(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117317
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】液晶表示装置
(51)【国際特許分類】
G02F 1/13 20060101AFI20240822BHJP
G02F 1/13363 20060101ALI20240822BHJP
G02F 1/1343 20060101ALI20240822BHJP
G03B 21/00 20060101ALI20240822BHJP
G03B 21/14 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
G02F1/13 505
G02F1/13363
G02F1/1343
G03B21/00 E
G03B21/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023351
(22)【出願日】2023-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(71)【出願人】
【識別番号】399060908
【氏名又は名称】一般財団法人NHK財団
(71)【出願人】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】日下部 裕一
(72)【発明者】
【氏名】金澤 勝
(72)【発明者】
【氏名】古屋 正人
【テーマコード(参考)】
2H088
2H092
2H291
2K203
【Fターム(参考)】
2H088EA14
2H088EA15
2H088EA16
2H088HA02
2H088HA13
2H088HA17
2H088HA20
2H088HA21
2H088HA23
2H088HA28
2H088KA02
2H088MA04
2H092GA16
2H092HA04
2H092NA03
2H092RA05
2H291FA11Z
2H291FA29X
2H291FA29Z
2H291FA30Y
2H291FA56X
2H291FA56Z
2H291FA62X
2H291FA62Z
2H291FA65X
2H291FA65Z
2H291FA86Z
2H291GA04
2H291JA03
2H291LA28
2H291MA13
2K203FA03
2K203FA24
2K203FA34
2K203FA44
2K203GB02
2K203GB08
2K203GB20
2K203GB27
2K203GB30
2K203HA42
2K203HA65
2K203HB22
2K203HB25
2K203HB30
2K203MA05
(57)【要約】
【課題】色シェーディング及び画質低下を抑制できる液晶表示装置を提供する。
【解決手段】液晶表示装置は、液晶素子9と、レーザ光源から液晶素子9までの光路上に位置し、平行なレーザ光である入射光を1つの集光点Uで集光して平行な出射光として出射する光位相分散板30と、を備え、光位相分散板30は、入射光及び出射光を集光点Uで対称となるように入出射させる曲面状のレンズ面31を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コヒーレント光を出射するコヒーレント光源が備えられた液晶プロジェクタ用の液晶表示装置であって、
所望の画像を表示する液晶素子、を備え、
前記液晶素子は、前記コヒーレント光の1/4波長に基づいた厚さで液晶層の膜厚が異なることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
前記液晶素子は、
前記液晶層の入射面側に積層された透明電極、をさらに備え、
前記透明電極は、前記コヒーレント光の1/4波長に基づいた厚さの肉厚部を前記液晶層の入射面側に有することを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記液晶素子は、
前記液晶層の出射面側に積層された透明層、をさらに備え、
前記透明層は、前記コヒーレント光の1/4波長に基づいた厚さの肉厚部を前記液晶層の出射面側に有することを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記肉厚部は、凸状、錐台状又は曲面状であることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の液晶表示装置。
【請求項5】
コヒーレント光を出射するコヒーレント光源が備えられた液晶プロジェクタ用の液晶表示装置であって、
所望の画像を表示する液晶素子と、
前記コヒーレント光源から前記液晶素子までの光路上に位置し、平行な前記コヒーレント光である入射光を1つの集光点で集光して平行光を出射する光位相分散板と、を備え、
前記光位相分散板は、前記入射光及び前記平行光を前記集光点で対称となるように通過させる曲面状のレンズ面を有することを特徴とする液晶表示装置。
【請求項6】
2枚の前記光位相分散板を重ね合わせるように備えることを特徴とする請求項5に記載の液晶表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コヒーレント光源を用いた液晶プロジェクタ用の液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶プロジェクタは、コヒーレント光源としてレーザ光源が使用されており、広色域化・高輝度化が可能となり、その性能が改善されている。その一方、液晶プロジェクタでは、コヒーレンス性を有するレーザ光同士が干渉することによる画像妨害が問題となっている。
【0003】
まず、具体的な画質妨害の例とその発生原因について説明する。この液晶プロジェクタでは、RGBの液晶素子からの出射光の強度が場所毎に異なるため、
図28に示すように場所により色味が大きく異なってしまう。このような画質妨害は、コヒーレント光源で発生するものであり、色シェーディングと呼ばれる。
【0004】
ここでは、LCOS(Liquid Crystal On Silicon)と呼ばれる反射型液晶素子で説明する。
図29に示すように、液晶プロジェクタに用いる液晶素子9は、ガラス層90と、ITO(Indium Tin Oxide)などの透明電極91と、液晶層92と、駆動回路を形成した半導体(シリコン)基板93とを備える。この液晶素子9では、ガラス層90に入射した入射光(レーザ光)f
