(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115801
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】ウェーハの分割方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20240820BHJP
【FI】
H01L21/78 S
H01L21/78 Q
H01L21/78 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021644
(22)【出願日】2023-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】若原 匡俊
【テーマコード(参考)】
5F063
【Fターム(参考)】
5F063AA41
5F063BA20
5F063CA02
5F063CA08
5F063DD42
5F063DD46
5F063DF06
5F063DF20
(57)【要約】
【課題】保護部材と保持面との間に隙間が形成されることを抑制する。
【解決手段】ワークセット110におけるリングフレーム111の開口112が、開口112内にウェーハ100を配置した際に、ウェーハ100の外周の外側に、リング状の細溝状の隙間が形成されるように構成されている。このため、この隙間から露出する保護部材113の部分が、非常に狭くなっている。すなわち、保護部材113の略全ての部分が、ウェーハ100あるいはリングフレーム111によって覆われている。したがって、保持面からウェーハ100に伝達される静電吸着力、および、リングフレーム111の自重によって、保護部材113の略全ての部分を、保持面に対して押し付けることができる。このため、保護部材113の変形を良好に抑制することが可能となるので、保持面と保護部材113との間に空間が形成されにくくなる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面におけるストリートによって区画された領域にデバイスが形成されたウェーハを、その表面または裏面を保護する保護部材を介して、減圧室内の静電チャックテーブルの保持面によって静電吸着し、該ストリートに沿ったプラズマダイシングによってウェーハをチップに分割する、ウェーハの分割方法であって、
ウェーハを配置した際にウェーハの外周の外側にリング状の細溝状の隙間が形成されるような開口を有するリングフレームと、ウェーハとに、シート状の該保護部材を貼着することによって、該リングフレームと該ウェーハと該保護部材とが一体化されたワークセットを形成するワークセット形成工程と、
該ウェーハにおける該ストリートに対応した分割すべき領域を露出させ、該分割すべき領域以外をマスクするマスク形成工程と、
該静電チャックテーブルの該保持面に静電吸着力を発生させ、該リングフレームの自重で該保護部材を該保持面に押し付けつつ、該保護部材を介して該保持面によって該ウェーハを静電吸着するウェーハ吸着工程と、
該分割すべき領域に対するプラズマダイシングによって、該ウェーハを個々のチップに分割する分割工程と、を備える、
ウェーハの分割方法。
【請求項2】
該ウェーハの表面にバンプが配置されており、
該保護部材は、該ウェーハの表面に貼着され、
該ウェーハの裏面側からプラズマダイシングを実施する、
請求項1記載のウェーハの分割方法。
【請求項3】
該ウェーハは、反りを有しており、
該ワークセットを形成する該保護部材は、該静電チャックテーブルの該保持面に該保護部材を介して静電吸着された該ウェーハが平坦になるような強度を備える大きな厚みを有する、
請求項1記載のウェーハの分割方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハの分割方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1および2に開示のように、プラズマダイシングによって、ウェーハのストリートに沿ってウェーハを分割してチップを形成する技術がある。ウェーハは、リングフレームに貼着されたテープによって支持されている。分割されたチップは、このテープによって、飛散しないように支持される。
【0003】
例えば、表面にバンプが形成されているウェーハの場合、バンプにより、ウェーハの表面に凹凸が形成されている。この凹凸に対応させるために、厚い糊層を有する厚いテープが使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-054537号公報
【特許文献2】特開2022-049438号公報
