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  • 特開-直鎖パラフィン改質用触媒組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115720
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】直鎖パラフィン改質用触媒組成物
(51)【国際特許分類】
   B01J 29/12 20060101AFI20240820BHJP
   C10G 47/18 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
B01J29/12 M
C10G47/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021515
(22)【出願日】2023-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】304026696
【氏名又は名称】国立大学法人三重大学
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【弁理士】
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100160886
【弁理士】
【氏名又は名称】久松 洋輔
(74)【代理人】
【識別番号】100192603
【弁理士】
【氏名又は名称】網盛 俊
(72)【発明者】
【氏名】陳 寧
(72)【発明者】
【氏名】城之尾 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】中尾 圭太
(72)【発明者】
【氏名】石原 篤
【テーマコード(参考)】
4G169
4H129
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169BA01A
4G169BA01B
4G169BA07A
4G169BA07B
4G169BC67A
4G169BC68A
4G169BC70A
4G169BC71A
4G169BC72A
4G169BC75A
4G169BC75B
4G169CC05
4G169DA06
4G169EB18Y
4G169EC22Y
4G169ZA03A
4G169ZA03B
4G169ZC04
4G169ZF02A
4G169ZF02B
4G169ZF05A
4G169ZF05B
4G169ZF09B
4H129AA01
4H129CA20
4H129DA21
4H129KA12
4H129KB03
4H129KB05
4H129KC03X
4H129KC14X
4H129KD21X
4H129KD22X
4H129KD24X
4H129KD25X
4H129KD26X
4H129NA22
4H129NA25
4H129NA32
4H129NA45
(57)【要約】
【課題】
炭素数が17以上の直鎖パラフィンから高い収率で炭素数が8~16の炭化水素が得られる直鎖パラフィン改質用触媒組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】
C17以上の直鎖パラフィンを改質するための直鎖パラフィン改質用触媒組成物であって、アルミナに対するシリカのモル比が50以上であるFAU型ゼオライトと、γ-アルミナと、触媒金属元素と、を含む直鎖パラフィン改質用触媒組成物。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素数が17以上の直鎖パラフィンを改質するための直鎖パラフィン改質用触媒組成物であって、
アルミナに対するシリカのモル比が50以上であるFAU型ゼオライトと、γ-アルミナと、触媒金属元素と、を含む直鎖パラフィン改質用触媒組成物。
【請求項2】
前記γ-アルミナの含有量が、直鎖パラフィン改質用触媒組成物100質量%に対し、10質量%以上65質量%以下である、請求項1に記載の直鎖パラフィン改質用触媒組成物。
【請求項3】
前記触媒金属元素が、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、ニッケル及びコバルトからなる群から選ばれる1種以上である、請求項1に記載の直鎖パラフィン改質用触媒組成物。
【請求項4】
前記触媒金属元素の含有量が、直鎖パラフィン改質用触媒組成物100質量%に対し、0.05質量%以上5.0質量%以下である、請求項1に記載の直鎖パラフィン改質用触媒組成物。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一つに記載の直鎖パラフィン改質用触媒組成物と、水素及び炭素数が17以上の直鎖パラフィンを含む流体と、を接触させることを含む、直鎖パラフィンの改質方法。
【請求項6】
炭素数が17以上の前記直鎖パラフィンがn-ヘプタデカンである、請求項5に記載の直鎖パラフィンの改質方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
