(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116062
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】基板処理装置、および基板載置方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20240820BHJP
H01L 21/02 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
H01L21/68 N
H01L21/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023195754
(22)【出願日】2023-11-17
(31)【優先権主張番号】P 2023021883
(32)【優先日】2023-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2021年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構半導体製造装置の高度化に向けた開発/3Dインテグレーション研究開発、異方性反り量500umウェハを用いた重ね合わせ精度100nmのボンディング装置の開発、異方性反りウェハ補正技術開発および50nmモジュール装置性能の総合確認、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】藤原 慎
(72)【発明者】
【氏名】菅川 賢治
(72)【発明者】
【氏名】福島 秀行
(72)【発明者】
【氏名】小濱 範史
(72)【発明者】
【氏名】池本 大輔
【テーマコード(参考)】
5F131
【Fターム(参考)】
5F131AA02
5F131AA22
5F131BA60
5F131CA07
5F131CA32
5F131CA33
5F131CA36
5F131DA42
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5F131DB22
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5F131DB76
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5F131EB79
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5F131FA32
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5F131KA14
5F131KA34
5F131KA40
5F131KA72
5F131KB07
5F131KB12
5F131KB32
5F131KB54
5F131KB55
5F131KB56
(57)【要約】
【課題】基板のストレスの分布を改善して、基板を適切に保持できる技術を提供する。
【解決手段】基板処理装置は、基板を吸着する吸着面に、円状の中央領域と、中央領域よりも外側に配置される円環状の外側領域と、を有する保持部を備える。また、基板処理装置は、中央領域、および外側領域の周方向に沿って分割された複数のゾーンの各々に個別に吸着圧力を発生させる吸着圧力発生部と、保持部の外縁と相対的に中央領域を変位させる変形部と、を備える。基板処理装置の制御部は、(A)基板の反り状態に基づき少なくとも外側領域の複数のゾーンの一部に吸着圧力を発生させて吸着面に基板を吸着させる工程と、(B)(A)の工程の後、当該(A)の工程を継続しながら吸着面を変形させる工程と、を制御する。
【選択図】
図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を吸着する吸着面に、円状の中央領域と、前記中央領域よりも外側に配置される円環状の外側領域と、を有する保持部を備える基板処理装置であって、
前記中央領域、および前記外側領域の周方向に沿って分割された複数のゾーンの各々に個別に吸着圧力を発生させる吸着圧力発生部と、
前記保持部の外縁と相対的に前記中央領域を変位させる変形部と、
前記吸着圧力発生部および前記変形部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
(A)前記基板の反り状態に基づき、前記吸着圧力発生部を動作させて少なくとも前記外側領域の前記複数のゾーンの一部に吸着圧力を発生させて、前記吸着面に前記基板を吸着させる工程と、
(B)前記(A)の工程の後、当該(A)の工程を継続しながら、前記変形部を動作させて前記吸着面を変形させる工程と、を制御する、
基板処理装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記基板における第1軸線の反り量、および前記第1軸線と直交する第2軸線の反り量に基づき、前記外側領域の前記複数のゾーンのうち前記第1軸線に対向するゾーンおよび前記第2軸線に対向するゾーンのいずれか一方に吸着圧力を発生させる、
請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記基板を前記保持部に載置しかつ前記吸着面に吸着する前の状態で、前記基板の中心よりも外縁が前記吸着面から離れる凹反りの場合に、前記第1軸線と前記第2軸線のうち反り量が大きい方に対向するゾーンに吸着圧力を発生させる、
請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記基板を前記保持部に載置しかつ前記吸着面に吸着する前の状態で、前記基板の中心よりも外縁が前記吸着面に近づく凸反りの場合に、前記第1軸線と前記第2軸線のうち反り量が小さい方に対向するゾーンに吸着圧力を発生させる、
請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記中央領域を挟んで対称位置にある前記外側領域の前記複数のゾーンに吸着圧力を発生させる、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記外側領域は、前記中央領域の径方向外側に隣接する第1外側領域と、前記第1外側領域の径方向に隣接する第2外側領域と、を含み、
前記制御部は、前記第2外側領域の前記複数のゾーンの一部に吸着圧力を発生させる、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記基板の反り状態を検出する測定部を備え、
前記制御部は、前記測定部が測定した前記基板の反り状態に基づき、前記(A)の工程の前に前記基板を吸着する前記外側領域の前記複数のゾーンの一部を設定する、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記基板の反り状態に基づき、前記(B)の工程における前記吸着面の変形量を設定する、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記(A)の工程において前記外側領域の前記複数のゾーンにおける周方向全周のゾーンに吸着圧力を発生させて、前記吸着面に前記基板を吸着させる、
請求項8に記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記(A)の工程において前記中央領域および前記外側領域の前記複数のゾーンの全部に吸着圧力を発生させて、前記吸着面に前記基板を吸着させる、
請求項9に記載の基板処理装置。
【請求項11】
前記保持部よりも鉛直方向上側に設けられ、第1基板を保持する上側保持部を備え、
前記保持部により前記基板である第2基板を保持し、
前記制御部は、
前記(B)の工程の後、(C)の工程として、前記第1基板と前記第2基板を接合する工程を行う、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項12】
前記制御部は、
前記第1基板の反り状態に基づき、前記(A)の工程において前記外側領域の前記複数のゾーンの一部に吸着圧力を発生させる、
請求項11に記載の基板処理装置。
【請求項13】
前記制御部は、
前記(C)の工程の後、前記吸着面の変形を維持したまま、前記第2基板の吸着を解除して、接合した前記第1基板および前記第2基板を搬送可能とする、
請求項11に記載の基板処理装置。
【請求項14】
前記制御部は、前記(A)の工程および前記(B)の工程の前に、前記基板の反り状態に基づき前記吸着面の変形を行うか否かを判定する、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項15】
基板を吸着する吸着面に、円状の中央領域と、前記中央領域よりも外側に配置される円環状の外側領域と、を有する保持部を備える基板処理装置の基板載置方法であって、
(A)前記基板の反り状態に基づき、前記中央領域および前記外側領域の周方向に沿って分割された複数のゾーンの各々に個別に吸着圧力を発生させる吸着圧力発生部を動作させて、少なくとも前記外側領域の前記複数のゾーンの一部に吸着圧力を発生させて前記吸着面に前記基板を吸着させる工程と、
(B)前記(A)の工程の後、当該(A)の工程を継続しながら、前記保持部の外縁と相対的に前記中央領域を変位させる変形部を動作させて、前記吸着面を変形させる工程と、を有する、
基板載置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理装置、および基板載置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、上側の基板を上方から吸着する上チャックと、下側の基板を下方から吸着する下チャックとを備え、二枚の基板を向い合せて接合する接合装置が開示されている。基板の接合において、接合装置は、上チャックの基板の中央部を押し下げて、下チャックの基板の中央部と接触させ、二枚の基板の中央部同士を分子間力により接合させ、この接合領域を中央部から外周部に広げていく。
【0003】
