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特開2024-11765ブタジエン系ゴム-変性シリコーン付加体、エポキシ樹脂組成物、硬化性樹脂組成物、硬化性樹脂組成物の硬化物、及び接着構造体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011765
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】ブタジエン系ゴム-変性シリコーン付加体、エポキシ樹脂組成物、硬化性樹脂組成物、硬化性樹脂組成物の硬化物、及び接着構造体
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/14 20060101AFI20240118BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20240118BHJP
   C08G 81/02 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
C08G59/14
C08L63/00
C08G81/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022114019
(22)【出願日】2022-07-15
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安藤 正人
【テーマコード(参考)】
4J002
4J031
4J036
【Fターム(参考)】
4J002CD011
4J002CD031
4J002CD041
4J002CD051
4J002CD061
4J002CD071
4J002CD081
4J002CD141
4J002CD202
4J002FD016
4J002FD026
4J002FD046
4J002FD076
4J002FD096
4J002FD136
4J002FD202
4J002FD342
4J002GH01
4J002GJ01
4J002GL00
4J002GN00
4J031AA23
4J031AA29
4J031AA59
4J031AB01
4J031AC03
4J031AD01
4J031AF12
4J031AF13
4J031AF19
4J036AA01
4J036AA02
4J036AA05
4J036AB10
4J036AB17
4J036AC01
4J036AC02
4J036AC03
4J036AC05
4J036AD01
4J036AD04
4J036AD07
4J036AD08
4J036AD11
4J036AD12
4J036AD21
4J036AE05
4J036AF01
4J036AF06
4J036AF17
4J036AG07
4J036AH07
4J036AH18
4J036AK17
4J036CD04
4J036DA01
4J036DB05
4J036DB06
4J036DB11
4J036DB15
4J036DB17
4J036DB21
4J036DC02
4J036DC03
4J036DC04
4J036DC05
4J036DC06
4J036DC10
4J036DC19
4J036DC21
4J036DC26
4J036DC27
4J036DC31
4J036DC35
4J036DC39
4J036DC41
4J036DD02
4J036DD07
4J036GA04
4J036GA19
4J036GA20
4J036JA01
4J036JA06
4J036JA11
(57)【要約】      (修正有)
【課題】エポキシ樹脂組成物に優れた低温接着性を付与するシリコーン化合物の提供。
【解決手段】式(1)で表されるエポキシ変性シリコーン由来の構造単位と、式(2)で表される反応性基末端ブタジエン系ゴム由来の構造単位とを含有するブタジエン系ゴム-変性シリコーン付加体。


(R及びRはエポキシ反応性官能基を有する有機基)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表されるエポキシ変性シリコーン由来の構造単位と、式(2)で表される反応性基末端ブタジエン系ゴム由来の構造単位とを含有する、ブタジエン系ゴム-変性シリコーン付加体。
【化1】

(式(1)中、mは1以上の整数を表す。nはそれぞれ1以上の整数を表す。R及びRは、それぞれ独立して、アルキル基又は芳香族基を表す。R及びRは、それぞれ独立して、ヒドロキシフェニル基、カルビノール基、カルボキシ基、アミノ基、及びメルカプト基からなる群から選ばれるエポキシ反応性官能基に由来する連結基を表す。)
【化2】

(式(2)中、pは1以上の整数を表す。qは0以上の整数を表す。R及びRは、それぞれ独立して、カルボキシ基、ヒドロキシフェニル基、カルビノール基、アミノ基、及びメルカプト基から選ばれるエポキシ反応性官能基を有する1価の有機基を表す。)
【請求項2】
前記R及びRが、メチル基である、請求項1に記載のブタジエン系ゴム-変性シリコーン付加体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のブタジエン系ゴム-変性シリコーン付加体と、エポキシ化合物とを含有する、エポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
前記エポキシ化合物100質量部に対して、前記ブタジエン系ゴム-変性シリコーン付加体を2~100質量部含有する、請求項3に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
