(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011771
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】可食性組成物及びマスキング方法
(51)【国際特許分類】
A23L 5/00 20160101AFI20240118BHJP
A23L 33/105 20160101ALI20240118BHJP
A23L 33/15 20160101ALI20240118BHJP
A23L 33/17 20160101ALI20240118BHJP
A23L 33/175 20160101ALI20240118BHJP
A23L 33/18 20160101ALI20240118BHJP
A23L 33/185 20160101ALI20240118BHJP
A23L 33/19 20160101ALI20240118BHJP
A23L 33/10 20160101ALI20240118BHJP
A23L 27/00 20160101ALI20240118BHJP
【FI】
A23L5/00 K
A23L33/105
A23L33/15
A23L33/17
A23L33/175
A23L33/18
A23L33/185
A23L33/19
A23L33/10
A23L27/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022114031
(22)【出願日】2022-07-15
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和3年7月19日 https://www.fld.caa.go.jp/caaks/cssc02/?recordSeq=42204250730301 令和4年1月7日 https://www.morinaga.co.jp/company/newsrelease/detail.php?no=2131 令和4年1月13日 https://www.morinaga.co.jp/direct-store/products/list.php?category_id=244 令和4年1月13日 https://paypaymall.yahoo.co.jp/store/morinagaseika/item/raz32001/ 令和4年1月13日 https://item.rakuten.co.jp/morinaga/c/0000000111/ 令和4年1月13日 https://www.amazon.co.jp/dp/B09Q87TS4G 令和4年1月19日 テレビ和歌山 生島ヒロシの健康マニア倶楽部 令和4年2月1日 https://www.morinaga.co.jp/direct-store/lp_hkc/mlp_hc01.php
(71)【出願人】
【識別番号】000006116
【氏名又は名称】森永製菓株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【弁理士】
【氏名又は名称】春田 洋孝
(72)【発明者】
【氏名】西村 雅明
(72)【発明者】
【氏名】堀内 麻衣
【テーマコード(参考)】
4B018
4B035
4B047
【Fターム(参考)】
4B018MD02
4B018MD08
4B018MD19
4B018MD20
4B018MD23
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4B047LP01
4B047LP02
(57)【要約】
【課題】機能性素材に起因する不快味及び/又は不快臭が低減された、機能性素材を含む可食性組成物の提供。
【解決手段】機能性素材と、デキストリン当量が10以上のデキストリンと、を含み、前記機能性素材が、コラーゲン、プロテオグリカン、コラーゲン-プロテオグリカン複合体、コラーゲンペプチド、大豆タンパク、大豆ペプチド、乳ペプチド、アミノ酸、ビタミン及び茶カテキンからなる群から選択される少なくとも1種である、可食性組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機能性素材と、デキストリン当量が10以上のデキストリンと、を含み、
