(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116291
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】二軸押出機
(51)【国際特許分類】
B29B 7/48 20060101AFI20240820BHJP
B29C 48/525 20190101ALI20240820BHJP
B29C 48/40 20190101ALI20240820BHJP
B29B 13/00 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
B29B7/48
B29C48/525
B29C48/40
B29B13/00
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024093874
(22)【出願日】2024-06-10
(62)【分割の表示】P 2021507276の分割
【原出願日】2020-03-12
(31)【優先権主張番号】P 2019053136
(32)【優先日】2019-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】岡田 翔平
(72)【発明者】
【氏名】植田 俊弘
(57)【要約】 (修正有)
【課題】含水原料からの水の圧搾排出効率を維持または向上しつつ、排水口に原料が詰まることを防止することができる二軸押出機、特に円錐型二軸押出機及び平行二軸押出機を提供する。
【解決手段】ケーシング2の後部側に投入口3が設けられ、先端部に吐出口4が設けられている。ケーシング2内に2本のスクリュー7が供給口3側から排出口4側に至るに従って軸間距離が漸次狭くなるように配置されている。後端壁11に、原料から圧搾されて生じた水を、ケーシング2外へ排出する排水口10が設けられている。排水口10は、後端壁11の最下端よりも上位に設けられている、円錐型二軸押出機及び平行二軸押出機。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端に混練物の吐出口を有し、後部に原料の投入口を有するケーシングと、
該ケーシング内に設置された2本のスクリューとを備え、
該ケーシングに排水口が設けられている、含水原料の圧搾用の二軸押出機において、
該排水口は、前記ケーシングの後部の下面部に、該排水口の最下端が該ケーシング内の最下端よりも上位となるように設けられており、
前記投入口の後縁よりも後方に該排水口の前縁が位置することを特徴とする円錐型二軸押出機。
【請求項2】
前記ケーシングの後端に後端壁が設けられており、
ケーシングの内面における排水口の後縁と前記後端壁の内面との距離が1mm以上であることを特徴とする請求項1の円錐型二軸押出機。
【請求項3】
前記ケーシングの内面における排水口の後縁は、前記後端壁の内面とケーシングの内面の最後部かつ最下部とが交わる部分から5~200mm上位の範囲に位置することを口請求項1の円錐型二軸押出機、
【請求項4】
前記排水口には固液分離手段が設けられていないことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の二軸押出機。
【請求項5】
前記投入口は、前記ケーシングの前記後端壁からケーシング先端側に離隔していることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の二軸押出機。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の二軸押出機を用いたゴム組成物の圧搾脱水方法。
法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含水原料の圧搾用の二軸押出機に係り、詳しくは円錐型二軸押出機及び平行二軸押出機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
含水原料を圧搾して脱水する円錐型二軸押出機が、特許文献1,2に記載されている。また、含水原料を圧搾して脱水する平行二軸押出機が、特許文献3,4に記載されている。
【0003】
二軸押出機の原料はパウダー状、ペレット状、球状等の形状であることが多く、また、原料は粘性を有することが多い。そのため、従来の円錐型二軸押出機や平行二軸押出機等では、その排水口に原料が詰まり、頻繁に運転を停止したり掃除をしたりする必要があった。また、排水口から原料が吐出されることもあり、歩留まりの低下や品質安定性の悪化につながるおそれもあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-202657号公報
【特許文献2】特開2005-280254号公報
【特許文献3】特開2012-111236号公報
【特許文献4】特開2016-129953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、含水原料からの水の圧搾排出効率を維持または向上しつつ、排水口に原料が詰まることを防止することができる二軸押出機、特に円錐型二軸押出機及び平行二軸押出機を提供することにある。
課題を解決するための手段
【0006】
