(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116681
(43)【公開日】2024-08-28
(54)【発明の名称】風味油組成物、風味付与食品の製造方法、及び食品への香ばしさ付与方法
(51)【国際特許分類】
A23D 9/00 20060101AFI20240821BHJP
A23L 27/00 20160101ALI20240821BHJP
A23L 27/27 20160101ALI20240821BHJP
A23L 35/00 20160101ALN20240821BHJP
A23L 23/00 20160101ALN20240821BHJP
【FI】
A23D9/00 504
A23D9/00 506
A23L27/00 C
A23L27/27
A23L35/00
A23L23/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023022421
(22)【出願日】2023-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】302042678
【氏名又は名称】株式会社J-オイルミルズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】本池 千恵
(72)【発明者】
【氏名】奈良 淑子
(72)【発明者】
【氏名】藤井 九達
【テーマコード(参考)】
4B026
4B036
4B047
【Fターム(参考)】
4B026DC01
4B026DG04
4B026DG06
4B026DL05
4B026DP10
4B026DX01
4B036LC01
4B036LF01
4B036LF03
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4B036LK01
4B036LP02
4B047LB09
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4B047LF10
4B047LG10
4B047LG70
4B047LP02
4B047LP20
(57)【要約】
【課題】燻煙処理を施した油脂を食品に用いて香ばしさを付与する際、その燻煙処理による燻臭や異風味を抑えて、幅広い用途に用いることが可能な風味油組成物を提供する。
【解決方法】焙煎麦を燻煙材として燻煙処理した油脂Aと桜チップを燻煙材として燻煙処理した油脂Bとを含む風味油組成物である。また、その風味油組成物を食品に添加する風味付与食品の製造方法である。更に、その風味油組成物を食品に添加する食品への香ばしさ付与方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
焙煎麦を燻煙材として燻煙処理した油脂Aと桜チップを燻煙材として燻煙処理した油脂Bとを含む風味油組成物。
【請求項2】
前記風味油組成物は、前記油脂A及び前記油脂B以外の油脂Cを含み、前記油脂Aの含有量が1.0質量%以上20質量%以下、前記油脂Bの含有量が0.05質量%以上2質量%以下、前記油脂Cの含有量が78質量%以上98.95質量%以下である、請求項1記載の風味油組成物。
【請求項3】
前記油脂Cは、菜種油、コーン油、大豆油、米油、ひまわり油、及びパーム系油脂からなる群から選ばれた1種又は2種以上である、請求項2記載の風味油組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の風味油組成物を食品に添加する風味付与食品の製造方法。
【請求項5】
前記食品の100質量部に、前記風味油組成物を0.1質量部以上5質量部以下添加する、請求項4記載の風味付与食品の製造方法。
【請求項6】
前記食品は、炒め物類、焼き物類、ソース類、スープ類、食肉加工品類、米飯類、調味料類、又は油ちょう食品類である、請求項4記載の風味付与食品の製造方法。
【請求項7】
請求項1~3のいずれか1項に記載の風味油組成物を食品に添加する食品への香ばしさ付与方法。
【請求項8】
前記食品の100質量部に、前記風味油組成物を0.1質量部以上5質量部以下添加する、請求項7記載の食品への香ばしさ付与方法。
【請求項9】
