(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115716
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】積層フィルム及び積層フィルム熱成型体
(51)【国際特許分類】
B32B 27/30 20060101AFI20240820BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20240820BHJP
G02B 3/00 20060101ALI20240820BHJP
C09B 31/043 20060101ALN20240820BHJP
C09B 31/02 20060101ALN20240820BHJP
【FI】
B32B27/30 A
G02B5/30
G02B3/00
B32B27/30 102
C09B31/043
C09B31/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021508
(22)【出願日】2023-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】澤 友樹
(72)【発明者】
【氏名】藤長 将司
(72)【発明者】
【氏名】幡中 伸行
【テーマコード(参考)】
2H149
4F100
【Fターム(参考)】
2H149AA02
2H149AA18
2H149AB01
2H149BA02
2H149BA14
2H149FA02Z
2H149FA03Z
2H149FA05Z
2H149FA08W
2H149FA08Z
2H149FA24W
2H149FA66
2H149FD02
2H149FD30
2H149FD35
2H149FD47
4F100AK01E
4F100AK21A
4F100AK21C
4F100AK25B
4F100AK25D
4F100AS00B
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4F100CB05D
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4F100GB41
4F100JB16E
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4F100JD01C
4F100JK07D
4F100JL13D
4F100JN10B
4F100YY00B
4F100YY00D
(57)【要約】
【課題】熱成型処理を施してもレンズ越しに表示した画像の鮮明度の低下を抑制することができる積層フィルムを提供する。
【解決手段】第1拡散防止層、厚みが5μm以下である染料分散型(メタ)アクリルポリマー層、及び第2拡散防止層をこの順に隣接して含む積層体と、該積層体の少なくとも一方の面に粘着剤層を介して積層される熱可塑性樹脂フィルムとを含む積層フィルムが提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1拡散防止層、厚みが5μm以下である染料分散型(メタ)アクリルポリマー層、及び第2拡散防止層をこの順に隣接して含む積層体と、
前記積層体の少なくとも一方の面に粘着剤層を介して積層される熱可塑性樹脂フィルムと、
を含む積層フィルム。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂フィルムは、ガラス転移温度が180℃以下である、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項3】
前記第1拡散防止層及び前記第2拡散防止層の少なくとも一方は、厚みが1μm以上5μm以下である、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂フィルムは、厚みが20μm以上100μm以下である、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項5】
前記第1拡散防止層及び前記第2拡散防止層の少なくとも一方は、ポリビニルアルコール系樹脂を含む、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項6】
前記染料分散型(メタ)アクリルポリマー層は、視感度補正偏光度が90%以上100%未満である、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項7】
前記粘着剤層は、温度25℃における貯蔵弾性率が10kPa以上200kPa未満であり、その厚みが0.1μm以上50μm以下である、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項8】
前記積層フィルムは、厚みが25μm以上150μm以下である、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の積層フィルムの熱成型体である、積層フィルム熱成型体。
【請求項10】
曲面を有する、請求項9に記載の積層フィルム熱成型体。
【請求項11】
光学レンズと、前記光学レンズ上に配置される請求項10に記載の積層フィルム熱成型体とを含む、光学機能性レンズ。
【請求項12】
請求項10に記載の積層フィルム熱成型体を含む、画像表示装置。
【請求項13】
請求項11に記載の光学機能性レンズを含む、画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層フィルムに関する。また、本発明は、積層フィルム熱成型体、並びに、該位相差板熱成型体を含む光学機能性レンズ及び画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像表示装置等の光学デバイスの多様化により、光学デバイスに組み込まれる光学フィルムにもそれに適応した多様化が求められている。例えば、光学フィルムの一つである偏光板には曲面形状を有することが求められる場合がある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
熱成型処理を施してもレンズ越しに表示した画像の鮮明度が低下する場合があった。本発明の目的は、この鮮明度の低下を抑制することができる積層フィルムを提供することにある。本発明の他の目的は、該積層フィルムの熱形成体、並びに、該熱成型体を含む光学機能性レンズ及び画像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下を提供する。
〔1〕 第1拡散防止層、厚みが5μm以下である染料分散型(メタ)アクリルポリマー層、及び第2拡散防止層をこの順に隣接して含む積層体と、
前記積層体の少なくとも一方の面に粘着剤層を介して積層される熱可塑性樹脂フィルムと、
を含む積層フィルム。
〔2〕 前記熱可塑性樹脂フィルムは、ガラス転移温度が180℃以下である、〔1〕に記載の積層フィルム。
〔3〕 前記第1拡散防止層及び前記第2拡散防止層の少なくとも一方は、厚みが1μm以上5μm以下である、〔1〕又は〔2〕に記載の積層フィルム。
〔4〕 前記熱可塑性樹脂フィルムは、厚みが20μm以上100μm以下である、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の積層フィルム。
〔5〕 前記第1拡散防止層及び前記第2拡散防止層の少なくとも一方は、ポリビニルアルコール系樹脂を含む、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の積層フィルム。
〔6〕 前記染料分散型(メタ)アクリルポリマー層は、視感度補正偏光度が90%以上100%未満である、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の積層フィルム。
〔7〕 前記粘着剤層は、温度25℃における貯蔵弾性率が10kPa以上200kPa未満であり、その厚みが0.1μm以上50μm以下である、〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の積層フィルム。
〔8〕 前記積層フィルムは、厚みが25μm以上150μm以下である、〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の積層フィルム。
〔9〕 〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の積層フィルムの熱成型体である、積層フィルム熱成型体。
〔10〕 曲面を有する、〔9〕に記載の積層フィルム熱成型体。
〔11〕 光学レンズと、前記光学レンズ上に配置される〔10〕に記載の積層フィルム熱成型体とを含む、光学機能性レンズ。
〔12〕 〔10〕に記載の積層フィルム熱成型体を含む、画像表示装置。
〔13〕 〔11〕に記載の光学機能性レンズを含む、画像表示装置。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、熱成型処理を施してもレンズ越しに表示した画像の鮮明度の低下を抑制することができる積層フィルム、該積層フィルムの熱形成体、並びに、該熱成型体を含む光学機能性レンズ及び画像表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明に係る積層フィルムの一例を模式的に示す断面図である。
【
図2】本発明に係る積層フィルムの他の一例を模式的に示す断面図である。
【
図3】本発明に係る積層フィルム熱成型体の一例を模式的に示す断面図である。
【
図4】本発明に係る光学機能性レンズの一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<積層フィルム>
(1)積層フィルムの構成
図1及び
図2は、本発明に係る積層フィルムの例を模式的に示す断面図である。本発明に係る積層フィルムは、第1拡散防止層11、厚みが5μm以下である染料分散型(メタ)アクリルポリマー層20、及び第2拡散防止層12をこの順に含む積層体と、該積層体の少なくとも一方の面に粘着剤層30を介して積層される熱可塑性樹脂フィルム40とを含む。
【0009】
熱可塑性樹脂フィルム40は、上記積層体における第2拡散防止層12の面に粘着剤層30を介して積層されていてもよいし(
図1)、上記積層体における第1拡散防止層11の面に粘着剤層30を介して積層されていてもよい(
