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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115590
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】光輝性動画模様
(51)【国際特許分類】
   B42D 25/342 20140101AFI20240820BHJP
   B41M 3/14 20060101ALI20240820BHJP
   B41M 3/06 20060101ALI20240820BHJP
   B42D 25/324 20140101ALN20240820BHJP
   B42D 25/328 20140101ALN20240820BHJP
【FI】
B42D25/342
B41M3/14
B41M3/06 C
B42D25/324
B42D25/328 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021281
(22)【出願日】2023-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】303017679
【氏名又は名称】独立行政法人 国立印刷局
(72)【発明者】
【氏名】森永 匡
【テーマコード(参考)】
2C005
2H113
【Fターム(参考)】
2C005HA04
2C005HB01
2C005HB02
2C005HB10
2C005JB40
2C005LA20
2H113AA01
2H113AA06
2H113BA00
2H113BA01
2H113BA03
2H113BA09
2H113BA28
2H113BA43
2H113BB07
2H113BB10
2H113BB22
2H113BC09
2H113CA34
2H113CA36
2H113CA37
2H113CA39
2H113CA44
2H113CA45
2H113CA46
2H113DA04
(57)【要約】
【課題】
光輝性動画模様を作成するにあたってその圧縮した画像を加工する方法において、動画効果は制限されるという問題があった。
【解決手段】
本発明は、モアレ拡大方式やインテグラルフォトグラフィ方式の画線構成を応用して、基画像を圧縮及び分割圧縮することで動画効果を生じさせる凹凸構造物において、動画効果に関与しない方向の描画領域を動画効果に関与する方向の描画領域として再配置することで圧縮率を緩和し、従来の構成では不可能であった描画方法由来の再現性の限界を超えて、高い動画効果を実現することを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上の少なくとも一部にユニット群が第一の方向に隣接して複数配置されて成る凹凸構造群を有する光輝性動画模様であって、
前記ユニット群は、配置方向と配置ピッチに規則性を備え、かつ光輝性を有する凹凸構造要素が、分割圧縮又は圧縮された基画像の内部、外部あるいは輪郭に配されて成るユニットを、第二の方向に隣接して複数配置して成り、
前記凹凸構造要素の角度は連続的に変化し、前記第二の方向に隣接する前記ユニット同士の前記凹凸構造要素の角度が前記第二の方向に対して鏡面対称、かつ、前記曲線又前記直線の延在方向が同一方向であって、
前記第二の方向に隣接する前記ユニット同士の少なくとも一方には、前記第一の方向に配置ピッチの倍数の距離分ずれた位置の基画像が分割又は圧縮されて配されて成ることを特徴とする光輝性動画模様。
【請求項2】
画像入力手段、配置設定手段、画像データ作成手段、転写手段を有する作製装置を用いて、光輝性動画模様を作成する作成方法であって、
前記画像入力手段によって、基潜像要素の基となる基画像データ、光輝性要素の基となる曲線状の凹凸構造を複数配列した基光輝性要素データを入力する画像入力工程と、
前記配置設定手段によって、前記画像入力手段より入力された前記基画像データに対し、前記基潜像要素データを作成するための基潜像要素に対する基画像の分割圧縮又は圧縮の設定を行い、設定された基潜像要素の配置の設定及び基光輝性要素データを作成するための基光輝性要素の配置の設定する配置設定工程と、
前記画像データ作成手段によって、前記基光輝性要素データと前記基潜像要素群データを合成し、前記合成された前記基光輝性要素データと前記基潜像要素群データを前記第二の方向に対してn分割(nは、2以上の整数)してn個の領域を作成し、前記n個の領域における光輝性動画模様の変化に関与しない方向の前記基光輝性要素データと前記基潜像要素群データの合成された領域について間引き処理を行って削除し、前記間引き処理により削除された領域に対して、前記間引き処理によって残された前記動画模様に関与する方向の動画模様に関与する方向の前記基光輝性要素データと前記基潜像要素群データの合成された領域を再配置して光輝性要素データと潜像要素データを作成し、前記光輝性要素データと前記潜像要素データの重なり合わせた部分を抽出して凹凸構造群データを作成する画像データ作成工程と、
前記転写手段によって、前記凹凸構造群を基材に転写する転写工程を有することを特徴とする光輝性動画模様を作成する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偽造防止効果を必要とするセキュリティ印刷物である銀行券、パスポート、有価証券、身分証明書、カード、通行券等の貴重印刷物の分野において用いられる、反射光や回折光が生じる角度において画像が動いて見える凹凸構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
画像が動いて見える動画効果は、アイキャッチ性が高く、偽造することが困難であることから、近年、セキュリティ印刷物の真偽判別要素として多く用いられる傾向にある。この効果を備えた技術の一つに、印刷やエンボス加工やインプリント等によって光を強く反射する特性を有する凹凸構造を付与することで動画効果を実現する技術群がある。また、これらの技術の中でも特に効果の高い技術として、凹凸構造を回折格子によって作り出したホログラムがあり、銀行券やパスポート等の最高のセキュリティが要求されるセキュリティ印刷物にも貼付されて広く用いられている。
【0003】
凹凸構造を利用して動画効果を実現した技術の中に、圧縮された画像や、分割圧縮された画像を用い、これらを部分的にサンプリングすることで動画効果を再現する技術がある。これらは、モアレが拡大されて見えるモアレ拡大現象(Moire Magnification)と呼ばれる特殊な現象や、インテグラルフォトグラフィと呼ばれる古典的な立体画像の録画・再生方法を利用するものである。
【0004】
これらの圧縮あるいは分割圧縮された画像を用いる技術の中に、金属切削やエンボス加工等によって動画効果を生じさせる技術が存在する(例えば、特許文献1)。また、回折格子を用いたホログラムの一つとして、特許文献1の技術のような圧縮あるいは分割圧縮された画像を、回折格子から生じる回折光によってサンプリングする技術(例えば、特許文献2参照)が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-171774号公報
【特許文献2】特開2021-81705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び特許文献2に記載の技術は、画像中の物体の動きや位置等が微妙に異なるといった、前後の画像に相関はあるが実際には不連続である複数の画像を次々とチェンジさせて物体が動いているように見せる、いわゆるパラパラ漫画方式で動画効果を生じさせる一般的な画線構成と異なり、圧縮あるいは分割圧縮した画像の一部をサンプリングする特殊な画線構成によって動画効果を実現しており、再生される画像の動きは完全な連続性を有しているために、特に動画のなめらかな表現に優れる。ただし、この技術群では、動画効果の高さ、より具体的には画像の動きの大きさ(幅)を高める上で技術的な限界が存在するという問題があった。
【0007】
特許文献1及び特許文献2に記載の従来の技術において、画像の動きの大きさ(幅)を高めるためには基となる画像を一定の方向に可能な限り強く圧縮する必要があった。画像を強く圧縮するほど、再生される画像の動きの大きさは大きくなる反面、強く圧縮した画像を正確に再生するためにはそれに見合った画像の再現性が要求される。
【0008】
しかし、光輝性動画模様を作成するにあたってその圧縮した画像を加工・描画する方法、例えば印刷、レーザー描画、金属加工、インプリントや電子線描画等の方法において、各々の描画方法に由来する画像圧縮の再現性の限界が必ず存在する。描画方法由来の限界を超えて画像を圧縮すれば、正確に再現できず再生される画像は不鮮明となる。この制限に従う結果、描画装置の画像の再現性の限界以下に圧縮の割合を留める必要があり、結果として圧縮した画像の加工・描画方法由来の再現性の限界によって動画効果(動きの幅)は制限されるという問題があった。
【0009】
本発明は、上記課題の解決を目的とするものであり、モアレ拡大方式やインテグラルフォトグラフィ方式の画線構成を応用して、基画像を圧縮及び分割圧縮することで動画効果を生じさせる凹凸構造物において、動画効果に関与しない方向の描画領域を動画効果に関与する方向の描画領域として再配置することで圧縮率を緩和し、従来の構成では不可能であった描画方法由来の再現性の限界を超えて、高い動画効果を実現することを特徴とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、基材上の少なくとも一部にユニット群が第一の方向に隣接して複数配置されて成る凹凸構造群を有する光輝性動画模様であって、ユニット群は、配置方向と配置ピッチに規則性を備え、かつ光輝性を有する凹凸構造要素が、分割圧縮又は圧縮された基画像の内部、外部あるいは輪郭に配されて成るユニットを、第二の方向に隣接して複数配置して成り、凹凸構造要素の角度は連続的に変化し、第二の方向に隣接するユニット同士の凹凸構造要素の角度が第二の方向に対して鏡面対称、かつ、曲線又直線の延在方向が同一方向であって、第二の方向に隣接するユニット同士の少なくとも一方には、第一方向に配置ピッチの倍数の距離分ずれた位置の基画像が分割又は圧縮されて配されて成ることを特徴とする光輝性動画模様である。
【0011】