カップリング剤、難燃性剤、酸化防止剤、光安定剤、可塑剤、反応希釈剤、顔料、無機充填材、及び有機充填材からなる群から選ばれる1種以上の添加剤を含有する、請求項3に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
請求項3に記載のエポキシ樹脂組成物と硬化剤とを含有する、硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
前記硬化剤が、多官能フェノール類、ポリイソシアネート系化合物、アミン系化合物、酸無水物系化合物、イミダゾール系化合物、アミド系化合物、メルカプタン系化合物、カチオン重合開始剤、有機ホスフィン類、有機ホスホニウム塩、及びテトラフェニルボロン塩からなる群から選ばれる少なくとも1種以上である、請求項6に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
前記エポキシ化合物100質量部に対し、前記硬化剤を0.1~1000質量部含有する、請求項6に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
請求項6に記載の硬化性樹脂組成物を硬化してなる、硬化物。
【請求項10】
被接着体と、他の被接着体とが、請求項9に記載の硬化物を介して接着されている、接着構造体。
【請求項11】
T型剥離試験(-30℃)において、前記被接着体と、前記他の被接着体との間の平均剥離強度が190N以上、最大剥離強度が350N以上である、請求項10に記載の接着構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブタジエン系ゴム-変性シリコーン付加体、エポキシ樹脂組成物、硬化性樹脂組成物、硬化性樹脂組成物の硬化物、及び接着構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂は、他の有機あるいは無機充填物を共に含むエポキシ樹脂組成物を調製し、硬化することで、半導体封止、構造材料及び各種接着、塗料など幅広い用途に使用されているが、近年、これら用途について、使用環境の観点から、耐寒性、耐熱性、耐湿熱性などの温度、湿度対応あるいはさらに耐光性を加えた耐候性に対する要望が高くなってきている。
【0003】
特に、接着用途については、近年のマルチマテリアル化に伴う異種材料の接着において、異種材料を構成する各材料の熱特性の違いにより発生するひずみの緩和とともに、低温で満足できうる接着強度、すなわち低温接着性の付与が重要になってきている。一般的に、エポキシ樹脂は、実用時に硬化処理を行うが、その硬化物は、硬くて脆い性質を有するため、特に低温にて十分な接着強度の確保が難しい。そこで、一般的には、カルボキシ末端ブタジエンアクリロニトリルエラストマーに代表される有機エラストマーやコアシェル構造を有するゴムなどを添加したエポキシ樹脂組成物にて接着力を付与している。
【0004】
ここで、高分子設計の観点から考えると、低温接着性を担保すべく必要な構造としては、低温においても分子運動が凍結しないことがあげられ、その観点から、上記の有機エラストマーやゴムにおいては、低温の度合いによっては運動が凍結されることから低温接着性は十分とは言えない。そこで、ジメチルシロキサンに代表されるシリコーン構造が着目されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-008145号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、シルセスキオキサンなどの種々のシリコーン構造を用いることで、耐熱性、接着性の確保を試みているが、低温での接着性については言及されていない。一般的に、シリコーン化合物については、低温での運動性を確保する構造を取るほど、逆に表面エネルギーが低くなるため必要な接着力の確保が難しいため、エポキシ組成物へのシリコーン化合物の導入による低温接着への適用は一般的にはほとんどなされていない。
【0007】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑みてなされたものである。即ち、本発明の課題は、エポキシ樹脂組成物に優れた低温接着性を付与することのできるシリコーン化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、両末端にエポキシ基を有するシリコーンと両末端に反応性基を有するブタジエン系ゴムとの付加体をエポキシ樹脂組成物に含有させることにより、接着において必要な表面エネルギーを確保しつつ、シリコーン化合物特有の優れた低温特性が発揮され、エポキシ樹脂組成物の低温接着性が特異的
に向上することを見出し、発明の完成に至った。
即ち、本発明の要旨は以下の[1]~[11]に存する。
【0009】
[1]
式(1)で表されるエポキシ変性シリコーン由来の構造単位と、式(2)で表される反応性基末端ブタジエン系ゴム由来の構造単位とを含有する、ブタジエン系ゴム-変性シリコーン付加体。
【化1】

(式(1)中、mは1以上の整数を表す。nはそれぞれ1以上の整数を表す。R及びRは、それぞれ独立して、アルキル基又は芳香族基を表す。R及びRは、それぞれ独立して、ヒドロキシフェニル基、カルビノール基、カルボキシ基、アミノ基、及びメルカプト基からなる群から選ばれるエポキシ反応性官能基に由来する連結基を表す。)
【化2】

(式(2)中、pは1以上の整数を表す。qは0以上の整数を表す。R及びRは、それぞれ独立して、カルボキシ基、ヒドロキシフェニル基、カルビノール基、アミノ基、及びメルカプト基から選ばれるエポキシ反応性官能基を有する1価の有機基を表す。)
[2]
前記R及びRが、メチル基である、[1]に記載のブタジエン系ゴム-変性シリコーン付加体。
[3]
