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特開2024-117732二成分現像剤、現像剤収容ユニット、画像形成装置、及び、画像形成方法
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  • 特開-二成分現像剤、現像剤収容ユニット、画像形成装置、及び、画像形成方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117732
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】二成分現像剤、現像剤収容ユニット、画像形成装置、及び、画像形成方法
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/087 20060101AFI20240822BHJP
   G03G 9/113 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
G03G9/087 325
G03G9/087 331
G03G9/113 352
G03G9/113 361
G03G9/113 362
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024013844
(22)【出願日】2024-02-01
(31)【優先権主張番号】P 2023023505
(32)【優先日】2023-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100116713
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 正己
(72)【発明者】
【氏名】荻野 弘太郎
(72)【発明者】
【氏名】山内 祥敬
(72)【発明者】
【氏名】森 彩華
【テーマコード(参考)】
2H500
【Fターム(参考)】
2H500AA01
2H500AB04
2H500AB05
2H500CA02
2H500CA06
2H500CA31
2H500CA34
2H500CB14
2H500EA42B
2H500EA44B
2H500FA04
(57)【要約】
【課題】トナーがキャリア表面に付着するトナースペントを抑制し、経時帯電の低下を抑制することが可能な二成分現像剤を提供すること。
【解決手段】トナーと、キャリアと、からなる二成分現像剤であって、
前記トナーが、少なくとも1種のポリエステル樹脂と、スチレン系樹脂又は芳香族系石油樹脂と、フィッシャートロプッシュワックスと、を含有し、
前記キャリアが、導電性微粉末を含有したシリコーン樹脂被覆層を含有する
ことを特徴とする二成分現像剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナーと、キャリアと、からなる二成分現像剤であって、
前記トナーが、少なくとも1種のポリエステル樹脂と、スチレン系樹脂又は芳香族系石油樹脂と、フィッシャートロプッシュワックスと、を含有する粉砕トナーであり、
前記キャリアが、導電性微粉末を含有したシリコーン樹脂被覆層を有する
ことを特徴とする二成分現像剤。
【請求項2】
前記スチレン系樹脂がスチレン-α-メチルスチレン共重合体である、請求項1に記載の二成分現像剤。
【請求項3】
前記スチレン系樹脂又は芳香族系石油樹脂の添加量が、前記トナー100質量部に対して、2質量部以上15質量部以下である、請求項1に記載の二成分現像剤。
【請求項4】
前記導電性微粉末がカーボンブラックであり、前記シリコーン樹脂被覆層がアミノシランカップリング剤を含む、請求項1に記載の二成分現像剤。
【請求項5】
前記アミノシランカップリング剤がアミノエチルアミノプロピルトリメトキシシランである、請求項4に記載の二成分現像剤。
【請求項6】
請求項1に記載の二成分現像剤を収容したことを特徴とする現像剤収容ユニット。
【請求項7】
静電潜像担持体と、前記静電潜像担持体を帯電させる帯電手段と、前記静電潜像担持体上に静電潜像を形成する露光手段と、前記静電潜像担持体上に形成された静電潜像を、請求項1に記載の二成分現像剤を用いて現像してトナー像を形成する現像手段と、前記静電潜像担持体上に形成されたトナー像を記録媒体に転写する転写手段と、前記記録媒体に転写されたトナー像を定着させる定着手段とを有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
