(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117094
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】避難誘導システム
(51)【国際特許分類】
G08B 27/00 20060101AFI20240822BHJP
G08B 17/00 20060101ALI20240822BHJP
A62B 3/00 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
G08B27/00 A
G08B17/00 F
A62B3/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023022973
(22)【出願日】2023-02-17
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 発行者名:一般社団法人日本建築学会関東支部、刊行物名:2021年度(第92回)日本建築学会関東支部研究報告集I、発行年月日:2022年3月1日、USB版頒布開始:2022年2月21日。 集会名:2021年度(第92回)日本建築学会関東支部研究発表会、主催者名:一般社団法人日本建築学会関東支部、開催日:2022年3月1日、2日。 発行者名:ライフサポート学会、刊行物名:第31回ライフサポート学会フロンティア講演会抄録集、発行年月日:2022年3月7日。 集会名:第31回ライフサポート学会フロンティア講演会、主催者名:ライフサポート学会、開催日:2022年3月7日、8日。 発行者名:公益社団法人日本火災学会、刊行物名:2022年度日本火災学会研究発表会概要集、発行年月日:2022年5月28日、事前ダウンロード開始日:2022年5月24日。 集会名:2022年度日本火災学会研究発表会、主催者名:公益社団法人日本火災学会、開催日:2022年5月28日、29日。 発行者名:長島 一郎、刊行物名:大成建設技術センター報2022年第55号、発行年月日:2022年12月1日。
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000125370
【氏名又は名称】学校法人東京理科大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】田中 俊成
(72)【発明者】
【氏名】水野 雅之
【テーマコード(参考)】
2E184
5C087
5G405
【Fターム(参考)】
2E184AA01
2E184GG02
2E184GG13
5C087AA05
5C087AA09
5C087AA10
5C087AA19
5C087DD04
5C087DD23
5C087DD31
5C087EE05
5C087FF01
5C087FF02
5C087GG02
5C087GG09
5C087GG68
5C087GG82
5G405AA08
5G405AB01
5G405AB02
5G405CA28
(57)【要約】
【課題】火災時の避難を円滑に行う。
【解決手段】避難誘導システム10は、建物の利用者を避難出口へ誘導する避難誘導システム10であって、建物の内部に設けられる複数の電子看板30と、火災の際に火災感知器20により生成された火災感知情報に基づき、複数の電子看板30の各々に対応する避難情報を生成する避難情報生成部14と、を備え、避難情報は、火元位置と、当該火元位置から離れて避難出口へと向かう避難方向を示す誘導矢印と、のいずれか一方または双方を含み、複数の電子看板30の各々は、避難情報を表示する表示部31を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の利用者を避難出口へ誘導する避難誘導システムであって、
前記建物の内部に設けられる複数の電子看板と、
火災の際に火災感知器により生成された火災感知情報に基づき、複数の前記電子看板の各々に対応する避難情報を生成する避難情報生成部と、
を備え、
前記避難情報は、火元位置と、当該火元位置から離れて避難出口へと向かう避難方向を示す誘導矢印と、のいずれか一方または双方を含み、
複数の前記電子看板の各々は、前記避難情報を表示する表示部を備えている
ことを特徴とする避難誘導システム。
【請求項2】
前記避難出口の付近を撮影するように設置された撮影装置を更に備え、
前記避難情報生成部は、前記撮影装置により撮影された画像から前記避難出口付近の混雑度を算出し、前記混雑度が混雑度閾値を上回った場合に、前記混雑度がより低い他の前記避難出口へと向かうような前記誘導矢印を前記避難情報として生成する
ことを特徴とする請求項1に記載の避難誘導システム。
【請求項3】
前記建物の通路を閉鎖するように設けられた防火シャッターに対して両側に、それぞれ、前記表示部が前記防火シャッターとは反対側を向くように前記電子看板が設けられ、
前記避難情報生成部は、前記防火シャッターが全閉するように降下する際には、前記防火シャッターの下をくぐらないことを避難情報として生成する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の避難誘導システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の利用者を避難出口へ誘導する避難誘導システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイ等の表示装置に、広告や地域の情報を表示する電子看板(デジタルサイネージ)が用いられている。このような電子看板を建物の内部に設けた場合には、建物に火災が発生した際に、火災に関する情報を電子看板に表示して、電子看板の周囲の人間に避難を促すことが考えられる。
【0003】
