(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117808
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】被装着部材の形状維持構造、及び装着部材
(51)【国際特許分類】
H02G 3/30 20060101AFI20240822BHJP
H02G 3/34 20060101ALI20240822BHJP
H02G 3/04 20060101ALI20240822BHJP
F16L 57/00 20060101ALI20240822BHJP
F16B 7/20 20060101ALI20240822BHJP
B60R 16/02 20060101ALN20240822BHJP
【FI】
H02G3/30
H02G3/34
H02G3/04 037
F16L57/00 Z
F16B7/20 Z
B60R16/02 623Z
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024098878
(22)【出願日】2024-06-19
(62)【分割の表示】P 2021010741の分割
【原出願日】2021-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】鷹巣 正司
(57)【要約】
【課題】開断面形状のプロテクタ1であっても、プロテクタ1の所望される断面形状を維持できる被装着部材の形状維持構造、及び装着部材2を提供することを目的とする。
【解決手段】熱可塑性樹脂発泡シートを折曲して形成された長手方向Xに延びる開断面形状のプロテクタ1と、プロテクタ1に装着されプロテクタ1の断面形状を維持する装着部材2とで構成され、装着部材2は、長手方向Xに対して直交する直交方向からプロテクタ1が当接する当接面(底部当接面211a、側部当接面212a)を複数有する本体部21と、当接面に当接したプロテクタ1が直交方向へ向けて当接面から離間することを規制する規制部(係止部24、壁部23)とが設けられた被装着部材の形状維持構造であることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板材を折曲または湾曲して形成された所定方向に延びる開断面形状の被装着部材と、
該被装着部材に装着され前記被装着部材の断面形状を維持する装着部材とで構成され、
該装着部材は、
前記所定方向に対して直交する直交方向から前記被装着部材が当接する当接面を複数有する本体部と、
前記当接面に当接した前記被装着部材が前記直交方向へ向けて前記当接面から離間することを規制する規制部とが設けられ、
前記装着部材は、
前記直交方向に沿った断面において、前記当接面を内面に有するとともに、前記被装着部材が挿脱可能な開口を有する開断面形状に形成された前記本体部と、
前記本体部の前記開口を前記被装着部材に当接して覆うとともに、前記本体部に係止される蓋部とで構成され、
前記規制部は、
前記蓋部で構成された
被装着部材の形状維持構造。
【請求項2】
前記規制部は、
前記当接面とで前記被装着部材を挟持する壁部で構成された
請求項1に記載の被装着部材の形状維持構造。
【請求項3】
前記規制部は、
前記当接面に当接した前記被装着部材に係止される係止部で構成された
請求項1または請求項2に記載の被装着部材の形状維持構造。
【請求項4】
前記装着部材の前記本体部は、
前記被装着部材に設けた挿通孔に挿入されるとともに、所定温度で溶融する溶融体を前記当接面に備え、
前記係止部は、
前記挿通孔に挿入された前記溶融体の先端を溶融して形成された
請求項3に記載の被装着部材の形状維持構造。
【請求項5】
前記被装着部材は、
湾曲した湾曲部分が設けられ、
前記装着部材の前記本体部は、
前記被装着部材の前記湾曲部分に沿った形状に形成された
請求項1から請求項4のいずれか1つに記載の被装着部材の形状維持構造。
【請求項6】
前記装着部材は、
他の部材に取付けるための取付部が設けられた
請求項1から請求項5のいずれか1つに記載の被装着部材の形状維持構造。
【請求項7】
板材を折曲または湾曲して形成された所定方向に延びる開断面形状の被装着部材が、前記所定方向に対して直交する直交方向から当接する当接面を複数有する本体部と、
前記当接面に当接した前記被装着部材が前記直交方向へ向けて前記当接面から離間することを規制する規制部とが設けられ、