Iが、透明電極91及び液晶層92を通過し、液晶層92と半導体基板93との境界である反射面94で反射される。さらに、反射面94から液晶層92に向かった入射光の一部が透明電極91と液晶層92との境界で再び反射される(図の反射光f
R)。その後、反射光f
Rと入射光f
Iとが干渉を起こし、その結果が出射光f
Oとなる。このとき、液晶素子9では、この反射光f
Rと入射光f
Iとの干渉の影響を出射光f
Oが受けてしまうので、色シェーディングが発生する。以後の図面では、X軸が水平方向、Y軸が垂直方向、Z軸が奥行き方向を表す。
【0005】
なお、透過型液晶素子の場合、反射面94が存在せずに入射光は液晶層92を通過して出射するが、反射型液晶素子と同様、その一部が入射光と干渉するので色シェーディングが発生する。
【0006】
以下、数式を用いて、色シェーディングを説明する。入射光fIは、振幅1で周波数ωの正弦波として、(1)式で表される。反射光fRは、入射光fIが厚さLLCDの液晶層92を通ることで位相が変化すると共に、反射率Rが乗算されたものとして、(2)式で表される。出射光fOは、入射光fIと反射光fRの和として、(3)式で表される。ここで、反射率Rは、波長をλ、液晶層92の屈折率をnLCD、透明電極91の屈折率をnITOとすると、(4)式で表される。tは、時間を表す。
【0007】
【0008】
出射光fOの強度(輝度)FOは、(3)式とその共役項を掛け合わせたものなので、(5)式で表される。
【0009】
【0010】
ここで、前記した項目がどの程度の値になるか一例を記す。屈折率nLCD,nITOをそれぞれ1.5,2.0とすると、(4)式より反射率Rが0.14となる。液晶層92の厚さは数μmであるが、液晶素子9全体では±10%程度の厚さのムラがある(例えば、中央と周辺で厚さが10%程度異なる)。さらに、波長λが0.5μm程度であることから、(5)式のcosの項は、-1~+1の値をとる。このように、出射光fOの強度FOが(6)式に示す範囲を取り得ることから輝度の大きな差となって表れ、色シェ-ディングが発生する。
【0011】
【0012】
コヒーレント光源でなければ、入射光fIと反射光fRとの位相が全く非相関になるため、(3)式の加算が成立しない。この場合、出射光fOの強度FO´は、(7)式に示すように、入射光fIと反射光fRとの振幅和で一定になるので、色シェ-ディングが発生しない。(7)式では出射光fOの強度FO´が入射光fIの強度より大きくなるが、R2の項が入射光fIを反射して戻すことを意味するので、外部へ出ていく出射光fOの強度FO´が入射光の強度と略同じになる。
【0013】
【0014】
以上のように、レーザ光の干渉、液晶素子9内部での微小な反射、及び、液晶素子9の厚さのムラの組合せに起因するため、何れかを無くすことができれば色シェーディングが解決する。現時点では、色シェーディングの根本的解決手法が提案されてないので、映像信号の補正で色シェーディングに対処している。例えば、
図30に示すように、液晶素子の前段に位相分散板95を配置することで、微小領域ごとにレーザ光の位相を変化させ、干渉の影響を平均化させる従来技術が提案されている(特許文献1)。
図30では、矢印がレーザ光を表している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】“第26回:ビクター独自デバイス「D-ILA」の実力は?~ホームシアター参入第1弾「DLA-HX1D」~”,[online],[令和4年12月20日検索],インターネット<URL:https://av.watch.impress.co.jp/docs/20031010/dg26.htm>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
特許文献1に記載の手法では、液晶素子9への入射角が鉛直方向の設計であることが多く、位相分散板95がレーザ光を鉛直方向に出射する(
図30)。しかし、特許文献1に記載の手法では、
図31に示すように、位相分散板95が出力光を斜め方向に出射してしまい、レーザ光が斜め方向で液晶素子9に入射することがある。このように、特許文献1に記載の手法では、液晶素子9への入射角が設計時と大きく異なり、コントラストの低下といった画質の低下が生じるという問題がある。
【0018】
本発明は、色シェーディング及び画質低下を抑制できる液晶表示装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
前記課題を解決するため、本発明に係る液晶表示装置は、コヒーレント光を出射するコヒーレント光源が備えられた液晶プロジェクタ用の液晶表示装置であって、所望の画像を表示する液晶素子、を備え、液晶素子は、コヒーレント光の1/4波長に基づいた厚さで液晶層の膜厚が異なる構成とした。
【0020】
かかる構成によれば、液晶表示装置は、膜厚が異なる液晶層によりコヒーレント光の位相を分散させるので、コヒーレント光源からの入射光と液晶素子内部の反射光との干渉を軽減し、色シェ-ディングを抑制できる。さらに、液晶表示装置は、特許文献1に記載の位相分散板を必要としないので、液晶素子への入射角が設計時から変化せず、画質低下を抑制できる。
【0021】
また、前記課題を解決するため、本発明に係る液晶表示装置は、コヒーレント光を出射するコヒーレント光源が備えられた液晶プロジェクタ用の液晶表示装置であって、所望の画像を表示する液晶素子と、コヒーレント光源から液晶素子までの光路上に位置し、平行なコヒーレント光である入射光を1つの集光点で集光して平行光を出射する光位相分散板と、を備え、光位相分散板は、入射光及び平行光を集光点で対称となるように通過させる曲面状のレンズ面を有する構成とした。
【0022】
かかる構成によれば、液晶表示装置は、光位相分散板の各場所に入射するコヒーレント光の位相を分散させるので、コヒーレント光源からの入射光と液晶素子内部の反射光との干渉を軽減し、色シェ-ディングを抑制できる。さらに、液晶表示装置は、光位相分散板に入出射するコヒーレント光が集光点で線対称となるので、液晶素子への入射角が設計時から変化せず、画質低下を抑制できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、色シェーディング及び画質低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】第1実施形態において、レーザ光の干渉を軽減する原理を説明する説明図である。
