IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱レイヨン株式会社の特許一覧

特開2024-11763エポキシ樹脂組成物、硬化性樹脂組成物、硬化性樹脂組成物の硬化物、接着構造体、及び接着性付与剤
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011763
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】エポキシ樹脂組成物、硬化性樹脂組成物、硬化性樹脂組成物の硬化物、接着構造体、及び接着性付与剤
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/02 20060101AFI20240118BHJP
   C08G 59/18 20060101ALI20240118BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
C08G59/02
C08G59/18
C08L63/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022114017
(22)【出願日】2022-07-15
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安藤 正人
【テーマコード(参考)】
4J002
4J036
【Fターム(参考)】
4J002AC072
4J002CD011
4J002CD031
4J002CD041
4J002CD051
4J002CD061
4J002CD071
4J002CD081
4J002CD113
4J002CD141
4J002FD016
4J002FD026
4J002FD046
4J002FD076
4J002FD096
4J002FD136
4J002FD142
4J002FD202
4J002FD203
4J002FD342
4J002FD343
4J002GH01
4J002GJ01
4J002GL00
4J002GN00
4J036AA01
4J036AA02
4J036AA05
4J036AB10
4J036AB17
4J036AC01
4J036AC02
4J036AC03
4J036AC05
4J036AD01
4J036AD04
4J036AD07
4J036AD08
4J036AD11
4J036AD12
4J036AD21
4J036AE05
4J036AF01
4J036AF06
4J036AF17
4J036AG07
4J036AH07
4J036AH18
4J036AK17
4J036DA01
4J036DA02
4J036DB05
4J036DB06
4J036DB11
4J036DB15
4J036DB17
4J036DB21
4J036DC02
4J036DC03
4J036DC04
4J036DC05
4J036DC06
4J036DC10
4J036DC19
4J036DC21
4J036DC26
4J036DC27
4J036DC31
4J036DC35
4J036DC39
4J036DC41
4J036DD02
4J036DD07
4J036FB03
4J036GA04
4J036GA19
4J036GA20
4J036JA01
4J036JA06
4J036JA11
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、低温接着性の確保が難しいエポキシ樹脂組成物において、低温接着性に優れたエポキシ樹脂組成物を提供することにある。
【解決手段】(A)エポキシ化合物、(B)接着助剤及び(C)D単位を含む鎖状のシリコーンの末端のいずれかにエポキシ基を含む有機基が結合したエポキシ変性シリコーン、を含有する、エポキシ樹脂組成物、により課題を解決する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ化合物、(B)接着助剤及び(C)D単位を含む鎖状のシリコーンの末端のいずれかにエポキシ基を含む有機基が結合したエポキシ変性シリコーン、を含有する、エポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
前記エポキシ基を含む有機基が、芳香族エポキシ基及び/又は脂肪族エポキシ基である、請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
前記(C)エポキシ変性シリコーンが式(1)で表される、請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
【化1】

(式(1)中、mは1以上の整数を表す。nはそれぞれ1以上の整数を表す。R及びRは、それぞれ独立して、アルキル基又は芳香族基を表す。また、R及びRは、それぞれ独立して、ヒドロキシフェニル基、カルビノール基、カルボキシ基、アミノ基、及びメルカプト基からなる群から選ばれるエポキシ反応性官能基に由来する連結基を表す。)
【請求項4】
前記R及びRは、メチル基である、請求項3に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