近年、化石燃料と比較して二酸化炭素の排出量を大幅に削減することができる代替航空燃料としてSAF(Sustainable Aviation Fuel)が注目されている。一般的に、SAFは炭素数が8~16の炭化水素(以下、「C8~C16炭化水素」ともいう。)で構成され、低温流動性を高めるために直鎖パラフィンよりも分岐パラフィンが多く含まれることが好ましい。SAFの製造方法のひとつとして、都市ゴミやバイオマス等を熱分解して得られた一酸化炭素と水素を用いて、Fischer-Tropsch法(FT法)により、炭素数が17以上の長鎖の直鎖パラフィン(FTワックス)を合成し、改質触媒を用いてC8~C16炭化水素に改質する方法がある。
【0002】
上記のような改質触媒として、例えば、非特許文献1には白金(Pt)、ニッケル(Ni)、ルテニウム(Ru)を担持したBEA型ゼオライトが開示されている。また非特許文献2にはBEA型ゼオライトやMOR型ゼオライトとメソポーラスシリカであるSBA-15を組み合わせた複合担体に白金(Pt)を担持したゼオライト含有触媒組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Molecular Catalysis,Volume 476,2019年,Article 110515
【非特許文献2】Applied Catalysis B: Environmental,Volume 255,2019年,Article 117756
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非特許文献1では、直鎖パラフィンの改質効率が低く、触媒組成物として改善の余地があった。非特許文献2では、過度な水素化分解反応により炭素数が1~7の炭化水素が多く生成され、C8~C16炭化水素の収率が低い、という課題があった。
【0005】
本開示は、炭素数が17以上の直鎖パラフィン(以下、「C17以上の直鎖パラフィン」ともいう)から高い収率でC8~C16炭化水素が得られる直鎖パラフィン改質用触媒組成物を提供することを目的とする。本開示の好ましい一実施形態によれば、C17以上の直鎖パラフィンから高い収率でC8~C16炭化水素を得ることができ、尚且つ、改質により得られたC8~C16炭化水素のうち、分岐パラフィンの割合が高い直鎖パラフィン改質用触媒組成物を提供することもできる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、C17以上の直鎖パラフィン(例えば、炭素数が17の直鎖パラフィンであるn-ヘプタデカン)をC8~C16炭化水素に改質する改質反応に供する触媒組成物について検討した。その結果、アルミナに対するシリカのモル比が所定値以上であるFAU型ゼオライトと、γ-アルミナと、触媒金属元素を含む触媒組成物が、優れた直鎖パラフィン改質性能を示すことを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は特許請求の範囲の記載のとおりであり、また、本開示の要旨は以下のとおりである。
[1] 炭素数が17以上の直鎖パラフィンを改質するための直鎖パラフィン改質用触媒組成物であって、アルミナに対するシリカのモル比が50以上であるFAU型ゼオライトと、γ-アルミナと、触媒金属元素と、を含む直鎖パラフィン改質用触媒組成物。
[2] 前記γ-アルミナの含有量が、直鎖パラフィン改質用触媒組成物100質量%に対し、10質量%以上65質量%以下である、前記[1]に記載の直鎖パラフィン改質用触媒組成物。
[3] 前記触媒金属元素が、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、ニッケル及びコバルトからなる群から選ばれる1種以上である、前記[1]又は[2]に記載の直鎖パラフィン改質用触媒組成物。
[4] 前記触媒金属元素の含有量が、直鎖パラフィン改質用触媒組成物100質量%に対し、0.05質量%以上5.0質量%以下である、前記[1]から[3]のいずれか一つに記載の直鎖パラフィン改質用触媒組成物。
[5] 前記[1]から[4]のいずれか一つに記載の直鎖パラフィン改質用触媒組成物と、水素及び炭素数が17以上の直鎖パラフィンを含む流体と、を接触させることを含む、直鎖パラフィンの改質方法。
[6] 炭素数が17以上の前記直鎖パラフィンがn-ヘプタデカンである、[5]に記載の直鎖パラフィンの改質方法。
【発明の効果】
【0008】
本開示により、C17以上の直鎖パラフィンの改質反応において、高いC8~C16炭化水素収率を示す直鎖パラフィン改質用触媒組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施例1の粉末X線回折パターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示に係る直鎖パラフィン改質用触媒組成物について、実施形態の一例を示して説明する。
【0011】
本実施形態における用語は以下の通りである。
【0012】
「アルミノシリケート」は、アルミニウム(Al)とケイ素(Si)とが酸素(O)を介したネットワークの繰返しからなる構造を有する複合酸化物である。アルミノシリケートのうち、その粉末X線回折(以下、「XRD」ともいう。)パターンにおいて、結晶性のXRDピークを有するものが「結晶性アルミノシリケート」、及び、結晶性のXRDピークを有さないものが「非晶質アルミノシリケート」である。
【0013】