静電潜像担持体上に静電潜像を形成する工程と、前記静電潜像担持体上に形成された静電潜像を、請求項1に記載の二成分現像剤を用いて現像してトナー像を形成する工程と、前記静電潜像担持体上に形成されたトナー像を記録媒体に転写する工程と、前記記録媒体に転写されたトナー像を定着させる工程とを有することを特徴とする画像形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は二成分現像剤、現像剤収容ユニット、画像形成装置、及び、画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子複写機や静電記録装置に用いられる現像方法として、現像剤を搬送部材によって搬送し、この現像剤によって感光体上に形成された静電潜像を可視像化する方法が周知である。この現像方法では、一般に、トナーのみからなる一成分系の現像剤、あるいはトナーとキャリアとからなる二成分系の現像剤が用いられている。
【0003】
特許文献1には、耐熱性および粉砕性の高いスチレン系樹脂が粉砕トナーの最表面に露出し、内部にも一定量のスチレン系樹脂が存在し、かつ耐熱性の低い材料、ワックス類等が内包された粉砕トナーを用いることにより低温定着性および耐熱保存性を両立できたことが記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の二成分系の現像剤では、トナーがキャリア表面に付着するトナースペントが問題になっている。トナースペントによるキャリア劣化の中で問題になるのがキャリアの帯電能力の低下である。キャリアの帯電能力が低下した場合、トナーが飛散し、画像形成機内が汚染され、また、画像濃度が安定しないという問題があった。
【0005】
本発明は、トナーがキャリア表面に付着するトナースペントを抑制し、経時帯電の低下を抑制することが可能な二成分現像剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本発明は以下に記載する通りの構成を有する二成分現像剤である。
トナーと、キャリアと、からなる二成分現像剤であって、
前記トナーが、少なくとも1種のポリエステル樹脂と、スチレン系樹脂又は芳香族系石油樹脂と、フィッシャートロプッシュワックスと、を含有し、
前記キャリアが、導電性微粉末を含有したシリコーン樹脂被覆層を有する
ことを特徴とする二成分現像剤。
【発明の効果】
【0007】
本発明の二成分現像剤を用いることにより、トナーがキャリア表面に付着するトナースペントを抑制し、経時帯電の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の実施形態の画像形成装置の一例を示す概略図である。
図2図2は、プロセスカートリッジの一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明におけるトナーは粉砕法によって製造される粉砕トナーである。
粉砕法は、トナー成分である結着樹脂、着色剤、ワックスを溶融混練し、混練物を冷却後、粉砕及び分級することによってトナーを製造する方法である。
キャリアへのトナースペントの要因の一つとしては、粉砕によって得られたトナーの表面におけるトナー中のワックス成分の露出量が多いことが考えられる。
【0010】
そこで、本発明においてはトナーの結着樹脂の成分としてスチレン系樹脂又は芳香族系石油樹脂を用いた。
スチレン系樹脂及び芳香族系石油樹脂は粉砕性に優れており、この粉砕性に優れたスチレン系樹脂又は芳香族系石油樹脂を成分として含有することで、トナーの粉砕工程において特異的にスチレン系樹脂又は芳香族系石油樹脂の界面で粉砕が発生する。このため、粉砕表面に露出するワックス成分が減少させることができる。
【0011】
<スチレン系樹脂>
前記スチレン系樹脂とは、スチレン骨格を有する樹脂であり、スチレン又はスチレン置換体を含む単独重合体又は共重合体である。
前記スチレン系樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリスチレン、クロロポリスチレン、ポリα-メチルスチレン、スチレン/クロロスチレン共重合体、スチレン/プロピレン共重合体、スチレン/ブタジエン共重合体、スチレン/塩化ビニル共重合体、スチレン/酢酸ビニル共重合体、スチレン/マレイン酸共重合体、スチレン-α―メチルスチレン共重合体などが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、スチレン-α―メチルスチレン共重合体が好ましい。
前記スチレン樹脂としては、適宜合成してもよいし、市販品を用いてもよい。
前記市販品としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、FTR-2140(スチレン-α―メチルスチレン共重合体、三井化学株式会社製)、SX100(スチレン樹脂、ヤスハラケミカル株式会社製)などが挙げられる。
【0012】
<芳香族系石油樹脂>
前記芳香族系石油樹脂とは、石油のC9留分であるスチレン、ビニルトルエン、インデン等を原料として合成した樹脂である。
