(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115694
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】位相差板及び位相差板熱成型体
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20240820BHJP
G02B 3/00 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
G02B5/30
G02B3/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021481
(22)【出願日】2023-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】澤 友樹
(72)【発明者】
【氏名】藤長 将司
(72)【発明者】
【氏名】幡中 伸行
【テーマコード(参考)】
2H149
【Fターム(参考)】
2H149AA02
2H149AA18
2H149AB02
2H149DA02
2H149DA12
2H149DA18
2H149DB02
2H149FA02Z
2H149FA05Y
2H149FA08Z
2H149FA24Y
2H149FA58Y
2H149FA66
2H149FC10
2H149FD09
2H149FD30
2H149FD35
2H149FD47
(57)【要約】
【課題】熱成型処理を施しても面内における位相差値のバラツキを抑制することができる位相差板を提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂からなる基材層、粘着剤層及び位相差層をこの順に含む位相差板であって、位相差層は厚みが5μm以下である液晶位相差層であり、基材層は可視光領域における全光線透過率が85%以上である熱成型用位相差板が提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂からなる基材層、粘着剤層及び位相差層をこの順に含む位相差板であって、
前記位相差層は、厚みが5μm以下である液晶位相差層であり、
前記基材層は、可視光領域における全光線透過率が85%以上である、熱成型用位相差板。
【請求項2】
前記位相差層は、逆波長分散性を有する、請求項1に記載の熱成型用位相差板。
【請求項3】
前記粘着剤層は、温度25℃における貯蔵弾性率が10kPa以上200kPa未満であり、その厚みが3μm以上50μm以下である、請求項1に記載の熱成型用位相差板。
【請求項4】
前記基材層は、ガラス転移温度が180℃以下である、請求項1に記載の熱成型用位相差板。
【請求項5】
前記位相差板は、温度150℃で60秒間静置したときの寸法変化率が3%以下である、請求項1に記載の熱成型用位相差板。
【請求項6】
前記位相差板は、厚みが25μm以上150μm以下である、請求項1に記載の熱成型用位相差板。
【請求項7】
熱可塑性樹脂からなる基材層、粘着剤層及び位相差層をこの順に含む位相差板であって、
前記位相差層は、厚みが5μm以下である液晶位相差層であり、
前記基材層は、可視光領域における全光線透過率が85%以上である位相差板の熱成型体である、位相差板熱成型体。
【請求項8】
曲面を有する、請求項7に記載の位相差板熱成型体。
【請求項9】
熱可塑性樹脂からなる基材層、粘着剤層及び位相差層をこの順に含む位相差板であって、
前記位相差層は、厚みが5μm以下である液晶位相差層であり、
前記基材層は、可視光領域における全光線透過率が85%以上である位相差板を熱成型処理する工程を含む位相差板熱成型体の製造方法であって、
前記熱成型処理する工程において、
前記位相差板における前記基材層側の面は空気と接触しているか、又は、前記面には表面保護フィルムが積層されており、
前記位相差板における前記位相差層側の面は空気と接触しているか、又は、前記面には粘着剤層が積層されている、位相差板熱成型体の製造方法。
【請求項10】
光学レンズと、前記光学レンズ上に配置される請求項7に記載の位相差板熱成型体とを含む、光学機能性レンズ。
【請求項11】
請求項7に記載の位相差板熱成型体を含む、画像表示装置。
【請求項12】
請求項10に記載の光学機能性レンズを含む、画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位相差板に関する。また、本発明は、位相差板熱成型体及びその製造方法、並びに、該位相差板熱成型体を含む光学機能性レンズ及び画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像表示装置等の光学デバイスの多様化により、光学デバイスに組み込まれる光学フィルムにもそれに適応した多様化が求められている。例えば、光学フィルムの一つである位相差板には曲面形状を有することが求められる場合がある。位相差板としては、熱可塑性樹脂フィルムを延伸処理することにより位相差特性を発現させた延伸フィルムが従来知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
延伸フィルムからなる従来の位相差板を熱成型処理することによって位相差板に例えば曲面形状を付与すると、位相差板面内における位相差値のバラツキ(変動)が大きくなることが判明した。
【0005】
本発明の目的は、熱成型処理を施しても面内における位相差値のバラツキを抑制することができる位相差板を提供することにある。本発明の他の目的は、該位相差板の熱形成体及びその製造方法、並びに、該熱成型体を含む光学機能性レンズ及び画像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下を提供する。
〔1〕 熱可塑性樹脂からなる基材層、粘着剤層及び位相差層をこの順に含む位相差板であって、
前記位相差層は、厚みが5μm以下である液晶位相差層であり、
前記基材層は、可視光領域における全光線透過率が85%以上である、位相差板。
〔2〕 前記位相差層は、逆波長分散性を有する、〔1〕に記載の位相差板。
〔3〕 前記粘着剤層は、温度25℃における貯蔵弾性率が10kPa以上200kPa未満であり、その厚みが3μm以上50μm以下である、〔1〕又は〔2〕に記載の位相差板。
〔4〕 前記基材層は、ガラス転移温度が180℃以下である、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の位相差板。
〔5〕 前記位相差板は、温度150℃で60秒間静置したときの寸法変化率が3%以下である、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の位相差板。
〔6〕 前記位相差板は、厚みが25μm以上150μm以下である、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の位相差板。
〔7〕 〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の位相差板の熱成型体である、位相差板熱成型体。
〔8〕 曲面を有する、〔7〕に記載の位相差板熱成型体。
〔9〕 〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の位相差板を熱成型処理する工程を含む位相差板熱成型体の製造方法であって、
前記熱成型処理する工程において、
前記位相差板における前記基材層側の面は空気と接触しているか、又は、前記面には表面保護フィルムが積層されており、
前記位相差板における前記位相差層側の面は空気と接触しているか、又は、前記面には粘着剤層が積層されている、位相差板熱成型体の製造方法。
〔10〕 光学レンズと、前記光学レンズ上に配置される〔7〕又は〔8〕に記載の位相差板熱成型体とを含む、光学機能性レンズ。
〔11〕 〔7〕又は〔8〕に記載の位相差板熱成型体を含む、画像表示装置。
〔12〕 〔10〕に記載の光学機能性レンズを含む、画像表示装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、熱成型処理を施しても面内における位相差値のバラツキを抑制することができる位相差板、該位相差板の熱形成体及びその製造方法、並びに、該熱成型体を含む光学機能性レンズ及び画像表示装置を提供することができる。本発明の位相差板は熱成型用位相差板として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明に係る位相差板の一例を模式的に示す断面図である。
【
図2】本発明に係る位相差板の他の一例を模式的に示す断面図である。
【
図3】本発明に係る位相差板熱成型体の一例を模式的に示す断面図である。
【
図4】本発明に係る光学機能性レンズの一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<位相差板>
(1)位相差板の構成
図1は、本発明に係る位相差板の一例を模式的に示す断面図である。
図1に示される位相差板は、熱可塑性樹脂からなる基材層10、粘接着剤層20及び位相差層30をこの順に含む。位相差層30は、厚みが5μm以下の液晶位相差層である。基材層10と粘接着剤層20とは直接接していることが好ましい。粘接着剤層20と位相差層30とは直接接していることが好ましい。
図1に示される位相差板は、基材層10、粘接着剤層20及び位相差層30からなり、基材層10における粘接着剤層20とは反対側の表面は空気との界面を構成しており、位相差層30における粘接着剤層20とは反対側の表面は空気との界面を構成している。
【0010】
図2は、本発明に係る位相差板の他の一例を模式的に示す断面図である。
図2に示される位相差板は、
図1に示される位相差板における基材層10側に表面保護フィルム(プロテクトフィルム)40が積層され、位相差層30側に粘着剤層50及びセパレーター60が積層された層構成を有する。
図2に示される位相差板は、表面保護フィルム40、基材層10、粘接着剤層20、位相差層30、粘着剤層50及びセパレーター60からなる。本発明に係る位相差板は、
図2において表面保護フィルム40を有しない構成であってもよく、
図2において粘着剤層50及びセパレーター60を有しない構成であってもよい。
【0011】
本発明に係る位相差板によれば、熱成型処理を施しても面内における位相差値のバラツキを抑制することができる。該位相差板は、これを熱成型処理してなる位相差板熱成型体の作製のために好適に用いることができる。以下、本発明に係る位相差板を「熱成型用位相差板」ともいう。
【0012】
本発明に係る位相差板は、好ましくは、熱を加えたときの寸法変化率が小さいものである。このことは、熱成型処理を施したときの面内における位相差値のバラツキを抑制するうえで有利となる。本発明に係る位相差板は、位相差層が厚みが5μm以下の液晶位相差層であるため、上記寸法変化率を小さくしやすい。本発明に係る位相差板は、温度150℃で60秒間静置したときの寸法変化率が例えば10%以下であり、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下であり、理想的には0%であるが、通常は0%超である。位相差板を温度150℃で60秒間静置したときの寸法変化率は、[実施例]の項の記載に従って測定することができる。
【0013】
本発明に係る位相差板の厚み(全体の厚み)は、位相差板の取扱性の観点から、また、位相差板を熱成型処理して得られる位相差板熱成型体の外観品位を高める観点から、好ましくは25μm以上、より好ましくは30μm以上、さらに好ましくは40μm以上、なおさらに好ましくは50μm以上、特に好ましくは60μm以上である。位相差板の厚みは、精度良く所望の形状に熱成型された位相差板熱成型体が得られやすいことから、好ましくは150μm以下、より好ましくは125μm以下、さらに好ましくは100μm以下である。
【0014】
(2)基材層
