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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116963
(43)【公開日】2024-08-28
(54)【発明の名称】基板処理装置、および基板載置方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20240821BHJP
   H01L 27/00 20060101ALI20240821BHJP
【FI】
H01L21/68 P
H01L27/00 301B
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023022849
(22)【出願日】2023-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】元田 公男
(72)【発明者】
【氏名】菅川 賢治
(72)【発明者】
【氏名】小濱 範史
(72)【発明者】
【氏名】福島 秀行
(72)【発明者】
【氏名】杉原 紳太郎
(72)【発明者】
【氏名】和田 憲雄
【テーマコード(参考)】
5F131
【Fターム(参考)】
5F131AA02
5F131AA03
5F131AA32
5F131AA33
5F131BA51
5F131BA60
5F131CA06
5F131CA70
5F131EA10
5F131EA22
5F131EA23
5F131EA24
5F131EA27
5F131EB01
5F131EB02
(57)【要約】
【課題】基板の残留ストレスの分布を改善して、基板を適切に保持できる技術を提供する。
【解決手段】基板処理装置は、基板を吸着する吸着面に、円状の中央領域と、中央領域よりも外側に配置される円環状の外側領域と、を有する保持部を備える。保持部は、中央領域において保持部に基板を吸着させる吸着圧力を発生させる第1吸着圧力発生部と、外側領域において保持部に基板を吸着させる吸着圧力を発生させる第2吸着圧力発生部と、を備える。また、保持部は、外側領域において保持部から基板を遠ざける方向の外力を当該基板に付与する外力付与部を有する。
【選択図】図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を吸着する吸着面に、円状の中央領域と、前記中央領域よりも外側に配置される円環状の外側領域と、を有する保持部を備える基板処理装置であって、
前記保持部は、
前記中央領域において前記保持部に前記基板を吸着させる吸着圧力を発生させる第1吸着圧力発生部と、
前記外側領域において前記保持部に前記基板を吸着させる吸着圧力を発生させる第2吸着圧力発生部と、
前記外側領域において前記保持部から前記基板を遠ざける方向の外力を当該基板に付与する外力付与部と、を備える、
基板処理装置。
【請求項2】
前記外力付与部は、前記外側領域の周方向の一部のゾーンに設けられ、
前記基板において反りが生じている外周部の一部に前記外力を付与する、
請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記外力付与部は、前記基板において中央部が外周部よりも前記吸着面から離れている凸反りが生じている軸線の外周部に対向する位置に、前記外力を付与する、
請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記外力付与部は、前記吸着面に前記基板を載せた状態であって且つ前記吸着面に前記基板を吸着する前の状態で、前記外側領域における前記基板と前記保持部の間の隙間が最も小さくなる前記ゾーンに少なくとも設けられている、
請求項3に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記外力付与部は、前記中央領域を基点として前記外側領域の周方向の対称位置にある前記ゾーンに設けられている、
請求項4に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記外力付与部は、前記保持部に気体を供給して、前記外側領域から前記基板に対して前記外力である当該気体を吹き付ける、
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記外力付与部は、前記吸着面と相対的に昇降可能なピンを有し、前記ピンを上昇させて前記基板に接触させることで前記外力を付与する、
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記第1吸着圧力発生部、前記第2吸着圧力発生部および前記外力付与部を制御する制御装置を備え、
前記制御装置は、前記第1吸着圧力発生部により前記中央領域において前記基板を吸着すると共に、前記外力付与部により前記外側領域において前記基板に前記外力を付与する、
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記制御装置は、
前記外力付与部により前記外力を付与した後に、前記第2吸着圧力発生部により前記外側領域において前記基板を吸着する、
請求項8に記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記保持部よりも鉛直方向上側に設けられ、前記基板の一方である第1基板を保持する上側保持部を備え、
前記保持部により前記基板の他方である第2基板を保持し、
前記上側保持部から前記第1基板を落とすことで、前記第1基板と前記第2基板を接合する、
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項11】
前記保持部は、前記中央領域が前記外側領域よりも突出している前記吸着面を有する、
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項12】
基板を吸着する吸着面に、円状の中央領域と、前記中央領域よりも外側に配置される円環状の外側領域と、を有する保持部に対して、前記基板を載置する基板載置方法であって、
前記中央領域において前記保持部に前記基板を吸着させる吸着圧力を発生させる工程と、
前記外側領域において前記保持部に前記基板を吸着させる吸着圧力を発生させる工程と、
前記外側領域において前記保持部から前記基板を遠ざける方向の外力を当該基板に付与する工程と、を有する、
基板載置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理装置、および基板載置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、上側の基板を上方から吸着する上チャックと、下側の基板を下方から吸着する下チャックとを備え、二枚の基板を向い合せて接合する接合装置が開示されている。基板の接合において、接合装置は、上チャックの基板の中央部を押し下げて、下チャックの基板の中央部と接触させ、二枚の基板の中央部同士を分子間力により接合させ、この接合領域を中央部から外周部に広げていく。
【0003】
上記のように基板を吸着して保持するチャックを備えた基板処理装置は、基板を単純に吸着させた場合、基板に反り等が発生している等の原因により基板の残留ストレスが大きい状態で基板処理を行う可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-095579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、基板の残留ストレスの分布を改善して、基板を適切に保持できる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様によれば、基板を吸着する吸着面に、円状の中央領域と、前記中央領域よりも外側に配置される円環状の外側領域と、を有する保持部を備える基板処理装置であって、前記保持部は、前記中央領域において前記保持部に前記基板を吸着させる吸着圧力を発生させる第1吸着圧力発生部と、前記外側領域において前記保持部に前記基板を吸着させる吸着圧力を発生させる第2吸着圧力発生部と、前記外側領域において前記保持部から前記基板を遠ざける方向の外力を当該基板に付与する外力付与部と、を備える、基板処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
