(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116738
(43)【公開日】2024-08-28
(54)【発明の名称】三次元形状を測定する測定装置の校正方法、測定システム、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G01B 11/25 20060101AFI20240821BHJP
G06T 7/80 20170101ALI20240821BHJP
【FI】
G01B11/25 H
G06T7/80
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023022522
(22)【出願日】2023-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】工藤 雄治
【テーマコード(参考)】
2F065
5L096
【Fターム(参考)】
2F065AA04
2F065AA37
2F065AA53
2F065BB28
2F065GG03
2F065GG04
2F065GG07
2F065HH05
2F065HH06
2F065HH07
2F065JJ03
2F065JJ05
2F065JJ26
5L096CA04
5L096CA05
5L096FA67
5L096FA69
(57)【要約】
【課題】大型の測定対象の三次元形状を測定する測定装置の校正を容易に行えるようにする。
【解決手段】校正用治具の一部を第1撮像部及び第2撮像部で撮像する撮像ステップと、第1撮像部の撮像結果に基づいて校正用治具の一部の第1座標位置を特定する第1特定ステップと、第2撮像部の撮像結果に基づいて校正用治具の一部の第2座標位置を特定する第2特定ステップと、校正用治具を回転させる回転ステップと、撮像ステップ、第1特定ステップ、第2特定ステップ、及び回転ステップを繰り返すステップと、第1座標位置又は第2座標位置を回転させて座標変換する回転行列と、第1座標位置又は第2座標位置を並進させる並進ベクトルとを特定するステップとを有する、校正方法。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象を撮像する複数の撮像部を備え、前記測定対象の三次元形状を測定するための測定装置を、校正用治具を用いてコンピュータが校正する校正方法であって、
前記校正用治具の上面に設けられている所定の形状の複数の被測定素子のうち、一部の前記被測定素子が視野に入るように前記校正用治具の上面を第1撮像部で撮像し、前記第1撮像部が撮像した前記被測定素子とは異なる一部の前記被測定素子が視野に入るように前記校正用治具の上面を前記第1撮像部とは異なる第2撮像部で撮像する撮像ステップと、
前記第1撮像部が撮像した撮像画像に基づいて、前記第1撮像部の視野に基づく第1座標における複数の前記被測定素子の位置を示す第1座標位置を特定する第1特定ステップと、
前記第2撮像部が撮像した撮像画像に基づいて、前記第2撮像部の視野に基づく第2座標における複数の前記被測定素子の位置を示す第2座標位置を特定する第2特定ステップと、
前記校正用治具を所定の回転方向に回転させる回転ステップと、
前記校正用治具を前記所定の回転方向に所定の角度以上回転させるまで、前記撮像ステップ、前記第1特定ステップ、前記第2特定ステップ、及び前記回転ステップを繰り返すステップと、
同一の前記被測定素子の前記第1座標位置と前記第2座標位置とが対応するように、前記第1座標位置又は前記第2座標位置を回転させて座標変換する回転行列と、前記第1座標位置又は前記第2座標位置を並進させる並進ベクトルとを特定するステップと
を有する、校正方法。
【請求項2】
前記第1座標位置又は前記第2座標位置を前記回転行列で回転させ、前記並進ベクトルで並進させることで校正座標に座標変換するステップを更に有する、請求項1に記載の校正方法。
【請求項3】
複数の前記被測定素子は、前記校正用治具の上面において所定の円の円周上に配置されている、請求項1に記載の校正方法。
【請求項4】
前記回転行列と前記並進ベクトルとを特定するステップにおいて、前記所定の円の円周上における同一の前記被測定素子の前記第1座標位置と前記第2座標位置とが一致するように、前記回転行列と前記並進ベクトルとを特定する、請求項3に記載の校正方法。
【請求項5】
前記校正用治具を回転させる前記回転ステップにおいて、
前記校正用治具の回転前における前記第1撮像部の視野に入っていた複数の前記被測定素子のうち一部の被測定素子が、前記校正用治具の回転後における前記第1撮像部の視野に入り、
前記校正用治具の回転前における前記第2撮像部の視野に入っていた複数の前記被測定素子のうち一部の被測定素子が、前記校正用治具の回転後における前記第2撮像部の視野に入るように、
前記校正用治具を回転させる、請求項1に記載の校正方法。
【請求項6】
前記回転行列と前記並進ベクトルとを特定するステップにおいて、同一の前記被測定素子の前記第1座標位置と前記第2座標位置とをペアワイズ位置合わせすることで、前記回転行列と前記並進ベクトルとを特定する、請求項1に記載の校正方法。
【請求項7】
前記校正用治具を用いて前記測定装置を校正する前に、
寸法及び位置関係のうち少なくとも一方が判明している複数の基準測定素子を有し、前記校正用治具よりも大きさが小さい基準治具を前記第1撮像部で撮像し、前記第1撮像部の撮像結果に基づき、前記第1撮像部の視野における座標位置を示す前記第1座標を校正するステップと、
基準治具を前記第2撮像部で撮像し、前記第2撮像部の撮像結果に基づき、前記第2撮像部の視野における座標位置を示す前記第2座標を校正するステップと
を更に有する、請求項1に記載の校正方法。
【請求項8】
測定対象を撮像する複数の撮像部を備え、前記測定対象の三次元形状を測定するための測定装置を、校正用治具を用いてコンピュータが校正する校正方法であって、
前記校正用治具の上面に設けられている所定の形状の複数の被測定素子のうち、一部の前記被測定素子が視野に入るように前記校正用治具の上面を第1撮像部で撮像し、前記第1撮像部が撮像した前記被測定素子とは異なる一部の前記被測定素子が視野に入るように前記校正用治具の上面を前記第1撮像部とは異なる第2撮像部で撮像する撮像ステップと、
前記第1撮像部が撮像した撮像画像に基づいて、前記第1撮像部の視野に基づく第1座標における複数の前記被測定素子の位置を示す第1座標位置を特定する第1特定ステップと、
前記第2撮像部が撮像した撮像画像に基づいて、前記第2撮像部の視野に基づく第2座標における複数の前記被測定素子の位置を示す第2座標位置を特定する第2特定ステップと、
前記校正用治具を所定の回転方向に回転させる回転ステップと、
