(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116675
(43)【公開日】2024-08-28
(54)【発明の名称】セメントクリンカの製造方法、及びセメントクリンカの製造装置
(51)【国際特許分類】
C04B 7/42 20060101AFI20240821BHJP
F23C 1/04 20060101ALI20240821BHJP
F23C 1/12 20060101ALI20240821BHJP
【FI】
C04B7/42
F23C1/04
F23C1/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023022410
(22)【出願日】2023-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】521297587
【氏名又は名称】UBE三菱セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(74)【代理人】
【識別番号】100212026
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真生
(72)【発明者】
【氏名】藤永 祐太
(72)【発明者】
【氏名】末益 猛
(72)【発明者】
【氏名】橘 智恵美
【テーマコード(参考)】
3K091
【Fターム(参考)】
3K091AA03
3K091BB07
3K091BB26
3K091CC06
3K091CC12
3K091CC13
3K091CC23
3K091DD01
3K091DD07
3K091DD10
(57)【要約】
【課題】排ガス内の一酸化炭素濃度の上昇を抑制する。
【解決手段】本開示の一側面に係るセメントクリンカの製造方法は、セメント原料を加熱する加熱炉の内部に対して、第1供給部材により、固形分を含む熱エネルギー源を供給する第1供給工程と、第1供給部材とは別体に形成された第2供給部材により、加熱炉の内部に対してアンモニアガスを供給する第2供給工程と、加熱炉において、アンモニアガスを燃焼しつつ、セメント原料を加熱する加熱工程と、を含み、第2供給工程では、第2供給部材により、第1供給部材が熱エネルギー源を供給する位置とは異なる位置から、加熱炉の内部に対してアンモニアガスが供給される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント原料を加熱する加熱炉の内部に対して、第1供給部材により、固形分を含む熱エネルギー源を供給する第1供給工程と、
前記第1供給部材とは別体に形成された第2供給部材により、前記加熱炉の内部に対してアンモニアガスを供給する第2供給工程と、
前記加熱炉において、前記アンモニアガスを燃焼しつつ、セメント原料を加熱する加熱工程と、を含み、
前記第2供給工程では、前記第2供給部材により、前記第1供給部材が前記熱エネルギー源を供給する位置とは異なる位置から、前記加熱炉の内部に対して前記アンモニアガスが供給される、セメントクリンカの製造方法。
【請求項2】
前記固形分は、微粉炭及び廃棄物の少なくとも一方を含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記加熱炉は、ロータリーキルンからの排ガスが導入され、セメント原料を仮焼する仮焼炉であり、
前記仮焼炉の中心軸まわりの周方向において、前記第1供給部材が前記熱エネルギー源を供給する第1位置と、前記第2供給部材が前記アンモニアガスを供給する第2位置とが、互いに異なっている、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記仮焼炉の内部を前記周方向に沿って区画して得られる複数の領域のうちの、前記第2位置が含まれる領域の酸素濃度は、前記複数の領域における酸素濃度の平均値よりも高い、請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記仮焼炉の運転中の期間のうちの90%以上の期間において、前記第2位置が含まれる前記領域における酸素濃度が、5%よりも大きい、請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
セメント原料を加熱する加熱炉と、
前記加熱炉の内部に対して、固形分を含む熱エネルギー源を供給する第1供給部材と、
前記第1供給部材とは別体に形成され、前記加熱炉の内部に対してアンモニアガスを供給する第2供給部材と、を備え、
前記第2供給部材は、前記第1供給部材が前記熱エネルギー源を供給する位置とは異なる位置から、前記加熱炉の内部に対して前記アンモニアガスを供給し、
前記加熱炉において、前記アンモニアガスを燃焼する、セメントクリンカの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、セメントクリンカの製造方法、及びセメントクリンカの製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
