(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117940
(43)【公開日】2024-08-30
(54)【発明の名称】積層フィルム、画像表示装置用表面保護フィルム、フレキシブル画像表示装置及び積層フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 1/111 20150101AFI20240823BHJP
B32B 5/18 20060101ALI20240823BHJP
B32B 27/06 20060101ALI20240823BHJP
B32B 27/20 20060101ALI20240823BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20240823BHJP
B32B 27/40 20060101ALI20240823BHJP
G02B 1/14 20150101ALI20240823BHJP
【FI】
G02B1/111
B32B5/18
B32B27/06
B32B27/20 Z
B32B27/30 A
B32B27/40
G02B1/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023024053
(22)【出願日】2023-02-20
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100119666
【弁理士】
【氏名又は名称】平澤 賢一
(72)【発明者】
【氏名】植田 千晴
【テーマコード(参考)】
2K009
4F100
【Fターム(参考)】
2K009AA02
2K009AA15
2K009BB24
2K009CC01
2K009CC09
2K009CC24
2K009DD02
2K009DD05
2K009DD06
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4F100YY00C
4F100YY00D
(57)【要約】
【課題】反射防止性能を備えるとともに、耐擦過性及びフレキシブル性に優れた積層フィルム、画像表示装置用表面保護フィルム、フレキシブル画像表示装置、及び該積層フィルムの製造方法を提供すること。
【解決手段】基材フィルム上に、硬化樹脂層を介して多孔質ケイ素膜(A)を備える積層フィルムであって、♯0000番のスチールウールで1kg/cm2の荷重をかけながら、前記多孔質ケイ素膜の表面を100回往復させた後のヘイズ値の変化が1%以下である積層フィルム。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルム上に、硬化樹脂層を介して多孔質ケイ素膜(A)を備える積層フィルムであって、♯0000番のスチールウールで1kg/cm2の荷重をかけながら、前記多孔質ケイ素膜(A)の表面を100回往復させた後のヘイズ値の変化が1%以下である積層フィルム。
【請求項2】
前記多孔質ケイ素膜(A)の空隙率が5%以上70%以下であり、前記多孔質ケイ素膜の膜厚が10nm以上1000nm以下である、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項3】
前記多孔質ケイ素膜(A)の純水接触角が70°以上100°以下である、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項4】
♯0000番のスチールウールで1kg/cm2の荷重をかけながら、前記多孔質ケイ素膜(A)の表面を500回往復させた後のヘイズ値の変化が1%以下である、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項5】
前記硬化樹脂層が、ウレタン(メタ)アクリレート、無機酸化物微粒子及び多官能(メタ)アクリレートを含む硬化性樹脂組成物(b)の硬化物から形成される硬化樹脂層(B)を含む、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項6】
前記硬化樹脂層が、アクリル系樹脂(但し、ウレタン(メタ)アクリレートを除く)を含む硬化性樹脂組成物(c)の硬化物から形成される硬化樹脂層(C)を含む、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項7】
前記硬化樹脂層として、基材フィルム側から硬化樹脂層(C)及び硬化樹脂層(B)の順に積層した構成であり、前記硬化樹脂層(B)が、ウレタン(メタ)アクリレート、無機酸化物微粒子及び多官能(メタ)アクリレートを含む硬化性樹脂組成物(b)の硬化物から形成され、前記硬化樹脂層(C)がアクリル系樹脂(但し、ウレタン(メタ)アクリレートを除く)を含む硬化性樹脂組成物(c)の硬化物から形成される、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項8】
前記多孔質ケイ素膜(A)と硬化樹脂層との間に、屈折率が1.6以上1.8未満の中屈折率層及び屈折率が1.8以上の高屈折率層から選択される少なくとも1種の層を含む、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項9】
前記多孔質ケイ素膜(A)は、当該多孔質ケイ素膜を形成するための組成物を前記硬化樹脂層上に塗布した後で、前記基材フィルムの最高温度が120℃以下であり、かつ、前記基材フィルムの温度が40℃以上である時間が5分以上300分以下であるように加熱されることによって形成される、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項10】
