25
9kgを入れ、液温を30℃とした。次いでアンモニア水9.8kg、パラモリブデン酸
アンモニウム四水和物19.7kgを順次添加して溶解し、さらに、炭酸ナトリウム0.
44kg、炭酸カリウム0.37kgを添加して溶解してI液とした。
該I液へ粉体Cを95.0kg添加して懸濁させ、J液とした。次いでJ液に、Naを
0.53%固溶した次炭酸ビスマス29.1kgを添加して30分間混合し、触媒成分元
素を含む混合物とした。
【0055】
該触媒成分元素を含む混合物を加熱して水分を除去し、乾燥物Dとし、次いで該乾燥物
Dを粉砕し、粉体Dを得た。
粉体Dに、粉体Dに対して5重量%に相当する結晶セルロースを添加し、混合物とした
。該混合物、30%グリセリン水溶液、アルミナ及びシリカを主成分とする球状の担体を
用いて、転動造粒法により、担持成形体を調製した。尚、該担持成形体の直径は5mmで
あった。該担持成型体を空気雰囲気下、515℃で2時間、焼成を行い、触媒Bを得た。
触媒Bは球状であり直径は5mmであり、担持率は50%であった。また、触媒Bの触媒
成分元素の組成比(モル比)は以下の通りであった。
Mo/Bi/Co/Ni/Fe=12/2.9/3.4/3.4/0.8
【0056】
【表1】
【0057】
以上より、本発明の触媒の製造方法により得られた触媒は、該触媒を用いてプロピレン
を酸素含有ガスと気相接触酸化させると、プロピレンの転化率に優れ、アクロレイン及び
アクリル酸の合計選択率が高く、高収率でアクロレイン及びアクリル酸を製造できること
が分かる。また、最終生成物であるアクリル酸の選択率が高い特徴も認められる。