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特開2024-117267FOXO1阻害剤及び筋萎縮の抑制・改善用組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117267
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】FOXO1阻害剤及び筋萎縮の抑制・改善用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4709 20060101AFI20240822BHJP
   A61K 31/506 20060101ALI20240822BHJP
   A61K 31/44 20060101ALI20240822BHJP
   A61K 31/496 20060101ALI20240822BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240822BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20240822BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
A61K31/4709
A61K31/506
A61K31/44
A61K31/496
A61P43/00 111
A61P21/00
A61P3/10 ZNA
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023269
(22)【出願日】2023-02-17
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、研究成果展開事業「転写因子FOXO1を標的とした筋萎縮予防のための新規機能性食品の開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】507219686
【氏名又は名称】静岡県公立大学法人
(71)【出願人】
【識別番号】509349141
【氏名又は名称】京都府公立大学法人
(71)【出願人】
【識別番号】305027401
【氏名又は名称】東京都公立大学法人
(71)【出願人】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】100205914
【弁理士】
【氏名又は名称】堀越 総明
(74)【代理人】
【識別番号】100162189
【弁理士】
【氏名又は名称】堀越 真弓
(72)【発明者】
【氏名】三浦 進司
(72)【発明者】
【氏名】守田 昭仁
(72)【発明者】
【氏名】浅井 章良
(72)【発明者】
【氏名】亀井 康富
(72)【発明者】
【氏名】眞鍋 康子
(72)【発明者】
【氏名】出口 真次
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086BC17
4C086BC36
4C086BC50
4C086BC82
4C086CB03
4C086GA07
4C086GA08
4C086GA10
4C086GA12
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA94
4C086ZC35
4C086ZC41
(57)【要約】
【課題】FOXO1の活性を阻害・抑制することのできるFOXO1阻害剤を提供する。
【解決手段】本発明のFOXO1阻害剤は、レバスチニブ(Rebastinib)、デュベルマチニブ(Dubermatinib)、アルチラチニブ(Altiratinib)、ダヌサチブ(Danusertib)及びダサチニブ(Dasatinib)からなる群から選ばれる少なくとも1種のプロテインキナーゼ阻害活性を有する化合物を含有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レバスチニブ(Rebastinib)、デュベルマチニブ(Dubermatinib)、アルチラチニブ(Altiratinib)、ダヌサチブ(Danusertib)及びダサチニブ(Dasatinib)からなる群から選ばれる少なくとも1種のプロテインキナーゼ阻害活性を有する化合物を含有することを特徴とするFOXO1阻害剤。
【請求項2】
レバスチニブ(Rebastinib)を含有することを特徴とするFOXO1阻害剤。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のFOXO1阻害剤を有効成分として含有することを特徴とする、筋萎縮の抑制、改善、予防又は治療用組成物。
【請求項4】
前記筋萎縮が、サルコペニア又は廃用性筋萎縮であることを特徴とする、請求項3に記載の筋萎縮の抑制、改善、予防又は治療用組成物。
【請求項5】
前記筋萎縮が、二次性サルコペニアであることを特徴とする、請求項3に記載の筋萎縮の抑制、改善、予防又は治療用組成物。
【請求項6】
請求項1又は2に記載のFOXO1阻害剤を有効成分として含有することを特徴とするFOXO1が関与する病態、症状又は疾患の抑制、改善、予防又は治療剤。
【請求項7】
前記FOXO1が関与する病態、症状又は疾患が、筋萎縮又は糖尿病であることを特徴とする請求項6に記載の剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、FOXO1阻害剤及びそれを含有する筋萎縮の抑制、改善、予防又は治療用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
骨格筋の萎縮は、主に神経原性、筋原性及び廃用性の3タイプに分類されているが、近年、加齢による筋萎縮が注目されている。加齢による筋萎縮とは、加齢に伴って少しずつゆっくりと筋肉の量が減少する現象であり、筋萎縮に係る分子機構も上述した3タイプとは異なることが明らかにされている。廃用性や加齢による筋萎縮(サルコペニア)が原因となる運動機能の低下は、ロコモティブシンドロームやフレイルの主要な原因となっているとともに、代謝障害や感染症の合併頻度を高めるなど、生活の質のみならず原疾患の予後をも悪化させる。そのため、超高齢化社会を迎えるにあたり、サルコペニアの予防、抑制、改善又は治療方法の確立は、喫緊の医学的課題である。
【0003】
サルコペニアによる筋萎縮は、加齢に伴う一次性サルコペニアと、不活動、疾病又は薬物の副作用等による二次性サルコペニアとに大別される。このうち、超高齢社会においては、運動機能の衰え、すなわち不活動による二次性サルコペニアも問題視されている。これまで運動機能の維持には、運動トレーニングや適切な栄養素摂取が重要とされてきた。しかし、栄養療法は一貫した有効性が証明されておらず、運動療法については高い脱落率が問題となっている。さらに、わが国において二次性サルコペニアを適応症とする薬剤は存在していない。
【0004】