上記のように基板を吸着して保持するチャックを備えた基板処理装置は、基板を単純に吸着させた場合、基板に反り等が発生している等の原因により基板のストレスが大きい状態で基板処理を行う可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、基板のストレスの分布を改善して、基板を適切に保持できる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様によれば、基板を吸着する吸着面に、円状の中央領域と、前記中央領域よりも外側に配置される円環状の外側領域と、を有する保持部を備える基板処理装置であって、前記中央領域、および前記外側領域の周方向に沿って分割された複数のゾーンの各々に個別に吸着圧力を発生させる吸着圧力発生部と、前記保持部の外縁と相対的に前記中央領域を変位させる変形部と、前記吸着圧力発生部および前記変形部を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、(A)前記基板の反り状態に基づき、前記吸着圧力発生部を動作させて、少なくとも前記外側領域の前記複数のゾーンの一部に吸着圧力を発生させて前記吸着面に前記基板を吸着させる工程と、(B)前記(A)の工程の後、当該(A)の工程を継続しながら、前記変形部を動作させて前記吸着面を変形させる工程と、を制御する、基板処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
一態様によれば、基板のストレスの分布を改善して、基板を適切に保持できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の一実施形態に係る接合装置を示す平面図である。
【
図3】第1基板及び第2基板の一例を示す側面図である。
【
図4】接合装置の接合方法を示すフローチャートである。
【
図5】第1実施形態に係る接合モジュールの一例を示す平面図である。
【
図7】上チャック及び下チャックの一例を示す断面図である。
【
図8】
図4のステップS109の詳細を示すフローチャートである。
【
図9】
図9(A)は、
図8のステップS112における動作の一例を示す側面図である。
図9(B)は、
図9(A)に続く動作を示す側面図である。
図9(C)は、
図9(B)に続く動作を示す側面図である。
【
図10】
図10(A)は、
図8のステップS113における動作の一例を示す断面図である。
図10(B)は、
図8のステップS114における動作の一例を示す断面図である。
図10(C)は、
図10(B)に続く動作を示す断面図である。
【
図11】下チャックの吸着面の一例を示す平面図である。
【
図12】
図12(A)は、凸反りの下ウェハを示す説明図である。
図12(B)は、凹反りの下ウェハを示す説明図である。
【
図13】
図13(A)は、下チャックに下ウェハを吸着した状態の吸着面を示す平面図である。
図13(B)は、下チャックに下ウェハを吸着して吸着面を変形させた場合を示す側面断面図である。
図13(C)は、吸着面の変形後の下ウェハおよび下チャックの状態を示す平面図である。
【
図14】
図14(A)は、反りがない上ウェハと凹反りの下ウェハの吸着前を示す側面断面図である。
図14(B)は、吸着前の下ウェハおよび下チャックの変形後の下ウェハの基準点の動きを示す説明図である。
図14(C)は、多少の反りを有する上ウェハと凹反りの下ウェハの吸着前と下チャックの変形後の基準点の動きを示す説明図である。
【
図15】
図15(A)は、凸反りの上ウェハと反りがない下ウェハの吸着前を示す側面断面図である。
図15(B)は、吸着前の下ウェハおよび下チャックの変形後の下ウェハの基準点の動きを示す説明図である。
図15(C)は、凸反りの上ウェハと多少の反りを有する下ウェハの吸着前と下チャックの変形後の基準点の動きを示す説明図である。
【
図16】基板載置方法を含む接合方法のフローチャートである。
【
図17】
図17(A)は、第1変形例に係る吸着パターンを示す平面図である。
図17(B)は、第2変形例に係る吸着パターンを示す平面図である。
図17(C)は、第3変形例に係る吸着パターンを示す平面図である。
図17(D)は、第4変形例に係る吸着パターンを示す平面図である。
図17(E)は、第5変形例に係る吸着パターンを示す平面図である。
図17(F)は、第6変形例に係る吸着パターンを示す平面図である。
【
図18】
図18(A)は、他の実施形態に係る下ウェハの変形を概略的に示す第1側面図である。
図18(B)は、他の実施形態に係る下ウェハの変形を概略的に示す第2側面図である。
図18(C)は、他の実施形態において下ウェハを吸着する吸着面を示す第1平面図である。
図18(D)は、他の実施形態において下ウェハを吸着する吸着面を示す第2平面図である。
【
図19】他の実施形態に係る基板載置方法を含む接合方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本開示を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0010】
本開示の基板処理装置として、
図1および
図2に示す接合装置1について代表的に説明していく。なお、本開示の基板処理装置は、接合装置1に限定されず、基板を保持する保持部を備え、保持部で保持した基板を処理するものであればよい。他の基板処理装置の例としては、露光装置、温度調節装置等があげられる。露光装置は、保持部により基板を保持して、基板の上にマスクパターンを転写する装置である。温度調節装置は、保持部により基板を保持して、基板の温度を調節する装置である。
【0011】
接合装置1は、
図3に示すように、第1基板W1と第2基板W2とを接合し、接合基板Tを作製する。第1基板W1および第2基板W2のうち少なくとも1つは、シリコンウェハや化合物半導体ウェハ等の半導体基板に複数の電子回路が形成された基板である。第1基板W1および第2基板W2のうち1つは、電子回路が形成されていないベアウェハであってもよい。化合物半導体ウェハは、特に限定されないが、例えばGaAsウェハ、SiCウェハ、GaNウェハ、またはInPウェハである。
【0012】
第1基板W1と第2基板W2とは、略同形状(同径)の円板に形成されている。接合装置1は、第1基板W1のZ軸負方向側(鉛直方向下側)に第2基板W2を配置して、第1基板W1と第2基板W2を接合する。以下、基板の一方である第1基板W1を「上ウェハW1」、基板の他方である第2基板W2を「下ウェハW2」、接合基板Tを「接合ウェハT」という場合がある。また以下では、上ウェハW1の板面のうち、下ウェハW2と接合される側の板面を「接合面W1j」といい、接合面W1jとは反対側の板面を「非接合面W1n」という。また、下ウェハW2の板面のうち、上ウェハW1と接合される側の板面を「接合面W2j」といい、接合面W2jとは反対側の板面を「非接合面W2n」という。
【0013】
図1に示すように、接合装置1は、搬入出ステーション2と、処理ステーション3とをX軸正方向に向かって順に備える。搬入出ステーション2および処理ステーション3は、一体的に接続されている。
【0014】
搬入出ステーション2は、載置台10と、搬送領域20とを備える。載置台10は、複数の載置板11を備える。各載置板11には、複数枚(例えば、25枚)の基板を水平状態で収容するカセットCS1、CS2、CS3がそれぞれ載置される。カセットCS1は上ウェハW1を収容するカセットであり、カセットCS2は下ウェハW2を収容するカセットであり、カセットCS3は接合ウェハTを収容するカセットである。なお、カセットCS1、CS2において、上ウェハW1および下ウェハW2は、それぞれ接合面W1j、W2jを上面にした状態で向きを揃えて収容される。
【0015】
搬送領域20は、載置台10のX軸正方向側に隣接して配置され、Y軸方向に延在する搬送路21と、搬送路21に沿って移動可能な搬送装置22と、を備える。搬送装置22は、X軸方向にも移動可能かつZ軸周りに旋回可能であり、載置台10上に載置されたカセットCS1~CS3と、後述する処理ステーション3の第3処理ブロックPB3との間で、上ウェハW1、下ウェハW2および接合ウェハTの搬送を行う。
【0016】
処理ステーション3は、例えば、3つの処理ブロックPB1、PB2、PB3を備える。第1処理ブロックPB1は、処理ステーション3の背面側(
図1のY軸正方向側)に設けられる。第2処理ブロックPB2は、処理ステーション3の正面側(
図1のY軸負方向側)に設けられる。第3処理ブロックPB3は、処理ステーション3の搬入出ステーション2側(
図1のX軸負方向側)に設けられる。
【0017】
また、処理ステーション3は、第1処理ブロックPB1~第3処理ブロックPB3に囲まれた領域に、搬送装置61を有する搬送領域60を備える。例えば、搬送装置61は、鉛直方向、水平方向および鉛直軸回りに移動自在な搬送アームを有する。搬送装置61は、搬送領域60内を移動し、搬送領域60に隣接する第1処理ブロックPB1、第2処理ブロックPB2および第3処理ブロックPB3内の装置に上ウェハW1、下ウェハW2および接合ウェハTを搬送する。
【0018】
第1処理ブロックPB1は、例えば、表面改質装置33と、表面親水化装置34とを有する。表面改質装置33は、上ウェハW1の接合面W1jおよび下ウェハW2の接合面W2jを改質する。表面親水化装置34は、改質された上ウェハW1の接合面W1jおよび下ウェハW2の接合面W2jを親水化する。
【0019】
例えば、表面改質装置33は、接合面W1j、W2jにおけるSiO2の結合を切断し、Siの未結合手を形成し、その後の親水化を可能にする。表面改質装置33では、例えば減圧雰囲気下において処理ガスである酸素ガスが励起されてプラズマ化され、イオン化される。そして、酸素イオンが、上ウェハW1の接合面W1jおよび下ウェハW2の接合面W2jに照射されることにより、接合面W1j、W2jがプラズマ処理されて改質される。処理ガスは、酸素ガスには限定されず、窒素ガス等でもよい。
【0020】
表面親水化装置34は、純水等の親水化処理液によって、上ウェハW1の接合面W1jおよび下ウェハW2のW2jを親水化する。表面親水化装置34は、接合面W1j、W2jを洗浄する役割も有する。表面親水化装置34では、例えばスピンチャックに保持された上ウェハW1または下ウェハW2を回転させながら、当該上ウェハW1または下ウェハW2上に純水を供給する。これにより、純水が接合面W1j、W2j上を拡散し、Siの未結合手にOH基が付き、接合面W1j、W2jが親水化される。
【0021】
図2に示すように、第2処理ブロックPB2は、例えば、接合モジュール41と、第1温度調節装置42と、第2温度調節装置43とを有する。接合モジュール41は、親水化された上ウェハW1と下ウェハW2とを接合し、接合ウェハTを作製する。第1温度調節装置42は、接合ウェハTの作製前に、上ウェハW1の温度分布を調節する。第2温度調節装置43は、接合ウェハTの作製前に、下ウェハW2の温度分布を調節する。なお、本実施形態において、第1温度調節装置42および第2温度調節装置43は、接合モジュール41とは別に設けられるが、接合モジュール41の一部として設けられてもよい。
【0022】
