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特開2024-117598ステージ、検査装置、およびステージの動作方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117598
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】ステージ、検査装置、およびステージの動作方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/66 20060101AFI20240822BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
H01L21/66 B
H01L21/68 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023776
(22)【出願日】2023-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 優輝
(72)【発明者】
【氏名】小林 将人
【テーマコード(参考)】
4M106
5F131
【Fターム(参考)】
4M106AA01
4M106BA01
4M106DD03
4M106DD10
4M106DD18
4M106DD23
4M106DJ02
4M106DJ04
4M106DJ05
4M106DJ07
5F131AA02
5F131AA03
5F131AA04
5F131BA39
5F131CA62
5F131DA32
5F131DA33
5F131DA42
5F131EA02
5F131EA14
5F131EA22
5F131EA23
5F131EB01
5F131EB31
5F131EB81
5F131EB82
5F131GA14
5F131KA23
(57)【要約】
【課題】ステージにかかる荷重を安定して受けながら、ステージの移動における消費電力を抑制できる技術を提供する。
【解決手段】ステージは、基板を支持する基板支持部と、前記基板支持部を昇降させる1以上の昇降部と、前記1以上の昇降部の動作を制御する制御部と、を含む。前記1以上の昇降部は、回転に基づき前記基板支持部を昇降させる推力を出力する駆動モータと、前記基板支持部の高さ位置を保持するブレーキ保持力を前記昇降部に付与する電磁ブレーキと、を備える。前記制御部は、前記駆動モータの推力と前記電磁ブレーキのブレーキ保持力とを相互に連動させながら、前記基板支持部の高さ位置を制御する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を支持する基板支持部と、
前記基板支持部を昇降させる1以上の昇降部と、
前記1以上の昇降部の動作を制御する制御部と、を含むステージであって、
前記1以上の昇降部は、
回転に基づき前記基板支持部を昇降させる推力を出力する駆動モータと、
前記基板支持部の高さ位置を保持するブレーキ保持力を前記昇降部に付与する電磁ブレーキと、を備え、
前記制御部は、前記駆動モータの推力と前記電磁ブレーキのブレーキ保持力とを相互に連動させながら、前記基板支持部の高さ位置を制御する、
ステージ。
【請求項2】
前記制御部は、
前記基板支持部の高さ位置において前記基板支持部を保持する保持力が一定となるように、前記駆動モータの推力と前記電磁ブレーキのブレーキ保持力とを調整する、
請求項1に記載のステージ。
【請求項3】
前記制御部は、前記電磁ブレーキにより前記基板支持部を保持する場合に、前記駆動モータの推力を徐々に低下させる一方で、前記電磁ブレーキのブレーキ保持力を徐々に上昇させる、
請求項2に記載のステージ。
【請求項4】
前記制御部は、前記基板支持部の目標位置に基づき、前記駆動モータの推力および前記電磁ブレーキのブレーキ保持力を配分する、
請求項2に記載のステージ。
【請求項5】
前記制御部は、前記駆動モータから実位置をフィードバックして、前記目標位置と前記実位置との偏差を算出し、前記偏差に基づき前記駆動モータの推力および前記電磁ブレーキのブレーキ保持力を配分する、
請求項4に記載のステージ。
【請求項6】
前記制御部は、前記駆動モータのモータ電力に基づき前記電磁ブレーキのブレーキ保持力を設定し、設定した前記ブレーキ保持力に基づき前記電磁ブレーキに供給するブレーキ電力を制御する、
請求項4に記載のステージ。
【請求項7】
前記制御部は、ブレーキ電圧を制御することにより、前記電磁ブレーキに供給する前記ブレーキ電力を制御する、
請求項6に記載のステージ。
【請求項8】
前記電磁ブレーキは、前記制御部によりPWM制御された前記ブレーキ電圧が入力されることで、前記ブレーキ保持力が調整される、
請求項7に記載のステージ。
【請求項9】
前記制御部は、前記基板支持部を上昇させて位置決めを行う工程を制御し、
前記位置決めを行う工程の前に、前記電磁ブレーキに電力を供給し、前記昇降部を昇降可能な前記ブレーキ保持力とする、
請求項1乃至8のいずれか1項に記載のステージ。
【請求項10】
前記制御部は、前記基板支持部の鉛直方向の位置の補正を行う工程を制御し、
前記補正を行う工程では、前記ブレーキ保持力を低下させながら前記推力を上昇させた後、前記ブレーキ保持力を一定に維持して前記推力により前記基板支持部の位置を調整する、
請求項1乃至8のいずれか1項に記載のステージ。
【請求項11】
基板を載置して搬送するステージを有し、搬送された前記基板にプローブを接触させて当該基板の電気的特性を検査する検査装置であって、
前記ステージは、
前記基板を支持する基板支持部と、
前記基板支持部を昇降させる1以上の昇降部と、
前記1以上の昇降部の動作を制御する制御部と、を含み、
前記1以上の昇降部は、
回転に基づき前記基板支持部を昇降させる推力を出力する駆動モータと、
前記基板支持部の高さ位置を保持するブレーキ保持力を前記昇降部に付与する電磁ブレーキと、を備え、
前記制御部は、前記駆動モータの推力と前記電磁ブレーキのブレーキ保持力とを相互に連動させながら、前記基板支持部の高さ位置を制御する、
検査装置。
【請求項12】
基板を支持する基板支持部と、
前記基板支持部を昇降させる1以上の昇降部と、を含むステージの動作方法であって、