前記(B)接着助剤が、カルボキシ基、ヒドロキシフェニル基、カルビノール基、アミノ基及びメルカプト基からなる群から選ばれる1種以上の末端基を有するブタジエンニトリルゴム及び/又はブタジエンゴムを含む、請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
前記(C)エポキシ変性シリコーンのエポキシ当量が1500~5000g/当量の範囲である、請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項7】
前記(A)エポキシ化合物100質量部に対して、前記(C)エポキシ変性シリコーンを2~20質量部含有する、請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項8】
更に、カップリング剤、難燃性剤、酸化防止剤、光安定剤、可塑剤、反応希釈剤、顔料、無機充填材及び有機充填材からなる群から選ばれる1種以上の添加剤を含有する、請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物と(D)硬化剤とを含有する、硬化性樹脂組成物。
【請求項10】
前記(D)硬化剤が、多官能フェノール類、ポリイソシアネート系化合物、アミン系化合物、酸無水物系化合物、イミダゾール系化合物、アミド系化合物、メルカプタン系化合物、カチオン重合開始剤、有機ホスフィン類、有機ホスホニウム塩、及びテトラフェニルボロン塩からなる群から選ばれる少なくとも1種以上である、請求項9に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項11】
前記(A)エポキシ化合物100質量部に対して、前記(D)硬化剤を0.1~100
0質量部含有する、請求項9に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項12】
更に、硬化促進剤(但し、硬化剤に該当するものは除く)を含有する、請求項9に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項13】
請求項9に記載の硬化性組成物を硬化してなる、硬化物。
【請求項14】
被接着体と、他の被接着体とが、請求項13に記載の硬化物を介して接着されている、接着構造体。
【請求項15】
T型剥離試験(-30℃)において、前記被接着体と、他の被接着体との間の平均剥離強度が170N以上、最大剥離強度が430N以上である請求項14に記載の接着構造体。
【請求項16】
式(1)で表されるエポキシ変性シリコーンからなる接着性付与剤。
【化2】

(式(1)中、mは1以上の整数を表す。nはそれぞれ1以上の整数を表す。R及びRは、それぞれ独立して、アルキル基又は芳香族基を表す。R及びRは、それぞれ独立して、ヒドロキシフェニル基、カルビノール基、カルボキシ基、アミノ基及びメルカプト基からなる群から選ばれるエポキシ反応性官能基に由来する連結基を表す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ変性シリコーンを含有するに関する。また、エポキシ変性シリコーンからなる接着性付与剤に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂は、他の有機あるいは無機充填物を共に含むエポキシ樹脂組成物を調製し、硬化することで、半導体封止、構造材料および各種接着、塗料など幅広い用途に使用されているが、近年、これら用途について、使用環境の観点から、耐寒性、耐熱性、耐湿熱性などの温度、湿度対応あるいはさらに耐光性を加えた耐候性に対する要望が高くなってきている。
【0003】
特に、接着用途については、近年のマルチマテリアル化に伴う異種材料の接着において、異種材料を構成する各材料の熱特性の違いにより発生するひずみの緩和とともに、低温で満足できうる接着強度、すなわち低温接着性の付与が重要になってきている。しかしながら一般的にエポキシ樹脂は実用時に硬化処理を行うが、その硬化物においては硬くて、脆い性質を有するため、特に低温にて十分な接着強度の確保が難しい。そこで、一般的には、カルボキシル末端ブタジエンアクリロニトリルエラストマーに代表される有機エラストマーやコアシェル構造を有するゴムなどを添加したエポキシ樹脂組成物にて接着力を付与している。
【0004】
ここで、高分子設計の観点から考えると、低温接着性を担保すべく必要な構造としては、低温においても分子運動が凍結しないことがあげられ、その観点から、上記の有機エラストマーやゴムにおいては、低温の度合いによっては運動が凍結されることから低温接着性は十分とは言えない。そこで、ジメチルシロキサンに代表されるシリコーン構造が着目されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-008145号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1ではシルセスキオキサンなどの種々のシリコーン構造を用いることで、耐熱性、接着性の確保を試みているが低温での接着性については言及されていない。一般的にシリコーン化合物については、低温での運動性を確保する構造を取るほど、逆に表面エネルギーが低くなるため必要な接着力の確保が難しいため、エポキシ組成物へのシリコーン化合物の導入による低温接着への適用は一般的にはほとんどなされていない。
【0007】