【特許文献3】特開2020-024976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
プラズマダイシングによってストリートに沿ってウェーハを分割するときには、デバイスを破損させないように、ウェーハの裏面からプラズマダイシングを実施することがある。
【0006】
プラズマダイシングでは、静電吸着によって、チャックテーブルにウェーハを保持させている。そのため、厚いテープが介在すると、チャックテーブルの上面とウェーハの下面との距離が遠くなり、静電吸着力が小さくなる。
【0007】
また、厚い糊層を有する厚いテープを使用することに代えて、特許文献3に開示のように、厚い糊層の代わりにシートとウェーハとの間に樹脂層を形成することがある。このような樹脂層を用いる場合においても、チャックテーブルの上面とウェーハの下面との距離が遠くなり、静電吸着力が小さくなる。
【0008】
このように静電吸着力が小さくなると、保持面とウェーハの下面との間に空間(隙間)が形成されることがあり、プラズマダイシング時にウェーハが分割されにくくなることがある。
【0009】
したがって、本発明の目的は、保護部材を介してウェーハを静電吸着して、プラズマダイシングによってウェーハを分割するウェーハの分割加工に関し、ウェーハを保護する保護部材とチャックテーブルの上面との間に空間が形成されにくくすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のウェーハの分割方法(本分割方法)は、表面におけるストリートによって区画された領域にデバイスが形成されたウェーハを、その表面または裏面を保護する保護部材を介して、減圧室内の静電チャックテーブルの保持面によって静電吸着し、該ストリートに沿ったプラズマダイシングによってウェーハをチップに分割する、ウェーハの分割方法であって、ウェーハを配置した際にウェーハの外周の外側にリング状の細溝状の隙間が形成されるような開口を有するリングフレームと、ウェーハとに、シート状の該保護部材を貼着することによって、該リングフレームと該ウェーハと該保護部材とが一体化されたワークセットを形成するワークセット形成工程と、該ウェーハにおける該ストリートに対応した分割すべき領域を露出させ、該分割すべき領域以外をマスクするマスク形成工程と、該静電チャックテーブルの該保持面に静電吸着力を発生させ、該リングフレームの自重で該保護部材を該保持面に押し付けつつ、該保護部材を介して該保持面によって該ウェーハを静電吸着するウェーハ吸着工程と、該分割すべき領域に対するプラズマダイシングによって、該ウェーハを個々のチップに分割する分割工程と、を備える。
【0011】
また、本分割方法では、該ウェーハの表面にバンプが配置されていてもよく、該保護部材は、該ウェーハの表面に貼着されていてもよく、該ウェーハの裏面側からプラズマダイシングを実施してもよい。
【0012】
また、本分割方法では、該ウェーハは、反りを有していてもよく、該ワークセットを形成する該保護部材は、該静電チャックテーブルの該保持面に該保護部材を介して静電吸着された該ウェーハが平坦になるような強度を備える大きな厚みを有していてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本分割方法では、ワークセットにおけるリングフレームの開口が、開口内にウェーハを配置した際に、ウェーハの外周の外側に、リング状の細溝状の隙間が形成されるように構成されている。このため、この隙間から露出する保護部材の部分が、非常に狭くなっている。すなわち、保護部材の略全ての部分が、ウェーハあるいはリングフレームによって覆われている。
【0014】
したがって、ウェーハ吸着工程において、静電チャックテーブルの保持面によって、ワークセットのウェーハを保護部材を介して静電吸着する際、保持面からウェーハに伝達される静電吸着力、および、リングフレームの自重によって、保護部材113の略全ての部分を、保持面に対して押し付けることができる。このため、保護部材の変形を良好に抑制することが可能となるので、保持面と保護部材との間に空間が形成されにくくなる。したがって、保持面によって、保護部材を介してウェーハを良好に保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】
図2(a)はワークセットを示す斜視図であり、
図2(b)はワークセットを示す上面図である。
【
図7】マスク形成工程における樹脂層形成工程を示す説明図である。
【
