(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117368
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】デジタル入力インタフェースデバイス
(51)【国際特許分類】
G06F 3/041 20060101AFI20240822BHJP
【FI】
G06F3/041 580
G06F3/041 470
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023433
(22)【出願日】2023-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】菊永 和也
(72)【発明者】
【氏名】藤尾 侑輝
(57)【要約】
【課題】非接触かつ非近接で情報を入力することが可能なデジタル入力インタフェースデバイスを提供する。
【解決手段】発光層12により発光可能な画面14を有する発光デバイス11と、画面14を認識する受光装置16と、受光装置16で得られた画面14に関するデータを解析する制御装置17とを備え、画面14が情報の入力部13を構成し、発光層12は、入力部13に情報を入力するために画面14に対して非接触で操作が可能な対象物15の動作に応じて、画面14の発光状態を変化させることが可能であり、制御装置17は、受光装置16で得られた画面14の発光状態に応じて、入力部13に入力される情報を検出する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光層により発光可能な画面を有する発光デバイスと、前記画面を認識する受光装置と、前記受光装置で得られた前記画面に関するデータを解析する制御装置とを備え、
前記画面が情報の入力部を構成し、
前記発光層は、前記入力部に情報を入力するために前記画面に対して非接触で操作が可能な対象物の動作に応じて、前記画面の発光状態を変化させることが可能であり、
前記制御装置は、前記受光装置で得られた前記画面の発光状態に応じて、前記入力部に入力される情報を検出することを特徴とするデジタル入力インタフェースデバイス。
【請求項2】
前記発光層は、荷電粒子を非真空中に放出する荷電粒子放出部と、前記荷電粒子放出部と前記対象物との間に配置される荷電粒子検出部とを有し、
前記荷電粒子放出部は、前記荷電粒子が前記荷電粒子検出部を通過するように、前記荷電粒子を前記対象物に向けて放出し、
前記荷電粒子検出部は、発光物質を含有し、前記対象物の動作に応じて前記画面の発光状態を変化させることが可能であることを特徴とする請求項1に記載のデジタル入力インタフェースデバイス。
【請求項3】
前記発光デバイスの形状は、平面状、曲面状、凸形状、凹形状から選択されるいずれかであることを特徴とする請求項1または2に記載のデジタル入力インタフェースデバイス。
【請求項4】
前記発光層の厚みが1μm以上10mm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のデジタル入力インタフェースデバイス。
【請求項5】
前記発光デバイスは、前記発光層を1層以上有することを特徴とする請求項1または2に記載のデジタル入力インタフェースデバイス。
【請求項6】
前記発光層は、紫外線、可視光線、赤外線から選択される少なくとも一部の波長領域で放出する発光物質を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のデジタル入力インタフェースデバイス。
【請求項7】
前記発光層は、前記画面に沿う方向で1μm~10mm角で構成され、独立して静電気または直流電圧が印加できることを特徴とする請求項1または2に記載のデジタル入力インタフェースデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル入力インタフェースデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
タッチパネルは接触型が基本の入力インタフェースであるが、近年の社会情勢から非接触の入力インタフェースが期待されている。非接触型の入力インタフェースでは、情報の流力に用いられる手指に対して、入力インタフェースデバイスが非近接でないと誤ってデバイスパネルに接触するおそれがあり、5cm以上の距離を確保できる非近接性が求められる。
【0003】
非接触型の入力インタフェースとして、赤外線イメージング方式が有望だが、フレキシブルな形状に対応できない、埃などの異物に反応するなどの問題がある。またバーチャルキーボードの応用では、キーをタイプしたときに指先が反応しないことから、指が離れていると、どこにキーがあるのか分かりづらいため、キーの間隔が狭いと誤タイプが起こるなどの課題がある。
