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特開2024-117888基板処理装置における処理液の流量推定方法および基板処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117888
(43)【公開日】2024-08-30
(54)【発明の名称】基板処理装置における処理液の流量推定方法および基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20240823BHJP
【FI】
H01L21/304 648G
H01L21/304 643A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023956
(22)【出願日】2023-02-20
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丸本 洋
(72)【発明者】
【氏名】烏野 崇
【テーマコード(参考)】
5F157
【Fターム(参考)】
5F157AB02
5F157AB14
5F157AB33
5F157AB48
5F157AB51
5F157AB64
5F157AB90
5F157BB23
5F157BB45
5F157CD32
5F157CE32
5F157CE82
5F157CE83
5F157CF14
5F157CF42
5F157CF44
5F157CF60
5F157CF99
5F157DC21
(57)【要約】
【課題】基板に供給される処理液の流量を適切に測定すること。
【解決手段】流量推定方法は、基板の表面に処理液を供給して液処理を行う基板処理装置における処理液の流量推定方法であり、供給する工程と、撮像する工程と、推定する工程とを含む。供給する工程は、基板を回転可能に保持する基板保持部を用いて基板を回転させながら、基板の中心から離れた位置に処理液供給部から処理液を供給する。撮像する工程は、基板の表面上における処理液の拡散によって形成される液膜を撮像部を用いて撮像する。推定する工程は、撮像部による撮像結果から処理液の拡散の状態を示す特徴量を算出し、算出した特徴量を特徴量と処理液供給部から基板に供給される処理液の流量との相関を示す相関関数に適用して、処理液の流量を推定する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の表面に処理液を供給して液処理を行う基板処理装置における前記処理液の流量推定方法であって、
前記基板を回転可能に保持する基板保持部を用いて前記基板を回転させながら、前記基板の中心から離れた位置に処理液供給部から前記処理液を供給する工程と、
前記基板の表面上における前記処理液の拡散によって形成される液膜を撮像部を用いて撮像する工程と、
前記撮像部による撮像結果から前記処理液の拡散の状態を示す特徴量を算出し、算出した前記特徴量を前記特徴量と前記処理液供給部から前記基板に供給される前記処理液の流量との相関を示す相関関数に適用して、前記処理液の流量を推定する工程と
を含む、流量推定方法。
【請求項2】
前記基板処理装置は、
前記処理液供給部に前記処理液を供給する供給ラインと、前記供給ラインに設けられ、前記供給ラインを流れる前記処理液の流量を計測する流量計とを備え、
前記推定する工程によって推定された前記処理液の流量の値と前記流量計による計測値との差分に基づき、前記流量計による計測値を補正する工程をさらに含む、請求項1に記載の流量推定方法。
【請求項3】
前記供給する工程は、
前記液処理の処理レシピに含まれる異なる複数の設定流量の各々で前記処理液供給部から前記処理液を供給し、
前記推定する工程は、
前記複数の設定流量の各々について、前記処理液供給部から前記基板に供給される前記処理液の流量を推定し、
前記補正する工程は、
前記複数の設定流量の各々について推定された前記処理液の流量の値を用いて、前記流量計による計測値を補正する、請求項2に記載の流量推定方法。
【請求項4】
前記処理液供給部は、異なる前記処理液を吐出する複数のノズルと、前記複数のノズルにそれぞれ前記処理液を供給する複数の前記供給ラインと、複数の前記供給ラインにそれぞれ設けられた複数の前記流量計とを備え、
前記供給する工程は、
前記複数のノズルから前記処理液を順次供給し、
前記推定する工程は、
前記複数のノズルの各々から前記基板に供給される前記処理液の流量を推定し、
前記補正する工程は、
前記複数のノズルの各々に対応する前記流量計による計測値を補正する、請求項2に記載の流量推定方法。
【請求項5】
前記基板処理装置は、
前記基板保持部、前記処理液供給部、前記撮像部、前記供給ライン及び前記流量計を各々が備える複数の処理ユニットを用いて複数の前記基板に対する前記液処理を行い、