本発明者らは鋭意検討をした結果、二軸押出機に対して、以下の手段を講じたことにより前記課題を解決しうるとの知見に基づき、本発明を完成させた。
【0007】
以下の第1及び第2発明は、二軸押出機に係る発明であり、好ましい態様として円錐型二軸押出機についてなされた発明であるが、本発明は円錐型二軸押出機に限定されない。
【0008】
第1発明の円錐型二軸押出機は、先端に混練物の吐出口を有し、後部に原料の投入口を有するケーシングと、該ケーシング内に設置された2本の円錐型スクリューとを備え、該ケーシングに排水口が設けられている、含水原料の圧搾用の円錐型二軸押出機において、該排水口の最下端は、該ケーシング内の最下端よりも上位に設けられていることを特徴とする。前記排水口は、ケーシングの後端壁や、ケーシング後部に設けられていることが好ましい。
【0009】
第1発明の一態様では、前記排水口には固液分離手段が設けられていない。
【0010】
第1発明の一態様では、前記投入口は、前記ケーシングの前記後端壁からケーシング先端側に離隔している。
【0011】
第1発明の一態様では、前記スクリューに、前記投入口の後端位置よりも後方にシールリングが設けられている。
【0012】
第2発明の円錐型二軸押出機は、先端に混練物の吐出口を有し、後部に原料の投入口を有するケーシングと、該ケーシング内に設置された2本の円錐型スクリューとを備えた、含水原料の圧搾用の円錐型二軸押出機において、前記スクリューのフライトのうち、前記投入口の前端よりも先端側の一部に欠損部分が設けられていることを特徴とする。
【0013】
第2発明の一態様では、前記欠損部分は、前記フライトの外縁からスクリュー軸心側に向って欠損した形状である。
【0014】
第2発明の一態様では、前記ケーシングと前記スクリューのフライトとの間隙が、前記投入口から吐出口に向かうに従って狭くなっている。
【0015】
第3発明の平行二軸押出機は、先端に混練物の吐出口を有し、後部に原料の投入口を有するケーシングと、該ケーシング内に設置された2本の平行なスクリューとを備えた、含水原料の圧搾用の平行二軸押出機において、前記投入口と前記吐出口との間に水排出用開口が設けられていないことを特徴とする。
【0016】
第3発明の一態様では、前記ケーシングの後端壁又は後端壁と前記投入口との間に排水口を有する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の二軸押出機によると、含水原料からの水の排出効率を維持または向上しつつ、排水口に原料が詰まることが防止(抑制を包含する)される。
【0018】
即ち、第1発明の円錐型二軸押出機によると、ケーシングの最下端よりも上位に排水口の最下端が設けられており、ケーシング最後部に溜った水が排水口から溢流するようにして排出される。排水口の最下端がケーシング内の最下端よりも上位に位置するので、ケーシング内の最後部の下端付近の原料が排水口まで到達しにくく、原料で排水口が閉塞することが防止される。
【0019】
第2発明の円錐型二軸押出機によると、フライトに欠損部分が設けられているので、圧搾により生じた水が欠損部分を通って後方へ移動するようになり、圧搾された水がスムーズに排水口から排出される。
【0020】
第3発明の平行二軸押出機のケーシングにあっては、投入口から吐出口までの間の範囲に水排出用の開口が設けられていないので、該範囲における開口の閉塞が生じない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】第1発明の実施の形態に係る円錐型二軸押出機の縦断面図である。
【
図2a】
図1の円錐型二軸押出機の水平断面図である。
【
図2b】第1発明の別の実施の形態に係る円錐型二軸押出機の縦断面図である。
【
図2c】
図2bの円錐型二軸押出機の水平断面図である。
【
図3】第1発明の別の実施の形態に係る円錐型二軸押出機の縦断面図である。
【
図4】第2発明の実施の形態に係る円錐型二軸押出機の縦断面図である。
【
図5】
図4の円錐型二軸押出機のスクリューの軸心線と垂直方向の概略断面図である。
【
図6】
図4の円錐型二軸押出機のスクリューの軸心線と垂直方向の概略断面図である。
【
図7】第2発明の別の実施の形態に係る円錐型二軸押出機の縦断面図である。
【
図8】第3発明の実施の形態に係る平行二軸押出機の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[第1発明の実施の形態]
図1は、含水した熱可塑性エラストマー、ゴム、樹脂などの含水原料を圧搾して脱水する円錐型(コニカル)二軸押出機1の縦断面図であり、
図2はその水平断面図である。
【0023】
この円錐型二軸押出機1は、ケーシング2を有する。このケーシング2の後端に後端壁11が設けられている。ケーシング2の後部側の上面部に、含水原料を供給するための原料投入口3が設けられ、先端部に、脱水された原料を押し出すための吐出口4が設けられている。
【0024】
ケーシング2内に、前記投入口3から投入された含水原料を搬送しつつ圧搾する2本のスクリュー7が水平方向に隣接して収容されている。各スクリュー7は、ロータ軸5と、該ロータ軸5の外周から起立する螺旋状のフライト6とを有する。
【0025】
2本のロータ軸5は、投入口3側から吐出口4側に至るに従って軸間距離が漸次狭くなるように配置されている。ロータ軸5の外径及びフライト6の外径は、投入口3側から吐出口4側に至るに従って小さくなるよう形成されている。
