(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116351
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】発泡成形体、発泡成形体の製造方法、及び発泡成形体の外観不良の抑制方法
(51)【国際特許分類】
B29C 44/60 20060101AFI20240820BHJP
B29C 44/00 20060101ALI20240820BHJP
B29C 45/56 20060101ALI20240820BHJP
B29C 45/37 20060101ALI20240820BHJP
B29K 101/12 20060101ALN20240820BHJP
B29K 105/04 20060101ALN20240820BHJP
【FI】
B29C44/60
B29C44/00 D
B29C45/56
B29C45/37
B29K101:12
B29K105:04
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024096150
(22)【出願日】2024-06-13
(62)【分割の表示】P 2023062363の分割
【原出願日】2020-10-06
(31)【優先権主張番号】P 2019187117
(32)【優先日】2019-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三石 直子
(72)【発明者】
【氏名】中野 真吾
(72)【発明者】
【氏名】山田 広司
(72)【発明者】
【氏名】藤野 浩明
(72)【発明者】
【氏名】塩川 博文
(72)【発明者】
【氏名】平井 洋司
(57)【要約】
【課題】アバタ、スワール等の外観不良が抑制された発泡成形体、成形体の外観不良を抑制することが可能な発泡成形体の製造方法、及び発泡成形体の外観不良の抑制方法を提供する。
【解決手段】発泡層と、前記発泡層を被覆するスキン層と、を備え、特定の気泡径を有する、発泡成形体;及び、発泡成形体の製造方法又は外観不良の抑制方法。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡層と、前記発泡層を被覆するスキン層と、を備え、前記発泡層における気泡の最大径が0.90mm以下である、発泡成形体。
【請求項2】
前記スキン層の平均厚みが0.3mm~0.7mmである、請求項1に記載の発泡成形体。
【請求項3】
前記発泡層における気泡の平均径が0.02mm~0.15mmである、請求項1又は請求項2に記載の発泡成形体。
【請求項4】
金型のキャビティ内に樹脂材料を射出することにより、前記樹脂材料を前記キャビティ内に充填することと、
前記キャビティの容積を広げることにより、前記キャビティ内に充填された前記樹脂材料を発泡させることと、
を含み、
成形後の発泡成形体は、発泡層と、前記発泡層を被覆するスキン層と、を備え、前記スキン層の平均厚みは0.3mm~0.7mmであり、
前記キャビティの容積を広げることは、成形後の発泡成形体の厚みが、予め設定された目的の厚みに対して±0.2mm以内となるように金型をコアバックさせることを含む、
発泡成形体の製造方法。
【請求項5】
成形後の発泡成形体の厚みが、予め設定された目的の厚みに対して±0.2mm以内となるように金型をコアバックさせることにより、成形後の発泡成形体における気泡の最大径が0.90mm以下に制御される、請求項4に記載の発泡成形体の製造方法。
【請求項6】
前記発泡層における気泡の平均径が0.02mm~0.15mmである、請求項4又は請求項5に記載の発泡成形体の製造方法。
【請求項7】
金型のキャビティ内に樹脂材料を射出することにより、前記樹脂材料を前記キャビティ内に充填することと、
前記キャビティの容積を広げることにより、前記キャビティ内に充填された前記樹脂材料を発泡させることと、
を含み、
成形後の発泡成形体は、発泡層と、前記発泡層を被覆するスキン層と、を備え、前記スキン層の平均厚みは0.3mm~0.7mmであり、
前記キャビティの容積を広げることは、成形後の発泡成形体の厚みが、予め設定された目的の厚みに対して±0.2mm以内となるように金型をコアバックさせることを含む、
発泡成形体の外観不良の抑制方法。
【請求項8】
