(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115677
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】ペンタシル型ゼオライト
(51)【国際特許分類】
C01B 39/40 20060101AFI20240820BHJP
B01J 20/18 20060101ALI20240820BHJP
B01J 20/30 20060101ALI20240820BHJP
B01J 20/28 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
C01B39/40
B01J20/18 A
B01J20/30
B01J20/28 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021448
(22)【出願日】2023-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】西野 弘晃
(72)【発明者】
【氏名】三島 崇禎
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 雪夫
【テーマコード(参考)】
4G066
4G073
【Fターム(参考)】
4G066AA13A
4G066AA20A
4G066AA61B
4G066AB09A
4G066AB21A
4G066BA09
4G066BA20
4G066BA26
4G066BA36
4G066BA38
4G066CA01
4G066CA43
4G066DA03
4G066FA03
4G066FA05
4G066FA21
4G066FA22
4G066FA34
4G066FA37
4G073BA02
4G073BA04
4G073BA63
4G073BA69
4G073BA75
4G073BA82
4G073BB05
4G073BB48
4G073BD21
4G073CZ12
4G073CZ49
4G073FA02
4G073FB11
4G073FB21
4G073FC19
4G073FD12
4G073FD23
4G073GA01
4G073GA11
4G073GA12
4G073UA01
4G073UA06
(57)【要約】
【課題】
疎水性が高く、なおかつ、粘度が低いスラリーが得られるペンタシル型ゼオライト及びその製造方法の少なくともいずれかを提供することを目的とする。
【解決手段】
一次粒子の平均長軸径が0.5μm以上、及び、平均アスペクト比が1.2以下であり、なおかつ、アルミニウムをAl2O3換算したモル数に対する、ケイ素をSiO2換算したモル数が200以上である、ペンタシル型ゼオライトを提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次粒子の平均長軸径が0.5μm以上、及び、平均アスペクト比が1.2以下であり、なおかつ、アルミニウムをAl2O3換算したモル数に対する、ケイ素をSiO2換算したモル数が200以上である、ペンタシル型ゼオライト。
【請求項2】
平均粒子径D10、D50及びD90が以下の(1)式を満たす、請求項1に記載のペンタシル型ゼオライト。
D50/(D90-D10)>0.2 ・・・(1)
【請求項3】
BET比表面積が300m2/g以上である、請求項1または請求項2に記載のペンタシル型ゼオライト。
【請求項4】
非晶質シリカ源、アルミナ源、アルカリ源、第四級アンモニウムカチオン及び水を含む組成物を結晶化して結晶化物を得る結晶化工程、該結晶化物を400℃以上800℃以下で焼成して、アルカリ金属含有量が酸化物換算で0.01質量%以上0.50質量%以下である焼成物を得る焼成工程、及び、含水蒸気雰囲気、400℃以上800℃以下で該焼成物を焼成するスチーム処理工程、を含む、請求項1または請求項2に記載のペンタシル型ゼオライトの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペンタシル型ゼオライト及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
含水蒸気雰囲気の有機化合物を吸着除去するための吸着剤として、疎水性の高いペンタシル型ゼオライトが求められている。例えば、特許文献1では、アミンを構造指向剤として使用する合成方法で得られたペンタシル型ゼオライトに、スチーム処理することで、疎水性の高いペンタシル型ゼオライトが開示されている。
【0003】
一方、ペンタシル型ゼオライトを吸着剤とする場合、これ含むスラリーを担体にコーティングされるが、スラリーの粘度が高いと均一なコーティングができない。スラリー粘度の抑制のため、特許文献2では、ペンタシル型ゼオライトの一次粒子における長軸径を制御することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-11422号公報
【特許文献2】特開2019-178049号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1で得られるペンタシル型ゼオライトは疎水性が高い一方、粒径が不均一であるため、得られるゼオライトスラリーの粘性が高かった。また、特許文献2では、開示されているペンタシル型ゼオライトをゼオライトスラリーとした際のスラリー粘度が抑制されている一方、疎水性が不十分であり、更なる疎水化処理が必要であった。しかしながら、単に処理温度を上げた熱処理(例えば、特許文献2のペンタシル型ゼオライトに対し、特許文献1のスチーム処理をそのまま適用した場合)では、ゼオライト自体が劣化してしまうため、疎水性が低下してしまう。
【0006】
本開示の目的は、疎水性が高く、なおかつ、粘度が低いスラリーが得られるペンタシル型ゼオライト及びその製造方法の少なくともいずれかを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示においては、疎水性を低下させることなく、スラリーの低粘度化について検討した。その結果、組成が制御されたペンタシル型ゼオライトを特定の条件で熱処理することにより、疎水性を低下させることなく、ペンタシル型ゼオライトの粉末物性が制御されることを見出した。すなわち、本発明は特許請求の範囲に記載のとおりであり、また、本開示の要旨は以下のとおりである。