一態様によれば、基板の残留ストレスの分布を改善して、基板を適切に保持できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の一実施形態に係る接合装置を示す平面図である。
図2図1の接合装置の側面図である。
図3】第1基板及び第2基板の一例を示す側面図である。
図4】接合装置の接合方法を示すフローチャートである。
図5】第1実施形態に係る接合モジュールの一例を示す平面図である。
図6図5の接合モジュールの側面図である。
図7】上チャック及び下チャックの一例を示す断面図である。
図8図4のステップS109の詳細を示すフローチャートである。
図9図9(A)は、図8のステップS112における動作の一例を示す側面図である。図9(B)は、図9(A)に続く動作を示す側面図である。図9(C)は、図9(B)に続く動作を示す側面図である。
図10図10(A)は、図8のステップS113における動作の一例を示す断面図である。図10(B)は、図8のステップS114における動作の一例を示す断面図である。図10(C)は、図10(B)に続く動作を示す断面図である。
図11】下チャックの吸着面の一例を示す平面図である。
図12図12(A)は、下ウェハの反りの一例を示す斜視図である。図12(B)は、凹反りの下ウェハと吸着面による吸着状態の関係を示す説明図である。図12(C)は、凸反りの下ウェハと吸着面による吸着状態の関係を示す説明図である。
図13】下チャックにより下ウェハに外力を付与した状態を示す側面断面図である。
図14図14(A)は、基板載置方法の一例を示すフローチャートである。図14(B)は、基板載置方法の一例を示すタイミングチャートである。
図15図15(A)は、基板載置方法の第1動作を示す図である。図15(B)は、基板載置方法の第2動作を示す図である。図15(C)は、基板載置方法の第3動作を示す図である。
図16】第1変形例に係る下チャックを示す側面断面図である。
図17】第2変形例に係る下チャックを示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本開示を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0010】
本開示の基板処理装置として、図1および図2に示す接合装置1について代表的に説明していく。なお、本開示の基板処理装置は、接合装置1に限定されず、基板を保持する保持部を備え、保持部で保持した基板を処理するものであればよい。他の基板処理装置の例としては、露光装置、温度調節装置等があげられる。露光装置は、保持部により基板を保持して、基板の上にマスクパターンを転写する装置である。温度調節装置は、保持部により基板を保持して、基板の温度を調節する装置である。
【0011】
接合装置1は、図3に示すように、基板の一方である第1基板W1と、基板の他方である第2基板W2とを接合し、接合基板Tを作製する。第1基板W1および第2基板W2のうち少なくとも1つは、例えばシリコンウェハや化合物半導体ウェハ等の半導体基板に複数の電子回路が形成された基板である。第1基板W1および第2基板W2のうち1つは、電子回路が形成されていないベアウェハであってもよい。化合物半導体ウェハは、特に限定されないが、例えばGaAsウェハ、SiCウェハ、GaNウェハ、またはInPウェハである。
【0012】
第1基板W1と第2基板W2とは、略同形状(同径)の円板に形成されている。接合装置1は、第1基板W1のZ軸負方向側(鉛直方向下側)に第2基板W2を配置して、第1基板W1と第2基板W2を接合する。よって以下、第1基板W1を「上ウェハW1」、第2基板W2を「下ウェハW2」、接合基板Tを「接合ウェハT」という場合がある。また以下では、上ウェハW1の板面のうち、下ウェハW2と接合される側の板面を「接合面W1j」といい、接合面W1jとは反対側の板面を「非接合面W1n」という。また、下ウェハW2の板面のうち、上ウェハW1と接合される側の板面を「接合面W2j」といい、接合面W2jとは反対側の板面を「非接合面W2n」という。
【0013】
図1に示すように、接合装置1は、搬入出ステーション2と、処理ステーション3とをX軸正方向に向かって順に備える。搬入出ステーション2および処理ステーション3は、一体的に接続されている。
【0014】
搬入出ステーション2は、載置台10と、搬送領域20とを備える。載置台10は、複数の載置板11を備える。各載置板11には、複数枚(例えば、25枚)の基板を水平状態で収容するカセットCS1、CS2、CS3がそれぞれ載置される。カセットCS1は上ウェハW1を収容するカセットであり、カセットCS2は下ウェハW2を収容するカセットであり、カセットCS3は接合ウェハTを収容するカセットである。なお、カセットCS1、CS2において、上ウェハW1および下ウェハW2は、それぞれ接合面W1j、W2jを上面にした状態で向きを揃えて収容される。
【0015】
搬送領域20は、載置台10のX軸正方向側に隣接して配置され、Y軸方向に延在する搬送路21と、この搬送路21に沿って移動可能な搬送装置22と、を備える。搬送装置22は、X軸方向にも移動可能かつZ軸回りに旋回可能であり、載置台10上に載置されたカセットCS1~CS3と、後述する処理ステーション3の第3処理ブロックPB3との間で、上ウェハW1、下ウェハW2および接合ウェハTの搬送を行う。
【0016】
処理ステーション3は、例えば、3つの処理ブロックPB1、PB2、PB3を備える。第1処理ブロックPB1は、処理ステーション3の背面側(図1のY軸正方向側)に設けられる。第2処理ブロックPB2は、処理ステーション3の正面側(図1のY軸負方向側)に設けられる。第3処理ブロックPB3は、処理ステーション3の搬入出ステーション2側(図1のX軸負方向側)に設けられる。
【0017】
また、処理ステーション3は、第1処理ブロックPB1~第3処理ブロックPB3に囲まれた領域に、搬送装置61を有する搬送領域60を備える。例えば、搬送装置61は、鉛直方向、水平方向および鉛直軸回りに移動自在な搬送アームを有する。搬送装置61は、搬送領域60内を移動し、搬送領域60に隣接する第1処理ブロックPB1、第2処理ブロックPB2および第3処理ブロックPB3内の装置に上ウェハW1、下ウェハW2および接合ウェハTを搬送する。
【0018】
第1処理ブロックPB1は、例えば、表面改質装置33と、表面親水化装置34とを有する。表面改質装置33は、上ウェハW1の接合面W1jおよび下ウェハW2の接合面W2jを改質する。表面親水化装置34は、改質された上ウェハW1の接合面W1jおよび下ウェハW2の接合面W2jを親水化する。
【0019】
例えば、表面改質装置33は、接合面W1j、W2jにおけるSiO2の結合を切断し、Siの未結合手を形成し、その後の親水化を可能にする。表面改質装置33では、例えば減圧雰囲気下において処理ガスである酸素ガスが励起されてプラズマ化され、イオン化される。そして、酸素イオンが、上ウェハW1の接合面W1jおよび下ウェハW2の接合面W2jに照射されることにより、接合面W1j、W2jがプラズマ処理されて改質される。処理ガスは、酸素ガスには限定されず、窒素ガス等でもよい。
【0020】
表面親水化装置34は、純水等の親水化処理液によって、上ウェハW1の接合面W1jおよび下ウェハW2のW2jを親水化する。表面親水化装置34は、接合面W1j、W2jを洗浄する役割も有する。表面親水化装置34では、例えばスピンチャックに保持された上ウェハW1または下ウェハW2を回転させながら、当該上ウェハW1または下ウェハW2上に純水を供給する。これにより、純水が接合面W1j、W2j上を拡散し、Siの未結合手にOH基が付き、接合面W1j、W2jが親水化される。
【0021】