前記機能性素材が、コラーゲン、プロテオグリカン、コラーゲン-プロテオグリカン複合体、コラーゲンペプチド、大豆タンパク、大豆ペプチド、乳ペプチド、アミノ酸、ビタミン及び茶カテキンからなる群から選択される少なくとも1種である、可食性組成物。
【請求項2】
前記機能性素材が鮭鼻軟骨由来II型非変性コラーゲン-プロテオグリカン複合体である、請求項1に記載の可食性組成物。
【請求項3】
前記デキストリン当量が10以上のデキストリンはデキストリン当量が15以上のデキストリンである、請求項1又は2に記載の可食性組成物。
【請求項4】
機能性素材と、デキストリン当量が10以上のデキストリンと、を混合する工程を備え、
前記機能性素材が、コラーゲン、プロテオグリカン、コラーゲン-プロテオグリカン複合体、コラーゲンペプチド、大豆タンパク、大豆ペプチド、乳ペプチド、アミノ酸、ビタミン及び茶カテキンからなる群から選択される少なくとも1種である、
前記機能性素材に起因する不快味又は不快臭のマスキング方法。
【請求項5】
前記機能性素材が鮭鼻軟骨由来II型非変性コラーゲン-プロテオグリカン複合体である、請求項4に記載のマスキング方法。
【請求項6】
前記デキストリン当量が10以上のデキストリンはデキストリン当量が15以上のデキストリンである、請求項4又は5に記載のマスキング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可食性組成物及びマスキング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の健康志向に伴い、抗酸化作用、血糖値抑制作用、代謝活性作用といった各種機能性を有する飲食品、医薬品等の可食性組成物が求められてきている。しかし、可食性組成物に付加価値を与える機能性素材は、不快な臭いや味を有することがあり、不快味又は不快臭の低減が求められている。
【0003】
特許文献1には、機能性素材及び以下の性質(a)~(c)を有するデキストリンを含有することを特徴とする機能性素材に起因する不快味が低減された可食性組成物、並びに機能性素材を含有する可食性組成物に以下の性質(a)~(c)を有するデキストリンを含有させることを特徴とする、機能性素材に起因する可食性組成物の不快味をマスキングする方法が記載されている。
(a)馬鈴薯を原料とする、(b)DE(デキストロース当量)が2以上6以下である、(c)25℃の蒸留水で調製したデキストリン30質量%水溶液を、25℃で5分間静置した時の粘度が150mPa・s以下である。
また、特許文献1には、デキストリンのDEが6を大きく超える場合には、可食性組成物における不快味を十分にマスキングすることができないことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載された可食性組成物では、機能性素材に起因する不快臭及び/又は不快味の低減が十分ではなかった。
【0006】
本発明は、機能性素材に起因する不快味及び/又は不快臭が低減された、機能性素材を含む可食性組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、驚くべきことに、特開2015-128420号公報の教示に反し、DEが10以上のデキストリンによって機能性素材に起因する不快味及び/又は不快臭を低減できることを知得し、本発明を完成させた。
【0008】
本発明の態様は以下のものである。
[1] 機能性素材と、デキストリン当量が10以上のデキストリンと、を含み、
前記機能性素材が、コラーゲン、プロテオグリカン、コラーゲン-プロテオグリカン複合体、コラーゲンペプチド、大豆タンパク、大豆ペプチド、乳ペプチド、アミノ酸、ビタミン及び茶カテキンからなる群から選択される少なくとも1種である、可食性組成物。
[2] 前記機能性素材が鮭鼻軟骨由来II型非変性コラーゲン-プロテオグリカン複合体である、[1]に記載の可食性組成物。
[3] 前記デキストリン当量が10以上のデキストリンはデキストリン当量が15以上のデキストリンである、[1]又は[2]に記載の可食性組成物。
[4] 機能性素材と、デキストリン当量が10以上のデキストリンと、を混合する工程を備え、
前記機能性素材が、コラーゲン、プロテオグリカン、コラーゲン-プロテオグリカン複合体、コラーゲンペプチド、大豆タンパク、大豆ペプチド、乳ペプチド、アミノ酸、ビタミン及び茶カテキンからなる群から選択される少なくとも1種である、
