(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115821
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】シーラントフィルム、包装材料及び積層体
(51)【国際特許分類】
B32B 27/36 20060101AFI20240820BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20240820BHJP
C08G 63/183 20060101ALI20240820BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
B32B27/36
C08J5/18
C08G63/183
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021672
(22)【出願日】2023-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000707
【氏名又は名称】弁理士法人市澤・川田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黄 文シン
【テーマコード(参考)】
3E086
4F071
4F100
4J029
【Fターム(参考)】
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(57)【要約】
【課題】高いシール強度を有し、包装材とした際の耐落下性にも優れたシーラントフィルムを提供する。
【解決手段】ポリエステル層X、ポリエステル層Y及びポリエステル層Zをこの順に有する、少なくとも三層からなる積層フィルムであって、前記ポリエステル層Xが、ジカルボン酸成分及びジオール成分の共重合体からなる共重合ポリエステル(x-1)を含み、前記ジカルボン酸成分がテレフタル酸を含み、かつ、前記ジオール成分が脂環式ジオールを含み、当該ジオール成分中の当該脂環式ジオールの割合が0mol%より大きく50mol%未満であり、前記ポリエステル層Yが、ジカルボン酸成分及びジオール成分の共重合体からなる共重合ポリエステル(y-1)を含み、前記ジカルボン酸成分がテレフタル酸及びその他のジカルボン酸成分を含み、前記ポリエステル層Zが、ホモポリエチレンテレフタレート(z-1)を主成分樹脂として含み、前記ポリエステル層X及び/又は前記ポリエステル層Zが、ポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレート(A)を含む、シーラントフィルムである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル層X、ポリエステル層Y及びポリエステル層Zをこの順に有する、少なくとも三層からなる積層フィルムであって、
前記ポリエステル層Xが、ジカルボン酸成分及びジオール成分の共重合体からなる共重合ポリエステル(x-1)を含み、前記ジカルボン酸成分がテレフタル酸を含み、かつ、前記ジオール成分が脂環式ジオールを含み、当該ジオール成分中の当該脂環式ジオールの割合が0mol%より大きく50mol%未満であり、
前記ポリエステル層Yが、ジカルボン酸成分及びジオール成分の共重合体からなる共重合ポリエステル(y-1)を含み、前記ジカルボン酸成分がテレフタル酸及びその他のジカルボン酸成分を含み、
前記ポリエステル層Zが、ホモポリエチレンテレフタレート(z-1)を主成分樹脂として含み、
前記ポリエステル層X及び/又は前記ポリエステル層Zが、ポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレート(A)を含む、シーラントフィルム。
【請求項2】
前記ポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレート(A)は、ジカルボン酸成分及びジオール成分からなり、前記ジカルボン酸成分がテレフタル酸を含み、かつ、前記ジオール成分が1,4-シクロヘキサンジメタノールを含み、当該ジオール成分中の当該1,4-シクロヘキサンジメタノールの割合が50mol%以上である、請求項1記載のシーラントフィルム。
【請求項3】
ポリエステル層X同士を重ねて、160℃/100℃(上/下のシールバー温度)、0.2MPa、2秒の条件で加熱加圧してシールした時のヒートシール強度が、19N/15mm以上である、請求項1に記載のシーラントフィルム。
【請求項4】
前記共重合ポリエステル(x-1)のジオール成分が、エチレングリコールを含む、請求項1に記載のシーラントフィルム。
【請求項5】
前記共重合ポリエステル(x-1)の前記脂環式ジオールが、1,1-シクロヘキサンジメタノール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,2-シクロヘキサンジオール及び1,4-シクロヘキサンジオールからなる群から選ばれる1種以上である、請求項1に記載のシーラントフィルム。
【請求項6】
前記共重合ポリエステル(y-1)のジオール成分が、エチレングリコールを含む、請求項1に記載のシーラントフィルム。
【請求項7】
前記共重合ポリエステル(y-1)の前記その他のジカルボン酸成分が、イソフタル酸を含む、請求項1に記載のシーラントフィルム。
【請求項8】
前記ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート(A)の各層における含有量が3~15質量%である、請求項1に記載のシーラントフィルム。
【請求項9】
前記ポリエステル層Xに含まれる全ポリエステル(共重合ポリエステルを包含する)中の、全ジオール成分の合計含有量(100mol%)に対する、共重合成分となる全脂環式ジオールの合計含有量の割合(共重合成分となる脂環式ジオール/全ジオール成分)が、10~30mol%である、請求項1に記載のシーラントフィルム。
【請求項10】
前記ポリエステル層Yに含まれる全ポリエステル(共重合ポリエステルを包含する)中の、全ジカルボン酸成分の合計含有量(100mol%)に対する、共重合成分となる全その他のジカルボン酸成分の合計含有量の割合(共重合成分となるその他のジカルボン酸成分/全ジカルボン酸成分)が、5~20mol%である、請求項1に記載のシーラントフィルム。
【請求項11】
前記ポリエステル層Xに含まれる全ポリエステル(共重合ポリエステルを包含する)中の全ジオール成分に対する共重合成分となる全その他のジオール成分の含有量割合(mol%)と全ジカルボン酸成分に対する共重合成分となる全その他のジカルボン酸成分の含有量割合(mol%)との合計含有量割合(mol%)は、前記ポリエステル層Yに含まれる全ポリエステル(共重合ポリエステルを包含する)中の全ジオール成分に対する共重合成分となる全その他のジオール成分の含有量割合(mol%)と全ジカルボン酸成分に対する共重合成分となる全その他のジカルボン酸成分の含有量割合(mol%)との合計含有量割合(mol%)と同じか又はより高い、請求項1に記載のシーラントフィルム。
【請求項12】
前記ポリエステル層Yに含まれる全ポリエステル(共重合ポリエステルを包含する)中の全ジオール成分に対する共重合成分となる全その他のジオール成分の含有量割合(mol%)と全ジカルボン酸成分に対する共重合成分となる全その他のジカルボン酸成分の含有量割合(mol%)との合計含有量割合(mol%)は、前記ポリエステル層Zに含まれる全ポリエステル(共重合ポリエステルを包含する)中の全ジオール成分に対する共重合成分となる全その他のジオール成分の含有量割合(mol%)と全ジカルボン酸成分に対する共重合成分となる全その他のジカルボン酸成分の含有量割合(mol%)との合計含有量割合(mol%)と同じか又はより高い、請求項1に記載のシーラントフィルム。
【請求項13】
前記ポリエステル層Z上にバリア層を有する、請求項1に記載のシーラントフィルム。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載のシーラントフィルムを有する包装材料。
【請求項15】
請求項1~13のいずれか一項に記載のシーラントフィルムを少なくとも一層として有する積層体。
【請求項16】
請求項15に記載の積層体を少なくとも一部に有する包装材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シーラントフィルム、包装材料及び積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
熱融着可能なフィルムは、シーラントフィルムなどと呼ばれ、それ自体が各種包装材として用いられたり、或いは、当該シーラントフィルムを積層した積層フィルムが各種包装材として用いられたりしている。
従来のシーラントフィルムは、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を主原料とした無延伸フィルムやポリプロピレン(PP)を主原料とした無延伸フィルム(CPP)が一般的に使用されてきた。しかし、最近は、保香性や耐熱性に優れている点などから、ポリエステルを主原料としたポリエステル系シーラントフィルムが種々開発されている。
【0003】
ポリエステルは、耐熱性、耐候性、機械的強度、透明性、耐薬品性、ガスバリア性などの性質に優れており、かつ、価格的に入手し易いことから、汎用性が高く、現在、飲料・食品用容器や包装材料、成形品、フィルムなどに広く利用されている樹脂である。
【0004】
ポリエステルを主原料としたシーラントフィルムに関しては、例えば特許文献1や特許文献2などにおいて、ポリエチレンテレフタレート(PET)にシール性を付与したポリエステル系フィルムが開示されている。
特許文献3には、極めて優れたヒートシール強度を有する、リサイクル性に優れたポリエステル系シーラントフィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2014/175313号パンフレット
【特許文献2】特許第6724447号公報
【特許文献3】特開2022-26808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1~3に開示されているようなポリエステル系のシーラントフィルムは、種々の有機化合物との親和性が低いために包装内容物の成分を吸着しにくいという利点を持っている。また、透明バリア蒸着PET等他のポリエステル系基材フィルムを積層させたり、バリア蒸着や印刷加工技術を適用させたりすることにより、ポリエステル材料からなる単一材料系での包装材料を実現できるため、高リサイクル性にも期待することができる。
【0007】
しかしながら、特許文献1及び2に記載のシーラント用途ポリエステル系フィルムは、シール強度としては低く、市場の要求を満たすものではなかった。
また、特許文献3に記載のポリエステル系シーラントフィルムは、極めて高いシール強度を有する一方、包装材とした際に耐落下性に劣る傾向があることが分かってきた。フィルムのシール強度が高くても、耐落下性に劣る場合、例えば液体物を包装した際に破袋する可能性が生じるという問題を抱えていた。
【0008】
本発明の目的は、高いシール強度を有し、包装材とした際の耐落下性にも優れたシーラントフィルム、当該シーラントフィルムを用いた包装材料及び積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明が提案するシーラントフィルム、当該シーラントフィルムを用いた包装材料及び積層体は、上記課題を解決するために、次の構成を有する。
【0010】
[1]本発明の第1の態様は、ポリエステル層X、ポリエステル層Y及びポリエステル層Zをこの順に有する、少なくとも三層からなる積層フィルムであって、
前記ポリエステル層Xが、ジカルボン酸成分及びジオール成分の共重合体からなる共重合ポリエステル(x-1)を含み、前記ジカルボン酸成分がテレフタル酸を含み、かつ、前記ジオール成分が脂環式ジオールを含み、当該ジオール成分中の当該脂環式ジオールの割合が0mol%より大きく50mol%未満であり、
