(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117142
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】エピタキシャルウェーハの製造装置及び製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/205 20060101AFI20240822BHJP
C23C 16/52 20060101ALI20240822BHJP
C30B 25/16 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
H01L21/205
C23C16/52
C30B25/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023063
(22)【出願日】2023-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】312007423
【氏名又は名称】グローバルウェーハズ・ジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100187506
【弁理士】
【氏名又は名称】澤田 優子
(72)【発明者】
【氏名】上條 和隆
(72)【発明者】
【氏名】北村 大輔
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 智紀
(72)【発明者】
【氏名】石川 高志
(72)【発明者】
【氏名】仙田 剛士
【テーマコード(参考)】
4G077
4K030
5F045
【Fターム(参考)】
4G077AA03
4G077BA04
4G077ED06
4G077EH06
4G077HA12
4G077TJ03
4K030BA29
4K030BB02
4K030CA04
4K030CA12
4K030FA10
4K030GA06
4K030HA13
4K030JA10
4K030KA39
4K030KA41
5F045AA03
5F045AB02
5F045AC05
5F045AD15
5F045AE29
5F045AF03
5F045BB02
5F045BB03
5F045DP15
5F045DP27
5F045DQ10
5F045EC03
5F045EF03
5F045EK07
5F045GB05
(57)【要約】
【課題】サセプタに載置されたシリコンウェーハの表面の温度とサセプタ表面の温度とを正確に測定し、サセプタに載置されるシリコンウェーハの温度分布を均一化するよう制御して、膜厚や抵抗率の面内均一性の良好なエピタキシャルウェーハを得ることのできるエピタキシャルウェーハの製造装置及び製造方法を提供する。
【解決手段】
サセプタ2の回転角度と、非接触温度計30によるサセプタ2の径方向の測定位置とにより、サセプタ2上の位置情報とその温度情報とを取得し、モータ21とサセプタ2との間の回転角度の誤差を補正した上で、サセプタ2とシリコンウェーハW上面の温度分布情報を算出するコントローラ60を備え、コントローラ60は、温度分布情報に基づき、シリコンウェーハW上面の温度分布を均一化するように制御してシリコンウェーハW上の薄膜を気相成長させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に反応ガスが導入されるチャンバと、前記チャンバ内に配置され、上面に半導体ウェーハを載置可能なサセプタと、前記サセプタを加熱する加熱部と、を備え、前記加熱部により前記サセプタ上に載置された半導体ウェーハを加熱し、前記反応ガスにより前記半導体ウェーハ上に薄膜を気相成長させるエピタキシャルウェーハの製造装置であって、
前記サセプタを回転させるモータと、
前記モータの回転角度を検出する角位置センサと、
前記チャンバ外に設置され、前記サセプタの径方向に測定位置を移動可能に構成され、前記サセプタ上面及びウェーハ上面の温度情報を非接触に測定する非接触温度計と、
前記角位置センサにより検出された回転角度と前記非接触温度計により測定された温度情報とに基づき前記モータと前記サセプタとの間の回転角度の誤差を補正した上で、前記サセプタ及び前記サセプタに載置された半導体ウェーハ上面の温度分布情報を、前記温度情報、前記測定位置及び補正後の回転角度に基づき算出するコントローラと、を備え、
前記コントローラは、前記温度分布情報に基づき、前記半導体ウェーハ上面の温度分布を均一化するように制御して前記半導体ウェーハ上の薄膜を気相成長させることを特徴とするエピタキシャルウェーハの製造装置。
【請求項2】
前記サセプタの上面に放射率が前記サセプタ上面と0.01以上異なる基準部を備え、
前記コントローラは、前記角位置センサにより検出された回転角度と前記基準部の温度情報とに基づき前記モータと前記サセプタとの間の回転角度の誤差を補正することを特徴とする請求項1に記載されたエピタキシャルウェーハの製造装置。
【請求項3】
前記サセプタ上に半導体ウェーハが搭載されているか否か記憶する記憶部を備え、
前記コントローラは、前記記憶部に記憶された半導体ウェーハが搭載されている領域のみの温度分布情報に基づいて、半導体ウェーハ上面の温度分布を均一化するように制御するモードを備えることを特徴とする請求項1に記載されたエピタキシャルウェーハの製造装置。