前記基材フィルムのガラス転移温度が300℃以下である、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項11】
前記基材フィルムの融点が400℃以下である、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項12】
前記基材フィルムが、ポリエステル樹脂、シクロオレフィン樹脂、トリアセチルセルロース樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、及びポリウレタン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を主成分として含む樹脂フィルムである、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の積層フィルムを備えた画像表示装置用表面保護フィルム。
【請求項14】
請求項13に記載の画像表示装置用表面保護フィルムを用いた、フレキシブル画像表示装置。
【請求項15】
基材フィルム上に、多孔質ケイ素膜を備える積層フィルムの製造方法であって、[工程1]アルコキシシラン化合物、水、有機溶媒、酸触媒及び界面活性剤を含む多孔質ケイ素膜前駆体組成物(a)を、硬化樹脂層を介して基材フィルム上に塗布する工程と、[工程2]前記基材フィルムの最高温度が120℃以下であり、かつ、前記基材フィルムの温度が40℃以上である時間が5分以上300分以下であるように加熱して、多孔質ケイ素膜を形成する工程とを、この順に含む、積層フィルムの製造方法。
【請求項16】
前記[工程2]の後、[工程3]多孔質ケイ素膜に真空紫外線を照射する工程を含む、請求項15に記載の積層フィルムの製造方法。
【請求項17】
前記[工程2]の後、[工程4]多孔質ケイ素膜を溶剤と接触させることで、前記界面活性剤を抽出する工程を含む、請求項15に記載の積層フィルムの製造方法。
【請求項18】
前記多孔質ケイ素膜が、硬化樹脂層を介して基材フィルム上に形成され、前記硬化樹脂層が、ウレタン(メタ)アクリレート、無機酸化物微粒子及び多官能(メタ)アクリレートを含む硬化性樹脂組成物(b)の硬化物から形成される硬化樹脂層(B)を含む、請求項15に記載の積層フィルムの製造方法。
【請求項19】
前記多孔質ケイ素膜が、硬化樹脂層を介して基材フィルム上に形成され、前記硬化樹脂層が、アクリル系樹脂(但し、ウレタン(メタ)アクリレートを除く)を含む硬化性樹脂組成物(c)の硬化物から形成される硬化樹脂層(C)を含む、請求項15に記載の積層フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層フィルム、画像表示装置用表面保護フィルム、フレキシブル画像表示装置及び、積層フィルムの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等を搭載した画像表示装置において、表面における外光の反射を低減するための技術として反射防止膜が知られている。反射防止膜においては一般的に、最表面層の屈折率が低いほど空気との界面における屈折率差が低減するため、反射防止特性が向上する。かかる低屈折率層を得るために、多くの提案がなされている。
【0003】
例えば、特許文献1には、低屈折率層内に中空微粒子を充填し、中空微粒子の内部の空洞により低屈折率層の低屈折率化を図った反射防止膜が記載されている。
特許文献2では、光学用途に有効な低い屈折率を有し、耐水性に優れ、水に対して屈折率を低く維持できるシリカ多孔質体が開示されている。
【0004】
ところで、近年、画像表示画面(ディスプレイ)を折り曲げたり、折り畳んだりすることができるフレキシブル携帯端末の開発が進められており、この類の画像表示画面に用いる表面保護フィルムに関して、繰り返し折り曲げ可能な耐久性や耐擦過性が求められている。
そのため、近年、表面保護フィルムに関し、高硬度で耐擦傷性を保持しつつ、フレキシブル性乃至屈曲性を改善するために多くの提案がなされている。
例えば、特許文献3では、優れた硬度、耐擦傷性及び耐久折り畳み性能を有するタッチパネル用ハードコートフィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5881096号公報
【特許文献2】特許第5644825号公報
【特許文献3】特開2021-7016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
低屈折率層の低屈折率化を図るために、特許文献1に記載される中空微粒子を用いると、当該微粒子により表面に凹凸が形成され、その結果摩擦係数が増大し、耐擦傷性が悪化する問題があった。
また、特許文献2に記載されるシリカ多孔質体は、熱処理工程を230℃以上の高温で行うことが記載されている。そのため、基材フィルム等の樹脂製部材に当該反射防止膜を設ける場合、熱処理工程において基材フィルムの変形等が生じるおそれがあるため、フレキシブル性乃至屈曲性が求められる表面保護フィルムへの適用は困難であった。
また、特許文献3に記載される発明は、耐擦傷性及び耐久折り畳み性に優れるものの、反射防止性は考慮されておらず、反射防止性と耐擦過性との両立において更なる改良が求められている。
【0007】