他方、FOXO1(Forkhead box-containing protein O1)は、DNA結合モチーフを形成するフォークヘッドボックスを有するフォークヘッド型転写因子である。FOXO1は、胞巣型横紋筋肉腫において、Pax3遺伝子又はPax7遺伝子と融合する遺伝子転座を起こし、FOXO1-Pax3又はFOXO1-Pax7の融合タンパク質を生ずる遺伝子として同定された。このことから、FOXO1が骨格筋機能に何らかの役割を担っていることが推察された。また、線虫では、FOXO1のオーソログであるDAF-16が寿命延長に必須の遺伝子であり、老化・寿命に関与すること、インスリンによる同化作用と拮抗し、代謝反応とも関連していること等が明らかとなっている。
【0005】
発明者らは、廃用性筋萎縮のように、物質の異化反応が亢進することによって引き起こされる筋萎縮には、遺伝子の発現調節が関連していると想定し、骨格筋萎縮モデル(絶食、1型糖尿病、不活動状態)において発現量が変化する転写因子を探索したところ、FOXO1の発現量が骨格筋の萎縮と連動して増加することを見出した(非特許文献1)。そこで、FOXO1が実際に骨格筋萎縮を引き起こすか否か検討するため、骨格筋特異的FOXO1過剰発現マウスを作出したところ、筋タンパク質分解の促進と、廃用性筋萎縮様の症状を認めた(非特許文献2)。
【0006】
さらに、薬物の副作用による骨格筋萎縮である、グルココルチコイド療法に伴う副作用「ステロイド筋症」や、スタチン系薬剤とフィブレート系薬剤の併用による副作用「横紋筋融解症」においても、骨格筋でのFOXO1発現増加による筋萎縮が関与することが示されている(非特許文献3、非特許文献4)。また、骨格筋特異的なFOXOファミリー欠損マウスは、1型糖尿病による筋萎縮が抑制されること(非特許文献5)、ドミナントネガティブFOXO1発現による骨格筋FOXO1活性の抑制により、がん悪液質モデルにおける骨格筋量の減少および筋機能低下が抑制されること(非特許文献6、非特許文献7)も報告されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】FEBS Letters, 2003年, Vol. 536, pp. 232-236
【非特許文献2】THE JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY, 2004年, Vol. 279, No. 39, pp. 41114-41123
【非特許文献3】Cell Metabolism, 2011年, Vol. 13, pp. 170-182,
【非特許文献4】The Journal of Toxicological Sciences, 2021年, Vol. 46, No. 1, pp. 11-24
【非特許文献5】Diabetes, 2019年, Vol. 68, pp. 556-570
【非特許文献6】Cancer Gene Therapy, 2007年, Vol. 14, pp. 945-952
【非特許文献7】The FASEB Journal, 2012年, Vol. 26, No. 3, pp. 987-1000
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述の研究報告によれば、FOXO1の発現増加、すなわちFOXO1の活性化が、不活動、疾病又は薬物の副作用等に起因する二次性サルコペニアの発症に関与することが示されている。これらのことから、FOXO1の活性を抑制・阻害することが、寝たきりやベッドレストによる不活動(廃用性)筋萎縮、インスリン機能不全による筋萎縮、1型糖尿病による筋萎縮、グルココルチコイドや脂質異常症改善薬の副作用による筋萎縮、がん悪液質により誘発される筋萎縮等といった二次性サルコペニアの抑制、改善、予防又は治療に有効であることが示唆される。それゆえ、FOXO1の働きを阻害することを作用点とした、筋萎縮の抑制、改善、予防又は治療に資する薬剤が求められている。
【0009】
したがって、本発明は上述した点に鑑みてなされたもので、その目的は、FOXO1の活性を阻害することのできるFOXO1阻害剤を提供することにある。
【0010】
また、本発明の他の目的は、FOXO1の活性を阻害することを作用点とした、筋萎縮の抑制、改善、予防又は治療用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、FOXO1の活性を阻害する化合物をスクリーニングする方法及びこのスクリーニング方法で得られたヒット化合物の筋萎縮の抑制・改善効果を評価するオリジナルの試験方法を確立した。この試験方法を用いて、化合物ライブラリーより選択した化合物、約300種についてスクリーニングを行い、ヒット化合物について筋萎縮の抑制・改善効果の評価を行った。この結果、FOXO1活性を阻害する化合物及び筋萎縮を抑制・改善する化合物を見出した。この知見に基づき、本発明を完成するに至った。
【0012】
上記課題を解決するため、本発明のFOXO1阻害剤は、レバスチニブ(Rebastinib)、デュベルマチニブ(Dubermatinib)、アルチラチニブ(Altiratinib)、ダヌサチブ(Danusertib)及びダサチニブ(Dasatinib)からなる群から選ばれる少なくとも1種のプロテインキナーゼ阻害活性を有する化合物を含有する。
【0013】
上述した化合物を用いることにより、FOXO1の活性を抑制・阻害することができる。これにより、FOXO1活性が関与する病態、症状又は疾患を抑制、改善、予防又は治療するための医薬や、FOXO1の機能解明のための研究開発にこれらの化合物を用いることができる。
【0014】
また、本発明のFOXO1阻害剤は、レバスチニブ(Rebastinib)を含有する。これにより、優れた抑制・阻害効果を有するFOXO1阻害剤が得られる。
【0015】
また、本発明の筋萎縮の抑制、改善、予防又は治療用組成物は、上述したFOXO1阻害剤を有効成分として含有することも好ましい。これにより、FOXO1活性を阻害することを作用点とした、筋萎縮の抑制、改善、予防又は治療用組成物が得られる。
【0016】
また、本発明の筋萎縮の抑制、改善、予防又は治療用組成物に関し、筋萎縮が、サルコペニア又は廃用性筋萎縮であることも好ましい。これにより、FOXO1の活性を阻害することを作用点とした、サルコペニア又は廃用性筋萎縮の抑制、改善、予防又は治療用組成物が得られる。
【0017】
また、本発明の筋萎縮の抑制、改善、予防又は治療用組成物に関し、筋萎縮が、二次性サルコペニアであることも好ましい。これにより、FOXO1の活性を阻害することを作用点とした、二次性サルコペニアの抑制、改善、予防又は治療用組成物が得られる。
【0018】
また、本発明のFOXO1が関与する病態、症状又は疾患の抑制、改善、予防又は治療剤は、上述したFOXO1阻害剤を有効成分として含有する。これにより、FOXO1活性を阻害することを作用点とした、FOXO1が関与する病態、症状又は疾患を抑制、改善、予防又は治療するための剤が得られる。
【0019】
また、本発明のFOXO1が関与する病態等の抑制、改善、予防又は治療剤に関し、FOXO1が関与する病態、症状又は疾患が、筋萎縮又は糖尿病であることも好ましい。これにより、筋萎縮又は糖尿病を抑制、改善、予防又は治療するための剤が得られる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、以下の効果を有する。