【
図2】第1実施形態に係る液晶プロジェクタの概略構成図である。
【
図3】第1実施形態に係る光位相分散板を説明する説明図である。
【
図4】第1実施形態において、光位相分散板の形状を説明する説明図である。
【
図5】第1実施形態において、レンズ面の形状算出を説明する説明図である。
【
図6】第1実施形態において、レンズ面の形状算出を説明する説明図である。
【
図7】第1実施形態において、レンズ面の形状を算出するための繰り返し演算のフローチャートである。
【
図8】第2実施形態における出射光成分の混合を説明する説明図である。
【
図9】第2実施形態に係る光位相分散板を説明する説明図である。
【
図10】第3実施形態に係る液晶素子の断面図である。
【
図11】第3実施形態において、肉厚部の形成範囲を説明する説明図である。
【
図12】(a)は第4実施形態において肉厚部の形成範囲を説明する説明図であり、(b)及び(c)は液晶素子の断面図である。
【
図13】第4実施形態において肉厚部の形成範囲を説明する説明図である。
【
図14】第5実施形態に係る液晶素子の断面図である。
【
図15】第6実施形態に係る液晶素子の断面図である。
【
図16】第6実施形態において、肉厚部の形状算出を説明する説明図である。
【
図17】第6実施形態において、肉厚部の形状算出を説明する説明図である。
【
図18】第6実施形態において、肉厚部の形状算出を説明する説明図である。
【
図19】第6実施形態において、肉厚部の形状算出を説明する説明図である。
【
図20】第6実施形態において、肉厚部の形状を算出するための繰り返し演算のフローチャートである。
【
図21】第6実施形態において、肉厚部の形状算出を説明する説明図である。
【
図22】第6実施形態において、肉厚部の形状算出を説明する説明図である。
【
図23】第7実施形態に係る液晶素子の断面図である。
【
図24】第7実施形態に係る液晶素子の断面図である。
【
図25】第7実施形態に係る液晶素子の断面図である。
【
図26】実施例1のシミュレーション結果を表すグラフである。
【
図27】実施例2のシミュレーション結果を表すグラフである。
【
図28】従来の液晶プロジェクタで発生した色シェーディングの一例を示す画像である。
【
図29】従来の液晶素子の構造を示す模式図である。
【
図30】特許文献1に記載の位相分散板の断面図である。
【
図31】従来の位相分散板の出射光を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の各実施形態について図面を参照して説明する。但し、以下に説明する各実施形態は、本発明の技術思想を具体化するためのものであって、特定的な記載がない限り、本発明を以下のものに限定しない。また、同一の手段には同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0026】
(第1実施形態)
[レーザ光の干渉を軽減する原理]
第1実施形態を詳述する前に、レーザ光の干渉を軽減する原理について説明する。
図1に示すように、ガラス層90に対して入射光f
I1が角度θ
0で斜めに入射した場合を考える。入射光f
I1は、ガラス層90、透明電極91及び液晶層92を順に通過した後に反射面94で反射され、その一部が透明電極91と液晶層92との境界で再び反射される(図の反射光f
R1)。この場合、反射光f
R1は、距離dだけずれた位置の入射光f
I2と干渉する。角度θ
1は入射光f
I1が液晶層92に入射する角度を表し、厚さL
LCDは液晶層92の厚さを表す。
【0027】
ここで、
図1の角度θ
0,θ
1、距離dの関係は、(8)式で表される。入射光f
I1(f
I)が(1)式と同様の場合、入射光f
I2が(9)式で表される。
【0028】
【0029】
単に入射光fI1,fI2が斜めに入射するだけであれば、(2)式と同様の反射光fR1と(9)式で表される入射光fI2との干渉になり、結果も(5)式と変わらない。しかし、入射光fI1,fI2の位相が各場所で異なる場合、反射光fR1と入射光fI2とが非相関となり、(6)式で表される色シェ-ディングを抑制できる。つまり、各場所の屈折率を変えて入射光fIの位相を分散させれば、色シェ-ディングを抑制できる。
【0030】
前記したように、特許文献1に記載の位相分散板95では、平行光が入射しても、出射光が平行にならずに集光又は発散してしまい、画像劣化の原因となる(
図31)。そこで、入射した平行光が1点に集光し、平行光を出射するようにレンズ形状を工夫すればよい。
【0031】
[液晶プロジェクタの構成]
図2を参照し、第1実施形態に係る液晶プロジェクタ1の構成について説明する。
図2に示すように、液晶プロジェクタ1は、RGBのカラー画像を表示するプロジェクタであり、レーザ光源(コヒーレント光源)2と、液晶表示装置3(3
R,3
G,3
B)と、偏光プリズム4(4
R,4
G,4
B)と、ダイクロイックミラー5(5
G,5
B)と、ミラー6(6
1,6
2)と、プリズム7と、投射レンズ8とを備える。
【0032】
レーザ光源2は、レーザ光(コヒーレント光)を出射するものである。本実施形態では、レーザ光源2は、RGBの3色でレーザ光を出射することとする。このレーザ光源2は、従来の液晶プロジェクタで利用されている一般的なレーザ光源と同様のものである。
【0033】
液晶表示装置3は、レーザ光を出射するレーザ光源2が備えられた液晶プロジェクタ1用の液晶表示装置であり、液晶素子9と、光位相分散板30とを備えるものである。本実施形態では、液晶表示装置3は、赤色用の液晶表示装置3R、緑色用の液晶表示装置3G及び青色用の液晶表示装置3Bで構成されており、液晶表示装置3R,3G,3Bが同一構成であることとする。
【0034】
液晶素子9は、所望の画像を表示するものである。本実施形態では、赤色用の液晶素子9R、緑色用の液晶素子9G及び青色用の液晶素子9Bで構成されており、液晶素子9R,9G,9Bが同一であることとする。液晶素子9は、従来の反射型液晶素子と同様のため、説明を省略する。
【0035】