セメントクリンカの製造装置は、ロータリーキルンを有する焼成炉においてセメント原料を焼成してセメントクリンカを生成する。二酸化炭素の発生量を低減するため、焼成炉に、廃プラスチック、廃タイヤ等の廃棄物やバイオマス等に加えて、カーボンフリーのエネルギー源であるアンモニアを供給することが試みられている。例えば、特許文献1では、二酸化炭素の排出量削減のため、化石燃料、及び廃プラスチック等の可燃性廃棄物等とともに、アンモニアと空気を含むアンモニア含有ガスをバーナ部から噴射して、ロータリーキルン内で燃焼する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、排ガス内の一酸化炭素濃度の上昇を抑制するのに有用なセメントクリンカの製造方法、及びセメントクリンカの製造装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[1]セメント原料を加熱する加熱炉の内部に対して、第1供給部材により、固形分を含む熱エネルギー源を供給する第1供給工程と、前記第1供給部材とは別体に形成された第2供給部材により、前記加熱炉の内部に対してアンモニアガスを供給する第2供給工程と、前記加熱炉において、前記アンモニアガスを燃焼しつつ、セメント原料を加熱する加熱工程と、を含み、前記第2供給工程では、前記第2供給部材により、前記第1供給部材が前記熱エネルギー源を供給する位置とは異なる位置から、前記加熱炉の内部に対して前記アンモニアガスが供給される、セメントクリンカの製造方法。
【0006】
[2]前記固形分は、微粉炭及び廃棄物の少なくとも一方を含む、上記[1]に記載の製造方法。
【0007】
[3]前記加熱炉は、ロータリーキルンからの排ガスが導入され、セメント原料を仮焼する仮焼炉であり、前記仮焼炉の中心軸まわりの周方向において、前記第1供給部材が前記熱エネルギー源を供給する第1位置と、前記第2供給部材が前記アンモニアガスを供給する第2位置とが、互いに異なっている、上記[1]又は[2]に記載の製造方法。
【0008】
[4]前記仮焼炉の内部を前記周方向に沿って区画して得られる複数の領域のうちの、前記第2位置が含まれる領域の酸素濃度は、前記複数の領域における酸素濃度の平均値よりも高い、上記[3]に記載の製造方法。
【0009】
[5]前記仮焼炉の運転中の期間のうちの90%以上の期間において、前記第2位置が含まれる前記領域における酸素濃度が、5%よりも大きい、上記[4]に記載の製造方法。
【0010】
[6]セメント原料を加熱する加熱炉と、前記加熱炉の内部に対して、固形分を含む熱エネルギー源を供給する第1供給部材と、前記第1供給部材とは別体に形成され、前記加熱炉の内部に対してアンモニアガスを供給する第2供給部材と、を備え、前記第2供給部材は、前記第1供給部材が前記熱エネルギー源を供給する位置とは異なる位置から、前記加熱炉の内部に対して前記アンモニアガスを供給し、前記加熱炉において、前記アンモニアガスを燃焼する、セメントクリンカの製造装置。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、排ガス内の一酸化炭素濃度の上昇を抑制するのに有用なセメントクリンカの製造方法、及びセメントクリンカの製造装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、セメントクリンカの製造装置の一例を示す模式図である。
【
図2】
図2は、仮焼炉及びその周辺の部材の一例を模式的に示す側面図である。
【
図3】
図3は、供給部材の配置及び酸素濃度の分布の一例を模式的に示す断面図である。
【
図4】
図4は、供給部材の配置及び二酸化炭素濃度の分布の一例を模式的に示す断面図である。
【
図5】
図5は、固形分及びアンモニアガスを同一箇所から導入した場合の仮焼炉出口における一酸化炭素濃度の時間変化の一例を示すグラフである。
【
図6】
図6は、ロータリーキルン及びその周辺の部材の一例を模式的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して一実施形態について説明する。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。以下の実施形態は、本開示を説明するための例示であり、本開示を以下の内容に限定する趣旨ではない。また、各要素の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0014】
[セメントクリンカの製造装置]
図1には、一実施形態に係るセメントクリンカの製造装置が模式的に示されている。
図1に示される製造装置100(セメントクリンカの製造装置)は、セメント原料の焼成により、セメントの中間製品であるセメントクリンカを製造する装置である。製造装置100は、NSP(ニューサスペンションプレヒータ)方式の予熱装置を備える。製造装置100は、NSPキルンとも称される。製造装置100は、例えば、サイクロンC1,C2,C3,C4と、仮焼炉30と、ロータリーキルン40と、クリンカクーラ50と、を備える。
【0015】
サイクロンC1,C2,C3,C4及び仮焼炉30は、セメント原料を予熱及び仮焼するプレヒータとして機能する。セメント原料は、例えば、焼却灰、石炭灰、石灰石、鉄源、及びスラグからなる群より選ばれる2種以上を含んでもよい。セメント原料は、サイクロンC1とサイクロンC2との接続部から導入され、サイクロンC1、サイクロンC2、サイクロンC3、仮焼炉30、及びサイクロンC4を流通しながら加熱され、ロータリーキルン40の窯尻42に導入される。ロータリーキルン40の窯尻42に導入される際、セメント原料は、例えば、850℃~1000℃、好ましくは850℃~900℃に加熱される。