前記直交方向に沿った断面において、前記当接面を内面に有するとともに、前記被装着部材が挿脱可能な開口を有する開断面形状に形成された前記本体部と、
前記本体部の前記開口を前記被装着部材に当接して覆うとともに、前記本体部に係止される蓋部とで構成され、
前記規制部は、
前記蓋部で構成され、
前記被装着部材に装着して前記被装着部材の断面形状を維持する
装着部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばワイヤーハーネスや電線を覆って保護するプロテクタなどの被装着部材と、被装着部材に装着される装着部材とで構成される被装着部材の形状維持構造、及び装着部材に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両において、電線やワイヤーハーネスを覆って保護する、あるいは経路規制するプロテクタとして、例えば、特許文献1のように、板材を折り曲げて所定方向に延びる四角筒状体を形成し、その内部空間に電線やワイヤーハーネスを挿通しているものがある。
【0003】
詳述すると、特許文献1のプロテクタは、樹脂製の板材で構成され、全ての面で板材が二重に重なり合うように折り目に沿って折り曲げて、四角筒状に形成されている。さらに、特許文献1のプロテクタは、折り曲げた板材同士を重ね合わせた部分を係止部品によって連結することで、断面略環状となる四角筒状体を構成している。
【0004】
ところで、特許文献1のプロテクタは、四角柱状の各面が二重となるように、板材を重ね合わせ、さらに係止部品で板材同士を連結しているため、その重量が重くなり易い。このように重量が重くなり易いプロテクタでは、ワイヤーハーネスなどに意図しない負荷が作用するおそれがある。
【0005】
そこで、例えば板材を略U字状に折り曲げて直交方向の一方が開口した開断面形状のプロテクタとすることで、プロテクタの軽量化を図ることが考えられるが、直交方向にプロテクタが変形し易いため、プロテクタの所望される断面形状を維持できないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述の問題に鑑み、開断面形状の被装着部材であっても、被装着部材の所望される断面形状を維持できる被装着部材の形状維持構造、及び装着部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、板材を折曲または湾曲して形成された所定方向に延びる開断面形状の被装着部材と、該被装着部材に装着され前記被装着部材の断面形状を維持する装着部材とで構成され、該装着部材は、前記所定方向に対して直交する直交方向から前記被装着部材が当接する当接面を複数有する本体部と、前記当接面に当接した前記被装着部材が前記直交方向へ向けて前記当接面から離間することを規制する規制部とが設けられ、前記装着部材は、前記直交方向に沿った断面において、前記当接面を内面に有するとともに、前記被装着部材が挿脱可能な開口を有する開断面形状に形成された前記本体部と、前記本体部の前記開口を前記被装着部材に当接して覆うとともに、前記本体部に係止される蓋部とで構成され、前記規制部は、前記蓋部で構成された被装着部材の形状維持構造であることを特徴とする。
【0009】
上記開断面形状の被装着部材とは、例えば所定方向に延びる断面略U字状の被装着部材、断面略L字状の被装着部材などのことをいう。
上記直交方向から被装着部材が当接するとは、直交方向の内方から被装着部材が当接する、あるいは直交方向の外方から被装着部材が当接することをいう。
【0010】
上記当接面に当接した被装着部材が直交方向へ向けて当接面から離間するとは、例えば、被装着部材が直交方向へ傾倒するように離間する、あるいは被装着部材が直交方向へ向けて移動するように離間することをいう。
【0011】
この発明によれば、被装着部材の形状維持構造は、被装着部材が装着部材の当接面に当接した状態を、装着部材の規制部によって維持することができる。このため、被装着部材の形状維持構造は、開断面形状の被装着部材であっても、被装着部材の所望される断面形状を維持することができる。
【0012】
また、前記装着部材は、前記直交方向に沿った断面において、前記当接面を内面に有するとともに、前記被装着部材が挿脱可能な開口を有する開断面形状に形成された前記本体部と、前記本体部の前記開口を前記被装着部材に当接して覆うとともに、前記本体部に係止される蓋部とで構成され、前記規制部は、前記蓋部で構成されている。