前記目的の厚みに対して±0.2mm以内となるように金型をコアバックさせることにより、成形後の発泡成形体における気泡の最大径が0.90mm以下に制御される、請求項7に記載の発泡成形体の外観不良の抑制方法。
【請求項9】
前記発泡層における気泡の平均径が0.02mm~0.15mmである、請求項7又は請求項8に記載の発泡成形体の外観不良の抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、発泡成形体、発泡成形体の製造方法、及び発泡成形体の外観不良の抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン系樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合系樹脂等の熱可塑性樹脂の射出発泡成形体は、軽量であり剛性に優れる観点から、自動車用の部材として使用されている。
射出発泡成形方法の一つとして、コアバック法がある。コアバック法とは、発泡剤を含む熱可塑性樹脂組成物を射出成形して金型内に熱可塑性樹脂組成物を充填させた後、可動金型の位置をスライドさせることによりキャビティ容積を拡大させて成形品を得る方法である。この成形方法を用いれば、成形体の表層が非発泡層(スキン層)になり、成形体の内部が発泡層になる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
射出発泡成形体がコンソールボックス、ドアトリム、デッキサイドトリム、バックドアトリム、インスツルメントパネル等の自動車内装部品、及びアーチモール、ロッカーモール、サッコモール等の自動車外装部品として使用される場合、射出発泡成形体には、軽量、薄肉であること、及び外観の良さが望まれる。
【0005】
しかしながら、射出発泡成形体の表面には、円形状又は楕円状の小さなくぼみ(「アバタ」と称することがある)、成形時の樹脂の流れに沿って成形体の表面に形成される線状の跡(「スワール」と称することがある)等の外観不良が発生しやすく外観上問題となる場合があった。アバタは射出発泡成形時に気泡が樹脂表面に残存して破裂することによって発生し、スワールは当該気泡が破裂した部分が樹脂の流動により引き伸ばされることによってそれぞれ起こる。
【0006】
かかる状況に鑑み、本開示は、アバタ、スワール等の外観不良が抑制された発泡成形体、成形体の外観不良を抑制することが可能な発泡成形体の製造方法、及び発泡成形体の外観不良の抑制方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための手段は、以下の態様を含む。
<1> 発泡層と、前記発泡層を被覆するスキン層と、を備え、前記発泡層における気泡の最大径が0.90mm以下である、発泡成形体。
<2> 前記スキン層の平均厚みが0.3mm~0.7mmである、<1>に記載の発泡成形体。
<3> 前記発泡層における気泡の平均径が0.02mm~0.15mmである、<1>又は<2>に記載の発泡成形体。
<4> 金型のキャビティ内に樹脂材料を射出することにより、前記樹脂材料を前記キャビティ内に充填することと、
前記キャビティの容積を広げることにより、前記キャビティ内に充填された前記樹脂材料を発泡させることと、
を含み、
成形後の発泡成形体は、発泡層と、前記発泡層を被覆するスキン層と、を備え、前記スキン層の平均厚みは0.3mm~0.7mmであり、
前記キャビティの容積を広げることは、成形後の発泡成形体の厚みが、予め設定された目的の厚みに対して±0.2mm以内となるように金型をコアバックさせることを含む、
発泡成形体の製造方法。
<5> 成形後の発泡成形体の厚みが、予め設定された目的の厚みに対して±0.2mm以内となるように金型をコアバックさせることにより、成形後の発泡成形体における気泡の最大径が0.90mm以下に制御される、<4>に記載の発泡成形体の製造方法。
<6> 前記発泡層における気泡の平均径が0.02mm~0.15mmである、<4>又は<5>に記載の発泡成形体の製造方法。
<7> 金型のキャビティ内に樹脂材料を射出することにより、前記樹脂材料を前記キャビティ内に充填することと、
前記キャビティの容積を広げることにより、前記キャビティ内に充填された前記樹脂材料を発泡させることと、
を含み、
成形後の発泡成形体は、発泡層と、前記発泡層を被覆するスキン層と、を備え、前記スキン層の平均厚みは0.3mm~0.7mmであり、
前記キャビティの容積を広げることは、成形後の発泡成形体の厚みが、予め設定された目的の厚みに対して±0.2mm以内となるように金型をコアバックさせることを含む、