第3処理ブロックPB3は、例えば、上方から下方に向かって、第1位置調節装置51、第2位置調節装置52、およびトランジション装置53、54を順に備える。なお、第3処理ブロックPB3における各装置の配置場所は、
図2に示す配置場所には限定されない。第1位置調節装置51は、上ウェハW1の水平方向の向きを調節し、また、上ウェハW1を上下反転して上ウェハW1の接合面W1jを下向きにする。第2位置調節装置52は、下ウェハW2の水平方向の向きを調節する。トランジション装置53は、上ウェハW1を一時的に載置する。また、トランジション装置54は、下ウェハW2や接合ウェハTを一時的に載置する。
【0023】
図1に戻り、接合装置1は、各構成を制御する制御装置(制御部)90を備える。制御装置90は、1以上のプロセッサ91、メモリ92、図示しない入出力インタフェースおよび電子回路を有する制御用コンピュータである。1以上のプロセッサ91は、CPU、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、複数のディスクリート半導体からなる回路等のうち1つまたは複数を組み合わせたものである。メモリ92は、半導体メモリ等からなる主記憶装置、およびディスク、ドライブ、半導体メモリ等からなる補助記憶装置を含む。プロセッサ91は、メモリ92に記憶されたプログラムを実行処理する。
【0024】
次に、
図4を参照して、本実施形態の接合方法について説明する。
図4に示すステップS101~S109は、制御装置90の制御下に実施される。
【0025】
接合方法において、作業者または搬送ロボット(不図示)は、複数枚の上ウェハW1を収容したカセットCS1、複数枚の下ウェハW2を収容したカセットCS2、および空のカセットCS3を、搬入出ステーション2の載置台10上に載置する。
【0026】
接合装置1は、搬送装置22によりカセットCS1内の上ウェハW1を取り出し、処理ステーション3の第3処理ブロックPB3のトランジション装置53に搬送する。その後、接合装置1は、搬送装置61により、トランジション装置53から上ウェハW1を取り出し、第1処理ブロックPB1の表面改質装置33に搬送する。
【0027】
次に、接合装置1は、表面改質装置33により、上ウェハW1の接合面W1jを改質する(ステップS101)。表面改質装置33は、接合面W1jを上に向けた状態で接合面W1jを改質する。その後、搬送装置61は、表面改質装置33から上ウェハW1を取り出して、表面親水化装置34に搬送する。
【0028】
そして、接合装置1は、表面親水化装置34により、上ウェハW1の接合面W1jを親水化する(ステップS102)。表面親水化装置34は、接合面W1jを上に向けた状態で接合面W1jを親水化する。その後、搬送装置61は、表面親水化装置34から上ウェハW1を取り出し、第3処理ブロックPB3の第1位置調節装置51に搬送する。
【0029】
接合装置1は、第1位置調節装置51により、上ウェハW1の水平方向の向きを調節すると共に、上ウェハW1の上下を反転する(ステップS103)。これにより、上ウェハW1のノッチが所定の方位に向けられ、上ウェハW1の接合面W1jが下に向けられる。その後、搬送装置61は、第1位置調節装置51から上ウェハW1を取り出し、第2処理ブロックPB2の第1温度調節装置42に搬送する。
【0030】
接合装置1は、第1温度調節装置42により、上ウェハW1の温度を調節する(ステップS104)。上ウェハW1の温調は、上ウェハW1の接合面W1jを下に向けた状態で実施される。その後、搬送装置61は、第1温度調節装置42から上ウェハW1を取り出し、接合モジュール41に搬送する。
【0031】
接合装置1は、上ウェハW1に対する上記の処理と並行して、下ウェハW2に対する処理を実施する。まず、接合装置1は、搬送装置22によりカセットCS2内の下ウェハW2を取り出し、処理ステーション3の第3処理ブロックPB3のトランジション装置54に搬送する。その後、搬送装置61は、トランジション装置54から下ウェハW2を取り出し、第1処理ブロックPB1の表面改質装置33に搬送する。
【0032】
接合装置1は、表面改質装置33により、下ウェハW2の接合面W2jを改質する(ステップS105)。表面改質装置33は、接合面W2jを上に向けた状態で接合面W2jを改質する。その後、搬送装置61は、表面改質装置33から下ウェハW2を取り出し、表面親水化装置34に搬送する。
【0033】
接合装置1は、表面親水化装置34により、下ウェハW2の接合面W2jを親水化する(ステップS106)。表面親水化装置34は、接合面W2jを上に向けた状態で接合面W2jを親水化する。その後、搬送装置61は、表面親水化装置34から下ウェハW2を取り出し、第3処理ブロックPB3の第2位置調節装置52に搬送する。
【0034】
接合装置1は、第2位置調節装置52により、下ウェハW2の水平方向の向きを調節する(ステップS107)。これにより、下ウェハW2のノッチが所定の方位に向けられる。その後、搬送装置61は、第2位置調節装置52から下ウェハW2を取り出し、第2処理ブロックPB2の第2温度調節装置43に搬送する。
【0035】
接合装置1は、第2温度調節装置43により、下ウェハW2の温度を調節する(ステップS108)。下ウェハW2の温調は、下ウェハW2の接合面W2jを上に向けた状態で実施される。その後、搬送装置61は、第2温度調節装置43から下ウェハW2を取り出し、接合モジュール41に搬送する。
【0036】
そして、接合装置1は、接合モジュール41において、上ウェハW1と下ウェハW2を接合して接合ウェハTを作製する(ステップS109)。接合ウェハTの作製後、搬送装置61は、接合モジュール41から接合ウェハTを取り出し、第3処理ブロックPB3のトランジション装置54に搬送する。
【0037】
最後に、接合装置1は、搬送装置22により、トランジション装置54から接合ウェハTを取り出し、載置台10上のカセットCS3に搬送する。これにより、一連の処理が終了する。
【0038】
次に、
図5~
図7を参照して、本実施形態に係る接合モジュール41の一例について説明する。
図5に示すように、接合モジュール41は、内部を密閉可能な処理容器210を有する。処理容器210の搬送領域60側の側面には搬入出口211が形成され、当該搬入出口211には開閉シャッタ212が設けられる。上ウェハW1、下ウェハW2および接合ウェハTは、搬入出口211を介して搬入出される。
【0039】
図6に示すように、処理容器210の内部には、上チャック(上側保持部)230と下チャック(保持部)231とが設けられる。上チャック230は、上ウェハW1の接合面W1jを下に向けて、上ウェハW1を上方から保持する。また、下チャック231は、上チャック230の下方に設けられ、下ウェハW2の接合面W2jを上に向けて、下ウェハW2を下方から保持する。
【0040】
上チャック230は、処理容器210の天井面に設けられた支持部材280に支持される。一方、下チャック231は、当該下チャック231の下方に設けられた第1下チャック移動部291に支持される。
【0041】
第1下チャック移動部291は、後述するように下チャック231を水平方向(Y軸方向)に移動させる。また、第1下チャック移動部291は、下チャック231を鉛直方向に移動自在、かつ鉛直軸回りに回転可能に構成される。
【0042】
第1下チャック移動部291は、当該第1下チャック移動部291の下面側に設けられ、水平方向(Y軸方向)に延在する一対のレール295に取り付けられる。第1下チャック移動部291は、レール295に沿って移動自在に構成される。レール295は、第2下チャック移動部296に設けられる。
【0043】
第2下チャック移動部296は、当該第2下チャック移動部296の下面側に設けられ、水平方向(X軸方向)に延在する一対のレール297に取り付けられる。第2下チャック移動部296は、レール297に沿って移動自在に構成される。なお、一対のレール297は、処理容器210の底面に設けられた載置台298上に設けられる。
【0044】
第1下チャック移動部291と、第2下チャック移動部296とによって、移動機構290が構成される。移動機構290は、上チャック230に対して下チャック231を相対移動させる。また、移動機構290は、基板受渡位置と、接合位置との間で下チャック231を移動させる。
【0045】
基板受渡位置は、上チャック230が上ウェハW1を搬送装置61から受け取り、また、下チャック231が下ウェハW2を搬送装置61から受け取り、下チャック231が接合ウェハTを搬送装置61に受け渡す位置である。基板受渡位置は、n(nは1以上の自然数)回目の接合で作製された接合ウェハTの搬出と、n+1回目の接合で接合される上ウェハW1および下ウェハW2の搬入とが連続して行われる位置である。基板受渡位置は、例えば
図5および
図6に示す位置である。
【0046】
搬送装置61は、上チャック230に上ウェハW1を渡す際に、上チャック230の真下に進入する。また、搬送装置61は、接合ウェハTを下チャック231から受け取り、下ウェハW2を下チャック231に渡す際に、下チャック231の真上に進入する。搬送装置61が進入し易いように、上チャック230と下チャック231とは横にずらされており、上チャック230と下チャック231の鉛直方向の間隔も大きい。
【0047】
一方、接合位置は、上ウェハW1と下ウェハW2とを所定の間隔をおいて向かい合わせた位置(対向位置)である。接合位置は、例えば
図7に示す位置である。接合位置では、基板受渡位置に比べて、鉛直方向における上ウェハW1と下ウェハW2との間隔が狭い。また、接合位置では、基板受渡位置とは異なり、鉛直方向視にて上ウェハW1と下ウェハW2とが重なっている。
【0048】
移動機構290は、上チャック230と下チャック231の相対位置を、水平方向(X軸方向およびY軸方向の両方向)と鉛直方向とに移動させる。なお、移動機構290は、本実施形態では下チャック231を移動させるが、下チャック231と上チャック230のいずれを移動させてもよく、両者を移動させてもよい。また、移動機構290は、上チャック230または下チャック231を鉛直軸回りに回転させてもよい。
【0049】
図7に示すように、上チャック230は、当該上チャック230の径方向に沿って複数(例えば3つ)の領域230a、230b、230cに区画される。これら領域230a、230b、230cは、上チャック230の中心から外縁に向けてこの順で設けられる。領域230aは、平面視で正円状に形成されており、領域230b、230cは平面視で円環状に形成されている。
【0050】