本実施形態において、XRDパターンは以下の条件のXRD測定より得られるものが挙げられる。
加速電流・電圧 : 10mA・30kV
線源 : CuKα線(λ=1.54178Å)
測定モード : 連続スキャン
スキャン条件 : 2°/分
測定範囲 : 2θ=10~70°
散乱スリット : 1/3°
発散スリット : 1/3°
受光スリット : 0.3mm
フィルター : Niフィルター
【0014】
XRDパターンは一般的な粉末X線回折装置(例えば、Ultima IV Protectus、リガク社製)を使用して測定することができる。また、結晶性のXRDピークは、一般的な解析ソフトを使用したXRDパターンの解析においてピークトップの2θが特定され検出されるピークであり、半値幅が2θ=0.50°以下のXRDピークが例示できる。
【0015】
「ゼオライト」とは、骨格原子(以下、「T原子」ともいう。)が酸素(O)を介した規則的構造を有する化合物であり、T原子が金属原子及び半金属原子の少なくともいずれかからなる化合物である。金属原子としては、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、鉄(Fe)、亜鉛(Zn)、ガリウム(Ga)及びスズ(Sn)からなる群から選ばれる1以上が例示でき、アルミニウムが好ましい。半金属原子としては、ホウ素(B)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)及びテルル(Te)の群から選ばれる1以上が例示でき、ケイ素が好ましい。なお、T原子がアルミニウム(Al)とケイ素(Si)からなるゼオライトは、結晶性アルミノシリケートに該当する。結晶性アルミノシリケートには、T原子がアルミニウムとケイ素のみからなる非置換型の結晶性アルミノシリケートと、T原子を構成するアルミニウムとケイ素の一部が他の金属原子及び半金属原子の少なくともいずれかに置換した置換型の結晶性アルミノシリケートが含まれる。
【0016】
「ゼオライト類似物質」とは、T原子が酸素を介した規則的構造を有する化合物であり、T原子に少なくとも金属及び半金属以外の原子を含む化合物である。ゼオライト類似物質として、アルミノフォスフェート(AlPO)やシリコアルミノフォスフェート(SAPO)など、T原子としてリン(P)を含む複合リン化合物が例示できる。
【0017】
ゼオライトやゼオライト類似物質における「規則的構造(以下、「ゼオライト構造」ともいう。)」とは、国際ゼオライト学会(International ZeoliteAssociation)のStructure Commissionが定めている骨格構造コード(以下、単に「骨格コード」ともいう。)で特定される骨格構造である。例えば、「FAU骨格構造」とは、骨格コードで、FAU型となる構造である。ゼオライトの骨格構造は、IZAの構造委員会のホームページhttp://www.iza-struture.org/databases/のZeolite Framework に記載の各骨格構造のXRDパターン(以下、「参照パターン」ともいう。)との対比によって同定できる。ゼオライトの構造に関し、骨格構造、結晶構造又は結晶相との用語はそれぞれ互換的に使用される。
【0018】
「パラフィン」とは、一般式C2n+2で表される飽和鎖式炭化水素の総称である。前記一般式において、nは1以上の整数であればよく、その上限値は特に限定されるものではない。
【0019】
本実施形態において、「直鎖パラフィン」とは、パラフィンのうち、炭素鎖が直鎖の分子構造である炭化水素であり、「分岐パラフィン」とは、パラフィンのうち、炭素鎖が側鎖を有する分子構造である炭化水素である。
【0020】
「γ-アルミナ」とは、アルミナのうち、結晶構造が欠陥スピネル型のものを指す。γ-アルミナは、公知のXRDパターンとの対比により同定することができる。γ-アルミナの公知のXRDパターンとしては、例えば、International Journal of Chemical Engineering and Applications,Vol.3,No.2,2012年,125~128頁に記載のγ-アルミナのXRDパターンや、国際回折データセンター(ICDD:The International Centre for Diffraction Data(登録商標))のデータベースにおける「No.00-010-0425」に記載のγ-アルミナのXRDパターンを例示することができる。
【0021】
以下、本実施形態の触媒組成物について説明する。本実施形態の触媒組成物は、C17以上の直鎖パラフィンを改質するための直鎖パラフィン改質用触媒組成物に関する。
【0022】
本実施形態の触媒組成物はFAU型ゼオライトを含む。本実施形態の触媒組成物に含まれるFAU型ゼオライトは、FAU構造を有するゼオライトであればどのようなゼオライトであってもよいが、より高い収率でC8~C16炭化水素を得る観点からは、FAU構造を有する結晶性アルミノシリケートであることが好ましい。
【0023】
FAU型ゼオライトの結晶構造は、酸素4員環及び酸素6員環からなるソーダライトケージ、並びに、二重酸素6員環(以下、「D6R」ともいう。)の構造ユニットからなり、これらの構造ユニットが三次元的に結合して形成された酸素12員環からなる細孔(酸素12員環細孔)を有する。このような酸素12員環細孔を有することにより、FAU型ゼオライトはn-ヘプタデカンなどの嵩高い炭化水素(つまり、C17以上の直鎖パラフィン)であっても細孔内で効率よく反応を進行させることができる。