前記校正用治具を前記所定の回転方向に所定の角度以上回転させるまで、前記撮像ステップ、前記第1特定ステップ、前記第2特定ステップ、及び前記回転ステップを繰り返すステップと、
同一の前記被測定素子の前記第1座標位置と前記第2座標位置とが対応するように、前記測定装置を校正するステップと
を有する、校正方法。
【請求項9】
測定対象の三次元形状を測定する前記測定装置と、所定の形状の前記被測定素子を有し、前記測定装置の校正を行うための前記校正用治具とを備える測定システムであって、
前記測定装置は、
前記測定対象を移動させるための移動部と、
前記測定対象に光を照射するための光源と、
前記測定対象の異なる複数の領域をそれぞれ撮像する複数の撮像部と、
複数の前記撮像部の撮像結果に基づき、前記測定対象の三次元形状を測定する測定部と、
前記移動部、前記撮像部、及び前記測定部を制御し、前記測定部の測定結果を校正するためのパラメータを特定する制御部と
を備え、
前記校正用治具は、上面に所定の形状の前記被測定素子を有し、
前記制御部は、前記校正用治具を回転させつつ、複数の前記被測定素子のうち異なる一部の前記被測定素子を複数の前記撮像部でそれぞれ撮像させ、請求項1から7のいずれか一項に記載の校正方法を実行することにより、前記回転行列及び前記並進ベクトルを特定する、
測定システム。
【請求項10】
前記測定装置の前記第1撮像部は、前記測定対象の一部である第1部分を撮像し、
前記測定装置の前記第1撮像部とは異なる前記第2撮像部は、前記第1撮像部が撮像した前記測定対象の前記第1部分とは異なる前記測定対象の一部である第2部分を撮像し、
前記測定装置の前記制御部は、
前記第1撮像部が撮像した撮像画像に基づいて、前記第1撮像部の視野に基づく前記第1座標における前記第1部分の位置を示す前記第1座標位置を特定し、
前記第2撮像部が撮像した撮像画像に基づいて、前記第2撮像部の視野に基づく前記第2座標における前記第2部分の位置を示す前記第2座標位置を特定し、
前記測定対象を所定の回転方向に回転させ、
前記測定対象を前記所定の回転方向に所定の角度以上回転させるまで、前記第1撮像部及び前記第2撮像部による前記測定対象の撮像と、前記第1座標位置の特定と、前記第2座標位置の特定とを繰り返し、
特定した前記第1座標位置又は前記第2座標位置を前記回転行列で回転させ、前記並進ベクトルで並進させることで校正座標に座標変換する、
請求項9に記載の測定システム。
【請求項11】
コンピュータに実行されると、前記コンピュータに請求項1から8のいずれか一項に記載の校正方法を実行させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元形状を測定する測定装置の校正方法、測定システム、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の撮像装置を備え、複数の方向から測定対象を撮像した結果に基づいて、測定対象の三次元形状を非接触で測定する測定装置が知られている(例えば、特許文献1を参照)。このような測定装置においては、複数の撮像装置が同一の校正用治具を撮像したり、複数の撮像装置が既知の寸法の校正用治具を撮像したりして、装置の校正を行っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】玉木徹,“姿勢推定と回転行列”,信学技報,社団法人電子情報通信学会,2009年,SIP2009-48,SIS2009-23,p.59-64
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、大型の測定対象の三次元形状を測定する測定装置、複雑な測定対象の三次元形状を測定する測定装置等の場合、複数の撮像装置を種々の位置に配置するため、複数の撮像装置が同一の校正用治具を撮像することは困難であった。また、測定対象の大きさに合わせて大型の校正用治具、複雑な形状の校正用治具等を用いることが考えられるが、このような校正用治具の精密な寸法を測定することは比較的困難であった。そして、このような校正用治具の寸法を測定できたとしても、環境変化等によって寸法が変動してしまったり、衝撃を与えてしまって寸法ずれ等が生じてしまったりすることがあり、測定装置の校正を容易に行うことは困難であった。
【0006】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、大型の測定対象の三次元形状を測定する測定装置の校正を容易に行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様においては、測定対象を撮像する複数の撮像部を備え、前記測定対象の三次元形状を測定するための測定装置を、校正用治具を用いてコンピュータが校正する校正方法であって、前記校正用治具の上面に設けられている所定の形状の複数の被測定素子のうち、一部の前記被測定素子が視野に入るように前記校正用治具の上面を第1撮像部で撮像し、前記第1撮像部が撮像した前記被測定素子とは異なる一部の前記被測定素子が視野に入るように前記校正用治具の上面を前記第1撮像部とは異なる第2撮像部で撮像する撮像ステップと、前記第1撮像部が撮像した撮像画像に基づいて、前記第1撮像部の視野に基づく第1座標における複数の前記被測定素子の位置を示す第1座標位置を特定する第1特定ステップと、前記第2撮像部が撮像した撮像画像に基づいて、前記第2撮像部の視野に基づく第2座標における複数の前記被測定素子の位置を示す第2座標位置を特定する第2特定ステップと、前記校正用治具を所定の回転方向に回転させる回転ステップと、前記校正用治具を前記所定の回転方向に所定の角度以上回転させるまで、前記撮像ステップ、前記第1特定ステップ、前記第2特定ステップ、及び前記回転ステップを繰り返すステップと、同一の前記被測定素子の前記第1座標位置と前記第2座標位置とが対応するように、前記第1座標位置又は前記第2座標位置を回転させて座標変換する回転行列と、前記第1座標位置又は前記第2座標位置を並進させる並進ベクトルとを特定するステップとを有する、校正方法を提供する。
【0008】
前記第1座標位置又は前記第2座標位置を前記回転行列で回転させ、前記並進ベクトルで並進させることで校正座標に座標変換するステップを更に有してもよい。
複数の前記被測定素子は、前記校正用治具の上面において所定の円の円周上に配置されていてもよい。
【0009】
前記回転行列と前記並進ベクトルとを特定するステップにおいて、前記所定の円の円周上における同一の前記被測定素子の前記第1座標位置と前記第2座標位置とが一致するように、前記回転行列と前記並進ベクトルとを特定してもよい。
【0010】