前記食品は、炒め物類、焼き物類、ソース類、スープ類、食肉加工品類、米飯類、調味料類、又は油ちょう食品類である、請求項7記載の食品への香ばしさ付与方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燻煙処理を施した油脂を利用した風味油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食用油脂に対して風味付けを行うためには、油脂中で、香味野菜、糖類、アミノ酸類等を加熱攪拌し、その反応によって発現した風味を油脂へ移行させ、香味油として利用することが行われている。例えば、バターフレーバーオイル、ガーリックオイル、ねぎ油、唐辛子油などはその代表例である。
【0003】
一方、特許文献1には、各種燻煙材を加熱処理することにより生じさせた燻煙を油脂と撹拌しつつ接触させることにより、食品に香ばしさを付与することができる風味油脂組成物が得られることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らの研究によると、油脂に燻煙処理を施した場合、その燻煙処理に起因して、食品に用いたとき燻臭や異風味が勝ってしまう問題がみられた。
【0006】
本発明の目的は、燻煙処理を施した油脂を食品に用いて香ばしさを付与する際、その燻煙処理による燻臭や異風味を抑えて、幅広い用途に用いることが可能な風味油組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、特定の燻煙処理油脂の組み合わせにより香ばしさの付与効果が高められて、互いの使用量は抑えることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、その第1の観点においては、焙煎麦を燻煙材として燻煙処理した油脂Aと桜チップを燻煙材として燻煙処理した油脂Bとを含む風味油組成物を提供するものである。
【0009】
上記の風味油組成物においては、前記油脂A及び前記油脂B以外の油脂Cを含み、前記油脂Aの含有量が1.0質量%以上20質量%以下、前記油脂Bの含有量が0.05質量%以上2質量%以下、前記油脂Cの含有量が78質量%以上98.95質量%以下であることが好ましい。
【0010】
上記の風味油組成物においては、前記油脂Cは、菜種油、コーン油、大豆油、米油、ひまわり油、及びパーム系油脂からなる群から選ばれた1種又は2種以上であることが好ましい。
【0011】
本発明は、その第2の観点においては、上記の風味油組成物を食品に添加する風味付与食品の製造方法を提供するものである。
【0012】
上記の風味付与食品の製造方法においては、前記食品の100質量部に、前記風味油組成物を0.1質量部以上5質量部以下添加することが好ましい。
【0013】
上記の風味付与食品の製造方法においては、前記食品は、炒め物類、焼き物類、ソース類、スープ類、食肉加工品類、米飯類、調味料類、又は油ちょう食品類であることが好ましい。
【0014】
本発明は、その第3の観点においては、上記の風味油組成物を食品に添加する食品への香ばしさ付与方法を提供するものである。
【0015】
上記の食品への香ばしさ付与方法においては、前記食品の100質量部に、前記風味油組成物を0.1質量部以上5質量部以下添加することが好ましい。
【0016】
上記の食品への香ばしさ付与方法においては、前記食品は、炒め物類、焼き物類、ソース類、スープ類、食肉加工品類、米飯類、調味料類、又は油ちょう食品類であることが好ましい。
【0017】
[不可能・非実際的事情の存在]
本発明は、油脂を燻煙処理してなる燻煙処理油脂を用いるものである。一般に、油脂の燻煙処理物は極めて多種類の化学物質で構成される組成物となっており、含まれる化学物質を調べ、逐一特定することは、不可能であるか、又は著しく過大な経済的支出や時間を要するためおよそ実際的ではない。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、焙煎麦を燻煙材として燻煙処理した油脂と桜チップを燻煙材として燻煙処理した油脂とを組み合わせて風味油組成物となしたので、その組み合わせにより香ばしさの付与効果が高められて、互いの使用量は抑えることができることができる。これにより、燻煙処理を施した油脂を食品に用いて香ばしさを付与する際、その燻煙処理による燻臭や異風味が抑えられて、幅広い用途に用いることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】油脂を燻煙処理するために利用することができる装置の一実施形態を表す概略構成図である。