位相差板が有する基材層は、熱可塑性樹脂からなる。基材層は、単層構造であってもよいし多層構造であってもよい。熱可塑性樹脂からなる基材層としては、熱可塑性樹脂フィルムが挙げられる。熱可塑性樹脂フィルムを構成する熱可塑性樹脂としては、トリアセチルセルロース等のセルロース系樹脂;ポリエチレンテレフタレート及びポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリエーテルスルホン系樹脂;ポリスルホン系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ナイロン及び芳香族ポリアミド等のポリアミド系樹脂;ポリイミド系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、及びエチレン・プロピレン共重合体等の鎖状ポリオレフィン系樹脂;シクロ系又はノルボルネン構造を有する環状ポリオレフィン系樹脂(ノルボルネン系樹脂ともいう);ポリメチルメタクリレート等の(メタ)アクリル系樹脂;ポリアリレート系樹脂;ポリスチレン系樹脂;ポリビニルアルコール系樹脂、並びにこれらの混合物を挙げることができる。かかる材質の熱可塑性樹脂フィルムは市場から容易に入手できる。本明細書において「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルのうちの少なくとも一方をいう。(メタ)アクリロイル等の表記についても同様である。
【0015】
鎖状ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン樹脂(エチレンの単独重合体であるポリエチレン樹脂や、エチレンを主体とする共重合体)、ポリプロピレン樹脂(プロピレンの単独重合体であるポリプロピレン樹脂や、プロピレンを主体とする共重合体)のような鎖状オレフィンの単独重合体の他、2種以上の鎖状オレフィンからなる共重合体を挙げられる。
【0016】
環状ポリオレフィン系樹脂は、環状オレフィンを重合単位として重合される樹脂の総称である。環状ポリオレフィン系樹脂の具体例を挙げれば、環状オレフィンの開環(共)重合体、環状オレフィンの付加重合体、環状オレフィンとエチレン、プロピレンのような鎖状オレフィンとの共重合体(代表的にはランダム共重合体)、及びこれらを不飽和カルボン酸やその誘導体で変性したグラフト重合体、並びにそれらの水素化物である。中でも、環状オレフィンとしてノルボルネンや多環ノルボルネン系モノマーのようなノルボルネン系モノマーを用いたノルボルネン系樹脂が好ましく用いられる。
【0017】
ポリエステル系樹脂は、主鎖にエステル結合を有する樹脂であり、多価カルボン酸又はその誘導体と多価アルコールとの重縮合体が一般的である。例えばテレフタル酸、イソフタル酸、ジメチルテレフタレート、ナフタレンジカルボン酸ジメチル等が挙げられる。多価アルコールとしては2価のジオールを用いることができ、例えばエチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。
【0018】
セルロースエステル系樹脂は、セルロースと脂肪酸とのエステルである。セルロースエステル系樹脂の具体例は、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルローストリプロピオネート、セルロースジプロピオネートを含む。これらのセルロースエステル系樹脂を構成する重合単位を複数種有する共重合物や、水酸基の一部が他の置換基で修飾されたものも挙げられる。これらの中でも、セルローストリアセテート(トリアセチルセルロース)が特に好ましい。
【0019】
(メタ)アクリル系樹脂は、(メタ)アクリロイル基を有する化合物を主な構成モノマーとする樹脂である。(メタ)アクリル系樹脂の具体例は、例えば、ポリメタクリル酸メチルのようなポリ(メタ)アクリル酸エステル;メタクリル酸メチル-(メタ)アクリル酸共重合体;メタクリル酸メチル-(メタ)アクリル酸エステル共重合体;メタクリル酸メチル-アクリル酸エステル-(メタ)アクリル酸共重合体;(メタ)アクリル酸メチル-スチレン共重合体(MS樹脂等);メタクリル酸メチルと脂環族炭化水素基を有する化合物との共重合体(例えば、メタクリル酸メチル-メタクリル酸シクロヘキシル共重合体、メタクリル酸メチル-(メタ)アクリル酸ノルボルニル共重合体等)を含む。
【0020】
ポリカーボネート系樹脂は、カルボナート基を介してモノマー単位が結合された重合体からなる。ポリカーボネート系樹脂は、ポリマー骨格を修飾したような変性ポリカーボネートと呼ばれる樹脂や、共重合ポリカーボネート等であってもよい。
【0021】
中でも、熱可塑性樹脂フィルムを構成する熱可塑性樹脂は、好ましくは、(メタ)アクリル系樹脂、セルロース系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂であり、位相差板熱成型体の面内における位相差値のバラツキを抑制する観点から、より好ましくは(メタ)アクリル系樹脂である。また、精度良く所望の形状に熱成型された位相差板熱成型体が得られやすいことから、上記熱可塑性樹脂は、好ましくは、(メタ)アクリル系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂であり、より好ましくは(メタ)アクリル系樹脂である。さらに、熱成型処理に伴う基材層由来の位相差の発現を抑制する観点からは、上記熱可塑性樹脂は、好ましくは、(メタ)アクリル系樹脂、セルロース系樹脂である。
【0022】
基材層の可視光領域における全光線透過率は、85%以上であり、好ましくは90%以上、より好ましくは92%以上、さらに好ましくは95%以上であり、100%以下又は98%以下であってもよい。該全光線透過率は、[実施例]の項の記載に従って測定することができる。
【0023】
基材層は、ガラス転移温度Tgが好ましくは180℃以下、より好ましくは170℃以下、さらに好ましくは160℃以下、なおさらに好ましくは150℃以下、特に好ましくは140℃以下、より特に好ましくは130℃以下、最も好ましくは120℃以下である。ガラス転移温度Tgが上記範囲であると、位相差層への熱によるダメージを抑制しつつ、位相差板熱成型体を作製することができる。基材層のガラス転移温度Tgは、熱成型のしやすさの観点から、通常80℃以上であり、好ましくは90℃以上、より好ましくは100℃以上である。基材層のガラス転移温度Tgは、[実施例]の項の記載に従って測定することができる。
【0024】
基材層の厚みは、位相差板の取扱性の観点から、また、位相差板を熱成型処理して得られる位相差板熱成型体の外観品位を高める観点から、好ましくは20μm以上、より好ましくは25μm以上、さらに好ましくは35μm以上、なおさらに好ましくは45μm以上、特に好ましくは55μm以上である。基材層の厚みは、精度良く所望の形状に熱成型された位相差板熱成型体が得られやすいことから、好ましくは145μm以下、より好ましくは120μm以下、さらに好ましくは95μm以下である。
【0025】
(3)粘接着剤層
位相差板が有する粘接着剤層は、接着剤層又は粘着剤層である。粘着剤層は、粘着剤組成物(感圧接着剤組成物)から形成される貼合層であり、通常、ガラス転移温度Tgが25℃以下の貼合層である。接着剤層は、接着剤組成物から形成される貼合層であり、通常、ガラス転移温度Tgが25℃超の貼合層である。貼合層のTgは、示差走査熱量計(DSC)により測定できる。
【0026】
接着剤組成物としては、例えば、水系接着剤組成物、加熱又は紫外線、可視光、電子線、X線等の活性エネルギー線の照射により硬化する熱硬化性又は活性エネルギー線硬化型接着剤組成物等が挙げられる。水系接着剤組成物としては、例えば、主成分としてポリビニルアルコール系樹脂又はウレタン樹脂を水に溶解したもの、主成分としてポリビニルアルコール系樹脂又はウレタン樹脂を水に分散させたものが挙げられる。水系接着剤組成物は、さらに、多価アルデヒド、メラミン系化合物、ジルコニア化合物、亜鉛化合物、グリオキサール化合物、水溶性エポキシ樹脂等の硬化性成分や架橋剤を含有していてもよい。
【0027】
接着剤組成物は、主成分として硬化性(重合性)化合物を含み、活性エネルギー線の照射により硬化する活性エネルギー線硬化型接着剤組成物であることが好ましい。活性エネルギー線硬化型接着剤組成物としては、硬化性化合物としてカチオン重合性化合物を含むカチオン重合性接着剤組成物、硬化性化合物としてラジカル重合性化合物を含むラジカル重合性接着剤組成物、硬化性化合物としてカチオン重合性化合物とラジカル重合性化合物との両方を含むハイブリッド型接着剤組成物等が挙げられる。
【0028】
カチオン重合性化合物としては、エポキシ化合物、オキセタン化合物、ビニル化合物等が挙げられる。エポキシ化合物としては、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル 3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート等の脂環式エポキシ化合物(脂環式環に結合したエポキシ基を分子内に1個以上有する化合物);ビスフェノールAのジグリシジルエーテル等の芳香族エポキシ化合物(分子内に芳香族環とエポキシ基とを有する化合物);2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル等の脂肪族エポキシ化合物(脂肪族炭素原子に結合するオキシラン環を分子内に少なくとも1個有する化合物)等が挙げられる。オキセタン化合物としては、3-エチル-3-{[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ]メチル}オキセタン等の分子内に1個以上のオキセタン環を有する化合物が挙げられる。2種以上のカチオン重合性化合物が用いられてもよい。
【0029】
カチオン重合性接着剤組成物は、カチオン重合開始剤を含むことが好ましい。カチオン重合開始剤としては、ベンゼンジアゾニウム ヘキサフルオロアンチモネート等の芳香族ジアゾニウム塩;ジフェニルヨードニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等の芳香族ヨードニウム塩;トリフェニルスルホニウム ヘキサフルオロホスフェート等の芳香族スルホニウム塩;キシレン-シクロペンタジエニル鉄(II)ヘキサフルオロアンチモネート等の鉄-アレーン錯体等が挙げられる。カチオン重合開始剤の含有量は、カチオン重合性化合物100質量部に対して通常0.1~10質量部である。2種以上のカチオン重合開始剤が用いられてもよい。
【0030】
ラジカル重合性化合物としては、エチレン性不飽和結合を有する化合物が挙げられる。エチレン性不飽和結合を有する化合物としては、分子内に1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリル系化合物、分子内に1個以上のビニル基を有するビニル化合物等が挙げられる。(メタ)アクリル系化合物としては、分子内に少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリレートモノマー、(メタ)アクリルアミドモノマー、及び、官能基含有化合物を2種以上反応させて得られ、分子内に少なくとも2個の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリルオリゴマー等の(メタ)アクリロイル基含有化合物を挙げることができる。2種以上のラジカル重合性化合物が用いられてもよい。
【0031】
ラジカル重合性接着剤組成物は、ラジカル重合開始剤を含むことが好ましい。ラジカル重合開始剤としては、アセトフェノン、3-メチルアセトフェノン等のアセトフェノン系開始剤;ベンゾフェノン、4-クロロベンゾフェノン、4,4’-ジアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン系開始剤;ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル等のベンゾインエーテル系開始剤;4-イソプロピルチオキサントン等のチオキサントン系開始剤;キサントン、フルオレノン等が挙げられる。ラジカル重合開始剤の含有量は、ラジカル重合性化合物100質量部に対して通常0.1~10質量部である。2種以上のラジカル重合開始剤が用いられてもよい。