図2)。また、熱可塑性樹脂フィルム40は、上記積層体における第1拡散防止層11の面及び第2拡散防止層12の面の両方に粘着剤層30を介して積層されていてもよい。
【0010】
上記積層体において、第1拡散防止層11と染料分散型(メタ)アクリルポリマー層20とは直接接していることが好ましく、染料分散型(メタ)アクリルポリマー層20と第2拡散防止層12とは直接接していることが好ましい。粘着剤層30と熱可塑性樹脂フィルム40とは直接接していることが好ましい。また、粘着剤層30は、第1拡散防止層11又は第2拡散防止層12と直接接していることが好ましい。なお、染料分散型(メタ)アクリルポリマー層20は、これに隣接する配向膜が存在する場合には、該配向膜を含むものとする。
【0011】
本発明に係る積層フィルムによれば、熱成型処理を施しても偏光度の低下を抑制することができる。該積層フィルムは、これを熱成型処理してなる積層フィルム熱成型体の作製のために好適に用いることができる。以下、本発明に係る積層フィルムを「熱成型用積層フィルム」ともいう。なお、本発明に係る積層フィルムは、上記した層以外の層を含み得る。
【0012】
本発明に係る積層フィルムの厚み(全体の厚み)は、積層フィルムの取扱性の観点から、また、積層フィルムを熱成型処理して得られる積層フィルム熱成型体の外観品位を高める観点から、好ましくは25μm以上、より好ましくは30μm以上、さらに好ましくは40μm以上、なおさらに好ましくは50μm以上、特に好ましくは60μm以上である。積層フィルムの厚みは、精度良く所望の形状に熱成型された積層フィルム熱成型体が得られやすいことから、好ましくは150μm以下、より好ましくは125μm以下、さらに好ましくは100μm以下である。
【0013】
(2)染料分散型(メタ)アクリルポリマー層
染料分散型(メタ)アクリルポリマー層は、例えば、(メタ)アクリルポリマー中に二色性染料(以下、「二色性色素」ともいう。)が分散されている層を含むものであり、好ましくは、液晶偏光子である。本明細書において「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルのうちの少なくとも一方をいう。(メタ)アクリロイル等の表記についても同様である。
【0014】
液晶偏光子は、面内に吸収軸とこれに直交する透過軸を有していて、吸収軸に平行な偏光成分は吸収し、透過軸に平行な偏光成分は透過する膜である。液晶偏光子は、二色性色素を含む重合性液晶化合物の重合体からなる層(硬化物層)単独であるか、又はこの層と配向膜との2層構成である膜である。液晶偏光子において、二色性色素が面内で一方向に配向している。液晶偏光子は、(メタ)アクリル系重合性液晶化合物(以下、単に「重合性液晶化合物」ともいう。)と二色性色素とを含む液晶組成物から、二色性色素及び重合性液晶化合物を一軸配向させることによって、二色性色素を含む重合性液晶化合物の重合体からなる層(硬化物層)を含むものとして形成することができる。すなわち、液晶偏光子は、重合性液晶化合物の重合体中に包摂された二色性色素によって光が異方性吸収されることによって偏光機能を発現することができる。
【0015】
液晶偏光子は、波長λ[nm]の光に対する配向方向の吸光度A1(λ)と配向面内垂直方向の吸光度A2(λ)との比(二色比;A1(λ)/A2(λ))が、好ましくは7以上、より好ましくは20以上、さらに好ましくは40以上である。この値が大きければ大きい程、吸収選択性の優れる液晶偏光子といえる。二色性色素の種類にもよるが、ネマチック液晶相の状態で硬化した硬化物層の場合、上記の比は5~10程度である。
【0016】
液晶偏光子が吸収波長の異なる2種以上の二色性色素を含むことにより、様々な色相の液晶偏光子を作製することができ、可視光全域に吸収を有する液晶偏光子とすることができる。このような吸収特性を有する液晶偏光子とすることで様々な用途に展開し得る。
【0017】
液晶偏光子は、基材層上に形成された第1又は第2拡散防止層上、又は、さらにその上に形成された配向膜上に上記液晶組成物を塗布し、液晶組成物に含まれる二色性色素が配向させることによって形成することができる。液晶偏光子は硬化物層に加えて配向膜を含むことができる。あるいは、本発明に係る積層フィルムは、配向膜を含んでいなくてもよい。
【0018】
液晶組成物は、液晶偏光子形成用の組成物であり、二色性色素及び重合性液晶化合物に加えてさらに、溶剤、レベリング剤、重合開始剤、増感剤、重合禁止剤、架橋剤、密着剤、及び反応性添加剤等の添加剤を含んでいてもよい。加工性の観点から、液晶組成物は、溶媒及びレベリング剤を含むことが好ましい。
【0019】
重合性液晶化合物は、分子内に少なくとも1つの重合性基を有し、該重合性基はメタクリロイルオキシ基及びアクリロイルオキシ基から選択され、かつ、液晶性を有する化合物である。重合性基は、重合反応に関与する基を意味し、光重合性基であることが好ましい。ここで、光重合性基とは、後述する光重合開始剤から発生した活性ラジカルや酸等によって重合反応に関与し得る基のことをいう。液晶性はサーモトロピック液晶でもリオトロピック液晶でもよいが、サーモトロピック液晶が好ましい。重合性液晶化合物はモノマーであってよく、二量体以上が重合したポリマーであってもよい。
【0020】
液晶組成物に含まれる重合性液晶化合物がサーモトロピック液晶である場合は、ネマチック液晶相を示すサーモトロピック性液晶化合物であってもよいし、スメクチック液晶相を示すサーモトロピック性液晶化合物であってもよい。二色比の大きい液晶偏光子(硬化物層)を得るという観点から、重合性液晶化合物が示す液晶状態は、スメクチック相であることが好ましく、高次スメクチック相であれば高性能化の観点からより好ましい。中でも、スメクチックB相、スメクチックD相、スメクチックE相、スメクチックF相、スメクチックG相、スメクチックH相、スメクチックI相、スメクチックJ相、スメクチックK相又はスメクチックL相を形成する高次スメクチック液晶化合物がより好ましく、スメクチックB相、スメクチックF相又はスメクチックI相を形成する高次スメクチック液晶化合物がさらに好ましい。重合性液晶化合物が形成する液晶相がこれらの高次スメクチック相であると、偏光性能の高い液晶偏光子(硬化物層)を製造することができる。また、このように偏光性能の高い液晶偏光子(硬化物層)はX線回折測定においてヘキサチック相やクリスタル相といった高次構造由来のブラッグピークが得られるものである。当該ブラッグピークは分子配向の周期構造に由来するピークであり、その周期間隔が3~6Åである層を得ることができる。液晶偏光子に含まれる硬化物層は、この重合性液晶化合物がスメクチック相の状態で配向した重合性液晶化合物の重合体を含むことが、より高い偏光特性が得られるという観点から好ましい。
【0021】
液晶組成物に含まれる重合性液晶化合物としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。液晶組成物における重合性液晶化合物の含有量は、液晶組成物の固形分に対して、好ましくは40~99.9質量%、より好ましくは60~99質量%、さらに好ましくは70~99質量%である。重合性液晶化合物の含有量が上記範囲内であると、重合性液晶化合物の配向性が高くなる傾向がある。なお、本明細書において、固形分とは、液晶組成物から溶剤を除いた成分の合計量をいう。
【0022】
二色性色素とは、分子の長軸方向における吸光度と、短軸方向における吸光度とが異なる性質を有する色素をいう。二色性色素としては、可視光を吸収する特性を有する特性を有することが好ましく、380~680nmの範囲に吸収極大波長(λmax)を有するものがより好ましい。このような二色性色素としては、例えば、アクリジン色素、オキサジン色素、シアニン色素、ナフタレン色素、アゾ色素及びアントラキノン色素等が挙げられるが、中でもアゾ色素が好ましい。アゾ色素としては、モノアゾ色素、ビスアゾ色素、トリスアゾ色素、テトラキスアゾ色素及びスチルベンアゾ色素等が挙げられ、好ましくはビスアゾ色素及びトリスアゾ色素である。二色性色素は単独でも、組み合わせてもよいが、可視光全域で吸収を得るためには、2種類以上の二色性色素を組み合わせることが好ましく、3種類以上の二色性色素を組み合わせることがより好ましい。
【0023】
アゾ色素としては、例えば、式(Da)で表される化合物が挙げられる。
T1-A1(-N=N-A2)p-N=N-A3-T2 (Da)
[式(Da)中、
A1、A2、及びA3は、互いに独立して、置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基、置換基を有していてもよいナフタレン-1,4-ジイル基、置換基を有していてもよい安息香酸フェニルエステル基、置換基を有していてもよい4,4’-スチルベニレン基、又は置換基を有していてもよい2価の複素環基を表し、
T1及びT2は、電子吸引基あるいは電子放出基を表し、アゾ結合面内に対して実質的に180°の位置に有する。
pは0~4の整数を表し、pが2以上である場合、各々のA2は互いに同一でも異なっていてもよい。
可視光領域に吸収を示す範囲で、-N=N-結合が-C=C-、-COO-、-NHCO-、-N=CH-結合に置き換わっていてもよい。]
【0024】
液晶組成物に含まれる二色性色素の含有量(複数種含む場合にはその合計量)は、良好な光吸収特性を得る観点から、重合性液晶化合物100質量部に対して、通常1~60質量部であり、好ましくは1~40質量部、より好ましくは1~20質量部である。二色性色素の含有量がこの範囲より少ないと光吸収が不十分となり、十分な偏光性能が得られず、この範囲よりも多いと液晶分子の配向を阻害する場合がある。
【0025】
液晶組成物は、溶剤を含有していてもよい。一般に重合性液晶化合物は粘度が高いため、溶剤に溶解させた液晶組成物とすることで塗布が容易になり、結果として液晶偏光子の硬化物層を形成しやすくなる場合が多い。溶剤としては、重合性液晶化合物を完全に溶解し得るものが好ましく、また、重合性液晶化合物の重合反応に不活性な溶剤であることが好ましい。
【0026】