図8】マスク形成工程における樹脂層除去工程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1に示すように、本実施形態にかかるウェーハの分割方法の分割対象物であるウェーハ100は、円板状の半導体ウェーハである。ウェーハ100の一方の面である表面101には、格子状のストリート102が形成されている。ストリート102によって区画された領域には、複数のデバイス103が形成されている。また、表面101には、
図3に示すようなバンプ105が形成されている。
【0017】
本実施形態では、このウェーハ100を、それぞれ1つのデバイス103を含む複数のチップに分割する。このために、本実施形態にかかるウェーハの分割方法は、ウェーハ100に対して、ワークセット形成工程、研削工程、マスク形成工程、ウェーハ吸着工程、分割工程、マスク除去工程、およびマウント工程を含んでいる。
【0018】
(1)ワークセット形成工程
この工程では、
図2(a)および
図2(b)に示すようなワークセット110を作成する。このワークセット110は、ウェーハ100、環状のリングフレーム111およびシート状(テープ状)の保護部材113を含んでいる。
【0019】
リングフレーム111は、ウェーハ100を収容可能な開口112を有している。特に、本実施形態では、リングフレーム111は、ウェーハ100を配置した際に、ウェーハ100の外周の外側に、リング状の細溝状の隙間(リング状の小さな幅の隙間)が形成されるような開口112を有している。
【0020】
図2(b)に、本実施形態にかかるリングフレーム111およびウェーハ100のサイズの一例を示す。この例では、リングフレーム111は、ステンレス製であり、1.5mmの厚さ、400mmの最大外径D、および、302mmの内径dを有している。すなわち、リングフレーム111の開口112は、302mmの直径dを有している。また、ウェーハ100は、300mmの外径φを有している。したがって、この例では、リングフレーム111の開口112内にウェーハ100を配置した際に、ウェーハ100の外周の外側に、約1mmの幅のリング状の細溝状の隙間Sが形成される。なお、従来、SEMI規格(G74-0699)に準拠しているリングフレームを用いた際の、この隙間の幅は、たとえば25mm程度である。
【0021】
そして、ワークセット形成工程では、このようなリングフレーム111と、ウェーハ100とに、シート状の保護部材113を貼着することによって、リングフレーム111とウェーハ100と保護部材113とが一体化されたワークセット110が形成される。
【0022】
具体的には、まず、
図3に示すように、ウェーハ100の表面101に、たとえばウェーハ100と略同径のフィルム115を貼着する。このフィルム115は、糊層を有していないフィルム(糊なしフィルム)であり、表面101に熱融着される。これにより、ウェーハ100のバンプ105が、フィルム115に食い込み、フィルム115におけるバンプ105に対応する部分に、バンプ105の形状に応じた凹凸が形成される。
【0023】
次に、ウェーハ100を、ワークセット形成装置(保護部材形成装置)10におけるウェーハ保持部11の保持面12によって吸引保持する。
【0024】
また、リングフレーム111の下面に、開口112を塞ぐように保護部材113を貼着することにより、リングフレーム111と保護部材113とを一体化する。そして、一体化されたリングフレーム111および保護部材113を、ワークセット形成装置10のステージ17の保持面18によって吸引保持する。この際、保護部材113におけるリングフレーム111の開口112の中心と、ステージ17の保持面18の中心とが略一致するように、リングフレーム111の位置を調整する。
これにより、ウェーハ保持部11に保持されているウェーハ100の中心と、リングフレーム111における開口112の中心とが一致する。また、保持面18上に開口112内の保護部材113が載置されて、保持面18によって保護部材113が吸引保持される。
【0025】
次に、吸引保持されている保護部材113に向けて、所定量の液状樹脂19が滴下される。液状樹脂19としては、たとえば、紫外線硬化樹脂が使用される。
【0026】
次いで、ワークセット形成装置10の昇降機構15によって、ウェーハ100を保持しているウェーハ保持部11を下降させる。これにより、ウェーハ100の表面101に貼着されたフィルム115が、液状樹脂19に接触する。その結果、液状樹脂19は、ウェーハ100に貼着されたフィルム115によって下方に押圧され、
図4に示すように、ウェーハ100の径方向に、所定の厚みを有するように押し拡げられる。
【0027】