【0032】
活性エネルギー線硬化型接着剤組成物は、必要に応じて、イオントラップ剤、酸化防止剤、連鎖移動剤、粘着付与剤、熱可塑性樹脂、充填剤、流動調整剤、可塑剤、消泡剤、帯電防止剤、レベリング剤、溶媒等の添加剤を含有することができる。
【0033】
粘接着剤層20による基材層10と位相差層30との貼合は、基材層10及び位相差層30のうちの少なくとも一方の層の貼合面に、接着剤組成物を塗工し、接着剤組成物の塗工層を介して上記2つの層を重ね合わせ、貼合ロール等を用いて上下から押圧して貼合後、塗工層を乾燥させる、塗工層に活性エネルギー線を照射して硬化させる、又は加熱して硬化させることにより行うことができる。接着剤組成物の塗工層の形成には、ダイコーター、カンマコーター、グラビアコーター、ワイヤーバーコーター、ドクターブレードコーター等の種々の塗工方式を使用することができる。
【0034】
接着剤組成物の塗工層を形成する前に、上記少なくとも一方の層の貼合面に、ケン化処理、コロナ処理、プラズマ処理、プライマー処理、アンカーコーティング処理等の易接着処理を施してもよい。
【0035】
活性エネルギー線硬化型接着剤組成物の重合硬化を行うために使用する光源は、特に限定されないが、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ、ハロゲンランプ、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプが挙げられる。
【0036】
水系接着剤組成物から形成される接着剤層の厚みは、例えば5μm以下であってよく、1μm以下であることが好ましく、0.5μm以下であることがより好ましく、0.01μm以上であってよく、0.05μm以上であることが好ましい。
活性エネルギー線硬化型接着剤組成物から形成される硬化物層(接着剤層)の厚みは、例えば、10μm以下であってよく、5μm以下であることが好ましく、3μm以下であることがより好ましく、0.1μm以上であってもよく、0.5μm以上であることが好ましく、1μm以上であることがより好ましい。
【0037】
粘着剤組成物としては、従来公知の光学的な透明性に優れる粘着剤組成物を特に制限なく用いることができ、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂等のベースポリマーを有する粘着剤組成物を用いることができる。また、活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物、熱硬化型粘着剤組成物などであってもよい。これらの中でも、透明性、粘着力、再剥離性、耐候性、耐熱性等に優れる(メタ)アクリル系樹脂をベースポリマーとした粘着剤組成物が好適である。粘着剤組成物は、さらに、架橋剤、シラン化合物、帯電防止剤等を含んでいてもよい。
【0038】
粘着剤組成物に含まれる(メタ)アクリル系樹脂は、下記式(VIII)で示される(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位(以下、「構成単位(VIII)」ともいう。)を主成分(例えば、(メタ)アクリル系樹脂を構成する全構成単位100質量部に対して50質量部以上含む。)とする重合体(以下、「(メタ)アクリル酸エステル重合体」ともいう。)であることが好ましい。
【化1】
[式(VIII)中、
R
10は、水素原子又はメチル基を表し、
R
20は、炭素数1~20のアルキル基を表し、該アルキル基は直鎖状、分岐状又は環状のいずれの構造を有していてもよく、該アルキル基の水素原子は、炭素数1~10のアルコキシ基で置き換わっていてもよい。]
【0039】
式(VIII)で表される(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、i-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、n-へキシル(メタ)アクリレート、i-へキシル(メタ)アクリレート、n-ヘプチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、i-オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルへキシル(メタ)アクリレート、n-及びi-ノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、i-デシル(メタ)アクリレート、n-ドデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。アルコキシ基含有アルキル(メタ)アクリレートとしては、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシメチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。中でもn-ブチル(メタ)アクリレート又は2-エチルへキシル(メタ)アクリレートを含むことが好ましく、n-ブチル(メタ)アクリレートを含むことがより好ましい。
【0040】
(メタ)アクリル酸エステル重合体は、構成単位(VIII)以外の他の単量体に由来する構成単位を含んでいてもよい。他の単量体に由来する構成単位は、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。(メタ)アクリル酸エステル重合体が含み得る他の単量体としては、極性官能基を有する単量体、芳香族基を有する単量体、(メタ)アクリルアミド系単量体が挙げられる。
【0041】
極性官能基を有する単量体としては、極性官能基を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。極性官能基としては、ヒドロキシ基;カルボキシ基;炭素数1~6のアルキル基で置換された置換アミノ基又は無置換アミノ基;エポキシ基等の複素環基等が挙げられる。
【0042】
(メタ)アクリル酸エステル重合体中の極性官能基を有する単量体に由来する構成単位の含有量は、(メタ)アクリル酸エステル重合体の全構成単位100質量部に対して、好ましくは10質量部以下、より好ましくは0.5質量部以上10質量部以下、さらに好ましくは1質量部以上5質量部以下である。
【0043】
芳香族基を有する単量体としては、分子内に1個の(メタ)アクリロイル基と1個以上の芳香環(例えば、ベンゼン環、ナフタレン環等)を有する単量体が挙げられ、より具体的には、フェニル基、フェノキシエチル基、又はベンジル基を有する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。
【0044】
(メタ)アクリル酸エステル重合体中の芳香族基を有する単量体に由来する構成単位の含有量は、(メタ)アクリル酸エステル重合体の全構成単位100質量部に対して、好ましくは4質量部以上20質量部以下、より好ましくは4質量部以上15質量部以下である。
【0045】
(メタ)アクリルアミド系単量体としては、N-(メトキシメチル)(メタ)アクリルアミド、N-(エトキシメチル)(メタ)アクリルアミド、N-(プロポキシメチル)(メタ)アクリルアミド、N-(ブトキシメチル)(メタ)アクリルアミド、N-(2-メチルプロポキシメチル)(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0046】
さらに、構成単位(VIII)以外の他の単量体に由来する構成単位として、スチレン系単量体に由来する構成単位、ビニル系単量体に由来する構成単位、分子内に複数の(メタ)アクリロイル基を有する単量体に由来する構成単位等が含まれていてもよい。
【0047】
(メタ)アクリル系樹脂の重量平均分子量(以下、単に「Mw」ともいう。)は、50万~250万であることが好ましい。Mwが50万以上であると、高温、高湿の環境下における粘着剤層の耐久性を向上させることができる。Mwが250万以下であると、粘着剤組成物を含有する塗工液を塗工する際の操作性が良好となる。重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(以下、単に「Mn」ともいう。)との比で表される分子量分布(Mw/Mn)は、通常2~10である。本明細書において「重量平均分子量」及び「数平均分子量」とは、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算値である。
【0048】
(メタ)アクリル系樹脂のガラス転移温度Tgは、例えば-60~20℃、好ましくは-50~15℃、より好ましくは-45~10℃、さらに好ましくは-40~0℃である。なお、ガラス転移温度は示差走査熱量計(DSC)により測定できる。
【0049】
(メタ)アクリル系樹脂は、通常、溶液重合法、塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の公知の重合方法によって製造することができる。(メタ)アクリル系樹脂の製造においては、通常、重合開始剤の存在下に重合が行われる。重合開始剤の使用量は、(メタ)アクリル系樹脂を構成する全ての単量体の合計100質量部に対して、通常0.001~5質量部である。
【0050】
粘着剤組成物は、架橋剤を含むことが好ましい。架橋剤としては、慣用の架橋剤(例えば、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物、金属キレート化合物、過酸化物等)が挙げられ、特に粘着剤組成物のポットライフ、架橋速度、及び位相差板の耐久性等の観点から、イソシアネート系化合物であることが好ましい。架橋剤の割合は、(メタ)アクリル系樹脂100質量部に対して、例えば、0.01~10質量部、好ましくは0.05~5質量部である。
【0051】
粘着剤組成物は、さらにシラン化合物を含有していてもよい。粘着剤組成物におけるシラン化合物の含有量は、(メタ)アクリル系樹脂100質量部に対して、通常0.01~10質量部である。
【0052】
粘着剤組成物は、帯電防止剤をさらに含んでもよい。帯電防止剤としては、公知のものが挙げられ、イオン性帯電防止剤が好適である。粘着剤組成物の帯電防止性能の経時安定性に優れるという点で、室温で固体であるイオン性帯電防止剤が好ましい。帯電防止剤の含有量は、(メタ)アクリル系樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01~20質量部であり、より好ましくは1~7質量である。
【0053】
粘着剤層の厚みは、通常0.1~50μmであり、好ましくは3~30μmであり、さらに好ましくは5~25μm、特に好ましくは5~20μmである。
【0054】
粘接着剤層は、温度25℃における貯蔵弾性率が、好ましくは10kPa以上、より好ましくは20kPa以上、さらに好ましくは50kPa以上である。貯蔵弾性率が上記範囲であると、位相差板及びこれを熱成型処理して得られる位相差板熱成型体について、シワ発生等の外観品位の低下を抑制することができる。粘接着剤層の温度25℃における貯蔵弾性率は、好ましくは200kPa未満、より好ましくは120kPa以下である。貯蔵弾性率が上記範囲であると、熱成型処理時のワレを抑制することができる。粘接着剤層の温度25℃における貯蔵弾性率は、[実施例]の項の記載に従って測定することができる。
【0055】
(4)位相差層
位相差板が有する位相差層は、厚みが5μm以下の液晶位相差層である。液晶位相差層は、面内又は厚み方向に位相差を示す膜であって、重合性液晶化合物の重合体からなる層(硬化物層)であるか、又はこの層と配向膜との2層構成である膜である。液晶位相差層は、例えば、重合性液晶化合物を含む液晶組成物の硬化物層を含む。液晶位相差層は、支持基材層上に形成された配向膜上に、上記液晶組成物を塗布し、該液晶用組成物に含まれる重合性液晶化合物を重合することによって形成できる。液晶位相差層は、通常、重合性液晶化合物が配向した状態で硬化した層を含む。
