(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117047
(43)【公開日】2024-08-28
(54)【発明の名称】メンテナンス装置、液体を吐出する装置及びメンテナンス方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/165 20060101AFI20240821BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240821BHJP
【FI】
B41J2/165 101
B41J2/165 211
B41J2/01 451
B41J2/01 305
B41J2/165 503
B41J2/165 505
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089960
(22)【出願日】2023-05-31
(31)【優先権主張番号】P 2023022686
(32)【優先日】2023-02-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100090527
【弁理士】
【氏名又は名称】舘野 千惠子
(72)【発明者】
【氏名】根本 雄介
(72)【発明者】
【氏名】徳永 裕介
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA17
2C056EB23
2C056EB34
2C056EC22
2C056EC57
2C056FA13
2C056FA14
2C056JA10
2C056JA13
2C056JA16
(57)【要約】
【課題】キャップから大気開放経路側へのインク流入を防止できるメンテナンス装置を提供する。
【解決手段】液体吐出ヘッド10のノズル面に当接可能なキャップ12と、前記キャップに接続して前記キャップを吸引する吸引手段14と、第1経路28によって前記キャップと接続され、前記第1経路と大気との開閉を行う開閉手段16と、前記キャップと前記開閉手段とを接続する前記第1経路と、前記第1経路と大気とを連通させる開放ポート18と、を有することを特徴とするメンテナンス装置。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体吐出ヘッドのノズル面に当接可能なキャップと、
前記キャップに接続して前記キャップを吸引する吸引手段と、
第1経路によって前記キャップと接続され、前記第1経路と大気との開閉を行う開閉手段と、
前記キャップと前記開閉手段とを接続する前記第1経路と、
前記第1経路と大気とを連通させる開放ポートと、
を有する
ことを特徴とするメンテナンス装置。
【請求項2】
前記開放ポートは、大気と連通する開放孔が形成された開放孔形成部材を有し、
前記開放孔形成部材は、前記第1経路の支流である第2経路によって前記第1経路と接続されている
ことを特徴とする請求項1に記載のメンテナンス装置。
【請求項3】
前記開放孔形成部材は、非弾性部材である
ことを特徴とする請求項2に記載のメンテナンス装置。
【請求項4】
前記第1経路と前記第2経路の接続点は、前記第1経路において、前記キャップから前記第1経路を沿って前記開閉手段までの距離を1としたとき、前記開閉手段側であって前記開閉手段から1/2以内の位置である
ことを特徴とする請求項2に記載のメンテナンス装置。
【請求項5】
前記開放ポートは、前記第1経路に形成された孔である
ことを特徴とする請求項1に記載のメンテナンス装置。
【請求項6】
前記開放ポートは、前記第1経路において、前記キャップから前記第1経路を沿って前記開閉手段までの距離を1としたとき、前記開閉手段側であって前記開閉手段から1/2以内の箇所に設けられている
ことを特徴とする請求項5に記載のメンテナンス装置。
【請求項7】
前記吸引手段は、ダイアフラムポンプである
ことを特徴とする請求項1に記載のメンテナンス装置。
【請求項8】
前記開閉手段は、電磁弁である
ことを特徴とする請求項1に記載のメンテナンス装置。
【請求項9】
前記第1経路の一部は、当該第1経路と前記開閉手段とが接続する箇所よりも鉛直方向の上側に位置する
ことを特徴とする請求項1に記載のメンテナンス装置。
【請求項10】
前記第1経路の一部は、前記キャップが前記液体吐出ヘッドのノズル面に当接する位置よりも鉛直方向の上側に位置する
ことを特徴とする請求項1に記載のメンテナンス装置。
【請求項11】
前記第1経路は、該第1経路の支流である第2経路を有し、
前記第2経路は、前記第1経路とは反対側の端部に孔を有し、
前記開放ポートは、前記孔である
ことを特徴とする請求項1に記載のメンテナンス装置。
【請求項12】
前記液体吐出ヘッドは複数であり、
前記キャップ及び前記開放ポートを複数有し、
前記開放ポートは、複数の前記キャップに対応してそれぞれ設けられ、
前記吸引手段及び前記開閉手段は、複数の前記キャップに共通であり、前記吸引手段は、複数の前記キャップに接続して複数の前記キャップを吸引する
ことを特徴とする請求項1に記載のメンテナンス装置。
【請求項13】
前記キャップを封止可能なキャップ封止部材と、前記開閉手段及び前記開放ポートの間に設けられた中間開閉手段と、前記第1経路の圧力を測定する圧力測定手段と、を有し、
前記キャップ封止部材は、複数の前記キャップを封止可能であり、
前記中間開閉手段は、複数であり、一つの前記開放ポートに対して一つ設けられ、
前記キャップが前記キャップ封止部材で封止され、前記吸引手段による吸引が行われ、前記中間開閉手段の開閉が制御されることで、各々の前記キャップに対応する前記第1経路ごとに異常の有無を検出可能である
ことを特徴とする請求項12に記載のメンテナンス装置。
【請求項14】
前記キャップは、前記液体吐出ヘッドに当接するニップ部と、前記吸引手段と接続する吸引手段接続部と、前記ニップ部と前記吸引手段接続部との間に配置される液体吸収部材と、を有し、
前記キャップが前記液体吐出ヘッドに当接したときに、前記ニップ部と前記液体吸収部材に囲まれる第1の空間と、前記液体吸収部材と前記吸引手段接続部に囲まれる第2の空間とが形成され、
前記第1経路は、前記キャップと接続されるとともに、前記第1の空間と連通するように接続される
ことを特徴とする請求項1に記載のメンテナンス装置。
【請求項15】
前記第1経路の内部は、前記液体吐出ヘッドが吐出する液体がメニスカスを形成する濡れ性及び内径である
ことを特徴とする請求項1に記載のメンテナンス装置。
【請求項16】
液体吐出ヘッドと、
請求項1~15のいずれかに記載のメンテナンス装置と、を有する
ことを特徴とする液体を吐出する装置。
【請求項17】
前記液体吐出ヘッドは、ラインヘッド方式である
ことを特徴とする請求項16に記載の液体を吐出する装置。
【請求項18】
前記液体吐出ヘッドに対向するドラム状の搬送手段を有し、
前記液体吐出ヘッドは、前記搬送手段によって搬送される記録媒体に液体を吐出する
ことを特徴とする請求項16に記載の液体を吐出する装置。
【請求項19】
制御部を有し、
前記キャップが前記ノズル面に当接して吸引を行った後、前記ノズル面から離間するまでの動作を1回のクリーニング動作としたとき、
前記制御部は、1回のクリーニング動作において、前記吸引手段の稼働と停止を複数回繰り返す制御を行う
ことを特徴とする請求項16に記載の液体を吐出する装置。
【請求項20】
前記制御部は、1回のクリーニング動作において、前記開閉手段を閉じた状態で前記吸引手段の稼働と停止を複数回繰り返し、この後、前記開閉手段を開放する制御を行う
ことを特徴とする請求項19に記載の液体を吐出する装置。
【請求項21】
請求項1~15のいずれかに記載のメンテナンス装置が行うメンテナンス方法であって、
前記キャップを前記液体吐出ヘッドのノズル面に当接させ、前記開閉手段を閉じ、前記吸引手段を稼働させるクリーニング工程を含む
ことを特徴とするメンテナンス方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メンテナンス装置、液体を吐出する装置及びメンテナンス方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体吐出ヘッドを用いた液体を吐出する装置では、液体吐出ヘッドに対してメンテナンスを行うメンテナンス装置を用いることが知られている。メンテナンス装置は、例えば液体吐出ヘッドからインクを吸収ないし吸引し、吐出性を回復させる。
【0003】
メンテナンス装置としては、例えば、吸引キャップを液体吐出ヘッドのノズル面に当接させ、ポンプ等で吸引を行い、吸引キャップ内の圧力を負圧にしてメンテナンスを行うものがある。このような方法の場合、吸引を行った後、ノズル面から吸引キャップを離間させる際、吸引キャップ内の圧力変動によりノズル面に影響が生じる問題があった。例えば、吸引キャップ内の圧力変動により、ノズル孔のメニスカスが損なわれ、吐出不良が生じることがあった。このような不具合を解消するために、吸引キャップに接続する経路を大気と連通させてから吸引キャップを離間する技術が提案されている。
【0004】