例えば、特許文献1には、設置場所に基づいた災害情報及び避難情報等を、携帯端末を有するユーザーに送信するデジタルサイネージ装置が記載されている。このデジタルサイネージ装置では、災害等が発生又は発生する見込みがある場合等に、表示画面にデジタルサイネージ装置の設置場所付近の災害情報及び避難情報等を表示させる。特に特許文献1には、避難情報として、デジタルサイネージ装置の設置場所及び避難所等を示す地図を作成することが、記載されている。
特許文献1のようなデジタルサイネージ装置を建物の内部に設け、火災時に、地図として建物の伏図を表示して、建物の利用者が避難する際に参照させることが考えられる。しかし、特に建物が大規模なものとなると伏図は情報量が多くなりがちである。このため、デジタルサイネージ装置に建物の伏図が表示されたとしても、建物の利用者の各々が伏図を解釈してどのように避難すればよいのかを把握するのに時間を要する。これにより、避難が迅速に行われないことがある。地図の解釈に時間がかかると、デジタルサイネージの周囲に利用者が滞留して通路が塞がれ、これが障害となって避難が迅速に行われないことも考えられる。あるいは、利用者によっては伏図を誤って解釈し、正しくない方向へと移動してしまう可能性もある。このように、建物の伏図を避難情報として表示した場合には、避難が円滑に行われないことがある。
【0004】
また、特許文献2には、情報送信機側から受信した防災・避難情報に基づき、記録された防災・避難に関する画像信号及び/又は音声信号を選択し、選択した防災・避難に関する画像信号及び/又は音声信号をデジタルサイネージへ送信する構成が開示されている。特に特許文献2には、防災・避難に関する文字データ(「火災発生」等の文字、災害の種別に応じた初動対応マニュアル等)、防災・避難に関するピクトグラム(非常口を示す絵文字等)、防災・避難に関する地図データ(非常口までの避難経路、避難場所の地図等)等を、災害発生後の避難時に、インターネット環境が無くても避難のために提示することが、記載されている。
【0005】
更に、特許文献3には、火災に基づく火災感知信号を出力する火災感知器から火災感知信号を受信すると、火災に関する火災信号を出力する火災受信機と、火災信号を受信すると、建物の各エリアに設置されたスピーカと電子看板から避難誘導メッセージを出力させる非常放送設備と、を備える防災システムが記載されている。特に特許文献3には、避難誘導メッセージとして、避難口と現在地を図示する、対象階の平面図を示すことが記載されている。
特許文献2、3においても、デジタルサイネージには地図データや平面図が表示されるため、特許文献1と同様に、火災発生時に、避難が円滑に行われない可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017-33183号公報
【特許文献2】特開2021-89630号公報
【特許文献3】特開2020-3928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、火災時の避難を円滑に行うことが可能な、避難誘導システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明の避難誘導システムは、建物の利用者を避難出口へ誘導する避難誘導システムであって、前記建物の内部に設けられる複数の電子看板と、火災の際に火災感知器により生成された火災感知情報に基づき、複数の前記電子看板の各々に対応する避難情報を生成する避難情報生成部と、を備え、前記避難情報は、火元位置と、当該火元位置から離れて避難出口へと向かう避難方向を示す誘導矢印と、のいずれか一方または双方を含み、複数の前記電子看板の各々は、前記避難情報を表示する表示部を備えていることを特徴とする。
上記のような構成によれば、火災の際には、避難情報生成部が、火災感知器により生成された火災感知情報に基づき、複数の前記電子看板の各々に対応する避難情報を生成し、複数の電子看板の各々の表示部が、生成された避難情報を表示する。ここで、避難情報は、火元位置と、当該火元位置から離れて避難出口へと向かう避難方向を示す誘導矢印と、のいずれか一方または双方を含む。
例えば、避難情報が、火元位置を含む場合には、表示される情報が火元位置であるため全体的な情報量が少なく簡潔なものとなっており、表示された避難情報を建物の利用者が解釈するのに時間を要しない。このため、建物の利用者を、火元位置とは反対の方向へと適切に誘導しつつ、電子看板の周囲に利用者が滞留し、通路が塞がれることが抑制される。
また、避難情報が、火元位置から離れて避難出口へと向かう避難方向を示す誘導矢印を含む場合には、表示される情報が矢印であるため、全体的な情報量が少なく簡潔なものとなっており、表示された避難情報を建物の利用者が解釈するのに時間を要しない。特に、表示されるのが矢印であるため、利用者は適切な避難方向を直感的に把握することが可能であり、利用者の誤った方向への移動が抑制される。このため、建物の利用者を適切な方向へと誘導しつつ、電子看板の周囲に利用者が滞留し、通路が塞がれることが抑制される。
このようにして、火災時の避難を円滑に行うことが可能となる。
【0009】
本発明の一態様においては、本発明の避難誘導システムは、前記避難出口の付近を撮影するように設置された撮影装置を更に備え、前記避難情報生成部は、前記撮影装置により撮影された画像から前記避難出口付近の混雑度を算出し、前記混雑度が混雑度閾値を上回った場合に、前記混雑度がより低い他の前記避難出口へと向かうような前記誘導矢印を前記避難情報として生成する。
このような構成によれば、撮影装置により撮影された画像から算出される、避難出口付近の混雑度に応じて、混雑度が混雑度閾値を上回った場合には、利用者を、混雑度がより低い他の避難出口へと案内することができる。これにより、特定の避難出口に利用者が集中して、避難が滞ることが抑えられ、複数の利用者の避難を円滑に行うことができる。
【0010】