溶剤としては、メタノール、エタノール、エチレングリコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル及びプロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、γ-ブチロラクトン、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート及び乳酸エチル等のエステル溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン及びメチルイソブチルケトン等のケトン溶剤;ペンタン、ヘキサン及びヘプタン等の脂肪族炭化水素溶剤;トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素溶剤、アセトニトリル等のニトリル溶剤;テトラヒドロフラン及びジメトキシエタン等のエーテル溶剤;クロロホルム及びクロロベンゼン等の塩素含有溶剤;ジメチルアセトアミド、ジメチルホルミアミド、N-メチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン等のアミド系溶剤等が挙げられる。これら溶剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
溶剤の含有量は、液晶組成物の総量に対して50~98質量%が好ましい。換言すると、液晶組成物における固形分の含有量は、2~50質量%が好ましい。
【0028】
液晶組成物は、レベリング剤を含有していてもよい。レベリング剤とは、組成物の流動性を調整し、組成物を塗布して得られる膜をより平坦にする機能を有する添加剤である。レベリング剤としては、例えば、有機変性シリコーンオイル系、ポリアクリレート系及びパーフルオロアルキル系のレベリング剤が挙げられる。中でも、ポリアクリレート系レベリング剤及びパーフルオロアルキル系レベリング剤が好ましい。
【0029】
液晶組成物がレベリング剤を含有する場合、その含有量は、重合性液晶化合物100質量部に対して、好ましくは0.01~5質量部、より好ましくは0.05~3質量部である。
【0030】
液晶組成物は、重合開始剤を含有していてもよい。重合開始剤は、重合性液晶化合物等の重合反応を開始し得る化合物である。重合開始剤としては、サーモトロピック液晶の相状態に依存しないという観点から、光の作用により活性ラジカルを発生する光重合開始剤が好ましい。
【0031】
光重合開始剤は、重合性液晶化合物の重合反応を開始し得る化合物であれば、公知の光重合開始剤を用いることができる。具体的には、光の作用により活性ラジカル又は酸を発生できる光重合開始剤が挙げられ、中でも、光の作用によりラジカルを発生する光重合開始剤が好ましい。光重合開始剤は単独又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0032】
光重合開始剤としては、公知の光重合開始剤を用いることができ、例えば、活性ラジカルを発生する光重合開始剤としては、ベンゾイン系化合物、アセトフェノン系化合物、ヒドロキシアセトフェノン系化合物、α-アミノアセトフェノン系化合物、オキシムエステル系化合物、アシルホスフィンオキサイド系化合物、アゾ系化合物、ベンゾフェノン系化合物、アルキルフェノン系化合物、ベンゾインエーテル系化合物、ベンジルケタール系化合物、ジベンゾスベロン系化合物、アントラキノン系化合物、キサントン系化合物、チオキサントン系化合物、ハロゲノアセトフェノン系化合物、ジアルコキシアセトフェノン系化合物、ハロゲノビスイミダゾール系化合物、ハロゲノトリアジン系化合物、トリアジン系化合物等を使用できる。酸を発生する光重合開始剤としては、ヨードニウム塩及びスルホニウム塩等を使用することができる。中でも、アセトフェノン系化合物、ヒドロキシアセトフェノン系化合物、α-アミノアセトフェノン系化合物、オキシムエステル系化合物が好ましい。
【0033】
液晶組成物中の重合開始剤の含有量は、重合性液晶化合物の種類及びその量に応じて適宜調節できるが、重合性液晶化合物100質量部に対して、通常0.1~30質量部、好ましくは0.5~10質量部、より好ましくは0.5~8質量部である。重合開始剤の含有量が上記範囲内であると、重合性液晶化合物の配向を乱すことなく重合を行うことができる。
【0034】
液晶組成物は、増感剤を含有してもよい。増感剤としては、光増感剤が好ましい。液晶組成物が増感剤を含有する場合、液晶組成物に含まれる重合性液晶化合物の重合反応をより促進することができる。かかる増感剤の使用量は、重合性液晶化合物100質量部に対して、0.1~30質量部が好ましい。
【0035】
重合反応を安定的に進行させる観点から、液晶組成物は重合禁止剤を含有してもよい。重合禁止剤により、重合性液晶化合物の重合反応の進行度合いをコントロールすることができる。液晶組成物が重合禁止剤を含有する場合、重合禁止剤の含有量は、重合性液晶化合物100質量部に対して、好ましくは0.1~30質量部である。
【0036】
配向膜は、重合性液晶化合物を所望の方向に液晶配向させる、配向規制力を有するものである。配向膜は、重合性液晶化合物の液晶配向を容易にする。水平配向、垂直配向、ハイブリッド配向、傾斜配向等の液晶配向の状態は、配向膜、並びに重合性液晶化合物の性質によって変化し、その組み合わせは任意に選択することができる。例えば、配向膜が配向規制力として水平配向を発現させる材料であれば、重合性液晶化合物は水平配向又はハイブリッド配向を形成することができる。
【0037】
配向規制力は、配向膜が配向性ポリマーから形成されている場合は、表面状態やラビング条件によって任意に調整することが可能であり、光配向性ポリマーから形成されている場合は、偏光照射条件等によって任意に調整することが可能である。また、重合性液晶化合物の、表面張力や液晶性等の物性を選択することにより、液晶配向を制御することもできる。
【0038】
配向膜は、液晶組成物に含まれる溶剤に不溶であり、また、溶剤の除去や重合性液晶化合物の配向のための加熱処理における耐熱性を有するものが好ましい。配向膜としては、配向性ポリマーからなる配向膜、光配向膜及びグルブ(groove)配向膜等が挙げられ、配向方向を容易に制御できる点で、光配向膜が好ましい。
【0039】
配向膜の厚みは、通常10~5000nmの範囲であり、好ましくは10~1000nmの範囲であり、より好ましくは30~300nmである。
【0040】
ラビング配向膜に用いられる配向性ポリマーとしては、分子内にアミド結合を有するポリアミドやゼラチン類、分子内にイミド結合を有するポリイミド及びその加水分解物であるポリアミック酸、ポリビニルアルコール、アルキル変性ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリオキサゾール、ポリエチレンイミン、ポリスチレン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸及びポリアクリル酸エステル類等が挙げられる。中でも、ポリビニルアルコールが好ましい。これらの配向性ポリマーは、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
ラビングする方法としては、ラビング布が巻きつけられ、回転しているラビングロールに、配向性ポリマー組成物を塗布しアニールすることで形成された配向性ポリマーの膜を、接触させる方法が挙げられる。
【0042】
光配向膜は、光反応性基を有するポリマーやオリゴマー又はモノマーからなる。光配向膜は、偏光を照射することで配向規制力が得られる。照射する偏光の偏光方向を選択することにより、配向規制力の方向を任意に制御できる点で光配向膜がより好ましい。
【0043】
光反応性基とは、光を照射することにより液晶配向能を生じる基をいう。具体的には、光を照射することで生じる分子の配向誘起又は異性化反応、二量化反応、光架橋反応、又は光分解反応のような、液晶配向能の起源となる光反応を生じるものである。当該光反応性基の中でも、二量化反応又は光架橋反応を起こすものが、配向性に優れる点で好ましい。以上のような反応を生じ得る光反応性基としては、不飽和結合、特に二重結合を有するものが好ましく、炭素-炭素二重結合(C=C結合)、炭素-窒素二重結合(C=N結合)、窒素-窒素二重結合(N=N結合)、及び炭素-酸素二重結合(C=O結合)からなる群より選ばれる少なくとも一つを有する基がより好ましい。
【0044】
C=C結合を有する光反応性基としては例えば、ビニル基、ポリエン基、スチルベン基、スチルバゾール基、スチルバゾリウム基、カルコン基及びシンナモイル基等が挙げられる。反応性の制御が容易であるという点や光配向時の配向規制力発現の観点から、カルコン基及びシンナモイル基が好ましい。C=N結合を有する光反応性基としては、芳香族シッフ塩基及び芳香族ヒドラゾン等の構造を有する基が挙げられる。N=N結合を有する光反応性基としては、アゾベンゼン基、アゾナフタレン基、芳香族複素環アゾ基、ビスアゾ基及びホルマザン基等や、アゾキシベンゼンを基本構造とするものが挙げられる。C=O結合を有する光反応性基としては、ベンゾフェノン基、クマリン基、アントラキノン基及びマレイミド基等が挙げられる。これらの基は、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリルオキシ基、シアノ基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基及びハロゲン化アルキル基等の置換基を有していてもよい。
【0045】
偏光を照射するには、膜面から直接偏光を照射する形式でも、基材層側から偏光を照射し、偏光を透過させる形式でもよい。また、当該偏光は、実質的に平行光であることが特に好ましい。照射する偏光の波長は、光反応性基を有するポリマー又はモノマーの光反応性基が、光エネルギーを吸収し得る波長領域のものがよい。具体的には、波長250~400nmの範囲のUV(紫外光)が特に好ましい。
【0046】
染料分散型(メタ)アクリルポリマー層の厚みは、5μm以下であり、好ましくは3μm以下である。該厚みが上記の範囲内であることにより、積層フィルムの薄型化を図ることができるとともに、積層フィルムを熱成型処理したときの偏光度の低下を抑制することができる。染料分散型(メタ)アクリルポリマー層の厚みは、通常0.01μm以上であり、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.3μm以上である。
【0047】
染料分散型(メタ)アクリルポリマー層の偏光性能は、分光光度計を用いて測定することができる。例えば、2nmステップで、可視光である波長380nm~680nmの範囲で透過軸方向(配向垂直方向)の透過率(T1)及び吸収軸方向(配向方向)の透過率(T2)を、分光光度計にプリズム偏光子をセットした装置を用いてダブルビーム法で測定することができる。可視光範囲での偏光性能は、下記式(p)並びに(q)を用いて、各波長における単体透過率、偏光度を算出し、さらにJIS Z 8701の2度視野(C光源)により視感度補正を行うことで、視感度補正単体透過率(Ty)及び視感度補正偏光度(Py)で算出することができる。