しかし、吸引キャップに接続する経路において、大気と連通させる経路を大気開放経路と称したとき、従来技術では、大気開放経路にインクが流入する問題が生じていた。これに対して特許文献1では、大気開放経路に逆止弁を設けることが開示されている。逆止弁32は、大気開放バルブ29側への空気の逆流及び流体の流出を阻止する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、大気開放バルブ29と逆止弁32の間にインクが流入することを防止できるが、逆止弁の直前まではインクが流入する場合が生じる。流入したインクが固着すると、経路を閉塞してしまい、大気開放が阻害される場合が生じる。
【0006】
そこで本発明は、キャップから大気開放経路側へのインク流入を防止できるメンテナンス装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のメンテナンス装置は、液体吐出ヘッドのノズル面に当接可能なキャップと、前記キャップに接続して前記キャップを吸引する吸引手段と、第1経路によって前記キャップと接続され、前記第1経路と大気との開閉を行う開閉手段と、前記キャップと前記開閉手段とを接続する前記第1経路と、前記第1経路と大気とを連通させる開放ポートと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、キャップから大気開放経路側へのインク流入を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1A】本発明に係るメンテナンス装置及び液体を吐出する装置の一例を示す概略図であり、キャップがノズル面に当接していない状態の一例を示す図である。
【
図1B】本発明に係るメンテナンス装置及び液体を吐出する装置の一例を示す概略図であり、キャップがノズル面に当接して吸引を行っている状態の一例を示す図である。
【
図2】微小開放ポートの一例を示す断面概略図である。
【
図3】本発明に係るメンテナンス装置及び液体を吐出する装置の他の例を示す概略図である。
【
図4】本発明に係るメンテナンス装置及び液体を吐出する装置の他の例を示す概略図である。
【
図5】本発明に係るメンテナンス装置及び液体を吐出する装置の他の例を示す概略図である。
【
図6】本発明に係るメンテナンス装置及び液体を吐出する装置の他の例を示す概略図である。
【
図7】本発明に係る液体を吐出する装置の他の例を示す概略図である。
【
図8】制御部のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図9】本発明に含まれない比較例に係るメンテナンス装置を示す概略図である。
【
図10】比較例における大気開放経路へのインクの侵入を示す図(A)、インクの残留を示す図(B)、及び、大気開放弁へのインクの侵入を示す図(C)である。
【
図12】実施例及び比較例における吸引キャップ内の圧力変化の一例を示す図である。
【
図13A】液体吐出ヘッド及び吸引キャップが複数の場合の一例を示す図であり、吸引キャップが液体吐出ヘッドに当接していない場合の例を示す図である。
【
図13B】
図13Aにおいて、吸引キャップが液体吐出ヘッドに当接した場合の一例を示す図である。
【
図14A】液体吐出ヘッド及び吸引キャップが複数の場合の他の例を示す図であり、吸引キャップが液体吐出ヘッドに当接していない場合の例を示す図である。
【
図14B】
図14Aにおいて、吸引キャップが液体吐出ヘッドに当接した場合の一例を示す図である。
【
図15】吸引キャップの一例を示す断面概略図である。
【
図16A】
図14Aにおいて、キャップ封止部材が吸引キャップに当接し、中間開放弁の開閉を制御した場合の一例を示す図である。
【
図17A】第1経路の内部の液体がメニスカスを形成していない場合の一例を示す図(A)及び(B)である。
【
図17B】第1経路の内部の液体がメニスカスを形成している場合の一例を示す図(A)及び(B)である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係るメンテナンス装置、液体を吐出する装置及びメンテナンス方法について図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、修正、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【0011】
本発明のメンテナンス装置は、液体吐出ヘッドのノズル面に当接可能なキャップと、前記キャップに接続して前記キャップを吸引する吸引手段と、第1経路によって前記キャップと接続され、前記第1経路と大気との開閉を行う開閉手段と、前記キャップと前記開閉手段とを接続する前記第1経路と、前記第1経路と大気とを連通させる開放ポートと、
を有することを特徴とする。
【0012】
本発明の液体を吐出する装置は、液体吐出ヘッドと、本発明のメンテナンス装置とを有することを特徴とする。液体を吐出する装置は、画像形成装置、プリンタ、印刷装置などと称されてもよい。
【0013】
本発明のメンテナンス方法は、本発明のメンテナンス装置が行うメンテナンス方法であって、前記キャップを前記液体吐出ヘッドのノズル面に当接させ、前記開閉手段を閉じ、前記吸引手段を稼働させるクリーニング工程を含むことを特徴とする。
【0014】
(第1の実施形態)
本発明の一実施形態について説明する。
図1A及び
図1Bは、本実施形態のメンテナンス装置の一例を示す概略図である。本例のメンテナンス装置11は、液体吐出ヘッド10、吸引キャップ12、吸引ポンプ14、大気開放弁16、微小開放ポート18を有している。本例の液体を吐出する装置1は、液体吐出ヘッド10とメンテナンス装置11を有している。
図1Aは、吸引キャップ12が液体吐出ヘッド10のノズル面に当接していない状態の例を示す図である。
図1Bは、吸引キャップ12が液体吐出ヘッド10のノズル面に当接して吸引を行っている状態の例を示す図である。
【0015】
吸引キャップ12は、上記のキャップの一例であり、例えばキャップ部材13、キャップ部材13を保持するベース部材等を有する。キャップ部材13は、例えば弾性を有する部材にすることができる。キャップ部材13が弾性を有する部材である場合、吸引キャップ12が液体吐出ヘッド10に当接したときに、より密着性を確保することができる。
【0016】
吸引キャップ12は、吸引ポンプ14と第1液体経路21で接続されている。
吸引ポンプ14は、上記の吸引手段の一例である。吸引ポンプ14により、液体吐出ヘッド10のノズル面の液体が吸引され、第1液体経路21を通って矢印Aの方向に液体が流れる。吸引ポンプ14が吸引を行うことにより、吸引キャップ12内に負圧を発生させることができるため、吸引ポンプ14を負圧発生手段などと称してもよい。
【0017】
吸引ポンプ14は、第2液体経路22が接続されている。吸引ポンプ14により吸引された液体は、矢印Bの方向に流れ、第2液体経路22を通って廃液タンクに流れる。
【0018】
吸引手段としては、例えばダイアフラムポンプであることが好ましい。ダイアフラムポンプであることで、急激な圧力上昇が可能となるため、微小開放ポートの圧損失の影響を低減することができる。
【0019】
吸引キャップ12と大気開放弁16は、第1経路28により接続されている。
第1経路28は、大気開放経路などと称してもよい。
大気開放弁16は、上記の開閉手段の一例である。大気開放弁16は、第1経路28によって吸引キャップ12と接続され、第1経路28と大気との開閉を行う。
【0020】
開閉手段としては、例えば電磁弁であることが好ましい。電磁弁であることで、単独での大気開放が可能になる。電磁弁の動作としては、特に制限されるものではないが、例えば、電気的な制御により開閉が制御される。
【0021】
吸引キャップ12、吸引ポンプ14、大気開放弁16の稼働の一例について説明する。
例えば、大気開放弁16を閉じ、かつ吸引キャップ12が液体吐出ヘッド10のノズル面に当接した状態で吸引ポンプ14が吸引を行うと、吸引キャップ12と液体吐出ヘッド10のノズル面との間が負圧になる。このようにして、吸引キャップ12が吸引を行うことができる。
【0022】
次いで、吸引キャップ12を液体吐出ヘッド10のノズル面に当接させて吸引したまま、大気開放弁16を開く。これにより、吸引キャップ12と液体吐出ヘッド10のノズル面との間を大気圧に近い状態にしたまま、大気開放弁16から第1経路28を通って、矢印Cの方向に空気が流れる。このとき、吸引キャップ12内のインクを排出することができる。しかし、後述の比較例でも説明するように、従来技術では吸引ポンプ14を停止すると、第1経路28にインクが流入してしまう。
【0023】
本例のメンテナンス装置は、第1経路28と大気とを連通させる微小開放ポート18を有している。微小開放ポート18は、上記の開放ポートの一例である。
【0024】
微小開放ポート18が設けられていることにより、第1経路28内は常時大気と連通状態となる。これにより、吸引ポンプ14が停止しても、微小開放ポート18から空気が流入するため、常に
