(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117715
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】光電変換素子、光電変換素子用材料、及び化合物
(51)【国際特許分類】
H10K 30/60 20230101AFI20240822BHJP
C07D 487/14 20060101ALI20240822BHJP
C07D 241/36 20060101ALI20240822BHJP
C07D 487/22 20060101ALI20240822BHJP
C07D 487/04 20060101ALI20240822BHJP
C07D 513/04 20060101ALI20240822BHJP
C07D 471/22 20060101ALI20240822BHJP
C07D 471/04 20060101ALI20240822BHJP
C07D 495/22 20060101ALI20240822BHJP
C07D 495/14 20060101ALI20240822BHJP
C07D 498/04 20060101ALI20240822BHJP
H10K 30/50 20230101ALI20240822BHJP
H10K 30/86 20230101ALI20240822BHJP
H10K 85/60 20230101ALI20240822BHJP
H10K 39/32 20230101ALI20240822BHJP
【FI】
H10K30/60
C07D487/14 CSP
C07D241/36
C07D487/22
C07D487/04 147
C07D513/04
C07D471/22
C07D471/04 116
C07D495/22
C07D495/14
C07D498/04 101
H10K30/50
H10K30/86
H10K85/60
H10K39/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023218814
(22)【出願日】2023-12-26
(31)【優先権主張番号】P 2023023108
(32)【優先日】2023-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000173762
【氏名又は名称】公益財団法人相模中央化学研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100193725
【弁理士】
【氏名又は名称】小森 幸子
(74)【代理人】
【識別番号】100163038
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 武志
(72)【発明者】
【氏名】相原 秀典
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 宏亮
(72)【発明者】
【氏名】北國 智子
(72)【発明者】
【氏名】新井 信道
(72)【発明者】
【氏名】新屋 宏和
(72)【発明者】
【氏名】岡田 壮史
(72)【発明者】
【氏名】太田 恵理子
【テーマコード(参考)】
3K107
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(57)【要約】 (修正有)
【課題】正孔の輸送能力を向上させることができる光電変換素子、並びに該光電変換素子に用いられる正孔の輸送能力を向上させることができる光電変換素子用材料、及び化合物の提供。
【解決手段】下記式(1)で示されるピラジノ縮環キノン化合物を含有する光電変換素子用材料を光電変換素子の正孔輸送促進層に用いる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で示されるピラジノ縮環キノン化合物を含有する、光電変換素子用材料。
【化1】
(式(1)中、
Yは、下記式(2)または下記式(3)で表される縮環構造を表す:
【化2】
【化3】
X
1およびX
2は、各々独立に、窒素原子またはC-R
21を表す:
R
21は、水素原子または置換基を表す:
R
1およびR
2は、水素原子または置換基を表す:
R
1およびR
2は互いに縮環して環構造を形成していてもよく、形成される環構造は置換されていてもよい:
X
1またはX
2がC-R
21であるとき、隣接するR
1またはR
2は、R
21と互いに縮環して環構造を形成していてもよく、形成される環構造は置換されていてもよい:
nは、1から4の整数を表す:
L
1は、水素原子または置換基を表す:
nが2以上の時、複数のL
1は互いに縮環して環構造を形成していてもよく、形成される環構造は置換されていてもよい:
R
3およびR
4は、電子求引性基;電子求引性基で置換されていてもよい芳香族炭化水素基;または電子求引性基で置換されていてもよい複素芳香族基を表す:
Z
1およびZ
2は、各々独立に、窒素原子またはC-R
22を表す:
R
22は、水素原子または置換基を表す:
R
5およびR
6は、電子求引性基;電子求引性基で置換されていてもよい芳香族炭化水素基;または電子求引性基で1つ以上置換されていてもよい複素芳香族基を表す。)
【請求項2】
前記R3、前記R4、前記R5または前記R6における前記電子求引性基が、
ハロゲン原子;
フルオロアルキル基;
フルオロアルキル基で置換された酸素原子;
フルオロアルキル基で置換された硫黄原子;
シアノ基;
ニトロ基;
ペンタフルオロスルファニル基;
アシル基;
カルボキシ基;
アミド基;
ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド基;
水素原子、アルキル基、アルコキシ基、フルオロアルキル基、およびフルオロアルコキシ基からなる群から選択される少なくとも1種で置換されたカルボニル基;
スルホン基、メチルスルホニル基、トリフルオロメチルスルホニル基、フェニルスルホニル基、ペンタフルオロフェニルスルホニル基、メチルスルホニルオキシ基、トリフルオロメチルスルホニルオキシ基、フェニルスルホニルオキシ基、ペンタフルオロフェニルスルホニルオキシ基、およびオキシスルホン酸などの群から選択される基を含む含スルホニル基;
含窒素芳香族基;
ハロゲン原子、フルオロアルキル基、シアノ基、およびニトロ基からなる群から選択される少なくとも1種で置換されている芳香族炭化水素基;および
ハロゲン原子、フルオロアルキル基、シアノ基、およびニトロ基からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい複素芳香族基;のいずれかから選ばれる、請求項1に記載の光電変換素子用材料。
【請求項3】
前記R1、前記R2、前記R21、前記L1または前記R22における前記置換基が、
電子求引性基;
アルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基、トルイル基、メシチル基、チエニル基、フルオレニル基等の電子供与性基;
アルキル基で置換されてもよい芳香族炭化水素基;
アルキル基で置換されてもよい複素芳香族基;
フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、スチリル基、フェニルアゾ基、ビニル基、エチニル基、フェニルエチニル基等の共役系を伸長する基;
ベンゾキノリニル基、ジクロロベンゾキノリニル基、ジシアノベンゾキノリニル基、ナフトキノリニル基、アントラキノリニル基、キノジメタニル基、アントラキノジメタニル基、キノジイミノ基等の含キノイド基;および
隣り合う基と縮環を形成し得る基;のいずれかから選ばれ、
前記電子求引性基は、
ハロゲン原子;
フルオロアルキル基;
フルオロアルキル基で置換された酸素原子;
フルオロアルキル基で置換された硫黄原子;
シアノ基;
ニトロ基;
ペンタフルオロスルファニル基;
アシル基;
カルボキシ基;
アミド基;
ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド基;
水素原子、アルキル基、アルコキシ基、フルオロアルキル基、およびフルオロアルコキシ基からなる群から選択される少なくとも1種で置換されたカルボニル基;
スルホン基、メチルスルホニル基、トリフルオロメチルスルホニル基、フェニルスルホニル基、ペンタフルオロフェニルスルホニル基、メチルスルホニルオキシ基、トリフルオロメチルスルホニルオキシ基、フェニルスルホニルオキシ基、ペンタフルオロフェニルスルホニルオキシ基、およびオキシスルホン酸などの群から選択される基を含む含スルホニル基;
含窒素芳香族基;
ハロゲン原子、フルオロアルキル基、シアノ基、およびニトロ基からなる群から選択される少なくとも1種で置換されている芳香族炭化水素基;および
ハロゲン原子、フルオロアルキル基、シアノ基、およびニトロ基からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい複素芳香族基;のいずれかから選ばれる、請求項1に記載の光電変換素子用材料。
【請求項4】
前記R1、前記R2、前記R21および前記L1のいずれかにおいて、環構造が形成されており、前記環構造が置換されている場合、前記環構造に置換されている基が、
ハロゲン原子;
シアノ基;
ニトロ基;
ハロゲン原子で1つ以上置換されていてもよい炭素数1~18のアルキル基;
ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1~18のアルキル基、および炭素数1~18のフルオロアルキル基からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数6~14の芳香族炭化水素基;
ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1~18のアルキル基、および炭素数1~18のフルオロアルキル基からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数3~12の複素芳香族基;
酸素原子(但し、カルボニル基に限る);および
ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1~18のアルキル基、および炭素数1~18のフルオロアルキル基からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよいメチレン基;のいずれかから選ばれる、請求項1に記載の光電変換素子用材料。
【請求項5】
前記R1または前記R2が、
水素原子、
電子求引性基、
互いに縮環を形成してなる芳香族炭化水素縮環基、または
互いに縮環を形成してなる複素芳香族縮環基、であり、
前記電子求引性基が、
ハロゲン原子;
フルオロアルキル基;
フルオロアルキル基で置換された酸素原子;
フルオロアルキル基で置換された硫黄原子;
シアノ基;
ニトロ基;
ペンタフルオロスルファニル基;
アシル基;
カルボキシ基;
アミド基;
ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド基;
水素原子、アルキル基、アルコキシ基、フルオロアルキル基、およびフルオロアルコキシ基からなる群から選択される少なくとも1種で置換されたカルボニル基;
スルホン基、メチルスルホニル基、トリフルオロメチルスルホニル基、フェニルスルホニル基、ペンタフルオロフェニルスルホニル基、メチルスルホニルオキシ基、トリフルオロメチルスルホニルオキシ基、フェニルスルホニルオキシ基、ペンタフルオロフェニルスルホニルオキシ基、およびオキシスルホン酸などの群から選択される基を含む含スルホニル基;
含窒素芳香族基;
ハロゲン原子、フルオロアルキル基、シアノ基、およびニトロ基からなる群から選択される少なくとも1種で置換されている芳香族炭化水素基;または