前記供給する工程、前記撮像する工程、前記推定する工程および前記補正する工程は、前記処理ユニットごとに実行される、請求項2に記載の流量推定方法。
【請求項6】
前記特徴量は、前記基板の表面上における前記処理液の供給位置から前記液膜の周縁までの距離、前記液膜に設定された所定領域の面積、および前記基板の表面のうち前記基板の中心を含み且つ前記液膜が存在していない乾燥領域のサイズからなる群から選択される少なくとも一つの特徴量である、請求項1に記載の流量推定方法。
【請求項7】
基板の表面に処理液を供給して液処理を行う基板処理装置であって、
前記基板を回転可能に保持する基板保持部と、
前記基板に処理液を供給する処理液供給部と、
前記基板の表面および前記基板の表面に前記処理液供給部から供給される前記処理液を撮像可能な撮像部と、
各部を制御する制御部と
を備え、
前記制御部は、
前記基板保持部を用いて前記基板を回転させながら、前記基板の中心から離れた位置に前記処理液供給部から前記処理液を供給する工程と、
前記基板の表面上における前記処理液の拡散によって形成される液膜を前記撮像部を用いて撮像する工程と、
前記撮像部による撮像結果から前記処理液の拡散の状態を示す特徴量を算出し、算出した前記特徴量を前記特徴量と前記処理液供給部から前記基板に供給される前記処理液の流量との相関を示す相関関数に適用して、前記処理液の流量を推定する工程と
を含む流量推定方法を各部に実行させる、基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理装置における処理液の流量推定方法および基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体ウェハなどの基板の表面に処理液を供給して液処理を行う基板処理装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2018/216476号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、基板に供給される処理液の流量を適切に測定することができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様による流量推定方法は、基板の表面に処理液を供給して液処理を行う基板処理装置における処理液の流量推定方法であり、供給する工程と、撮像する工程と、推定する工程とを含む。供給する工程は、基板を回転可能に保持する基板保持部を用いて基板を回転させながら、基板の中心から離れた位置に処理液供給部から処理液を供給する。撮像する工程は、基板の表面上における処理液の拡散によって形成される液膜を撮像部を用いて撮像する。推定する工程は、撮像部による撮像結果から処理液の拡散の状態を示す特徴量を算出し、算出した特徴量を特徴量と処理液供給部から基板に供給される処理液の流量との相関を示す相関関数に適用して、処理液の流量を推定する。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、基板に供給される処理液の流量を適切に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施形態に係る基板処理システムの概略構成を示す図である。
図2図2は、実施形態に係る処理ユニットの構成を示す図である。
図3図3は、実施形態に係る撮像部の一例を示す図である。
図4図4は、実施形態に係る処理ユニットが実行する流量計キャリブレーション処理の手順を示すフローチャートである。
図5図5は、特徴量の一例を示す図である。
図6図6は、特徴量の別の一例を示す図である。
図7図7は、特徴量のさらに別の一例を示す図である。
図8図8は、相関関数の一例を示す図である。
図9図9は、実施形態に係る基板処理システムが実行する処理動作の手順の一例を示すフローチャートである。
図10図10は、実施形態に係る基板処理システムが実行する処理動作の手順の別の一例を示すフローチャートである。
図11図11は、実施形態に係る基板処理システムが実行する処理動作の手順のさらに別の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本開示による基板処理装置における処理液の流量推定方法および基板処理装置を実施するための形態(以下、「実施形態」と記載する)について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態により本開示が限定されるものではない。
【0009】
また、以下に示す実施形態では、「一定」、「直交」、「垂直」あるいは「平行」といった表現が用いられる場合があるが、これらの表現は、厳密に「一定」、「直交」、「垂直」あるいは「平行」であることを要しない。すなわち、上記した各表現は、例えば製造精度、設置精度などのずれを許容するものとする。