本発明は、画像入力手段、配置設定手段、画像データ作成手段、転写手段を有する作製装置を用いて、光輝性動画模様を作成する方法であって、画像入力手段によって、基潜像要素の基となる基画像データ、光輝性要素の基となる曲線状の凹凸構造を複数配列した基光輝性要素データを入力する画像入力工程と、配置設定手段によって、画像入力手段より入力された基画像データに対し、基潜像要素データを作成するための基潜像要素に対する基画像の分割圧縮又は圧縮の設定を行い、設定された基潜像要素の配置の設定及び基光輝性要素データを作成するための基光輝性要素の配置を設定する配置設定工程と、画像データ作成手段によって、基光輝性要素データと基潜像要素群データを合成し、合成された基光輝性要素データと基潜像要素群データを第二の方向に対してn分割(nは、2以上の整数)してn個の領域を作成し、n個の領域における光輝性動画模様の変化に関与しない方向の基光輝性要素データと基潜像要素群データの合成された領域について間引き処理を行って削除し、間引き処理により削除された領域に対して、間引き処理によって残された動画模様に関与する方向の動画模様に関与する方向の基光輝性要素データと基潜像要素群データの合成された領域を再配置して光輝性要素データと潜像要素データを作成し、光輝性要素データと潜像要素データの重なり合わせた部分を抽出して凹凸構造群データを作成する画像データ作成工程と、転写手段によって、凹凸構造群を基材に転写する転写工程を有することを特徴とする光輝性動画模様を作成する方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の光輝性動画模様は、動画効果に関与しない方向の描画領域を動画効果に関与する方向の描画領域として再配置することによって、基画像の圧縮率を緩和することを可能とした。これにより従来の技術で不可避であった描画装置由来の再現性の限界を超えた高い動画効果を得ることが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明における光輝性動画模様における光輝性要素と潜像要素の基本的な構成と作成方法を示す。
図2】本発明における光輝性動画模様の一例を示す。
図3】本発明における光輝性動画模様の基本的な構成の概要を示す。
図4】本発明における光輝性動画模様の基本的な構成の概要を示す。
図5】本発明における潜像要素群の作成方法の一例を示す。
図6】本発明における潜像要素群の作成方法の一例を示す。
図7】本発明における潜像要素群の作成方法の一例を示す。
図8】本発明における潜像要素群の作成方法の一例を示す。
図9】本発明における潜像要素群の作成方法の一例を示す。
図10】本発明における潜像要素群の作成方法の一例を示す。
図11】本発明における潜像要素群の作成方法の一例を示す。
図12】本発明における潜像要素群の構成の一例を示す。
図13】本発明における光輝性要素群の一例を示す。
図14】本発明における基光輝性要素とそれを基に作成される光輝性要素の構成の一例を示す。
図15】本発明における基光輝性要素とそれを基に作成される光輝性要素の作成方法を示す。
図16】本発明における基光輝性要素とそれを基に作成される光輝性要素の構成の一例を示す。
図17】本発明における基光輝性要素とそれを基に作成される光輝性要素の構成の一例を示す。
図18】本発明における基光輝性要素に求められる光学特性を示す。
図19】本発明における光輝性要素群と潜像要素群動画模様の組み合わせの一例を示す。
図20】本発明における光輝性動画模様の効果を示す。
図21】本発明における光輝性動画模様の一例を示す。
図22】本発明における光輝性動画模様の基本的な構成の概要を示す。
図23】本発明における光輝性動画模様の基本的な構成の概要を示す。
図24】本発明における潜像要素群の作成方法の一例を示す。
図25】本発明における潜像要素群の作成方法の一例を示す。
図26】本発明における潜像要素群の作成方法の一例を示す。
図27】本発明における潜像要素群の作成方法の一例を示す。
図28】本発明における潜像要素群の構成の一例を示す。
図29】本発明における光輝性要素群の構成の一例を示す。
図30】本発明における潜像要素群の効果を示す。
図31】本発明における潜像要素群をホログラム化した場合の層構造を示す。
図32】本発明の光輝性動画模様の作成方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。しかしながら、本発明は、以下に述べる実施するための形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他のいろいろな実施の形態が含まれる。
【0015】
本発明の光輝性動画模様(1)について説明する。この光輝性動画模様(1)は、用紙、プラスチック及び金属等の基材(以下「基材」という。)に凹凸構造要素(13)を印刷による盛り上がりのある画線で形成してもよく、回折格子によりホログラム化して形成した後、基材に貼付、あるいは下地印刷がされた印刷物上に貼付してもよい。なお、光輝性動画模様(1)をホログラム化した場合は、後述するホログラムの構造の最低限の構造であるホログラム形成層(16)にあたる。
【0016】
また、金属やプラスチックに対し、直接凹凸構造要素(13)を切削加工して光輝性動画模様(1)を描画してもよい。更に、金属板に光輝性動画模様(1)を加工して版面とし、光沢を有する基材をプレス、インプリントを施すことによって光輝性動画模様(1)を転写してもよく、光輝性動画模様(1)の付与方法は問わない。
【0017】
なお、本発明における凹凸構造要素(13)は、凹構造及び凸構造の両方が必要であるわけではなく、凹構造だけでも、凸構造だけでもよい。
【0018】
はじめに、本発明の構成の概要を簡潔に説明するために、本発明の光輝性動画模様(1)の基本的な画線構成と作成方法の一つの概念図を図1に示す。本発明では、従来の光輝性要素(12)と潜像要素(11)の組み合わせから成る基本的な画線構成を、動画効果が生じる方向の幅を拡大して基光輝性要素(14)と基潜像要素(8)に変換して圧縮率を緩和する。このとき仮に出来上がる凹凸構造物を基光輝性動画模様(22)とする。この基光輝性動画模様(22)中の基光輝性要素(14)と基潜像要素(8)を動画効果が生じる方向(S1方向:第一の方向)に分割してユニット(Z1~Z6)とし、動画効果に関与しない方向(S2方向:第二の方向)の領域の画像(Y)について間引き処理により削除する。さらに動画効果が生じる方向(S1方向:第一の方向)に分割したユニット(Z1~Z6)を動画効果に関与しない方向(S2方向:第二の方向)に再配置し、光輝性要素(12)及び潜像要素(11)を備えたユニット群とする構成を基本とする。
【0019】
<作成方法>
次に、前述の光輝性動画模様を、画像入力手段による画像入力工程(S1)、配置設定手段による配置設定工程(S2)、画像データ作成手段による画像データ作成工程(S3)、転写手段による転写工程(S4)の各工程について、図32により説明する。
【0020】
画像入力工程(S1)は、パソコン等の情報処理装置を使用して基潜像要素の基となる基画像データ、光輝性要素の基となる曲線状の凹凸構造を複数配列した基光輝性要素データの各データを入力する工程であり、各データは外部機器から入力してもよく、あるいは情報処理装置で各画像データを作成してもよい。
【0021】
配置設定工程(S2)は、画像入力工程(S1)により入力された基画像データと基光輝性要素データに対し、パソコン等の情報処理装置により基潜像要素群データを作成するための基潜像要素に対する基画像の分割圧縮又は圧縮の設定を行い、設定された基潜像要素を隣り合う基潜像要素の一部が重なるように複数配置して基潜像要素群の配置の設定を行い、基光輝性要素データを作成するための基光輝性要素の配置の設定を行う。
【0022】
画像データ作成工程(S3)は、配置設定工程(S2)により設定された基潜像要素群と基光輝性要素データを合成し、合成された基光輝性要素データと基潜像要素群データを、第二の方向に対してn分割(nは、2以上の整数)してn個の領域を作成する。次に、n個の領域における動画模様の変化に関与しない方向の基光輝性要素データと基潜像要素群データの合成された領域について間引き処理を行って削除して、動画模様に関与する方向の基光輝性要素データと基潜像要素群データの合成された領域を再配置する領域を確保する。
【0023】
次に、間引き処理により削除された領域に対して、間引き処理によって残された動画模様に関与する方向の領域を再配置して光輝性要素データと潜像要素データが合成されたデータを作成し、合成された光輝性要素データと潜像要素データをそれぞれ第一の方向に配列して光輝性要素群データと潜像要素群データを作成して双方のデータを合成し、合成された潜像要素群データと光輝性要素群データの重なり合わせた部分を抽出して凹凸構造群データを作成する。
【0024】
転写工程(S4)は、抽出した凹凸構造群データを元に基材に対し、コンピュータからの画像を転写可能なエンボス装置等により転写する工程である。
【0025】
本第一の実施の形態では、二分割の形態について具体的な構成及び作成方法の説明をするが、分割数や作成方法はこれに限定されるものではない。二以上の分割数であれば、分割数に制限はなく、特に作成方法についても最終的に図1に示す基本的な構成を満たすものとなるのであれば、その手順は異なっていても何ら問題ない。
【0026】
また、図1では、基光輝性要素(14)及び基潜像要素(8)を第二の方向(S2)に対して二分割又は三分割した各要素(14、8)をジグザク、あるいは階段状に取り出して、再配置する例を示しており、第一の実施の形態及び第二の実施の形態の説明でも同じように各要素をジグザグに取り出して再配置する例で説明するが、各要素の取り出し方はこれに限定されるものではなく、同じ高さに平行に取り出して再配置しても何ら問題ない。
【0027】
本第一の実施の形態においては、光輝性動画模様(1)をインテグラルフォトグラフィと呼ばれる立体画像の撮像方法によって得られる画像を応用した画線構成に用いる例を説明する。続いて、第二の実施の形態においては、光輝性動画模様(1)にモアレ拡大現象(Moire Magnification)と呼ばれる特殊な現象を利用した画線構成を用いる例を説明する。なお、第二の実施の形態の構成や特性等の説明において、それぞれが第一の実施の形態と同じであって説明が重複する部分については説明を省略する。そのため、第二の実施の形態において、説明していない部分については、第一の実施の形態での同部分と基本的に同じであるものとする。
【0028】
(第一の実施の形態)
図2に、本発明における光輝性動画模様(1)を示す。光輝性動画模様(1)は、光が入射することで動画模様(2)が出現し、観察位置が変化したり、入射する光の角度が変化することで光輝性動画模様(1)の中で再生された動画模様(2)がスムーズに移動する動画効果が生じる。本第一の実施の形態において、再生される動画模様(2)は円である。
【0029】
図3に光輝性動画模様(1)を示す。光輝性動画模様(1)が表す凹凸構造群(3)は、拡大図に示すように凹凸構造要素(13)が配置された鎖線で示すユニット(X)が複数配置(マトリクス状)されて成る。本第一の実施の形態は、ユニット(X)を第二の方向(S2)に複数配置し、ユニット群(X2)を第一の方向(S1)に複数配置した例である。図3に示すように、第一の方向(S1)に配列されたユニット内の凹凸構造要素(13)は、入射光と直交する角度が凹凸構造要素(13)の形状に伴って連続的に変化し、第二の方向(S2)に隣接するユニット(X)同士の凹凸構造要素(13)の形状は、入射光と直交する角度が第二の方向(S2)に対して鏡面対称、かつ、凹凸構造要素(13)の曲線又直線の延在方向が同一方向である。なお、ユニット(X)を示す鎖線は発明の説明の便宜上の仮想線であり、実際の光輝性動画模様(1)に存在する線ではない。
【0030】