【0024】
本実施形態の触媒組成物に含まれるFAU型ゼオライトは、アルミナに対するシリカのモル比(以下、「SiO/Al比」ともいう。)が50以上である。FAU型ゼオライトのSiO/Al比は、50以上であればよいが、より高い収率でC8~C16炭化水素を得る観点からは、70以上であることが好ましい。SiO/Al比が50未満であるFAU型ゼオライトは、過度な水素化分解反応により炭素数が1から7の炭化水素(以下、「C1~C7炭化水素」ともいう。)が多く生成される傾向にあり、その結果、C8~C16炭化水素の収率が低下してしまう。
【0025】
本実施形態の触媒組成物に含まれるFAU型ゼオライトは、SiO/Al比の上限値について特に限定されるものではないが、適度に水素化分解反応を進める上では、500以下であることが好ましく、200以下であることがより好ましい。好ましい実施態様の一つとしては、FAU型ゼオライトのSiO/Al比が50以上500以下であることが挙げられ、より好ましい実施形態の一つとしては、FAU型ゼオライトのSiO/Al比が70以上200以下であることが挙げられる。
【0026】
本実施形態の触媒組成物に含まれるFAU型ゼオライト(SiO/Al比が50以上であるFAU型ゼオライト)は、その含有量について特に限定されるものではないが、より高い収率でC8~C16炭化水素を得る観点からは、触媒組成物100質量%に対し、35質量%以上90質量%以下であることが好ましく、45質量%以上70質量%以下であることがより好ましい。
【0027】
本実施形態の触媒組成物には、γ-アルミナが含まれる。本実施形態の触媒組成物におけるγ-アルミナの含有量は、特に限定されるものではないが、触媒組成物100質量%に対し、10質量%以上65質量%以下であることが好ましく、30質量%以上60質量%以下であることがより好ましく、40質量%以上60質量%以下であることが更に好ましい。γ-アルミナの含有量が10質量%以上となることで、改質するC17以上の直鎖パラフィンの拡散がより促進されるとともに、過度な水素化分解反応をより抑制することができる。また、γ-アルミナの含有量が65質量%以下となることで、C17以上の直鎖パラフィンを改質する改質反応がより促進される酸量を有することができる。
【0028】
本実施形態の触媒組成物は、C17以上の直鎖パラフィンをC8~C16炭化水素に改質する改質反応を触媒する触媒金属元素を含む。触媒金属元素は、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、ニッケル(Ni)、及びコバルト(Co)からなる群から選ばれる1種以上であることが好ましく、また更には白金及びパラジウムの少なくともいずれかから選ばれる1種以上であることさらに好ましく、また更には白金であることが特に好ましい。
【0029】
本実施形態の触媒組成物における触媒金属元素の状態は、特に限定されるものではないが、例えば、化合物(例えば、酸化物)、金属、イオン、合金、又はそれらの2種以上の状態であることを例示することができる。
【0030】
本実施形態の触媒組成物に含まれる触媒金属元素の含有量は、本実施形態の効果を奏する範囲であれば特に限定されるものではないが、より高い収率でC8~C16炭化水素を得る観点からは、触媒組成物100質量%に対し、0.05質量%以上であることが好ましく、0.20質量%以上であることがより好ましく、0.30質量%以上であることが特に好ましい。また、触媒金属元素の含有量の上限値は、より高い収率でC8~C16炭化水素を得る観点から、5.0質量%以下であることが好ましく、2.0質量%以下であることがより好ましく、1.0質量%以下であることが特に好ましい。
【0031】
本実施形態の触媒組成物は、前述したFAU型ゼオライト、γ-アルミナ、及び触媒金属元素のみにより構成されていてもよいが、これら以外の他の成分が含有されていてもよい。このような他の成分としては、例えば、バインダーを挙げることができる。バインダーとしては、例えば、シリカ、γ-アルミナ以外のアルミナ、カオリン、アタパルジャイト、モンモリロナイト、ベントナイト、及びセピオライトの群から選ばれる少なくとも1種を挙げられ、好ましくはアルミナである。
【0032】
本実施形態の触媒組成物における各成分(FAU型ゼオライト、γ-アルミナ、及び触媒金属元素)の含有形態は、特に限定されるものではないが、より高い収率でC8~C16炭化水素を得る観点からは、SiO/Al比が50以上であるFAU型ゼオライトとγ-アルミナを含む焼成物に、触媒金属元素が含有されている形態であることが好ましく、SiO/Al比が50以上であるFAU型ゼオライトとγ-アルミナを含む焼成物に、触媒金属元素が担持されている形態であることがより好ましい。
【0033】