(1)FOXO1の活性を阻害するFOXO1阻害剤を得ることができる。
(2)FOXO1活性を阻害することを作用点とした、筋萎縮の抑制、改善、予防又は治療用組成物を得ることができる。
(3)FOXO1の活性が関与する病態、症状又は疾患を抑制、改善、予防又は治療するための剤を得ることができる。
(4)サルコペニア又は廃用性筋萎縮の抑制、改善、予防又は治療用組成物を得ることができる。
(5)二次性サルコペニアの抑制、改善、予防又は治療用組成物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施例1における、(A)FOXO1活性を阻害する化合物のスクリーニング結果を示すグラフ及び(B)レバスチニブの濃度依存的FOXO1阻害活性を示すグラフである。
図2】実施例2における、(A)パルス-チェイス分析の試験方法を示す説明図、(B)培養24時間後の細胞内タンパク質中の35S-メチオニン残量を示すグラフ、及び(C)培養48時間後の細胞内タンパク質中の35S-メチオニン残量を示すグラフである。
図3】実施例3における、(A)C2C12骨格筋細胞の免疫蛍光染色結果を示す写真及び(B)免疫蛍光染色された細胞の筋管直径の測定結果を示すグラフである。
図4】実施例4における、グルココルチコイド誘発性筋萎縮モデル細胞の筋張力測定結果を示すグラフである。
図5】実施例5における、がん悪液質誘発性筋萎縮モデル細胞の筋張力測定結果を示すグラフである。
図6】実施例6におけるFOXO1標的遺伝子発現分析の結果を示すグラフであり、(A)FOXO1 mRNA、(B)FOXO3a mRNA、(C)atrogin-1 mRNA及び(D)Gadd45 mRNAの遺伝子発現結果を示すグラフである。
図7】実施例7における、タンパク質発現分析の結果を示し、(A)ウェスタンブロットの結果を示す写真並びに(B)FOXO1タンパク質、(C)FOXO3aタンパク質及び(D)atrogin-1タンパク質の発現レベルを示すグラフである。
図8】実施例8における、タンパク質発現分析の結果を示し、(A)ウェスタンブロットの結果を示す写真、(B)リン酸化FOXO1(pFOXO1)タンパク質の発現レベル、(C)総FOXO1タンパク質の発現レベル及び(D)総FOXO1に対するpFOXO1のタンパク質発現レベルの比率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明のFOXO1阻害剤について詳細に説明する。本発明におけるFOXO1とは、FOXOファミリーに属するフォークヘッド型転写因子である。FOXO1は骨格筋の萎縮に関与するほか、インスリンによる同化作用と拮抗し、代謝反応等とも関与することが報告されている。このうち、骨格筋の萎縮に関しては、FOXO1が廃用性筋萎縮やがん悪液質誘発性筋萎縮、グルココルチコイド等の薬物誘発性筋萎縮に関与していることが報告されている。そのため、FOXO1の活性を阻害する化合物は、運動不足や何らかの疾患によって引き起こされる二次的な筋萎縮の抑制、改善、予防又は治療に有用であると考えられる。
【0023】
本発明におけるFOXO1阻害とは、FOXO1の活性を抑制・阻害することをいい、本発明のFOXO1阻害剤を添加又は投与されない状態のコントロールと比較して、FOXO1活性が抑制されていることを意味する。より具体的にはFOXO1阻害とは、例えば、FOXO1タンパク質分解の促進、FOXO1タンパク質発現レベルの抑制、FOXO1遺伝子の発現レベルの抑制、FOXO1転写活性の抑制又はFOXO1標的遺伝子の遺伝子発現若しくはタンパク質発現レベルの抑制等も含まれる概念である。ここで、本明細書におけるFOXO1の活性とは、FOXO1は転写因子であるのでFOXO1の転写活性は当然に含まれるが、これに限定されず、FOXO1の働き(作用)や機能全般をいうものとする。また、FOXO1活性は、一例として、後述する実施例1に記載のレポーターアッセイにより容易に測定することが可能である。
【0024】
本発明のFOXO1阻害剤は、レバスチニブ(Rebastinib)、デュベルマチニブ(Dubermatinib)、アルチラチニブ(Altiratinib)、ダヌサチブ(Danusertib)及びダサチニブ(Dasatinib)からなる群から選ばれる少なくとも1種のプロテインキナーゼ阻害活性を有する化合物を含有している。上述した化合物は塩であってもよく、薬理学的に許容される塩であることが好ましい。これらの化合物の薬理学的に許容される塩としては、酸又は塩基と形成される塩であればよく、特に限定されない。また、これらの化合物又はその塩は、溶媒和物であってもよく、特に限定されないが、例えば、水和物、エタノール等の有機溶媒和物が挙げられる。
【0025】
上述した化合物のうち、レバスチニブは、以下化学式に示す化合物(CAS番号:1020172-07-9)であり、チロシンキナーゼ阻害活性を有する化合物である。後述する実施例1に示すように、レバスチニブはFOXO1活性を最も強く阻害しており、優れた阻害作用を有している。さらに、後述する実施例2~8に示すように、レバスチニブはグルココルチコイド誘発性筋萎縮を抑制し、筋収縮力の低下を改善する効果を有するほか、がん悪液質誘発性筋萎縮を抑制し、筋収縮力の低下を改善する効果を有している。このことより、レバスチニブは筋萎縮の抑制、改善、予防又は治療のために用いることができ、特に、不活動、疾病又は薬物の副作用等による廃用性筋萎縮及び二次性サルコペニアの抑制、改善、予防又は治療のために用いることができる。
【0026】
【化1】
【0027】
また、デュベルマチニブ(CAS番号:1341200-45-0)、アルチラチニブ(CAS番号:1345847-93-9)、ダヌサチブ(CAS番号:827318-97-8)及びダサチニブ(CAS番号:302962-49-8)もいずれもプロテインキナーゼ阻害活性を有する化合物であり、後述する実施例1に示すように、FOXO1活性を阻害する優れた作用を有している。そのため、これら化合物についても、レバスチニブ同様に筋萎縮の抑制、改善、予防又は治療のために用いられ得る。
【0028】
上述した化合物は、市販されている化合物を用いることも、公知の合成方法で製造して得た化合物を用いることも可能である。
【0029】
本発明のFOXO1阻害剤は、上述した化合物、すなわち、レバスチニブ、デュベルマチニブ、アルチラチニブ、ダヌサチブ又はダサチニブを含むものであって、FOXO1活性を阻害する作用を有する。FOXO1阻害剤には、これらの化合物のうちの少なくとも1種が含有されるが、2種以上を組み合わせて含有させることも可能である。また、本発明のFOXO1阻害剤は、FOXO1タンパク質分解の促進作用、FOXO1タンパク質発現レベルの抑制作用、FOXO1遺伝子の発現レベルの抑制作用、FOXO1転写活性の抑制作用、FOXO1標的遺伝子の遺伝子発現又はタンパク質発現レベルの抑制作用の少なくともいずれか1つの作用を有するものであることが好ましく、FOXO1タンパク質分解の促進作用、FOXO1タンパク質発現レベルの抑制作用又はFOXO1標的遺伝子の発現レベルの抑制作用を有するものであることがさらに好ましい。本発明のFOXO1阻害剤は、FOXO1が関与する様々な機能の解明等を目的とした研究用試薬として用いることができるほか、後述するように、FOXO1が関与する病態、症状又は疾患の抑制、改善、予防又は治療のために使用することができる。本発明に係るFOXO1阻害剤の使用濃度としては、適用する細胞、FOXO1発現レベルや目標とする阻害効果に応じて適宜調整可能であるが、一例として、レバスチニブをFOXO1阻害剤の有効成分として含有させた場合には、レバスチニブとして0.01μM~100μM程度を使用することが好ましく、0.1μM~10μM程度を使用することがより好ましい。