【0010】
また、以下参照する各図面では、説明を分かりやすくするために、互いに直交するX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向を規定し、Z軸正方向を鉛直上向き方向とする直交座標系を示す場合がある。
【0011】
従来、半導体ウエハなどの基板の表面に処理液を供給して液処理を行う基板処理装置が知られている。このような基板処理装置において、基板に供給される処理液の実際の流量を測定する場合、重量測定用の容器に処理液を採取する作業が作業者によって行われるのが一般的である。
【0012】
しかしながら、処理液を採取する作業を伴う流量測定は、作業者による練度に依存する測定手法であるため、その測定結果に作業者間でばらつきが生じ易い。このため、作業者の作業を伴うことなく、基板に供給される処理液の流量を適切に測定することができる技術が期待されている。
【0013】
<基板処理システムの概要>
実施形態に係る基板処理システム1(基板処理装置の一例)の概略構成について図1を参照し説明する。図1は、実施形態に係る基板処理システム1の概略構成を示す図である。
【0014】
図1に示すように、基板処理システム1は、搬入出ステーション2と、処理ステーション3とを備える。搬入出ステーション2と処理ステーション3とは隣接して設けられる。
【0015】
搬入出ステーション2は、キャリア載置部11と、搬送部12とを備える。キャリア載置部11には、複数枚の基板、実施形態では半導体ウェハW(以下、ウェハWと呼称する。)を水平状態で収容する複数のキャリアCが載置される。
【0016】
搬送部12は、キャリア載置部11に隣接して設けられ、内部に基板搬送装置13と、受渡部14とを備える。基板搬送装置13は、ウェハWを保持するウエハ保持機構を備える。また、基板搬送装置13は、水平方向および鉛直方向への移動ならびに鉛直軸を中心とする旋回が可能であり、ウエハ保持機構を用いてキャリアCと受渡部14との間でウェハWの搬送を行う。
【0017】
処理ステーション3は、搬送部12に隣接して設けられる。処理ステーション3は、搬送部15と、複数の処理ユニット16とを備える。複数の処理ユニット16は、搬送部15の両側に並べて設けられる。
【0018】
搬送部15は、内部に基板搬送装置17を備える。基板搬送装置17は、ウェハWを保持するウエハ保持機構を備える。また、基板搬送装置17は、水平方向および鉛直方向への移動ならびに鉛直軸を中心とする旋回が可能であり、ウエハ保持機構を用いて受渡部14と処理ユニット16との間でウェハWの搬送を行う。
【0019】
処理ユニット16は、基板搬送装置17によって搬送されるウェハWに対して基板処理を行う。処理ユニット16は、搬送されたウエハを保持し、保持したウエハに基板処理を行う。処理ユニット16は、保持されたウエハに処理液を供給し、基板処理を行う。
【0020】
処理液は、特に限定されないが、たとえば、IPA(イソプロピルアルコール)やH2SO4などの薬液が用いられ得る。また、処理液は、DIW(脱イオン水)などのリンス液であってもよい。
【0021】
また、基板処理システム1は、制御装置4を備える。制御装置4は、たとえばコンピュータであり、制御部18と記憶部19とを備える。記憶部19には、基板処理システム1において実行される各種の処理を制御するプログラムが格納される。制御部18は、記憶部19に記憶されたプログラムを読み出して実行することによって基板処理システム1の動作を制御する。
【0022】
なお、かかるプログラムは、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体に記録されていたものであって、その記憶媒体から制御装置4の記憶部19にインストールされたものであってもよい。コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体としては、たとえばハードディスク(HD)、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルディスク(MO)、メモリカードなどがある。
【0023】
上記のように構成された基板処理システム1では、まず、搬入出ステーション2の基板搬送装置13が、キャリア載置部11に載置されたキャリアCからウェハWを取り出して受渡部14に載置する。受渡部14に載置されたウェハWは、処理ステーション3の基板搬送装置17によって受渡部14から取り出されて、処理ユニット16へ搬入される。
【0024】
処理ユニット16へ搬入されたウェハWは、処理ユニット16によって基板処理された後、基板搬送装置17によって処理ユニット16から搬出されて、受渡部14に載置される。そして、受渡部14に載置された処理済のウェハWは、基板搬送装置13によってキャリア載置部11のキャリアCへ戻される。