発泡成形体の外観不良の抑制方法。
<8> 前記目的の厚みに対して±0.2mm以内となるように金型をコアバックさせることにより、成形後の発泡成形体における気泡の最大径が0.90mm以下に制御される、<7>に記載の発泡成形体の外観不良の抑制方法。
<9> 前記発泡層における気泡の平均径が0.02mm~0.15mmである、<7>又は<8>に記載の発泡成形体の外観不良の抑制方法。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、アバタ、スワール等の外観不良が抑制された発泡成形体、成形体の外観不良を抑制することが可能な発泡成形体の製造方法、及び発泡成形体の外観不良の抑制方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1A】本開示の一実施形態における発泡成形体の断面図を表す。
【
図1B】気泡径0.90mmを超える気泡を有する発泡成形体の断面図を表す。
【
図2】金型を備える成形装置の概略を説明するための模式図を表す。
【
図3】実施例1における発泡成形体の外観及び断面図を表す。
【
図4】比較例1における発泡成形体の外観及び断面図を表す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本発明を制限するものではない。
【0011】
本開示において「工程」との語には、他の工程から独立した工程に加え、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、当該工程も含まれる。
本開示において「~」を用いて示された数値範囲には、「~」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、各成分の含有率又は含有量は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率又は含有量を意味する。
本開示において「層」又は「膜」との語には、当該層又は膜が存在する領域を観察したときに、当該領域の全体に形成されている場合に加え、当該領域の一部にのみ形成されている場合も含まれる。
本開示において実施形態を図面を参照して説明する場合、当該実施形態の構成は図面に示された構成に限定されない。また、各図における部材の大きさは概念的なものであり、部材間の大きさの相対的な関係はこれに限定されない。また、各図面において、実質的に同じ機能を有する部材には、全図面同じ符号を付与し、重複する説明は省略する場合がある。
【0012】
≪発泡成形体≫
本開示の発泡成形体は、発泡層と、前記発泡層を被覆するスキン層と、を備え、前記発泡層における気泡の最大径が0.90mm以下である。
【0013】
発泡成形体の外観不良という課題に対し、発明者らは当初、発泡成形の過程における発泡が不十分であることにより外観不良が発生すると推測し、検討を進めた。一般的に、コアバック法において発泡が不十分であると、樹脂材料が金型に追従することができずに、外観不良が発生しやすい。しかしながら、反対に、発泡状態を制御し、気泡のサイズを0.90mm以下に制御することによって、外観不良が抑制されることが見いだされた。この理由は必ずしも明らかではないが、発泡層の気泡のサイズが比較的揃っていると、表面の凹みの発生が抑制されるものと推測される。
【0014】
発泡層中の気泡の最大径と外観不良の関係について
図1A及び
図1Bを用いて説明する。
図1Aは、本開示の一実施形態における発泡成形体の断面図を表す。
図1Aにおいて、発泡層中の気泡の最大径は0.20mm以下であり、平均気泡径は0.10mmである。
図1Aに示される発泡成形体では外観不良が抑制されている。一方、
図1Bは、発泡層に気泡径0.93mmの気泡が存在する発泡成形体の断面図である。
図1Bに示される発泡成形体は、表面に凹みが生じ、外観不良が発生している。
【0015】
発泡成形体は、発泡層と、発泡層を被覆するスキン層を備える。発泡層は樹脂材料が発泡してなる層であり、スキン層はこの樹脂材料が冷却固化した層である。発泡層は、金型内に充填された樹脂材料を発泡成形することにより形成される層であり、スキン層は、樹脂材料が冷却固化して形成され、発泡層よりも発泡率が低い層である。発泡成形体は、後述の発泡成形体の製造方法により製造されたものであってもよい。
【0016】