【0030】
また、本発明の筋萎縮の抑制、改善、予防又は治療用組成物は、上述したFOXO1阻害剤を有効成分として含有している。FOXO1阻害剤にはレバスチニブ、デュベルマチニブ、アルチラチニブ、ダヌサチブ又はダサチニブのうち、少なくとも1種の化合物を用いることができ、2種以上の化合物を組み合わせて用いることも可能である。これらの化合物のうち、レバスチニブが特に好ましく用いられ得る。また、本発明の筋萎縮の抑制、改善、予防又は治療用組成物は、FOXO1活性を阻害することを作用点としたものであり、FOXO1活性の阻害に係る作用点は、FOXO1タンパク質分解の促進作用、FOXO1タンパク質発現レベルの抑制作用、FOXO1遺伝子の発現レベルの抑制作用、FOXO1転写活性の抑制作用、FOXO1標的遺伝子の遺伝子発現又はタンパク質発現レベルの抑制作用の少なくともいずれか1つであることが好ましく、FOXO1タンパク質分解の促進作用、FOXO1タンパク質発現レベルの抑制作用又はFOXO1標的遺伝子の発現レベルの抑制作用であることがさらに好ましい。それゆえ、本発明のレバスチニブ、デュベルマチニブ、アルチラチニブ、ダヌサチブ又はダサチニブを含有するFOXO1阻害剤によって、筋萎縮に関与するFOXO1の活性が阻害されることにより、筋萎縮の抑制、改善、予防又は治療を行うことができる。
【0031】
本発明に係る筋萎縮の抑制、改善、予防又は治療用組成物は、筋萎縮のうち、不活動、疾病又は薬物の副作用等による廃用性筋萎縮及び二次性サルコペニアに対し有用であり、特に、疾病又は薬物の副作用による二次性サルコペニアに対しさらに有用である。二次性サルコペニアには、寝たきりやベッドレスト等の不活動による筋萎縮、インスリン機能不全による筋萎縮、1型糖尿病による筋萎縮、グルココルチコイドや脂質異常症改善薬の副作用による筋萎縮、がん悪液質により誘発される筋萎縮等が含まれる。本発明の筋萎縮の抑制、改善、予防又は治療用組成物は、ヒト又は動物のための医薬品、医薬部外品及び食品として用いることができる。食品には、サプリメント、健康食品、機能性食品、特定保健用食品等も含まれる。
【0032】
また、本発明のFOXO1阻害剤は、FOXO1が関与する病態、症状又は疾患の抑制、改善、予防又は治療のための剤として用いることができる。FOXO1活性が関与する病態、症状又は疾患には、筋萎縮、糖尿病又はこれらに関連する疾患が含まれる。本発明のFOXO1阻害剤は、これらの病態、症状又は疾患の1つ又は複数に対する抑制、改善、予防又は治療等のために用いられる。本発明のFOXO1が関与する病態、症状又は疾患の抑制、改善、予防又は治療剤は、ヒト又は動物のための医薬品、医薬部外品及び食品として用いることができ、このうち食品には、サプリメント、健康食品、機能性食品、特定保健用食品等も含まれる。
【0033】
本発明に係るFOXO1阻害剤及び筋萎縮の抑制、改善、予防又は治療用組成物を、医薬品又は医薬部外品として用いる場合には、従来慣用されている方法により種々の形態に調製することができる。この場合、通常製剤用の薬理学的に許容される担体や賦形剤、滑沢剤、分散剤、崩壊剤、緩衝剤、溶剤、増量剤、保存剤、香料又は安定化剤など、医薬品の添加剤として許容されている添加剤を用いて製剤化することができる。さらに、この化合物のバイオアベイラビリティーや安定性を向上させるために、マイクロカプセル、リポソーム製剤、微粉末化又はシクロデキストリン等を用いた包接化などの製剤技術を含むドラッグデリバリーシステムを用いることもできる。
【0034】
本発明に係るFOXO1阻害剤及び筋萎縮の抑制、改善、予防又は治療用組成物を、経口投与製剤として用いる場合には、錠剤、顆粒剤、カプセル剤又は内服用液剤等の形態で用いることができるが、消化管からの吸収に適した形態で用いることが好ましい。また、流通性、保存性などの理由により所望される形態での製剤を提供する場合にも従来の製剤技術を用いることができる。また、外用剤等の非経口投与剤として用いる場合には、クリーム、軟膏、貼付剤などの経皮吸収剤のほか、注射剤および坐剤等の形態とすることができる。また、流通性や保存性などの理由から固形製剤を使用時に適当な溶剤で溶解してから用いることもでき、液剤および半固形剤の形態で提供することも従来の製剤技術により可能である。
【0035】
本発明に係るFOXO1阻害剤及び筋萎縮の抑制、改善、予防又は治療用組成物の投与量又は有効摂取量は、目標とする治療効果、投与方法、投与対象及び剤形によって変化するため、特に限定されないが、一日の経口投与量としては、例えば、有効成分である各化合物の量として約0.01μg/60kg体重~約30mg/60kg体重であり、好ましくは、0.05μg/60kg体重~約10mg/60kg体重であり、これを1~3回に分割して投与することが好ましい。また、一日の非経口的な投与量としては、例えば、有効成分である各化合物の量として約0.01μg/60kg体重~10mg/60kg体重であり、好ましくは約0.03μg/60kg体重~5mg/60kg体重が好ましい。
【0036】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例によってなんら限定されるものではない。
【実施例0037】
[実施例1]
1.FOXO1活性を阻害する化合物のスクリーニング
本実施例では、FOXO1活性を阻害する化合物の探索を行った。スクリーニング対象として、化合物ライブラリーからプロテインキナーゼ阻害活性を有する化合物を選択し、270種類の化合物についてスクリーニングを行った。詳細には、FOXO1活性を阻害する化合物のスクリーニングを行うために、次のようなレポーターアッセイを行った。FOXO1とGAL4 DNA結合領域の融合タンパク質(GAL4-FOXO1)を細胞内に導入すると、ルシフェラーゼ遺伝子上流のGAL4結合領域UASにGAL4-FOXO1が結合し、FOXO1の転写活性によりルシフェラーゼが発現する。このレポーターアッセイを利用して、どのような化合物がFOXO1の活性を阻害するかスクリーニングした。
【0038】
具体的には、細胞はヒト胚性腎臓細胞であるHEK293T細胞を用いた。HEK293T細胞の培養には、L-グルタミン及びフェノールレッドを含むD-MEM(高グルコース)培地に10%ウシ胎児血清(FBS)、100U/mLのペニシリンG、100μg/mLのストレプトマイシン及び0.25μg/mLのアンホテリシンBを添加したものを用い、5%CO通気下、37℃で培養した。また、プラスミドは、ルシフェラーゼレポータープラスミドであるpGL4.35(ルシフェラーゼレポーターluc2p“合成ホタルルシフェラーゼ”の上流にGAL4認識配列であるUASを組み込んだプラスミド)、pM-FOXO1(GAL4-FOXO1融合タンパク質発現プラスミド)、pNL1.1PGKベクター(コントトールのルシフェラーゼ、補正用ベクター)を用いた。また、スクリーニング対象としたプロテインキナーゼ阻害活性を有する化合物は、Cayman Chemical社等から購入した。