【請求項4】
前記基準部は、前記サセプタ上面に配置された前記サセプタ上面と放射率が0.01以上異なる成膜材料から成る成膜部であることを特徴とする請求項2に記載されたエピタキシャルウェーハの製造装置。
【請求項5】
前記コントローラは、前記サセプタの水平度又は前記サセプタ上に載置された半導体ウェーハの位置を調整することで、半導体ウェーハ上面の温度分布を均一化することを特徴とする請求項1に記載されたエピタキシャルウェーハの製造装置。
【請求項6】
前記コントローラは、前記サセプタの回転速度をr[rpm]とすると、前記非接触温度計の測定間隔t[s]が、
t=X/r (0.4≦X≦0.7(Xはサンプリング間隔を表す))
を成立するように制御することを特徴とする請求項1に記載されたエピタキシャルウェーハの製造装置。
【請求項7】
チャンバ内においてサセプタ上に載置された半導体ウェーハを加熱するとともに前記サセプタをモータにより回転させ、前記チャンバ内の反応ガスにより前記半導体ウェーハ上に薄膜を気相成長させるエピタキシャルウェーハの製造方法であって、
角位置センサにより前記モータの回転角度を検出するステップと、
非接触温度計の前記サセプタ及び前記サセプタ上のウェーハの測定位置を取得するステップと、
前記角位置センサにより検出された回転角度と前記非接触温度計により測定された温度情報とに基づき前記モータと前記サセプタとの間の回転角度の誤差を補正するステップと、
前記モータと前記サセプタとの間の回転角度の誤差を補正した上で前記サセプタと前記ウェーハ上面の温度分布情報を算出するステップと、
前記温度分布情報に基づき、前記ウェーハ上面の温度分布を均一化するように制御して、前記ウェーハ上の薄膜を気相成長させるステップと、
を有することを特徴とするエピタキシャルウェーハの製造方法。
【請求項8】
前記角位置センサにより検出された回転角度と前記非接触温度計により測定された温度情報とに基づき前記モータと前記サセプタとの間の回転角度の誤差を補正するステップにおいて、
前記角位置センサにより取得された前記回転角度と、前記サセプタの上面に設けられた、放射率が前記サセプタの上面と0.01以上異なる基準部の温度情報とに基づき、前記モータと前記サセプタとの間の回転角度の誤差を補正することを特徴とする請求項7に記載されたエピタキシャルウェーハの製造方法。
【請求項9】
前記サセプタ上に半導体ウェーハが搭載されているか否かを記憶部に記憶し、前記記憶部に記憶された半導体ウェーハが搭載されている領域のみの温度分布情報に基づいて、半導体ウェーハ上面の温度分布を均一化するように制御するモードを備えることを特徴とする請求項7に記載されたエピタキシャルウェーハの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハ上にエピタキシャル層を形成するエピタキシャルウェーハの製造装置及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体部品の高性能化に伴い、半導体ウェーハの表面に結晶性の良好なシリコン膜をエピタキシャル成長させて形成したエピタキシャルウェーハが半導体基板として多く用いられている。
このエピタキシャルウェーハは、エピタキシャル成長装置を用いて製造される。
図10に模式的に示すように、エピタキシャル成長装置200は、熱処理炉であるチャンバ201と、チャンバ201内に設けられ、半導体ウェーハWを載置するためのサセプタ202と、このサセプタ202を加熱する加熱手段として例えばコイル203とを備えている。さらにエピタキシャル成長装置200は、チャンバ内に反応ガスを導入するガス導入部204と、サセプタ202を回転させる回転駆動部206と、回転駆動部206の制御やコイル203による加熱制御を行うための制御部250を備える。
このエピタキシャル成長装置200において、サセプタ202に半導体ウェーハWを載置し、制御部250の制御のもと、サセプタ202を回転させながら、サセプタ202をコイル203により加熱する。また、ガス導入部204によりチャンバ201内に反応ガスを導入し、半導体ウェーハ表面にエピタキシャル膜を成長させる。
【0003】
このエピタキシャル成長装置により製造されるエピタキシャルウェーハとして、膜厚や抵抗率の面内均一性が求められている。これを実現するためには、サセプタの温度分布と半導体ウェーハの温度分布とをそれぞれ精度良く測定し、測定した温度情報をフィードバックして、チャンバ内における原料ガスの流れや濃度の制御、サセプタの加熱制御をして、サセプタ及び半導体ウェーハの温度分布の均一化を行うことが必要である。
【0004】
例えば、特許文献1には、サセプタ上に複数の半導体ウェーハを載置するバッチ式のエピタキシャル成長装置において、複数の半導体ウェーハとその境界にあるサセプタ上面の温度を区別して検出し、検出した半導体ウェーハ上面及びサセプタ上面の温度に基づき温度制御を行うことが開示されている。
この特許文献1に開示された方法においては、
図11に示すように円板状のサセプタ202上に周方向に沿って複数の半導体ウェーハWが載置される。回転するサセプタ202に載置された半導体ウェーハWは公転しながら加熱され、半導体ウェーハ表面にエピタキシャル膜を成長させる。
【0005】
ここで、