図1B中の矢印Cの方向に空気の流れが発生することになる。つまり、吸引ポンプ14が停止しても、第1経路28では、吸引キャップ12側に空気の流れが発生することになる。このため、吸引ポンプ14を停止した際に、吸引キャップ12側からインクが第1経路28側に流入することを防止できる。なお、本実施形態の作用効果については下記でも説明しており、また後述する比較例のところでも説明している。
【0025】
開放ポート18としては、適宜選択することができ、例えば、大気と連通する開放孔が形成された開放孔形成部材43を有し、開放孔形成部材43は、第1経路28の支流である第2経路29によって第1経路28と接続されている。このように、開放孔が形成された開放孔形成部材43を用いることで、開放ポート18を作製しやすくなる。また、例えば開放孔の大きさを変更する場合、開放孔形成部材43を変更することで対応できるため、設計変更に対応しやすくなる。
【0026】
図2は、微小開放ポート18の一例を示す断面概略図である。本例の微小開放ポート18は、開放孔形成部材43を有し、開放孔形成部材43には開放孔42が形成されている。また、開放孔形成部材43は、第2経路29に接続している。第2経路29は、例えばチューブ41により形成されている。開放孔42は、微小開放孔などと称してもよい。
【0027】
開放孔形成部材43としては、適宜選択することができ、例えば非弾性部材であることが好ましい。開放孔形成部材43が非弾性部材である場合、圧力変動によって開放孔42の孔径が変動することを抑制できる。開放孔形成部材43は弾性部材であってもよいが、この場合、圧力変動によって開放孔42の孔径が変動する場合がある。
【0028】
吸引ポンプ14の駆動中において、吸引ポンプ14が停止したとき、吸引キャップ12内が負圧状態のうちは開放孔42により空気が流入する。このため、常に
図1Bの矢印Cのように空気の流れが発生するので、吸引動作中は、吸引キャップ12側から第1経路28側にインクが流入することを防止できる。
【0029】
開放孔42の孔径は、適宜選択することができ、例えば、ポンプ能力、使用圧力等の使用条件により調整することが好ましい。微小開放孔の孔径が大きすぎると、吸引キャップ12がノズル面に当接して吸引したときの吸引キャップ12内の圧力が狙いの圧力になりにくくなる場合がある。開放孔42の孔径が小さすぎると、吸引ポンプ14を停止して大気開放した際に、インクの流入が発生する場合がある。そのため、開放孔42の孔径を適正な微小な孔径にすることが好ましく、この場合、吸引ポンプ14が駆動する際の圧力リークを微小にすることができ、吸引キャップ12の吸引状態に与える影響を低減できる。
【0030】
ポンプ能力と微小開放ポートの適用例を示す。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。このような数値範囲を満たす場合、上記の効果が得られやすくなり、例えば吸引キャップ12内の圧力を狙いの圧力にしやすく、インクの流入を抑制しやすくなるため好ましい。なお、開放孔42の長さは、
図2中、Lで示している。
【0031】
[ポンプ能力と開放孔の孔径との関係の一例]
吸引キャップ12内の吸引最大到達負圧 : -50~-70kPa
開放孔の孔径 : 0.05~0.2mm
開放孔の長さ : 2~4mm
【0032】
微小開放ポート18を設ける位置としては、適宜選択することができ、例えば開閉手段(大気開放弁16)の直前であることが好ましい。この場合、大気開放弁16にインクが流入することをより抑制することができる。
【0033】
直前とあるのは、例えば以下のようにすることが好ましい。第1経路28と第2経路29の接続点31は、第1経路28において、吸引キャップ12から第1経路28を沿って大気開放弁16までの距離を1としたとき、大気開放弁16側であって大気開放弁16から1/2以内の位置であることが好ましく、1/3以内の位置であることがより好ましい。
図1A及び
図1Bに示す例では、1/3以内の位置にしている。
【0034】
図3は、本実施形態のメンテナンス方法の一例を説明するための図である。
本発明のメンテナンス方法は、本発明のメンテナンス装置が行うメンテナンス方法であって、前記キャップを前記液体吐出ヘッドのノズル面に当接させ、前記開閉手段を閉じ、前記吸引手段を稼働させるクリーニング工程を含む。
【0035】
メンテナンスの一例を説明する。
吸引キャップ12を液体吐出ヘッド10のノズル面に当接させ、吸引ポンプ14を駆動させる。これにより、吸引キャップ12内が負圧となり、液体吐出ヘッド10からインクが吸引されて排出される。吸引キャップ12によって吸引された液体(例えばインク)は、図中の矢印Aの方向に、第1液体経路21を流れる。その後の流れは図示を省略しているが、吸引された液体は、第2液体経路22を通って廃液タンクに流れる。このように吸引している間、矢印Cの方向に、第1経路28を通って空気が流れる。
【0036】
次いで、吸引ポンプ14を停止させる。吸引ポンプ14を停止した後、液体吐出ヘッド10からのインク排出とともに、吸引キャップ12内の圧力が緩和していく。次いで、吸引キャップ12を液体吐出ヘッド10から離間させる直前に、大気開放弁16を開放する。これにより、吸引キャップ12内に流れ込む空気の量が上昇し、吸引キャップ12を液体吐出ヘッド10から離間させたときに生じる圧力変動を抑制できる。
【0037】
なお、この圧力変動はノズル面に影響を及ぼし、例えばメニスカスを損ねてしまう。吸引キャップ12を液体吐出ヘッド10から離間させる前に、大気開放弁16を開放することで、吸引キャップ内の圧力変動を抑制できる。
【0038】
大気開放弁16を開放した後、吸引キャップ12を液体吐出ヘッド10から離間させる。このようにして、1回のクリーニング動作が終了する。なお、特に制限されるものではないが、例えば、吸引キャップ12がノズル面に当接して吸引を行った後、ノズル面から離間するまでの動作を1回のクリーニング動作とする。
【0039】
本実施形態では、微小開放ポート18が設けられている。上記のクリーニング動作において、微小開放ポート18の作用例について説明する。
吸引キャップ12をノズル面に当接させて吸引ポンプ14で吸引する際、大気開放弁16は閉じた状態にする。ただし、後述の大気開放吸引も行うことがあるため、吸引ポンプ14が稼働する際には必ず大気開放弁16が閉じた状態になるとは限らない。
【0040】
吸引キャップ12をノズル面に当接させて吸引ポンプ14で吸引する際、第1経路28(大気開放経路)では矢印Cのように空気が流れる。これは、微小開放ポート18が設けられていない場合でも、このような空気の流れが生じる(後述の
図7でも図示している)。吸引キャップ12を吸引ポンプ14で吸引する際、吸引キャップ12に空気の流入が必要になるためである。
【0041】
吸引キャップ12をノズル面に当接させて吸引ポンプ14で吸引する際、第1経路28では空気が流れるものの、負圧になっている。本実施形態において、第1経路28は微小開放ポート18により大気と連通しているが、吸引ポンプ14で吸引する際、第1経路28は負圧になる。微小開放ポート18の構成(例えば開放孔の大きさ等)や吸引ポンプ14の能力等によって負圧の大きさは変わるが、本実施形態においても吸引中は、第1経路28内が負圧になる。
【0042】
このとき、吸引ポンプ14を停止させると、微小開放ポート18により、第1経路28内の負圧が大気圧に戻りやすくなる。そのため、吸引ポンプ14を停止させて大気開放弁16を開放したときに、微小開放ポート18が設けられていることで、第1経路28内の圧力が素早く大気圧に戻る。これにより、吸引ポンプ14の停止と大気開放弁16の開放を行った後、吸引キャップ12を離間させるときに、第1経路28内の圧力が大気圧になっているため、インクが第1経路28に流入することを防止できる。
【0043】
図4は、本実施形態のメンテナンス装置の他の例を示す図である。
本例のように、第1経路28の一部は、第1経路28と大気開放弁16とが接続する箇所よりも鉛直方向の上側に位置することが好ましい。図中、第1経路28と大気開放弁16とが接続する箇所の高さを破線Dで示している。
【0044】
このようにすることで、異常動作等により、液体吐出ヘッド10からインクが垂れて第1経路28内にインクが侵入したとしても、大気開放弁16側にインクが流入することを防止できる。異常動作等により第1経路28内にインクが侵入した場合、侵入したインクは、第1経路28における、大気開放弁16の挿入ポートの高さよりも高い部分を乗り越える必要がある。このため、第1経路28内にインクが侵入しても、大気開放弁16側にインクが流入することをより防止できる。
【0045】
また、本例の場合、液体吐出ヘッド10側から第1経路28内にインクが侵入しても大気開放弁16側にインクが流入することをより防止できるため、大気開放弁16や微小開放ポート18へのインク詰まりを抑制することができる。
【0046】
また本例のように、第1経路28の一部は、吸引キャップ12が液体吐出ヘッド10のノズル面に当接する位置よりも鉛直方向の上側に位置することが好ましい。図中、吸引キャップ12が液体吐出ヘッド10のノズル面に当接する位置を破線のEで示している。
【0047】
このようにすることで、上記の効果を更に高めることができる。異常動作等により第1経路28内にインクが侵入しても、大気開放弁16や微小開放ポート18へのインク詰まりを更に抑制することができる。