ハロゲン原子、フルオロアルキル基、シアノ基、およびニトロ基からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい複素芳香族基;である、請求項1に記載の光電変換素子用材料。
【請求項6】
前記X1および前記X2が、窒素原子またはC-Hである、請求項1に記載の光電変換素子用材料。
【請求項7】
前記Z1および前記Z2が、窒素原子またはC-Hである、請求項1に記載の光電変換素子用材料。
【請求項8】
前記R3および前記R4が、同一の基である、請求項1に記載の光電変換素子用材料。
【請求項9】
前記R5および前記R6が、同一の基である、請求項1に記載の光電変換素子用材料。
【請求項10】
光電変換素子用正孔輸送促進材用である、請求項1に記載の光電変換素子用材料。
【請求項11】
第一の電極、第二の電極、および前記第一の電極と前記第二の電極の間に配置された有機層を含む光電変換素子であって、前記有機層は、請求項1に記載の光電変換素子用材料を含有し、前記光電変換素子は、受光層を含む、光電変換素子。
【請求項12】
下記式(4)で示されるピラジノ縮環キノン化合物。
【化4】
(式(4)中、
Yは、下記式(5)または下記式(6)で表される縮環構造を表す:
【化5】
【化6】
X
3およびX
4は、各々独立に、窒素原子またはC-R
31を表す:
R
11、R
12およびR
31は、各々独立に、
水素原子;
ハロゲン原子;
シアノ基;
ニトロ基;
ハロゲン原子で1つ以上置換されていてもよい炭素数1~18のアルキル基;
ハロゲン原子、シアノ基、および炭素数1~18のフルオロアルキル基からなる群から選択される少なくとも1種で置換されている炭素数6~18の芳香族炭化水素基;
炭素数1~18のアルキル基で置換されていてもよい炭素数6~18の芳香族炭化水素基;
ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1~18のアルキル基、および炭素数1~18のフルオロアルキル基からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数3~12の複素芳香族基;
互いに縮環を形成してなる炭素数4~14の芳香族炭化水素縮環基;または
互いに縮環を形成してなる炭素数3~12の複素芳香族縮環基;を表し、
これらの基が2つ以上組み合わさった基であってもよい:
R
11およびR
12が縮環して環構造を形成しているとき、該環構造は、更に
ハロゲン原子;
シアノ基;
ニトロ基;
ハロゲン原子で1つ以上置換されていてもよい炭素数1~18のアルキル基;
ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1~18のアルキル基、および炭素数1~18のフルオロアルキル基からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数6~18の芳香族炭化水素基;
ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1~18のアルキル基、および炭素数1~18のフルオロアルキル基からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数3~12の複素芳香族基;
酸素原子(但し、カルボニル基に限る);および
ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1~18のアルキル基、および炭素数1~18のフルオロアルキル基からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよいメチレン基;からなる群から選択される少なくとも1種の基によって置換されていてもよい:
R
13、R
14、R
15およびR
16は、各々独立に、
ハロゲン原子;
シアノ基;
ニトロ基;
ハロゲン原子で1つ以上置換されている炭素数1~18のアルキル基;
ハロゲン原子、シアノ基、および炭素数1~18のフルオロアルキル基からなる群から選択される少なくとも1種で置換されている炭素数6~14の芳香族炭化水素基;または
ハロゲン原子、シアノ基、および炭素数1~18のフルオロアルキル基からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数3~12の複素芳香族基、を表す:
L
2は、
水素原子;
ハロゲン原子;
シアノ基;
ニトロ基;
ハロゲン原子で1つ以上置換されていてもよい炭素数1~18のアルキル基;
ハロゲン原子、シアノ基、および炭素数1~18のフルオロアルキル基からなる群から選択される少なくとも1種で置換されている炭素数6~14の芳香族炭化水素基;
炭素数1~18のアルキル基で置換されていてもよい炭素数6~14の芳香族炭化水素基;または
ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1~18のアルキル基、および炭素数1~18のフルオロアルキル基からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数3~12の複素芳香族基、を表す:
nは、1から4の整数を表す。
【請求項13】
前記R13、前記R14、前記R15および前記R16が、各々独立に、
フッ素原子;
シアノ基;
炭素数1~6のフルオロアルキル基;
フッ素原子、シアノ基、および炭素数1~6のフルオロアルキル基からなる群から選択される少なくとも1種で置換されているフェニル基;または
フッ素原子、シアノ基、および炭素数1~6のフルオロアルキル基からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよいピリジル基、である請求項12に記載のピラジノ縮環キノン化合物。
【請求項14】
前記L2が、
水素原子;
フッ素原子;
シアノ基;
炭素数1~6のフルオロアルキル基;
フッ素原子、シアノ基、およびトリフルオロメチル基からなる群から選択される少なくとも1種で置換されているフェニル基;
炭素数1~6のアルキル基で置換されていてもよいフェニル基;または
フッ素原子、シアノ基、炭素数1~6のアルキル基、およびトリフルオロメチル基からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよいピリジル基、である請求項12に記載のピラジノ縮環キノン化合物。
【請求項15】
前記R11、前記R12および前記R31が、各々独立に、
水素原子;
フッ素原子;
シアノ基;
トリフルオロメチル基;
フッ素原子、シアノ基、トリフルオロメチル基からなる群から選択される少なくとも1種で置換されているフェニル基;
メチル基で置換されていてもよいフェニル基;
フッ素原子、シアノ基、トリフルオロメチル基からなる群から選択される少なくとも1種で置換されているナフチル基;
メチル基で置換されていてもよいナフチル基;
フッ素原子、シアノ基、メチル基、トリフルオロメチル基からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよいピリジル基;または
互いに縮環してなる炭素数4~14の芳香族炭化水素縮環基、である請求項12に記載のピラジノ縮環キノン化合物。
【請求項16】
前記R13、前記R14、前記R15および前記R16が、各々独立に、
フッ素原子;
シアノ基;
炭素数1~6のパーフルオロアルキル基;または
フッ素原子、シアノ基、および炭素数1~4のパーフルオロアルキル基からなる群から選択される少なくとも1種で置換されているフェニル基、である請求項13に記載のピラジノ縮環キノン化合物。
【請求項17】
前記R13、前記R14、前記R15および前記R16が、各々独立に、
フッ素原子;
シアノ基;または
炭素数1~3のパーフルオロアルキル基、である請求項16に記載のピラジノ縮環キノン化合物。
【請求項18】
前記R13、前記R14、前記R15および前記R16が、
シアノ基である、請求項17に記載のピラジノ縮環キノン化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピラジノ縮環キノン化合物、並びに該化合物を含む光電変換素子用材料及び光電変換素子に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、有機物を用いた新しい高機能デバイスの創製が積極的に試みられており、特に光電変換素子の有機電子素子に関する研究開発が活発に行われ、デバイスの高性能化を目指した材料・デバイス設計が進められている。例えば、動画撮影用途に用いられる光電変換素子においては、受光層で生成したキャリア(電子および正孔)を電極に運ぶ速度が遅いと残像の原因になるという問題がある。したがって、デバイスの高性能化のためには、素子内でのキャリアの高効率な移動が必要とされている。
【0003】
例えば、ピラジノ縮環キノン構造を有する化合物を写真感光体の用途に使用することが開示されている(特許文献1参照)が、有機電子素子の分野においては一層の性能向上が求められており、そのためにさらなる改良を必要としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、正孔の輸送能力を向上させることができる光電変換素子、及び該光電変換素子に用いられる正孔の輸送能力を向上させることができる光電変換素子用材料及び化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、ピラジノ縮環キノンの構造を有する化合物であって特定の構造式で示される化合物が、光電変換素子において正孔輸送能力を向上させ得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は以下の態様を包含するものである。
[1]
本発明の第1の態様は、式(1)で表される縮合環化合物を含有する、光電変換素子用材料である。
【化1】
(式(1)中、
Yは、下記式(2)または下記式(3)で表される縮環構造を表す:
【化2】
【化3】
X
1およびX
2は、各々独立に、窒素原子またはC-R
21を表す:
R
21は、水素原子または置換基を表す:
R
1、およびR
2は、水素原子または置換基を表す:
R
1、およびR
2は互いに縮環して環構造を形成していてもよく、形成される環構造は置換されていてもよい:
X
1またはX
2がC-R
21であるとき、隣接するR
1またはR
2は、R
21と互いに縮環して環構造を形成していてもよく、形成される環構造は置換されていてもよい:
nは、1から4の整数を表す:
L
1は、水素原子または置換基を表す:
nが2以上の時、複数のL
1は互いに縮環して環構造を形成していてもよく、形成される環構造は置換されていてもよい:
R
3、およびR
4は、電子求引性基;電子求引性基で置換されていてもよい芳香族炭化水素基;または電子求引性基で1つ以上置換されていてもよい複素芳香族基を表す:
Z
1およびZ
2は、各々独立に、窒素原子またはC-R
22を表す:
R
22は、水素原子または置換基を表す:
R
5、およびR
6は、電子求引性基;電子求引性基で置換されていてもよい芳香族炭化水素基;または電子求引性基で1つ以上置換されていてもよい複素芳香族基を表す。)
[2]
【0008】
本発明の第2の態様は、第一の電極、第二の電極、および前記第一の電極と前記第二の電極の間に配置された有機層を含む光電変換素子であって、前記有機層は、第1の態様に係る光電変換素子用材料を含有し、前記光電変換素子は受光層を含む、光電変換素子である。
[3]
【0009】
本発明の第3の態様は、下記式(4)で示されるピラジノ縮環キノン化合物である。
【化4】
(式(4)中、
Yは、下記式(5)または下記式(6)で表される縮環構造を表す:
【化5】
【化6】
X
3およびX
4は、各々独立に、窒素原子またはC-R
31を表す:
R
11、R
12およびR
31は、各々独立に、