図2に示すように、第2処理ブロックPB2は、例えば、接合モジュール41と、第1温度調節装置42と、第2温度調節装置43とを有する。接合モジュール41は、親水化された上ウェハW1と下ウェハW2とを接合し、接合ウェハTを作製する。第1温度調節装置42は、接合ウェハTの作製前に、上ウェハW1の温度分布を調節する。第2温度調節装置43は、接合ウェハTの作製前に、下ウェハW2の温度分布を調節する。なお、本実施形態において、第1温度調節装置42および第2温度調節装置43は、接合モジュール41とは別に設けられるが、接合モジュール41の一部として設けられてもよい。
【0022】
第3処理ブロックPB3は、例えば、上方から下方に向かって、第1位置調節装置51、第2位置調節装置52、およびトランジション装置53、54を順に備える。なお、第3処理ブロックPB3における各装置の配置場所は、図2に示す配置場所には限定されない。第1位置調節装置51は、上ウェハW1の水平方向の向きを調節し、また、上ウェハW1を上下反転し、上ウェハW1の接合面W1jを下向きにする。第2位置調節装置52は、下ウェハW2の水平方向の向きを調節する。トランジション装置53は、上ウェハW1を一時的に載置する。また、トランジション装置54は、下ウェハW2や接合ウェハTを一時的に載置する。
【0023】
図1に戻り、接合装置1は、各構成を制御する制御装置(制御部)90を備える。制御装置90は、1以上のプロセッサ91、メモリ92、図示しない入出力インタフェースおよび電子回路を有する制御用コンピュータである。1以上のプロセッサ91は、CPU、GPU、ASIC、FPGA、複数のディスクリート半導体からなる回路等のうち1つまたは複数を組み合わせたものであり、メモリ92に記憶されたプログラムを実行処理する。メモリ92は、不揮発性メモリおよび揮発性メモリを含む。
【0024】
次に、図4を参照して、本実施形態の接合方法について説明する。図4に示すステップS101~S109は、制御装置90の制御下に実施される。
【0025】
接合方法において、作業者または搬送ロボット(不図示)は、複数枚の上ウェハW1を収容したカセットCS1、複数枚の下ウェハW2を収容したカセットCS2、および空のカセットCS3を、搬入出ステーション2の載置台10上に載置する。
【0026】
接合装置1は、搬送装置22によりカセットCS1内の上ウェハW1を取り出し、処理ステーション3の第3処理ブロックPB3のトランジション装置53に搬送する。その後、接合装置1は、搬送装置61により、トランジション装置53から上ウェハW1を取り出し、第1処理ブロックPB1の表面改質装置33に搬送する。
【0027】
次に、接合装置1は、表面改質装置33により、上ウェハW1の接合面W1jを改質する(ステップS101)。表面改質装置33は、接合面W1jを上に向けた状態で接合面W1jを改質する。その後、搬送装置61は、表面改質装置33から上ウェハW1を取り出して、表面親水化装置34に搬送する。
【0028】
そして、接合装置1は、表面親水化装置34により、上ウェハW1の接合面W1jを親水化する(ステップS102)。表面親水化装置34は、接合面W1jを上に向けた状態で接合面W1jを親水化する。その後、搬送装置61は、表面親水化装置34から上ウェハW1を取り出し、第3処理ブロックPB3の第1位置調節装置51に搬送する。
【0029】
接合装置1は、第1位置調節装置51により、上ウェハW1の水平方向の向きを調節すると共に、上ウェハW1の上下を反転する(ステップS103)。これにより、上ウェハW1のノッチが所定の方位に向けられ、上ウェハW1の接合面W1jが下に向けられる。その後、搬送装置61は、第1位置調節装置51から上ウェハW1を取り出し、第2処理ブロックPB2の第1温度調節装置42に搬送する。
【0030】
接合装置1は、第1温度調節装置42により、上ウェハW1の温度を調節する(ステップS104)。上ウェハW1の温調は、上ウェハW1の接合面W1jを下に向けた状態で実施される。その後、搬送装置61は、第1温度調節装置42から上ウェハW1を取り出し、接合モジュール41に搬送する。
【0031】
接合装置1は、上ウェハW1に対する上記の処理と並行して、下ウェハW2に対する処理を実施する。まず、接合装置1は、搬送装置22によりカセットCS2内の下ウェハW2を取り出し、処理ステーション3の第3処理ブロックPB3のトランジション装置54に搬送する。その後、搬送装置61は、トランジション装置54から下ウェハW2を取り出し、第1処理ブロックPB1の表面改質装置33に搬送する。
【0032】
接合装置1は、表面改質装置33により、下ウェハW2の接合面W2jを改質する(ステップS105)。表面改質装置33は、接合面W2jを上に向けた状態で接合面W2jを改質する。その後、搬送装置61は、表面改質装置33から下ウェハW2を取り出し、表面親水化装置34に搬送する。
【0033】
接合装置1は、表面親水化装置34により、下ウェハW2の接合面W2jを親水化する(ステップS106)。表面親水化装置34は、接合面W2jを上に向けた状態で接合面W2jを親水化する。その後、搬送装置61は、表面親水化装置34から下ウェハW2を取り出し、第3処理ブロックPB3の第2位置調節装置52に搬送する。
【0034】
接合装置1は、第2位置調節装置52により、下ウェハW2の水平方向の向きを調節する(ステップS107)。これにより、下ウェハW2のノッチが所定の方位に向けられる。その後、搬送装置61は、第2位置調節装置52から下ウェハW2を取り出し、第2処理ブロックPB2の第2温度調節装置43に搬送する。
【0035】
接合装置1は、第2温度調節装置43により、下ウェハW2の温度を調節する(ステップS108)。下ウェハW2の温調は、下ウェハW2の接合面W2jを上に向けた状態で実施される。その後、搬送装置61は、第2温度調節装置43から下ウェハW2を取り出し、接合モジュール41に搬送する。
【0036】
そして、接合装置1は、接合モジュール41において、上ウェハW1と下ウェハW2を接合し接合ウェハTを作製する(ステップS109)。接合ウェハTの作製後、搬送装置61は、接合モジュール41から接合ウェハTを取り出し、第3処理ブロックPB3のトランジション装置54に搬送する。
【0037】
最後に、接合装置1は、搬送装置22により、トランジション装置54から接合ウェハTを取り出し、載置台10上のカセットCS3に搬送する。これにより、一連の処理が終了する。
【0038】
次に、図5図7を参照して、本実施形態に係る接合モジュール41の一例について説明する。図5に示すように、接合モジュール41は、内部を密閉可能な処理容器210を有する。処理容器210の搬送領域60側の側面には搬入出口211が形成され、当該搬入出口211には開閉シャッタ212が設けられる。上ウェハW1、下ウェハW2および接合ウェハTは、搬入出口211を介して搬入出される。
【0039】
図6に示すように、処理容器210の内部には、上チャック230と下チャック231とが設けられる。上チャック230は、上ウェハW1の接合面W1jを下に向けて、上ウェハW1を上方から保持する上側保持部である。また、下チャック231は、上チャック230の下方に設けられ、下ウェハW2の接合面W2jを上に向けて、下ウェハW2を下方から保持する保持部である。
【0040】
上チャック230は、処理容器210の天井面に設けられた支持部材280に支持される。一方、下チャック231は、当該下チャック231の下方に設けられた第1下チャック移動部291に支持される。
【0041】
第1下チャック移動部291は、後述するように下チャック231を水平方向(Y軸方向)に移動させる。また、第1下チャック移動部291は、下チャック231を鉛直方向に移動自在、かつ鉛直軸回りに回転可能に構成される。
【0042】
第1下チャック移動部291は、当該第1下チャック移動部291の下面側に設けられ、水平方向(Y軸方向)に延在する一対のレール295に取り付けられる。第1下チャック移動部291は、レール295に沿って移動自在に構成される。レール295は、第2下チャック移動部296に設けられる。
【0043】
第2下チャック移動部296は、当該第2下チャック移動部296の下面側に設けられ、水平方向(X軸方向)に延在する一対のレール297に取り付けられる。第2下チャック移動部296は、レール297に沿って移動自在に構成される。なお、一対のレール297は、処理容器210の底面に設けられた載置台298上に設けられる。
【0044】