単体透過率[%]=(T1+T2)/2 (p)
偏光度[%]=〔(T1-T2)/(T1+T2)〕×100 (q)
【0048】
染料分散型(メタ)アクリルポリマー層の視感度補正偏光度Pyは、通常80%以上であり、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは96%以上、なおさらに好ましくは97%以上である。視感度補正偏光度Pyは、100%未満であってよい。なお、積層フィルムの視感度補正偏光度Pyは、通常、染料分散型(メタ)アクリルポリマー層の視感度補正偏光度Pyと同等である。
【0049】
染料分散型(メタ)アクリルポリマー層の視感度補正単体透過率Tyは、好ましくは30%以上60%以下、より好ましくは35%以上55%以下、さらに好ましくは40%以上50%以下、なおさらに好ましくは40%以上45%以下である。積層フィルムの視感度補正単体透過率Tyも上記範囲内であることが好ましい。
【0050】
(3)第1拡散防止層及び第2拡散防止層
第1拡散防止層は染料分散型(メタ)アクリルポリマー層の一方面に積層され、第2拡散防止層は染料分散型(メタ)アクリルポリマー層の他方面に積層される。これにより、積層フィルムを熱成型処理したときの偏光度の低下を抑制することができるとともに、積層フィルムを熱成型処理したときに、染料分散型(メタ)アクリルポリマー層中の染料が他の層に移行することを抑制することができる。
【0051】
第1拡散防止層及び第2拡散防止層はいずれも、上記偏光度の低下及び染料の移行を抑制する観点から、樹脂を含有する樹脂組成物を塗布し、乾燥及び/又は硬化することによって形成される樹脂層(コーティング層)であることが好ましい。該樹脂層に含まれる樹脂は、樹脂組成物に含まれる樹脂の硬化物又は架橋物であってよい。上記樹脂組成物は、硬化性樹脂を含む硬化性樹脂組成物であってもよく、この場合、上記樹脂層は、該硬化性樹脂組成物の硬化物層である。硬化性樹脂組成物は、光硬化性であってもよいし、熱硬化性であってもよい。
【0052】
第1拡散防止層及び第2拡散防止層を形成する樹脂(上記樹脂組成物に含まれる樹脂)としては、それぞれ独立して、(メタ)アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、(メタ)アクリルウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、水溶性樹脂等が挙げられる。これらの樹脂はいずれも、光硬化性又は熱硬化性であってもよい。中でも、上記偏光度の低下及び染料の移行を抑制する観点から、第1拡散防止層及び第2拡散防止層を形成する樹脂のどちらか一方が水溶性樹脂であることが最も好ましいが、両方が水溶性樹脂であっても良い。
【0053】
水溶性樹脂としては、例えば、ポリ(メタ)アクリルアミド系樹脂;エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂;ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体、(メタ)アクリル酸又はその無水物-ビニルアルコール共重合体等のポリビニルアルコール系樹脂;カルボキシビニル系樹脂;ポリビニルピロリドン;デンプン類;アルギン酸ナトリウム;ポリエチレンオキシド系ポリマー等が挙げられる。中でも、ポリビニルアルコール系樹脂が好ましい。
【0054】
第1拡散防止層及び第2拡散防止層のどちらか一方だけがポリビニルアルコール系樹脂を含むことが最も好ましく、両方がポリビニルアルコール系樹脂を含んでもよい。該ポリビニルアルコール系樹脂は、硬化物又は架橋物であってもよい。
【0055】
上記樹脂組成物、並びにこれより形成される第1拡散防止層及び第2拡散防止層は、樹脂以外の他の成分を含むことができる。他の成分としては、例えば、フィラー、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、レベリング剤、消泡剤等が挙げられる。上記樹脂組成物は、溶剤を含んでいてもよい。第1拡散防止層及び第2拡散防止層における樹脂又は樹脂の硬化物若しくは架橋物の含有量は、該層100質量%中、例えば30質量%以上であり、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、なおさらに好ましくは80質量%以上である。該含有量は100質量%以下であってよく、95質量%以下であってもよい。
【0056】
第1拡散防止層及び第2拡散防止層の少なくとも一方は、ハードコート層であってもよい。ハードコート層は、硬化性樹脂組成物の硬化物層であることが好ましい。第1拡散防止層及び第2拡散防止層の少なくとも一方がハードコート層であることにより、積層フィルム及び積層フィルム熱成型体の表面硬度及び耐スクラッチ性を向上させることができる。一実施形態において、第1拡散防止層がハードコート層である。ハードコート層は、JIS K 5600-5-4:1999「塗料一般試験方法-第5部:塗膜の機械的性質-第4節:引っかき硬度(鉛筆法)」に規定される鉛筆硬度試験(ハードコート層を有する光学フィルムをガラス板の上に置いて測定する)でH又はそれより硬い値を示すことが好ましい。
【0057】
第1拡散防止層及び第2拡散防止層の厚みは、上記偏光度の低下及び染料の移行を抑制する観点、並びに、積層フィルムの薄型化の観点から、それぞれ独立して、通常0.1~10μmであり、好ましくは0.5~8μm、より好ましくは1~5μm、さらに好ましくは1~3μmである。第1拡散防止層及び第2拡散防止層の少なくとも一方の厚みが上記範囲内であることが好ましく、両方の厚みが上記範囲内であることがより好ましい。
【0058】
(4)熱可塑性樹脂フィルム
積層フィルムが有する熱可塑性樹脂フィルムは、熱可塑性樹脂からなる。熱可塑性樹脂フィルムは、単層構造であってもよいし多層構造であってもよい。熱可塑性樹脂フィルムを構成する熱可塑性樹脂としては、トリアセチルセルロース等のセルロース系樹脂;ポリエチレンテレフタレート及びポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリエーテルスルホン系樹脂;ポリスルホン系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ナイロン及び芳香族ポリアミド等のポリアミド系樹脂;ポリイミド系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、及びエチレン・プロピレン共重合体等の鎖状ポリオレフィン系樹脂;シクロ系又はノルボルネン構造を有する環状ポリオレフィン系樹脂(ノルボルネン系樹脂ともいう);ポリメチルメタクリレート等の(メタ)アクリル系樹脂;ポリアリレート系樹脂;ポリスチレン系樹脂;ポリビニルアルコール系樹脂、並びにこれらの混合物を挙げることができる。かかる材質の熱可塑性樹脂フィルムは市場から容易に入手できる。
【0059】
鎖状ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン樹脂(エチレンの単独重合体であるポリエチレン樹脂や、エチレンを主体とする共重合体)、ポリプロピレン樹脂(プロピレンの単独重合体であるポリプロピレン樹脂や、プロピレンを主体とする共重合体)のような鎖状オレフィンの単独重合体の他、2種以上の鎖状オレフィンからなる共重合体を挙げられる。
【0060】
環状ポリオレフィン系樹脂は、環状オレフィンを重合単位として重合される樹脂の総称である。環状ポリオレフィン系樹脂の具体例を挙げれば、環状オレフィンの開環(共)重合体、環状オレフィンの付加重合体、環状オレフィンとエチレン、プロピレンのような鎖状オレフィンとの共重合体(代表的にはランダム共重合体)、及びこれらを不飽和カルボン酸やその誘導体で変性したグラフト重合体、並びにそれらの水素化物である。中でも、環状オレフィンとしてノルボルネンや多環ノルボルネン系モノマーのようなノルボルネン系モノマーを用いたノルボルネン系樹脂が好ましく用いられる。
【0061】
ポリエステル系樹脂は、主鎖にエステル結合を有する樹脂であり、多価カルボン酸又はその誘導体と多価アルコールとの重縮合体が一般的である。例えばテレフタル酸、イソフタル酸、ジメチルテレフタレート、ナフタレンジカルボン酸ジメチル等が挙げられる。多価アルコールとしては2価のジオールを用いることができ、例えばエチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。
【0062】
セルロースエステル系樹脂は、セルロースと脂肪酸とのエステルである。セルロースエステル系樹脂の具体例は、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルローストリプロピオネート、セルロースジプロピオネートを含む。これらのセルロースエステル系樹脂を構成する重合単位を複数種有する共重合物や、水酸基の一部が他の置換基で修飾されたものも挙げられる。これらの中でも、セルローストリアセテート(トリアセチルセルロース)が特に好ましい。
【0063】
(メタ)アクリル系樹脂は、(メタ)アクリロイル基を有する化合物を主な構成モノマーとする樹脂である。(メタ)アクリル系樹脂の具体例は、例えば、ポリメタクリル酸メチルのようなポリ(メタ)アクリル酸エステル;メタクリル酸メチル-(メタ)アクリル酸共重合体;メタクリル酸メチル-(メタ)アクリル酸エステル共重合体;メタクリル酸メチル-アクリル酸エステル-(メタ)アクリル酸共重合体;(メタ)アクリル酸メチル-スチレン共重合体(MS樹脂等);メタクリル酸メチルと脂環族炭化水素基を有する化合物との共重合体(例えば、メタクリル酸メチル-メタクリル酸シクロヘキシル共重合体、メタクリル酸メチル-(メタ)アクリル酸ノルボルニル共重合体等)を含む。
【0064】
ポリカーボネート系樹脂は、カルボナート基を介してモノマー単位が結合された重合体からなる。ポリカーボネート系樹脂は、ポリマー骨格を修飾したような変性ポリカーボネートと呼ばれる樹脂や、共重合ポリカーボネート等であってもよい。
【0065】