図3に示す本第一の実施の形態を表す図は、光輝性動画模様(1)に光が入射せず、動画模様(2)が出現しない状態において、光輝性動画模様(1)の凹凸構造要素(13)が着色された形態である場合に視認される模様である。光輝性動画模様(1)の凹凸構造要素(13)が着色されていない形態、例えば透明であったり、金属に直接切削されて描画されていたり、回折格子等で構成された形態ではこの模様は視認できない。この光輝性動画模様(1)は、光を反射する微細な凹凸構造要素(13)によって構成された特殊な模様であり、光が入射することで部分的に光を反射して動画模様(2)を再生し、動画効果を生じさせる。
【0031】
図4に凹凸構造群(3)の構成要素について概要を示す。凹凸構造群(3)は、動画模様(2)として出現する画像が圧縮された潜像要素群(4)と、それと対を成す光輝性要素群(5)を組み合わせることで構成される。なお、本第一の実施の形態では、潜像要素群(4)は、潜像要素群A(4-A)と潜像要素群B(4-B)の二つから成り、更に、潜像要素群A(4-A)は、第一の潜像要素群A(4-1-A、4-2-A)から成り、潜像要素群B(4-B)は、第一の潜像要素群B(4-1-B、4-2-B)から成る。
【0032】
本第一の実施の形態及び後述する第二の実施の形態では、潜像要素群(4)について、基潜像要素群(9)全体を群として扱って全体を分割、再配置して作成する方法で説明し、光輝性要素群(5)は、個々の基光輝性要素(14)を直接再配置して個々の光輝性要素(12)を作成してから群として配置する方法で説明するが、それぞれの作成方法はこれに限定されるものではない。
【0033】
光輝性要素(12)の作成方法と同様に、基潜像要素群(9)を構成する個々の基潜像要素(8)を直接再配置してそれぞれの潜像要素(11)を作成し、これらの潜像要素(11)を複数配置して潜像要素群(4)を作成してもよい。また、基潜像要素群(9)と基光輝性要素(14)とを組み合わせて、図1に示すような基光輝性動画模様(22)を作成したあと、重なった基潜像要素群(9)と基光輝性要素(14)の両方を同時に分割して再配置する手順で光輝性動画模様(1)を作成してもよい。
【0034】
以上のように、最終的に潜像要素群(4)と光輝性要素群(5)が分割されて再配置された構成で光輝性動画模様(1)が形成されるのであれば、作成手順は限定しない。
【0035】
潜像要素群(4)と光輝性要素群(5)を組み合わせるとは、潜像要素(11)の図柄の内側、輪郭、外側の少なくともいずれかに光輝性要素(12)の凹凸を有した模様とその光学特性を、そのまま凹凸構造要素(13)として写し取り(構造の再現)、写し取った以外の領域には、光輝性要素(12)とは異なる光学特性を付与した状態を指す。出現させる動画模様(2)の内部を光らせたい場合には、潜像要素(11)の図柄の内側に光輝性要素(12)の凹凸構造要素(13)を写し取る。動画模様(2)の輪郭を光らせたい場合には、潜像要素(11)の図柄の輪郭に光輝性要素(12)の凹凸構造要素(13)を写し取る(データの作成方法も含む)。動画模様(2)の周囲を光らせたい(動画模様をネガで見せる)場合には、潜像要素(11)の内側と輪郭以外の領域に光輝性要素(12)を写し取る。動画模様(2)の輪郭の周囲を光らせたい(輪郭だけ光らせない)場合には、潜像要素(11)の図柄の輪郭以外の領域に光輝性要素(12)の凹凸構造要素(13)を写し取るものである。このいずれの際においても、凹凸構造要素(13)を写し取った以外の領域には、光輝性要素(12)とは異なる光学特性を付与する。
【0036】
本第一の実施の形態の例では、動画模様(2)は輪郭線を光らせる表現であり、この場合は基潜像要素群(9)の図柄の輪郭に光輝性要素(12)の凹凸構造要素(13)を写し取り、それ以外の領域には加工を施さないことで異なる光学特性を施すものである。この場合、光輝性動画模様(1)に光が入射した場合に、動画模様(2)は周囲の背景と比較して相対的に輪郭線が強く光った状態で再生される。なお、「基潜像要素群(9)の図柄の内側、輪郭、外側」とは、基潜像要素群(9)を構成する基潜像要素(8)で図5に図示するとおりであり、基潜像要素(8)の輪郭(黒)を境として、内部を内側(白)とし、外部を外側(線)として、基潜像要素(8)の輪郭(黒)に凹凸構造要素(13)を写し取って形成した基潜像要素群(9)である。
【0037】
基潜像要素群(9)を構成するにあたって、まず基潜像要素(8)と基光輝性要素(14)をどれだけの数に分割して潜像要素(11)と光輝性要素(12)に再配置するかを決める必要がある。本発明において基潜像要素(8)に対する潜像要素(11)の分割する数及び基光輝性要素(14)に対する光輝性要素(12)の分割する数を分割数と呼び、分割数はn(nは二以上の整数)で表わす。分割数nの数値はそのまま動画効果の大きさを表す。nが2であれば、第一の方向(S1方向)の画像の動きの大きさが特許文献1及び特許文献2(以下「従来の技術」という。)と比較して2倍となり、nが3であれば動きの大きさが3倍となり、nであれば、動きの大きさがn倍となる。
【0038】
ただし、nが2であれば、画像の解像度が従来の技術と比較して半分となり、nが3であれば解像度が3分の1となり、n倍であれば、解像度がn分の1となる。すなわち、本発明の光輝性動画模様(1)において、出現する動画模様(2)の動画効果と解像度はトレードオフの関係にある。凹凸構造要素(13)に回折格子を用いない場合、nの値は2以下とすることが望ましい。逆に凹凸構造要素(13)に回折格子を用いるのであれば、nの値を3以上としても解像度と動画効果を両立させることができる。また、動画模様(2)として出現させる画像の複雑さにもこの分割数は左右される。画像が単純であれば、解像度が低くとも観察者が認証することが可能であり、分割数を増やして動画効果を高めることができる。本第一の実施の形態及び第二の実施の形態では、分割数nは2とする。
【0039】
まず、分割数を決めたら基潜像要素群(9)を作成する。図5から図10までを用いて潜像要素群(4)の構成及びその作成方法について説明する。光輝性要素群(5)と組み合わせる潜像要素群(4)を作成するためには、まず基となる基潜像要素群(9)を作成する必要がある。基潜像要素群(9)とは、図5に示すように動画模様(2)として出現する画像の基となる基画像(6)を圧縮あるいは分割圧縮することで作成する画像であり、動画模様(2)を出現させるために必要となる基本的な画像である。この基潜像要素群(9)をさらに分割して再配置することで潜像要素群(4)が完成する。本発明でいう圧縮とは特定の方向に画像を縮小することを指し、分割圧縮とは画像の一部を分割し、分割した画像を特定の方向に画像を縮小することを指す。
【0040】
基潜像要素群(9)は、基潜像要素(8)が規則性を有して複数配置されて成る。本明細書において「規則性を有して複数配置する」とは、同じ幅の複数の要素を同じピッチで同じ方向に連続して配置することを意味する。図6に示すように基潜像要素群(9)においては、特定の幅(W0)の基潜像要素(8)が第一のピッチ(P1)で第一の方向(S1方向)に連続して配置されて成る。また、「第一の規則性を有して複数配置する」と「第二の規則性を有して複数配置する」とでは、規則性を有して要素を複数配置することは同じであるものの、画線幅、配置のピッチや配置方向等の具体的な配置の条件や数値が異なることを表している。
【0041】
本明細書において、設計者が動画模様(2)として出現させたいと意図する画像の基となる画像を基画像(6)と呼ぶ。それぞれの基潜像要素(8)は、図5に示すように基画像(6)に対して、幅(W)、高さ(H)のフレーム(7)を当てはめ、そのフレーム(7)の内側に入った基画像(6)の一部を第一の方向(S1方向)に一定の割合で圧縮することで作成する。これが、発明でいう「分割圧縮」の具体的な手順である。基本的に基画像(6)と動画模様(2)は同じ画像となるが、設計過程で上下左右の比率を変えたり、形状に歪みを生じさせることも可能である。本第一の実施の形態における基画像(6)は円である。フレーム(7)を基画像(6)の右端部に対して左側に配置し、フレーム(7)内に基画像(6)がわずか(第一のピッチ(P1)の大きさより小さい幅(W0)でも入った位置をフレーム(7)の起点(T)とし、フレーム(7)内に含まれた基画像(6)を特定の割合で圧縮することで第一の基潜像要素(8-1)を作成する。
【0042】
続いて、基画像(6)の位置は固定し、起点(T)の位置からフレーム(7)を第一のピッチ(P1)だけ第一の方向(S1方向)に移動し、同様にフレーム(7)内に含まれた基画像(6)を特定の割合で圧縮することで第二の基潜像要素(8-2)を作成する。これを繰り返し、最後の第nの基潜像要素(8-n)まで作成する。フレーム(7)内に基画像(6)が含まれない位置までフレーム(7)が移動した場合に、すべての基潜像要素(8)の作成が完了となる。作成したそれぞれの基潜像要素(8)は、第一の基潜像要素(8-1)の位置を起点(T)として、第一の方向(S1方向)に第一のピッチ(P1)の幅(W0)の位置に第二の基潜像要素(8-2)を配置する。同じように、第二の基潜像要素(8-2)から第一の方向(S1方向)に第一のピッチ(P1)の幅(W0)の位置に第三の基潜像要素(8-3)を配置する。これを繰り返して第nの基潜像要素(8-n)までを順に配置することで基潜像要素群(9)が完成する。
【0043】
これが本発明の基潜像要素群(9)の基本的な構成と作成方法である。ここで、圧縮要素の幅(W0)をフレームの幅(W)で除して100を乗した値を圧縮率と定義する。この圧縮率の値が小さいほど、出現する動画模様(2)は大きく動くため動画効果が高くなるが、描画方法由来の限界値が存在する。本発明においては、従来の技術と同じ動画効果を得る場合でも、従来のように小さな圧縮率の値を用いることなく、より大きな値で実現することができる。すなわち、同じ動画効果を得る場合、圧縮率を緩和することができる。
【0044】
なお、動画効果が生じる方向(S1方向)とは異なる方向(S2方向)のフレームの高さ(H)の値は、この方向(S2方向)に対して圧縮が行われることはないため、基画像(6)の高さ以上であれば問題なく、値の大小にかかわらず動画効果には寄与しない。
【0045】
ここで本発明の基潜像要素群(9)を構成する上での特徴として、この段階では圧縮率の値が小さい場合、隣り合う基潜像要素(8)同士が重なり合うことがある。図6に重なり合いの状態を示す。図6は、隣り合う基潜像要素(8)の配置ピッチ(P1)と幅(W0)の関係が理解しやすいように、第一の方向(S1方向)に画像を拡大して表示した図である。図6に示すように、本発明の基潜像要素群(9)は、基潜像要素(8)の第一の方向(S1方向)の幅(W0)よりも、第一の方向(S1方向)の配置ピッチ(P1)のほうが小さく構成されて成る。
【0046】
なお、基潜像要素群(9)の端部においては、可視化された基潜像要素(8)の幅(W0)が配置ピッチ(P1)よりも小さく見える領域も存在するが、これは単に可視化された部分のみが視認されるために見かけ上小さく見えるだけであって、実際にはフレーム(7)内に収まった空白部分も圧縮しているため、可視化されていない空白部分を含めるとすべての隣り合う基潜像要素(8)同士は重なり合っている。
【0047】