前記1以上の昇降部は、
回転に基づき前記基板支持部を昇降させる推力を出力する駆動モータと、
前記基板支持部の高さ位置を保持するブレーキ保持力を前記昇降部に付与する電磁ブレーキと、を備え、
前記ステージの動作方法では、
前記駆動モータの推力と前記電磁ブレーキのブレーキ保持力とを相互に連動させながら、前記基板支持部の高さ位置を制御する、
ステージの動作方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ステージ、検査装置、およびステージの動作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ウエハを載置するステージ(メインチャック)を有し、このステージを3次元方向に移動することにより、ウエハの電気的検査を行う検査装置(プローブ装置)が開示されている。
【0003】
この種の検査装置は、電気的検査を行うためにウエハを上昇させるオーバドライブ時に、プローブカードの多数のプローブからかかる荷重を受けて、ステージが傾斜する場合がある。このため、検査装置は、ステージの情報、ウエハの情報およびプローブカードの情報に基づき、オーバドライブ時におけるステージの3次元方向の移動補正量を求めて、この移動補正量に応じてステージを移動させる処理を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-30651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、ステージにかかる荷重を安定して受けながら、ステージの移動における消費電力を抑制できる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様によれば、基板を支持する基板支持部と、前記基板支持部を昇降させる1以上の昇降部と、前記1以上の昇降部の動作を制御する制御部と、を含むステージであって、前記1以上の昇降部は、回転に基づき前記基板支持部を昇降させる推力を出力する駆動モータと、前記基板支持部の高さ位置を保持するブレーキ保持力を前記昇降部に付与する電磁ブレーキと、を備え、前記制御部は、前記駆動モータの推力と前記電磁ブレーキのブレーキ保持力とを相互に連動させながら、前記基板支持部の高さ位置を制御する、ステージが提供される。
【発明の効果】
【0007】
一態様によれば、ステージにかかる荷重を安定して受けながら、ステージの移動における消費電力を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態に係るステージを有する検査装置を示す概略断面図である。
図2】検査部に設置されるステージを示す概略側面図である。
図3】ステージのZ軸移動機構を拡大して示す斜視図である。
図4】ステージのZ軸移動機構を示す側面断面図である。
図5】Z軸移動機構の駆動モータおよび電磁ブレーキの動作を制御する構成を示すブロック図である。
図6図6(A)は、電磁ブレーキのブレーキ電力と電磁ブレーキのブレーキトルクとの関係を示すグラフである。図6(B)は、電磁ブレーキのブレーキ電力と、基台の目標位置およびブレーキトルクとの関係を示すグラフである。図6(C)は、電磁ブレーキの電圧-電流特性を示すグラフである。
図7図7(A)は、本実施形態に係るステージの動作方法を示すタイミングチャートである。図7(B)は、比較例に係るステージの動作方法を示すタイミングチャートである。
図8図8(A)は、PWM制御を行った場合のモータトルクとブレーキトルクとの関係を示すタイミングチャートである。図8(B)は、n個の電磁ブレーキを備えたステージにおいてPWM制御を行った例を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本開示を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0010】
図1は、一実施形態に係るステージ30を有する検査装置1を示す概略断面図である。図1に示すように、一実施形態に係る検査装置1は、基板の一例であるウエハWの電気的特性を検査する。ウエハWの表面には、被検査デバイス(DUT:Device Under Test)である半導体デバイスが形成されている。なお、基板は、ウエハWに限定されず、被検査デバイスが配置されたキャリア、ガラス基板、チップ単体、電子回路基板等でもよい。被検査デバイスも、半導体デバイスに限らず、他の電子デバイス等でもよい。
【0011】
検査装置1は、検査を実際に行う検査部10と、検査部10の隣接位置に設置されるローダ13と、検査部10の上方に設置されるテスタ20と、を備える。さらに、検査装置1は、検査部10、ローダ13およびテスタ20の動作を制御するコントローラ90を有する。
【0012】
検査部10は、直方体状の筐体11を備え、この筐体11の内部に検査室12を有する。検査室12には、ウエハWを載置して、所望の3次元座標位置にウエハWを搬送するステージ30が収容されている。
【0013】
ローダ13には、複数のウエハWを待機させるFOUP(不図示)がセットされる。ローダ13は、図示しない搬送装置を備え、搬送装置によりFOUPからウエハWを取り出して、検査室12のステージ30へウエハWを受け渡す。また、ローダ13は、搬送装置により検査済のウエハWをステージ30から取り出してFOUPへ収容する。
【0014】
検査部10は、インタフェース23を介してテスタ20に接続されるプローブカード21を検査室12の上方に備える。プローブカード21は、ウエハWに対向する位置に複数のプローブ22を有する。各プローブ22は、ステージ30によりウエハWを移動させた際に、ウエハWの各被検査デバイスの電極パッドや半田バンプ等に接触する。これにより、テスタ20は、プローブカード21およびインタフェース23を介して被検査デバイスへ電力および各種の信号を出力し、またプローブカード21およびインタフェース23を介して被検査デバイスから送信される信号を受信する。
【0015】