[1]又は[2]に記載のブタジエン系ゴム-変性シリコーン付加体と、エポキシ化合物とを含有する、エポキシ樹脂組成物。
[4]
前記エポキシ化合物100質量部に対して、前記ブタジエン系ゴム-変性シリコーン付加体を2~100質量部含有する、[3]に記載のエポキシ樹脂組成物。
[5]
カップリング剤、難燃性剤、酸化防止剤、光安定剤、可塑剤、反応希釈剤、顔料、無機充填材、及び有機充填材からなる群から選ばれる1種以上の添加剤を含有する、[3]又は[4]に記載のエポキシ樹脂組成物。
[6]
[3]~[5]のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物と硬化剤とを含有する、硬化性樹脂組成物。
[7]
前記硬化剤が、多官能フェノール類、ポリイソシアネート系化合物、アミン系化合物、酸無水物系化合物、イミダゾール系化合物、アミド系化合物、メルカプタン系化合物、カ
チオン重合開始剤、有機ホスフィン類、有機ホスホニウム塩、及びテトラフェニルボロン塩からなる群から選ばれる少なくとも1種以上である、[6]に記載の硬化性樹脂組成物。
[8]
前記エポキシ化合物100質量部に対し、前記硬化剤を0.1~1000質量部含有する、[6]又は[7]に記載の硬化性樹脂組成物。
[9]
[6]~[8]のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物を硬化してなる、硬化物。
[10]
被接着体と、他の被接着体とが、[9]に記載の硬化物を介して接着されている、接着構造体。
[11]
T型剥離試験(-30℃)において、前記被接着体と、前記他の被接着体との間の平均剥離強度が190N以上、最大剥離強度が350N以上である、[10]に記載の接着構造体。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、エポキシ樹脂組成物に優れた低温接着性を付与することのできる化合物を提供することができる。また、本発明によれば、当該化合物を含む、低温接着性に優れたエポキシ樹脂組成物を提供することができる。さらに、当該エポキシ樹脂組成物を含む硬化性樹脂組成物、当該硬化性樹脂組成物の硬化物、当該硬化物により接着された接着構造体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔ブタジエン系ゴム-変性シリコーン付加体〕
本発明の第1の実施形態は、ブタジエン系ゴム-変性シリコーン付加体である。該ブタジエン系ゴム-変性シリコーン付加体は、式(1)で表されるエポキシ変性シリコーン(以下、単に「エポキシ変性シリコーン」と称することがある。)と式(2)で表される反応性基末端ブタジエン系ゴム(以下、単に「反応性基末端ブタジエン系ゴム」と称することがある。)との付加体であって、エポキシ変性シリコーン由来の構造単位と、反応性基末端ブタジエン系ゴム由来の構造単位とを有する。なお、式(2)において、qが1以上の整数である場合、ブタジエン-アクリロニトリル共重合体部位は、ブタジエンとアクリロニトリルがランダム又は交互に配列したものであってもよく、ポリブタジエンユニットとポリアクリロニトリルユニットとを連結したものであってもよいが、好ましくは後者である。
【0012】
【化3】
【0013】
【化4】
【0014】
式(1)中、mは1以上の整数を表す。mは、平均として、通常3以上、好ましくは10以上であり、また、通常100以下、好ましくは50以下である。mがこの範囲内にあることにより、エポキシ樹脂組成物への相溶性が良好で、エポキシ樹脂組成物に充分な低温接着性を付与できるブタジエン系ゴム-変性シリコーン付加体を製造することが可能となる。
【0015】
式(1)中、nはそれぞれ1以上の整数を表し、複数のnは同じであってもよく、異なっていてもよい。nは平均として、好ましくは50以下である。nがこの範囲内にあることで、エポキシ変性シリコーン自体の流動性が良好となり、ブタジエン系ゴム-変性シリコーン付加体の製造が容易になる。
【0016】
式(1)中、R及びRは、それぞれ独立して、アルキル基又は芳香族基を表す。このうち、R及びRのうち少なくとも1つがアルキル基であることが好ましく、アルキル基の中でも、炭素数1~4のアルキル基がより好ましく、メチル基であることが更により好ましい。また、RとRが共にアルキル基であることがより好ましく、共にメチル基であることがさらに好ましい。
【0017】
式(1)中、R及びRは、それぞれ独立して、ヒドロキシフェニル基、カルビノール基、カルボキシ基、アミノ基、及びメルカプト基からなる群から選ばれるエポキシ反応性官能基に由来する連結基を表す。これらのうち、R及びRは、ヒドロキシフェニル基に由来する連結基であることが好ましい。
【0018】
エポキシ変性シリコーンのエポキシ当量は、JIS K 7236により測定された値で、500~10000g/eqであることが好ましく、1500~5000g/eqであることがより好ましく、1500~4500g/eqであることが特に好ましい。エポキシ変性シリコーンのエポキシ当量が上記範囲内であることによって、ブタジエン系ゴム-変性シリコーン付加体の製造容易性、該付加体を含むエポキシ樹脂組成物の製造容易性、及びエポキシ樹脂組成物のハンドリングに優れる。さらに、該エポキシ樹脂組成物を硬化処理して得られる硬化物は、低温接着性に優れたモルフォロジーをとることができる。
【0019】
式(2)中、pは1以上の整数を表す。pは、平均として、好ましくは5以上、より好ましくは15以上であり、また、好ましくは250以下、より好ましくは200以下である。
【0020】
式(2)中、qは0以上の整数を表す。qは、平均として、好ましくは1以上、より好ましくは2以上であり、また、好ましくは100以下、より好ましくは80以下である。