本発明の一態様においては、前記建物の通路を閉鎖するように設けられた防火シャッターに対して両側に、それぞれ、前記表示部が前記防火シャッターとは反対側を向くように前記電子看板が設けられ、前記避難情報生成部は、前記防火シャッターが全閉するように降下する際には、前記防火シャッターの下をくぐらないことを避難情報として生成する。
このような構成によれば、防火シャッターが全閉するように降下する際には、その防火シャッターに対して両側に設けられた電子看板に、防火シャッターの下をくぐらないことを避難情報として表示させることができる。これにより、利用者が、降下する防火シャッターに衝突してしまうことが抑えられる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、火災時の避難を円滑に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係る避難誘導システムの機能構成を示す図である。
【
図2】避難誘導システムが備えられる建物内のレイアウトの一例を示す図である。
【
図3】避難誘導システムが備えられる建物内のレイアウトの他の一例を示す図である。
【
図4】通路の天井面に設けた電子看板の一例を示す図である。
【
図5】通路の天井面の、防火シャッターの両側に設けた電子看板の一例を示す図である。
【
図6】電子看板の表示部に表示される、火災感知器が作動したことを示すメッセージを含む避難情報の一例を示す図である。
【
図7】誘導矢印が表示される前の段階において、出火階の電子看板の表示部に表示される避難情報の一例を示す図である。
【
図8】誘導矢印が表示される前の段階において、出火階の直上階の電子看板の表示部に表示される避難情報の一例を示す図である。
【
図9】誘導矢印が表示される前の段階において、出火階とその直上階以外の階の、電子看板の表示部に表示される避難情報の一例を示す図である。
【
図10】電子看板の表示部に表示される、誘導矢印を含む避難情報の一例を示す図である。
【
図11】電子看板の表示部に表示される、誘導矢印を含む避難情報の他の一例を示す図である。
【
図12】電子看板の表示部に表示される、混雑度を考慮した誘導矢印を含む避難情報の一例を示す図である。
【
図13】防火シャッターの1段目の降下状態を示す斜視図である。
【
図14】防火シャッターの一方の側に配置された電子看板の表示部に表示される避難情報の一例を示す図である。
【
図15】防火シャッターの他方の側に配置された電子看板の表示部に表示される避難情報の一例を示す図である。
【
図16】防火シャッターが、
図13に示される状態から更に降下しようとしている状態を示す斜視図である。
【
図17】防火シャッターの両側に配置された電子看板の表示部に表示される避難情報の一例を示す図である。
【
図18】避難誘導システムにおける避難誘導処理の流れを示すフローチャートである。
【
図19】電子看板を備えない場合のシミュレーションによる検討結果を示す図である。
【
図20】電子看板を備えた場合のシミュレーションによる検討結果を示す図である。
【
図21】電子看板を備えた場合のシミュレーションによる検討結果を示す図である。
【
図22】防火シャッターの近傍に電子看板を備えない場合のシミュレーションによる検討結果を示す図である。
【
図23】防火シャッターの近傍に電子看板を備えた場合のシミュレーションによる検討結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、建物の利用者を避難出口へ誘導する電子看板を備えた避難誘導システムである。電子看板は、火災感知情報に基づき、火災位置、及び火災から離れるように避難方向を示す誘導矢印のうち、少なくとも一方を表示する。
以下、添付図面を参照して、本発明による避難誘導システム10を実施するための形態について、図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る避難誘導システムの機能構成を示す図である。
図2は、避難誘導システムが備えられる建物内のレイアウトの一例を示す図である。
図3は、避難誘導システムが備えられる建物内のレイアウトの他の一例を示す図である。
図1に示されるように、避難誘導システム10は、複数の電子看板30と、システム本体11と、撮影装置18と、を主に備えている。この避難誘導システム10は、ビルディング、商業施設、駅、空港、公共施設、学校等の各種の建物1に設置される。避難誘導システム10は、火災発生時に、例えば
図2、
図3に示すような建物1内にいる利用者を、避難出口8へと誘導するためのものである。
建物1には、利用者が通行可能な通路2と、通路2に面して設けられた、店舗、オフィス、倉庫、洗面室等として用いられる複数の室3と、が設けられている。各室3は、出入口を通して通路2にアクセス可能である。通路2の各所には、建物1の外部、または建物1内の他の階層に繋がる階段室にアクセス可能な避難出口8が設けられている。
また、建物1内の通路2、室3内の各所には、火災感知器20が備えられている。火災感知器20としては、煙を感知する煙感知器と、火災による室温上昇を感知する熱感知器とが備えられている。火災感知器20は、煙や室温上昇を感知した場合に、火災感知情報を生成し、システム本体11に通知する。また、
図3に破線で示されるように、通路2には、通路2が延びる方向に対して通路2を閉鎖可能に設けられた防火シャッター25が備えられることもある。
【0014】
建物1の内部には、複数の電子看板30が設けられている。
図1に示すように、電子看板30は、表示部31と、表示制御部32と、を少なくとも備えている。
表示部31は、例えば液晶パネル等からなり、利用者が視認可能な情報を表示する。表示制御部32は、表示部31に表示する情報を制御する。
図2、
図3において、電子看板30に重なるように示された矢印は、後に詳細に説明する、各電子看板30の表示部31に表示される誘導矢印Zの一例である。