従来の技術では、隣り合う基潜像要素(8)同士が重なり合うことを禁じている。そのため、従来の技術の条件では、基潜像要素(8)の幅(W0)は必ず配置ピッチ(P1)より小さな値とする必要がある。配置ピッチ(P1)を大きくすると、出現する動画模様(2)の解像度が低下するため、ある程度小さな値とする必要がある。その一方で動画効果を高めるためには、フレーム(7)の幅(W)を可能な限り大きく設定する必要があるが、基潜像要素(8)の幅(W0)は配置ピッチ(P1)以下の数値とする必要があり、幅を広く設定できないために、フレーム(7)の幅(W)を大きな値とすると結果として圧縮率が小さくなる。
【0048】
しかしながら、圧縮率にはそれぞれの描画方法や描画装置由来の限界値があるために、この圧縮率の限界を超えて動画模様(2)の動画効果を高めることは困難であった。本発明の光輝性動画模様(1)では、潜像要素群(4)の作成過程において必要となる基潜像要素群(9)において隣り合う基潜像要素(8)同士を重ねた構成とした場合であっても、最終的に作成される潜像要素群(4)では潜像要素(11)同士の重なり合いを回避することができることから、フレーム(7)の幅(W)を大きく設定することで圧縮率を緩和することができる。結果として動画効果を高めることを可能とするものである。
【0049】
本第一の実施の形態においては、分割数が2であるため、基潜像要素(8)の幅(W0)は、第一のピッチ(P1)の2倍の値とした。基潜像要素(8)の幅は、第一のピッチ(P1)よりも大きな値をとる必要があり、また分割数をn(nは二以上の整数)とすると、配置ピッチのn倍(P1×n)以下の数値とする必要がある。
【0050】
作成した基潜像要素群(9)は、潜像要素群(4)に再配置する。そのためには、まず基潜像要素群(9)をn(二以上)に分割し、n個の第nの基潜像要素群(9-n)を作成し、次に、n個の第nの基潜像要素群(9-n)を更にn分割して、n個の第nの基潜像要素群(9-n-n)を作成する。
【0051】
一例として、図7に示すように、基潜像要素群(9)を第一の基潜像要素群(9-1)と第二の基潜像要素群(9-2)の二つに分割し、更に分割して第一の基潜像要素群A(9-1-A)、第一の基潜像要素群B(9-1-B)、第二の基潜像要素群A´(9-2-A)及び第二の基潜像要素群B´(9-2-B)の二つの要素群を作成する例について説明する。これは、最終的に潜像要素群(4)と光輝性要素群(5)と組み合わせるために、後記する光輝性要素群(5)の規則性に合わせて基潜像要素群(9)を構成する要素を再配置することを目的とする。
【0052】
なお、本明細書において、この手順を「基潜像要素群(9)を第一の方向に光輝性要素群(5)における光輝性要素(12)の配置ピッチと同じピッチで均等な幅にn分割する」とよぶ。
【0053】
はじめに、第一の方向(S1方向)において、基潜像要素群(9)を構成する基潜像要素(8)同士が、互いに重なり合わない状態まで、基潜像要素(8)ごとに分割する。基潜像要素(8)が、第一の方向(S1方向)において重なった状態のまま画像処理ソフト等を使用して単純に潜像要素群(4)に分割すると、そのまま複数の動画模様(2)が重なりあって出現する状態となることから、これを防ぐための処理である。
【0054】
なお、この処理は、基潜像要素群(9)を構成する個々の基潜像要素(8)を再配置してそれぞれの潜像要素(11)を作成し、これらの潜像要素(11)を複数配置して潜像要素群(4)を作成する場合には必要ない。
【0055】
本第一の実施の形態においては、分割数nを2としているため、まず基潜像要素群(9)の中で隣り合う基潜像要素(8)を交互に抽出して第一の基潜像要素群(9-1)と第二の基潜像要素群(9-2)を作成する。図5に示すフレーム(7)を設定した起点(T)を基準として、奇数順に基潜像要素(8)を取り出したものを第一の基潜像要素群(9-1)とし、偶数順に取り出したものを第二の基潜像要素群(9-2)とする。
【0056】
第一の基潜像要素群(9-1)及び第二の基潜像要素群(9-2)を構成する基潜像要素(8)の幅は幅(W0)であり、その配置ピッチは、第一のピッチ(P1)×2となる。幅(W0)と第一のピッチ(P1)×2は等しいため、第一の基潜像要素群(9-1)及び第二の基潜像要素群(9-2)を構成する基潜像要素(8)同士は重ならない。
【0057】
なお、分割数をn=3とする場合には、起点(T)を基準として、第一から第三の順に基潜像要素(8)を取り出して三種類の基潜像要素群(9-1、9-2、9-3)として作成し、分割数をn=4とする場合には、起点(T)を基準として、第一から第四の順に基潜像要素(8)を取り出して四種類の基潜像要素群(9-1、9-2、9-3、9-4)を作成する必要がある。すなわち、起点(T)を基準として、第一から第nの順に基潜像要素(8)を取り出して、n個の基潜像要素群(9-1、9-2、…、9-n)を作成する必要がある。
【0058】
次に、作成した第一の基潜像要素群(9-1)と第二の基潜像要素群(9-2)を更にn分割する。これは、個々の基潜像要素群(9)をn分割する作業であり、いかなる作成方法を用いた場合でも必須の手順である。本手順について、基潜像要素群(9-1、9-2)全体を一度に分割処理する方法について説明する。
【0059】
一例として、図8に示すように、第一の基潜像要素群(9-1)の第一のピッチ(P1)と同じ幅(W1)のスリットが第一の基潜像要素群(9-1)の第一のピッチ(P1)の二倍のピッチ(P1×2)で、基潜像要素群(9)と同じ第一の規則性を有して複数配置されたスリット状のフレーム(10)を第一の基潜像要素群(9-1)に当てはめ、フレーム内に入った画像を第一の基潜像要素群A(9-1-A)、フレーム(10)内に入らなかった画像を第一の基潜像要素群B(9-1-B)として、それぞれ分割する。なお、第二の基潜像要素群(9-2)についても同様な方法により、第二の基潜像要素群(9-2)を分割してできた第二の基潜像要素群A´(9-2-A)及び第二の基潜像要素群B´(9-2-B)として、それぞれ分割する。
【0060】
詳細には、図8に示すように、第一の基潜像要素群A(9-1-A)と第一の基潜像要素群B(9-1-B)は、フレーム(7、10)を設定した起点(T)を基準として、第一の方向(S1方向)の起点(T)に近い側を第一の基潜像要素群A(9-1-A)とし、他方を第一の基潜像要素群B(9-1-B)とする。
【0061】
また、第二の基潜像要素群(9-2)を分割してできた第二の基潜像要素群A´(9-2-A)及び第二の基潜像要素群B´(9-2-B)のうち、フレーム(10)を設定した起点(T)を基準として、第一の方向(S1方向)に起点(T)に近い側を第二の基潜像要素群A´(9-2-A)とし、他方を第二の基潜像要素群B´(9-2-B)とする。
【0062】
これによって第一の基潜像要素群(9-1)と第二の基潜像要素群(9-2)に含まれる個々の基潜像要素(8)は、第一の方向(S1方向)に基潜像要素群(9)や光輝性要素群(5)の配置ピッチと同じ第一のピッチ(P1)で二分割された構成となる。
【0063】
次に、前述の四つの基潜像要素群(9-1-A、9-1-B、9-2-A、9-2-B)の各画像を分断して間引き処理を行い、四つの潜像要素群A(4-1-A、4-1-B、4-2-A、4-2-B)を作成する方法について説明する。
【0064】
図10に示すように、第一の基潜像要素群A(9-1-A)を第二の方向(S2方向)に対して、第二の画線幅(H1)の2倍の第二のピッチ(P2)で分断する。本第一の実施の形態においては、分割数を2としたため、基本的に第二の画線幅(H1)は、第二のピッチ(P2)の二分の一の値で分断する。仮に分割数をnとした場合、基本的に第二の画線幅(H1)は、第二のピッチ(P2)のn分の一の値で分断することが望ましい。
【0065】
次に、第二の方向(S2方向)の幅(H1)のスリット状のフレーム(10)が、2倍のピッチ(H1×2)にあたる第二のピッチ(P2)で第二の方向(S2方向)に複数配置して第一の基潜像要素群A(9-1-A)を当てはめ、フレーム(10)に入った画像について間引き処理を行い、フレーム(10)に入らなかった画像を第一の潜像要素群A(4-1-A)とする。なお、第二の基潜像要素群A´(9-2-A)についても同様に、フレーム(10)に入らなかった画像を第二の潜像要素群A(4-2-A)とする(図示せず)。
【0066】
次に、スリット状のフレーム(10)の位置をかえずに、第一の基潜像要素群B(9-1-B)と第二の基潜像要素群B´(9-2-B)をそれぞれ当てはめ、フレーム(10)に入らなかった画像について間引き処理を行い、スリット状のフレーム(10)に入った画像を第一の潜像要素群B(4-1-B)と第二の潜像要素群B(4-2-B)とする(図示せず)。
【0067】
なお、第一の潜像要素群A(4-1-A)及び第二の潜像要素群A(4-2-A)と、第一の潜像要素群B(4-1-B)と第二の潜像要素群B(4-2-B)において重要なことは、フレーム(10)によってサンプリングする位置を第二の方向(S1方向)に半ピッチ(P2÷2)分だけずらすことである。このため、フレーム(10)に入ったものを第一の潜像要素群A(4-1-A)と第二の潜像要素群A(4-2-A)とし、入らなかったものを第一の潜像要素群B(4-1-B)と第二の潜像要素群B(4-2-B)としても問題ない。
【0068】
本間引き処理は、各基潜像要素群A(9-1-A、9-1-B、9-2-A、9-2-B)に含まれる第二の方向(S1方向)における基潜像要素(8)同士が第一の方向(S1方向)に対して重なり合う構成を防止し、第一の方向(S1方向)に圧縮された画像を再配置する領域を確保するためである。
【0069】
よって、動画効果に寄与しない第二の方向(S2方向)の画像が配置された領域について間引き処理を行い、間引き処理された領域に対して、第一の方向(S1方向)に圧縮された画像が配置された領域を再配置して第一の方向(S1方向)の動画効果を高めることができる。
【0070】
次に、図9に示すように、第一の潜像要素群A(4-1-A)、第一の潜像要素群B(4-1-B)、第二の潜像要素群A(4-2-A)及び第二の潜像要素群B(4-2-B)のうち、第一の潜像要素群A(4-1-A)と第二の潜像要素群A(4-2-A)をそれぞれの要素が重なり合わないように第一の方向(S1方向)の位置を第一のピッチ(P1)分ずらし、かつ、第二の方向(S2方向)の位置をそろえて合成し、潜像要素群A(4-A)を作成する。同様に第一の潜像要素群B(4-1-B)と第二の潜像要素群B(4-2-B)についても第一の方向(S1方向)の位置を半ピッチずらし、かつ、第二の方向(S2方向)の位置をそろえて合成し、潜像要素群B(4-B)を作成する。
【0071】
次に、図11に示すように、作成した潜像要素群A(4-A)と潜像要素群B(4-B)は、第一の方向(S1方向)の位置をそろえ、かつ、第二の方向(S2方向)には第一のピッチ(P1)の半分(H1)ずらして合成する。これにより潜像要素群(4)が完成する。
【0072】
図12に潜像要素群(4)を示す。完成した潜像要素群(4)は、潜像要素(11)が規則性を有して複数配置されて成る。すなわち、画線幅(W1)の潜像要素(11)が第一の方向(S1方向)に第一のピッチ(P1)で複数配置されて成る。潜像要素(11)は、第一の潜像要素(11-1)及び第二の潜像要素(11-2)が規則性を有して複数配置されて成る。