図10を用いて説明すると、サセプタ202上方に例えば放射温度計205が設置され、回転するサセプタ202上に載置された複数の半導体ウェーハWの温度を連続的に測定する(例えば、
図11の破線円に沿って連続的に温度測定する)。測定される温度データは、時間軸に沿って半導体ウェーハW上面の温度と、サセプタ202上面の温度とが交互に示されたものとなる。
半導体ウェーハW上面の温度とサセプタ202上面の温度との区別は、検出した温度の変化率(所定の温度変異率)に基づき行う。具体的には、半導体ウェーハWはサセプタ202を介して加熱されるため、サセプタ202上面側の温度を測定した場合、隣り合う半導体ウェーハWの境界にあるサセプタ202上面の温度は、半導体ウェーハW上面の温度に比べて高くなる。この半導体ウェーハW上面の温度とサセプタ202上面の温度との間の変化率(温度変異率)に基づいて、半導体ウェーハW上面の温度とサセプタ202上面の温度とを別個に抽出し、抽出したそれぞれの温度データをフィードバックして温度制御するようにしている。
【0006】
また、特許文献2には、半導体ウェーハを載置するサセプタの温度を常時検出し、再現性のよいエピタキシャル層の形成を行うエピタキシャル成長装置が開示されている。サセプタの温度を検出する非接触式温度計は、プロセス中の石英部材の汚れが比較的少ないサセプタ下面側に設置している。これにより、安定的にサセプタの温度を測定し、サセプタ温度を制御することで再現性の良いエピタキシャル層の形成を試みている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008-184634号公報
【特許文献2】特開平10-335250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示された方法では、半導体ウェーハW上面とサセプタ202上面との温度変異率に基づいて半導体ウェーハWとサセプタ202との区別を行っている。
しかしながら、この方法にあっては、半導体ウェーハWとサセプタ202の境界部のみに高い温度変異率が見られる場合に限られる。例えば、半導体ウェーハW上に回路パターンが存在することで、ウェーハ面内にノイズ状の温度変異が見られる場合や、半導体ウェーハWとサセプタ202の境界部に十分な温度変異率が見られない場合には、半導体ウェーハWとサセプタ202との区別を正確に行うことができなかった。
【0009】
また、特許文献2に開示されたエピタキシャル成長装置では、サセプタの温度のみを検出しているが、サセプタと半導体ウェーハとの接触状態等は一様でないため、サセプタの温度のみに基づき半導体ウェーハ表面の温度を正確に得ることは困難である。
そのため、半導体ウェーハ上のエピタキシャル層が均一にならずに膜厚がばらつきやすいという課題があった。
【0010】
本発明は、上記事情のもとになされたものであり、サセプタに載置される半導体ウェーハの温度分布を均一化するよう制御して、エピタキシャル層の膜厚や抵抗率の面内均一性の良好なエピタキシャルウェーハを得ることのできるエピタキシャルウェーハの製造装置及び製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するためになされた、本発明に係るエピタキシャルウェーハの製造装置は、内部に反応ガスが導入されるチャンバと、前記チャンバ内に配置され、上面に半導体ウェーハを載置可能なサセプタと、前記サセプタを加熱する加熱部と、を備え、前記加熱部により前記サセプタ上に載置された半導体ウェーハを加熱し、前記反応ガスにより前記半導体ウェーハ上に薄膜を気相成長させるエピタキシャルウェーハの製造装置であって、前記サセプタを回転させるモータと、前記モータの回転角度を検出する角位置センサと、前記チャンバ外に設置され、前記サセプタの径方向に測定位置を移動可能に構成され、前記サセプタ上面及びウェーハ上面の温度情報を非接触に測定する非接触温度計と、前記角位置センサにより検出された回転角度と前記非接触温度計により測定された温度情報とに基づき前記モータと前記サセプタとの間の回転角度の誤差を補正した上で、前記サセプタ及び前記サセプタに載置された半導体ウェーハ上面の温度分布情報を、前記温度情報、前記測定位置及び補正後の回転角度に基づき算出するコントローラと、を備え、前記コントローラは、前記温度分布情報に基づき、前記半導体ウェーハ上面の温度分布を均一化するように制御して前記半導体ウェーハ上の薄膜を気相成長させることに特徴を有する。
【0012】
尚、前記サセプタの上面に放射率が前記サセプタ上面と0.01以上異なる基準部を備え、前記コントローラは、前記角位置センサにより検出された回転角度と前記基準部の温度情報とに基づき前記モータと前記サセプタとの間の回転角度の誤差を補正してもよい。
また、前記サセプタ上に半導体ウェーハが搭載されているか否か記憶する記憶部を備え、前記コントローラは、前記記憶部に記憶された半導体ウェーハが搭載されている領域のみの温度分布情報に基づいて、半導体ウェーハ上面の温度分布を均一化するように制御するモードを備えることが望ましい。
また、前記基準部は、前記サセプタ上面に配置された前記サセプタ上面と放射率が0.01以上異なる成膜材料から成る成膜部であってもよい。
また、前記コントローラは、前記サセプタの水平度又は前記サセプタ上に載置された半導体ウェーハの位置を調整することで、半導体ウェーハ上面の温度分布を均一化することが望ましい。