そこで、本発明ではこのような背景下において、反射防止性能を備えるとともに、耐擦過性及びフレキシブル性に優れた積層フィルム、画像表示装置用表面保護フィルム、フレキシブル画像表示装置、及び該積層フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題に対して、本発明者は鋭意検討を重ねた結果、基材フィルム上に、硬化樹脂層を介して多孔質ケイ素膜を備える積層フィルムであって、多孔質ケイ素膜が特定の物性を有することで、上記課題を解決し得ることを見出した。本発明は、このような知見に基づいて完成したものである。
即ち、本発明は、以下の態様を有する。
【0009】
[1]基材フィルム上に、硬化樹脂層を介して多孔質ケイ素膜(A)を備える積層フィルムであって、♯0000番のスチールウールで1kg/cm2の荷重をかけながら、前記多孔質ケイ素膜(A)の表面を100回往復させた後のヘイズ値の変化が1%以下である積層フィルム。
[2]前記多孔質ケイ素膜(A)の空隙率が5%以上70%以下であり、前記多孔質ケイ素膜の膜厚が10nm以上1000nm以下である、上記[1]に記載の積層フィルム。
[3]前記多孔質ケイ素膜(A)の純水接触角が70°以上100°以下である、上記[1]又は[2]に記載の積層フィルム。
[4]♯0000番のスチールウールで1kg/cm2の荷重をかけながら、前記多孔質ケイ素膜(A)の表面を500回往復させた後のヘイズ値の変化が1%以下である、上記[1]~[3]のいずれかに記載の積層フィルム。
[5]前記硬化樹脂層が、ウレタン(メタ)アクリレート、無機酸化物微粒子及び多官能(メタ)アクリレートを含む硬化性樹脂組成物(b)の硬化物から形成される硬化樹脂層(B)を含む、上記[1]~[4]のいずれかに記載の積層フィルム。
[6]前記硬化樹脂層が、アクリル系樹脂(但し、ウレタン(メタ)アクリレートを除く)を含む硬化性樹脂組成物(c)の硬化物から形成される硬化樹脂層(C)を含む、上記[1]~[5]のいずれかに記載の積層フィルム。
[7]前記硬化樹脂層として、基材フィルム側から硬化樹脂層(C)及び硬化樹脂層(B)の順に積層した構成であり、前記硬化樹脂層(B)が、ウレタン(メタ)アクリレート、無機酸化物微粒子及び多官能(メタ)アクリレートを含む硬化性樹脂組成物(b)の硬化物から形成され、前記硬化樹脂層(C)がアクリル系樹脂(但し、ウレタン(メタ)アクリレートを除く)を含む硬化性樹脂組成物(c)の硬化物から形成される、上記[1]~[6]のいずれかに記載の積層フィルム。
[8]前記多孔質ケイ素膜(A)と硬化樹脂層との間に、屈折率が1.6以上1.8未満の中屈折率層及び屈折率が1.8以上の高屈折率層から選択される少なくとも1種の層を含む、上記[1]~[7]のいずれかに記載の積層フィルム。
[9]前記多孔質ケイ素膜(A)は、当該多孔質ケイ素膜を形成するための組成物を前記硬化樹脂層上に塗布した後で、前記基材フィルムの最高温度が120℃以下であり、かつ、前記基材フィルムの温度が40℃以上である時間が5分以上300分以下であるように加熱されることによって形成される、上記[1]~[8]のいずれかに記載の積層フィルム。
[10]前記基材フィルムのガラス転移温度が300℃以下である、上記[1]~[9]のいずれかに記載の積層フィルム。
[11]前記基材フィルムの融点が400℃以下である、上記[1]~[10]のいずれかに記載の積層フィルム。
[12]前記基材フィルムが、ポリエステル樹脂、シクロオレフィン樹脂、トリアセチルセルロース樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、及びポリウレタン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を主成分として含む樹脂フィルムである、上記[1]~[11]のいずれかに記載の積層フィルム。
[13]上記[1]~[12]のいずれかに記載の積層フィルムを備えた画像表示装置用表面保護フィルム。
[14]上記[13]に記載の画像表示装置用表面保護フィルムを用いた、フレキシブル画像表示装置。
[15]基材フィルム上に、多孔質ケイ素膜を備える積層フィルムの製造方法であって、[工程1]アルコキシシラン化合物、水、有機溶媒、酸触媒及び界面活性剤を含む多孔質ケイ素膜前駆体組成物(a)を、硬化樹脂層を介して基材フィルム上に塗布する工程と、[工程2]前記基材フィルムの最高温度が120℃以下であり、かつ、前記基材フィルムの温度が40℃以上である時間が5分以上300分以下であるように加熱して、多孔質ケイ素膜を形成する工程とを、この順に含む、積層フィルムの製造方法。
[16]前記[工程2]の後、[工程3]多孔質ケイ素膜に真空紫外線を照射する工程を含む、上記[15]に記載の積層フィルムの製造方法。
[17]前記[工程2]の後、[工程4]多孔質ケイ素膜を溶剤と接触させることで、前記界面活性剤を抽出する工程を含む、上記[15]又は[16]に記載の積層フィルムの製造方法。
[18]前記多孔質ケイ素膜が、硬化樹脂層を介して基材フィルム上に形成され、前記硬化樹脂層が、ウレタン(メタ)アクリレート、無機酸化物微粒子及び多官能(メタ)アクリレートを含む硬化性樹脂組成物(b)の硬化物から形成される硬化樹脂層(B)を含む、上記[15]~[17]のいずれかに記載の積層フィルムの製造方法。