【0039】
まず、HEK293T細胞を96ウェルプレートの各ウェルに3.2×10個/ウェルとなるよう播種した。このHEK293T細胞に、遺伝子導入試薬(リポフェクタミン(登録商標)3000、サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製品)を用いて、上述したプラスミドpGL4.35(25ng/ウェル)、pM-FOXO1(25ng/ウェル)及びpNL1.1PGK(0.2ng/ウェル)をコトランスフェクションした。24時間培養した後、スクリーニング対象の各化合物をDMSOに溶解させ、各化合物の液体培地中の最終濃度が0.1%となるように、各ウェルに添加した。また、DMSOのみをウェルに添加し、溶媒対照(Vehicle control)とした。各化合物を添加してから24時間後のルシフェラーゼ活性を測定した。測定には、Nano-Glo(登録商標)Dual-Luciferase(登録商標)Reporter Assay System(プロメガ株式会社製品)及びLuMate(登録商標)Microplate Luminometer(Awareness Technology社製品)を用いた。ルシフェラーゼ活性は、コントロールのルシフェラーゼ活性に対するホタルルシフェラーゼ活性の比率として算出した。試験結果のうち、有意にFOXO1活性を阻害することが見出された化合物5種と他の化合物の一部の結果を図1(A)のグラフに示す(n=4、平均値±標準誤差)。横軸は化合物を、縦軸は相対的ルシフェラーゼ活性を示す。図1(A)のグラフ中の****はp<0.0001、***はp<0.001を示す。
【0040】
この結果によれば、レバスチニブ(Rebastinib)、デュベルマチニブ(Dubermatinib)、アルチラチニブ(Altiratinib)、ダヌサチブ(Danusertib)及びダサチニブ(Dasatinib)にFOXO1活性の阻害作用があることがわかった。このうち、レバスチニブ、デュベルマチニブ及びアルチラチニブには特に優れたFOXO1活性の阻害作用が認められ、最も高い阻害作用を示す化合物として、レバスチニブが見出された。
【0041】
そこで、最も高い阻害作用を示したレバスチニブについて、濃度依存的にFOXO1活性を阻害するか否かについて、上述と同様の方法で試験を行った。また、陽性対照として、公知のFOXO1阻害剤であるAS1708727及びAS1842856を用いて同様の試験を行った。なお、AS1842856はCayman Chemical社から購入したものを使用したが、AS1708727は公知の合成方法(J Med Chem., Vol. 41 pp.4587-4598)により製造したものを使用した。試験結果を図1(B)に示す(n=3、平均値±標準誤差)。横軸は化合物の添加濃度を、縦軸は相対的ルシフェラーゼ活性を示す。
【0042】
この結果によれば、レバスチニブは濃度依存的にFOXO1活性を抑制した。レバスチニブのIC50は0.593(μM)であった。他方、AS1708727のIC50は4.519(μM)であり、AS1842856のIC50は61.44(μM)である。レバスチニブのIC50はAS1708727の約7分の1、AS1842856の約103分の1であり、レバスチニブには非常に優れたFOXO1活性の阻害作用があることが明らかとなった。
【0043】
[実施例2]
2.培養骨格筋細胞を用いた筋萎縮抑制効果の検討(1)
本実施例では、上記実施例1において、FOXO1活性を強く阻害することが見出されたレバスチニブについて、グルココルチコイド投与により誘発される筋萎縮を抑制するかどうか、検討を行った。詳細には、マウス骨格筋由来筋芽細胞株C2C12細胞を筋管細胞に分化後、合成グルココルチコイドであるデキサメタゾン(Dex)で処理し、レバスチニブを投与した群と投与しなかった群とで、C2C12細胞のタンパク質分解量に変化があるかどうか、パルス-チェイス分析により調べた。
【0044】
具体的には、試験は次のようにして行った。図2(A)に示すように、C2C12筋芽細胞を筋管細胞に分化誘導するために、実施例1で用いたD-MEM(高グルコース)培地組成のうち、10%ウシ胎児血清(FBS)を2%ウマ血清(HS)に替えた分化培地を調製し、C2C12筋芽細胞を4日間培養した。なお、分化培地は24時間毎に交換した。分化後のC2C12筋管細胞を、L-[35S]-メチオニン(37kBq/mL/ウェル、製品コード:NEG009A、株式会社パーキンエルマージャパン)を添加したD-MEM(グルタミン、メチオニン及びシステインは非含有、高グルコース)培地で1時間インキュベートし、細胞にL-[35S]-メチオニンを取り込みさせた。1時間後、細胞をD-MEM(グルタミン、メチオニン及びシステインは非含有、高グルコース)培地ですすいで洗浄した。その後、C2C12筋管細胞を、0.3mg/mLの非標識のメチオニン、1μMのデキサメタゾン(Dex)及び1μMのレバスチニブを添加したD-MEM(グルタミン、メチオニン及びシステインは非含有、高グルコース)培地で24時間又は48時間培養した(Dex/Rebastinib)。また、比較対照として、デキサメタゾン及びレバスチニブの両方とも添加していない培地(Cont/Vehicle)、デキサメタゾンを添加せずにレバスチニブのみを添加した培地(Cont/Rebastinib)、レバスチニブを添加せずにデキサメタゾンのみを添加した培地(Dex/Vehicle)でも同様に24時間又は48時間培養を行った。なお、溶媒対照にはDMSOを用いた。24時間及び48時間後、細胞をPBSで洗浄し、ホスファターゼ阻害剤及びプロテアーゼ阻害剤を含有させた細胞可溶化試薬(RIPA Lysis Buffer)で培養液をホモジナイズして、C2C12細胞のタンパク質を抽出した。抽出した細胞ライセート中の[35S]-メチオニンの残留量を、液体シンチレーションカウンターを用いて測定した。
【0045】
培養24時間の結果を図2(B)に、培養48時間の結果を図2(C)に示す(n=3、平均値±標準誤差)。放射線量は、デキサメタゾン及びレバスチニブを添加していないコントロール(Cont/Vehicle)の放射線量に対する比率として算出しており、グラフの縦軸は相対的放射線量を示している。Contはデキサメタゾンを添加していない対照群を示し、Dexはデキサメタゾンを添加した試験群を示している。また、白抜きのカラムはレバスチニブを添加していない試験群であり、着色されたカラムはレバスチニブを添加した試験群である。図2(C)のグラフ中の**はp<0.001、*はp<0.05を示す。
【0046】