第1下チャック移動部291と、第2下チャック移動部296とによって、移動機構290が構成される。移動機構290は、上チャック230に対して下チャック231を相対移動させる。また、移動機構290は、基板受渡位置と、接合位置との間で下チャック231を移動させる。
【0045】
基板受渡位置は、上チャック230が上ウェハW1を搬送装置61から受け取り、また、下チャック231が下ウェハW2を搬送装置61から受け取り、下チャック231が接合ウェハTを搬送装置61に受け渡す位置である。基板受渡位置は、n(nは1以上の自然数)回目の接合で作製された接合ウェハTの搬出と、n+1回目の接合で接合される上ウェハW1および下ウェハW2の搬入とが連続して行われる位置である。基板受渡位置は、例えば図5および図6に示す位置である。
【0046】
搬送装置61は、上ウェハW1を上チャック230に渡す際に、上チャック230の真下に進入する。また、搬送装置61は、接合ウェハTを下チャック231から受け取り、下ウェハW2を下チャック231に渡す際に、下チャック231の真上に進入する。搬送装置61が進入しやすいように、上チャック230と下チャック231とは横にずらされており、上チャック230と下チャック231の鉛直方向の間隔も大きい。
【0047】
一方、接合位置は、上ウェハW1と下ウェハW2とを所定の間隔をおいて向かい合わせた位置(対向位置)である。接合位置は、例えば図7に示す位置である。接合位置では、基板受渡位置に比べて、鉛直方向における上ウェハW1と下ウェハW2との間隔が狭い。また、接合位置では、基板受渡位置とは異なり、鉛直方向視にて上ウェハW1と下ウェハW2とが重なっている。
【0048】
移動機構290は、上チャック230と下チャック231の相対位置を、水平方向(X軸方向およびY軸方向の両方向)と、鉛直方向とに移動させる。なお、移動機構290は、本実施形態では下チャック231を移動させるが、下チャック231と上チャック230のいずれを移動させてもよく、両者を移動させてもよい。また、移動機構290は、上チャック230または下チャック231を鉛直軸回りに回転させてもよい。
【0049】
図7に示すように、上チャック230は、当該上チャック230の径方向に沿って複数(例えば3つ)の領域230a、230b、230cに区画される。これら領域230a、230b、230cは、上チャック230の中心から外縁に向けてこの順で設けられる。領域230aは、平面視で正円状に形成されており、領域230b、230cは平面視で円環状に形成されている。
【0050】
各領域230a、230b、230cには、吸引管240a、240b、240cがそれぞれ独立して設けられる。各吸引管240a、240b、240cには、異なる真空ポンプ241a、241b、241cがそれぞれ接続される。上チャック230は、各領域230a、230b、230c毎に、上ウェハW1を真空吸着可能である。
【0051】
上チャック230には、鉛直方向に昇降自在な複数の保持ピン245が設けられる。複数の保持ピン245は、真空ポンプ246に接続され、真空ポンプ246の作動によって上ウェハW1を真空吸着する。上ウェハW1は、複数の保持ピン245の下端に真空吸着される。複数の保持ピン245の代わりに、リング状の吸着パッドが用いられてもよい。
【0052】
複数の保持ピン245は、図示しない駆動部により下降することで、上チャック230の吸着面から突出する。その状態で、複数の保持ピン245は、上ウェハW1を真空吸着し、搬送装置61から受け取る。その後、複数の保持ピン245が上昇して、上ウェハW1が上チャック230の吸着面に接触する。続いて、上チャック230は、真空ポンプ241a、241b、241cの作動によって、各領域230a、230b、230cにおいて上ウェハW1を水平に真空吸着する。
【0053】
また、上チャック230は、当該上チャック230を鉛直方向に貫通する貫通孔243を中心に備える。貫通孔243の周辺には押動部250が設置される。押動部250は、下ウェハW2と間隔をあけて配置された上ウェハW1の中心を押し下げることで、上ウェハW1を下ウェハW2に接触させる。
【0054】
押動部250は、押動ピン251と、当該押動ピン251の昇降ガイドである外筒252とを有する。押動ピン251は、例えばモータを内蔵した駆動部(図示せず)によって、貫通孔243に挿通され、上チャック230の吸着面から突出し、上ウェハW1の中心を押し下げる。
【0055】
一方、下チャック231も、下ウェハW2を吸着する吸着面300において、複数の区画された領域を有する。下チャック231の上面には、円環状のリブ301、302、303、および放射状のリブ305(図11参照)が設けられる。吸着面300は、各リブ301、302、305の上端によって構成されている。なお、下チャック231の吸着面300の構成については、後に詳述する。
【0056】
下チャック231には、鉛直方向に昇降自在な複数(例えば、3つ)のリフトピン265が設けられる。複数のリフトピン265は、上昇することで、下チャック231の吸着面300から突出する。各リフトピン265は、搬送装置61により搬入した下ウェハW2に対して上昇することで、当該下ウェハW2を受け取る。また各リフトピン265は、搬送装置61の退出後に下降することで、下ウェハW2を吸着面300に載置する。なお、複数のリフトピン265は、受け取り時に、下ウェハW2を真空吸着してもよい。
【0057】
そして、本実施形態に係る下チャック231は、吸着面300を変形可能な構成としている。下チャック231は、例えば、基台部232と、吸着部233とを備える。吸着部233は、基台部232の上方に設けられ、下ウェハW2を下方から吸着保持する。吸着部233は、平面視で、下ウェハW2の直径よりも大径の正円状に形成され、周縁部に設けられた固定リング234によって基台部232に固定される。
【0058】
そして、下チャック231は、基台部232の上面と吸着部233の下面との間に圧力可変空間235と、圧力可変空間235を圧力変化させることで吸着部233を弾性変形させる変形制御部236と、を備える。吸着部233の材質は、例えば、アルミナまたは炭化ケイ素などのセラミックである。
【0059】
変形制御部236は、真空ポンプ236aと、加圧ポンプ236bと、切替バルブ236cとを備える。真空ポンプ236aは、圧力可変空間235のガスを排出することで、圧力可変空間235を減圧する。圧力可変空間235の減圧によって、吸着部233の上面が水平面、または中心側が窪む曲面となる。一方、加圧ポンプ236bは、圧力可変空間235にガスを供給することで、圧力可変空間235を加圧する。圧力可変空間235の加圧によって、吸着面300の中心側が隆起する曲面となる。吸着面300の変形量は、圧力可変空間235の圧力により調整できる。切替バルブ236cは、圧力可変空間235を、真空ポンプ236aに接続した状態と、加圧ポンプ236bに接続した状態とに切り替える。
【0060】
基台部232は、吸着面300の中央領域Aの突出量を測定する測定部237を有する。測定部237の測定ターゲット237aは、吸着部233の中央部と共に昇降する。測定部237は、例えば、静電容量センサであり、測定ターゲット237aとの距離に応じて変化する静電容量を検出することで、突出量を測定する。以上のように構成される接合モジュール41は、下ウェハW2の保持前に下チャック231の吸着面300を適切な形状に変形して、搬送装置61により搬送される下ウェハW2を吸着保持することができる。
【0061】
次に、図8図10を参照して、図4のステップS109における接合ウェハTを作製する工程について詳述する。図8に示すように、制御装置90は、搬送装置61により接合モジュール41に対して上ウェハW1と下ウェハW2を搬入する(ステップS111)。搬入後の上チャック230と下チャック231の相対位置は、図6および図7に示す基板受渡位置である。
【0062】
次に、制御装置90は、移動機構290により、上チャック230と下チャック231の相対位置を基板受渡位置から図7に示す接合位置に移動させる(ステップS112)。このステップS112において、制御装置90は、図9に示すように第1カメラS1と第2カメラS2とを用いて、上ウェハW1と下ウェハW2の位置合わせを行う。