【0073】
すなわち、第二の方向(S2方向)の画線幅が第二の画線幅(H1)である第一の潜像要素(11-1)及び第二の潜像要素(11-2)が第二の方向(S2方向)に第一のピッチ(P1)で複数交互に配置されて成る。本明細書において、第一の方向(S1方向)の画線幅が第一の画線幅(W1)で、第二の方向(S2方向)の画線幅が第二の画線幅(H1)である第一の潜像要素(11-1)から第nの潜像要素(11-n)(nは二以上の整数)が第二の方向(S2方向)に第二のピッチ(P2)で複数交互に配置されて潜像要素群(4)を構成する規則性を第一の規則性とする。
【0074】
また、第一の方向の画線幅(W1)の潜像要素(11)が第一の方向(S1方向)に第一のピッチ(P1)で複数配置されて成って潜像要素群(4)を構成する規則性を第二の規則性とする。これらの第一の規則性及び第二の規則性は、潜像要素(11)以外の個々の要素や、潜像要素群(4)以外の群に対しても適用できるものとする。
【0075】
以上のように、潜像要素群(4)は、動画効果が発現しない方向である第二の方向(S2方向)の画像の領域について間引き処理を行い、間引き処理された領域に動画効果が発現する第一の方向(S1方向)に圧縮された領域の画像を再配置する構造を有する。効果の面からいうと、動画効果に関与しない方向の画像の解像度を犠牲にするかわりに、動画効果が生じる方向の画像を増やして動画効果を高めることができる。以上が、潜像要素群(4)の構成及び作成方法である。
【0076】
続いて、光輝性要素群(5)の構成と作成手順について説明する。光輝性要素(12)の作成方法は、基潜像要素群(9)を群のまま再配置して潜像要素群(4)とした潜像要素群(4)の作成方法とは異なり、個々の基光輝性要素(14)を第一の規則性に従って再配置してそれぞれの光輝性要素(12)を作成し、これらの光輝性要素(12)を第二の規則性によって複数配置して光輝性要素群(5)とする手順で説明する。
【0077】
当然のことながら、光輝性要素群(5)の作成手順は、この手順に限定されるものではなく、先に説明した潜像要素群(4)の作成手順のように、群のまま再配置する作成手順を用いてもよいし、逆に、潜像要素群(4)に対してこれから説明する手順を適用してもよい。いずれにしても最終的に基光輝性要素(14)が光輝性要素群(5)として、潜像要素群(4)と同じ規則性で再配置されるのであれば、作成手順は問わない。
【0078】
図13に光輝性要素群(5)の一例を示す。光輝性要素群(5)は、光輝性要素(12)が規則性を有して複数配置されて成る。この規則性は、潜像要素群(4)における潜像要素(11)の配置の規則性と同じ規則性であり、第二の規則性に従う。具体的には、画線幅(W1)の光輝性要素(12)が、第一の方向(S1方向)に第一のピッチ(P1)で複数配置されて成る。図14に示すように、本第一の実施の形態における光輝性要素(12)は、第一の光輝性要素(12-1)及び第二の光輝性要素(12-2)が規則性を有して複数配置されて成る。
【0079】
この規則性は、潜像要素(11)における第一の潜像要素(11-1)及び第二の潜像要素(11-2)の配置の規則性と同じ規則性であり、第一の規則性に従う。具体的には、第二の方向(S2方向)に第二の画線幅(H1)の第一の光輝性要素(12-1)及び第二の光輝性要素(12-2)が、第二の方向(S2方向)に第二のピッチ(P2)で複数配置されて成る。
【0080】
すなわち、第一の方向(S1方向)の画線幅が第一の画線幅(W1)で、第二の方向(S2方向)の画線幅が第二の画線幅(H1)である第一の光輝性要素(12-1)から第nの光輝性要素(12-n)(nは二以上の整数)が第一の規則性を有して第二の方向(S2方向)に第二のピッチ(P2)で複数交互に配置されて光輝性要素(12)を構成する。また、第一の方向(S1方向)の画線幅(W1)の光輝性要素(12)が第二の規則性を有して第一の方向(S1方向)に第一のピッチ(P1)で複数配置されて成る光輝性要素群(5)を構成する。
【0081】
第一の光輝性要素(12-1)及び第二の光輝性要素(12-2)は、画線幅(W1)の2倍の幅の基光輝性要素(14)を第一の方向(S1方向)に均等に二分割することで作成される。分割数がnであれば、第一の光輝性要素(12-1)から第nの光輝性要素(12-n)までは、画線幅が光輝性要素(12)の第一のピッチ(P1)及び画線幅(W1)のn倍の幅(W1×n)の基光輝性要素(14)を第一の方向(S1方向)に均等にn分割することで作成される。基光輝性要素(14)は、立ち上がり角度(θ1)で円弧を描く曲線の凹凸構造要素(13)の集合から成る。曲線状の凹凸構造要素(13)が、第二の方向(S2方向)に第二のピッチ(P2)で連続して配置されて一つの基光輝性要素(14)となる。
【0082】
基光輝性要素(14)から光輝性要素(12)を作成する方法の一例を図15に示す。図15(a)に示す基光輝性要素(14)を、図15(b)に示すように基光輝性要素(14)の中央を境として市松模様状(マトリクス状)に幅(W1)、高さ(H1)にn分割して第一の光輝性要素(12-1)及び第二の光輝性要素(12-2)とし、図15(c)に示すようにそれぞれの分割された各nの光輝性要素の第二の方向(S2方向)の位相をそろえて幅(W1)となるように第一の光輝性要素(12-1)及び第二の光輝性要素(12-2)を再配置することで光輝性要素(12)を作成する。
【0083】
これは、潜像要素(11)と同様に、光輝性要素(12)における第二の方向(S2方向)の動画効果に寄与しない光輝性要素(12)が配置された一部の領域について間引き処理を行い、間引き処理された領域に動画効果が発現する第一の方向(S1方向)の光輝性要素(12)が配置された領域を再配置した構造を有する。ここで重要なことは、元々一体であったn倍の画線幅を有する基光輝性要素(14)をn分割して第一の光輝性要素(12-1)及び第二の光輝性要素(12-2)・・・第nの光輝性要素(12-n)を作成することである。
【0084】
ここで図16及び図17において、光輝性要素(12)の基となるための基光輝性要素(14)における凹凸構造要素(13)の一例と、それぞれの基光輝性要素(14)を光輝性要素(12)へと変換する一例を示す。図16(a)から図16(c)に示すのは、基光輝性要素(14)の凹凸構造要素(13)が角度変化を備えた曲線や直線から成る例である。また、図17(a)から図17(c)に示すのは、基光輝性要素(14)の凹凸構造要素(13)が密度変化を備えた直線から成る例である。
【0085】
図16に示した凹凸構造要素(13)の構成は、エンボスや盛り上がりのある印刷や回折格子等のいずれの手段であっても有効に機能する。一方、図17に示した例は、回折を発生させる回折格子を凹凸構造要素(13)に用いた場合にのみ有効に機能する。図17に示した例で光輝性要素(12)を構成する場合には最低でも1mm当たり100本以上の密度の凹凸構造要素(13)を回折格子として配置する構成で回折を生じさせる必要があり、より望ましくは1mm当たり500本以上の回折格子の密度で構成することが好ましい。回折が生じない凹凸構造要素(13)では、図17に示す光輝性要素(12)の構造は適用できない。
【0086】
ここで、本発明の基光輝性要素(14)に適用するために必要となる具体的な光学特性について説明する。図18(a)から図18(b)、図18(c)が示すように、入射する光に対して基光輝性要素(14)の一部のみに光を特に強く反射する輝点や輝線(15)を生じ、かつ、入射する光の角度が変化すると位置変化に対応してその輝点や輝線(15)の位置が連続的に変化する光学的な特徴を基光輝性要素(14)が有している必要がある。
【0087】
図16及び図17に示し凹凸構造要素(13)は、すべてこの光学的な特徴を満たしており、この光学的な特徴を満たしていれば、図16図17に示した以外の構成の凹凸構造要素(13)を用いても何ら問題ない。逆に任意の方向から光が入射した場合に、凹凸構造(13)全体が光を反射する構造では本発明の要件を満たさない。
【0088】
なお、この光学特性は、光輝性動画模様(1)と組み合わさって写し取られた場合にも維持される必要がある。すなわち、光輝性動画模様(1)中の凹凸構造要素(13)はその模様や立体構造を写し取るだけ(再現)でなく、前述のような光を強く反射する特性も同様に写し取る必要がある。
【0089】
基光輝性要素(14)が備える、入射する光の角度が変化すると位置変化に対応してその輝点や輝線(15)の位置が連続的に変化する光学的な特徴は、基光輝性要素(14)を分割して再配置した光輝性要素(12)もそのまま再現される。
【0090】
図18(d)、図18(e)、図18(f)及び図18(g)が示すように、入射する光に対して基光輝性要素(14)の一部のみに光を特に強く反射する輝点や輝線(15)を生じ、かつ、入射する光の角度が変化すると位置変化に対応してその輝点や輝線(15)の位置が連続的に変化する光学的な特徴を光輝性要素(12)も同様に有している。
【0091】
図18(d)から図18(e)の段階では、第一の光輝性要素(12-1)において輝点や輝線(15)の位置が変化し、図18(e)から図18(f)にかけて第一の光輝性要素(12-1)の右端から第二の光輝性要素(12-2)の左端へと輝点や輝線(15)の位置が一気にジャンプする。
【0092】
図18(f)、図18(g)にかけて、輝点や輝線(15)は第二の光輝性要素(12-2)の中で位置が変化する。元々一体であった基光輝性要素(14)を第一の光輝性要素(12-1)及び第二の光輝性要素(12-2)に分割していることから、第一の光輝性要素(12-1)の右端における凹凸構造要素(13)の角度や密度の構成は、第二の光輝性要素(12-2)の左端における凹凸構造要素(13)の角度や密度の構成と最も近似した構成を有している。
【0093】
このため、図18(e)から図18(f)にかけての第一の光輝性要素(12-1)から第二の光輝性要素(12-2)への輝点や輝線(15)のジャンプは、入射光の極めてわずかな角度変化で一気に生じることから、輝点や輝線(15)の動きに不連続感が生じることはなく、基光輝性要素(14)において生じていた輝点や輝線(15)の連続的な移動と比較してもそのスムーズさに変わりなく、観察者に違和感は生じない。
【0094】
また、第一の光輝性要素(12-1)から第二の光輝性要素(12-2)への輝点や輝線(15)のジャンプは、上下方向への輝点や輝線(15)の不連続な移動が伴うが、第一の光輝性要素(12-1)から第二の光輝性要素(12-2)の第二の方向の画線幅(H1)を適正な値以下に設計することで、目視上の違和感を生じさせることなく、連続的でスムーズな輝点や輝線(15)の動きとして観察者に認識させることができる。
【0095】
この光輝性要素の第二の方向(S2方向)の画線幅(H1)の値は、光輝性要素の第一の方向(S1方向)の画線幅(W1)の4倍の値を超えないことが望ましく、より望ましくは光輝性要素の第一の方向(S1方向)の画線幅(W1)の2倍以下の値とすることが好ましい。また、第一の光輝性要素(12-1)から第二の光輝性要素(12-2)自体がそもそも十分に目視し難い大きさとすることがより望ましい。