【0013】
この構成によれば、装着部材は、例えば、被装着部材が本体部の開口を介して本体部から離脱するように当接面から離間することを、蓋部によって阻止することができる。
これにより、被装着部材の形状維持構造は、被装着部材が装着部材の当接面に当接した状態を安定して維持することができる。このため、被装着部材の形状維持構造は、被装着部材の所望される断面形状を確実に維持することができる。
【0014】
さらに、例えば、被装着部材の所定方向への移動が規制されていない場合、被装着部材の形状維持構造は、被装着部材の所望される断面形状を維持したまま、装着部材を所望される所定方向の位置に配置することができる。
【0015】
この発明の態様として、前記規制部は、前記当接面とで前記被装着部材を挟持する壁部で構成されてもよい。
この構成によれば、装着部材は、例えば、被装着部材が直交方向へ傾倒するように当接面から離間することを壁部によって阻止することができる。
【0016】
このため、被装着部材の形状維持構造は、被装着部材が装着部材の当接面に当接した状態を維持することができる。これにより、被装着部材の形状維持構造は、被装着部材の所望される断面形状を確実に維持することができる。
【0017】
さらに、例えば、被装着部材の所定方向への移動が規制されていない場合、被装着部材の形状維持構造は、被装着部材の所望される断面形状を維持したまま、装着部材を所望される所定方向の位置に配置することができる。
【0018】
またこの発明の態様として、前記規制部は、前記当接面に当接した前記被装着部材に係止される係止部で構成されてもよい。
この構成によれば、装着部材は、例えば、被装着部材が直交方向へ傾倒するように当接面から離間することを係止部によって阻止することができる。
【0019】
このため、被装着部材の形状維持構造は、被装着部材が装着部材の当接面に当接した状態を維持することができる。これにより、被装着部材の形状維持構造は、被装着部材の所望される断面形状を確実に維持することができる。
【0020】
またこの発明の態様として、前記装着部材の前記本体部は、前記被装着部材に設けた挿通孔に挿入されるとともに、所定温度で溶融する溶融体を前記当接面に備え、前記係止部は、前記挿通孔に挿入された前記溶融体の先端を溶融して形成されてもよい。
上記溶融体は、本体部に一体、あるいは本体部とは別体であってもよい。
【0021】
この構成によれば、被装着部材の形状維持構造は、直交方向へ向けて被装着部材が当接面から離間することを規制するだけでなく、被装着部材の所定方向への移動を係止部によって規制することができる。
【0022】
これにより、被装着部材の形状維持構造は、被装着部材が装着部材の当接面に当接した状態を安定して維持することができる。このため、被装着部材の形状維持構造は、被装着部材の所望される断面形状を確実に維持することができる。
【0023】
またこの発明の態様として、前記規制部は、前記被装着部材に設けた被嵌合部に嵌合する構成であってもよい。
上記被嵌合部に嵌合するとは、規制部が被嵌合部に隙間なく嵌合する、あるいは規制部が被嵌合部に遊嵌することをいう。
この構成によれば、被装着部材の形状維持構造は、被装着部材が直交方向へ向けて当接面から離間することを規制するだけでなく、少なくとも所定方向への被装着部材の移動を抑えることができる。
【0024】
またこの発明の態様として、前記規制部は、前記所定方向に対して直交する前記直交方向に対向して設けられてもよい。
この構成によれば、被装着部材の形状維持構造は、装着部材の規制部によって、被装着部材の所望される断面形状を安定して維持することができる。
【0025】
またこの発明の態様として、前記規制部は、前記所定方向に沿って千鳥配置されてもよい。
この構成によれば、被装着部材の形状維持構造は、所定方向に長い被装着部材であっても、装着部材の重量増加を抑えて、被装着部材の所望される断面形状を安定して維持することができる。
【0026】
またこの発明の態様として、前記被装着部材は、湾曲した湾曲部分が設けられ、前記装着部材の前記本体部は、前記被装着部材の前記湾曲部分に沿った形状に形成されてもよい。
この構成によれば、被装着部材の形状維持構造は、被装着部材の所望される断面形状を維持するとともに、被装着部材の湾曲部分を補強することができる。