前記ポリエステル層Yが、ジカルボン酸成分及びジオール成分の共重合体からなる共重合ポリエステル(y-1)を含み、前記ジカルボン酸成分がテレフタル酸及びその他のジカルボン酸成分を含み、
前記ポリエステル層Zが、ホモポリエチレンテレフタレート(z-1)を主成分樹脂として含み、
前記ポリエステル層X及び/又は前記ポリエステル層Zが、ポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレート(A)を含む、シーラントフィルムである。
【0011】
[2]本発明の第2の態様は、前記第1の態様において、前記ポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレート(A)は、ジカルボン酸成分及びジオール成分からなり、前記ジカルボン酸成分がテレフタル酸を含み、かつ、前記ジオール成分が1,4-シクロヘキサンジメタノールを含み、当該ジオール成分中の当該1,4-シクロヘキサンジメタノールの割合が50mol%以上である、シーラントフィルムである。
【0012】
[3]本発明の第3の態様は、前記第1又は第2の態様において、ポリエステル層X同士を重ねて、160℃/100℃(上/下のシールバー温度)、0.2MPa、2秒の条件で加熱加圧してシールした時のヒートシール強度が、19N/15mm以上である、シーラントフィルムである。
【0013】
[4]本発明の第4の態様は、前記第1~3のいずれか1の態様において、前記共重合ポリエステル(x-1)のジオール成分が、エチレングリコールを含む、シーラントフィルムである。
[5]本発明の第5の態様は、前記第1~4のいずれか1の態様において、前記共重合ポリエステル(x-1)の前記脂環式ジオールが、1,1-シクロヘキサンジメタノール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,2-シクロヘキサンジオール及び1,4-シクロヘキサンジオールからなる群から選ばれる1種以上である、シーラントフィルムである。
【0014】
[6]本発明の第6の態様は、前記第1~5のいずれか1の態様において、前記共重合ポリエステル(y-1)のジオール成分が、エチレングリコールを含む、シーラントフィルムである。
[7]本発明の第7の態様は、前記第1~6のいずれか1の態様において、前記共重合ポリエステル(y-1)の前記その他のジカルボン酸成分が、イソフタル酸を含む、シーラントフィルムである。
【0015】
[8]本発明の第8の態様は、前記第1~7のいずれか1の態様において、前記ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート(A)の各層における含有量が3~15質量%である、シーラントフィルムである。
【0016】
[9]本発明の第9の態様は、前記第1~8のいずれか1の態様において、前記ポリエステル層Xに含まれる全ポリエステル(共重合ポリエステルを包含する)中の、全ジオール成分の合計含有量(100mol%)に対する共重合成分となる全脂環式ジオールの合計含有量の割合(共重合成分となる脂環式ジオール/全ジオール成分)が、10~30mol%である、シーラントフィルムである。
【0017】
[10]本発明の第10の態様は、前記第1~9のいずれか1の態様において、前記ポリエステル層Yに含まれる全ポリエステル(共重合ポリエステルを包含する)中の、全ジカルボン酸成分の合計含有量(100mol%)に対する、共重合成分となる全その他のジカルボン酸成分の合計含有量の割合(共重合成分となるその他のジカルボン酸成分/全ジカルボン酸成分)が、5~20mol%である、シーラントフィルムである。
【0018】
[11]本発明の第11の態様は、前記第1~10のいずれか1の態様において、前記ポリエステル層Xに含まれる全ポリエステル(共重合ポリエステルを包含する)中の全ジオール成分に対する共重合成分となる全その他のジオール成分の含有量割合(mol%)と全ジカルボン酸成分に対する、共重合成分となる全その他のジカルボン酸成分の含有量割合(mol%)との合計含有量割合(mol%)は、前記ポリエステル層Yに含まれる全ポリエステル(共重合ポリエステルを包含する)中の全ジオール成分に対する共重合成分となる全その他のジオール成分の含有量割合(mol%)と全ジカルボン酸成分に対する共重合成分となる全その他のジカルボン酸成分の含有量割合(mol%)との合計含有量割合(mol%)と同じか又はより高い、シーラントフィルムである。
【0019】
[12]本発明の第12の態様は、前記第1~11のいずれか1の態様において、前記ポリエステル層Yに含まれる全ポリエステル(共重合ポリエステルを包含する)中の全ジオール成分に対する共重合成分となる全その他のジオール成分の含有量割合(mol%)と全ジカルボン酸成分に対する共重合成分となる全その他のジカルボン酸成分の含有量割合(mol%)との合計含有量割合(mol%)は、前記ポリエステル層Zに含まれる全ポリエステル(共重合ポリエステルを包含する)中の全ジオール成分に対する共重合成分となる全その他のジオール成分の含有量割合(mol%)と全ジカルボン酸成分に対する共重合成分となる全その他のジカルボン酸成分の含有量割合(mol%)との合計含有量割合(mol%)と同じか又はより高い、シーラントフィルムである。
【0020】
[13]本発明の第13の態様は、前記第1~12のいずれか1の態様において、前記ポリエステル層Z上にバリア層を有する、シーラントフィルムである。
【0021】
[14]本発明の第14の態様は、前記第1~13のいずれか1の態様のシーラントフィルムを有する包装材料である。
[15]本発明の第15の態様は、前記第1~13のいずれか1の態様のシーラントフィルムを少なくとも一層として有する積層体である。
[16]本発明の第16の態様は、前記第15の態様の積層体を少なくとも一部に有する包装材料である。
【発明の効果】
【0022】
本発明が提案するシーラントフィルムは、高いシール強度を有し、包装材とした際の耐落下性にも優れていることから、各種包装材料として好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態の一例について説明する。但し、本発明が、次に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0024】
<<本シーラントフィルム>>
本発明の実施形態の一例に係るシーラントフィルム(以下、「本シーラントフィルム」とも称する。)は、ポリエステル層X、ポリエステル層Y及びポリエステル層Zをこの順に有する、少なくとも三層を備えた積層フィルムであり、前記ポリエステル層X及び/又は前記ポリエステル層Zが、ポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレート(A)を含むものである。
【0025】
本シーラントフィルムは、ポリエステル層X、ポリエステル層Y及びポリエステル層Z以外の「他の層」を備えることも可能である。例えばポリエステル層Zの外側にバリア層を設けたりすることができる。但し、これらに限定するものではない。
前記「他の層」が樹脂成分を有する場合、リサイクル性の観点からは、当該樹脂成分はポリエステルであるのが好ましい。
【0026】
本シーラントフィルムは、無延伸フィルム(シート)であっても延伸フィルムであってもよい。中でも、一軸方向又は二軸方向に延伸された延伸フィルムであるのが好ましい。その中でも、力学特性のバランスや平面性に優れる点で、二軸延伸フィルムであるのが好ましい。
【0027】
ジオール成分の主成分として1,4-シクロヘキサンジメタノールを含むポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレート(A)は、1,4-シクロヘキサンジメタノールの脂環式構造が複数立体配座を有するため、包装材の内外において衝撃を受けやすい層(すなわち、シーラントフィルムの最外層であるポリエステル層X及び/又はポリエステル層Z)がポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレート(A)を含有することにより、包装材とした際の耐落下性を高めることができる。
但し、中間層であるポリエステル層Yがポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレート(A)を含有することは任意に可能である。
【0028】
<ポリエステル層X>
前記ポリエステル層Xは、シール層として機能し得る層であり、ジカルボン酸成分及びジオール成分の共重合体からなる共重合ポリエステル(x-1)を含み、好ましくは共重合ポリエステル(x-1)を主成分樹脂として含み、必要に応じて、ポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレート(A)及びホモポリエステル(x-2)のうちの何れか又は二種類以上を含んでもよい。必要に応じてさらに「その他の成分」を含んでもよい。
【0029】
なお、本発明において、「ジカルボン酸成分及びジオール成分の共重合体からなる共重合ポリエステル」とは、共重合成分を有する共重合ポリエステルの意味である。すなわち、2種類以上のジカルボン酸成分と1種類のジオール成分、1種類のジカルボン酸成分と2種類以上のジオール成分、又は、2種類以上のジカルボン酸成分と2種類以上のジオール成分とが共重合してなるポリエステルを包含する意味である。
また、共重合ポリエステルが2種類以上のジカルボン酸成分を含む場合、ジカルボン酸成分のうちで、含有量が最も多いジカルボン酸成分以外のジカルボン酸成分を「その他のジカルボン酸成分」又は「ジカルボン酸共重合成分」又は「共重合成分となるその他のジカルボン酸成分」と称し、2種類以上のジオール成分を含む場合、ジオール成分のうちで、含有量が最も多いジオール成分以外のジオール成分を「その他のジオール成分」又は「ジオール共重合成分」又は「共重合成分となるその他のジオール成分」と称する。
【0030】
前記「主成分樹脂」とは、ポリエステル層Xを構成する樹脂の中で最も質量割合の多い樹脂を意味し、例えばポリエステル層Xを構成する樹脂の30質量%以上、中でも40質量%以上、中でも50質量%以上、中でも60質量%以上、中でも70質量%以上、中でも80質量%以上、中でも90質量%以上、中でも100質量%を占める場合を想定することができる。
本発明において「樹脂」とは、重合体(共重合体を含む)の意味であり、言い換えれば、プラスチックの意味であり、ポリマー及びオリゴマーを包含する。
【0031】
(共重合ポリエステル(x-1))
共重合ポリエステル(x-1)は、ジカルボン酸成分及びジオール成分の共重合体からなり、前記ジカルボン酸成分がテレフタル酸を含み、かつ、前記ジオール成分が脂環式ジオールを含み、当該ジオール成分中の当該脂環式ジオールの割合が0mol%より大きく50mol%未満である共重合ポリエステルである。
【0032】
共重合ポリエステル(x-1)は、ジカルボン酸成分として、テレフタル酸以外のジカルボン酸、すなわち「その他のジカルボン酸成分」を含んでいてもよい。
前記「その他のジカルボン酸成分」としては、例えば芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、多官能酸などを挙げることができる。より具体的には、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸;アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、エイコ酸及びそれらの誘導体などの脂肪族ジカルボン酸;1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,2-シクロペンタンジカルボン酸、シクロオクタンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸又はダイマー酸が好ましい。
なお、「その他のジカルボン酸成分」は、1種を単独で含んでもよいし、2種以上の組み合わせとして含んでもよい。
【0033】
共重合ポリエステル(x-1)において、ジカルボン酸成分の合計、すなわち、テレフタル酸及び「その他のジカルボン酸成分」の合計に占める「その他のジカルボン酸成分」の割合は、0~15mol%であるのが好ましく、中でも7mol%以下、その中でも3mol%以下であるのがさらに好ましい。