また、前記コントローラは、前記サセプタの回転速度をr[rpm]とすると、前記非接触温度計の測定間隔t[s]が、t=X/r(0.4≦X≦0.7(Xはサンプリング間隔を表す))を成立するように制御することが望ましい。
【0013】
このように構成すれば、サセプタの回転角度を測定する角位置センサと、サセプタの径方向位置に沿って測定ポイントを移動可能な非接触式温度計とによりサセプタ及び半導体ウェーハの全面の温度測定を行うことができる。ここで、コントローラが、サセプタ上の測定ポイントの座標位置と半導体ウェーハ載置位置(ザグリ部)とを紐付けしておくことで、サセプタ上面と半導体ウェーハ上面との温度の区別を容易に行うことができる。
また、サセプタの回転角度の誤差を補正しながら半導体ウェーハ及びサセプタの温度測定を行うため、モータの回転数の累積に伴うサセプタの回転角度の誤差が大きくなることがなく、サセプタ上の半導体ウェーハの温度分布情報を精度良く得ることができる。その結果、加熱部の温度や位置、チャンバ内のガス濃度やガス流速等の制御、或いは、サセプタの水平度やサセプタ上の半導体ウェーハの位置の調整を行って、半導体ウェーハとサセプタの温度分布を最適化し、エピタキシャル膜を均一化することができる。
【0014】
また、前記課題を解決するためになされた、本発明に係るエピタキシャルウェーハの製造方法は、チャンバ内においてサセプタ上に載置された半導体ウェーハを加熱するとともに前記サセプタをモータにより回転させ、反応ガスにより前記半導体ウェーハ上に薄膜を気相成長させるエピタキシャルウェーハの製造方法であって、コントローラは、前記サセプタの回転角度と、前記サセプタの径方向に測定位置を移動可能な非接触温度計の測定位置とにより、前記サセプタ上の座標情報とその温度情報とを取得し、前記モータと前記サセプタとの間の回転角度の誤差を補正した上で前記サセプタと半導体ウェーハ上面の温度分布情報を算出し、前記温度分布情報に基づき、前記半導体ウェーハ上面の温度分布を均一化するように制御して半導体ウェーハ上の薄膜を気相成長させることに特徴を有する。
【0015】
尚、前記角位置センサにより検出された回転角度と前記非接触温度計により測定された温度情報とに基づき前記モータと前記サセプタとの間の回転角度の誤差を補正するステップにおいて、前記角位置センサにより取得された前記回転角度と、前記サセプタの上面に設けられた、放射率が前記サセプタの上面と0.01以上異なる基準部の温度情報とに基づき、前記モータと前記サセプタとの間の回転角度の誤差を補正してもよい。
また、前記サセプタ上に半導体ウェーハが搭載されているか否かを記憶部に記憶し、前記記憶部に記憶されたシリコンウェーハが搭載されている領域のみの温度分布情報に基づいて、半導体ウェーハ上面の温度分布を均一化するように制御するモードを備えることが望ましい。
【0016】
このような方法によれば、サセプタ及び半導体ウェーハの全面の温度測定を行うことができる。ここで、コントローラが、サセプタ上の測定ポイントの座標位置とウェーハ載置位置(ザグリ部)とを紐付けしておくことで、サセプタ上面と半導体ウェーハ上面との温度の区別を容易に行うことができる。
また、サセプタの回転角度の誤差を補正しながら半導体ウェーハ及びサセプタの温度測定を行うため、モータの回転数の累積に伴うサセプタの回転角度の誤差が大きくなることがなく、サセプタ上の半導体ウェーハの温度分布情報を精度良く得ることができる。その結果、加熱部の温度や位置、チャンバ内のガス濃度やガス流速等の制御、或いは、サセプタの水平度やサセプタ上のウェーハの位置の調整を行って、半導体ウェーハとサセプタの温度分布を最適化し、エピタキシャル膜を均一化することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、エピタキシャル層の膜厚や抵抗率の面内均一性の良好なエピタキシャルウェーハを得ることのできるエピタキシャルウェーハの製造装置及び製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本発明のエピタキシャルウェーハの製造装置の第1の実施の形態の概略構成を示す断面図である。
【
図2】
図2は、
図1の製造装置が備えるサセプタの平面図である。
【
図3】
図3は、サセプタ径方向位置をシリコンウェーハ上の位置に固定してサセプタ1周分の温度を測定した場合の温度分布の一例を示すグラフである。
【
図4】
図4は、モータの回転数が累積し、モータとサセプタの回転角のずれが生じた場合の温度分布の例を示すグラフである。
【
図5】
図5は、実施例における実験1の結果を示すグラフである。
【
図6】
図6(a)、
図6(b)、
図6(c)は、実施例における実験3の結果を示すグラフである。
【
図7】
図7は、実験3により得られたサセプタの温度データ代表3か所の温度分布グラフである。
【
図8】
図8は、実施例1により得られたサセプタの温度データ代表3か所の温度分布グラフである。
【
図9】
図9は、実施例1、比較例1において代表ウェーハにおける9箇所の温度と膜厚との関係を示すグラフである。
【
図10】
図10は、従来のエピタキシャル成長装置の断面図である。
【
図11】