光位相分散板30は、レーザ光源2から液晶素子9までの光路上に位置するものである。本実施形態では、赤色用の光位相分散板30R、緑色用の光位相分散板30G及び青色用の光位相分散板30Bで構成されており、光位相分散板30R,30G,30Bが同一形状であることとする。この光位相分散板30の詳細は、後記する。
【0036】
偏光プリズム4は、レーザ光を透過又は反射するものである。本実施形態では、赤色用の偏光プリズム4R、緑色用の偏光プリズム4G及び青色用の偏光プリズム4Bで構成されており、偏光プリズム4R,4G,4Bが同一であることとする。
【0037】
ダイクロイックミラー5は、レーザ光の波長に応じて、レーザ光を透過又は反射するものである。
ミラー6は、レーザ光を反射するものである。
プリズム7は、分光されたRGBのレーザ光を合成するものである。
投射レンズ8は、プリズム7が合成したレーザ光を投射するレンズである。
【0038】
ここで、レーザ光源2がレーザ光(白色光)fW1を出射したこととする。ミラー61は、レーザ光源2からのレーザ光fW1を反射する。ダイクロイックミラー5Bは、レーザ光源2からのレーザ光fW1のうち、青色光fB1を反射する一方、赤色光及び緑色光が合成されている黄色光fYを通過させる。ミラー62は、ダイクロイックミラー5Bからの青色光fB1を反射する。偏光プリズム4Bは、ミラー62からの青色光fB1を液晶素子9Bに反射する。液晶素子9Bは、入射した青色光fB1を反射して、青色画像の出射光fB2を偏光プリズム4Bに出射する。偏光プリズム4Bは、青色画像の出射光fB2をプリズム7に通過させる。
【0039】
ダイクロイックミラー5Gは、ダイクロイックミラー5Bからの黄色光fYのうち、緑色光fG1を偏光プリズム4Gに反射させる一方、赤色光fA1を通過させる。偏光プリズム4Gは、緑色光fG1を液晶素子9Gに反射する。液晶素子9Gは、入射した緑色光fG1を反射して、緑色画像の出射光fG2を偏光プリズム4Gに出射する。偏光プリズム4Gは、緑色画像の出射光fG2をプリズム7に通過させる。
【0040】
偏光プリズム4Rは、ダイクロイックミラー5Gからの赤色光fA1を液晶素子9Rに反射する。液晶素子9Rは、入射した赤色光fA1を反射して、赤色画像の出射光fA2を偏光プリズム4Rに出射する。偏光プリズム4Rは、赤色画像の出射光fA2をプリズム7に通過させる。
【0041】
プリズム7は、偏光プリズム4Rからの赤色画像の出射光fA2と、偏光プリズム4Gからの緑色画像の出射光fG2と、偏光プリズム4Bからの青色画像の出射光fB2とを合成し、合成した出射光fW2を投射レンズ8に出射する。投射レンズ8は、プリズム7からの出射光fW2を投射する。
【0042】
図2では、液晶プロジェクタ1が3板式であることとして説明したが、液晶プロジェクタ1の構成はこれに限定されない。例えば、液晶プロジェクタ1は、単板式であってもよい。
また、液晶素子9が反射型液晶素子であることとして説明したが、液晶素子9が透過型液晶素子であってもよい。
【0043】
<光位相分散板>
図3を参照し、光位相分散板30について説明する。
図3に示すように、光位相分散板30は、平行なレーザ光である入射光f
Iを1つの集光点Uで集光して平行光f
I´を出射する。光位相分散板30は、入射光f
I及び平行光f
I´を集光点Uで対称となるように通過させる曲面状のレンズ面31を有する。
図3では、図面を見やすくするため、3組のレンズ面31のみを図示したが、実際には光位相分散板30が4組以上のレンズ面31を有してもよい。
【0044】
光位相分散板30は、液晶素子9の所定領域毎にレンズ面31を有する。
図3の例では、光位相分散板30は、液晶素子9に形成された2つの画素96(96
1,96
2)に対し、3組のレンズ面31(31
1~31
3)が形成されている。それぞれのレンズ面31は、画素96よりも小さなサイズであり、入射面側と出射面側が対称となるような曲面状である。つまり、断面視した際(X-Z平面)、光位相分散板30は、集光点U同士を結んだ線に対して、線対称な曲面状のレンズ面31が連続したものとなる。平面視した際(X-Y平面)、レンズ面31は、画素96と同一形状(例えば、長方形)にすればよい。例えば、液晶素子9が対角1インチの大きさでアスペクト比が16:9の場合、レンズ面31のサイズは22.14×12.45ミリメートルとなる。例えば、光位相分散板30の材料としては、アクリルや透明セラミックがあげられる。
【0045】
ここで、屈折率1.491の材料で光位相分散板30を形成し、波長0.55μmのレーザ光を用いる場合を考える。
図4の例では、光位相分散板30は、最も厚くなる箇所の厚さLが4μmであり、1個分のレンズ面31の幅Wが2.284μmである。レンズ面31の山部分(最も厚い部分)に入射した光と、レンズ面31の谷部分(最も薄い部分)に入射した光との間では、位相が1波長分だけ異なる(谷部分の方が山部分よりもレーザ光が1波長分長くなる)。
【0046】
<レンズ面の形状算出>
図5を参照し、レンズ面31の形状を算出する具体的方法について説明する。
レンズ面31の形状は、光位相分散板30の材料の屈折率n
1及び大気の屈折率n
2を屈折の法則に適用することで算出できる。
図5では、Z-X軸座標系を2次元座標(z,x)で表現している。
【0047】
レンズ面31の形状を定める際、集光点Uからの入射光f
Iが平行光になるという条件を満たす必要がある。
図5に示すように、屈折率n
1の光位相分散板30の集光点Uから角度θで出射した入射光f
Iが、屈折率n
2の大気では平行光f
I´になる。レンズ面31で平行光f
I´が出射する点Rにおいて、レンズ面31の接線の傾きをαとする。レンズ面31の接線とZ軸との交点を点Qとする。この接線に対して、平行光f
I´は、角度(π/2-α-θ)で入射し、角度(π/2-α)で出射するので、屈折の法則より(10)式が成り立つ。
【0048】
【0049】
この(10)式を変形すると、(11)式のように傾きαを求めることができる。
【数7】
【0050】
上記は1点での演算なので、その演算を繰り返してレンズ面31の全体形状を求める。
図6に示すように、レンズ面31において、角度θに対する点R
0が求まっているとき、角度Δθだけずれた点R
1を求めればよい。直線URと直線QRの交点(z+Δz,x+Δx)は、(12)式及び(13)式で表される。
【0051】
【0052】