水素原子;
ハロゲン原子;
シアノ基;
ニトロ基;
ハロゲン原子で1つ以上置換されていてもよい炭素数1~18のアルキル基;
ハロゲン原子、シアノ基、および炭素数1~18のフルオロアルキル基からなる群から選択される少なくとも1種で置換されている炭素数6~18の芳香族炭化水素基;
炭素数1~18のアルキル基で置換されていてもよい炭素数6~18の芳香族炭化水素基;
ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1~18のアルキル基、および炭素数1~18のフルオロアルキル基からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数3~12の複素芳香族基;
互いに縮環を形成してなる炭素数4~14の芳香族炭化水素縮環基;または
互いに縮環を形成してなる炭素数3~12の複素芳香族縮環基;を表し、
これらの基が2つ以上組み合わさった基であってもよい:
R
11およびR
12が縮環して環構造を形成しているとき、該環構造は、更に
ハロゲン原子;
シアノ基;
ニトロ基;
ハロゲン原子で1つ以上置換されていてもよい炭素数1~18のアルキル基;
ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1~18のアルキル基、および炭素数1~18のフルオロアルキル基からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数6~18の芳香族炭化水素基;
ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1~18のアルキル基、および炭素数1~18のフルオロアルキル基からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数3~12の複素芳香族基;
酸素原子(但し、カルボニル基に限る);および
ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1~18のアルキル基、および炭素数1~18のフルオロアルキル基からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよいメチレン基;からなる群から選択される少なくとも1種の基によって置換されていてもよい:
R
13、R
14、R
15およびR
16は、各々独立に、
ハロゲン原子;
シアノ基;
ニトロ基;
ハロゲン原子で1つ以上置換されている炭素数1~18のアルキル基;
ハロゲン原子、シアノ基、および炭素数1~18のフルオロアルキル基からなる群から選択される少なくとも1種で置換されている炭素数6~14の芳香族炭化水素基;または
ハロゲン原子、シアノ基、および炭素数1~18のフルオロアルキル基からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数3~12の複素芳香族基、を表す:
L
2は、
水素原子;
ハロゲン原子;
シアノ基;
ニトロ基;
ハロゲン原子で1つ以上置換されていてもよい炭素数1~18のアルキル基;
ハロゲン原子、シアノ基、および炭素数1~18のフルオロアルキル基からなる群から選択される少なくとも1種で置換されている炭素数6~14の芳香族炭化水素基;
炭素数1~18のアルキル基で置換されていてもよい炭素数6~14の芳香族炭化水素基;または
ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1~18のアルキル基、および炭素数1~18のフルオロアルキル基からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数3~12の複素芳香族基、を表す:
nは、1から4の整数を表す。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、正孔の輸送能力を向上させることができる光電変換素子、及び該光電変換素子に用いられる正孔の輸送能力を向上させることができる光電変換素子用材料及び化合物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る光電変換素子の積層構成の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(光電変換素子、光電変換素子用材料)
本発明は、光電変換素子を対象とし、該光電変換素子にピラジノ縮環キノンの構造を有する化合物であって特定の構造式で示される化合物を含有させることにより、正孔の輸送能力を向上させることができる光電変換素子を提供するものである。
また、本発明は、該光電変換素子に用いられる光電変換素子用材料を提供するものである(以下、光電変換素子と光電変換素子用材料とをまとめて一緒に説明する。)
本発明の光電変換素子は、光エネルギーを電気エネルギーや電気信号に変換する素子であり、撮像素子、光センサ、太陽電池等を含む。
【0013】
本発明の光電変換素子は、第一の電極、第二の電極、および第一の電極と第二の電極の間に配置された有機層を含む。
有機層は、下記式(1)で示される化合物を含有する(なお、本発明は、下記式(1)で示される化合物を含有する光電変換素子用材料も対象とする)。
【0014】
【化7】
上記式(1)で示される化合物についての詳しい説明は、後述する。
有機層は、正孔輸送層、および上記式(1)で示される化合物を含有する正孔輸送促進層を含むか、または、正孔輸送材料と前記式(1)で示される化合物とを混合してなる層を含む態様であることが好ましい。
ここで、正孔輸送層は正孔を輸送する役割を有し、正孔輸送材料を含有する。正孔輸送促進層は、第一の電極と正孔輸送層の間に配置され、正孔輸送と電極の間の正孔のやりとりをスムーズにする役割を有し、正孔輸送促進材料を含有する。
本発明では、上記式(1)で示される化合物は、正孔輸送促進材料として用いられる。
【0015】
本発明の光電変換素子は、第一の電極、第二の電極、および第一の電極と第二の電極の間に配置された有機層および受光層を含む。
以下、光電変換素子の素子構成について説明する。
【0016】
<光電変換素子の構成>
本発明に係る光電変換素子は、第一の電極、第二の電極、および第一の電極と第二の電極の間に配置された有機層を含み、有機層は正孔輸送領域を含む。正孔輸送領域は、第一の電極と受光層との間の領域を指し、例えば正孔輸送層及び正孔輸送促進層を含む。
本発明では、正孔輸送促進層に含有される正孔輸送促進材料として、上記式(1)で示される化合物を用いることができる。
正孔輸送領域は、好ましくは第一の電極に隣接している。
光電変換素子は、他の層を含むことができる。他の層としては一般に光電変換素子に使用される層が挙げられる。例えば、受光層、電子輸送層、正孔阻止層、電子阻止層、バッファ層等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0017】
本発明に係る光電変換素子は、例えば、第一の電極、正孔輸送促進層、正孔輸送層、および第二の電極がこの順で積層されているか、または第一の電極、正孔輸送層を形成する正孔輸送材料と上記式(1)で示される化合物とが混合されてなる層、および第二の電極がこの順で積層されている。
また、光電変換素子は、例えば、第一の電極、正孔輸送促進層、および正孔輸送層がこの順で隣接して積層されていてもよいし、第一の電極と正孔輸送促進層の間、または正孔輸送促進層と正孔輸送層の間にバッファ層等の他の層が介在していてもよい。
【0018】
一形態において、本発明に係る光電変換素子は、第一の電極、正孔輸送促進層、正孔輸送層、受光層、および第二の電極がこの順で積層されている。別の形態において、本発明に係る光電変換素子は、第一の電極、正孔輸送促進層、正孔輸送層、受光層、電子輸送層、および第二の電極がこの順で積層されている。上記各層は隣接して積層されていてもよいし、上記任意の層と層の間に他の層が介在していてもよい。
【0019】
光電変換素子は、第一の電極側および第二の電極側のいずれから光が入射してもよく、第一の電極および第二の電極のいずれが透明電極であってもよい。例えば、透明電極(第二の電極)、電子輸送層、受光層、正孔輸送層、正孔輸送促進層、および金属電極(第一の電極)の順に積層された構造であってよく、透明電極(第一の電極)、正孔輸送促進層、正孔輸送層、受光層、電子輸送層、及び金属電極(第二の電極)の順に積層された構造であってもよい。更に、第一の電極および第二の電極は共に透明電極であってもよい。
【0020】
次に、本発明の光電変換素子において、正孔輸送促進材料として有機層に含有される式(1)で示される化合物について説明する。
【0021】
<式(1)で示される化合物>
本発明の光電変換素子における有機層は、下記式(1)で示される化合物を含有する。
【0022】
【0023】
(式(1)中、
Yは、下記式(2)または下記式(3)で表される縮環構造を表す:
【化9】
【化10】
X
1およびX
2は、各々独立に、窒素原子またはC-R
21を表す:
R
21は、水素原子または置換基を表す:
R
1、およびR
2は、水素原子または置換基を表す:
R
1、およびR
2は互いに縮環して環構造を形成していてもよく、形成される環構造は置換されていてもよい:
X
1またはX
2がC-R
21であるとき、隣接するR
1またはR
2は、R
21と互いに縮環して環構造を形成していてもよく、形成される環構造は置換されていてもよい:
nは、1から4の整数を表す:
L
1は、水素原子または置換基を表す:
nが2以上の時、複数のL
1は互いに縮環して環構造を形成していてもよく、形成される環構造は置換されていてもよい:
R
3、およびR
4は、電子求引性基;電子求引性基で置換されていてもよい芳香族炭化水素基;、または電子求引性基で置換されていてもよい複素芳香族基を表す:
Z
1およびZ
2は、各々独立に、窒素原子またはC-R
22を表す:
R
22は、水素原子または置換基を表す:
R
5、およびR
6は、電子求引性基;電子求引性基で置換されていてもよい芳香族炭化水素基;または電子求引性基で1つ以上置換されていてもよい複素芳香族基を表す。)
【0024】
本明細書中、電子求引性基は、正孔輸送促進材としてLUMO準位をより深くすることができる置換基をいい、例えば、水素原子と比較して、結合している原子側から電子を引きつけやすい置換基を示す。
電子求引性基の例としては、
ハロゲン原子(フルオロ基(-F)、クロロ基(-Cl)、ブロモ基(-Br));
フルオロアルキル基;
フルオロアルキル基で置換された酸素原子;
フルオロアルキル基で置換された硫黄原子;
シアノ基(-CN);
ニトロ基(-NO2);
ペンタフルオロスルファニル基(-SF5);
アシル基;
カルボキシ基;
アミド基;
ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド基;
水素原子、アルキル基、アルコキシ基、フルオロアルキル基、およびフルオロアルコキシ基からなる群から選択される少なくとも1種で置換されたカルボニル基;
スルホン基、メチルスルホニル基、トリフルオロメチルスルホニル基、フェニルスルホニル基、ペンタフルオロフェニルスルホニル基、メチルスルホニルオキシ基、トリフルオロメチルスルホニルオキシ基、フェニルスルホニルオキシ基、ペンタフルオロフェニルスルホニルオキシ基、およびオキシスルホン酸などの群から選択される基を含む含スルホニル基;
含窒素芳香族基;
ハロゲン原子、フルオロアルキル基、シアノ基、およびニトロ基からなる群から選択される少なくとも1種で置換されている芳香族炭化水素基;または
ハロゲン原子、フルオロアルキル基、シアノ基、およびニトロ基からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい複素芳香族基;等が挙げられる。
上記した各基の群から選ばれる2つ以上を組み合わせた基なども挙げられる。