【0026】
2本のスクリュー7のロータ軸5は、その軸線のなす角度が10~40度の範囲になるよう配置されている。2本のスクリュー7は、前記フライト6が噛合状態となるよう配置されている。
【0027】
各スクリュー7のロータ軸5は、その大径側がケーシング2の後端壁11に片持ち支持され、駆動装置8が連結されている。
【0028】
駆動装置8は、2本のロータ軸5を互いに反対方向に回転させるものである。ロータ軸5の回転方向は、投入口3から投入された原料を2本のスクリュー7,7の間に食い込ませる方向とされている。
【0029】
この実施の形態では、一方のロータ軸5は駆動装置8によって直接に駆動され、他方のロータ軸5は傘歯車9により連動連結されて反対方向に回転駆動されるよう構成されているが、このような駆動方式に限定されるものではない。
【0030】
後端壁11に、原料から圧搾されて生じた水を、ケーシング2外へ排出する排水口10が設けられている。排水口10の最下端は、後端壁11の最下端よりも上位に設けられている。
【0031】
この排水口10は、一部の原料が通過してもよい大きさの開口よりなる。この実施の形態では、この排水口10に、スクリーン等の固液分離手段を設けなくてもよい。フライト6の外周とケーシング2の内面との間隔が、ほとんどの原料の直径より狭くなるようにすることが好ましい。これによってほとんどの原料は投入口3側から吐出口4側へ運搬される。仮にフライト6間の間隙を原料が通過して、排水口10近傍のケーシング2下面に堆積したとしても、回転するフライト6によって原料が掻き揚げられ吐出口へ向かう。そのため、投入口3からの原料供給量に対してスクリュー7の回転数を適切に保つことによって、排水口10から原料が漏れ出ることが抑制される。これは原料の比重が水の比重より大きい為である。
【0032】
フライト6の外周とケーシング2内面との間隔は、5mm以内であることが好ましく、1mm以内であることがより好ましく、0.5mm以内であることがさらに好ましい。これにより、投入口3から排水口10側へ原料が移動することが防止され、スクリュー7によって吐出口4へと運搬される。
【0033】
従来の円錐型二軸押出機では、排水口に、例えば、ウエッジワイヤスクリーン、パンチングプレート、メッシュ又は布等の網状物などが設けられていたが、この実施の形態ではこのような固液分離手段を設置しないことが好ましい。
【0034】
ケーシング2の内面のうち下面部は、後端壁11から吐出口4に向って上り勾配となっている。
【0035】
このように構成された円錐型二軸押出機にあっては、含水原料は投入口3から投入され、スクリュー7によって圧搾されつつ、吐出口4に向って搬送される。ケーシング2内の後部の下面に堆積した原料は、回転している円錐型スクリュー7のフライト6によってかきあげられ、ケーシング2の前方に移送され圧搾される。圧搾された水は、ケーシング2の下面部の勾配に従って後方に流れ、後端壁11の排水口10から排出される。このように、圧搾により生じた水と前記原料との流れを逆方向にすることで効率的に脱水できる。
【0036】
この実施の形態においては、後端壁11の最下端(後端壁11の内面とケーシング2の内面の最後部かつ最下部とが交わる部分)よりも上位に排水口10を設ける。排水口10の最下端が後端壁11の最下端より上位に位置する。好ましくは、該後端壁11の最下端より5mm以上、より好ましくは10mm以上、更に好ましくは15mm以上上位、かつ、特に限定されないが、好ましくは200mm以下より好ましくは100mm以下の範囲に排水口10の最下端が位置するよう排水口10を設ける。これにより、原料は水(圧搾水)より比重が大きい為、圧搾水に沈み、選択的に圧搾水のみが排水口から排出される。なお、ケーシング後端壁11の最下端に排水口を設けると、該原料によって排水口が閉塞し易くなり、圧搾水が排出されにくくなる。
【0037】
排水口10の高さが高すぎると、ケーシング2内に溜った圧搾水の水面レベルが、前記吐出口4の下縁に到達し、前記吐出口4から原料とともに水が吐出されるところから、排水口10の開口下縁のレベルは、吐出口4の下縁のレベルよりも低位とすることが好ましい。
【0038】
排水口10の好ましい配置高さは、ケーシング2の大きさに依存するものであり、ケーシング2が大きい場合にはより高い位置が好ましく、ケーシング2が小さい場合や原料径が小さい場合にはより低い位置が好ましい。
【0039】
この実施の形態の円錐型二軸押出機は、スクリュー径(後端部の直径)が100mmから500mmの大きさのものに好適に用いることができる。
【0040】
この実施の形態では、前記排水口10に固液分離手段を設けないことにより、原料が前記排水口10に到達しても、排水口10の閉塞が生じることが防止される。
【0041】
この実施の形態では、原料投入口3は後端壁11から離隔して所定距離前方の位置にあることが好ましい。このように投入口3が後端壁11より前方に位置し、かつ、排水口10が後端壁11にあることにより、圧搾されて生じた水との流れと原料の流れとを分けることができる。
【0042】
また、投入口3が後端壁11から離れていることにより、投入口3からケーシング2内に投入された原料が直接に排水口10に到達することが防止され、効率よく原料を脱水することができる。