この交点より、点R0,R1の差分を表す(Δz,Δx)は、以下の(14)式及び(15)式で表される。
【0053】
【0054】
前記したように、傾きαを(11)式で求めているので、
図7に示すように、繰り返し演算でレンズ面31の形状を算出できる。
ステップS1では、レンズ面31の形状算出に必要な初期値を設定する。例えば、屈折率n
1,n
2、角度Δθ、最大角度θ
Mを設定する。具体的には、角度θ
0=0、角度αの初期値α
0=90、z
0=1、x
0=0に設定する。
【0055】
ステップS2では、θ=θ+ΔθでのΔz,Δxを算出する。そして、角度θ、交点(z,x)の座標を更新する。
ステップS3では、角度θが最大角度θMを超えたか否かを判定する。
【0056】
角度θが最大角度θMを超えた場合(ステップS3でYes)、繰り返し演算を終了する。
角度θが最大角度θMを超えていない場合(ステップS3でNo)、ステップS2の処理に戻る。
【0057】
[作用・効果]
以上のように、液晶表示装置3は、光位相分散板30の各場所に入射するレーザ光の位相を分散させるので、レーザ光源2からの入射光と液晶素子9内部の反射光との干渉を軽減し、色シェ-ディングを抑制できる。さらに、液晶表示装置3は、光位相分散板30に入出射するレーザ光が集光点Uで線対称となるので、液晶素子9への入射角が設計時から変化せず、画質低下を抑制できる。
【0058】
(第2実施形態)
[液晶表示装置の構成]
図8及び
図9を参照し、第2実施形態に係る液晶表示装置3Bの構成について、第1実施形態と異なる点を説明する。
なお、液晶表示装置3Bでは、光位相分散板30以外の各手段が第1実施形態と同様のため、説明を省略する。
【0059】
図8では、説明を分かりやすくするため、画素96
1が出射した光を実線で図示し、画素96
2が出射した光を破線で図示した。
図8に示すように、レンズ面31の幅と画素96の幅とが無関係なので、レンズ面31と画素96とが1対1にならない場合がある。
図8の例では、2個の画素96に対して、レンズ面31が3組となっている。この場合、画素96からの出射光が集光点Uで交差して左右反転し、隣接する画素96からの出射光同士が混合するため、解像度劣化の原因となる。
図8の例では、中央のレンズ面31
2で画素96
1,96
2からの出射光成分が混合している。
【0060】
そこで、
図9に示すように、液晶表示装置3Bは、2枚の光位相分散板30(30
1,30
2)を重ね合わせるように備えることとした。このように、光位相分散板30を2段重ねすると、画素96からの出射光が2回左右反転するので元のまま出射されることになり、隣接する画素96からの出射光成分が混合した状態とらない。
図9の例では、レンズ面31
2で画素96
1,96
2からの出射光成分が混合せずにその位置関係が保たれているので、解像度劣化を抑制できる。
【0061】
ここで、2枚の光位相分散板30は、同一形状及び同一サイズである。2枚の光位相分散板30は、X軸方向及びY軸方向で互いのレンズ面31が整列するように配置する。
図9に示すように、2枚の光位相分散板30は、Z軸方向で間隔を設けて配置してもよく、互いに密着するように配置してもよい(不図示)。
【0062】
光位相分散板30を2段重ねとした場合、2枚の光位相分散板30でレーザ光の位相差が1波長分となればよいので、1枚の光位相分散板30あたりのレーザ光の波長差が0.5波長分となる。従って、1枚の光位相分散板30の厚さ及び各レンズ面31の幅は、第1実施形態の半分となる。
【0063】
[作用・効果]
以上のように、液晶表示装置3Bは、第1実施形態と同様、色シェ-ディング及び画質低下を抑制できる。
さらに、液晶表示装置3Bは、隣接する画素96からの出射光成分の混合を防止できるので、解像度劣化を抑制できる。
ここでは、光位相分布板30を2枚として説明したが、2以上の偶数枚でも同様の効果が得られるため、本実施形態に含むこととする。
【0064】
(第3実施形態)
[レーザ光の干渉を軽減する原理]
第3実施形態を詳述する前に、液晶素子100がレーザ光の干渉を軽減する原理を説明する。
図10に示すように、液晶素子100は、レーザ光の1/4波長に基づいた厚さΔL
Tで液晶層130の膜厚が異なっている。ここで、透明電極120は、液晶層130に厚さΔL
Tだけ厚くなった凸状の肉厚部121を有する。そして、液晶層130は、透明電極120に密着しているので、厚さΔL
Tだけ膜厚が異なる箇所が存在する。
【0065】
透明電極120で肉厚部121が形成されていない箇所を凹部122とする。つまり、凹部122の膜厚が、本来の透明電極120の膜厚である。凹部122と液晶層130との境界になるX-Y平面を面Aとし、肉厚部121と液晶層130との境界になるX-Y平面を面Bとする。厚さΔLTは、Z軸方向における面Aと面Bとの距離を表す。
【0066】
液晶層130の膜厚、つまり、面Aから反射層140までの距離をLLCDとする。液晶層130内でのレーザ光の波長をλLCDとし、レーザ光の周波数をωとし、透明電極120と液晶層130との境界における反射率をRTとする。このとき、面Aに入射して反射層140に達する入射光f(t)S1-1は、以下の(16)式で表される。ωS1は後記する干渉光f(t)S1の位相を表す。
【0067】
【0068】
入射光f(t)S1-1が反射層140で反射された後に面Aで再反射された反射光を反射光f(t)S1-2とする。入射光f(t)S1-1と反射光f(t)S1-2との干渉光を干渉光f(t)S1とする。反射光f(t)S1-2及び干渉光f(t)S1は、以下の(17)式で表される。
【0069】
【0070】
(16)式及び(17)式は、光の振幅を表すので、光の強度(輝度)は振幅の実数部の2乗となる。このため、出力光FS1の強度は、(18)式で表される。
【0071】
【0072】
面Bについても面Aと同様、入射光f(t)S2-1、反射光f(t)S2-2、干渉光f(t)S2及び出力光FS2の強度が(19)式~(21)式で表される。
【0073】
【0074】
面A及び面Bが同じ大きさなので、1画素全体での出力光Fの強度は、(22)式で表される。
【0075】
【0076】
(22)式の第3項が干渉による成分を表しており、液晶素子100内での位置に応じて厚さLLCDが変化することから、色シェーディングが生じる。ここで、ΔLTを以下の(23)式のようにすれば(24)式が成立し、(17)式が(25)式で表されるので、干渉成分が低減する。