【0048】
なお、液体吐出ヘッド10のノズル面が水平方向に対して傾いている場合、吸引キャップ12が液体吐出ヘッド10のノズル面に当接する位置は、吸引キャップ12がノズル面に当接する箇所における最上地点にする。
【0049】
特に制限されるものではないが、第1経路28をチューブにより形成することで、上記の構成を満たしやすくなる。チューブとしては、例えば可撓性のある材料を用いることができる。
【0050】
次に、本実施形態の他の例について説明する。
図5は、本例のメンテナンス装置を説明する図である。本例における開放ポート18は、第1経路28に形成された孔である。このように、第1経路28に大気と連通する孔を設ける構成にすることにより、装置を小型化することができる。本例においても、開放ポート18により、第1経路28が大気と連通するため、第1経路28にインクが流入することを抑制できる。
【0051】
本例の場合も、孔の大きさは、例えばポンプ能力との関係を考慮して設定することが好ましい。例えば、上述した[ポンプ能力と開放孔の孔径との関係の一例]を考慮することが好ましい。
【0052】
第1経路28に形成された孔(開放ポート18)の位置は、適宜選択することができ、例えば開閉手段(大気開放弁16)の直前であることが好ましい。この場合、大気開放弁16にインクが流入することをより抑制することができる。
直前とあるのは、例えば以下のようにすることが好ましい。開放ポート18は、第1経路28において、吸引キャップ12から第1経路28を沿って大気開放弁16までの位置を1としたとき、大気開放弁16側であって大気開放弁16から1/2以内の箇所に設けられていることが好ましく、1/3以内の箇所に設けられていることがより好ましい。
【0053】
次に、本実施形態の他の例について説明する。
図6は、本例のメンテナンス装置を説明する図である。本例において、第1経路28は、該第1経路の支流である第2経路29を有し、第2経路29は、第1経路28とは反対側の端部に孔を有し、開放ポート18は、前記孔である。このように構成にすることにより、装置を小型化することができる。本例においても、開放ポート18により、第1経路28が大気と連通するため、第1経路28にインクが流入することを抑制できる。
【0054】
本例において、第2経路29は、例えばチューブにより形成される。そのため、本例における開放ポート18は、チューブにより形成されているともいえる。チューブの端部の孔により開放ポート18を構成することにより、装置の小型化や製造の容易性が得られる。
【0055】
本発明の液体を吐出する装置は、液体吐出ヘッドと、本発明のメンテナンス装置と、を有することを特徴とする。本発明の液体を吐出する装置は、例えば上記の
図1A及び
図1B等に図示されているともいえる。本発明のメンテナンス装置では、大気開放経路内にインクの流入を防止できるため、本発明の液体を吐出する装置では、メンテナンスを長期にわたって良好に行うことができ、良好な画像を長期にわたって形成することができる。
【0056】
液体吐出ヘッドとしては、適宜選択することができる。例えば、シリアルヘッド方式であってもよいし、ラインヘッド方式であってもよい。液体吐出ヘッドとしては、ラインヘッド方式であることが好ましい。ラインヘッド方式である場合、例えば吸引キャップ12の吸引を複数回行うなど、クリーニング回数が増加しても確実なクリーニングが可能になる。
【0057】
ラインヘッド方式の液体吐出ヘッドにする場合、その構成は、適宜選択することができる。例えば、液体吐出ヘッドのノズル面におけるノズル列を複数にしてもよいし、ノズル列をずらして千鳥配列にしてもよい。また、フルラインの構成にしてもよい。
【0058】
また、本発明の液体を吐出する装置は、ヘッドユニットを有する構成にしてもよい。ヘッドユニットには、例えば、搬送方向上流側から、4色分のフルライン型ヘッドアレイを配置することができる。これらのヘッドアレイからは、例えば、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの液体が吐出される。色の種類及び数はこれに限るものではない。ヘッドアレイは、例えば、液体吐出ヘッド10をベース部材上に千鳥状に並べて配置してもよく、これに限られない。
【0059】
液体吐出ヘッド10は、液体を吐出するものであればその構成に制限はなく、あらゆる構成のものを採用できる。必要に応じて、白色、金色、銀色等の特殊なインクを吐出する液体吐出ヘッドを設けたり、表面コート液などの画像を構成しない液体を吐出する液体吐出ヘッドを設けたりしてもよい。
【0060】
液体吐出ヘッド10により吐出された液体が着弾する記録媒体としては、特に制限されるものではなく、適宜選択することができる。また、記録媒体を搬送する手段としては、特に制限されるものではなく、適宜選択することができる。記録媒体は、例えばドラム状の搬送手段によって搬送してもよい。
【0061】
液体を吐出する装置の一例としては、液体吐出ヘッドに対向するドラム状の搬送手段を有し、前記液体吐出ヘッドは、前記搬送手段によって搬送される記録媒体に液体を吐出する。このようにドラム状の搬送手段を用いた場合、液体吐出ヘッドのノズル面は、水平面に対して傾くが、本発明のメンテナンス装置は、液体吐出ヘッドのノズル面が水平面に対して傾いていてもクリーニングが可能となる。
【0062】
図7は、本発明の液体を吐出する装置の他の例を示す概略図である。ここではメンテナンス装置の図示を省略している。
図示するように、本例の液体を吐出する装置1では、液体吐出ヘッド10に対向するドラム状の搬送手段51が設けられており、液体吐出ヘッド10は、ドラム状の搬送手段51によって搬送される記録媒体52に対して液体を吐出する。本例のように、液体吐出ヘッド10のノズル面が水平面に対して傾いていても、吸引キャップ12がノズル面に当接してクリーニングを行うことができる。
【0063】
本発明では、傾斜配置されている液体吐出ヘッド10の吸引において、吸引キャップ12内のインクを排出させてから吸引キャップ12を離間させることで、吸引キャップ12内からインクがこぼれ落ちる現象を防止できる。
【0064】
なお、図示する例においても液体吐出ヘッド10としては、適宜選択することができる。例えば液体吐出ヘッド10が複数であってもよいし、ヘッドユニットを有する構成にしてもよい。
【0065】
ドラム状の搬送手段51としては、例えば用紙担持ドラムを用いることができる。また、本例の液体を吐出する装置1は、受け取り銅54、受け渡し銅55を有していてもよい。受け取り銅54は、給紙部から搬送されてきた記録媒体を用紙担持ドラムに搬送する。受け渡し銅55は、用紙担持ドラムから搬送されてきた記録媒体を搬送する。必要に応じて、加熱や乾燥などを行ってもよい。
【0066】
本実施形態のメンテナンス装置が行うメンテナンスの動作は、適宜変更することができる。メンテナンス装置の制御は、例えば液体を吐出する装置が有する制御部によって行う。
【0067】
制御部100は、例えば液体を吐出する装置1全体の動作を制御する。
図1A及び
図1Bでは、制御部100を図示しているが、制御部100は、装置の内部又は外部におけるどの位置に設置されてもよい。
図1A及び
図1B以外の図では、制御部100の図示を省略している。
【0068】
図8は、制御部100のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。制御部100は、CPU(Central Processing Unit)101と、ROM(Read Only Memory)102と、RAM(Random Access Memory)103と、HDD(Hard Disk Drive)/SSD(Solid State Drive)104と、I/F(Interface)105と、を備える。これらは、システムバスBを介して相互に電気的に接続しており、また液体吐出ヘッド10、メンテナンス装置11等に対し、システムバスBを介してデータ及び信号を送受可能に接続している。
【0069】
なお、図中、液体吐出ヘッド10として図示しているが、液体吐出ヘッド10を含めた液体吐出部としてもよい。
【0070】
CPU101は、RAM103を作業領域として使用し、ROM102に格納されているプログラムを実行する。HDD/SSD104は、記憶部として使用され、予め設定された設定値を格納している。HDD/SSD104に格納されている情報は、CPU101が読み出しプログラム実行時に使用することもある。I/F105は、例えば液体を吐出する装置1と外部PC(Personal Computer)110とを通信可能にするインターフェースである。
【0071】
制御部100は、メンテナンス装置11を制御する。メンテナンス装置11の制御としては、例えば、吸引キャップ12、吸引ポンプ14、大気開放弁16を制御する。特に制限されるものではないが、例えば、吸引キャップ12の当接や離間、吸引ポンプ14の駆動や停止、大気開放弁16の開放や閉鎖を制御する。
【0072】