表示制御部32は、有線LAN、無線LAN、公衆無線電話通信網、専用の通信線等のネットワーク100を介して、避難誘導システム10から送信される情報を表示部31に表示させる。表示制御部32は、火災発生時以外の通常時には、例えば店舗情報等、他の、建物1の運営に関する情報を表示部31に表示させる。電子看板30は、商用電源から供給される電力によって駆動されていてもよいが、火災発生時等の非常時において、電力が供給されない場合でも動作できるよう、バッテリー等の電源(図示無し)を内蔵しているのが好ましい。
【0015】
図4は、通路の天井面に設けた電子看板の一例を示す図である。
図5は、通路の天井面の、防火シャッターの両側に設けた電子看板の一例を示す図である。
図4に示すように、複数の電子看板30の各々は、建物1の通路2の上側に設置されている。このような電子看板30は、例えば通路2の天井面2tや壁に支持されている。電子看板30は、通路2の床上に設置されていてもよいが、非常時において多くの利用者が、他の利用者に遮られずに電子看板30の表示部31を直視できるようにするためには、上記のように通路2の上側に設置されるのが、より望ましい。電子看板30は、利用者の通行の障害とならないように、最下端が利用者の頭よりも上に位置するように設けられるのが望ましい。電子看板30は、利用者が通行時に目視しやすくなるように、通路2が延びる方向(通路2を通行する利用者の移動方向)に対して交差する方向に表示部31を向けて配置するのが好ましい。また、電子看板30は、通路2に面した壁面に沿って設けるようにしてもよい。また、
図5に示すように、電子看板30は、防火シャッター25が設けられている個所においては、通路2の天井面2tの、防火シャッター25を挟んだ両側に、表示部31が通路2の互いに反対の側を向くように、配置されている。
【0016】
システム本体11は、建物1内の管理センター等に設置されていてもよいし、建物1以外の他の建物内に設けられたサーバ室等に設置されていてもよい。システム本体11は、コンピュータ装置であり、予め設定されたプログラムに基づいて、後に詳述するような避難誘導処理を自動的に実行する。システム本体11は、データベース12と、感知情報取得部13と、避難情報生成部14と、避難情報出力部15と、を機能的に備えている。
データベース12は、システム本体11で、避難誘導処理を行うのに必要な情報を予め記憶している。データベース12は、建物1の各階の伏図、建物1内に設置された各火災感知器20の識別情報、各火災感知器20の設置位置を記憶している。データベース12は、複数の電子看板30の識別情報、各電子看板30の設置位置、各電子看板30の通路2に対する表示部31の向き等を記憶している。
【0017】
感知情報取得部13は、建物1内に設置された複数の火災感知器20のうちの少なくとも一つが作動した場合に、火災感知器20から出力された信号を火災感知情報として受信する。感知情報取得部13は、火災感知器20としての煙感知器が作動した場合に、煙を感知したことを示す感知信号を、火災感知情報として火災感知器20から受信する。感知情報取得部13は、火災感知器20としての熱感知器が作動した場合に、予め設定された以上の温度上昇を感知したことを示す感知信号を、火災感知情報として火災感知器20から受信する。各火災感知器20は、火災感知情報とともに、各火災感知器20に割り当てられた識別情報を出力する。感知情報取得部13は、データベース12を参照し、作動した火災感知器20から受信した識別情報から、当該火災感知器20の建物1内における位置を割り出し、これを火元位置Fとして特定する。
【0018】
避難情報生成部14は、感知情報取得部13で火災感知器20からの信号に基づいて、複数の電子看板30に表示させる避難情報Jを生成する。避難情報生成部14は、火災の際に火災感知器20により生成された火災感知情報に基づき、複数の電子看板30の各々に対応する避難情報Jを生成する。避難情報生成部14は、複数の電子看板30の設置位置、表示部31に向きに応じて、各電子看板30に個別の避難情報Jを生成する。後述するように、避難情報Jは、火元位置Fと、当該火元位置Fから離れて避難出口8へと向かう避難方向を示す誘導矢印Zと、のいずれか一方または双方を含んでいる。特に本実施形態においては、避難情報Jは誘導矢印Zである。誘導矢印Zは、利用者が表示部31に対面した際に向いている方向である対面方向に直進することを示す上向き矢印(
図10参照)、対面方向に対して右へ向かうことを示す右向き矢印、対面方向に対して左へ向かうことを示す左向き矢印、及び対面方向に対して後へ反転することを示す反転矢印(
図11参照)を含む。
避難情報生成部14は、生成した避難情報のデータを避難情報出力部15に受け渡す。避難情報出力部15は、避難情報生成部14から受け取った避難情報のデータを、複数の電子看板30の各々に送信する。
【0019】
図6は、電子看板の表示部に表示される、火災感知器が作動したことを示すメッセージを含む避難情報の一例を示す図である。
図7は、誘導矢印が表示される前の段階において、出火階の電子看板の表示部に表示される避難情報の一例を示す図である。
図8は、誘導矢印が表示される前の段階において、出火階の直上階の電子看板の表示部に表示される避難情報の一例を示す図である。
図9は、誘導矢印が表示される前の段階において、出火階とその直上階以外の階の、電子看板の表示部に表示される避難情報の一例を示す図である。
避難情報生成部14は、火災感知器20から火災感知情報を受信した場合、まず、
図6に示すように、火災感知器20が作動したことを示すメッセージM1を含む避難情報J1を生成し、建物1内の全ての電子看板30の表示部31に表示させる。
避難情報生成部14は、火災感知情報を発した火災感知器20を特定することで、火元位置Fを特定(推定)する。そして、避難情報生成部14は、予め設定された条件に基づいて、建物1内の各階に、警戒区域を設定する。