【0096】
また、光輝性要素群(5)が必要とする光学特性の一つである光輝性とは、光が入射した場合に光を強く反射して明度が上昇したり、色相が変化する特性を指すものとする。光が入射して明度が上昇する(光って見える)特性を明暗フリップフロップ性といい、金属やプラスチック等の艶があると感じる物体において反射で生じる一般的な現象である。色相が変化する特性をカラーフリップフロップ性といい、パール顔料における干渉や回折格子における回折等による特殊な現象である。これらのいずれか一つの光学特性を備える必要がある。
【0097】
凹凸構造要素(13)の密度は、印刷や単純なエンボス加工等で形成する場合、1mm当たり1本~100本とし、回折格子を用いる場合には1mm当たり100本~5,000本となる。基本的に凹凸構造要素(13)の密度を高めることができれば、動画模様(2)の解像度が高くなり視認性が向上する。
【0098】
潜像要素(11)及び光輝性要素(12)の第一の方向(S1方向)の第一のピッチ(P1)は、印刷やエンボスで形成する場合には0.1mm~3mm程度とすることが望ましく、回折格子のような格子線により構成する場合には0.01mm~0.5mm程度にすることが望ましい。第一のピッチ(P1)も凹凸構造要素(13)の密度と同様に値を小さくできるほど、動画模様(2)の解像度が高くなり視認性が向上する。以上が光輝性要素群(5)の説明である。
【0099】
以上の手順で作成した潜像要素群(4)と光輝性要素群(5)を組み合わせる。潜像要素群(4)を構成する潜像要素(11)と光輝性要素群(5)を構成する光輝性要素(12)はいずれも、第一の方向(S1方向)に第一の画線幅(W1)で第一のピッチ(P1)で配置され、さらに各要素は、第二の方向(S2方向)に第一の画線高さ(H1)で第二のピッチ(P2)で交互に配置されて成る。
【0100】
すなわち、図12に示すように、潜像要素(12)は、第一の潜像要素(11-1)から第二の潜像要素(11-2)が複数交互に配列され、図15に示すように、光輝性要素(12)は、第一の光輝性要素(12-1)から第二の光輝性要素(12-1)が複数交互に配置されて成る。
【0101】
本第一の実施の形態では、第一の潜像要素(11-1)が第一の光輝性要素(12-1)に重なり、第二の潜像要素(11-2)が第二の光輝性要素(12-2)に重なる。基本的には同じ規則性で順に配置された第nの潜像要素(11-n)(nは二以上の整数)と第nの光輝性要素(12-n)が重なる構成となる。
【0102】
図3に示したのは、潜像要素群(4)の輪郭線に光輝性要素群(5)の凹凸構造要素(13)を写し取った組み合わせの例であり、図19に示すのは、潜像要素群(4)の外側に光輝性要素群(5)の凹凸構造要素(13)を写し取った(再現)組み合わせの例である。本発明において、潜像要素(11)の一部に曲線又直線の光輝性を有する凹凸構造要素(13)が転写された構造をユニットとし、このユニットが第一の規則性によって連続してライン状に配置された構造をユニット群とする。このユニット群が第二の規則性で複数配置されることで凹凸構造群(3)を構成する。
【0103】
凹凸構造要素(13)を付与しない領域は、光輝性要素群(5)の凹凸構造要素(13)とは異なる光学特性を付与する必要がある。この領域には光輝性要素群(5)よりも光の反射量の少ない構造を用いることが望ましい。例えば、光輝性要素群(5)の凹凸構造要素(13)が回折格子であった場合には、潜像要素群(4)には回折格子を施さない構成を用いたり、モスアイ構造のような無反射構造を用いることができる。
【0104】
図3の例では、動画模様(2)は輪郭線が光を反射して強く光った状態で視認され、図19の例では動画模様(2)の背景が強い光を放ち、動画模様(2)は光を強く反射せずに暗いネガ状態で視認される。このように、動画模様(2)の見せ方によって、光輝性要素群(5)と潜像要素群(4)の組み合わせの構成を選択することができる。
【0105】
図20に本発明の光輝性動画模様(1)の効果を示す。図20(a)に示す光輝性動画模様(1)に対し、図20(b)に示すように特定の方向から光が入射した場合、基画像(6)と同じ動画模様(2)が出現する。図20(c)に示すように入射光の角度が変化した場合、動画模様(2)の位置が変化する。図20(d)のように入射光の角度がさらに変化した場合、動画模様(2)の位置もさらに変化する。入射光の角度変化が連続的である場合、動画模様(2)の位置も連続的に変化する。図20(b)から図20(d)のいずれかの角度において、第一の光輝性要素(12-1)から第二の光輝性要素(12-2)への上下の位置変化を伴う輝線(15)のジャンプが生じているはずであるが、動画模様(2)の動きは連続的でなめらかであり、上下方向への動きが観察者に認識されることはない。以上が、本発明の光輝性動画模様(1)の効果の説明である。
【0106】
以上の効果が生じる基本的な原理は、以下の通りである。まず、光輝性動画模様(1)の中の光輝性要素群(5)の凹凸構造要素(13)と直交する特定の角度で光が入射することで、入射光と直交する角度を成した凹凸構造要素(13)の一部から強い光の反射が生じる。
【0107】
光輝性要素(12)中の凹凸構造要素(13)は必ず一定の角度差や密度差を有するために、この強い反射光は光輝性要素(12)の中の幅の狭い一部の領域からのみ生じ、点状の輝点や帯状の輝線(15)となる。それぞれの光輝性要素(12)から生じたこの輝点や輝線(15)によって、光輝性要素群(5)と組み合わさった潜像要素群(4)の一部が光の強弱としてサンプリングされる。
【0108】
潜像要素群(4)は、もともと一定の第一のピッチ(P1)ずつ位置をずらしながら基画像(6)をサンプリングして圧縮した潜像要素(11)の集合であるため、光輝性要素群(5)の輝点や輝線(15)によって同じ第一のピッチ(P1)でサンプリングされることで、基画像(6)である円が光の強弱により再生される。これが光輝性動画模様(1)に光が入射することで基画像(6)が動画模様(2)として再生される原理である。
【0109】
続いて、再生された動画模様(2)に動画効果が生じる原理について説明する。入射光の角度が変化することで、入射光と直交する角度を成す凹凸構造要素(13)の位置が変化するために、光輝性要素(12)の中の光を強く反射する輝点や輝線(15)が第一の方向(S1方向)に移動する。
【0110】
光輝性要素(12)の中を輝点や輝線(15)が移動することによって、それぞれの潜像要素(11)の中の画像のサンプリング位置が変化し、潜像要素群(4)全体として再生される動画模様(2)の位置が変化する。
【0111】
光輝性要素(12)の中の強い回折光を発する輝点や輝線(15)は、入射する光の角度の変化に応じて、光輝性要素(12)の中を連続的にスムーズに移動するため、潜像要素群(4)がサンプリングされて出現する動画模様(2)の移動も極めて滑らかに見える。以上が、光が入射することで本発明の動画模様が再生される原理と動画効果が生じる原理である。
【0112】
同じ動画効果を従来の技術で実現した場合の圧縮率と、第一の実施の形態において得られた本発明の光輝性動画模様(1)の圧縮率とを比較すると、本発明の光輝性動画模様(1)の圧縮率は従来の圧縮率の2倍の値となり、大幅に圧縮率が緩和される。また、逆に同じ圧縮率で従来の技術と本発明で光輝性動画模様(1)を構成した場合、本発明の動画効果(動画模様(2)の動くの距離))は、2倍となる。これは、従来の技術と比較すると、第一の方向(S1方向)の画像を第二の方向(S2方向)に再配置した構成を用いた本発明では事実上の第一の方向(S1方向)の画像が配置された領域(エリア)が2倍となったためである。
【0113】
本第一の実施の形態では、第一の方向(S1方向)の画像を2倍にして第二の方向(S2方向)に再配置したが、これに限定されるものではなく、3倍にして第二の方向(S2方向)に再配置した場合は圧縮率が3倍に緩和され、5倍にして第二の方向(S2方向)に再配置した場合は圧縮率が5倍に緩和される。ただし、その場合は、第二の方向(S2方向)の画像面積が3分の1、5分の1となるため、理論的には動画模様(2)の視認性や解像度が反比例して低下する。それぞれの凹凸構造要素(13)の形成方法に応じて動画模様(2)の視認性と動画効果が両立する数値を見出す必要がある。
【0114】
本発明の光輝性動画模様(1)は、光輝性を有する適正な凹凸構造要素(13)を形成できることを条件として、いかなる方法を用いて形成してもよい。印刷によって上質紙やコート紙、プラスチック、金属等の上に金インキや銀インキ、パールインキ、透明ニス等の光輝性を有するインキを用いて盛り上がりのある印刷画線によって凹凸構造要素(13)を形成して光輝性動画模様(1)を作成してもよい。
【0115】
この場合、フレキソ印刷やグラビア印刷、スクリーン印刷、凹版印刷等の1μm以上の盛り上がり高さを形成できる印刷方式を用いることが望ましい。また、デジタル印刷機として販売されているUVインキジェットプリンター等の無版方式の印刷機械を用いて盛り上がりのある画線を形成してもよい。昨今、デジタル印刷機でも金インキや銀インキ等の特色インキが販売されており、光輝性を有する凹凸構造要素(13)を形成して光輝性動画模様(1)を印刷することができる。デジタル印刷機を用いた場合、出力物1枚ごとに異なる情報を付与できるため、出力物ごとに動画模様(2)がそれぞれ異なる光輝性動画模様(1)をオンデマンドで出力することもできる。
【0116】
また、金属やプラスチックに直接凹凸構造要素(13)を加工してもよい。切削加工で形成してもよいし、レーザー加工等で形成してもよい。また、金属に描画した光輝性動画模様(1)を金型として光輝性を有する基材にプレス加工を行ったり、艶のある樹脂を流し込みインプリント等を行うことで複製物を光輝性動画模様(1)としてもよい。
【0117】
また、凹凸構造要素(13)を回折が生じるレベルの微細な構成として光輝性動画模様(1)をホログラムとしてもよい。ホログラムのような回折が生じる構成を用いる場合に限り、図17に示した光輝性要素(12)中の凹凸構造要素(13)の密度が変化する形態で光輝性動画模様(1)を作成することができる。以上が、本第一の実施の形態の説明である。
【0118】
続いて、第二の実施の形態として光輝性動画模様(1)に対して、モアレ拡大現象(Moire Magnification)と呼ばれる微小な画像の集合をサンプリング時のわずかな周期性のズレを利用して拡大して表示させる特殊な現象を利用した例を説明する。
【0119】
(第二の実施の形態)
図21に、第二の実施の形態における光輝性動画模様(1)を示す。本第二の実施の形態における光輝性動画模様(1)は、光が入射することで動画模様(2)が複数出現し、観察位置が変化したり、入射する光の角度が変化することで光輝性動画模様(1)の中で再生された複数の動画模様(2)が同じ方向にスムーズに移動する動画効果が生じる。
【0120】
図22に示す、光輝性動画模様(1)を構成する凹凸構造群(3)は、第一の実施形態と同様に光輝性動画模様(1)が表す凹凸構造群(3)は、潜像要素(11)の一部に凹凸構造要素(13)が配置されたユニット(X)が複数配置(マトリクス状)されて成る。第二の実施の形態における光輝性動画模様(1)を模式的に示した図と、その構成を示す拡大図である。