制御部100によって制御されて行うメンテナンスの動作としては、適宜選択することができる。例えば、吸引キャップ12がノズル面に当接して吸引を行った後、ノズル面から離間するまでの動作を1回のクリーニング動作としたとき、制御部100は、1回のクリーニング動作において、吸引ポンプ14の稼働と停止を複数回繰り返す制御を行うことが好ましい。このように複数回繰り返すことで、微小開放ポート18が設けられている場合においても、微小開放ポート18が設けられていない場合と同様の吸引量にすることができる。
【0073】
また制御部100は、上記の制御を行う際、1回のクリーニング動作において、大気開放弁16を閉じた状態で吸引ポンプ14の稼働と停止を複数回繰り返し、複数回繰り返した後、大気開放弁16を開放する制御を行うことが好ましい。このようにすることで、大気開放弁16を開放したときにインクが第1経路28に流入することをより防止しやすくなる。
【0074】
次に、本発明に含まれない比較例も用いて更に本実施形態を説明する。
図9は、本比較例のメンテナンス装置の概略図である。本比較例のメンテナンス装置は、吸引キャップ12、吸引ポンプ14、大気開放弁16を有しているが、微小開放ポート18は有していない。
【0075】
本比較例においても、吸引キャップ12を液体吐出ヘッド10のノズル面に当接させ、大気開放弁16を閉じた状態で吸引ポンプ14を駆動させることで、吸引キャップ12が吸引を行う。吸引キャップ12を液体吐出ヘッド10のノズル面に当接させて吸引したまま、大気開放弁16を開く。これにより、吸引キャップ12と液体吐出ヘッド10のノズル面との間を大気圧に近い状態にしたまま、大気開放弁16から第1経路28を通って、矢印Cの方向に空気が流れる。これにより、吸引したインクが、矢印A、矢印Bに沿って流れ、廃液タンクへと送られる。
【0076】
本比較例において、吸引中、吸引ポンプ14が駆動し、吸引キャップ12内の圧力や第1経路28内の圧力が負圧である間は、第1経路28側にインクが侵入しない。しかし、本比較例の場合、吸引ポンプ14が停止すると、第1経路28側にインクが侵入してしまい、不具合が生じてしまう。
【0077】
図10は、本比較例の問題点を説明するための図である。図中の(A)~(C)は時系列に沿った図にしている。
図10(A)は、吸引キャップ12が液体吐出ヘッド10のノズル面に当接した状態で吸引ポンプ14が稼働した後、吸引ポンプ14を停止したときの状態を模式的に示した図である。図示するように、吸引ポンプ14が停止して、第1経路28内の空間が負圧から大気圧に戻ると、第1経路28内に吸引キャップ12側からインク30の流れが発生する。
【0078】
吸引を停止したとき、経路内が負圧になって引き伸ばされた(膨張した)空気が元の体積に戻る。このとき、元の体積に戻る分の体積を補完する必要がある。閉じた経路内の空気の量は変わらないため、液体吐出ヘッド10から排出されたインクで経路内の体積が補完されることとなる。このため、吸引を停止すると、第1経路28側にインクが流入してしまう。従って、吸引を停止したとき、吸引ポンプ14側から空気が流れるのではなく、経路内(例えば吸引キャップ12内)のインクと第1経路28内の負圧の作用により、液体吐出ヘッド10から排出されるインクが第1経路28へと流れることになる。
【0079】
このように流入したインク30は、流入したインクの量によって第1経路28内に残ってしまう場合がある。
図10(B)は、この状態を模式的に示した図である。
なお、大気開放弁16を開放した状態で吸引ポンプ14を駆動させることで、第1経路28内のインク30を排出できる場合があるが、流入したインクの量によっては、排出しきれず、第1経路28内に残ってしまう。大気開放弁16を開放した状態で吸引ポンプ14を駆動させることを、大気開放吸引とも称することがある。
【0080】
第1経路28内に残ったインク30は、時間経過とともに凝集する場合がある。
図11は、第1経路28内に残ったインク30の時間経過の一例を模式的に示した図である。上図のように、本比較例では、大気開放吸引を行った後、インク30が第1経路28内に残る場合がある。この状態で時間が経過すると、下図のように、インク同士がつながって凝集する場合がある。
【0081】
第1経路28内で凝集したインクは、大気開放吸引を行っても排出されにくい。そのため、メンテナンス動作を繰り返すと、最終的には大気開放弁16にまでインクが到達してしまう。大気開放弁16にインクが到達すると、弁動作を阻害する問題が生じる。
【0082】
図10(C)は、本比較例において、大気開放弁16にまでインクが到達した場合の一例を説明する図である。大気開放弁16にインクが到達して弁動作を阻害する場合としては、インクが凝集して固体の状態で大気開放弁16に到達する場合の他、インクが液体の状態で大気開放弁16に到達する場合も含まれる。
【0083】
第1経路28に残留したインクは、次の吸引後に大気開放弁16まで押し戻され、大気開放弁16の中に液体状のインクが侵入することがある。この状態も
図10(C)では示している。大気開放弁16の中に液体状のインクが侵入した状態でインクが増粘すると、例えばプランジャが摺動せず、弁が機能しない問題が生じる。上記の問題は、例えば、回復性を上げるために圧力を上げた場合の他、吸引時間を延長した場合、インクの粘度が高い場合に顕著になる傾向がある。
【0084】
図12は、吸引キャップ12内の圧力の時間変化について、実施例と比較例を模式的に説明するための図である。実線は実施例(例えば
図1A)を示し、破線は比較例(例えば
図9)を示す。
【0085】
吸引を開始すると、液体吐出ヘッド10のノズル面の液体が吸引され、液体が排出される(
図1Bの矢印A)。
図12に示すように、a地点で吸引を開始することで、吸引キャップ12内の圧力が低下し、吸引キャップ12内の圧力が負圧になる。吸引により第1経路28内の空気の密度が低下し、第1経路28内の空気が膨潤している状態となる。
【0086】
吸引を停止すると、吸引を停止してから吸引キャップ12内の圧力が大気圧に戻る過程で、第1経路28内の膨張した空気が元の体積に戻ることとなる。このとき、実施例では、微小開放ポート18から空気が流れるため、吸引キャップ12側から第1経路28側への空気の流れにならない。そのため、第1経路28にインクが流入することを防止できる。一方、比較例では、第1経路28内の膨張した空気が元の体積に戻る際、液体吐出ヘッド10から排出されたインクで体積が補完されるため、第1経路28にインクが流入する。
【0087】
微小開放ポート18の有無による吸引キャップ12内の圧力変化の違いが
図12に示されている。地点bで吸引を停止すると、実施例では微小開放ポート18が設けられているため、吸引キャップ12内の圧力が大気圧に戻りやすくなる。一方、比較例では微小開放ポート18が設けられていないため、吸引キャップ12内の圧力が大気圧に戻る速度は、実施例よりも遅くなる。比較例では、地点bから第1経路28内へのインクの流入が始まり、大気開放弁16が開放されるまで、すなわち地点cまでインクの流入が続いてしまう。
【0088】
実施例で用いられる微小開放ポート18は、孔径の小さい穴であり、流路抵抗が高い。そのため、
図12に示すように、吸引停止後、大気圧に戻る速度は比較例よりも速いものの、徐々に大気圧へと緩和するといった変化になる。
【0089】
なお、
図12に示す例では、吸引を停止してから大気開放弁16を開放するまでに間隔が設けられている。すなわち、地点bと地点cとの間に時間の間隔が設けられている。このようにしている理由は、例えば以下である。吸引中は液体吐出ヘッド10内部にも負圧が発生しているため、吸引キャップ12内の圧力が緩和する前に大気開放を行うと、液体吐出ヘッド10側にインクが戻る場合がある。この場合、インクだけでなく、気泡も巻き込むと吐出不良の原因となるため、これを防止する。
【0090】
また、比較例において、吸引を停止する前に大気開放弁16を開放するような制御を行ったとしても、第1経路28へのインクの流入は防げないと考えられる。大気開放弁16の経路抵抗は、大気開放吸引を行うために、微小開放ポート18の経路抵抗と異なっていることから、吸引を停止する前に大気開放弁16を開放したとしても、微小開放ポート18を設けた実施例のような効果が得られない。
【0091】
(第2の実施形態)
次に、本発明に係る他の実施形態について説明する。
上記実施形態では、吸引キャップ12が一つの場合の例を用いて本発明を説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、吸引キャップ12が複数であってもよい。本実施径形態では、液体吐出ヘッドが複数であり、吸引キャップ(上記キャップ)が複数の場合について説明する。
【0092】
図13A及び
図13Bは、本実施形態のメンテナンス装置の一例を説明するための図である。
図13Aは、キャップが液体吐出ヘッドに当接していない場合の例を示す図であり、
図13Bは、キャップが液体吐出ヘッドに当接している場合の例を示す図である。
【0093】
図中、液体吐出ヘッド10a、10bが図示されている。本例のメンテナンス装置は、液体吐出ヘッド10a、10bに当接可能な吸引キャップ12a、12bを有している。液体吐出ヘッドのそれぞれに対応する吸引キャップを有することにより、液体吐出ヘッドが複数である場合に、吸引キャップを使い回す必要がなく、液体吐出ヘッドに他の液体が付着することを防止できる。