本開示の発泡成形体の発泡層における気泡の最大径は0.90mm以下であり、0.50mm以下であることが好ましく、0.40mm以下であることがより好ましく、0.20mm以下であることがさらに好ましい。気泡の最大径の下限値は特に制限されず、十分な発泡を起こさせる観点からは、気泡の最大径は0.02mm以上であってもよく、0.05mm以上であってもよく、0.10mm以上であってもよい。
発泡成形体の気泡の最大径は、発泡成形体を厚み方向に切断した任意の断面を3D測定機(倍率50倍)で観察したときの最大長径とする。ここで、発泡成形体の断面は、後述の発泡工程において金型をコアバックさせるときのコアバックの方向に沿って切断された断面である。
気泡の最大径は、樹脂材料の発泡の程度を調節すること、コアバックの程度を調整すること等によって調節することができる。
【0017】
発泡成形体の発泡層における気泡の平均径は0.02mm~0.15mmであることが好ましく、0.05mm~0.10mmであることがより好ましい。発泡層の気泡の平均径が上記範囲であると、外観不良がより良好に抑えられる傾向にある。
気泡の平均径は、発泡成形体を厚み方向に切断した任意の断面を3D測定機(倍率50倍)で観察して、30個の気泡の長径の平均値として求める。気泡の平均径は、樹脂材料の発泡の程度を調節すること、コアバックの程度を調整すること等によって調節することができる。
【0018】
発泡成形体における発泡層の厚みは、特に限定されず、目的とする発泡成形体の厚みに応じて設定することができる。例えば、発泡成形体の発泡層の平均厚みは、0.5mm~4.2mmであってもよく、1.0mm~4.0mmであってもよい。コアバック法によって発泡成形体が製造される場合には、コアバックの移動方向に沿った発泡層の厚みを、発泡層の厚みと定義する。発泡層の厚みは、発泡成形体の部位によって異なっていてもよい。
【0019】
発泡成形体におけるスキン層の厚みは、特に限定されない。スキン層の平均厚みは、0.3mm~0.7mmであることが好ましく、0.3mm~0.6mmであることがより好ましい。スキン層の厚みは、キャビティを形成する金型の温度等によって調整することができる。一般的に、発泡成形によって成形される発泡成形体のスキン層の厚みは技術的に約0.3mm以上となる。また、スキン層の平均厚みが0.7mm以下であると、十分な量の樹脂材料が発泡に供される傾向にあるため、軽量化、及び外観不良の抑制の観点から好ましい。さらに、スキン層の平均厚みを0.3mm~0.7mmに調節することで、適当な発泡層の厚みを確保することができ、軽量で、かつ外観不良のより抑制された発泡成形体を作製することができる傾向にある。
【0020】
発泡成形体における発泡層及びスキン層の平均厚みは、断面観察によって、それぞれ無作為に選ばれた5箇所の厚みの平均値として求める。なお、
図1A及び
図1Bに示されるように、スキン層と発泡層の境界は視認可能である。
【0021】
以下、発泡成形体の作製に用いられる樹脂材料について詳述する。
【0022】
-樹脂材料-
樹脂材料は、樹脂と、発泡剤と、を含有する樹脂材料であることが好ましく、必要に応じて添加剤等のその他の成分を含有していてもよい。
【0023】
樹脂材料に用いる樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂(PP)、複合ポリプロピレン系樹脂(PPC)、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アイオノマー系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂(ABS)、ポリカーボネート系樹脂及びポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)からなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。この中でも、ポリプロピレン系樹脂(PP)、複合ポリプロピレン系樹脂(PPC)及びアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂(ABS)からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
【0024】