テスタ20は、インタフェース23に接続されるマザーボード(不図示)を内部に備える。マザーボードは、図示しない複数のテストボードが装着される複数のスロットを有すると共に、コントローラ90に接続されている。マザーボードは、ウエハWの被検査デバイスから送信される信号に基づき各被検査デバイスの良否を判断する。テスタ20は、テストボードを適宜取り替えることにより、複数種類の検査を実施することができる。
【0016】
さらに、検査装置1は、検査室12の適宜の位置に、ステージ30上のウエハWを撮像する検査側カメラ29を備えてもよい。検査側カメラ29は、例えば、ステージ30の傾斜やステージ30に載置されたウエハWの位置などを撮像する。あるいは、検査装置1は、プローブカード21、または各プローブ22とウエハWの接触状態等を撮像するステージ側カメラ19を有してもよい。
【0017】
図2は、検査部10に設置されるステージ30を示す概略側面図である。図2に示すように、ステージ30は、筐体11の外観を構成するパネル(不図示)を支持するフレーム構造14に設置される。ステージ30の上面には、ウエハWを支持する平坦状の載置面30sが形成されている。
【0018】
ステージ30は、検査室12の適宜の3次元位置(X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向)に、載置面30sに載置されたウエハWを搬送する。例えば、ステージ30は、図1のローダ13の近傍位置(または内部)と、プローブカード21の対向位置との間で水平方向(X軸-Y軸方向)に移動して、ウエハWの水平位置を調整する。また、ステージ30は、プローブカード21とウエハWとの対向位置において、鉛直方向(Z軸方向)に昇降して、ウエハWの昇降位置を調整する。
【0019】
ステージ30は、移動部32(X軸移動機構33、Y軸移動機構34、Z軸移動機構40)、基台35、針研機構60、ステージ制御部70およびドライバ部80を有する。一方、フレーム構造14は、移動部32を支持する上ベース141と、ステージ制御部70およびドライバ部80を支持する下ベース142と、上ベース141や下ベース142の四隅に設けられる複数の支柱143と、を含む2段構造を呈している。
【0020】
移動部32のX軸移動機構33は、上ベース141の上面に固定されX軸方向に沿って延在する複数のガイドレール330と、各ガイドレール330間にわたって配置される複数のX軸可動体331と、各X軸可動体331に支持されるX軸台332と、を含む。X軸台332は、ドライバ部80に接続される図示しないX軸駆動部(モータ、ギア機構等)を有する。X軸駆動部は、ドライバ部80からの電力供給に基づき、各X軸可動体331およびX軸台332をX軸方向に往復動させて、ウエハWのX座標を調整する。
【0021】
Y軸移動機構34は、X軸台332の上面に固定されY軸方向に沿って延在する複数のガイドレール340と、各ガイドレール340間にわたって配置される複数のY軸可動体341と、各Y軸可動体341に支持されるY軸台342と、を含む。Y軸台342は、ドライバ部80に接続される図示しないY軸駆動部(モータ、ギア機構等)を有する。Y軸駆動部は、ドライバ部80からの電力供給に基づき、各Y軸可動体341およびY軸台342を軸方向に往復動させて、ウエハWのY座標を調整する。
【0022】
Z軸移動機構40は、Y軸台342に設置されると共に、その上部において基台35を保持している。Z軸移動機構40は、基台35をZ軸方向(鉛直方向)に変位させることで、基台35の載置面30sに載置されたウエハWを昇降させる本実施形態の昇降機構を構成している。このZ軸移動機構40の構成については後に詳述する。
【0023】
以上の移動部32により搬送される基台35は、Z軸移動機構40に支持されるボトムプレート351と、ボトムプレート351の上側に積層されて載置面30sを有するチャックトップ352と、を含む。ボトムプレート351は、後述するZ軸移動機構40の4つの昇降部45に支持されている。チャックトップ352は、平面視でウエハWよりも大径の円形状を呈しており、またボトムプレート351よりも厚みを持つように形成される。なお図示は省略するが、チャックトップ352は、ウエハWを保持する適宜の保持手段(真空吸着、メカニカルチャック等)、載置面30sの温度を調整する温調機構、載置面30sの温度を検出する温度センサ等を備えてもよい。
【0024】
ステージ30の針研機構60は、Y軸台342において、Z軸移動機構40の隣接位置に設置される。針研機構60の上部には、プローブカード21から下方に突出しているプローブ22を研磨する研磨体61が設けられる。針研機構60は、研磨体61をZ軸方向に変位させる研磨側Z軸移動機構62を有する。研磨側Z軸移動機構62は、Z軸移動機構40と略同様に構成される。
【0025】
ステージ制御部70は、検査装置1のコントローラ90に接続され、コントローラ90の指令に基づき、ステージ30の動作を制御する。ステージ制御部70は、例えば、ステージ30全体の動作を制御するメイン制御部、移動部32の動作を制御するPLC、温調機構を制御する温度コントローラ、照明制御部、電源ユニット等を有する(共に不図示)。ステージ制御部70のメイン制御部は、図示しない1以上のプロセッサ、メモリ、入出力インタフェースおよび電子回路等を有するコンピュータ内臓ボードを適用し得る。1以上のプロセッサは、CPU、GPU、ASIC、FPGA、複数のディスクリート半導体からなる回路等のうち1つまたは複数を組み合わせたものであり、メモリに記憶されたプログラムを実行処理する。メモリは、不揮発性メモリおよび揮発性メモリを含む。
【0026】
ステージ制御部70は、コントローラ90の指令に基づきドライバ部80を制御して、ローダ13から基台35にウエハWを受け取った後に、移動部32を動作させてウエハWを水平方向に移動させる。そして、プローブカード21にウエハWが対向する位置において、ステージ制御部70は、移動部32のZ軸移動機構40により基台35を上昇させ、プローブカード21のプローブ22にウエハWを接触させる。この状態で、コントローラ90は、テスタ20による電気的検査を開始する。また、ステージ制御部70は、テスタ20の検査終了後に、上記と逆の動作により、検査後のウエハWを下降および水平移動させ、ローダ13にウエハWを戻す。
【0027】