【0094】
なお、液体吐出ヘッド10a、10bを区別なく説明する場合、液体吐出ヘッド10などと称し、吸引キャップ12a、12bを区別なく説明する場合、吸引キャップ12などと称する。また、液体吐出ヘッド10の数は、2つより多くてもよい。
【0095】
本実施形態で示す例では、大気開放弁16と吸引ポンプ14は、吸引キャップ12aと吸引キャップ12bとで共通にしている。
図13Bに示すように、吸引キャップ12a、12bを液体吐出ヘッド10a、10bに当接させて吸引ポンプ14により吸引を行うと、吸引キャップ12a、12bともに吸引を行うことができる。これにより、吸引ポンプ14を稼働させることで、液体吐出ヘッド10a、10bのノズル面のクリーニング等のメンテナンスを行うことができる。
【0096】
また、吸引ポンプ14を共通にすることで、吸引ポンプ14を増やす必要がないため、コストの増加を抑制できる。
【0097】
図13Bに示すように、大気開放弁16を閉じて吸引ポンプ14により吸引を行うと、液体吐出ヘッド10a側の液体は、吸引キャップ12a側の第1液体経路21aを通り、液体吐出ヘッド10b側の液体は、吸引キャップ12b側の第1液体経路21bを通る。第1液体経路21aと第1液体経路21bを通った液体は、第1液体経路21cを共通して通り、廃液タンク63に流れる。矢印A1、A2は上記実施形態の矢印Aに相当し、矢印A1は吸引キャップ12a側の流れであり、矢印A2は吸引キャップ12b側の流れである。
【0098】
図13Bに示すように、大気開放弁16を閉じて吸引ポンプ14により吸引を行うと、第1経路28において、上記実施形態と同様に矢印Cの方向に空気が流れる。矢印C1、C2は上記実施形態の矢印Cに相当し、矢印C1は吸引キャップ12a側の流れであり、矢印C2は吸引キャップ12b側の流れである。
【0099】
本実施形態においても、微小開放ポート18を有しているため、吸引キャップ12a、12b側からインクが第1経路28a、28b側に流入することを防止できる。第1経路28aは、吸引キャップ12a側の第1経路28であり、第1経路28bは、吸引キャップ12b側の第1経路28である。本例では、第1経路28aと第1経路28bが合流した後の第1経路28を、第1経路28cとしている。また、第1経路28cと第2経路29の接続点31が図示されている。
【0100】
本実施形態で示す例において、微小開放ポート18は、吸引キャップ12aと吸引キャップ12bとで共通にしている。本例のように、複数の吸引キャップ12で微小開放ポート18を共通させることで、装置構成が簡易になるという利点がある。一方、第1経路28aと第1経路28bの長さのばらつきが生じ、第1経路28aと第1経路28bに抵抗差がある場合、複数の吸引キャップ12間で吸引力にばらつきが生じ、吸引キャップ12側からインクが第1経路28に流入する場合がある。例えば、図中、矢印Dは、吸引キャップ12b側からインクが第1経路28bに流入することを模式的に示している。
【0101】
これに対して、下記の第3の実施形態のようにすることで、吸引キャップ12が複数である場合にもインクが第1経路28に流入することを更に抑制しやすくなる。
【0102】
(第3の実施形態)
次に、本発明に係る他の実施形態について説明する。
上記第2の実施形態では、複数の吸引キャップ12間で微小開放ポート18を共通にしていたが、本実施形態では、複数の吸引キャップ12のそれぞれに微小開放ポート18を設ける。これにより、吸引キャップ12が複数である場合にも、インクが第1経路28に流入することをより抑制できる。
【0103】
本実施形態は、前記液体吐出ヘッドは複数であり、前記キャップ及び前記開放ポートを複数有し、前記開放ポートは、複数の前記キャップに対応してそれぞれ設けられ、前記吸引手段及び前記開閉手段は、複数の前記キャップに共通であり、前記吸引手段は、複数の前記キャップに接続して複数の前記キャップを吸引することを特徴とする。
【0104】
本実施形態では、複数の吸引キャップ12のそれぞれに微小開放ポート18を設けることにより、吸引キャップ12が複数である場合にも、インクが第1経路28に流入することをより抑制できる。例えば第1経路28の長さの違いなどにより、複数の吸引キャップ12間で抵抗差が生じる可能性がある場合にも、インクが第1経路28に流入することを抑制できる。
【0105】
図14A及び
図14Bは、本実施形態のメンテナンス装置の一例を説明するための図である。
図14Aは、キャップが液体吐出ヘッドに当接していない場合の例を示す図であり、
図14Bは、キャップが液体吐出ヘッドに当接している場合の例を示す図である。
【0106】
図示するように、本実施形態における微小開放ポート18は、複数のキャップ(吸引キャップ12)に対応してそれぞれ設けられている。例えば、吸引キャップ12aに対応して微小開放ポート18aが設けられ、吸引キャップ12bに対応して微小開放ポート18bが設けられている。また、吸引ポンプ14及び大気開放弁16は、複数の吸引キャップ12に共通であり、吸引ポンプ14は、複数の吸引キャップ12に接続して複数の吸引キャップ12を吸引する。
【0107】
図14Bに示すように、吸引ポンプ14により吸引を行うと、吸引キャップ12a側では矢印C3の空気の流れが生じ、吸引キャップ12b側では矢印C4の空気の流れが生じる。矢印C3、C4は、上記第1の実施形態における矢印Cに相当する。吸引キャップ12a、12bに対して微小開放ポート18a、18bをそれぞれ設けることで、吸引キャップ12a、12bの経路に抵抗差が生じることを防止できる。
【0108】
本実施形態では、複数の吸引キャップ12を共通の吸引ポンプ14により吸引した場合でも、それぞれの吸引キャップ12において、上記第1の実施形態の矢印Cのような空気の流れを形成できる。このため、例えば特定の吸引キャップ12側からインクが第1経路28に侵入することを防止できる。
【0109】
(第4の実施形態)
次に、本発明に係る他の実施形態について説明する。
本実施形態では、吸引キャップ12の好ましい形態について説明する。
【0110】
本実施形態において、前記キャップは、前記液体吐出ヘッドに当接するニップ部と、前記吸引手段と接続する吸引手段接続部と、前記ニップ部と前記吸引手段接続部との間に配置される液体吸収部材と、を有する。また本実施形態では、前記キャップが前記液体吐出ヘッドに当接したときに、前記ニップ部と前記液体吸収部材に囲まれる第1の空間と、前記液体吸収部材と前記吸引手段接続部に囲まれる第2の空間とが形成される。また本実施形態では、前記第1経路は、前記キャップと接続されるとともに、前記第1の空間と連通するように接続される。
【0111】
図15は、本実施形態における吸引キャップ12の一例を説明するための断面概略図であり、吸引キャップ12が液体吐出ヘッド10に当接している状態を示す図である。本実施形態における吸引キャップ12は、ニップ部66、吸引手段接続部68、液体吸収部材67を有している。
【0112】
ニップ部66は、液体吐出ヘッド10に当接する。ニップ部66は、例えば上記第1の実施形態で説明したキャップ部材13であり、例えば弾性を有する部材である。
吸引手段接続部68は、吸引ポンプ14と接続する部分であり、例えば第1液体経路21と接続する。
【0113】
液体吸収部材67は、ニップ部66と吸引手段接続部68との間に配置される。液体吸収部材67は、液体吐出ヘッド10が吐出する液体を吸収する。図中の矢印Eに示すように、吸引キャップ12を液体吐出ヘッド10に当接させて、吸引ポンプ14で吸引したとき、空気は、液体吸収部材67を通って第1経路28から第1液体経路21に流れる。そのため、液体吸収部材67を配置しても吸引ポンプ14により吸引できる。
液体吸収部材67としては、例えば、連泡スポンジ、焼結多孔質体等を用いることができる。
【0114】
ニップ部66と吸引手段接続部68との間に液体吸収部材67を配置することにより、吸引したときに、液体が飛び散る等によって吸引キャップ12が液体で汚れることを抑制できる。
【0115】
また図示するように、吸引キャップ12が液体吐出ヘッド10に当接したときに、ニップ部66と液体吸収部材67に囲まれる第1の空間71と、液体吸収部材67と吸引手段接続部68に囲まれる第2の空間72とが形成される。また図示するように、第1経路28は、吸引キャップ12と接続されるとともに、第1の空間71と連通するように接続される。例えば、液体吸収部材67に貫通孔を設け、貫通孔に第1経路28を挿通させる。第1経路28は、第1の空間71における第1経路接続部69で第1の空間71と接続する。
【0116】
第1経路28が第1の空間71と連通するように接続されることで、吸引を行った際、第1経路28は、空気が流れる方向の上流側で吸引キャップ12と接続される。このため、吸引を停止したときに、インクが第1経路28に侵入することをより抑制しやすくなる。
【0117】
なお、
図13A、
図13B、
図14A、
図14Bに図示される吸引キャップ12は、本実施形態の吸引キャップ12として図示している。上記第1の実施形態~第3の実施形態において、本実施形態の吸引キャップ12を用いることが好ましいが、本発明は本実施形態に制限されるものではない。