【0021】
式(2)中、R及びRは、それぞれ独立して、カルボキシ基、ヒドロキシフェニル基、カルビノール基、アミノ基、及びメルカプト基から選ばれるエポキシ反応性官能基を有する1価の有機基を表す。これらのうち、R及びRは、カルボキシ基を有する1価の有機基であることが好ましく、すなわち、反応性基末端ブタジエン系ゴムは、カルボキシ末端ブタジエン系ゴムであることが好ましい。カルボキシ末端ブタジエン系ゴムとエポ
キシ変性シリコーンとの付加体をエポキシ樹脂組成物に含有させると、エポキシ樹脂組成物の低温接着性を向上することができるからである。
【0022】
ブタジエン系ゴム-変性シリコーン付加体は、エポキシ樹脂組成物に含有させると、エポキシ変性シリコーン由来の構造単位に基づく低温特性が発揮され、エポキシ樹脂組成物の低温接着性を向上させることができる。さらに、エポキシ変性シリコーンのみでは表面エネルギーが低いところ、本実施形態に係るブタジエン系ゴム-変性シリコーン付加体は、反応性基末端ブタジエン系ゴム由来の構造単位を有することにより、接着に十分な表面エネルギーを確保することができる。
【0023】
〔ブタジエン系ゴム-変性シリコーン付加体の製造方法〕
ブタジエン系ゴム-変性シリコーン付加体は、式(1)で表されるエポキシ変性シリコーンと式(2)で表される反応性基末端ブタジエン系ゴムとの付加反応を行う反応工程を含む方法により製造される。反応工程は、これらの化合物の付加反応が生じる限り特に限定されず、公知の付加反応又は公知の付加反応に準じた反応を適宜選択して採用すればよい。
【0024】
反応工程における付加反応は、触媒の存在下で行ってもよい。触媒としては、通常、アドバンス法の触媒として用いられるものであれば特に制限されず、例えば、アルカリ金属化合物、有機リン化合物、第3級アミン、第4級アンモニウム塩、環状アミン類、イミダゾール類等が挙げられる。触媒は、1種のみで用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
アルカリ金属化合物の具体例としては、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化リチウム、塩化カリウム等のアルカリ金属塩;ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド等のアルカリ金属アルコキシド;アルカリ金属フェノキシド、水素化ナトリウム、水素化リチウム等のアルカリ金属の水素化物;酢酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム等の有機酸アルカリ金属塩等が挙げられる。
【0026】
有機リン化合物の具体例としては、トリフェニルホスフィン、トリ-o-トリルホスフィン、トリ-m-トリルホスフィン、トリ-p-トリルホスフィン、トリ-2,4-キシリルホスフィン、トリ-2,5-キシリルホスフィン、トリ-3,5-キシリルホスフィン、トリス(p-tert-ブチルフェニル)ホスフィン、トリス(p-メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(p-tert-ブトキシフェニル)ホスフィン、トリ(p-n-オクチルフェニル)ホスフィン、トリ(p-n-ノニルフェニル)ホスフィン、トリアリルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリメチルホスフィン、トリベンジルホスフィン、トリイソブチルホスフィン、トリ-tert-ブチルホスフィン、トリ-n-オクチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリ-n-プロピルホスフィン、ジ-t-ブチルメチルホスフィン、トリ-n-ブチルホスフィン、シクロヘキシルジ-tert-ブチルホスフィン、ジエチルフェニルホスフィン、ジ-n-ブチルフェニルホスフィン、ジ-tert-ブチルフェニルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、エチルジフェニルホスフィン、ジフェニルプロピルホスフィン、イソプロピルジフェニルホスフィン、シクロヘキシルジフェニルホスフィン等の有機ホスフィン類;テトラメチルホスホニウムブロマイド、テトラメチルホスホニウムアイオダイド、テトラメチルホスホニウムハイドロオキサイド、トリメチルシクロヘキシルホスホニウムクロライド、トリメチルシクロヘキシルホスホニウムブロマイド、トリメチルベンジルホスホニウムクロライド、トリメチルベンジルホスホニウムブロマイド、テトラフェニルホスホニウムブロマイド、トリフェニルメチルホスホニウムブロマイド、トリフェニルメチルホスホニウムアイオダイド、トリフェニルエチルホスホニウムクロライド、トリフェニルエチルホスホニウムブロマイ
ド、トリフェニルエチルホスホニウムアイオダイド、トリフェニルベンジルホスホニウムクロライド、トリフェニルベンジルホスホニウムブロマイド等の有機ホスホニウム塩等が挙げられる。
【0027】
第3級アミン類の具体例としては、トリエチルアミン、トリ-n-プロピルアミン、トリ-n-ブチルアミン、トリエタノールアミン、ベンジルジメチルアミン等が挙げられる。
【0028】