なお、「触媒金属元素の含有」とは、触媒組成物が触媒金属元素を含むことをいい、触媒組成物に触媒金属元素が含まれていれば、触媒金属元素がどのような状態でどのような部位に含まれていてもよい。一方、「触媒金属元素の担持」とは、触媒組成物が触媒金属元素をFAU型ゼオライトのT原子以外やγ-アルミナの結晶構造を構成する原子以外として含むことをいう。すなわち、「触媒金属元素の担持」は、触媒金属元素がFAU型ゼオライトのT原子及びγ-アルミナの結晶構造を構成する原子として存在していない状態で、触媒金属元素が触媒組成物に含まれていることを意味する。「触媒金属元素の担持」の好ましい形態としては、触媒金属元素がFAU型ゼオライトのT原子及びγ-アルミナの結晶構造を構成する原子として存在せず、なおかつ、FAU型ゼオライトの表面及び細孔内の少なくともいずれか、及び/又はγ-アルミナの表面及び細孔内の少なくともいずれか、に含まれている状態を挙げることができる。
【0034】
本実施形態の触媒組成物は、C17以上の直鎖パラフィンをC8~C16炭化水素に改質する改質反応に使用することができ、優れたC8~C16炭化水素収率を示す。改質するC17以上の直鎖パラフィンは、炭素数が17以上の直鎖パラフィンであればよいが、より高い収率でC8~C16炭化水素を得る観点からは、炭素数が17以上100以下の直鎖パラフィンであることが好ましく、炭素数が17以上30以下の直鎖パラフィンであることが更に好ましい。
【0035】
本実施形態の触媒組成物によるC17以上の直鎖パラフィンの改質方法は、本実施形態の触媒組成物と、C17以上の直鎖パラフィンと水素を含有する流体(以下、「パラフィン含有流体」ともいう)とを接触させる工程(以下、「接触工程」ともいう。)、を含む。本実施形態の触媒組成物とパラフィン含有流体を接触させる具体的な方法としては、例えば、本実施形態の触媒組成物を固定相流通式反応管に充填して触媒充填層を形成し、この触媒充填層にパラフィン含有流体を流通させる方法を例示することができる。
【0036】
本実施形態の触媒組成物によるC17以上の直鎖パラフィンの改質は、本実施形態の触媒組成物とパラフィン含有流体を接触させれば進行するため、その接触条件については特に限定されない。好ましい接触条件としては、例えば、以下の条件を例示することができる。
【0037】
本実施形態の触媒組成物とパラフィン含有流体の接触温度は、より高い収率でC8~C16炭化水素を得る観点からは、200~350℃であることが好ましく、275~325℃であることがより好ましい。
【0038】
本実施形態の触媒組成物とパラフィン含有流体を接触させる圧力は、より高い収率でC8~C16炭化水素を得る観点からは、0.1~10Mpaであることが好ましく、0.5~5Mpaであることがより好ましい。
【0039】
本実施形態の触媒組成物に接触させるパラフィン含有流体中の水素の流量は、より高い収率でC8~C16炭化水素を得る観点からは、50~1000ml/minであることが好ましく、100~500ml/minであることがより好ましい。
【0040】
本実施形態の触媒組成物に接触させるパラフィン含有流体中のC17以上の直鎖パラフィンの重量空間速度(WHSV)は、より高い収率でC8~C16炭化水素を得る観点からは、0.5~10h-1であることが好ましく、1~3h-1であることが好ましい。なお、WHSVは、触媒組成物の単位質量当たりの、1時間のC17以上の直鎖パラフィンの供給量を表すパラメータである([g(触媒組成物)]/[g(C17以上の直鎖パラフィン)/h](=[h-1]))。
【0041】
触媒組成物とパラフィン含有流体の接触時間については、取得したいC8~C16炭化水素の量に応じて適宜設定できる。
【0042】
触媒組成物に接触させるパラフィン含有流体は、液体、気体、液体と気体の混合流体のいずれであってもよいが、より高い収率でC8~C16炭化水素を得る観点からは、気体であることが好ましい。また、パラフィン含有流体は、C17以上の直鎖パラフィンと水素のみで構成されていてもよいが、これら以外の流体を含むものであってもよい。
【0043】
前述した接触工程を含む改質方法によれば、C17以上の直鎖パラフィンをC8~C16炭化水素に改質することができる。改質により得られるC8~C16炭化水素の一例としては、炭素数が8~16のパラフィンを例示することができ、より具体的な一例としては、炭素数が8~16の直鎖パラフィン(以下、「C8~C16直鎖パラフィン」ともいう)、及び/又は炭素数が8~16の分岐パラフィン(以下、「C8~C16分岐パラフィン」ともいう)を例示することができる。なお、改質により得られるC8~C16炭化水素は、炭素数が8~16のパラフィンのみで構成されていてもよいが、炭素数が8~16のパラフィンに加えて、炭素数が8~16のオレフィンが含まれていてもよい。SAFとして利用しやすいことから、改質により得られるC8~C16炭化水素は炭素数が8~16の分岐パラフィンを含むことが好ましく、C8~C16炭化水素は炭素数が8~16の分岐パラフィンであることがより好ましい。
【0044】
本実施形態の触媒組成物の形状は任意であるが、反応管に充填することなどを考慮すると、成形体であることが好ましい。
【0045】
触媒組成物の形状が成形体である場合、例えば、転動造粒成形、プレス成形、押し出し成形、射出成形、鋳込み成形及びシート成形の群から選ばれる少なくとも1種、などの任意の成形方法で任意の形状に成形することができる。成形体の形状としては、球状、略球状、楕円状、円板状、円柱状、多面体状、不定形状及び花弁状の群から選ばれる少なくとも1種を挙げることができる。
【0046】
次に、本実施形態の触媒組成物の製造方法について説明する。