前記芳香族系石油樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、M-135(水素化石油樹脂、荒川化学工業株式会社製)などが挙げられる。
【0013】
前記スチレン系樹脂又は芳香族系石油樹脂の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、トナー100質量部に対して、1質量部以上16質量部以下が好ましく、2質量部以上15質量部以下がより好ましい。
【0014】
<ポリエステル樹脂>
ポリエステル樹脂としては、一般公知のアルコールとカルボン酸との重縮合反応によって得られるものを用いることができる。
【0015】
前記アルコールとしては、例えば、ジオール類、エーテル化ビスフェノール類、これらを炭素数3~22の飽和もしくは不飽和の炭化水素基で置換した二価のアルコール単量体、三価以上の高アルコール単量体などが挙げられる。
前記のジオール類としては、例えば、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4-ブテンジオールなどが挙げられる。
前記エーテル化ビスフェノール類としては、例えば、1,4-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ポリオキシエチレン化ビスフェノールA、ポリオキシプロピレン化ビスフェノールA、ビスフェノールAプロピレンオキサイド、ビスフェノールAエチレンオキサイドなどが挙げられる。
前記三価以上の高アルコール単量体としては、例えば、ソルビトール、1,2,3,6-ヘキサンテトロール、1,4-サルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、蔗糖、1,2,4-ブタントリオール、1,2,5-ペンタントリオール、グリセロール、2-メチルプロパントリオール、2-メチル-1,2,4-ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5-トリヒドロキシメチルベンゼンなどが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0016】
前記カルボン酸としては、例えば、モノカルボン酸、二価の有機酸単量体、これらの酸の無水物、低級アルキルエステルとリノレイン酸の二量体、三価以上の多価カルボン酸単量体などが挙げられる。
前記モノカルボン酸としては、例えば、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸などが挙げられる。
前記二価の有機酸単量体としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、メサコン酸、シトラコン酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、マロン酸、これらを炭素数3~22の飽和もしくは不飽和の炭化水素基で置換したものなどが挙げられる。
前記三価以上の多価カルボン酸単量体としては、例えば、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸、1,2,5-ベンゼントリカルボン酸、2,5,7-ナフタレントリカルボン酸、1,2,4-ナフタレントリカルボン酸、1,2,4-ブタントリカルボン酸、1,2,5-ヘキサントリカルボン酸、1,3-ジカルボキシル-2-メチル-2-メチレン
カルボキシプロパン、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8-オクタンテトラカルボン酸エンボール三量体酸、これらの酸の無水物などが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0017】
前記ポリエステル樹脂の分子量としては、3,500以上5,500以下であり、4,000以上4,500以下が好ましい。
【0018】
前記ポリエステル樹脂の分子量の測定方法としては、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により求められるTHF可溶分の分子量分布から求めることができる。検量線は標準ポリスチレン試料を用いて作成することができる。
【0019】
前記ポリエステル樹脂の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、トナーに対して、70質量%以上90質量%以下が好ましく、75質量%以上85質量%以下がより好ましい。
【0020】
<その他の成分>
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、
例えば、着色剤、樹脂微粒子、帯電制御剤、外添剤、流動性向上剤、クリーニング性向上剤、磁性材料などが挙げられる。