【0118】
(第5の実施形態)
次に、本発明に係る他の実施形態について説明する。
本実施形態では、複数の液体吐出ヘッド及び複数の吸引キャップを用いたときに、インクが第1経路28に侵入して固着したかどうかの検出を行うことができる。また、本実施形態では、インクが第1経路28に侵入して固着したかどうかの検出を、複数の吸引キャップ12に対応する経路ごとに行うことができる。そのため、インクの固着が生じた第1経路28を特定でき、メンテナンス装置の保守、修繕等を行いやすくなる。
【0119】
本実施形態のメンテナンス装置は、以下の特徴を有する。
前記キャップを封止可能なキャップ封止部材と、前記開閉手段及び前記開放ポートの間に設けられた中間開閉手段と、前記第1経路の圧力を測定する圧力測定手段と、を有する。また、本実施形態における前記キャップ封止部材は、複数の前記キャップを封止可能であり、前記中間開閉手段は、複数であり、一つの前記開放ポートに対して一つ設けられる。また、本実施形態では、前記キャップが前記キャップ封止部材で封止され、前記吸引手段による吸引が行われ、前記中間開閉手段の開閉が制御されることで、各々の前記キャップに対応する前記第1経路ごとに異常の有無を検出可能である。
【0120】
まず本実施形態について、
図14A、
図14Bを用いて説明する。本実施形態のメンテナンス装置は、キャップ封止部材60、中間開放弁65(中間開閉手段)、圧力センサ61(圧力測定手段)を有している。
【0121】
キャップ封止部材60は、複数の吸引キャップ12を封止可能である。キャップ封止部材60の配置は、特に制限されるものではなく、適宜選択することができる。
図14A、
図14Bでは、液体吐出ヘッド10を支持する部材と、キャップ封止部材60を支持する部材を別々にしているが、これに制限されず、液体吐出ヘッド10を支持する部材と、キャップ封止部材60を支持する部材を同じにしてもよい。
【0122】
キャップ封止部材60は、複数の吸引キャップ12を同時に封止可能である。1つのキャップ封止部材60が複数の吸引キャップ12を同時に封止してもよいし、吸引キャップ12ごとにキャップ封止部材60をそれぞれ設けてもよい。キャップ封止部材60の封止は、任意の接離手段により行うことができる。キャップ封止部材60が吸引キャップ12側に移動してもよいし、吸引キャップ12がキャップ封止部材60側に移動してもよい。
【0123】
中間開放弁65は、中間開放手段の一例であり、経路の開閉を行うことができる。中間開放弁65は、複数の吸引キャップ12に対応するようにそれぞれ設けられており、吸引キャップ12a、12bに対応して中間開放弁65a、65bが設けられている。中間開放弁65a、65bを区別なく説明する場合、中間開放弁65などとも称する。
【0124】
中間開放弁65は、大気開放弁16(開閉手段)と微小開放ポート18の間に設けられている。図示するように、大気開放弁16と微小開放ポート18aの間に中間開放弁65aが設けられており、大気開放弁16と微小開放ポート18bの間に中間開放弁65bが設けられている。
【0125】
中間開放弁65が閉じられると、大気開放弁16から吸引キャップ12への経路が遮断される。例えば、中間開放弁65aが閉じられると、大気開放弁16側と吸引キャップ12a側との経路が遮断される。同様に、中間開放弁65bが閉じられると、大気開放弁16側と吸引キャップ12b側との経路が遮断される。後述の
図16A、
図16Bでも説明しているが、中間開放弁65を複数の吸引キャップ12に対応するようにそれぞれ設けることで、吸引キャップ12に対応する第1経路28ごとにインク固着が生じているか検出することができる。
【0126】
例えば、吸引キャップ12aに対応する第1経路28aにインク固着が生じているか検出する場合、キャップ封止部材60により吸引キャップ12を封止し、大気開放弁16を閉じて吸引ポンプ14で吸引し、中間開放弁65a以外の中間開放弁65を閉じる。つまり、中間開放弁65のうち、中間開放弁65aのみを開放する。第1経路28aにインク固着が生じていない場合、第1経路28aが吸引ポンプ14に吸引されて、圧力センサ61が負圧を検出する。圧力センサ61が負圧を検出した場合、第1経路28aにインク固着が生じていないと判定できる。
【0127】
一方、第1経路28aにインク固着が生じて、第1経路28aが固着したインクにより塞がれている場合、固着したインクに阻害されて、吸引ポンプ14の吸引による負圧が圧力センサ61に届かない。そのため、圧力センサ61が負圧を検出せず、第1経路28aにインク固着が生じていると判定できる。なお、圧力センサ61が圧力の変化を検出しない場合も、第1経路28aにインク固着が生じていると判定できる。
【0128】
また、上記の他にも例えば、正常時(出荷時など)より到達圧が一定以上低い場合、到達圧が変動しない場合、一定の圧力になるまでの時間が長い場合、圧力が急激に変化する場合などを異常と判定するようにしてもよい。このように、中間開放弁65の開閉を制御することで、各々の吸引キャップ12に対応する第1経路28ごとに圧力が正常であるか、異常が生じていないか、インク固着が生じていないかを検出することができる。
【0129】
中間開放弁65は、大気開放弁16と同様に、例えば電磁弁を用いることができる。中間開放弁65の開閉は、例えば制御部100により行うことができる。また、中間開放弁65a、65bのそれぞれを個別に開閉することができる。
【0130】
圧力センサ61は、第1経路28の圧力を測定する。圧力センサ61としては、特に制限されるものではなく、公知の圧力測定手段を用いることができる。
【0131】
図16A、
図16Bは、本実施形態を更に説明するための図であり、
図14Aに示す例において、キャップ封止部材60が吸引キャップ12を封止した状態を示す図である。
図16A、
図16Bでは、液体吐出ヘッド10の図示を省略している。
【0132】
図16Aに示すように、キャップ封止部材60は、吸引キャップ12aと吸引キャップ12bを同時に封止可能である。
図16Aに示す例は、大気開放弁16を閉じ、更に、吸引キャップ12b及び微小開放ポート18bに対応する中間開放弁65bを閉じた場合の例である。この場合、大気開放弁16と圧力センサ61側から吸引キャップ12b側への経路が遮断される。
【0133】
この状態で吸引ポンプ14により吸引を行うと、吸引キャップ12aは、中間開放弁65aが開放されているため、矢印C3の流れとなる。一方、吸引キャップ12bでは、中間開放弁65bが閉じられているため、矢印C4’の流れとなる。仮に、圧力センサ61に経路が接続しているC3の経路内でインクが固着している場合、経路の吸引が十分に行われず、圧力の変化が検出されないことになる。このため、C3の経路内でインク固着が生じているかどうかを判定することができる。
【0134】
次に、
図16Bのように大気開放弁16を開いた状態で吸引ポンプ14により吸引を行うと、吸引キャップ12aに対応する経路は、中間開放弁65a及び大気開放弁16が開放されているため、矢印C5の流れとなる。仮に、C3の経路とC5の経路の差分である大気開放弁16側の経路(中間開放弁65aと大気開放弁16の間の経路)にインク固着が生じている場合、大気開放がされないことになる。このとき、圧力センサ61では、通常の吸引時と近い値の負圧が検出される。このようにして、中間開放弁65と大気開放弁16との間の経路においてもインク固着が生じているかどうかを判定することができる。
【0135】
同様に、その他の中間開放弁65の開閉を切り替えることで、その他の吸引キャップ12に対応する経路においても、インク固着が生じているかどうかを判定することができる。このため、中間開放弁65の開閉を切り替えることで、インク固着が生じている経路を特定することも可能である。
【0136】
圧力センサ62は、吸引ポンプ14よりも下流側(廃液タンク63側)に設けられている。圧力センサ62は、吸引ポンプ14よりも下流側の経路でインク固着が生じているかどうかの検出に用いることができる。
【0137】
本実施形態では、吸引キャップ12がキャップ封止部材60で封止され、中間開放弁65の開閉が制御され、吸引キャップ12ごとに第1経路28の部分の圧力が正常であるか、異常が生じていないか検出することができる。そのため、本実施形態によれば、第1経路28にインクが侵入して経路が固着した場合にも、各吸引キャップ12の中間開放弁65を選択的に開閉させつつ吸引を実施することで、吸引キャップ12ごとに経路の圧力チェックをして不具合を検出することができる。
【0138】
本実施形態のように、圧力センサ61(圧力測定手段)は、大気開放弁16と複数の中間開放弁65との間に設けられ、複数の吸引キャップ12に共通して用いられることが好ましい。共通して用いられることにより、圧力センサ61を増やす必要がなく、コストの増加を防止できる。
【0139】
(第6の実施形態)
次に、本発明に係る他の実施形態について説明する。
本実施形態では、第1経路28の好ましい形態について説明する。
【0140】