【0027】
このため、例えば、ワイヤーハーネスを保護する被装着部材の場合、被装着部材の形状維持構造は、湾曲したワイヤーハーネスの反力によって、被装着部材が変形することを防止できる。
【0028】
またこの発明の態様として、前記装着部材は、他の部材に取付けるための取付部が設けられてもよい。
上記取付部は、例えばクリップ、あるいはボルト締結のための座面部などのことをいう。
この構成によれば、被装着部材の形状維持構造は、所望される形状が維持された被装着部材を、他の部材に容易に取付けることができる。
【0029】
またこの発明は、板材を折曲または湾曲して形成された所定方向に延びる開断面形状の被装着部材が、前記所定方向に対して直交する直交方向から当接する当接面を複数有する本体部と、前記当接面に当接した前記被装着部材が前記直交方向へ向けて前記当接面から離間することを規制する規制部とが設けられ、前記直交方向に沿った断面において、前記当接面を内面に有するとともに、前記被装着部材が挿脱可能な開口を有する開断面形状に形成された前記本体部と、前記本体部の前記開口を前記被装着部材に当接して覆うとともに、前記本体部に係止される蓋部とで構成され、前記規制部は、前記蓋部で構成され、前記被装着部材に装着して前記被装着部材の断面形状を維持する装着部材であることを特徴とする。
この発明によれば、装着部材は、開断面形状の被装着部材であっても、被装着部材の所望される断面形状を維持することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明により、開断面形状の被装着部材であっても、被装着部材の所望される断面形状を維持できる被装着部材の形状維持構造、及び装着部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】実施例1における被装着部材の形状維持構造の外観を示す外観斜視図。
【
図2】プロテクタ及び装着部材の外観を示す分解斜視図。
【
図3】プロテクタ及び装着部材を断面形状で説明する説明図。
【
図5】実施例2における被装着部材の形状維持構造の外観を示す外観斜視図。
【
図6】プロテクタ及び装着部材の外観を示す分解斜視図。
【
図7】プロテクタ及び装着部材を断面形状で説明する説明図。
【
図9】実施例3における被装着部材の形状維持構造の外観を示す外観斜視図。
【
図10】プロテクタ及び装着部材の外観を示す分解斜視図。
【
図11】プロテクタ及び装着部材を断面形状で説明する説明図。
【
図12】実施例4における被装着部材の形状維持構造の断面を示す断面図。
【
図13】蓋部が開いた状態における被装着部材の形状維持構造の断面図。
【
図14】別の被装着部材の形状維持構造を幅方向に沿った垂直断面で説明する説明図。
【
図15】別の被装着部材の形状維持構造を幅方向に沿った垂直断面で説明する説明図。
【
図16】別の被装着部材の形状維持構造を示す外観斜視図。
【
図17】別の被装着部材の形状維持構造を説明する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
【実施例0033】
実施例1は、ワイヤーハーネスWHを覆って保護する開断面形状のプロテクタ1(被装着部材)と、プロテクタ1に装着されプロテクタ1の断面形状を維持する装着部材2とで構成された被装着部材の形状維持構造について、
図1から
図3を用いて説明する。
【0034】
なお、
図1は実施例1における被装着部材の形状維持構造の外観斜視図を示し、
図2はプロテクタ1及び装着部材2の外観を示す分解斜視図であり、
図2(a)は斜め上方視での分解斜視図を示し、
図2(b)は斜め下方視での分解斜視図を示している。
【0035】
さらに、
図3はプロテクタ1及び装着部材2を断面形状で説明する説明図であり、
図3(a)はプロテクタ1及び装着部材2の平面図を示し、
図3(b)は
図3(a)中のA-A矢視断面図を示している。
【0036】
また、図中の矢印Xはプロテクタ1の長手方向(以降、長手方向Xとする)を示し、矢印Yは平面視において長手方向Xに直交する方向(以降、幅方向Yとする)を示している。
さらに、幅方向Yにおいて、後述する一方のプロテクタ側部12から他方のプロテクタ側部12へ向かう方向を幅方向Yの内方とし、幅方向Yの内方とは逆向きの方向を幅方向Yの外方とする。加えて、