【0021】
-着色剤-
本発明のトナーに用いる着色剤としては、例えば、カーボンブラック、ランプブラック、鉄黒、アニリンブルー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ハンザイエローG、ローダミン6Cレーキ、カルコオイルブルー、クロムイエロー、キナクリドン、ベンジジンイエロー、ローズベンガル、トリアリルメタン系染料等の染料や顔料など、従来公知の染料や顔料を使用することができる。
これらは、単独あるいは混合して使用することが可能であり、ブラックトナーやフルカラートナーとしても使用できる。
【0022】
前記着色剤の含有量としては、トナーの結着樹脂成分に対して、1質量%以上30質量%以下が好ましく、3質量%以上20質量%以下がより好ましい。
【0023】
-帯電制御剤-
前記帯電制御剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ニグロシン系染料、トリフェニルメタン系染料、クロム含有金属錯体染料、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、四級アンモニウム塩(フッ素変性四級アンモニウム塩を含む)、アルキルアミド、燐の単体又は化合物、タングステンの単体又は化合物、フッ素系活性剤、サリチル酸金属塩、サリチル酸誘導体の金属塩などが挙げられる。具体的には、ニグロシン系染料のボントロン03、四級アンモニウム塩のボントロンP-51、含金属アゾ染料のボントロンS-34、オキシナフトエ酸系金属錯体のE-82、サリチル酸系金属錯体のE-84、フェノール系縮合物のE-89(以上、オリエント化学工業株式会社製)、四級アンモニウム塩モリブデン錯体のTP-302、TP-415、アゾ鉄化合物T-77(以上、保土谷化学工業株式会社製)、LRA-901、ホウ素錯体であるLR-147(日本カーリット社製)、銅フタロシアニン、ペリレン、キナクリドン、アゾ系顔料、その他スルホン酸基、カルボキシル基、四級アンモニウム塩等の官能基を有する高分子系の化合物などが挙げられる。
【0024】
-外添剤-
前記外添剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム等の脂肪酸金属塩、チタニア、アルミナ、酸化錫、酸化アンチモン、酸化チタン等の金属酸化物、シリカ、疎水性シリカ、フルオロポリマーなどが挙げられる。これらの中でも、疎水性シリカ、チタニア、酸化チタン、アルミナが好ましい。
前記シリカ及び前記酸化チタンは、後述する流動性向上剤により表面処理を行い、疎水性シリカ、疎水性酸化チタンとして使用するのが好ましい。
前記シリカとしては、例えば、R972、R974、RX200、RY200、R202、R805、R812(いずれも、日本アエロジル社製)、HDK-2000(クラリアント株式会社製)などが挙げられる。
前記チタニアとしては、例えば、P-25(日本アエロジル社製)、STT-30、STT-65C-S(いずれも、チタン工業株式会社製)、TAF-140(富士チタン工業株式会社製)、MT-150W、MT-500B、MT-600B、MT-150A(いずれも、テイカ株式会社製)などが挙げられる。
前記酸化チタンとしては、例えば、T-805(日本アエロジル株式会社製)、STT-30A、STT-65S-S(いずれも、チタン工業株式会社製)、TAF-500T、TAF-1500T(いずれも、富士チタン工業株式会社製)、MT-100S、MT-100T(いずれも、テイカ株式会社製)、IT-S(石原産業株式会社製)などが挙げられる。
【0025】
-流動性向上剤-
前記流動性向上剤としては、表面処理を行って、疎水性を上げ、高湿度下においても流動性や帯電特性の悪化を防止することが可能なものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤、シリコーンオイル、変性シリコーンオイルなどが挙げられる。
【0026】
<キャリア>
前記キャリアとしては、芯材と、前記芯材を被覆するシリコーン樹脂被覆層を有するものである。
【0027】
-芯材-
前記芯材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、50emu/g~90emu/gのマンガン-ストロンチウム系材料、50emu/g~90emu/gのマンガン-マグネシウム系材料、100emu/g以上の鉄粉、75emu/g~120emu/gのマグネタイト等の高磁化材料、30emu/g~80emu/gの銅-亜鉛系等の低磁化材料などが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0028】