第1経路28の内部は、液体吐出ヘッド10が吐出する液体(例えばインク)がメニスカスを形成する濡れ性及び内径であることが好ましい。この場合、例えば液体吐出ヘッド10側からの不意なインク垂れなど、インクが第1経路28に侵入した場合でも、通常使用中に第1経路28からインクを排出することができる。インクが第1経路28に対してメニスカスを形成することにより、通常の吸引を行うと、空気の流れにより吸引キャップ12側にインクを排出することができる。
【0141】
第1経路28において、液体がメニスカスを形成する濡れ性にするには、例えば、第1経路28の材料を適宜選択し、濡れ性を調整する方法が挙げられる。第1経路28の材料としては、例えばフッ素素材が好ましい。また、第1経路28の内径としては、例えば1mm以上2mm以下であることが好ましい。メニスカスの形成のしやすさから、第1経路28として、内径が1mm以上2mm以下のフッ素チューブを用いることが特に好ましい。
【0142】
メニスカスは物体間の液体架橋を意味する。第1経路28内でインクがメニスカスを形成しているかどうかは、ポンプで吸引を行ったときに、インクが排出可能であるかどうかによって判断できる。なお、メンテナンス装置を構成した状態で吸引ポンプ14を稼働して第1経路28内のメニスカスの形成有無を調べてもよいし、メンテナンス装置を構成せず、第1経路28を単独でポンプにより吸引し、メニスカスの形成有無を調べてもよい。
【0143】
第1経路28における液体のメニスカスについて、
図17A及び
図17Bを用いて説明する。
図17Aは、第1経路28の内部で液体がメニスカスを形成しない場合の例であり、濡れ性の高いチューブで第1経路28を構成した場合の例である。
図17Bは、第1経路28の内部で液体がメニスカスを形成する場合の例であり、濡れ性の低いチューブで第1経路28を構成した場合の例である。
【0144】
図17Aの(A)では、ポンプで吸引を行っており、矢印aはポンプによる吸引開始を模式的に示している。しかし、
図17Aの(B)に示すように、インク30がチューブの内面にメニスカスを形成していない場合、ポンプで吸引しても空気のみが排出される。矢印bは空気の流れを模式的に示している。このため、インク30が第1経路28に侵入し、チューブの内面でインク30がメニスカスを形成しない場合、吸引を行ってもインク30が排出されにくい。
【0145】
図17Bの(A)でも同様に、ポンプで吸引を行っており、矢印aはポンプによる吸引開始を模式的に示している。
図17Bの(B)に示すように、インク30がチューブの内面にメニスカスを形成している場合、ポンプで吸引すると、空気(矢印b)とともにインク30も排出される(矢印c)。このように、第1経路28の内面で対象の液体がメニスカスを形成することで、液体が第1経路28に侵入しても、通常使用中に、侵入した液体を排出することができる。
【0146】
本発明の態様は、例えば、以下のとおりである。
<1>
液体吐出ヘッドのノズル面に当接可能なキャップと、
前記キャップに接続して前記キャップを吸引する吸引手段と、
第1経路によって前記キャップと接続され、前記第1経路と大気との開閉を行う開閉手段と、
前記キャップと前記開閉手段とを接続する前記第1経路と、
前記第1経路と大気とを連通させる開放ポートと、
を有する
ことを特徴とするメンテナンス装置。
<2>
前記開放ポートは、大気と連通する開放孔が形成された開放孔形成部材を有し、
前記開放孔形成部材は、前記第1経路の支流である第2経路によって前記第1経路と接続されている
ことを特徴とする<1>に記載のメンテナンス装置。
<3>
前記開放孔形成部材は、非弾性部材である
ことを特徴とする<2>に記載のメンテナンス装置。
<4>
前記第1経路と前記第2経路の接続点は、前記第1経路において、前記キャップから前記第1経路を沿って前記開閉手段までの距離を1としたとき、前記開閉手段側であって前記開閉手段から1/2以内の位置である
ことを特徴とする<2>に記載のメンテナンス装置。
<5>
前記開放ポートは、前記第1経路に形成された孔である
ことを特徴とする<1>に記載のメンテナンス装置。
<6>
前記開放ポートは、前記第1経路において、前記キャップから前記第1経路を沿って前記開閉手段までの距離を1としたとき、前記開閉手段側であって前記開閉手段から1/2以内の箇所に設けられている
ことを特徴とする<5>に記載のメンテナンス装置。
<7>
前記吸引手段は、ダイアフラムポンプである
ことを特徴とする<1>から<6>のいずれかに記載のメンテナンス装置。
<8>
前記開閉手段は、電磁弁である
ことを特徴とする<1>から<7>のいずれかに記載のメンテナンス装置。
<9>
前記第1経路の一部は、当該第1経路と前記開閉手段とが接続する箇所よりも鉛直方向の上側に位置する
ことを特徴とする<1>から<8>のいずれかに記載のメンテナンス装置。
<10>
前記第1経路の一部は、前記キャップが前記液体吐出ヘッドのノズル面に当接する位置よりも鉛直方向の上側に位置する
ことを特徴とする<1>から<9>のいずれかに記載のメンテナンス装置。
<11>
前記第1経路は、該第1経路の支流である第2経路を有し、
前記第2経路は、前記第1経路とは反対側の端部に孔を有し、
前記開放ポートは、前記孔である
ことを特徴とする<1>、<4>、<7>、<8>、<9>又は<10>に記載のメンテナンス装置。
<12>
前記液体吐出ヘッドは複数であり、
前記キャップ及び前記開放ポートを複数有し、
前記開放ポートは、複数の前記キャップに対応してそれぞれ設けられ、
前記吸引手段及び前記開閉手段は、複数の前記キャップに共通であり、前記吸引手段は、複数の前記キャップに接続して複数の前記キャップを吸引する
ことを特徴とする<1>から<11>のいずれかに記載のメンテナンス装置。
<13>
前記キャップを封止可能なキャップ封止部材と、前記開閉手段及び前記開放ポートの間に設けられた中間開閉手段と、前記第1経路の圧力を測定する圧力測定手段と、を有し、
前記キャップ封止部材は、複数の前記キャップを封止可能であり、
前記中間開閉手段は、複数であり、一つの前記開放ポートに対して一つ設けられ、
前記キャップが前記キャップ封止部材で封止され、前記吸引手段による吸引が行われ、前記中間開閉手段の開閉が制御されることで、各々の前記キャップに対応する前記第1経路ごとに異常の有無を検出可能である
ことを特徴とする<12>に記載のメンテナンス装置。
<14>
前記キャップは、前記液体吐出ヘッドに当接するニップ部と、前記吸引手段と接続する吸引手段接続部と、前記ニップ部と前記吸引手段接続部との間に配置される液体吸収部材と、を有し、
前記キャップが前記液体吐出ヘッドに当接したときに、前記ニップ部と前記液体吸収部材に囲まれる第1の空間と、前記液体吸収部材と前記吸引手段接続部に囲まれる第2の空間とが形成され、
前記第1経路は、前記キャップと接続されるとともに、前記第1の空間と連通するように接続される
ことを特徴とする<1>から<13>のいずれかに記載のメンテナンス装置。
<15>
前記第1経路の内部は、前記液体吐出ヘッドが吐出する液体がメニスカスを形成する濡れ性及び内径である
ことを特徴とする<1>から<14>のいずれかに記載のメンテナンス装置。
<16>
液体吐出ヘッドと、
<1>から<15>のいずれかに記載のメンテナンス装置と、を有する
ことを特徴とする液体を吐出する装置。
<17>
前記液体吐出ヘッドは、ラインヘッド方式である
ことを特徴とする<16>に記載の液体を吐出する装置。
<18>
前記液体吐出ヘッドに対向するドラム状の搬送手段を有し、
前記液体吐出ヘッドは、前記搬送手段によって搬送される記録媒体に液体を吐出する
ことを特徴とする<16>又は<17>に記載の液体を吐出する装置。
<19>
制御部を有し、
前記キャップが前記ノズル面に当接して吸引を行った後、前記ノズル面から離間するまでの動作を1回のクリーニング動作としたとき、
前記制御部は、1回のクリーニング動作において、前記吸引手段の稼働と停止を複数回繰り返す制御を行う
ことを特徴とする<16>から<18>のいずれかに記載の液体を吐出する装置。
<20>
前記制御部は、1回のクリーニング動作において、前記開閉手段を閉じた状態で前記吸引手段の稼働と停止を複数回繰り返し、この後、前記開閉手段を開放する制御を行う
ことを特徴とする<19>に記載の液体を吐出する装置。
<21>
<1>から<15>のいずれかに記載のメンテナンス装置が行うメンテナンス方法であって、
前記キャップを前記液体吐出ヘッドのノズル面に当接させ、前記開閉手段を閉じ、前記吸引手段を稼働させるクリーニング工程を含む
ことを特徴とするメンテナンス方法。
【符号の説明】
【0147】
1 液体を吐出する装置
10 液体吐出ヘッド
11 メンテナンス装置
12 吸引キャップ
13 キャップ部材
14 吸引ポンプ
16 大気開放弁
18 微小開放ポート
21 第1液体経路
22 第2液体経路
28 第1経路
29 第2経路
30 インク
31 接続点
41 チューブ
42 開放孔
43 開放孔形成部材
51 搬送手段
52 記録媒体
60 キャップ封止部材
61、62 圧力センサ
63 廃液タンク
65 中間開放弁
67 液体吸収部材
68 吸引手段接続部
69 第1経路接続部
71 第1の空間
72 第2の空間
100 制御部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0148】