各領域230a、230b、230cには、吸引管240a、240b、240cがそれぞれ独立して設けられる。各吸引管240a、240b、240cには、異なる真空ポンプ241a、241b、241cがそれぞれ接続される。上チャック230は、各領域230a、230b、230c毎に、上ウェハW1を真空吸着可能である。
【0051】
上チャック230には、鉛直方向に昇降自在な複数の保持ピン245が設けられる。複数の保持ピン245は、真空ポンプ246に接続され、真空ポンプ246の作動によって上ウェハW1を真空吸着する。上ウェハW1は、複数の保持ピン245の下端に真空吸着される。複数の保持ピン245の代わりに、リング状の吸着パッドが用いられてもよい。
【0052】
複数の保持ピン245は、図示しない駆動部により下降することで、上チャック230の吸着面から突出する。その状態で、複数の保持ピン245は、上ウェハW1を真空吸着し、搬送装置61から受け取る。その後、複数の保持ピン245が上昇して、上ウェハW1が上チャック230の吸着面に接触する。続いて、上チャック230は、真空ポンプ241a、241b、241cの作動によって、各領域230a、230b、230cにおいて上ウェハW1を水平に真空吸着する。
【0053】
また、上チャック230は、当該上チャック230を鉛直方向に貫通する貫通孔243を中心に備えると共に、貫通孔243の周辺に押動部250を備える。押動部250は、下ウェハW2と間隔をあけて配置された上ウェハW1の中心を押し下げることで、上ウェハW1を下ウェハW2に接触させる。
【0054】
押動部250は、押動ピン251と、当該押動ピン251の昇降ガイドである外筒252とを有する。押動ピン251は、例えばモータを内蔵した駆動部(図示せず)によって、貫通孔243に挿通され、上チャック230の吸着面から突出し、上ウェハW1の中心を押し下げる。
【0055】
一方、下チャック231も、下ウェハW2を吸着する吸着面300において、複数の区画された領域を有する。下チャック231の上面には、円環状のリブ301、302、303、および放射状のリブ305(
図11参照)が設けられる。吸着面300は、各リブ301、302、305の上端によって構成されている。この下チャック231の吸着面300の構成については、後に詳述する。
【0056】
下チャック231には、鉛直方向に昇降自在な複数(例えば、3つ)のリフトピン265が設けられる。複数のリフトピン265は、上昇に伴って下チャック231の吸着面300から突出する。各リフトピン265は、搬送装置61により搬入した下ウェハW2に対して上昇することで、当該下ウェハW2を受け取る。また、各リフトピン265は、搬送装置61の退出後に下降することで、下ウェハW2を吸着面300に載置する。なお、複数のリフトピン265は、下ウェハW2の受け取り時に、当該下ウェハW2を真空吸着してもよい。
【0057】
そして、本実施形態に係る下チャック231は、吸着面300を変形可能な構成としている。下チャック231は、例えば、基台部232と、吸着部233とを備える。吸着部233は、基台部232の上方に設けられ、下ウェハW2を下方から吸着保持する。吸着部233は、平面視で、下ウェハW2の直径よりも大径の正円状に形成され、周縁部に設けられた固定リング234によって基台部232に固定される。吸着部233の材質は、例えば、アルミナまたは炭化ケイ素等のセラミックである。
【0058】
そして、下チャック231は、基台部232の上面と吸着部233の下面との間に圧力可変空間235を備えると共に、圧力可変空間235を圧力変化させることで吸着部233を弾性変形させる変形調整部236を備える。換言すれば、吸着部233、圧力可変空間235および変形調整部236は、下チャック231を変形させる変形部を構成している。
【0059】
変形調整部236は、真空ポンプ236aと、加圧ポンプ236bと、切替バルブ236cとを備える。真空ポンプ236aは、圧力可変空間235のガスを排出することで、圧力可変空間235を減圧する。圧力可変空間235の減圧によって、吸着部233の上面が水平面、または中心側が窪む曲面となる。一方、加圧ポンプ236bは、圧力可変空間235にガスを供給することで、圧力可変空間235を加圧する。圧力可変空間235の加圧によって、吸着面300の中心側が隆起する曲面となる。吸着面300の変形量は、圧力可変空間235の圧力により調整できる。切替バルブ236cは、圧力可変空間235を、真空ポンプ236aに接続した状態と、加圧ポンプ236bに接続した状態とに切り替える。
【0060】
基台部232は、吸着面300の中央領域Aの突出量を測定する測定部237を有する。測定部237の測定ターゲット237aは、吸着部233の中央部と共に昇降する。測定部237は、例えば、静電容量センサであり、測定ターゲット237aとの距離に応じて変化する静電容量を検出することで、突出量を測定する。
【0061】
次に、
図8~
図10を参照して、
図4のステップS109における接合ウェハTを作製する工程について詳述する。
図8に示すように、制御装置90は、搬送装置61により接合モジュール41に対して上ウェハW1と下ウェハW2を搬入する(ステップS111)。搬入後の上チャック230と下チャック231の相対位置は、
図6および
図7に示す基板受渡位置である。
【0062】
次に、制御装置90は、移動機構290により、上チャック230と下チャック231の相対位置を基板受渡位置から
図7に示す接合位置に移動させる(ステップS112)。このステップS112において、制御装置90は、
図9に示すように第1カメラS1と第2カメラS2とを用いて、上ウェハW1と下ウェハW2の位置合わせを行う。
【0063】
第1カメラS1は、上チャック230に固定されており、下チャック231に保持された下ウェハW2を撮像する。下ウェハW2の接合面W2jには、予め複数の基準点P21~P23が形成される。基準点P21~P23としては、電子回路のパターンや電極パッド等が用いられる。基準点の数は、任意に設定可能である。
【0064】
一方、第2カメラS2は、下チャック231に固定されており、上チャック230に保持された上ウェハW1を撮像する。上ウェハW1の接合面W1jには、予め複数の基準点P11~P13が形成されている。基準点P11~P13としては、電子回路等のパターンが用いられる。基準点の数は、任意に設定可能である。
【0065】
図9(A)に示すように、接合モジュール41は、移動機構290により、第1カメラS1と第2カメラS2の相対的な水平方向位置を調整する。具体的には、第2カメラS2が第1カメラS1の略真下に位置するように、移動機構290が下チャック231を水平方向に移動させる。そして、第1カメラS1と第2カメラS2とが共通のターゲットXを撮像し、第1カメラS1と第2カメラS2の水平方向位置が一致するように、移動機構290が第2カメラS2の水平方向位置を微調整する。
【0066】
次に、
図9(B)に示すように、移動機構290は、下チャック231を鉛直上方に移動させて、上チャック230と下チャック231の水平方向位置を調整する。具体的には、移動機構290が下チャック231を水平方向に移動させながら、第1カメラS1が下ウェハW2の基準点P21~P23を順次撮像すると共に、第2カメラS2が上ウェハW1の基準点P11~P13を順次撮像する。なお、
図9(B)は、第1カメラS1が下ウェハW2の基準点P21を撮像すると共に、第2カメラS2が上ウェハW1の基準点P11を撮像する様子を示している。
【0067】
第1カメラS1および第2カメラS2は、撮像した画像データを制御装置90に送信する。制御装置90は、第1カメラS1で撮像した画像データと第2カメラS2で撮像した画像データとに基づいて移動機構290を制御し、鉛直方向視にて上ウェハW1の基準点P11~P13と下ウェハW2の基準点P21~P23とが合致するように下チャック231の水平方向位置を調整する。
【0068】
次に、
図9(C)に示すように、移動機構290は、下チャック231を鉛直上方に移動させる。その結果、下ウェハW2の接合面W2jと上ウェハW1の接合面W1jとの間隔G(
図7参照)は、予め定められた距離、例えば80μm~200μmになる。間隔Gの調整は、第1変位計S3と、第2変位計S4とを用いる。
【0069】
第1変位計S3は、上チャック230に固定されており、下チャック231に保持された下ウェハW2の厚みを測定する。第1変位計S3は、例えば、下チャック231に保持された下ウェハW2に光を照射し、下ウェハW2の上下両面で反射された反射光を受光することで、下ウェハW2の厚みを測定する。厚みの測定は、例えば、移動機構290が下チャック231を水平方向に移動させる際に実施される。第1変位計S3の測定方式は、共焦点方式、分光干渉方式または三角測距方式等である。第1変位計S3の光源は、LEDまたはレーザを適用できる。
【0070】
一方、第2変位計S4は、下チャック231に固定されており、上チャック230に保持された上ウェハW1の厚みを測定する。第2変位計S4は、例えば、上チャック230に保持された上ウェハW1に光を照射し、上ウェハW1の上下両面で反射された反射光を受光することで、上ウェハW1の厚みを測定する。厚みの測定は、例えば、移動機構290が下チャック231を水平方向に移動させる際に実施される。第2変位計S4の測定方式は、例えば共焦点方式、分光干渉方式または三角測距方式等である。第2変位計S4の光源は、LEDまたはレーザを適用できる。
【0071】
各第1変位計S3および各第2変位計S4は、測定した測定情報を、制御装置90に送信する。制御装置90は、各第1変位計S3で測定した測定情報と各第2変位計S4で測定した測定情報とに基づいて移動機構290を制御し、間隔Gが設定値になるように下チャック231の鉛直方向位置を調整する。
【0072】
上ウェハW1と下ウェハW2の間隔Gを調整した後、真空ポンプ241aの作動を停止し、
図10(A)に示すように、領域230aにおける上ウェハW1の真空吸着を解除する。その後、押動部250の押動ピン251が下降して上ウェハW1の中心を押し下げることで、上ウェハW1を下ウェハW2に接触させる(ステップS113)。その結果、上ウェハW1と下ウェハW2の中央部同士が接合される。
【0073】
上ウェハW1の接合面W1jと下ウェハW2の接合面W2jはそれぞれ改質されているため、まず、接合面W1j、W2j間にファンデルワールス力(分子間力)が生じ、当該接合面W1j、W2j同士が接合される。さらに、上ウェハW1の接合面W1jと下ウェハW2の接合面W2jはそれぞれ親水化済みであるので、親水基(例えばOH基)が水素結合し、接合面W1j、W2j同士が強固に接合される。
【0074】