【0063】
第1カメラS1は、上チャック230に固定されており、下チャック231に保持された下ウェハW2を撮像する。下ウェハW2の接合面W2jには、予め複数の基準点P21~P23が形成される。基準点P21~P23としては、電子回路のパターンや電極パッド等が用いられる。基準点の数は、任意に設定可能である。
【0064】
一方、第2カメラS2は、下チャック231に固定されており、上チャック230に保持された上ウェハW1を撮像する。上ウェハW1の接合面W1jには、予め複数の基準点P11~P13が形成されている。基準点P11~P13としては、電子回路等のパターンが用いられる。基準点の数は、任意に設定可能である。
【0065】
図9(A)に示すように、接合モジュール41は、移動機構290により、第1カメラS1と第2カメラS2の相対的な水平方向位置を調整する。具体的には、第2カメラS2が第1カメラS1の略真下に位置するように、移動機構290が下チャック231を水平方向に移動させる。そして、第1カメラS1と第2カメラS2とが共通のターゲットXを撮像し、第1カメラS1と第2カメラS2の水平方向位置が一致するように、移動機構290が第2カメラS2の水平方向位置を微調整する。
【0066】
次に、図9(B)に示すように、移動機構290は、下チャック231を鉛直上方に移動させて、上チャック230と下チャック231の水平方向位置を調整する。具体的には、移動機構290が下チャック231を水平方向に移動させながら、第1カメラS1が下ウェハW2の基準点P21~P23を順次撮像すると共に、第2カメラS2が上ウェハW1の基準点P11~P13を順次撮像する。なお、図9(B)は、第1カメラS1が下ウェハW2の基準点P21を撮像すると共に、第2カメラS2が上ウェハW1の基準点P11を撮像する様子を示している。
【0067】
第1カメラS1および第2カメラS2は、撮像した画像データを制御装置90に送信する。制御装置90は、第1カメラS1で撮像した画像データと第2カメラS2で撮像した画像データとに基づいて移動機構290を制御し、鉛直方向視にて上ウェハW1の基準点P11~P13と下ウェハW2の基準点P21~P23とが合致するように下チャック231の水平方向位置を調整する。
【0068】
次に、図9(C)に示すように、移動機構290は、下チャック231を鉛直上方に移動させる。その結果、下ウェハW2の接合面W2jと上ウェハW1の接合面W1jとの間隔G(図7参照)は、予め定められた距離、例えば80μm~200μmになる。間隔Gの調整は、第1変位計S3と、第2変位計S4とを用いる。
【0069】
第1変位計S3は、上チャック230に固定されており、下チャック231に保持された下ウェハW2の厚みを測定する。第1変位計S3は、例えば、下チャック231に保持された下ウェハW2に光を照射し、下ウェハW2の上下両面で反射された反射光を受光することで、下ウェハW2の厚みを測定する。厚みの測定は、例えば、移動機構290が下チャック231を水平方向に移動させる際に実施される。第1変位計S3の測定方式は、共焦点方式、分光干渉方式または三角測距方式等である。第1変位計S3の光源は、LEDまたはレーザを適用できる。
【0070】
一方、第2変位計S4は、下チャック231に固定されており、上チャック230に保持された上ウェハW1の厚みを測定する。第2変位計S4は、例えば、上チャック230に保持された上ウェハW1に光を照射し、上ウェハW1の上下両面で反射された反射光を受光することで、上ウェハW1の厚みを測定する。厚みの測定は、例えば、移動機構290が下チャック231を水平方向に移動させる際に実施される。第2変位計S4の測定方式は、例えば共焦点方式、分光干渉方式または三角測距方式等である。第2変位計S4の光源は、LEDまたはレーザを適用できる。
【0071】
各第1変位計S3および各第2変位計S4は、測定した測定情報を、制御装置90に送信する。制御装置90は、各第1変位計S3で測定した測定情報と各第2変位計S4で測定した測定情報とに基づいて移動機構290を制御し、間隔Gが設定値になるように下チャック231の鉛直方向位置を調整する。
【0072】
上ウェハW1と下ウェハW2の間隔Gを調整した後、真空ポンプ241aの作動を停止し、図10(A)に示すように、領域230aにおける上ウェハW1の真空吸着を解除する。その後、押動部250の押動ピン251が下降して上ウェハW1の中心を押し下げることで、上ウェハW1を下ウェハW2に接触させる(ステップS113)。その結果、上ウェハW1と下ウェハW2の中央部同士が接合される。
【0073】
上ウェハW1の接合面W1jと下ウェハW2の接合面W2jはそれぞれ改質されているため、まず、接合面W1j、W2j間にファンデルワールス力(分子間力)が生じ、当該接合面W1j、W2j同士が接合される。さらに、上ウェハW1の接合面W1jと下ウェハW2の接合面W2jはそれぞれ親水化済みであるので、親水基(例えばOH基)が水素結合し、接合面W1j、W2j同士が強固に接合される。
【0074】
次に、制御装置90は、真空ポンプ241bの作動を停止し、図10(B)に示すように、領域230bにおける上ウェハW1の真空吸着を解除する。続いて、制御装置90は、真空ポンプ241cの作動を停止し、図10(C)に示すように、領域230cにおける上ウェハW1の真空吸着を解除する。
【0075】
このように、上ウェハW1の中心から周縁に向けて、上ウェハW1の真空吸着が段階的に解除され、上ウェハW1が下ウェハW2に段階的に落下して当接する。そして、上ウェハW1と下ウェハW2の接合は、中心から周縁に向けて順次進行する(ステップS114)。これより、上ウェハW1の接合面W1jと下ウェハW2の接合面W2jとが全面で当接し、上ウェハW1と下ウェハW2とが接合され、接合ウェハTが得られる。その後、接合装置1は、押動ピン251を元の位置まで上昇させる。
【0076】
図8に戻り、接合ウェハTの形成後、制御装置90は、移動機構290により、上チャック230と下チャック231の相対位置を、図7に示す接合位置から図5および図6に示す基板受渡位置に移動する(ステップS115)。例えば、移動機構290は、先ず下チャック231を下降させ、下チャック231と上チャック230の鉛直方向の間隔を広げる。続いて、移動機構290は、下チャック231を横に移動させ、下チャック231と上チャック230を横にずらす。
【0077】
その後、制御装置90は、搬送装置61により、接合モジュール41に対する接合ウェハTの搬出を行う(ステップS116)。具体的には、先ず、下チャック231が接合ウェハTの保持を解除する。続いて、複数のリフトピン265が上昇し、接合ウェハTを搬送装置61に渡す。その後、複数のリフトピン265が元の位置まで下降する。
【0078】
次に、下チャック231の吸着面300の構成について、図11を参照しながら説明する。図11は、下チャック231の吸着面300を示す平面図である。下チャック231の吸着面300は、径方向に沿って吸着圧力を個別に発生させる複数の領域を有する。
【0079】
例えば、吸着面300は、円環状のリブ301、302、303により、円状(正円状)の中央領域Aと、円環状の外側領域Bとに区画される。さらに外側領域Bは、中央領域Aの外側に隣接する円環状の第1外側領域B1と、第1外側領域B1の外側に隣接する円環状の第2外側領域B2と、を含む。すなわち、中央領域A、第1外側領域B1、第2外側領域B2は、吸着面300の中心から径方向外側に向かって、この順番で同心円状に配置されている。なお、吸着面300は、第1外側領域B1と第2外側領域B2に分割せずに、径方向外側に向かって中央領域Aと1つの外側領域Bが並ぶ構成でもよい。逆に、吸着面300の外側領域Bは、3以上の円環状の領域を備えてもよい。
【0080】
第1外側領域B1は、複数の放射状のリブ305によって、8つの円弧状のゾーン(小領域:一部位)に区画されている。同様に、第2外側領域B2は、各リブ305によって、8つの円弧状のゾーンに区画されている。なお、第1外側領域B1の区画数と、第2外側領域B2の区画数とは、相互に異なってもよく、また相互の周方向の位置がずれていてもよい。
【0081】