【0043】
投入口3の後端と後端壁11との間の距離は、10mm以上特に15mm以上とりわけ20mm以上が好ましい。この長さの上限は特に限定されないが、前記原料がスクリュー7とケーシング2との間で圧搾される領域を確保することが必要であるところから、スクリュー径が200mmの円錐型二軸押出機であれば、1000mm以下が好ましい。
【0044】
投入口3の後端と後端壁11との間の好ましい距離は、ケーシング2の大きさに依存するものであり、ケーシング2が大きい場合にはより長い方が好ましく、ケーシング2が小さい場合等にはより短い方が好ましい。
【0045】
第1発明の一態様では、投入口3の後端と後端壁11との間の距離は、N条の条数を有するフライト6に対して、投入口3の後端から後端壁11までの間に、360/N°のスクリューフライトが存在できるだけの距離とされる。これにより、原料が前記排水口に到達するまでに、原料がスクリューフライトに接触し、吐出口3まで運搬されるようになる。なお、N条の条数とは、スクリューフライトを構成する螺旋がN組あることである。
【0046】
図1,2の実施の形態では、排水口10は後端壁11に設けられているが、ケーシング2に設けられてもよい。その一例に係る円錐型二軸押出機1’を
図2b,2cに示す。
【0047】
この円錐型二軸押出機1’では、ケーシング2の後部の下面部において、ケーシング2の最下部よりも若干上位の箇所に排水口10’,10’が設けられている。ケーシング2の内面における排水口10’の後縁と後端壁11内面との距離は、1mm以上、特に3mm以上であり、また排水口10’の前縁は投入口3後縁よりも後方であることが好ましい。投入口3の下方に排水口を存在させないことで、原料投入時に原料が直接排水口に流れ込み排水口を閉塞させる問題を防止することができる。なお、原料はケーシング2の下面に集まり後方へ移動するため、本発明では、たとえケーシング2の最下端ではないにしてもケーシング2の下面には排水口は設けない。
【0048】
この実施の形態においても、後端壁11の最下端(後端壁11の内面とケーシング2の内面の最後部かつ最下部とが交わる部分)より好ましくは5mm以上、より好ましくは10mm以上、更に好ましくは15mm以上上位、かつ、特に限定されないが、好ましくは200mm以下より好ましくは100mm以下の範囲に排水口10の最下端(ケーシング2の内面における排水口10’の最下端)が位置するよう排水口10を設ける。これにより、原料は水(圧搾水)より比重が大きい為、圧搾水に沈み、選択的に圧搾水のみが排水口から排出される。
【0049】
この円錐型二軸押出機1’のその他の構成は円錐型二軸押出機1と同じであり、
図2b,2cのその他の符号は
図1,2aと同一部分を示している。
【0050】
なお、
図2bは
図1と同様部分の縦断面図、
図2cは
図2aと同様部分の水平断面図である。
図2b,2cでは、排水口10’を明示するために、スクリュー6,7は、基端側の一部を切り欠いた状態にて示されているが、実際のスクリュー6,7にはかかる切り欠きは存在しない。スクリュー6,7の実際の形状は
図1,2aのスクリュー6,7と同じである。
【0051】
図3は、第1発明の別の実施の形態に係る円錐型二軸押出機1Aの縦断面図である。
【0052】
この実施の形態では、投入口3の後端から後端壁11までの区間に存在するスクリュー7にシールリング12を設けている。
図3の円錐型二軸押出機1Aのその他の構成は、上記円錐型二軸押出機1と同様であり、同一符号は同一部分を示している。
【0053】
この円錐型二軸押出機1Aにあっては、投入された原料が排水口10に到達することなく、スクリュー7によって吐出口3まで運搬され、効率よく前記原料を脱水することができる。
【0054】
シールリング12は、ケーシング2の内部空間を、スクリュー7の軸線またはケーシング2下面に対して45°~135°の角度をつけた断面で仮想的に切った場合に生じる面を塞ぐものである。シールリング12は、スクリュー7の軸線に対して垂直な断面で仮想的に切った場合に生じる面を塞ぐものであることが好ましい。
【0055】
シールリング12の外周とケーシング2内面との間隔は、10mm以内であることが好ましく、5mm以内であることがより好ましく、1mm以内であることがさらに好ましく、0.5mm以内であることが特に好ましい。これにより、原料がシールリング12よりも後方へ移動することが防止され、スクリュー7によって吐出口4へと運搬される。
【0056】
シールリング12の外周とケーシング2内面との間隔の好ましい範囲は、円錐型二軸押出機1Aの大きさに依存するものであり、円錐型二軸押出機1Aが大きい場合や原料径が大きい場合にはより広い方が好ましく、円錐型二軸押出機1Aが小さい場合や原料径が小さい場合にはより狭い方が好ましい。この実施の形態の場合、円錐型二軸押出機1Aは、スクリュー径が100mmから500mmの大きさであることが好ましい。
【0057】
<参考例1>
イーエム技研の円錐型二軸押出機であるCF-1Vを用いて、テストを行った。CF-1Vのスクリュー径は160mmである。
【0058】