前記芯材の体積平均粒子径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10μm以上150μm以下が好ましく、40μm以上100μm以下がより好ましい。
【0029】
シリコーン樹脂とは、一般的に知られているシリコーン樹脂全てを指し、オルガノシロサン結合のみからなるストレートシリコーンや、アルキド、ポリエステル、エポキシ、アクリル、ウレタンなどで変性したシリコーン樹脂などが挙げられる。
シリコーン樹脂としては、市販品を用いることができ、ストレートシリコーン樹脂の市販品としては、例えば、信越化学工業株式会社製のKR271、KR255、KR152、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製のSR2400、SR2406、SR2410などが挙げられる。この場合、シリコーン樹脂単体で用いることも可能であるが、架橋反応する他成分、帯電量調整成分等を同時に用いることも可能である。更に、変性シリコーン樹脂としては、信越化学工業株式会社製のKR206(アルキド変性)、KR5208(アクリル変性)、ES1001N(エポキシ変性)、KR305(ウレタン変性)、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製のSR2115(エポキシ変性)、SR2110(アルキド変性)などが挙げられる。
【0030】
--導電性微粉末--
導電性微粉末としては、カーボンブラック、インジウムドープ酸化スズ、タングステンドープ酸化スズ、リンドープ酸化スズ、ニオブ、タンタル、五酸化二アンチモンドープ酸化スズ、などがあげられる。
【0031】
シリコーン樹脂に対する導電性粒子の投入部数としては、樹脂100質量部に対して30質量部以上50質量部以下が好ましく、樹脂100質量部に対して35質量部以上45質量部以下がより好ましい。
【0032】
-その他の成分-
その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シランカップリング剤、無機粒子などが挙げられる。
【0033】
--シランカップリング剤--
シランカップリング剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、r-クロルプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、r-アニリノプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、オクタデシルジメチル[3-(トリメトキシシリル)プロピル]アンモニウムクロライド、r-クロルプロピルメチルジメトキシシラン、メチルトリクロルシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、アリルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、1,3-ジビニルテトラメチルジシラザン、メタクリルオキシエチルジメチル(3-トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライドなどが挙げられる。前記シランカップリング剤としては、アミノシランカップリング剤が好ましく、アミノシランカップリング剤としては、アミノエチルアミノプロピルトリメトキシシランが好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0034】
シランカップリング剤としては、市販品を用いることができる。前記市販品としては、例えば、AY43-059、SR6020、SZ6023、SH6026、SH6020、SZ6032、SZ6050、AY43-310M、SZ6030、SH6040、AY43-026、AY43-031、sh6062、Z-6911、sz6300、sz6075、sz6079、sz6083、sz6070、sz6072、Z-6721、AY43-004、Z-6187、AY43-021、AY43-043、AY43-040、AY43-047、Z-6265、AY43-204M、AY43-048、Z-6403、AY43-206M、AY43-206E、Z6341、AY43-210MC、AY43-083、AY43-101、AY43-013、AY43-158E、Z-6920、Z-6940(東レ・シリコーン社製)などが挙げられる。
【0035】
シランカップリング剤の含有量は、シリコーン樹脂に対して、0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましい。
【0036】
また、本発明においてはキャリアとして、キャリア芯材の表面に導電性微粉末を含有したシリコーン樹脂被覆層を形成したキャリアを用いる。