中でも、熱可塑性樹脂フィルムを構成する熱可塑性樹脂は、好ましくは、(メタ)アクリル系樹脂、セルロース系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂であり、精度良く所望の形状に熱成型された位相差板熱成型体が得られやすいことから、より好ましくは(メタ)アクリル系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂であり、さらに好ましくは(メタ)アクリル系樹脂である。また、熱成型処理に伴う熱可塑性樹脂フィルム由来の位相差の発現を抑制する観点からは、上記熱可塑性樹脂は、好ましくは、(メタ)アクリル系樹脂、セルロース系樹脂である。
【0066】
熱可塑性樹脂フィルムは、ガラス転移温度Tgが好ましくは180℃以下、より好ましくは170℃以下、さらに好ましくは160℃以下、なおさらに好ましくは150℃以下、特に好ましくは140℃以下、より特に好ましくは130℃以下、最も好ましくは120℃以下である。ガラス転移温度Tgが上記範囲であると、染料分散型(メタ)アクリルポリマー層への熱によるダメージを抑制しつつ、積層フィルム熱成型体を作製することができる。熱可塑性樹脂フィルムのガラス転移温度Tgは、熱成型のしやすさの観点から、通常80℃以上であり、好ましくは90℃以上、より好ましくは100℃以上である。熱可塑性樹脂フィルムのガラス転移温度Tgは、[実施例]の項の記載に従って測定することができる。
【0067】
熱可塑性樹脂フィルムの厚みは、積層フィルムの取扱性の観点から、また、積層フィルムを熱成型処理して得られる積層フィルム熱成型体の外観品位を高める観点から、好ましくは20μm以上、より好ましくは25μm以上、さらに好ましくは35μm以上、なおさらに好ましくは45μm以上、特に好ましくは55μm以上である。熱可塑性樹脂フィルムの厚みは、精度良く所望の形状に熱成型された積層フィルム熱成型体が得られやすいことから、好ましくは145μm以下、より好ましくは120μm以下、さらに好ましくは95μm以下である。
【0068】
(5)粘着剤層
積層フィルムが有する粘着剤層は、粘着剤組成物(感圧接着剤組成物)から形成される貼合層であり、通常、ガラス転移温度Tgが25℃以下の貼合層である。貼合層のTgは、示差走査熱量計(DSC)により測定できる。
【0069】
粘着剤組成物としては、従来公知の光学的な透明性に優れる粘着剤組成物を特に制限なく用いることができ、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂等のベースポリマーを有する粘着剤組成物を用いることができる。また、活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物、熱硬化型粘着剤組成物などであってもよい。これらの中でも、透明性、粘着力、再剥離性、耐候性、耐熱性等に優れる(メタ)アクリル系樹脂をベースポリマーとした粘着剤組成物が好適である。粘着剤組成物は、さらに、架橋剤、シラン化合物、帯電防止剤等を含んでいてもよい。
【0070】
粘着剤組成物に含まれる(メタ)アクリル系樹脂は、下記式(VIII)で示される(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位(以下、「構成単位(VIII)」ともいう。)を主成分(例えば、(メタ)アクリル系樹脂を構成する全構成単位100質量部に対して50質量部以上含む。)とする重合体(以下、「(メタ)アクリル酸エステル重合体」ともいう。)であることが好ましい。
【化1】
[式(VIII)中、
R
10は、水素原子又はメチル基を表し、
R
20は、炭素数1~20のアルキル基を表し、該アルキル基は直鎖状、分岐状又は環状のいずれの構造を有していてもよく、該アルキル基の水素原子は、炭素数1~10のアルコキシ基で置き換わっていてもよい。]
【0071】
式(VIII)で表される(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、i-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、n-へキシル(メタ)アクリレート、i-へキシル(メタ)アクリレート、n-ヘプチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、i-オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルへキシル(メタ)アクリレート、n-及びi-ノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、i-デシル(メタ)アクリレート、n-ドデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。アルコキシ基含有アルキル(メタ)アクリレートとしては、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシメチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。中でもn-ブチル(メタ)アクリレート又は2-エチルへキシル(メタ)アクリレートを含むことが好ましく、n-ブチル(メタ)アクリレートを含むことがより好ましい。
【0072】
(メタ)アクリル酸エステル重合体は、構成単位(VIII)以外の他の単量体に由来する構成単位を含んでいてもよい。他の単量体に由来する構成単位は、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。(メタ)アクリル酸エステル重合体が含み得る他の単量体としては、極性官能基を有する単量体、芳香族基を有する単量体、(メタ)アクリルアミド系単量体が挙げられる。
【0073】
極性官能基を有する単量体としては、極性官能基を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。極性官能基としては、ヒドロキシ基;カルボキシ基;炭素数1~6のアルキル基で置換された置換アミノ基又は無置換アミノ基;エポキシ基等の複素環基等が挙げられる。
【0074】
(メタ)アクリル酸エステル重合体中の極性官能基を有する単量体に由来する構成単位の含有量は、(メタ)アクリル酸エステル重合体の全構成単位100質量部に対して、好ましくは10質量部以下、より好ましくは0.5質量部以上10質量部以下、さらに好ましくは1質量部以上5質量部以下である。
【0075】
芳香族基を有する単量体としては、分子内に1個の(メタ)アクリロイル基と1個以上の芳香環(例えば、ベンゼン環、ナフタレン環等)を有する単量体が挙げられ、より具体的には、フェニル基、フェノキシエチル基、又はベンジル基を有する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。
【0076】
(メタ)アクリル酸エステル重合体中の芳香族基を有する単量体に由来する構成単位の含有量は、(メタ)アクリル酸エステル重合体の全構成単位100質量部に対して、好ましくは4質量部以上20質量部以下、より好ましくは4質量部以上15質量部以下である。
【0077】
(メタ)アクリルアミド系単量体としては、N-(メトキシメチル)(メタ)アクリルアミド、N-(エトキシメチル)(メタ)アクリルアミド、N-(プロポキシメチル)(メタ)アクリルアミド、N-(ブトキシメチル)(メタ)アクリルアミド、N-(2-メチルプロポキシメチル)(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0078】
さらに、構成単位(VIII)以外の他の単量体に由来する構成単位として、スチレン系単量体に由来する構成単位、ビニル系単量体に由来する構成単位、分子内に複数の(メタ)アクリロイル基を有する単量体に由来する構成単位等が含まれていてもよい。
【0079】
(メタ)アクリル系樹脂の重量平均分子量(以下、単に「Mw」ともいう。)は、50万~250万であることが好ましい。Mwが50万以上であると、高温、高湿の環境下における粘着剤層の耐久性を向上させることができる。Mwが250万以下であると、粘着剤組成物を含有する塗工液を塗工する際の操作性が良好となる。重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(以下、単に「Mn」ともいう。)との比で表される分子量分布(Mw/Mn)は、通常2~10である。本明細書において「重量平均分子量」及び「数平均分子量」とは、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算値である。
【0080】
(メタ)アクリル系樹脂のガラス転移温度Tgは、例えば-60~20℃、好ましくは-50~15℃、より好ましくは-45~10℃、さらに好ましくは-40~0℃である。なお、ガラス転移温度は示差走査熱量計(DSC)により測定できる。
【0081】
(メタ)アクリル系樹脂は、通常、溶液重合法、塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の公知の重合方法によって製造することができる。(メタ)アクリル系樹脂の製造においては、通常、重合開始剤の存在下に重合が行われる。重合開始剤の使用量は、(メタ)アクリル系樹脂を構成する全ての単量体の合計100質量部に対して、通常0.001~5質量部である。
【0082】
粘着剤組成物は、架橋剤を含むことが好ましい。架橋剤としては、慣用の架橋剤(例えば、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物、金属キレート化合物、過酸化物等)が挙げられ、特に粘着剤組成物のポットライフ、架橋速度、及び位相差板の耐久性等の観点から、イソシアネート系化合物であることが好ましい。架橋剤の割合は、(メタ)アクリル系樹脂100質量部に対して、例えば、0.01~10質量部、好ましくは0.05~5質量部である。
【0083】
粘着剤組成物は、さらにシラン化合物を含有していてもよい。粘着剤組成物におけるシラン化合物の含有量は、(メタ)アクリル系樹脂100質量部に対して、通常0.01~10質量部である。
【0084】
粘着剤組成物は、帯電防止剤をさらに含んでもよい。帯電防止剤としては、公知のものが挙げられ、イオン性帯電防止剤が好適である。粘着剤組成物の帯電防止性能の経時安定性に優れるという点で、室温で固体であるイオン性帯電防止剤が好ましい。帯電防止剤の含有量は、(メタ)アクリル系樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01~20質量部であり、より好ましくは1~7質量である。