他方、共重合ポリエステル(x-1)において、ジカルボン酸成分の合計、すなわち、テレフタル酸及び「その他のジカルボン酸成分」の合計に占めるテレフタル酸の割合は、100mol%以下85mol%以上であるのが好ましく、中でも93mol%以上、その中でも97mol%以上であるのがさらに好ましい。
なお、ここで「その他のジカルボン酸成分」を2種以上併用する場合は、それらの合計量を意味する。
【0034】
共重合ポリエステル(x-1)を構成する前記脂環式ジオールとしては、例えば1,1-シクロヘキサンジメタノール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,2-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオールなどを挙げることができる。これらの中でも、メチロール基がパラ位にある1,4-シクロヘキサンジメタノールが、優れた安定性の観点から特に好ましい。
脂環式ジオール、特にシクロヘキサンジメタノールが共重合しているポリエステルは、固有粘度(IV)が高く、より優れた機械的特性を示すことができる。また、当該ポリエステルは、複数立体配座を有するため、衝撃を受けた際にシクロヘキサンの配座変換が起こることにより、衝撃エネルギーが吸収され、分子鎖の破壊が起こりにくく、耐落下性を付与することができる。
【0035】
共重合ポリエステル(x-1)を構成するジオール成分中の脂環式ジオール以外のジオール成分としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、オクタメチレングリコール、デカメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、2-エチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等の脂肪族ジオールを挙げることができる。
また、上記以外にも、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノール及びそれらの誘導体などを用いてもよい。
これらのジオール成分は、1種又は2種以上を使用することができ、中でもエチレングリコールと脂環式ジオールとの組み合わせが、共重合のしやすさ、耐熱性及びフィルム強度などの観点から特に好ましい。
【0036】
なお、通常、エチレングリコールを原料の1つとしてポリエステルを製造(重縮合)する場合、エチレングリコールの一部が変性してジエチレングリコールとなってポリエステル骨格に導入される。このジエチレングリコールを「副生ジエチレングリコール」と称し、その副生量は、重縮合の様式(エステル交換法、直接重縮合)等によっても異なるが、エチレングリコールのうち1~5mol%程度である。よって、本発明においては、エチレングリコールを原料の1つとするポリエステル(共重合ポリエステルを含む)を構成するジオール成分100mol%中5mol%以下のジエチレングリコールは、エチレングリコールに包含するものとする。
【0037】
共重合ポリエステル(x-1)において、ジオール成分の合計、すなわち、脂環式ジオール及び脂環式ジオール以外のジオール成分の合計に占める「脂環式ジオール」の合計含有量割合(脂環式ジオール/ジオール成分)は、15mol%以上45mol%以下であるのが好ましく、中でも20mol%以上或いは43mol%以下、その中でも25mol%以上或いは40mol%以下であるのがさらに好ましい。
他方、共重合ポリエステル(x-1)において、ジオール成分の合計、すなわち、脂環式ジオール及び脂環式ジオール以外のジオール成分の合計に占める脂環式ジオール以外のジオール成分の割合(脂環式ジオール以外のジオール/ジオール成分)は、85mol%以下55mol%以上であるのが好ましく、中でも80mol%以下或いは57mol%以上、その中でも75mol%以下或いは60mol%以上であるのがさらに好ましい。
なお、ここで、脂環式ジオール以外のジオール成分の含有量は、脂環式ジオール以外のジオール成分を2種以上併用する場合は、それらの合計量を意味する。
また、上述のとおり、ジオール成分のうちで、含有量が最も多いジオール成分以外のジオール成分を「その他のジオール成分」又は「ジオール共重合成分」又は「共重合成分となるその他のジオール成分」と称することから、例えば、脂環式ジオール以外のジオール成分が1種であり、かつ、上記含有割合を満たす場合には、「脂環式ジオール」が「その他のジオール成分」又は「ジオール共重合成分」又は「共重合成分となるその他のジオール成分」に相当する。
【0038】
(ポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレート(A))
前記ポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレート(A)は、ジカルボン酸成分及びジオール成分からなり、前記ジカルボン酸成分がテレフタル酸を含み、かつ、前記ジオール成分が1,4-シクロヘキサンジメタノール(「CHDM」とも称する)を含み、当該ジオール成分中の当該1,4-シクロヘキサンジメタノールの割合が50mol%以上であるポリエステルである。
【0039】
ポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレート(A)は、ジカルボン酸成分として、テレフタル酸以外のジカルボン酸、すなわち「その他のジカルボン酸成分」を含んでいてもよい。
前記「その他のジカルボン酸成分」としては、例えばイソフタル酸、フタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,5-フランジカルボン酸、2,4-フランジカルボン酸、3,4-フランジカルボン酸、ベンゾフェノンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、3,3’-ジフェニルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸等を挙げることができ、中でも共重合のしやすさ、耐熱性及びフィルム強度などの観点からイソフタル酸が特に好ましい。
なお、「その他のジカルボン酸成分」は、1種を単独で含んでもよいし、2種以上の組み合わせとして含んでもよい。
【0040】
ポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレート(A)において、ジカルボン酸成分の合計、すなわち、テレフタル酸及び「その他のジカルボン酸成分」の合計に占める「その他のジカルボン酸成分」の割合(その他のジカルボン酸/ジカルボン酸成分)は、0~15mol%であるのが好ましく、中でも10mol%以下、その中でも8mol%以下であるのがさらに好ましい。
他方、ポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレート(A)において、ジカルボン酸成分の合計、すなわち、テレフタル酸及び「その他のジカルボン酸成分」の合計に占めるテレフタル酸の割合(テレフタル酸/ジカルボン酸成分)は、100mol%以下85mol%以上であるのが好ましく、中でも90mol%以上、その中でも92mol%以上であるのがさらに好ましい。
なお、ここで「その他のジカルボン酸成分」を2種以上併用する場合は、それらの合計量を意味する。
【0041】
ポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレート(A)は、ジオール成分として、1,4-シクロヘキサンジメタノール以外のジオール成分、すなわち「その他のジオール成分」を含んでいてもよい。
前記「その他のジオール成分」としては、例えば1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、ヒドロキノン、ビスフェノール、スピログリコール、2,2,4,4,-テトラメチルシクロブタン-1,3-ジオール、イソソルバイド等を挙げることができ、中でも共重合のしやすさ、耐熱性及びフィルム強度などの観点からエチレングリコールが特に好ましい。
なお、「その他のジオール成分」は、1種を単独で含んでもよいし、2種以上の組み合わせとして含んでもよい。
【0042】
ポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレート(A)において、ジオール成分の合計、すなわち、1,4-シクロヘキサンジメタノール及び「その他のジオール成分」の合計に占める1,4-シクロヘキサンジメタノールの割合(CHDM/ジオール成分)は、100mol%以下50mol%以上であればよく、中でも85mol%以上であるのが好ましく、その中でも90mol%以上、その中でも92mol%以上であるのがさらに好ましい。
他方、ポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレート(A)において、ジオール成分の合計、すなわち、1,4-シクロヘキサンジメタノール及び「その他のジオール成分」の合計に占める「その他のジオール成分」の割合は、0~50mol%であればよく、中でも15mol%以下あるのが好ましく、その中でも10mol%以下、その中でも8mol%以下であるのがさらに好ましい。
なお、ここで「その他のジオール成分」を2種以上併用する場合は、それらの合計量を意味する。
【0043】
したがって、ポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレート(A)としては、ジカルボン酸成分がテレフタル酸からなり、かつ、ジオール成分が1,4-シクロヘキサンジメタノールからなるホモポリエステルや、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸及びイソフタル酸を含み、かつ、ジオール成分として1,4-シクロヘキサンジメタノールを含む共重合ポリエステル、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸を含み、かつ、ジオール成分として1,4-シクロヘキサンジメタノール及びエチレングリコールを含む共重合ポリエステルが好ましく、中でも、耐落下性とシール強度を両立させる観点から、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸及びイソフタル酸を含み、かつ、ジオール成分として1,4-シクロヘキサンジメタノールを含む共重合ポリエステルが特に好ましい。
【0044】
耐熱性と溶融成形性の観点から、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート(A)のガラス転移温度は、60℃~150℃であることが好ましく、中でも70℃以上或いは120℃以下であることがさらに好ましい。
このように、ガラス転移温度が比較的高いポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート(A)をポリエステル層Xに含有させることにより、耐落下性に加えて本シーラントフィルムの耐熱性を高めることができる。
【0045】
前記ガラス転移温度(Tg)は、JIS K7121に定められている方法に準拠して求められ、低温側ベースライン及び高温側ベースラインをそれぞれ延長した直線から縦軸方向に等距離にある直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線とが交わる点の温度(中間点ガラス転移温度)である。
【0046】
より優れた機械的特性を付与する観点から、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート(A)の固有粘度(IV)は、0.50~1.00dL/g以下であるのが好ましく、中でも0.60dL/g以上或いは0.90dL/g以下、その中でも0.70dL/g以上或いは0.80dL/g以下であるのがさらに好ましい。