避難情報生成部14は、火元位置Fが特定、警戒区域の設定が完了した後に、火元位置Fのある出火階においては、
図7に示すように、火元位置F、設定された警戒区域A、避難出口8の位置等を、当該階の平面マップX上で示す避難情報J2を生成し、火元位置Fのある出火階の全ての電子看板30の表示部31に表示させる。
図7においては、出火階の全域が、警戒区域Aとして設定されて、ハッチングで模様づけられて示されている。このとき、避難情報J2に、当該避難情報J2を表示する電子看板30の位置を、現在位置Pとして表示するようにしてもよい。
避難情報生成部14は、例えば、火元位置Fのある出火階の直上階においては、
図8に示すように、直上階に設定された警戒区域A、避難出口8の位置、現在位置P等を、当該階の平面マップX上で示す避難情報J3を生成し、出火階の直上階の全ての電子看板30の表示部31に表示させる。
図8においては、直上階の全域が、警戒区域Aとして設定されて、ハッチングで模様づけられて示されている。
また、避難情報生成部14は、例えば、出火階、及び直上階以外の他の階においては、
図9に示すように、避難出口8の位置、現在位置P等を、当該階の平面マップX上で示す避難情報J4を生成し、出火階、及び直上階以外の他の階の全ての電子看板30の表示部31に表示させる。
図8においては、当該階の全域が、警戒区域Aとして設定されていない状況が示されている。
【0020】
図10は、電子看板の表示部に表示される、誘導矢印を含む避難情報の一例を示す図である。
図11は、電子看板の表示部に表示される、誘導矢印を含む避難情報の他の一例を示す図である。
避難情報生成部14は、上記のように全ての電子看板30に対して平面マップXを基にした避難情報を表示した後に、各電子看板30に対し、当該電子看板30が設けられた位置から、火元位置Fから離れ、かつ最短ルートで避難出口8に至るような避難経路を計算する。そして、避難情報生成部14は、この避難経路を基に、データベースに格納された、電子看板30の表示部31の向きを参照して、各電子看板30の表示部31に対向するように利用者が向いて位置した際に、利用者が計算された避難経路に従って進もうとした場合に向かうべき方向を計算し、その方向に対応するのが上向き矢印、右向き矢印、左向き矢印、反転矢印のいずれであるのかを、誘導矢印Zとして算出する。
【0021】
そして、避難情報生成部14は、火災が発生したことを示すメッセージM2と、上記のようにして算出された、通路2において、火元位置Fから離れて避難出口8へと向かう避難方向を示す誘導矢印Z、及びこの誘導矢印Zの内容を具体的に文字で表すメッセージM3を、避難情報J5として生成し、各電子看板30の表示部31に表示させる。
例えば、
図4に示す通路2において、火元位置F側(火元位置Fに近づく側)を背にして、避難出口側を向いている利用者は、表示部31を火元位置F側に向けた電子看板30Aを見ることになる。この場合、避難情報生成部14は、
図10に示すように、火元位置Fから離れ、かつ最短ルートで避難出口8に至るような方向は直進方向であるため、上向き矢印を誘導矢印Z1として表示させる。これに伴い、前方へ進むことを促すメッセージM3を表示させる。このように、避難情報生成部14は、誘導矢印Z1とメッセージM3を含む情報を避難情報J5として生成し、電子看板30Aの表示部31に表示させる。
また、例えば、
図4に示す通路2において、火元位置F側(火元位置Fに近づく側)を向いている利用者は、表示部31を火元位置Fから遠ざかる側(避難出口8側)に向けた電子看板30Bを見ることになる。この場合、避難情報生成部14は、
図11に示すように、火元位置Fから離れるよう、利用者の進行方向を変えて火元位置Fからの迂回するような方向は反転矢印であるため、反転矢印を誘導矢印Z2として表示させる。これに伴い、反転することを促すメッセージM4を表示させる。このように、避難情報生成部14は、誘導矢印Z2とメッセージM4を含む情報を避難情報J6として生成し、電子看板30Bの表示部31に表示させる。これにより、利用者が火元位置Fに近づく方向に通路2を進行するのが抑えられる。
【0022】
図12は、電子看板の表示部に表示される、混雑度を考慮した誘導矢印を含む避難情報の一例を示す図である。
図2、
図12に示すように、撮影装置18は、避難出口8の付近を撮影するように設置されている。撮影装置18は、これ以外に、例えば、通路2の交差部、通路2の幅が狭くなる部分、障害物がある部分の近傍等を撮影するように設置してもよい。
避難情報生成部14は、撮影装置18により撮影された画像に基づいて、適宜の画像認識プログラムにより、避難出口8付近の利用者の混雑度を、例えば単位面積当たりの人数等により算出する。避難情報生成部14は、各電子看板30に対して避難経路を計算する際に、上記のように算出された混雑度を考慮する。例えば、避難情報生成部14は、ある場所において算出された混雑度が混雑度閾値(例えば、乗用エレベータの定員6人とかご床内法面積との関係等を参考とする5人/m
2)を上回った場合に、混雑度がより低い他の避難出口8へと向かうように、避難経路を計算する。避難情報生成部14は、このように混雑度を考慮して計算された避難経路を基に、誘導矢印Zを算出する。避難情報生成部14は、誘導矢印Z4、及び当該誘導矢印に対応するメッセージM5を、避難情報J7として生成する。避難情報生成部14は、生成した避難情報J7を、混雑度が高い避難出口8の付近に設置された電子看板30C、または混雑度が高い避難出口8に向かうルート上に設置された電子看板30に表示させる。
【0023】
図13は、防火シャッターの1段目の降下状態を示す斜視図である。
図14は、防火シャッターの一方の側に配置された電子看板の表示部に表示される避難情報の一例を示す図である。
図15は、防火シャッターの他方の側に配置された電子看板の表示部に表示される避難情報の一例を示す図である。