【0004】
特許文献1および特許文献2には、荷電粒子を非真空中に放出する荷電粒子放出部と、荷電粒子が入射する荷電粒子入射部と、これらの間に配置されて、発光物質を含む荷電粒子検出膜または荷電粒子検出液とを有する荷電粒子検出方法が開示されている。これらの先行技術文献の実施例2では、SrAl2O4:Eu2+等の発光物質を含む荷電粒子検出膜が形成されたステンレス製の棒に電圧を印加しながら、ヒトの手を移動させると、ヒトの手の移動方向に沿って発光部が移動することが、写真と共に説明されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6980282号公報
【特許文献2】米国特許第11004572号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、非接触かつ非近接で情報を入力することが可能なデジタル入力インタフェースデバイスを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様は、発光層により発光可能な画面を有する発光デバイスと、前記画面を認識する受光装置と、前記受光装置で得られた前記画面に関するデータを解析する制御装置とを備え、前記画面が情報の入力部を構成し、前記発光層は、前記入力部に情報を入力するために前記画面に対して非接触で操作が可能な対象物の動作に応じて、前記画面の発光状態を変化させることが可能であり、前記制御装置は、前記受光装置で得られた前記画面の発光状態に応じて、前記入力部に入力される情報を検出することを特徴とするデジタル入力インタフェースデバイスである。
【0008】
第2の態様は、第1の態様において、前記発光層は、荷電粒子を非真空中に放出する荷電粒子放出部と、前記荷電粒子放出部と前記対象物との間に配置される荷電粒子検出部とを有し、前記荷電粒子放出部は、前記荷電粒子が前記荷電粒子検出部を通過するように、前記荷電粒子を前記対象物に向けて放出し、前記荷電粒子検出部は、発光物質を含有し、前記対象物の動作に応じて前記画面の発光状態を変化させることが可能であることを特徴とする。
【0009】
第3の態様は、第1または第2の態様において、前記発光デバイスの形状は、平面状、曲面状、凸形状、凹形状から選択されるいずれかであることを特徴とする。
第4の態様は、第1~3のいずれか1の態様において、前記発光層の厚みが1μm以上10mm以下であることを特徴とする。
第5の態様は、第1~4のいずれか1の態様において、前記発光デバイスは、前記発光層を1層以上有することを特徴とする。
第6の態様は、第1~5のいずれか1の態様において、前記発光層は、紫外線、可視光線、赤外線から選択される少なくとも一部の波長領域で放出する発光物質を含むことを特徴とする。
第7の態様は、第1~6のいずれか1の態様において、前記発光層は、前記画面に沿う方向で1μm~10mm角で構成され、独立して静電気または直流電圧が印加できることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、非接触かつ非近接で情報を入力することが可能なデジタル入力インタフェースデバイスを提供することを課題とする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】デジタル入力インタフェースデバイスの一例を示す概念図である。
【
図3】入力中の発光デバイスの動作状態の一例を示す斜視図である。
【
図4】印加電圧との距離との関係の一例を示すグラフである。
【
図5】移動追従性試験の装置を例示する概略図である。
【
図6】移動追従性試験でX方向に発光状態が変化する状況を例示する写真である。
【
図7】移動追従性試験でX方向に発光位置が移動する状況を示すグラフである。
【
図8】移動追従性試験でY方向に発光状態が変化する状況を例示する写真である。
【
図9】移動追従性試験でY方向に発光位置が移動する状況を示すグラフである。
【
図10】発光デバイスに指先を近づける様子を例示する写真である。
【
図11】指を動かしながら発光させ、文字を描画する様子を例示する写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、好適な実施形態に基づいて、本発明を説明する。
【0013】
図1に示すように、実施形態のデジタル入力インタフェースデバイス10は、発光層12により発光可能な画面14を有する発光デバイス11と、画面14を認識する受光装置16と、受光装置16で得られた画面14に関するデータを解析する制御装置17とを備える。
【0014】