この円錐型二軸押出機の、後端壁の最下端に幅9mmの間隙を設けて、それを排水口として脱水試験を行った。吐出量25kg/hから90kg/hまで、回転数15rpmから45rpmまでの条件で試験を行った。用いた原料は30%含水率のゴム組成物である。このゴム組成物は乳化重合SBR(スチレンブタジエンゴム)とカーボンブラックが主な成分である。この原料は直径1mmから50mmまでの直径の球状であり、比重はおよそ1.1である。
【0059】
この試験の結果、最も含水率が低減された条件において、含水率が約4%に達した。しかし、試験中、原料が排水口を度々閉塞し、排水口に詰まった原料を人力で除去し、閉塞を解消する必要があった。
【0060】
また、同設備を用いて同条件で、異なる原料に対して試験を行った。用いた原料は50%以上の含水率を有するゴム組成物である。このゴム組成物は天然ゴムとカーボンブラックが主な成分であり、その他の成分としてシリカ、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、グラフェン、セルロース、セルロースナノファイバー等のうち、いずれか1種類または複数種類を含む。この原料は直径0.5mm以下の球状である。一般的に粒径の小さなゴム組成物は含水率が高く、圧搾され辛いため、脱水が困難である。この試験の結果、原料であるゴム組成物は排水口に閉塞し、圧搾されず脱水されなかった。
【0061】
[第2の発明の実施の形態]
第2発明では、
図4の円錐型二軸押出機1Bのように、スクリュー7のフライト6が欠損部分13を有する。欠損部分とは、スクリューフライトに穴が開いていたり、切欠き部分があったり、それらが組み合わされていることである。
図4の円錐型二軸押出機1Bのその他の構成は
図1,2の円錐型二軸押出機1と同様であり、同一符号は同一部分を示している。
【0062】
この円錐型二軸押出機1Bにあっては、欠損部分が存在しないスクリューフライトに比べ、原料をより均一に脱水することができる。即ち、原料が投入口3から吐出口4へ向かう際、ロータ軸5に近い所を通過する原料や、ロータ軸5から遠くケーシング2内面に近い所を通過する原料も存在する。ロータ軸5に近い所を通過する原料は圧搾され生じた水の行き場が無く排水され難い。また、ケーシング2内面に近い所を通過する原料は、ケーシング2下面とフライト6との間隙を通りやすく、水が排水口10へと導かれ、排水されやすい。フライト6に穴や切欠き等の欠損部分を設けることによって、ロータ軸5に近い所を通過する原料から脱水された水を効果的に排水口へ導くことができる。
【0063】
なお、原料自体も穴や切欠き等の欠損部分12を通りうるが、そのような場合、原料が投入口3から入り、吐出口4から出るまでの滞留時間が増加することとなり、原料が圧搾される時間が増加することとなるため、原料からの水の排出効率が向上する。
【0064】
欠損部分12が穴よりなる場合、穴の直径は0.5mmより大きく直径30mmより小さいことが好ましく、穴の位置はロータ軸5に近い位置が好ましい。
【0065】
欠損部分12が
図5,6に示すように切欠き13a又は13bよりなる場合、切欠きの深さは0.1mmより大きいことが好ましく、切欠きの幅は0.1mmより大きく30mmより小さいことが好ましい。切欠きの深さの上限は無く、
図5のようにロータ軸5に到達するまで深い切欠き13aであってもよい。
【0066】
第2発明の一態様では、
図7の円錐型二軸押出機1Cの通り、ケーシング2とフライト6の間隙が、投入口3付近より吐出口4の方が狭くなっている。この実施の形態では、この間隙は、投入口3から吐出口4に向かうに従って狭くなっている。
図7のその他の構成は
図4と同様であり、同一符号は同一部分を示している。
【0067】
この実施の形態は、スクリューフライトに穴や切欠き等の欠損部分12を有する場合には特に有効であり、特にスクリュー軸に近い領域に存在する原料からの脱水が良好となる。特に、処理能力の大きな、大型の円錐型二軸押出機においては、脱水の効果が顕著であり、部分的に欠損したスクリューフライトとの組み合わせが、効率的な脱水には非常に有効である。即ち、フライト6の原料の噛み込みが良好になるとともに、高い圧力で原料を圧搾し脱水することができる。
【0068】
この円錐型二軸押出機1Cでは、投入口3の前端位置における、スクリュー軸に対して垂直な面における、ケーシング2内面からフライト6先端(外周端)までの距離をAとし、スクリュー7先端位置における、スクリュー軸に対して垂直な面における、ケーシング2内面からフライト6先端までの距離をBとした場合、A/Bが1.01以上となることが好ましく、1.05以上となることがより好ましい。なお、ケーシング2とフライト6との間隙が広すぎる場合には、原料の圧搾が弱くなり、脱水効率が低下するところから、A/Bは1.5以下であることが好ましい。
【0069】
<参考例2>
イーエム技研の円錐型二軸押出機であるCF-1Vを用いて、テストを行った。CF-1Vのスクリュー径は160mmである。このスクリューは欠損部分を有さず、スクリューとケーシングの間隙は投入口から吐出口に至るまで一定である。
【0070】
この円錐型二軸押出機の、後端壁の最下端に幅9mmの間隙を設けて、それを排水口として脱水試験を行った。吐出量25kg/hから90kg/hまで、回転数15rpmから45rpmまでの条件で試験を行った。用いた原料は30%含水率のゴム組成物である。このゴム組成物は乳化重合SBR(スチレンブタジエンゴム)とカーボンブラックが主な成分である。この原料は直径1mmから50mmまでの直径の球状であり、比重はおよそ1.1である