本発明は上記従来技術の問題点に鑑みてなされたものである。即ち、本発明の課題は、低温接着性の確保が難しいエポキシ樹脂組成物において、低温接着性に優れたエポキシ樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、低温接着性の確保が難しいエポキシ樹脂組成物において、シリコーン化合物特有の優れた低温特性を、接着において必要な表面エネルギーを確保しつつ、エポキシ樹脂に取り込むことができるように、D単
位を含む鎖状のシリコーン構造の末端にエポキシ基を含む有機基が結合したエポキシ変性シリコーン化合物を用いることで、特異的に低温接着性が向上することを見出し、発明の完成に至った。
即ち、本発明の要旨は以下の[1]~[16]に存する。
【0009】
[1](A)エポキシ化合物、(B)接着助剤及び(C)D単位を含む鎖状のシリコーンの末端のいずれかにエポキシ基を含む有機基が結合したエポキシ変性シリコーン、を含有する、エポキシ樹脂組成物。
[2]前記エポキシ基を含む有機基が、芳香族エポキシ基及び/又は脂肪族エポキシ基である、[1]に記載のエポキシ樹脂組成物。
[3]前記(C)エポキシ変性シリコーンが式(1)で表される、[1]又は[2]に記載のエポキシ樹脂組成物。
【化1】

(式(1)中、mは1以上の整数を表す。nはそれぞれ1以上の整数を表す。R及びRは、それぞれ独立して、アルキル基又は芳香族基を表す。また、R及びRは、それぞれ独立して、ヒドロキシフェニル基、カルビノール基、カルボキシ基、アミノ基、及びメルカプト基からなる群から選ばれるエポキシ反応性官能基に由来する連結基を表す。)[4]前記R及びRは、メチル基である、[3]に記載のエポキシ樹脂組成物。
[5]前記(B)接着助剤が、カルボキシ基、ヒドロキシフェニル基、カルビノール基、アミノ基及びメルカプト基からなる群から選ばれる1種以上の末端基を有するブタジエンニトリルゴム及び/又はブタジエンゴムを含む、[1]~[4]のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
[6]前記(C)エポキシ変性シリコーンのエポキシ当量が1500~5000g/当量の範囲である、[1]~[5]のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
[7]前記(A)エポキシ化合物100質量部に対して、前記(C)エポキシ変性シリコーンを2~20質量部含有する、[1]~[6]のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
[8]更に、カップリング剤、難燃性剤、酸化防止剤、光安定剤、可塑剤、反応希釈剤、顔料、無機充填材及び有機充填材からなる群から選ばれる1種以上の添加剤を含有する、[1]~[7]のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
[9][1]~[8]のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物と(D)硬化剤とを含有する、硬化性樹脂組成物。
[10]前記(D)硬化剤が、多官能フェノール類、ポリイソシアネート系化合物、アミン系化合物、酸無水物系化合物、イミダゾール系化合物、アミド系化合物、メルカプタン系化合物、カチオン重合開始剤、有機ホスフィン類、有機ホスホニウム塩、及びテトラフェニルボロン塩からなる群から選ばれる少なくとも1種以上である、[9]に記載の硬化性樹脂組成物。
[11]前記(A)エポキシ化合物100質量部に対して、前記(D)硬化剤を0.1~1000質量部含有する、[9]又は[10]に記載の硬化性樹脂組成物。
[12]更に、硬化促進剤(但し、硬化剤に該当するものは除く)を含有する、[9]~[11]のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
[13][9]~[12]のいずれかに記載の硬化性組成物を硬化してなる、硬化物。
[14]被接着体と、他の被接着体とが、[13]に記載の硬化物を介して接着されてい
る、接着構造体。
[15]T型剥離試験(-30℃)において、前記被接着体と、他の被接着体との間の平均剥離強度が170N以上、最大剥離強度が430N以上である[14]に記載の接着構造体。
[16]式(1)で表されるエポキシ変性シリコーンからなる接着性付与剤。
【化2】

(式(1)中、mは1以上の整数を表す。nはそれぞれ1以上の整数を表す。R及びRは、それぞれ独立して、アルキル基又は芳香族基を表す。R及びRは、それぞれ独立して、ヒドロキシフェニル基、カルビノール基、カルボキシ基、アミノ基及びメルカプト基からなる群から選ばれるエポキシ反応性官能基に由来する連結基を表す。)
【発明の効果】
【0010】
本発明により、低温接着性に優れたエポキシ樹脂組成物を提供することができる。また、当該エポキシ樹脂組成物を含む硬化物、該硬化物により接着された接着構造体、を提供することができる。更に、特定の構造を有するエポキシ変性シリコーンは、接着性付与剤としての、新たな用途を提供することが期待される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一形態は、(A)エポキシ化合物、(B)接着助剤及び(C)D単位を含む鎖状のシリコーンの末端のいずれかにエポキシ基を含む有機基が結合したエポキシ変性シリコーン(以下、単に(C)エポキシシリコーンとも称する。)、を含有する、エポキシ樹脂組成物である。(C)エポキシシリコーンは、D単位を含む鎖状のシリコーン構造を有することで低温においても分子運動が凍結することなく接着力を発揮することから、硬化物に対して優れた接着性を付与することができる。