【0121】
図23に光輝性動画模様(1)の構成要素について概要を示す。本第二の実施の形態の動画模様(2)は、輪郭線を光らせる構成である。光輝性動画模様(1)は、動画模様(2)として出現する基画像(6)が圧縮された潜像要素群(4)と、それと対を成す光輝性要素群(5)を組み合わせることで構成される。なお、潜像要素群(4)は、潜像要素群A(4-A)と潜像要素群B(4-B)から成り、潜像要素群A(4-A)は、第一の潜像要素群A(4-1-A、4-2-A)から成り、潜像要素群B(4-B)は、第一の潜像要素群B(4-1-B、4-2-B)から成る。
【0122】
図24から図28までを用いて潜像要素群(4)の構成及びその作成方法について説明する。第二の実施の形態における分割数nは、第一の実施の形態と同様にn=2とする。光輝性要素群(5)と組み合わせる潜像要素群(4)を作成するために、まず基となる基潜像要素群(9)を作成する。この基潜像要素群(9)をさらに分割して再配置することで光輝性要素群(5)が完成する。
【0123】
図24に示す基潜像要素群(9)は、基潜像要素(8)が規則性を有して複数配置されて成る。本第二の実施の形態における基潜像要素群(9)においては、基潜像要素(8)が幅(W0)及び第三のピッチ(P3)で第一の方向(S1方向)に連続して配置されて成る。本第二の実施の形態の基潜像要素群(9)における基潜像要素(8)の第三のピッチ(P3)は、光輝性要素群(5)における光輝性要素(12)の第一のピッチ(P1)とはわずかに異なる値である必要がある。
【0124】
モアレ拡大現象を利用するためには、光輝性要素群(5)における光輝性要素(12)の配置の規則性である第二の規則性と異なる第三の規則性で基潜像要素(8)を複数配置して基潜像要素群(9)を構成する必要がある。これがモアレ拡大現象を利用するための具体的な条件であり、第一の実施の形態との一番の違いである。この条件については後述する。
【0125】
本第二の実施の形態において、それぞれの基潜像要素(8)は、幅(W)の基画像(6)全体を第一の方向(S1方向)に一定の割合で圧縮して幅(W0)とすることで作成する。
【0126】
本発明において、前述のような基画像(6)全体を特定の方向に縮小することを「圧縮」とする。基潜像要素(8)の幅(W0)は、第三のピッチ(P3)よりも大きな値をとる必要があり、また分割数をn(nは二以上の整数)とすると、第三のピッチ(P3)のn倍(P3×n)以下の数値とする必要がある。
【0127】
基潜像要素(8)の第三のピッチ(P3)の値を調整することで基画像(6)と動画模様(2)を同じ画像とすることができるが、設計過程で上下左右の比率を変えたり、形状に歪みを生じさせることも可能である。基画像(6)を圧縮したそれぞれの基潜像要素(8)は、すべて同じ形状であり、一つの基潜像要素(8)の位置を起点(T)として、第一の方向(S1方向)に第三のピッチ(P3)ずつずらした位置にそれぞれの基潜像要素(8)を配置することで基潜像要素群(9)が完成する。
【0128】
これが本発明の基潜像要素群(9)の基本的な構成と作成方法である。ここで、基潜像要素(8)の幅(W0)を基画像(6)の幅(W)で除して100を乗した値を圧縮率と定義する。なお、第一の実施の形態と同じく、動画効果が生じる第一の方向(S1方向)とは異なる方向(S2方向)の基画像(6)と基潜像要素(8)の高さ(H)の値は、この方向(S2方向)に対して圧縮が行われることはないため、同じ値とすればよい。
【0129】
ここで本発明の基潜像要素群(9)を構成する上での特徴として、第一の実施の形態の基潜像要素群(9)と同様に、隣り合う基潜像要素(8)同士が重なり合う場合がある。図24の拡大図に基潜像要素(8)同士の重なり合いの状態を示す。図24の拡大図は、隣り合う基潜像要素(8)の第三のピッチ(P3)と幅(W0)の関係が理解しやすいように、第一の方向(S1方向)に画像を拡大して表示した図である。
【0130】
図24に示すように、本発明の基潜像要素群(9)は、基潜像要素(8)の第一の方向(S1方向)の幅(W0)より、第一の方向(S1方向)の第三のピッチ(P3)のほうが小さく構成されて成るため、隣り合う基潜像要素(8)同士が重なり合っている。第二の実施の形態においては、基潜像要素(8)の幅(W0)は、第三のピッチ(P3)の1.5倍の値とした。本第二の実施の形態の基潜像要素群(9)における基潜像要素(8)の配置の規則性を第三の規則性とする。
【0131】
次に、作成した基潜像要素群(9)を潜像要素群(4)に再配置する。そのためには、第一の実施の形態と同様に、図25に示すように基潜像要素群(9)を構成する基潜像要素(8)を第一の基潜像要素群(9-1)及び第二の基潜像要素群(9-2)に分割し、更に複数の要素群に分割する。これは、最終的に潜像要素群(4)と光輝性要素群(5)と組み合わせるために、後記する光輝性要素群(5)の規則性に合わせて基潜像要素群(9)を構成する要素を再配置することを目的とする。
【0132】
はじめに基潜像要素群(9)の中の基潜像要素(8)同士が第一の方向(S1方向)において互いに重なり合わない状態まで基潜像要素(8)ごとに分割する。本第二の実施の形態においては、分割数が2であるため、基潜像要素群(9)の中で隣り合う基潜像要素(8)を交互に抽出して第一の基潜像要素群(9-1)と第二の基潜像要素群(9-2)の2つの要素群を作成する。
【0133】
第一の基潜像要素群(9-1)及び第二の基潜像要素群(9-2)の中の基潜像要素(8)は、幅(W0)であり、配置ピッチは第三のピッチ(P3)×2となる。幅(W0)は、第三のピッチ(P3)×2よりも小さい値であるため、第一の基潜像要素群(9-1)及び第二の基潜像要素群(9-2)の中の基潜像要素(8)同士は重ならない。この段階では、分割数に応じて隣り合う基潜像要素(8)同士が重ならない状態まで基潜像要素群(9)を第一の基潜像要素群(9-1)から第nの基潜像要素群(9-n)にまで分割する必要がある。これについては、第一の実施の形態と同様である。
【0134】
次に、第一の実施の形態と同様に、スリット状のフレーム(10)を第一の基潜像要素群(9-1)と第二の基潜像要素群(9-2)に当てはめ、フレーム内に入った画像(9-1-1)とフレーム内に入らなかった画像(9-1-2)とでそれぞれ分割し、更に
第一の基潜像要素群A(9-1-A)、第一の基潜像要素群B(9-1-B)、第二の基潜像要素群A´(9-2-A)及び第二の基潜像要素群B´(9-2-B)の四つの要素に分割される。
【0135】
なお、基潜像要素群(9)の中の各基潜像要素(8)は、第二のピッチ(P2)の倍数(P2×2)で配置されており、これを第一のピッチの倍数(P1×2)の周期で半分に分割するため、第一の基潜像要素群A(9-1-A)、第一の基潜像要素群B(9-1-B)、第二の基潜像要素群A´(9-2-A)及び第二の基潜像要素群B´(9-2-B)に含まれる基潜像要素(8)は、各要素が第一の実施の形態のように単純に半分に分断されるのではなく、一定の周期のズレをもって分断されるため、それぞれの幅が異なる。
【0136】
また、一つの基潜像要素(8)において必要な特定の幅(W1)に満たずに分断された場合は、隣り合う基潜像要素(8)から幅(W1)に満たなかった幅分の画像を充当して配置するものとする。以上の分割作業によって、個々の基潜像要素(8)は、光輝性要素群(5)における光輝性要素(12)の第一のピッチ(P1)と同じピッチ(P1)で均等な幅に二分割された状態となる。
【0137】
結果として、この段階で第一の基潜像要素群A(9-1-A)、第一の基潜像要素群B(9-1-B)、第二の基潜像要素群A´(9-2-A)及び第二の基潜像要素群B´(9-2-B)を構成する各潜像要素の画線幅(W0)から光輝性要素(12)の配置ピッチ(P1)と同じ値の幅(W1)に変換される。本明細書において、この手順を第一の実施の形態と同様に「基潜像要素(8)を第一の方向(S1方向)に光輝性要素群(5)における光輝性要素(12)の第一のピッチ(P1)と同じピッチで均等な幅にn分割する」と呼ぶ。
【0138】
次に、第一の実施の形態と同じ手順を用いて、第一の基潜像要素群A(9-1-A)、第一の基潜像要素群B(9-1-B)、第二の基潜像要素群A´(9-2-A)及び第二の基潜像要素群B´(9-2-B)の四つの要素の第二の方向(S2方向)の画像の配置された領域を一定の間隔の幅(H1)で間引き処理を行い、図26に示すように第一の潜像要素群A(4-1-A)、第一の潜像要素群B(4-1-B)、第二の潜像要素群A(4-2-A)及び第二の潜像要素群B(4-2-B)を作成する。
【0139】
なお、本第二の実施の形態では、一例として、第二の方向(S2方向)については、第二の画線幅(H1)で第二のピッチ(P2)で分断する。第二の実施の形態においては、基潜像要素(8)の幅(W1)は、第一のピッチ(P1)の2倍の値としたため、基本的に第二の画線幅(H1)は、第二のピッチ(P2)の二分の一の値で分断することが望ましい。仮に基潜像要素(8)の幅(W1)を、第一のピッチ(P1)のn倍の値とした場合、基本的に第二の画線幅(H1)は、第二のピッチ(P2)のn分の一の値で分割することが望ましい。
【0140】
続いて、図26に示すように、第一の潜像要素群A(4-1-A)、第一の潜像要素群B(4-1-B)、第二の潜像要素群A(4-2-A)及び第二の潜像要素群B(4-2-B)のうち、第一の潜像要素群A(4-1-A)と第二の潜像要素群A(4-2-A)をそれぞれの要素が重なり合わないように第一の方向(S1方向)の位置を第一のピッチ(P1)ずらし、かつ、第二の方向(S2方向)にそろえて合成し、潜像要素群A(4-A)を作成する。同様に第一の潜像要素群B(4-1-B)と第二の潜像要素群B(4-2-B)についても第一の方向(S1方向)の位置を半ピッチずらし、かつ、第二の方向(S2方向)にそろえて合成し、潜像要素群B(4-B)を作成する。
【0141】
最後に図27に示すように、作成した潜像要素群A(4-A)と潜像要素群B(4-B)とを、第二の方向(S2方向)に位相をピッチの半分(H1)ずらして合成する。これにより潜像要素群(4)が完成する。
【0142】
図28に潜像要素群(4)を示す。完成した潜像要素群(4)は、第一の潜像要素(11-1)及び第二の潜像要素(11-2)が第一の規則性を有して複数配置されて成る。すなわち、第一の方向(S1)の画線幅が第一の画線幅(W1)で、第二の方向(S2)の画線幅が第二の画線幅(H1)である第一の潜像要素(11-1)から第nの潜像要素(11-n)(nは二以上の整数)が第二の方向(S2方向)に特定のピッチ(P2)で複数交互に配置されて潜像要素(11)を構成する。
【0143】
これは第一の実施の形態における第一の規則性と同じである。また、第一の方向の画線幅(W1)の潜像要素(11)が第一の方向(S1方向)に第一のピッチ(P1)で複数配置されて成る潜像要素群(4)を構成する。以上が、潜像要素群(4)の構成及び作成方法である。
【0144】