前記固有粘度(IV)は、ポリエステルをフェノール:テトラクロロエタンの1:1混合溶液に溶かし、このポリエステル溶液の溶出時間から固有粘度(IV)を算出する方法で測定する値である。
【0047】
(ポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレート(A)の含有割合)
ポリエステル層Xが、ポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレート(A)を含有する場合、耐落下性を向上させる観点から、ポリエステル層Xにおけるポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート(A)の含有量は、3質量%以上であるのが好ましく、中でも4質量%以上、その中でも5質量%以上であるのがさらに好ましい。他方、シール強度との両立の観点から、15質量%以下であるのが好ましく、中でも12質量%以下、その中でも10質量%以下であるのがさらに好ましい。
また、ポリエステル層Xが、ポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレート(A)を含有する場合、耐落下性を向上させる観点から、ポリエステル層Xにおけるポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレート(A)の含有量は、共重合ポリエステル(x-1)の含有量100質量部に対して、5質量部以上であるのが好ましく、中でも6質量部以上、その中でも7質量部以上であるのがさらに好ましい。他方、シール強度との両立の観点から、12質量部以下であるのが好ましく、中でも11質量部以下、その中でも10質量部以下であるのがさらに好ましい。
【0048】
(ホモポリエステル(x-2))
ポリエステル層Xは、必要に応じて、共重合ポリエステル(x-1)及びポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレート(A)以外の樹脂として、ホモポリエステル(x-2)を含んでいてもよい。
ここで、「ホモポリエステル」とは、1種類のジカルボン酸成分と1種類のジオール成分とが重縮合してなるポリエステルの意味である。
【0049】
ホモポリエステル(x-2)におけるジカルボン酸成分としては、例えば芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、多官能酸などを挙げることができる。より具体的には、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸;アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、エイコ酸及びそれらの誘導体などの脂肪族ジカルボン酸;1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,2-シクロペンタンジカルボン酸、シクロオクタンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸又はダイマー酸が好ましい。
【0050】
ホモポリエステル(x-2)におけるジオール成分としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、オクタメチレングリコール、デカメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、2-エチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等の脂肪族ジオールを挙げることができる。
また、上記以外にも、1,1-シクロヘキサンジメタノール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,2-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノール及びそれらの誘導体などを用いてもよい。
【0051】
中でも、耐熱性及びフィルム強度の観点から、ホモポリエステル(x-2)はホモポリエチレンテレフタレート(単に「ポリエチレンテレフタレート」とも称する。)であるのが好ましい。
なお、この場合のホモポリエチレンテレフタレートにも、1~5mol%の副生ジエチレングリコールが含まれる可能性がある。
【0052】
ポリエステル層Xにおいて、ホモポリエステル(x-2)の含有量は、共重合ポリエステル(x-1)100質量部に対して、1~60質量部であるのが好ましく、中でも5質量部以上或いは55質量部以下、その中でも10質量部以上或いは50質量部以下であるのがさらに好ましい。
【0053】
(その他の成分)
ポリエステル層Xは、必要に応じて、上記以外の成分(「その他の成分」と称する。)を含有してもよい。
「その他の成分」としては、例えば無機粒子、有機粒子、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、熱安定剤などを挙げることができる。
【0054】
ポリエステル層X中に無機粒子を含ませることにより、易滑性の付与及び各工程での傷発生防止を図ることができる。
前記無機粒子としては、例えばシリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、カオリン、酸化アルミニウム、酸化チタン等を挙げることができる。
また、無機粒子の含有量は、特に限定するものではないが、ポリエステル層X中に0質量%~0.5質量%、特に0質量%~0.4質量%、さらに0質量%~0.3質量%を含有させることが好ましい。
【0055】
(ポリエステル層Xにおけるジカルボン酸成分、ジオール成分の割合)
ポリエステル層Xに含まれる全ポリエステル(共重合ポリエステルを包含する)中の、全ジオール成分の合計含有量(100mol%)に対する、共重合成分となる全脂環式ジオールの合計含有量の割合(共重合成分となる脂環式ジオール/全ジオール成分)は、耐落下性やシール強度を向上させる観点から、10mol%以上であるのが好ましく、15mol%以上であるのがより好ましく、20mol%以上であるのがさらに好ましい。他方、耐熱性やフィルム強度を保つ観点から、30mol%以下であるのが好ましく、28mol%以下であるのがより好ましく、26mol%以下であるのがさらに好ましい。
【0056】
中でも、ポリエステル層Xが、ポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレート(A)を含有する場合、ポリエステル層Xに含まれる全ポリエステル(共重合ポリエステルを包含する)中の、全ジオール成分の合計含有量(100mol%)に対する、全1,4-シクロヘキサンジメタノールの合計含有量の割合(CHDM/全ジオール成分)は、耐落下性やシール強度を向上させる観点から、10mol%以上であるのが好ましく、15mol%以上であるのがより好ましく、20mol%以上であるのがさらに好ましい。他方、耐熱性やフィルム強度を保つ観点から、40mol%以下であるのが好ましく、37mol%以下であるのがより好ましく、35mol%以下であるのがさらに好ましい。
【0057】
ポリエステル層Xに含まれる全ポリエステル(共重合ポリエステルを包含する)中の、全ジオール成分の合計含有量(100mol%)に対する、全エチレングリコールの合計含有量の割合(エチレングリコール/全ジオール成分)は、耐熱性やフィルム強度を向上させる観点から、60mol%以上であるのが好ましく、63mol%以上であるのがより好ましく、65mol%以上であるのがさらに好ましい。他方、耐落下性やシール強度を付与する観点から、90mol%以下であるのが好ましく、85mol%以下であるのがより好ましく、80mol%以下であるのがさらに好ましい。
なお、上述したように、エチレングリコールを原料の1つとするポリエステル(共重合ポリエステルを含む)を構成するジオール成分100mol%中5mol%以下のジエチレングリコールは、エチレングリコールに包含するものとする。
【0058】
ポリエステル層Xに含まれる全ポリエステル(共重合ポリエステルを包含する)中の、全ジカルボン酸成分の合計含有量(100mol%)に対する、全テレフタル酸の合計含有量の割合(テレフタル酸/全ジカルボン酸成分)は、シール強度、耐落下性、耐熱性及びフィルム強度を両立させる観点から、100mol%以下85mol%以上であるのが好ましく、90mol%以上であるのがより好ましく、95mol%以上であるのがさらに好ましい。
【0059】
ポリエステル層Xに含まれる全ポリエステル(共重合ポリエステルを包含する)中の、全ジカルボン酸成分の合計含有量(100mol%)に対する、全ジカルボン酸共重合成分の割合、すなわち、共重合成分となる全その他のジカルボン酸成分、例えばテレフタル酸以外のジカルボン酸成分の合計含有量の割合(共重合成分となるその他のジカルボン酸成分/全ジカルボン酸成分)は、シール強度、耐落下性、耐熱性及びフィルム強度を両立させる観点から、0mol%以上15mol%以下であるのが好ましく、10mol%以下であるのがより好ましく、5mol%以下であるのがさらに好ましい。
【0060】
<ポリエステル層Y>
本シーラントフィルムは、中間層としての層である。
【0061】
ポリエステル層Yは、構成する樹脂が共重合ポリエステル(y-1)のみであってもよいし、さらにホモポリエステル(y-2)を含んでいてもよいし、必要に応じてさらに「その他の成分」を含んでいてもよい。
【0062】
(共重合ポリエステル(y-1))
ポリエステル層Yは、ジカルボン酸成分及びジオール成分の共重合体からなる共重合ポリエステル(y-1)を含む。
共重合ポリエステル(y-1)は、テレフタル酸及びその他のジカルボン酸成分と、ジオール成分との共重合体であるのが好ましい。
【0063】
共重合ポリエステル(y-1)における「その他のジカルボン酸成分」としては、例えば芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、多官能酸などを挙げることができる。より具体的には、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸;アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、エイコ酸及びそれらの誘導体などの脂肪族ジカルボン酸;1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,2-シクロペンタンジカルボン酸、シクロオクタンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸又はダイマー酸が好ましい。中でも、「その他のジカルボン酸成分」としてイソフタル酸を含むのが好ましい。
なお、「その他のジカルボン酸成分」は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0064】
共重合ポリエステル(y-1)において、ジカルボン酸成分の合計、すなわち、テレフタル酸及び「その他のジカルボン酸成分」の合計に占める「その他のジカルボン酸成分」の割合(その他のジカルボン酸/ジカルボン酸成分)は、5mol%以上40mol%以下であるのが好ましく、中でも10mol%以上或いは35mol%以下、その中でも15mol%以上或いは30mol%以下であるのがさらに好ましい。
他方、共重合ポリエステル(y-1)において、ジカルボン酸成分の合計、すなわち、テレフタル酸及び「その他のジカルボン酸成分」の合計に占めるテレフタル酸の割合(テレフタル酸/ジカルボン酸成分)は、95mol%以下60mol%以上であるのが好ましく、中でも90mol%以下或いは65mol%以上、その中でも85mol%以下或いは70mol%以上であるのがさらに好ましい。
なお、ここで、「その他のジカルボン酸成分」の含有量は、「その他のジカルボン酸成分」を2種以上併用する場合は、それらの合計量を意味する。
【0065】