【
図2】同装置から燻煙導入筒及び燻煙排気筒を取外して回転ドラムを傾けたときの状態を表す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下には、燻煙による処理を施して燻煙処理油脂を調製する方法について説明する。ただし、本発明は、以下に説明する調製方法に限定されるものではない。
【0021】
燻煙による処理を施す原料油脂としては、食用油脂として汎用のものを用いることができる。例えば、菜種油、コーン油、大豆油、米油、ひまわり油、パーム系油脂、綿実油、落花生油、サフラワー油、オリーブ油、カポック油、ごま油、月見草油、シア脂、サル脂、カカオ脂、やし油、パーム核油等の植物性油脂、ラード、牛脂、鶏油、乳脂、魚油等の動物性油脂、中鎖脂肪酸トリグリセリドなどが挙げられる。また、これら油脂に硬化、分別、エステル交換から選ばれる1種又は2種以上の処理を施した加工油脂を用いてもよい。なかでも、物性(作業のしやすさ、取扱いのしやすさ)の観点から、菜種油、コーン油、大豆油、米油、ひまわり油、パーム系油脂、オリーブ油、綿実油、サフラワー油などを用いることが好ましく、菜種油、コーン油、大豆油、米油、ひまわり油、パーム系油脂などを用いることがより好ましい。また、風味の観点から、菜種油、コーン油、大豆油、米油、ひまわり油、パーム系油脂、オリーブ油、綿実油、サフラワー油、ラード、牛脂などを用いることが好ましく、菜種油、コーン油、大豆油、米油、ひまわり油、パーム系油脂などを用いることがより好ましい。ここで、本明細書において「パーム系油脂」とは、パーム油及びパーム油の加工油脂を意味する。これらの油脂類は、1種類を原料油脂として単独で用いてもよく、2種類以上を原料油脂として別に用いて燻煙処理油脂を調製し、得られた燻煙処理油脂を混合するようにしてもよく、あるいは2種類以上を混合してなる混合油を原料油脂として用いてもよい。
【0022】
原料油脂は、物性(作業のしやすさ、取扱いのしやすさ)の観点から、上昇融点が10℃以下であることが好ましく、0℃以下であることがより好ましい。上昇融点は、基準油脂分析試験法2.2.4.2-1996に則って測定することができる。
【0023】
図1には、油脂を燻煙処理するために利用することができる装置の一実施形態が示される。また、
図2には、同装置から燻煙導入筒及び燻煙排気筒の接続を外して回転ドラムを傾けたときの状態が示される。
【0024】
この製造装置は、回転ドラム1を回転可能に支持する回転支持台2が、基台3に対して前後に傾斜可能に支持されている。すなわち、回転支持台2は、回転ドラム1の回転時には、回転ドラム1をほぼ水平に支持し、原料油脂の導入、取出し時には、基台3に対して前後いずれかの方向に回動して、傾斜できるように構成されている。
【0025】
回転ドラム1は、円筒状をなし、その両端はそれぞれ縮径して、開口部4,5を有している。また、回転ドラム1の中央部外周には、ガイドローラ溝6が形成されており、回転支持台2から延出したガイドローラ7を嵌合させて、回転ドラム1の回転操作中における回転ドラム1の横ブレ等を防止するように構成されている。また、回転ドラム1の内周壁には、攪拌羽根8が複数取付けられている。
【0026】
更に、回転ドラム1の外周面には図示しないヒータが配設され、回転ドラム1内に導入した原料油脂を所定の温度まで加熱して、燻煙処理に供するように構成されている。なお、回転ドラム1内の油脂の温度を、油脂の流動性に支障をきたさない温度に保てるのであれば、上記ヒータはなくてもよい。
【0027】
この回転ドラム1の一端の開口部4には、燻煙発生部10から伸びた燻煙導入筒L1が、パッキン9aを介して開閉可能に接続している。
【0028】
燻煙発生部10は、下方に吸気口11が形成され、上方に燻煙導入筒L1が延出したハウジング12内に加熱装置13が配置されており、ハウジング12内に配置した燻煙材を、加熱装置13で加熱して燻煙を発生させ、発生した燻煙を、燻煙導入筒L1を通して回転ドラム1内に導入出来るように構成されている。加熱装置としては、ヒータ、炭、ガス、自動式スモークジェネレータ等が挙げられる。