この結果によれば、レバスチニブ非添加の対照群及び試験群間において、デキサメタゾン処理による細胞内タンパク質分解は、培養24時間では有意な差は見られなかったが、培養48時間ではデキサメタゾン処理によって細胞内タンパク質中の35S-メチオニン量が有意に減少しており(p=0.010)、細胞内タンパク質分解が増加傾向にあることが示された。そこで、培養48時間でのレバスチニブを添加した対照群及び試験群をみると、デキサメタゾン処理の有無に関わらず、レバスチニブを添加していない溶媒対照と比べて細胞内タンパク質中の35S-メチオニン量が有意に増加しており(p=0.002)、細胞内タンパク質分解が抑制されることが示された。これらのことから、デキサメタゾンは細胞内タンパク質分解を促進させたが、レバスチニブはそのタンパク質分解を抑制したことが明らかとなった。
【0047】
[実施例3]
3.培養骨格筋細胞を用いた筋萎縮抑制効果の検討(2)
本実施例においても、実施例2と同様に、レバスチニブがグルココルチコイド投与により誘発される筋萎縮を抑制するかどうか、検討を行った。本実施例では、骨格筋の主要な構造タンパク質であるミオシン重鎖(MyHC)に着目し、C2C12骨格筋細胞中のMyHCを免疫蛍光染色して、その直径を測定することにより筋細胞の萎縮について調べた。
【0048】
具体的には、試験は次のようにして行った。上記実施例2と同様の材料及び方法で分化誘導されたC2C12筋管細胞に対し、1μMのレバスチニブ及び1μMのデキサメタゾンを添加し、48時間培養を行った(Dex/Rebastinib)。また、比較対照として、デキサメタゾン及びレバスチニブの両方とも添加していない培地(Cont/Vehicle)、デキサメタゾンを添加せずにレバスチニブのみを添加した培地(Cont/Rebastinib)、レバスチニブを添加せずにデキサメタゾンのみを添加した培地(Dex/Vehicle)でも同様に48時間培養を行った。なお、溶媒対照にはDMSOを用いた。培養後、C2C12筋管細胞を4%ホルムアルデヒドで固定し、0.5%Triton(登録商標)X-100で細胞膜透過処理した。固定した筋管細胞を3%BSAで6時間インキュベートし、非特異的反応を防ぐためのブロッキング処理を行った。その後、一次抗体として抗ミオシン重鎖(MyHC、MF20、Developmental Studies Hybridoma Bank)を3%BSAに添加し、4℃で一晩インキュベートした。翌日、二次抗体としてヤギ抗マウスIgG2b抗体(Alexa Fluor(登録商標)568、A-21144、サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製品)を添加し、1時間インキュベートした。引き続いて、対比染色のため、DAPI(#4083、セルシグナリングテクノロジー社製品)を添加し、核を染色した。筋管細胞の観察には、蛍光顕微鏡(ライカマイクロシステムズ株式会社製品)を用い、100倍の倍率で観察した。その結果を図3(A)に示す。また、画像処理ソフトウェアImageJ(http://imagej.nih.gov/ij/)を用い、ランダムに選択した6つの視野から合計120個(20個/視野)の免疫蛍光染色された筋管の直径(μm)を測定した。その結果を図3(B)のグラフに示す(n=3、平均値±標準誤差)。Contはデキサメタゾンを添加していない対照群を示し、Dexはデキサメタゾンを添加した試験群を示している。また、白抜きのカラムはレバスチニブを添加していない試験群であり、着色されたカラムはレバスチニブを添加した試験群である。図3(B)のグラフ中の*はp<0.05を示す。
【0049】
これらの結果によれば、レバスチニブ非添加の対照群及び試験群間において、デキサメタゾン処理によって筋管細胞径は有意に減少しており、デキサメタゾン処理により筋萎縮が促進されることが示された。これに対し、レバスチニブを添加した試験群では、デキサメタゾン処理されているにもかかわらず、コントロールと同程度まで筋管細胞径が回復していることが示された。このことから、デキサメタゾンは筋萎縮を促進させたが、レバスチニブはこの筋萎縮を抑制することがわかった。
【0050】
[実施例4]
4.マウス筋サテライト細胞由来骨格筋細胞を用いた骨格筋収縮力の改善効果の検討
上述した実施例では、レバスチニブがグルココルチコイド投与により誘発される筋萎縮を抑制することが明らかとなった。そこで、さらなる評価を得るため、本実施例では、レバスチニブがグルココルチコイド投与により誘発される筋萎縮を抑制することにより、骨格筋収縮力の低下を改善させることができるかどうか、検討を行った。詳細には、デキサメタゾン存在下で培養したマウス筋サテライト細胞由来骨格筋細胞において、レバスチニブが筋萎縮を抑制することにより、骨格筋収縮力を回復させるかどうか、シリコーン上に培養した培養骨格筋の収縮力をシワで評価する筋張力測定方法(Scientific reports, Vol.12:13818、特許第7140328号等参照)により調べた。
【0051】
具体的には、試験は次のようにして行った。上述した筋張力測定方法に基づき、カバーガラスに塗布したシリコーンにプラズマ照射を行った後、細胞を接着させるためのマトリゲルを塗布してシリコーン基板を調製した。常法に基づき、マウス骨格筋をコラゲナーゼ処理した後、単一筋線維に付着しているサテライト細胞を得た。得られたサテライト細胞をシリコーン基板に播種し、筋管細胞に分化誘導した。分化誘導開始から5日目の培養細胞に、1μMのレバスチニブ及び100μMのデキサメタゾンを添加し、48時間培養を行った(Dex/Rebastinib)。また、比較対照として、デキサメタゾン及びレバスチニブの両方とも添加していない培地(Cont/Vehicle)、デキサメタゾンを添加せずにレバスチニブのみを添加した培地(Cont/Rebastinib)、レバスチニブを添加せずにデキサメタゾンのみを添加した培地(Dex/Vehicle)でも同様に48時間培養を行った。なお、溶媒対照にはDMSOを用いた。これら処理を行った後、筋管細胞に1Hz、20mAの条件の電気刺激を20ms付与し、インターバル980msで繰返し同条件での電気刺激を与えて筋管細胞を電気的に収縮させた。収縮時に生じるシリコーン膜のシワの長さは、画像処理ソフトウェアImageJを用いて計測して線形化処理した。線形化処理されたチャートにおいて、連続した収縮3回分の曲線下面積を、筋収縮の大きさを示すフォースインデックスとして求めた。
【0052】
結果を図4のグラフに示す(n=8、平均値±標準誤差)。グラフ縦軸のフォースインデックスは、デキサメタゾン及びレバスチニブを添加していないコントロール(Cont/Vehicle)の値に対する比率として示している。Contはデキサメタゾンを添加していない対照群を示し、Dexはデキサメタゾンを添加した試験群を示している。また、白抜きのカラムはレバスチニブを添加していない試験群であり、着色されたカラムはレバスチニブを添加した試験群である。図4のグラフ中の***はp<0.001を示す。
【0053】
この結果によれば、レバスチニブ非添加の対照群及び試験群間において、細胞をデキサメタゾンで48時間処理すると、フォースインデックスは対照群の45%にまで減少し、筋収縮力が大きく弱まることが示された。これに対し、レバスチニブを投与した試験群ではフォースインデックスの減少率を24%まで抑えることが明らかとなった。