前記機能性素材に起因する不快味又は不快臭のマスキング方法。
[5] 前記機能性素材が鮭鼻軟骨由来II型非変性コラーゲン-プロテオグリカン複合体である、[4]に記載のマスキング方法。
[6] 前記デキストリン当量が10以上のデキストリンはデキストリン当量が15以上のデキストリンである、[4]又は[5]に記載のマスキング方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、機能性素材に起因する不快味及び/又は不快臭が低減された、機能性素材を含む可食性組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下では本発明の実施形態を詳細に説明する。ただし、本発明は後述する実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り種々の変形が可能である。
本発明において、数値範囲を表す「~」はその両側の数値をその数値範囲に含むものとする。
【0011】
[可食性組成物]
本発明の可食性組成物は、機能性素材と、デキストリンと、を含む。
【0012】
〈機能性素材〉
本発明の可食性組成物が含む機能性素材は、コラーゲン、プロテオグリカン、コラーゲン-プロテオグリカン複合体、コラーゲンペプチド、大豆タンパク、大豆ペプチド、乳ペプチド、アミノ酸、ビタミン及び茶カテキンからなる群から選択される少なくとも1種であり、コラーゲン、プロテオグリカン、コラーゲン-プロテオグリカン複合体及びコラーゲンペプチドからなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、コラーゲン、プロテオグリカン及びコラーゲン-プロテオグリカン複合体からなる群から選択される少なくとも1種がより好ましく、コラーゲン-プロテオグリカン複合体がさらに好ましい。
【0013】
コラーゲン、プロテオグリカン及びコラーゲン-プロテオグリカン複合体は、鮭鼻軟骨抽出物、鶏軟骨抽出物等に含まれる成分である。魚由来の成分は不快味・不快臭として魚臭さがあり、鶏由来の成分は不快味・不快臭として生臭さがあり、四足獣由来の成分は不快味・不快臭として獣臭さがある。
脊椎動物は30種類以上のコラーゲンタンパク質を有することが知られている。真皮、靱帯、腱、骨などではI型コラーゲンが、関節軟骨ではII型コラーゲンが主成分である。また、すべての上皮組織の裏打ち構造である基底膜にはIV型コラーゲンが主に含まれている。鮭鼻軟骨抽出物や鶏軟骨抽出物等の軟骨由来材料のコラーゲンは、II型コラーゲンが主成分であり、これらの抽出物にはコラーゲンを変性させずに抽出したII型非変性コラーゲンが含まれている。II型の非変性コラーゲンは免疫寛容によって関節の炎症が抑えられることが知られている。
コラーゲンペプチドはコラーゲンを酵素処理で分解し、低分子化したもので、食品として摂取した場合、体内でオリゴペプチドやアミノ酸に分解しやすいため、吸収性が高められている。原料として、ウシ、ブタなどの家畜の他に、ティラピア、ヒラメ、サケ、スズキなどの魚類の皮や鱗を使う例が多い。
【0014】
ビタミンは特に限定されないが、水溶性ビタミンが好ましく、ビタミンB1、ビタミンB2、ナイアシン、ビタミンB6、葉酸、ビタミンB12、ビオチン、パントテン酸、とビタミンC(L-アスコルビン酸)がより好ましく、ビタミンB1(チアミン、チアミン塩化物塩酸塩)がさらに好ましい。チアミン塩化物塩酸塩は白色の結晶又は結晶性の粉末で、わずかに特異なにおいがある。
【0015】
茶カテキンは特に限定されないが、緑茶由来の茶カテキンが好ましい。茶カテキンの主要成分は、エピカテキン(epicatechin、EC)及びそのヒドロキシ体のエピガロカテキン(epigallocatechin、EGC)、並びにこれらの没食子酸エステルであるエピカテキンガレート(epicatechin gallate、没食子酸エピカテキン、ECg)及びエピガロカテキンガレート(epigallocatechin gallate、没食子酸エピガロカテキン、EGCg)の4つである。これらの化合物は緑茶の渋み成分として含有量はEGCg>EGC>ECg>ECの順であり、合計すると茶葉中の水分を除いた総重量中の13~30%程度を占める。
【0016】
〈デキストリン〉