[1] 一次粒子の平均長軸径が0.5μm以上、及び、平均アスペクト比が1.2以下であり、なおかつ、アルミニウムをAl2O3換算したモル数に対する、ケイ素をSiO2換算したモル数が200以上である、ペンタシル型ゼオライト。
[2] 平均粒子径D10、D50及びD90が以下の(1)式を満たす、前記[1]に記載のペンタシル型ゼオライト。
【0008】
D50/(D90-D10)>0.2 ・・・(1)
[3] BET比表面積が300m2/g以上である、前記[1]または[2]に記載のペンタシル型ゼオライト。
[4] 非晶質シリカ源、アルミナ源、アルカリ源、第四級アンモニウムカチオン及び水を含む組成物を結晶化して結晶化物を得る結晶化工程、該結晶化物を400℃以上800℃以下で焼成して、アルカリ金属含有量が酸化物換算で0.01質量%以上0.50質量%以下である焼成物を得る焼成工程、及び、含水蒸気雰囲気、400℃以上800℃以下で該焼成物を焼成するスチーム処理工程、を含む、前記[1]乃至[3]のいずれかひとつに記載のペンタシル型ゼオライトの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本開示により、疎水性が高く、なおかつ、粘度が低いスラリーが得られるペンタシル型ゼオライト及びその製造方法の少なくともいずれか、を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一次粒子径の長軸径及び短軸径の計測方法を示した模式図である。
【
図2】実施例1のペンタシル型ゼオライトのSEM観察図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示に係るペンタシル型ゼオライトについて、実施形態の一例を示して説明する。本実施形態における各用語は以下に示すとおりである。
【0012】
「アルミノシリケート」は、アルミニウム(Al)とケイ素(Si)とが酸素(O)を介したネットワークの繰返しからなる構造を有する複合酸化物である。アルミニウムとケイ素で電荷の数が異なるため、電荷を補償するために例えば、H+やNa+といったカウンターカチオンが存在する。アルミノシリケートのうち、その粉末X線回折(以下、「XRD」ともいう。)パターンにおいて、結晶性のXRDピークを有するものが「結晶性アルミノシリケート」、及び、結晶性のXRDピークを有さないものが「非晶質アルミノシリケート」である。
【0013】
本実施形態において、XRDパターンは以下の条件のXRD測定より得られるものが挙げられる。
【0014】
加速電流・電圧 : 40mA・40kV
線源 : CuKα線(λ=1.5405Å)
測定モード : ステップスキャン
スキャン条件 : 40°/分
計測時間 : 3秒
測定範囲 : 2θ=3°から43°
発散縦制限スリット: 10mm
発散/入射スリット: 1°
受光スリット : open
受光ソーラースリット : 5°
検出器 : 半導体検出器(D/teX Ultra)
フィルター : Niフィルター
XRDパターンは一般的な粉末X線回折装置(例えば、UltimaIV Protectus、リガク社製)を使用して測定することができる。また、結晶性のXRDピークは、一般的な解析ソフトを使用したXRDパターンの解析においてピークトップの2θが特定され検出されるピークであり、半値幅が2θ=0.50°以下のXRDピークが例示できる。
【0015】
「ゼオライト」とは、骨格原子(以下、「T原子」ともいう。)が酸素(O)を介した規則的構造を有する化合物であり、T原子が金属原子及び又は半金属原子の少なくともいずれかからなる化合物である。金属原子としては、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、鉄(Fe)、亜鉛(Zn)、ガリウム(Ga)及びスズ(Sn)の群から選ばれる1以上が例示でき、アルミニウム及び鉄の少なくともいずれかであることが好ましく、アルミニウムであることがより好ましい。半金属原子としては、ホウ素(B)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)及びテルル(Te)の群から選ばれる1以上が例示でき、ケイ素であることが好ましい。
【0016】
「ゼオライト類似物質」とは、T原子が酸素を介した規則的構造を有する化合物であり、T原子に少なくとも金属及び半金属以外の原子(以下、「非金属原子」ともいう。)を含む化合物である。非金属原子としてリン(P)が例示できる。ゼオライト類似物質として、アルミノフォスフェート(AlPO)やシリコアルミノフォスフェート(SAPO)など、T原子としてリン(P)を含む複合リン化合物が例示できる。
【0017】
ゼオライトやゼオライト類似物質における「規則的構造(以下、「ゼオライト構造」ともいう。)」とは、国際ゼオライト学会(International ZeoliteAssociation)のStructure Commissionが定めている構造コード(以下、単に「構造コード」ともいう。)で特定される骨格構造である。例えば、MFI構造は構造コード「MFI」として、特定される骨格構造である。FER構造は、IZAの構造委員会のホームページhttp://www.iza-struture.org/databases/のZeolite Framework TypesのMFIに記載のXRDパターン(以下、「参照パターン」ともいう。)との対比によって、ゼオライト構造は同定できる。ゼオライト構造に関し、骨格構造、結晶構造又は結晶相はそれぞれ同義で使用される。
【0018】
本実施形態において、「MFI型ゼオライト」など、「~型ゼオライト」は、当該構造コードのゼオライト構造を有するゼオライトを意味し、好ましくは当該構造コードのゼオライト構造を有する結晶性アルミノシリケートを意味する。
【0019】
