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特開2024-11734防虫ネット、防虫ネットシステム、害虫の侵入阻止方法、及び防虫ネットの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011734
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】防虫ネット、防虫ネットシステム、害虫の侵入阻止方法、及び防虫ネットの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A01M 29/34 20110101AFI20240118BHJP
   A01M 29/22 20110101ALI20240118BHJP
【FI】
A01M29/34
A01M29/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022113979
(22)【出願日】2022-07-15
(71)【出願人】
【識別番号】504171134
【氏名又は名称】国立大学法人 筑波大学
(71)【出願人】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【弁理士】
【氏名又は名称】春田 洋孝
(72)【発明者】
【氏名】水谷 孝一
(72)【発明者】
【氏名】海老原 格
(72)【発明者】
【氏名】石井 雅久
【テーマコード(参考)】
2B121
【Fターム(参考)】
2B121AA12
2B121BB27
2B121DA49
2B121EA12
2B121FA12
(57)【要約】
【課題】害虫の侵入を阻止するために効率的に防虫ネット全体を振動させることができる防虫ネット、防虫ネットシステム、害虫の侵入阻止方法、及び防虫ネットの製造方法を提供する。
【解決手段】第1方向D1に沿って延び、第1方向D1に直交する第2方向D2に沿って複数並べられた第1糸11と、第2方向D2に沿って延び、第1方向D1に沿って複数並べられた第2糸12と、を備えた防虫ネット10であって、複数の第2糸12の一部は、高張力線12mである。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に沿って延び、前記第1方向に直交する第2方向に沿って複数並べられた第1糸と、
前記第2方向に沿って延び、前記第1方向に沿って複数並べられた第2糸と、
を備えた防虫ネットであって、
前記複数の第2糸の一部は、高張力線である、
防虫ネット。
【請求項2】
前記高張力線は、断面が円状である、
請求項1に記載の防虫ネット。
【請求項3】
前記高張力線は、断面が長方形状である、
請求項1に記載の防虫ネット。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の防虫ネットと、
前記防虫ネットに張力を付加する張力手段と、
前記防虫ネットを振動させる振動手段と、
を備える、防虫ネットシステム。
【請求項5】
前記張力手段はバネである、
請求項4に記載の防虫ネットシステム。
【請求項6】
請求項4に記載の防虫ネットシステムを用いた害虫の侵入阻止方法であって、
前記張力手段によって前記高張力線に張力を付加するとともに、
前記振動手段によって前記高張力線を振動させる、
害虫の侵入阻止方法。
【請求項7】
請求項1から3のいずれか1項に記載の防虫ネットの製造方法であって、
前記第1方向に並べられた前記複数の第2糸の一部に、前記高張力線を間隔を空けて複数配置する第1工程と、
前記複数の第2糸を、前記複数の第1糸によって織り上げる第2工程と、
を備える、防虫ネットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防虫ネット、防虫ネットシステム、害虫の侵入阻止方法、及び防虫ネットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
園芸施設の側窓に、通気性を確保しつつ害虫の侵入を阻止するため、網目が比較的小さな(目合いが0.2から1.0mm)防虫ネットが用いられることがある。
特許文献1では、柔軟性を有する縦糸と横糸で織成された防虫ネットが開示されている。
特許文献2では、施設の開口部に設置された防虫ネットを振動させて、前記防虫ネットの網目を通過可能な大きさの微小生物の侵入を抑制する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-166487号公報