【0016】
仮焼炉30とロータリーキルン40の窯尻42との間は、ライジングダクト34によって接続されている。ライジングダクト34を介して、ロータリーキルン40からの排ガスが、仮焼炉30に導入される。ロータリーキルン40で発生する排ガスは、燃焼排ガスを含む。ロータリーキルン40からの排ガスは、仮焼炉30、サイクロンC4、サイクロンC3、サイクロンC2、及びサイクロンC1を流通し、排ガスとセメント原料との間で熱交換が行われる。
【0017】
仮焼炉30は、ロータリーキルン40からの排ガスと、仮焼炉30に対して供給される熱エネルギー源とによって、セメント原料を仮焼する。すなわち、仮焼炉30は、セメント原料を加熱する加熱炉である。仮焼炉30の少なくとも一部は、円筒状に形成されている(
図2も参照)。仮焼炉30の少なくとも一部において、仮焼炉30の側壁は、仮焼炉30の中心軸Axまわりに沿って延びていてもよい。中心軸Axは、仮想的なラインであり、例えば、鉛直方向に沿って延びるラインである。
【0018】
ライジングダクト34には、ライジングダクト34内の排ガスを抽気するプローブ36が接続されている。プローブ36の下流には、クーラ及びバグフィルタ等を有する塩素バイパス設備が設置されており、プローブ36で抽気された抽気ガス(排ガス)に含まれるダストが回収される。塩素バイパス設備を設置することで、製造装置100内から、塩素系化合物及びアルカリ等の揮発分を低減することができる。なお、プローブ36は、ライジングダクト34に代えて、窯尻42に接続されていてもよく、ライジングダクト34と窯尻42との境界部分に接続されていてもよい。
【0019】
ロータリーキルン40は、セメント原料を焼成してセメントクリンカ(以下、単に「クリンカ」という場合がある。)を生成する。すなわち、ロータリーキルン40は、セメント原料を加熱する加熱炉である。ロータリーキルン40は、燃料を燃焼するバーナ44を備える。バーナ44は、ロータリーキルン40における下流側の端部(クリンカクーラ50に近い端部)に配置されている。バーナ44での燃焼によって、ロータリーキルン40内において、セメント原料が、例えば1300℃~1450℃に加熱される。ロータリーキルン40では、予熱及び仮焼された後のセメント原料が、バーナ44の燃焼によって加熱されてクリンカとなる。
【0020】
ロータリーキルン40で生成されたクリンカは、クリンカクーラ50に排出される。クリンカクーラ50では、外気等の冷却風によってクリンカが冷却される。クリンカクーラ50において冷却された後のクリンカは、製造装置100から排出される。クリンカクーラ50でのクリンカの冷却に用いられた後のガスの一部が、クーラ抽気として仮焼炉30に導入されてもよい。以下、ロータリーキルン40及び仮焼炉30への熱エネルギー源の導入について説明する。
【0021】
<熱エネルギー源の導入>
ロータリーキルン40では、仮焼炉30に比べて、高温条件下でセメント原料の加熱が行われるので、セメント原料は、対流伝熱よりも、放射伝熱によって加熱されることが好ましい。ロータリーキルン40内における、セメント原料への伝熱全体に対する放射伝熱の寄与率は、60%以上であってよく、70%以上であってもよい。ロータリーキルン40内を、放射伝熱の寄与率が高くなるような運転条件で製造装置100を運転することによって、エネルギー効率を向上することができる。
【0022】
放射伝熱の寄与率を高くする観点から、バーナ44で燃焼する熱エネルギー源は、炭素を含有する化石燃料を含んでもよい。化石燃料としては、重油、石油コークス、及び石炭(微粉炭)が挙げられる。化石燃料を用いることによって、燃焼排ガスに含まれる二酸化炭素の濃度が高くなり、放射伝熱の寄与率を十分に高くすることができる。バーナ44では、熱エネルギー源としてアンモニアを燃焼してもよい。なお、ロータリーキルン40へのアンモニアガスの導入量が増えると、燃焼排ガス中の二酸化炭素の濃度が下がって放射伝熱の寄与率が下がるため、エネルギー効率が低下する場合がある。
【0023】
ロータリーキルン40でのエネルギー効率を十分に高くする観点から、ロータリーキルン40に導入されるアンモニアの量が少なくてもよい。例えば、ロータリーキルン40に導入されるアンモニアの量は、仮焼炉30に導入されるアンモニアの量よりも少ない。なお、ロータリーキルン40には、アンモニアが導入されなくてもよい。ロータリーキルン40の休転後の運転開始の際には、熱エネルギー源としてアンモニアガスを導入してもよい。このような運転開始の際には、温度を上昇させる必要があるため、定常運転時よりも化石燃料の消費量が多くなり、NOx(窒素酸化物)が増加する傾向にある。そこで、例えばバーナ44からアンモニアガスを導入することによって、NOx濃度を低減することができる。
【0024】