図1中の上側を上方、
図1中の下側を下方とする。
【0037】
ワイヤーハーネスWHを保護するプロテクタ1は、
図1に示すように、熱可塑性樹脂発泡シートで構成され、四角筒状の上面部分を開口した略U形の溝形状に形成されている。このプロテクタ1の内部空間は、
図1中の二点鎖線で示したワイヤーハーネスWHを収容する空間として形成されている。
【0038】
詳述すると、プロテクタ1は、
図1から
図3に示すように、所定方向に長い平板状の熱可塑性樹脂発泡シートを、所定方向に延びる折り目で山折りして、角部を有して所定方向に延びる断面略U字状に形成している。換言すると、プロテクタ1は、所定方向を長手方向とする断面略U形の溝形状に形成されている。
【0039】
ここで、プロテクタ1を構成する熱可塑性樹脂発泡シートについて詳述する。熱可塑性樹脂発泡シートの密度は、特に限定されないが、例えば、機械的特性の異方性を防止、すなわち、機械的特性を等方化して、プロテクタ1の設計の自由度を向上させ、また、プロテクタ1に収容されたワイヤーハーネスWHへの応力に対する強度をより向上させる点から、200Kg/m3以上1000Kg/m3以下が好ましく、軽量性と機械的強度とのバランスをより向上させる点から、300Kg/m3以上600Kg/m3以下がより好ましく、350Kg/m3以上550Kg/m3以下が特に好ましい。
【0040】
プロテクタ1を構成する熱可塑性樹脂発泡シートの厚さは、特に限定されないが、例えば、折り曲げ容易性と機械的強度、特に、プロテクタ1に収容されたワイヤーハーネスWHへの応力に対する機械的強度とのバランスをより向上させる点から、0.50mm以上4.0mm以下が好ましく、1.0mm以上2.5mm以下が特に好ましい。
【0041】
また、熱可塑性樹脂発泡シートには、両面又は片面に、非発泡層が形成されていてもよい。すなわち、熱可塑性樹脂発泡シートは、発泡層と該発泡層上に形成された非発泡層とを有する構成としてもよい。熱可塑性樹脂発泡シートの表面に非発泡層が形成されていることにより、プロテクタ1の機械的強度が向上して、収容されるワイヤーハーネスWHの保護性能がより向上する。非発泡層の厚さは、特に限定されず、例えば、10μm以上100μm以下が挙げられる。
【0042】
また、プロテクタ1を構成する熱可塑性樹脂発泡シートの発泡層の気泡数密度は、特に限定されず、その下限値は、機械的特性の異方性をより確実に防止する点から、800個/mm3以上が好ましく、1000個/mm3以上が特に好ましい。一方で、上述の気泡数密度の上限値は、優れた機械的強度をより確実に得る点から、例えば、1010個/mm3以下を挙げることができる。
【0043】
このような熱可塑性樹脂発泡シートで形成されたプロテクタ1は、
図1から
図3に示すように、平板状のプロテクタ底部11と、一対のプロテクタ側部12とで、長手方向Xに延びる断面略U字状の溝形状に形成されている。
【0044】
具体的には、プロテクタ底部11は、
図2及び
図3に示すように、上下方向を厚みとする略平板状に形成されている。なお、プロテクタ底部11の下面は、
図3(b)に示すように、後述する装着部材2に当接する当接面11aとして形成されている。
【0045】
さらに、プロテクタ底部11には、
図2及び
図3に示すように、幅方向Yの両端に設けた一対の第1挿通孔13と、第1挿通孔13の間における幅方向Yの略中央に設けた1つの第2挿通孔14が、上下方向に貫通して形成されている。
【0046】
具体的には、一対の第1挿通孔13は、長手方向Xに長い平面視略矩形の開口であって、後述する装着部材2の規制部(壁部23)が挿通可能に形成されている。
一方、第2挿通孔14は、平面視略矩形の開口であって、第1挿通孔13における長手方向Xの略中央に略同じ長手方向Xの位置に形成されている。この第2挿通孔14は、後述する装着部材2の規制部(係止部24)が嵌合可能に形成されている。
【0047】
プロテクタ側部12は、
図2及び
図3に示すように、幅方向Yを厚みとする略平板状であって、プロテクタ底部11における幅方向Yの両端からそれぞれ上方へ向けて起立して形成されている。
なお、プロテクタ側部12は、
図3(b)に示すように、プロテクタ底部11の下面に連続する幅方向Yの面(幅方向Yの外方側の主面)が、後述する装着部材2に当接する当接面12aとして形成されている。