電子求引性を示す指標として、Hammet値が知られているが、この値がプラスを示す基も電子求引性基の好ましい例として挙げられる。
【0025】
前記フルオロアルキル基は、アルキル基の水素原子の一部または全部をフッ素原子に置換した基である。
フルオロアルキル基は、直鎖状であっても分岐状であっても環状であってもよい。フルオロアルキル基の炭素数は、例えば1~18であってよく、1~16、1~12、1~10または1~8であってもよい。
フルオロアルキル基としては、例えば、トリフルオロメチル基、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、1,1,1-トリフルオロエチル基、パーフルオロプロパン-1-イル基、パーフルオロプロパン-2-イル基、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン-2-イル基、パーフルオロヘキサン-1-イル基、パーフルオロヘキシル基、等が挙げられる。
【0026】
本明細書中、置換基としては、
電子求引性基;
アルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基、トルイル基、メシチル基、チエニル基、フルオレニル基等の電子供与性基;
アルキル基で置換されてもよい芳香族炭化水素基;
アルキル基で置換されてもよい複素芳香族基;
フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、スチリル基、フェニルアゾ基、ビニル基、エチニル基、フェニルエチニル基等の共役系を伸長する基;
ベンゾキノリニル基、ジクロロベンゾキノリニル基、ジシアノベンゾキノリニル基、ナフトキノリニル基、アントラキノリニル基、キノジメタニル基、アントラキノジメタニル基、キノジイミノ基等の含キノイド基;および
隣り合う基と縮環を形成し得る基;などが挙げられる。
【0027】
上記隣り合う基と縮環を形成し得る基が互いに合わさり、ベンゾ縮環構造、ナフト縮環構造、アザベンゾ縮環構造等の芳香族炭化水素縮環基や複素芳香族縮環基が形成される。
【0028】
上述したように、R1、およびR2は、水素原子または置換基を表す。
R1、およびR2における置換基は、上述した通りである。
【0029】
R1、R2における置換基としては、電子求引性基、互いに縮環を形成してなる芳香族炭化水素縮環基、または互いに縮環を形成してなる複素芳香族縮環基、であることが好ましい。このように、R1、およびR2は、互いに縮環して環構造を形成していてもよく、形成される環構造は置換されていてもよい。
【0030】
X1およびX2は、窒素原子またはC-R21を表す。材料の製造コストを低下せしめる点で、2つのX1およびX2は同じ基であることが好ましく、素子の性能向上に資する点で、X1およびX2は、窒素原子またはC-Hであることがより好ましい。
【0031】
R21は、水素原子または置換基を表す。
R21の置換基は、上述した通りである。
R21としては、正孔注入層としての特性に優れる点で、水素原子または電子求引性基が好ましい。
【0032】
X1およびX2がC-R21であるとき、R1、またはR2は、R21と互いに縮環して環構造を形成していてもよく、形成される環構造は置換されていてもよい。
【0033】
R1、R2、およびR21において、これらが縮環して環構造を形成している場合、該環構造は置換されてもよいが、本明細書中、この環構造に置換されてもよい基としては、
ハロゲン原子;
シアノ基;
ニトロ基;
ハロゲン原子で1つ以上置換されていてもよい炭素数1~18のアルキル基;
ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1~18のアルキル基、および炭素数1~18のフルオロアルキル基からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数6~14の芳香族炭化水素基;
ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1~18のアルキル基、および炭素数1~18のフルオロアルキル基からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数3~12の複素芳香族基;
酸素原子(但し、カルボニル基に限る);および
ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1~18のアルキル基、および炭素数1~18のフルオロアルキル基からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよいメチレン基;からなる群から選択される少なくとも1種の基が挙げられる。
この環構造に置換されてもよい基としては、素子の性能向上に資する点で、
フッ素原子;
シアノ基;
炭素数1~8のフルオロアルキル基;
フッ素原子、シアノ基、および炭素数1~6のフルオロアルキル基からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数6~10の芳香族炭化水素基;
ハロゲン原子、シアノ基、および炭素数1~6のフルオロアルキル基からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数3~10の複素芳香族基;
カルボニル基;および
フッ素原子、シアノ基、および炭素数1~6のフルオロアルキル基からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよいメチレン基、であることが好ましい。
【0034】
R1、R2、およびR21について、隣り合う置換基が縮環を形成する基としては、例えば、下記式(1-1)~(1-13)で表される構造が挙げられる。中でも、材料の製造コストを低下せしめる点で、式(1-1)、(1-2)、(1-3)、(1-4)がより好ましい。なお、下記式中のRAは、例えば、水素原子や、上述した環構造に置換されてもよい基が挙げられ、複数のRAがあるとき、互いに同一であっても、異なっていてもよい。
【0035】
【0036】
L1は、水素原子または置換基を表す。
L1の置換基は、上述した通りである。
L1としては、正孔注入層としての特性に優れる点で、水素原子または電子求引性基が好ましい。
【0037】
nは1から4の整数を表す。nが2以上の時、複数のLは互いに縮環して環構造を形成していてもよく、形成される環構造は置換されていてもよい。
【0038】
L1において、これらが縮環して環構造を形成している場合、該環構造は置換されてもよいが、この環構造に置換されてもよい基としては、R1、R2、およびR21の箇所で上述した“環構造に置換されてもよい基”の説明の通りである。
【0039】
R3、R4、R5、およびR6における電子求引性基は、上述した通りである。
R3、およびR4は、電子求引性基;電子求引性基で置換されていてもよい芳香族炭化水素基;または電子求引性基で置換されていてもよい複素芳香族基であることが好ましい。
【0040】
上記芳香族炭化水素基は、芳香族炭化水素から水素原子を1つ除いてなる1価の基を示す。
芳香族炭化水素基の炭素数は、例えば6~30であってよく、好ましくは6~18である。芳香族炭化水素基は、単環の芳香族炭化水素基、2環以上の芳香環が連結した芳香族炭化水素基、または、縮環の芳香族炭化水素基であってよい。
芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、ビフェニリル基、ターフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、ピレニル基、フルオレニル基、フェナントリル基、ベンゾフルオレニル基、トリフェニレニル基、フルオランテニル基等が挙げられる。芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ビフェニリル基、ナフチル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。
【0041】
上記複素芳香族基は、複素芳香族化合物から水素原子を1つ除いてなる1価の基を示す。
複素芳香族基の炭素数は、例えば3~36であってよく、3~24または3~12であってもよい。複素芳香族基は、単環の複素芳香族基、2環以上の芳香環が連結した複素芳香族基、または、縮環の複素芳香族基であってよい。
複素芳香族基としては、例えば、ピロリル基、チエニル基、フリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、ピリジル基、フェニルピリジル基、ピリジルフェニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、1,3,5-トリアジニル基、インドリル基、ベンゾチエニル基、ベンゾフラニル基、ベンゾイミダゾリル基、インダゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾイソチアゾリル基、2,1,3-ベンゾチアジアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾイソオキサゾリル基、2,1,3-ベンゾオキサジアゾリル基、キノリル基、イソキノリル基、キノキサリル基、キナゾリル基、カルバゾリル基、ジベンゾチエニル基、ジベンゾフラニル基、フェノキサジニル基、フェノチアジニル基、フェナジン基、チアントレニル基等が挙げられる。複素芳香族基としては、ピリジル基、チエニル基、チアゾリル基、キノリニル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、1,3,5-トリアジニル基が好ましく、ピリジル基がより好ましい。
【0042】
R3、およびR4は、同一の基であることが好ましい。
【0043】
Z1およびZ2は、窒素原子またはC-R22を表す。
材料の製造コストを低下せしめる点で2つのZ1及びZ2は同じ基であることが好ましく、素子の性能向上に資する点で、Z1及びZ2は窒素原子またはC-Hであることがより好ましく、Z1及びZ2は窒素原子であることがさらに好ましい。
【0044】
R22は、水素原子または置換基を表す。R22の例としては、R21における置換基と同じ基が例示できる。
【0045】
R5およびR6は、電子求引性基;電子求引性基で置換されていてもよい芳香族炭化水素基;または電子求引性基で置換されていてもよい複素芳香族基であることが好ましい。
R5およびR6の例としては、R3およびR4における基と同じ基が例示できる。
【0046】
R3およびR4は、例えば、下記式(2-1)~(2-14)で表される基であってよく、素子の性能向上に資する点で式(2-1)、(2-2)、(2-3)、(2-7)、(2-10)または(2-14)で表される基であることが好ましい。
【0047】
【0048】
R5およびR6は、例えば、下記式(3-1)~(3-19)で表される基であってよく、素子の性能向上に資する点で式(3-1)、(3-2)、(3-4)、(3-5)、(3-6)で表される基であることが好ましい。なお、下記式中のRAは、例えば、水素原子、または電子求引性基を表し、複数のRAがあるとき、互いに同一であっても、異なっていてもよい。
【0049】
【0050】
R5、およびR6は、同一の基であることが好ましい。
【0051】
上記式(1)で示される化合物は、正孔輸送促進材のLUMO準位を深くし、正孔輸送材のHOMO準位に近づけることができるという点で、電子求引性の置換基を有していることが好ましい。上記式(1)中、R3~R6が、電子求引性の置換基をとることにより、正孔輸送促進材のLUMO準位を深くすることができる。また、上記式(1)で示される化合物が、キノン骨格を有することにより、二つのカルボニル基により、深いLUMO準位を示すことができ、また、キノン骨格の存在により高い耐熱性を示すことができる。