本発明の可食性組成物が含むデキストリンは、デキストリン当量(以下「DE」ともいう。)が10以上のデキストリンであり、DEが10超のデキストリンが好ましく、DEが15以上のデキストリンがより好ましく、DEが20以上のデキストリンがさらに好ましい。
デキストリンのDEが大きいほど、機能性素材に由来する不快味・不快臭をマスキングする効果が高くなる傾向がある。DEの上限は特に限定されないが、例えば、40である。
デキストリンのDEが10未満では、機能性素材に由来する不快味・不快臭をマスキングする効果が無いか、又は十分ではない。
なお、DE(Dextrose Equivalent:デキストロース当量)とは、デンプンの分解程度を還元糖の割合で示すものであり、すべての還元糖をブドウ糖(Dextrose)の量に換算し、その割合を全体の乾燥固形分に対する質量%で表したものである。
【0017】
本発明の可食性組成物が含むデキストリンは、非環状構造であることが好ましい。
【0018】
本発明で用いるデキストリンの平均粒子径は、特に限定されないが、15μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、5μm以下がさらに好ましい。デキストリンの平均粒子径の下限は、特に限定されないが、例えば、0.1μmが好ましく、0.5μmがより好ましく、1,0μmがさらに好ましい。
デキストリンの平均粒子径は、レーザー回折粒度分布計を用いて測定した平均粒子径である。前記レーザー回折粒度分布計として、レーザー回折粒度分布計SALD-2100(島津製作所社製)を用いる。
【0019】
本発明で用いるデキストリンは、原料となるデンプンを分解することによって製造できる。デンプンの分解方法は、特に制限なく、例えば酵素処理による分解、酸処理による分解などが挙げられるが、酵素処理による分解(酵素分解)が好ましい。
【0020】
デキストリンの調製方法として、具体的には、デンプンを含有する水溶液に耐熱性α-アミラーゼを添加し、70~95℃、好ましくは85~95℃の範囲で加熱した後、その酵素分解の進行度を、DEを指標として追跡し、所望の範囲になったときに塩酸等の酸を添加し、煮沸することによって酵素処理を終了する方法を挙げることができる。
【0021】
なお、本発明で使用するデキストリンは、難消化性デキストリン、サイクロデキストリン、又は高度分岐環状デキストリンであってもよい。
【0022】
難消化性デキストリンとは「澱粉科学の事典」(朝倉書店)によると、デンプン粉体に酸を添加して加熱調製される焙焼デキストリンの転移・解重合によりできる難消化性画分を水溶性食物繊維として利用するもので、酸やα-アミラーゼの処理の後、グルコアミラーゼで消化性のデキストリンをグルコースに変換し、膜やクロマトグラフィーで食物繊維成分だけを取り出す方法と、エクストルーダーで澱粉を直接難消化にする方法が工業化されている。このようにして調製される難消化性デキストリンは平均重合度が約2000で分岐に富んだ構造をしており、α-1,4結合、1,6結合以外に1,2、1,3グルコシド結合を有するとともに、還元末端が分子内脱水したレボグルコサンも含有しているのが特徴である。市販の難消化性デキストリンとしては、例えば、ファイバーソル2(松谷化学工業社製)が挙げられる。
サイクロデキストリンは、D-グルコースがα-1,4結合によって結合した環状オリゴ糖である。市販のサイクロデキストリンとしては、例えば、セルデックスA-100(日本食品化工社製)が挙げられる。
高度分岐環状デキストリンは、α-1,4結合及びα-1,6結合を有する糖類に、環状構造を形成させる酵素を作用させ、生成させた環状構造を有するグルカンである。市販の高度分岐環状デキストリンとしては、例えば、クラスターデキストリン(日本食品化工社製)が挙げられる。
【0023】
本発明の可食性組成物におけるデキストリンの添加量は、特に限定されないが、機能性素材の100質量部に対して、デキストリンの120~20000質量部が好ましく、200~20000質量部がより好ましく、400~20000質量部がさらに好ましく、500~20000質量部がいっそう好ましく、2000~20000質量部がよりいっそう好ましい。ただし、DEが高いデキストリンほど、より少量で不快味・不快臭のマスキング効果が発揮される傾向がある。