次に、制御装置90は、真空ポンプ241bの作動を停止し、
図10(B)に示すように、領域230bにおける上ウェハW1の真空吸着を解除する。続いて、制御装置90は、真空ポンプ241cの作動を停止し、
図10(C)に示すように、領域230cにおける上ウェハW1の真空吸着を解除する。
【0075】
このように、上ウェハW1の中心から周縁に向けて、上ウェハW1の真空吸着が段階的に解除され、上ウェハW1が下ウェハW2に段階的に落下して当接する。そして、上ウェハW1と下ウェハW2の接合は、中心から周縁に向けて順次進行する(ステップS114)。これより、上ウェハW1の接合面W1jと下ウェハW2の接合面W2jとが全面で当接し、上ウェハW1と下ウェハW2とが接合され、接合ウェハTが得られる。その後、接合装置1は、押動ピン251を元の位置まで上昇させる。
【0076】
図8に戻り、接合ウェハTの形成後、制御装置90は、移動機構290により、上チャック230と下チャック231の相対位置を、
図7に示す接合位置から
図5および
図6に示す基板受渡位置に移動する(ステップS115)。例えば、移動機構290は、先ず下チャック231を下降させ、下チャック231と上チャック230の鉛直方向の間隔を広げる。続いて、移動機構290は、下チャック231を横に移動させ、下チャック231と上チャック230を横にずらす。
【0077】
その後、制御装置90は、搬送装置61により、接合モジュール41に対する接合ウェハTの搬出を行う(ステップS116)。具体的には、先ず下チャック231が接合ウェハTの保持を解除する。続いて、複数のリフトピン265が上昇し、接合ウェハTを搬送装置61に渡す。その後、複数のリフトピン265が元の位置まで下降する。
【0078】
次に、下チャック231の吸着面300の構成について、
図11を参照しながら説明する。
図11は、下チャック231の吸着面300を示す平面図である。下チャック231の吸着面300は、径方向に沿って吸着圧力を個別に発生させる複数の領域を有する。
【0079】
例えば、吸着面300は、円環状のリブ301、302、303により、円状(正円状)の中央領域Aと、円環状の外側領域Bとに区画される。さらに、外側領域Bは、中央領域Aの外側に隣接する円環状の第1外側領域B1と、第1外側領域B1の外側に隣接する円環状の第2外側領域B2と、を含む。すなわち、中央領域A、第1外側領域B1、第2外側領域B2は、吸着面300の中心から径方向外側に向かって、この順番で同心円状に配置されている。なお、吸着面300は、第1外側領域B1と第2外側領域B2に分割せずに、径方向外側に向かって中央領域Aと1つの外側領域Bが並ぶ構成でもよい。逆に、吸着面300の外側領域Bは、3つ以上の円環状の領域を備えてもよい。
【0080】
第1外側領域B1は、複数の放射状のリブ305によって、8つの円弧状のゾーン(小領域:一部位)に区画されている。同様に、第2外側領域B2は、各リブ305によって、8つの円弧状のゾーンに区画されている。なお、第1外側領域B1の区画数と、第2外側領域B2の区画数とは、相互に異なってもよく、また相互の周方向の位置がずれていてもよい。
【0081】
中央領域A、第1外側領域B1の8つのゾーンおよび第2外側領域B2の8つのゾーンは、下ウェハW2を個別に吸引可能に構成される。ただし、本実施形態に係る下チャック231は、合計17のゾーンに対して10個の調整機構311を接続しており、吸着面300を10チャネルのゾーン毎に吸引する。言い換えれば、吸着面300は、合計17のゾーンのうち、同じ調整機構311によって吸引を行うゾーンを有している。なお、
図11では、吸引を行う(吸着圧力を発生する)各ゾーンについてシングルハッチングで示している。
【0082】
具体的には、中央領域Aは、1つのゾーン(ch1)となっている。第1外側領域B1は、3つのゾーン(ch2~ch4)を設定している。中央領域Aを基点としてX軸方向(
図11中の左右)に隣接する2つのゾーンがch2である。中央領域Aを基点としてY軸方向(
図11中の上下)に隣接する2つのゾーンがch3である。そして、外側領域Bにおいてch2のゾーンとch3のゾーンとに挟まれた4つのゾーンがch4である。第2外側領域B2は、6つのゾーン(ch5~ch10)を設定している。第1外側領域B1のX軸正方向(
図11中の左)に隣接する1つのゾーンがch5である。第1外側領域B1のX軸負方向(
図11中の右)に隣接する1つのゾーンがch6である。第1外側領域B1のY軸負方向(
図11中の上)に隣接する1つのゾーンがch7である。第1外側領域B1のY軸正方向(
図11中の下)に隣接する1のゾーンがch8である。そして、第2外側領域B2においてch5のゾーンとch7のゾーンとに挟まれたゾーン、およびch6のゾーンとch7のゾーンとに挟まれたゾーンがch9である。同様に、第2外側領域B2においてch5のゾーンとch8のゾーンとに挟まれたゾーン、およびch6のゾーンとch8のゾーンとに挟まれたゾーンがch10である。
【0083】
吸着面300の中心を通るX軸線上には、X軸正方向からX軸負方向に向かって、ch5、ch2、ch1、ch2、ch6の各ゾーンが、この順に並んでいる。吸着面300の中心を通るY軸線上には、Y軸負方向からX軸正方向に向かって、ch7、ch3、ch1、ch3、ch8の各ゾーンが、この順に並んでいる。なお、吸着面300は、各ゾーンのチャネルの数や場所について自由に設計し得ることは勿論である。
【0084】
下チャック231には、吸着面300の各ゾーンに対して、吸引またはエアの吹き付けを行う吸着圧力発生部310が接続されている(
図7も参照)。具体的には、吸着圧力発生部310は、10チャネルの各々に接続される10個の調整機構311を備える。また、吸着圧力発生部310は、制御装置90に通信可能に接続され、制御装置90の制御下に各調整機構311を独立して動作させる。
【0085】
各調整機構311は、下チャック231の所定のゾーンに接続される流通ライン312を有し、この流通ライン312上に吸引ポンプ313、開閉バルブ314および圧力制御器315を備える。各ゾーンは、囲われている各リブの内側(吸着部233の上面)に、流通ライン312に連通する図示しない複数の孔部を有する。
【0086】
各調整機構311は、例えば、所定の流通ライン312の吸引ポンプ313を作動させて開閉バルブ314を開放することで、その流通ライン312が接続されているチャネルの各孔部に吸着圧力(負圧)を発生させる。吸着圧力の大きさは、圧力制御器315により制御する。また、各調整機構311は、所定の流通ライン312の開閉バルブ314を閉塞すると共に、圧力制御器315を介して大気を導入することで、各ゾーンの吸着圧力を解除する。
【0087】
ここで、接合装置1により接合される上ウェハW1および下ウェハW2は、
図12(A)に示すように、全体的に反っていることがある。上ウェハW1および下ウェハW2の反りは、例えば、シリコンウェハ等の半導体基板の上に、複数の膜が積層されることで生じる。各膜は、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、ALD(Atomic Layer Deposition)法、またはスピンオン法等で成膜される。成膜時の熱膨張差によって上ウェハW1および下ウェハW2に応力がかかり、上ウェハW1および下ウェハW2の反りが生じる。
【0088】
上ウェハW1および下ウェハW2は、2つの直交する径方向の直線を挟んで対称な反り、つまり、線対称な反りに形成されることが多い。シリコンウェハ等の半導体基板のヤング率、ポアソン比、およびせん断弾性係数が90°周期で変化するからである。2つの直交する径方向の直線は、吸着面300に直交する方向(Z軸方向)から見て、半導体基板の特定の結晶方位に延びている。
【0089】
上ウェハW1および下ウェハW2の反りは、例えば、接合装置1とは別に設けられた反り測定装置5(
図1参照)で測定される。制御装置90は、反り測定装置5で測定した下ウェハW2の反り状態の情報を取得すると、上ウェハW1および下ウェハW2の処理中に、当該反り状態の情報をメモリ92に保持している。なお、反り測定装置5は、接合装置1の一部として設けられてもよい。接合装置1は、接合モジュール41内に設けられた図示しない複数の変位計により、上ウェハW1の搬入時や下ウェハW2の搬入時に反りを測定する構成でもよい。反りは、重力とその反力以外の外力(例えば吸着圧力)が作用していない状態で測定され、例えばステージの平坦面または複数本(例えば3本)のピンの上に載置した状態で測定される。
【0090】
そして、接合装置1は、上ウェハW1の反り状態の情報に基づき、上ウェハW1において反りが大きい2つの直交する径方向の直線が上チャック230のX軸方向およびY軸方向に沿うように、搬送装置61から上チャック230に受け渡す。例えば、上ウェハW1の姿勢は、上記した第1位置調節装置51(
図2参照)により調整される。また、接合装置1は、下ウェハW2の反り状態の情報に基づき、下ウェハW2において反りが大きい2つの直交する径方向の直線が下チャック231のX軸方向およびY軸方向に沿うように、搬送装置61から下チャック231に受け渡す。例えば、下ウェハW2の姿勢は、上記した第2位置調節装置52(
図2参照)により調整される。
【0091】
上ウェハW1および下ウェハW2の反りは、対称位置にある外縁が中心よりも吸着面300に近づく方向に反った形態と、対称位置にある外縁が中心よりも吸着面300から離れる方向に反った形態とがある。以下、吸着面300に下ウェハW2が載置されかつ吸着前の状態で、外縁が吸着面300に近づく方向に反った形態を凸反りともいう。また、吸着面300に下ウェハW2が載置されかつ吸着前の状態で、外縁が吸着面300から離れる方向に反った形態を凹反りともいう。
【0092】
下ウェハW2に凸反りが生じている場合、
図12(A)のX-X線断面およびY-Y線断面で示すように、X軸線(第1軸線)の両端の外縁およびY軸線(第2軸線)の両端の外縁は、中心に対して吸着面300に近づく方向(鉛直方向下側)に湾曲している。ただし、X軸線の反り量とY軸線の反り量とは、必ずしも一致しない。上記したように、ヤング率、ポアソン比、およびせん断弾性係数が90°周期で変化するためである。なお、本明細書において「反り量」とは、下ウェハW2(または上ウェハW1)の板厚を鉛直方向に沿わせた場合における、中心の高さ位置と外縁の高さ位置との間の長さを言う。
【0093】
例えば、