【0052】
式(1)で示される化合物の好ましい具体例を以下に示すが、本発明の化合物はこれらに限定されない。式(1)で示される化合物としては、下記式(A-1)~(A-110)および(B-1)~(B-43)で示される化合物を例示することができる。中でも、(A-1)~(A-110)で表される化合物がより好ましく、(A-1)および(A-60)で表される化合物がさらに好ましい。
【0053】
【0054】
【0055】
【0056】
【0057】
【0058】
【0059】
【0060】
【0061】
【0062】
【0063】
【0064】
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】
[製造方法]
上記式(1)で示される化合物は、公知の方法、またはそれらの組み合わせによって合成することができる。例えば、式(1)で示される化合物は、例えば以下に示す製造方法[P]や[Q]により合成することができる。
【化28】
【0069】
式中、R1~R4、X1、X2、L1、nは、上記と同義である。
【0070】
製造方法[P]の反応条件は特に限定されず、例えば、汎用的なKnoevenagel反応の条件を適用すること、もしくは合成実施例2に開示した方法に従うことで収率よく目的物を得ることができる。
【0071】
製造方法[P]は溶媒中で実施してもよく、該溶媒としては、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、1,1,2,2-テトラクロロエタン等のハロアルカン;ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)、テトラヒドロフラン(THF)、2-メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン等の芳香族炭化水素;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、4-フルオロエチレンカーボネート等の炭酸エステル;酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、γ-ラクトン等のエステル;N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチルピロリドン(NMP)等のアミド;N,N,N’,N’-テトラメチルウレア(TMU)、N,N’-ジメチルプロピレンウレア(DMPU)等のウレア;ジメチルスルホキシド(DMSO)等のスルホキシド;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、オクタノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、2,2,2-トリフルオロエタノール等のアルコール;等が挙げられる。これらは1種のみで用いてもよく、任意の比で混合して用いてもよい。溶媒の使用量に特に制限はない。これらのうち、反応収率がよい点でクロロホルム、ジクロロメタン、THF、DMFが好ましい。
【0072】
製造方法[P]の反応を促進する目的で、アルミナ、シリカゲル、酸化マグネシウム等の固体酸;四塩化チタン、四塩化スズ、五塩化アンチモン等の金属塩化物;トリエチルアミン、ピリジン、4-ジメチルアミノピリジン、1,8-ジアザビシクロウンデセン、テトラメチルエチレンジアミン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等の有機塩基;などを加えることができる。反応収率の点で有機塩基が好ましい。
【0073】
製造方法[P]は、-80℃~300℃から適宜選択された温度にて実施することができ、反応収率がよい点で-20℃~150℃から適宜選択された温度にて実施することが好ましい。
【0074】
式(C-1)で表される化合物は、例えば、文献(Journal of Chemical Research、2011年、35巻4号、205-208頁)等に開示されている方法に基づいて合成することができる。
【0075】
式(D-1)で表される化合物は、市販品を用いることができる。
【0076】
ピラジノ縮環キノン化合物(1)は、製造法[P]の終了後に通常の処理をすることで得られる。必要に応じて、洗浄、沈殿、ろ過、透析、再結晶、カラムクロマトグラフィー、分取HPLC、ソックスレー抽出等の当業者が有機化合物の精製に用いる汎用的な手段を適宜用いて精製してもよい。
【化29】
【0077】
式中、R1、R2、R5、R6、Z1、Z2、は上記と同義である。
【0078】
製造方法[Q]の反応条件は特に限定されず、例えば、汎用的な酸化反応の条件を適用すること、もしくは合成実施例1に開示した方法に従うことで収率よく目的物を得ることができる。
【0079】
製造方法[Q]は溶媒中で実施してもよく、該溶媒としては、水;ジクロロメタン、クロロホルム、テトラクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、1,1,2,2-テトラクロロエタン等のハロアルカン;ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、CPME、THF、2-メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル;ベンゼン、クロロベンゼン、テトラリン等の芳香族炭化水素;クロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン、p-ジクロロベンゼン、1-クロロナフタレン等の芳香族ハロゲン化物;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、4-フルオロエチレンカーボネート等の炭酸エステル;酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、γ-ラクトン等のエステル;DMSO等のスルホキシド;等が挙げられる。これらは1種のみで用いてもよく、任意の比で混合して用いてもよい。溶媒の使用量に特に制限はない。これらのうち、反応収率がよい点で水が好ましい。
【0080】
製造方法[Q]の反応を促進する目的で、アルミナ、シリカゲル、酸化マグネシウム、等の固体酸;四塩化チタン、四塩化スズ、五塩化アンチモン等の金属塩化物;酸化銅、酸化クロム、酸化マンガンなどの遷移金属酸化物;クロラニル、2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノ-p-ベンゾキノン(DDQ)等の酸化剤;を加えてもよい。
【0081】
製造方法[Q]は、-80℃~300℃から適宜選択された温度にて実施することができ、反応収率がよい点で-20℃~150℃から適宜選択された温度にて実施することが好ましい。
【0082】
式(E-1)で表される化合物は、例えば、合成参考例-1に開示した方法や、文献(Synthesis誌、1982年、10巻、878頁など)に記載された方法に基づいて合成することができる。
【0083】
ピラジノ縮環キノン化合物(1)は、製造法[Q]の終了後に通常の処理をすることで得られる。必要に応じて、洗浄、沈殿、ろ過、透析、再結晶、カラムクロマトグラフィー、分取HPLC、ソックスレー抽出等の当業者が有機化合物の精製に用いる汎用的な手段を適宜用いて精製してもよい。
【0084】
<<式(1)で示される化合物の作用効果>>
式(1)で示される化合物は、強い電子アクセプター性骨格であるピラジノ縮環キノン誘導体により、正孔輸送材料分子との強い相互作用が期待される。つまり、光電変換素子中の層(例えば、正孔輸送促進層)が式(1)で示される化合物を含有することにより、隣接する正孔輸送層分子のHOMO軌道との相互作用が高まり、正孔輸送層と正孔輸送促進層の間のキャリア授受が促進されることが期待される。このように、式(1)で示される化合物は、きわめて深いLUMO準位を有するため、正孔輸送層と電極の間の正孔のやり取りがスムーズになることが期待される。
式(1)で示される化合物は、R3~R6が、電子求引性の基であることにより、正孔輸送促進材のLUMO準位を深くすることができる。また、上記式(1)で示される化合物は、キノン骨格を有しているため、二つのカルボニル基により、深いLUMO準位を示すことができ、また、キノン骨格の存在により高い耐熱性を示すことができる。
【0085】
本発明者らは、上述のように、式(1)で示される化合物に、正孔輸送層と電極との間の正孔のやり取りをスムーズにする正孔輸送促進材料として有効に使用し得ることを見出した。そして、実際に光電変換素子において、式(1)で示される化合物(正孔輸送促進材料)を正孔輸送材料と組み合わせた際にその正孔輸送能力が促進されることを確認した。すなわち、光電変換素子において、受光層内で発生したキャリアを電極側に取り出す際のエネルギー障壁を、本願の正孔輸送促進材料である式(1)で示される化合物によって低減し得ることを発見した。
【0086】
<実施形態>
本発明の光電変換素子の積層構成として、例えば下記(i)または下記(ii)の構成が挙げられる。
(i):第一の電極/正孔輸送促進層/正孔輸送層/受光層/第二の電極
(ii):第一の電極/正孔輸送促進層/正孔輸送層/受光層/電子輸送層/第二の電極
【0087】
以下、本発明に係る光電変換素子を、上記(ii)の構成を例に挙げて、
図1を参照しながら更に詳細に説明する。
図1は、本発明に係る光電変換素子の積層構成の一例を示す概略断面図である。
【0088】
<<第1の実施形態>>
第1の実施形態による光電変換素子は、
図1に示す積層構成を備えた有機撮像素子または光センサである。
光電変換素子1は、第一の電極11(第一の電極)、正孔輸送促進層12、正孔輸送層13、受光層14、電子輸送層15、および第二の電極16(第二の電極)をこの順で備える。ただし、これらの層のうちの一部の層が省略されていてもよく、また逆に他の層が追加されていてもよい。
【0089】
図1に示す光電変換素子1では、透明である第一の電極11の上方から、光が入射し、受光層14で受光する。なお、
図1では便宜上受光層14の側面から光が入射するように示されている。また、光電変換素子1は、受光層14で光電変換により発生した電荷(正孔および電子)のうち、正孔を第一の電極11に移動させ、電子を第二の電極16に移動させるように、電圧が印加される。すなわち、第一の電極11を正孔捕集電極とし、第二の電極16を電子捕集電極としている。なお、
図1では、第一の電極11の上面に設けられた基板が省略されている。ここでの基板としては特に限定はなく、例えばガラス板、石英板、プラスチック板等が挙げられる。また、基板側から光が入射する構成の場合、基板は光の波長に対して透明である。以下では、上記各層について説明する。
【0090】
[第一の電極11]
基板上には第一の電極11または第二の電極16が設けられている。
光が第一の電極11を通過して、受光層14に入射する構成の光電変換素子の場合、第一の電極は当該光を通すかまたは実質的に通す透明材料で形成される。ここで、「光を通す」とは平均透過率が80%以上であることいい、「実質的に通す」とは平均透過率が50%以上であるこという。すなわち、本明細書において、「透明」とは平均透過率が50%以上であることを意味する。
【0091】
第一の電極11または第二の電極16に用いられる透明材料としては、特に限定されないが、例えば、インジウム-錫酸化物(ITO;Indium Tin Oxide)、インジウム-亜鉛酸化物(IZO;Indium Zinc Oxide)、酸化錫、アルミニウム・ドープ型酸化錫、マグネシウム-インジウム酸化物、ニッケル-タングステン酸化物、その他の金属酸化物、窒化ガリウム等の金属窒化物、セレン化亜鉛等の金属セレン化物、および硫化亜鉛等の金属硫化物等が挙げられる。