前記校正用治具を回転させる前記回転ステップにおいて、前記校正用治具の回転前における前記第1撮像部の視野に入っていた複数の前記被測定素子のうち一部の被測定素子が、前記校正用治具の回転後における前記第1撮像部の視野に入り、前記校正用治具の回転前における前記第2撮像部の視野に入っていた複数の前記被測定素子のうち一部の被測定素子が、前記校正用治具の回転後における前記第2撮像部の視野に入るように、前記校正用治具を回転させてもよい。
【0011】
前記回転行列と前記並進ベクトルとを特定するステップにおいて、同一の前記被測定素子の前記第1座標位置と前記第2座標位置とをペアワイズ位置合わせすることで、前記回転行列と前記並進ベクトルとを特定してもよい。
【0012】
前記校正用治具を用いて前記測定装置を校正する前に、寸法及び位置関係のうち少なくとも一方が判明している複数の基準測定素子を有し、前記校正用治具よりも大きさが小さい基準治具を前記第1撮像部で撮像し、前記第1撮像部の撮像結果に基づき、前記第1撮像部の視野における座標位置を示す前記第1座標を校正するステップと、基準治具を前記第2撮像部で撮像し、前記第2撮像部の撮像結果に基づき、前記第2撮像部の視野における座標位置を示す前記第2座標を校正するステップとを更に有してもよい。
【0013】
本発明の第2の態様においては、測定対象を撮像する複数の撮像部を備え、前記測定対象の三次元形状を測定するための測定装置を、校正用治具を用いてコンピュータが校正する校正方法であって、前記校正用治具の上面に設けられている所定の形状の複数の被測定素子のうち、一部の前記被測定素子が視野に入るように前記校正用治具の上面を第1撮像部で撮像し、前記第1撮像部が撮像した前記被測定素子とは異なる一部の前記被測定素子が視野に入るように前記校正用治具の上面を前記第1撮像部とは異なる第2撮像部で撮像する撮像ステップと、前記第1撮像部が撮像した撮像画像に基づいて、前記第1撮像部の視野に基づく第1座標における複数の前記被測定素子の位置を示す第1座標位置を特定する第1特定ステップと、前記第2撮像部が撮像した撮像画像に基づいて、前記第2撮像部の視野に基づく第2座標における複数の前記被測定素子の位置を示す第2座標位置を特定する第2特定ステップと、前記校正用治具を所定の回転方向に回転させる回転ステップと、前記校正用治具を前記所定の回転方向に所定の角度以上回転させるまで、前記撮像ステップ、前記第1特定ステップ、前記第2特定ステップ、及び前記回転ステップを繰り返すステップと、同一の前記被測定素子の前記第1座標位置と前記第2座標位置とが対応するように、前記測定装置を校正するステップとを有する、校正方法を提供する。
【0014】
本発明の第3の態様においては、測定対象の三次元形状を測定する前記測定装置と、所定の形状の前記被測定素子を有し、前記測定装置の校正を行うための前記校正用治具とを備える測定システムであって、前記測定装置は、前記測定対象を移動させるための移動部と、前記測定対象に光を照射するための光源と、前記測定対象の異なる複数の領域をそれぞれ撮像する複数の撮像部と、複数の前記撮像部の撮像結果に基づき、前記測定対象の三次元形状を測定する測定部と、前記移動部、前記撮像部、及び前記測定部を制御し、前記測定部の測定結果を校正するためのパラメータを特定する制御部とを備え、前記校正用治具は、上面に所定の形状の前記被測定素子を有し、前記制御部は、前記校正用治具を回転させつつ、複数の前記被測定素子のうち異なる一部の前記被測定素子を複数の前記撮像部でそれぞれ撮像させ、第1の態様の校正方法を実行することにより、前記回転行列及び前記並進ベクトルを特定する、測定システムを提供する。
【0015】
前記測定装置の前記第1撮像部は、前記測定対象の一部である第1部分を撮像し、前記測定装置の前記第1撮像部とは異なる前記第2撮像部は、前記第1撮像部が撮像した前記測定対象の前記第1部分とは異なる前記測定対象の一部である第2部分を撮像し、前記測定装置の前記制御部は、前記第1撮像部が撮像した撮像画像に基づいて、前記第1撮像部の視野に基づく前記第1座標における前記第1部分の位置を示す前記第1座標位置を特定し、前記第2撮像部が撮像した撮像画像に基づいて、前記第2撮像部の視野に基づく前記第2座標における前記第2部分の位置を示す前記第2座標位置を特定し、前記測定対象を所定の回転方向に回転させ、前記測定対象を前記所定の回転方向に所定の角度以上回転させるまで、前記第1撮像部及び前記第2撮像部による前記測定対象の撮像と、前記第1座標位置の特定と、前記第2座標位置の特定とを繰り返し、特定した前記第1座標位置又は前記第2座標位置を前記回転行列で回転させ、前記並進ベクトルで並進させることで校正座標に座標変換してもよい。
【0016】
本発明の第4の態様においては、コンピュータに実行されると、前記コンピュータに第1又は第2の態様の校正方法を実行させる、プログラムを提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、大型の測定対象の三次元形状を測定する測定装置の校正を容易に行えるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本実施形態に係る測定システムSの構成例を示す。
【
図2】本実施形態に係る測定装置10が校正用治具30を搭載した例を示す。
【
図3】本実施形態に係る制御ユニット140の構成例を示す。
【
図4】本実施形態に係る測定装置10の動作フローの一例を示す。
【
図5】本実施形態に係る校正用治具30を基準位置に配置した例を示す。
【
図6】本実施形態に係る校正用治具30を基準位置から回転させた例を示す。
【
図7】本実施形態に係る制御部240の動作フローの一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<測定システムSの構成例>
図1は、本実施形態に係る測定システムSの構成例を示す。測定システムSは、測定装置10と校正用治具30とを備える。
【0020】
測定装置10は、三次元空間に配置された測定対象W(以下、ワークWということもある)に対して複数の方向から光を照射し、反射した光を受光することによって測定対象Wの三次元形状を測定する。また、測定装置10は、三次元空間に配置された校正用治具30に対して複数の方向から光を照射し、反射した光を受光することによって自身の校正に用いる校正パラメータを特定する。測定装置10は、ステージ110と、移動部120と、光学ユニット130と、制御ユニット140とを備える。
【0021】
ステージ110は、測定対象Wを搭載する。また、測定システムSが測定装置10の校正を行う場合、ステージ110は、校正用治具30を搭載する。ステージ110は、例えば、所定の複数の方向に移動可能に構成されている。ステージ110は、第1方向と第1方向とは異なる第2方向に移動可能に構成されていてもよい。第1方向及び第2方向は、例えば、直交している。
【0022】