ペンタシル型ゼオライトとは、酸素5員環の組合せを含むゼオライトである。ペンタシル型ゼオライトとして、IZAが規定する構造コードでMFI型、MEL型及びこれらの連晶体の群から選ばれる1以上の骨格構造を挙げることができる。MFI型ゼオライトとして、例えば、ZSM-5、シリカライト-1等、MEL型ゼオライトとしてZSM-11、シリカライト-2等を挙げることができる。
【0020】
ペンタシル型ゼオライトの結晶相は、CollectionofsimulatedXRDpowderpatternsforzeolites,Fifthrevisededition,p.483(2007)に記載の粉末X線回折(以下、「XRD」とする。)パターン、又はIZAの構造委員会のホームページ(http://www.iza-struture.org/databases/)のDisorderinZeoliteFrameworksのThePentasilFamilyに記載のXRDパターンの少なくともいずれかと比較することで、これを同定することができる。
【0021】
「シリカライト」とは、Alを全く含まない又はAlの含有量が極めて少ないゼオライトであり、アルミニウム(Al)をAl2O3換算したモル数[mol]に対する、ケイ素(Si)をSiO2換算したモル数[mol](以下「SiO2/Al2O3モル比」ともいう。)が200以上のペンタシル型ゼオライトである。
【0022】
以下、本実施形態のペンタシル型ゼオライトについて説明する。
【0023】
本実施形態のペンタシル型ゼオライトは、一次粒子の平均長軸径が0.5μm以上、及び、平均アスペクト比が1.2以下であり、なおかつ、アルミニウムをAl2O3換算したモル数に対する、ケイ素をSiO2換算したモル数が200以上である、ペンタシル型ゼオライト、である。等方性が高く、なおかつ、一定程度の大きさを有する粒子からなることで、実用的な疎水性を有したまま、従来の疎水性のペンタシル型ゼオライトと比べ、操作性(ハンドリング)が高くなる。これにより、従来の疎水性ペンタシル型ゼオライトと比べ、スラリー化したときの粘度が低くなる。
【0024】
本実施形態のペンタシル型ゼオライトは、MFI型ゼオライト、MEL型ゼオライト、並びに、MFI型ゼオライト及びMEL型ゼオライトの連晶体の群から選ばれる1以上であればよく、MFI型ゼオライトであることが好ましい。
【0025】
本実施形態における一次粒子とは、多結晶の結晶粒子であり、これは電子顕微鏡を使用した観察において、独立した粒子として観察される最小単位の粒子である。
【0026】
本実施形態のペンタシル型ゼオライトは、一次粒子の平均長軸径が0.5μm以上であり、好ましくは0.6μm以上、より好ましくは0.7μm以上である。平均長軸径が0.2μm未満であると、操作性(ハンドリング)が著しく低く、例えば、水熱合成後のペンタシル型ゼオライトの固液分離する際の圧力損失が大きくなり、固相(ペンタシル型ゼオライト)の回収が困難となる。吸着剤や触媒として適したBET比表面積となりやすいため、一次粒子の平均長軸径は2.0μm以下、1.5μm以下又は1.0μm以下が好ましい。一次粒子の平均長軸径は0.5μm以上2.0μm以下、0.6μm以上1.5μm以下、又は、0.7μm以上1.0μm以下が好ましい。
【0027】
本実施形態のペンタシル型ゼオライトは、一次粒子の平均アスペクト比が1.2以下、好ましくは1.17以下である。一次粒子の平均アスペクト比が1.2を超えると、粒子の流動性が低く、例えば、成形体とした際の充填性が低くなる。充填性が高くなるため、一次粒子の平均アスペクト比は1.0以上であることが好ましい。本実施形態のペンタシル型ゼオライトの一次粒子の形状が、球形又は擬球形に近い形状となるため、本実施形態の一次粒子の平均アスペクト比は、好ましくは1.0以上1.2以下、より好ましくは、1.0以上1.17以下である。
【0028】
本実施形態の平均長軸径及び平均アスペクト比は「粒子径計測技術、粉体工学会編」5項3行目から6項2行目の記載の定義に基づいて計測される一次粒子の長軸径及び短軸径から求めることができる。
【0029】
以下、長軸径及び短軸径の計測方法を示した模式図(
図1)により説明する。平面上に静置された1個の一次粒子(1)を走査型電子顕微鏡(以下、「SEM」ともいう。)で観察する。一次粒子(1)のSEM観察像の輪郭(2)に対して、これに接する2本の平行線(3)で挟み、平行線(3)の間隔の長さが最大となる長さをもって、一次粒子(1)の長軸径(4)とし、最小となる長さを一次粒子(1)の短軸径(5)とすればよい。
【0030】
一次粒子の平均長軸径は、計測された各一次粒子の長軸径の平均値から求めることができる。
【0031】
一次粒子の平均アスペクト比は、計測された各一次粒子の短軸径に対する長軸径の長さ(長軸径[μm]/短軸径[μm])を求め、その平均値から求めることができる。
【0032】
平均長軸径及び平均アスペクト比を求めるに際し、長軸径及び短軸径を測定する一次粒子は100±10個とすればよく、また、複数のSEM観察図を使用してもよい。
【0033】
本実施形態のペンタシル型ゼオライトの一次粒子の長軸径及び短軸径の計測は、一般的な走査型電子顕微鏡(例えば、装置名:JSM-6390LV、JEOL社製)を用いて行うことができる。
【0034】
疎水性が高くなるため、本実施形態のペンタシル型ゼオライトのアルミニウム(Al)をAl2O3換算したモル数[mol]に対する、ケイ素(Si)をSiO2換算したモル数[mol](以下「SiO2/Al2O3モル比」ともいう。)は、200以上であり、好ましくは400以上、更には800以上、また更には1500以上であることが好ましく、更に、本実施形態のペンタシル型ゼオライトはアルミニウムを含まなくてもよい(SiO2/Al2O3モル比が∞であってもよい)。本実施形態の好ましいSiO2/Al2O3モル比として、400以上10000以下、800以上10000以下、又は、1500以上10000以下、が挙げられ、本実施形態のペンタシル型ゼオライトはシリカライトであることが好ましい。
【0035】
本実施形態のペンタシル型ゼオライトは、平均粒子径D10、D50及びD90が以下の(1)式を満たすことが好ましい。
【0036】
D50/(D90-D10)>0.2 ・・・(1)