【0092】
なお、第二の電極16側のみから光が受光層14に入射する構成の光電変換素子の場合、第一の電極11の透過特性は重要ではない。したがって、この場合の第一の電極に用いられる材料の一例としては、金、イリジウム、モリブデン、パラジウム、白金等が挙げられる。
【0093】
[正孔輸送促進層12]
第一の電極11と後述する正孔輸送層13との間には、正孔輸送促進層12が設けられている。正孔輸送促進層12は、正孔輸送層13から第一の電極11への正孔輸送を促進させるために設けられる。正孔輸送促進層12は、前述の式(1)で示される化合物を含有する。また、式(1)で示される化合物以外の化合物を一緒に含有させることもできる。正孔輸送促進層12に含有させることができる化合物としては、例えば従来公知の正孔輸送材料が挙げられ、後述の正孔輸送層13に用いる化合物等が挙げられる。
【0094】
[正孔輸送層13]
正孔輸送促進層12と受光層14との間には、正孔輸送層13が設けられている。
正孔輸送層13は、受光層14で発生した正孔を受光層14から第一の電極11へ輸送する役割と、受光層14で発生した電子が第一の電極11側へ移動するのをブロックする役割とを有する。また用途によっては第一の電極11からの電子注入をブロックする役割を有することもある。
【0095】
正孔輸送層13は、一種または二種以上の材料からなる単層構造であってもよく、同一組成または異種組成の複数層からなる積層構造であってもよい。正孔輸送層13に含有させることができる正孔輸送材料は、公知の正孔輸送材料であってよい。公知の正孔輸送材料としては、芳香族第三級アミン化合物、ナフタレン化合物、アントラセン化合物、テトラセン化合物、ペンタセン化合物、フェナントレン化合物、ピレン化合物、ペリレン化合物、フルオレン化合物、カルバゾール化合物、インドール化合物、ピロール化合物、ピセン化合物、チオフェン化合物、ベンゾトリフラン化合物、ベンゾトリチオフェン化合物、ナフトジチオフェン化合物、ナフトチエノチオフェン化合物、ベンゾジフラン化合物、ベンゾジチオフェン化合物、ベンゾチオフェン化合物、ナフトビスベンゾチオフェン化合物、クリセノジチオフェン化合物、ベンゾチエノベンゾチオフェン化合物、インドロカルバゾール化合物等が挙げられる。
これらの中でも、フルオレン化合物、ナフトジチオフェン化合物、ナフトチエノチオフェン化合物、ベンゾジフラン化合物、ベンゾチオフェン化合物、ナフトビスベンゾチオフェン化合物、クリセノジチオフェン化合物、ベンゾチエノベンゾチオフェン化合物、インドロカルバゾール化合物等が好ましく、特にフルオレン化合物、クリセノジチオフェン化合物、ベンゾチエノベンゾチオフェン化合物、インドロカルバゾール化合物が好ましい。
【0096】
[受光層14]
正孔輸送層13と後述する電子輸送層15との間には、受光層14が設けられている。
受光層14の材料としては、光電変換機能を有する材料が挙げられる。
【0097】
受光層14は、一種または二種以上の材料からなる単層構造であってもよく、同一組成または異種組成の複数層からなる積層構造であってもよい。
中でも、光電変換効率を高める為には、受光層は少なくとも二種の材料(有機成分)を含有する層からなることが好ましい。
【0098】
一種の材料からなる単層構造である受光層14に用いられる材料としては、例えば、(i)クマリンおよびその誘導体、キナクリドンおよびその誘導体、フタロシアニンおよびその誘導体等が挙げられる。
二種の材料からなる単層構造である受光層14に用いられる材料としては、例えば、前述の(i)クマリンおよびその誘導体、キナクリドンおよびその誘導体、フタロシアニンおよびその誘導体と、(ii)フラーレンおよびその誘導体、その他アクセプター材料との組み合わせが挙げられる。これらの材料からなる受光層4の作製は、予め粉末を混合した状態で蒸着させて形成しても良いし、任意の割合で共蒸着することで形成しても良い。
三種の材料からなる単層構造である受光層14に用いられる材料としては、前述の(i)クマリンおよびその誘導体、キナクリドンおよびその誘導体、フタロシアニンおよびその誘導体、(ii)フラーレンおよびその誘導体、その他アクセプター材料、および(iii)正孔輸送材料との組み合わせが挙げられる。これらの材料からなる受光層14の作製は、予め粉末を混合した状態で蒸着させて形成しても良いし、任意の割合で共蒸着することで形成しても良い。
【0099】
(i)クマリン誘導体の具体例としては、クマリン6、クマリン30が挙げられる。キナクリドン誘導体の具体例としては、N,N-ジメチルキナクリドンが挙げられる。フタロシアニン誘導体の具体例としては、ホウ素サブフタロシアニンクロリド、ホウ素サブナフタロシアニンクロリド(SubNC)が挙げられる。
(ii)フラーレンおよびその誘導体の具体例としては、[60]フラーレン、[70]フラーレン、[6,6]-フェニル-C61-酪酸メチル([60]PCBM)が挙げられる。
(iii)正孔輸送材料の好ましい化合物および具体例としては、前述の正孔輸送層13で用いるものと同じものが挙げられる。
【0100】
また、光電変換機能を有する材料は受光層のみに含有されることに限定されるものではない。例えば、光電変換機能を有する材料は、受光層14に隣接した層(正孔輸送層13、または電子輸送層15)が含有していてもよい。
【0101】
[電子輸送層15]
受光層14と後述する第二の電極16との間には、電子輸送層15が設けられている。
電子輸送層15は、受光層14で発生した電子を第二の電極16へ輸送する役割と、電子輸送先の第二の電極16から受光層14に正孔が移動するのをブロックする役割とを有する。また用途によっては第二の電極16からの正孔注入をブロックする役割を有することもある。
【0102】
また、電子輸送層15に含有させることができる電子輸送材料は、公知の電子輸送材料であってよく、電子輸送材料としては、例えば、フラーレン、フラーレン誘導体、トリアジン誘導体、ビス(8-ヒドロキシキノリナート)マンガン、トリス(8-ヒドロキシキノリナート)アルミニウム、トリス(2-メチル-8-ヒドロキシキノリナート)アルミニウム、BCP(2,9-ジメチル-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン)、Bphen(4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン)、BAlq(ビス(2-メチル-8-キノリノラート)-4-(フェニルフェノラート)アルミニウム)、4,6-ビス(3,5-ジ(ピリジン-4-イル)フェニル)-2-メチルピリミジン、N,N’-ジフェニル-1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、およびN,N’-ジ(4-ピリジル)-1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド等が挙げられる。
【0103】
電子輸送層15は、一種または二種以上の材料からなる単層構造であってもよく、同一組成または異種組成の複数層からなる積層構造であってもよい。
【0104】
[第二の電極16]
電子輸送層15上には第二の電極16が設けられている。
第二の電極16の材料としては、例えば、インジウム-錫酸化物(ITO)、インジウム-亜鉛酸化物(IZO)、ナトリウム、ナトリウム-カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al2O3)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、金、白金、希土類金属、酸化モリブデン等が挙げられる。尚、前記第一の電極11と第二の電極16は同一であっても相異なっていてもよい。
【0105】
[各層の形成方法]
以上説明した第一の電極11、第二の電極16を除く各層は、それぞれの層の材料(必要に応じて結着樹脂等の材料、溶剤と共に)を、例えば真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB(Langmuir-Blodgett method)法等の公知の方法によって薄膜化することにより、形成することができる。
このようにして形成された各層の膜厚については特に制限はなく、状況に応じて適宜選択することができるが、通常は5nm以上5μm以下の範囲である。
【0106】
第一の電極11および第二の電極16は、電極材料を蒸着やスパッタリング等の方法によって薄膜化することにより、形成することができる。蒸着やスパッタリングの際に所望の形状のマスクを介してパターンを形成してもよく、蒸着やスパッタリング等によって薄膜を形成した後、フォトリソグラフィーで所望の形状のパターンを形成してもよい。
【0107】
第一の電極11および第二の電極16の膜厚は、1μm以下であることが好ましく、10nm以上200nm以下であることがより好ましい。
【0108】
第一の電極11および第二の電極16は、必要に応じてそれぞれを構成する材料を入れ替えても良い(逆型構造とも呼ばれる)。このような構造の場合、光は第二の電極16を通過して、受光層14に入射する構成の光電変換素子となる。
【0109】
本実施形態の光電変換素子を備えた撮像素子は、例えば、デジタルカメラやデジタルビデオカメラの撮像素子、および携帯電話等に内蔵された撮像素子に適用することができる。光センサは、例えば、テレビのリモコンやエアコンのスイッチ、自動ドアの開閉等に適用することができる。
【0110】
<<第2の実施形態>>
本発明の第2の実施形態による光電変換素子は、
図1に示す積層構成を備えた太陽電池である。太陽電池1は、第一の電極11と受光層14との間に正孔輸送促進層12および正孔輸送層13が設けられており、第二の電極16と受光層14との間には電子輸送層15が設けられている。ただし、これらの層のうちの一部の層が省略されていてもよく、また逆に他の層が追加されていてもよい。
【0111】
[第一の電極11]
第一の電極11は、例えば透明材料からなり、透明材料は第1の実施形態における透明材料を用いることができる。第一の電極11は任意の基材(例えば、ガラス、プラスチック、高分子フィルム等の透明基板)上に形成されていてもよい。
【0112】
[正孔輸送促進層12]
正孔輸送促進層12の材料は、第1の実施形態における正孔輸送促進層12の材料(式(1)で示される化合物)と同じである。正孔輸送促進層12の材料は、第1の実施形態における材料以外に従来公知の正孔輸送材料を含有してもよい。
【0113】
[正孔輸送層13]
正孔輸送層13の材料は、第1の実施形態における正孔輸送層13の材料と同じである。正孔輸送層13の材料は、第1の実施形態における正孔輸送材料以外に、従来公知の正孔輸送材料を含有してもよい。
【0114】
[受光層14]
受光層14の材料は、電子供与材料および電子受容材料を用いたものであればよく、電子供与材料と電子受容材料とが平面同士で結合された平面結合型でも、電子供与材料と電子受容材料とが混合して成膜されたバルクヘテロ結合型でもよい。
電子供与材料は特に限定されないが、有機半導体が好ましい。電子供与材料としては、例えば、ポリチオフェン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体等の高分子化合物およびそれらの共重合体、あるいはフタロシアニン誘導体およびその金属錯体、ポルフィリン誘導体およびその金属錯体、ペンタセン等のアセン誘導体、ジアミン誘導体等の低分子化合物等が挙げられる。電子供与材料は、本発明の効果を損なわない範囲において有機半導体とともに無機半導体を用いることもできる。
電子受容材料は特に限定されないが、有機半導体が好ましい。電子受容材料としては、例えば、フラーレン誘導体、ペリレン誘導体、ナフタレン誘導体等が挙げられる。
【0115】
[電子輸送層15]