【0085】
粘着剤層の厚みは、通常0.1~50μmであり、好ましくは3~30μmであり、さらに好ましくは5~25μm、特に好ましくは5~20μmである。
【0086】
粘着剤層は、温度25℃における貯蔵弾性率が、好ましくは10kPa以上、より好ましくは20kPa以上、さらに好ましくは50kPa以上である。貯蔵弾性率が上記範囲であると、積層フィルム及びこれを熱成型処理して得られる積層フィルム熱成型体について、シワ発生等の外観品位の低下を抑制するうえで有利となり得る。粘着剤層の温度25℃における貯蔵弾性率は、好ましくは200kPa未満、より好ましくは120kPa以下である。貯蔵弾性率が上記範囲であると、熱成型処理時のワレを抑制するうえで有利となり得る。粘着剤層の温度25℃における貯蔵弾性率は、[実施例]の項の記載に従って測定することができる。
【0087】
第1拡散防止層、染料分散型(メタ)アクリルポリマー層及び第2拡散防止層をこの順に含む積層体と、熱可塑性樹脂フィルムとを粘着剤層を用いて貼合するに先立ち、少なくとも一方の貼合面に、ケン化処理、コロナ処理、プラズマ処理、プライマー処理、アンカーコーティング処理等の易接着処理を施してもよい。
【0088】
(6)積層フィルムの製造方法
積層フィルムは、例えば次のようにして製造することができる。まず、基材層上に上述の樹脂組成物を塗布し、乾燥及び/又は硬化することにより第1拡散防止層(又は第2拡散防止層)を形成する。次に、第1拡散防止層(若しくは第2拡散防止層)、又は、その上に必要に応じて形成された配向膜上に、上記に従って液晶組成物を塗布し、該液晶組成物に含まれる重合性液晶化合物を重合することによって染料分散型(メタ)アクリルポリマー層を形成する。次に、染料分散型(メタ)アクリルポリマー層上に、上述の樹脂組成物を塗布し、乾燥及び/又は硬化することにより第2拡散防止層(又は第1拡散防止層)を形成して、第1拡散防止層、染料分散型(メタ)アクリルポリマー層及び第2拡散防止層を含む積層体を作製する。次に、該積層体と熱可塑性樹脂フィルムとを粘着剤層により貼合した後、基材層を剥離除去することにより積層フィルムを得る。
【0089】
<積層フィルム熱成型体>
(1)積層フィルム熱成型体の構成
図3は、本発明に係る積層フィルム熱成型体の一例を模式的に示す断面図である。積層フィルム熱成型体は、上述の熱成型用積層フィルムの熱成型処理物(熱成型体)であり、通常は、熱成型用積層フィルムに対し、熱成型処理によって特定の形状を付与したものである。
図3に示される積層フィルム熱成型体は、
図1に示される積層フィルムの熱成型体であり、積層フィルム熱成型体全体として、側面からみたときに凸形状を有している。
【0090】
積層フィルム熱成型体の形状は特に制限されないが、曲面を有する形状が挙げられ、より具体的には、積層フィルム熱成型体の主面が曲面を含む形状が挙げられる。このような形状としては、積層フィルム熱成型体を側面からみたときに、積層フィルム熱成型体の少なくとも一部又は全体が凸形状又は凹形状である形状が挙げられる。
【0091】
例えば凸形状を有する積層フィルム熱成型体において、凸形状は、第1拡散防止層側が凸となる形状であってもよいし、第2拡散防止層側が凸となる形状であってもよい。
【0092】
本発明に係る積層フィルム熱成型体によれば、上記本発明に係る熱成型用積層フィルムを用いているため、偏光度の低下を抑制することができ、また、染料分散型(メタ)アクリルポリマー層中の染料が他の層に移行することを抑制することができる。特定の形状が付与された積層フィルム熱成型体は、画像表示装置の構成部材等として好適に用いることができる。
【0093】
(2)積層フィルム熱成型体の製造方法
積層フィルム熱成型体は、積層フィルムを熱成型処理する工程を含む方法によって製造できる。熱成型の方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば金型を用いた熱プレス成型、インサート成型、真空成型、圧空成型、射出成型、減圧被覆成型、インモールド転写等が挙げられる。熱成型処理において、積層フィルムにおける一方面及び/又は他方面は空気と接触していてもよいし、表面保護フィルム、粘着剤層、セパレートフィルム等の他の光学層又は光学フィルムが積層されていてもよい。
【0094】
熱成型処理の温度は、好ましくは熱可塑性樹脂フィルムのガラス転移温度に応じて調整され、例えば80~180℃、好ましくは90~170℃、より好ましくは100~160℃、さらに好ましくは100~150℃、なおさらに好ましくは100~140℃である。
【0095】
(3)積層フィルム熱成型体の用途
積層フィルム熱成型体は、画像表示装置の構成部材等として好適に用いることができる。画像表示装置は特に限定されず、例えば有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)表示装置、無機エレクトロルミネッセンス(無機EL)表示装置、液晶表示装置、電界発光表示装置等が挙げられる。
【0096】
積層フィルム熱成型体が適用され得る画像表示装置は、例えば、VR(Virtual Reality)やAR(Augmented Reality)用のヘッドマウントディスプレイである。ヘッドマウントディスプレイは、フレーム形状、ヘルメット形状又はゴーグル形状等であり得る。
【0097】
積層フィルム熱成型体が例えば曲面形状を有する場合、該積層フィルム熱成型体は、画像表示装置が備える曲面形状を有する部材の該曲面に沿うように配置して用いることができる。曲面形状を有する部材の一例は光学レンズである。
図4は、光学レンズと積層フィルム熱成型体との組み合わせからなる光学機能性レンズの一例を模式的に示す断面図である。
図4に示される光学機能性レンズは、光学レンズ70と、光学レンズ70上に粘接着剤層80を介して積層される曲面形状を有する積層フィルム熱成型体100とを含む。上記ヘッドマウントディスプレイ等の画像表示装置は、該光学機能性レンズを含むことができる。積層フィルム熱成型体100を有する光学機能性レンズは、該レンズを通過する光の偏光状態を一定に揃える機能等を有することができる。粘接着剤層80は、接着剤層又は粘着剤層であり、粘着剤層については上の記述が引用される。
【0098】
接着剤層は、接着剤組成物から形成される層である。接着剤組成物としては、例えば、水系接着剤組成物、加熱又は紫外線、可視光、電子線、X線等の活性エネルギー線の照射により硬化する熱硬化性又は活性エネルギー線硬化型接着剤組成物等が挙げられる。
【実施例0099】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。以下、使用量、含有量を表す部及び%は、特に断りのない限り質量基準である。
【0100】
<測定>
(1)厚み
層又はフィルムの厚みは、レーザー顕微鏡(オリンパス株式会社製「LEXT」)、又は、デジタルマイクロメーター(株式会社ニコン製「MH-15M」)を用いて測定した。
【0101】
(2)視感度補正偏光度(Py)及び視感度補正単体透過率(Ty)
測定サンプルの透過軸方向の単体透過率(T1)及び吸収軸方向の単体透過率(T2)を、分光光度計(島津製作所株式会社製 UV-3150)に偏光子付フォルダーをセットした装置を用いて、ダブルビーム法により2nmステップ380~680nmの波長範囲で測定した。下記式(p)並びに(q)を用いて、各波長における偏光度、単体透過率を算出し、さらにJIS Z 8701の2度視野(C光源)により視感度補正を行い、視感度補正偏光度(Py)及び視感度補正単体透過率(Ty)を算出した。
単体透過率[%]=(T1+T2)/2 (p)
偏光度[%]=〔(T1-T2)/(T1+T2)〕×100 (q)
【0102】
(3)熱可塑性樹脂フィルムのガラス転移温度Tg
示差走査熱量計「セイコーインスツルメンツ製「EXSTAR6000シリーズ DSC6220」)を用いて、熱可塑性樹脂フィルムのガラス転移温度Tg[℃]を測定した。
【0103】
(4)粘着剤層の貯蔵弾性率
粘着剤層を厚みが0.2mm(デジタルマイクロメーター(株式会社ニコン製「MH-15M」)で測定)になるように複数枚積層した後、直径8mmの円柱体を打ち抜いたものを測定用サンプルとして用い、この測定用サンプルについて、JIS K7244-6に準拠し、粘弾性測定装置(Physica社製「MCR300」)を用いてねじりせん断法により、以下の条件で貯蔵弾性率G’[kPa]を測定した。
〔測定条件〕
ノーマルフォースFN:1N
歪みγ:1%
周波数:1Hz
温度:25℃
【0104】
[熱可塑性樹脂フィルムの作製又は準備]
〔1〕熱可塑性樹脂フィルム(1-1):特開2013-254133号公報に従って溶融押形により作製した厚み60μmの(メタ)アクリル系樹脂フィルム(Tg:105℃)
〔2〕熱可塑性樹脂フィルム(1-2):特開2013-254133号公報に従って押出成型により作製した厚み80μmの(メタ)アクリル系樹脂フィルム(Tg:105℃)
〔3〕熱可塑性樹脂フィルム(2):国際公開第2022/176848号の実施例2と同じ混合物を用いて溶融押形により作製した厚み20μmの(メタ)アクリル系樹脂フィルム(全光線透過率:92.2%、Tg:110℃)
〔4〕熱可塑性樹脂フィルム(3):厚み20μmのトリアセチルセルロース(TAC)フィルム(富士フイルム製、Tg:170℃)
〔5〕熱可塑性樹脂フィルム(4):厚み23μmの環状ポリオレフィン系樹脂(COP)フィルム(日本ゼオン(株)製「ZF14」、Tg:141℃)
【0105】
[液晶組成物の調製]
下記の成分を混合し、温度80℃で1時間撹拌することで、液晶組成物を得た。重合性液晶化合物(X1)及び(X2)は下記に示す構造を有する。二色性色素(DP1)~(DP3)は、特開2013-101328号公報の実施例に記載のアゾ色素であり、下記に示す構造を有する。
重合性液晶化合物(X1):75部
重合性液晶化合物(X2):25部
二色性色素(DP1):2.5部
二色性色素(DP2):2.5部
二色性色素(DP3):2.5部
重合開始剤[2-ジメチルアミノ-2-ベンジル-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン(イルガキュア(登録商標)369;BASFジャパン社製]:6部
レベリング剤[ポリアクリレート化合物(BYK-361N;BYK-Chemie社製)]:1.2部
溶剤[o-キシレン]:250部