図11は、従来のバッチ式のサセプタの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係るエピタキシャルウェーハの製造装置及び製造方法について図面を用いながら説明する。本実施形態においては、シリコンウェーハを用いて説明するが、シリコンウェーハに限定されず、SiCウェーハやGaNウェーハ等の半導体ウェーハであっても良い。
図1は、本発明のエピタキシャルウェーハの製造装置(以下、エピタキシャル成長装置と呼ぶ)の第1の実施の形態の概略構成を示す断面図である。エピタキシャル成長装置1は、
図1に示すように、ベースプレート部11と、ベースプレート部11上に配置されるドーム型の石英ベルジャー12と、石英ベルジャー12を覆う金属製のチャンバカバー13とを備える。石英ベルジャー12とチャンバカバー13とにより反応チャンバ14が構成される。
【0020】
また、エピタキシャル成長装置1は、反応チャンバ部14内に、複数のシリコンウェーハWを載置するサセプタ2と、サセプタ2を高周波電源(図示せず)からの電流で誘導加熱するための高周波コイル17(加熱部)と、エピタキシャル成長時の反応生成物等が高周波コイル17へ付着するのを防止する石英カップ18とを備えている。
本発明に係る第1の実施の形態において、サセプタ2は、
図2に平面図で示すように円板の上面に円周に沿って複数(図では10個)のザグリ部Z(Z1~Z10)が設けられ、各ザグリ部ZにシリコンウェーハWが載置される。
【0021】
更にエピタキシャル成長装置1は、エピタキシャル層形成のための反応ガスを反応チャンバ14内部に導入する反応ガス供給ノズル19と、サセプタ2と連結した回転軸20を回転させることでサセプタ2を回転させるためのモータ21を備えている。このモータ21の回転軸には、モータ21の回転角を検出する角位置センサ5が設けられている。角位置センサ5としては、サセプタ2の温度分布を十分に把握するために各ザグリ部Zの直径分の領域につき10点以上の測定点を得る事ができる角度分解能を有することが望ましい。
【0022】
反応ガス供給ノズル19には、図示しない反応ガス供給部より反応ガスが供給される。反応ガス供給ノズル19には、多数の小孔(図示せず)が設けられており、反応ガスは、それら多数の小孔を通って、ほぼ水平方向に反応チャンバ14内に導入される。そして、反応チャンバ14内に導入された反応ガスが、サセプタ2で加熱されたシリコンウェーハW上で反応してエピタキシャル層を形成する。
【0023】
この反応時の反応生成ガスおよび未反応ガスは、石英カップ18側壁と反応チャンバ14との間を通り、ベースプレート部11に設けられた多数の排気孔11aを通って図示しない排気管より排気される。
このように反応ガスを反応ガス供給ノズル19の多数の小孔より反応チャンバ14内でほぼ水平に導入し、サセプタ2外周部の下方に設けられている多数の排気孔11aより排気することで、サセプタ2の周縁部に向かう均一な反応ガスの流れを作る。また、同時にサセプタ2を回転させることで、シリコンウェーハW上方への反応ガスの流れの均一性を確保している。
【0024】
サセプタ2の温度制御は、高周波コイル17に流す高周波電流の制御により行われ、サセプタ2面内の温度分布の均一性は、高周波コイル17の分割された各コイルそれぞれの高周波電流の制御や位置の調整、或いは、高周波コイル17とサセプタ2との距離や水平度を変化させて実現するように構成されている。
サセプタ2の温度検出は、加熱されたサセプタ2の放射光を基にして温度を検出する、輝度温度計や全放射温度計等の非接触式温度計30を用いて行う(サンプリング時間が0.05秒以上、温度分解能が0.5℃以下のもの)。この非接触式温度計30は、チャンバカバー13に設けられたチャンバ窓部13aに取り付けられている。また、非接触式温度計30は、サセプタ2の上面の半径方向(サセプタ2中心Cから径方向)にその測位ポイントを移動可能とする移動機構7に接続されている。
【0025】
例えば、移動機構7により非接触式温度計30の測位ポイントをサセプタ2中心Cからサセプタ径方向に移動し、
図2に示すように、非接触式温度計30が測定する径方向位置Rをr1で固定した場合、サセプタ2が1回転する間、シリコンウェーハWの表面においてサセプタ2中央寄り(inside)の温度が測定される。
また、非接触式温度計30が測定する径方向位置Rをr3で固定した場合、サセプタ2が1回転する間、シリコンウェーハWの表面においてサセプタ2外周寄り(outside)の温度が測定される。
また、非接触式温度計30が測定する径方向位置Rをr2で固定した場合、サセプタ2が1回転する間、シリコンウェーハWの表面においてサセプタ2の中央寄りと外周寄りとの間(center)の温度が測定される。
サセプタ2の温度設定時には、後述のコントローラ60が、非接触式温度計30により検出した温度を監視しながら、高周波電源の電流等を調整して設定する。
【0026】
また、
図1に示すエピタキシャル成長装置1は、反応チャンバ14内の熱処理環境の自動制御を行うために、コントローラ60を備える。コントローラ60は、例えば、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)により構成され、モータ21と、モータ21の回転位置(回転角度)を検出する角位置センサ5と、非接触式温度計30と、その移動機構7と、高周波コイル17に電流を供給する高周波電源とに接続されている。
【0027】