製造装置100は、供給部材60(第1供給部材)を備える。供給部材60は、仮焼炉30の内部に対して、固形分(固形の熱エネルギー源)を含む熱エネルギー源を供給する部材(バーナ)である。供給部材60は、仮焼炉30の内部に対して、固形分と燃焼用空気とを供給してもよい。供給部材60の端部には、固形分と燃焼用空気とを仮焼炉30の内部に対して吐出する(吹き込む)導入口62が設けられている。
【0025】
供給部材60のうちの導入口62を含む端部は、ノズルとして機能する。供給部材60のうちのノズルとして機能する端部は、水平に設置されてもよい。供給部材60のうちのノズルとして機能する端部は、導入口62が中心軸Axを向くように設置されてもよい。供給部材60の上記端部は、仮焼炉30の側壁に接続されてもよい。仮焼炉30に対して供給部材60が固形分を供給する位置は、導入口62の位置に相当する。
【0026】
供給部材60は、例えば、導入口62(ノズル部分)まで、固形分と燃焼用空気とを搬送する。供給部材60は、固形分と燃焼用空気とを個別に仮焼炉30の内部に対して供給してもよい。この場合、導入口62には、固形分を導入するための1以上の開口と、燃焼用空気を導入するための1以上の開口が含まれる。また、供給部材60での搬送中において、固形分は燃焼用空気に混合されない。
【0027】
固形分は、例えば、微粉炭及び廃棄物の少なくとも一方を含む。仮焼炉30の内部に供給される廃棄物は、廃プラスチック、RDF(Refuse Derived Fuel)、又は肉骨粉等の1種類以上の廃棄物を含んでもよい。供給部材60は、微粉炭と燃焼用空気とを供給してもよく、廃棄物と燃焼用空気とを供給してもよく、微粉炭、廃棄物、及び燃焼用空気を供給してもよい。以上のように、供給部材60は、仮焼炉30の内部に対して、同一箇所から固形分と燃焼用空気とを供給してもよい。
【0028】
製造装置100は、供給部材70(第2供給部材)を備える。供給部材70は、仮焼炉30の内部に対して、熱エネルギー源として、アンモニアを含むアンモニア含有ガスを供給する部材(バーナ)である。アンモニア含有ガスは、アンモニアガスのみを含有してもよく、アンモニアガスと、空気又はメタン等の他のガスとの混合ガスであってもよい。一例では、供給部材70において、塩素バイパス設備からの排ガスが、燃焼用の空気としてアンモニアガスに混合される。供給部材70は、仮焼炉30が運転している期間において連続してアンモニア含有ガスを供給してもよく、仮焼炉30が運転している期間の一部において、アンモニア含有ガスを供給してもよい。
【0029】
供給部材70から供給されるアンモニア含有ガスの一部は熱エネルギー源に用いられ、別の一部は脱硝に用いられてもよい。すなわち、以下の式(1)のみならず、式(2)のように反応してもよい。
NH3+1/4O2 → 1/2N2+3/2H2O (1)
NH3+NO+1/4O2 → N2+3/2H2O (2)
【0030】
仮焼炉30は、燃焼反応及び脱硝反応の両方が進み得る温度域にあるため、アンモニアの燃焼反応及び脱硝反応の両方を行うことができる。これによって、二酸化炭素及び窒素酸化物の両方の排出量を低減することができる。
【0031】
供給部材70から供給されるアンモニア含有ガスに含まれるアンモニアが、仮焼炉30において燃焼及び脱硝の両方を行ってもよいし、供給部材70からのアンモニアの全て又は大部分を燃焼反応に利用し、脱硝反応に用いられるアンモニアを供給部材70とは別の位置にある導入口20から供給してもよい。導入口20から供給されるアンモニア含有ガスは、アンモニアのみを含んでいてもよいし、アンモニアガスと他のガスとの混合ガスであってもよい。導入口20は、例えば、仮焼炉30の上部(出口)とサイクロンC4とを接続し、仮焼炉30からの排ガスが流通する接続部38に設けられる。
【0032】
供給部材70は、供給部材60とは別体に形成されている。すなわち、供給部材70は、供給部材60に対して物理的に分離している。供給部材70の端部には、アンモニア含有ガスを仮焼炉30の内部に対して吐出する(吹き込む)導入口72が設けられている。供給部材70のうちの導入口72を含む端部は、ノズルとして機能する。導入口72には、アンモニア含有ガスを導入するための1以上の開口が設けられてもよい。
【0033】
供給部材70のうちのノズルとして機能する端部は、水平に設置されてもよい。供給部材70のうちのノズルとして機能する端部は、導入口72が中心軸Axを向くように設置されてもよい。供給部材70は、中心軸Axに向かってアンモニア含有ガスを吐出してもよい。供給部材70の上記端部は、仮焼炉30の側壁に接続されてもよい。なお、供給部材70の端部が、仮焼炉30の側壁のうちの開口が設けられて箇所に接続されることで、その開口が、導入口72として機能してもよい。仮焼炉30に対して供給部材70がアンモニア含有ガスを供給する位置は、導入口72の位置に相当する。仮焼炉30の中心軸Axに沿った方向(例えば、鉛直方向)において、導入口72の少なくとも一部の高さ位置は、供給部材60の導入口62の少なくとも一部の高さ位置と同じであってもよい。
【0034】
供給部材70は、供給部材60が熱エネルギー源を供給する位置とは異なる位置から、アンモニアガスを吐出する。つまり、供給部材60が仮焼炉30の内部に対して固形分を供給する位置と、供給部材70が仮焼炉30の内部に対してアンモニアガスを供給する位置とは、互いに異なっている。本開示において、互いに異なる位置(箇所)から熱エネルギー源を供給(吐出)するとは、別体に構成された2つの供給部材が、それぞれ熱エネルギー源を供給(吐出)することを意味する。