共重合ポリエステル(y-1)におけるジオール成分としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、オクタメチレングリコール、デカメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、2-エチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等の脂肪族ジオールを挙げることができる。
また、上記以外にも、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノール及びそれらの誘導体などを用いてもよい。
共重合ポリエステル(y-1)におけるジオール成分は、1種類であっても、2種類以上であってもよいが、1種類であるのが好ましい。ジオール成分として、エチレングリコールを含むのが好ましい。
共重合ポリエステル(y-1)は、ジオール成分としてエチレングリコールを含むのが好ましい。
【0066】
共重合ポリエステル(y-1)において、ジオール成分に占めるジオール共重合成分の割合、すなわち、ジオール成分、例えばエチレングリコール及び「その他のジオール成分」の合計に占める「その他のジオール成分」の割合(その他のジオール/ジオール成分)は、0mol%以上15mol%以下であるのが好ましく、中でも7mol%以下、その中でも3mol%以下であるのがさらに好ましい。
他方、共重合ポリエステル(y-1)において、ジオール成分に占めるジオール共重合成分以外のジオール成分の割合、すなわち、ジオール成分としてエチレングリコール及び「その他のジオール成分」を含む場合であれば、エチレングリコール及び「その他のジオール成分」の合計に占めるエチレングリコールの割合(エチレングリコール/ジオール成分)は、100mol%以下85mol%以上であるのが好ましく、中でも93mol%以上、その中でも97mol%以上であるのがさらに好ましい。
なお、ここで、「その他のジオール成分」の含有量は、「その他のジオール成分」を2種以上併用する場合は、それらの合計量を意味する。
また、上述したように、エチレングリコールを原料の1つとするポリエステル(共重合ポリエステルを含む)を構成するジオール成分100mol%中5mol%以下のジエチレングリコールは、エチレングリコールに包含するものとする。
【0067】
(ホモポリエステル(y-2))
ポリエステル層Yは、必要に応じて、共重合ポリエステル(y-1)以外の樹脂として、ホモポリエステル(y-2)を含むことができる。
【0068】
ホモポリエステル(y-2)におけるジカルボン酸成分としては、例えば芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、多官能酸などを挙げることができる。より具体的には、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸;アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、エイコ酸及びそれらの誘導体などの脂肪族ジカルボン酸;1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,2-シクロペンタンジカルボン酸、シクロオクタンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸又はダイマー酸が好ましい。
【0069】
ホモポリエステル(y-2)におけるジオール成分としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、オクタメチレングリコール、デカメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、2-エチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等の脂肪族ジオールを挙げることができる。
また、上記以外にも、1,1-シクロヘキサンジメタノール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,2-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノール及びそれらの誘導体などを用いてもよい。
【0070】
中でも、耐熱性及びフィルム強度の観点から、ホモポリエステル(y-2)はホモポリエチレンテレフタレート(単に「ポリエチレンテレフタレート」とも称する。)であるのが好ましい。
なお、この場合のホモポリエチレンテレフタレートにも、1~5mol%の副生ジエチレングリコールが含まれる可能性がある。
【0071】
製造コストを抑える観点、ポリエステル層Xとポリエステル層Yとの層間親和性を高める観点、並びに、リサイクル性を高める観点から、ホモポリエステル(y-2)は、ホモポリエステル(x-2)と同じ樹脂であるのが好ましい。
【0072】
ポリエステル層Yにおいて、ホモポリエステル(y-2)の含有量は、共重合ポリエステル(y-1)の合計含有量100質量部に対して、80~120質量部であるのが好ましく、中でも85質量部以上或いは115質量部以下、その中でも90質量部以上或いは110質量部以下であるのがさらに好ましい。
【0073】
(その他の成分)
ポリエステル層Yは、必要に応じて、上記以外の成分(「その他の成分」と称する。)を含有してもよい。
「その他の成分」としては、例えばポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレート(A)、無機粒子、有機粒子、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、熱安定剤などを挙げることができる。
【0074】
前記無機粒子としては、例えばシリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、カオリン、酸化アルミニウム、酸化チタン等を挙げることができる。
また、無機粒子の含有量は、特に限定するものではないが、ポリエステル層Y中に0質量%~0.5質量%、特に0質量%~0.4質量%、さらに0質量%~0.3質量%を含有させることが好ましい。
【0075】
(ポリエステル層Yにおけるジカルボン酸成分、ジオール成分の割合)
ポリエステル層Yに含まれる全ポリエステル(共重合ポリエステルを包含する)中の、全ジオール成分の合計含有量(100mol%)に対する、共重合成分となる全その他のジオール成分、例えば脂環式ジオールの合計含有量の割合(共重合成分となるその他のジオール成分/全ジオール成分)は、耐熱性やフィルム強度を保つ観点や濃度勾配によってシール強度を高める観点から、20mol%以下であるのが好ましく、10mol%以下であるのがより好ましく、5mol%以下であるのがさらに好ましい。
なお、当該合計含有量の割合(その他のジオール成分/全ジオール成分)は、0mol%以上であればよい。
【0076】
ポリエステル層Yに含まれる全ポリエステル(共重合ポリエステルを包含する)中の、全ジオール成分の合計含有量(100mol%)に対する、全エチレングリコールの合計含有量の割合(エチレングリコール/全ジオール成分)は、耐熱性やフィルム強度を向上させる観点から、80mol%以上であるのが好ましく、90mol%以上であるのがより好ましく、95mol%以上であるのがさらに好ましい。なお、当該合計含有量の割合(エチレングリコール/全ジオール成分)は、100mol%以下であればよい。
なお、上述したように、エチレングリコールを原料の1つとするポリエステル(共重合ポリエステルを含む)を構成するジオール成分100mol%中5mol%以下のジエチレングリコールは、エチレングリコールに包含するものとする。
【0077】
ポリエステル層Yに含まれる全ポリエステル(共重合ポリエステルを包含する)中の、全ジカルボン酸成分の合計含有量(100mol%)に対する、全ジカルボン酸共重合成分の割合、すなわち、共重合成分となる全その他のジカルボン酸成分、例えばテレフタル酸以外のジカルボン酸成分の合計含有量の割合(共重合成分となるその他のジカルボン酸成分/全ジカルボン酸成分)は、優れたシール強度を付与する観点から、5mol%以上であるのが好ましく、7mol%以上であるのがより好ましく、9mol%以上であるのがさらに好ましい。他方、耐熱性やフィルム強度を保つ観点や濃度勾配によってシール強度を高める観点から、20mol%以下であるのが好ましく、15mol%以下であるのがより好ましく、13mol%以下であるのがさらに好ましい。
【0078】
ポリエステル層Yに含まれる全ポリエステル(共重合ポリエステルを包含する)中の、全ジカルボン酸成分の合計含有量(100mol%)に対する、全テレフタル酸の合計含有量の割合(テレフタル酸/全ジカルボン酸成分)は、耐熱性やフィルム強度を向上させる観点から、80mol%以上であるのが好ましく、85mol%以上であるのがより好ましく、87mol%以上であるのがさらに好ましい。他方、シール強度とのバランスの観点から、95mol%以下であるのが好ましく、93mol%以下であるのがより好ましく、91mol%以下であるのがさらに好ましい。
【0079】
(ポリエステル層Xとポリエステル層Yの関係性)
ポリエステル層Xに含まれる全ポリエステル(共重合ポリエステルを包含する)中の全ジオール成分に対する、共重合成分となる全その他のジオール成分の含有量割合(共重合成分となるその他のジオール成分/全ジオール成分、mol%)と、全ジカルボン酸成分に対する、共重合成分となる全その他のジカルボン酸成分の含有量割合(共重合成分となるその他のジカルボン酸成分/全ジカルボン酸、mol%)との合計含有量割合(mol%)(「ポリエステル層Xの全共重合成分割合」と称する。)は、前記ポリエステル層Yに含まれる全ポリエステル(共重合ポリエステルを包含する)中の全ジオール成分に対する、共重合成分となる全その他のジオール成分の含有量割合(共重合成分となるその他のジオール成分/全ジオール成分、mol%)と、全ジカルボン酸成分に対する共重合成分となる全その他のジカルボン酸成分の含有量割合(共重合成分となるその他のジカルボン酸成分/全ジカルボン酸、mol%)との合計含有量割合(mol%)(「ポリエステル層Yの全共重合成分割合」と称する。)と同じか又はより高いことが好ましい。
【0080】
この際、前記ポリエステル層Xの全共重合成分割合と、前記ポリエステル層Yの全共重合成分割合との差は、シール層として機能し得るポリエステル層Xのシール強度を向上させる観点から、7mol%以上であるのが好ましく、中でも8mol%以上、中でも9mol%以上であるのがさらに好ましい。他方、ポリエステル層Xとポリエステル層Yとの層間親和性を高める観点から、20mol%以下であるのが好ましく、中でも18mol%以下、中でも16mol%以下であるのがさらに好ましい。
【0081】
ポリエステル層Yの厚みは、シール強度を高める観点から、ポリエステル層Xの厚み100%に対して200%以上であるのが好ましく、中でも250%以上、中でも300%以上であるのがさらに好ましい。他方、耐落下性とシール強度のバランスの観点から、450%以下であるのが好ましく、中でも400%以下、中でも350%以下であるのがさらに好ましい。
【0082】
<ポリエステル層Z>
本シーラントフィルムにおいて、ポリエステル層Zは、本シーラントフィルムを包装材料などとして用いた場合に、内容物側とは反対側すなわち外側になる層である。
【0083】
前記ポリエステル層Zは、ホモポリエチレンテレフタレート(z-1)を主成分樹脂として含有し、必要に応じてポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレート(A)を含む層であるのが好ましい。
ポリエステル層Zがホモポリエチレンテレフタレート(z-1)を主成分樹脂として含有することで、耐熱性やフィルム強度などを良好なものとすることができる。
この場合のホモポリエチレンテレフタレートにも、5mol%以下の副生ジエチレングリコールが含まれる。
また、ポリエステル層Zがポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレート(A)を含むことで、耐落下性を向上させることができる。
【0084】