コントローラ60は、サセプタ2の回転角度θとサセプタ径方向位置Rにより決定されるサセプタ2上の座標位置(R,θ)の温度Tを取得する。例えば、サセプタ径方向位置RをシリコンウェーハW上の位置(R=r2)に固定してサセプタ1周分の温度Tを測定した場合には、
図3のような温度分布のグラフを得ることができる。
図3のグラフにおいて、縦軸は温度(℃)、横軸は回転角θ(°)である。
図3のグラフにおいて、各シリコンウェーハWの境界にあるサセプタ2表面の温度は、シリコンウェーハWの温度に比べて急激に上昇している。これは、サセプタ2の放射率がシリコンウェーハWの放射率より高いためにシリコンウェーハWが載置されない領域のサセプタ温度が高く測定されるためである。
また、コントローラ60は、同様の温度測定を異なるサセプタ径方向位置Rについて行った複数のデータを重ねることでウェーハ面全体の温度分布情報を得る。
【0028】
また、サセプタ2上のウェーハ搭載位置の座標(R,θ)とザグリ部Zの位置情報とを紐付けてコントローラ60に設定しておくことで、シリコンウェーハWとサセプタ2の温度分布情報を分離することができる。本第1の実施の形態のようにバッチ式装置の場合、シリコンウェーハWの位置設定はサセプタ1周につき複数の領域について設定することができ、複数のウェーハ表面温度分布情報を個別に抽出することが可能である。
【0029】
続いて、このように構成されたエピタキシャル成長装置1を用いてシリコンウェーハW上に薄膜を形成させる本発明のエピタキシャルウェーハの製造方法について述べる。
まず、シリコンウェーハWをサセプタ2の上に載置する。
図2に示すようにサセプタ2には、例えば10個のザグリ部Z(Z1~Z10)が周方向に沿って設けられており、ザグリ部Z1~Z10には、エピタキシャル膜を形成するための10枚のシリコンウェーハW1~W10を載置する。また、サセプタ2の表面には、サセプタ2とモータ21の回転角度のずれ補正の基準となる基準部として溝9がザクリ部Z9、Z10の間に形成されている。なお、溝9に代えて凸形状や表面の粗さを変更した部分を形成して基準部としても良い。
溝9は、10枚のシリコンウェーハWの放射率よりも放射率が0.01以上異なるもの(本実施の形態では溝9の放射率がシリコンウェーハW1~W10の放射率よりも、およそ0.04高いもの)を使用する。例えば、溝9として放射率がシリコンウェーハW1~W10に対し0.04異なるものを用いると、1100℃温度帯域であれば検出される温度は5℃程度高く、或いは、低く検出される。5℃程度異なれば基準部として設定する上で十分な温度差となる。
本実施の形態では、溝9の放射率を、シリコンウェーハWの放射率よりも0.04以上高くすることにより、溝9の温度が他のシリコンウェーハWの温度よりも高くなる。この温度差を後述のサセプタ2とモータ21の回転角度のずれ補正の基準部として用いることができる。
【0030】
サセプタ2に10枚のシリコンウェーハW1~W10を載置した後、サセプタ2を例えば6rpmの回転速度で回転させて、シリコンウェーハW1~W10を公転させる。
また、コントローラ60の指示により、高周波電源を制御し、高周波コイル17によってシリコンウェーハWを加熱し、シリコンウェーハWに形成される薄膜の原料となる反応ガスを、反応ガス供給ノズル19を通じて反応チャンバ14内に導入する。
このようにして、加熱されたシリコンウェーハWの表面にエピタキシャル薄膜の形成を行う。
【0031】
本発明では、このようにサセプタ2を回転させながらシリコンウェーハWの表面にエピタキシャル薄膜の形成を行う際に、同時に非接触式温度計30によりサセプタ2及びその上に載置されたシリコンウェーハWの温度を測定する。即ち、サセプタ2を例えば1回~数十回、回転させた後で移動機構7により非接触式温度計30の測定ポイントをサセプタ径方向に移動し、少なくとも各ウェーハ上の9箇所の温度測定を行う。
また、サセプタ2が回転中に十分なθ位置分解能を得るために、測定時間間隔(秒)は、X/回転速度(rpm)で、0.7≧X≧0.4の範囲であることが望ましい。
【0032】
コントローラ60は、非接触式温度計30が測定する温度情報、径方向位置Rと、角位置センサ5が検出するモータ21(サセプタ2)の回転角θとにより決定される測定ポイントの座標(R,θ)に基づき各シリコンウェーハW1~W10の面内温度分布情報を得る(上記のように少なくとも各ウェーハ上の9箇所の測定ポイントで測定する)。コントローラ60は、サセプタ2上のウェーハ搭載位置の座標(R,θ)とザグリ部Zの位置情報とを紐付けて管理しているため、各シリコンウェーハWの上面温度とサセプタ2上面の温度との区別を容易に行うことができる。
そして、コントローラ60は、各シリコンウェーハWの面内における温度分布情報に基づき、高周波コイル17に電力供給する高周波電源の出力、高周波コイル17とサセプタ2との距離、サセプタ2の水平度等を制御し、シリコンウェーハWとサセプタ2の温度分布を最適化し、エピタキシャル膜の均一化を図る。
【0033】
ここで、本願発明者の知見によれば、サセプタ2を回転駆動するモータ21とサセプタ2との間で、部材と部材の接触部が回転中にわずかに滑るため、モータ21の回転数が累積すると、モータ21とサセプタ2の回転にずれが生じる。その結果、モータ21の回転角を検出する角位置センサ5による回転角の位置と、サセプタ2上の周方向の位置とが一致しなくなる。具体的な目印としては、例えば