例えば、ステージ110は、XY平面上においてX方向及びY方向に移動可能なXYステージの機能を有する。この場合、第1方向はX方向又はY方向であり、第2方向はY方向又はX方向である。
【0023】
ステージ110は、1又は複数の方向を軸として、回転可能に構成されている。ステージ110は、XY平面と略垂直なZ方向を軸として回転可能な回転ステージの機能を有する。ここで、XY平面は、例えば、測定対象W及び校正用治具30を搭載する面と同一の平面である。本実施形態において、Z方向を第3方向とする。なお、測定装置10は、校正用治具30を移動可能に構成されていればよく、ステージ110に代えて、校正用治具30を固定しつつ移動可能な可動アーム等が設けられていてもよい。
【0024】
移動部120は、ステージ110を移動させる。言い換えると、移動部120は、ステージ110が測定対象Wを搭載している場合、測定対象Wを移動させる。また、移動部120は、ステージ110が校正用治具30を搭載している場合、校正用治具30を移動させる。移動部120は、モータ等のアクチュエータを有し、ステージ110を第1方向又は第2方向に移動させる。また、移動部120は、第3方向を軸としてステージ110を回転させる。
【0025】
光学ユニット130は、光源131と撮像部132とを有する。光源131は、測定対象Wに光を照射する。光源131は、ハロゲンランプ、LED、又はレーザ等の少なくともいずれかを有する。光源131は、例えば、所定のパターンの光を照射するプロジェクタである。光源131から照射された光は測定対象Wで反射される。撮像部132は、測定対象Wからの反射光が入射し測定対象Wを撮像する。撮像部132は、静止画、動画等を撮像可能なカメラを有する。撮像部132は、複数のカメラを有してもよい。
【0026】
以上の光学ユニット130は、測定装置10の異なる位置に複数設けられている。言い換えると、複数の光源131は、測定対象Wの異なる領域に光を照射し、複数の撮像部132は、測定対象Wの異なる複数の領域をそれぞれ撮像する。複数の光学ユニット130の撮像部132は、例えば、測定対象Wの異なる部位をそれぞれ撮像する。この場合、複数の撮像部132による複数の撮像結果を合成すると、測定対象Wの全体の構成が把握できるように、複数の光学ユニット130が配置されていることが望ましい。なお、本実施例において、説明の簡便化のため、光学ユニット130が2つ配置されている例を説明するが、これに限定されることはない。光学ユニット130は、3つ以上配置されていてもよい。
【0027】
制御ユニット140は、移動部120及び光学ユニット130を制御する。そして、制御ユニット140は、ステージ110が測定対象Wを搭載している場合、光学ユニット130から撮像部132の測定対象Wの撮像結果を取得し、取得した撮像結果に基づいて測定対象Wの三次元形状を測定する。また、制御ユニット140は、ステージ110が校正用治具30を搭載している場合、光学ユニット130から撮像部132の校正用治具30の撮像結果を取得し、取得した撮像結果に基づいて当該測定装置10の校正に用いる校正パラメータを特定する。制御ユニット140については、後述する。
【0028】
校正用治具30は、所定の形状の複数の被測定素子31を有し、測定装置10の校正を行うための治具である。本実施形態において、校正用治具30は、上面に被測定素子31を有する例を説明する。校正用治具30は、ステージ110に搭載された場合に、1つの光学ユニット130が有する撮像部132の視野に複数の被測定素子31が入るように、複数の被測定素子31が設けられていることが望ましい。
【0029】
図2は、本実施形態に係る測定装置10が校正用治具30を搭載した例を示す。
図2は、第1光学ユニット130aが有する第1撮像部132aの視野133aに第1被測定素子31aが入っており、第2光学ユニット130bが有する第2撮像部132bの視野133bに第2被測定素子31bが入っている例を示す。
【0030】
なお、本実施例において、第1撮像部132aの視野133aと第2撮像部132bの視野133bに第2被測定素子31bとに、それぞれ異なる被測定素子31が入っている例を示したが、これに限定されることはない。例えば、第1撮像部132aの視野133aに第1被測定素子31aの一部又は全部が入っており、第2撮像部132bの視野133bに第1被測定素子31aの一部又は全部が入っていてもよい。
【0031】
それぞれの光学ユニット130は、光源131の光を校正用治具30に照射して撮像部132で撮像することで、視野に入っている被測定素子31を撮像できる。そして、制御ユニット140は、撮像部132から撮像結果を取得して、被測定素子31の三次元形状を測定する。被測定素子31は、所定の大きさ、所定の形状を有する。被測定素子31は、所定の寸法で形成されていてもよい。また、被測定素子31は、それぞれ異なる形状、マーク、色等を有していてもよい。本実施形態において、被測定素子31が球の形状を有し、制御ユニット140は、球の中心位置を測定する例を説明する。
【0032】
ここで、校正用治具30に設けられている複数の被測定素子31の寸法及び位置関係が予め判明していることがある。この場合、制御ユニット140は、判明している被測定素子31の寸法及び位置関係と被測定素子31の三次元形状の測定結果とを比較することにより、当該測定装置10の校正を行うことができる。例えば、制御ユニット140は、被測定素子31の三次元形状の測定結果が被測定素子31の寸法及び位置関係に一致するように、三次元形状の測定結果に乗じる係数等を校正パラメータとして特定する。
【0033】
しかしながら、大型の測定対象を測定するための測定装置10の場合、校正用治具30も大型になり、精密な寸法を測定することが困難になることがあった。また、複雑な測定対象を測定するための測定装置10の場合も、校正用治具30の形状、配置等が複雑になり、精密な寸法を測定することが困難になることがあった。
【0034】
一方、このような校正用治具30の寸法を測定できたとしても、環境変化等によって寸法が変動してしまったり、衝撃を与えてしまって寸法ずれ等が生じてしまったりすることがあり、測定装置10の校正を容易に行うことは困難であった。そこで、本実施形態に係る測定システムSは、複数の被測定素子31の寸法及び位置関係が判明していない校正用治具30を用いても、当該測定装置10の校正を行えるようにする。このような測定装置10の制御ユニット140について次に説明する。
【0035】
<制御ユニット140の構成例>
図3は、本実施形態に係る制御ユニット140の構成例を示す。制御ユニット140は、例えば、コンピュータである。制御ユニット140は、通信部210と、記憶部220と、表示部230と、制御部240とを備える。
【0036】