[19]前記多孔質ケイ素膜が、硬化樹脂層を介して基材フィルム上に形成され、前記硬化樹脂層が、アクリル系樹脂(但し、ウレタン(メタ)アクリレートを除く)を含む硬化性樹脂組成物(c)の硬化物から形成される硬化樹脂層(C)を含む、上記[15]~[18]のいずれかに記載の積層フィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、反射防止性能を備えるとともに、耐擦過性及びフレキシブル性に優れた、積層フィルム、画像表示装置用表面保護フィルム、フレキシブル画像表示装置、及び該積層フィルムの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、実施の形態例に基づいて本発明を説明する。但し、本発明は次に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0012】
[積層フィルム]
本発明の実施形態の一例に係る積層フィルム(以下、「本積層フィルム」と称することがある。)は、基材フィルム上に硬化樹脂層を介して多孔質ケイ素膜(A)を備える積層フィルムであって、♯0000番のスチールウールで1kg/cm2の荷重をかけながら、前記多孔質ケイ素膜の表面を100回往復させた後のヘイズ値の変化が1%以下であることを特徴とする。
なお、本積層フィルムは上記構成を備えていれば他の層を備えていてもよい。
【0013】
<基材フィルム>
基材フィルムは、必要十分な剛性、繰り返し折り曲げ性及び耐熱性を得ることができるフィルムであれば、特に限定されるものではないが、ガラス転移温度(Tg)が50℃以上、300℃以下であることが好ましい。Tgが50℃以上であると十分な耐熱性が得られ、硬化樹脂層及び多孔質ケイ素膜(A)を設ける際に有利である。以上の観点からTgは60℃以上であることがより好ましく、70℃以上であることがさらに好ましい。一方、Tgが300℃以下であると、本積層フィルムにある程度の剛性及び耐屈曲性を付与することができる。以上の観点から、Tgは200℃以下であることがより好ましく、150℃以下であることがさらに好ましい。
また、同様の観点から基材フィルムの融点は100℃以上であることが好ましく、200℃以上であることがより好ましく、250℃以上であることがさらに好ましい。さらに、上記と同様の観点から、基材フィルムの融点は400℃以下であることが好ましく、300℃以下であることがより好ましく、280℃以下であることがさらに好ましい。
【0014】
より具体的には、基材フィルムがポリエステル樹脂、シクロオレフィン樹脂、トリアセチルセルロース樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、及びポリウレタン樹脂を主成分として含む樹脂フィルムであることが好ましい。これらの樹脂は1種を単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
これらの樹脂のうち、特にポリエステル樹脂が好ましい。
また、基材フィルムは、単層構成であっても、多層構成であってもよい。
基材フィルムが多層構成の場合、2層、3層構成以外にも本発明の要旨を越えない限り、4層またはそれ以上の多層であってもよい。
【0015】
また単層構成であっても、多層構成であっても、各層の主成分樹脂は上記の樹脂から選択されるのが好ましい。
なお、「主成分樹脂」とは、基材フィルムを構成する樹脂のうち最も含有割合の多い樹脂を意味し、例えば基材フィルムを構成する樹脂のうち50質量%以上、特に70質量%以上、中でも80質量%以上(100質量%を含む)を占める樹脂である。
【0016】
(ポリエステル樹脂)
基材フィルムを構成する各層の主成分樹脂としてのポリエステル樹脂は、ホモポリエステルであっても、共重合ポリエステルであってもよい。以下、ポリエステル樹脂は単に「ポリエステル」と記載することがある。
該ポリエステルが、ホモポリエステルからなる場合、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとを重縮合させて得られるものが好ましい。
前記芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸などを挙げることができる。
前記脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等を挙げることができる。
【0017】
また、該ポリエステルが、共重合ポリエステルである場合、そのジカルボン酸成分としては、例えばイソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、セバシン酸などの1種または2種以上を挙げることができる。他方、そのグリコール成分としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、1、4-シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール等の1種または2種以上を挙げることができる。
【0018】
代表的なポリエステルの具体例としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリエチレンフラノエート(PEF)などを例示することができる。中でも、PET、PENが取扱い性の点で好ましい。
【0019】
(シクロオレフィン樹脂)
シクロオレフィン樹脂とは、主鎖が炭素-炭素結合からなり、主鎖の少なくとも一部に環状炭化水素構造を有する高分子化合物である。この環状炭化水素構造は、ノルボルネンやテトラシクロドデセンに代表されるような、環状炭化水素構造中に少なくとも一つのオレフィン性二重結合を有する化合物(シクロオレフィン)を単量体として用いることで導入される。