【0071】
この試験後、スクリューに残留付着した原料に関して、スクリュー軸に近い原料とスクリュー軸から遠い原料の含水率を比較した。その結果、スクリューに近い原料の方が含水率が高いことが認められた。
【0072】
更に、同設備を用いて同条件で、異なる原料に対して試験を行った。用いた原料は50%以上の含水率を有するゴム組成物である。このゴム組成物は天然ゴムとカーボンブラックが主な成分であり、その他の成分としてシリカ、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、グラフェン、セルロース、セルロースナノファイバー等のうち、いずれか1種類または複数種類を含む。この原料は直径0.5mm以下の球状である。一般的に粒径の小さなゴム組成物は含水率が高く、圧搾され辛いため、脱水が困難である。この試験の結果、原料であるゴム組成物は排水口に閉塞し、圧搾されず脱水されなかった。
【0073】
[第3の発明の実施の形態]
図8は第3発明の実施の形態に係る平行二軸押出機1Dの縦断面図である。
【0074】
この実施の形態では、2本の平行なスクリュー7Dがケーシング2D内に収められている。ケーシング2D内部の高さ及び幅は、それぞれケーシング2Dの全長にわたって同じとなっている。スクリュー7Dの長手方向の全体にわたって、ロータ軸5Dは等径であり、フライト6Dの直径も均一である。ただし、フライト6Dの直径は、後述の通り、吐出口4側ほど大きくなるものであってもよい。この円錐型二軸押出機1Dのその他の構成は
図1,2の円錐型二軸押出機1と同様であり、同一符号は同一部分を示している。
【0075】
この平行二軸押出機1Dにあっては、投入口3と吐出口4との間には水排出用の開口が設けられていない。なお、水排出用開口には脱水口と排水口とがある。脱水口と排水口は、何れもケーシング2内から水を排出する開口であるが、脱水口からは、含水原料が圧搾されるのとほぼ同時に装置外へ水が排出される。そのため、圧搾され生じた水と、圧搾されたまたは圧搾されていない原料は、脱水口に接触する位置を通る。脱水口に原料が接触することにより、脱水口から原料が漏れ出し、脱水口を閉塞させることがある。排水口は、水をケーシング2外へ排出するための開口であるが、原料は排水口に接触する位置を通らない。
【0076】
従来の平行二軸押出機は、脱水を目的の一部とするため、通常、原料投入口と吐出口の間に脱水口を設ける。また、脱水口から原料の漏出を防止するため、脱水口にスリット、メッシュ、パンチングメタル等の固液分離手段を設置する。しかし、固液分離手段を設置しても、原料が平行二軸押出機内に充満し圧力が高くなると、脱水口から原料が漏れ出る。前記のスリット、メッシュ、パンチングメタルの構造や、スクリューの形状を工夫しても、流動性を有する原料が圧力の高い所から低い所へ向かうことを防止することは非常に難しい。
【0077】
第3発明の平行二軸押出機にあっては、原料が存在する領域、すなわち、投入口3と吐出口4との間に水排出用開口を設けないことによって、原料の漏出が防止される。原料はスクリュー7Dによって投入口3から吐出口4へと移送され、その間に圧力が高まることにより圧搾される。圧搾された水は、原料に比べて遥かに粘度が低いので、圧力が低い方向、すなわち吐出口4から投入口3へ向う方向に容易に移動する。
【0078】
第3発明では、好ましくは平行二軸押出機1Dの後端壁11又は後端壁11から投入口3までの間のケーシング2D下面に排水口10を設ける。これにより排水口10から原料の漏出なく、水を効率よく排出することができる。
【0079】
第3発明では、好ましくは後端壁11の垂直方向最下部又は最下部より上位、より好ましくは、最下部より上位でかつ最下部から30mm以内の範囲に排水口10を設ける。
【0080】
第3発明の平行二軸押出機の排水口には、従来の平行二軸押出機の脱水口に設けられるような、例えば、ウエッジワイヤスクリーン、パンチングプレート、メッシュ又は布等の網状物などの固液分離手段をもたない。
【0081】
第3発明では、平行二軸押出機1Dの投入口3から吐出口4までの間において、フライト6Dの直径を吐出口4側ほど大きくすることにより、フライト6D先端とケーシング2D内面の間隔を、投入口3から吐出口4側に向けて小さくしてもよい。これにより、原料から圧搾され生じた水が後方へ効率よく流れるため、圧搾されて生じた水が効率よく排水口10から排出される。
【0082】
第3発明では、平行二軸押出機1Dの投入口3から吐出口4までの間で、かつケーシング2の最下面に真空引きベントを設置してもよい。この真空引きベントから真空引きすることにより、押出物中の含水率を更に低下させることができる。
【0083】
原料から圧搾されて生じた水は、重力の作用によってケーシング2内で下部に移動するので、ケーシング2内の混練物は下位ほど水を多く含むようになる。そのため、ケーシング2の最上面側から真空引きするよりも、ケーシング2の最下面側からの真空引きを行うことにより、水が効率よく排出される。
【0084】
また、投入口3から吐出口4まで、よく混練された混練物が一体性を成して移送される。混練物と一体化しにくい不純物成分、例えば焼けて変質した樹脂や異物は、重力によって下方に移動し、最下面の真空引きベントから排出され易くなる。
【0085】