第4級アンモニウム塩の具体例としては、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、トリエチルメチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラエチルアンモニウムアイオダイド、テトラプロピルアンモニウムブロマイド、テトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラブチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムアイオダイド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロマイド、ベンジルトリメチルアンモニウムハイドロオキサイド、ベンジルトリブチルアンモニウムクロライド、フェニルトリメチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
【0029】
環状アミン類の具体例としては、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-7-ウンデセン、1,5-ジアザビシクロ(4,3,0)-5-ノネン等が挙げられる。
【0030】
イミダゾール類の具体例としては、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール等が挙げられる。
【0031】
なお、エポキシ変性シリコーン及び反応性基末端ブタジエン系ゴムの製造方法は特に限定されず、公知の方法を用いて合成することができる
【0032】
〔エポキシ樹脂組成物〕
本発明の第2の実施形態は、上記ブタジエン系ゴム-変性シリコーン付加体と、エポキシ化合物とを含有するエポキシ樹脂組成物である。本実施形態に係るエポキシ樹脂組成物は、上記ブタジエン系ゴム-変性シリコーン付加体を含有することにより、接着に必要な表面エネルギー及び優れた低温接着性を示す。
【0033】
[ブタジエン系ゴム-変性シリコーン付加体]
本実施形態に係るエポキシ樹脂組成物に含まれるブタジエン系ゴム-変性シリコーン付加体は、本発明の第1の実施形態に係るブタジエン系ゴム-変性シリコーン付加体である。上述したように、エポキシ樹脂組成物に該ブタジエン系ゴム-変性シリコーン付加体を含有させることにより、接着において必要な表面エネルギーを確保しつつ、シリコーン化合物特有の優れた低温特性が発揮され、エポキシ樹脂組成物の低温接着性を向上することができる。
【0034】
ブタジエン系ゴム-変性シリコーン付加体の配合量は、特に限定されるものではなく、エポキシ化合物100質量部に対して、好ましくは2質量部以上であり、より好ましくは20質量部以上、さらに好ましくは50質量部以上であり、また、好ましくは1000質量部以下、より好ましくは500質量部以下、さらに好ましくは200質量部以下である。
【0035】
[エポキシ化合物]
エポキシ化合物とは、分子内に2個以上のエポキシ基を有する化合物である。分子内に
2個のエポキシ基を有する2官能エポキシ化合物であってもよく、分子内に3個のエポキシ基を有する3官能エポキシ化合物であってもよい。好ましくは、2官能エポキシ化合物である。
【0036】
2官能エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールEジグリシジルエーテル、ビスフェノールZジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、ビスフェノールADジグリシジルエーテル、ビスフェノールアセトフェノンジグリシジルエーテル、ビスフェノールトリメチルシクロヘキサンジグリシジルエーテル、ビスフェノールフルオレンジグリシジルエーテル、テトラメチルビスフェノールAジグリシジルエーテル、テトラメチルビスフェノールFジグリシジルエーテル、テトラ-t-ブチルビスフェノールAジグリシジルエーテル、テトラメチルビスフェノールSジグリシジルエーテル等のビスフェノール系ジグリシジルエーテル類;ビフェノールジグリシジルエーテル、テトラメチルビフェノールジグリシジルエーテル、ジメチルビフェノールジグリシジルエーテル、テトラ-t-ブチルビフェノールジグリシジルエーテル等のビフェノール系ジグリシジルエーテル類;ハイドロキノンジグリシジルエーテル、ジヒドロアントラセンジグリシジルエーテル、メチルハイドロキノンジグリシジルエーテル、ジブチルハイドロキノンジグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、メチルレゾルシンジグリシジルエーテル等のベンゼンジオール系ジグリシジルエーテル類;ジヒドロアントラハイドロキノンジグリシジルエーテル、ジヒドロキシジフェニルエーテルジグリシジルエーテル、チオジフェノールジグリシジルエーテル、ジヒドロキシナフタレンジグリシジルエーテル等の芳香族系ジグリシジルエーテル類;前記ビスフェノール系ジグリシジルエーテル類、ビフェノール系ジグリシジルエーテル類、ベンゼンジオール系ジグリシジルエーテル類及び芳香族系ジグリシジルエーテル類から選ばれるジグリシジルエーテル類の芳香環に水素を添加したエポキシ化合物;アジピン酸、コハク酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ビフェニルジカルボン酸、ダイマー酸等の種々のカルボン酸類と、エピハロヒドリンとから製造されるエポキシ樹脂;エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、1,5-ペンタンジオールジグリシジルエーテル、ポリペンタメチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリヘキサメチレングリコールジグリシジルエーテル、1,7-ヘプタンジオールジグリシジルエーテル、ポリヘプタメチレングリコールジグリシジルエーテル、1,8-オクタンジオールジグリシジルエーテル、1,10-デカンジオールジグリシジルエーテル、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオールジグリシジルエーテル等の鎖状構造のみからなる(ポリ)アルキレングリコールジグリシジルエーテル類;1,4-シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル等の環状構造を有するアルキレングリコールジグリシジルエーテル類等が挙げられる。