【特許文献2】特開2021-182944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
害虫の侵入を阻止する為に、防虫ネットを振動させる。この時、加振器による振動が、防虫ネットを構成する柔軟性のある糸によって吸収されることがある。すると、少数の加振器によって防虫ネット全体を効率的に振動させることができない。これにより、例えば、上記技術を大型の園芸施設に適用する際に課題となる。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、害虫の侵入を阻止するために効率的に防虫ネット全体を振動させることができる防虫ネット、防虫ネットシステム、害虫の侵入阻止方法、及び防虫ネットの製造方法及び施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
<1>本発明の態様1に係る防虫ネットは、第1方向に沿って延び、前記第1方向に直交する第2方向に沿って複数並べられた第1糸と、前記第2方向に沿って延び、前記第1方向に沿って複数並べられた第2糸と、を備えた防虫ネットであって、前記複数の第2糸の一部は、高張力線である。
【0007】
この発明によれば、複数の第2糸の一部は、高張力線である。これにより、防虫ネットを振動させても、柔軟性の無い高張力線により振動が防虫ネット全体に伝播する。したがって、防虫ネットによって前記振動が吸収されることを抑えることができる。よって、防虫ネットを大きくした場合であっても、少数の加振器によって効率的に防虫ネット全体を振動させることができる。このため、本態様に係る防虫ネットを大型の園芸施設に適用した場合であっても、前記振動を防虫ネット全体に効率的に伝播することができる。よって、防虫ネットによって害虫の侵入を阻止することができる。また、例えば、防虫ネットの目合いを大きくする場合には、通気性を確保でき労働環境の改善につながる。
【0008】
<2>本発明の態様2に係る防虫ネットは、態様1に係る防虫ネットにおいて、前記高張力線は、断面が円状である。
【0009】
この発明によれば、高張力線は、断面が円状である。これにより、例えば、高張力線の断面積を、高張力線以外の第2糸と同じにすることで、防虫ネットを製造する際、既存の織機の設計を変更することなく使用することができる。また、防虫ネットを丸めて収納する際、防虫ネットが高張力線によって丸めづらくなることを抑えることができる。よって、防虫ネットの収納性を確保することができる。
【0010】
<3>本発明の態様3に係る防虫ネットは、態様1に係る防虫ネットにおいて、前記高張力線は、断面が長方形状である。
【0011】
この発明によれば、高張力線は、断面が長方形状である。これにより、例えば、高張力線について、断面の短辺の長さが高張力線以外の第2糸の直径と同じであるものを使用して、断面の長辺が第1方向と平行になるように配置することで、高張力線の断面が大きくなっても、防虫ネットの収納性を損なわないようにすることができる。
【0012】
<4>本発明の態様4に係る防虫ネットシステムは、態様1から態様3のいずれか1つに係る防虫ネットと、前記防虫ネットに張力を付加する張力手段と、前記防虫ネットを振動させる振動手段と、を備える。
【0013】
この発明によれば、防虫ネットに張力を付加する張力手段と、防虫ネットを振動させる振動手段と、を備える。これにより、張力手段によって張力を付加された状態の防虫ネットを、振動手段によって振動させることができる。したがって、防虫ネットを効率的に振動させることができる。また、例えば、季節の変動に伴う気温の変化による高張力線の膨張や収縮に対して柔軟に対応し、常に防虫ネットに張力が付加された状態を保つことができる。
【0014】
<5>本発明の態様5に係る防虫ネットシステムは、態様4に係る防虫ネットシステムにおいて、前記張力手段はバネである。
【0015】
この発明によれば、張力手段はバネである。これにより、電力等を用いることなく、絶えず防虫ネットに張力を付加し続けることができる。また、防虫ネットシステムを配置した施設(例えば、園芸施設)の経年劣化等によって、防虫ネットシステムが配置された支柱間の寸法が変化した場合においても、張力を維持することができる。
【0016】
<6>本発明の態様6に係る害虫の侵入阻止方法は、態様4又は態様5に係る防虫ネットシステムを用いた害虫の侵入阻止方法であって、前記張力手段によって前記高張力線に張力を付加するとともに、前記振動手段によって前記高張力線を振動させる。
【0017】
この発明によれば、張力手段によって高張力線に張力を付加するとともに、振動手段によって高張力線を振動させる。これにより、防虫ネットがたわむことを防ぎつつ振動させることができる。よって、防虫ネットを効率的に振動させることができる。よって、効率的に害虫の侵入を抑制することができる。