図12(A)の例では、X軸線の反り量が大きい一方で、Y軸線の反り量が小さい。これにより、下ウェハW2の上面(接合面W2j)のX軸線では、径方向外側に大きく伸びるストレスがかかり、上面のX軸線の各基準点P2xが径方向外側に大きく移動する。一方、下ウェハW2の上面のY軸線では、径方向外側に小さく伸びるストレスがかかり、上面のY軸線の各基準点P2yが径方向外側に小さく移動する。
【0094】
また、下ウェハW2に凹反りが生じている場合、
図12(B)のX-X線断面およびY-Y線断面で示すように、X軸線の両端の外縁およびY軸線の両端の外縁は、中心に対して吸着面300から離れる方向(鉛直方向上側)に湾曲している。また
図12(B)の例では、X軸線の反り量が大きい一方で、Y軸線の反り量が小さい。これにより、下ウェハW2の上面のX軸線では、径方向内側に大きく縮むストレスがかかり、上面のX軸線の各基準点P2xが径方向内側に大きく移動する。一方、下ウェハW2の上面のY軸線上では、径方向内側に小さく縮むストレスがかかり、上面のY軸線の各基準点P2yが径方向内側に小さく移動する。
【0095】
なお、図示は省略するが、上チャック230に吸着保持する上ウェハW1も、凸反りまたは凹反りが生じている場合がある。凸反りの上ウェハW1は、上チャック230に対向しかつ吸着する前の状態で、外縁が中心よりも上チャック230の吸着面に近づく方向(鉛直方向上側)に反った形態を呈している。凸反りの上ウェハW1を上チャック230が平坦状の吸着面に吸着したとしても、凸反りの上ウェハW1は、下面(接合面W1j)のX軸線またはY軸線において、径方向外側に伸びるようなストレスを潜在的に内在している。一方、凹反りの上ウェハW1は、上チャック230に対向しかつ吸着する前の状態で、外縁が中心よりも上チャック230の吸着面から離れる方向(鉛直方向下側)に反った形態を呈している。凹反りの上ウェハW1を上チャック230の平坦状の吸着面に吸着したとしても、凹反りの上ウェハW1は、下面(接合面W1j)のX軸線またはY軸線において、径方向内側に縮むようなストレスを潜在的に内在している。
【0096】
そこで、本実施形態に係る接合装置1は、下チャック231に下ウェハW2を載置する際に、上ウェハW1の反り状態および下ウェハW2の反り状態に基づいて、下ウェハW2の各基準点のP2x、P2yを移動させる構成としている。具体的には、接合装置1は、上ウェハW1の反り状態および下ウェハW2の反り状態に基づき吸着面300が吸着するゾーンを設定して下ウェハW2を吸着し、下チャック231の吸着面300を変形することで、下ウェハW2の上面を伸ばす動作を行う。
【0097】
以下、
図13(A)~
図13(C)を参照しながら、下チャック231による下ウェハW2の吸着時の動作について詳述していく。なお、
図13(A)~
図13(C)では、下チャック231のX軸線において下ウェハW2を吸着する例を示している。
【0098】
制御装置90は、下チャック231の吸着面300を変形する前に、下ウェハW2を先に吸着面300に載置して、当該下ウェハW2を部分的に吸着する。下ウェハW2の吸着では、下ウェハW2の接合面W2jにおいて大きく伸ばしたい箇所の吸着面300のゾーンを算出し、そのゾーンに対して吸着圧力を付与する。例えば
図13(A)および(B)では、下ウェハW2のX軸線の外縁付近を吸着するために、制御装置90は、吸着圧力発生部310により外側領域Bの周方向上の一部である5chおよび6chのゾーンに吸着圧力を付与する。この際、制御装置90は、外側領域Bの他のゾーンについては吸着圧力を付与しない。
【0099】
5ch、6chのゾーンは、吸着圧力によって下ウェハW2の下面(非接合面W2n)を吸着する。これにより
図13(B)に示すように、下チャック231は、吸着面300の変形前に、下ウェハW2のX軸線の外縁付近を吸着面300に強固に保持(固定)する。そして、制御装置90は、下ウェハW2のX軸線の外縁付近を保持した状態で、吸着面300の中央領域Aを吸着面300の外縁に対して上昇するように変形させる。下チャック231の吸着面300の変形に追従して、下ウェハW2も中心が外縁よりも上昇した形状に変形する。
【0100】
吸着面300の変形において、下ウェハW2は、下チャック231のX軸線の5ch、6chに保持されている。そのため、下ウェハW2の吸着箇所の上面(接合面W2j)がX軸線に沿って大きく伸びるようになる。逆に、下ウェハW2のY軸線の外縁付近は、吸着面300の変形において、吸着面300に吸着されていない自由端となっている。そのため、下ウェハW2のY軸線の上面も伸びるが、その伸び量はX軸線よりも小さくなる。
【0101】
すなわち、
図13(C)に示すように、吸着面300を変形した後の下ウェハW2において、X軸線の各基準点P2xは、径方向外側に大きく移動する。また、Y軸線の各基準点P2yは、径方向外側に小さく移動する。なお、
図13(C)では、各基準点P2xおよび各基準点P2yの移動量を矢印の長さにより誇張して示しているが、実際の各基準点P2xおよび各基準点P2yの移動は、数μm~数mm程度と微量である。
【0102】
吸着面300の変形前に、下チャック231により下ウェハW2を吸着して、吸着面300を変形させる動作は、下チャック231のX軸線に限定されないことは勿論である。制御装置90は、下チャック231のY軸線のゾーン(ch7、ch8)により下チャック231の非接合面W2nを吸着して、吸着面300を変形させることができる。これにより、下ウェハW2の接合面W2jのY軸線が大きく伸びる一方で、下ウェハW2の接合面W2jのX軸線が小さく伸びることになる。
【0103】
以上の下チャック231により下ウェハW2を吸着して、吸着面300を変形させる動作について、制御装置90は、上ウェハW1および下ウェハW2の各反り状態に基づき、動作の実施/非実施、および吸着させるゾーンの設定について判定を行う。例えば、
図14(A)に示すように、上ウェハW1が反っていない状態で、凹反りの下ウェハW2においてX軸線の反り量がY軸線の反り量よりも大きい場合、制御装置90は、下ウェハW2のX軸線を吸着することを判定する。この関係性では、下ウェハW2のX軸線における反り量の影響が大きいと言え、この反り量が大きい方の下ウェハW2の接合面W2jを伸ばす必要があるからである。
【0104】
つまり、
図14(B)の左図に示すように、吸着前の下ウェハW2は、X軸線の各基準点P2xが径方向内側に大きく移動し、Y軸線の各基準点P2yが径方向内側に小さく移動している。この場合、制御装置90は、反り量が大きい方に対向する吸着面300のch5、ch6に吸着圧力を発生させる判定を行う。下チャック231は、制御装置90の制御下にch5、ch6に吸着圧力を発生させて、下ウェハW2のX軸線の外縁付近を強固に保持し、その後に吸着面300を変形させる。またこの際、制御装置90は、下ウェハW2の反り量に基づき、吸着面300の中心が外縁に対して突出する突出量を適宜調整するとよい。
【0105】
これにより、下ウェハW2の接合面W2jのX軸線が大きく伸び、X軸線における縮む方向のストレスが相殺される。また、下ウェハW2の接合面W2jのY軸線が小さく伸び、Y軸線における縮む方向のストレスが相殺される。したがって
図14(B)の右図に示すように、吸着面300を変形した後の下ウェハW2の各基準点P2x、P2yは、接合装置1の接合時に、上ウェハW1の各基準点と良好に重なるようになる。
【0106】
なお、下チャック231に載置する下ウェハW2が凸反りである場合には、接合面W2jが径方向外側に伸びていることになる。この場合、制御装置90は、下ウェハW2のX軸線とY軸線のうち反り量が小さい方に対向するゾーンに吸着圧力を発生させるとよい。これにより、伸びが小さい方の軸線の各基準点を、伸びが大きい方の軸線の各基準点に合わせることができる。
【0107】
また、
図14(C)に示すように、上ウェハW1に反りが多少生じている場合には、制御装置90は、上ウェハW1の各基準点と下ウェハW2の各基準点とが合うように、下チャック231の動作を適宜制御するとよい。例えば、凹反りによって上ウェハW1のX軸線の各基準点P1xおよびY軸線の各基準点P1yが径方向内側にずれている場合、上ウェハW1の各基準点P1x、P1yのずれと、下ウェハW2の各基準点P2x、P2yのずれと、を合わせるように下チャック231を動作させる。
図14(C)の例では、下ウェハW2の各基準点P2x、P2yのずれに対向する上ウェハW1の各基準点P1x、P1yのずれを減算することで、相互の基準点を合わせている。そして、制御装置90は、減算後の下ウェハW2の各基準点P2x、P2yに応じて、下チャック231の動作を制御する。
図14(C)の例では、下チャック231により下ウェハW2のX軸線を吸着した後、吸着面300の突出量を調整することで、下ウェハW2の各基準点P2xを径方向外側に短く移動させればよい。
【0108】
図15(A)に示すように、凸反りの上ウェハW1においてX軸線の反り量がY軸線の反り量よりも大きい状態で、下ウェハW2が反っていない場合、制御装置90は、やはり下ウェハW2のX軸線を吸着することを判定する。この関係性では、上ウェハW1のX軸線における反りの影響が大きく、これに対応する下ウェハW2の接合面W2jを伸ばす必要があると言えるからである。
【0109】
つまり、
図15(B)の左図に示すように、吸着前の上ウェハW1は、X軸線の各基準点P1xが径方向内側に大きく移動し、Y軸線の各基準点P1yが径方向内側に小さく移動している。この場合、制御装置90は、吸着面300のch5、ch6に吸着圧力を発生させる判定を行う。下チャック231は、制御装置90の制御下にch5、ch6の吸着圧力を発生させて下ウェハW2のX軸線の外縁付近を強固に保持し、その後に吸着面300を変形させる。またこの際、制御装置90は、上ウェハW1の反り量に基づき、吸着面300の中心が外縁に対して突出する突出量を適宜調整するとよい。
【0110】
これにより、下ウェハW2の接合面W2jのX軸線が大きく伸びて、下ウェハW2のX軸線の各基準点P2xを上ウェハW1のX軸線の各基準点P1xに合わせることが可能となる。また、下ウェハW2の接合面W2jのY軸線が小さく伸びて、下ウェハW2のY軸線の各基準点P2yを上ウェハW1のY軸線の各基準点P1yに合わせることができる。したがって、吸着面300を変形した後の下ウェハW2の各基準点P2x、P2yは、接合装置1の接合時に、上ウェハW1の各基準点P1x、P1yと良好に重なるようになる。
【0111】
なお、
図15(C)に示すように、下ウェハW2に反りが多少生じている場合には、制御装置90は、上ウェハW1の各基準点と下ウェハW2の各基準点とが合うように、下チャック231の動作を適宜制御するとよい。例えば、凹反りによって下ウェハW2のX軸線の各基準点P2xおよびY軸線の各基準点P2yが径方向内側にずれている場合、上ウェハW1の各基準点P1x、P1yのずれと、下ウェハW2の各基準点P2x、P2yのずれと、を合わせるように下チャック231を動作させる。