【0037】
3官能以上のエポキシ化合物としては、例えば、以下のものが挙げられる。なお、以下の例示において、「・・・型エポキシ樹脂」とは、水酸基がグリシジルエーテル基で置換されたものをいう。即ち、例えば、「4,4’,4”-トリヒドロキシトリフェニルメタン型エポキシ樹脂」は、「4,4’,4”-トリヒドロキシトリフェニルメタン」の水酸基がグリシジルエーテルで置換されたものをさす。
【0038】
α,α-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-(4-ヒドロキシ―α,α-ジメチルベンジル)-エチルベンゼン型エポキシ樹脂、4,4’,4”-トリヒドロキシトリフェニルメタン型エポキシ樹脂、4,4’,4”-エチリジントリス(2-メチルフェノール)型エポキシ樹脂、4,4’-(2-ヒドロキシベンジリデン)ビス(2,3,6-トリ
メチルフェノール)型エポキシ樹脂、2,3,4-トリヒドロキシジフェニルメタン型エポキシ樹脂、2,4,6-トリス(4-ヒドロキシフェニル)-1,3,5-トリアジン型エポキシ樹脂、1,3,5-トリス(4-ヒドロキシフェニル)ベンゼン型エポキシ樹脂、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン型エポキシ樹脂、4,4’-[1-[4-[1-(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)-1-メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビス(2-メチルフェノール)型エポキシ樹脂、2,6-ビス(4-ヒドロキシ―3,5-ジメチルベンジル)-4-メチルフェノール型エポキシ樹脂等の3官能エポキシ樹脂類;2,2’-メチレンビス[6-(2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-p-クレゾール型エポキシ樹脂、4-[ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)メチル]ベンゼン-1,2-ジオール型エポキシ樹脂、1,1,2,2-テトラキス(p-ヒドロキシフェニル)エタン型エポキシ樹脂、α,α,α’,α”-テトラキス(4-ヒドロキシフェニル)-p-キシレン型エポキシ樹脂等の4官能エポキシ樹脂類;2,4,6-トリス[(4-ヒドロキシフェニル)メチル]-1,3-ベンゼンジオール型エポキシ樹脂等の5官能エポキシ樹脂類;ジアミノジフェニルメタン、アミノフェノール、キシレンジアミン等の種々のアミン化合物と、エピハロヒドリンとから製造されるエポキシ化合物;脂肪族ポリオールと、エピハロヒドリンから製造されるエポキシ化合物;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、フェノール変性キシレン型エポキシ樹脂や、これら種々のフェノール類と、ヒドロキシベンズアルデヒド、クロトンアルデヒド、グリオキザール等の種々のアルデヒド類との縮合反応で得られる多価フェノール樹脂類、重質油又はピッチ類とフェノール類とホルムアルデヒド類との共縮合樹脂等の各種のフェノール系化合物等を使用したエポキシ樹脂等の多官能エポキシ樹脂類が挙げられる。
【0039】
エポキシ化合物については、これらのうち、好ましくはビスフェノール系ジグリシジルエーテル類であり、中でもビスフェノールAジグリシジルエーテルがより好ましい。
また、2官能エポキシ化合物及び3官能以上のエポキシ化合物を1種又は複数種を組み合わせて使用することもできる。
【0040】
〔エポキシ樹脂組成物の製造方法〕
エポキシ樹脂組成物の製造方法は、上記ブタジエン系ゴム-変性シリコーン付加体及び上記エポキシ化合物を混錬することで、得ることができる。
また、この際に、通常は硬化剤を配合させることで、硬化性樹脂組成物とすることができる。
【0041】
[硬化剤]
硬化性樹脂組成物に含有させる硬化剤は、エポキシ化合物のエポキシ基間の架橋反応及び/又は鎖長延長反応に寄与する物質である。なお、本明細書においては通常、「硬化促進剤」と呼ばれるものであってもエポキシ化合物のエポキシ基間の架橋反応及び/又は鎖長延長反応に寄与する物質であれば、硬化剤とみなすこととする。
【0042】
硬化剤としては、多官能フェノール類、ポリイソシアネート系化合物、アミン系化合物、酸無水物系化合物、イミダゾール系化合物、アミド系化合物、メルカプタン系化合物、カチオン重合開始剤、有機ホスフィン類、有機ホスホニウム塩、及びテトラフェニルボロン塩からなる群のうちの少なくとも1つを用いることが好ましい。
【0043】
多官能フェノール類の例としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビスフェノールB、ビスフェノールAD、ビスフェノールZ、テトラブロモビスフェノールA等のビスフェノール類、4,4’-ビフェノール、3,3’,5,5’-テ
トラメチル-4,4’-ビフェノール等のビフェノール類;カテコール、レゾルシン、ヒドロキノン、ジヒドロキシナフタレン類;及びこれらの化合物の芳香環に結合した水素原子がハロゲン基、アルキル基、アリール基、エーテル基、エステル基、硫黄、リン、珪素等のヘテロ元素を含む有機置換基等の非妨害性置換基で置換されたもの等が挙げられる。