図16は、防火シャッターが、
図13に示される状態から更に降下しようとしている状態を示す斜視図である。
図17は、防火シャッターの両側に配置された電子看板の表示部に表示される避難情報の一例を示す図である。
避難情報生成部14は、
図3、
図5に示すように、防火シャッター25が設けられている個所においては、防火シャッター25を挟んだ両側に配置された電子看板30に、防火シャッター25の作動状況に合わせた避難情報Jを表示させる。
【0024】
防火シャッター25が、二段降下式である場合、
図13に示すように、防火シャッター25が、一段目の降下を行い、その下方に、利用者が通り抜け可能なスペースが確保されている状態では、通路2において、火元位置F側(火元位置Fに近づく側)を背にしている利用者は、
図5に示すように、表示部31を火元位置F側に向けた電子看板30Cを見ることになる。この場合、避難情報生成部14は、防火シャッター25が設けられた場所が現時点ではまだ通行することが可能であるとして、各電子看板30に対して避難経路を計算する。避難情報生成部14は、このようにして計算された避難経路を基に、誘導矢印Zを算出する。避難情報生成部14は、例えば、
図14に示すように、防火シャッター25の下を通り抜けて火元位置Fから離れ、かつ避難出口8に向かうことを示す誘導矢印Z5、及びメッセージM6を含む情報を避難情報J8として生成し、電子看板30Cに表示させる。
また、例えば、
図5に示すように、通路2において、火元位置F側(火元位置Fに近づく側)を向いて防火シャッター25に面している利用者は、表示部31を火元位置Fから遠ざかる側(避難出口8側)に向けた電子看板30Dを見ることになる。この場合、避難情報生成部14は、
図15に示すように、防火シャッターの下を通り抜けずに火元位置Fから離れるよう、利用者の進行方向を変えて火元位置Fからの迂回を示す誘導矢印Z6、及びメッセージM7を含む情報を、避難情報J9として生成し、電子看板30Dに表示させる。
【0025】
また、二段降下式の防火シャッター25が、二段降下式であって、
図16に示すように、防火シャッター25が全閉するように、一段目の降下状態から更に降下をし始めた場合、避難情報生成部14は、防火シャッター25が設けられた場所が通行することができないものとして、各電子看板30に対して避難経路を計算する。避難情報生成部14は、このようにして計算された避難経路を基に、誘導矢印Zを算出する。避難情報生成部14は、例えば、
図17に示すように、防火シャッターの下をくぐらないことを示すメッセージM8を含む避難情報J10を生成し、防火シャッター25の両側の電子看板30C、30Dに表示させる。
【0026】
図18は、上記したような避難誘導システム10における避難誘導処理の流れを示すフローチャートである。
この
図18に示されるように、建物1内で火災が発生すると、火元位置Fの近傍の火災感知器20が作動し、煙、または温度情報を感知したことを示す火災感知情報を出力する。出力された火災感知情報は、システム本体11の感知情報取得部13で受信される(ステップS1)。
避難情報生成部14は、火災感知器20から火災感知情報を受信すると、まず、
図6に示すように、火災感知器20が作動したことを示すメッセージM1を含む避難情報J1を生成し、建物1内の全ての電子看板30の表示部31に表示させる(ステップS2)。
続いて、避難情報生成部14は、火災感知情報を発した火災感知器20を特定することで、火元位置Fを特定(推定)し、警戒区域を設定する。避難情報生成部14は、特定された火元位置F、設定された警戒区域等を示す避難情報J2~J4を、出火階、出火階の直上階、それ以外の階、に合わせて生成し、
図7~
図9に示すように、各電子看板30の表示部31に表示させる(ステップS3)。
【0027】
続いて、避難情報生成部14は、各電子看板30に対し、当該電子看板30が設けられた位置から、火元位置Fから離れ、かつ最短ルートで避難出口8に至るような避難経路を計算し、この避難経路を基に、各電子看板30に対応する誘導矢印Zを算出する。
これにはまず、避難情報生成部14は、各撮影装置18を作動させて避難出口8の付近を撮影し、避難情報生成部14により、避難出口8付近の利用者の混雑度の解析を開始する(ステップS4)。
避難情報生成部14は、各撮影装置18によって撮影されている各避難出口8における混雑度を監視し、混雑度が予め設定された混雑度閾値を上回ったか否かを判定する(ステップS5)。
その結果、混雑度が混雑度閾値よりも小さければ(ステップS5のNo)、次のステップS7へ遷移する。
【0028】
混雑度が混雑度閾値を上回った場合には(ステップS5のYes)、
図12に示されるように、避難情報生成部14は、混雑度がより低い他の避難出口8へと向かうように利用者を案内する誘導矢印Z4、及びメッセージM5を含む情報を、避難情報J7として生成する。避難情報生成部14は、生成した避難情報J7を、混雑度が高い避難出口8の付近に設置された電子看板30C、または混雑度が高い避難出口8に向かうルート上に設置された他の電子看板30に表示させる(ステップS6)。
その後、処理はステップS4へ遷移して、再度、混雑度を解析する。混雑度がより低い他の避難出口8へと向かうように利用者を案内する避難情報J7を表示することで、混雑度が徐々に低下することが期待される。このため、いずれは混雑度が解消して混雑度閾値よりも小さくなり、ステップS5においてNoと判定されて、ステップS7へと遷移する。
【0029】
次に、避難情報生成部14は、複数の電子看板30の各々について、防火シャッター25の両側に位置する電子看板30であるか否かを判定する(ステップS7)。
その結果、防火シャッター25の両側に位置する電子看板30ではない場合(ステップS7のNo)、避難情報生成部14は、更に、電子看板30の表示部31が火元位置F側を向いたものであるか否かを判定する(ステップS8)。