【0012】
[(A)エポキシ化合物]
(A)エポキシ化合物とは、分子内に2個以上のエポキシ基を有する化合物である。分子内に2個のエポキシ基を有する2官能エポキシ化合物であってもよく、分子内に3個のエポキシ基を有する3官能エポキシ化合物であってもよい。好ましくは、2官能エポキシ化合物である。
【0013】
2官能エポキシ化合物(A)としては例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールEジグリシジルエーテル、ビスフェノールZジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、ビスフェノールADジグリシジルエーテル、ビスフェノールアセトフェノンジグリシジルエーテル、ビスフェノールトリメチルシクロヘキサンジグリシジルエーテル、ビスフェノールフルオレンジグリシジルエーテル、テトラメチルビスフェノールAジグリシジルエーテル、テトラメチルビスフェノールFジグリシジルエーテル、テトラ-t-ブチルビスフェノールAジグリシジルエーテル、テトラメチルビスフェノールSジグリシジルエーテル等のビスフェノール系ジグリシジルエーテル類;ビフェノールジグリシジルエーテル、テトラメチルビフェノールジグリシジルエーテル、ジメチルビフェノールジグリシジルエーテル、テトラ-t-ブチルビフェノールジグリシジルエーテル等のビフェノール系ジグリシジルエーテル類;ハイドロキノンジグリシジルエーテル、ジヒドロアントラセンジグリシジル
エーテル、メチルハイドロキノンジグリシジルエーテル、ジブチルハイドロキノンジグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、メチルレゾルシンジグリシジルエーテル等のベンゼンジオール系ジグリシジルエーテル類;ジヒドロアントラハイドロキノンジグリシジルエーテル、ジヒドロキシジフェニルエーテルジグリシジルエーテル、チオジフェノールジグリシジルエーテル、ジヒドロキシナフタレンジグリシジルエーテル等の芳香族系ジグリシジルエーテル類;前記ビスフェノール系ジグリシジルエーテル類、ビフェノール系ジグリシジルエーテル類、ベンゼンジオール系ジグリシジルエーテル類及び芳香族系ジグリシジルエーテル類から選ばれるジグリシジルエーテル類の芳香環に水素を添加したエポキシ化合物;アジピン酸、コハク酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ビフェニルジカルボン酸、ダイマー酸等の種々のカルボン酸類と、エピハロヒドリンとから製造されるエポキシ樹脂;エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、1,5-ペンタンジオールジグリシジルエーテル、ポリペンタメチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリヘキサメチレングリコールジグリシジルエーテル、1,7-ヘプタンジオールジグリシジルエーテル、ポリヘプタメチレングリコールジグリシジルエーテル、1,8-オクタンジオールジグリシジルエーテル、1,10-デカンジオールジグリシジルエーテル、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオールジグリシジルエーテル等の鎖状構造のみからなる(ポリ)アルキレングリコールジグリシジルエーテル類;1,4-シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル等の環状構造を有するアルキレングリコールジグリシジルエーテル類等が挙げられる。
【0014】
3官能以上のエポキシ化合物としては、例えば、以下のものが挙げられる。なお、以下の例示において、「・・・型エポキシ樹脂」とは、水酸基がグリシジルエーテル基で置換されたものをいう。即ち、例えば、「4,4’,4”-トリヒドロキシトリフェニルメタン型エポキシ樹脂」は、「4,4’,4”-トリヒドロキシトリフェニルメタン」の水酸基がグリシジルエーテルで置換されたものをさす。
【0015】
α,α-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-(4-ヒドロキシ―α,α-ジメチルベンジル)-エチルベンゼン型エポキシ樹脂、4,4’,4”-トリヒドロキシトリフェニルメタン型エポキシ樹脂、4,4’,4”-エチリジントリス(2-メチルフェノール)型エポキシ樹脂、4,4’-(2-ヒドロキシベンジリデン)ビス(2,3,6-トリメチルフェノール)型エポキシ樹脂、2,3,4-トリヒドロキシジフェニルメタン型エポキシ樹脂、2,4,6-トリス(4-ヒドロキシフェニル)-1,3,5-トリアジン型エポキシ樹脂、1,3,5-トリス(4-ヒドロキシフェニル)ベンゼン型エポキシ樹脂、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン型エポキシ樹脂、4,4’-[1-[4-[1-(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)-1-メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビス(2-メチルフェノール)型エポキシ樹脂、2,6-ビス(4-ヒドロキシ―3,5-ジメチルベンジル)-4-メチルフェノール型エポキシ樹脂等の3官能エポキシ樹脂類;2,2’-メチレンビス[6-(2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-p-クレゾール型エポキシ樹脂、4-[ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)メチル]ベンゼン-1,2-ジオール型エポキシ樹脂、1,1,2,2-テトラキス(p-ヒドロキシフェニル)エタン型エポキシ樹脂、α,α,α’,α”-テトラキス(4-ヒドロキシフェニル)-p-キシレン型エポキシ樹脂等の4官能エポキシ樹脂類;2,4,6-トリス[(4-ヒドロキシフェニル)メチル]-1,3-ベンゼンジオール型エポキシ樹脂等の5官能エポキシ樹脂類;ジアミノジフェニルメタン、アミノフェノール、キシレンジアミン等の種々のアミン化合物と、エピハロヒドリンとから製造されるエポキシ化合物;脂肪族ポリオールと、エピハロヒドリンから製造されるエポキシ化
合物;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、フェノール変性キシレン型エポキシ樹脂や、これら種々のフェノール類と、ヒドロキシベンズアルデヒド、クロトンアルデヒド、グリオキザール等の種々のアルデヒド類との縮合反応で得られる多価フェノール樹脂類、重質油又はピッチ類とフェノール類とホルムアルデヒド類との共縮合樹脂等の各種のフェノール系化合物等を使用したエポキシ樹脂等の多官能エポキシ樹脂類が挙げられる。
【0016】
エポキシ化合物については、これらのうち、好ましくはビスフェノール系ジグリシジルエーテル類であり、中でもビスフェノールAジグリシジルエーテルがより好ましい。
また2官能エポキシ化合物および3官能以上のエポキシ化合物を1種または複数種を組み合わせて使用することもできる。
【0017】
[(B)接着助剤]
(B)接着助剤は、エポキシ樹脂組成物の接着性を向上させるために配合する化合物である。エポキシ樹脂組成物に配合して、その接着性を向上させることができれば特に限定されないが、カルボキシ基、ヒドロキシフェニル基、カルビノール基、アミノ基及びメルカプト基からなる群から選ばれる1種以上の末端基を有するブタジエンニトリルゴム及び/又はブタジエンゴムであることが、低温接着性の観点から好ましい。
このうち、カルボキシル末端ブタジエンニトリルゴムが、より好ましい。カルボキシル末端ブタジエンニトリルゴムは下記式(2)で表されるように、ポリブタジエンユニットとポリアクリロニトリルユニットの共重合ポリマーであって、両末端にカルボキシル構造を有するエラストマーである。カルボキシル末端については、さらにエポキシ基などの反応性基を有するユニットを付加したものであってもよい。
【0018】
【化3】

式(2)中、pは1以上の整数を表し、qは1以上の整数を表す。RおよびRは独立してカルボキシル基、ヒドロキシフェニル基、カルビノール基などの水酸基含有基、アミノ基、及びメルカプト基からなる群より選ばれる1種または2種のエポキシ反応性官能基を有する1価の有機基を表す。
【0019】
(B)接着助剤の配合量は特に限定されるものではなく、エポキシ樹脂組成物を用いた接着用途により適宜設定されるが、(A)エポキシ化合物100質量部に対して、通常5質量部以上であり、10質量部以上であることが好ましく、また通常95質量部以下であり、80質量部以下であることが好ましい。
【0020】
[(C)エポキシ変性シリコーン]
(C)エポキシ変性シリコーンは、D単位を含む鎖状のシリコーンの末端のいずれかに、エポキシ基を含む有機基が結合した化合物である。D単位を含む鎖状のシリコーンユニットを有することで、低温においても分子運動が凍結することなく接着力を発揮することから、硬化物に対して優れた接着性を付与することができる。
【0021】
(C)エポキシ変性シリコーン中、鎖状のシリコーンユニットはD単位のシリコーンを含んでいればよいが、低温接着性の観点から、全シリコーンユニット中においてD単位が50モル%以上であることが好ましく、80モル%以上であることがより好ましく、100モル%であることがより好ましい。また、鎖状のシリコーンユニットは、直鎖であってもよく、分岐があってもよいが、直鎖のシリコーンであることが好ましい。
【0022】
(C)エポキシ変性シリコーン中、エポキシ基を含む有機基は、エポキシ基を含む有機基であればよいが、芳香族エポキシ基及び/又は脂肪族エポキシ基であることが、低温の接着強度の向上の観点から好ましい。
【0023】
(C)エポキシ変性シリコーンは、以下の式(1)で表されることが好ましい。
【化4】
【0024】
式(1)中、mは1以上の整数を表す。nはそれぞれ1以上の整数を表し、複数のnは同じであってもよく、異なっていてもよい。R及びRは、それぞれ独立して、アルキル基、または、芳香族性基を表す。このうち、R及びRのうち少なくとも1つがアルキル基であることが好ましく、アルキル基の中でも、炭素数1~4のアルキル基がより好ましく、メチル基であることが更により好ましい。また、RとRが共にアルキル基であることがより好ましい。