図3は、ステージ30のZ軸移動機構40を拡大して示す斜視図である。図4は、ステージ30のZ軸移動機構40を示す側面断面図である。図3および図4に示すように、Z軸移動機構40は、Y軸台342に設置される支持フレーム41を有する。支持フレーム41は、基台35の昇降方向と直交する方向(水平方向:X軸‐Y軸方向)に沿って一連に連続する部材である。この支持フレーム41は、Z軸移動機構40の4つの昇降部45を保護すると共に、各昇降部45の昇降をガイドする。つまり、Z軸移動機構40は、上記した1つの基台35(図2参照)を、4つの昇降部45により昇降させる構成としている。
【0028】
支持フレーム41は、一対の側壁42と、当該一対の側壁42の間を延在する1つの連結壁43とを有し、平面視でH字状に形成されている。一対の側壁42の上面および連結壁43の上面が面一に連なることで、支持フレーム41の上部は平坦状に形成されている。
【0029】
一対の側壁42は、Y軸台342の上面に固定される。各側壁42は、側面視で、X軸方向に長く延在し、かつZ軸方向に短く延在する略長方形状を呈している。そして、各側壁42のX軸方向(長辺)の中間位置に、連結壁43が連結されている。一対の側壁42の下面寄り所定位置には、複数のネジ止め用空間420が形成されている。このネジ止め用空間420から各側壁42を貫通した固定ネジ421がY軸台342に螺合されることで、支持フレーム41はY軸台342に強固に固定される。
【0030】
連結壁43は、Y軸方向(幅方向)かつZ軸方向(高さ方向、鉛直方向)に延在する略長方形状に形成されている。図4に示すように、連結壁43のY軸方向の長さは、側壁42のX軸方向の長さよりも長い。連結壁43の下方は、Y軸台342に支持フレーム41を固定した状態で、Y軸台342に形成された孔342aに挿入され、Y軸可動体341よりも下方に突出している。
【0031】
図3に示すように、4つの昇降部45は、連結壁43よって2つに分かれて配置される。各昇降部45は、基台35を直接支持するZ軸可動体46と、Z軸可動体46を昇降させる駆動モータ47と、Z軸可動体46の昇降を案内するガイド部48と、を含む。
【0032】
Z軸移動機構40は、連結壁43のX軸方向の一方の壁面43aに2つのガイド部48を備えると共に、連結壁43のX軸方向の他方の壁面43bに2つのガイド部48を備える。各ガイド部48は、Z軸方向に延在する一対のレール49を有する。一対のレール49は、連結壁43の上端から下端までの間を直線状に延在している。また、ガイド部48は、連結壁43の壁面43a、43bの上部に、Z軸可動体46の上昇を制限する移動制限ブロック50を有する。
【0033】
昇降部45の駆動モータ47は、Y軸台342に固定され、Z軸正方向に突出する軸部470を有する。この駆動モータ47の種類は、特に限定されるものではないが、軸部470の回転位置や回転速度等を制御可能なサーボモータを適用できる。特に、Z軸移動機構40の小型化を図るために、駆動モータ47は、ダイレクトドライブモータを適用することが好ましい。ダイレクトドライブモータは、減速機を備えずに軸方向に沿って低く構成され、また低速かつ高トルクで回転することができる。あるいは、駆動モータ47は、磁気ギヤードモータを適用してもよい。
【0034】
なお、駆動モータ47とZ軸可動体46の間には、駆動モータ47の回転を減速する減速機が設けられてもよい。昇降部45は、駆動モータ47自体、または駆動モータ47とZ軸可動体46の間に、駆動モータ47の回転運動を減速させる磁気減速機構を備えてもよい。
【0035】
駆動モータ47は、軸部470または図示しないロータの回転角度を検出するエンコーダ54を備える。また、駆動モータ47は、基台35からロータにかかる荷重値をトルク(電流値)として検出する図示しないトルクセンサを備えてもよい。
【0036】
Z軸方向に延在する軸部470とZ軸可動体46の間には、動力変換部51が設けられる。例えば、動力変換部51は、軸部470の外周面に螺旋状のネジ山を備える一方で、Z軸可動体46の軸部470が挿通される孔の内側にナットを螺合したボールネジ機構を採ることができる。このような動力変換部51によって、昇降部45は、軸部470の回転下にZ軸可動体46を昇降させることができる。なお、動力変換部51の構成は、特に限定されず、駆動モータ47の回転運動を直線運動に変換可能な種々の機構を採用し得る。
【0037】
一方、昇降部45のZ軸可動体46は、基台35を支持する部材であり、駆動モータ47の駆動に基づき昇降することで、当該基台35を昇降させる。本実施形態に係るZ軸移動機構40は、4つのZ軸可動体46(昇降部45)の各々を個別に昇降させることにより、基台35のチルトを調整可能としている。
【0038】
Z軸可動体46は、基台35のボトムプレート351に接触する接触子57を上面に備えている。すなわち、基台35は、4つの接触子57に支持される。この接触子57は、平坦状の上面を有する硬質なブロックに形成されている。
【0039】
図4に示すように、Z軸可動体46は、水平方向(X軸-Y軸方向)に平行な横延在体460と、横延在体460に連なると共に鉛直方向に平行な縦延在体461と、を有し、側面断面視で、略L字状に形成されている。横延在体460には、上記の動力変換部51のナットが設けられている。縦延在体461は、支持フレーム41の連結壁43の隣接位置で、当該連結壁43に対向し、その対向面に一対のレール49に配置される一対のスライダ56を備える。スライダ56は、レール49に係合することで、Z軸方向(レール49の延在方向)への移動がガイドされる。このレール49およびスライダ56により、Z軸可動体46は、水平方向(X軸-Y軸方向)へのZ軸可動体46の離脱が防止されつつ、Z軸方向への移動がガイドされる。
【0040】
そして、本実施形態に係るZ軸移動機構40は、駆動モータ47の上部に、電磁ブレーキ58を備える。この電磁ブレーキ58は、軸部470の周囲を囲う円環状を呈している。
【0041】