通信部210は、移動部120と光学ユニット130と通信する。通信部210は、例えば、測定対象W又は校正用治具30を移動させるための制御信号を移動部120に送信する。また、通信部210は、光源131及び撮像部132を制御するための制御信号を光学ユニット130に送信してもよい。通信部210は、撮像部132の撮像結果を光学ユニット130から受信してもよい。
【0037】
通信部210は、専用の接続線、通信ネットワーク等を介して通信する。通信部210は、インターネット回線、無線LAN、携帯電話網等の通信ネットワークに接続するためのインターフェースとして機能してもよい。
【0038】
記憶部220は、例えば、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等を含む記憶媒体である。また、記憶部220は、HDD(Hard Disk Drive)及び/又はSSD(Solid State Drive)等の大容量記憶装置を含んでもよい。記憶部220は、例えば、コンピュータが制御ユニット140として機能する場合、コンピュータを機能させるOS(Operating System)、及びプログラム等の情報を格納してもよい。また、記憶部220は、プログラムの実行時に参照されるデータを含む種々の情報を格納してもよい。
【0039】
また、記憶部220は、制御ユニット140が動作の過程で生成する(又は利用する)中間データ、算出結果、閾値、基準値、及びパラメータ等をそれぞれ記憶してもよい。また、記憶部220は、制御ユニット140内の各部の要求に応じて、記憶したデータを要求元に供給してもよい。
【0040】
表示部230は、測定装置10の測定に関する情報を表示する。表示部230は、例えば、測定条件、測定項目、測定結果等の情報を表示する。表示部230は、制御ユニット140の通信状態、OS、アプリケーションの実行状態等を表示してもよい。表示部230は、例えば、液晶等のディスプレイ、モニタ等である。
【0041】
制御部240は、測定装置10の各部を制御する。例えば、制御部240は、通信部210を介して種々の情報を授受する。制御部240は、例えばCPU(Central Processing Unit)である。制御部240は、移動部120及び撮像部132を制御して、複数の撮像部132の撮像結果に基づいて測定対象Wの三次元形状を測定する。
【0042】
制御部240は、信号出力部241と、取得部242と、測定部243と、特定部244とを有する。言い換えると、CPUは、記憶部220に記憶されたプログラムを実行することにより、信号出力部241、取得部242、測定部243、及び特定部244を有する制御部240として機能する。
【0043】
信号出力部241は、測定装置10の各部を制御するための制御信号を通信部210に出力する。信号出力部241は、例えば、光学ユニット130の光源131及び撮像部132を制御するための制御信号を出力する。一例として、信号出力部241は、一の光学ユニット130の光源131を所定のパターンで発光させる制御信号と、一の光学ユニット130の撮像部132を撮像させる制御信号を出力する。これにより、通信部210は、制御信号を一の光学ユニット130に送信し、一の光学ユニット130は、視野に入っている被写体(例えば、被測定素子31)を撮像する。
【0044】
また、信号出力部241は、移動部120を駆動する制御信号を出力する。信号出力部241は、表示部230に情報等を表示させるための制御信号を出力してもよい。信号出力部241は、動作目的に対応する制御信号を生成してもよく、予め定められた信号パターンの制御信号を出力してもよい。なお、制御信号の信号パターンは、記憶部220に記憶されていてもよい。
【0045】
取得部242は、光学ユニット130の撮像部132が撮像した撮像画像のデータを撮像結果として取得する。取得部242は、取得した撮像部132の撮像結果を記憶部220に記憶させてもよい。また、取得部242は、ステージ110の現在位置の情報を取得してもよい。
【0046】
測定部243は、取得部242が取得した撮像部132の撮像結果に基づき、測定対象W又は校正用治具30の三次元形状を測定する。測定部243は、例えば、測定対象Wの所定の部位の長さ、所定の形状の寸法等を測定する。測定部243は、複数の撮像部132の撮像結果を用いることで、1つの撮像部132の視野に収まりきれない測定対象Wの所定の部位の長さ、形状も測定可能とする。測定部243が複数の撮像部132の撮像結果から測定対象Wの三次元形状を測定する動作は既知であるので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0047】
特定部244は、測定部243の測定結果を校正するためのパラメータを特定する。特定部244は、例えば、測定装置10の校正に用いる回転行列と並進ベクトルとを特定する。特定部244の動作については、次に説明する。
【0048】
<測定装置10の動作フローの一例>
図4は、本実施形態に係る測定装置10の動作フローの一例を示す。測定装置10は、
図4に示すS51からS59の動作を実行して、自身の校正に用いる校正パラメータを特定する。なお、測定装置10は、複数の光学ユニット130を備える構成ではあるが、本動作フローにおいては、簡略化して、第1光学ユニット130a及び第2光学ユニット130bを用いた動作例を説明する。
【0049】
まず、測定装置10は、校正用治具30を用いて当該測定装置10を校正する前に、複数の光学ユニット130それぞれの校正を行う。この場合、測定装置10は、校正用治具30よりも大きさが小さい基準治具を用いて光学ユニット130をそれぞれ校正する。基準治具の大きさは、例えば、1つの光学ユニット130に含まれている撮像部132の視野に収まる程度の大きさである。
【0050】
基準治具は、寸法及び位置関係のうち少なくとも一方が判明している複数の基準測定素子を有する。基準測定素子は、一例として、被測定素子31と略同一の形状を有する。これに代えて、基準治具は、寸法が判明している形状を有していてもよい。このような小型の基準治具は、寸法の経時変化が少なく、また、取り扱いもしやすい一般的に用いられている治具である。このような基準治具を用いた光学ユニット130毎の校正は既知なので、ここでは校正の動作を簡単に説明する。
【0051】
まず、測定装置10のステージ110は、基準治具を搭載する(S51)。ステージ110には、複数の基準治具が搭載されてもよく、これに代えて、1つの基準治具が搭載されてもよい。ステージ110に複数の基準治具が搭載される場合、光学ユニット130のそれぞれの視野に入るように複数の基準治具が配置されることが望ましい。そして、制御部240は、光学ユニット130毎に校正を行う(S52)。
【0052】