また、RおよびRは独立してヒドロキシフェニル基、カルビノール基、カルボキシ基、アミノ基、及びメルカプト基からなる群から選ばれるエポキシ反応性官能基に由来する連結基を表す。
【0025】
式(1)において、mは、平均として、通常3以上、好ましくは10以上であり、また、通常100以下、好ましくは50以下である。mがこの範囲内にあることで、エポキシ樹脂組成物への相溶性が良好であり、充分な低温接着性が得られる。
式(1)中、nはそれぞれ0以上の整数を表す。nは平均として好ましくは0以上であり、また、好ましくは50以下である。nがこの範囲内にあることで、エポキシ変性シリコーン自体の流動性が良好となり、エポキシ樹脂組成物の作製が容易になる。
【0026】
[エポキシ当量]
(C)エポキシ変性シリコーンのエポキシ当量は、JIS K7236により測定された値で、500~10,000g/eqであることが好ましく、1500~5,000g/eqであることがより好ましく、1500~4500g/eqであることが特に好ましい。(C)エポキシ変性シリコーンのエポキシ当量が上記範囲内であることによって、これを含むエポキシ樹脂組成物の作製の容易性、およびエポキシ樹脂組成物のハンドリングに優れ、また硬化処理後の硬化物は、低温接着性に優れたモルフォロジーをとることができる。
【0027】
(C)エポキシ変性シリコーンの配合量は特に限定されるものではなく、エポキシ樹脂組成物を用いた接着用途により適宜設定されるが、(A)エポキシ化合物100質量部に対して、通常2質量部以上であり、5質量部以上であることが好ましく、また通常20質量部以下であり、15質量部以下であることが好ましい。
【0028】
[(C)エポキシ変性シリコーンの製造方法]
(C)エポキシ変性シリコーンの製造方法は特に限定されず、公知の方法を用いて合成することができる。
【0029】
〔エポキシ樹脂組成物の製造方法〕
エポキシ樹脂組成物の製造方法は、上記(A)エポキシ化合物、(B)接着助剤及び(C)D単位を含む鎖状のシリコーンの末端のいずれかにエポキシ基を含む有機基が結合したエポキシ変性シリコーン、を混錬することで、得ることができる。
また、この際に、通常は硬化剤を配合させることで、硬化性樹脂組成物とすることができる。
【0030】
[硬化剤]
硬化性樹脂組成物に含有させる(D)硬化剤は、エポキシ化合物のエポキシ基間の架橋反応及び/又は鎖長延長反応に寄与する物質である。なお、本明細書においては通常、「硬化促進剤」と呼ばれるものであってもエポキシ化合物のエポキシ基間の架橋反応及び/又は鎖長延長反応に寄与する物質であれば、硬化剤とみなすこととする。
【0031】
(D)硬化剤としては、多官能フェノール類、ポリイソシアネート系化合物、アミン系化合物、酸無水物系化合物、イミダゾール系化合物、アミド系化合物、カチオン重合開始剤、有機ホスフィン類、有機ホスホニウム塩、及びテトラフェニルボロン塩からなる群のうちの少なくとも1つを用いることが好ましい。
【0032】
多官能フェノール類の例としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビスフェノールB、ビスフェノールAD、ビスフェノールZ、テトラブロモビスフェノールA等のビスフェノール類、4,4’-ビフェノール、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ビフェノール等のビフェノール類;カテコール、レゾルシン、ヒドロキノン、ジヒドロキシナフタレン類;及びこれらの化合物の芳香環に結合した水素原子がハロゲン基、アルキル基、アリール基、エーテル基、エステル基、硫黄、リン、珪素等のヘテロ元素を含む有機置換基等の非妨害性置換基で置換されたもの等が挙げられる。
更に、これらのフェノール類やフェノール、クレゾール、アルキルフェノール等の単官能フェノール類とアルデヒド類の重縮合物であるノボラック類、レゾール類等が挙げられる。
【0033】
ポリイソシアネート系化合物の例としては、トリレンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジントリイソシアネート等のポリイソシアネート化合物が挙げられる。更に、これらのポリイソシアネート化合物と、アミノ基、水酸基、カルボキシル基、水等の活性水素原子を少なくとも2個有する化合物との反応により得られるポリイソシアネート化合物、又は前記のポリイソシアネート化合物の3~5量体等を挙げることができる。
【0034】
アミン系化合物の例としては、脂肪族の一級、二級、三級アミン、芳香族の一級、二級、三級アミン、環状アミン、グアニジン類、尿素誘導体等があり、具体的には、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルエーテル、メタキシレンジアミン、ジシアンジアミド、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-7-ウンデセン、1,5-ジアザビシクロ(4,3,0)-5-ノネン、ジメチル尿素、グアニル尿素等が挙げられる。
【0035】
酸無水物系化合物の例としては、無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水マレイン酸と不飽和化合物の縮合物等が挙げられる。
【0036】