更に、これらのフェノール類やフェノール、クレゾール、アルキルフェノール等の単官能フェノール類とアルデヒド類の重縮合物であるノボラック類、レゾール類等が挙げられる。
【0044】
ポリイソシアネート系化合物の例としては、トリレンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジントリイソシアネート等のポリイソシアネート化合物が挙げられる。更に、これらのポリイソシアネート化合物と、アミノ基、水酸基、カルボキシ基、水等の活性水素原子を少なくとも2個有する化合物との反応により得られるポリイソシアネート化合物、又は前記のポリイソシアネート化合物の3~5量体等を挙げることができる。
【0045】
アミン系化合物の例としては、脂肪族の一級、二級、三級アミン、芳香族の一級、二級、三級アミン、環状アミン、グアニジン類、尿素誘導体等があり、具体的には、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルエーテル、メタキシレンジアミン、ジシアンジアミド、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-7-ウンデセン、1,5-ジアザビシクロ(4,3,0)-5-ノネン、ジメチル尿素、グアニル尿素等が挙げられる。
【0046】
酸無水物系化合物の例としては、無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水マレイン酸と不飽和化合物の縮合物等が挙げられる。
【0047】
イミダゾール系化合物の例としては、1-イソブチル-2-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、ベンズイミダゾール等が挙げられる。なお、イミダゾール系化合物は後述する硬化促進剤としての機能も果たすが、本明細書においては硬化剤に分類するものとする。
【0048】
アミド系化合物の例としては、ジシアンジアミド及びその誘導体、ポリアミド樹脂等が挙げられる。
【0049】
カチオン重合開始剤は、熱又は活性エネルギー線照射によってカチオンを発生するものであり、芳香族オニウム塩等が挙げられる。具体的には、SbF 、BF 、AsF 、PF 、CFSO 2-、B(C 等のアニオン成分とヨウ素、硫黄、窒素、リン等の原子を含む芳香族カチオン成分とからなる化合物等が挙げられる。
【0050】
有機ホスフィン類の例としては、トリブチルホスフィン、メチルジフェニルホスフイン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルホスフィン、フェニルホスフィン等が挙げられる。
【0051】
有機ホスホニウム塩の例としては、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウム・エチルトリフェニルボレート、テトラブチルホスホニウム・テトラブチルボレート等が挙げられる。
【0052】
テトラフェニルボロン塩の例としては、2-エチル-4-メチルイミダゾール・テトラフェニルボレート、N-メチルモルホリン・テトラフェニルボレート等が挙げられる。
【0053】
以上に挙げた硬化剤の他、有機酸ジヒドラジド、ハロゲン化ホウ素アミン錯体等も硬化剤として用いることができる。
上記の硬化剤のうち、潜在性を有するジシアンジアミドが好適に用いられるが、各々1種を用いてもよく、同種又は異種のものを2種以上組み合わせて用いてもよい。
硬化剤の配合量は特に限定されるものではなく、エポキシ化合物100質量部に対して、通常0.1質量部以上であり、0.5質量部以上であることが好ましく、また、通常1000質量部以下であり、500質量部以下であることが好ましい。
【0054】
硬化剤として多官能フェノール類、アミン系化合物、酸無水物系化合物を用いる場合は、エポキシ樹脂組成物中の全エポキシ基に対する硬化剤中の官能基(多官能フェノール類の水酸基、アミン系化合物のアミノ基又は酸無水物系化合物の酸無水物基)の当量比で0.8~1.5の範囲となるように用いることが好ましい。ポリイソシアネート系化合物を用いる場合、エポキシ樹脂組成物中の水酸基数に対してポリイソシアネート系化合物中のイソシアネート基数が、当量比で1:0.01~1:1.5の範囲で用いることが好ましい。イミダゾール系化合物を用いる場合、エポキシ樹脂組成物中の固形分としての全エポキシ樹脂成分100質量部に対して0.5~10質量部の範囲で用いることが好ましい。アミド系化合物を用いる場合、エポキシ樹脂組成物中の固形分としての全エポキシ樹脂成分とアミド系化合物との合計量に対して0.1~20質量%の範囲で用いることが好ましい。カチオン重合開始剤を用いる場合、エポキシ樹脂組成物中の固形分としての全エポキシ樹脂成分100質量部に対し、0.01~15質量部の範囲で用いることが好ましい。有機ホスフィン類を用いる場合、エポキシ樹脂組成物中の固形分としての全エポキシ樹脂成分と有機ホスフィン類との合計量に対して0.1~20質量%の範囲で用いることが好ましい。
【0055】
[その他の成分]
硬化性樹脂組成物には、以上に挙げた成分の他にその他の成分を含有することができる。その他の成分としては例えば、硬化促進剤(ただし、前記硬化剤に該当するものを除く。)、カップリング剤、難燃性剤、酸化防止剤、光安定剤、可塑剤、反応性希釈剤、顔料、無機充填材、有機充填材等が挙げられる。以上に挙げたその他の成分は硬化性樹脂組成物の所望の物性により適宜組み合わせて用いることができる。
その他の成分については、本発明の効果を阻害しない範囲で含有させることができるが、その含有量は、エポキシ化合物100質量部に対し、通常10質量部以下であり、5質量部以下であることが好ましい。
【0056】
〔硬化物〕