キャリア芯材の表面をシリコーン樹脂で被覆することで、トナーのキャリアへのスペントを抑制することができる。スペント抑制効果を高めるためには、キャリア表面をシリコーン樹脂で完全被覆することが好ましい。キャリア表面をシリコーン樹脂で被覆すると、キャリアの抵抗が高まるため、シリコーン樹脂被覆層中に導電性微粒子を含有させ、キャリアの抵抗を調整する。
【0037】
トナー及びキャリアを上記のような構成とすることにより、トナー表面におけるワックスの露出量を減らしてトナーのスペント性が抑制されるとともに、キャリアのスペント性も抑制されるため、経時帯電能力の低下が抑制される。
【0038】
また、本発明のトナーは離型剤としてフィッシャートロプッシュワックスを用いる。
フィッシャートロプッシュワックスとは、一酸化炭素の接触水素化反応であるフィッシャートロプッシュ反応を利用して製造される、イソ(iso)構造分子や側鎖が少ない、直鎖炭化水素化合物である。
フィッシャートロプッシュワックスとしては日本精蝋株式会社製のFNP-0090(凝結点90℃)を好ましく用いることができる。
【0039】
フィッシャートロプッシュワックスの添加量についても特に制限されるものではないが、例えば、トナー全体量を100重量%としたときに、ワックス類の添加量を1質量%以上5質量%以下の範囲内の値とするのが好ましい。
【0040】
(現像剤収容ユニット)
本発明における現像剤収容ユニットとは、現像剤を収容する機能を有するユニットに、現像剤を収容したユニットのことをいう。
ここで、現像剤収容ユニットの態様としては、現像剤入り容器、現像器、プロセスカートリッジがある。
現像剤入り容器とは、現像剤を収容した容器のことをいう。
現像器は、現像剤を収容し現像する手段を有するものをいう。
プロセスカートリッジとは、少なくとも像担持体と現像手段とを一体とし、画像形成装置に対して着脱可能であるものをいう。帯電手段、露光手段、クリーニング手段の少なくとも一つと、像担持体と現像手段とを一体としてもよい。
【0041】
(画像形成装置)
次に、本発明の画像形成装置により画像を形成する方法を実施する一の態様について、
図1を参照しながら説明する。本実施形態の画像形成装置としては、プリンターが例として示されているが、画像形成装置は、複写機、ファクシミリ、複合機等のトナーを用いて画像を形成することが可能であれば、特に限定されない。
画像形成装置は、給紙部210と、搬送部220と、作像部230と、転写部240と、定着器250とを備えている。
給紙部210は、給紙される紙Pが積載された給紙カセット211と、給紙カセット211に積載された紙Pを一枚ずつ給紙する給紙ローラ212を備えている。
【0042】
搬送部220は、給紙ローラ212により給紙された紙Pを転写部240の方向へ搬送するローラ221と、ローラ221により搬送された紙Pの先端部を挟み込んで待機し、紙を所定のタイミングで転写部240に送り出す一対のタイミングローラ222と、カラートナー像が定着した紙Pを排紙トレイ224に排出する排紙ローラ223を備えている。
【0043】
作像部230は、所定の間隔をおいて、図中、左方から右方に向かって順に、イエロートナーを有した現像剤を用いて画像を形成する画像形成ユニットYと、シアントナーを有した現像剤を用いる画像形成ユニットCと、マゼンタトナーを有した現像剤を用いる画像形成ユニットMと、ブラックトナーを有した現像剤を用いる画像形成ユニットKと、帯電器232、露光器233を備えている。露光器233は光源233aとポリゴンミラー233bを有する。
なお、画像形成ユニット(Y,C,M,K)のうち、任意の画像形成ユニットを示す場合には、画像形成ユニットという。
【0044】
また、現像剤は、トナーとキャリアを有する。4つの画像形成ユニット(Y,C,M,K)は、それぞれに用いられる現像剤が異なるのみで、機械的な構成は実質的に同一である。
【0045】
転写部240は、駆動ローラ241及び従動ローラ242と、駆動ローラ241の駆動に伴い、図中、反時計回りに回転することが可能な中間転写ベルト243と、中間転写ベルト243を挟んで、感光体ドラム231に対向して設けられた一次転写ローラ(244Y,244C,244M,244K)と、トナー像の紙への転写位置において中間転写ベルト243を挟んで対向して設けられた二次対向ローラ245及び二次転写ローラ246を備えている。
【0046】
定着器250は、ヒータが内部に設けられており、紙Pを加熱する定着ベルト251と、該定着ベルト251に対して回転可能に加圧することによりニップを形成する加圧ローラ252とを備えている。これにより、紙P上のカラートナー像に熱と圧力が印加されて、カラートナー像が定着する。カラートナー像が定着した紙Pは、排紙ローラ223により排紙トレイ224に排紙され、一連の画像形成プロセスが完了する。
【0047】
(プロセスカートリッジ)