シクロオレフィン樹脂は、シクロオレフィンの付加重合体又はその水素添加物、シクロオレフィンとα-オレフィンの付加重合体又はその水素添加物、シクロオレフィンの開環重合体又はその水素添加物に分類され、いずれもシクロオレフィン樹脂として用いることができる。また、シクロオレフィン樹脂は、シクロオレフィン単独重合体、シクロオレフィン共重合体の何れであってもよい。
【0020】
シクロオレフィン樹脂の具体例としては、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロオクテン;シクロペンタジエン、1,3-シクロヘキサジエン等の1環シクロオレフィン;ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン(慣用名:ノルボルネン)、5-メチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン、5,5-ジメチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン、5-エチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン、5-ブチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン、5-エチリデン-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン、5-ヘキシル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン、5-オクチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン、5-オクタデシル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン、5-メチリデン-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン、5-ビニル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン、5-プロペニル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン等の2環シクロオレフィン;トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ-3,7-ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)等の3環シクロオレフィン;テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン(単にテトラシクロドデセンともいう)等の4環シクロオレフィン;8-シクロペンチル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン、テトラシクロ[8.4.14,7.01,10.03,8]ペンタデカ-5,10,12,14-テトラエン(1,4-メタノ-1,4,4a,5,10,10a-へキサヒドロアントラセンともいう);シクロペンタジエンの4量体などの多環のシクロオレフィンなどを挙げることができる。
これらのシクロオレフィン樹脂は、それぞれ単独であるいは2種以上を組合わせて共重合体として用いることができる。
【0021】
シクロオレフィンと共重合可能なα-オレフィンの具体例としては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-へキセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-へキセン、4,4-ジメチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-エチル-1-へキセン、3-エチル-1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセンなどの炭素数2~20、好ましくは炭素数2~8のエチレンまたはα-オレフインなどを挙げることができる。これらのα-オレフィンは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0022】
(トリアセチルセルロース樹脂)
トリアセチルセルロース樹脂は、パルプ、リンターなどのセルロース樹脂をアセチル化することで得られる樹脂である。
トリアセチルセルロース樹脂は、セルロース樹脂中のグルコース単位の3つのヒドロキシ基を全てアセチル化したものであり、その後の工程が必要なく安価な樹脂である。トリアセチルセルロース樹脂には、他のセルロースエステル樹脂を併用することもでき、他のセルロースエステル樹脂としては、例えば、セルロースジアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート、硝酸セルロース等が挙げられる。他のセルロースエステル樹脂を使用する際は、1種類を使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0023】
トリアセチルセルロース樹脂としては、重合度が250~400のものが好ましい。重合度がかかる範囲であれば、優れた機械的物性を有するフィルムとすることができる。また、数平均分子量(Mn)は、70,000~300,000の範囲が好ましく、80,000~200,000の範囲が優れた機械的物性を有する点で好ましい。
【0024】
(ポリメチルメタクリレート樹脂)