このような関係を満たすことで、本実施形態のペンタシル型ゼオライトをスラリーとしたときの粘性の増加がより抑制される。
【0037】
平均粒子径D10、D50及びD90は、それぞれ、レーザー回折・散乱法により得られる体積粒度分布のD10、D50及びD90相当する粒子径であり、一般的なレーザー回折・散乱式粒度分布測定装置(例えば、マイクロトラックMT3300EXII、マイクロトラック・ベル社製)を用いて以下の条件で測定できる値である。
【0038】
測定範囲 :0.02~2000μm
粒子屈折率 :1.66
粒子透過性 :透過
粒子形状 :非球形
溶媒屈折率 :1.333
本実施形態において、「D50」とは、積算体積粒度分布における、粒子径の頻度の積算量が50%を占めるときの粒子径[μm]、すなわちメジアン径である。
【0039】
また本実施形態において、「D10」及び「D90」とは、それぞれ積算体積粒度分布における、粒子径の頻度の積算量が10%及び90%を占めるときのそれぞれの粒子径[μm]である。
【0040】
本実施形態のペンタシル型ゼオライトをスラリーとしたときの粘性の増加が抑制しやすくなることから、(1)式は、好ましくは
10≧D50/(D90-D10)>0.2
より好ましくは、
10≧D50/(D90-D10)≧0.3
更に好ましくは
5≧D50/(D90-D10)≧0.5
である。
【0041】
本実施形態のペンタシル型ゼオライトは、BET比表面積が300m2/g以上であることが好ましい。
【0042】
吸着剤として使用した場合に、吸着対象となる有機化合物の吸着量が多くなりやすいため、本実施形態のペンタシル型ゼオライトのBET比表面積は330m2/g以上が好ましく、350m2/g以上がより好ましい。本実施形態のペンタシル型ゼオライトのBET比表面積は、特に限定されないが、実質的な上限値として600m2/g以下が挙げられる。本実施形態のペンタシル型ゼオライトの好ましいBET比表面積は、330m2/g以上600m2/g以下であり、より好ましくは350m2/g以上600m2/g以下である。
【0043】
BET比表面積は、JIS Z 8830:2013に準じた測定により求めることができる。すなわち、一般的な比表面積自動測定装置(例えば、装置名:BELSORP-miniII、マイクロトラック・ベル株式会社製)及び吸着ガスとして窒素を使用し、多点法により測定試料のBET比表面積を測定すればよい。前処理としてゼオライト粉末を350±50℃で1時間以上5時間以下、保持し、測定試料とすればよい。
【0044】
本実施形態のペンタシル型ゼオライトは疎水性が高く、25℃、相対湿度70%における、ペンタシル型ゼオライト100gに対する水分吸着量(以下、「水分吸着量RH70,25℃」ともいう。)が5.0g以下、4.5g以下、3.5g以下、3.0g以下又は2.0g以下であることが好ましい。この様な水分吸着量RH70,25℃であることにより、高湿度な環境で有機化合物を選択的に吸着しやすくなる。水分吸着量RH70,25℃は低いことが好ましいが、本実施形態のペンタシル型ゼオライトの水分吸着量RH70,25℃は0g以上、0.1g以上又は0.5g以上であってもよく、0g以上5.0g以下、又は、0.5g以上2.0g以下であることが好ましい。
【0045】
本実施形態のペンタシル型ゼオライトは疎水性が高く、25℃、相対湿度30%における、ペンタシル型ゼオライト100gに対する水分吸着量(以下、「水分吸着量RH30,25℃ともいう。」は3.0g以下、2.5g以下、1.5g以下又は1.0g以下であることが好ましい。この様な水分吸着量RH30,25℃であることにより、低湿度な環境でのVOC吸着の選択性が向上する。水分吸着量RH30,25℃は低いことが好ましいが、本実施形態のペンタシル型ゼオライトの水分吸着量RH30,25℃は0g以上又は0.1g以上であってもよく、0g以上3.0g以下、又は、0.1g以上1.0g以下であることが好ましい。
【0046】
本実施形態における、水分吸着量RH70,25℃及び水分吸着量RH30,25℃は、一般的な蒸気吸着量測定装置(例えば、商品名:BELSORP-max、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて以下の方法で測定すればよい。前処理として、11cm3の試料管に20mgのペンタシル型ゼオライトを充填し、350℃で2時間保持し、測定試料とする。測定試料が充填された試料管を蒸気吸着量測定装置にセットし、25℃の水蒸気を流通させ、定容量法を用いて、相対湿度2%から相対湿度90%までの18点における水分吸着量を測定することで、水分吸着量RH70,25℃及び水分吸着量RH30,25℃を求めることができる。
【0047】
本実施形態のペンタシル型ゼオライトは、これをスラリーとしたときの粘度が低いことが好ましく、例えば、ペンタシル型ゼオライトと純水からなるスラリーであり、かつ、スラリー質量に対するペンタシル型ゼオライトの質量濃度(以下、「固形分濃度」ともいう。)が59質量%のゼオライトスラリーとしたときの、せん断速度100s-1における粘度(以下、「粘度100」ともいう。)が、好ましくは1000mPa・s以下、より好ましくは500mPa・s以下、さらに好ましくは300mPa・s以下、特に好ましくは200mPa・s以下である。粘度100が小さいことで、本実施形態のペンタシル型ゼオライトをスラリー化したときの担体への塗布性が向上することに加え、操作性(ハンドリング)の改善による圧力損失の低下や、成形時の加工性の向上が期待できる。
【0048】
本実施形態における、粘度100は、一般的な粘度計(例えば、商品名:MCR 92、アントンパール社製)を用いて測定することができる。110℃で12時間、空気雰囲気で乾燥させたペンタシル型ゼオライトに、固形分濃度59質量%のゼオライトスラリーとなるよう純水を混合する。得られるゼオライトスラリー10gを、測定試料とする。100秒間かけてせん断速度を1s-1から10000s-1まで変化させた際の粘度を測定した場合における、せん断速度100s-1の粘度を測定することで、粘度100とすればよい。
【0049】