中央領域A、第1外側領域B1の8つのゾーンおよび第2外側領域B2の8つのゾーンは、下ウェハW2を個別に吸引可能に構成される。ただし、本実施形態に係る下チャック231は、合計17のゾーンに対して10個の調整機構311を接続しており、吸着面300を10チャネルのゾーン毎に吸引する。つまり、吸着面300は、合計17のゾーンのうち、同じ調整機構311によって吸引を行うゾーンを有している。
【0082】
具体的には、中央領域Aは、1つのゾーン(ch1)となっている。第1外側領域B1は、3つのゾーン(ch2~ch4)を設定している。中央領域Aを基点としてX軸方向(図11中の左右)に隣接する2つのゾーンがch2である。中央領域Aを基点としてY軸方向(図11中の上下)に隣接する2つのゾーンがch3である。そして、外側領域Bにおいてch2のゾーンとch3のゾーンとに挟まれた4つのゾーンがch4である。第2外側領域B2は、6つのゾーン(ch5~ch10)を設定している。第1外側領域B1のX軸正方向(図11中の左)に隣接する1つのゾーンがch5である。第1外側領域B1のX軸負方向(図11中の右)に隣接する1つのゾーンがch6である。第1外側領域B1のY軸負方向(図11中の上)に隣接する1つのゾーンがch7である。第1外側領域B1のY軸正方向(図11中の下)に隣接する1のゾーンがch8である。そして、第2外側領域B2においてch5のゾーンとch7のゾーンとに挟まれたゾーン、およびch6のゾーンとch7のゾーンとに挟まれたゾーンがch9である。同様に、第2外側領域B2においてch5のゾーンとch8のゾーンとに挟まれたゾーン、およびch6のゾーンとch8のゾーンとに挟まれたゾーンがch10である。
【0083】
吸着面300の中心を通るX軸線上には、X軸正方向からX軸負方向に向かって、ch5、ch2、ch1、ch2、ch6の各ゾーンが、この順に並んでいる。吸着面300の中心を通るY軸線上には、Y軸負方向からX軸正方向に向かって、ch7、ch3、ch1、ch3、ch8の各ゾーンが、この順に並んでいる。なお、吸着面300は、各ゾーンのチャネルの数や場所について自由に設計し得ることは勿論である。
【0084】
下チャック231には、吸着面300の各ゾーンに対して、吸引またはエアの吹き付けを行う気体制御部310が接続されている。具体的には、気体制御部310は、10チャネルの各々に接続される10個の調整機構311を備える。また、気体制御部310は、制御装置90に通信可能に接続され、制御装置90の制御下に各調整機構311を独立して動作させる。
【0085】
各調整機構311は、接続されているゾーンに吸着圧力を発生させる吸着圧力発生部320のみを有するものと、吸着圧力発生部320に加えて、接続されているゾーンからエアを吹き出させる外力付与部330を有するものとがある。以下、吸着圧力発生部320と外力付与部330とを有するものを調整機構311Aともいう。
【0086】
吸着圧力発生部320は、下チャック231の所定のゾーンに接続される流通ライン312と、この流通ライン312上に吸引ポンプ313、開閉バルブ314および圧力制御器315を備える。吸着圧力発生部320は、例えば、所定の流通ライン312の吸引ポンプ313を作動させて開閉バルブ314を開放することで、その流通ライン312が接続されているゾーンに吸着圧力(負圧)を発生させる。吸着圧力の大きさは、圧力制御器315により制御する。また、各調整機構311は、所定の流通ライン312の開閉バルブ314を閉塞すると共に、圧力制御器315を介して大気を導入することで、各ゾーンの吸着圧力を解除する。
【0087】
中央領域Aである1chには、吸着圧力発生部320のみの調整機構311が接続されている。以下、中央領域Aに吸着圧力を発生させる吸着圧力発生部320を第1吸着圧力発生部321ともいう。一方、外側領域Bであるch2~ch10には、吸着圧力発生部320のみの調整機構311と、吸着圧力発生部320と外力付与部330とを含む調整機構311Aとが混在する。以下、外側領域Bに吸着圧力を発生させる吸着圧力発生部320を第2吸着圧力発生部322ともいう。
【0088】
詳細には、外側領域Bにおいて、調整機構311(第2吸着圧力発生部322のみ)が接続されるゾーンは、ch2~ch4、ch9、ch10である。外側領域Bにおいて、調整機構311A(第2吸着圧力発生部322と外力付与部330)が接続されるゾーンは、ch5~ch8である。なお、図11では、吸着圧力発生部320のみが接続される各ゾーンについてシングルハッチで示し、吸着圧力発生部320と外力付与部330が接続される各ゾーンについてクロスハッチで示す。
【0089】
各調整機構311Aの外力付与部330は、吸着面300の上方向(Z軸正方向)に向かってエアを吹き出し可能としている。この外力付与部330は、流通ライン312に接続される圧送ライン316を有すると共に、この圧送ライン316上に圧送ポンプ317、開閉バルブ318および流量調整器319を備える。各外力付与部330は、制御装置90の制御下に、所定の圧送ライン316の圧送ポンプ317を作動させて開閉バルブ318を開放する。これにより、圧送ライン316から流通ライン312にエアが供給され、このエアは、流通ライン312が接続されているゾーンにおいて、吸着圧力の付与時と共通の孔(不図示)を通して上方向に吹き出される。また、制御装置90は、流量調整器319により吹き出すエアの大きさを制御できる。なお、外力付与部330は、流通ライン312とは別に下チャック231に接続され、吸着圧力の付与時の孔と別の孔(不図示)から上方向にエアを吹き出す構成でもよい。
【0090】
次に、図12を参照して、下ウェハW2に生じる反りについて説明する。図12(A)において、白黒の階調は、下チャック231の吸着面300に対する下ウェハW2の上面(接合面W2j)の高さを表す。色が黒色に近いほど、下ウェハW2の上面の高さが低く、下ウェハW2の上面と下チャック231の吸着面300との間隔が小さい。
【0091】
下ウェハW2の反りは、例えば、接合装置1とは別に設けられた反り測定装置5(図1参照)で測定され、制御装置90は反り測定装置5で測定した下ウェハW2の反り状態の情報を取得する。なお、反り測定装置5は、接合装置1の一部として設けられてもよい。接合装置1は、接合モジュール41内に設けられた図示しない複数の変位計により、上ウェハW1の搬入時や下ウェハW2の搬入時に反りを測定する構成でもよい。反りは、重力とその反力以外の外力(例えば吸着圧力)が作用していない状態で測定し、例えばステージの平坦面または複数本(例えば3本)のピンの上に載置した状態で測定する。
【0092】
気体制御部310(図11参照)により下チャック231の吸着面300に吸着圧力を発生させる前に、下ウェハW2は、図12(A)に示すように反っていることがある。下ウェハW2の反りは、例えば、シリコンウェハ等の半導体基板の上に、複数の膜が積層されることで生じる。各膜は、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、ALD(Atomic Layer Deposition)法、またはスピンオン法等で成膜される。成膜時の熱膨張差によって下ウェハW2に応力がかかり、下ウェハW2の反りが生じる。
【0093】
下ウェハW2は、2つの直交する径方向の直線を挟んで対称な反り、つまり、線対称な反りに形成されることが多い。シリコンウェハ等の半導体基板のヤング率、ポアソン比、およびせん断弾性係数が90°周期で変化するからである。2つの直交する径方向の直線は、吸着面300に直交する方向(Z軸方向)から見て、半導体基板の特定の結晶方位に延びている。
【0094】
そして、接合装置1は、下ウェハW2の2つの直交する径方向の直線が下チャック231のX軸方向およびY軸方向に沿うように、搬送装置61から下チャック231に受け渡す。例えば、下ウェハW2の向き(姿勢)は、上記した第2位置調節装置52(図2参照)により調整される。
【0095】
下ウェハW2の反りは、下ウェハW2の中心を基点とした場合に、対称位置にある外縁が吸着面300に近づく方向(鉛直方向下側)に反った形態と、対称位置にある外縁が吸着面300から離れる方向(鉛直方向上側)に反った形態とがある。以下では、下ウェハW2の外縁が下方向に向かう反り(上に凸の反り)、言い換えれば、下ウェハW2の中央部が外周部よりも吸着面300から離れている反りを凸反りという。また、下ウェハW2の外縁が上方向に向かう反り(上に凹の反り)、言い換えれば、下ウェハW2の外周部が中央部よりも吸着面300から離れている反りを凹反りという。