【0077】
【0078】
なお、(23)式は、厚さΔLTがレーザ光の1/4波長に基づいて定まることを表している。従って、厚さΔLT=λLCD/4+n・λLCD/2としてもよい(但し、n>1を満たす整数)。
以上のように、液晶層130に適切な大きさの凹凸構造を設けて液晶層130の膜厚を変化させれば、色シェーディングを抑制できる。
【0079】
[液晶表示装置の構成]
図10に示すように、液晶表示装置10は、レーザ光を出射するレーザ光源(不図示)が備えられた液晶プロジェクタ用の液晶表示装置であって、液晶素子100を備えるものである。なお、レーザ光源及び液晶プロジェクタは、一般的なものであるため、説明及び図示を省略した。
【0080】
液晶素子100は、所望の画像を表示するものであり、レーザ光の1/4波長(つまり、(23)式の波長λLCD/4)に基づいた厚さΔLTで液晶層130の膜厚が異なる。また、液晶素子100は、液晶層130の入射面側に積層された透明電極120を備える。液晶層130の入射面は、Z軸方向で上側の平坦面、つまり、透明電極120に接する側の平坦面である。
【0081】
例えば、液晶素子100としては、反射型液晶素子があげられる。
図10に示すように、液晶素子100は、ガラス層110と、ITOなどの透明電極120と、液晶層130と、反射層(反射面)140と、駆動回路を形成した半導体(シリコン)基板150とを備える。ここで、透明電極120及び液晶層130以外は、従来の液晶素子9と同様のため、説明を省略する。
【0082】
透明電極120は、レーザ光の1/4波長に基づいた厚さΔLTの肉厚部121を液晶層130の入射面側に有する。この肉厚部121は、断面視した際、凸状である。透明電極120は、1画素あたり1個の肉厚部121を有しており、肉厚部121以外の残りが凹部122となる。つまり、透明電極120は、肉厚部121の箇所が厚さΔLTだけ凹部122の箇所よりも肉厚になる。そして、液晶層130は、透明電極120に密着しているので、肉厚部121と対面する箇所が厚さΔLTだけ膜厚が薄くなる。
【0083】
ここで、X軸方向において、肉厚部121及び凹部122それぞれの幅は、画素の幅L
Pの半分である。
図11に示すように、Y軸方向では、肉厚部121及び凹部122の長さは、画素96の長さと等しい。つまり、1画素の半分は肉厚部121が形成された面B、1画素の残り半分は凹部122が形成された面Aとなる。
【0084】
例えば、透明電極120全体を肉厚部121の厚さで積層した後、凹部122をエッチングすることで、透明電極120を形成できる。本実施形態では、透明電極120自体の厚さを変更しているが、平面状の透明電極120を積層した後、凸状の肉厚部121を別途形成してもよい。この場合、肉厚部121は、透明電極120と同一の屈折率、かつ、透明材料で形成すればよい(例えば、ITO)。
【0085】
なお、(23)式のように、レーザ光の波長λLCDに応じて厚さΔLTが定まるので、 RGB3色のレーザ光を用いる場合、RGBのレーザ光毎に厚さΔLTを変えてもよい。凹凸の数を多くすれば、レーザ光の干渉で生じるコントラストの影響が少なくなるので、厚さΔLTをRGBのレーザ光で共通にしてもよい(実施例1参照)。
【0086】
[作用・効果]
以上のように、液晶表示装置10は、膜厚が異なる液晶層130によりレーザ光の位相を分散させるので、レーザ光源からの入射光と液晶素子100内部の反射光との干渉を軽減し、色シェ-ディングを抑制できる。さらに、液晶表示装置10は、特許文献1に記載の位相分散板を必要としないので、液晶素子100への入射角が設計時から変化せず、画質低下を抑制できる。
【0087】
凹凸構造のサイズが1画素よりも大きい場合、画面で薄い縞模様が見えるなどの画質劣化が生じる可能性がある。このため、凹凸構造のサイズは、1画素以下であることが好ましい。ただし、凹凸構造のサイズが1画素より大きくても、色シェーディングを改善する効果を有する。このため、凹凸構造のサイズが1画素よりも大きい場合も本実施形態に含むものとする。
【0088】
(第4実施形態)
[液晶表示装置の構成]
第4実施形態に係る液晶表示装置10Bの構成について、第3実施形態と異なる点を説明する。
第3実施形態では、1画素あたり凹凸の数が2個であり、肉厚部121の厚さΔLTが1種類である。これに対し、第4実施形態では、1画素あたり凹凸の数が3個以上であり、肉厚部121の厚さΔLTが2種類以上である点が、第3実施形態と異なる。
【0089】
例えば、凹凸がN個の場合(つまり、厚さΔLTがN-1種類の場合)を考える。この場合、n個目の肉厚部121の厚さΔLT(n)は、以下の(26)式で表される(但し、Nは3以上の整数)。厚さΔLT(0)の箇所が凹部122に相当する。
【0090】
【0091】
N=4の場合を考える。
図12(a)~
図12(c)に示すように、透明電極120Bは、厚さΔL
T(1)~ΔL
T(3)の3個の肉厚部121と、厚さΔL
T(0)の凹部122とを有する。
図12(a)及び
図12(b)に示すように、厚さΔL
T(0)の凹部122と厚さΔL
T(1)の肉厚部121が、画素96の左側に並んでいる。
図12(a)及び
図12(c)に示すように、厚さΔL
T(2)及び厚さΔL
T(3)の肉厚部121が画素96の右側に並んでいる。
【0092】
なお、
図12(a)では、説明を分かりやすくするため、厚さΔL
T(n)を図示した(
図13も同様)。また、
図12(b)及び
図12(c)では、透明電極120B及び液晶層130C以外の図示を省略した。
【0093】
N=9の場合を考える。
図13に示すように、透明電極120Bは、厚さΔL
T(1)~ΔL
T(7)の8個の肉厚部121と、厚さΔL
T(0)の凹部122とを有する。この場合、画素96の左上から右下まで順に厚さΔL
T(0)の凹部122と厚さΔL
T(1)~ΔL
T(7)の肉厚部121とが並んでいる。
【0094】
[作用・効果]
以上のように、液晶表示装置10Bは、第3実施形態と同様、色シェ-ディング及び画質低下を抑制できる。
さらに、液晶表示装置10Bは、凹凸の数が多いので、RGBの各原色で同一寸法の凹凸構造を採用することができる。
【0095】
(第5実施形態)
[液晶表示装置の構成]
第5実施形態に係る液晶表示装置10Cの構成について、第3実施形態と異なる点を説明する。