また、発泡剤としては、アゾジカルボンアミド等の有機発泡剤、炭酸水素ナトリウム(別名、重炭酸ナトリウム、重曹)等の無機発泡剤などが挙げられる。自動車用内装部品の発泡成形では、環境試験性能、塗膜性能(耐温水性等)の向上等の観点からは、有機発泡剤が好ましい。
【0025】
有機発泡剤としては、アゾジカルボンアミド(ADCA)、N,N-ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)、4,4’-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド(OBSH)、ヒドラゾジカルボンアミド(HDCA)等が挙げられ、アゾジカルボンアミド(ADCA)が好ましい。特に、外装品を製造する場合は、分解物に水がほぼ含まれないアゾジカルボンアミド(ADCA)を用いることが好ましい。
【0026】
発泡剤の総量中のアゾジカルボンアミド(ADCA)の含有率は、50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましく、95質量%以上であることが特に好ましい。
【0027】
発泡剤の分解温度は、50℃~250℃であることが好ましく、50℃~220℃であることがより好ましい。使用形態によって、発泡剤の分解温度は、130℃~250℃であってもよい。
【0028】
樹脂材料中の発泡剤の含有率は、発泡剤の種類等に応じて適宜設定することが好ましい。例えば、発泡剤としてアゾジカルボンアミド(ADCA)を用いる場合、発泡性、成形性及び塗膜性能の観点から、樹脂材料中のアゾジカルボンアミド(ADCA)の含有率は、0.05質量%~0.5質量%の範囲内であることが好ましく、0.1質量%~0.4質量%の範囲内であることがより好ましい。尚、ADCAの含有率は、後述する射出機のシリンダ投入前の混合物(組成物)での割合を意味する。
【0029】
樹脂材料は、樹脂及び発泡剤以外の成分を含んでいてもよい。例えば、樹脂材料は、フィラー充填材、ガラス繊維、炭素繊維等を含んでいてもよい。
【0030】
樹脂材料は、発泡成形体の結晶化ピーク温度、溶融張力等を高める点から、分岐鎖を有するポリプロピレン樹脂を含むことが好ましく、前述の樹脂としてポリプロピレン系樹脂とともに分岐鎖を有するポリプロピレン樹脂を含むことがより好ましい。
【0031】
樹脂材料が分岐鎖を有するポリプロピレン樹脂を含む場合、分岐鎖を有するポリプロピレン樹脂の含有率は、樹脂材料全量に対して、4質量%以上であることが好ましく、6質量%以上であることがより好ましく、8質量%以上であることがさらに好ましい。
【0032】
樹脂材料が分岐鎖を有するポリプロピレン樹脂を含む場合、分岐鎖を有するポリプロピレン樹脂の含有率は、20質量%以下であってもよく、16質量%以下であってもよい。
【0033】
分岐鎖を有するポリプロピレン樹脂の230℃でのMFR(メルトフローレート)は、35g/10分以上であることが好ましく、40g/10分以上であることがより好ましく、50g/10分以上であることがさらに好ましい。
【0034】
分岐鎖を有するポリプロピレン樹脂の230℃でのMFRは、100g/10分以下であってもよく、80g/10分以下であってもよい。
なお、MFRは、JIS K7210-1(2014)に準拠して、230℃、2.16kg荷重(すなわち21.18N荷重)で測定したときの値である。
【0035】
〔発泡成形体の用途〕
本開示の製造方法により製造された発泡成形体の用途は特に制限されず、コンソールボックス、ドアトリム、デッキサイドトリム、バックドアトリム、インスツルメントパネル等の自動車内装部品、及びアーチモール、ロッカーモール、サッコモール等の自動車外装部品などに好適に使用することができる。特に本開示の発泡成形体は、外観不良が抑制されているため、塗装を行わない自動車内装及び外装部品にも好適に使用することができる。
【0036】
≪発泡成形体の製造方法≫
本開示の発泡成形体の製造方法は、金型のキャビティ内に樹脂材料を射出することにより、前記樹脂材料を前記キャビティ内に充填すること(本開示において射出工程ともいう)と、前記キャビティの容積を広げることにより、前記キャビティ内に充填された前記樹脂材料を発泡させること(本開示において発泡工程ともいう)と、を含み、成形後の発泡成形体は、発泡層と、前記発泡層を被覆するスキン層と、を備え、前記スキン層の平均厚みは0.3mm~0.7mmであり、前記キャビティの容積を広げることは、成形後の発泡成形体の厚みが、予め設定された目的の厚みに対して±0.2mm以内となるように金型をコアバックさせることを含む。本開示の発泡成形体の製造方法は、必要に応じて上記以外の任意の工程を含んでいてもよい。樹脂材料の詳細は、上述の通りである。