例えば、制御部240は、基準治具を第1光学ユニット130aの第1撮像部132aで撮像し、第1撮像部132aの撮像結果に基づき、第1撮像部132aの視野133aにおける座標位置を示す第1座標を校正する。例えば、制御部240は、基準治具の基準測定素子の三次元形状の測定結果と、予め判明しており記憶部220に記憶されている基準測定素子の寸法及び位置関係とが一致するように、三次元形状の測定結果に乗じる第1係数を特定する。
【0053】
次に、制御部240は、基準治具を第2光学ユニット130bの第2撮像部132bで撮像し、第2撮像部132bの撮像結果に基づき、第2撮像部132bの視野133bにおける座標位置を示す第2座標を校正する。なお、ステージ110に1つの基準治具が搭載されている場合、制御部240は、例えば、第1光学ユニット130aの校正が終わると、次に校正する第2光学ユニット130bの視野に基準治具が入るようにステージ110を移動させてから第2光学ユニット130bの校正を開始する。
【0054】
制御部240は、第1光学ユニット130aの校正と同様に、第2撮像部132bの撮像結果に基づく基準測定素子の三次元形状の測定結果と判明している基準測定素子の寸法及び位置関係とが一致するように、三次元形状の測定結果に乗じる第2係数を特定する。以上のように、制御部240は、複数の光学ユニット130をそれぞれ校正する。制御部240は、特定した係数を記憶部220に記憶してよい。
【0055】
次に、制御部240は、測定装置10のステージ110に搭載した校正用治具30を基準位置に配置する(S53)。ここで、搬送装置等が校正用治具30をステージ110に搭載してもよく、これに代えて、作業者等が校正用治具30をステージ110に搭載してもよい。
【0056】
基準位置は、例えば、ステージ110の初期位置等といった、所定の位置である。例えば、校正用治具30が基準位置に配置されると、複数の撮像部132の視野133に校正用治具30の被測定素子31が複数入るように、校正用治具30、複数の光学ユニット130、及び基準位置の位置関係が予め定められていることが望ましい。
【0057】
図5は、本実施形態に係る校正用治具30を基準位置に配置した例を示す。
図5は、校正用治具30の上面に複数の被測定素子31が所定の円の円周上に配置されている例を示す。制御部240は、例えば、ステージ110を移動させて校正用治具30を基準位置に配置する。
【0058】
次に、制御部240は、複数の撮像部132を用いて校正用治具30を撮像する(S54)。制御部240は、例えば、複数の光学ユニット130の光源131を点灯させてから撮像部132で校正用治具30を撮像する。
【0059】
これにより、基準位置において、第1撮像部132aは、校正用治具30の上面に設けられている所定の形状の複数の被測定素子31のうち、一部の被測定素子31が視野に入るように校正用治具30の上面を撮像する。同様に、第1撮像部132aとは異なる第2撮像部132bは、第1撮像部132aが撮像した被測定素子31とは異なる一部の被測定素子31が視野に入るように校正用治具30の上面を第2撮像部で撮像する。
【0060】
複数の被測定素子31は、それぞれ識別ができるように形成されていることが望ましい。例えば、複数の被測定素子31は、それぞれ異なる形状を有していてもよく、異なる色、文字、番号、記号、コード等が付されていてもよい。
図5において、第1被測定素子31aから第16被測定素子31pまでの16個の被測定素子31が、識別可能に配置されているものとする。
【0061】
そして、
図5は、第1撮像部132aが第1被測定素子31aから第5被測定素子31eまでの5個の被測定素子31を撮像し、第2撮像部132bが第5被測定素子31eから第9被測定素子31iまでの5個の被測定素子31を撮像した例を示す。第1撮像部132a及び第2撮像部132bは、複数の被測定素子31を異なるタイミングで撮像してもよく、複数の被測定素子31を略同時に撮像してもよい。そして、取得部242は、撮像部132の撮像結果を取得する。
【0062】
次に、制御部240は、第1撮像部132aが撮像した複数の撮像画像に基づいて、第1撮像部132aの視野に基づく第1座標における複数の被測定素子31の位置を示す第1座標位置を特定する(S55)。例えば、測定部243は、第1被測定素子31aから第5被測定素子31eまでの5個の被測定素子31の中心位置をそれぞれ測定し、測定結果を第1座標位置とする。測定部243は、被測定素子31の予め定められた部分の測定結果を当該被測定素子31の第1座標位置としてもよい。
【0063】
なお、測定部243は、S51からS52までの校正動作で特定した第1係数を用いて、第1座標位置を算出することが望ましい。また、測定部243は、撮像画像に含まれている5個の被測定素子31が、第1被測定素子31aから第5被測定素子31eまでの被測定素子31であることを判別する。測定部243は、例えば、画像解析等を用いて被測定素子31を判別する。
【0064】
同様に、制御部240は、第2撮像部132bが撮像した複数の撮像画像に基づいて、第2撮像部132bの視野に基づく第2座標における複数の被測定素子31の位置を示す第2座標位置を特定する(S56)。例えば、測定部243は、第5被測定素子31eから第9被測定素子31iまでの5個の被測定素子31の中心位置をそれぞれ測定し、測定結果を第2座標位置とする。測定部243は、被測定素子31の予め定められた部分の測定結果を当該被測定素子31の第2座標位置としてもよい。
【0065】
なお、測定部243は、S51からS52までの校正動作で特定した第2係数を用いて、第2座標位置を算出することが望ましい。また、測定部243は、撮像画像に含まれている5個の被測定素子31が、第5被測定素子31eから第9被測定素子31iまでの被測定素子31であることを判別する。測定部243は、例えば、画像解析等を用いて被測定素子31を判別する。
【0066】
次に、制御部240は、校正用治具30を所定の回転方向に回転させる(S57)。制御部240は、例えば、予め定められた角度だけ校正用治具30を回転させる。制御部240は、撮像部132が回転前に撮像した複数の被測定素子31のうち一部の被測定素子31が当該撮像部132の回転後の視野に入る範囲で校正用治具30を回転させる。
【0067】
図6は、本実施形態に係る校正用治具30を基準位置から回転させた例を示す。ここで、所定の回転方向を時計回りの方向とした。また、制御部240は、校正用治具30を略67.5°回転したものとする。
【0068】
図6は、制御部240が、校正用治具30の回転前における第1撮像部132aの視野に入っていた第1被測定素子31aから第5被測定素子31eまでの5個の被測定素子31のうち第4被測定素子31d及び第5被測定素子31eが校正用治具30の回転後における第1撮像部132aの視野に入るように、校正用治具30を回転させた例を示す。この場合、校正用治具30の回転後における第1撮像部132aの視野には、第4被測定素子31dから第8被測定素子31hまでの5個の被測定素子31が入っている。
【0069】
同様に、
図6は、制御部240が、校正用治具30の回転前における第2撮像部132bの視野に入っていた第5被測定素子31eから第9被測定素子31iまでの5個の被測定素子31のうち第8被測定素子31h及び第9被測定素子31iが校正用治具30の回転後における第2撮像部132bの視野に入るように、校正用治具30を回転させた例を示す。この場合、校正用治具30の回転後における第2撮像部132bの視野には、第8被測定素子31hから第12被測定素子31lまでの5個の被測定素子31が入っている。
【0070】
そして、S54に戻り、制御部240は、複数の撮像部132を用いて校正用治具30を撮像する(S58:No)。次に、S55において、制御部240は、第1撮像部132aが撮像した複数の撮像画像に基づいて、複数の被測定素子31の位置を示す第1座標位置を特定する。
【0071】
測定部243は、校正用治具30の回転前の撮像部132の撮像結果に含まれている複数の被測定素子31のうち、校正用治具30の回転後にも撮像部132の撮像結果に含まれている被測定素子31の座標位置が回転前に特定した座標位置と一致するように、複数の被測定素子31の位置を特定する。これにより、測定部243は、校正用治具30を基準位置に配置して測定した複数の被測定素子31の位置を基準として、校正用治具30を回転した後に撮像された複数の被測定素子31の位置を測定することができる。
【0072】
例えば、測定部243は、校正用治具30の回転前に特定した第4被測定素子31d及び第5被測定素子31eの第1座標位置と、校正用治具30の回転後の第4被測定素子31d及び第5被測定素子31eの座標位置とが一致するように、第4被測定素子31dから第8被測定素子31hまでの被測定素子31の座標位置を特定する。測定部243は、特定した第1被測定素子31aから第8被測定素子31hまでの8個の被測定素子31の座標位置を第1座標位置とする。
【0073】
同様に、S56において、制御部240は、第2撮像部132bが撮像した複数の撮像画像に基づいて、複数の被測定素子31の位置を示す第2座標位置を特定する。測定部243は、校正用治具30の回転前に特定した第8被測定素子31h及び第9被測定素子31iの第1座標位置と、校正用治具30の回転後の第8被測定素子31h及び第9被測定素子31iの座標位置とが一致するように、第8被測定素子31hから第12被測定素子31lまでの被測定素子31の座標位置を特定する。測定部243は、特定した第5被測定素子31eから第12被測定素子31lまでの8個の被測定素子31の座標位置を第2座標位置とする。
【0074】
次に、S57において、制御部240は、校正用治具30を所定の回転方向に回転させる。以上のように、測定装置10は、校正用治具30を所定の回転方向に所定の角度以上回転させるまで、S54からS57までの動作を繰り返す(S58:No)。所定の角度は、例えば360°である。制御部240は、例えば、校正用治具30を所定の角度ずつ回転させつつ、複数の被測定素子31の撮像動作と座標位置の特定動作とを繰り返す。
【0075】
これに代えて、制御部240は、校正用治具30を等速回転させ、校正用治具30が所定の角度だけ回転したことに応じて、又は所定の時間が経過したことに応じて、複数の被測定素子31の撮像動作と座標位置の特定動作とを繰り返してもよい。測定装置10は、例えば、制御部240が校正用治具30を略360°回転するまで繰り返す。
【0076】
制御部240は、基準位置において撮像部132が撮像した複数の被測定素子31のうち少なくとも1つの被測定素子31が、回転後の当該撮像部132の撮像結果に含まれるまで、被測定素子31の座標位置の特定を繰り返してもよい。また、制御部240は、所定数の被測定素子31の座標位置を特定するまで、被測定素子31の座標位置の特定を繰り返してもよい。
【0077】
以上のようにして、測定装置10は、撮像部132毎に、複数の被測定素子31のうち異なる一部の座標位置を特定する動作を繰り返す。これにより、測定装置10は、校正用治具30に設けられている複数の被測定素子31の全体の座標位置を特定することができる。
【0078】
測定部243が複数の被測定素子31の座標位置を特定する動作を終了した場合(S58:Yes)、特定部244は、撮像部132毎に特定した複数の被測定素子31の座標位置が互いに対応するように、座標位置を座標変換するパラメータを特定する。座標位置を座標変換するパラメータは、それぞれの撮像部132によって測定された座標位置を共通の座標位置に変換するパラメータであるから、測定装置10の校正に用いることができる。言い換えると、特定部244は、測定装置10の校正に用いるパラメータを特定する(S59)。
【0079】
特定部244は、例えば、同一の被測定素子31の第1座標位置と第2座標位置とが対応するように、第1座標位置又は第2座標位置を回転させて座標変換する回転行列と、第1座標位置又は第2座標位置を並進させる並進ベクトルとを特定する。
図5及び
図6の例において、特定部244は、所定の円の円周上における同一の被測定素子31の第1座標位置と第2座標位置とが一致するように、回転行列と並進ベクトルとを特定する。
【0080】
例えば、特定部244は、同一の被測定素子31の第1座標位置と第2座標位置とをペアワイズ位置合わせすることで、回転行列と並進ベクトルとを特定する。このようなペアワイズ位置合わせの詳細については後述する。制御部240は、特定した回転行列及び並進ベクトルを校正パラメータとして記憶部220に記憶させてもよい。
【0081】
以上のように、特定した回転行列及び並進ベクトルは、異なる複数の光学ユニット130の間において、校正用治具30の位置の測定結果を共通の座標の座標位置に変換できる。したがって、制御部240は、以上の動作によって特定した回転行列及び並進ベクトルを用いることで、複数の光学ユニット130の校正(グループキャリブレーションと呼ぶこともある)をすることができる。
【0082】
例えば、測定装置10は、
図4に示す動作フローを実行した後に、ステージ110に測定対象Mを搭載し、第1光学ユニット130a及び第2光学ユニット130bを用いて測定対象Mの三次元形状を測定する。
【0083】
例えば、測定装置10の第1撮像部132aは、測定対象Mの一部である第1部分を撮像し、第2撮像部132bは、測定対象Mの第1部分とは異なる測定対象Mの一部である第2部分を撮像する。そして、制御部240は、第1撮像部132aが撮像した撮像画像に基づいて第1部分の位置を示す第1座標位置を特定し、第2撮像部132bが撮像した撮像画像に基づいて第2部分の位置を示す第2座標位置を特定する。なお、測定部243は、S51からS52までの校正動作で特定した第1係数及び第2係数を用いて、第1座標位置及び第2座標位置を算出することが望ましい。