【0025】
<処理ユニットの概要>
次に、処理ユニット16の構成について図2を参照して説明する。図2は、実施形態に係る処理ユニット16の構成を示す図である。
【0026】
図2に示すように、処理ユニット16は、チャンバ20と、基板保持部30と、処理液供給部40と、回収カップ50と、撮像部60とを備える。
【0027】
チャンバ20は、基板保持部30、処理液供給部40、回収カップ50および撮像部60を収容する。チャンバ20の天井部には、FFU(Fan Filter Unit)21が設けられる。FFU21は、チャンバ20内にダウンフローを形成する。
【0028】
基板保持部30は、保持部31と、支柱部32と、駆動部33とを備える。保持部31は、ウェハWを水平に保持する。具体的には、保持部31は、複数の把持部31aを備えており、複数の把持部31aを用いてウェハWの端部を把持する。支柱部32は、鉛直方向に延在し、基端部が駆動部33によって回転可能に支持され、先端部において保持部31を水平に支持する。駆動部33は、支柱部32を鉛直軸まわりに回転させる。かかる基板保持部30は、駆動部33を用いて支柱部32を回転させることによって支柱部32に支持された保持部31を回転させ、これにより、保持部31に保持されたウェハWを回転させる。
【0029】
処理液供給部40は、ウェハWに対して各種の処理液を供給する。処理液供給部40は、ウェハWの上方に配置されるノズル41a、41bと、ノズル41a、41bを支持するアーム42と、アーム42を移動させる移動機構43とを備える。
【0030】
ノズル41aは、供給ライン44aを介してIPA供給源45aに接続され、IPA供給源45aから供給されるIPAをウェハWの表面に吐出する。IPAは、処理液の一例である。
【0031】
供給ライン44aには、流量計46aと、定圧弁47aと、バルブ48aとが設けられる。流量計46aは、供給ライン44aを流れるIPAの流量を計測する。定圧弁47aは、定圧弁47aよりも下流側におけるIPAの圧力を調整する。例えば、定圧弁47aは、処理液供給部40のノズル41aから吐出されるIPAの吐出量が、所定の吐出量となるようにIPAの圧力を調整する。すなわち、定圧弁47aは、処理液供給部40のノズル41aから吐出されるIPAの流量を調整する。所定の吐出量は、例えば、処理ユニット16で行われる液処理の処理レシピに含まれる複数の設定流量である。定圧弁47aは、制御装置4からの信号に基づいて、流量計46aにより計測されるIPAの流量が所定の吐出量となるようにIPAの圧力を調整する。バルブ48aは、供給ライン44aを開閉する。
【0032】
ノズル41bは、供給ライン44bを介してDIW供給源45bに接続され、DIW供給源45bから供給されるDIWをウェハWの表面に吐出する。DIWは、処理液の別の一例である。
【0033】
供給ライン44bには、流量計46bと、定圧弁47bと、バルブ48bとが設けられる。流量計46bは、供給ライン44bを流れるDIWの流量を計測する。定圧弁47bは、定圧弁47bよりも下流側におけるDIWの圧力を調整する。例えば、定圧弁47bは、処理液供給部40のノズル41bから吐出されるDIWの吐出量が、所定の吐出量となるようにDIWの圧力を調整する。すなわち、定圧弁47bは、処理液供給部40のノズル41bから吐出されるDIWの流量を調整する。所定の吐出量は、例えば、処理ユニット16で行われる液処理の処理レシピに含まれる複数の設定流量である。定圧弁47bは、制御装置4からの信号に基づいて、流量計46bにより計測されるIPAの流量が所定の吐出量となるようにDIWの圧力を調整する。バルブ48bは、供給ライン44bを開閉する。
【0034】
回収カップ50は、保持部31を取り囲むように配置され、保持部31の回転によってウェハWから飛散する処理液を捕集する。回収カップ50の底部には、排液口51が形成されており、回収カップ50によって捕集された処理液は、かかる排液口51から処理ユニット16の外部へ排出される。また、回収カップ50の底部には、FFU21から供給される気体を処理ユニット16の外部へ排出する排気口52が形成される。
【0035】
撮像部60は、チャンバ20内においてウェハWの表面およびウェハWの表面に処理液供給部40から供給される処理液を撮像可能な位置に設けられる。撮像部60は、ウェハWの表面上における処理液の拡散によって形成される液膜を撮像可能である。
【0036】