【0037】
本開示の発泡成形体の製造方法では、発泡工程において、目的の厚みに対して±0.2mm以内となるように金型をコアバックさせることによって、発泡状態を制御することができ、外観不良を抑制することができる。目的の厚みとは、得られるべき発泡成形体の厚みである。本開示の発泡成形体の製造方法における±0.2mmの管理幅は、技術的に外観不良の抑制を担保する幅である観点から、一般的な設計公差とは区別される幅であり、しばしば、通常の設計公差よりも小さい。本開示の製造方法に従って得られる発泡成形体は、発泡状態が安定している、すなわち、気泡のサイズが比較的揃っており、サイズの大きすぎる気泡の発生が抑制されているため、外観不良の発生を抑制することができると考えられる。したがって、本開示の発泡成形体の製造方法によれば、発泡成形体の断面観察等の煩雑な検査を行わない場合であっても、技術的に品質を保証することができる。
【0038】
成形後の発泡成形体のスキン層の平均厚みは0.3mm~0.7mmであるため、成形されるべき発泡成形体の発泡層の厚みは、目的の厚みから当該スキン層の平均厚みを減じた値として算出される。発泡成形体の発泡層の厚みが、このように算出された値となるように、コアバックの距離を調節して発泡の度合いを調節することで、サイズの大きすぎる気泡の発生を抑制することができ、外観不良を抑制することができる。したがって、コアバックの距離を、発泡成形体の目的の厚みに対して±0.2mm以内となるように制御することで、技術的に外観不良の抑制を担保することができると考えられる。
【0039】
コアバックの距離を±0.2mmの幅で管理することによって、コアバック量が大きすぎて気泡が成長しすぎたり、樹脂材料が金型から剥がれて外観不良が発生したりすることを抑制することができる。また、逆に、コアバック量が小さすぎて発泡が不十分となったり、成形体の厚みが薄くなることによって剛性が不十分となったりすることも抑制することができる。
【0040】
本開示の発泡成形体の製造方法では、成形後の発泡成形体の厚みが目的の厚みに対して±0.2mm以内となるように金型をコアバックさせることにより、成形後の発泡成形体における気泡の最大径が0.90mm以下に制御されていることが好ましく、0.50mm以下に制御されていることがより好ましく、0.20mm以下に制御されていることがさらに好ましい。気泡の最大径の下限値は特に制限されず、十分な発泡を起こさせる観点からは、気泡の最大径は0.02mm以上に制御されていてもよく、0.05mm以上に制御されていてもよく、0.10mm以上に制御されていてもよい。任意の樹脂材料を用いたときの、コアバックの距離と気泡の最大径との関係を事前に調べることによって、気泡の最大径を制御することが可能である。
【0041】
成形後の発泡成形体の発泡層における気泡の平均径は、0.02mm~0.15mmであることが好ましく、0.05mm~0.10mmであることがより好ましい。発泡層の気泡の平均径が上記範囲であると、外観不良がより良好に抑えられる傾向にある。
【0042】
その他、本開示の発泡成形体の製造方法によって製造された発泡成形体の詳細は、前述の本開示の発泡成形体の詳細を適用することができる。
【0043】
本開示の発泡成形体の製造方法を説明するため、
図2に、発泡成形体の成形装置の一例の概略構成図を示す。なお、本開示の発泡成形体の製造方法は、
図2に示される構成に限定されない。
【0044】
図2に、発泡成形体の製造に適用可能な成形装置の概略構成図を示す。
図2に示される成形装置16は、固定側金型17と、固定側金型17に対して開閉方向に移動可能とされ、固定側金型17との間に空隙であるキャビティ18を形成する可動側金型19と、を備えている。
【0045】
また、成形装置16は、キャビティ18まで固定側金型17を貫通するゲート21と、ゲート21を通じてキャビティ18に溶融状態の樹脂材料Rを射出充填する射出機22と、を備えている。射出機22は、図示しないホッパ(供給部)と図示しないシリンダとを備えている。この射出機22では、樹脂、発泡剤、及び必要に応じて用いられる添加剤等を含む混合物がホッパ(供給部)からシリンダに供給され、シリンダ内にてスクリュー等で撹拌されて樹脂材料Rとして調製され、所定の圧力でゲート21を通じて樹脂材料Rをキャビティ18内に射出充填する。なお、射出機22は、ゲート21を通じてキャビティ18に溶融状態の樹脂材料Rを射出充填できれば、上記構成に限定されるものではない。