真空引きベントに、スリットやメッシュやパンチングメタル等の固液分離手段を設けると、原料が堆積し閉塞するおそれがあるので、このような固液分離手段を設けないことが好ましい。一般的に平行二軸押出機の垂直方向の最上端の真空引きベントにおいてベントアップしない条件での運転であれば、最下面側からの真空引きベントにおいても原料は漏出しない。
【0086】
平行二軸押出機は、スクリュー軸心線方向が水平となるように設置されることが多いが、スクリュー軸心線方向が傾斜方向となるように設置されても良い。スクリュー軸心線方向を傾斜方向とする場合、好ましくは、吐出口側に比べ後端壁側が低くなるように設置する。これにより、原料から圧搾されて生じた水が、ケーシングの傾斜に従って排水口へ流れやすくなる。
【0087】
押出物中の含水率は、要求性能にもよるが、好ましくは、5重量%以下、より好ましくは1重量%以下、更に好ましくは0.1重量%以下である。
【0088】
従来の平行二軸押出機を用いてゴム組成物を脱水しようとする場合、ゴム組成物の含水率が50%を超える場合には、脱水が非常に困難であった。これに対し、第3発明の平行二軸押出機を用いることにより、ゴム組成物の含水率が50%を超える場合でも、脱水が十分に行われ、含水率1%以下まで低減させることができる。(平行2軸だけでこうなるんでしょうか)
【0089】
また、従来の平行二軸押出機を用いてゴム組成物を脱水しようとする場合、ゴム組成物の含水率が10~50%の場合には、脱水されるものの、含水率は1%まで下がらない。そのため、含水率1%以下まで脱水させる必要のあるゴム組成物の場合、乾燥機等を用いて乾燥させる必要があるが、乾燥機による乾燥は多大なエネルギーと時間を要するため、高コストである。第3発明の平行二軸押出機を用いることにより、ゴム組成物の含水率が10~50%の場合でも、十分に脱水が行われ、含水率1%以下まで低減させることができる。
【0090】
[原料]
本発明に用いられる原料としては、圧搾して脱水すべき含水原料であれば特に限定されないが、熱可塑性エラストマー及びゴム等のゴム成分並びに樹脂などの含水原料が挙げられる。ゴム成分が好適に用いられる。ゴム成分としては特に限定されないが例えば、溶液重合SBR(スチレンブタジエンゴム)や乳化重合SBR、天然ゴム等があげられる。含水原料としては、ゴム成分のみならず、ゴム成分、カーボンブラック、老化防止剤、油脂類、その他の成分の組成物が好適に用いられる。その他の成分としては、特に限定されないがシリカ、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、グラフェン、セルロース、セルロースナノファイバー等があげられる。原料の比重は1.0を超過することが好ましく、1.05以上がより好ましく、1.1以上が更に好ましい。水(圧搾水)との分離が容易になるからである。含水原料の大きさは特に限定されないが、通常、直径1~50mmの球状である。
【0091】
脱水された原料を連続的に成形するための設備として、平行二軸押出機の吐出口に管状の口金を設け、口金の一部にカッター刃を取り付けることが好ましい。これにより、吐出口から出てきた原料はシート状に成形される。
【0092】
<第1~3発明の組合せ>
なお、前記第1、第2及び第3の発明は各々任意に組合せることができる。これらを組み合わせることにより、一連の脱水混練成形プロセスとなる。
【0093】
この一連の脱水混練成形プロセスを用いることにより、形状、粘度、流動性などの特徴が異なる原料に対して、連続的に脱水できるだけでなく、脱水口が存在せず、排水口の閉塞がほとんど生じなくなるため、歩留まりの向上や運転停止回数の減少や掃除回数の減少などの利点が得られる。
【0094】
例えば本発明の円錐型二軸脱水機と本発明の平行二軸脱水機を直列に組み合わせることにより、含水率60~70%の原料を円錐形二軸脱水機で含水率20~30%まで下げて、平行二軸脱水機で含水率5%以下まで下げることができる。また同組み合わせで含水率30~50%の原料を円錐形二軸脱水機で含水率5~10%まで下げて、平行二軸脱水機で含水率1%以下まで下げることができる。
【実施例0095】
<実施例1>
日本製鋼所の平行二軸押出機であるTEX44αを用いて、試験を行った。この平行二軸押出機は、後端壁に排水口を設けてあり、原料投入口から吐出口までの間に脱水口を有していない。吐出量15kg/hから70kg/hまで、回転数30rpmから80rpmまでの条件で試験を行った。用いた原料は30%含水率のゴム組成物である。このゴム組成物は乳化重合SBR(スチレンブタジエンゴム)とカーボンブラックが主な成分である。この原料は直径1mmから50mmまでの球状であり、比重はおよそ1.1である。
【0096】
この試験の結果、どの条件においても、原料であるゴム組成物は排水口において確認されなかった。また、最も含水率が低減された条件において含水率0.57%まで達した。
【0097】
更に、同設備を用いて同条件で、異なる原料に対して試験を行った。用いた原料は50%以上の含水率を有するゴム組成物である。このゴム組成物は天然ゴムとカーボンブラックが主な成分であり、その他の成分としてシリカ、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、グラフェン、セルロース、セルロースナノファイバー等のうち、いずれか1種類または複数種類を含む。この原料は直径0.5mm以下の球状である。一般的に粒径の小さなゴム組成物は含水率が高く、圧搾され辛いため、脱水が困難である。