【0029】
また、この回転ドラム1の他端の開口部5には、支持枠20により支持された燻煙排気筒L2が、パッキン9bを介して開閉可能に接続している。
【0030】
この製造装置において、回転ドラム1内に原料油脂を充填したり、取り出したりする際には、回転ドラム1の両端から燻煙導入筒L1及び燻煙排気筒L2を取外し、回転支持台2を一方向に傾斜させて作業を行うことができるようにしている。すなわち、回転ドラム1を傾斜させて、回転ドラム1内に原料油脂を充填した後、回転支持台2を水平に戻し、回転ドラム1の両端の開口部4,5に燻煙導入筒L1及び燻煙排気筒L2をそれぞれ取付ける。そして、回転ドラム1を回転させるとともに、燻煙発生部10のハウジング12内に燻煙材を所定量設置し、燻煙材を加熱装置13で加熱して燻煙を発生させ回転ドラム1内に導入し、燻煙処理を行うことができる。
【0031】
回転ドラムの回転速度は、2~30回転/分が好ましく、5~25回転/分がより好ましい。回転速度が2回転/分未満であると、攪拌不足による燻製ムラを生じやすく30回転/分を超えると原料油脂の飛散により燻製ムラを生じやすい。
【0032】
燻煙処理は、原料油脂を、必要により加熱して、好ましくは0~60℃の範囲、より好ましくは10~60℃の範囲、更に好ましくは15~50℃の範囲に保持して、好ましくは180~600℃の燻煙、より好ましくは180~500℃の燻煙、更に好ましくは200~500℃の燻煙で、好ましくは0.1~24時間、より好ましくは0.5~20時間、更に好ましくは1~10時間行う。
【0033】
原料油脂の温度が0℃未満であると、燻煙が液化(木酢液)して、油脂がペースト状になることがあり、60℃を超えると原料油脂が熱劣化して、得られる燻煙処理油脂の品質が損なわれることがある。
【0034】
また、燻煙温度が180℃未満であると、原料油脂に対して燻煙成分が十分に吸着されず、ムラが生じる場合があり、燻煙温度が600℃を超えると、原料油脂にコゲが生じたり、原料油脂が熱劣化したりして、得られる燻煙処理油脂の品質が損なわれることがある。
【0035】
更に、燻煙時間が0.1時間未満であると、原料油脂に燻煙成分が十分吸着されず、ムラが生じることがあり、24時間を超えると燻煙の付着が悪くなり時間対効果を感じられなくなることがある。
【0036】
なお、原料油脂の温度が低すぎる場合には、上述したように、回転ドラム1の外周面に配設したヒータによって所定の温度になるように加熱を行う。また、燻煙温度は、加熱装置13による燻煙材の加熱温度である。更に、燻煙時間は、燻煙が回転ドラム1内に滞留する時間である。
【0037】
このようにして、所定時間燻煙処理を行った後には、回転ドラム1の両端から燻煙導入筒L1及び燻煙排気筒L2を取外し、回転支持台2を一方向に傾斜させ、回転ドラム1の内容物(燻煙処理油脂)を取り出すことができる。
【0038】
本発明においては、上記のようにして調製可能な燻煙処理油脂を、特定の燻煙材をもって調製し、その燻煙処理油脂を組み合わせて風味油組成物となす。
【0039】
具体的には、本発明に用いる燻煙処理油脂の1つには、焙煎麦を燻煙材として燻煙処理した油脂である。以下、「油脂A」と称する場合がある。
【0040】
また、本発明に用いる燻煙処理油脂の他の1つには、桜チップを燻煙材として燻煙処理した油脂である。以下、「油脂B」という場合がある。
【0041】
上記油脂Aを得るための焙煎麦としては、例えば、大麦、小麦、ハダカムギ、ライムギ、エンバクなどが挙げられる。なかでも、燻臭や異風味を生じさせずに香ばしさを付与する観点から、大麦を用いることが好ましい。麦は、その種子部の全粒を焙煎して用いればよく、あるいは必要に応じて焙煎後に粗砕して用いてもよい。焙煎は、電熱、熱風、バーナー、マイクロ波などの手段を用いて麦原料を加熱することにより行うことができる。焙煎条件としては、通常行われる範囲であってよく、例えば、最終品温100~250℃に5~40分で到達するようして行うなどであってよい。焙煎温度が低すぎると、得られる燻煙処理油脂において、香ばしさを付与する効果が得にくくなる場合がある。また、焙煎温度が高すぎると、得られる燻煙処理油脂において、焦げ臭等の不快味が強くなる場合がある。焙煎麦は、市販のものを入手して用いてもよい。