【0018】
<7>本発明の態様7に係る防虫ネットの製造方法は、態様1から態様3のいずれか1つに係る防虫ネットの製造方法であって、前記第1方向に並べられた前記複数の第2糸の一部に、前記高張力線を間隔を空けて複数配置する第1工程と、前記複数の第2糸を、前記複数の第1糸によって織り上げる第2工程と、を備える。
【0019】
この発明によれば、一部に高張力線を含む複数の第2糸を、複数の第1糸によって織り上げる。これにより、本態様に係る防虫ネットを、既存の織機によって製造することができる。よって、織機の設計変更を必要とせず、製造費用を抑えることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、害虫の侵入を阻止するために効率的に防虫ネット全体を振動させることができ、かつ通気性を確保することができる防虫ネット、防虫ネットシステム、害虫の侵入阻止方法、及び防虫ネットの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明に係る防虫ネットシステムが設けられる園芸施設である。
図2】本発明に係る防虫ネットシステムの概要図である。
図3図2に示すIII部の拡大図である。
図4】防虫ネットに織り込まれた高張力線の第1例である。
図5】防虫ネットに織り込まれた高張力線の第2例である。
図6】防虫ネットと園芸施設の支柱との関係の第1例である。
図7】防虫ネットと園芸施設の支柱との関係の第2例である。
図8】防虫ネットと園芸施設の支柱との関係の従来例である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態に係る防虫ネット10、防虫ネットシステム100、害虫の侵入阻止方法、及び防虫ネット10の製造方法を説明する。
防虫ネットシステム100は、図1に示すように、例えば、園芸施設Hの側窓や天窓に配置される。防虫ネットシステム100は、園芸施設Hに害虫が侵入することを阻止するために用いられる。防虫ネット10には、害虫を阻止できることとともに、通気性を確保することが求められる。本実施形態において、防虫ネットシステム100は、下記態様により上記の要求を満たす。
【0023】
防虫ネットシステム100は、図2に示すように、防虫ネット10と、張力手段20と、振動手段30と、を備える。
防虫ネット10は、園芸施設Hの側窓や天窓を覆うように配置される。図2は、防虫ネット10が園芸施設Hの側窓に配置された例である。防虫ネット10は、例えば、経糸(縦糸)と緯糸(横糸)とによって形成される織物である。経糸は、織物の長手方向に延びる糸である。緯糸は、織物の短手方向に延びる糸である。以下、防虫ネット10の方向を説明する際、緯糸が延びる方向を第1方向D1、経糸が延びる方向を第2方向D2として説明する。防虫ネット10の大きさは、例えば、第1方向D1の長さが1.2mであり、第2方向D2の長さが20mである。
【0024】
防虫ネット10は、第1糸11と、第2糸12と、を備える。防虫ネット10は、第1糸11と第2糸12とからなる織物である。
第1糸11は、図3に示すように、第1方向D1に沿って延びる。つまり、第1糸11は緯糸である。第1糸11は、第1方向D1に直交する第2方向D2に沿って複数並べられる。複数並べられる第1糸11同士の間隔は、例えば、0.2mm~1.0mmである。第1糸11には、紫外線劣化しにくいものが好適に用いられる。第1糸は、例えば、ポリエチレンをはじめとする樹脂製の糸である。
【0025】
第2糸12は、第2方向D2に沿って延びる。つまり、第2糸12は経糸である。第2糸12は、第1方向D1に沿って複数並べられる。複数並べられる第2糸12同士の間隔は、例えば、0.2mm~1.0mmである。第2糸12は、例えば、ポリエチレンをはじめとする樹脂製の糸である。これに加えて、複数の第2糸12は、間隔をあけて複数配置された高張力線12mを含む。
上述した第1糸11同士の間隔及び第2糸12同士の間隔、すなわち、防虫ネット10の目合いは、防虫ネット10の用途等に合わせ、更に大きくしてもよい。
【0026】
高張力線12mは、振動手段30から入力された振動(後述する)を、防虫ネット10全体に伝播させる役割を有する。本実施形態において、高張力線12mは、樹脂製の糸からなる第2糸12と同様に、織物である防虫ネット10の経糸として扱われる。高張力線12mには、張力に対して伸びにくいものが好適に用いられる。高張力線12mには、例えば、金属線、アラミド繊維、ケブラー、炭素繊維等の非伸縮性素材が好適に用いられる。