【0096】
例えば、下ウェハW2は、Y軸線上における2つの外縁から中心に向かって凸状に湾曲している凸反りの場合に、X軸線上における2つの外縁から中心に向かって凹状に湾曲する凹反りの鞍型曲面に形成される。逆に、Y軸線上における2つの外縁から中心に向かって凹状に湾曲している凹反りの場合には、X軸線上における2つの外縁から中心に向かって凸状に湾曲する凸反りの鞍型曲面に形成される。言い換えれば、下ウェハW2の反りは、2つの直交する径方向の直線において相互に逆の方向になる。
【0097】
そして、図12(B)に示すように、下ウェハW2において凹反りが生じている軸線上では、上面(接合面W2j)が全体的に縮むようにストレスがかかり、また下面(非接合面W2n)が全体的に伸びるようにストレスがかかる。そのため、下ウェハW2に対して何ら外力をかけずに下チャック231に載置すると、下ウェハW2の凹反りの軸線上では、上面が内側に向かうような残留ストレスが継続的に残ったままとなる。
【0098】
一方、図12(C)に示すように、下ウェハW2において凸反りが生じている軸線上では、上面(接合面W2j)が全体的に伸びるようなストレスがかかり、また下面(非接合面W2n)が全体的に縮むようなストレスがかかる。そのため、下ウェハW2に対して何ら外力をかけずに下チャック231に載置すると、下ウェハW2の凸反りの軸線上では、下面が内側に向かうような残留ストレスが継続的に残ったままとなる。
【0099】
つまり、反りが生じている下ウェハW2には、その表面(上面、下面)内側に向かう残留ストレスが内在している。そして、この残留ストレスによって接合後における上ウェハW1と下ウェハW2のずれが大きくなると言える。そこで、本実施形態に係る下チャック231は、下ウェハW2の載置時に、外側領域Bにおける適宜のチャネル(5chと6ch、または7chと8ch)から下ウェハW2に外力をかけることで、下ウェハW2の残留ストレスを緩和する構成としている。
【0100】
以下、反りが生じている下ウェハW2を下チャック231に載置する際の動作について説明していく。図13は、下ウェハW2を下チャック231に載置する際の動作を示す側面図である。
【0101】
図13に示すように、接合モジュール41は、各リフトピン265により支持している下ウェハW2を下降して下チャック231の吸着面300に載置する。この際、ch1に接続している調整機構311(第1吸着圧力発生部321)は、流通ライン312を介して所定の圧力値の吸着圧力を中央領域Aに生じさせて、下ウェハW2の中央部を中央領域Aに吸着保持する(図11も参照)。
【0102】
これに対して、凸反りが生じている軸線(図13では、X軸線)上における一対の第2外側領域B2(ch5、ch6)には、外力付与部330を有する調整機構311Aが接続されている。この外力付与部330は、流通ライン312を介して凸反りの軸線の両外周部に対して調整した流量のエアを吹き付けることができる。これに対して、接合モジュール41は、凹反りが生じている一対の第2外側領域B2(ch7、ch8)に接続されている調整機構311Aの外力付与部330については動作させない。
【0103】
すなわち、下ウェハW2は、X軸線(凸反りの軸線)の両外周部において吸着面300から遠ざかる方向(上方向)の力(外力)を下方から受け、Y軸線(凹反りの軸線)の両外周部において外力を受けない状態となる。その結果、下ウェハW2の凸反りの軸線の両外周部は、中央部に対して平らになる方向に変形して、残留ストレスを減らすことができる。また、凹反りの軸線の両外周部も、X軸線の変形に連動するかたちで、凹反りが解消される方向(吸着面300)に近づいて、残留ストレスを減らすことができる。
【0104】
換言すれば、下ウェハW2は、下チャック231により凸反りの軸線の外周部にエアが吹き付けられる(外力が付与される)ことで、全体的に略平坦状となるように誘導される。その結果、反りにより内側に向かう残留ストレスを有する下ウェハW2は、残留ストレスの分布が改善された状態となる。そして、制御装置90は、ch5、ch6からエアを吹き付けている最中に、下ウェハW2のch7、ch8に対向する凹反りの軸線の両外周部を吸着保持する。さらに、制御装置90は、エアの吹き付け停止後に、ch5、ch6に対して吸着圧力を発生させる。これにより、下チャック231は、残留ストレスが低減された下ウェハW2の外周部を、ch5、ch6において良好に吸着保持することが可能となる。
【0105】
本実施形態に係る接合装置1は、基本的には以上のように構成され、以下、下ウェハW2を下チャック231に吸着保持する基板載置方法の動作について、図14(A)~図15(C)を参照しながら説明する。図14(A)は、下ウェハW2を下チャック231に載置する際の動作フローのフローチャートである。図14(B)は、下ウェハW2を下チャック231に載置する際のタイミングチャートである。図15(A)は、下ウェハW2を下チャック231に載置する第1動作例の図である。図15(B)は、下ウェハW2を下チャック231に載置する第2動作例の図である。図15(C)は、下ウェハW2を下チャック231に載置する第3動作例の図である。
【0106】
制御装置90は、搬送装置61による接合モジュール41への下ウェハW2の搬入時に、下チャック231の各リフトピン265を上昇させることで下ウェハW2を受け取り、その後に各リフトピン265を下降する(図14(A)ステップS201)。下ウェハW2の搬入前に第2位置調節装置52によって、下ウェハW2の凸反りの軸線は、図15(A)に示すように、下チャック231のX軸またはY軸に沿った方向に調整されている。なお、図15では、下チャック231のX軸に沿った方向に凸反りが生じている例を示している。
【0107】
そして、制御装置90は、下ウェハW2が下降して吸着面300に充分に接近したタイミングで、第1吸着圧力発生部321を動作させ、中央領域Aであるch1において下ウェハW2の中央部を吸着する(図14(A)のステップS202)。これにより図15(B)に示すように、下ウェハW2の中央部が中央領域Aに固定された状態となる。
【0108】
制御装置90は、第2外側領域B2(外側領域B)の凸反りの軸線に対向する領域であるch5、ch6の外力付与部330を動作させ、ch5、ch6において下ウェハW2の対向面(非接合面W2n)にエアを吹き付ける(図14(A)のステップS203)。これにより、下ウェハW2の凸反りの軸線の両外周部は、吸着面300から遠ざかる方向(凸反りが緩和される方向)に力がかかる。そして、下ウェハW2は、凹反りの箇所も含めて全体的に平坦状となるように変形し、反りにより生じている残留ストレスが緩和されるようになる。
【0109】
凸反りの軸線の両外周部にエアが吹き付けられている状態で、制御装置90は、第2外側領域B2の凹反りの軸線に対向する領域であるch7、ch8の第2吸着圧力発生部322を動作させて下ウェハW2を吸着する(図14(A)のステップS204)。これにより、下ウェハW2の凹反りの軸線の両外周部が吸着面300に先に吸着保持されて、両外周部が凹反りに戻ることが阻止される。
【0110】
最後に、制御装置90は、第2外側領域B2の凸反りに対向する領域であるch5、ch6の第2吸着圧力発生部322を動作させ、ch5、ch6において下ウェハW2の対向面(非接合面W2n)を吸着する(図14(A)のステップS205)。これにより、下ウェハW2の凸反りの軸線の外周部は、残留ストレスが緩和された状態で吸着面300に吸着される。
【0111】
すなわち、以上の基板載置方法によって、下チャック231は、下ウェハW2の残留ストレスの分布が改善した状態で、当該下チャック231を固定することができる。この状態で、上記した図10の接合工程を実施することにより、接合装置1は、上ウェハW1と下ウェハW2とのずれが抑制された接合ウェハTを精度よく製造することが可能となる。
【0112】