【0047】
本実施形態の直鎖パラフィン改質用触媒組成物の製造方法は、SiO/Al比が50以上であるFAU型ゼオライトと、γ-アルミナと、触媒金属元素と、を含む組成物が得られる方法であれば、任意の方法を用いることができる。
【0048】
本実施形態の触媒組成物の製造方法の具体的な一例としては、SiO/Al比が50以上のFAU型ゼオライトとγ-アルミナ源とを混合する工程(以下、「混合工程」ともいう)、該混合工程により得られる混合物を焼成する工程(以下、「焼成工程」ともいう。)、及び焼成工程により得られる焼成物に触媒金属元素を含有させる工程(以下、「含有工程」ともいう。)を有する方法が挙げられる。これらの工程を含む製造方法によれば、FAU型ゼオライトとγ-アルミナを含む焼成物に触媒金属元素が含有された形態の触媒組成物を製造することができる。
【0049】
混合工程では、SiO/Al比が50以上のFAU型ゼオライトとγ-アルミナ源とが均一になるように任意の方法で混合すればよい。混合方法として、リボンブレンダー、ニーダー、ナウターミキサー及びミックスマラーの群から選ばれる1以上による混合装置を使用する方法が例示できる。なお、SiO/Al比が50以上のFAU型ゼオライトは、市販品を用いてもよく、水熱合成法などの従来公知の方法で製造してもよい。
【0050】
混合工程で用いられるγ-アルミナ源は、γ-アルミナそのものであってもよく、後述する焼成工程を経てγ-アルミナになる物質であってもよく、これらの両方であってもよい。焼成工程や含有工程を経てγ-アルミナとなる物質としては、例えば、アルミナゾルが挙げられる。アルミナゾルは、450~800℃の焼成によりγ-アルミナになることが知られている。混合工程で用いられるγ-アルミナ源として、アルミナゾルが用いられると、アルミナゾルがバインダーとして作用して触媒組成物を所定の形状に成形しやすくなるとともに、改質反応に必要なγ-アルミナを触媒組成物に含有させることもできる。
【0051】
なお、混合工程では、SiO/Al比が50以上のFAU型ゼオライトとγ-アルミナ源のみを混合してもよいが、これらに加えてさらにバインダーや分散媒を混合してもよい。アルミナゾル以外のバインダーとしては、例えば、シリカ、アルミナゾル以外のアルミナ、カオリン、アタパルジャイト、モンモリロナイト、ベントナイト、及びセピオライトの群から選ばれる少なくとも1種を挙げられる。分散媒としては、例えば、水(イオン交換水)を挙げることができる。
【0052】
焼成工程では、混合工程で得られた混合物(つまり、SiO/Al比が50以上のFAU型ゼオライトとγ-アルミナ源を含む混合物)を焼成すればよく、焼成工程における焼成条件は任意であるが、例えば、以下の条件を挙げることができる。
焼成雰囲気 : 酸化雰囲気、好ましくは大気中
焼成温度 : 400℃以上700℃以下
焼成時間 : 30分以上5時間以下
【0053】
γ-アルミナ源として、アルミナゾルなどの焼成工程を経てγ-アルミナになる物質を用いる場合、焼成処理によりγ-アルミナを生成させる観点から、焼成工程おける焼成条件は、以下の条件であることが好ましい。
焼成雰囲気 : 酸化雰囲気、好ましくは大気中
焼成温度 : 450℃以上700℃以下
焼成時間 : 30分以上5時間以下
【0054】
含有工程では、焼成工程で得られた焼成物(つまり、SiO/Al比が50以上のFAU型ゼオライトとγ-アルミナを含む焼成物)に触媒金属元素を含有させる。焼成物に触媒金属元素を含有させる方法は任意であるが、一例としては、焼成工程で得られた焼成物と触媒金属元素源とを接触させて、焼成物に触媒金属元素を含有させる方法を挙げることができる。
【0055】
触媒金属元素源は、C17以上の直鎖パラフィンをC8~C16炭化水素に改質する改質反応を触媒する触媒金属元素を含む化合物であり、触媒金属元素のハロゲン化物、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、錯塩、酸化物及び複合酸化物からなる群から選ばれる少なくとも1種であることがより好ましく、触媒金属元素の塩化物、硝酸塩、硫酸塩、及び錯塩からなる群から選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。触媒金属元素源は、水やアルコールなどの溶媒に分散又は溶解され、触媒金属元素源を含む溶液として、焼成物に接触させてもよい。
【0056】
焼成工程で得られた焼成物と触媒金属元素源との接触方法は公知の方法を適用することができる。焼成物と触媒金属元素源とを接触させて、焼成物に触媒金属元素を含有させる具体的な方法としては、例えば、イオン交換法、含浸担持法、蒸発乾固法、沈殿担持法及び物理混合法の群から選ばれる少なくとも1種が挙げられ、イオン交換法又は含浸担持法の少なくともいずれかであることが好ましく、後述する実施例に示すような含浸担持法であることがより好ましい。
【0057】
本実施形態の触媒組成物の製造方法は、上述した混合工程、焼成工程、及び含有工程のみからなるものであってもよいが、これらの工程に加えて、洗浄工程、乾燥工程、焼成工程、及び還元処理工程からなる群から選択される1種以上の工程をさらに有していてもよい。
【0058】