例えば、電磁ブレーキ58は、駆動モータ47(または他の部材)に固定されるブレーキステータ581と、ブレーキステータ581と相対的に回転可能なブレーキアーマチュア582とを含む。ブレーキステータ581の内部には、電磁ブレーキ58へのブレーキ電力の供給に基づき、ブレーキアーマチュア582に磁力を付与するコイル(不図示)が収容されている。ブレーキアーマチュア582は、適宜の連結手段(例えば、スプライン嵌合)によって、軸部470の外周面に連結され、軸部470と一体に回転可能となっている。
【0042】
電磁ブレーキ58は、コイルへのブレーキ電力の供給によりブレーキアーマチュア582をブレーキステータ581に引き寄せる。このブレーキアーマチュア582の引き寄せによって、ブレーキステータ581とブレーキアーマチュア582の間に設けられた摩擦部(不図示)にブレーキアーマチュア582が接触する。これにより、電磁ブレーキ58は、ブレーキアーマチュア582および軸部470の回転を制動する、または軸部470を回転不能に保持することが可能となる。
【0043】
図5は、Z軸移動機構40の駆動モータ47および電磁ブレーキ58の動作を制御する構成を示すブロック図である。図5に示すように、ステージ制御部70は、4つの昇降部45(駆動モータ47、電磁ブレーキ58)の各々を制御する機能部として、モータ制御部71と、ブレーキ制御部72とを内部に備える。また、ドライバ部80は、モータ制御部71に接続されるサーボアンプ81と、ブレーキ制御部72に接続される電圧制御部82とを備える。なお、モータ制御部71と、ブレーキ制御部72、サーボアンプ81、電圧制御部82の設置位置は特に限定されず、例えば全ての機能部がドライバ部80に設けられてもよい。
【0044】
モータ制御部71は、接続されている駆動モータ47およびZ軸可動体46に対応するZ軸方向の目標位置を、ステージ制御部70から受信する。ステージ制御部70は、例えば、基台35全体の昇降位置に関わる位置指令、および基台35がプローブ22から受ける荷重の検出情報等に基づき各駆動モータ47の目標位置を算出して、モータ制御部71にこの目標位置を指令する。
【0045】
モータ制御部71は、受信した目標位置に基づき、駆動モータ47の推力であるモータトルクと、電磁ブレーキ58のブレーキ保持力であるブレーキトルクとを設定する。例えば、モータ制御部71は、受信した目標位置に基づきその昇降部45において基台35を保持するのに必要な保持力(モータトルクとブレーキトルクの合計:換言すれば、ステージ30が受ける荷重)を算出する。そして、モータ制御部71は、算出した保持力をモータトルクとブレーキトルクとに適宜配分する。すなわち、モータ制御部71は、駆動モータ47と電磁ブレーキ58の協調制御アルゴリズムを内包している。
【0046】
モータ制御部71は、設定したモータトルクをドライバ部80のサーボアンプ81に指令し、サーボアンプ81は、このモータトルクに応じたモータ電力を駆動モータ47に供給する。これにより、駆動モータ47は、モータ制御部71のモータトルクに応じて軸部470を回転することができる。また、駆動モータ47は、軸部470の回転時に、エンコーダ54(図3参照)により軸部470の実位置を検出して、この実位置をモータ制御部71にフィードバックする。これにより、モータ制御部71は、軸部470の実位置と目標位置の偏差を算出し、偏差に対するモータトルクのゲインとブレーキトルクが一致するように制御することができる。モータ制御部71は、実位置と目標位置の偏差と比較するための閾値を有し、偏差が閾値以上となった場合に電磁ブレーキ58のブレーキトルクを低下させる等の制御を行ってもよい。これにより、電磁ブレーキ58のブレーキトルクに伴う位置決め速度の低下を抑制できる。
【0047】
ブレーキ制御部72は、オープンループ制御を行うように構成されており、モータ制御部71において設定されたブレーキトルクを受信して、電磁ブレーキ58のブレーキ比率を算出する。ブレーキ比率とは、電磁ブレーキ58によって駆動モータ47の軸部470(すなわち、Z軸可動体46の高さ位置)を保持するブレーキトルクとブレーキ電力(消費電力)との比率である。次に、Z軸移動機構40に適用される電磁ブレーキ58の特性について、図6を参照しながら詳述する。
【0048】
図6(A)は、電磁ブレーキ58のブレーキ電力と電磁ブレーキ58のブレーキトルクとの関係を示すグラフである。図6(B)は、電磁ブレーキ58のブレーキ電力と、基台35の目標位置および荷重との関係を示すグラフである。図6(C)は、電磁ブレーキ58の電圧-電流特性を示すグラフである。電磁ブレーキ58は、通常、励磁状態となったブレーキの作動モードと、励磁が解除されたブレーキの非作動モードの2モードのみで動作する。ただし、図6(A)に示すように、電磁ブレーキ58の軸部470を保持するブレーキトルクは、ブレーキステータ581によりブレーキアーマチュア582に摩擦をかけた(噛み込んだ)後、ブレーキ電力の増加に連れて線形的に増加する。例えば、電磁ブレーキ58のブレーキ電力として0.2Wを供給した場合には、電磁ブレーキ58のブレーキトルクとして約1kNが得られ、ブレーキ電力として1Wを供給した場合には、電磁ブレーキ58のブレーキトルクとして約6kNが得られる。
【0049】
また、ウエハWが各プローブ22に接触した後に基台35をさらに上昇させるオーバドライブ時には、ステージ制御部70の目標位置が上昇するに連れて各昇降部45にかかる保持力(荷重)が上昇する。このため、図6(B)に示すように、各昇降部45に要求される保持力(モータトルクとブレーキトルクの合計)も上昇する。なお、図6(B)において黒三角は、ステージ30の位置であり、黒丸は、各昇降部45に要求される保持力(ステージ30が受ける荷重)である。基台35の上昇が終了して目標位置が一定になった後は、これに連れて保持力も一定となる。例えば、目標位置(保持力)が一定になった状態では、電磁ブレーキ58に要求されるブレーキトルクとして2.25kNが要求される。電磁ブレーキ58において2.25kNとなるブレーキ電力は、0.4W~0.5W程度である(図6(A)も参照)。すなわち、電磁ブレーキ58を適用すれば、0.5Wのブレーキ電力で基台35にかかる荷重を保持できる。
【0050】
図6(C)に示すように、電磁ブレーキ58では、ブレーキ電圧の増加に対してブレーキ電流が線形的に増加していく。言い換えれば、電磁ブレーキ58は、線形抵抗を有している。したがって、電磁ブレーキ58のブレーキトルクを制御する場合、ステージ制御部70は、電磁ブレーキ58に供給するブレーキ電圧を制御すればよいことになる。