【0035】
図3には、導入口62及び導入口72が設けられる高さ位置において仮焼炉30を水平に切断して、上方から見た際の断面が模式的に示されている。
図3に示される例では、クリンカクーラ50からのクーラ抽気が、2箇所の導入口から仮焼炉30の内部に導入される。クーラ抽気を導入するための2箇所の導入口は、導入口62及び導入口72よりも下方に位置している。
【0036】
仮焼炉30の中心軸Axまわりの周方向(以下、単に「周方向」という。)において、供給部材60が固形分を供給する位置(第1位置)と、供給部材70がアンモニア含有ガスを供給する位置(第2位置)とが、互いに異なっている。周方向において(中心軸Axに沿った方向から見て)、供給部材70の導入口72が、供給部材60の導入口62に重なっていない。例えば、周方向において、導入口72の位置は、導入口62に対して10°以上、15°以上、20°以上、25°以上、又は30°以上だけ異なっている。
【0037】
仮焼炉30内の温度は、例えば850°~1000℃、好ましくは850~900℃であり、ロータリーキルン40内の温度よりも低い。そのため、仮焼炉30でセメント原料を加熱する際の放射伝熱による伝熱の割合は、ロータリーキルン40よりも低く、仮焼炉30では対流伝熱の割合が高い。これにより、仮焼炉30で炭素を含有する化石燃料の少なくとも一部をアンモニアに置換しても、高いエネルギー効率を十分に維持することができる。また、二酸化炭素の排出量を十分に低減することができる。
【0038】
仮焼炉30の内部には、相対的に酸素濃度が低い領域と、相対的に酸素濃度が高い領域とが形成される。
図3には、ある時刻において計測した酸素濃度(%)の分布も示されている。
図3では、4段階の色の濃さによって、酸素濃度(%)の範囲の違いが示されている。具体的には、酸素濃度が10%超の領域、8%~10%の領域、5%~8%の領域、及び5%以下の領域の4つの領域が、互いに異なる濃さで表されている。アンモニア以外の熱エネルギー源(例えば、廃棄物)が供給される位置、又は/及び、クーラ抽気等の仮焼炉30の内部に供給される空気の導入位置及び向きに起因して、仮焼炉30の内部において酸素濃度の偏りが発生すると考えられる。
【0039】
また、
図4には、
図3に示される酸素濃度(%)の分布を得た時刻と同じ時刻において計測した二酸化炭素濃度(%)の分布が示されている。
図4では、
図3と同様に、4段階の色の濃さによって、二酸化炭素濃度(%)の範囲の違いが示されている。具体的には、二酸化炭素濃度が25%超の領域、20%~25%の領域、15%~20%の領域、及び15%以下の領域の4つの領域が、互いに異なる濃さで表されている。
図3及び
図4のそれぞれに示される濃度の分布を比較すると、酸素濃度が相対的に低い領域では、二酸化炭素濃度が相対的に高く、酸素濃度が相対的に高い領域では、二酸化炭素濃度の相対的に低いことがわかる。なお、
図3及び
図4に示される濃度分布が計測された際には、供給部材60とは別の供給部材60Aによって、固形分の熱エネルギー源が供給されている。供給部材60Aは、周方向において、供給部材60及び供給部材70と異なる箇所に配置されている。
【0040】
仮焼炉30の内部における酸素濃度及び二酸化炭素濃度の計測は、例えば、下記のように行うことができる。周方向及び径方向の少なくとも一方において位置が互いに異なる複数の計測点において、JISB7983に準拠した電気化学式のガス分析計により酸素濃度を計測し、JISB7986に準拠した赤外線吸収式のガス分析計により二酸化炭素濃度を計測する。そして、計測値を得た複数の計測点それぞれの周囲において、隣り合う計測点の間が線形関係であると仮定して、任意の点での推測値を算出する。複数の計測点には、周方向において位置が互いに異なる4箇所以上の計測点が含まれていてもよい。
【0041】
仮焼炉30の内部では、酸素濃度及び二酸化炭素濃度は、時間の経過と共に変動し得る。しかしながら、仮焼炉30の内部において、酸素濃度が相対的に低い領域と、酸素濃度が相対的に高い領域とが含まれる濃度分布では、時刻が異なっていても、同様の傾向が現れる。すなわち、時間の平均値で観察すれば、時刻ごとの絶対値が異なっていても、酸素濃度の相対的な大きさの違いを評価することができる。なお、仮焼炉30の運転中において、1分~30分の計測周期で(1分~30分ごとに)、上記計測点ごとに、酸素濃度及び二酸化炭素濃度が計測されてもよい。また、アンモニア含有ガスが供給されている期間も含めて、酸素濃度及び二酸化濃度が計測されてもよい。
【0042】
供給部材70は、仮焼炉30の内部のうちの、酸素濃度が相対的に高い領域に向かってアンモニア含有ガスを吐出する(吹き込む)ように設けられている。具体的には、仮焼炉30の内部を周方向に沿って区画して得られる複数の領域のうちの、供給部材70がアンモニア含有ガスを供給する位置(導入口72の位置)が含まれる領域の酸素濃度は、上記複数の領域における酸素濃度の平均値よりも高い。以下、この点について、仮焼炉30の内部を周方向において並ぶ4つの扇形の領域に区画する場合を例に説明する。
【0043】