より詳細には、機能性素材が鮭鼻軟骨抽出物に含まれるII型非変性コラーゲン-プロテオグリカン複合体である場合、II型非変性コラーゲン-プロテオグリカン複合体の100質量部に対して、デキストリンの120~20000質量部が好ましく、200~20000質量部がより好ましく、400~20000質量部がさらに好ましく、500~20000質量部がいっそう好ましく、2000~20000質量部がよりいっそう好ましい。
【0024】
本発明の可食性組成物は、経口摂取される組成物(経口用組成物)又は口腔内に使用される組成物(口腔用組成物)として好ましい。
【0025】
経口用組成物としては、具体的には、飲食品組成物、及び経口用医薬組成物が挙げられる。
飲食品組成物としては、機能性素材を含有する飲料(例えば、果実飲料、茶系飲料、コーヒー飲料、清涼飲料水、粉末飲料、乳飲料、乳酸菌飲料、炭酸飲料、栄養飲料等);菓子類(例えば、キャンディー、ガム、錠菓、サプリメント、グミキャンディー、スナック等)、デザート食品(例えば、ゼリー、杏仁豆腐、ムース、ヨーグルト等);洋・和菓子類(例えば、ケーキ、クッキー、饅頭等);冷菓(例えば、アイスクリーム、シャーベット等);米飯類(例えば、もち、インスタント米飯等);麺類(例えば、うどん、ラーメン、パスタ等);スープ類及びその即席粉末食品(例えば、即席スープ、ポタージュ等);ソース及び調味料類(例えば、ケチャップ、マヨネーズ、ウスターソース、トンカツソース、ドレッシング、タルタルソース等)等の食品などが挙げられる。
経口用医薬組成物としては、飲食品組成物と同様に、機能性素材を含有する内服用の医薬品であれば特に制限されず、例えばビタミン剤、滋養強壮剤、栄養剤、サプリメント、及び各種の医薬製剤を挙げることができる。これらはいずれも形態を問うものではなく散剤、顆粒剤、丸剤、錠剤、液剤、シロップ剤等のいずれであってもよい。
【0026】
口腔用組成物としては、具体的には、口腔内清涼剤又は口臭除去剤(例えば、粉末剤、顆粒剤、錠剤、トローチ剤、スプレー剤、噴霧剤、液剤等)、洗口剤、うがい剤、歯磨き等の、医薬品又は医薬品部外品を挙げることができる。
本発明の可食性組成物は、商品の良さを判断するうえで味及び/又は臭いが重要な要素となる飲食品組成物に好適に使用できる。
【0027】
本発明の可食性組成物は、固体状であってもよいし、溶液状又は分散液状であってもよい。
例えば、粉末状、顆粒状、錠剤状といった、固体状の可食性組成物(以下、「固体状可食性組成物」ともいう)は、通常、機能性素材が水等の溶媒を介することなく舌と直接接触するため、機能性素材の不快味(例えば、苦味、渋味等)が呈味に与える影響が非常に大きい。かかるところ、本発明では上記デキストリンを用いることで、固体状可食性組成物に含まれる機能性素材に起因する不快味を顕著にマスキングすることができ、非常に有用な技術である。
本発明において固体状可食性組成物とは、口腔内使用時に粉末状、顆粒状又は錠剤状である可食性組成物をいう。例えば、錠菓、サプリメント、医薬品(例えば、散剤、顆粒剤、丸剤、錠剤等)、口腔内清涼剤、口臭除去剤(粉末剤、顆粒剤、錠剤、トローチ剤等)が挙げられる。
【0028】
〈その他の成分〉
本発明の可食性組成物は、機能性素材及びデキストリンに加え、甘味料を併用することができる。
前記甘味料としては、例えば、単糖類、二糖類、糖アルコール、オリゴ糖、低甘味度甘味料、高甘味度甘味料等が挙げられ、高甘味度甘味料が好ましくい。
高甘味度甘味料としては、例えば、スクラロース、アスパルテーム、ステビア、カンゾウ、ネオテーム、アドバンテーム、ソーマチン、モネリン、モナチン、ラカンカ、ズルチン、チクロ、サッカリン及びアセスルファムカリウムからなる群から選択される一種以上が挙げられる。
高甘味度甘味料は、不快味・不快臭に対して一定のマスキング効果を奏するが、単独使用では十分なマスキング効果が得られなかったり、高甘味度甘味料特有の甘味の後引きが可食性組成物の呈味に影響を与えたりするという問題を有していた。しかし、本発明では、上記デキストリンと高甘味度甘味料を併用することで、高甘味度甘味料特有の甘味の後引きが可食性組成物の呈味に影響を与えることなく、機能性素材に起因する不快味・不快臭を有意にマスキングすることができる。
【0029】
〈使用方法例〉
本発明の可食性組成物は、機能性素材及びデキストリン、並びに所望によりその他の成分からなる粉体状の組成物として、そのまま使用してもよいし、溶媒に溶解又は分散媒に分散した液体状の組成物として使用してもよい。また、粉体状又は液体状の本発明の組成物を、液状又は半固体状の飲食物と混合して使用してもよい。