【0056】
液晶位相差層は、λ/2板機能(すなわちπの位相差機能)を有する液晶位相差層(以下、「λ/2層」ともいう。)、λ/4板機能(すなわちπ/2の位相差機能)を有する液晶位相差層(以下、「λ/4層」ともいう。)、厚み方向に異方性を有する層(ポジティブC層)、又はこれらから選択される層の組み合わせ等であってよい。
【0057】
λ/4層は、波長550nmにおける面内位相差値Re(550)が、通常90nm以上220nm以下の範囲であり、好ましくは100nm以上200nm以下の範囲であり、より好ましくは100nm以上160nm以下の範囲である。λ/2層は、波長550nmにおける面内位相差値Re(550)が、好ましくは100nm以上300nm以下、より好ましくは150nm以上300nm以下、さらに好ましくは200nm以上300nm以下の範囲である。また、ポジティブC層は、波長550nmにおける厚み方向の位相差値Rth(550)が、通常-170nm以上-10nm以下の範囲であり、好ましくは-150nm以上-20nm以下の範囲である。
【0058】
位相差層は、好ましくは、逆波長分散性を有し、具体的には、下記式を満たすことが好ましい。
Re(450)<Re(550)<Re(630)
[式中、Re(450)は、波長450nmにおける面内位相差値を表し、Re(550)は、波長550nmにおける面内位相差値を表し、Re(630)は、波長630nmにおける面内位相差値を表す。]
【0059】
液晶位相差層の厚みは、好ましくは0.5μm以上5μm以下、より好ましくは1μm以上3μm以下である。液晶位相差層の厚みは、干渉膜厚計、レーザー顕微鏡、又は触針式膜厚計によって測定することができる。
【0060】
液晶位相差層形成用の液晶組成物は、重合性液晶化合物を含み、さらに、溶剤、レベリング剤、重合開始剤、増感剤、重合禁止剤、架橋剤、密着剤、及び反応性添加剤等の添加剤を含んでいてもよい。加工性の観点から、液晶組成物は、溶剤及びレベリング剤を含むことが好ましい。
【0061】
液晶組成物に含まれる重合性液晶化合物は、分子内に少なくとも1つの重合性基、特に光重合性基を有する液晶化合物を意味し、該重合性液晶化合物としては、例えば位相差フィルムの分野において従来公知の重合性液晶化合物を用いることができる。液晶性はサーモトロピック性液晶でもリオトロピック性液晶でもよいが、緻密な膜厚制御が可能な点でサーモトロピック性液晶が好ましい。サーモトロピック性液晶における相秩序構造としてはネマチック液晶でもスメクチック液晶でもよい。棒状液晶であってもよいし円盤状液晶であってもよい。重合性液晶化合物は単独又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0062】
逆波長分散性のλ/4層を得るために用いる重合性液晶化合物としては、逆波長分散性を発現の観点から分子長軸方向に対して垂直方向にさらに複屈折性を有するT字型あるいはH型にメソゲン構造を有する液晶が好ましく、より強い分散が得られる観点からT字型液晶がより好ましく、T字型液晶の構造としては、具体的には、例えば、下記式(I)で表される化合物が挙げられる。
【化2】
[式(I)中、
Arは置換基を有していてもよい二価の芳香族基を表す。該二価の芳香族基中には窒素原子、酸素原子、硫黄原子のうち少なくとも1つ以上が含まれることが好ましい。二価の基Arに含まれる芳香族基が2つ以上である場合、2つ以上の芳香族基は互いに単結合、-CO-O-、-O-等の二価の結合基で結合していてもよい。
G
1及びG
2はそれぞれ独立に、二価の芳香族基又は二価の脂環式炭化水素基を表す。ここで、該二価の芳香族基又は二価の脂環式炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のフルオロアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、シアノ基又はニトロ基に置換されていてもよく、該二価の芳香族基又は二価の脂環式炭化水素基を構成する炭素原子が、酸素原子、硫黄原子又は窒素原子に置換されていてもよい。
L
1、L
2、B
1及びB
2はそれぞれ独立に、単結合又は二価の連結基である。
k、lは、それぞれ独立に0~3の整数を表し、1≦k+lの関係を満たす。ここで、2≦k+lである場合、B
1及びB
2、G
1及びG
2は、それぞれ互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
E
1及びE
2はそれぞれ独立に、炭素数1~17のアルカンジイル基を表し、ここで、アルカンジイル基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよく、該アルカンジイル基に含まれる-CH
2-は、-O-、-S-、-COO-で置換されていてもよく、-O-、-S-、-COO-を複数有する場合は互いに隣接しない。
P
1及びP
2は互いに独立に、重合性基又は水素原子を表し、少なくとも1つは重合性基である。]
【0063】
G1及びG2は、それぞれ独立に、好ましくは、ハロゲン原子及び炭素数1~4のアルキル基からなる群から選ばれる少なくとも1つの置換基で置換されていてもよい1,4-フェニレンジイル基、ハロゲン原子及び炭素数1~4のアルキル基からなる群から選ばれる少なくとも1つの置換基で置換されていてもよい1,4-シクロヘキサンジイル基であり、より好ましくはメチル基で置換された1,4-フェニレンジイル基、無置換の1,4-フェニレンジイル基、又は無置換の1,4-trans-シクロヘキサンジイル基であり、特に好ましくは無置換の1,4-フェニレンジイル基、又は無置換の1,4-trans-シクロへキサンジイル基である。
また、複数存在するG1及びG2のうち少なくとも1つは二価の脂環式炭化水素基であることが好ましく、また、L1又はL2に結合するG1及びG2のうち少なくとも1つは二価の脂環式炭化水素基であることがより好ましい。
【0064】
L1及びL2はそれぞれ独立に、好ましくは、単結合、炭素数1~4のアルキレン基、-O-、-S-、-Ra1ORa2-、-Ra3COORa4-、-Ra5OCORa6-、Ra7OC=OORa8-、-N=N-、-CRc=CRd-、又はC≡C-である。ここで、Ra1~Ra8はそれぞれ独立に単結合、又は炭素数1~4のアルキレン基を表し、Rc及びRdは炭素数1~4のアルキル基又は水素原子を表す。L1及びL2はそれぞれ独立に、より好ましくは単結合、-ORa2-1-、-CH2-、-CH2CH2-、-COORa4-1-、又はOCORa6-1-である。ここで、Ra2-1、Ra4-1、Ra6-1はそれぞれ独立に単結合、-CH2-、-CH2CH2-のいずれかを表す。L1及びL2はそれぞれ独立に、さらに好ましくは単結合、-O-、-CH2CH2-、-COO-、-COOCH2CH2-、又はOCO-である。
【0065】
B1及びB2はそれぞれ独立に、好ましくは、単結合、炭素数1~4のアルキレン基、-O-、-S-、-Ra9ORa10-、-Ra11COORa12-、-Ra13OCORa14-、又はRa15OC=OORa16-である。ここで、Ra9~Ra16はそれぞれ独立に単結合、又は炭素数1~4のアルキレン基を表す。B1及びB2はそれぞれ独立に、より好ましくは単結合、-ORa10-1-、-CH2-、-CH2CH2-、-COORa12-1-、又はOCORa14-1-である。ここで、Ra10-1、Ra12-1、Ra14-1はそれぞれ独立に単結合、-CH2-、-CH2CH2-のいずれかを表す。B1及びB2はそれぞれ独立に、さらに好ましくは単結合、-O-、-CH2CH2-、-COO-、-COOCH2CH2-、-OCO-、又はOCOCH2CH2-である。
【0066】
k及びlは、逆波長分散性発現の観点から2≦k+l≦6の範囲が好ましく、k+l=4であることが好ましく、k=2かつl=2であることがより好ましい。k=2かつl=2であると対称構造となるため好ましい。
【0067】
E1及びE2はそれぞれ独立に、炭素数1~17のアルカンジイル基が好ましく、炭素数4~12のアルカンジイル基がより好ましい。
【0068】
P1又はP2で表される重合性基としては、エポキシ基、ビニル基、ビニルオキシ基、1-クロロビニル基、イソプロペニル基、4-ビニルフェニル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、オキシラニル基、及びオキセタニル基等が挙げられる。中でも、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニルオキシ基、オキシラニル基及びオキセタニル基が好ましく、アクリロイルオキシ基がより好ましい。
【0069】
Arは置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環、置換基を有していてもよい芳香族複素環、及び電子吸引性基から選ばれる少なくとも一つを有することが好ましい。当該芳香族炭化水素環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等が挙げられ、ベンゼン環、ナフタレン環が好ましい。当該芳香族複素環としては、フラン環、ベンゾフラン環、ピロール環、インドール環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、トリアゾール環、トリアジン環、ピロリン環、イミダゾール環、ピラゾール環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、チエノチアゾール環、オキサゾール環、ベンゾオキサゾール環、及びフェナンスロリン環等が挙げられる。なかでも、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、又はベンゾフラン環を有することが好ましく、ベンゾチアゾール基を有することがさらに好ましい。また、Arに窒素原子が含まれる場合、当該窒素原子はπ電子を有することが好ましい。
【0070】
式(I)中、Arで表される2価の芳香族基に含まれるπ電子の合計数Nπは8以上が好ましく、より好ましくは10以上であり、さらに好ましくは14以上であり、特に好ましくは16以上である。また、好ましくは30以下であり、より好ましくは26以下であり、さらに好ましくは24以下である。
【0071】
Arで表される芳香族基としては、例えば以下の基が好適に挙げられる。
【化3】
[式(Ar-1)~式(Ar-23)中、
*印は連結部を表し、
Z
0、Z
1及びZ
2は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~12のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、炭素数1~12のアルキルスルフィニル基、炭素数1~12のアルキルスルホニル基、カルボキシル基、炭素数1~12のフルオロアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数1~12のアルキルチオ基、炭素数1~12のN-アルキルアミノ基、炭素数2~12のN,N-ジアルキルアミノ基、炭素数1~12のN-アルキルスルファモイル基又は炭素数2~12のN,N-ジアルキルスルファモイル基を表す。
Q
1及びQ
2は、それぞれ独立に、-CR
2’R
3’-、-S-、-NH-、-NR
2’-、-CO-又はO-を表し、R
2’及びR
3’は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。
J
1、及びJ
2は、それぞれ独立に、炭素原子、又は窒素原子を表す。
Y
1、Y
2及びY
3は、それぞれ独立に、置換されていてもよい芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表す。