電子輸送層15の材料は、第1の実施形態における電子輸送材料を用いることができる。また、電子輸送材料としてフッ化ナトリウム、フッ化セシウム等のアルカリ金属ハロゲン化物、フッ化カルシウム等のアルカリ土類金属ハロゲン化合物、炭酸セシウム等の炭酸塩、酸化チタン、酸化亜鉛等の無機系n型半導体を用いてもよい。
【0116】
[第二の電極16]
第二の電極16は、例えば、マグネシウム、カルシウム、ナトリウム、カリウム、チタン、インジウム、イットリウム、リチウム、ガドリニウム、アルミニウム、銀、スズ、鉛等の金属、またはこれらの合金が挙げられるが、これらに限定されない。
【0117】
第一の電極11および第二の電極16は、必要に応じてそれぞれを構成する材料を入れ替えても良い(逆型構造とも呼ばれる)。このような構造の場合、光は第二の電極16を通過して、受光層14に入射する構成の光電変換素子となる。
【0118】
[各層の形成方法]
各層の形成方法は特に限定されず、例えば基板上に、蒸着法、スピンコート法、キャスト法、パターン転写法等を用いて第一の電極11、正孔輸送促進層12、正孔輸送層13、受光層14、電子輸送層15、および第二の電極16を順次積層してもよいし、正孔輸送促進層12、正孔輸送層13、受光層14、および電子輸送層15を積層した後、この積層体に第一の電極11および第二の電極16をそれぞれ転写、蒸着、スパッタリング等によって形成してもよい。
【0119】
本発明の光電変換素子、および該素子を形成する各層の形成方法は、上述の実施形態に示した素子および方法に限定されない。例えば、第一の電極、受光層(または発光層)、電子輸送層、第二の電極の材料は公知の他の材料と適宜置き換えることができる。また、正孔輸送促進層および正孔輸送層は、式(1)で示される化合物と正孔輸送材料を混合して形成された層に置き換えることもできる。
【0120】
(光電変換素子に使用し得る化合物)
本発明は、光電変換素子に用いられる正孔の輸送能力を向上させることができる新規な化合物を提供するものである。なお、該化合物は、本発明の光電変換素子用材料にも含有される。
光電変換素子に使用し得る本発明の新規な化合物は、下記式(4)で示される。
係る式(4)で示される化合物は、上記式(1)で示される化合物のうち、より好ましい範囲の化合物に限定したものとなっている。
【0121】
【0122】
式(4)中、
Yは、下記式(5)または下記式(6)で表される縮環構造を表す:
【化31】
【化32】
X
3およびX
4は、各々独立に、窒素原子またはC-R
31を表す:
R
11、R
12、およびR
31は、
水素原子;
ハロゲン原子;
シアノ基;
ニトロ基;
ハロゲン原子で1つ以上置換されていてもよい炭素数1~18のアルキル基;
ハロゲン原子、シアノ基、および炭素数1~18のフルオロアルキル基からなる群から選択される少なくとも1種で置換されている炭素数6~18の芳香族炭化水素基;
炭素数1~18のアルキル基で置換されていてもよい炭素数6~18の芳香族炭化水素基;
ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1~18のアルキル基、および炭素数1~18のフルオロアルキル基からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数3~12の複素芳香族基;
互いに縮環を形成してなる炭素数4~14の芳香族炭化水素縮環基;または
互いに縮環を形成してなる炭素数3~12の複素芳香族縮環基;を表し、
これらの基が2つ以上組み合わさった基であってもよい:
R
11、およびR
12が縮環して環構造を形成しているとき、該環構造は、更に
ハロゲン原子;
シアノ基;
ニトロ基;
ハロゲン原子で1つ以上置換されていてもよい炭素数1~18のアルキル基;
ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1~18のアルキル基、および炭素数1~18のフルオロアルキル基からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数6~18の芳香族炭化水素基;
ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1~18のアルキル基、および炭素数1~18のフルオロアルキル基からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数3~12の複素芳香族基;
酸素原子(但し、カルボニル基に限る);および
ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1~18のアルキル基、および炭素数1~18のフルオロアルキル基からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよいメチレン基;からなる群から選択される少なくとも1種の基によって置換されていてもよい:
R
13、R
14、R
15、およびR
16は、各々独立に、
ハロゲン原子;
シアノ基;
ニトロ基;
ハロゲン原子で1つ以上置換されている炭素数1~18のアルキル基;
ハロゲン原子、シアノ基、および炭素数1~18のフルオロアルキル基からなる群から選択される少なくとも1種で置換されている炭素数6~14の芳香族炭化水素基;または
ハロゲン原子、シアノ基、および炭素数1~18のフルオロアルキル基からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数3~12の複素芳香族基、を表す:
L
2は、
水素原子;
ハロゲン原子;
シアノ基;
ニトロ基;
ハロゲン原子で1つ以上置換されていてもよい炭素数1~18のアルキル基;
ハロゲン原子、シアノ基、および炭素数1~18のフルオロアルキル基からなる群から選択される少なくとも1種で置換されている炭素数6~14の芳香族炭化水素基;
炭素数1~18のアルキル基で置換されていてもよい炭素数6~14の芳香族炭化水素基;または
ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1~18のアルキル基、および炭素数1~18のフルオロアルキル基からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数3~12の複素芳香族基、を表す:
nは、1から4の整数を表す。
【0123】
R11、R12、およびR31が、各々独立に、
水素原子;
フッ素原子;
シアノ基;
トリフルオロメチル基;
フッ素原子、シアノ基、トリフルオロメチル基からなる群から選択される少なくとも1種で置換されているフェニル基;
メチル基で置換されていてもよいフェニル基;
フッ素原子、シアノ基、トリフルオロメチル基からなる群から選択される少なくとも1種で置換されているナフチル基;
メチル基で置換されていてもよいナフチル基;
フッ素原子、シアノ基、メチル基、トリフルオロメチル基からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよいピリジル基;または
互いに縮環してなる炭素数4~14の芳香族炭化水素縮環基、であることが好ましく、素子の性能向上に資する点で、
R11、R12、およびR31が、各々独立に、
水素原子;
フッ素原子;
シアノ基;
トリフルオロメチル基;
フッ素原子、シアノ基、トリフルオロメチル基からなる群から選択される少なくとも1種で置換されているフェニル基;
フッ素原子、シアノ基、トリフルオロメチル基からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよいピリジル基;または
互いに縮環してなる炭素数4~10の芳香族炭化水素縮環基、であることがより好ましく、製造が容易な点で、R11、R12、およびR31が、各々独立に、
水素原子;
シアノ基;
フッ素原子、またはシアノ基で置換されているフェニル基;
フッ素原子、またはシアノ基で置換されていてもよいピリジル基;または
互いに縮環してなる炭素数4~10の芳香族炭化水素縮環基、であることがさらに好ましい。
【0124】
R13、R14、R15、およびR16が、各々独立に、
フッ素原子;
シアノ基;
炭素数1~6のフルオロアルキル基;
フッ素原子、シアノ基、および炭素数1~6のフルオロアルキル基からなる群から選択される少なくとも1種で置換されているフェニル基;または
フッ素原子、シアノ基、および炭素数1~6のフルオロアルキル基からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよいピリジル基、であることが好ましい。
R13、R14、R15、およびR16が、各々独立に、
フッ素原子;
シアノ基;
炭素数1~6のパーフルオロアルキル基;または
フッ素原子、シアノ基、および炭素数1~4のパーフルオロアルキル基からなる群から選択される少なくとも1種で置換されているフェニル基、であることがより好ましい。
R13、R14、R15、およびR16が、各々独立に、
フッ素原子;
シアノ基;または
炭素数1~3のパーフルオロアルキル基、であることがさらに好ましい。
R13、R14、R15、およびR16が、
シアノ基であることが特に好ましい。
【0125】
L2が、
水素原子;
フッ素原子;
シアノ基;
炭素数1~6のフルオロアルキル基;
フッ素原子、シアノ基、およびトリフルオロメチル基からなる群から選択される少なくとも1種で置換されているフェニル基;
炭素数1~6のアルキル基で置換されていてもよいフェニル基;または
フッ素原子、シアノ基、炭素数1~6のアルキル基、およびトリフルオロメチル基からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよいピリジル基、であることが好ましく、
L2が、
水素原子;
フッ素原子;
シアノ基;
炭素数1~3のフルオロアルキル基;であることがより好ましく、合成が容易になる点で、
L2が水素原子またはフッ素原子であることがさらに好ましい。
【0126】
上記式(4)で示される化合物は、上記式(1)で示される化合物に関する説明欄で上述したとおり、正孔輸送促進材のLUMO準位を深くし、正孔輸送材のHOMO準位に近づけることができる。
【0127】
式(4)で示される化合物の好ましい具体例としては、例えば、式(1)の具体例として挙げた化合物例のうち式(4)の条件を満足する化合物が挙げられる。より具体的には、例えば、上記(A-1)から(A-110)に記載の例示化合物が挙げられる。
式(4)の製造法は、前記(1)の製造法と同様な手法にて合成することができる。
【実施例0128】
以下に本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定して解釈されるものではない。
【0129】
[1H-NMR測定]
1H-NMRの測定には、Bruker ASCEND HD(400MHz;BRUKER製)を用いた。1H-NMRは、重クロロホルム(CDCl3)を測定溶媒とし、内部標準物質としてテトラメチルシラン(TMS)を用いて測定した。また、測定には市販の試薬を用いた。
【0130】
【0131】
[合成参考例1]
2,3-ジシアノ-1,4,5,7,12,14-ヘキサアザ-6,13-ジヒドロキシ-ペンタセン
【化34】
空気雰囲気下、1,2,3,4-フェナジンテトラオン(240mg,1.00mmol)、2、3-ジアミノ-5,6-ジシアノピラジン(160mg,1.00mmol)を酢酸(5mL)中に懸濁した後、一晩加熱還流した。反応混合物をろ過し、酢酸およびメタノールで洗浄することで、目的の2,3-ジシアノ-1,4,5,7,12,14-ヘキサアザ-6,13-ジヒドロキシ-ペンタセン(純度92%)を得た(246mg,0.67mmol,67%)。
1H-NMR(DMSO-d6)δ(ppm):8.27(ddd,J=6.8,6.2,1.6Hz,2H),8.52(dd,J=6.8,1.6Hz,2H),10.4(s,2H).