図15(C)の例では、上ウェハW1の各基準点P1x、P1yのずれに対して、下ウェハW2の各基準点P2x、P2yの径方向内側のずれを加算することで、相互の基準点を合わせている。そして、制御装置90は、加算後の上ウェハW1の各基準点P1x、P1yに応じて、下チャック231の動作を制御する。例えば
図15(C)の例では、下チャック231により下ウェハW2のX軸線を吸着した後、吸着面300の突出量を調整することで、下ウェハW2の各基準点P2xを径方向外側に短く移動させればよい。
【0112】
本実施形態に係る接合装置1は、基本的には以上のように構成され、以下その動作について
図16のフローチャートを参照しながら説明する。
【0113】
図16に示すように、接合方法では、接合予定の上ウェハW1および下ウェハW2について接合装置1に搬入する前に、反り測定装置5により当該上ウェハW1および下ウェハW2のそれぞれの反りを測定する(ステップS201)。制御装置90は、上ウェハW1および下ウェハW2の反り状態の情報を反り測定装置5から取得する。反り測定装置5による上ウェハW1および下ウェハW2の測定は、図示しない搬送装置により反り測定装置5にウェハを搬送して自動的に実施してもよく、ユーザの手動によって実施してもよい。
【0114】
次に、制御装置90は、
図4の各ステップS101~S104に沿って上ウェハW1を処理した後、搬送装置61により接合モジュール41内に上ウェハW1を搬入して、上チャック230に上ウェハW1を吸着させる(
図16のステップS202)。また、制御装置90は、
図4の各ステップS105~S108に沿って下ウェハW2を処理した後、下チャック231に下ウェハW2を載置する(
図16のステップS203)。このステップS202、S203の動作は、
図8のステップS111の動作と同じである。
【0115】
また、上ウェハW1および下ウェハW2の搬送中等において、制御装置90は、測定された上ウェハW1および下ウェハW2の反り状態に基づき、下ウェハW2を吸着面300に載置した後に吸着面300の変形を行うか否かを判定する(ステップS204)。例えば、上ウェハW1および下ウェハW2の反り状態(反り量、反りの向き等)が相互に同じ場合、言い換えれば、上ウェハW1の各基準点および下ウェハW2の各基準点が予め略一致している場合、制御装置90は、吸着面300を変形しないことを判定する。吸着面300を変形しない場合(ステップS204:NO)には、後記のステップS205~S207を飛ばしてステップS208に進む。その一方で、上ウェハW1および下ウェハW2の反り状態(反り量、反りの向き等)が相互にずれている場合、制御装置90は、吸着面300の変形を判定し(ステップS204:YES)、ステップS205に進む。吸着面300を変形する場合、制御装置90は、さらに上ウェハW1および下ウェハW2の反りの状態(各反りの向きにおける反り量の差分)に基づき、吸着面300の変形量(突出量)を設定する。
【0116】
そして、制御装置90は、取得した上ウェハW1の反り状態および下ウェハW2の反り状態に基づいて、下チャック231の各ゾーンのうち下ウェハW2を吸着するゾーン(一部)を設定する(ステップS205)。制御装置90は、予め保有している計算式やマップ情報等と、上ウェハW1および下ウェハW2の反りの状態(各反りの向きにおける反り量の差分)とを用いて、上記したように上ウェハW1の各基準点および下ウェハW2の各基準点を合わせることが可能なゾーンを抽出する。そして、制御装置90は、
図8のステップS112を行う前に、以下のステップS206~ステップS208を行う。
【0117】
具体的には、制御装置90は、吸着圧力発生部310を動作させてステップS205で設定した各ゾーンに吸着圧力を発生させることで、各ゾーンに対向する下ウェハW2の下面(非接合面W2n)を吸着する(ステップS206:(A)の工程)。これにより、下ウェハW2のX軸線の外縁付近またはY軸線の外縁付近が、設定された下チャック231のゾーンに吸着される。
【0118】
さらに、制御装置90は、下ウェハW2を保持した状態で(下ウェハW2の吸着を継続しながら)、吸着面300の中央領域Aを外縁に対して突出させることにより、吸着面300を変形させる(ステップS207:(B)の工程)。これにより、吸着面300の変形に追従するように下ウェハW2が変形し、上ウェハW1の各基準点と下ウェハW2の各基準点とを接合時において互いに対向する位置に重ねることができる。
【0119】
吸着面300の変形後(または吸着面300を変形しない場合は下ウェハW2の載置後)、制御装置90は、吸着圧力発生部310を動作させて、吸着面300全体で下ウェハW2を吸着する(ステップS208)。なおこの際、吸着圧力発生部310は、各チャンネル間で吸着圧力を個別に変えて下ウェハW2を吸着してもよい。以上のステップS201~ステップS208までの動作によって、下チャック231に下ウェハW2を載置する基板載置方法が終了する。
【0120】
最後に、制御装置90は、下チャック231により下ウェハW2を保持した状態で、上ウェハW1と下ウェハW2とを接合する接合動作を行う(ステップS209:(C)の工程)。この接合動作については
図8のステップS112~S116までの処理を実施すればよい。上記の処理フローを行っていることで、接合装置1は、上ウェハW1の各基準点と下ウェハW2の各基準点と一致した状態で、上ウェハW1および下ウェハW2を精度よく接合できる。
【0121】
以上のように、本実施形態に係る接合装置1および基板載置方法は、上ウェハW1または下ウェハW2の反り状態に基づき、複数のゾーンの一部に吸着圧力を発生させて下ウェハW2を吸着した状態で、吸着面300を変形させる。よって例えばストレスより、上ウェハW1の各基準点と下ウェハW2の各基準点とに相対的にずれが生じていても、相互の各基準点のずれを緩和できる。その結果、接合装置1および基板載置方法は、上ウェハW1および下ウェハW2のストレスの分布を改善して、基板を適切に保持できる。
【0122】
特に、接合装置1は、上チャック230および下チャック231のうち、下チャック231の吸着面300を変形させて、上チャック230の吸着面を変形しない構成としている。これにより、上ウェハW1を押動ピン251で押して中央から貼合していく過程で、上ウェハW1を伸ばす一方で、吸着面300の下ウェハW2の変形により上ウェハW1の各基準点のずれをキャンセルできる。なお、接合装置1は、上チャック230(上ウェハW1)を変形する構成でもよく、あるいは上チャック230および下チャック231の両方を変形する構成でもよい。
【0123】
また、接合装置1は、X軸線の反り量およびY軸線の反り量に基づき、吸着圧力を発生させるゾーンを設定することで、下ウェハW2を吸着面300に適切に保持することができる。さらに下ウェハW2の接合面W2jにおいて伸ばす必要がある箇所を充分に伸ばすことができる。
【0124】
そして、接合装置1は、中央領域Aを挟んだ対称位置のゾーン(例えば、ch5とch6)を吸着することで、下チャック231に対する下ウェハW2のずれを良好に抑制できる。特に、接合装置1は、第2外側領域B2の各ゾーンにおいて下ウェハW2を吸着することで、下ウェハW2においてストレスが顕在化し易い外縁付近を良好に伸ばすことができる。
【0125】
またさらに、接合装置1は、上ウェハW1の反り状態を加味して下ウェハW2を吸着するゾーンを設定することで、上ウェハW1と下ウェハW2を一層精度よく対向させる(各基準点同士を合わせる)ことができる。
【0126】
なお、本実施形態に係る接合装置1および基板載置方法は、上記の実施形態に限らず種々の変形例をとり得る。例えば、接合装置1は、吸着面300の変形前に、外側領域Bの複数のゾーンにおいて、異なる吸着圧力を発生させてもよい。一例として、下ウェハW2を大きく伸ばしたいいゾーン(例えば、X軸線のch5、ch6)には第1吸着圧力を付与し、下ウェハW2を小さく伸ばしたいゾーン(例えば、Y軸線のch7、ch8)には第1吸着圧力よりも弱い第2吸着圧力を付与するとよい。あるいは、ダイアゴナル方向のゾーン(例えば、ch9、ch10)について、第1吸着圧力よりも弱い第2吸着圧力(または第2吸着圧力よりも弱い第3吸着圧力)を付与してもよい。要するに、吸着面300の変形前から変形する過程における各ゾーンの吸着圧力は任意に設定してよい。例えば、接合面W2jにおいて最も伸ばしたい箇所がダイアゴナル方向にある場合には、ダイアゴナル方向の吸着圧力を最も強くしてよい。
【0127】
また上記した実施形態では、下ウェハW2を吸着する際の下チャック231のゾーンは、X軸線の場合はch5、ch6であり、Y軸線の場合はch7、ch8である。しかしながら、接合装置1は、下ウェハW2を吸着する際のゾーンについて、任意に設定してよい。例えば、
図17(A)~
図17(F)には、下ウェハW2を吸着する際の下チャック231の各ゾーンの別例を示している。
【0128】
図17(A)に示す第1変形例に係る接合装置1は、下ウェハW2のX軸線を吸着する場合に、第2外側領域B2のch5、ch6の他に、第1外側領域B1のch2を加えている。この場合でも、下チャック231は、下ウェハW2のX軸線を良好に固定した状態で吸着面300を変形できる。なお下ウェハW2のY軸線を吸着する場合、接合装置1は、ch3、ch7、ch8に吸着圧力を付与すればよい。
【0129】
図17(B)に示す第2変形例に係る接合装置1は、下ウェハW2のX軸線を吸着する場合に、外側領域Bのch2、ch5、ch6の他に、中央領域Aのch1を加えている。この場合でも、下チャック231は、下ウェハW2のX軸線を良好に固定した状態で吸着面300を変形できる。なお下ウェハW2のY軸線を吸着する場合、接合装置1は、ch1、ch3、ch7、ch8に吸着圧力を付与すればよい。
【0130】
図17(C)に示す第3変形例に係る接合装置1は、下ウェハW2のX軸線を吸着する場合に、第1外側領域B1のch2のみに吸着圧力を発生させる。これにより例えば、下ウェハW2の中心と外縁の間の中間を伸ばしたい場合等において、その箇所を固定して変形できる。なお、下ウェハW2のY軸線を吸着する場合、接合装置1は、ch3に吸着圧力を付与すればよい。
【0131】
図17(D)に示す第4変形例に係る接合装置1は、下ウェハW2のX軸線を吸着する場合に、第2外側領域B2のch5、ch6に加えて、ダイアゴナル方向のゾーン(ch9、ch10)にも吸着圧力を発生させる。これにより例えば、下ウェハW2の外縁の広い範囲を下チャック231に吸着させることができ、下ウェハW2を伸ばす周方向の範囲を広げることが可能となる。なお、下ウェハW2のY軸線を吸着する場合、接合装置1は、ch7~ch10に吸着圧力を付与すればよい。