【0098】
しかし、この試験の結果、原料であるゴム組成物は脱水できたと共に、排水口において確認されず、微小なゴム組成物粒子が圧搾水とともに排水口から排出された。排出された微小なゴム組成物粒子は、容易に水と分離でき、回収できた。排水口に固液分離手段が存在しない為、設備に閉塞を生じさせない。また、原料回収も容易であることから、この設備を用いて連続運転を行うにあたり、メンテナンス頻度を低く保ち連続運転時間を長く確保できることがわかる。排水口には固液分離手段が存在しないが、排水口から排出される原料は微量であり、回収して再度原料として設備に投入できる。
【0099】
<実施例2>
EM技研のコニカルフィーダーCF-2Vを改造し、円錐型二軸脱水機として用いて試験を行った。CF-2Vは先に述べたCF-1Vの大型機種であり、基本構造は同じで、スクリュー径が200mmである。このCF-2Vは改造前において、一般的なコニカルフィーダーと同様に、吐出口以外に原料や水分が排出される開口は無く、投入口は後端壁からケーシング先端側に離隔してもいない。また、このコニカルフィーダーはシールリングも有していない。このCF-2Vを改造し、ケーシング内の最下端よりも上位に排水口の最下端が来るように、排水口を設けた。更に投入口を後端壁からケーシング先端側に離隔させた。また、シールリングも設けた。
【0100】
吐出量3kg/hから100kg/hまで回転数5rpmから30rpmまでの条件で試験を行った。用いた原料は30%含水率のゴム組成物である。このゴム組成物は乳化重合SBR(スチレンブタジエンゴム)とカーボンブラックが主な成分である。この原料は直径1mmから50mmまでの球状であり、比重はおよそ1.1である。この試験の結果、どの条件においても、原料であるゴム組成物は排水口において確認されず、6時間の試験で排水口は閉塞しなかった。また、最も含水率が低減された条件において含水率4.1%まで達した。
【0101】
更に、同設備を用いて同条件で、異なる原料に対して試験を行った。用いた原料は65%以上の含水率を有するゴム組成物である。このゴム組成物は天然ゴムとカーボンブラックが主な成分であり、その他の成分としてシリカ、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、グラフェン、セルロース、セルロースナノファイバー等のうち、いずれか1種類または複数種類を含む。この原料は直径0.5mm以下の球状である。一般的に粒径の小さなゴム組成物は含水率が高く、圧搾され辛いため、脱水が困難である。しかし、この試験の結果、原料であるゴム組成物は、最も脱水できた条件で24.5%まで脱水された。また原料であるゴム組成物は排水口において確認されなかった。
【0102】
<比較例(実施例2に対応する比較例)>
実施例2で述べた排水口、シールリングについては着脱可能であり、元の状態に戻すことができる装置となっている。また、実施例2で述べた離隔させた投入口については、元の位置に戻すことができる装置となっている。そのため、それぞれの効果をそれぞれ単独の状態で機能するか、についても確認した。
【0103】
まず、排水口をケーシング内の最下端に設け、シールリングを付けずに、投入口も後端壁から離隔されていない状態で実施例2と同条件同原料を用いて試験を実施した。結果として、試験開始数分でケーシング内最下端にある排水口が原料で閉塞し、圧搾されて生じた水の行き場がなくなり、脱水効果が得られなかった。
【0104】
また、排水口をケーシング内の最下端よりも上位に排水口の最下端が来るように設け、シールリングを付けず、投入口が後端壁から離隔されていない状態で、実施例2と同条件同原料を用いて試験を実施した。結果として、試験数分で排水口が閉塞し、脱水効果が得られなかった。これは投入された原料がスクリューで前方へ送られる前に、多量の原料が後方に存在するタイミングが生じるため、その状態で後方にある原料がスクリューによって掻き上げられた時に排水口を閉塞させているのである。
【0105】
次に、排水口をケーシング内の最下端よりも上位に排水口の最下端が来るように設け、シールリングを付けて、投入口が後端壁から離隔されていない状態で、実施例2と同条件同原料を用いて試験を実施した。結果として、試験数分で排水口が閉塞し、脱水効果が得られなかった。シールリングがついていたとしても、投入口が後端壁から離隔されていない状態だと、投入時に全ての原料がシールリングよりも前方に入らず、一部がシールリングよりも後方に入り、それがスクリューで掻き上げられた際に、排水口を閉塞させているのである。
【0106】
また、排水口をケーシング内の最下端に設け、シールリングを付けて、投入口が後端壁から離隔された状態で、実施例2と同条件同原料を用いて試験を実施した。結果として、試験数分で排水口は閉塞し、脱水効果が得られなかった。シールリングが付いていて、投入口が後端壁から離隔されていても、排水口がケーシング内の最下端に存在する場合、少量の原料が後方へ送られた場合に、排水口へ入り、徐々に閉塞される。
【0107】
本発明を特定の態様を用いて詳細に説明したが、本発明の意図と範囲を離れることなく様々な変更が可能であることは当業者に明らかである。