【0051】
図5に戻り、ブレーキ制御部72は、モータ制御部71からブレーキトルク(例えば、図6(B)の目標位置に応じた2.25kNのブレーキトルク)を受信する。ブレーキ制御部72は、ブレーキトルクとブレーキ電力の関係を示す情報(関数、テーブル等)を保有しており、受信したブレーキトルクに基づきドライバ部80が電磁ブレーキ58に供給するブレーキ電力の比率であるブレーキ比率を算出する。
【0052】
また、電圧制御部82は、ブレーキ制御部72からブレーキ比率を受信して、電磁ブレーキ58を制御するためのブレーキ電圧を算出する。そして、電圧制御部82は、図示しない電源からの電力を制御して、算出したブレーキ電圧を電磁ブレーキ58に供給することで、電磁ブレーキ58を制御する。
【0053】
なお、ドライバ部80は、駆動モータ47や電磁ブレーキ58について、例えばパルス波を供給するPWM制御を実施して、駆動モータ47のモータトルクおよび電磁ブレーキ58のブレーキトルクを制御してもよい。これにより、ステージ30は、駆動モータ47および電磁ブレーキ58を一層良好に協調制御することができる。
【0054】
本実施形態に係る検査装置1およびステージ30は、基本的には以上のように構成され、以下、ステージ30の動作方法について、図7を参照しながら説明する。図7(A)は、本実施形態に係るステージ30の動作方法を示すタイミングチャートである。図7(B)は、比較例に係るステージの動作方法を示すタイミングチャートである。
【0055】
比較例に係るステージは、駆動モータ47および電磁ブレーキ58の協調制御を行わず、また電磁ブレーキ58の作動モードおよび非作動モードの切り替えによりZ軸移動機構40を動作させた場合を示している。Z軸移動機構40によりステージを上昇させる場合、図7(B)に示すように、ステージ制御部70は、ドライバ部80のサーボアンプ81をオン状態として、ドライバ部80から駆動モータ47にモータ電力を出力する。このモータ電力(モータ電流)は一定値である。これにより、駆動モータ47が駆動して、Z軸可動体46が上昇する。
【0056】
例えば、時点tb1においてステージが目標位置に達すると、ステージ制御部70は、駆動モータ47の駆動から電磁ブレーキ58の駆動に切り替える制御を行う。ただし、電磁ブレーキ58は、ドライバ部80からブレーキ電力が供給されても、直ちにブレーキトルクを発揮できるわけではなく、若干のタイムラグを経てブレーキトルクを発揮する。このため、比較例に係るステージは、駆動モータ47の駆動期間と電磁ブレーキ58の駆動期間とが相互に重なるようにして電磁ブレーキ58を作動させ、その後の時点tb2において駆動モータ47の駆動を停止する構成としている。
【0057】
以上のことから、比較例に係るステージの動作方法では、駆動モータ47と電磁ブレーキ58との切り替えに時間がかかることになる。また、駆動モータ47および電磁ブレーキ58のオン/オフを切り替える制御では、駆動モータ47のモータ電力および電磁ブレーキ58のブレーキ電力も増えることになる。例えば、電磁ブレーキ58を作動にした場合、定格の電力として11Wを電磁ブレーキ58に供給する必要がある。さらに、駆動モータ47および電磁ブレーキ58のオン/オフを切り替える制御では、切り替えタイミングにおいてステージにかかる荷重により基台35の沈み込みが生じ易くなり、停止精度が悪化することになる。
【0058】
これに対し、本実施形態に係るステージ30は、駆動モータ47および電磁ブレーキ58の協調制御を行う。この場合、ステージ制御部70は、ドライバ部80のサーボアンプ81をオン状態として、ドライバ部80から駆動モータ47にモータ電力を出力する。ただし、モータ制御部71は、協調制御を行うためモータ電流を適宜のタイミングで変動させる。また、モータ制御部71から指令を受けたブレーキ制御部72は、電磁ブレーキ58の動作遅延をなくすために、ドライバ部80から電磁ブレーキ58にブレーキ電力を出力する。
【0059】
例えば、モータ制御部71は、オーバドライブの初期において(図7(A)の時点ta0~ta1)、一定値のモータ電流を供給して駆動モータ47により昇降部45のZ軸可動体46を上昇させる。また、ブレーキ制御部72は、電磁ブレーキ58のブレーキトルクを直ちに発揮可能な状態とするために、時点ta0において一旦高いブレーキ電圧を供給する。そして、ブレーキ制御部72は、時点ta0から多少時間が経過した時点ta0'において、ブレーキ電圧を低い電圧値に降下させることで、電磁ブレーキ58を待機させる。これにより、時点ta0'以降、電磁ブレーキ58は弱いブレーキトルクが生じた状態となる。この弱いブレーキトルクは、ブレーキステータ581にブレーキアーマチュア582が僅かに接触する(または接触しない程度に近接する)値であり、駆動モータ47の軸部470の回転に殆ど影響を与えない。したがって、昇降部45は、駆動モータ47の回転駆動によってZ軸可動体46を安定して上昇させることができる。
【0060】
時点ta1に達すると、ステージ制御部70は、オーバドライブにおいてウエハWの高さ位置を位置決めする工程を行う。この位置決め工程は、時点ta1~時点ta2の期間にわたって実施され、時点ta2においてウエハWの上昇(すなわちオーバドライブ)が終了する。
【0061】
位置決め工程において、ステージ制御部70は、モータ制御部71の制御下に、駆動モータ47に供給するモータ電力を徐々に低下させる。その一方で、ステージ制御部70は、ブレーキ制御部72の制御下に、電磁ブレーキ58に供給するブレーキ電力(ブレーキ電圧)を徐々に上昇させる。これにより、駆動モータ47と電磁ブレーキ58の両方(昇降部45全体)が基台35に対して付与する保持力は略一定を保ちながら、モータトルクが低くなり、ブレーキトルクが高まる。したがって、昇降部45は、位置決め工程において各プローブ22から受ける荷重に対して充分な保持力をかけることができる。
【0062】