【0046】
樹脂材料Rが熱可塑性樹脂を含む場合、樹脂材料Rは加熱して流動化させてキャビティ18内に供給される。
【0047】
また、固定側金型17及び可動側金型19は、通常、溶融状態の樹脂材料Rよりも低い温度となっている。そのため、樹脂材料Rがキャビティ18内へ充填されることで、固定側金型17及び可動側金型19に接した部分から、樹脂材料Rの冷却固化が始まり、スキン層が形成される。
【0048】
次いで、可動側金型19を固定側金型17に対して開放方向(型開き方向)に所定量開き(コアバック)、固化していない樹脂材料Rを発泡させて発泡層を形成する。その後、固定側金型17と可動側金型19を型開きし、発泡成形体を可動側金型19から取り外すことで、発泡成形体が得られる。本開示の発泡成形体の製造方法では、成形後の発泡成形体の厚みが、予め設定された目的の厚みに対して±0.2mm以内となるように金型をコアバックさせる。成形後の発泡成形体において、スキン層の厚みは0.3mm~0.7mmである。
【0049】
≪発泡成形体の外観不良の抑制方法≫
本開示の発泡成形体の外観不良の抑制方法は、金型のキャビティ内に樹脂材料を射出することにより、前記樹脂材料を前記キャビティ内に充填すること(すなわち、射出工程)と、前記キャビティの容積を広げることにより、前記キャビティ内に充填された前記樹脂材料を発泡させること(すなわち、発泡工程)と、を含み、成形後の発泡成形体は、発泡層と、前記発泡層を被覆するスキン層と、を備え、前記スキン層の平均厚みは0.3mm~0.7mmであり、前記キャビティの容積を広げることは、成形後の発泡成形体の厚みが、予め設定された目的の厚みに対して±0.2mm以内となるように金型をコアバックさせることを含む。
【0050】
上述した本開示の発泡成形体の製造方法と同様に、本方法によれば、良好に発泡成形体の外観不良を抑制することができる。発泡成形体の外観不良の抑制方法における各工程の詳細、及び製造される発泡成形体の詳細は、本開示の発泡成形体の製造方法、及び本開示の発泡成形体としてそれぞれ上述した内容を適用することができる。
【実施例0051】
次に本開示の実施形態を実施例により具体的に説明するが、本開示の実施形態はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0052】
<実施例1>
図2に模式的に示される成形装置を用いて、コアバック法による射出発泡成形により成形体を作製した。目標とする成形体の厚みを3.4mmとし、コアバックの距離を設定した。成形後の成形体の厚みは、目標の厚みの±0.2mm以内であった。スキン層の平均厚みは0.5mmであった。
【0053】
<比較例1>
実施例1において、コアバックの距離を大きくした以外は実施例1と同様に成形体を作製した。成形後の成形体の厚みは、実施例1において設定した目標の厚みよりも0.2mm超、大きかった。スキン層の平均厚みは0.5mmであった。
【0054】
実施例1及び比較例1において、成形後、目視にて成形体の外観不良の有無を観察したところ、実施例1では外観不良が発生していなかったが、比較例1では外観不良が発生していた。さらに、成形体を厚み方向に切断した断面を3D測定機(倍率50倍)にて観察し、気泡の最大径及び平均径を前述の方法によって求めた。
【0055】
実施例1において外観不良が発生していなかった部位の外観及び断面図を
図3に示す。気泡の最大径は0.487mmであった。
【0056】
また、実施例1において外観不良が発生していなかった部位(
図3とは異なる部位)の気泡の平均径を測定したところ、30個の気泡の平均径は0.08mmであった。
【0057】
比較例1において外観不良が発生していた2部位の外観及び断面図を
図4に示す。気泡の最大径はそれぞれ1.116mm、及び1.039mmであった。
【0058】
以上からわかるように、発泡成形体の発泡層における気泡の最大径が0.90mm以下であると、外観不良が抑制される。
【0059】
日本国特許出願第2019-187117号の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に援用されて取り込まれる。