【0132】
図17(E)に示す第5変形例に係る接合装置1は、下ウェハW2のX軸線を吸着する場合に、第2外側領域B2のch5、ch6の他に、中央領域Aのch1を加えている。この場合でも、下チャック231は、下ウェハW2のX軸線を良好に固定した状態で吸着面300を変形できる。なお下ウェハW2のY軸線を吸着する場合、接合装置1は、ch1、ch7、ch8に吸着圧力を付与すればよい。
【0133】
図17(F)に示す第6変形例に係る接合装置1は、下ウェハW2のX軸線の両端部を吸着せずに、下ウェハW2のX軸線の一端部のみ(
図17(F)ではch5)を吸着している。例えば、下ウェハW2の一部の部位を伸ばしたい場合には、それに対応するチャネルにより下ウェハW2を吸着することでも、その部位を良好に伸ばすことができる。なお下ウェハW2のY軸線を吸着する場合、接合装置1は、ch7に吸着圧力を付与する、またはch8に吸着圧力を付与すればよい。要するに、下ウェハW2を吸着するゾーンは対称形状をとっていなくてもよい。
【0134】
次に、他の実施形態に係る基板処理装置(接合装置1)の基板載置方法について、
図18(A)~
図19を参照しながら説明する。他の実施形態に係る基板載置方法は、下チャック231に下ウェハW2を載置し、吸着面300の各ゾーンの全部に吸着圧力を発生させて下ウェハW2を吸着した後に吸着面300を変形する点で、吸着面300のゾーン毎に吸着する上記の基板載置方法とは異なる。そして、この基板載置方法では、上ウェハW1および下ウェハW2の反りの状態(各反りの向きにおける反り量の差分)に基づき、吸着面300の変形量(吸着面300の突出量または陥没量)を調整する構成としている。
【0135】
ここで、従来の接合装置では、下ウェハW2の載置前に下チャックを変形させて、当該変形した後の下チャックに対して下ウェハW2を載置する動作を行っていた。この場合、下チャックの変形に対する下ウェハW2の変形量(伸びや縮み:基準点の移動)が少なくなる。これに対して、他の実施形態に係る基板載置方法は、下ウェハW2の載置前には平坦状の面を維持して下ウェハW2を載置させて、この載置後に下ウェハW2の全体を吸着して吸着面300を変形させる。これにより、下ウェハW2は、下チャック231の変形と一体的に変形するようになり、変形量が大きくなる。例えば、上ウェハW1の各基準点と下ウェハW2の各基準点との間に大きなずれが生じていることで下ウェハW2の変形量が大きくなる場合でも、下チャック231は、広いレンジを持って下ウェハW2の変形を行うことが可能となる。
【0136】
図18(A)に示すように、制御装置90は、上ウェハW1および下ウェハW2の反り量の差分が大きい程、吸着面300の変形量を大きくするように調整する。逆に
図18(B)に示すように、制御装置90は、上ウェハW1および下ウェハW2の反り量の差分が小さい程、吸着面300の変形量を小さくするように調整する。これにより、下チャック231は、吸着面300の変形に伴い、下ウェハW2の各基準点を適切な位置に移動させることができる。なお、接合装置1ではない基板処理装置においてウェハを変形する場合には、2つのウェハの差分ではなく載置予定のウェハの反り量に基づき、吸着面の変形量を設定してよい。
【0137】
また、接合装置1は、
図18(C)に示すように下チャック231の吸着面300の全てのゾーンより下ウェハW2を吸着することで、下ウェハW2全体を安定的に変形させることが可能となる。この場合でも、吸着圧力発生部310は、少なくとも外側領域B(
図11参照)の複数のゾーンの一部に吸着圧力を発生させている状態と言える。ただし、接合装置1は、下ウェハW2の全体を吸着することに限定されず、例えば、
図18(D)に示すように、第2外側領域B2における周方向全周のゾーン(ch5~ch10)または外側領域Bのゾーン全体により、下ウェハW2を吸着してもよい。下ウェハW2の外周部を環状に固定することによって、変形が大きい下ウェハW2の外周部を、吸着面300の変形に伴い重点的に伸ばすことが可能となる。
【0138】
以下、他の実施形態に係る基板載置方法について、
図19のフローチャートを参照しながら説明する。制御装置90は、接合装置1の各構成を制御して、
図19のステップS301~S308を実行する。ステップS301~S303は、
図16のステップS201~S203と略同一であり、その詳細な説明については省略する。
【0139】
ステップS304において、制御装置90は、測定された上ウェハW1および下ウェハW2の反り状態に基づき、吸着面300の変形を行うか否かを判定する。例えば、上ウェハW1の各基準点および下ウェハW2の各基準点が予め略一致している場合、制御装置90は、吸着面300を変形しないことを判定し(ステップS304:NO)、後記のステップS309に進む。つまり、制御装置90は、上ウェハW1および下ウェハW2の反り状態に応じて、吸着面300を変形させずにそのまま吸着することを選択する。一方、上ウェハW1の各基準点および下ウェハW2の各基準点が相互にずれている場合、制御装置90は、吸着面300の変形を判定し(ステップS304:YES)、ステップS305に進む。
【0140】
ステップS305において、制御装置90は、取得した上ウェハW1の反り状態および下ウェハW2の反り状態に基づいて、吸着面300の変形量を設定する。制御装置90は、予め保有している計算式やマップ情報等と、上ウェハW1および下ウェハW2の反りの状態(各反りの向きにおける反り量の差分)とを用いて、上ウェハW1の各基準点および下ウェハW2の各基準点を合わせることが可能な変形量を算出する。
【0141】
そして、下ウェハW2を吸着面300に載置した後に、制御装置90は、吸着圧力発生部310を動作させて、吸着面300全体で下ウェハW2を吸着する(ステップS306)。これにより、下ウェハW2の非接合面W2n全体が吸着面300に固定される。
【0142】
次に、制御装置90は、ステップS305で算出した吸着面300の変形量に基づき、吸着面300および下ウェハW2を変形させる(ステップS307)。吸着面300の全面に固定された下ウェハW2は、この吸着面300の変形に追従して円滑に変形するようになる。例えば、上ウェハW1の各基準点と下ウェハW2の各基準点の位置ずれが大きい場合でも、下ウェハW2は、相互の各基準点の位置ずれを解消するように吸着面300の変形に応じて、当該下ウェハW2の各基準点を移動させることできる。
【0143】
また、ステップS304において吸着面300を変形しないことを判定した場合、制御装置90は、ステップS309において、吸着面300全体で下ウェハW2を吸着する。これにより、変形していない吸着面300に下ウェハW2を固定できる。
【0144】
最後に、制御装置90は、下チャック231により下ウェハW2を保持した状態で、上ウェハW1と下ウェハW2とを接合する接合動作を行う(ステップS308:(C)の工程)。接合装置1は、ステップS305~S307またはステップS309の処理フローを行っていることで、上ウェハW1の各基準点と下ウェハW2の各基準点と一致した状態として、上ウェハW1および下ウェハW2を精度よく接合できる。
【0145】
上ウェハW1と下ウェハW2の接合後に、接合装置1は、接合ウェハTの吸着を解除する。例えば、接合装置1は、吸着面300の変形を維持したまま、接合ウェハTの回収時に各リフトピン265の上昇タイミングで下ウェハW2の吸着を解除して、接合ウェハTを搬送可能とする。これにより、吸着面300の変形を戻した後に接合ウェハTを搬送するよりも、接合ウェハTを早く搬出でき、スループットを向上させることができる。なお、接合ウェハTの吸着解除のタイミングおよび吸着面300の変形解除のタイミングは、特に限定されず、任意に設定してよい。
【0146】
以上のように、他の実施形態に係る基板載置方法でも、下ウェハW2のストレスの分布を改善して、下ウェハW2を適切に保持できる。特に、この基板載置方法は、上ウェハW1および下ウェハW2の反り状態に基づく変形量となるように吸着面300を変形させる。これにより、上ウェハW1の基準点と下ウェハW2の基準点とを容易に合わせることができる。しかも、下ウェハW2は、下チャック231に吸着された状態で、吸着面300の変形により伸びや縮みが生じることで、その変形量が大きくなる。したがって例えば、上ウェハW1の基準点と下チャック231の基準点のずれが大きい場合でも、下ウェハW2を充分に変形させて基準点同士を合わせることが可能となる。
【0147】
なお、この基板載置方法も、種々の変形例をとることができる。例えば、上記の説明では、下チャック231は、吸着面300を平坦面として下ウェハW2を載置し、その後に吸着面300を変形させる例を説明した。これに限らず、接合装置1は、下チャック231の吸着面300を多少変形させた状態として下ウェハW2を載置し、この載置後にさらに吸着面300を変形させる構成を採ってもよい。一例として、接合装置1は、下チャック231の吸着面300を予め50μm変形させた状態で下ウェハW2を載置し、載置後に吸着面300をさらに50μm(合計で100μm)変形させることができる。なお、接合装置1は、吸着面300を予め変形させた状態で下ウェハW2を載置した後、吸着面300を変形させない判定を行ってもよい。
【0148】
また、基板載置方法は、下チャック231の各ゾーンのうち一部のゾーンにより下ウェハW2を吸着し、この吸着状態で吸着面300の変形量を調整しながら変形を行ってもよい。これにより、基板載置方法は、例えば、下ウェハW2のX軸方向の各基準点およびY軸方向の各基準点のずれ量が異なる場合でも、両方の各基準点が均等な割り付けとなる位置に下ウェハW2を変形できる。
【0149】
今回開示された実施形態に係る基板処理装置(接合装置1)および基板載置方法は、すべての点において例示であって制限的なものではない。実施形態は、添付の請求の範囲およびその主旨を逸脱することなく、様々な形態で変形および改良が可能である。上記複数の実施形態に記載された事項は、矛盾しない範囲で他の構成も取り得ることができ、また、矛盾しない範囲で組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0150】
1 接合装置
90 制御装置
233 吸着部
235 圧力可変空間
236 変形調整部
300 吸着面
310 吸着圧力発生部
A 中央領域
B 外側領域
W1 上ウェハ
W2 下ウェハ