このような液状又は半固体状の飲食物としては、例えば、水、茶飲料、コーヒー飲料、果汁飲料、野菜ジュース等の清涼飲料水;牛乳、生乳、加工乳等の乳;濃縮乳、無脂濃縮乳、発酵乳(ヨーグルト等)、乳酸菌飲料、乳飲料等の乳製品;日本酒、ビール、ぶどう酒、ウイスキー、ブランデー等のアルコール飲料;味噌汁、吸物、シチュー、チャウダー、ミネストローネ、オニオンスープ等のスープ類;、及びフルーツゼリー、コーヒーゼリー、アスピック、ウナギのゼリー寄せ、果実ジャム等のゼリー類などが挙げられる。
【0030】
[マスキング方法]
本発明のマスキング方法は、機能性素材と、デキストリンと、を混合する工程(混合工程)を備える。
【0031】
〈混合工程〉
(機能性素材)
本発明のマスキング方法の混合工程で用いる機能性素材は、上述した本発明の可食性組成物における機能性素材と同様である。
(デキストリン)
本発明のマスキング方法の混合工程で用いるデキストリンは、上述した本発明の可食性組成物におけるデキストリンと同様である。
【0032】
(混合の方法)
本発明のマスキング方法の混合工程で機能性素材とデキストリンとを混合する方法は特に限定されない。
機能性材料とデキストリンとの混合割合は、上述した本発明の可食性組成物におけるデキストリンと同様である。
【0033】
本発明のマスキング方法では、混合工程の後、機能性素材とデキストリンの混合物を液状又は半固体状の飲食物に溶解させる又は分散させる工程(溶解工程)を含んでいてもよい。
機能性素材とデキストリンの混合物を溶解させる又は分散させる液状又は半固体状の飲食物は、液状又は半固体状の飲食物であれば特に限定されないが、例えば、水、茶飲料、コーヒー飲料、果汁飲料、野菜ジュース等の清涼飲料水;牛乳、生乳、加工乳等の乳;濃縮乳、無脂濃縮乳、発酵乳(ヨーグルト等)、乳酸菌飲料、乳飲料等の乳製品;日本酒、ビール、ぶどう酒、ウイスキー、ブランデー等のアルコール飲料;味噌汁、吸物、シチュー、チャウダー、ミネストローネ、オニオンスープ等のスープ類;、及びフルーツゼリー、コーヒーゼリー、アスピック、ウナギのゼリー寄せ、果実ジャム等のゼリー類などが挙げられる。
【実施例0034】
以下では例によって本発明をより詳細に説明する。ただし、本発明は後述する例によって限定されるものではない。
【0035】
[不快味・不快臭の評価方法]
飲料(粉末飲料を含む)を専門とする評価者4名により、不快味・不快臭が全くマスキングされていないものを1点、不快味・不快臭が十分にマスキングされているものを5点として、1点から5点の間で0.1点刻みで点数をつけ、4人の点数の算術平均を評価点とした。
評価点が2点未満をマスキング効果なしと判定し、評価点が2点以上をマスキング効果ありと判定した。
【0036】
[例1~11]
(機能性素材)
機能性素材として、鮭鼻軟骨抽出物(II型非変性コラーゲン-プロテオグリカン複合体を40質量%含む;市販品)、鶏軟骨抽出物(II型非変性コラーゲン-プロテオグリカン複合体を25質量%含む;市販品)、豚由来コラーゲンペプチド(市販品)、分離大豆タンパク(市販品)、ビタミンB1(チアミン塩酸塩;市販品)、乳ペプチド(市販品)、大豆ペプチド(市販品)、KCl(市販品)、BCAA(分岐鎖アミノ酸;市販品)、又は緑茶抽出物(総ポリフェノール>80質量%、総カテキン>75質量%、エピガロカテキンガレート(EGCg)>40質量%;市販品)をそれぞれ単独で用いた。
【0037】
(デキストリン)
デキストリンとして、デキストリン1(DE=2~5;サンデック#30,三和澱粉工業社製)、デキストリン2(DE=6~8;サンデック#70FN,三和澱粉工業社製)、デキストリン3(DE=10~13;サンデック#100,三和澱粉工業社製)、デキストリン4(DE=15~18;サンデック#150,三和澱粉工業社製)、デキストリン5(DE=18~21;サンデック#180,三和澱粉工業社製)、デキストリン6(DE=16~21;サンデック#185N,三和澱粉工業社製)、デキストリン7(DE=22~36;サンデック#250,三和澱粉工業社製)、三和澱粉工業社製)、デキストリン8(DE=26~30;サンデック#300,三和澱粉工業社製)、又はデキストリン9(DE=40;パインデックス#6,松谷化学工業社製)のいずれかを用いた。
【0038】
(方法)