イミダゾール系化合物の例としては、1-イソブチル-2-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、ベンズイミダゾール等が挙げられる。なお、イミダゾール系化合物は後述する硬化促進剤としての機能も果たすが、本明細書においては硬化剤に分類するものとする。
【0037】
アミド系化合物の例としては、ジシアンジアミド及びその誘導体、ポリアミド樹脂等が挙げられる。
【0038】
カチオン重合開始剤は、熱又は活性エネルギー線照射によってカチオンを発生するものであり、芳香族オニウム塩等が挙げられる。具体的には、SbF 、BF 、AsF 、PF 、CFSO 2-、B(C 等のアニオン成分とヨウ素、硫黄、窒素、リン等の原子を含む芳香族カチオン成分とからなる化合物等が挙げられる。
【0039】
有機ホスフィン類の例としては、トリブチルホスフィン、メチルジフェニルホスフイン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルホスフィン、フェニルホスフィン等が挙げられる。
有機ホスホニウム塩の例としては、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウム・エチルトリフェニルボレート、テトラブチルホスホニウム・テトラブチルボレート等が挙げられる。
テトラフェニルボロン塩の例としては、2-エチル-4-メチルイミダゾール・テトラフェニルボレート、N-メチルモルホリン・テトラフェニルボレート等が挙げられる。
【0040】
以上に挙げた硬化剤の他、有機酸ジヒドラジド、ハロゲン化ホウ素アミン錯体等も硬化剤として用いることができる。
上記の硬化剤のうち、潜在性を有するジシアンジアミドが好適に用いられるが、各々1種を用いてもよく、同種又は異種のものを2種以上組み合わせて用いてもよい。
(D)硬化剤の配合量は特に限定されるものではなく、(A)エポキシ化合物100質量部に対して、通常0.1質量部以上であり、0.5質量部以上であることが好ましく、また通常1000質量部以下であり、500質量部以下であることが好ましい。
【0041】
硬化剤として多官能フェノール類、アミン系化合物、酸無水物系化合物を用いる場合は、エポキシ樹脂組成物中の全エポキシ基に対する硬化剤中の官能基(多官能フェノール類の水酸基、アミン系化合物のアミノ基又は酸無水物系化合物の酸無水物基)の当量比で0.8~1.5の範囲となるように用いることが好ましい。ポリイソシアネート系化合物を用いる場合、エポキシ樹脂組成物中の水酸基数に対してポリイソシアネート系化合物中のイソシアネート基数が、当量比で1:0.01~1:1.5の範囲で用いることが好ましい。イミダゾール系化合物を用いる場合、エポキシ樹脂組成物中の固形分としての全エポキシ樹脂成分100質量部に対して0.5~10質量部の範囲で用いることが好ましい。アミド系化合物を用いる場合、エポキシ樹脂組成物中の固形分としての全エポキシ樹脂成分とアミド系化合物との合計量に対して0.1~20質量%の範囲で用いることが好ましい。カチオン重合開始剤を用いる場合、エポキシ樹脂組成物中の固形分としての全エポキシ樹脂成分100質量部に対し、0.01~15質量部の範囲で用いることが好ましい。有機ホスフィン類を用いる場合、エポキシ樹脂組成物中の固形分としての全エポキシ樹脂成分と有機ホスフィン類との合計量に対して0.1~20質量%の範囲で用いることが好ましい。
【0042】
[その他の成分]
硬化性樹脂組成物には、以上に挙げた成分の他にその他の成分を含有することができる。その他の成分としては例えば、硬化促進剤(ただし、前記硬化剤に該当するものを除く。)、カップリング剤、難燃剤、酸化防止剤、光安定剤、可塑剤、反応性希釈剤、顔料、無機充填材、有機充填材等が挙げられる。以上に挙げたその他の成分は硬化性樹脂組成物の所望の物性により適宜組み合わせて用いることができる。
その他の成分については、本発明の硬化を阻害しない範囲で含有させることができるが、その含有量は、(A)エポキシ化合物100質量部に対し、通常10質量部以下であり、5質量部以下であることが好ましい。
【0043】
[硬化物〕
硬化性樹脂組成物を硬化させることにより、硬化物を得ることができる。ここでいう「硬化」とは熱及び/又は光等によりエポキシ化合物を意図的に硬化させることを意味するものであり、その硬化の程度は所望の物性、用途により制御すればよい。
硬化物とする際の硬化性樹脂組成物の硬化方法は、硬化性樹脂組成物中の配合成分や配合量、配合物の形状によっても異なるが、通常、50~200℃で5秒~180分の加熱条件が挙げられる。
【0044】
[用途]
エポキシ樹脂組成物を含む硬化性樹脂組成物は、特に低温で優れた接着性を有することから、自動車、船舶、航空、宇宙、土木、建築分野等の広範な分野において、各種金属部材、炭素繊維あるいはガラス繊維強化樹脂、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂の同種あるいは異種を接合するのに用いられる構造用接着剤として好適に使用することができ、とりわけ自動車構造用接着剤として好適に使用することができる。また、硬化性樹脂組成物は各種塗料、各種接着剤、各種成形品等の用途にも用いることができる。
【0045】
[接着構造体]
上記硬化性樹脂組成物を接着剤として用いることで、被接着体と、他の被接着体とが、上記硬化性樹脂組成物の硬化物を介して接着されている、接着構造体を得ることができる。