次に、本実施形態のペンタシル型ゼオライトの製造方法について説明する。
【0050】
本実施形態のペンタシル型ゼオライトは、非晶質シリカ源、アルカリ源、第四級アンモニウムカチオン及び水を含む組成物を結晶化して結晶化物を得る結晶化工程、該結晶化物を400℃以上800℃以下で焼成して、アルカリ金属含有量が酸化物換算で0.01質量%以上0.50質量%以下である焼成物を得る焼成工程、及び、含水蒸気雰囲気で400℃以上800℃以下で該焼成物を焼成するスチーム処理工程、を含む製造方法により製造することができる。
【0051】
結晶化工程は、非晶質シリカ源、アルミナ源、アルカリ源、第四級アンモニウムカチオン及び水を含む組成物を含む組成物(以下、「原料組成物」ともいう。)を結晶化し結晶化物を得る。
【0052】
非晶質シリカ源は、ケイ素含有化合物又はケイ素(Si)を含む非晶質物質であればよく、シリカゾル、ヒュームドシリカ、コロイダルシリカ、沈降法シリカ、無定形ケイ酸及び非晶質アルミノシリケートの群から選ばれる1以上が例示でき、好ましくは、無定形ケイ酸及び非晶質アルミノシリケートの少なくともいずれかである。
【0053】
アルミナ源は、アルミニウム(Al)を含む化合物であればよく、例えば、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、水酸化アルミニウム、塩化アルミニウム、アルミノシリケートゲル、金属アルミニウム及びアルミノシリケートの群から選ばれる少なくとも1種が挙げられ、水酸化アルミニウム及びアルミノシリケートの少なくともいずれかが好ましい。
【0054】
また、原料組成物の他の成分に含有されるアルミニウムを含む場合、これをアルミナ源としてもよい。例えば、非晶質シリカ源がアルミニウムを含む場合、非晶質シリカ源は、同時にアルミナ源とみなすことができる。この様な非晶質シリカ源として、非晶質シリカ源全体の質量に対して、Al2O3換算したアルミニウムの含有量(以下、「アルミニウム含有量」ともいう。)が、0.001質量%以上1.000質量%以下である非晶質シリカ源が例示できる。
【0055】
アルカリ源は水酸化物アニオン(以下、「OH-」)を含む化合物であればよく、アルカリ金属(以下、「Malkali」ともいう。)を含む水酸化物及びテトラアルキルアンモニウムヒドロキシドの少なくともいずれか、が例示でき、水酸化物が好ましい。アルカリ源が、アルカリ金属を含む水酸化物である場合、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、及び、水酸化セシウムの群から選ばれる1以上が例示できる。アルカリ源が、テトラアルキルアンモニウムヒドロキシドである場合、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、及び、テトラブチルアンモニウムヒドロキシドの群から選ばれる1以上が例示できる。
【0056】
アルカリ金属として、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム及びセシウムの群から選ばれる1以上が挙げられ、ナトリウム及びカリウムの少なくともいずれかが好ましく、ナトリウムがより好ましい。
【0057】
原料組成物は、アルカリ金属を、原料組成物の質量に対する酸化物換算したアルカリ金属の質量割合として0.01質量%以上0.50質量%以下含むことが好ましく、0.01質量%以上0.40質量%以下がより好ましく、0.03質量%以上0.30質量%以下が更に好ましい。各アルカリ金属の酸化物換算は、リチウムがLi2O、ナトリウムがNa2O、カリウムがK2O、ルビジウムがRu2O及びセシウムがCs2Oである。
【0058】
アルカリ源は鉱化剤として機能する。鉱化剤としての効果を十分に得るために、原料組成物中のシリカに対するOH-のモル比(以下、「OH-/SiO2」ともいう。)は0.08以上0.5以下が好ましく、0.1以上0.2以下であることがより好ましい。
【0059】
第四級アンモニウムカチオン(以下、「NR4
+」ともいう。)源は、ペンタシル型ゼオライトを指向する構造指向剤(以下、「SDA」ともいう。)として機能する。第四級アンモニウムカチオンとして、テトラエチルアンモニウムカチオン(以下、「TEA+」ともいう。)、テトラプロピルアンモニウムカチオン(以下、「TPA+」ともいう。)及びテトラブチルアンモニウムカチオン(以下、「TBA+」ともいう。)の群から選ばれる1以上が好ましく、TPA+がより好ましい。第四級アンモニウムカチオンはゼオライト骨格の特定の方向に対して結晶成長を促す指向性が弱い傾向がある。NR4
+源を含むことで、上述の平均アスペクト比を有する一次粒子からなるペンタシル型ゼオライトが得られる。
【0060】
水は、蒸留水、脱イオン水、純水であればよく、さらに、含水化合物等、原料組成物に含まれる他の成分に由来する水分も、原料組成物における水と見なすことができる。
【0061】
原料組成物の組成は、少なくとも以下のモル組成を有することが好ましい。
【0062】
SiO2/Al2O3 200以上10000以下
NR4
+/SiO2 0.04以上、0.4以下
OH-/SiO2 0.08以上、0.5以下
Malkali/SiO2 0.05以上、0.3以下
H2O/SiO2 10以上、20以下
より好ましい組成として、以下のモル組成を挙げることができる。
【0063】
SiO2/Al2O3 200以上10000以下
NR4
+/SiO2 0.04以上、0.2以下
OH-/SiO2 0.1以上、0.2以下
Malkali/SiO2 0.1以上、0.25以下
H2O/SiO2 10以上、18以下
原料組成物の結晶化は水熱合成により行うことが好ましい。結晶化温度は100℃以上であり、130℃以上が好ましく、150℃以上がより好ましい。結晶化温度は必要以上に高くする必要はなく、例えば、200℃以下、好ましくは180℃以下であることが挙げられる。結晶化において、原料組成物は撹拌又は静置のいずれの状態であってもよい。
【0064】
結晶化工程の時間は、結晶化に供する原料組成物の量や、結晶化条件により適宜設定すればよいが、5時間以上が好ましく、10時間以上がより好ましい。更には結晶化工程の時間は200時間以下が好ましく、更には100時間以下であることが好ましい。