機能性素材、又は機能性素材とデキストリンとの混合物を準備し、機能性素材及びデキストリンの終濃度が表1に示すとおりとなるように混合物の一部を100mLの水に溶かして評価試験用サンプルを調製した。
例1~例11のAは機能性素材を含み、デキストリンを含まない評価試験用サンプルである。
例1~11のB~Jは機能性素材を表1に示す濃度で含み、デキストリンを2.3g/100mLの濃度で含む評価試験用サンプルである。
調製した評価試験用サンプルを用いて、評価者による評価を行い、評価点を算出した。評価の対象となる不快味・不快臭は表1に示すもの(魚臭さ、苦み等)とした。
なお、鮭鼻軟骨抽出物の有効成分であるII型非変性コラーゲン-プロテオグリカン複合体の終濃度は、0.02g/100mLであり、鶏軟骨抽出物の有効成分であるII型非変性コラーゲン-プロテオグリカン複合体の終濃度は、0.01g/100mLであった。
【0039】
(結果)
表1に機能性素材とデキストリンの組合せ、及び評価点を示す。
DEが10以上のデキストリンを含む評価試験用サンプル(例1~例11のD~J)は、評価点が2.0点以上であり、機能性素材に起因する不快味・不快臭のマスキング効果が優れていた。
DEが10未満のデキストリンを含む評価試験用サンプル(例1~例11のB、C)は、評価点が2.0点未満であり、機能性素材に起因する不快味・不快臭のマスキング効果が無かった、又は劣っていた。
デキストリンを含まない評価試験用サンプル(例1~例11のA)は、機能性素材に起因する不快味・不快臭のマスキング効果が無かった。
【0040】
【0041】
[例12]
(機能性素材)
機能性素材として、鮭鼻軟骨抽出物(II型非変性コラーゲン-プロテオグリカン複合体を40質量%含む;市販品)を用いた。
【0042】
(デキストリン)
デキストリンとして、デキストリン1(DE=2~5;サンデック#30,三和澱粉工業社製)又はデキストリン10(DE=16~19;TK-16,松谷化学工業社製)を用いた。
【0043】
(方法)
機能性素材、又は機能性素材とデキストリンとの混合物を準備し、機能性素材及びデキストリンの終濃度が表2に示すとおりとなるように混合物の一部を100mLの水に溶かして評価試験用サンプルを調製した。
例12のAは機能性素材を含み、デキストリンを含まない評価試験用サンプルである。
例12のB~Gは機能性素材を0.05g/100mLの濃度で含み、デキストリンを表2に示すとおりの濃度(1.2~5.0g/100mL)の濃度で含む評価試験用サンプルである。
調製した評価試験用サンプルを用いて、評価者による評価を行い、評価点を算出した。評価の対象となる不快味・不快臭は表2に示すもの(魚臭さ)とした。
なお、鮭鼻軟骨抽出物の有効成分であるII型非変性コラーゲン-プロテオグリカン複合体の終濃度は、0.02g/100mLであった。
【0044】
(結果)
表2に機能性素材とデキストリンの組合せ、及び評価点を示す。
DEが16~19のデキストリンを用いた例12のE~Gは、評価点が2.0点以上であり、機能性素材に起因する不快味・不快臭のマスキング効果が優れていた。
DEが2~5のデキストリンを用いた例12のB~Dは、評価点が2.0点未満であり、機能性素材に起因する不快味・不快臭のマスキング効果が無いか、劣っていた。
デキストリンを含まない例12のAは、機能性素材に起因する不快味・不快臭のマスキング効果が無かった。
【0045】
【0046】
[例13~16]
(機能性素材)
機能性素材として、鮭鼻軟骨抽出物(II型非変性コラーゲン-プロテオグリカン複合体を40質量%含む;市販品)を用いた。
【0047】
(デキストリン)
デキストリンとして、デキストリン3(DE=10~13;サンデック#100,三和澱粉工業社製)を用いた。
【0048】
(方法)
機能性素材、又は機能性素材とデキストリンとの混合物を準備し、機能性素材及びデキストリンの終濃度が表3に示すとおりとなるように混合物の一部を100mLの水に溶かして評価試験用サンプルを調製した。
例13~例16のAは機能性素材を含み、デキストリンを含まない評価試験用サンプルである。
例13~例16のB~Gは機能性素材を表3に示すとおりの濃度(0.025~0.25g/100mL)の濃度で含み、デキストリンを表3に示すとおりの濃度(0.3~5.0g/100mL)の濃度で含む評価試験用サンプルである。