【0048】
また、プロテクタ1の断面形状を維持する装着部材2は、例えばポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂製であって、
図1及び
図2に示すように、プロテクタ1を収容可能な空間を有する断面略U字状の溝形状に形成されている。
【0049】
この装着部材2は、幅方向Y及び上下方向からプロテクタ1が当接する複数の当接面(後述する底部当接面211a及び側部当接面212a)を有する本体部21と、他の部材(図示省略)に取付けるためのクリップ部22とを備えている。
【0050】
さらに、装着部材2は、後述する側部当接面212aに当接したプロテクタ1が幅方向Yの内方へ向けて側部当接面212aから離間することを規制する規制部として、一対の壁部23を備えている。
加えて、装着部材2は、後述する底部当接面211aに当接したプロテクタ1が上方へ向けて底部当接面211aから離間することを規制する規制部として、1つの係止部24を備えている。
【0051】
詳述すると、装着部材2の本体部21は、
図1及び
図2に示すように、角部を有する略U字状の断面形状を、長手方向Xに延設した溝形状に形成されている。この本体部21は、
図2及び
図3に示すように、プロテクタ底部11が上下方向で当接する底面部211と、プロテクタ側部12が幅方向Yで当接する一対の側面部212とで一体形成されている。
【0052】
本体部21の底面部211は、
図2及び
図3に示すように、上下方向を厚みとする略平板状に形成されている。この底面部211の上面は、
図3(b)に示すように、プロテクタ底部11の当接面11aが当接する底部当接面211aとして形成されている。
さらに、底面部211の下面には、
図2及び
図3に示すように、クリップ部22が下方へ向けて設けられている。
【0053】
本体部21の一対の側面部212は、
図2及び
図3に示すように、プロテクタ側部12の当接面12aの間隔に略同じ幅方向Yの間隔を隔てて、底面部211の底部当接面211aからそれぞれ上方へ起立して形成されている。
【0054】
この側面部212は、
図3に示すように、幅方向Yを厚みとする略平板状であって、その上端面が本体部21に収容されたプロテクタ1の上端に略面一となる上下方向の長さで形成されている。
【0055】
なお、側面部212は、
図3(b)に示すように、底面部211の上面に連続する幅方向Yの面(幅方向Yの内方側の主面)が、プロテクタ側部12の当接面12aが当接する側部当接面212aとして形成されている。
【0056】
また、規制部である一対の壁部23は、
図1から
図3に示すように、本体部21の側面部212とでプロテクタ1を挟持するように、側面部212に対して幅方向Yの内方側で、側面部212に対向して立設されている。
【0057】
具体的には、壁部23は、
図3に示すように、プロテクタ側部12の厚みに略同じ幅方向Yの間隔を隔てて、底面部211の底部当接面211aから上方へ向けて立設されている。この壁部23は、幅方向Yを厚みとする略平板状であって、長手方向Xの長さ及び上下方向の長さが、側面部212に略同じ長さに形成されている。
【0058】
また、規制部である係止部24は、
図1及び
図3に示すように、プロテクタ底部11に係止され、本体部21の底面部211とでプロテクタ底部11を挟持するように、底面部211の底部当接面211aから上方へ向けて立設されている。
この係止部24は、
図3に示すように、底面部211における長手方向X及び幅方向Yの略中央に形成されている。
【0059】
具体的には、係止部24は、所定の温度で溶融する熱可塑性の樹脂素材等の溶融体25で構成され、プロテクタ1の第2挿通孔14に挿通された状態において、溶融体25の先端を溶融させることで形成されている。
なお、溶融体25は、
図2に示すように、底面部211の底部当接面211aから上方へ向けて立設された略柱状であって、プロテクタ底部11の厚みよりも長い上下方向の長さに形成されている。
【0060】
より詳しくは、係止部24は、
図3(b)に示すように、プロテクタ底部11の第2挿通孔14に嵌合する嵌合部分24aと、プロテクタ底部11よりも上方に露出した溶融体25の先端を溶融して整形した整形部分24bとで構成されている。
【0061】