【0065】
焼成工程では、結晶化工程で得られる結晶化物を400℃以上800℃以下で焼成して、アルカリ金属含有量が酸化物換算で0.01質量%以上0.50質量%以下である焼成物を得る。焼成条件は、結晶化物に含有される有機物が除去できる条件であればよく、例えば、含酸素雰囲気下で、0.5時間以上12時間以下、400℃以上800℃以下、好ましくは400℃以上700℃以下、で処理することが挙げられる。
【0066】
得られる焼成物は、アルカリ金属含有量が酸化物換算で0.01質量%以上0.50質量%以下であればよい。焼成物が上記のアルカリ金属含有量であることで、後述するスチーム処理工程により、疎水性を低下させることなく、平均アスペクト比及び長軸径が大きいペンタシル型ゼオライトを得ることができる。
【0067】
焼成物のアルカリ金属含有量は、焼成物の質量に対する酸化物換算したアルカリ金属の質量割合として0.01質量%以上0.50質量%以下であればよく、0.01質量%以上0.40質量%以下が好ましく、0.03質量%以上0.30質量%以下がより好ましい。
【0068】
焼成物に含有されるアルカリ金属は、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム及びセシウムの群から選ばれる1以上が好ましく、ナトリウム及びカリウムの少なくともいずれかがより好ましく、ナトリウムが更に好ましい。
【0069】
焼成物のアルカリ金属の含有量を調整する方法として、焼成物を洗浄する洗浄工程、及び、アルカリ金属源を含有させるアルカリ金属添加工程の少なくともいずれか、が挙げられる。洗浄工程及びアルカリ金属添加工程は、いずれを先に行ってもよい。
【0070】
洗浄工程は、焼成物に含有するアルカリ金属を除去することでアルカリ金属含有量を減少させる方法であり、HCl水溶液による洗浄が挙げられる。
【0071】
アルカリ金属添加工程は、焼成物とアルカリ金属源とを接触させることでアルカリ金属含有量を増加させる方法であり、イオン交換法、含浸法及び蒸発乾固法の群から選ばれる1つ以上が挙げられる。イオン交換法としては、焼成物と所望のアルカリ金属を含有する溶液とを焼成物中のアルカリ金属含有量が所望の濃度になるまで接触させる方法が挙げられる。イオン交換法は回分法、流通法など一般的なイオン交換法が適用可能である。
【0072】
アルカリ金属添加工程に供するアルカリ金属源は、所望のアルカリ金属を含む塩であればよく、アルカリ金属を含む水酸化物が好ましく、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム及び水酸化セシウムの群から選ばれる1以上が例示でき、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムの少なくともいずれかが好ましく、水酸化ナトリウムがより好ましい。
【0073】
スチーム処理工程では、焼成工程により得られる焼成物を、含水蒸気雰囲気で400℃以上800℃以下で焼成する。これにより、等方性が高く、なおかつ、疎水性が高いペンタシル型ゼオライトが得られる。
【0074】
スチーム処理工程における雰囲気は、含水蒸気雰囲気であればよい。得られるペンタシル型ゼオライトの疎水性が向上しやすくなる観点から、雰囲気中の水蒸気の割合が、雰囲気中の気体全体に対し、好ましくは5体積%以上95体積%以下、より好ましくは30体積%以上80体積%以下、更に好ましくは50体積%以上70体積%以下である含水蒸気雰囲気であることが挙げられる。
【0075】
スチーム処理工程におけるスチーム処理温度は400℃以上800℃以下である。400℃未満では疎水性が向上しない。一方、800℃を超えるとBET比表面積が減少し、有機化合物に対する吸着性能が低下する。スチーム処理温度は450℃以上800℃以下が好ましく、500℃以上750℃以下がより好ましい。
【実施例0076】
以下、実施例により本実施形態を具体的に説明する。しかし、本実施形態はこれら実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例における各測定方法は、以下の通りである。
【0077】
<結晶構造の同定>
XRD装置(商品名:UltimaIV Protectus、リガク社製)を使用し、以下の条件で試料のXRD測定を行った。
【0078】
加速電流・電圧 : 40mA・40kV
線源 : CuKα線(λ=1.5405Å)
測定モード : ステップスキャン
スキャン条件 : 40°/分
計測時間 : 3秒
測定範囲 : 2θ=3°から43°
発散縦制限スリット: 10mm
発散/入射スリット: 1°
受光スリット : open
受光ソーラースリット : 5°
検出器 : 半導体検出器(D/teX Ultra)
フィルター : Niフィルター
得られたXRDパターンと、Collection of simulated XRD powder patterns for zeolites,Fifthrevisededition,p.483(2007)に記載のXRDパターンとを比較することで、試料を同定した。
【0079】
<一次粒子の形態観察>
走査型電子顕微鏡(装置名:JSM-6390LV、JEOL社製)を用いて一次粒子の形態観察を行った。
【0080】
一次粒子の長軸径および短軸径は、上述の文献「粒子径計測技術、粉体工学会編」、5項3行目から6項2行目の記載の定義に基づいて計測した。すなわち、平面上に静置された1個の一次粒子を平面に垂直な方向からSEM観察した。一次粒子のSEM観察像の輪郭に対して、これに接する2本の平行線で挟んだときの平行線間の長さのうち、最大となる長さを一次粒子の長軸径、最小となる長さを一次粒子の短軸径とした。
一次粒子の平均アスペクト比は、各一次粒子の短軸径に対する長軸径の長さ(長軸径[μm]/短軸径[μm])を求め、その平均値から求めた。
【0081】
平均長軸径は、上記の方法により各一次粒子の長軸径の長さを求め、その平均値から求めた。
【0082】
<組成分析>