発光デバイス11の画面14が、デジタル入力インタフェースデバイス10に対する情報の入力部13を構成する。受光装置16は、画面14に関するデータを取得するためのデータ取得装置である。制御装置17は、入力部13に対して入力される情報の解析装置である。
【0015】
本明細書において、「装置」は広義に解釈できる用語であり、機械や器具等であってもよく、機械や器具等に含まれる素子や部品等であってもよい。装置は、機械や器具等を複数組み合わせて得られる構成であってもよい。装置は、プログラム、データ等の無体物を含んでもよい。
【0016】
入力部13は、非接触かつ非近接で情報を入力可能であることが好ましい。このため、発光層12は、入力部13に情報を入力するために画面14に対して非接触で操作が可能である。具体的には、入力部13に対して情報を入力しようと動く対象物15の動作に応じて、発光層12は、画面14の発光状態を変化させることが可能に構成されている。制御装置17は、画面14の発光状態に応じて入力部13に入力される情報を検出する。
【0017】
例えば、画面14から対象物15までの距離が200mm以下でも、発光層12が発光状態を変化させることが可能であることが好ましく、前記距離が50mm以下であることがより好ましい。ただし、入力部13の操作中、対象物15が一時的に画面14に接触することがあっても構わない。また、非接触で操作が可能な画面14として、接触状態でも操作可能な構成を採用することも可能である。
【0018】
図2に、上述の機能を有する発光デバイス11の一例を示す断面図である。発光デバイス11の発光層12は、荷電粒子を非真空中に放出する荷電粒子放出部21と、発光物質23を含有する荷電粒子検出部22とを有する。
【0019】
荷電粒子検出部22は、荷電粒子放出部21と対象物15との間に配置される。対象物15の位置は、非接触かつ非近接である限り、任意であるため、荷電粒子放出部21は、荷電粒子が荷電粒子検出部22を通過するように、荷電粒子を対象物15に向けて放出する。その結果、荷電粒子検出部22は、対象物15の動作に応じて画面14の発光状態を変化させることができる。
【0020】
荷電粒子放出部21は、画面14全体に広がって配置されてもよいし、画面14の一部の領域に配置されてもよい。画面14に向けて対象物15の位置がどのようであっても、荷電粒子を対象物15に作用させるには、対象物15に対する指向性は不要である。例えば画面14から均一に荷電粒子を放出してもよい。画面14の法線方向に放出される荷電粒子の数密度(面積当たり)が面内で略均等でもよく、面内に分布を有してもよい。
【0021】
荷電粒子放出部21は、表面から荷電粒子が放出されれば特に限定されない。荷電粒子放出部21を構成し得る物質の代表的なものとして、タングステン、ステンレス、金、銀、銅等の電気伝導率が高い金属などの導電体、シリコン等の半導体、セラミクス、高分子、樹脂等の絶縁体が挙げられるが、これに限定されない。例えば荷電粒子が電子の場合には、荷電粒子放出部21としてはアルミニウム等が挙げられる。
【0022】
荷電粒子放出部21から放出される荷電粒子は、荷電粒子入射部となり得る対象物15に入射される。荷電粒子入射部は、表面に荷電粒子が入射できれば特に限定されない。荷電粒子入射部を構成する物質の代表的なものとして、タングステン、ステンレス、金、銀、銅等の電気伝導率が高い金属などの導電体、シリコン等の半導体、セラミクス、高分子、樹脂等の絶縁体が挙げられるが、これに限定されない。例えば荷電粒子が電子の場合には、荷電粒子入射部としては塩化ビニル等が挙げられる。
【0023】
荷電粒子入射部となり得る対象物15は、棒状、ペン状等の人工物でもよく、ヒトの指など生体の一部であってもよい。対象物15は、デジタル入力インタフェースデバイス10の付属物であってもよく、外部の構成であってもよい。
【0024】
発光物質23としては、特に限定されないが、後述する蛍光物質以外の発光物質であることが好ましく、X線、紫外線若しくは可視光線等により発光する物質および化学変化または生物酵素により発光する物質であってもよい。ここで「蛍光物質」とは、照射されたX線、紫外線または可視光線等のエネルギーを吸収することで発光する物質をいう。発光物質23が特許文献1に記載の発光物質であれば、適宜選択して用いることができる。また、特許文献1に記載のない物質でも発光物質23に採用することが可能である。
【0025】
発光物質23として「応力発光物質」を用いてもよい。「応力発光物質」とは、機械的な外力により生じる変形によって発光(可視光、紫外光、近赤外光を含む。)する物質をいう。応力発光物質としては、例えば、スピネル構造、コランダム構造、βアルミナ構造、ケイ酸塩、欠陥制御型アルミン酸塩、ウルツ鉱型構造と閃亜鉛鉱型構造とが共存する構造を有する酸化物、硫化物、セレン化物またはテルル化物を主成分として構成されるもの等や、これらを構成するアルカリ金属イオンおよびアルカリ土類金属イオンの少なくとも一部が、希土類金属イオンおよび遷移金属イオンの少なくとも1種の金属イオンに置換されているもの等が挙げられる。