そして、避難情報生成部14は、表示部31を火元位置F側に向けた電子看板30Aでは(ステップS8のYes)、
図10に示すように、火元位置Fから離れ、かつ最短ルートで避難出口8に至るような誘導矢印Z1、及びメッセージM3を含む情報を避難情報J5として生成し、電子看板30Aに表示させる(ステップS9)。
また、表示部31が火元位置F側を向いたものではなかった場合(ステップS8のNo)、
図11に示すように、火元位置Fから離れるよう、利用者の進行方向を変えて火元位置Fからの迂回を示す誘導矢印Z2、及びメッセージM4を含む情報を、避難情報J6として生成し、電子看板30Bに表示させる(ステップS10)。
【0030】
また、ステップS7において、防火シャッター25の両側に位置する電子看板30である、と判定された電子看板30の場合(ステップS7のYes)、防火シャッター25が1段目の降下を行った時点で(ステップS11)、電子看板30の表示部31が火元位置F側を向いたものであるか否かを判定する(ステップS12)。
電子看板30の表示部31が火元位置F側を向いたものである場合、すなわち電子看板30が防火シャッター25に対して火元位置F側に位置している場合(ステップS12のYes)には、避難情報生成部14は、
図13、
図14に示すように、防火シャッター25の下を通り抜けて火元位置Fから離れることを示す誘導矢印Z5、及びメッセージM6を含む情報を、避難情報J8として電子看板30Cに表示させる(ステップS13)。
また、表示部31が火元位置F側を向いたものではなかった場合、すなわち電子看板30が防火シャッター25に対して火元位置Fとは反対側に位置している場合(ステップS12のNoには)、避難情報生成部14は、
図15に示すように、防火シャッターの下を通り抜けずに火元位置Fから離れることを示す誘導矢印Z6、及びメッセージM7を含む情報を、避難情報J9として電子看板30Dに表示させる(ステップS14)。
【0031】
その後、防火シャッター25が2段目の降下を開始した時点で(ステップS15)、避難情報生成部14は、
図16、
図17に示すように、防火シャッターの下をくぐらないことを示すメッセージM8を含む避難情報J7を、防火シャッター25の両側の電子看板30C、30Dに表示させる(ステップS16)。
【0032】
上述したような避難誘導システム10は、建物1の利用者を避難出口8へ誘導する避難誘導システム10であって、建物1の内部に設けられる複数の電子看板30と、火災の際に火災感知器20により生成された火災感知情報に基づき、複数の電子看板30の各々に対応する避難情報Jを生成する避難情報生成部14と、を備え、避難情報Jは、火元位置Fから離れて避難出口8へと向かう避難方向を示す誘導矢印Zを含み、複数の電子看板30の各々は、避難情報Jを表示する表示部31を備えている。
上記のような構成によれば、火災の際には、避難情報生成部14が、火災感知器20により生成された火災感知情報に基づき、複数の電子看板30の各々に対応する避難情報Jを生成し、複数の電子看板30の各々の表示部31が、生成された避難情報Jを表示する。ここで、避難情報Jは、火元位置Fから離れて避難出口8へと向かう避難方向を示す誘導矢印Zを含む。
このように、避難情報Jが、火元位置Fから離れて避難出口8へと向かう避難方向を示す誘導矢印Zを含むところ、表示される情報が矢印であるため、全体的な情報量が少なく簡潔なものとなっており、表示された避難情報Jを建物1の利用者が解釈するのに時間を要しない。特に、表示されるのが矢印であるため、利用者は適切な避難方向を直感的に把握することが可能であり、利用者の誤った方向への移動が抑制される。このため、建物1の利用者を適切な方向へと誘導しつつ、電子看板30の周囲に利用者が滞留し、通路が塞がれることが抑制される。
このようにして、火災時の避難を円滑に行うことが可能となる。
【0033】
また、避難誘導システム10は、避難出口8の付近を撮影するように設置された撮影装置18を更に備え、避難情報生成部14は、撮影装置18により撮影された画像から避難出口8付近の混雑度を算出し、混雑度が混雑度閾値を上回った場合に、混雑度がより低い他の避難出口8へと向かうような誘導矢印Zを避難情報Jとして生成する。
このような構成によれば、撮影装置18により撮影された画像から算出される、避難出口8付近の混雑度に応じて、混雑度が混雑度閾値を上回った場合には、利用者を、混雑度がより低い他の避難出口8へと案内することができる。これにより、特定の避難出口8に利用者が集中して、避難が滞ることが抑えられ、複数の利用者の避難を円滑に行うことができる。
【0034】
また、避難誘導システム10は、建物1の通路2を閉鎖するように設けられた防火シャッター25に対して両側に、それぞれ、表示部31が防火シャッター25とは反対側を向くように電子看板30が設けられ、避難情報生成部14は、防火シャッター25が全閉するように降下する際には、防火シャッター25の下をくぐらないことを避難情報Jとして生成する。
このような構成によれば、防火シャッター25が全閉するように降下する際には、その防火シャッター25に対して両側に設けられた電子看板30に、防火シャッター25の下をくぐらないことを避難情報Jとして表示させることができる。これにより、利用者が、降下する防火シャッター25に衝突してしまうことが抑えられる。
【0035】
また、複数の電子看板30の各々は、建物1の通路2の上側に設置されている。
このような構成によれば、非常時において多くの利用者が、他の利用者に遮られずに電子看板30の表示部31を直視できるようになる。したがって、利用者の避難を円滑に行うことができる。
【0036】
また、誘導矢印Zは、表示部31に対面した際に向いている方向である対面方向に直進することを示す上向き矢印、対面方向に対して右へ向かうことを示す右向き矢印、対面方向に対して左へ向かうことを示す左向き矢印、及び対面方向に対して後へ反転することを示す反転矢印を含む。