ここで、図3を用いて、実施形態に係る撮像部60の一例を説明する。図3は、実施形態に係る撮像部60の一例を示す図である。図3に示すように、例えば、回転するウェハWの中心Wcから離れた位置に処理液供給部40から処理液Lが供給される場合、ウェハWの回転方向に沿った処理液Lの拡散が生じる。そして、ウェハWの表面上において、処理液Lの拡散によって、ウェハWの回転方向に延びる液膜LFが形成される。撮像部60は、ウェハWの表面上における処理液Lの拡散によって形成される液膜LFを撮像することができる。
【0037】
次に、実施形態に係る処理ユニット16によって実行される流量計キャリブレーション処理の例について図4を参照して説明する。図4は、実施形態に係る処理ユニット16が実行する流量計キャリブレーション処理の手順を示すフローチャートである。図4に示す一連の流量計キャリブレーション処理は、制御部18による制御に従って実行される。なお、図4においては、一つの処理ユニット16が有する一つのノズルからウェハWに供給される処理液Lの流量を推定し、その推定結果を用いて、一つのノズルに対応する流量計による計測値を補正するまでの一連の流れを説明する。
【0038】
まず、制御部18は、基板搬送装置17(図1参照)によってチャンバ20内に搬入されたウェハWを基板保持部30の保持部31を用いて保持する。具体的には、制御部18は、複数の把持部31aを用いてウェハWの端部を把持する。ウェハWは、製品ウェハであっても、流量推定用のダミーウェハであってもよい。その後、制御部18は、駆動部33を用いて保持部31を鉛直軸まわりに回転させることにより、ウェハWを回転させる。
【0039】
制御部18は、ウェハWの中心Wcから離れた位置に処理液供給部40のノズル(例えば、ノズル41a)から処理液L(例えば、IPA)を供給する(ステップS101)。これにより、ウェハWの表面上において、処理液Lの拡散によって液膜LF(図3参照)が形成される。
【0040】
制御部18は、撮像部60を用いて液膜LFを撮像する(ステップS102)。処理液Lの拡散の状態は、処理液供給部40のノズル(例えば、ノズル41a)からウェハWに供給される処理液L(例えば、IPA)の流量に応じて、変化する。制御部18は、撮像部60による撮像結果から処理液Lの拡散の状態を示す特徴量を算出する(ステップS103)。特徴量の算出は、撮像部60で撮像された画像データに対する画像解析によって実現される。
【0041】
ここで、図5図7を用いて特徴量の具体例を説明する。図5は、特徴量の一例を示す図である。処理液Lの拡散の状態を示す特徴量としては、例えば図5に示すように、ウェハWの表面上における処理液Lの供給位置から液膜LFの周縁までの距離(以下適宜「液膜周縁距離」と呼ぶ。)Dを用いることができる。液膜LFの周縁とは、ウェハWの表面上において液膜LFが存在する領域と液膜LFが存在していない領域との界面を指す。液膜周縁距離Dは、処理液供給部40のノズル(例えば、ノズル41a)からウェハWに供給される処理液L(例えば、IPA)の流量に応じて、変化する。すなわち、液膜周縁距離Dは、処理液Lの流量が大きくなるほど、増加し、処理液Lの流量が小さくなるほど、減少する。
【0042】
図6は、特徴量の別の一例を示す図である。処理液Lの拡散の状態を示す特徴量としては、例えば図6に示すように、液膜LFに設定された所定領域R1の面積を用いることができる。所定領域R1は、例えば、液膜LFの表面のうち処理液Lの供給位置よりもウェハWの中心Wcから離れた側に位置する領域である。所定領域R1の面積は、処理液供給部40のノズル(例えば、ノズル41a)からウェハWに供給される処理液L(例えば、IPA)の流量に応じて、変化する。すなわち、所定領域R1の面積は、処理液Lの流量が大きくなるほど、増加し、処理液Lの流量が小さくなるほど、減少する。
【0043】
図7は、特徴量のさらに別の一例を示す図である。処理液Lの拡散の状態を示す特徴量としては、例えば図7に示すように、ウェハWの表面のうちウェハWの中心Wcを含み且つ液膜LFが存在していない円形の乾燥領域R2のサイズを用いることができる。乾燥領域R2のサイズとしては、例えば、乾燥領域R2の面積や幅(径)を用いることができる。乾燥領域R2のサイズは、処理液供給部40のノズル(例えば、ノズル41a)からウェハWに供給される処理液L(例えば、IPA)の流量に応じて、変化する。すなわち、乾燥領域R2のサイズは、処理液Lの流量が大きくなるほど、減少し、処理液Lの流量が小さくなるほど、増加する。
【0044】
なお、処理液Lの拡散の状態を示す特徴量としては、液膜周縁距離D、所定領域R1の面積、および乾燥領域R2のサイズからなる群から選択される少なくとも一つの特徴量が用いられてもよい。
【0045】
図4の説明に戻る。制御部18は、算出した特徴量を、特徴量と処理液供給部40からウェハWに供給される処理液Lの流量との相関を示す相関関数に適用して、処理液供給部40からウェハWに供給される処理液Lの流量を推定する(ステップS104)。特徴量と処理液供給部40からウェハWに供給される処理液Lの流量との相関を示す相関関数は、例えば記憶部19に予め記憶されている。制御部18は、算出した特徴量を、記憶部19に記憶された相関関数に適用して、処理液Lの流量を推定する。