【0026】
「応力発光物質」として、特に限定されないが、具体例として、LiSrPO4:Eu2+、LiBaPO4:Eu2+、BaTiO3―CaTiO3:Pr3+、ZnS:Mn2+、ZnS:Ga2+、ZnS:Cu2+、CaAl2Si2O8:Eu2+、Ca2Al2SiO7:Ce3+、SrAl2O4:Ce3+、SrAl2O4:Eu2+、SrAl2O4:Eu2+,Dy3+、SrAl2O4:Eu2+,Ho3+、SrAl2O4:Ho3+,Ce3+、Sr3Al2O6:Eu2+、CaYAl3O7:Eu2+、SrAl2O4:Eu2+,Cr3+,Nd3+などが挙げられる。
【0027】
発光物質23として「残光物質」を用いてもよい。「残光物質」とは、照射された可視光や紫外線等の光(電磁波)を蓄えて、照射を止めても発光する物質をいう。残光物質の具体例としては、例えば、ラジウム化合物やプロメチウム化合物、硫化亜鉛(ZnS系)やアルミン酸ストロンチウム(SrAl2O4系)等が挙げられ、DyやEu等の1~3価の金属イオンを任意の割合で添加した硫化亜鉛(ZnS系)やアルミン酸ストロンチウム(SrAl2O4系)が好ましい。ここで、「添加」とは、2個以上の物質を同時に添加する「共添加」および「賦活」をも含む概念である。
【0028】
「残光物質」として、特に限定されないが、具体例として、SrAl2O4:Eu2+,Dy3+などが挙げられる。
【0029】
発光物質23として「破壊発光物質」を用いてもよい。「破壊発光物質」とは、破壊や摩擦などの力学刺激による破壊に伴って発光する物質をいう。破壊発光物質の具体例としては、例えば、苦灰石、白雲母、石英、トリリチア雲母、ペクトライト、蛍石、ポリリチア雲母等の無機材料や、Eu(TTA)3系、カルバゾール誘導体、アントラニル酸系、砂糖等の有機物等が挙げられる。
【0030】
「破壊発光物質」として、特に限定されないが、具体例として、サリチル酸メチル、Eu(TTA)3phenなどが挙げられる。ここで、「phen」は1,10-フェナントロリン(1,10-phenanthroline)を表し、「TTA」は4,4,4-トリフルオロ-1-(2-チエニル)-1,3-ブタンジオナト〔4,4,4-trifluoro-1-(2-thienyl)-1,3-butanedionato〕を表す。
【0031】
基材24としては、紙、布、投写紙、金属、樹脂、シリコン、プラスチック、またはこれらの組み合わせなどが挙げられる。発光物質23を含む発光材料は、基材24上に塗布または積層してもよく、基材24に含浸または分散させてもよい。
【0032】
発光デバイス11は、発光物質23と基材24から構成される発光層12に静電気または直流電圧を印加することで、発光が可能になる。静電気を印加するため、静電気発生器20が発光デバイス11に接続されてもよい。例えば、荷電粒子が電子で、荷電粒子放出部21が金属等の導電体を含む場合は、荷電粒子放出部21に静電気発生器20を接続してもよい。
【0033】
実施形態のデジタル入力インタフェースデバイス10においては、画面14上の発光強度または発光色によって、ユーザの指先などの対象物15と発光デバイス11の画面14との距離を推定することができる。受光装置16を用いて画面14上の画像を検出し、発光の位置から指先などの対象物15の位置を推定することができる。
【0034】
画面14上の発光位置の検出はRGB空間、HSV空間などの色空間を使用することで区別することができる。RGB空間は、赤(R)・緑(G)・青(B)から構成される色空間である。HSV空間は、色相(H)・彩度(S)・明度(V)から構成される色空間である。一般的な色空間は、ヒトの視覚的、心理的な物理量を規定するため、可視光線の波長領域に対応している。赤外線または紫外線の波長領域については、適宜の手法を用いることができる。
【0035】
例えば特許文献1に記載の静電気発光技術を用いて、静電気発光材料と静電気を印加したデバイスに指を近づけると発光が起こる。実施形態の入力部13は、静電気発光技術を利用して、非接触(非近接)で指先などの対象物15に反応して画面14を発光させ、受光装置16に認識させることができる。
【0036】
指先が画面14から離れていても、ユーザは画面14上で発光している部分を指していると認識することができるため、誤入力が起こりにくい。上述した発光デバイス11はフレキシブルデバイスを実現する要求にも対応することができて、埃などの異物にも反応しにくい。また非近接(5cm以上も可能)で指と連動する発光の位置検出精度が高いため(1mm以下も可能)、画面14からなる入力部13の大型化も可能である。