一例では、仮焼炉30の内部を、周方向において90°単位で4つの領域に区画する。この場合、1つの扇形の領域における中心角は、90°となる。また、導入口72が位置することとなる1つの領域において、導入口72の中心が、周方向において当該領域の中央に位置するように、4つの領域が区画される。
図3及び
図4では、導入口72が位置する領域が「R1」で示されており、他の3つの領域が、それぞれ「R2」、「R3」、及び「R4」で示されている。領域R1~R4は、周方向において、この順に並んでいる。領域R1~R4は、仮焼炉30の内部のうちの、導入口72が設けられる高さ位置での断面における2次元の領域である。
【0044】
領域R1~R4それぞれでは、少なくとも1つの計測点において酸素濃度が計測される。1つの領域における酸素濃度は、当該領域に含まれる1以上の計測点での酸素濃度の計測値の算術平均を計測周期ごとに求めたうえで、その算術平均の1時間あたりの時間平均を求めることで得られる。領域R1の酸素濃度は、領域R1~R4における酸素濃度の平均値よりも大きい。なお、領域R1~R4における酸素濃度の平均値は、領域R1の酸素濃度、領域R2の酸素濃度、領域R3の酸素濃度、及び領域R4の酸素濃度を合算した後に4で除算することで得られる。以上のように、周方向において導入口72の位置を基準に区画される複数の領域のうちの導入口72が位置する領域での酸素濃度が、当該領域を含む全ての領域における酸素濃度の平均値よりも高くなるように、供給部材70が配置される。
【0045】
後述するように、アンモニアと二酸化炭素との反応により、一酸化炭素濃度が上昇し得る。供給部材70からのアンモニアと二酸化炭素との反応を減少させる観点から、仮焼炉30の運転中の期間のうちの90%以上の期間において、領域R1における酸素濃度が、5%よりも大きくてもよい。仮焼炉30の運転中の期間のうちの90%以上の期間において、領域R1における酸素濃度が、6%よりも大きくてもよく、7%よりも大きくてもよく、8%よりも大きくてもよい。
【0046】
領域R1~R4それぞれでは、少なくとも1つの計測点において二酸化炭素濃度が計測される。1つの領域における二酸化炭素濃度は、当該領域に含まれる1以上の計測点での二酸化炭素濃度の計測値の算術平均を計測周期ごとに求めたうえで、その算術平均の1時間あたりの時間平均を求めることで得られる。領域R1の二酸化炭素濃度は、領域R1~R4における二酸化炭素濃度の平均値よりも小さい。なお、領域R1~領域R4における二酸化炭素濃度の平均値は、領域R1の二酸化炭素濃度、領域R2の二酸化炭素濃度、領域R3の二酸化炭素濃度、及び領域R4の二酸化炭素濃度を合算した後に4で除算することで得られる。以上のように、周方向において導入口72の位置を基準に区画される複数の領域のうちの導入口72が位置する領域での二酸化炭素濃度が、当該領域を含む全ての領域における二酸化炭素の平均値よりも低くなるように、供給部材70が配置される。
【0047】
供給部材70からのアンモニアと二酸化炭素との反応を減少させる観点から、仮焼炉30の運転中の期間のうちの90%以上の期間において、領域R1における二酸化炭素濃度が、20%よりも小さくてもよい。仮焼炉30の運転中の期間のうちの90%以上の期間において、領域R1における二酸化炭素濃度が、19%よりも小さくもよく、18%よりも小さくてもよい。
【0048】
[セメントクリンカの製造方法]
続いて、セメントクリンカの製造方法の一例として、製造装置100において実行されるクリンカの製造過程について説明する。製造装置100において実行される製造過程は、例えば、予熱工程と、仮焼工程と、焼成工程と、冷却工程と、を含む。これらの工程は、少なくとも部分的に重複した期間においてそれぞれ実行される。予熱工程は、サイクロンC1~C4において、ロータリーキルン40からの排ガス等を含む高温のガスにより、セメント原料を予熱する工程である。
【0049】
仮焼工程は、仮焼炉30において、ロータリーキルン40からの排ガスと、仮焼炉30の内部に供給される各種の熱エネルギー源とにより、セメント原料を仮焼する工程である。焼成工程は、ロータリーキルン40において、バーナ44からの燃焼ガスにより、セメント原料の焼成を行う工程である。冷却工程は、クリンカクーラ50において、ロータリーキルン40で生成されたクリンカを冷却する工程である。
【0050】
上記仮焼工程について、その一例を詳細に説明する。仮焼工程は、例えば、第1供給工程と、第2供給工程と、加熱工程と、を含む。第1供給工程、第2供給工程、及び加熱工程は、少なくとも部分的に重複した期間においてそれぞれ実行される。第1供給工程は、仮焼炉30の内部に対して、供給部材60により、固形分を含む熱エネルギー源を供給する工程である。第1供給工程において供給部材60から供給される固形分は、微粉炭であってもよく、廃棄物であってもよく、微粉炭及び廃棄物の両方であってもよい。
【0051】
第2供給工程は、供給部材60とは別体に形成された供給部材70により、仮焼炉30の内部に対してアンモニアガスを供給する工程である。第2供給工程では、供給部材70により、供給部材60が熱エネルギー源を供給する位置とは異なる位置から、アンモニアガスが供給される。例えば、第2供給工程では、仮焼炉30の中心軸Axまわりの周方向において、供給部材60の導入口62の配置位置とは異なる位置(異なる角度)に配置された導入口72から、アンモニア含有ガスが供給される。