組成分析は蛍光X線装置(商品名:RIX2100、リガク社製)を使用して行った。前処理として、生成物を600℃で1時間焼成した。得られた分析結果から、測定試料のSiO2/Al2O3モル比、アルカリ金属含有量を求めた。
【0083】
<BET比表面積>
JIS Z 8830:2013に準じた測定により、試料のBET比表面積を求めた。測定には、一般的な比表面積測定装置(商品名:BELSORP-miniII、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いた。前処理として測定試料を350℃で2時間保持した。前処理後の測定試料について、吸着ガスとして窒素を使用し、多点法によりBET比表面積を測定した。
【0084】
<水分吸着量>
水分吸着量RH70,25℃及び水分吸着量RH30,25℃は、一般的な蒸気吸着量測定装置(商品名:BELSORP-max、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて以下の方法で測定した。前処理として、11cm3の試料管に20mgのペンタシル型ゼオライトを充填し、350℃で2時間保持し、測定試料とした。測定試料が充填された試料管を蒸気吸着量測定装置にセットし、25℃の水蒸気を流通させ、定容量法を用いて、相対湿度2%から相対湿度90%までの18点における水分吸着量を測定することで、水分吸着量RH70,25℃及び水分吸着量RH30,25℃を求めた。
【0085】
<平均粒子径測定>
光散乱式粒度分布測定により、測定試料の頻度体積粒度分布を測定した。測定には、一般的な光散乱式粒子径分布測定装置(商品名:マイクロトラックMT3300EXII、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いた。前処理として測定試料のスラリーを一般的な超音波ホモジナイザー(商品名:US-150T、日本精機株式会社製)で10分間分散処理した。測定条件は以下に示す条件とした。
【0086】
測定範囲 :0.02~2000μm
粒子屈折率 :1.66
粒子透過性 :透過
粒子形状 :非球形
溶媒屈折率 :1.333
得られた粒子径分布の累積曲線から、平均粒子径D10、D50及びD90を得て、これをケイ素源の粒子径とした。
【0087】
<粘度測定>
ゼオライトスラリーの粘度は、一般的な粘度計(商品名:MCR 92、アントンパール社製)を用いて測定した。110℃で12時間、空気雰囲気で乾燥させたペンタシル型ゼオライト5.9gに、固形分濃度59質量%のゼオライトスラリーとなるよう純水を加えた。得られたゼオライトスラリー10gを、測定試料とした。100秒間かけてせん断速度を1s-1から10000s-1まで変化させた際の粘度を測定することで、ゼオライトスラリーの粘度100を測定した。
【0088】
実施例1
Al2O3含有量が0.015質量%である無定形ケイ酸、TPABr水溶液、水酸化ナトリウム、及び純水を混合し、以下のモル組成からなる原料組成物を得た。
【0089】
TPA+/SiO2=0.05
OH/SiO2=0.17
Na/SiO2=0.17
H2O/SiO2=10
なお、無定形ケイ酸塩に由来するアルミニウムのため、原料組成物のSiO2/Al2O3は3900であった。
【0090】
得られた原料組成物を80mlのステンレス製反応容器に充填した。反応容器は、密閉後、55回転/分で公転させながら135℃まで加熱し、公転しながら135℃で24時間保持することで結晶化スラリーを得た。得られた結晶化スラリーを室温まで冷却し、ろ過、洗浄、大気雰囲気、110℃で12時間の乾燥、及び、大気雰囲気、500℃で2時間の焼成により、ゼオライトを得た。得られたゼオライト10gと2規定HCl水溶液50gとを混合した後、純水で洗浄することで、プロトン型のペンタシル型ゼオライトとした。該プロトン型のペンタシル型ゼオライトが含有するアルカリ金属はナトリウムであり、Na2O換算したナトリウム含有量(以下、「Na2O含有量」ともいう。)は測定限界以下(0.00質量%)であった。
【0091】
スラリー中のNa2O含有量が0.06質量%、固形分濃度が10質量%となるよう、水酸化ナトリウム濃度が48質量%である水酸化ナトリウム水溶液および純水と、得られたプロトン型のペンタシル型ゼオライト10gとを混合した後、空気中、110℃で乾燥することによりNa含有ペンタシル型ゼオライトを得た。
【0092】
得られたNa含有ペンタシル型ゼオライトを、含水蒸気流通下、700℃で2時間焼成し、生成物を得、本実施例のペンタシル型ゼオライトとした。
【0093】
該ペンタシル型ゼオライトのXRDパターンはMFI構造のXRDパターンに一致し、ペンタシル型ゼオライトであることを確認した。
【0094】
該ペンタシル型ゼオライトの平均粒子径はD10が1.3μm、D50が2.1μm及びD90が3.4μmであり、なおかつ、D50/(D90-D10)が1.00であった。
【0095】
本実施例のペンタシル型ゼオライトのSEM観察像を
図2に示す。本実施例のペンタシル型ゼオライトは、略球状の粒子からなる粉末であり、また一次粒子の平均長軸径は0.81μm、一次粒子の平均アスペクト比は1.16であった。
【0096】
該ペンタシル型ゼオライトのSiO2/Al2O3モル比は2600、Na2O含有量は0.06質量%、BET比表面積は358m2/g、相対湿度30%での水分吸着量は0.5g/100g-ゼオライト、相対湿度70%での水分吸着量は1.6g/100g-ゼオライトであった。
【0097】
実施例2
スラリー中のNa2O含有量が0.10質量%となるよう48%水酸化ナトリウム水溶液および純水を加えたこと以外は実施例1と同様の方法で、本実施例のペンタシル型ゼオライトを得た。
【0098】
該ペンタシル型ゼオライトのXRDパターンはMFI構造のXRDパターンに一致し、ペンタシル型ゼオライトであることを確認した。
【0099】
該ペンタシル型ゼオライトの粒子径を測定した結果、該ペンタシル型ゼオライトの平均粒子径はD10:1.3μm、D50:2.1μm、D90:3.4μmであり、なおかつ、D50/(D90-D10):1.00であった。
【0100】