なお、前記「主成分樹脂」とは、ポリエステル層Zを構成する樹脂のうち最も含有割合の多い樹脂の意味である。当該主成分樹脂は、ポリエステル層Zを構成する樹脂のうち50質量%以上、中でも70質量%以上、その中でも80質量%以上(100質量%を含む)を占める場合がある。
【0085】
製造コストを抑える観点、ポリエステル層X及びポリエステル層Yとポリエステル層Zとの層間親和性を高める観点、並びに、リサイクル性を高める観点から、前記ホモポリエステル(x-2)、前記ホモポリエステル(y-2)及びホモポリエチレンテレフタレート(z-1)は、同じ樹脂であるのが好ましい。
【0086】
ポリエステル層Zは、構成する樹脂がホモポリエチレンテレフタレート(z-1)のみであってもよいし、ホモポリエチレンテレフタレート(z-1)及びポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレート(A)以外の樹脂(z-2)を含むものであってもよい。
【0087】
(ポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレート(A))
ポリエステル層Zが含有するポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレート(A)は、ポリエステル層Xが含有するポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレート(A)と同様である。
【0088】
ポリエステル層Zが、ポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレート(A)を含有する場合、前記ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート(A)の含有量が、ポリエステル層Zにおいて、耐落下性を向上させる観点から、3質量%以上であるのが好ましく、中でも4質量%以上、その中でも5質量%以上であるのがさらに好ましい。他方、耐熱性との両立の観点から、15質量%以下であるのが好ましく、中でも12質量%以上、その中でも10質量%以上であるのがさらに好ましい。
【0089】
(その他の成分)
ポリエステル層Zは、必要に応じて、上記以外の成分(「その他の成分」と称する。)を含有してもよい。
「その他の成分」としては、例えば無機粒子、有機粒子、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、熱安定剤などを挙げることができる。
【0090】
ポリエステル層Z中に無機粒子を含ませることにより、易滑性の付与及び各工程での傷発生防止を図ることができる。
前記無機粒子としては、例えばシリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、カオリン、酸化アルミニウム、酸化チタン等を挙げることができる。
また、無機粒子の含有量は、特に限定するものではないが、ポリエステル層Z中に0質量%~0.5質量%、特に0質量%~0.4質量%、さらに0質量%~0.3質量%を含有させることが好ましい。
【0091】
(ポリエステル層Zにおけるジオール成分の割合)
ポリエステル層Zが、ポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレート(A)を含有する場合、ポリエステル層Zに含まれる全ポリエステル(共重合ポリエステルを包含する)中の、全ジオール成分の合計含有量(100mol%)に対する、全1,4-シクロヘキサンジメタノールの合計含有量の割合(CHDM/全ジオール成分)は、耐落下性を向上させる観点から、3mol%以上であるのが好ましく、4mol%以上であるのがより好ましく、5mol%以上であるのがさらに好ましい。他方、耐熱性との両立の観点から、15mol%以下であるのが好ましく、12mol%以下であるのがより好ましく、10mol%以下であるのがさらに好ましい。
【0092】
<特に好ましい形態>
本シーラントフィルムは、ポリエステル層X、ポリエステル層Y及びポリエステル層Zをこの順に積層してなる少なくとも三層構成を備えた積層フィルムであるのが好ましく、中でも、ポリエステル層X、ポリエステル層Y及びポリエステル層Zをこの順に有する三層からなる積層フィルムであることが好ましい。
【0093】
本シーラントフィルムは、上述のとおり、ポリエステル層X及びポリエステル層Yがともに共重合体ポリエステル(x-1又はy-1)を含むのが好ましい。その場合、高いシーラント強度を付与する観点から、ポリエステル層Xに含まれる共重合成分の含有量割合(mol%)、すなわち共重合成分となるその他のジカルボン酸成分及び共重合成分となるその他のジオール成分の合計含有量割合(mol%)は、ポリエステル層Yに含まれる共重合成分の含有量割合(mol%)と同じかそれよりも高いことが好ましい。
すなわち、上述したように、ポリエステル層Xに含まれる全ポリエステル(共重合ポリエステルを包含する)中の全ジオール成分に対する、共重合成分となる全その他のジオール成分の含有量割合(共重合成分となるその他のジオール成分/全ジオール成分、mol%)と、全ジカルボン酸成分に対する、共重合成分となる全その他のジカルボン酸成分の含有量割合(共重合成分となるその他のジカルボン酸成分/全ジカルボン酸、mol%)との合計含有量割合(mol%)(「ポリエステル層Xの全共重合成分割合」と称する。)は、前記ポリエステル層Yに含まれる全ポリエステル(共重合ポリエステルを包含する)中の全ジオール成分に対する、共重合成分となる全その他のジオール成分の含有量割合(共重合成分となるその他のジオール成分/全ジオール成分、mol%)と、全ジカルボン酸成分に対する、共重合成分となる全その他のジカルボン酸成分の含有量割合(共重合成分となるその他のジカルボン酸成分/全ジカルボン酸、mol%)との合計含有量割合(mol%)(「ポリエステル層Yの全共重合成分割合」と称する。)と同じか又はより高いことが好ましい。
【0094】
例えば1,4-シクロヘキサンジメタノール(CHDM)などの脂環式ジオールは、固有粘度が高く、かつ、複数立体配座を有するため、単純に含有量を多くすると、耐落下性は高まる反面、シール強度が低下する。また、イソフタル酸(IPA)などのその他のジカルボン酸は、単純に含有量を多くすると、シール強度は高まる反面、耐落下性は低下する。
そこで、本シーラントフィルムは、少なくともポリエステル層X,Yに好ましい共重合成分の濃度勾配、例えばポリエステル層Xに脂環式ジオールを含有させると共に、ポリエステル層X及び/又は前記ポリエステル層Zにポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレート(A)を含ませた上で、各層間に共重合成分の濃度勾配、すなわち、脂環式ジオールを含むその他のジオール成分及びその他のジカルボン酸成分を包含する共重合成分の濃度勾配を持たせることにより、層間親和性が高まり、力がスムーズに伝搬されるようになり、その結果として、耐落下性を付与しつつヒートシール強度を高めることができると推察される。
【0095】
さらに、前記ポリエステル層Xの全共重合成分割合と、前記ポリエステル層Yの全共重合成分割合との差は、シール層として機能し得るポリエステル層Xのシール強度を向上させる観点から、7mol%以上であるのが好ましく、中でも8mol%以上、中でも9mol%以上であるのがさらに好ましい。他方、ポリエステル層Xとポリエステル層Yとの層間親和性を高める観点から、20mol%以下であるのが好ましく、中でも18mol%以下、中でも16mol%以下であるのがさらに好ましい。
【0096】
さらに、高いシーラント強度を付与する観点から、ポリエステル層Yに含まれる共重合成分の含有量割合(mol%)、すなわちその他のジカルボン酸成分及びその他のジオール成分の合計含有量割合(mol%)は、ポリエステル層Zに含まれる共重合成分の含有量割合(mol%)と同じかそれよりも高いことが好ましい。
すなわち、ポリエステル層Yに含まれる全ポリエステル(共重合ポリエステルを包含する)中の全ジオール成分に対する、共重合成分となるその他のジオール成分の含有量割合(共重合成分となるその他のジオール成分/全ジオール成分、mol%)と、全ジカルボン酸成分に対する、共重合成分となる全その他のジカルボン酸成分の含有量割合(共重合成分となるその他のジカルボン酸成分/全ジカルボン酸、mol%)との合計含有量割合(mol%)(「ポリエステル層Yの全共重合成分割合」と称する。)は、前記ポリエステル層Zに含まれる全ポリエステル(共重合ポリエステルを包含する)中の全ジオール成分に対する、共重合成分となる全その他のジオール成分の含有量割合(共重合成分となるその他のジオール成分/全ジオール成分、mol%)と、全ジカルボン酸成分に対する、共重合成分となる全その他のジカルボン酸成分の含有量割合(共重合成分となるその他のジカルボン酸成分/全ジカルボン酸、mol%)との合計含有量割合(mol%)(「ポリエステル層Zの全共重合成分割合」と称する。)と同じか又はより高いことが好ましい。
【0097】
この際、前記ポリエステル層Yの全共重合成分割合と、前記ポリエステル層Zの全共重合成分割合との差は、濃度勾配によってシール強度を向上させつつ、内容物側とは反対側すなわち外側になる層として機能し得るポリエステル層Zの耐熱性を高める観点から、3mol%以上であるのが好ましく、中でも5mol%以上、中でも7mol%以上であるのがさらに好ましい。他方、ポリエステル層Yとポリエステル層Zとの層間親和性を高める観点から、20mol%以下であるのが好ましく、中でも15mol%以下、中でも13mol%以下であるのがさらに好ましい。
【0098】
本シーラントフィルムは、ポリエステル層X、ポリエステル層Y及びポリエステル層Zをこの順に積層してなる構成において、各層に含まれる全ポリエステル(共重合ポリエステルを包含する)中の共重合成分の合計含有量割合(mol%)が、言い換えれば、各層中に含まれる全ポリエステル(共重合ポリエステルを包含する)の全ジオール成分に対する、共重合成分となる全その他のジオール成分の含有量割合(mol%)と、全ジカルボン酸成分に対する、共重合成分となる全その他のジカルボン酸成分の含有量割合(mol%)との合計含有割合(mol%)が、フィルムの厚み方向にポリエステル層Xからポリエステル層Zに向かって、順次低くなる積層構成とすることが、高いシーラント強度を付与する観点から、特に好ましい。
すなわち、各層に含まれる全ポリエステル(共重合ポリエステルを包含する)の全ジオール成分に対する、共重合成分となる全その他のジオール成分の含有量割合(mol%)と全ジカルボン酸成分に対する全その他のジカルボン酸成分の含有量割合(mol%)との合計含有割合(mol%)に関しては、
ポリエステル層X≧ポリエステル層Y≧ポリエステル層Z
であるのが好ましく、中でも
ポリエステル層X>ポリエステル層Y>ポリエステル層Z
であるのが特に好ましい。
【0099】
各層中の全共重合成分の含有割合の大小関係が、ポリエステル層X≧ポリエステル層Y≧ポリエステル層Zであれば、ポリエステル層X<ポリエステル層Y又はポリエステル層Y<ポリエステル層Zの場合に比べて、各層間における層間親和性が高まり、また、ヒートシール強度測定時の剥離過程で力がスムーズに伝搬され、その結果として、本シーラントフィルムは、優れたヒートシール強度を得ることができる。
【0100】
なお、本シーラントフィルムがフィルムの厚み方向に各層中の全共重合成分の濃度勾配を有するか否かは、例えばフィルムの厚み方向における共重合成分の濃度勾配における変曲点の有無により確認することができる。
変曲点は、SAICAS(登録商標)によりフィルムの斜め切削面を作製し、飛行時間型二次イオン質量分析機TOF-SIMSを用いて負の二次イオンピーク強度データを得ることで調べることができる。
【0101】
<その他の層>
本シーラントフィルムは、ポリエステル層Zのポリエステル層Xとは反対側、すなわち、ポリエステル層Zの外側にバリア層(「本バリア層」とも称する。)を有してもよい。
また、ポリエステル層Zとバリア層の間に、他の層を有していてもよい。
本バリア層は、ガス透過を抑制する性質(「ガスバリア性」とも称する。)、特に水蒸気バリア性を高めることができる層である。
【0102】