硬化性樹脂組成物を硬化させることにより、硬化物を得ることができる。ここでいう「硬化」とは熱及び/又は光等によりエポキシ化合物を意図的に硬化させることを意味するものであり、その硬化の程度は所望の物性、用途により制御すればよい。
硬化物とする際の硬化性樹脂組成物の硬化方法は、硬化性樹脂組成物中の配合成分や配合量、配合物の形状によっても異なるが、通常、50~200℃で5秒~180分の加熱条件が挙げられる。
【0057】
〔用途〕
エポキシ樹脂組成物を含む硬化性樹脂組成物は、特に低温で優れた接着性を有することから、自動車、船舶、航空、宇宙、土木、建築分野等の広範な分野において、各種金属部材、炭素繊維あるいはガラス繊維強化樹脂、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂の同種あるいは異種を接合するのに用いられる構造用接着剤として好適に使用することができ、とりわけ自
動車構造用接着剤として好適に使用することができる。また、硬化性樹脂組成物は各種塗料、各種接着剤、各種成形品等の用途にも用いることができる。
【0058】
[接着構造体]
上記硬化性樹脂組成物を接着剤として用いることで、被接着体と、他の被接着体とが、上記硬化性樹脂組成物の硬化物を介して接着されている、接着構造体を得ることができる。
上記硬化性樹脂組成物により接着された接着構造体は、被接着体と、他の被接着体との間の平均剥離強度が190N以上であることが好ましく、最大剥離強度が350N以上であることが好ましい。
平均剥離強度及び最大剥離強度は、引張試験機によるT型剥離試験(-30℃)により測定した剥離強度であり、その方法は、JIS K 6854に準じて行われる。
【実施例0059】
以下、本発明を実施例に基づいてより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。
【0060】
〔ブタジエン系ゴム-変性シリコーン付加体の製造〕
(製造例1)エポキシ変性シリコーンの製造
温度計、滴下漏斗、撹拌機、窒素導入管、冷却管を有するセパラブルフラスコ反応器に、信越化学工業(株)製フェノール末端ポリジメチルシロキサンKF2201(水酸基当量)40.0g及び三菱ケミカル(株)製ビスフェノールA型エポキシ樹脂jER828US 9.6gを仕込み撹拌、120℃まで加温後、テトラメチルアンモニウムクロリド0.60gを添加して1.5時間加熱撹拌を行った。得られたエポキシ変性シリコーン(B-1)は、エポキシ当量1979g/eqであった。
【0061】
(製造例2)ブタジエン系ゴム-変性シリコーン付加体の製造
温度計、滴下漏斗、撹拌機、窒素導入管、冷却管を有するセパラブルフラスコ反応器に、製造例1で作製したエポキシ変性シリコーン30g、カルボキシ基末端ブタジエンニトリルゴム(ハンツマン社製 HyproCTBN)55.6g及びテトラメチルアンモニウムクロリド0.70gを仕込んで、120℃で7時間加熱撹拌することで、ブタジエン系ゴム-変性シリコーン付加体(B-2)を製造した。
【0062】
〔ブタジエン系ゴム-変性シリコーン付加体を含有するエポキシ樹脂組成物の作製及び評価〕
(実施例1~3)
エポキシ化合物としてビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル(株)製 jER828)、硬化剤としてジシアンジアミド(三菱ケミカル(株)製 DICY15)、硬化促進剤として3-(3,4-ジクロロフェニル)-1,1-ジメチルウレア(東京化成工業(株)製)、ギャップ材として100μmシリカビーズ及び製造例2で得たブタジエン系ゴム-変性シリコーン付加体を使用して表1記載の組成にて70℃の湯浴中で混合して、エポキシ樹脂組成物を含む硬化性樹脂組成物を作製した。なお、ジシアンジアミド及び3-(3,4-ジクロロフェニル)-1,1-ジメチルウレアはそれぞれビスフェノールA型エポキシ樹脂とともに3本ロールミル(アイメックス(株)社製 BR-100V)にて事前混錬したものを使用した。
【0063】
JIS K 6854に準拠して、この硬化性樹脂組成物と被着材として25mm幅のステンレス鋼板を使用して、それぞれ片面に硬化性樹脂組成物を塗布し、塗布面どうしを貼合した後、180℃×20分加熱硬化させたあと、23℃×50%RHにて12時間以上、状態調節を行ってT型剥離用試験片を作製した。
上記のT型剥離用試験片を使用して引張試験機によるT型剥離試験を23℃、-30℃各n=3にてそれぞれ実施した。剥離速度は毎分200mmとして、被着材を剥離するのに要した平均剥離力を測定した。結果を表1に示す。
【0064】
(比較例1~4)
硬化性樹脂組成物の組成を表1記載の通りに変更した以外は、実施例1~3と同様にして硬化性樹脂組成物を作製し、23℃及び-30℃における平均剥離力を測定した。結果を表1に示す。
【0065】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明のブタジエン系ゴム-変性シリコーン付加体を配合したエポキシ樹脂組成物は、特に低温で優れた接着性を有することから、自動車、船舶、航空、宇宙、土木、建築分野等の広範な分野において、各種金属部材、炭素繊維あるいはガラス繊維強化樹脂、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂等を接合するのに用いられる構造用接着剤として好適に使用することができ、とりわけ自動車構造用接着剤として好適に使用することができる。また、該エポキシ樹脂組成物は、従来のエポキシ樹脂組成物では達成し得なかった異種材料間の接着、特に低温環境下での異種材料間の接着に好適に使用することができる。
さらに、本発明のエポキシ樹脂組成物は各種塗料、各種接着剤、各種成形品等の用途にも用いることができる。