【0106】
・重合性液晶化合物(X1):
【化2】
・重合性液晶化合物(X2):
【化3】
【0107】
・二色性色素(DP1):
【化4】
・二色性色素(DP2):
【化5】
・二色性色素(DP3):
【化6】
【0108】
[光配向膜形成用組成物の調製]
特開2013-033249号公報に記載の下記成分を混合し、得られた混合物を80℃で1時間撹拌することにより、光配向膜形成用組成物を得た。
・下記に示す構造の光配向性ポリマー:2部
【化7】
・溶剤[o-キシレン]:98部
【0109】
[水溶性ポリマー水溶液の調製]
以下の合成スキームにしたがって、下記構成単位からなる水溶性ポリマーを得た。
【化8】
【0110】
ジメチルスルホキシド400部中に、分子量1000のポリビニルアルコール(和光純薬工業株式会社製)20部と、求核剤としてN,N-ジメチル-4-アミノピリジンを0.55×10-3部、トリエチルアミン4.6部を溶解し、撹拌しながら温度60℃まで昇温した。この後、ジメチルスルホキシド50部中にメタクリル酸無水物10.5部を溶解させた溶液を1時間かけて滴下し、温度60℃で14時間加熱撹拌することで反応させた。得られた反応溶液を室温まで冷却後、反応溶液中にメタノール481部を加えて完全に混合するように撹拌することで、反応溶液とメタノールの比率(質量)が1:1となるように調整した。この溶液中にアセトンを徐々に加えることで、水溶性ポリマーを晶析法により結晶化させた。得られた白色結晶を含む溶液を濾過し、アセトンでよく洗浄した後に真空乾燥することで、水溶性ポリマーを20.2部得た。得られた水溶性ポリマーを水に溶解させ、3質量%濃度の水溶性ポリマー水溶液を調製した。
【0111】
<実施例1~11>
(1)積層フィルムの作製
(1-1)第1拡散防止層、染料分散型(メタ)アクリルポリマー層及び第2拡散防止層を含む積層体の作製
離型処理が施されたポリエチレンテレフタレートフィルム(リンテック社製SP-PLR 382050)(離型フィルム)の離型処理面に、コロナ処理を施した後に、第1拡散防止層組成物として樹脂層形成用組成物(A)をバーコート法(#2 30mm/s)により塗布し、UV照射装置(SPOT CURE SP-7;ウシオ電機株式会社製)を用いて、露光量500mJ/cm2(365nm基準)の紫外線を、樹脂層形成用組成物の被膜層に照射することにより、離型フィルム表面に第1拡散防止層が形成された樹脂層付き離型フィルムを得た。第1拡散防止層の厚みは1.5μmであった。
【0112】
第1拡散防止層の膜表面にプラズマ処理を施した後に、スロットダイコーターを用いて上記光配向膜形成用組成物を塗布して、フィルム中央部の幅600mm範囲に塗布膜を形成した。さらに、100℃に設定した通風乾燥炉中を2分間かけて搬送することで溶剤を除去し、乾燥被膜を形成した。その後、フィルムの長尺方向に対して0°方向の偏光UV光を乾燥被膜に20mJ/cm2(313nm基準)の強度となるように照射することで配向規制力を付与して、光配向膜を形成した。光配向膜の厚みは、約50nmであった。
【0113】
得られた光配向膜上に、さらにスロットダイコーターを用いて上記液晶組成物を塗布し、フィルム中央部の幅600mm範囲に塗布膜を形成した。さらに、110℃に設定した通風乾燥炉中を2分間かけて搬送することで溶剤を除去し、乾燥被膜を形成した。その後、高圧水銀灯を用いて紫外光を1000mJ/cm2(365nm基準)で照射して乾燥被膜に含まれる重合性液晶化合物を硬化させることで染料分散型(メタ)アクリルポリマー層を形成した。得られた染料分散型(メタ)アクリルポリマー層の厚みは、2μmであった。
【0114】
その後、連続的にロール状に巻き上げ、0°方向に吸収軸を有する長尺の積層体を得た。さらに、染料分散型(メタ)アクリルポリマー層上にプラズマ処理を施した後に、ポリビニルアルコール系樹脂組成物(三菱ケミカル社製、Z-200)とグリオキザールとを92.5:7.5の質量割合で混合後、純水で調整した組成物を、スロットダイコーターを用いて連続的に塗布し、100℃で2分間乾燥して1μmのポリビニルアルコール系樹脂組成物の膜からなる第2拡散防止層を形成した。これにより、離型PETフィルム、第1拡散防止層、光配向膜、染料分散型(メタ)アクリルポリマー層、第2拡散防止層をこの順に備える長尺の積層体を得た。
【0115】
得られた積層体を、40mm×40mmの大きさの正方形に裁断した。第2拡散防止層面側を、無アルカリガラス板(コーニング社製、商品名「Eagle-XG」)に25μm厚の(メタ)アクリル系粘着剤(リンテック株式会社製、商品名「P-3132」)を用いて、貼合し、離型PETフィルムを剥離することで測定サンプルを得た。この測定サンプルについて視感度補正偏光度(Py)及び視感度補正単体透過率(Ty)を測定したところ、視感度補正偏光度(Py)は97%、視感度補正単体透過率(Ty)は42%であった。
【0116】
(1-2)粘着剤層の準備
[粘着剤層(1)の準備]
粘着剤層(1)として、以下工程にて5μm厚の(メタ)アクリル系粘着剤層を準備した。
攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下装置及び窒素導入管を備えた反応容器に、アクリル酸n-ブチル95.0質量部、アクリル酸4.0質量部、アクリル酸2-ヒドロキシエチル1.0質量部、酢酸エチル200質量部、及び2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.08質量部を仕込み、上記反応容器内の空気を窒素ガスで置換した。窒素雰囲気下で攪拌しながら、反応溶液を60℃に昇温し、6時間反応させた後、室温まで冷却した。得られた溶液の一部の重量平均分子量を測定した所、180万の(メタ)アクリル酸エステル重合体の生成を確認した。
上記工程で得られた(メタ)アクリル酸エステル重合体100質量部(固形分換算値;以下同じ)と、イソシアネート系架橋剤として、トリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート(東ソー株式会社製、商品名「コロネート(登録商標)L」)1.5質量部と、シランカップリング剤として、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製,商品名「KBM403」)0.30質量部と、紫外線硬化性化合物としてエトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート(新中村化学工業株式会社製:品名「A-9300」)7.5質量部と、光重合開始剤として2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン(BASF社製:イルガキュア(登録商標)907)0.5質量部とを混合し、十分に撹拌して、酢酸エチルで希釈することにより、粘着剤組成物の塗工溶液を得た。
セパレータ(リンテック株式会社製:SP-PLR382190)の離型処理面(剥離層面)に、アプリケーターにより、乾燥後の厚さが5μmとなるように前記塗工溶液を塗工した後、100℃で1分間乾燥し、粘着剤層のセパレータが貼合された面とは反対面に、もう1枚のセパレータ(リンテック株式会社製:SP-PLR381031)を貼合した。この粘着剤層にベルトコンベア付き紫外線照射装置(フュージョンUVシステムズ社製、ランプはDバルブを使用)を用いて剥離シート越しに紫外線(照射強度500mW/cm2、積算光量500mJ/cm2)を照射し、両面セパレータ付き粘着剤層を得た。
粘着剤層(1)の温度25℃における貯蔵弾性率G’は106kPaであった。
【0117】
[粘着剤層(2)の準備]
粘着剤層(2)として、以下工程にて15μm厚の(メタ)アクリル系粘着剤を準備した。
攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下装置及び窒素導入管を備えた反応容器に、アクリル酸n-ブチル97.0質量部、アクリル酸1.0質量部、アクリル酸2-ヒドロキシエチル0.5質量部、酢酸エチル200質量部、及び2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.08質量部を仕込み、上記反応容器内の空気を窒素ガスで置換した。窒素雰囲気下で攪拌しながら、反応溶液を60℃に昇温し、6時間反応させた後、室温まで冷却した。得られた溶液の一部の重量平均分子量を測定した所、180万の(メタ)アクリル酸エステル重合体の生成を確認した。
上記工程で得られた(メタ)アクリル酸エステル重合体100質量部(固形分換算値;以下同じ)と、イソシアネート系架橋剤として、トリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート(東ソー株式会社製、商品名「コロネート(登録商標)L」)0.30質量部と、シランカップリング剤として、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製,商品名「KBM403」)0.30質量部とを混合し、十分に撹拌して、酢酸エチルで希釈することにより、粘着剤組成物の塗工溶液を得た。
セパレータ(リンテック株式会社製:SP-PLR382190)の離型処理面(剥離層面)に、アプリケーターにより、乾燥後の厚さが15μmとなるように前記塗工溶液を塗工した後、100℃で1分間乾燥し、粘着剤層のセパレータが貼合された面とは反対面に、もう1枚のセパレータ(リンテック株式会社製:SP-PLR381031)を貼合し、両面セパレータ付き粘着剤層を得た。
粘着剤層(2)の温度25℃における貯蔵弾性率G’は25.1kPaであった。
【0118】
[粘着剤層(3)の準備]
粘着剤層(3)として、前項記載の粘着剤層(2)と同様の工程にて、25μm厚の(メタ)アクリル系粘着剤を準備した。粘着剤層(3)の温度25℃における貯蔵弾性率G’は25.1kPaであった。
【0119】
[粘着剤層(4)の準備]
粘着剤層(4)として、以下工程にて20μm厚の(メタ)アクリル系粘着剤を準備した。
攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下装置及び窒素導入管を備えた反応容器に、アクリル酸n-ブチル97.0質量部、アクリル酸2-ヒドロキシエチル3.0質量部、酢酸エチル200質量部、及び2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.08質量部を仕込み、上記反応容器内の空気を窒素ガスで置換した。窒素雰囲気下で攪拌しながら、反応溶液を60℃に昇温し、6時間反応させた後、室温まで冷却した。得られた溶液の一部の重量平均分子量を測定した所、180万の(メタ)アクリル酸エステル重合体の生成を確認した。