【0037】
発光デバイス11の形状は、平面状、曲面状、凸形状、凹形状から選択されるいずれであってもよい。非平面の形状としては、円錐形(円錐の側面を構成する円錐面の形状)、円柱形(円柱の側面を構成する円柱面の形状)が挙げられる。発光デバイス11が錐体または柱体の形状であるときは、錐体または柱体の側面に沿って画面14を構成すればよく、錐体または柱体の底面に画面14を構成しなくてもよい。
【0038】
発光層12の厚みは、特に限定されないが、1μm以上10mm以下であることが好ましく、10μm以上200μm以下であることがより好ましい。発光デバイス11は、発光層12を1層以上有することができる。発光層12が2層以上の場合は、それぞれの発光層12に含まれる発光物質23が同種でも異種でもよい。発光層12の層数は特に限定されないが、コスト等の観点では5層以内としてもよい。
【0039】
発光層12は、紫外線、可視光線、赤外線から選択される少なくとも一部の波長領域で放出する発光物質23を含むことが好ましい。発光層12から放出される光が少なくとも可視光線の一部の波長領域を含む場合は、ユーザの肉眼でも、発光層12の発光を認識することができる。
【0040】
発光層12から放出される光が可視光線を含まない紫外線または赤外線である場合は、ユーザの肉眼から発光が認識されることなく、受光装置16に発光を認識させることができる。ユーザに対して発光層12の発光自体が認識されない場合でも、入力の内容に応じて、画面14に表示される内容を変更することにより、ユーザが入力内容を容易に確認することができる。画面14の表示内容は、例えば、文字、記号、アイコン、画像などを含むことができる。
【0041】
受光装置16としては、特に限定されないが、可視光領域のカメラ、赤外線カメラ、紫外線カメラ、光検出器等が挙げられる。受光装置16は、撮像装置でもよく、光電変換装置でもよい。受光装置16が、受光機能または撮像機能以外の機能として、通信機能、記録機能などを有してもよい。
【0042】
受光装置16は、画面14の少なくとも一部の領域を同時に観測できることが好ましいが、画面14の少なくとも一点を観測してもよい。受光装置16の個数は特に限定されず、1でも2以上でもよい。2以上の受光装置16が画面14の異なる領域を分担して観測してもよい。
【0043】
画面14における発光層12の形状は特に限定されず、画面14全体に発光層12が広がって形成されてもよいし、画面14の一部の領域に発光層12が形成されてもよい。発光層12が、例えば、画面14に沿う方向で1μm~10mm角で構成されてもよい。一の画面14に複数の発光層12が配置される場合は、それぞれの発光層12に対して、独立して静電気または直流電圧が印加できるように構成されてもよい。画面14の少なくとも短辺が10mm以上、100mm以上などでもよく、例えば1m以上の大型でもよい。
【0044】
制御装置17は、例えば、画像解析が可能なプログラムを有するコンピュータ装置である。制御装置17は、演算ユニット、メモリユニット、制御ユニット等を備えてもよい。これらの構成要素の少なくとも一部は、大規模集積回路(LSI)、集積回路(IC)などのハードウェアによって実現されてもよく、あるいはプログラム等のソフトウェアとハードウェアとの連携によって実現されてもよい。
【0045】
制御装置17は、受光装置16で得られた画面14に関するデータを受け取る機能を有する。受光装置16が少なくとも送信機能を有し、制御装置17が少なくとも受信機能を有することが好ましい。さらに受光装置16が受信機能を有してもよく、あるいは制御装置17が送信機能を有してもよい。受光装置16と制御装置17とが双方向で送信機能および受信機能を有してもよい。送信機能および受信機能は、電波、電磁波等の無線を用いてもよく、電線、光ファイバなどの有線でもよい。
【0046】
受光装置16で得られた画面14に関するデータを制御装置17で解析することにより、画面14と対象物15との距離が得られる。また、画面14上で適宜に設定される座標に対し、対象物15の位置を得ることもできる。
【0047】
図3に示すように、対象物15を移動させて画面14上に生じる発光領域30から、現時点で対象物15によって指示される領域を現在位置31として抽出することができる。さらに発光領域30の現在位置31に向けて表示装置18から表示32を提示することも可能である。表示装置18としては、例えばプロジェクタが挙げられる。
【0048】
表示32は、現在位置31の周囲を囲む枠状、現在位置31の近傍に添えた傍線状、現在位置31を指す矢印状など、適宜の形状で画面14上に提示することができる。対象物15を操作するユーザは、画面14上の表示32を見ることにより、自分の操作が入力部13に対して適切に認識されていることを確認することができる。