本バリア層を構成する主材としての無機物としては、例えば酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化窒化ケイ素、酸化炭化ケイ素、酸化炭化窒化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム及び酸化炭化アルミニウムからなる群から選択される1種又は2種以上の無機化合物を挙げることができる。
【0103】
本バリア層は、例えば物理的気相蒸着(PVD)法により形成されたPVD無機物層、プラズマアシスト蒸着法により形成されたプラズマアシスト蒸着無機物層、化学蒸着(CVD)法により形成されたCVD無機物層、無機粒子を有機ポリマーに分散させて塗布する方法により形成されたコート無機物層などであるのが好ましい。
【0104】
本バリア層は、単層構成であっても、2層以上の複層構成であってもよい。例えば、2層以上の複層構成の一例として、そのうちの一層を無機物、例えば無機酸化物のみからなる無機物層とし、他の一層を、無機物、例えば無機酸化物と有機物とからなる無機・有機混合層とする例を挙げることができる。無機物に有機物を混合することにより、比較的柔軟な層とすることができるため、このような柔軟な層を設けることにより、ガスバリア性を高めることができる場合がある。
すなわち、基材フィルムの粗大突起部が起点となって、無機物層表面に、ピンホールと呼ばれる微小な欠陥が生じたり、加熱蒸着時に原料が塊となって飛来し付着して、無機物層表面に微小な欠陥が生じたりすることがあり、この欠陥による空隙をガスが通過することによってガスバリア性が低下することがある。そこで、前述のような柔軟な層を、前記表面に重ねて積層することで、前記欠陥を埋めることができ、ガスバリア性を高めることができる場合がある。
【0105】
本バリア層の厚さ(無機物層が複層構成である場合はそれらの合計厚)は、0.1nm~500nmであるのが好ましく、中でも1nm以上或いは300nm以下、その中でも5nm以上或いは100nm以下であるのがさらに好ましい。本バリア層の厚さが前記範囲であれば、所望するガスバリア性を確保することが可能となる。
【0106】
(本シーラントフィルムの厚み)
本シーラントフィルムにおいて、厚みは、特に限定するものではなく、用途によって適切な厚みを選択することができる。高いヒートシール性の確保やバリア蒸着・印刷加工を行う観点から、本シーラントフィルムの全厚みは3μmを超えるのが好ましく、中でも5μm以上、その中でも10μm以上がさらに好ましい。
一方、本シーラントフィルムの全厚みの上限は特に限定するものではない。200μm以下であるのが好ましく、中でも160μm以下、その中でも140μm以下、その中でも120μm以下がさらに好ましい。
【0107】
本シーラントフィルムにおいて、前記ポリエステル層Xの厚みは、本シーラントフィルム全厚みに対して10~30%であるのが好ましく、中でも18%以上或いは25%以下、その中でも18%以上或いは20%以下であるのがさらに好ましい。
前記ポリエステル層Xの厚みは、特に限定するものではないが、1μm~15μmが好ましく、中でも3μm以上或いは12μm以下がより好ましく、中でも5μm以上或いは10μm以下がさらに好ましい。
【0108】
本シーラントフィルムにおいて、前記ポリエステル層Yの厚みは、本シーラントフィルム全厚みに対して40~80%であるのが好ましく、中でも50%以上或いは64%以下、その中でも60%以上或いは64%以下であるのがさらに好ましい。
前記ポリエステル層Yの全厚みは、特に限定するものではないが、10μm~150μmが好ましく、中でも15μm以上或いは100μm以下がより好ましく、中でも20μm以上或いは80μm以下がさらに好ましい。
【0109】
本シーラントフィルムにおいて、前記ポリエステル層Zの厚みは、本シーラントフィルム全厚みに対して10~30%であるのが好ましく、中でも18%以上或いは25%以下、その中でも18%以上或いは20%以下であるのがさらに好ましい。
前記ポリエステル層Zの厚みは、特に限定するものではないが、1μm~15μmが好ましく、中でも3μm以上或いは12μm以下がより好ましく、中でも5μm以上或いは10μm以下がさらに好ましい。
【0110】
<本シーラントフィルムの物性>
本シーラントフィルムは、次の物性を有することができる。
【0111】
(ヒートシール強度)
本シーラントフィルムは、ポリエステル層X同士すなわちシール層同士を、160℃/100℃(上/下のシールバー温度)、0.2MPa、2秒の条件でシールしたときのシール強度が19N/15mm以上であることが好ましく、20N/15mm以上であることがより好ましく、21/15mm以上であることがさらに好ましく、25N/15mm以上であることが最も好ましい。
本シーラントフィルムは、前記シール強度が19N/15mm以上であることにより、例えば包装材料とした場合に、低温シール性、密閉性の向上に寄与することができ、質量用や抗菌用等の用途にも好適に用いることができる。
【0112】
なお、本シーラントフィルムのヒートシール強度は、後述する実施例に記載の方法で測定することができる。
【0113】
(ハイドロショット試験における破断点変位)
本シーラントフィルムは、ハイドロショット試験における破断点変位を9.5mm以上とすることができ、中でも9.8mm以上、その中でも10.1mm以上とすることができる。
本シーラントフィルムは、ハイドロショット試験における破断点変位が9.5mm以上であれば、耐落下性に優れ、液体物を包装する用途にも好適に用いることができる。
【0114】
(ハイドロショット試験における衝撃エネルギー)
本シーラントフィルムは、ハイドロショット試験における衝撃エネルギーを0.6J以上とすることができ、中でも0.7J以上、その中でも0.8J以上とすることができる。
本シーラントフィルムは、ハイドロショット試験における衝撃エネルギーが0.6J以上であれば、耐落下性に優れ、液体物を包装する用途にも好適に用いることができる。
【0115】
なお、ハイドロショット試験における破断点変位及び衝撃エネルギーの測定方法は、後述する実施例に記載の方法で測定することができる。
【0116】
(破断強度)
本シーラントフィルムは、長手方向(MD)と幅方向(TD)の破断強度がいずれも、50MPa以上であるのが好ましい。破断強度が50MPa以上の範囲であることよって、例えば、包装材料とした場合に、破断を防止することができる。かかる観点から、本シーラントフィルムは、長手方向(MD)と幅方向(TD)の破断強度がいずれも50MPa以上であるのが好ましく、中でも70MPa以上、その中でも90MPa以上であるのがさらに好ましい。破断強度は高ければ高いほど好ましいが、170MPa以下であっても実用上十分といえる。
なお、本シーラントフィルムの破断強度は、例えば、後述する実施例に示した方法で測定することができる。
【0117】
(収縮率)
本シーラントフィルムは、長手方向(MD)と幅方向(TD)の収縮率がいずれも-5%~5%であるのが好ましい。収縮率が-5%~5%の範囲であることよって、例えば高温環境下でも元の形状を保つことができる。かかる観点から、本シーラントフィルムは、長手方向(MD)と幅方向(TD)の収縮率がいずれも-4%以上或いは4%以下であるのがより好ましく、中でも-3%以上或いは3%以下、その中でも-2%以上或いは2%以下であるのがさらに好ましい。
なお、収縮率は、後述する実施例に示した方法で測定することができる。
【0118】
(ヘーズ)
本シーラントフィルムは、ヘーズが1%~15%であるのが好ましい。ヘーズが1%~15%の範囲であることよって、例えば包装材料とした場合に、中身の視認を行うことができる。ヘーズは低ければ低いほど透明性が高くなって好ましく、下限値は0.01%程度である。かかる観点から、本シーラントフィルムは、ヘーズが15%以下であるのが好ましく、中でも10%以下、その中でも6%以下であるのがさらに好ましい。
なお、ヘーズは、後述する実施例に示した方法で測定することができる。
【0119】
<本シーラントフィルムの製造方法>
本シーラントフィルムの製造方法の一例として、本シーラントフィルムが二軸延伸フィルムの場合について説明する。但し、ここで説明する製造方法に限定するものではない。
【0120】
先ずは、公知の方法により、各層を構成する樹脂組成物を調製し、それぞれ別に二軸溶融押出機に供給して樹脂組成物を溶融し、各層の厚みが所定の厚み比になるよう溶融樹脂の吐出量を調整して、各層をダイから押し出し、すなわち共押出する。この共押出シートを、回転冷却ドラム上でポリマーのガラス転移点以下の温度となるように冷却固化し、実質的に非晶状態の未配向シートを得るようにする。
【0121】
次に、当該未配向シートを、一方向にロール又はテンター方式の延伸機により延伸する。この際、延伸温度は、通常70~120℃、好ましくは80℃以上或いは100℃以下であり、延伸倍率は通常2.5~7.0倍、好ましくは3.0倍以上或いは6.0倍以下である。
次いで、一段目の延伸方向と直交する方向に延伸する。この際、延伸温度は通常70~140℃であり、延伸倍率は通常3.0~7.0倍、好ましくは3.5倍以上或いは6.0倍以下である。
なお、前記の延伸においては、一方向の延伸を2段階以上で行う方法を採用することもできる。
【0122】
そして、引き続き220℃以上230℃未満の温度、中でも220℃以上225℃以下の温度で緊張下又は30%以内の弛緩下で熱固定処理を行い、二軸配向フィルムとしての本シーラントフィルムを得ることができる。
かかる温度範囲で熱固定処理を行うことにより、本シーラントフィルムが脆くなるのを抑制することができ、耐衝撃性を高めることができ、耐落下性を高めることができる。また、かかる製膜条件により、本シーラントフィルムに含まれる共重合成分、特にポリエステル層Xに含まれる共重合成分を非晶化させてシール強度を付与することができる。したがって、本シーラントフィルムの耐落下性とシール強度のバランスを優れたものとすることができる。
【0123】
<本シーラントフィルムの用途>
本シーラントフィルムは、包装材料などの構成部材として好適に用いることができる。すなわち、本シーラントフィルムを有する包装材料を提供することができる。
この際、本シーラントフィルムをそのまま包装材料として用いてもよく、本シーラントフィルムを少なくとも一層として有する積層体とし、この積層体を少なくとも一部に有する包装材料として用いることもできる。
【0124】
<語句の説明など>
本発明においては、「フィルム」と称する場合でも「シート」を含むものとし、「シート」と称する場合でも「フィルム」を含むものとする。
本発明において「ポリエステル層」とは、層を構成する主成分樹脂がポリエステルである層を意味し、当該主成分樹脂とは、各層を構成する樹脂のうち最も含有割合の多い樹脂の意味であり、当該主成分樹脂は、各層を構成する樹脂のうち50質量%以上、中でも70質量%以上、その中でも80質量%以上(100質量%を含む)を占める場合がある。
また、本発明において「シーラントフィルム」とは、熱融着性を発揮することができるフィルムの意味である。
【0125】
本発明において、「α~β」(α,βは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「α以上β以下」の意と共に、「好ましくはαより大きい」或いは「好ましくはβより小さい」の意も包含するものである。
また、「α以上」又は「α≦」(αは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「好ましくはαより大きい」の意を包含し、「β以下」又は「≦β」(βは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「好ましくはβより小さい」の意も包含するものである。
【実施例0126】
以下、本発明の実施例の一例について説明する。但し、本発明は、以下に説明する実施例に限定されるものではない。
【0127】
<使用した材料>
[ポリエステル原料の調整]
実施例・比較例で用いた各ポリエステルの原料組成、すなわち原料モノマーの割合を表1に示す。
表1及び表2において、TPAはテレフタル酸、IPAはイソフタル酸、EGはエチレングリコール、CHDMは1,4-シクロヘキサンジメタノールである。