W
1及びW
2は、それぞれ独立に、水素原子、シアノ基、メチル基又はハロゲン原子を表す。
mは0~6の整数を表す。]
【0072】
Y1、Y2及びY3における芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナンスリル基、ビフェニル基等の炭素数6~20の芳香族炭化水素基が挙げられ、フェニル基、ナフチル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。芳香族複素環基としては、フリル基、ピロリル基、チエニル基、ピリジニル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基等の窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を少なくとも1つ含む炭素数4~20の芳香族複素環基が挙げられ、フリル基、チエニル基、ピリジニル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基が好ましい。
【0073】
Y1、Y2及びY3は、それぞれ独立に、置換されていてもよい多環系芳香族炭化水素基又は多環系芳香族複素環基であってもよい。多環系芳香族炭化水素基は、縮合多環系芳香族炭化水素基、又は芳香環集合に由来する基をいう。多環系芳香族複素環基は、縮合多環系芳香族複素環基、又は芳香環集合に由来する基をいう。
【0074】
Z0、Z1及びZ2は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~12のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、炭素数1~12のアルコキシ基であることが好ましく、Z0は、水素原子、炭素数1~12のアルキル基、シアノ基がさらに好ましく、Z1及びZ2は、水素原子、フッ素原子、塩素原子、メチル基、シアノ基がさらに好ましい。
【0075】
Q1及びQ2は、-NH-、-S-、-NR2’-、-O-が好ましく、R2’は水素原子が好ましい。中でも-S-、-O-、-NH-が特に好ましい。
【0076】
式(Ar-1)~(Ar-23)で表される化合物の中でも、式(Ar-6)及び式(Ar-7)で表される化合物が分子の安定性の観点から好ましい。
【0077】
式(Ar-16)~(Ar-23)で表される化合物において、Y1は、これが結合する窒素原子及びZ0と共に、芳香族複素環基を形成していてもよい。芳香族複素環基としては、Arが有していてもよい芳香族複素環として前記したものが挙げられるが、例えば、ピロール環、イミダゾール環、ピロリン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、インドール環、キノリン環、イソキノリン環、プリン環、ピロリジン環等が挙げられる。この芳香族複素環基は、置換基を有していてもよい。また、Y1は、これが結合する窒素原子及びZ0と共に、前述した置換されていてもよい多環系芳香族炭化水素基又は多環系芳香族複素環基であってもよい。例えば、ベンゾフラン環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環等が挙げられる。
【0078】
重合性液晶化合物の中でも、極大吸収波長が300~400nmである化合物が好ましい。液晶組成物の長期安定性の点で有利となり、液晶位相差層に含まれる液晶組成物の硬化物層の配向性及び膜厚の均一性を向上できる。なお、重合性液晶化合物の極大吸収波長は、溶媒中で紫外可視分光光度計を用いて測定できる。該溶媒は重合性液晶化合物を溶解し得る溶媒であり、例えばクロロホルム等が挙げられる。
【0079】
円盤状の重合性液晶化合物としては、例えば、式(W)で表される基を含む化合物(以下、「重合性液晶化合物(W)」ともいう。)が挙げられる。
【化4】
[式(W)中、R
40は、下記式(W-1)~(W-5)を表す。]
【化5】
[式(W-1)~(W-5)中、
X
40及びZ
40は、それぞれ独立して、炭素数1~12のアルカンジイル基を表し、該アルカンジイル基に含まれる水素原子は、炭素数1~5のアルコキシ基で置換されていてもよく、該アルコキシ基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。また、該アルカンジイル基を構成する-CH
2-は、-O-又は-CO-に置き換わっていてもよい。
m2は、整数を表す。]
【0080】
棒状の重合性液晶化合物としては、例えば式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)、式(VI)、又は式(VII)で表わされる化合物が挙げられる。
P11-B11-E11-B12-A11-B13-A12-B14-A13-B15-A14-B16-E12-B17-P12 (II)
P11-B11-E11-B12-A11-B13-A12-B14-A13-B15-A14-F11 (III)
P11-B11-E11-B12-A11-B13-A12-B14-A13-B15-E12-B17-P12 (IV)
P11-B11-E11-B12-A11-B13-A12-B14-A13-F11 (V)
P11-B11-E11-B12-A11-B13-A12-B14-E12-B17-P12 (VI)
P11-B11-E11-B12-A11-B13-A12-F11 (VII)
[式(II)~(VII)中、
A11~A14は、それぞれ独立に、2価の脂環式炭化水素基又は2価の芳香族炭化水素基を表す。該2価の脂環式炭化水素基及び2価の芳香族炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、シアノ基又はニトロ基で置換されていてもよく、該炭素数1~6のアルキル基及び該炭素数1~6のアルコキシ基に含まれる水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。
B11及びB17は、それぞれ独立に、-O-、-S-、-CO-O-、-O-CO-、-O-CO-O-、-CO-NR16-、-NR16-CO-、-CO-、-CS-、又は単結合を表す。R16は、水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を表す。
B12~B16は、それぞれ独立に、-C≡C-、-CH=CH-、-CH2-CH2-、-O-、-S-、-C(=O)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-O-C(=O)-O-、-CH=N-、-N=CH-、-N=N-、-C(=O)-NR16-、-NR16-C(=O)-、-OCH2-、-OCF2-、-CH2O-、-CF2O-、-CH=CH-C(=O)-O-、-O-C(=O)-CH=CH-又は単結合を表す。
E11及びE12は、それぞれ独立に、炭素数1~12のアルカンジイル基を表し、該アルカンジイル基に含まれる水素原子は、炭素数1~5のアルコキシ基で置換されていてもよく、該アルコキシ基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。また、該アルカンジイル基を構成する-CH2-は、-O-又は-CO-に置き換わっていてもよい。
F11は、水素原子、炭素数1~13のアルキル基、炭素数1~13のアルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、トリフルオロメチル基、ジメチルアミノ基、ヒドロキシ基、メチロール基、ホルミル基、スルホ基(-SO3H)、カルボキシ基、炭素数1~10のアルコキシカルボニル基又はハロゲン原子を表し、該アルキル基及びアルコキシ基を構成する-CH2-は、-O-に置き換っていてもよい。
P11及びP12は、それぞれ独立に、重合性基を表す。]
【0081】
液晶組成物中の重合性液晶化合物の含有量は、液晶組成物の固形分100質量部に対して、例えば70~99.5質量部であり、好ましくは80~99質量部である。重合性液晶化合物の含有量が上記範囲内であれば、得られる硬化物層(液晶位相差層)の配向性の観点から有利である。なお、本明細書において、液晶組成物の固形分とは、液晶組成物から溶剤を除いた全ての成分を意味する。
【0082】
液晶組成物は、溶剤を含有していてもよい。一般に重合性液晶化合物は粘度が高いため、溶剤に溶解させた液晶組成物とすることで塗布が容易になり、結果として液晶位相差層を形成しやすくなる場合が多い。溶剤としては、重合性液晶化合物を完全に溶解し得るものが好ましく、また、重合性液晶化合物の重合反応に不活性な溶剤であることが好ましい。
【0083】
溶剤としては、メタノール、エタノール、エチレングリコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル及びプロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、γ-ブチロラクトン、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート及び乳酸エチル等のエステル溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン及びメチルイソブチルケトン等のケトン溶剤;ペンタン、ヘキサン及びヘプタン等の脂肪族炭化水素溶剤;トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素溶剤、アセトニトリル等のニトリル溶剤;テトラヒドロフラン及びジメトキシエタン等のエーテル溶剤;クロロホルム及びクロロベンゼン等の塩素含有溶剤;ジメチルアセトアミド、ジメチルホルミアミド、N-メチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン等のアミド系溶剤等が挙げられる。これら溶剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0084】
溶剤の含有量は、液晶組成物の総量に対して50~98質量%が好ましい。換言すると、液晶組成物における固形分の含有量は、2~50質量%が好ましい。
【0085】
液晶組成物は、レベリング剤を含有していてもよい。レベリング剤とは、組成物の流動性を調整し、組成物を塗布して得られる膜をより平坦にする機能を有する添加剤である。レベリング剤としては、例えば、有機変性シリコーンオイル系、ポリアクリレート系及びパーフルオロアルキル系のレベリング剤が挙げられる。中でも、ポリアクリレート系レベリング剤及びパーフルオロアルキル系レベリング剤が好ましい。
【0086】
液晶組成物がレベリング剤を含有する場合、その含有量は、重合性液晶化合物100質量部に対して、好ましくは0.01~5質量部、より好ましくは0.05~3質量部である。
【0087】
液晶組成物は、重合開始剤を含有していてもよい。重合開始剤は、重合性液晶化合物等の重合反応を開始し得る化合物である。重合開始剤としては、サーモトロピック液晶の相状態に依存しないという観点から、光の作用により活性ラジカルを発生する光重合開始剤が好ましい。
【0088】
光重合開始剤は、重合性液晶化合物の重合反応を開始し得る化合物であれば、公知の光重合開始剤を用いることができる。具体的には、光の作用により活性ラジカル又は酸を発生できる光重合開始剤が挙げられ、中でも、光の作用によりラジカルを発生する光重合開始剤が好ましい。光重合開始剤は単独又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0089】