時点ta2に達すると、駆動モータ47に供給されるモータ電力はゼロとなる一方で、電磁ブレーキ58に供給されるブレーキ電力が最も高くなる。ただし、上記したように駆動モータ47がウエハWおよび基台35の高さ位置を維持するためのモータ電力に比べて、電磁ブレーキ58のブレーキ電力は僅かである。例えば、駆動モータ47がウエハWおよび基台35の高さ位置を維持するためのモータ電力は、従来35W程度に設定される。これに対し、1つの電磁ブレーキ58がウエハWおよび基台35の高さ位置を維持するためのブレーキ電力は0.5Wである(図6(B)も参照)。したがって、ステージ30は、低い消費電力によってウエハWおよび基台35の高さ位置を良好に維持することができる。
【0063】
また、ウエハWおよび基台35の高さ位置を補正する場合、ステージ制御部70は、やはり駆動モータ47および電磁ブレーキ58を協調制御することにより、高さ位置を調整できる。例えば、図7(A)では時点ta3以降において補正を行う工程を示している。
【0064】
この補正工程において、ステージ制御部70は、ブレーキ制御部72の制御下に、電磁ブレーキ58に供給するブレーキ電力(ブレーキ電圧)を徐々に低下させる。その一方で、ステージ制御部70は、モータ制御部71の制御下に、駆動モータ47に供給するモータ電力(モータ電流)を徐々に上昇させる。
【0065】
そして、時点ta4に至ると、ステージ制御部70は、電磁ブレーキ58に供給するブレーキ電力を一定値に維持すると共に、駆動モータ47に供給するモータ電力を一定値に維持する。これにより、時点ta4~時点ta5の期間において、ウエハWおよび基台35の高さ位置の補正がなされる。なお、駆動モータ47のモータ電力(モータ電流)は、高さ位置を調整するために必要なモータトルクをかける値であり、一定値でなくてもよい。またこの際の電磁ブレーキ58のブレーキトルクは、時点ta0'~時点ta1の期間のブレーキトルクと同じでもよく、このブレーキトルクより高くてもよい。
【0066】
時点ta5に至ると、ステージ制御部70は、モータ制御部71の制御下に、駆動モータ47に供給するモータ電力を徐々に低下させる。その一方で、ステージ制御部70は、ブレーキ制御部72の制御下に、電磁ブレーキ58に供給するブレーキ電力(ブレーキ電圧)を徐々に上昇させる。これにより、電磁ブレーキ58が軸部470にブレーキトルクをかけることで、ステージ30は、ウエハWおよび基台35の高さ位置を低い消費電力でかつ強固に維持することができる。
【0067】
なお、ステージ30、検査装置1、およびステージ30の動作方法は、上記の実施形態に限定されず、種々の変形例をとり得る。例えば、上記の実施形態において、Z軸移動機構40は、4つの昇降部45によりウエハWおよび基台35を上昇させる構成であったが、昇降部45の数は限定されない。一例として、Z軸移動機構40は、3つの昇降部45を備えた構成や5つ以上の昇降部45を備えた構成でもよく、逆に1つの昇降部45を備えた構成でもよい。
【0068】
また、ステージ制御部70は、電磁ブレーキ58の電圧制御についてPWM制御を実施してもよい。以下、PWM制御を行った場合のステージ30の動作方法について、図8を参照しながら説明する。図8(A)は、PWM制御を行った場合のモータトルクとブレーキトルクとの関係を示すタイミングチャートである。図8(B)は、n個の昇降部45を備えたステージ30においてPWM制御を行った例を示すタイミングチャートである。
【0069】
図8(A)に示すように、ステージ30は、電磁ブレーキ58に対して一定値に設定されたパルス波のブレーキ電圧を出力する。例えば、オーバドライブの初期(時点tc0~時点tc1)において、電圧制御部82(図5参照)は、パルス波の間隔(オフ期間)が長いブレーキ電圧を出力する。これにより、電磁ブレーキ58は、駆動モータ47の軸部470の回転に殆ど影響を与えない弱いブレーキトルクが生じた状態となる。またこの際、モータ制御部71が駆動モータ47に一定のモータ電力(モータ電流)を供給することで、駆動モータ47は、ウエハWおよび基台35を上昇させる。
【0070】
そして、時点tc1に至ると、電圧制御部82は、オーバドライブの初期よりもパルス波の間隔(オフ期間)が短いブレーキ電圧を出力する。また、電圧制御部82は、時点tc1~時点tc2においてパルス波の間隔を徐々に狭めていく。これにより、電磁ブレーキ58は、ブレーキトルクを徐々に高めていくことができる。またこの際、モータ制御部71が駆動モータ47に徐々に低下するモータ電力(モータ電流)を供給することで、駆動モータ47のモータトルクが徐々に低下していく。
【0071】
時点tc2以降は、ウエハWおよび基台35の高さ位置を維持する工程であり、この際、電圧制御部82は、パルス波の間隔がさらに短い(あるいは、パルス波の間隔がゼロの)ブレーキ電圧を出力する。これにより、電磁ブレーキ58は、強いブレーキトルクを軸部470にかけることが可能となり、ウエハWおよび基台35の高さ位置を、容易に維持することができる。
【0072】
以上のように、ステージ30は、電磁ブレーキ58に供給するブレーキ電圧をPWM制御することでも、電磁ブレーキ58のブレーキトルクを精度よく制御することができる。
【0073】
また図8(B)に示すように、ステージ30は、各昇降部45のPWM制御において独立してブレーキ電圧のパルス波の間隔を調整できる。これにより、各昇降部45の電磁ブレーキ58は、ウエハWおよび基台35にかかる荷重や基台35の傾きに応じて、適切なブレーキトルクを個別にかけることが可能となり、ウエハWの姿勢を安定して制御することができる。
【0074】
以上の実施形態で説明した本開示の技術的思想および効果について以下に記載する。
【0075】
本開示の第1の態様は、基板(ウエハW)を支持する基板支持部(基台35)と、基板支持部を昇降させる1以上の昇降部45と、1以上の昇降部45の動作を制御する制御部(ステージ制御部70)と、を含むステージ30であって、1以上の昇降部45は、回転に基づき基板支持部を昇降させる推力を出力する駆動モータ47と、基板支持部の高さ位置を保持するブレーキ保持力を昇降部45に付与する電磁ブレーキ58と、を備え、制御部は、駆動モータ47の推力と電磁ブレーキ58のブレーキ保持力とを相互に連動させながら、基板支持部の高さ位置を制御する。
【0076】