その後、所定の厚みを有するように拡張された液状樹脂19に向けて、ステージ17内に設けられた紫外線照射部16から紫外光を照射する。その結果、液状樹脂19が硬化して、たとえばウェーハ100と略同径の液状樹脂19からなる樹脂層116が、ウェーハ100の表面101側のフィルム115上に形成されて、ウェーハ100と保護部材113とを接着する。これにより、リングフレーム111とウェーハ100と保護部材113とが一体化されたワークセット110が形成される。
【0028】
(2)研削工程
研削工程では、ワークセット110におけるウェーハ100の裏面104を研削する。
この工程では、
図5に示すように、ワークセット110を、ウェーハ100の裏面104が上向きとなるように、研削装置20のチャックテーブル21によって保持する。これにより、ワークセット110のウェーハ100が、保護部材113を介して、チャックテーブル21の保持面22によって吸引保持される。
【0029】
また、研削装置20は、チャックテーブル21の上方に、ウェーハ100の裏面104を研削するための研削機構23を有している。研削機構23は、保持面22に垂直な方向に延びるスピンドル24、スピンドル24の先端に取り付けられたマウント25、および、マウント25に保持された研削砥石261を有する研削ホイール26を備えている。
【0030】
研削工程では、スピンドル24が、図示しないモータによって、たとえば矢印301に示すように回転駆動されることにより、スピンドル24の下端に取り付けられたマウント25および研削ホイール26が回転される。また、ワークセット110を保持しているチャックテーブル21が、回転機構28によって、たとえば矢印302に示すように回転される。
【0031】
その後、昇降機構27により、研削機構23が、保持面22に保持されているワークセット110のウェーハ100に向かって下降される。これにより、回転する研削ホイール26の研削砥石261が、回転するウェーハ100の裏面104に接触し、この裏面104を研削する。これにより、
図6に示すように、ウェーハ100が、所定の厚みを有するように研削される。
【0032】
(3)マスク形成工程
マスク形成工程では、ウェーハ100におけるストリート102に対応した分割すべき領域(ウェーハ100におけるストリート102に沿った領域)を露出させ、この分割すべき領域以外をマスクする。
【0033】
(3-1)保護膜形成工程
マスク形成工程では、まず、研削されたウェーハ100の裏面104に保護膜を形成する保護膜形成工程が実施される。この工程では、まず、
図7に示すように、ワークセット110を、ウェーハ100の裏面104が上向きとなるように、保護膜形成装置30のチャックテーブル31によって保持する。これにより、ワークセット110のウェーハ100が、保護部材113を介して、チャックテーブル31の保持面32によって吸引保持される。
【0034】
また、保護膜形成装置30は、チャックテーブル31の上方に、ノズル33を有している。ノズル33は、液状樹脂供給源34に連結されており、液状樹脂供給源34から水溶性液状樹脂Jをウェーハ100の裏面104に供給するように構成されている。
【0035】
保護膜形成工程では、まず、ワークセット110を保持しているチャックテーブル31が、回転機構35によって、たとえば矢印303に示すように回転される。その後、ノズル33から、ウェーハ100の裏面104の略中央に、水溶性液状樹脂Jが供給される。水溶性液状樹脂Jは、チャックテーブル31とともに回転するウェーハ100の裏面104上で遠心力により引き伸ばされる。その後、引き延ばされた水溶性液状樹脂Jを自然乾燥によって硬化させる硬化処理が行われる。なお、水溶性液状樹脂Jを、加熱によって硬化させてもよい。これにより、
図8に示すように、ウェーハ100の裏面104に、裏面104を覆う所定の厚みを有する、樹脂からなる保護膜120が形成される。
【0036】
(3-2)保護膜除去工程
次に、保護膜除去工程が実施される。保護膜除去工程では、保護膜120におけるウェーハ100のストリート102(
図1参照)に対応する部分を除去して、ストリート102に対応した分割すべき領域を露出させる。
【0037】
保護膜除去工程では、まず、
図8に示すように、ワークセット110を、ウェーハ100の裏面104が上向きとなるように、レーザー加工装置40のチャックテーブル41によって保持する。これにより、ワークセット110のウェーハ100が、保護部材113を介して、チャックテーブル41の保持面42によって吸引保持される。
【0038】
また、レーザー加工装置40は、チャックテーブル41の上方に、レーザー発振器45を備えている。レーザー発振器45は、保護膜120に対して吸収性を有する波長のレーザー光線Lを下方に向かって照射するように構成されている。