【0054】
[実施例5]
5.がん悪液質誘発性筋萎縮モデル細胞を用いた筋収縮力の改善効果の検討
上述した実施例では、グルココルチコイド投与により誘発される筋萎縮の抑制又は改善効果について検討を行ってきたが、本実施例では、がん悪液質により誘発される筋萎縮についても、レバスチニブが抑制・改善できるかどうか、検討を行った。本実施例では、筋萎縮を誘発するがん悪液質として、ルイス肺癌由来細胞(LLC)の培養液を用いた。
【0055】
具体的には、試験は次のようにして行った。ルイス肺癌由来細胞(LCC)をD-MEM(高グルコース)培地に10%ウマ血清(HS)を加えた培地で培養し、培養上清を得た。実施例4と同様の材料及び方法により、マウス筋サテライト細胞をシリコーン基板で分化誘導させた後、実施例4でのデキサメタゾンの替わりに、ルイス肺癌由来細胞の培養上清を用いて4日間培養を行った。培養2日目に1μMのレバスチニブを培地に添加した(LLC/Rebastinib)。また、比較対照として、LLC培養上清及びレバスチニブの両方とも添加していない培地(Cont/Vehicle)、LLC培養上清を添加せずにレバスチニブのみを添加した培地(Cont/Rebastinib)、レバスチニブを添加せずにLLC培養上清のみを添加した培地(LLC/Vehicle)でも同様に4日間培養を行った。なお、溶媒対照にはDMSOを用いた。これら処理を行った後、実施例4と同様にして、筋収縮の大きさを示すフォースインデックスを求めた。
【0056】
結果を図5のグラフに示す(n=8、平均値±標準誤差)。グラフ縦軸のフォースインデックスは、LLC培養上清及びレバスチニブを添加していないコントロール(Cont/Vehicle)の値に対する比率として示している。ContはLLC培養上清で処理していない対照群を示し、LLCはLLC培養上清で処理した試験群を示している。また、白抜きのカラムはレバスチニブを添加していない試験群であり、着色されたカラムはレバスチニブを添加した試験群である。図5のグラフ中の****はp<0.0001、**はp<0.01を示す。
【0057】
この結果によれば、レバスチニブ非添加の対照群及び試験群間において、細胞をルイス肺癌由来細胞の培養上清で処理し、がん悪液質(カヘキシア)誘導性筋萎縮モデル細胞とすると、フォースインデックスは対照群の69%にまで減少し、筋収縮力が大きく弱まることが示された。これに対し、レバスチニブを投与した試験群ではフォースインデックスの減少率を30%にまで抑えることが明らかとなった。
【0058】
上述した実施例の結果より、レバスチニブはFOXO1活性を強く阻害する作用を有すること、グルココルチコイド投与により誘発される筋萎縮を抑制し、筋収縮力の低下を改善する効果を有すること、がん悪液質により誘発される筋収縮力の低下を改善する効果を有することが示された。このことより、レバスチニブは筋萎縮の抑制、改善、予防又は治療のために用いることができ、特に、不活動、疾病又は薬物の副作用等による二次性サルコペニアの抑制、改善、予防又は治療のために用いることができることが明らかとなった。
【0059】
[実施例6]
6.レバスチニブがFOXO1標的遺伝子発現に与える影響の検討
本実施例では、レバスチニブの作用機序を探るため、C2C12筋管細胞をデキサメタゾン及びレバスチニブで処理した際の遺伝子発現解析を行い、レバスチニブがグルココルチコイドによるFOXO1標的遺伝子発現を抑制するかどうかを検討した。解析対象の遺伝子は、FOXO1、FOXO3a、筋組織特異的ユビキチンリガーゼであるatrogin-1及びGadd45とした。具体的には、試験は次のようにして行った。上記実施例2と同様の材料及び方法で分化誘導されたC2C12筋管細胞に対し、1μMのレバスチニブ及び1μMのデキサメタゾンを添加し、24時間培養を行った(Dex/Rebastinib)。また、比較対照として、デキサメタゾン及びレバスチニブの両方とも添加していない培地(Cont/Vehicle)、デキサメタゾンを添加せずにレバスチニブのみを添加した培地(Cont/Rebastinib)、レバスチニブを添加せずにデキサメタゾンのみを添加した培地(Dex/Vehicle)でも同様に24時間培養を行った。なお、溶媒対照にはDMSOを用いた。培養後、細胞からトータルRNAを単離し、トータルRNAからcDNAを合成し、以下表1に示すプライマーを用いて定量的RT-PCRを行った。各遺伝子の発現量は36B4の発現量に基づき標準化した。
【0060】
結果を図6に示す(n=3、平均値±標準誤差)。グラフ縦軸の相対的発現レベルは、デキサメタゾン及びレバスチニブを添加していないコントロール(Cont/Vehicle)の値に対する比率として示している。Contはデキサメタゾンを添加していない対照群を示し、Dexはデキサメタゾンを添加した試験群を示している。また、白抜きのカラムはレバスチニブを添加していない試験群であり、着色されたカラムはレバスチニブを添加した試験群である。図7のグラフ中の****はp<0.0001、**はp<0.01、*はp<0.05を示す。
【0061】
【表1】
【0062】
図6(A)がFOXO1、図6(B)がFOXO3a、図6(C)がatrogin-1及び図6(D)がGadd45のデータを示している。この結果によれば、FOXO1遺伝子は、デキサメタゾン及びレバスチニブのいずれの処理によってもその発現量は有意に変化しないことがわかった(図6(A))。また、FOXO3a遺伝子の発現量はデキサメタゾン処理によって有意に増加したが、レバスチニブの添加による影響はなく、発現量に変化はみられなかった(図6(B))。他方、デキサメタゾンはFOXO1標的遺伝子であるatrogin-1遺伝子及びGadd45遺伝子の発現を有意に増加させ、レバスチニブはatrogin-1遺伝子とGadd45遺伝子の発現を有意に低下させることがわかった(図6(C)及び(D))。また、atrogin-1遺伝子とGadd45遺伝子の発現には相互作用が認められ、デキサメタゾン存在下でのレバスチニブ投与によりこれらFOXO1標的遺伝子の発現が抑制されることが示唆された。
【0063】
[実施例7]
7.レバスチニブがタンパク質発現に与える影響の検討(1)