また、ポリエステルbの製造の際には、滑剤として平均粒径4μmの球状シリカ粒子を、ポリエステルに対して15000ppmの質量割合で添加した。
【0128】
なお、ポリエステルa~eのガラス転移温度(Tg)は、JIS K7121に定められている方法に準拠して求められ、低温側ベースライン及び高温側ベースラインをそれぞれ延長した直線から縦軸方向に等距離にある直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線とが交わる点の温度(中間点ガラス転移温度)である。
ポリエステルa~eの固有粘度(IV)は、ポリエステルを、フェノール:テトラクロロエタンの質量比1:1混合溶液に溶かし、このポリエステル溶液の溶出時間から固有粘度(IV)を算出する方法で測定した値である。
【0129】
【0130】
(実施例1)
ポリエステル層Zの原料として、ポリエステルaとポリエステルbとを質量比89:11となるように混合し、
ポリエステル層Yの原料として、ポリエステルaとポリエステルdとを質量比50:50となるように混合し、
ポリエステル層Xの原料として、ポリエステルaとポリエステルcとポリエステルeとを質量比30:65:5となるように混合して、各層を形成するための混合原料を調整した。
【0131】
ポリエステル層Z、ポリエステル層Y及びポリエステル層Xの各混合原料をそれぞれ別の二軸スクリュー押出機に投入し、ポリエステル層Z、ポリエステル層Y及びポリエステル層Xの混合原料はそれぞれ280℃に加熱して溶融させた。各層が所定の厚みになるよう溶融樹脂の吐出量を調整して、各層をダイから押し出し、それぞれを25℃に設定した冷却ロールで冷却固化させることで、3種3層(ポリエステル層Z/ポリエステル層Y/ポリエステル層X)の未延伸積層フィルムを得た。
次いで、得られた未延伸積層フィルムをロール延伸機で長手方向(MD)に85℃で3.3倍に延伸した。さらに、テンター内にて95℃で予熱した後、幅方向(TD)に110℃で4.2倍に延伸した。最後に225℃(熱固定温度)で熱処理を施し、厚み50μmの3種3層(ポリエステル層Z:9.3μm、ポリエステル層Y:31.4μm、ポリエステル層X:9.3μm)の積層フィルム(サンプル)を得た。
得られた積層フィルムの特性は、以下の方法によって評価した。評価結果を表3に示す。
【0132】
表2には、各層におけるポリエステルa~eの配合割合(質量%)と共に、各層に含まれる全ポリエステル中の全ジカルボン酸成分(100mol%)に対するTPA(テレフタル酸)の合計含有割合(mol%)、及び、その他のジカルボン酸成分すなわち共重合成分であるIPA(イソフタル酸)の合計含有割合((mol%)、並びに、各層に含まれる全ポリエステル中の全ジオール成分(100mol%)に対するEG(エチレングリコール)の合計含有割合(mol%)、その他のジオール成分すなわち共重合成分であるCHDM(1,4-シクロヘキサンジメタノール)の合計含有割合(mol%)、及び、全てのCHDM(1,4-シクロヘキサンジメタノール)の合計含有割合(mol%)を示す。
【0133】
(実施例2)
ポリエステル層Xの原料として、ポリエステルaとポリエステルcとポリエステルeとを質量比11.5:81:7.5となるように混合して調製した。ポリエステル層X以外の各層の原料質量比及び製膜条件は、実施例1と同様にして、厚み50μmの積層フィルム(サンプル)を得た。評価結果を表3に示す。
【0134】
(実施例3)
ポリエステル層Zの原料として、ポリエステルaとポリエステルbとポリエステルeとを質量比79:11:10となるように混合して調製し、ポリエステル層Xの原料として、ポリエステルaとポリエステルcとを質量比19:81となるように混合して調製した。ポリエステル層Z及びポリエステル層X以外の各層の原料質量比及び製膜条件は、実施例1と同様にして、厚み50μmの積層フィルム(サンプル)を得た。評価結果を表3に示す。
【0135】
(比較例1)
ポリエステル層Xの原料として、ポリエステルaとポリエステルdとポリエステルeとを質量比10:80:10となるように混合して調製した。ポリエステル層X以外の各層の原料質量比及び製膜条件は、実施例1と同様にして、厚み50μmの積層フィルム(サンプル)を得た。評価結果を表3に示す。
【0136】
(比較例2)
ポリエステル層Yの原料として、ポリエステルaとポリエステルcとを質量比65:35となるように混合して調製し、ポリエステル層Xの原料として、ポリエステルaとポリエステルcとを質量比19:81となるように混合して調製した。ポリエステル層Y及びポリエステル層X以外の各層の原料質量比及び製膜条件は、実施例1と同様にして、厚み50μmの積層フィルム(サンプル)を得た。評価結果を表3に示す。
【0137】
(比較例3)
ポリエステル層Xの原料として、ポリエステルaとポリエステルdとを質量比20:80となるように混合して調製した。ポリエステル層X以外の各層の原料質量比及び製膜条件は、実施例1と同様にして、厚み50μmの積層フィルム(サンプル)を得た。評価結果を表3に示す。
【0138】
(比較例4)
ポリエステル層Zの原料として、ポリエステルaとポリエステルbを質量比91:9となるように混合して調製し、ポリエステル層Xの原料として、ポリエステルdを100質量%として調製した。また、熱固定温度を230℃に変更した。これら以外の製膜条件は、実施例1と同様にして、厚み50μmの積層フィルム(サンプル)を得た。評価結果を表3に示す。
【0139】
<評価方法>
実施例・比較例で作製した積層フィルム(サンプル)について、次のように評価した。
【0140】
(1)ヒートシール強度
実施例・比較例で作製した積層フィルム(サンプル)について、JIS Z1707に準拠し、ヒートシール強度(N/15mm)を測定した。積層フィルム(サンプル)を折り曲げてシール面(ポリエステル層X)同士を合わせて160℃/100℃(上/下 のシールバー温度)、0.2MPa、2秒間、加熱加圧してヒートシールした。シール部が15mm幅になるようカットし、引張試験機にて200mm/minの引張り速度でシール部の剥離強度を測定した。3回の測定値の平均値を、ヒートシール強度として表3に示した。
【0141】
(2)ハイドロショット試験における破断点変位及び衝撃エネルギー
実施例・比較例で作製した積層フィルム(サンプル)を縦方向100mm×横方向100mmの試料フィルムとし、ハイドロショット高速衝撃試験器((株)島津製作所製「HTM-1型」)を用いて、クランプで試料フィルムを固定し、温度23℃で試料フィルム中央に直径が1/2インチの撃芯を落下速度3m/秒で落として衝撃を与え、試料フィルムが破壊するときの破断点の変位量(破断点変位)(mm)及びエネルギー(衝撃エネルギー)(J)を測定した。5回の測定値の平均値を、ハイドロショット試験における破断点変位(mm)及び衝撃エネルギー(J)として表3に示した。
【0142】
(3)耐落下性評価
実施例・比較例で作製した積層フィルム(サンプル)1枚を長手方向の真ん中から折り曲げて、シール面(ポリエステル層X)同士を内面にして4辺をヒートシールし、水の含有量を100mLとし、縦方向140mm×横方向100mmの4方シールパウチを作成した。シールパウチ作成時のシール条件は、160℃、0.2MPa、2秒とした。なお、シール部の幅は10mmとした。
次いで、落下試験として、50cmの高さから上記シールパウチを縦方向及び横方向でそれぞれ5回ずつ落下させた。
上記落下試験の結果より、以下の基準で耐落下性を評価した。
◎(Excellent):5回ずつ落下させた際に、1度も破袋しなかった。
〇(Good):5回ずつ落下させた際に、少なくとも1度は破袋したが、少なくとも1度は破袋しなかった。
×(Poor):5回ずつ落下させた際に、全て破袋した。
【0143】
(4)破断強度
実施例・比較例で作製した積層フィルム(サンプル)を1.5cm×15cmの試料フィルムとし、引張試験機を用いて、試料フィルムを長手方向(MD)又は幅方向(TD)に速度200mm/minで引張り、試料が切断(破断)したときの強度(引張荷重値を試験片の断面積で除した値)を破断強度(MPa)とした。3回の測定値の平均値を、破断強度として表3に示した。
【0144】
(5)収縮率
実施例・比較例で作製した積層フィルム(サンプル)を1.5cm×15cmの試料フィルムとし、試料フィルムを無張力状態で、所定の温度(100℃)に保った熱風式オーブン中に置いて5分間熱処理し、その前後の試料フィルムの長さを測定して下記(式1)にて算出した。なお、フィルムの長手方向(MD)と幅方向(TD)のそれぞれについて測定した。
収縮率(%)={(熱処理前のサンプル長)-(熱処理後のサンプル長)}÷(熱処理前のサンプル長)×100 ・・・(式1)
3回の測定値の平均値を、破断強度として表3に示した。
【0145】
(6)ヘーズ
実施例・比較例で作製した積層フィルム(サンプル)について、JIS K7136に準拠し、日本電色工業(株)製ヘーズメーター DH-2000を用いて、ヘーズ(%)を測定した。3回の測定値の平均値を、ヘーズとして表3に示した。
【0146】
【0147】
【0148】
(考察)
実施例1~3で作製した積層フィルムはいずれも、ヒートシール強度が高く、かつ、耐落下性評価も良好であった。
これに対し、比較例1は、ポリエステル層Xがポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレート(A)を含むものの、共重合ポリエステル(x-1)を含まないことから、ポリエステル層X中に含まれるポリエステル同士の相溶性が悪いため、ヒートシール強度が低く、耐落下性評価は満足できるものではなかった。
比較例2は、ポリエステル層Yが共重合ポリエステル(y-1)を含まないため、ヒートシール強度が低いものであった。
比較例3及び4は、ポリエステル層Xが共重合ポリエステル(x-1)を含まず、ポリエステル層X及び/又はポリエステル層Zがポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレート(A)を含まないため、耐落下性評価は満足できるものではなかった。
【0149】
上記実施例及び比較例、並びに、これまで本発明者が行ってきた試験結果から、ポリエステル層X、ポリエステル層Y及びポリエステル層Zをこの順に有する積層フィルムに関し、シール層としてのポリエステル層Xが、ジカルボン酸成分及びジオール成分の共重合体からなる共重合ポリエステル(x-1)を含み、前記ジカルボン酸成分がテレフタル酸を含み、かつ、前記ジオール成分が脂環式ジオールを含み、当該ジオール成分中の当該脂環式ジオールの割合が0mol%より大きく50mol%未満であり、そしてポリエステル層Yが、ジカルボン酸成分及びジオール成分の共重合体からなる共重合ポリエステル(y-1)を含み、前記ジカルボン酸成分がテレフタル酸及びその他のジカルボン酸成分を含み、さらに前記ポリエステル層Zがホモポリエチレンテレフタレート(z-1)を主成分樹脂として含むフィルム構成とした上で、前記ポリエステル層X及び/又は前記ポリエステル層Zが、ポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレート(A)を含むと、高いシール強度を有し、耐落下性にも優れた性質を発揮することが分かった。
【0150】
また、耐熱性、シール強度及び耐落下性をともに高める観点から、ポリエステル層X、ポリエステル層Y及びポリエステル層Zをこの順に積層してなる構成において、各層に含まれる全ポリエステル(共重合ポリエステルを包含する)中の共重合成分の合計含有量割合(mol%)を、ポリエステル層X≧ポリエステル層Y≧ポリエステル層Zとするのが特に好ましいことも分かった。
【0151】
さらに、実施例1~3のシーラントフィルムは、フィルムを構成する全ての樹脂成分がポリエステル(共重合ポリエステルを含む)であるため、例えば、透明バリア蒸着PET等他のポリエステル系基材フィルムを積層させたり、バリア蒸着や印刷加工技術を適用させたりすることにより、ポリエステル材料からなる単一材料系での包装材料を形成することができ、高リサイクル性を実現することも可能である。