保護膜除去工程では、このレーザー発振器45からのレーザー光線Lを保護膜120に照射しながら、チャックテーブル41を水平方向に移動させることにより、保護膜120におけるストリート102に対応する部分(ストリート102の直上の部分)を、レーザー光線Lにより昇華もしくは蒸発させる。これにより、保護膜120におけるストリート102に対応する部分が除去されて、
図9に示すように、ストリート102に沿って加工溝122が形成されウェーハ100の裏面104のストリート102を露出させる。
なお、レーザー光線Lは、保護膜120に対して透過性を有し、ウェーハ100に対して吸収性を有する波長であってもよい。その際、ウェーハ100の裏面104にレーザー光線Lを集光させ、ウェーハ100の裏面104を加熱し昇華もしくは蒸発させた熱で保護膜120を除去することによって、加工溝122を形成する。
【0039】
その結果、ウェーハ100の裏面104上に、マスク125が形成される。このマスク125は、保護膜120および加工溝122を含み、ウェーハ100におけるストリート102に対応した分割すべき領域を露出させ、この分割すべき領域以外をマスクするものである。
【0040】
(4)ウェーハ吸着工程
ウェーハ吸着工程では、
図9に示すように、プラズマダイシング装置50における静電チャックテーブル51の保持面52に、ウェーハ100を吸着させる。
【0041】
この静電チャックテーブル51は、減圧室53内の密閉空間に設けられている。ウェーハ吸着工程では、まず、静電チャックテーブル51の保持面52に、ウェーハ100の裏面104上のマスク125が上向きとなるように、ワークセット110を載置する。
【0042】
静電チャックテーブル51における保持面52の下方には、直流電源56に連結された静電吸着用の電極55が設けられている。この電極55に直流電圧を印加することによって、静電チャックテーブル51の保持面52に、静電吸着力が発生する。これにより、保持面52に載置されたウェーハ100が、保護部材113を介して、保持面52によって吸着保持される。
【0043】
また、
図9に示すように、静電チャックテーブル51の保持面52の外周側には、保護部材113を介して、ワークセット110のリングフレーム111が載置されている。このため、保護部材113は、リングフレーム111の自重によって、保持面52に押し付けられる。
【0044】
このように、ウェーハ吸着工程では、静電チャックテーブル51の保持面52に静電吸着力を発生させ、リングフレーム111の自重で保護部材113を保持面52に押し付けつつ、保護部材113を介して、保持面52によってウェーハ100を静電吸着する。
【0045】
(5)分割工程
分割工程では、ウェーハ100におけるストリート102に対応した分割すべき領域に対するプラズマダイシング(プラズマエッチングによる分割)によって、ウェーハ100を個々のチップに分割する。
【0046】
具体的には、まず、プラズマダイシング装置50の減圧室53内を減圧する。次に、冷却ユニット(図示せず)によって、静電チャックテーブル51の冷却を開始する。さらに、ガス供給機構およびプラズマ発生機構(ともに図示せず)によってプラズマ状態のガスであるプラズマガス57を生成し、減圧室53内に供給する。
【0047】
これにより、ウェーハ100におけるマスク125の保護膜120によって覆われていない領域(加工溝122に対応する領域)が、プラズマガス57中の反応性の高い粒子に晒される。これにより、この領域がエッチングされて分割され、
図10および
図11に示すように、加工溝122の下方に、ウェーハ100を分割する分割溝131が形成される。ここで、上述したように、加工溝122は、ウェーハ100におけるストリート102(
図1参照)に対応する分割すべき領域に形成されている。このため、ウェーハ100のストリート102に沿って分割溝131が形成されて、ウェーハ100が、それぞれ1つのデバイス103(
図1参照)を含む複数のチップ130に分割される。
【0048】
(6)マスク除去工程
マスク除去工程は、分割工程の後に、ウェーハ100からマスク125を除去する工程である。
この工程では、
図12に示すように、ワークセット110を、ウェーハ100の裏面104上のマスク125が上向きとなるように、洗浄装置60のチャックテーブル61によって保持する。これにより、ワークセット110のウェーハ100が、保護部材113を介して、チャックテーブル61の保持面62によって吸引保持される。
【0049】