光重合開始剤としては、公知の光重合開始剤を用いることができ、例えば、活性ラジカルを発生する光重合開始剤としては、ベンゾイン系化合物、アセトフェノン系化合物、ヒドロキシアセトフェノン系化合物、α-アミノアセトフェノン系化合物、オキシムエステル系化合物、アシルホスフィンオキサイド系化合物、アゾ系化合物、ベンゾフェノン系化合物、アルキルフェノン系化合物、ベンゾインエーテル系化合物、ベンジルケタール系化合物、ジベンゾスベロン系化合物、アントラキノン系化合物、キサントン系化合物、チオキサントン系化合物、ハロゲノアセトフェノン系化合物、ジアルコキシアセトフェノン系化合物、ハロゲノビスイミダゾール系化合物、ハロゲノトリアジン系化合物、トリアジン系化合物等を使用できる。酸を発生する光重合開始剤としては、ヨードニウム塩及びスルホニウム塩等を使用することができる。中でも、アセトフェノン系化合物、ヒドロキシアセトフェノン系化合物、α-アミノアセトフェノン系化合物、オキシムエステル系化合物が好ましい。
【0090】
液晶組成物中の重合開始剤の含有量は、重合性液晶化合物の種類及びその量に応じて適宜調節できるが、重合性液晶化合物100質量部に対して、通常0.1~30質量部、好ましくは0.5~10質量部、より好ましくは0.5~8質量部である。重合開始剤の含有量が上記範囲内であると、重合性液晶化合物の配向を乱すことなく重合を行うことができる。
【0091】
液晶組成物は、増感剤を含有してもよい。増感剤としては、光増感剤が好ましい。液晶組成物が増感剤を含有する場合、液晶組成物に含まれる重合性液晶化合物の重合反応をより促進することができる。かかる増感剤の使用量は、重合性液晶化合物100質量部に対して、0.1~30質量部が好ましい。
【0092】
重合反応を安定的に進行させる観点から、液晶組成物は重合禁止剤を含有してもよい。重合禁止剤により、重合性液晶化合物の重合反応の進行度合いをコントロールすることができる。液晶組成物が重合禁止剤を含有する場合、重合禁止剤の含有量は、重合性液晶化合物100質量部に対して、好ましくは0.1~30質量部である。
【0093】
配向膜は、重合性液晶化合物を所望の方向に液晶配向させる、配向規制力を有するものである。配向膜は、重合性液晶化合物の液晶配向を容易にする。水平配向、垂直配向、ハイブリッド配向、傾斜配向等の液晶配向の状態は、配向膜、並びに重合性液晶化合物の性質によって変化し、その組み合わせは任意に選択することができる。例えば、配向膜が配向規制力として水平配向を発現させる材料であれば、重合性液晶化合物は水平配向又はハイブリッド配向を形成することができ、垂直配向を発現させる材料であれば、重合性液晶化合物は垂直配向又は傾斜配向を形成することができる。水平、垂直等の表現は、液晶位相差層の平面を基準とした場合の、配向した重合性液晶化合物の長軸の方向を表す。例えば、垂直配向とは、液晶位相差層の平面に対して垂直な方向に、配向した重合性液晶化合物の長軸を有することである。ここでいう垂直とは、液晶位相差層の平面に対して90°±20°のことを意味する。
【0094】
配向規制力は、配向膜が配向性ポリマーから形成されている場合は、表面状態やラビング条件によって任意に調整することが可能であり、光配向性ポリマーから形成されている場合は、偏光照射条件等によって任意に調整することが可能である。また、重合性液晶化合物の、表面張力や液晶性等の物性を選択することにより、液晶配向を制御することもできる。
【0095】
配向膜は、支持基材層と液晶位相差層との間に形成される場合、液晶組成物に含まれる溶剤に不溶であり、また、溶剤の除去や重合性液晶化合物の配向のための加熱処理における耐熱性を有するものが好ましい。配向膜としては、配向性ポリマーからなる配向膜、光配向膜及びグルブ(groove)配向膜等が挙げられ、配向方向を容易に制御できる点で、光配向膜が好ましい。
【0096】
配向膜の厚みは、通常10nm~5000nmの範囲であり、好ましくは10nm~1000nmの範囲であり、より好ましくは30~300nmである。
【0097】
ラビング配向膜に用いられる配向性ポリマーとしては、分子内にアミド結合を有するポリアミドやゼラチン類、分子内にイミド結合を有するポリイミド及びその加水分解物であるポリアミック酸、ポリビニルアルコール、アルキル変性ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリオキサゾール、ポリエチレンイミン、ポリスチレン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸及びポリアクリル酸エステル類等が挙げられる。中でも、ポリビニルアルコールが好ましい。これらの配向性ポリマーは、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0098】
ラビングする方法としては、ラビング布が巻きつけられ、回転しているラビングロールに、配向性ポリマー組成物を支持基材層に塗布しアニールすることで支持基材層表面に形成された配向性ポリマーの膜を、接触させる方法が挙げられる。
【0099】
光配向膜は、光反応性基を有するポリマーやオリゴマー又はモノマーからなる。光配向膜は、偏光を照射することで配向規制力が得られる。照射する偏光の偏光方向を選択することにより、配向規制力の方向を任意に制御できる点で光配向膜がより好ましい。
【0100】
光反応性基とは、光を照射することにより液晶配向能を生じる基をいう。具体的には、光を照射することで生じる分子の配向誘起又は異性化反応、二量化反応、光架橋反応、又は光分解反応のような、液晶配向能の起源となる光反応を生じるものである。当該光反応性基の中でも、二量化反応又は光架橋反応を起こすものが、配向性に優れる点で好ましい。以上のような反応を生じ得る光反応性基としては、不飽和結合、特に二重結合を有するものが好ましく、炭素-炭素二重結合(C=C結合)、炭素-窒素二重結合(C=N結合)、窒素-窒素二重結合(N=N結合)、及び炭素-酸素二重結合(C=O結合)からなる群より選ばれる少なくとも一つを有する基がより好ましい。
【0101】
C=C結合を有する光反応性基としては例えば、ビニル基、ポリエン基、スチルベン基、スチルバゾール基、スチルバゾリウム基、カルコン基及びシンナモイル基等が挙げられる。反応性の制御が容易であるという点や光配向時の配向規制力発現の観点から、カルコン基及びシンナモイル基が好ましい。C=N結合を有する光反応性基としては、芳香族シッフ塩基及び芳香族ヒドラゾン等の構造を有する基が挙げられる。N=N結合を有する光反応性基としては、アゾベンゼン基、アゾナフタレン基、芳香族複素環アゾ基、ビスアゾ基及びホルマザン基等や、アゾキシベンゼンを基本構造とするものが挙げられる。C=O結合を有する光反応性基としては、ベンゾフェノン基、クマリン基、アントラキノン基及びマレイミド基等が挙げられる。これらの基は、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリルオキシ基、シアノ基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基及びハロゲン化アルキル基等の置換基を有していてもよい。
【0102】
偏光を照射するには、膜面から直接偏光を照射する形式でも、支持基材層側から偏光を照射し、偏光を透過させる形式でもよい。また、当該偏光は、実質的に平行光であることが特に好ましい。照射する偏光の波長は、光反応性基を有するポリマー又はモノマーの光反応性基が、光エネルギーを吸収し得る波長領域のものがよい。具体的には、波長250~400nmの範囲のUV(紫外光)が特に好ましい。
【0103】
(5)表面保護フィルム
図2に示されるように、位相差板は、基材層10における粘接着剤層20とは反対側に積層される表面保護フィルム40を含んでいてもよい。表面保護フィルムは、基材層に対して剥離可能に貼着され、位相差板の形状を保持したままで剥離できるフィルムである。
【0104】
表面保護フィルムは、例えば、基材フィルムとその上に積層される粘着剤層とで構成される。粘着剤層については上述の記述が引用される。基材フィルムを構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレンのようなポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン等のポリプロピレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等の熱可塑性樹脂であることができる。好ましくは、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂である。表面保護フィルムの厚みは、例えば、20μm以上200μm以下である。
【0105】
(6)粘着剤層及びセパレーター
図2に示されるように、位相差板は、位相差層30における粘接着剤層20とは反対側に積層される粘着剤層50を含んでいてもよい。粘着剤層については上述の記述が引用される。位相差板は、粘着剤層50における位相差層30とは反対側に積層されるセパレーター60をさらに含んでいてもよい。
【0106】
セパレーターは、粘着剤層に対して剥離可能に設けられ、粘着剤層の表面を被覆保護する。粘着剤層からセパレーターを剥離する際には、セパレーターは粘着剤層の形状を保ったまま剥離することができる。セパレーターとしては、基材フィルム及び離型処理層を有するものが好ましい。基材フィルムを構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレンのようなポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン等のポリプロピレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等の熱可塑性樹脂であることができる。離型処理層は、公知の離型処理層であればよく、例えばフッ素化合物やシリコーン化合物等の離型剤を基材フィルムにコーティングして形成された層が挙げられる。
【0107】
(7)位相差板の製造方法
位相差板は、例えば次のようにして製造することができる。上述の支持基材層上又は必要に応じて支持基材層に形成される配向膜上に、上記に従って液晶組成物を塗布し、該液晶組成物に含まれる重合性液晶化合物を重合することによって液晶位相差層である位相差層30を形成する。次に、基材層10と位相差層30とを粘接着剤層20により貼合した後、支持基材層を剥離除去することにより位相差板を得る。
【0108】
<位相差板熱成型体>
(1)位相差板熱成型体の構成
図3は、本発明に係る位相差板熱成型体の一例を模式的に示す断面図である。位相差板熱成型体は、上述の熱成型用位相差板の熱成型処理物(熱成型体)であり、通常は、熱成型用位相差板に対し、熱成型処理によって特定の形状を付与したものである。
図3に示される位相差板熱成型体は、
図1に示される位相差板の熱成型体であり、位相差板熱成型体全体として、側面からみたときに凸形状を有している。
【0109】
位相差板熱成型体の形状は特に制限されないが、曲面を有する形状が挙げられ、より具体的には、位相差板熱成型体の主面が曲面を含む形状が挙げられる。このような形状としては、位相差板熱成型体を側面からみたときに、位相差板熱成型体の少なくとも一部又は全体が凸形状又は凹形状である形状が挙げられる。
【0110】
例えば凸形状を有する位相差板熱成型体において、凸形状は、位相差層側が凸となる形状であってもよいし、基材層側が凸となる形状であってもよい。
【0111】
本発明に係る位相差板熱成型体によれば、上記本発明に係る熱成型用位相差板を用いているため、面内における位相差値のバラツキを抑制することができる。特定の形状が付与された位相差板熱成型体は、画像表示装置の構成部材等として好適に用いることができる。
【0112】
(2)位相差板熱成型体の製造方法
位相差板熱成型体は、位相差板を熱成型処理する工程を含む方法によって製造できる。熱成型の方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば金型を用いた熱プレス成型、インサート成型、真空成型、圧空成型、射出成型、減圧被覆成型、インモールド転写等が挙げられる。熱成型処理において、位相差板における基材層側の面は空気と接触していてもよいし、該面には表面保護フィルムが積層されていてもよい。また、熱成型処理において、位相差板における位相差層側の面は空気と接触していてもよいし、該面には粘着剤層が積層されていてもよい。