このような構成によれば、避難誘導システム10を適切に実現することができる。
【0037】
(実施形態の第1変形例)
上記実施形態においては、避難情報Jは、火元位置Fから離れて避難出口8へと向かう避難方向を示す誘導矢印Zを含むように構成されていたが、これに限られず、避難情報Jは、火元位置を含むように構成されていてもよい。
この場合には、例えば
図10に示される例においては、誘導矢印Zに替えて、火元位置に関する情報が表示される。
すなわち、本変形例の避難誘導システムは、建物の利用者を避難出口へ誘導する避難誘導システムであって、建物の内部に設けられる複数の電子看板と、火災の際に火災感知器により生成された火災感知情報に基づき、複数の電子看板の各々に対応する避難情報を生成する避難情報生成部と、を備え、避難情報は、火元位置を含み、複数の電子看板の各々は、避難情報を表示する表示部を備えている。
上記のような構成によれば、火災の際には、避難情報生成部が、火災感知器により生成された火災感知情報に基づき、複数の前記電子看板の各々に対応する避難情報を生成し、複数の電子看板の各々の表示部が、生成された避難情報を表示する。ここで、避難情報は、火元位置を含む。
このように、避難情報が、火元位置を含むところ、表示される情報が火元位置であるため全体的な情報量が少なく簡潔なものとなっており、表示された避難情報を建物の利用者が解釈するのに時間を要しない。このため、建物の利用者を、火元位置とは反対の方向へと適切に誘導しつつ、電子看板の周囲に利用者が滞留し、通路が塞がれることが抑制される。
このようにして、火災時の避難を円滑に行うことが可能となる。
【0038】
なお、本変形例においては、例えばオフィスビルなど、利用者の多くが建物内の内部構造を知悉し、火元位置が通知された場合に避難経路を容易に想定できるような場合に、適用されるのが好適である。
【0039】
(実施形態の第2変形例)
あるいは、上記実施形態と第1変形例を組み合わせ、避難情報は、火元位置と、当該火元位置から離れて避難出口へと向かう避難方向を示す誘導矢印と、の双方を含むように、構成されていても構わない。
このような場合においても、上記実施形態及び第1変形例で説明したように、火災時の避難を円滑に行うことが可能となる。
【0040】
(その他の変形例)
なお、上記実施形態では、避難誘導システム10における避難誘導処理の流れを説明したが、その順序は適宜変更可能である。
例えば、上記実施形態では、避難情報生成部14(システム本体11)を、電子看板30とは別に設けるようにしたが、これに限られない。避難情報生成部14(システム本体11)を、複数の電子看板30のうちのいずれか一つの内部に備えるようにしてもよい。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
【0041】
(検討例)
上記したような避難誘導システムによる避難誘導効果の評価実験をシミュレーションにより行ったので、その結果を以下に示す。
図19は、電子看板を備えない場合のシミュレーションによる検討結果を示す図である。
図20、
図21は、電子看板を備えた場合のシミュレーションによる検討結果を示す図である。
図19~
図21に示すように、一直線上の通路2に、火元位置F側から間隔をあけて3つの避難出口8A~8Cを設け、被験者の避難状況についてシミュレーションを行った。比較のため、電子看板30を設けない場合(
図19)、通路の天井から電子看板を吊下げた場合(
図20)、通路の天井から電子看板30を吊り下げるのに加え、避難出口8B付近の壁面にも電子看板30を吊り下げた場合(
図21)の3通りについてシミュレーションを行った。
その結果、
図19に示すように、電子看板30のない条件では、80%以上の被験者が最寄りの避難出口8Bを選択した。
これに対し、
図20に示すように、電子看板30を設置した条件では、電子看板30の誘導先の避難出口である避難出口8Cの選択者は2倍以上に増加した。電子看板30がない場合には最も近い避難出口8Bを選択する傾向があったが、電子看板30がある場合には水平避難への誘導に効果があることがわかった。
また、
図21に示すように、電子看板30に加えて避難出口8付近の壁面にも電子看板30を設置することで、誘導効果が更に高くなることがわかった。
【0042】
また、通路に防火シャッター25が設けられている場合についても、同様の検討を行った。
図22は、防火シャッターの近傍に電子看板を備えない場合のシミュレーションによる検討結果を示す図である。
図23は、防火シャッターの近傍に電子看板を備えた場合のシミュレーションによる検討結果を示す図である。
電子看板30を設けない場合(
図22)と、通路の天井から電子看板30を吊下げた場合(
図23)とで、シミュレーションによる比較を行った。双方の場合において、防火シャッター25を1段目の降下を行った状態とした。
その結果、
図22に示すように、電子看板30がない場合、防火シャッター25が降下すると、防火シャッター25の下を通り抜けて避難出口8Cへ避難した被験者が全体の13%であった。
これに対し、
図23に示すように、電子看板30を設置した場合、53%が防火シャッター25の下を通り抜けて避難出口8Cへ避難した。このように、電子看板30による指示がない場合は、1段目の降下を行った防火シャッター25の下を通り抜けてよいか分からず、防火シャッター25の手前の避難出口8Bへ避難した傾向があったが、電子看板30を設けることで、1段目の降下を行った防火シャッター25の下を通り抜けて水平避難へ誘導できることが確認された。
【符号の説明】
【0043】
1 建物 25 防火シャッター
2 通路 30、30A~30D 電子看板
8 避難出口 31 表示部
10 避難誘導システム F 火元位置
14 避難情報生成部 J、J1~J10 避難情報
18 撮影装置 Z、Z1~Z6 誘導矢印
20 火災感知器