【0046】
なお、処理液Lの拡散の状態を示す特徴量として、液膜周縁距離D、所定領域R1の面積、および乾燥領域R2のサイズからなる群から2以上の特徴量が算出される場合、2以上の特徴量にそれぞれ対応する2以上の相関関数が記憶部19に記憶されてもよい。この場合、制御部18は、算出した2以上の特徴量を記憶部19に記憶された2以上の相関関数にそれぞれ適用して得られる2以上の処理液Lの流量の平均値を、処理液供給部40からウェハWに供給される処理液Lの流量として算出してもよい。
【0047】
ここで、図8を用いて、特徴量と処理液供給部40からウェハWに供給される処理液Lの流量との相関を示す相関関数の具体例を説明する。図8は、相関関数の一例を示す図である。図8においては、処理液供給部40からウェハWに供給される処理液Lの流量を変化させてウェハWの表面上における液膜LFを撮像し、各流量に対する液膜LFの撮像結果から特徴量として液膜周縁距離Dを測定して得られるグラフが示されている。
【0048】
図8に示すように、液膜周縁距離Dは、処理液Lの流量が大きくなるほど、線形的に増加する。したがって、例えば、実験やシミュレーションなどによって、処理液Lの流量に対する液膜周縁距離Dの増加の度合いを示す1次関数のモデル式が相関関数として予め生成される。
【0049】
実施形態では、制御部18が、特徴量と処理液供給部40からウェハWに供給される処理液Lの流量との相関を示す相関関数を用いることで、作業者の作業を伴うことなく処理液Lの流量を適切に測定することができる。例えば、相関関数が処理液Lの流量に対する液膜周縁距離Dの増加の度合いを示す1次関数のモデル式として表される場合、制御部18は、ステップS103において特徴量として算出された液膜周縁距離Dをモデル式に代入して、処理液Lの流量を推定できる。
【0050】
図4の説明に戻る。制御部18は、推定された処理液Lの流量の値と流量計(例えば、ノズル41aに対応する流量計46a)による計測値との差分ΔDが予め定められた許容範囲内に収まっているか否かを判定する(ステップS105)。差分ΔDが許容範囲内に収まっている場合(ステップS105Yes)、制御部18は、処理を終了する。
【0051】
一方、差分ΔDが許容範囲内に収まっていない場合(ステップS105No)、制御部18は、差分ΔDに基づき、流量計(例えば、ノズル41aに対応する流量計46a)による計測値を補正し(ステップS106)、処理を終了する。例えば、制御部18は、流量計による計測値に差分ΔDを加算して、流量計による計測値を補正する。これにより、流量計の個体差などに起因した、流量計による計測値の誤差をキャンセルすることができる。
【0052】
次に、実施形態に係る流量計キャリブレーション処理を応用した基板処理システム1の処理動作の手順について図9図11を参照して説明する。図9は、実施形態に係る基板処理システム1が実行する処理動作の手順の一例を示すフローチャートである。なお、図9に示す各種の処理は、制御部18による制御に従って実行される。また、図9に示す処理動作は、例えば、指定されたタイミングや周期的なタイミングなどの任意のタイミングで実行されてもよい。
【0053】
制御部18は、処理ユニット16で行われる液処理の処理レシピに含まれる複数の設定流量から設定流量を一つ選択する(ステップS201)。液処理の処理レシピは、例えば記憶部19に予め記憶される。
【0054】
制御部18は、流量計キャリブレーション処理を実行する(ステップS202)。ここで、流量計キャリブレーション処理は、図4に示す一連の流量計キャリブレーション処理である。流量計キャリブレーション処理のステップS101では、制御部18は、ステップS201で選択された一つの設定流量で処理液供給部40のノズルから処理液Lを供給する。ステップS104では、制御部18は、ステップS201で選択された一つの設定流量について、処理液供給部40からウェハWに供給される処理液Lの流量を推定する。ステップS106では、制御部18は、ステップS201で選択された一つの設定流量について推定された処理液Lの流量の値を用いて、流量計による計測値を補正する。
【0055】
制御部18は、全ての設定流量を選択したか否かを判定し(ステップS203)、選択していない場合(ステップS203No)、上記したステップS201~S203の処理を繰り返す。一方、制御部18は、全ての設定流量を選択した場合(ステップS203Yes)、処理を終了する。
【0056】