図4(R=r2の場合のみ示す)に示すように溝9が位置する回転角324°の位置が、測定温度の分布データのピーク位置からずれる。
【0034】
そこで、コントローラ60は、溝9が配置された回転角324°の位置と、測定温度のピーク位置とのずれが予め設定された閾値を超えると、それらの位置が一致するように測定温度を補正する。
具体的には、コントローラ60は、測定温度のピーク位置と回転角324°の位置のずれが予め設定された閾値を越えると、溝9が配置された回転角324°の位置に、測定温度のピーク位置(基準部)が一致するように、サセプタ一周分の温度分布データをシフトし、そのときのサセプタ2上の径方向位置Rにおける各シリコンウェーハWの温度分布を決定する。また、コントローラ60は、回転を続けるサセプタ2の回転角とモータ21の回転角を同期するよう角位置センサ5のカウンタをリセットする。
このように本発明においては、サセプタ2とモータ21の回転角θのずれを補正するようにしているため、精度の高いウェーハ面内温度分布情報を得ることができる。なお、サセプタ2とモータ21の回転角θのずれの補正は、サセプタ2が1回転する毎、或いは、所定の回転数回転する毎に行うようにしてもよい。
【0035】
以上のように本発明に係る第1の実施の形態によれば、サセプタの回転角度θを測定する角位置センサ5と、サセプタ2の径方向位置Rに沿って測定ポイントを移動可能な非接触式温度計30とによりサセプタ2及びシリコンウェーハWの全面の温度測定を可能とした。ここで、コントローラ60は、サセプタ2上の測定ポイントの座標(R,θ)とザグリ部Zの位置とを紐付けしておくことで、サセプタ2上面とシリコンウェーハW上面との温度の区別を容易に行うことができる。
更に、サセプタ2上に、シリコンウェーハWよりも放射率が0.01以上異なる溝9を配置することで、モータ21とサセプタ2との間の回転角度の誤差を補正するための基準部を設け、サセプタ2の回転角度の誤差を補正しながら、ウェーハW及びサセプタ2の温度測定を行う。
これにより、モータ21の回転数の累積に伴うサセプタ2の回転角度の誤差が大きくなることがなく、サセプタ2上のシリコンウェーハWの温度分布情報を精度良く得ることができる。その結果、高周波コイル17に電力供給する高周波電源の出力、高周波コイル17とサセプタ2との距離、サセプタ2の水平度等を制御し、シリコンウェーハWとサセプタ2の温度分布を最適化し、エピタキシャル膜を均一化することができる。
また、高周波コイル17の分割された各コイルそれぞれの位置の調整、或いは、チャンバ内における原料ガスの流れや濃度の制御を行っても良い。
【0036】
続いて、本発明に係る第2の実施の形態について説明する。この第2の実施の形態においては、第1の実施の形態のようにサセプタ2上に基準部として溝9を形成するのではなく、例えば、サセプタ2上に絶縁膜をザグリ部Z10とザグリ部Z1との間に形成する。
或いは、サセプタ2と放射率の異なる材質(例えばサセプタやウェーハと表面粗さが異なるように形成したポリシリコン膜等)で成膜したものとする。つまり、サセプタ2の表面と放射率が0.01以上異なる成膜材料から成る成膜部を備えるサセプタ2を用い、この成膜部を基準部とする。その他の装置構成は、第1の実施の形態と同じとすることができる。
【0037】
続いて、本発明に係る第3の実施の形態について説明する。この第3の実施の形態においては、第1の実施の形態、或いは第2の実施の形態のいずれかの構成と同様に、モータ21の回転数の累積に伴うサセプタ2の回転角の誤差を補正するための基準部を設ける。
コントローラ60は、記憶部61を有しており、各ザグリ部ZにシリコンウェーハWが載置されているか否かの情報を記憶部61に記憶する。本実施の形態では、複数あるザグリ部ZのすべてにシリコンウェーハWが載置されている場合、第1の実施の形態、或いは第2の実施の形態のようにサセプタ2及びサセプタ2に載置されたウェーハWについて温度分布情報を作成する(「通常モード」とも称呼する)。
一方で、複数あるザグリ部Zの一部であるザグリ部Z1~Z6のみにシリコンウェーハWを載置する場合、コントローラ60は、ザグリ部Z1~Z6のみにシリコンウェーハWが載置されていることを記憶部61に記憶する。この場合に、コントローラ60は、ザグリ部Z7~Z10の領域に関する温度情報は除去し、ザグリ部Z1~Z6に載置されたシリコンウェーハWの温度情報のみを用いて温度分布情報を作成するモード(「一部搭載モード」とも称呼する)を備える。
このように構成することによって、コントローラ60において処置するデータ量を軽減することができ、処理能力の低下を抑制することができる。加えて、一部搭載モードでは、ウェーハW上面の温度分布と直接的には関係しないザグリ部Z7~Z10の温度情報を除外することで、ウェーハW上面の温度分布をより均一に制御しやすくなる。
【0038】
尚、前記第1乃至第3の実施の形態においては、複数のシリコンウェーハWを同時に成膜処理するバッチ式の成膜処理装置について示したが、本発明にあっては、この形態に限定されるものではない。
例えば、シリコンウェーハWを1枚ずつ処理する枚葉式装置にも適用することができる。その場合、サセプタ回転軸とシリコンウェーハW中心が同一となる。コントローラ60において、ウェーハ半径よりも内側はシリコンウェーハW、外側はサセプタとなるように設定すればよい。