次に、ウェーハ100を保持したチャックテーブル61を、回転機構63によって、たとえば矢印304に示すように回転させる。さらに、洗浄装置60のノズル64により、たとえば純水からなる洗浄水Wを、ウェーハ100の裏面104の中央付近に供給する。供給された洗浄水Wは、回転するチャックテーブル61の遠心力により、ウェーハ100の裏面104の全面にいきわたる。この洗浄水Wは、ウェーハ100の裏面104上のマスク125(保護膜120)を溶解する。これにより、
図13に示すように、ウェーハ100の裏面104上から、マスク125が除去される。
【0050】
(7)マウント工程
マウント工程は、チップ130に分割されたウェーハ100をワークセット110から取り外して、別のワークセットを形成する工程である。
【0051】
具体的には、まず、
図14に示すように、リングフレーム111とは別の開口142を有するリングフレーム141と、ダイシングテープ143とを用意する。そして、リングフレーム141の下面に、開口142を塞ぐようにダイシングテープ143を貼着することにより、リングフレーム141とダイシングテープ143とを一体化する。
【0052】
次に、一体化されたリングフレーム141およびダイシングテープ143と、ウェーハ100を含むワークセット110とを、対向配置して互いに接触させる。このようにして、
図15に示すように、ウェーハ100を、表裏を逆にした状態で、リングフレーム141の開口142内のダイシングテープ143の上面に載せ替える。その後、これらを引き離すことにより、リングフレーム141、ダイシングテープ143およびチップ130に分割されたウェーハ100からなる他のワークセット140が得られる。なお、フィルム115および樹脂層116は、ウェーハ100から外れて保護部材113上に残される。
このワークセット140では、各チップ130のバンプ105を露出させることができる。
【0053】
以上のように、本実施形態にかかるウェーハの分割方法は、ワークセット110におけるウェーハ100を、その表面101を保護する保護部材113を介して、減圧室53内の静電チャックテーブル51の保持面52によって静電吸着し、ストリート102に沿ったプラズマダイシングによってウェーハ100をチップに分割する方法である。
【0054】
そして、特に、本実施形態では、
図2(b)に示すように、ワークセット110におけるリングフレーム111の開口112が、開口112内にウェーハ100を配置した際に、ウェーハ100の外周の外側にリング状の細溝状の隙間Sが形成されるように構成されている。このため、この隙間S(ウェーハ100の外周縁とリングフレーム111の内周縁との間)から露出する保護部材113の部分が、非常に狭くなっている。すなわち、保護部材113の略全ての部分が、ウェーハ100あるいはリングフレーム111によって覆われている。
【0055】
したがって、
図9に示すように、ウェーハ吸着工程において、プラズマダイシング装置50の静電チャックテーブル51の保持面52によって、ワークセット110のウェーハ100を保護部材113を介して静電吸着する際、静電チャックテーブル51の保持面52からウェーハ100に伝達される静電吸着力、および、リングフレーム111の自重によって、保護部材113の略全ての部分を、保持面52に対して押し付けることができる。このため、保護部材113の変形(たとえば、弛んだり延びたりすること)を良好に抑制することが可能となるので、保持面52と保護部材113との間に空間(隙間)が形成されにくくなる。したがって、保持面52によって、保護部材113を介してウェーハ100を良好に保持することができる。
【0056】
また、本実施形態では、ウェーハ100の表面101にバンプ105が配置されている。そして、ワークセット110では、ウェーハ100の表面101を保護するために保護部材113が表面101に貼着されており、ウェーハ100の裏面104側からプラズマダイシングが実施されている。これにより、本実施形態では、プラズマダイシングの際、バンプ105およびデバイス103が形成されている表面101を、良好に保護することができる。
【0057】
また、本実施形態では、ウェーハ100の表面101に、糊層を有していないフィルム115が貼着されている。これにより、表面101を、さらに良好に保護することができる。また、フィルム115が糊層を有していないため、ウェーハ100の表面101からフィルム115を容易に剥がすことができる。
【0058】
なお、保護部材113は、ウェーハ100の裏面104を保護するために用いられてもよい。この場合、ウェーハ100は、裏面104を保護する保護部材113を介して、減圧室53内の静電チャックテーブル51の保持面52に静電吸着される。そして、ウェーハ100の表面101側からプラズマダイシングが実施される。
【0059】
また、本実施形態において