また、上記の制御装置90による気体制御部310の動作タイミングをまとめると、図14(B)に示すようなタイミングチャートとなる。すなわち、基板載置方法では、まず時点t1において第1吸着圧力発生部321により中央領域Aに吸着圧力を発生させる。これにより、下ウェハW2の中央部が下チャック231に固定される。下ウェハW2の中央部を吸着する吸着圧力は、下チャック231が下ウェハW2を保持している間にわたって継続的に付与される。
【0113】
そして、制御装置90は、時点t2において下ウェハW2の凸反りの軸線に対向する外側領域Bの外力付与部330を動作させて、凸反りの軸線の両外周部にエアを吹き付ける。これにより、下ウェハW2全体が略平坦状となるように変形が促される。なお、エアの吹き付けタイミングは、時点t1の後に限らず、例えば、時点t1と同時であってもよい。
【0114】
制御装置90は、エアの吹き付け中である時点t3において、下ウェハW2の凹反りの軸線に対向する外側領域Bの第2吸着圧力発生部322を動作させて、凹反りの軸線の両外周部を吸着する。この凹反りの軸線の両外周部を吸着する吸着圧力は、下チャック231が下ウェハW2を保持している間にわたって継続的に付与される。なお、凹反りの軸線の両外周部を吸着するタイミングも、時点t2の後に限らず、例えば、時点t2と同時であってもよい。
【0115】
制御装置90は、時点t4(下ウェハW2の凹反りの軸線の両外周部を固定した状態)で、外力付与部330の動作を停止する。そして、時点t4後の時点t5において、制御装置90は、下ウェハW2の凸反りの軸線に対向する外側領域Bの第2吸着圧力発生部322を動作させて、凸反りの軸線の両外周部を吸着する。なお、外力付与部330の動作を停止するタイミングも、時点t3の後に限らず、例えば時点t3と同時であってもよい。また、下チャック231の吸着面300の他のゾーン(ch2~ch4、ch9、ch10)については、例えば、時点t5以降に適宜の順で(または一斉に)吸着を行えばよい。
【0116】
以上のように、接合装置1および基板載置方法は、下ウェハW2に外力を付与する外力付与部330を備えることで、下ウェハW2の残留ストレスの分布を改善(均一化)することができる。その結果、上ウェハW1と下ウェハW2とのずれが可及的になくなり、接合装置1は、上ウェハW1と下ウェハW2とを精度よく接合することができる。特に、接合装置1は、下ウェハW2において凸反りが生じている軸線に対向するゾーンからエアを吹き出すことで、凸反りの軸線の両外周部の変形を促すことができる。これにより、下ウェハW2は、凹反りの軸線でも平坦状への変形が促されて、ウェハ全体として残留ストレスを効果的に改善できる。
【0117】
また、外力付与部330は、図12(C)に示すように吸着面300に下ウェハW2を載せた状態であって且つ吸着面300に下ウェハW2を吸着する前の状態で、外側領域Bにおける下ウェハW2と下チャック231の間の隙間が最も小さくなるゾーン(ch5~ch8)においてエアを吹き付ける。これにより、反りが大きい箇所である下ウェハW2の外周部のストレスを緩和できる。しかも、外力付与部330は、中央領域Aを挟んで外側領域Bの対称位置から、凸反りの軸線の両外周部にエアを吹き付けることで、下ウェハW2を均等的に変形できる。
【0118】
さらに、制御装置90は、中央領域Aを吸着した状態で、凸反りの軸線の両外周部にエアを吹き付けることで、下ウェハW2の位置ずれをなくして、当該下ウェハW2を変形できる。またさらに、制御装置90は、外力付与部330によりエアを吹き付けた後に、下ウェハW2の凸反りの軸線の両外周部を吸着することで、残留ストレスが緩和された下ウェハW2を適切に保持できる。
【0119】
なお、本開示に係る基板処理装置(接合装置1)は、上記の実施形態に限定されず、種々の変形例をとり得る。例えば、外力付与部330により下ウェハW2に付与する外力は、エアではなく別の気体であってもよい。別の気体の一例としては、He、Ar、N等の不活性ガスがあげられる。
【0120】
また、上記の実施形態において、下チャック231は、第2外側領域B2のみからエアを吹き出す構成としていた。しかしながら、下チャック231は、下ウェハW2の凸反りの軸線に対向する第1外側領域B1(ch2、ch3)からもエアを吹き出す構成としてよい。例えば、X軸線に凸反りが生じている場合、下チャック231は、ch2、ch5、ch6からエアを吹き出してよい。あるいは、Y軸線に凸反りが生じている場合、下チャック231は、ch3、ch7、ch8からエアを吹き出してよい。これにより、下ウェハW2の凸反りの軸線上に一層安定して外力を付与することができ、残留ストレスの分布を改善することができる。この場合、下チャック231は、第1外側領域B1から吹き出すエアの量と、第2外側領域B2から吹き出すエアの量とを異ならせてもよい。一例としては、第2外側領域B2のエアの量を、第1外側領域B1のエアの量よりも増やすことで、下ウェハW2の外縁の近くに対してより大きな外力を付与することができる。
【0121】
また例えば、制御装置90は、凸反りまたは凹反りの下ウェハW2の反り量に応じて、吹き出すエアの量を調整してもよい。一例として、下ウェハWの反り量が大きい場合には、下チャック231から増量したエアを下ウェハW2に吹き付ける一方で、下ウェハの反り量が小さい場合には、下チャック231から減量したエアを下ウェハW2に吹き付ける。これにより、接合装置1は、下ウェハW2の残留ストレスを一層適切に改善することができる。
【0122】
図16は、第1変形例に係る下チャック231Aを示す側面断面図である。図16に示すように、第1変形例に係る下チャック231Aは、下ウェハW2の凸反りの軸線に外力を付与する外力付与部340として、吸着面300と相対的に昇降可能なピン266を適用している点で、上記の下チャック231とは異なる。具体的には、外力付与部340は、第2外側領域B2のch5~ch8のそれぞれにピン266を備えると共に、各ピン266を独立して昇降させる昇降機構267を備える。
【0123】
制御装置90は、中央領域において下ウェハW2の中央部を吸着保持した状態で、凸反りの軸線の両外周部に対向する領域のピン266を上昇させて、吸着面300から遠ざかる方向の外力を凸反りの軸線の両外周部に付与する。この場合でも、外力付与部340は、下ウェハW2の残留ストレスの分布を改善することができる。しかも、複数のピン266を有する構成では、エアに比べて強い外力を付与することが可能となる。例えば、反り量が大きい下ウェハW2等でも、外力付与部340は、下ウェハW2の残留ストレスを安定して改善することが可能となる。
【0124】
図17は、第2変形例に係る下チャック231Bを示す側面断面図である。図17に示すように、第2変形例に係る下チャック231Bは、平坦状の吸着面400を有する点で、上記の下チャック231とは異なる。このような平坦状の吸着面400でも、上記の吸着面300と同様に、中央領域A、外側領域Bを有するように構成され、外側領域Bの適宜のゾーンからエアを吹き付け可能な外力付与部330を適用できる。そして、下チャック231Bは、外力付与部330により下ウェハW2の凸反りの軸線の外周部にエアを吹き付けることで、やはり下ウェハW2の残留ストレスを緩和することができる。なお、吸着面400を有する下チャック231Bについても、上記のピン266を昇降させる外力付与部340を適用してよい。
【0125】
今回開示された実施形態に係る基板処理装置および基板の載置方法は、すべての点において例示であって制限的なものではない。実施形態は、添付の請求の範囲およびその主旨を逸脱することなく、様々な形態で変形および改良が可能である。上記複数の実施形態に記載された事項は、矛盾しない範囲で他の構成も取り得ることができ、また、矛盾しない範囲で組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0126】
1 接合装置(基板処理装置)
231 下チャック(保持部)
300、400 吸着面
321 第1吸着圧力発生部
322 第2吸着圧力発生部
330、340 外力付与部
A 中央領域
B 外側領域
W1 上ウェハ
W2 下ウェハ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17