ポリメチルメタクリレート樹脂としては、ポリメチルメチルメタクリレート、ポリエチルメチルメタクリレート、ポリプロピルメチルメタクリレート、ポリブチルメチルメタクリレート、ポリイソブチルメチルメタクリレート、ポリヘキシルメチルメタクリレート、ポリオクチルメチルメタクリレート、ポリ‐2‐エチルヘキシルメチルメタクリレート、ポリデシルメチルメタクリレート、ポリラウリルメチルメタクリレートなどのポリアルキルメチルメタクリレート、ポリ‐2‐ヒドロキシエチルメチルメタクリレート、ポリ‐2‐ヒドロキシブチルメチルメタクリレートなどのポリヒドロキシアルキルメチルメタクリレート、ポリジメチルアミノエチルメチルメタクリレート、ポリジエチルアミノエチルメチルメタクリレートなどのポリアミノメチルメタクリレート、ポリシクロヘキシルメチルメタクリレート、ポリシクロヘキシルメチルメチルメタクリレート、ポリボルニルメチルメタクリレートなどのポリアリサイクリックメチルメタクリレート、ポリフェニルメチルメタクリレート、ポリベンジルメチルメタクリレートなどの芳香族ポリメチルメタクリレートなどが含まれる。
また、ポリメチルメタクリレート樹脂は他の樹脂との共重合体を形成してもよい。前記ポリメチルメタクリレート樹脂におけるメタクリル酸メチル以外の重合性化合物として、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸-n-プロピル、アクリル酸-n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸-2-エチルヘキシル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸-n-プロピル、メタクリル酸-n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸-2-エチルヘキシル、スチレン、スチレン誘導体等が挙げられる。
【0025】
(エポキシ樹脂)
エポキシ樹脂としては、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、アミン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂等が挙げられる。
耐熱性向上の観点から、エポキシ当量が170以下のエポキシ樹脂であることが好ましい。該エポキシ当量は、製造安定性や貯蔵安定性、ならびに成形時の硬化性の観点から、80以上が好ましく、90以上がより好ましく、100以上であることがさらに好ましい。一方、耐熱性の観点から、160以下が好ましく、150以下がさらに好ましい。
【0026】
ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ビスフェノールBP型エポキシ樹脂等が挙げられ、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂は、強度、靭性等の機械特性を所望の範囲に調整しやすいため好ましい。
【0027】
ノボラック型エポキシ樹脂としては、芳香族多価フェノールとエピハロヒドリンとから製造されるフェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂等を用いることができる。
【0028】
アミン型エポキシ樹脂としては、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン型エポキシ樹脂、トリグリシジル-p-アミノフェノール、トリグリシジル-m-アミノフェノール等の多官能エポキシ樹脂が挙げられ、脂環式エポキシ樹脂としては、3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ε-カプロラクトン変性3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、1,2-エポキシ-4-ビニルシクロヘキサン等が挙げられる。
【0029】
(ポリイミド樹脂)
ポリイミド樹脂は通常、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを原料として用い、ポリアミック酸(ポリイミド前駆体)を得た後、該ポリアミック酸をイミド化することにより得ることができる。また、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物からイミド化反応により直接ポリイミド樹脂を製造することもできる。
【0030】
テトラカルボン酸二無水物としては、鎖状脂肪族テトラカルボン酸二無水物、脂環式テトラカルボン酸二無水物、芳香族テトラカルボン酸二無水物などが挙げられる。これらの化合物は、1種を単独で用いても、2種以上を任意の比率及び組合せで用いてもよい。
【0031】
鎖状脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、エチレンテトラカルボン酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、meso-ブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物などが挙げられる。
【0032】