第3実施形態では、透明電極120に凸状の肉厚部121が形成されており、凹凸構造であることとして説明した。この場合、入射するレーザ光が完全な平行光であれば何の問題もない。実際には、レーザ光に微小な広がり角があるため、不連続になる凹凸の境界部で乱反射が発生し、画質劣化が生じる場合がある。そこで、第5実施形態では、透明電極120Cは、錐台状の肉厚部123を備える点が、第3実施形態と異なる。
【0096】
図14に示すように、透明電極120Cは、隣接する画素に跨るように1個の肉厚部123を有しており、肉厚部123以外の残り部分が底部124となる。この肉厚部123は、断面視した際、台形状となる。つまり、肉厚部123は、最大で厚さΔL
Tの厚みを有し、四角錐台状の形状である。X軸方向において、肉厚部123の幅は、1画素の幅L
Pよりも大きくなる。また、透明電極120Cには、第4実施形態と同様、1画素に複数の肉厚部123を設けてもよい(不図示)。なお、肉厚部123の形状算出手法については、詳細を後記する(第6実施形態)。
【0097】
[作用・効果]
以上のように、液晶表示装置10Cは、第3実施形態と同様、色シェ-ディング及び画質低下を抑制できる。
さらに、液晶表示装置10Cは、肉厚部123を錐台状にしたことで、肉厚部123と底部124との境界部が滑らかで連続したものなり、乱反射による画質劣化を抑制できる。
【0098】
(第6実施形態)
[液晶表示装置の構成]
第6実施形態に係る液晶表示装置10Dの構成について、第5実施形態と異なる点を説明する。
第5実施形態では、肉厚部123が錐台状である。これに対し、第6実施形態では、肉厚部125が曲面状である点が、第5実施形態と異なる。
【0099】
図15に示すように、透明電極120Dは、隣接する画素に跨るように1個の肉厚部125を有している。この肉厚部125は、断面視した際、曲線状(例えば、正弦波状)となる。つまり、肉厚部125は、最大で厚さΔL
Tの厚みを有し、曲面状の形状である。X軸方向において、肉厚部125の幅は、画素の幅L
Pと同程度である。なお、透明電極120Dには、第4実施形態と同様、1画素に複数の肉厚部125を設けてもよい(不図示)。
【0100】
<肉厚部の形状算出>
以下、肉厚部125の形状を算出する手法について具体的に説明する。
図16には、肉厚部125の一部形状を図示した。透明電極120Dの屈折率をn
ITOとし、液晶表130Dの屈折率をn
LCDとする。また、x=0~L
Pとする。
図16では、Z-X軸座標系を2次元座標系(x,z)で表現している。
【0101】
図16に示すように、肉厚部125の形状は、以下の(27)式で表される。(27)式は、以下の(28)式で表される性質を有する。
【0102】
【0103】
(27)式及び(28)式より、曲面状の肉厚部125の形状については、以下の(29)式で表される。
【0104】
【0105】
図17に示すように、Z軸に平行で入射した入射光F
1が点P
1(x
1,f(x
1))で屈折し、屈折光F
2が点Q
1(x
2,0)で反射し、反射光F
3が点P
2(x
3,f(x
3))で別の入射光F
4に重なることとする。
図18には、入射光F
1及び屈折光F
2を詳細に図示した。
【0106】
図18に示すように、z=f(x)の接線をz=h
1(x)とする。接線z=h
1(x)の法線と入射光F
1との角度をθ
1とし、入射光F
1と屈折光F
2との角度をθ
2とする。このとき、接線z=h
1(x)が以下の(30)式で表され、角度θ
1が以下の(31)で表される。
【0107】
【0108】
屈折の法則より、角度θ2は、以下の(32)式で表される。
【0109】
【0110】
これにより、屈折光F
2は、以下の(33)式で表される。
【数21】
【0111】
図19には、屈折光F
2、反射光F
3及び入射光F
4を詳細に図示した。
図19に示すように、屈折光F
2が反射した位置x
2は、以下の(34)式で表される。
【0112】
【0113】
従って、反射光F3は、以下の式(35)で表される。
【0114】
【0115】
以下の(36)式を満足するxの値を算出することで、点P2を求めることができる。例えば、以下の(37)式を満足するx4を算出すれば、点P2のx座標を表すx3を求められる。
【0116】
【0117】
肉厚部125の形状を単純な数式で表すことは困難なので、
図20に示すように、繰り返し演算で肉厚部125の形状を算出する。
図20に示すように、ステップS10では、肉厚部125の形状算出に必要な初期値を設定する。例えば、変数x
a=x
2、変数x
b=x
4と設定する。
ステップS11では、以下の(38)式に示すように、変数x
c,y
1,y
2を算出する。x
cは、
図19のx
3を表す。
【0118】
【0119】
ステップS12では、|z1-z2|≦εであるか否かを判定する。εは、任意の微小な数値を表す。例えば、計算精度を波長の1%とする場合、ε=λLCD/100とする。
ステップS12でNoの場合、ステップS13において、変数z1>変数z2であるか否かを判定する。
ステップS13でYesの場合、ステップS14において、変数xbに変数xcを代入し、ステップS11の処理に戻る。
ステップS13でNoの場合、ステップS15において、変数xaに変数xcを代入し、ステップS11の処理に戻る。
ステップS12でYesの場合、ステップS16において、座標値x3に変数xcを代入し、繰り返し演算を終了する。
【0120】
前記した繰り返し演算により、肉厚部125の形状を算出できる。次に、肉厚部125の各点Pにおける光の位相を算出する。z=LLCDを基準位相面とする(入射光がレーザ光なので、この位置zで位相が同一)。点P1,P2での入射光の位相(基準位相面からのずれ)をそれぞれα1,α2とし、点P2での屈折光の位相をβ1とし、真空中でのレーザ光の波長をλ0とする。このとき、位相α1,α2,β1は、以下の(39)式~(41)式で表される。
【0121】
【0122】
図21に示すように、入射光F
1と屈折光F
2が同一位置に入射した場合、屈折光F
2が透明電極120Dで反射し、その反射光の一部が入射光F
1と同じ方向になるので、反射光の一部と入射光F
1とが干渉する。この干渉に寄与する光は、屈折光F
2に透明電極120Dでの反射率R
Tを乗算したものとなる。この場合、入射光F