【0052】
加熱工程は、仮焼炉30において、アンモニアガスを燃焼しつつ、セメント原料を加熱する工程である。仮焼工程は、脱硝工程を含んでもよい。例えば、脱硝工程では、仮焼炉30の上部(出口)とサイクロンC4とを接続する接続部38に設けられた導入口20から、接続部38内にアンモニア含有ガスが供給される。これにより、仮焼炉30での仮焼に用いられた後の排ガスに対して脱硝処理が行われる。
【0053】
<一酸化炭素濃度の上昇について>
図5には、上述した例とは異なり、固形分及びアンモニアガスを同一箇所から導入した場合の仮焼炉30の出口における一酸化炭素濃度の時間変化を計測した結果が示されている。
図5に示されるグラフにおいて、期間T1は、固形分及びアンモニアガスを同一箇所から供給する部材(バーナ)から、アンモニアガスを供給している期間を表す。期間T1以外の期間では、アンモニアガスが供給されておらず、固形分は供給されている。上記部材から、固形分として微粉炭が供給されている。上記部材の導入口には、固形分を供給するための複数の開口(吹込口)が設けられており、アンモニアガスを供給するための複数の開口(吹込口)が設けられている。また、固形分及びアンモニアガスを供給する部材とは異なる部材により、廃棄物が仮焼炉30の内部に供給されている。
【0054】
図5に示される計測結果から、アンモニアガスの供給に起因して、仮焼炉30の出口から排出されるガス中に含まれる一酸化炭素濃度が顕著に増加していることがわかる。すなわち、仮焼炉30の内部に対して、アンモニアガスを供給することで、一酸化炭素濃度が急激に増加するとの知見が得られた。一酸化炭素濃度が上昇する要因として、次の2つのことが考えられる。
(A)アンモニアガスの燃焼による微粉炭等の固形分の燃焼阻害
(B)アンモニアと二酸化炭素との反応
【0055】
要因(A)に関して補足すると、ガスは、固形分に比べて速く燃焼すると考えられる。そのため、アンモニアガスと、微粉炭等の固形分とを同一箇所から供給すると、アンモニアガスが先に燃焼することで、固形分が不完全燃焼して、一酸化炭素濃度が上昇すると考えられる。そのため、上述した例のように、固形分を供給する位置とは異なる位置から、供給部材70がアンモニアガスを仮焼炉30の内部に供給することで、一酸化炭素濃度の上昇を抑制し得る。
【0056】
要因(B)に関して補足すると、アンモニアと二酸化炭素との反応は、下記の式(3)によって示される。下記の式(3)で示される反応により一酸化炭素が発生するので、アンモニアが供給される領域での二酸化炭素濃度が高いと、言い換えると、当該領域での酸素濃度が低いと、一酸化炭素濃度が上昇すると考えられる。そのため、上述した例のように、供給部材70がアンモニアガスを供給する位置を含む領域における酸素濃度が高くなるように供給部材70を配置することで、一酸化炭素濃度の上昇を抑制し得る。
NH3+3CO2 → N2+3H2O+3CO (3)
【0057】
[変形例]
以上、一実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に何ら限定されるものではない。上記要因(A)が、要因(B)に比べて、一酸化炭素濃度の上昇に大きく寄与している場合には、供給部材70は、相対的に酸素濃度が高い領域に向けてアンモニア含有ガスを供給しなくてもよい。すなわち、供給部材70がアンモニアガスを供給する位置を含む領域R1の酸素濃度が、領域R1~R4における酸素濃度の平均値よりも高くなくてもよい。
【0058】
供給部材70の導入口72の高さ位置が、供給部材60の導入口62の高さ位置と異なっていてもよい。この場合、酸素濃度の大小関係が評価される領域R1~R4は、導入口72の高さ位置において設定される。供給部材60から、固形分として微粉炭が供給される場合において、供給部材60及び供給部材70とは異なる別の供給部材から、仮焼炉30の内部に対して廃棄物が供給されてもよい。供給部材60と、別の1以上の供給部材(例えば、
図3等に示される供給部材60A)とのそれぞれから、微粉炭が供給されてもよい。
【0059】
セメントクリンカの製造方法は、製造装置100とは異なる製造装置において実行されてもよい。セメントクリンカの製造装置において、セメント原料を予熱するサイクロンの数は特に限定されず、3基以下であってもよいし、5基以上であってもよい。
【0060】
仮焼炉30に代えて、又は仮焼炉30に加えて、ロータリーキルン40において、固形分とアンモニアガスとが、互いに異なる位置から個別に供給されてもよい。
図6には、ロータリーキルン40の下流側の端部とクリンカクーラ50との接続部分が模式的に示されている。
図6では、クリンカが「Cl」で示されている。ロータリーキルン40で生成されたクリンカClは、クリンカクーラ50に排出され、クリンカクーラ50において、クリンカClは、冷風により冷却される。
【0061】
一例では、バーナ44は、微粉炭(固形分)、廃棄物(固形分)、及び燃焼用空気を、バーナ44に形成された対応する開口から、ロータリーキルン40の内部にそれぞれ供給する。ロータリーキルン40の下流側の端部には、バーナ44(第1供給部材)に加えて、バーナ44とは別体に形成された供給部材80(第2供給部材)が設けられている。供給部材80は、ロータリーキルン40の内部に対して、アンモニア含有ガスを供給するバーナである。