脂環式テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、3,3’,4,4’-ビスシクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-テトラメチル-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフリル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-11,2-ジカルボン酸無水物、トリシクロ[6.4.0.02,7]ドデカン-1,8:2,7-テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1,2-ジカルボン酸無水物、1,1’-ビシクロヘキサン-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物などが挙げられる。
【0033】
芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、1,2,3,4-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4,4’-オキシジフタル酸二無水物、4,4-(p-フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物、4,4-(m-フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物、2,2’,6,6’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’、5,5’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、4,4’-(ヘキサフルオロトリメチレン)-ジフタル酸二無水物、4,4’-(オクタフルオロテトラメチレン)-ジフタル酸二無水物、4,4’-オキシジフタル酸無水物、1,2,5,6-ナフタレンジカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンジカルボン酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンジカルボン酸二無水物、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8-フェナントレンテトラカルボン酸二無水物などが挙げられる。
【0034】
ジアミン化合物としては、芳香族ジアミン化合物、鎖状脂肪族ジアミン化合物、脂環式ジアミン化合物等が挙げられる。これらの化合物は、1種を単独で用いても、2種以上を任意の比率及び組合せで用いてもよい。
【0035】
芳香族ジアミン化合物としては、例えば、1,4-フェニレンジアミン、1,2-フェニレンジアミン、1,3-フェニレンジアミン、4,4’-(ビフェニル-2,5-ジイルビスオキシ)ビスアニリン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4-(3-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ネオペンタン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメチルビフェニル、4,4’-ジアミノ-2,2’-ジメチルビフェニル、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジヒドロキシビフェニル、ビス(4-アミノ-3-カルボキシフェニル)メタン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、N-(4-アミノフェノキシ)-4-アミノベンズアミン、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル、ビス(3-アミノフェニル)スルホン、ノルボルナンジアミン、4,4’-ジアミノ-2-(トリフルオロメチル)ジフェニルエーテル、5-トリフルオロメチル-1,3-ベンゼンジアミン、2,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’-ジアミノ-2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、2,2-ビス[4-{4-アミノ-2-(トリフルオロメチル)フェノキシ}フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2-トリフルオロメチル-p-フェニレンジアミン、2,2-ビス(3-アミノ-4-メチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’-(9-フルオレニリデン)ジアニリン、2,7-ジアミノフルオレン、1,5-ジアミノナフタレン、及び3,7-ジアミノ-2,8-ジメチルジベンゾチオフェン5,5-ジオキシドなどが挙げられる。
【0036】
鎖状脂肪族ジアミン化合物としては、例えば、1,2-エチレンジアミン、1,2-ジアミノプロパン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、1,5-ジアミノペンタン、1,10-ジアミノデカン、1,2-ジアミノ-2-メチルプロパン、2,3-ジアミノ-2,3-ブタンジアミン、及び2-メチル-1,5-ジアミノペンタンなどが挙げられる。
【0037】
脂環式ジアミン化合物としては、例えば、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、及び4,4’-メチレンビス(2-メチルシクロヘキシルアミン)などが挙げられる。
【0038】
(ポリウレタン樹脂)
ポリウレタン樹脂は、ウレタン結合を有する重合体の総称であり、通常イソシアネート基を含む化合物と水酸基を含む化合物との重付加反応により生成される。一般に、1液性ポリウレタンと2液性ポリウレタンが主に使用されるが、保存安定性の観点から2液性ポリウレタンの使用が好ましい。