【0049】
表示装置18は、発光デバイス11に発光層12とは別のディスプレイ装置を内蔵させることも可能である。プロジェクタなど発光デバイス11の外部装置として表示装置18を設置する場合は、入力部13が簡略化されるので、構成が容易になる。
【0050】
以上、本発明を好適な実施形態に基づいて説明してきたが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【実施例0051】
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明する。なお、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0052】
(実施例1)
発光物質(SrAl2O4:Eu2+)を含有する基材(投写紙)をアルミニウム箔に積層して発光層を作製し、アルミニウム箔に静電気発生器を接続して、発光デバイスを構成した。
【0053】
図4に、発光デバイスに対する印加電圧(左軸)と、距離(横軸)との関係の一例を示す。このグラフには、電流値(右軸)も合わせて示す。距離(横軸)は、発光デバイスと指との距離を示す。この結果から、発光デバイスと指との距離が50mm~200mm程度でも発光可能であることが分かる。
【0054】
(実施例2)
図5に、移動追従性試験の装置の概略を例示する。発光デバイス11をスタンド51に固定し、指先を模した棒状の試験用対象物52を自動ステージ53に支持させた。発光デバイス11は、X方向が左右、Y方向が上下となるように配置されている。
【0055】
図6にはX方向に発光状態が変化する状況を、
図7にはX方向に発光位置が移動する状況を、
図8にはY方向に発光状態が変化する状況を、
図9にはY方向に発光位置が移動する状況を示す。
【0056】
図6には、X=0mm、X=10mm、X=20mm、X=30mm、X=40mmの5通りで発光状態の写真を並べている。試験用対象物52がX方向に移動するに従い、発光デバイス11上の発光状態も変化することが分かる。また、
図7には、試験用対象物52のX方向の位置(横軸)と、カメラで撮影した発光デバイス11上の発光位置(縦軸)との関係を示す。
【0057】
図8には、Y=0mm、Y=10mm、Y=20mm、Y=30mm、Y=40mmの5通りで発光状態の写真を並べている。試験用対象物52がY方向に移動するに従い、発光デバイス11上の発光状態も変化することが分かる。また、
図9には、試験用対象物52のY方向の位置(横軸)と、カメラで撮影した発光デバイス11上の発光位置(縦軸)との関係を示す。
【0058】
図7および
図9の結果によれば、X座標,Y座標のいずれも、回帰直線との差の最大値は1mm以下であった。このことから、発光デバイス11の発光状態から、試験用対象物52の位置をX方向,Y方向のいずれでも1mm以下の精度で検出できることが分かる。
【0059】
(実施例3)
図10には、発光デバイスに文字をプロジェクタで投影しながら、符号Fで示す指を近づけ発光層を発光させている様子を示す。発光デバイス上には、日本の文字(ひらがな)で「…にほへと ちりぬる…」、「…たれそ つねなら…」、「…おくやま けふこえ…」、「…ゆめみし ゑひもせ…」と表示されている。発光位置から指先が「そ」と「つ」の間を指していることが分かる。
【0060】
図11には、指を動かしながら発光させ,発光座標を検出して、検出された文字を描画した様子(デモンストレーション)を示す。
図11は12枠から構成され、左上から右下にかけて、順に1,2,3,a,4,5,6,b,7,8,9,cの符号を付している。1~9の数字を付した枠は、数字の順に指を動かした様子を示す。a~cの文字を付した枠はそれぞれ、発光座標を検出して得られた情報を解析した結果を示す。
【0061】
図11中、aの枠は、1~3の枠における指の動きを解析した結果である。
図11中、bの枠は、1~6の枠における指の動きを解析した結果である。
図11中、cの枠は、1~9の枠における指の動きを解析した結果である。これらを総合すると、指はアルファベットの「A」の文字を描くように動いたことが分かる。さらにこれらの結果から、発光デバイスに「A」の文字情報が入力されたことを検出可能であることが分かる。
10…デジタル入力インタフェースデバイス、11…発光デバイス、12…発光層、13…入力部、14…画面、15…対象物、16…受光装置、17…制御装置、18…表示装置、20…静電気発生器、21…荷電粒子放出部、22…荷電粒子検出部、23…発光物質、24…基材、30…発光領域、31…現在位置、32…表示、51…スタンド、52…試験用対象物、53…自動ステージ。