調製した評価試験用サンプルを用いて、評価者による評価を行い、評価点を算出した。評価の対象となる不快味・不快臭は表3に示すもの(魚臭さ)とした。
なお、鮭鼻軟骨抽出物の有効成分であるII型非変性コラーゲン-プロテオグリカン複合体の終濃度は、0.01~0.1g/100mLであった。
【0049】
(結果)
表3に機能性素材とデキストリンの組合せ、及び評価点を示す。
機能性素材の濃度及びデキストリンの濃度により機能性素材に起因する不快味・不快臭のマスキング効果が十分でない組合せもあったが、デキストリンの濃度を高くすることでマスキング効果は十分に発揮されることがわかった。
機能性素材に起因する不快味・不快臭のマスキング効果の程度が弱いDEが10~13のデキストリンにおいてもマスキング効果があれば、それ以上のDEを有するデキストリンにおいても、同様に効果が期待できる。
【0050】
【0051】
[例17、例18]
(化学物質)
機能性素材の不快味・不快味の原因となる化学物質として、ピペリジン(生臭さの原因化学物質のひとつ;市販品)又はジメチルスルフィド(腐敗臭の原因化学物質のひとつ;市販品)を用いた。
【0052】
(デキストリン)
デキストリンとして、デキストリン1(DE=2~5;サンデック#30,三和澱粉工業社製)又はデキストリン10(DE=16~19;TK-16,松谷化学工業社製)を用いた。
【0053】
(方法)
化学物質、又は化学物質とデキストリンとの混合物を準備し、化学物質及びデキストリンの終濃度が表4に示すとおりとなるように混合物の一部を100mLの水に溶かして評価試験用サンプルを調製した。
例17、例18のAは化学物質を含み、デキストリンを含まない評価試験用サンプルである。
例17、例18のB、Cは化学物質を表4に示すとおりの濃度(150ppm、又は80ppb)の濃度で含み、デキストリンを表4に示すとおりの濃度(2.3g/100mL)の濃度で含む評価試験用サンプルである。
調製した評価試験用サンプルを用いて、評価者による評価を行い、評価点を算出した。評価の対象となる不快味・不快臭は表4に示すもの(生臭さ又は腐敗臭)とした。
【0054】
(結果)
表4に化学物質とデキストリンの組合せ、及び評価点を示す。
DEが16~19のデキストリンを用いた例17、例18のCは、評価点が2.0点以上であり、化学物質の不快味・不快臭のマスキング効果が優れていた。
DEが2~5のデキストリンを用いた例17、例18のBは、評価点が2.0点未満であり、化学物質の不快味・不快臭のマスキング効果が劣っていた。
デキストリンを含まない例17、例18のAは、化学物質の不快味・不快臭のマスキング効果が無かった。
【0055】
【0056】
[例19]
(機能性素材)
機能性素材として、鮭鼻軟骨抽出物(II型非変性コラーゲン-プロテオグリカン複合体を40質量%含む;市販品)を用いた。
【0057】
(デキストリン)
デキストリンとして、デキストリン11(DE=22~26;トウモロコシ、馬鈴薯、甘藷を起源原料とする;市販品)、デキストリン12(DE=16~19;キャッサバ、甘藷を起源原料とする;市販品)、デキストリン13(DE=24~26;甘藷を起源原料とする;市販品製)、又はデキストリン14(DE=28~35;キャッサバ、トウモロコシを起源原料とする;市販品)のいずれかを用いた。
【0058】
(方法)
機能性素材とデキストリンとの混合物を準備し、機能性素材の終濃度が0.05g/100mL、デキストリンの終濃度が2.3g/100mLとなるように混合物の一部を100mLの水に溶かして評価試験用サンプルを調製した。
例19のA~Dは機能性素材を0.05g/100mLの濃度で含み、デキストリンを2.3g/100mLの濃度で含む評価試験用サンプルである。
調製した評価試験用サンプルを用いて、評価者による評価を行い、評価点を算出した。評価の対象となる不快味・不快臭は表5に示すもの(魚臭さ)とした。
なお、鮭鼻軟骨抽出物の有効成分であるII型非変性コラーゲン-プロテオグリカン複合体の終濃度は、0.02g/100mLであった。
【0059】
(結果)
表5に機能性素材とデキストリンの組合せ、及び評価点を示す。
評価試験用サンプル(例19のA~D)は、いずれも評価点が2.0点以上であり、機能性素材に起因する不快味・不快臭のマスキング効果が優れていた。
デキストリン起源原料に関わらずマスキング効果を確認できた。
【0060】