図2(b)に示した例では、リングフレーム111は、開口112内にウェーハ100を配置した際に、ウェーハ100の外周の外側に、約1mmの幅のリング状の隙間Sが形成されるような開口112を有している。
これに関し、リングフレーム111の開口112は、開口112内にウェーハ100を配置した際に、ウェーハ100の外周の外側に、リング状の細溝状の隙間Sが形成されるように構成されていればよい。なお、ウェーハ100の外周の外側に形成されるリング状の細溝状の隙間Sの幅は、ウェーハ100が直径300mmの場合には、たとえば、0.3mm~10mmの範囲であるとよい。また、この隙間Sの幅は、ウェーハ100が直径200mmの場合でも、たとえば0.3mm~10mmの範囲であるとよい。また、隙間Sの幅は、0.3mm~1mmであることがさらに好ましい。
【0060】
ウェーハ100の外側のリング状の細溝状の隙間Sの幅がこれらの範囲にある場合、保護部材113の大部分をウェーハ100あるいはリングフレーム111によって覆うことができる。このため、保護部材113の変形を良好に抑制することができる。したがって、保持面52と保護部材113との間の空間の発生を抑制することができるので、保持面52によって、ウェーハ100を良好に保持することができる。
【0061】
また、本実施形態にかかるウェーハの分割方法は、ウェーハ100をワークセット110から取り外して、別のワークセット140を形成するマウント工程を含んでいる。これに関し、ウェーハ100の表面101に配置されているバンプ105を上向きにする必要のない場合には、マウント工程は省略されてもよい。
【0062】
また、ウェーハ吸着工程において、リングフレーム111は、その自重によって保護部材113を静電チャックテーブル51の保持面52に押し付けている。したがって、リングフレーム111は、保護部材113と保持面52との間に空間が形成されにくくなるような、所定の重さを有していることが好ましい。
【0063】
また、ウェーハ100が反りを有している場合(ウェーハ100が反っている場合)もある。この場合、ワークセット110を形成する保護部材113は、プラズマダイシング装置50における静電チャックテーブル51の保持面52に保護部材113を介して静電吸着されたウェーハ100が平坦になるような強度を備える大きな厚みを有していることが好ましい。
【0064】
シート状の保護部材113がこのような強度を備えるほどの大きな厚みを有している場合、保護部材113がより変形しにくくなるため、保持面52と保護部材113との間の空間が、より形成されにくくなる。したがって、保護部材113を介して保持面52にウェーハ100が静電吸着された際、ウェーハ100を保持面52によって堅固に保持することができる。このため、保持面52に静電吸着されたウェーハ100の反りを抑えることができるので、保持面52によって、ウェーハ100を平坦な状態で保持することができる。
【0065】
また、ワークセット110における保護部材113は、テープ基材と、テープ基材に積層された糊層を有するように構成されていてもよい。この場合、フィルム115および樹脂層116を用いることなく、ウェーハ100と保護部材113とを接着することができる。
【符号の説明】
【0066】
10:ワークセット形成装置、11:ウェーハ保持部、12:保持面、
15:昇降機構、16:紫外線照射部、17:ステージ、18:保持面、
19:液状樹脂、20:研削装置、21:チャックテーブル、22:保持面、
23:研削機構、24:スピンドル、25:マウント、26:研削ホイール、
27:昇降機構、28:回転機構、30:保護膜形成装置、31:チャックテーブル、
32:保持面、33:ノズル、34:液状樹脂供給源、35:回転機構、
40:レーザー加工装置、41:チャックテーブル、42:保持面、
45:レーザー発振器、50:プラズマダイシング装置、51:静電チャックテーブル、52:保持面、53:減圧室、55:電極、56:直流電源、57:プラズマガス、
60:洗浄装置、61:チャックテーブル、62:保持面、63:回転機構、
64:ノズル、100:ウェーハ、101:表面、102:ストリート、
103:デバイス、104:裏面、105:バンプ、110:ワークセット、
111:リングフレーム、112:開口、113:保護部材、115:フィルム、
116:樹脂層、120:保護膜、122:加工溝、125:マスク、130:チップ、
131:分割溝、140:ワークセット、141:リングフレーム、142:開口、
143:ダイシングテープ、D:リングフレームの最大外径、J:水溶性液状樹脂、
S:隙間、L:レーザー光線、W:洗浄水、
d:リングフレームの内径、φ:ウェーハの外径