上記工程で得られた(メタ)アクリル酸エステル重合体100質量部(固形分換算値;以下同じ)と、イソシアネート系架橋剤として、トリメチロールプロパン変性キシリレンジイソシアネート(三井化学株式会社製、商品名「タケネート(登録商標)D-110N」)1.0質量部と、シランカップリング剤として、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製,商品名「KBM403」)0.30質量部とを混合し、十分に撹拌して、酢酸エチルで希釈することにより、粘着剤組成物の塗工溶液を得た。
セパレータ(リンテック株式会社製:SP-PLR382190)の離型処理面(剥離層面)に、アプリケーターにより、乾燥後の厚さが20μmとなるように前記塗工溶液を塗工した後、100℃で1分間乾燥し、粘着剤層のセパレータが貼合された面とは反対面に、もう1枚のセパレータ(リンテック株式会社製:SP-PLR381031)を貼合し、両面セパレータ付き粘着剤層を得た。
粘着剤層(4)の温度25℃における貯蔵弾性率G’は20.2kPaであった。
【0120】
[粘着剤層(5)の準備]
粘着剤層(5)として、以下工程にて25μm厚の(メタ)アクリル系粘着剤を準備した。
冷却管、窒素導入管、温度計、及び撹拌機を備えた反応容器に、酢酸エチル81.8部、アクリル酸ブチル98.0部、及びアクリル酸2.0部の混合溶液を仕込み、窒素ガスで装置内の空気を置換して酸素不含としながら内温を55℃に上げた。その後、アゾビスイソブチロニトリル(重合開始剤)0.14部を酢酸エチル10部に溶かした溶液を全量添加した。重合開始剤を添加した後、1時間この温度で保持し、次いで内温を54~56℃に保ちながら酢酸エチルを添加速度17.3部/hrで反応容器内へ連続的に加え、(メタ)アクリル系樹脂の濃度が35質量%となった時点で酢酸エチルの添加を止め、さらに酢酸エチルの添加開始から12時間経過するまでこの温度で保温した。最後に酢酸エチルを加えて(メタ)アクリル系樹脂の濃度が20質量%となるように調節し、アクリル樹脂溶液2を調製した。得られたアクリル樹脂は、重量平均分子量Mwが180万、分子量分布Mw/Mnが4.2であった。なお、Mw及びMnは、GPC装置にカラムとして、東ソー(株)製の「TSKgel GMHHR-H(S)」を2本直列につないで配置し、溶出液としてテトラヒドロフランを用い、試料濃度2mg/mL、試料導入量100μL、温度40℃、流速1mL/分の条件で、標準ポリスチレン換算により測定した。
上記で得られたアクリル樹脂溶液2の固形分80部に対して、二官能アクリレート(新中村化学工業株式会社より入手;品番「A-DOG」)を20部(固形分)、架橋剤(東ソー株式会社製:商品名「コロネートL」(トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体の酢酸エチル溶液(固形分濃度75質量%))を有効成分ベースで3.0部、光重合開始剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製:商品名「イルガキュア500」)を1.5部、シランカップリング剤(信越化学工業株式会社製:商品名「KBM-403」)を0.5部添加し、更に固形分濃度が13%となるように酢酸エチルを添加して粘着剤組成物を得た。
A-DOGは、ヒドロキシピバルアルデヒドとトリメチロールプロパンとのアセタール化合物のジアクリレートであって、下式の構造を有する。
【化9】
上記で調製した粘着剤組成物を、離型処理が施されたポリエチレンテレフタレートフィルムからなるセパレートフィルム〔リンテック(株)から入手した「PLR-382150」〕の離型処理面に、アプリケーターを用いて乾燥後の厚みが25μmとなるように塗布し、100℃で1分間乾燥して粘着剤層(粘着剤シート)を作製した。次いで得られた粘着剤層のセパレータフィルムと反対側の表面を離型処理が施されたポリエチレンテレフタレートフィルムからなるセパレートフィルム〔リンテック(株)から入手した「PLZ-381130」〕の離型処理面と貼合した。続けて紫外線を下記の条件で照射し、粘着剤シート2を作製した。
<UV照射条件>
・Fusion UVランプシステム(フュージョンUVシステムズ社製)Dバルブ使用
・積算光量1500mJ/cm
2
粘着剤層(5)の温度25℃における貯蔵弾性率G’は121kPaであった。
【0121】
[粘着剤層(6)の準備]
粘着剤層(6)として、前項記載の粘着剤層(1)と同様の工程にて、15μm厚の(メタ)アクリル系粘着剤を準備した。粘着剤層(6)の温度25℃における貯蔵弾性率G’は106kPaであった。
【0122】
(1-3)積層フィルムの作製
上記熱可塑性樹脂フィルム(1-1)、(1-2)及び(2)~(4)のいずれかと上記積層体とを、上記粘着剤層(1)~(6)のいずれかを介して積層し、離型PETフィルムを剥離除去して、積層フィルムを作製した。積層フィルムの作製に用いた部材の組み合わせを表1に示す。第2拡散防止層側に粘着剤層を介して熱可塑性樹脂フィルムを積層したものを積層形態「A」、第1拡散防止層側に粘着剤層を介して熱可塑性樹脂フィルムを積層したものを積層形態「B」とし、各実施例における積層形態を併せて表1に示した。
【0123】
【0124】
(2)積層フィルム熱成型体の作製
作製した積層フィルムを、それぞれホットプレートを用いて120℃で10秒加熱し、同じくホットプレートで120℃において加熱しておいた平凸レンズ(Thorlabs製、製品名「LA1608」)と平凹レンズ(Thorlabs製、製品名「LC1582」)で積層フィルムを挟み込み、プレスすることで120℃での熱成型を行い、第1拡散防止層側が凸となる湾曲形状を有する積層フィルム熱成型体を得た。熱成型後は熱が冷めるまで静置し、冷却が完了してから平凸レンズ、平凹レンズを外した。150℃のホットプレートを用いることにより、同様にして150℃での熱成型を行った。
【0125】
(3)評価試験
(3-1)熱成型処理による偏光度の変化
熱成型処理前後での視感度補正偏光度(Py)の変化量ΔPyを測定し、下記基準に従って偏光度の低下抑制の程度を評価した。
A:ΔPyが1%未満
B:ΔPyが1%以上2%未満
C:ΔPyが2%以上3%未満
D:ΔPyが3%以上5%未満
E:ΔPyが5%以上
【0126】
(3-2)積層フィルムの熱成型性
積層フィルムの熱成型性を、積層フィルム熱成型体の高さを用いて評価した。積層フィルム熱成型体の高さが熱成型に用いた平凸レンズの高さと一致すれば「熱成型可」、平凸レンズの高さに満たない場合には「熱成型不可」と判断し、下記基準に従って積層フィルムの熱成型性を評価した。
A:120℃で熱成型可
B:120では熱成型不可だが、150℃では熱成型可
C:150℃で熱成型不可
【0127】
(3-3)熱成型処理に伴う熱可塑性樹脂フィルム由来の位相差の発現
熱成型に伴う熱可塑性樹脂フィルムの延伸による位相差を発現しうるか否かを評価した。各熱可塑性樹脂フィルムを単体で上記記載に従って熱成型した。得られた熱成型体について、面内位相差分布の測定を行った。測定には、フォトニクスラティス製2次元複屈折評価システム「WPA-200」を用いた。熱成型前後における面内位相差値の変化量が3nm以上である場合を熱可塑性樹脂フィルム由来の位相差の発現を「有」とし、下記基準に従って位相差の発現の有無を評価した。
A:位相差の発現無し
C:位相差の発現有り
【0128】
(3-4)熱成型処理に伴う染料の移行
熱成型処理前後での視感度補正単体透過率(Ty)の変化量ΔTyを測定することにより、熱成型に伴って染料分散型(メタ)アクリルポリマー層又はヨウ素-PVA偏光子から染料(二色性色素又はヨウ素)が他層又は大気中に拡散したか否かを、下記基準に従って評価した。ΔTyが小さいほど染料の移行は少ないといえる。
A:ΔTyが0.5%未満
D:ΔTyが0.5%以上3%未満
E:ΔTyが3%以上
【0129】
(3-5)積層フィルム熱成型体の外観品位
積層フィルム熱成型体について、シワ、クラック、ワレ、うねりの発生の有無を目視観察し、下記基準に従って積層フィルム熱成型体の外観品位を評価した。
A:シワ、クラック、ワレ、うねりの発生が認められない
B:軽微なシワが認められる
C:収縮、膨張によるうねりが認められる
D:クラックが認められる
E:シワ、うねり及びクラックから選択される2以上が認められる
【0130】
<比較例1~2>
(1)積層フィルムの作製
第2拡散防止層を形成しなかったこと以外はそれぞれ実施例1及び4と同様にして、離型PETフィルム、第1拡散防止層、光配向膜、染料分散型(メタ)アクリルポリマー層をこの順に備える長尺の積層体を得た。次いで、上記実施例と同様にして、積層フィルムを作製した。積層フィルムの作製に用いた部材の組み合わせを表2に示す。染料分散型(メタ)アクリルポリマー層側に粘着剤層を介して熱可塑性樹脂フィルムを積層したものを積層形態「A」、第1拡散防止層側に粘着剤層を介して熱可塑性樹脂フィルムを積層したものを積層形態「B」とし、各実施例における積層形態を併せて表2に示した。
【0131】
【0132】
(2)積層フィルム熱成型体の作製及び評価試験
上記実施例と同様にして、積層フィルム熱成型体を作製し、評価試験を行った。
【0133】
<比較例3~8>
(1)積層フィルムの作製
比較例3~4、7~8の積層フィルムは、ヨウ素を吸着配向された延伸ポリビニルアルコールフィルムからなる偏光子の一方面に、粘着剤層(1)を介して第1熱可塑性樹脂フィルムを貼合し、他方面に、同粘着剤層を介して第2熱可塑性樹脂フィルムを貼合したものである。比較例5~6の積層フィルムは、ヨウ素を吸着配向された延伸ポリビニルアルコールフィルムからなる偏光子の一方面に、粘着剤層(1)を介して第1熱可塑性樹脂フィルムを貼合したものである。積層フィルムの作製に用いた熱可塑性樹脂フィルムを表3に示す。
【0134】
【0135】
(2)積層フィルム熱成型体の作製及び評価試験
上記実施例と同様にして、積層フィルム熱成型体を作製し、評価試験を行った。
【0136】
11 第1拡散防止層、12 第2拡散防止層、20 染料分散型(メタ)アクリルポリマー層、30 粘着剤層、40 熱可塑性樹脂フィルム、70 光学レンズ、80 粘接着剤層、100 積層フィルム熱成型体。