洗浄工程は、触媒金属元素を含有させた焼成物(含有工程で得られた焼成物)を洗浄する工程である。洗浄工程では、例えば、触媒金属元素を含有させた焼成物(含有工程で得られた焼成物)を純水で洗浄すればよい。
【0059】
乾燥工程は、触媒金属元素を含有させた焼成物(含有工程で得られた焼成物)、又は洗浄処理した焼成物(洗浄工程で得られた焼成物)から水分を除去する工程である。乾燥処理の条件は、焼成物から水分を除去することができれば特に限定されるものではない。例えば、乾燥処理の条件は、空気中100℃~150℃で1時間~30時間乾燥する条件が挙げられる。
【0060】
焼成工程は、触媒金属元素を含有させた焼成物(含有工程で得られた焼成物)、洗浄処理した焼成物(洗浄工程で得られた焼成物)、又は乾燥処理した焼成物(乾燥工程で得られた焼成物)を焼成する工程である。焼成処理の条件としては、例えば、酸素雰囲気下、好ましくは大気中での400℃~700℃で30分~5時間焼成する条件が挙げられる。
【0061】
還元工程は、触媒金属元素を含有させた焼成物(含有工程で得られた焼成物)、洗浄処理した焼成物(洗浄工程で得られた焼成物)、乾燥処理した焼成物(乾燥工程で得られた焼成物)、又は焼成処理した焼成物(焼成工程で得られた焼成物)を還元処理する工程である。還元処理の条件は、例えば、還元雰囲気下、好ましくは水素を含む雰囲気下において、200℃~400℃で1時間~5時間還元処理する条件が挙げられる。
【0062】
上述した工程を含む製造方法により得られる焼成物は、本実施形態の触媒組成物として用いることができる。
【0063】
以上説明した本実施形態の触媒組成物は、C17以上の直鎖パラフィンをC8~C16炭化水素に改質する改質反応を触媒することができ、C8~C16炭化水素を高い収率で得ることができる。また、本実施形態の触媒組成物の一実施形態によれば、C8~C16炭化水素が高い収率で得られることに加え、改質により得られるC8~C16炭化水素のうちのC8~C16分岐パラフィンの割合を高めることもできる。
【実施例0064】
以下、実施例を示して本開示をさらに詳細に説明する。しかしながら、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0065】
(結晶相の同定)
試料を、一般的な粉末X線回折装置(装置名:Ultima IV 、リガク社製)を使用し、試料のXRD測定をした。測定条件は以下のとおりである。
加速電流・電圧 : 10mA・30kV
線源 : CuKα線(λ=1.54178Å)
測定モード : 連続スキャン
スキャン条件 : 2°/分
測定範囲 : 2θ=10~70°
散乱スリット : 1/3°
発散スリット : 1/3°
受光スリット : 0.3mm
フィルター : Niフィルター
【0066】
得られたXRDパターンを、国際回折データセンター(ICDD:The International Centre for Diffraction Data(登録商標))のデータベースにおける「No.00-010-0425」に記載のγ-アルミナのXRDパターンと比較することで、試料中のアルミナの結晶相を同定した。また、得られたXRDパターンを、測定装置付随の解析プログラム(商品名:IGOR Pro 8、WaveMetrics社製)を使用し、ベースラインの補正、及び、補正後の各XRDピークの検出及び強度解析を行った。補正後のXRDパターンと、IZAの構造委員会のホームページhttp://www.iza-struture.org/databases/のZeolite Frameworkに記載の各骨格構造のXRDパターンとを比較することで、試料中のゼオライトの結晶相を同定した。
【0067】
(組成分析)
フッ酸と硝酸の混合水溶液に試料を溶解して試料溶液を調製した。一般的なICP装置(装置名:OPTIMA5300DV、PerkinElmer社製)を使用して、当該試料溶液を誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP-AES)で測定した。得られたSi、Al及びPtの測定値から、試料のSiO/Al比及び試料に対するPtの質量割合(以下、「Pt含有量」ともいう。)を求めた。
【0068】
実施例1
プロトン型のFAU型ゼオライト(HSZ-385HUA、SiO/Al比:100、非置換型の結晶性アルミノシリケート、東ソー社製)2.6g、γ-アルミナ(日本ケッチェン社製)1.8g、アルミナゾル(Cataloid AP―1、アルミナ含有率:70質量%、触媒化成社製)1.1g、イオン交換水6.0gを10分間混合し、得られた混合物を500℃で3時間、大気雰囲気下で焼成した。得られた焼成物の非ゼオライト由来のアルミナ含有量は50質量%であった。該焼成物にPt含有量が0.5質量%となるように、HPtCl水溶液を含浸させ、110℃で5時間乾燥した後、大気雰囲気下で500℃、3時間焼成して本実施例の触媒組成物を得た。
【0069】
粉末X線回折より、本実施例の触媒組成物は、FAU型ゼオライト及びγ-アルミナを含有することを確認した。図1に本実施例の触媒組成物のXRDパターンを示す。
【0070】
得られた触媒組成物は、SiO/Alモル比が100のFAU型ゼオライトを含有し、Ptを0.50質量%含有し、FAU型ゼオライト(結晶性アルミノシリケート)を49.75質量%、γ-アルミナを49.75質量%含む触媒組成物であった。