上記によれば、ステージ30は、当該ステージ30にかかる荷重を安定して受けながら、ステージ30の移動における消費電力を抑制できる。すなわち、ステージ30は、駆動モータ47の推力と電磁ブレーキ58のブレーキ保持力とを協調制御することによって、電磁ブレーキ58を駆動モータ47の制御システムに取り込むことができる。電磁ブレーキ58のブレーキ電力は、駆動モータ47のモータ電力に比べて充分に低いため、消費電力を大幅に低減できる。しかも、電磁ブレーキ58と駆動モータ47の切り替えた場合に生じていたコンタクト精度の悪化は、協調制御によりなくすことが可能となる。
【0077】
また、制御部(ステージ制御部70)は、基板支持部(基台35)の高さ位置において基板支持部を保持する保持力が一定となるように、駆動モータ47の推力と電磁ブレーキ58のブレーキ保持力とを調整する。これにより、ステージ30は、基板支持部の保持力を良好に維持することができる。
【0078】
また、制御部(ステージ制御部70)は、電磁ブレーキ58により基板支持部(基台35)を保持する場合に、駆動モータ47の推力を徐々に低下させる一方で、電磁ブレーキ58のブレーキ保持力を徐々に上昇させる。これにより、ステージ30は、駆動モータ47による位置決めから電磁ブレーキ58による保持への切り替えを円滑に行うことができる。
【0079】
また、制御部(ステージ制御部70)は、基板支持部(基台35)の目標位置に基づき、駆動モータ47の推力および電磁ブレーキ58のブレーキ保持力を配分する。これにより、制御部は、高さ位置に応じて推力およびブレーキ保持力を適切に設定できる。
【0080】
また、制御部(ステージ制御部70)は、駆動モータ47から実位置をフィードバックして、目標位置と実位置との偏差を算出し、偏差に基づき駆動モータ47の推力および電磁ブレーキ58のブレーキ保持力を配分する。ステージ30は、この偏差を利用することで電磁ブレーキ58のブレーキ保持力を低下させる等の処理を行うことができ、基板支持部(基台35)の実位置を目標位置に一致させる動作を適切かつ効率的に行うことができる。
【0081】
また、制御部(ステージ制御部70)は、駆動モータ47のモータ電力に基づき電磁ブレーキ58のブレーキ保持力を設定し、設定したブレーキ保持力に基づき電磁ブレーキ58に供給するブレーキ電力を制御する。これにより、ステージ30は、電磁ブレーキ58のブレーキ保持力を良好に制御可能となる。
【0082】
また、制御部(ステージ制御部70)は、ブレーキ電圧を制御することにより、電磁ブレーキ58に供給するブレーキ電力を制御する。電磁ブレーキ58は線形抵抗として扱え、かつ電磁ブレーキ58のブレーキトルクとブレーキ電力が線形であることから、電磁ブレーキのブレーキ電圧を制御することでその保持力を制御することが可能となる。 そのため、オープンループ制御として扱うことが可能となる。
【0083】
また、電磁ブレーキ58は、制御部(ステージ制御部70)によりPWM制御されたブレーキ電圧が入力されることで、ブレーキ保持力が調整される。これにより制御部は、電磁ブレーキ58をより簡単に制御することができる。
【0084】
また、制御部(ステージ制御部70)は、基板支持部(基台35)を上昇させて位置決めを行う工程を制御し、位置決めを行う工程の前に、電磁ブレーキ58に電力を供給し、昇降部45を昇降可能なブレーキ保持力とする。これにより、ステージ30は、機械的特性で生じていたブレーキアーマチュア582の無駄時間を滑り制御によってなくすことができる。
【0085】
また、制御部(ステージ制御部70)は、基板支持部(基台35)の鉛直方向の位置の補正を行う工程を制御し、補正を行う工程では、ブレーキ保持力を低下させながら推力を上昇させた後、ブレーキ保持力を一定に維持して推力により基板支持部の位置を調整する。これにより、ステージ30は、外乱等により基台35の高さ位置を補正する場合でも、スムーズかつ精度よく昇降部45を移動させることができる。
【0086】
また、本開示の第2の態様は、基板(ウエハW)を載置して搬送するステージ30を有し、搬送された基板にプローブ22を接触させて当該基板の電気的特性を検査する検査装置1であって、ステージ30は、基板を支持する基板支持部(基台35)と、基板支持部を昇降させる1以上の昇降部45と、1以上の昇降部45の動作を制御する制御部(ステージ制御部70)と、を含み、1以上の昇降部45は、回転に基づき基板支持部を昇降させる推力を出力する駆動モータ47と、基板支持部の高さ位置を保持するブレーキ保持力を昇降部45に付与する電磁ブレーキ58と、を備え、制御部は、駆動モータ47の推力と電磁ブレーキ58のブレーキ保持力とを相互に連動させながら、基板支持部の高さ位置を制御する。
【0087】
また、本開示の第3の態様は、基板(ウエハW)を支持する基板支持部(基台35)と、基板支持部を昇降させる1以上の昇降部45と、を含むステージ30の動作方法であって、1以上の昇降部45は、回転に基づき基板支持部を昇降させる推力を出力する駆動モータ47と、基板支持部の高さ位置を保持するブレーキ保持力を昇降部45に付与する電磁ブレーキ58と、を備え、ステージの動作方法では、駆動モータ47の推力と電磁ブレーキ58のブレーキ保持力とを相互に連動させながら、基板支持部の高さ位置を制御する。以上の第2の態様および第3の態様でも、ステージ30にかかる荷重を安定して受けながら、ステージ30の移動における消費電力を抑制できる。
【0088】
今回開示された実施形態に係るステージ30、検査装置1、ステージ30の動作方法は、すべての点において例示であって制限的なものではない。実施形態は、添付の請求の範囲およびその主旨を逸脱することなく、様々な形態で変形および改良が可能である。上記複数の実施形態に記載された事項は、矛盾しない範囲で他の構成も取り得ることができ、また、矛盾しない範囲で組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0089】
1 検査装置
30 ステージ
35 基台
45 昇降部
47 駆動モータ
58 電磁ブレーキ
70 ステージ制御部
W ウエハ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8