【0062】
図6に示される例では、ロータリーキルン40の内部において上流から下流を見たときに、熱エネルギー源を供給する1つの部材の外縁で囲まれる領域内に、固形分を供給するための開口と、アンモニアガスを供給するための開口とが位置しない。すなわち、バーナ44の導入口と、供給部材80の導入口とが、物理的に分離して設けられている。これにより、アンモニアガスの燃焼に起因した固形分の燃焼阻害を抑制し、ロータリーキルン40からの排ガスにおける一酸化炭素濃度の上昇を抑制し得る。
【0063】
以上に説明した種々の例のうちの1つの例において、他の例において説明した事項の少なくとも一部が組み合わされてもよい。
【0064】
[本開示のまとめ]
以上に説明したセメントクリンカの製造方法は、セメント原料を加熱する加熱炉(30,40)の内部に対して、第1供給部材(60,44)により、固形分を含む熱エネルギー源を供給する第1供給工程と、第1供給部材(60,44)とは別体に形成された第2供給部材(70,80)により、加熱炉(30,40)の内部に対してアンモニアガスを供給する第2供給工程と、加熱炉(30,40)において、アンモニアガスを燃焼しつつ、セメント原料を加熱する加熱工程と、を含む。第2供給工程では、第2供給部材(70,80)により、第1供給部材(60,44)が熱エネルギー源を供給する位置とは異なる位置から、加熱炉(30,40)の内部に対してアンモニアガスが供給される。この製造方法では、アンモニアガスが供給される位置が、固形分が供給される位置と異なっており、アンモニアの燃焼に伴う固形分の燃焼阻害が発生し難い。従って、この製造方法は、加熱炉からの排ガス内の一酸化炭素濃度の上昇を抑制するのに有用である。なお、一酸化炭素の濃度が上昇することによる懸念事項として、一酸化炭素は有毒なものであり、その濃度が上昇すると人体へ影響を与え得ること、予期せぬ場所での一酸化炭素の発生、燃焼、及び、還元性雰囲気形成による微粉炭の燃焼阻害等が挙げられる。
【0065】
以上に説明した製造方法において、上記固形分は、微粉炭及び廃棄物の少なくとも一方を含んでもよい。微粉炭又は廃棄物が、アンモニアガスと同一部材(同一箇所)から供給されると、アンモニアガスの燃焼により、微粉炭等が不完全燃焼する可能性がある。これに対して、上記方法では、微粉炭等とは異なる位置でアンモニアガスが供給されるので、微粉炭等の不完全燃焼が発生する可能性を低減できる。
【0066】
以上に説明した製造方法において、上記加熱炉は、ロータリーキルン(40)からの排ガスが導入され、セメント原料を仮焼する仮焼炉(30)であってもよい。仮焼炉(30)の中心軸(Ax)まわりの周方向において、第1供給部材(60)が熱エネルギー源を供給する第1位置と、第2供給部材(70)がアンモニアガスを供給する第2位置とが、互いに異なっていてもよい。この場合、仮焼炉(30)において、アンモニアの燃焼に伴う固形分の燃焼阻害が発生し難い。そのため、アンモニアガスの供給に起因した、仮焼炉(30)からの排ガス内の一酸化炭素濃度の上昇を抑制できる。
【0067】
以上に説明した製造方法において、仮焼炉(30)の内部を周方向に沿って区画して得られる複数の領域(R1~R4)のうちの、上記第2位置が含まれる領域(R1)の酸素濃度は、複数の領域(R1~R4)における酸素濃度の平均値よりも高くてもよい。酸素濃度が高いと、二酸化炭素濃度が低い傾向がある。そのため、上記方法では、仮焼炉30の内部において、アンモニアが二酸化炭素と反応する量が低減される。従って、アンモニアガスの供給に起因した、仮焼炉(30)からの排ガス内の一酸化炭素濃度の上昇を抑制できる。
【0068】
以上に説明した製造方法において、仮焼炉(30)の運転中の期間のうちの90%以上の期間において、上記第2位置が含まれる領域(R1)における酸素濃度が、5%よりも大きくてもよい。この場合、仮焼炉(30)の内部において、アンモニアが二酸化炭素と反応する量が更に低減される。従って、アンモニアガスの供給に起因した、仮焼炉(30)からの排ガス内の一酸化炭素濃度の上昇を更に抑制できる。
【0069】
以上に説明したセメントクリンカの製造装置(100)は、セメント原料を加熱する加熱炉(30,40)と、加熱炉(30,40)の内部に対して、固形分を含む熱エネルギー源を供給する第1供給部材(60,44)と、第1供給部材(60,44)とは別体に形成され、加熱炉(30,40)の内部に対してアンモニアガスを供給する第2供給部材(70,80)と、を備える。第2供給部材(70,80)は、第1供給部材(60,44)が熱エネルギー源を供給する位置とは異なる位置から、加熱炉(30,40)の内部に対してアンモニアガスを供給する。製造装置(100)は、加熱炉(30,40)において、アンモニアガスを燃焼する。この製造装置(100)は、上記製造方法と同様に、排ガス内の一酸化炭素濃度の上昇を抑制するのに有用である。
【符号の説明】
【0070】
100…セメントクリンカの製造装置、C1,C2,C3,C4…サイクロン、30…仮焼炉、40…ロータリーキルン、44…バーナ、50…クリンカクーラ、60,70,80…供給部材。