上記したステップS201~S203の処理の繰り返しにより、制御部18は、液処理の処理レシピに含まれる異なる複数の設定流量の各々で処理液供給部40から処理液Lを供給する。そして、制御部18は、複数の設定流量の各々について、処理液供給部40からウェハWに供給される処理液Lの流量を推定する。そして、制御部18は、複数の設定流量の各々について推定された処理液Lの流量の値を用いて、流量計による計測値を補正する。これにより、液処理の処理レシピに含まれる設定流量ごとに、流量計による計測値の誤差をキャンセルすることができる。
【0057】
図10は、実施形態に係る基板処理システム1が実行する処理動作の手順の別の一例を示すフローチャートである。なお、図10に示す各種の処理は、制御部18による制御に従って実行される。また、図10に示す処理動作は、例えば、指定されたタイミングや周期的なタイミングなどの任意のタイミングで実行されてもよい。
【0058】
制御部18は、処理液供給部40のノズル41a、41bからノズルを一つ選択する(ステップS211)。
【0059】
制御部18は、流量計キャリブレーション処理を実行する(ステップS212)。ここで、流量計キャリブレーション処理は、図4に示す一連の流量計キャリブレーション処理である。流量計キャリブレーション処理のステップS101では、制御部18は、ステップS211で選択されたノズルから処理液Lを供給する。ステップS104では、制御部18は、ステップS211で選択されたノズルからウェハWに供給される処理液Lの流量を推定する。ステップS106では、制御部18は、ステップS211で選択されたノズルに対応する流量計による計測値を補正する。
【0060】
制御部18は、全てのノズルを選択したか否かを判定し(ステップS213)、選択していない場合(ステップS213No)、上記したステップS211~S213の処理を繰り返す。一方、制御部18は、全てのノズルを選択した場合(ステップS213Yes)、処理を終了する。
【0061】
上記したステップS211~S213の処理の繰り返しにより、制御部18は、処理液供給部40のノズル41a、41bから処理液Lを順次供給する。そして、制御部18は、ノズル41a、41bの各々から供給される処理液Lの流量を推定する。そして、制御部18は、ノズル41a、41bの各々に対応する流量計(流量計46a、46b)による計測値を補正する。これにより、処理液供給部40のノズルごとに、流量計による計測値の誤差をキャンセルすることができる。
【0062】
図11は、実施形態に係る基板処理システム1が実行する処理動作の手順のさらに別の一例を示すフローチャートである。なお、図11に示す各種の処理は、制御部18による制御に従って実行される。また、図11に示す処理動作は、例えば、指定されたタイミングや周期的なタイミングなどの任意のタイミングで実行されてもよい。
【0063】
制御部18は、複数の処理ユニット16から処理ユニット16を一つ選択する(ステップS221)。
【0064】
制御部18は、流量計キャリブレーション処理を実行する(ステップS222)。流量計キャリブレーション処理は、図4に示す一連の流量計キャリブレーション処理である。流量計キャリブレーション処理のステップS101では、制御部18は、ステップS221で選択された処理ユニット16の処理液供給部40から処理液Lを供給する。ステップS104では、制御部18は、ステップS221で選択された処理ユニット16の処理液供給部40からウェハWに供給される処理液Lの流量を推定する。ステップS106では、制御部18は、ステップS221で選択された処理ユニット16の処理液供給部40に対応する流量計による計測値を補正する。
【0065】
制御部18は、全ての処理ユニット16を選択したか否かを判定し(ステップS223)、選択していない場合(ステップS223No)、上記したステップS221~S223の処理を繰り返す。一方、制御部18は、全ての処理ユニット16を選択した場合(ステップS223Yes)、処理を終了する。
【0066】
上記したステップS221~S223の処理の繰り返しにより、流量計キャリブレーション処理は、処理ユニット16ごとに実行される。これにより、処理ユニット16ごとに、流量計による計測値の誤差をキャンセルすることができる。
【0067】
上述してきたように、実施形態に係る流量推定方法は、基板(一例として、ウェハW)の表面に処理液(一例として、処理液L)を供給して液処理を行う基板処理装置(一例として、基板処理システム1)における処理液の流量推定方法であり、供給する工程と、撮像する工程と、推定する工程とを含む。供給する工程は、基板を回転可能に保持する基板保持部(一例として、基板保持部30)を用いて基板を回転させながら、基板の中心から離れた位置に処理液供給部(一例として、処理液供給部40)から処理液を供給する。撮像する工程は、基板の表面上における処理液の拡散によって形成される液膜(一例として、液膜LF)を撮像部(一例として、撮像部60)を用いて撮像する。推定する工程は、撮像部による撮像結果から処理液の拡散の状態を示す特徴量を算出し、算出した特徴量を特徴量と処理液供給部から基板に供給される処理液の流量との相関を示す相関関数に適用して、処理液の流量を推定する。これにより、実施形態に係る流量推定方法によれば、基板に供給される処理液の流量を適切に推定することができる。