本発明に関するプロセスカートリッジは、各種画像形成装置に着脱可能に成型されており、静電潜像を担持する静電潜像担持体と、静電潜像担持体上に担持された静電潜像を本発明の現像剤で現像してトナー像を形成する現像手段を少なくとも有する。なお、プロセスカートリッジは、必要に応じて、他の手段をさらに有していてもよい。
【0048】
前記現像手段としては、本発明の現像剤を収容する現像剤収容部と、現像剤収容部内に収容された現像剤を担持するとともに搬送する現像剤担持体を少なくとも有する。なお、現像手段は、担持する現像剤の厚さを規制するため規制部材等をさらに有してもよい。
【0049】
図2に、本発明に関するプロセスカートリッジの一例を示す。プロセスカートリッジ110は、感光体ドラム10、コロナ帯電器58、現像器40、転写ローラ80及びクリーニング装置90を有する。
【実施例0050】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。また、以下の記載においては特に明記しない限り、「部」は「質量部」を示し、「%」は「質量%」を示す。
【0051】
<非晶質ポリエステル樹脂1の合成>
冷却管、撹拌機、及び窒素導入管を装備した反応槽中に、下記表1に示すモノマー種及び縮合触媒としてのテトラブトキシチタネートを入れ、窒素気流下、生成する水を留去しながら、230℃で6時間反応させた。 次に、5mmHg~20mmHgの減圧下、1時間反応させ実施例で使用する[非晶質ポリエステル樹脂1]を得た。表1において、ビスフェノールA(2,2)プロピレンオキサイドが示す“25mol%”とは、酸成分50mol%、アルコール成分50mol%としたときのアルコール成分中の割合を示す。
【0052】
【表1】
【0053】
[実施例1]
<トナー1の作製>
(トナー母体粒子1の処方)
・非晶質ポリエステル樹脂1 75部
・フィッシャートロプッシュワックス 6部
(FNP-0090、日本精蝋株式会社製)
・スチレン系樹脂(FTR-2140 三井化学株式会社製) 7部
・着色剤(カーボンブラック #44、三菱化成株式会社製) 11部
・帯電制御剤(T-77、保土谷化学工業株式会社製) 1部
【0054】
上記の処方に従いトナー原材料を、へンシェルミキサー(三井三池化工機株式会社製、FM20B)を用いて予備混合した後、二軸混練機(株式会社池貝製、PCM-30)で120℃の温度で溶融、混練した。
得られた混練物はローラにて2.7mmの厚さに圧延した後にベルトクーラーにて室温まで冷却し、ハンマーミルにて200μm~300μmに粗粉砕した。
次いで、超音速ジェット粉砕機ラボジェット(日本ニューマチック工業株式会社製)を用いて微粉砕した後、気流分級機(日本ニューマチック工業株式会社製、MDS-I)で重量平均粒径が5.8±0.2μmとなるようにルーバー開度を適宜調整しながら分級し、実施例1の[トナー母体粒子1]を得た。
【0055】
(外添処理)
[トナー母体粒子1]100部に対し、外添剤としてHDK-2000(クラリアント株式会社製)1部を添加し、ヘンシェルミキサーで撹拌混合して、[トナー母体粒子1]に外添処理を施して[トナー1]を作製した。
【0056】
<キャリア1の作製>
シリコーン樹脂溶液RSR213(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)200部及び導電性微粒子としてカーボンブラック(BP-2000、キャボット社製)3部、アミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン(SH6020:東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)0.8部をトルエン中に溶解又は分散させ、塗布液を得た。
スピラコーター(岡田精工株式会社製)により、塗布液をフェライト粉DFC-400M(Mnフェライト)(DOWAIPクリエイション社製)2500部に塗布した後、300℃の電気炉を用いて2時間焼成し、[キャリア1]を得た。
【0057】
<キャリア2の作製>
シリコーン樹脂溶液RSR213(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)200部
をトルエン中に溶解又は分散させ、塗布液を得た。スピラコーター(岡田精工株式会社製)により、塗布液をフェライト粉DFC-400M(Mnフェライト)(DOWAIPクリエイション社製)2500部に塗布した後、300℃の電気炉を用いて2時間焼成し、[キャリア2]を得た。
【0058】
<二成分現像剤1の作製>
[トナー1]93部及び[キャリア1]7部を、ターブラーミキサーT2C型(シンマルエンタープライゼス社製)を用いて、32rpmで7分間混合し、[二成分現像剤1]を得た。
【0059】
[実施例2~6、比較例1~3]
<トナー2~9の作製>