【0042】
一方、上記油脂Bを得るための燻煙材としては、燻製用スモークウッドとして市販されている桜チップを入手して用いることができる。あるいは場合によっては、桜の樹木の剪定枝等を回収して、乾燥後、樹皮をはいで、チップ状に破砕したものなども使用することができる。
【0043】
本発明においては、限定されないが、上記油脂Aと上記油脂Bとは、適宜、それら以外の油脂を用いて所定の割合で混合することにより香味油組成物を調製することが好ましい。これによれば、上記油脂Aと上記油脂Bがバランスよく配合されてなる香味油組成物を調製しやすい。
【0044】
上記油脂A及び油脂B以外の油脂(以下、「油脂C」と称する場合がある。)としては、上述した燻煙処理のための原料油脂として例示したものと同様に、食用油脂として汎用のものを用いることができる。例えば、菜種油、コーン油、大豆油、米油、ひまわり油、パーム系油脂、綿実油、落花生油、サフラワー油、オリーブ油、カポック油、ごま油、月見草油、シア脂、サル脂、カカオ脂、やし油、パーム核油等の植物性油脂、ラード、牛脂、鶏油、乳脂、魚油等の動物性油脂、中鎖脂肪酸トリグリセリドなどが挙げられる。また、これら油脂に硬化、分別、エステル交換から選ばれる1種又は2種以上の処理を施した加工油脂を用いてもよい。なかでも、風味の観点から、菜種油、コーン油、大豆油、米油、ひまわり油、パーム系油脂、オリーブ油、綿実油、サフラワー油、ラード、牛脂などを用いることが好ましい。
【0045】
本発明により提供される香味油組成物が上記油脂Cを含んでなる場合においては、限定されないが、上記油脂Aの含有量が1.0質量%以上20質量%以下、上記油脂Bの含有量が0.05質量%以上2質量%以下、上記油脂Cの含有量が78質量%以上98.95質量%以下であることが好ましく、上記油脂Aの含有量が2.0%質量以上10質量%以下、上記油脂Bの含有量が0.1質量%以上1.5質量%以下、上記油脂Cの含有量が88.5質量%以上97.9質量%以下であることがより好ましい。上記範囲を満たすことにより、焙煎麦を燻煙材として燻煙処理した油脂Aによる香ばしさの付与効果と、桜チップを燻煙材として燻煙処理した油脂Bによるその香ばしさの向上効果がバランスよく、食品に用いて香ばしさを付与する際、その燻煙処理による燻臭や異風味を抑えられて、幅広い用途に用いることが可能となる。
【0046】
本発明により提供される風味油組成物においては、本発明の作用効果を損なわない範囲で、上記した焙煎麦や桜チップ以外のものを燻煙材として用いて得られた燻煙処理油脂を含有してもよい。その場合、燻煙材としては、例えば、ヒッコリー、リンゴ、ホワイトオーク、ナラ、ブナ等の汎用のスモークウッド、大豆、イナゴ豆、ソラ豆、エンドウ豆、インゲン豆、ヒヨコ豆、小豆、落花生などの豆類、コーヒー豆などを好ましく用いることができる。
【0047】
本発明により提供される風味油組成物は、例えば、食品に香ばしさ付与するため好適に用いられ得る。
【0048】
本発明が適用される食品としては、特に制限はない。例えば、チャーハン、野菜炒め等の炒め物類、お好み焼き、焼そば、焼肉等の焼き物類、麻婆豆腐のソース、パスタソース、味付け肉のたれ等のソース類、ラーメンスープ、コンソメスープ、カレー、シチュー等のスープ類、餃子、肉まんの具、ハンバーグ、ソーセージ等の食肉加工品類、炊き込みご飯、ピラフ等の米飯類、ロールパン、クッキー等の製菓製パン類、魚肉ソーセージ、かまぼこ等の水産加工品類、唐揚げ粉、チヂミ粉、粉末スープ等の調製粉類、シーズニングソース、ドレッシング、マヨネーズ、ポン酢、中華料理の素、鍋つゆ等の調味料類、マーガリン、ファットスプレッド等のマーガリン類、フレンチフライ、唐揚げ、イカリング、コロッケ等の油ちょう食品類などが挙げられる。このうち、炒め物類、焼き物類、スープ類が好ましく、更に炒め物類がより好ましい。特には、チャーハン、野菜炒め、ハンバーグ、焼きそば、焼き鳥、焼肉などに好適に用いられ得る。
【0049】
食品への適用の形態に特に制限はなく、例えば、各種食品の調理、加工、あるいは製造等におけるほぐし油、炊飯油、炒め油及びフライ油等の調理用油、ボックスオイル及び天板油等の離型油、練りこみ油、インジェクション用油及び仕上げ油等の調味用油等として用いることによって、あるいは各種食品の調理、加工、あるいは製造等の後に、添加、混合、塗布、溶解、分散、乳化等して食品に組み込ませることで、当該食品に香ばしさを付与することができる。