【0068】
また、基板処理装置は、処理液供給部に処理液を供給する供給ライン(一例として、供給ライン44a、44b)と、供給ラインに設けられ、供給ラインを流れる処理液の流量を計測する流量計(一例として、流量計46a、46b)とを備えてもよい。また、実施形態に係る流量推定方法は、推定する工程によって推定された処理液の流量の値と流量計による計測値との差分に基づき、流量計による計測値を補正する工程をさらに含んでもよい。これにより、実施形態に係る流量推定方法によれば、流量計の個体差などに起因した、流量計による計測値の誤差をキャンセルすることができる。
【0069】
また、供給する工程は、液処理の処理レシピに含まれる異なる複数の設定流量の各々で処理液供給部から処理液を供給してもよい。また、推定する工程は、複数の設定流量の各々について、処理液供給部から基板に供給される処理液の流量を推定してもよい。補正する工程は、複数の設定流量の各々について推定された処理液の流量の値を用いて、流量計による計測値を補正してもよい。これにより、実施形態に係る流量推定方法によれば、液処理の処理レシピに含まれる設定流量ごとに、流量計による計測値の誤差をキャンセルすることができる。
【0070】
また、処理液供給部は、異なる処理液を吐出する複数のノズル(一例として、ノズル41a、41b)と、複数のノズルにそれぞれ処理液を供給する複数の供給ライン(一例として、供給ライン44a、44b)と、複数の供給ラインにそれぞれ設けられた複数の流量計(一例として、流量計46a、46bとを備えてもよい。また、供給する工程は、複数のノズルから処理液を順次供給してもよい。また、推定する工程は、複数のノズルの各々から基板に供給される処理液の流量を推定してもよい。補正する工程は、複数のノズルの各々に対応する流量計による計測値を補正してもよい。これにより、実施形態に係る流量推定方法によれば、処理液供給部のノズルごとに、流量計による計測値の誤差をキャンセルすることができる。
【0071】
また、基板処理装置は、基板保持部、処理液供給部、撮像部、供給ライン及び流量計を各々が備える複数の処理ユニット(例えば、処理ユニット16)を用いて複数の基板に対する液処理を行ってもよい。また、供給する工程、撮像する工程、推定する工程および補正する工程は、処理ユニットごとに実行されてもよい。これにより、実施形態に係る流量推定方法によれば、処理ユニットごとに、流量計による計測値の誤差をキャンセルすることができる。
【0072】
また、特徴量は、基板の表面上における処理液の供給位置から液膜の周縁までの距離(一例として、液膜周縁距離D)、液膜に設定された所定領域(一例として、所定領域R1)の面積、および基板の表面のうち基板の中心を含み且つ液膜が存在していない乾燥領域(一例として、乾燥領域R2)のサイズからなる群から選択される少なくとも一つの特徴量であってもよい。これにより、実施形態に係る流量推定方法によれば、基板に供給される処理液の流量を適切に推定することができる。
【0073】
今回開示された実施形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。実に、上記した実施形態は多様な形態で具現され得る。また、上記の実施形態は、添付の請求の範囲およびその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0074】
1 基板処理システム
2 搬入出ステーション
3 処理ステーション
4 制御装置
11 キャリア載置部
12 搬送部
13 基板搬送装置
14 受渡部
15 搬送部
16 処理ユニット
17 基板搬送装置
18 制御部
19 記憶部
20 チャンバ
30 基板保持部
31 保持部
31a 把持部
32 支柱部
33 駆動部
40 処理液供給部
41a ノズル
41b ノズル
42 アーム
43 移動機構
44a 供給ライン
44b 供給ライン
46a 流量計
46b 流量計
47a 定圧弁
47b 定圧弁
48a バルブ
48b バルブ
50 回収カップ
51 排液口
52 排気口
60 撮像部
C キャリア
45a IPA供給源
45b DIW供給源
L 処理液
LF 液膜
R1 所定領域
R2 乾燥領域
W ウェハ
Wc 中心
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11