高張力線12mの断面は、例えば、図4に示す第1例のように、円状である。これにより、既存の織機によって本実施形態に係る防虫ネット10を製造可能とすることが好ましい。
高張力線12mの断面は、図5に示す第2例のように、防虫ネット10が形成する平面状の空間に長辺が沿う長方形状であってもよい。これにより、防虫ネット10が形成する平面状の空間において、1つの高張力線12mが占める面積を大きくしてもよい。
【0027】
第1方向D1において高張力線12mが配置される間隔は、例えば、第1方向D1の寸法により管理される。すなわち、高張力線12mは、例えば、第1方向D1に沿って複数並べられる第2糸12のうち、10mm~600mmの間隔で配置される。
第1方向D1において高張力線12mが配置される間隔は、第2糸12の本数によって管理されてもよい。すなわち、高張力線12mは、例えば、第1方向D1に沿って複数並べられる第2糸12のうち、50~3000本に1本が高張力線12mとなるように配置されてもよい。
なお、上記の具体的な間隔についてはあくまで一例であり、その他の間隔を適宜採用してもよい。
【0028】
高張力線12mの断面積の形状、断面積の大きさ、及び間隔は、防虫ネットシステム100に求められる条件によって適宜変更する。
例えば、防虫ネット10の第2方向D2の寸法が長くなることに合わせて、高張力線12mの断面積を大きくしたり、間隔を小さくしたりする。
【0029】
防虫ネット10の第2方向D2の寸法を一定とした場合において、高張力線12mの断面積を大きくすることに合わせて、間隔を大きくしてもよい。高張力線12mの断面積を小さくすることに合わせて、間隔を小さくしてもよい。高張力線12mの断面を円状とすることは、高張力線12mの断面積を小さくする際に好適である。高張力線12mの断面を長方形状とすることは、高張力線12mの断面積を大きくする際に好適である。
【0030】
高張力線12mは、第1方向D1において、間隔をあけて複数配置される。この時、高張力線12mは、第1方向D1の両端部付近には設けられなくてもよい、例えば、防虫ネット10の第1方向D1の寸法が1.2mである場合、第1方向D1の両端部から中央に向けて200mmの領域には、高張力線12mを設けなくてもよい。これにより、防虫ネット10の第1方向D1の端部のみたわみやすくすることで、園芸施設Hに固定しやすくしてもよい。
【0031】
張力手段20は、防虫ネット10に張力を付加する。具体的には、張力手段20は、防虫ネット10の高張力線12mに張力を付加する。これにより、防虫ネット10がたわむことを防ぎ、振動手段30による振動を防虫ネット10全体に伝播させやすくする。張力手段20は、図2に示すように、防虫ネット10の第2方向D2の一方の端部に設けられる。張力手段20と防虫ネット10の端部とは、例えば、ワイヤによって接続される。
張力手段20は、例えば、公知のバネである。これにより、電力などを用いずに絶えず防虫ネット10に張力を付加することに寄与する。また、季節の変動に伴う気温の変化による高張力線12mの膨張や収縮に対して柔軟に対応可能とする。
【0032】
振動手段30は、防虫ネット10を振動させる。具体的には、振動手段30は、防虫ネット10の高張力線12mを振動させる。すると、高張力線12mが前記振動を防虫ネット10全体に伝播させる。これにより、振動手段30は防虫ネット10を振動させる。振動手段30は、図2に示すように、防虫ネット10の第2方向D2の他方の端部に設けられる。振動手段30と防虫ネット10の端部とは、例えば、ワイヤによって接続される。
【0033】
振動手段30は、任意の加振器が好適に用いられる。振動手段30は、高張力線12mを、高張力線12mが延びる方向に沿って面内振動させる。振動手段30には、例えば、クランクや偏心円板を駆動する純機械方式、油圧式、電気式の加振器や、励磁式の加振器、レシプロモータや、超磁歪振動機等が用いられる。これにより、防虫ネット10は、振動手段30によって、防虫ネット10が形成する平面状の空間内において、第2方向D2に沿って振動する。
【0034】
(害虫の侵入阻止方法)
次に、本実施形態に係る防虫ネットシステム100を用いた害虫の侵入阻止方法について説明する。本実施形態において、防虫ネット10は、図2に示すように、第2方向D2が水平方向に沿うように配置される。
まず、張力手段20によって高張力線12mに張力を付加する。具体的には、図2に示すように、防虫ネット10の第2方向D2の一方の端部と、張力手段20の一方の端部と、を接続する。張力手段20の他方の端部は、例えば、園芸施設Hの壁などに固定される。この状態で、防虫ネット10の他方の端部を、バネである張力手段20が延びる方向に引っ張る。これにより、張力手段20が延びた状態として、復元力を発生させることで、防虫ネット10に張力を付加する。