【0050】
食品に香ばしさを付与するための食品への添加量は、適用する食品ごと、必要に応じて所望量を適宜、食品に付与すればよい。典型的には、例えば、食品の100質量部に、上記風味油組成物の添加量として0.1質量部以上5質量部以下添加する、あるいは、食品の100質量部に、上記風味油組成物を1質量部以上3質量部以下添加するなどであってよい。
【実施例0051】
以下、試験例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。ただし、これらの試験例は、本発明の範囲を何ら限定するものではない。
【0052】
表1には試験に使用した材料を示す。
【0053】
【0054】
なお、使用した燻製オイルは、特開2021―101642号公報に開示された方法に則って、菜種油を燻煙処理することにより製造された製品である。具体的には、以下のようにして製造された製品である。
【0055】
(燻製オイル)
図1に概略構成図を示した製造装置の容量300Lの回転ドラム1内に菜種油(上昇融点0℃以下)をおよそ40kg入れ、菜種油の温度は室温(25℃程度)とした。その後、ハウジング12内に配置した燻煙材(焙煎大麦、桜チップ、又は焙煎コーヒー豆)を、回転ドラム外に備えた加熱装置13で400℃に加熱して燻煙を発生させ、燻煙導入筒L1を通して回転ドラム1内に導入した。そして、回転ドラム1を6回転/分の回転速度で回転させ、その内周壁には撹拌のための攪拌羽根8が配設され、菜種油を攪拌するようにしながら、およそ30分間、菜種油と燻煙とを接触させた。
【0056】
(風味油組成物)
後述の表に示す調製例ごと、各種燻製オイルを菜種油又はコーン油と混合し、風味油組成物を得た。
【0057】
(チャーハン)
市販の冷凍食品(商品名「セブンプレミアム 炒め油香るチャーハン」)を利用してチャーハンを調理した。具体的には、商品の裏面に記載の所定の時間電子レンジで加熱したうえ、上記で得られた風味油組成物を炒飯に対して1質量%になるように振りかけ、均一になるように混合して、チャーハンを得た。
【0058】
(香ばしさの評価)
得られたチャーハンについて、その香ばしさを、下記基準により評価した。結果は、評価者4名の合議による点数として示した。
【0059】
【0060】
評価結果を、各調製例の配合とともに、下記表に示す。
【0061】
【0062】
【0063】
【0064】
表3に示されるように、焙煎大麦を燻煙材として燻煙処理して得られた燻製オイル(焙煎大麦)のみの場合に比べて、それに桜チップを燻煙材として燻煙処理して得られた燻製オイル(桜チップ)を加えたほうが、同じ使用量でも、香ばしさが高められることが明らかとなった。例えば、比較例3の調製例では燻製オイル(焙煎大麦)のみ3質量%の含有量で使用したとき、香ばしさの評価が2点であったのに比べて、実施例2の調製例では、燻製オイル(焙煎大麦)と燻製オイル(桜チップ)との総含有量が2.3質量%の含有量で使用した場合であっても、香ばしさの評価として4点が得られた。
【0065】
【0066】
【0067】
また、表4に示されるように、桜チップを燻煙材として燻煙処理して得られた燻製オイル(桜チップ)による、焙煎大麦を燻煙材として燻煙処理して得られた燻製オイル(焙煎大麦)に与える香ばしさの向上の効果は、焙煎コーヒー豆を燻煙材として燻煙処理して得られた燻製オイル(焙煎コーヒー豆)では得られない燻製オイル(桜チップ)による特有の効果でることが明らかとなった。
【0068】
【0069】
【0070】
また、表5に示されるように、桜チップを燻煙材として燻煙処理して得られた燻製オイル(桜チップ)による、焙煎大麦を燻煙材として燻煙処理して得られた燻製オイル(焙煎大麦)に与える香ばしさの向上の効果は、コーン油に変えて菜種油を用いて香味油組成物を調製した場合にも得られることが明らかとなった。
1…回転ドラム、2…回転支持台、3…基台、4、5…開口部、6…ガイドローラ溝、7…ガイドローラ、8…攪拌羽根、9a、9b…パッキン、10…燻煙発生部、11…吸気口、12…ハウジング、13…加熱装置、20…支持枠、L1…燻煙導入筒、L2…燻煙排気筒