【0071】
比較例1
プロトン型のMFI型ゼオライト(HSZ-840HOA、SiO/Al比:38、非置換型の結晶性アルミノシリケート、東ソー社製)1.3g、γ-アルミナ(日本ケッチェン社製)3.0g、アルミナゾル(Cataloid AP―1、アルミナ含有率:70質量%、触媒化成社製)1.1g、イオン交換水6.0gを10分間混合し、得られた混合を500℃で3時間、大気雰囲気下で焼成した。得られた焼成物の非ゼオライト由来のアルミナ含有量は75質量%であった。該焼成物にPt含有量が0.5質量%となるように、HPtCl水溶液を含浸させ、110℃で5時間乾燥した後、大気雰囲気下で500℃、3時間焼成して本比較例の触媒組成物を得た。
【0072】
得られた触媒組成物は、SiO/Alモル比が38のMFI型ゼオライトを含有し、Ptを0.50質量%含有し、FAU型ゼオライト(結晶性アルミノシリケート)を24.88質量%、γ-アルミナを74.62質量%含む触媒組成物であった。
【0073】
測定例1
実施例1及び比較例1の触媒組成物を用いて、n-ヘプタデカンの改質反応を固定相流通式高圧反応装置にて行った。実施例1及び比較例1の触媒組成物を加圧成形した後に粉砕して、600-355μm及び355-125μmに分級し、質量比でそれぞれ70質量%及び30質量%となるように混合した。得られた混合物1gを反応管に充填し、触媒充填層とした。
【0074】
当該触媒充填層に、以下の条件でn-ヘプタデカン(和光純薬工業株式会社製)及び水素を流通させ、下記反応温度にてn-ヘプタデカンの改質反応を行った。なお、以下に示す「WHSV」、は触媒組成物の単位質量当たりの、1時間のn-ヘプタデカン供給量であり、[g-触媒]/[g-n-ヘプタデカン/h](=[h-1])で表せられる。
圧力 : 0.5 MPa
水素流量 : 300 ml/min
WHSV : 2.3~2.4 h-1
昇温速度 : 5 ℃/min
反応温度 : 300℃
【0075】
上記反応温度にて1時間安定化した後、生成物を気液分離管にて気体生成物と液体生成物とに分離回収した。気体生成物はガスクロマトグラフィーを用いて、以下の条件にて各成分の定量分析を行った。
装置 :GC-2014(島津社製)
キャリアガス:窒素
カラム :BP-1, 0.25mm ID×60m
カラム温度 :50℃(3min保持)→200℃(2℃/min)
注入口温度 :250℃
検出器温度 :320℃
スプリット比:200
線速度 :24.7cm/sec
【0076】
液体生成物はFID検出器付ガスクロマトグラフィーを用いて、以下の各成分の定量分析を行った。
装置 :GC-2014(島津社製)
キャリアガス:窒素
カラム :BP-1, 0.25mm ID×60m
カラム温度 :50℃(3min保持)→280℃(3℃/min)
注入口温度 :280℃
検出器温度 :280℃
スプリット比:200
線速度 :40.0cm/sec
【0077】
表1にその結果を示す。下記表1に示す転化率や収率は、気体生成物及び液体生成物の両方を合わせた値である。なお、転化率は、下記式(1)から求めた。また、各生成物の収率は、C1~C7炭化水素、C8~C16炭化水素、及びその他の生成物の質量割合に応じて、下記式(1)で求めた転化率を案分することにより求めた。
転化率(質量%)=(A-B)/A×100・・・(1)
A:供給したn-ヘプタデカンの量(g)
B:生成物に含まれるn-ヘプタデカンの量(g)
【0078】
下記表1に示す通り、実施例1と比較例1は同等の転化率を示したが、C8~C16炭化水素の収率は、実施例1の方が比較例1よりも大幅に高く、C1~C7炭化水素の収率は、実施例1の方が比較例1よりも大幅に低くなった。この結果から、比較例1の触媒組成物は過剰な水素化分解反応の進行によりC1~C7炭化水素を多く生成し、C8~C16炭化水素収率が低くなったことが推察できた。
【0079】
【表1】
【0080】
測定例2
測定例1で得られた液体生成物をFID検出器付ガスクロマトグラフィーにてPONA(Paraffin、Olefin、Naphthene、AROMATIC)分析を行った。条件は以下のとおりである。なお、測定例1から、気体生成物が、炭素数が1~4の炭化水素で構成され、液体生成物が、炭素数5~17の炭化水素で構成されていることが判明したため、測定例2では、C8~C16炭化水素を含む液体生成物のみを測定対象とした。
【0081】
装置 :GC-2010(島津社製)
キャリアガス:ヘリウム
カラム :Rtx-1 PONA、0.25mm ID×100m
カラム温度 :5℃で3分保持後、200℃へ昇温(昇温速度:1℃/min)
注入口温度 :250℃
検出器温度 :250℃
スプリット比:150
線速度 :28.0cm/sec
【0082】
表2に結果を示す。なお、表2において、C8~C16直鎖パラフィンやC8~C16分岐パラフィンの含有割合は、生成物に含まれるC8~C16炭化水素100質量%に対する割合である。下記表2に示すように、実施例1は比較例1よりも、得られたC8~C16炭化水素のうち、C8~C16分岐パラフィンの含有割合が高かった。
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明の触媒組成物は、直鎖パラフィン改質用触媒として使用することができる。
図1