【0132】
[合成実施例1:化合物(A-1)の合成]
2,3-ジシアノ-1,4,5,7,12,14-ヘキサアザペンタセン-6,13-ジオン
【化35】
【0133】
空気雰囲気下、2,3-ジシアノ-1,4,5,7,12,14-ヘキサアザ-6,13-ジヒドロキシ-ペンタセン(1.00g,2.72mmol)を濃硝酸(20mL)中に懸濁した後、一晩100℃で加熱撹拌した。反応混合物を冷却後、アンモニア水で中和した。反応混合物より固体成分をろ取し、DMSO/酢酸エチルで再結晶することで、目的の2,3-ジシアノ-1,4,5,7,12,14-ヘキサアザペンタセン-6,13-ジオン(A-1)を得た(188mg,0.523mmol,19%)。
1H-NMR(DMSO-d6)δ(ppm):8.09(ddd,J=7.0,6.6,1.6Hz,2H),8.42(dd,J=7.0,1.6Hz,2H).
【0134】
[合成実施例2:化合物(A-60)の合成]
2-[(6H-ベンズ[g]インデノ[1,2-b]キノキサリン-6,11-ジオン)-13-インデン]プロパンジニトリル
【化36】
アルゴン雰囲気下、6H-ベンズ[g]インデノ[1,2-b]キノキサリン-6,11,13-トリオン(5.00g,16.0mmol)、プロパンジニトリル(3.17g,48.0mmol)をDMF(400mL)中に懸濁した。この懸濁液を60℃で3時間撹拌した。放冷後、沈殿物をろ過により回収した。得られた固体をDMSOにより再結晶することで、目的の2-[(6H-ベンズ[g]インデノ[1,2-b]キノキサリン-6,11-ジオン)-13-インデン]プロパンジニトリル(A-60)を得た。(4.90g,13.6mmol,85%)。
1H-NMR(CDCl
3)δ(ppm):7.76(td,J=7.8,1.3Hz,1H),7.84(td,J=7.8,1.3Hz,1H),7.92-7.95(m,2H),8.35-8.45(m,3H),8.62(dt,J=7.8,0.9Hz,1H).
【0135】
<耐熱性評価>
[耐熱実施例1]
合成実施例2で得られた化合物(A-60)10mgをガラス管に入れ、5×10-4Paの減圧下で封管した。得られたガラス管を285℃、50時間加熱したところ、HPLC測定による純度変化および変色は見られなかった。
【0136】
[耐熱比較例1]
下記の化合物(R-1)を、耐熱実施例1と同様な方法でガラス管を作製した。得られたガラス管を240℃に加熱したところ、10時間以内に黒色に変色し、著しい熱分解が見られた。
尚、化合物(R-1)はWO2008/072586の実施例5に記載の方法で合成した。
【化37】
【0137】
<ホールオンリーデバイスの作製1および評価1>
[素子実施例1]
第一の電極/第一の正孔注入層/正孔輸送層/正孔輸送促進層/第二の電極からなる構造を有するホールオンリーデバイスを作製し、該デバイスの正孔輸送特性を評価した。
(第一の電極)
第一の電極をその表面に備えた基板として、ITO膜(膜厚110nm)がストライプ状にパターンされたITO透明電極付きガラス基板を用意し、この基板をイソプロピルアルコールで洗浄した後、オゾン紫外線洗浄にて表面処理を行った。
【0138】
(真空蒸着の準備)
上記表面処理が施された基板の2面のうち、ITO膜が形成されている側の面上に、真空蒸着法で各層の真空蒸着を行い、各層を積層形成した。
まず、真空蒸着槽内に上記ガラス基板を導入し、1.0×10-4Paまで減圧した。そして、以下の順で、各層の成膜条件に従ってそれぞれ作製した。
【0139】
(第一の正孔注入層の作製)
ITO膜にMoO3を1nm製膜し、正孔注入層を作製した。
(正孔輸送層の作製)
正孔輸送材料として(HTL-1)を100nm成膜し、正孔輸送層を作製した。尚、(HTL-1)は特開2018-193371に記載の方法で合成した。
(正孔輸送促進層の作製)
昇華精製した化合物(A-60)を10nm成膜し、正孔輸送促進層を作製した。
【0140】
(第二の電極の作製)
Auを80nm成膜し、第二の電極を作製した。
【0141】
(ホールオンリーデバイスの正孔輸送能力評価)
素子実施例1のホールオンリーデバイスの第一の電極と第二の電極にそれぞれプラスとマイナスの電界をかけ、0.1mA/cm2の電流密度における電圧値を測定した。得られた結果を表1に示す。
【0142】
[素子比較例1]
実施例1において正孔輸送促進層の作製に用いた化合物(A-60)の代わりに、化合物(NPT)を用いたこと以外は、素子実施例1と同様の方法によりホールオンリーデバイスを作製した。得られたホールオンリーデバイスの正孔輸送能力を素子実施例1と同様の方法により評価した。結果を表1に示す。
【0143】
[素子比較例2]
正孔輸送促進層を有さないこと以外は、素子実施例1と同様の方法によりホールオンリーデバイスを作製した。得られたホールオンリーデバイスの正孔輸送能力を素子実施例1と同様の方法により評価した。結果を表1に示す。
【0144】
【0145】
正孔輸送促進材料として化合物(A-60)を用いた素子実施例1の素子(HOD電圧は1.21V)は、正孔輸送促進材料を用いなかった素子比較例2の素子(HOD電圧は2.71V)に比べHOD電圧が低下した。また、正孔輸送促進材料として化合物(A-60)を用いた素子実施例1の素子(HOD電圧は1.21V)は、公知の材料NPTを用いた素子比較例1の素子(HOD電圧は1.29V)に比べHOD電圧が低下した。
【0146】
<光電変換素子の作製および評価>
[素子実施例2]
基板/第二の電極16/電子輸送層15/受光層14/正孔輸送層13/正孔輸送促進層12/第一の電極11からなる積層構成を有する光電変換素子1を作製し、該光電変換素子の暗電流及び外部量子効率を評価した。
【0147】
(基板、第二の電極16の用意)
第二の電極をその表面に備えた基板として、2mm幅のITO膜(膜厚110nm)がストライプ状にパターンされたITO透明電極付きガラス基板を用意した。ついで、この基板をイソプロピルアルコールで洗浄した後、オゾン紫外線洗浄にて表面処理を行った。
(真空蒸着の準備)
洗浄後の表面処理が施された基板上に、真空蒸着法で各層の真空蒸着を行い、各層を積層形成した。
まず、真空蒸着槽内に上記ガラス基板を導入し、7.0×10-5Paまで減圧した。そして、以下の順で、各層の成膜条件に従ってそれぞれ作製した。
(電子輸送層15の作製)
昇華精製した化合物4,6-ビス(3,5-ジ(ピリジン-4-イル)フェニル)-2-メチルピリミジンを0.03nm/秒の速度で10nm成膜し、電子輸送層15を作製した。
(受光層14の作製)
N,N-ジメチルキナクリドン及びフラーレンC60を4:1(質量比)の割合で250nm成膜し、受光層14を作製した。成膜速度は0.13nm/秒であった。
(正孔輸送層13の作製)
正孔輸送材料として(HTL-1)を0.10nm/秒の速度で10nm成膜し、正孔輸送層13を作製した。
(正孔輸送促進層12の作製)
化合物(A-60)を0.20nm/秒の速度で10nm成膜し、正孔輸送促進層12を作製した。
(第一の電極11の作製)
最後に、基板上のITOストライプと直行するようにメタルマスクを配し、第一の電極11を成膜した。第一の電極は、Auを80nm成膜することで作製した。Auの成膜速度は0.1nm/秒であった。
【0148】
以上により、面積4mm
2の
図1に示す光電変換素子1を作製した。上記のようにして作製した光電変換素子に、第二の電極16側に電子が、第一の電極11側に正孔が輸送されるように、絶対値として2.5Vの電圧を印加したときの、暗所での電流(暗電流)及び外部量子効率を評価した。暗電流(A/cm
2)の測定は、ケースレー社製ソース・メジャー・ユニット2636Bを用いて評価した。外部量子効率の測定には太陽電池分光感度測定装置(相馬光学社製)を用いた。照射光の波長は560nmで、強度50μW/cm
2で測定を行った。結果を表2に示す。なお外部量子効率は、後述する素子比較例4における結果を基準値(100)とした相対値である。暗電流は数値が低いほど性能に優れ、外部量子効率は数値が高いほど性能に優れることを示す。
【0149】
[素子比較例3]
正孔輸送促進層12の作製において、化合物(A-60)の代わりに、化合物(NPT)を用いたこと以外は、素子実施例2と同様の方法により、素子比較例3の光電変換素子を作製し、素子実施例2と同じ方法により暗電流及び外部量子効率を測定した。結果を表2に示す。
【0150】
[素子比較例4]
正孔輸送促進層12を設けなかったこと以外は、素子実施例2と同様の方法により、素子比較例4の光電変換素子を作製し、素子実施例2と同じ方法により暗電流及び外部量子効率を測定した。結果を表2に示す。
【0151】
【0152】
表2に示すとおり、本発明の光電変換素子用材料を用いた素子実施例の素子では、素子比較例の素子と比べて暗電流が抑制され、且つ、高い外部量子効率が得られた。
【0153】
本発明の光電変換素子は、上記式(1)で示される化合物を含むことにより、正孔の輸送能力を向上させることができ、光電変換素子に用いた場合にはより効率的に光電変換を行うことができる。また、本発明の光電変換素子は、上記式(1)で示される化合物を含むことにより、暗電流が抑制され、外部量子効率も高めることができる。