続いて、光輝性要素群(5)について説明する。図29に光輝性要素群(5)の一例を示す。光輝性要素群(5)は、光輝性要素(12)が規則性を有して複数配置されて成る。この規則性は、潜像要素群(4)における潜像要素(11)の配置の規則性と同じ規則性である。この規則性は、潜像要素(11)における第一の潜像要素(11-1)及び第二の潜像要素(11-2)の配置の規則性と同じ規則性である。
【0145】
光輝性要素(12)は、第一の光輝性要素(12-1)から第nの光輝性要素(12-n)が第一の規則性を有して複数配置されて成る。すなわち、第一の方向の画線幅が第一の画線幅(W1)で、第二の方向の画線幅が第二の画線幅(H1)である第一の光輝性要素(12-1)から第nの光輝性要素(12-n)(nは二以上の整数)が第二の方向(S2方向)に第二のピッチ(P2)で複数交互に配置されて光輝性要素(12)を構成する。
【0146】
また、第一の方向(S1方向)の画線幅(W1)の光輝性要素(12)は、第一の方向(S1方向)に第一のピッチ(P1)で第二の規則性によって複数配置されて光輝性要素群(5)を構成する。
【0147】
以上の手順で作成した潜像要素群(4)と光輝性要素群(5)を組み合わせる。潜像要素群(4)を構成する潜像要素(11)と光輝性要素群(5)を構成する光輝性要素(12)はいずれも、第一の方向(S1方向)に第一の画線幅(W1)で第一のピッチ(P1)で各要素が配置され、さらに各要素は、第二の方向(S2方向)に第一の画線高さ(H1)で第二のピッチ(P2)で交互に配置されて成る。同じ規則性を有する潜像要素(11)と光輝性要素(12)が完全に一致する位置関係で潜像要素群(4)と光輝性要素群(5)を重ね合わせて組み合わせる。第一の実施の形態と同様に第二の実施の形態においても、潜像要素(11)の一部に曲線又直線の光輝性を有する凹凸構造要素(13)が転写された構造をユニットとし、このユニットが第一の規則性によって連続してライン状に配置された構造をユニット群とする。このユニット群が第二の規則性で複数配置されることで凹凸構造群(3)を構成する。
【0148】
図30に本発明の光輝性動画模様(1)の効果を示す。図30(a)に示す光輝性動画模様(1)に対し、図30(b)に示すように特定の方向から光が入射した場合、基画像(6)と同じ動画模様(2)が複数出現する。図30(c)に示すように入射光の角度が変化した場合、動画模様(2)の位置が変化する。第二の実施の形態の光輝性動画模様(1)においては、それぞれの動画模様(2)はすべて同じ速度で同じ方向に動く。図30(d)のように入射光の角度がさらに変化した場合、動画模様(2)の位置もさらに変化する。入射光の角度変化が連続的である場合、動画模様(2)の位置も連続的に変化する。以上が、本発明の光輝性動画模様(1)の効果の説明である。
【0149】
以上の効果が生じる基本的な原理は、以下の通りである。光輝性動画模様(1)の中の光輝性要素群(5)の凹凸構造要素(13)と直交する特定の角度で光が入射し、入射光と直交する角度を成す凹凸構造要素(13)の一部から強い光の反射が生じる。光輝性要素(12)中の凹凸構造要素(13)は必ず一定の角度差や密度差を有するために、この強い反射光は光輝性要素(12)の中の幅の狭い一部の領域からのみ生じ、点状の輝点や帯状の輝線(15)となる。それぞれの光輝性要素(12)から生じたこの輝点や輝線(15)によって、光輝性要素群(5)と組み合わさった潜像要素群(4)の一部が光の強弱としてサンプリングされる。
【0150】
潜像要素群(4)の基の画像である基潜像要素群(9)における基潜像要素(8)の第三のピッチ(P3)は、光輝性要素群(5)における光輝性要素(12)の第一のピッチ(P1)とわずかに異なる。基潜像要素(8)が第三のピッチ(P3)で配された基潜像要素群(9)が、光輝性要素群(5)の輝点や輝線(15)によって異なる第一のピッチ(P1)おきにサンプリングされることで、再生されるそれぞれの基潜像要素(8)の位置にわずかなズレが生じ、モアレ拡大現象に基づいて基画像(6)である円が光の強弱により再生される。これが光輝性動画模様(1)に光が入射することで基画像(6)が動画模様(2)として再生される原理である。
【0151】
なお、再生された動画模様(2)に動画効果が生じる原理と、従来の技術の動画効果と比較した効果については、第一の実施の形態と同じであるため省略する。
【0152】
ここでモアレ拡大現象を生じさせるための条件について具体的に説明する。条件の一つとして、基潜像要素群(9)における基潜像要素(8)の第三のピッチ(P3)は、光輝性要素群(5)における光輝性要素(12)の第一のピッチ(P1)とはわずかに異なる値である必要がある。
【0153】
基潜像要素(8)の第三のピッチ(P3)と光輝性要素(12)の第一のピッチ(P1)の差は大きく異なりすぎてもならず、光輝性要素(12)の第一のピッチ(P1)に対する基潜像要素(8)の第三のピッチ(P3)の比率は0.8から1.2程度とすることが望ましい(ただし、前述のとおり1を除く)。より望ましくは、0.95から1.05である。これは、出現する動画模様(2)を基画像(6)と同じように見える画像とし、かつ動画模様(2)の動きを大きく見せるために必要な条件である。これらの値を超えれば、出現する動画模様(2)の数が増えすぎたり、動きの幅が小さくなりすぎて動画効果が低下する。
【0154】
本第二の実施の形態においては、基潜像要素(8)と光輝性要素(12)の配置ピッチを異ならせて、配置方向を同じ第一の方向(S1方向)としたが、基潜像要素(8)と光輝性要素(12)の配置ピッチを同じ値として、第一の方向(S1方向)における一方の要素の配置方向に対する角度をずらして配置してもよい。この場合、二つの要素の配置方向の差は、10度以内で構成するものであり、3度以下がより望ましい。また、配置ピッチと配置方向を同時に変えてもよい。基本的には、基潜像要素(8)と光輝性要素(12)の配置の規則性がわずかに異なれば、以下で説明する「モアレ拡大現象」を生じさせることができるためである。
【0155】
それぞれの方向にわずかにピッチを変えたり、配置する角度をわずかにずらし、基潜像要素(8)と光輝性要素(12)の二つの要素の規則性をわずかに異ならせ重ね合わせて配することによって、微小な模様の集合体が拡大されたモアレ模様として出現する、「モアレ拡大現象」と呼ばれる現象を利用することができる。このモアレ拡大現象は、特許4427796号公報や特許第5131789号公報に記載の構成を用いることで様々な効果を発現させることが可能であり、本発明においてこれらの構成を用いてもよい。本第二の実施の形態において基画像(6)として「円」を選択したが、これに限定されるものではなく、文字記号、数字、マーク、写真等の任意の画像を用いることができる。以上が光輝性動画模様(1)の構成と作成方法である。
【0156】
図31に本発明の光輝性動画模様(1)をホログラム化した場合の層構造の一例を示す。本明細書中では、発明の光輝性動画模様(1)に関して、光輝性動画模様(1)についてのみ具体的に記載したが、これらは主として最低限の構成のホログラム形成層(16)にあたるものであり、この構成に蒸着層(17)や透明反射層(18)を施して輝度を高めたり、保護層(19)を設けて耐久性を高めたり、接着アンカー層(20)や接着層(21)を設けて基材に貼付できる形態とすることは、本発明の常識的な応用の範囲である。
【0157】
また、本発明の光輝性動画模様(1)が形成される基材又は光輝性動画模様(1)をホログラム化したホログラムにおいて、光輝性動画模様の近傍に異なる光学的効果をもたらすエレメントを配置してもよい。
【0158】
異なる光学的効果をもたらすエレメントの一例として、異方性のマット構造や彩紋状の回折格子等があげられる。これらの異なる光学的効果をもたらすエレメントを近傍に配置することで偽造防止効果のさらなる向上が期待できる。
【0159】
(実施例)
実施例として、金属板にレーザーで凹凸を彫刻することによって光輝性動画模様(1)を形成した例について図3から図20までを用いて説明する。これは第一の実施の形態と同様にインテグラルフォトグラフィ方式の構成の潜像要素群(4)を用いた形態である。
【0160】
基材は表面にニッケル・リンメッキが施された金属板であり、基材に図3に示す光輝性動画模様(1)を直接レーザーで描画することで本発明の光輝性動画模様(1)を作成した例である。基画像(6)は、幅4mm×高さ4mmの円とした。これに、幅(W)6mm×高さ(H)5mmのフレーム(7)を当てはめて幅(W1)1mm×高さ(H)5mmのそれぞれの基潜像要素群(9)を作成し、これを1ピッチ毎に交互に基潜像要素(8)を取り出して第一の基潜像要素群(9-1)及び第二の基潜像要素群(9-2)とし、それぞれを図8に示すように第一の方向(S1方向)に幅0.5mmピッチ1mmのスリットで分断し、かつ、図10に示すように第二の方向(S2方向)に幅0.5mmピッチ1mmのスリットで分断して第一の規則性で配置して潜像要素群(4)を作成した。この圧縮率は、約16%である。
【0161】
また、光輝性要素(12)は、θ1=45度の円弧状で幅(W1)1mmの曲線を凹凸構造要素(13)とし、第二の方向(S2方向)の配置ピッチを0.1mmとして連続して配置して基光輝性要素(14)とし、これを第一の方向(S1方向)に中央で分断して第一の規則性で再配置して光輝性要素群(5)とした。潜像要素群(4)と光輝性要素群(5)を組み合わせるにあたって、潜像要素群(4)の輪郭に光輝性要素群(5)の凹凸構造要素(13)を写し取って光輝性動画模様(1)とした。
【0162】
作成した光輝性動画模様(1)を、YVOレーザーマーカー(キーエンス製)を用いてレーザーパワー40%、スキャンスピード600mm、Qスイッチ周波数60KHzの描画設定で金属板に5回レーザーを照射することで本発明の光輝性動画模様(1)を作成した。凹凸構造要素(13)を凹構造とし、凹凸構造要素(13)以外には加工を施さないことで、異なる光学特性とした。
【0163】
完成した図20(a)に示す光輝性動画模様(1)に対して、図20(b)に示すように、光を入射させたところ、光輝性動画模様(1)の中に円が光の強弱によって出現し、光源に対して光輝性動画模様(1)の角度を変化させたところ、図20(c)及び図20(d)のように光輝性動画模様(1)中の動画模様(2)の位置が変化する、いわゆる動画効果が発現することが確認できた。また、ステンレス板にこの光輝性動画模様(1)を描画し、これをエンボス加工用の原版としてプレス機で使用することによって光沢を有するプラスチック製のカードの表面に光輝性動画模様(1)を転写することができた。
【符号の説明】
【0164】
1 光輝性動画模様
2 動画模様
3 凹凸構造群
4 潜像要素群
5 光輝性要素群
6 基画像
7 フレーム
8 基潜像要素
9 基潜像要素群
10 スリット状フレーム
11 潜像要素
12 光輝性要素
13 凹凸構造要素
14 基光輝性要素
15 輝点や輝線
16 ホログラム形成層
17 蒸着層
18 透明反射層
19 保護層
20 接着アンカー層
21 接着層
22 基光輝性動画模様
図1
図2
図3
図4
図5
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