嵌合部分24aは、プロテクタ底部11の第2挿通孔14に略同じ大きさの平面視略矩形であって、底面部211の底部当接面211aから上方へ向けて立設された略柱状に形成されている。
【0062】
一方、整形部分24bは、上下方向を厚みとする略平板状であって、嵌合部分24aよりも大きい平面視略矩形に形成されている。この整形部分24bは、プロテクタ底部11の上面に当接して、本体部21の底面部211とでプロテクタ底部11を挟持するように形成されている。
【0063】
次に、上述した構成のプロテクタ1に装着部材2を組付ける組付け工程について
図4を用いて説明する。
なお、
図4は組付け工程の概略を説明する説明図であり、
図4(a)は組付け方向をA-A矢視断面で説明する断面図を示し、
図4(b)は係止部24の整形部分24bを形成する過程を説明する断面図を示している。
【0064】
まず、作業者は、
図4(a)に示すように、プロテクタ1に対して下方から装着部材2を組付ける。この際、作業者は、プロテクタ1の第2挿通孔14に装着部材2の溶融体25を挿入するとともに、プロテクタ1の第1挿通孔13に装着部材2の壁部23を挿入しながら組付ける。
このため、プロテクタ側部12は、装着部材2の側面部212と壁部23との間に案内されるとともに、当接面12aが装着部材2の側部当接面212aに当接する。
【0065】
そして、プロテクタ底部11の当接面11aに装着部材2の底部当接面211aが当接すると、作業者は、
図4(b)に示すように、プロテクタ底部11から露出した溶融体25の先端を、所定の溶融機器で溶融して整形することで、係止部24の整形部分24bを形成する。
これにより、プロテクタ側部12が装着部材2の側面部212と壁部23とで挟持され、プロテクタ底部11が装着部材2の底面部211に係止される。
【0066】
このようにして、被装着部材の形状維持構造は、側部当接面212aに当接したプロテクタ1が、下端を支点として幅方向Yの内方へ向けて傾倒することを一対の壁部23で規制し、底部当接面211aに当接したプロテクタ1が上方へ向けて底部当接面211aから離間することを係止部24で規制している。さらに、被装着部材の形状維持構造は、プロテクタ1の第2挿通孔14と装着部材2の係止部24によってプロテクタ1の長手方向Xへの移動を規制している。
【0067】
以上のように、実施例1における被装着部材の形状維持構造は、熱可塑性樹脂発泡シートを折曲して形成された長手方向Xに延びる開断面形状のプロテクタ1と、プロテクタ1に装着されプロテクタ1の断面形状を維持する装着部材2とで構成されている。
さらに、装着部材2は、上下方向からプロテクタ1が当接する底部当接面211a、及び幅方向Yからプロテクタ1が当接する側部当接面212aを有する本体部21が設けられている。
【0068】
さらにまた、装着部材2は、底部当接面211aに当接したプロテクタ1が上方へ向けて底部当接面211aから離間することを規制する規制部(係止部24)が設けられている。
加えて、装着部材2は、側部当接面212aに当接したプロテクタ1が幅方向Yへ向けて側部当接面212aから離間することを規制する規制部(壁部23)が設けられたものである。
【0069】
これによれば、被装着部材の形状維持構造は、プロテクタ1が装着部材2の当接面に当接した状態を、装着部材2の規制部によって維持することができる。このため、被装着部材の形状維持構造は、開断面形状のプロテクタ1であっても、プロテクタ1の所望される断面形状を維持することができる。
【0070】
また、規制部は、側部当接面212aとでプロテクタ1を挟持する壁部23で構成されたものである。
この構成によれば、装着部材2は、プロテクタ1が幅方向Yへ傾倒するように側部当接面212aから離間することを壁部23によって阻止することができる。
【0071】
このため、被装着部材の形状維持構造は、プロテクタ1が装着部材2の側部当接面212aに当接した状態を維持することができる。これにより、被装着部材の形状維持構造は、プロテクタ1の所望される断面形状を確実に維持することができる。
【0072】
また、規制部は、底部当接面211aに当接したプロテクタ1に係止される係止部24で構成されたものである。
この構成によれば、装着部材2は、プロテクタ1が上方へ向けて底部当接面211aから離間することを係止部24によって阻止することができる。
【0073】