該ペンタシル型ゼオライトのSEM観察像から、該ペンタシル型ゼオライトの一次粒子の平均長軸径は0.81μm、一次粒子の平均アスペクト比は1.16であった。
【0101】
該ペンタシル型ゼオライトのSiO2/Al2O3モル比は2600、Na2O含有量は0.10質量%、BET比表面積は330m2/g、相対湿度30%での水分吸着量は0.4g/100g-ゼオライト、相対湿度70%での水分吸着量は0.9g/100g-ゼオライトであった。
【0102】
比較例1
組成物を以下のモル組成としたこと以外は、実施例1と同様の方法でプロトン型のペンタシル型ゼオライトを得た
SiO2/Al2O3=2900
TPA+/SiO2=0.05
OH/SiO2=0.17
Na/SiO2=0.17
H2O/SiO2=10
該プロトン型のペンタシル型ゼオライトに含有されるNa2O含有量は測定限界以下(0.00質量%)であった。
【0103】
該プロトン型のペンタシル型ゼオライトを、含水蒸気流通下、700℃で2時間焼成し、生成物を得、本比較例のペンタシル型ゼオライトを得た。
【0104】
該ペンタシル型ゼオライトのXRDパターンはMFI構造のXRDパターンに一致し、ペンタシル型ゼオライトであることを確認した。
【0105】
該ペンタシル型ゼオライトの粒子径を測定した結果、該ペンタシル型ゼオライトの平均粒子径はD10:1.5μm、D50:2.1μm、D90:2.9μmであり、なおかつD50/(D90-D10):1.50であった。
【0106】
該ペンタシル型ゼオライトのSEM観察像から、該ペンタシル型ゼオライトの一次粒子の平均長軸径は0.79μm、一次粒子の平均アスペクト比は1.24であった。
【0107】
該ペンタシル型ゼオライトのSiO2/Al2O3モル比は1900、Na2O含有量は測定限界以下(0.00質量%)、BET比表面積は438m2/g、相対湿度30%での水分吸着量は2.4g/100g-ゼオライト、相対湿度70%での水分吸着量は5.4g/100g-ゼオライトであった。
【0108】
比較例2
スラリー中のNa2O含有量が0.66重量%となるよう48%水酸化ナトリウム水溶液および純水を加えたこと以外は実施例1と同様の方法で、本比較例のペンタシル型ゼオライトを得た。
【0109】
該ペンタシル型ゼオライトのXRDパターンはMFI構造のXRDパターンに一致し、ペンタシル型ゼオライトであることを確認した。
【0110】
該ペンタシル型ゼオライトの粒子径を測定した結果、該ペンタシル型ゼオライトの平均粒子径はD10:1.3μm、D50:2.1μm、D90:3.4μmであり、なおかつ、D50/(D90-D10):1.00であった。
【0111】
該ペンタシル型ゼオライトのSEM観察像から、該ペンタシル型ゼオライトの一次粒子の平均長軸径は0.94μm、一次粒子の平均アスペクト比は1.25であった。
【0112】
該ペンタシル型ゼオライトのSiO2/Al2O3モル比は2400、Na2O含有量は0.66質量%、BET比表面積は219m2/g、相対湿度30%での水分吸着量は0.4g/100g-ゼオライト、相対湿度70%での水分吸着量は1.0g/100g-ゼオライトであった。
【0113】
比較例3
特許文献1の実施例5に準じた方法でペンタシル型ゼオライトを製造した。
【0114】
すなわち、Al2O3含有量が0.013質量%である無定形ケイ酸、ノルマルプロピルアミン(以下、「NPA」ともいう。)、水酸化ナトリウム、及び純水を混合し、以下のモル組成からなる組成物を得た。
【0115】
SiO2/Al2O3=3800
NPA/SiO2=0.25
OH/SiO2=0.20
Na/SiO2=0.20
H2O/SiO2=10
上記の組成物に、種晶としてMFI型ゼオライトを添加し、原料混合物とした。種晶の添加量は、該組成物中のSiをSiO2換算した質量、及びAlをAl2O3換算した質量の合計に対して0.5質量%とした。
【0116】
得られた混合物を80mlのステンレス製の反応容器に充填し、これを密閉した。その後、当該反応容器を55回転/分で公転させながら115℃まで加熱した。加熱後、反応容器を公転しながら115℃で36時間保持することで該組成物を結晶化させ、結晶化スラリーを得た。結晶化スラリーを冷却、ろ過、純水で洗浄し、1.2規定HCl水溶液50gに添加、混合、純水で洗浄し、110℃で乾燥することで、プロトン型のペンタシル型ゼオライトを得た。
【0117】
得られたゼオライト10gを、pH13の水酸化ナトリウム水溶液60g中で、75℃、2.5時間の熱処理をし、その後、純水で洗浄、1.2規定HCl水溶液50gに添加、混合、純水で洗浄し、110℃で乾燥することで、ペンタシル型ゼオライト粉末を得た。このプロトン型のペンタシル型ゼオライトに含有されるNa2O含有量は0.05質量%であった。
【0118】
得られたプロトン型のペンタシル型ゼオライトを、含水蒸気流通下、700℃で2時間焼成し、生成物を得、本比較例のペンタシル型ゼオライトとした。
【0119】
該ペンタシル型ゼオライトのXRDパターンはMFI構造のXRDパターンに一致し、ペンタシル型ゼオライトであることを確認した。
【0120】
該ペンタシル型ゼオライトの粒子径を測定した結果、該ペンタシル型ゼオライトの平均粒子径は、D10:1.1μm、D50:27.5μm、D90:68.5μmであり、なおかつ、D50/(D90-D10):0.40であった。
【0121】
該ペンタシル型ゼオライトのSEM観察像を
図4に示す。該ペンタシル型ゼオライトのSEM観察像から、該ペンタシル型ゼオライトの一次粒子の長軸径は0.8μm、一次粒子の平均アスペクト比は1.3であった。
【0122】
該ペンタシル型ゼオライトのSiO2/Al2O3モル比は1210、Na2O含有量は0.05質量%、BET比表面積は368m2/g、相対湿度30%での水分吸着量は0.5g/100g-ゼオライト、相対湿度70%での水分吸着量は1.0g/100g-ゼオライトであった。
【0123】
実施例1及び比較例3のペンタシル型ゼオライトに水を加え、59wt%のスラリーを調製し、せん断速度ごとの粘度を測定した結果を下表に示す。実施例1及び比較例3の粘度100は、それぞれ9mPa・s及び4722mPa・sであった。
【0124】