上記硬化性樹脂組成物により接着された接着構造体は、被接着体と、他の被接着体との間の平均剥離強度が170N以上であることが好ましく、最大剥離強度が430N以上であることが好ましい。
平均剥離強度及び最大剥離強度は、引張試験機によるT型剥離試験により測定した剥離強度であり、その方法は、JIS K 6854に準じて行われる。
【0046】
[接着性付与剤]
本発明の別の形態は、式(1)で表されるエポキシ変性シリコーンからなる接着性付与剤である。
【化5】

式(1)中、mは1以上の整数を表す。nはそれぞれ1以上の整数を表す。R及びRは、それぞれ独立して、アルキル基又は芳香族基を表す。R及びRは、それぞれ独立して、ヒドロキシフェニル基、カルビノール基、カルボキシ基、アミノ基及びメルカプ
ト基からなる群から選ばれるエポキシ反応性官能基に由来する連結基を表す。
【0047】
式(1)で表されるエポキシ変性シリコーンは、エポキシ化合物を含む接着剤に対して、低温接着性を付与することができるものである。通常、エポキシ化合物100質量部に対して2~20質量部添加することで、その効果を発揮することができる。
【実施例0048】
以下、本発明を実施例に基づいてより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。
[(C)エポキシ変性シリコーン化合物の製造]
(製造例1)
温度計、滴下漏斗、撹拌機、窒素導入管、冷却管を有するセパラブルフラスコ反応器に、信越化学工業(株)製フェノール末端ポリジメチルシロキサンKF2201(水酸基当量) 40.0gおよび三菱ケミカル(株)製ビスフェノールA型エポキシ樹脂jER828US 9.6gを仕込み撹拌、120℃まで加温後、トリメチルアンモニウムクロリド0.60gを添加して1.5時間加熱撹拌を行った。得られたエポキシ変性シリコーン樹脂(C-1)は、エポキシ当量1979g/eqであった。
【0049】
(製造例2)
製造例1と同様の操作にてエポキシ変性シリコーン樹脂の反応を行ったのち、さらに120℃にて、ビスフェノールA 11.9g、ビスフェノールA型エポキシ樹脂jER828US 19.2gを追加添加してさらに1.5時間加熱撹拌を行った。このビスフェノールAおよびビスフェノールA型エポキシ樹脂の追加添加および加熱撹拌をさらに1回繰り返し行った。得られたエポキシ変性シリコーン樹脂(C-2)は、エポキシ当量4307g/eq.であった。
【0050】
(製造例3)
製造例1と同様の操作にてエポキシ変性シリコーン樹脂の反応を行ったのち、さらに120℃にて、ビスフェノールA 17.8g、ビスフェノールA型エポキシ樹脂jER828US 28.8gを追加添加してさらに1.5時間加熱撹拌を行った。このビスフェノールAおよびビスフェノールA型エポキシ樹脂の追加添加および加熱撹拌をさらに2回繰り返し行った。得られたエポキシ変性シリコーン樹脂(C-3)は、エポキシ当量5503g/eq.であった。
【0051】
[エポキシ基含有シリコーン化合物からなる接着性組成物の作製および評価]
(実施例、比較例)
(A)エポキシ化合物としてビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル(株)製
jER828)、(D)硬化剤としてジシアンジアミド(三菱ケミカル(株)製 DICY15)、硬化促進剤として3-(3,4-ジクロロフェニル)-1,1-ジメチルウレア(東京化成工業(株)製)、(B)接着助剤としてカルボキシル基末端ブタジエンニトリルゴム(ハンツマン社製 HyproCTBN)、ギャップ材として100μmシリカビーズ、および上記製造例1で製造した(C-1)エポキシ変性シリコーン樹脂を使用して、表1記載の組成にて70℃の湯浴中で混合して硬化性樹脂組成物を作製した。なお、ジシアンジアミドおよび3-(3,4-ジクロロフェニル)-1,1-ジメチルウレアはそれぞれビスフェノールA型エポキシ樹脂とともに3本ロールミル(アイメックス(株)社製 BR-100V)にて事前混錬したものを使用した。
【0052】
得られた硬化性樹脂組成物は、JIS K 6854に準拠して、被接着体として25mm幅のステンレス鋼板を使用して、それぞれ片面に硬化性樹脂組成物を塗布し、塗布面どうしを貼合した後、180℃×20分加熱硬化させたあと、23℃×50%RHにて1
2時間以上、状態調節を行ってT型剥離用試験片を作製した。
上記のT型剥離用試験片を使用して引張試験機によるT型剥離試験を23℃、-30℃各n=3にてそれぞれ実施した。はく離速度は毎分200mmとして、被着材をはく離するのに要した平均剥離力を測定した。結果を表1に示す。
【0053】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明のエポキシ樹脂及びそれを配合した本発明のエポキシ樹脂組成物は、特に低温で優れた接着性を有することから、自動車、船舶、航空、宇宙、土木、建築分野等の広範な分野において、各種金属部材、炭素繊維あるいはガラス繊維強化樹脂、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂の同種あるいは異種を接合するのに用いられる構造用接着剤として好適に使用することができ、とりわけ自動車構造用接着剤として好適に使用することができる。また、本発明の硬化性樹脂組成物は各種塗料、各種接着剤、各種成形品等の用途にも用いることができる。