【0084】
制御部240は、測定対象Mを所定の回転方向に回転させ、当該測定対象Mを所定の回転方向に所定の角度以上回転させるまで、第1撮像部132a及び第2撮像部132bによる測定対象Mの撮像と、第1座標位置の特定と、第2座標位置の特定とを繰り返す。そして、測定部243は、第2座標の座標位置を回転行列で回転させて並進ベクトルで並進させることで校正座標に座標変換する。これに代えて、測定部243は、第1座標の座標位置を回転行列で回転させて並進ベクトルで並進させることで校正座標に座標変換してもよい。
【0085】
これにより、制御部240は、校正座標における三次元形状の測定値を校正後の測定値として出力することができる。制御部240は、校正後の測定値を表示部230に表示させてもよく、記憶部220に記憶させてもよい。また、制御部240は、校正後の測定値をネットワーク等を介して外部に出力してもよい。
【0086】
以上のように、本実施形態に係る測定システムSは、複数の被測定素子31の寸法及び位置関係が判明していない校正用治具30を用いても、自身の校正に用いる校正パラメータを特定して測定結果に反映させることができる。したがって、本実施形態に係る測定システムSによれば、大型の測定対象Wの三次元形状を測定する測定装置10の校正を容易に行うことができる。
【0087】
<ペアワイズ位置合わせの動作の具体例>
図7は、本実施形態に係る制御部240の動作フローの一例を示す。
図7は、
図4に示す測定装置10の動作フローのうち、S59の動作の詳細を説明する動作フローの一例を示す。
図7に示す動作フローは、ペアワイズ位置合わせの動作の具体例を示す。ここで、ペアワイズ位置合わせは、非特許文献1に記載されているように、既知の技術ではあるが、以下に詳細を説明する。
【0088】
まず、制御部240は、データ行列とパラメータの初期値を設定する(S71)。制御部240は、特定した複数の被測定素子31の第1座標位置をデータ行列x=[x
1,x
2,・・・,x
N]とし、第2座標位置をデータ行列y=[y
1,y
2,・・・,y
N]とする。ここで、Nは被測定素子31の数であり、
図5及び
図6の例において、Nは16である。行列xの各要素x
iと行列yの各要素y
iは、それぞれ三次元の座標位置を示す。例えば、行列x及び行列yは、3行16列のデータ行列である。
【0089】
2つのデータ行列のペアワイズ位置合わせは、例えば、対応する点(要素)を次式のように関係づける回転行列Rと並進ベクトルtとを算出する技術である。
【数1】
【0090】
パラメータである回転行列Rと並進ベクトルtの初期値を次式のように設定する。また、座標位置の平均的な位置ずれ量を表す評価関数C
PREの初期値(一例として0)も設定する。
【数2】
【0091】
次に、座標位置の平均的な位置ずれ量を表す評価関数Cを次式のように算出する(S72)。なお、本例を次式に当てはめた場合、N=16となる。
【数3】
【0092】
次に、2つのデータ行列の重心を次式のように算出する(S73)。
【数4】
【0093】
次に、2つのデータ行列を重心中心の座標系の行列Wに変換すると共に、行列Wを次式のように特異値分解する(S74)。
【数5】
【0094】
特異値分解によって得られた行列Uと行列Vを用いると、次式のように回転行列R
Cを算出できる。
【数6】
【0095】
また、算出された回転行列R
Cを用いて、次式のように並進ベクトルt
Cを算出できる。
【数7】
【0096】
算出された回転行列R
Cと並進ベクトルt
Cとを用いて、次式のようにデータ行列、回転行列、及び並進ベクトルを更新する(S75)。
【数8】
【0097】
次に、評価関数の値の変化量|Cpre-C|を算出し、算出結果と閾値dCthとを比較する。例えば、|Cpre-C|≧dCthの場合(S76:No)、Cpreの値をCの値に更新して、S72に戻り、(数3)式から(数8)式までの計算を行う。そして、|Cpre-C|<dCthとなるまで、(数3)式から(数8)式までの計算を繰り返す。|Cpre-C|<dCth(S76:Yes)となったら、ペアワイズ位置合わせを終了する。なお、計算を所定の回数以上繰り返しても|Cpre-C|<dCthを満たさない場合、ペアワイズ位置合わせは不良と判定してもよい。
【0098】
以上のようにして算出した回転行列Rと並進ベクトルtを用いて、データ行列yを次式のように座標変換することで、データ行列xに位置合わせすることができる。
【数9】
【0099】
特定部244は、以上のペアワイズ位置合わせを適用することで、第2座標位置を回転させて座標変換する回転行列と、第2座標位置を並進させる並進ベクトルとを特定できる(S77)。なお、上式において、第1座標位置を行列y、第2座標位置を行列xとすることで、第1座標位置を回転させて座標変換する回転行列と、第1座標位置を並進させる並進ベクトルとを特定できることは言うまでもない。
【0100】
以上により、特定部244は、測定装置10の校正に用いるパラメータである回転行列及び並進ベクトルを特定することができる。測定装置10は、特定した回転行列及び並進ベクトルを用いて自身を校正することにより、装置性能の精度で測定対象Wの三次元形状を測定することができる。
【0101】
以上の本実施形態において、複数の被測定素子31は、校正用治具30の上面における所定の円の円周上に配置されている例を説明したが、これに限定されることはない。複数の被測定素子31は、校正用治具30が回転することによって撮像部132に撮像されて座標位置が特定できるように配置されていればよい。
【0102】
また、被測定素子31の数、複数の被測定素子31の配置が予め記憶部220に記憶されていてもよい。これにより、制御部240は、校正用治具30の回転角度と被測定素子31の配置の対応関係に基づき、撮像部132が撮像した被測定素子31が校正用治具30のどこの位置に配置されている被測定素子31であるかを特定できる。したがって、制御部240は、複数の被測定素子31の判別動作を省略することができる。また、撮像部132は、同一の被測定素子31を重複して撮像することなく、校正動作をより高速に実行することができる。
【0103】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0104】
10 測定装置
30 校正用治具
31 被測定素子
110 ステージ
120 移動部
130 光学ユニット
131 光源
132 撮像部
133 視野
140 制御ユニット
210 通信部
220 記憶部
230 表示部
240 制御部
241 信号出力部
242 取得部
243 測定部
244 特定部