【0035】
次に、防虫ネット10の第2方向D2の他方の端部と、振動手段30と、を接続する。このとき、張力手段20によって常に防虫ネット10に張力を付加できる状態となるように、振動手段30の位置を調整する。
そして、振動手段30によって高張力線12mを振動させる。振動手段30によって付加される振動は、例えば、第2方向D2に平行な往復運動である。これに限らず、本実施形態において、次のような態様も振動に含むものとする。すなわち、振動手段30によって、防虫ネット10が形成する平面状の空間において、防虫ネット10の第2方向D2の他方の端部を回転させる。すると、前記回転は、防虫ネット10の第2方向D2の一方の端部においては、単振動に近似される。このような態様も、振動に含むものとする。
また、後述するように、防虫ネット10の四隅は、園芸施設Hの支柱に固定される。このことで防虫ネット10の振動が阻害されないように、例えば、防虫ネット10の振動方向(図2においては水平方向)の両端において、高張力線12mに対して固定されるように棒状部材Bを取り付けることが好ましい。また、防虫ネット10に張力手段20及び振動手段30を取り付ける際は、棒状部材と張力手段20及び振動手段30とを、緊張索Sによって接続することで取り付けることが好ましい。この状態で、振動手段30によって棒状部材Bを振動させることで防虫ネット10を振動させることが好ましい。
【0036】
(防虫ネット10の製造方法)
次に、本実施形態に係る防虫ネット10の製造方法について説明する。防虫ネット10の製造方法は、第1工程と、第2工程と、を備える。
第1工程は、第1方向D1に並べられた複数の第2糸12の一部に、高張力線12mを、間隔を空けて複数配置する工程である。例えば、第1方向D1に沿って並べられた第2糸12について、10本に1本が高張力線12mとなるように配置する。高張力線12mの間隔は、防虫ネット10の第1方向D1及び第2方向D2における寸法や、第1糸11及び第2糸12の太さ等の条件によって任意に決定可能である。
第2工程は、第1工程において並べられた複数の第2糸12を、複数の第1糸11によって織り上げる工程である。つまり、複数の第2糸12を第1糸11が直交する際、隣り合う第2糸12の一方の側と他方の側とを交互に通過するように第1糸11が配置される。第1糸11を、第2方向に沿って、上述したように複数配置することで、防虫ネット10を形成する。
【0037】
(防虫ネット10の設置方法)
次に、本実施形態に係る防虫ネット10の、園芸施設Hへの設置方法を説明する。本実施形態において、園芸施設Hは、パイプ製の支柱Pが複数並べられたパイプハウスであるとする。
防虫ネット10は、園芸施設Hの側窓に配置される。防虫ネット10は、第2方向D2が水平方向に沿うように配置される。防虫ネット10は、図6に示すように、複数並べられた支柱Pにおける、園芸施設Hの外側に面した部位のみに接するように配置される。防虫ネット10は、図7に示すように、複数並べられた支柱Pにおける、園芸施設Hの内側に面した部位のみに接するように配置されてもよい。
【0038】
ここで、従来の園芸施設Hにおいては、防虫ネット10が、図8に示すように、複数並べられた支柱Pにおける、園芸施設Hの外側に面する側と、内側に面する側と、を交互に通過するように配置されていた。本実施形態において、従来の態様によって防虫ネット10を配置すると、防虫ネット10を効率的に振動させることができない。よって、本実施形態に係る防虫ネット10は、上述の態様によって配置されることが好ましい。
防虫ネット10を園芸施設Hの側窓として機能させるためには、下記に留意して防虫ネット10を施工することが好ましい。すなわち、園芸施設Hの側窓において、防虫ネット10の四隅が支柱に固定されていないと、防虫ネット10と支柱との間の隙間から虫が侵入する。このため、防虫ネット10の四隅は、確実に支柱に固定することが好ましい。
【0039】
以上説明したように、本実施形態に係る防虫ネット10によれば、複数の第2糸12の一部は、高張力線12mである。これにより、防虫ネット10を振動させても、柔軟性の無い高張力線12mにより振動が防虫ネット10全体に伝播する。したがって、防虫ネット10によって前記振動が吸収されることを抑えることができる。よって、防虫ネット10を大きくした場合であっても、少数の加振器によって効率的に防虫ネット10全体を振動させることができる。このため、本態様に係る防虫ネット10を大型の園芸施設Hに適用した場合であっても、前記振動を防虫ネット10全体に効率的に伝播することができる。よって、防虫ネット10によって害虫の侵入を阻止することができる。また、例えば、防虫ネット10の目合いを大きくする場合には、通気性を確保でき労働環境の改善につながる。