上述した実施例6ではFOXO1等の遺伝子発現レベルについて検討を行ったが、本実施例ではウェスタンブロット法を用いて、FOXO1、FOXO3及びatrogin-1のタンパク質発現レベルを解析した。具体的には、試験は次のようにして行った。上記実施例2と同様の材料及び方法で分化誘導されたC2C12筋管細胞に対し、1μMのレバスチニブ及び1μMのデキサメタゾンを添加し、24時間培養を行った(Dex/Rebastinib)。また、比較対照として、デキサメタゾン及びレバスチニブの両方とも添加していない培地(Cont/Vehicle)、デキサメタゾンを添加せずにレバスチニブのみを添加した培地(Cont/Rebastinib)、レバスチニブを添加せずにデキサメタゾンのみを添加した培地(Dex/Vehicle)でも同様に24時間培養を行った。なお、溶媒対照にはDMSOを用いた。培養後の細胞をPBSで洗浄し、ホスファターゼ阻害剤及びプロテアーゼ阻害剤を含有させた細胞可溶化試薬(RIPA Lysis Buffer)で培養液をホモジナイズして、C2C12細胞のタンパク質を抽出した。抽出液を4℃、15000×gで15分間遠心分離し、上清を回収した。タンパク質20μg分の全細胞溶解液をSDS-PAGEにアプライした。SDS-PAGEゲルのタンパク質を膜転写した後、抗FOXO1抗体(#2880、セルシグナリングテクノロジー社製品)、抗FOXO3a抗体(#12829、セルシグナリングテクノロジー社製品)、抗atrogin-1抗体(抗Fbx32、ab168372、アブカム社製品)及び抗アクチン抗体(#4970、セルシグナリングテクノロジー社製品)とインキュベートし、目的のタンパク質と結合させた。二次抗体とインキュベートした後、化学発光試薬(ECL Prime Western Blotting Reagent、GEヘルスケア製品)を用いてバンドを検出し、化学発光スキャナー(C-DiGitスキャナー、LI-COR社製品)を用いて蛍光強度を定量化した。
【0064】
検出されたバンドを図7(A)に、蛍光強度を図7(B)~(D)(n=3、平均値±標準誤差)に示す。グラフ縦軸の相対的発現レベルは、デキサメタゾン及びレバスチニブを添加していないコントロール(Cont/Vehicle)の値に対する比率として示している。Contはデキサメタゾンを添加していない対照群を示し、Dexはデキサメタゾンを添加した試験群を示している。また、白抜きのカラムはレバスチニブを添加していない試験群であり、着色されたカラムはレバスチニブを添加した試験群である。図7のグラフ中の**はp<0.01、*はp<0.05を示す。
【0065】
図7(B)がFOXO1、図7(C)がFOXO3a及び図7(D)がatrogin-1のデータを示している。この結果によれば、FOXO1タンパク質の発現は、デキサメタゾン処理による有意な変化は見られなかったが、レバスチニブの添加によってFOXO1タンパク質レベルが有意に抑制されていることが明らかとなった(図7(B))。また、FOXO3aタンパク質レベルは、デキサメタゾン及びレバスチニブのいずれの処理によっても有意に変化しないことがわかった(図7(C))。また、atrogin-1タンパク質のレベルは、デキサメタゾン及びレバスチニブ処理により有意に変化した(図7(D))。これらのことから、レバスチニブはデキサメタゾン非存在下ではFOXO1タンパク質およびatrogin-1タンパク質のレベルを抑制しないが、デキサメタゾン存在下ではFOXO1タンパク質およびatrogin-1タンパク質のレベルを抑制することがわかった。
【0066】
[実施例8]
8.レバスチニブがタンパク質発現に与える影響の検討(2)
FOXO1の分子機構において、リン酸化されたFOXO1(pFOXO1)は、プロテアソームによって分解されることが知られている。そこで、実施例7で観察されたFOXO1タンパク質レベルの減少がFOXO1のリン酸化によるものかどうか調べるため、プロテアソーム阻害剤であるMG132の存在下でリン酸化FOXO1(pFOXO1)のタンパク質レベルをウェスタンブロット法により測定した。試験は次のようにして行った。上記実施例2と同様の材料及び方法で分化誘導されたC2C12筋管細胞に対し、1μMのレバスチニブ及び1μMのデキサメタゾンを添加し、24時間培養を行った(Dex/Rebastinib)。また、比較対照として、デキサメタゾン及びレバスチニブの両方とも添加していない培地(Cont/Vehicle)、デキサメタゾンを添加せずにレバスチニブのみを添加した培地(Cont/Rebastinib)、レバスチニブを添加せずにデキサメタゾンのみを添加した培地(Dex/Vehicle)でも同様に24時間培養を行った。また、いずれの培地にもプロテアソーム阻害剤であるMG132を1μM添加した。なお、溶媒対照にはDMSOを用いた。培養後の細胞をPBSで洗浄し、ホスファターゼ阻害剤及びプロテアーゼ阻害剤を含有する細胞可溶化試薬(RIPA Lysis Buffer)で培養液をホモジナイズして、C2C12細胞のタンパク質を抽出した。抽出液を4℃、15000×gで15分間遠心分離し、上清を回収した。タンパク質20μg分の全細胞溶解液をSDS-PAGEにアプライした。SDS-PAGEゲルのタンパク質を膜転写した後、抗FOXO1抗体(#2880、セルシグナリングテクノロジー社製品)、抗リン酸化FOXO1抗体(Ser256、#9461、セルシグナリングテクノロジー社製品)及び抗アクチン抗体(#4970、セルシグナリングテクノロジー社製品)とインキュベートし、目的のタンパク質と結合させた。二次抗体とインキュベートした後、実施例7と同様の材料及び方法によりバンドを検出し、化学発光スキャナーで蛍光強度を定量化した。
【0067】
検出されたバンドを図8(A)に、蛍光強度を図8(B)、(C)に、蛍光強度比を図8(D))に示す(n=3、平均値±標準誤差)。グラフ縦軸の相対的発現レベルは、デキサメタゾン及びレバスチニブを添加していないコントロール(Cont/Vehicle)の値に対する比率として示している。Contはデキサメタゾンを添加していない対照群を示し、Dexはデキサメタゾンを添加した試験群を示している。また、白抜きのカラムはレバスチニブを添加していない試験群であり、着色されたカラムはレバスチニブを添加した試験群である。
【0068】
図8(B)がリン酸化FOXO1(pFOXO1)、図8(C)が全FOXO1及び図8(D)が全FOXO1に対するpFOXO1比のデータを示している。この結果によると、デキサメタゾン及びレバスチニブの投与により、pFOXO1タンパク質レベル及び全FOXOに占めるpFOXO1の比に変化は見られなかった。そのため、実施例7で観察されたFOXO1タンパク質レベルの減少はFOXO1のリン酸化によるものではないことが示された。他方、デキサメタゾン及びレバスチニブは、プロテアソーム阻害剤であるMG132非存在下ではFOXO1タンパク質のレベルを低下させたが(実施例7、図7(B)参照)、プロテアソーム阻害剤存在下ではFOXO1タンパク質のレベルは変化しなかった。これらのことから、レバスチニブはプロテアソーム系を介してFOXO1タンパク質の分解を促進させ、FOXO1タンパク質レベルを減少させること、FOXO1タンパク質レベルの減少により筋萎縮関連遺伝子の発現レベルが減少する作用機序を有することが示唆された。
【0069】
本発明は、上記の実施形態又は実施例に限定されるものでなく、特許請求の範囲に記載された発明の要旨を逸脱しない範囲内での種々、設計変更した形態も技術的範囲に含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、FOXO1の活性を抑制・阻害することができるFOXO1阻害剤及び、筋萎縮の抑制、改善、予防又は治療用組成物を提供するものであり、医薬・医療分野の産業において幅広く役立つものである。
図1
図2
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図7
図8
【配列表】
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