実施例1における[トナー母体粒子1]の作製において、樹脂の種類、樹脂の配合量、ワックスの種類を表2に示す処方に変更した以外は[トナー母体粒子1]の作製と同様にして[トナー母体粒子2]~[トナー母体粒子9]を作成した。
次いで、[トナー1]の作製と同様にして[トナー母体粒子2]~[トナー母体粒子9]に外添処理を施して[トナー2]~[トナー9]を作製した。
表2に[トナー1]~[トナー9]の処方を示す。
また、表2中の商品名は以下のものを指す。
・M-135(荒川化学工業株式会社製、水素化石油樹脂)
【0060】
<二成分現像剤2~8の作製>
[二成分現像剤1]の作製において、[トナー1]を[トナー2]~[トナー8]に変えた以外は[二成分現像剤1]の作製と同様にして[二成分現像剤2]~[二成分現像剤8]を作製した。
【0061】
<二成分現像剤9の作製>
[二成分現像剤1]の作製において、[キャリア1]を[キャリア2]に変えた以外は[二成分現像剤1]の作製と同様にして[二成分現像剤9]を作製した。
【0062】
[経時帯電安定性の評価]
上記で得た[二成分現像剤1]~[二成分現像剤9]を用いて以下の評価方法で[経時帯電安定性]を評価した。
(評価方法)
デジタルフルカラープリンターimagio MP C5000(株式会社リコー製)を用いて10000枚通紙した時点の帯電量を、ブローオフ帯電量測定装置(TB-200 東芝ケミカル株式会社製)を用いて測定した。
次に50000枚通紙した時点の帯電量を、前記ブローオフ帯電量測定装置を用いて測定した。
下記の式で得られる数値を帯電安定性指標とした。
帯電安定性指標(%)
=[50000枚通紙時の帯電量/10000枚通紙時の帯電量]×100
経時帯電性指標が90%以上で◎、70%以上で〇、70%未満を×として判定した。
(評価基準)
◎ : 90%以上
〇 : 70%以上90%未満
× : 70%未満。
評価結果を表2に示した。
【0063】
【表2】
【0064】
本発明の態様としては、例えば、以下のものなどが挙げられる。
(1)トナーと、キャリアと、からなる二成分現像剤であって、
前記トナーが、少なくとも1種のポリエステル樹脂と、スチレン系樹脂又は芳香族系石油樹脂と、フィッシャートロプッシュワックスと、を含有する粉砕トナーであり、
前記キャリアが、導電性微粉末を含有したシリコーン樹脂被覆層を有する
ことを特徴とする二成分現像剤。
(2)前記スチレン系樹脂がスチレン-α-メチルスチレン共重合体である、上記(1)に記載の二成分現像剤。
(3)前記スチレン系樹脂又は芳香族系石油樹脂の添加量が、前記トナー100質量部に対して、2質量部以上15質量部以下である、上記(1)又は(2)に記載の二成分現像剤。
(4)前記導電性微粉末がカーボンブラックであり、前記シリコーン樹脂被覆層がアミノシランカップリング剤を含む、上記(1)乃至(3)のいずれか1項に記載の二成分現像剤。
(5)前記アミノシランカップリング剤がアミノエチルアミノプロピルトリメトキシシランである、上記(4)に記載の二成分現像剤。
(6)上記(1)乃至(5)のいずれか1項に記載の二成分現像剤を収容したことを特徴とする現像剤収容ユニット。
(7)静電潜像担持体と、前記静電潜像担持体を帯電させる帯電手段と、前記静電潜像担持体上に静電潜像を形成する露光手段と、前記静電潜像担持体上に形成された静電潜像を、上記(1)乃至(5)のいずれか1項に記載の二成分現像剤を用いて現像してトナー像を形成する現像手段と、前記静電潜像担持体上に形成されたトナー像を記録媒体に転写する転写手段と、前記記録媒体に転写されたトナー像を定着させる定着手段とを有することを特徴とする画像形成装置。
(8)静電潜像担持体上に静電潜像を形成する工程と、前記静電潜像担持体上に形成された静電潜像を、上記(1)乃至(5)のいずれか1項に記載の二成分現像剤を用いて現像してトナー像を形成する工程と、前記静電潜像担持体上に形成されたトナー像を記録媒体に転写する工程と、前記記録媒体に転写されたトナー像を定着させる工程とを有することを特徴とする画像形成方法。
【符号の説明】
【0065】
10 感光体ドラム
40 現像器
58 コロナ帯電器
80 転写ローラ
90 クリーニング装置
110 プロセスカートリッジ
210 給紙部
211 給紙カセット
212 給紙ローラ
220 搬送部
221 ローラ
222 タイミングローラ
223 排紙ローラ
224 排紙トレイ
230 作像部
231 感光体ドラム
232 帯電器
233 露光器
233a 光源
233b ポリゴンミラー
240 転写部
241 駆動ローラ
242 従動ローラ
243 中間転写ベルト
244 一次転写ローラ
245 二次対向ローラ
246 二次転写ローラ
250 定着器
251 定着ベルト
252 加圧ローラ
L 露光
P 紙
【先行技術文献】
【特許文献】
【0066】
【特許文献1】特開2021-144186号公報
図1
図2