1の振幅S
1が以下の(42)式で表され、屈折光F
2の反射光成分の振幅S
2が以下の(43)式で表される。
【0123】
【0124】
振幅S1,S2の加算は、以下の(44)式で表される。
【0125】
【0126】
光の強度は、(44)式の振幅S1,S2の2乗なので、以下の(45)式で表される。
【0127】
【0128】
(42)式及び(43)式でα=α2、β=β1となる。1画素での輝度は、x1=0~LPの範囲で積分したものとなり、液晶層130の厚さLLCDに応じて変化する。従って、輝度F(LLCD)は、以下の(46)式で表される。
【0129】
【0130】
以下、第5実施形態で肉厚部123を台形状とした場合について補足する。この場合、
図22に示すように、(29)式の代わりに、以下の(47)式を用いればよい。
【0131】
【0132】
[作用・効果]
以上のように、液晶表示装置10Dは、第5実施形態と同様、色シェ-ディング及び画質低下を抑制できる。
さらに、液晶表示装置10Dは、肉厚部125を曲面状にしたことで、肉厚部125と底部124との境界部が滑らかで連続したものなり、乱反射による画質劣化を抑制できる。
【0133】
(第7実施形態)
[液晶表示装置の構成]
図23を参照し、第7実施形態に係る液晶表示装置10Eの構成について、第3実施形態と異なる点を説明する。
第3実施形態では、凸状の肉厚部121を液晶層130Dの入射面側に備えることとして説明した。これに対し、第7実施形態では、肉厚部161を液晶層130Eの出射面側に備える点が第5実施形態と異なる。ここで、液晶層130の出射面は、Z軸方向で下側の平坦面、つまり、反射層140に接する側の平坦面である。
【0134】
液晶表示装置10Eは、レーザ光を出射するレーザ光源が備えられた液晶プロジェクタに用いられ、液晶素子100Eを備えるものである。なお、レーザ光源及び液晶プロジェクタは、一般的なものであるため、説明及び図示を省略した。
【0135】
液晶素子100Eは、所望の画像を表示するものであり、例えば、反射型液晶素子である。
図23に示すように、液晶素子100は、ガラス層110と、透明電極120と、液晶層130Eと、反射層(反射面)140と、透明層160と、半導体基板150とを備える。ここで、液晶層130E及び透明層160以外は、従来の液晶素子9と同様のため、説明を省略する。
【0136】
透明層160は、液晶層130Eの出射面側に積層されたものである。透明層160は、反射層140と半導体基板150との間に配置されている。透明層160は、透明電極120と同様の材料(例えば、ITO)であればよい。
図23に示すように、透明層160は、液晶層130Eの出射面側に凸状の肉厚部161を有する。この肉厚部161は、液晶層130Eの出射面側に位置する以外、
図10の肉厚部121と同様のものである。
【0137】
つまり、透明層160は、肉厚部161が厚さΔL
Tだけ肉厚になっている。そして、液晶層130Eは、透明層160に密着するように形成されるので、透明層160と同様に厚さΔL
Tで膜厚が異なる。他の点、液晶層130Eは、
図10の液晶層130と同様である。
【0138】
ここで、透明層160は、
図24に示すように、液晶層130Eの出射面側に錐台状の肉厚部163を有してもよい。この肉厚部163は、液晶層130Eの出射面側に位置する以外、
図14の肉厚部123と同様のものである。
【0139】
さらに、透明層160は、
図25に示すように、液晶層130Eの出射面側に曲面状の肉厚部165を有してもよい。この肉厚部165は、液晶層130Eの出射面側に位置する以外、
図15の肉厚部125と同様のものである。
【0140】
なお、第7実施形態及び
図23,24では、出射面側のみ凹凸形状として説明したが、入射面側と出射面側との両方を凹凸形状にしても同様なので、これらも本実施形態に含むものとする。
[作用・効果]
以上のように、液晶表示装置10Eは、第3実施形態と同様、色シェ-ディング及び画質低下を抑制できる。
さらに、液晶表示装置10Eは、錐台状の肉厚部163又は曲面状の肉厚部165を備える場合、第5実施形態又は第6実施形態と同様、乱反射による画質劣化を抑制できる。
【0141】
以上、本発明の各実施形態を詳述してきたが、本発明は前記した各実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0142】
前記した各実施形態では、コヒーレント光源が、レーザ光を出射するレーザ光源であることとして説明したが、これに限定されない。つまり、コヒーレント光源は、コヒーレント光を出射できるものであればよい。例えば、コヒーレント光源として、スーパールミネッセントダイオード(SLD:Super Luminescent Diode)光源があげられる。
【0143】
(実施例1)
以下、実施例について説明する。
図26には、第4実施形態において、緑色レーザ光の波長に応じた厚さΔL
Tで肉厚部を設けた状態で、赤色レーザ光及び青色レーザ光を用いたときのコントラストのシミュレーション結果を図示した。
図26では、横軸が凹凸の数を表し、縦軸がコントラストを表す(縦軸‘1’が濃淡無し)。
図26より、肉厚部を設けていない場合(横軸が‘0’)と比べ、凹凸の数が4以上であれば、濃淡によるコントラストを1/4程度に軽減し、厚さΔL
TをRGBのレーザ光で共通にしても問題ないことが分かる。
【0144】
(実施例2)
図27には、第6実施形態において、厚さΔL
Tとレーザ光の干渉で生じるコントラストのシミュレーション結果を図示した。
図27では、横軸が厚さΔL
Tを表し、縦軸がコントラストを表す。
図27より、肉厚部を設けていない場合と比べ、コントラストを1/8程度に軽減できることが分かる。
【符号の説明】
【0145】
1 液晶プロジェクタ
2 レーザ光源(コヒーレント光源)
3 液晶表示装置
4 偏光プリズム
5 ダイクロイックミラー
6 ミラー
7 プリズム
8 投射レンズ
9 液晶素子
10 液晶表示装置
30 光位相分散板
31 レンズ面
90 ガラス層
91 透明電極
92 液晶層
93 半導体基板
94 反射面
100 液晶素子
110 ガラス層
120 透明電極
121,123,125 肉厚部
122 凹部
124 底部
130 液晶層
140 反射層(反射面)
150 半導体基板
160 透明層
161、63,165 肉厚部