このため、被装着部材の形状維持構造は、プロテクタ1が装着部材2の底部当接面211aに当接した状態を維持することができる。これにより、被装着部材の形状維持構造は、プロテクタ1の所望される断面形状を確実に維持することができる。
【0074】
また、装着部材2の本体部21は、プロテクタ1に設けた第2挿通孔14に挿入されるとともに、所定温度で溶融する溶融体25を底部当接面211aに備えている。そして、係止部24は、第2挿通孔14に挿入された溶融体25の先端を溶融して形成されたものである。
【0075】
この構成によれば、被装着部材の形状維持構造は、上方へ向けてプロテクタ1が底部当接面211aから離間することを規制するだけでなく、プロテクタ1の長手方向Xへの移動を係止部24によって規制することができる。
【0076】
これにより、被装着部材の形状維持構造は、プロテクタ1が装着部材2の底部当接面211aに当接した状態を安定して維持することができる。このため、被装着部材の形状維持構造は、プロテクタ1の所望される断面形状を確実に維持することができる。
【0077】
また、壁部23は、長手方向Xに対して直交する幅方向Yに対向して設けられたものである。
この構成によれば、被装着部材の形状維持構造は、装着部材2の壁部23によって、プロテクタ1の所望される断面形状を安定して維持することができる。
【0078】
また、装着部材2は、他の部材に取付けるためのクリップ部22が設けられたものである。
この構成によれば、被装着部材の形状維持構造は、所望される形状が維持されたプロテクタ1を、他の部材に容易に取付けることができる。
【0079】
また、装着部材2は、熱可塑性樹脂発泡シートを折曲して形成された長手方向Xに延びる開断面形状のプロテクタ1が、上下方向から当接する底部当接面211a、及び幅方向Yから当接する側部当接面212aを有する本体部21が設けられている。
【0080】
さらに、装着部材2は、底部当接面211aに当接したプロテクタ1が上方へ向けて底部当接面211aから離間することを規制する規制部(係止部24)が設けられている。
【0081】
加えて、装着部材2は、側部当接面212aに当接したプロテクタ1が幅方向Yへ向けて側部当接面212aから離間することを規制する規制部(壁部23)が設けられ、プロテクタ1に装着してプロテクタ1の断面形状を維持するものである。
【0082】
これによれば、装着部材2は、開断面形状のプロテクタ1であっても、プロテクタ1の所望される断面形状を維持することができる。
次に、作業者は、プロテクタ1に対して装着部材2を下方から組付けて、プロテクタ底部11の当接面11aに装着部材2の底部当接面211aを当接させる。その後、作業者は、プロテクタ側部12を装着部材2の側面部212へ向けて起立させながら、プロテクタ側部12を装着部材2の保持部26に係止するとともに、プロテクタ側部12の当接面12aを装着部材2の側部当接面212aに当接させる。
このようにして、被装着部材の形状維持構造は、側部当接面212aに当接したプロテクタ1が、下端を支点として幅方向Yの内方へ向けて傾倒することを一対の保持部26で規制し、底部当接面211aに当接したプロテクタ1が上方へ向けて底部当接面211aから離間することを係止部24で規制している。さらに、被装着部材の形状維持構造は、プロテクタ1の第2挿通孔14と装着部材2の係止部24によってプロテクタ1の長手方向Xへの移動を規制している。
以上のように、実施例2における被装着部材の形状維持構造は、装着部材2が、底部当接面211aに当接したプロテクタ1が上方へ向けて底部当接面211aから離間することを規制する規制部(係止部24)を備えたものである。
さらに、被装着部材の形状維持構造は、装着部材2が、側部当接面212aに当接したプロテクタ1が幅方向Yの内方へ向けて側部当接面212aから離間することを規制する規制部(保持部26)を備えたものである。
これにより、被装着部材の形状維持構造は、上述した実施例1と同様の効果を奏することができる。さらに、規制部が保持部26で構成されたことにより、装着部材2は、プロテクタ1が幅方向Yの内方へ向けて側部当接面212aから離間することを保持部26によって阻止することができる。
このため、被装着部材の形状維持構造は、プロテクタ1が装着部材2の側部当接面212aに当接した状態を維持することができる。これにより、被装着部材の形状維持構造は、プロテクタ1の所望される断面形状を確実に維持することができる。