【0040】
また、高張力線12mは、断面が円状である。これにより、例えば、高張力線12mの断面積を、高張力線12m以外の第2糸12と同じにすることで、防虫ネット10を製造する際、既存の織機の設計を変更することなく使用することができる。また、防虫ネット10を丸めて収納する際、防虫ネット10が高張力線12mによって丸めづらくなることを抑えることができる。よって、防虫ネット10の収納性を確保することができる。
【0041】
また、高張力線12mは、断面が長方形状である。これにより、例えば、高張力線12mについて、断面の短辺の長さが高張力線12m以外の第2糸12の直径と同じであるものを使用して、断面の長辺が第1方向D1と平行になるように配置することで、高張力線12mの断面が大きくなっても、防虫ネット10の収納性を損なわないようにすることができる。
【0042】
また、防虫ネット10に張力を付加する張力手段20と、防虫ネット10を振動させる振動手段30と、を備える。これにより、張力手段20によって張力を付加された状態の防虫ネット10を、振動手段30によって振動させることができる。したがって、防虫ネット10を効率的に振動させることができる。また、例えば、季節の変動に伴う気温の変化による高張力線12mの膨張や収縮に対して柔軟に対応し、常に防虫ネット10に張力が付加された状態を保つことができる。
【0043】
また、張力手段20はバネである。これにより、電力等を用いることなく、絶えず防虫ネット10に張力を付加し続けることができる。また、防虫ネットシステム100を配置した施設(例えば、園芸施設H)の経年劣化等によって、防虫ネットシステム100が配置された支柱P間の寸法が変化した場合においても、張力を維持することができる。
【0044】
また、張力手段20によって高張力線12mに張力を付加するとともに、振動手段30によって高張力線12mを振動させる。これにより、防虫ネット10がたわむことを防ぎつつ振動させることができる。よって、防虫ネット10を効率的に振動させることができる。よって、効率的に害虫の侵入を抑制することができる。
【0045】
また、一部に高張力線12mを含む複数の第2糸12を、複数の第1糸11によって織り上げる。これにより、本態様に係る防虫ネット10を、既存の織機によって製造することができる。よって、織機の設計変更を必要とせず、製造費用を抑えることができる。
【0046】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、高張力線12mは、樹脂製の糸のみからなる既成の防虫ネット10に、接着剤、留め具、まつり縫いなどで固定されてもよい。高張力線12mは、防虫ネット10に対して、例えば、高張力線12mの全長に亘って連続的に固定されてもよいし、高張力線12mの全長に亘って部分的に固定されてもよいし、高張力線12mの全長に亘って部分的に別材を以て固定されてもよい。
高張力線12mは、樹脂製の糸のみからなる既成の防虫ネット10から第2糸12の一部を抜き取り、高張力線12mに交換することで設けられてもよい。
【0047】
防虫ネット10は、第1方向D1が水平方向に沿うように配置されてもよい。
本実施形態において、張力手段20と振動手段30とを用いるとしたが、防虫ネット10の第2方向D2の両端に振動手段30を設けてもよい。これにより、2つの振動手段30を逆位相で振動させることで、防虫ネット10を振動させてもよい。
第1方向D1に複数配置された高張力線12mの断面形状は、統一されていなくてもよい。例えば、一部の高張力線12mの断面を円状として、その他の高張力線12mの断面を長方形状としてもよい。
また、張力手段20であるバネと防虫ネット10の間に、振動手段30と同じ振動手段30を挿入して、両端で加振させてもよい。
また、振動手段30は、高張力線12mを、高張力線12mが延びる方向に沿って面内振動させると説明したが、防虫ネット10が形成する平面状の空間に直交する方向に振動させてもよい。
【0048】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0049】
10 防虫ネット
11 第1糸
12 第2糸
12m 高張力線
20 張力手段
30 振動手段
100 防虫ネットシステム
D1 第1方向
D2 第2方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8