また、枚葉式の場合、温度分布を十分に把握するために、角度分解能1度以内の角位置センサを用いることが望ましい。
【実施例0039】
本発明に係るエピタキシャルウェーハの製造装置及び製造方法ついて、実施例に基づきさらに説明する。
【0040】
(実験1)
実験1では、回転速度6rpmで回転するサセプタに対する温度測定のサンプリング間隔Xについて検証した。測定時間間隔(秒)は、X/回転速度(6rpm)となる。そのときの、X=0.55の場合と、X=0.8の場合について検証した。
図1に示したエピタキシャル成長装置1において、シリコンウェーハW10枚をザグリZ1~Z10に載置し、シリコンウェーハWと放射率がおよそ0.04異なる溝9をサセプタ2に形成した。サセプタ回転速度は6rpm、ウェーハ加熱温度は1100℃とし、サンプリング間隔X=0.55の場合と、X=0.8の場合とで、サセプタ1周分の温度波形を比較した。
【0041】
実験1の結果を
図5のグラフに示す。
図5のグラフにおいて、縦軸は温度T(℃)、横軸はサセプタの回転角度θ(°)である。
図5に示すようにサンプリング間隔X=0.55の場合、ザグリの間隔と温度波形の変化が正しく一致するが、サンプリング間隔X=0.8の場合、θ位置分解能が不足しているため、本来のザグリ間隔と温度波形が不一致となる箇所が多くなった。よって、サンプリング間隔Xの好ましい範囲は、下限が温度計の時間分解能の性能限界である0.4以上、上限が0.7以下(0.4≦X≦0.7)であれば十分に実用的であることを確認した。
【0042】
(実験2)
実験2では、モータの回転の累積によって生じるサセプタの回転角のずれについて検証した。
図1に示したエピタキシャル成長装置1において、シリコンウェーハW10枚をザグリZ1~Z10に載置し、シリコンウェーハWと放射率がおよそ0.04異なる溝9をサセプタ2に形成した。モータ回転数は6rpm、ウェーハ加熱温度は1100℃とし、サンプリング間隔X=0.55としてモータ回転を累積させ、温度波形を測定した。
【0043】
図6(a)にモータ1回転目、
図6(b)にモータ50回転目、
図6(c)にモータ100回転目の結果を示す。
図6(a)、(b)、(c)に示すようにサセプタ(モータ)の回転が累積すると、モータとサセプタの回転にずれが生じることがわかる。これは、モータとサセプタとの間で、部材と部材の接触部が回転中にわずかに滑るためと考えられる。
このようなずれは、本発明のように、例えば、サセプタ1周の間の測定温度分布で、ピーク温度がサセプタ2に形成された溝9(回転角324°)の位置となることに基づき補正すればよい。即ち、回転角324°の位置を基準部とし、ピーク温度の位置が基準部からずれてきた場合に、ピーク温度の位置を基準部に合わせる補正(サセプタ1周分の温度分布データをシフトする)を行えばよい。
【0044】
(実験3)
実験3では、サセプタ上のシリコンウェーハの温度分布に基づきサセプタ温度の補正を行った。
サセプタ回転速度を6rpm、ウェーハの加熱温度を1100℃、原料ガス(TCS、H2の混合ガス)の導入を行ってウェーハ上にエピタキシャル薄膜を形成した。サセプタ上の基準部として、サセプタと放射率がおよそ0.04異なる基準部をザグリZ9とザグリZ10の間に形成し、コントローラの制御により、モータ回転数の累積に伴うサセプタとモータの回転角のずれを補正した。
【0045】
以上により得られたサセプタの温度データ代表3か所(各ザグリ部内におけるサセプタの中央側(inside)、外周側(outside)、それらの中間(center))の温度分布グラフを
図7に示す。
【0046】
(実施例1)
図7に示すようにザグリ部内における中間(center)、および、ザグリ部内におけるサセプタの内周側(inside)の温度が1100℃より低く、内周側、中間、外周側で温度が比較的ばらついていることがわかった。
そこで、引き続きコントローラの制御のもと、この低温領域の直下の高周波コイルの高さを調整して温度分布を均一化し、その際に面内平均温度がシフトするため、コイル出力と回転数を変更することで調整を行った。温度調整後に再度温度測定を行い、その結果として、サセプタの温度データ代表3か所(各ザグリ内におけるサセプタの内側(inside)、中間(center)、外側(outside))の温度分布グラフを
図8に示す。コントローラにより温度分布を均一に制御する前の温度分布(
図7)に比べて、コントローラにより温度分布を均一に制御した後の温度分布(
図8)では、内周側、中間、外周側で温度がより均一になっているのが分かる。
【0047】
また、このときの代表ウェーハにおける9箇所の測定ポイントの温度と膜厚との関係を
図9のグラフ、及び表1に示す。コイル高さ調整によりウェーハ面内の温度差を小さくすることで、膜厚差も小さくすることができている。このようにエピタキシャル成長させることで、膜厚バラツキなど特性の面内均一性の向上が見込まれることを確認した。
【0048】
【0049】
(比較例1)
比較例1として、実験3の
図7の状態から温度補正を行わない場合の、代表ウェーハにおける9箇所の測定ポイントの温度と膜厚との関係を
図9のグラフ、表2に示す。
温度補正を行わない場合、温度分布のばらつきに伴い膜厚がばらつくことを確認した。
【0050】