【0113】
熱成型処理の温度は、好ましくは基材層のガラス転移温度に応じて調整され、例えば80~180℃、好ましくは90~170℃、より好ましくは100~160℃、さらに好ましくは100~150℃、なおさらに好ましくは100~140℃である。
【0114】
(3)位相差板熱成型体の用途
位相差板熱成型体は、画像表示装置の構成部材等として好適に用いることができる。画像表示装置は特に限定されず、例えば有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)表示装置、無機エレクトロルミネッセンス(無機EL)表示装置、液晶表示装置、電界発光表示装置等が挙げられる。
【0115】
位相差板熱成型体が適用され得る画像表示装置は、例えば、VR(Virtual Reality)やAR(Augmented Reality)用のヘッドマウントディスプレイである。ヘッドマウントディスプレイは、フレーム形状、ヘルメット形状又はゴーグル形状等であり得る。
【0116】
位相差板熱成型体が例えば曲面形状を有する場合、該位相差板熱成型体は、画像表示装置が備える曲面形状を有する部材の該曲面に沿うように配置して用いることができる。曲面形状を有する部材の一例は光学レンズである。
図4は、光学レンズと位相差板熱成型体との組み合わせからなる光学機能性レンズの一例を模式的に示す断面図である。
図4に示される光学機能性レンズは、光学レンズ70と、光学レンズ70上に粘接着剤層80を介して積層される曲面形状を有する位相差板熱成型体100とを含む。上記ヘッドマウントディスプレイ等の画像表示装置は、該光学機能性レンズを含むことができる。位相差板熱成型体100を有する光学機能性レンズは、ディスプレイから映し出された光の偏光状態を変換する機能、例えば(楕)円偏光を直線偏光に変換する機能や、直線偏光を(楕)円偏光に変換する機能等を有することができる。粘接着剤層80は、接着剤層又は粘着剤層であり、これらの層については上の記述が引用される。
【0117】
位相差板熱成型体が有する曲面形状は通常、頂点を有する。そして、この頂点を含む断面形状は、底辺の長さが、通常12mm以上60mm以下であり、好ましくは30mm以下である。また、曲面形状の頂点を含む断面形状における底辺の長さに対する曲面の長さの比は通常1.01以上1.15以下である。本発明の位相差板であれば、比較的深い曲面形状であって、この比が1.01と比較的大きくても、得られる位相差板熱成型体の位相差値のバラツキを抑えることができる。
【実施例0118】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。以下、使用量、含有量を表す部及び%は、特に断りのない限り質量基準である。
【0119】
<測定>
(1)厚み
層又はフィルムの厚みは、レーザー顕微鏡(オリンパス株式会社製「LEXT」)、又は、デジタルマイクロメーター(株式会社ニコン製「MH-15M」)を用いて測定した。
【0120】
(2)基材層の全光線透過率
ヘイズメーター(株式会社村上色彩技術研究所社製「HM-150」)を用い、JIS K 7361-1:1997に準拠して、可視光領域における全光線透過率[%]を測定した。
【0121】
(3)基材層のガラス転移温度Tg
示差走査熱量計「セイコーインスツルメンツ製「EXSTAR6000シリーズ DSC6220」)を用いて、基材層のガラス転移温度Tg[℃]を測定した。
【0122】
(4)粘接着剤層の貯蔵弾性率
粘接着剤層を厚みが0.2mm(デジタルマイクロメーター(株式会社ニコン製「MH-15M」)で測定)になるように複数枚積層した後、直径8mmの円柱体を打ち抜いたものを測定用サンプルとして用い、この測定用サンプルについて、JIS K7244-6に準拠し、粘弾性測定装置(Physica社製「MCR300」)を用いてねじりせん断法により、以下の条件で貯蔵弾性率G’[kPa]を測定した。
〔測定条件〕
ノーマルフォースFN:1N
歪みγ:1%
周波数:1Hz
温度:25℃
【0123】
(5)位相差板の寸法変化率
作製した位相差板から辺A50mm×辺B50mmの試験片を切り出し、温度150℃のオーブンに入れて60秒間静置した。下記式により、寸法変化率を求めた。オーブン投入前の辺Aの長さをAbef、同じく辺Bの長さをBbefとし、オーブン取り出し後の辺Aの長さをAaft、同じく辺Bの長さをBaftとした際に、寸法変化率は以下の式にて算出した。
寸法変化率[%]={1-(Aaft×Baft)/(Abef×Bbef)}×100
【0124】
[基材層の作製又は準備]
〔1〕基材層(1-1):特開2013-254133号公報に従って溶融押形により作製した厚み60μmの(メタ)アクリル系樹脂フィルム(全光線透過率:93.5%、Tg:105℃)
〔2〕基材層(1-2):特開2013-254133号公報に従って押出成型により作製した厚み80μmの(メタ)アクリル系樹脂フィルム(全光線透過率:92.5%、Tg:105℃)
〔3〕基材層(2):国際公開第2022/176848号の実施例2と同じ混合物を用いて溶融押形により作製した厚み60μmの(メタ)アクリル系樹脂フィルム(全光線透過率:92.2%、Tg:110℃)
〔4〕基材層(3):国際公開第2022/176848号の実施例2と同じ混合物を用いて溶融押形により作製した厚み20μmの(メタ)アクリル系樹脂フィルム(全光線透過率:92.2%、Tg:115℃)
〔5〕基材層(4):厚み20μmのトリアセチルセルロース(TAC)フィルム(富士フイルム製、全光線透過率:90.6%、Tg:170℃)
〔6〕基材層(5):厚み23μmの環状ポリオレフィン系樹脂(COP)フィルム(日本ゼオン(株)製「ZF14」、全光線透過率:90.1%、Tg:141℃)
【0125】
[位相差層積層体(1)の作製]
(位相差層(1)形成用組成物の調製)
下記の成分を混合し、80℃で1時間撹拌することで、位相差層(1)形成用組成物を得た。
・重合性液晶化合物:
化合物(A11-1)
【化6】
…33部
化合物(x-1)
【化7】
…8部
・重合開始剤:
2-ジメチルアミノ-2-ベンジル-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン(イルガキュア(登録商標)369;BASFジャパン社製)…8部
・レベリング剤:
ポリアクリレート化合物(BYK-361N;BYK-Chemie社製)…0.1部
・その他の添加剤:
LALOMER LR9000(BASFジャパン社製)…6.7部
・溶剤:
シクロペンタノン…546部
N-メチルピロリドン…364部
【0126】
(光配向膜形成用組成物(1)の調製)
特開2013-033249号公報記載の下記成分を混合し、得られた混合物を80℃で1時間撹拌することにより、光配向膜形成用組成物(1)を得た。
・光配向性ポリマー:
【化8】
…2部
・溶剤:
o-キシレン…98部
【0127】
(位相差層積層体(1)の作製)
基材としてのフィルム幅800mmのロール状離型ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(ユニチカ(株)製「FF-50」、片面離型処理PETフィルム、支持基材の厚み:50μm)の離型処理側とは反対側の表面にコロナ処理を施した後に、上記光配向膜形成用組成物(1)を、フィルム中央部の幅600mm範囲にスロットダイコーターにより塗布した。得られた塗布膜を120℃で2分間乾燥させた後、室温まで冷却し、乾燥被膜を形成した。その後、偏光紫外光を配向規制力の方向が上記長尺フィルムの搬送方向(長尺方向)に対して0°の角度をなすように100mJ/cm2(313nm基準)照射し、長尺の光配向膜を形成した。光配向膜(1)の厚みは50nmだった。
【0128】
光配向膜(1)の上に、位相差層(1)形成用組成物を、フィルム中央部の幅600mm範囲にスロットダイコーターにより塗布し塗布膜を形成した。この塗布膜を120℃にて2分間加熱乾燥後、室温まで冷却し、紫外光照射装置を用いて、露光量1000mJ/cm2(365nm基準)の紫外光を照射することにより、位相差層(1)を形成した。位相差層(1)の厚みは2.1μmであった。面内位相差値を測定したところ、Re(450)=120.3nm、Re(550)=141.5nm、Re(630)=145.6nmであった。これにより、離型PETフィルム、光配向膜(1)、位相差層(1)をこの順に備える長尺の位相差層積層体(1)を得た。
【0129】
[延伸位相差フィルム(1)の準備]
延伸位相差フィルム(1)として、特開平07-216076号公報に記載の帝人(株)製「HMフィルム」を準備した。
【0130】
[延伸位相差フィルム(2)の準備]
延伸位相差フィルム(2)として、厚み23μmの環状ポリオレフィン系樹脂からなる位相差フィルム(日本ゼオン(株)製の商品名「ZD-12-50」)を準備した。
【0131】
[粘着剤層(1)の準備]
粘着剤層(1)として、以下工程にて5μm厚の(メタ)アクリル系粘着剤層を準備した。
攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下装置及び窒素導入管を備えた反応容器に、アクリル酸n-ブチル95.0質量部、アクリル酸4.0質量部、アクリル酸2-ヒドロキシエチル1.0質量部、酢酸エチル200質量部、及び2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.08質量部を仕込み、上記反応容器内の空気を窒素ガスで置換した。窒素雰囲気下で攪拌しながら、反応溶液を60℃に昇温し、6時間反応させた後、室温まで冷却した。得られた溶液の一部の重量平均分子量を測定した所、180万の(メタ)アクリル酸エステル重合体の生成を確認した。
上記工程で得られた(メタ)アクリル酸エステル重合体100質量部(固形分換算値;以下同じ)と、イソシアネート系架橋剤として、トリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート(東ソー株式会社製、商品名「コロネート(登録商標)L」)1.5質量部と、シランカップリング剤として、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製,商品名「KBM403」)0.30質量部と、紫外線硬化性化合物としてエトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート(新中村化学工業株式会社製:品名「A-9300」)7.5質量部と、光重合開始剤として2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン(BASF社製:イルガキュア(登録商標)907)0.5質量部とを混合し、十分に撹拌して、酢酸エチルで希釈することにより、粘着剤組成物の塗工溶液を得た。
セパレータ(リンテック株式会社製:SP-PLR382190)の離型処理面(剥離層面)に、アプリケーターにより、乾燥後の厚さが5μmとなるように前記塗工溶液を塗工した後、100℃で1分間乾燥し、粘着剤層のセパレータが貼合された面とは反対面に、もう1枚のセパレータ(リンテック株式会社製:SP-PLR381031)を貼合した。この粘着剤層にベルトコンベア付き紫外線照射装置(フュージョンUVシステムズ社製、ランプはDバルブを使用)を用いて剥離シート越しに紫外線(照射強度500mW/cm2、積算光量500mJ/cm2)を照射し、両面セパレータ付き粘着剤層を得た。
粘着剤層(1)の温度25℃における貯蔵弾性率G’は106kPaであった。
【0132】
[粘着剤層(2)の準備]
粘着剤層(2)として、以下工程にて15μm厚の(メタ)アクリル系粘着剤を準備した。
攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下装置及び窒素導入管を備えた反応容器に、アクリル酸n-ブチル97.0質量部、アクリル酸1.0質量部、アクリル酸2-ヒドロキシエチル0.5質量部、酢酸エチル200質量部、及び2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.08質量部を仕込み、上記反応容器内の空気を窒素ガスで置換した。窒素雰囲気下で攪拌しながら、反応溶液を60℃に昇温し、6時間反応させた後、室温まで冷却した。得られた溶液の一部の重量平均分子量を測定した所、180万の(メタ)アクリル酸エステル重合体の生成を確認した。
上記工程で得られた(メタ)アクリル酸エステル重合体100質量部(固形分換算値;以下同じ)と、イソシアネート系架橋剤として、トリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート(東ソー株式会社製、商品名「コロネート(登録商標)L」)0.30質量部と、シランカップリング剤として、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製,商品名「KBM403」)0.30質量部とを混合し、十分に撹拌して、酢酸エチルで希釈することにより、粘着剤組成物の塗工溶液を得た。
セパレータ(リンテック株式会社製:SP-PLR382190)の離型処理面(剥離層面)に、アプリケーターにより、乾燥後の厚さが15μmとなるように前記塗工溶液を塗工した後、100℃で1分間乾燥し、粘着剤層のセパレータが貼合された面とは反対面に、もう1枚のセパレータ(リンテック株式会社製:SP-PLR381031)を貼合し、両面セパレータ付き粘着剤層を得た。
粘着剤層(2)の温度25℃における貯蔵弾性率G’は25.1kPaであった。
【0133】
[粘着剤層(3)の準備]
粘着剤層(3)として、前項記載の粘着剤層(2)と同様の工程にて、25μm厚の(メタ)アクリル系粘着剤を準備した。粘着剤層(3)の温度25℃における貯蔵弾性率G’は25.1kPaであった。
【0134】
[粘着剤層(4)の準備]
粘着剤層(4)として、以下工程にて20μm厚の(メタ)アクリル系粘着剤を準備した。
攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下装置及び窒素導入管を備えた反応容器に、アクリル酸n-ブチル97.0質量部、アクリル酸2-ヒドロキシエチル3.0質量部、酢酸エチル200質量部、及び2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.08質量部を仕込み、上記反応容器内の空気を窒素ガスで置換した。窒素雰囲気下で攪拌しながら、反応溶液を60℃に昇温し、6時間反応させた後、室温まで冷却した。得られた溶液の一部の重量平均分子量を測定した所、180万の(メタ)アクリル酸エステル重合体の生成を確認した。
上記工程で得られた(メタ)アクリル酸エステル重合体100質量部(固形分換算値;以下同じ)と、イソシアネート系架橋剤として、トリメチロールプロパン変性キシリレンジイソシアネート(三井化学株式会社製、商品名「タケネート(登録商標)D-110N」)1.0質量部と、シランカップリング剤として、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製,商品名「KBM403」)0.30質量部とを混合し、十分に撹拌して、酢酸エチルで希釈することにより、粘着剤組成物の塗工溶液を得た。
セパレータ(リンテック株式会社製:SP-PLR382190)の離型処理面(剥離層面)に、アプリケーターにより、乾燥後の厚さが20μmとなるように前記塗工溶液を塗工した後、100℃で1分間乾燥し、粘着剤層のセパレータが貼合された面とは反対面に、もう1枚のセパレータ(リンテック株式会社製:SP-PLR381031)を貼合し、両面セパレータ付き粘着剤層を得た。
粘着剤層(4)の温度25℃における貯蔵弾性率G’は20.2kPaであった。
【0135】
[粘着剤層(5)の準備]
粘着剤層(5)として、以下工程にて25μm厚の(メタ)アクリル系粘着剤を準備した。
冷却管、窒素導入管、温度計、及び撹拌機を備えた反応容器に、酢酸エチル81.8部、アクリル酸ブチル98.0部、及びアクリル酸2.0部の混合溶液を仕込み、窒素ガスで装置内の空気を置換して酸素不含としながら内温を55℃に上げた。その後、アゾビスイソブチロニトリル(重合開始剤)0.14部を酢酸エチル10部に溶かした溶液を全量添加した。重合開始剤を添加した後、1時間この温度で保持し、次いで内温を54~56℃に保ちながら酢酸エチルを添加速度17.3部/hrで反応容器内へ連続的に加え、(メタ)アクリル系樹脂の濃度が35質量%となった時点で酢酸エチルの添加を止め、さらに酢酸エチルの添加開始から12時間経過するまでこの温度で保温した。最後に酢酸エチルを加えて(メタ)アクリル系樹脂の濃度が20質量%となるように調節し、アクリル樹脂溶液2を調製した。得られたアクリル樹脂は、重量平均分子量Mwが180万、分子量分布Mw/Mnが4.2であった。なお、Mw及びMnは、GPC装置にカラムとして、東ソー(株)製の「TSKgel GMHHR-H(S)」を2本直列につないで配置し、溶出液としてテトラヒドロフランを用い、試料濃度2mg/mL、試料導入量100μL、温度40℃、流速1mL/分の条件で、標準ポリスチレン換算により測定した。
上記で得られたアクリル樹脂溶液2の固形分80部に対して、二官能アクリレート(新中村化学工業株式会社より入手;品番「A-DOG」)を20部(固形分)、架橋剤(東ソー株式会社製:商品名「コロネートL」(トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体の酢酸エチル溶液(固形分濃度75質量%))を有効成分ベースで3.0部、光重合開始剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製:商品名「イルガキュア500」)を1.5部、シランカップリング剤(信越化学工業株式会社製:商品名「KBM-403」)を0.5部添加し、更に固形分濃度が13%となるように酢酸エチルを添加して粘着剤組成物を得た。
A-DOGは、ヒドロキシピバルアルデヒドとトリメチロールプロパンとのアセタール化合物のジアクリレートであって、下式の構造を有する。
【化9】
上記で調製した粘着剤組成物を、離型処理が施されたポリエチレンテレフタレートフィルムからなるセパレートフィルム〔リンテック(株)から入手した「PLR-382150」〕の離型処理面に、アプリケーターを用いて乾燥後の厚みが25μmとなるように塗布し、100℃で1分間乾燥して粘着剤層(粘着剤シート)を作製した。次いで得られた粘着剤層のセパレータフィルムと反対側の表面を離型処理が施されたポリエチレンテレフタレートフィルムからなるセパレートフィルム〔リンテック(株)から入手した「PLZ-381130」〕の離型処理面と貼合した。続けて紫外線を下記の条件で照射し、粘着剤シート2を作製した。
<UV照射条件>
・Fusion UVランプシステム(フュージョンUVシステムズ社製)Dバルブ使用
・積算光量1500mJ/cm
2
粘着剤層(5)の温度25℃における貯蔵弾性率G’は121kPaであった。
【0136】
[粘着剤層(6)の準備]
粘着剤層(6)として、前項記載の粘着剤層(1)と同様の工程にて、15μm厚の(メタ)アクリル系粘着剤を準備した。粘着剤層(6)の温度25℃における貯蔵弾性率G’は106kPaであった。
【0137】
<実施例1~12、比較例1~7>
(1)位相差板の作製
基材層と位相差層積層体又は延伸位相差フィルムとを、粘接着剤層を介して積層し、次いで、位相差層積層体を用いた場合には位相差層積層体の基材(離型PETフィルム又はCOPフィルム)を剥離除去して、位相差板を作製した。位相差板の作製に用いた部材の組み合わせを表1に示す。比較例1及び2の位相差板は、それぞれ、延伸位相差フィルム(1)、延伸位相差フィルム(2)それ自体である。また、位相差板の寸法変化率を併せて表1に示す。
【0138】
【0139】
(2)位相差板熱成型体の作製
作製した位相差板を、それぞれホットプレートを用いて、それぞれ用いた基材層のガラス転移点温度(Tg)よりも10℃高い温度(Tg+10℃)の温度で10秒加熱し、同じくホットプレートでそれぞれ用いた基材層のガラス転移点温度(Tg)よりも10℃高い温度(Tg+10℃)において加熱しておいた平凸レンズ(Thorlabs製、製品名「LA1608」、凸面の曲率半径38.6mm、直径25.4mm、凸面の高さ2.1mm)の凸面と、平凹レンズ(Thorlabs製、製品名「LC1582」、直径25.4mm、凹面の曲率半径38.6mm。凹面の深さ2.1mm)の凹面との間で位相差板を挟み込み、プレスすることで、それぞれ用いた基材層のガラス転移点温度(Tg)よりも10℃高い温度(Tg+10℃)での熱成型を行い、位相差層側が凸となる湾曲形状を有する位相差板熱成型体を得た。熱成型において、位相差板における基材層側の面及び位相差層側の面は、他の層及びフィルムが積層されておらず、空気と接触している状態であった。熱成型後は熱が冷めるまで静置し、冷却が完了してから平凸レンズ、平凹レンズを外した。基材層がついていない位相差板(比較例1,2)については、一括して150℃にて熱成型を行った。
【0140】
(3)評価試験
(3-1)位相差板熱成型体における位相差値のバラツキ
位相差板熱成型体の位相差層表面について、面内位相差分布の測定を行った。測定には、フォトニクスラティス製2次元複屈折評価システム「WPA-200」を用いた。波長547nmにおける面内位相差値Reの凸表面での分布を測定し、面内位相差値の最大値と最小値との差ΔReを求め、下記基準に従って位相差値のバラツキを評価した。
A:ΔReが0nm以上5nm未満
B:ΔReが5nm以上10nm未満
C:ΔReが10nm以上15nm未満
D:ΔReが15nm以上20nm未満
E:ΔReが20nm以上
【0141】
(3-2)熱による位相差値変化
位相差板の熱成型温度における加熱による位相差値変化を評価した。それぞれの位相差板を70×70mmの大きさに切り出し、位相差板熱成型体を作製する際に設定した温度(基材層のガラス転移点温度(Tg)+10℃)で30秒間、ホットプレート上に置いて加熱した。加熱後常温で十分に放冷し、中心部から40×40mmに切り出した位相差板の波長550nmにおける面内位相差値を、王子計測機器製位相差測定装置「KOBRA-RE」を用いて測定した。同時に、加熱前の同種の位相差板の位相差値も測定し、その差(ΔReSTD)を求めた。このΔReSTDの値の大きさに応じて、下記基準での評価を行った。
A:0nm≦ΔReSTD<1nm
B:1nm≦ΔReSTD<3nm
C:3nm≦ΔReSTD<5nm
D:5nm≦ΔReSTD<10nm
E:10nm≦ΔReSTD
【0142】
(3-3)位相差板熱成型体の外観品位
位相差板熱成型体について、シワ、クラック、ワレ、うねりの発生の有無を目視観察し、下記基準に従って位相差板熱成型体の外観品位を評価した。
A:シワ、クラック、ワレ、うねりの発生が認められない
B:軽微なシワが認められる
C:収縮、膨張によるうねりが認められる
D:クラックが認められる
E:シワ、うねり及びクラックから選択される2以上が認められる
【0143】
(3-4)熱成型処理に伴う基材層由来の位相差の発現
熱成型に伴う基材層の延伸による位相差を発現しうるか否かを評価した。各基材層を単体で上記記載に従って熱成型した。得られた熱成型体について、面内位相差分布の測定を行った。測定には、フォトニクスラティス製2次元複屈折評価システム「WPA-200」を用いた。熱成型前後における面内位相差値の変化量が3nm以上である場合を基材層由来の位相差の発現を「有」とし、下記基準に従って位相差の発現の有無を評価した。
A:位相差の発現無し
C:位相差の発現有り
【0144】
10 基材層、20 粘接着剤層、30 位相差層、40 表面保護フィルム、50 粘着剤層、60 セパレーター、70 光学レンズ、80 粘接着剤層、100 位相差板熱成型体。