2液性ポリウレタンを樹脂成分とする場合は、ポリオール類およびポリイソシアネート類に、必要に応じて鎖伸長剤、硬化促進剤、充填材、溶剤などを添加することができる。
重付加反応の硬化には、熱硬化、紫外線や電子線等を用いた活性エネルギー線硬化などの公知の方法を用いることができ、なかでも熱硬化が好ましい。
【0039】
ポリオール類としては、主にポリマーポリオール類が使用される。前記ポリマーポリオール類としては、例えば、ポリカーボネート系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリエーテルエステル系ポリオールなどが挙げられる。基材との密着性と触感の観点から、ポリカーボネート系ポリオールまたはポリエステル系ポリオールが好ましい。具体的には、1,4-ブタンジオール、1,20-デカンジオール等が好ましい。
【0040】
ポリイソシアネート類としては、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、及び、ポリイソシアネート誘導体などが挙げられる。脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、及び、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートなどが挙げられる。脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロへキシルイソシアネート)、水添キシリレンジイソシアネート、及び、ノルボルナンジイソシアネートなどが挙げられる。芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどが挙げられる。芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、フェニレンジイソシアネート、1,5-ナフチレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、4,4’-トルイジンジイソシアネート、及び、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネートなどが挙げられる。ポリイソシアネート誘導体としては、例えば、ダイマーやトリマーなどの多量体、ビウレット、アロファネート、カルボジイミド、及び、ウレットジオンなどが挙げられる。これらのポリイソシアネートは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0041】
これらのポリイソシアネートのうち、安定性などの観点から、無黄変タイプのジイソシアネート又はその誘導体、例えば、脂肪族ジイソシアネート、イソホロジイソシアネート、及び、水添キシリレンジイソシアネートなどの脂環族ジイソシアネートなどが好ましい。これらのポリイソシアネートは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0042】
鎖伸長剤としては、例えば、脂肪族ジオール、脂環族ジオールなどのジオール、アルカノールアミン類、ジアミン類、脂環族ジアミン類、芳香族ジアミン類、及び、芳香脂肪族ジアミン類などが使用される。これらの鎖伸長剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0043】
硬化促進剤としては、アミン系触媒や金属触媒などが挙げられる。
アミン系触媒としては、例えば、モノアミンであるトリエチルアミン、N,N-ジメチルシクロへキシルアミン、ジアミンであるテトラメチルエチレンジアミン、その他トリアミン、環状アミン、ジメチルエタノールアミンのようなアルコールアミン、及び、エーテルアミンなどが挙げられる。
金属系触媒としては、例えば、オクチル酸鉛、ジブチル錫ジラウレート、オクチル酸錫、オクチル酸亜鉛、酢酸カリウム、2エチルヘキサン酸カリウム、酢酸カルシウム、及び、ホスフィンなどが挙げられる。
【0044】
(粒子)
基材フィルムは、フィルム表面に易滑性を付与する目的及び各工程での傷発生防止を主たる目的として、粒子を含有してもよい。
当該粒子の種類は、易滑性付与可能な粒子であれば特に限定されるものではない。例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、カオリン、酸化アルミニウム、酸化チタン等の無機粒子、アクリル樹脂、スチレン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等の有機粒子等を挙げることができる。これらは1種単独で用いても、これらのうちの2種以上を組み合わせて用いてもよい。
さらに、原料樹脂製造工程中、触媒等の金属化合物の一部を沈殿、微分散させた析出粒子を用いることもできる。
【0045】
上記粒子の形状は、特に限定されるわけではない。例えば球状、塊状、棒状、扁平状等のいずれであってもよい。
また、上記粒子の硬度、比重、色等についても特に制限はない。これら一連の粒子は、必要に応じて2種類以上を併用してもよい。
【0046】
上記粒子の平均粒径は、5μm以下であるのが好ましく、3μm以下であるのがより好ましく、2.5μm以下であるのがさらに好ましい。5μm以下であると、本基材フィルムの表面粗度が粗くなりすぎず、後工程において各種の硬化組成物からなる硬化樹脂層を形成させる場合等に不具合が生じることがない。一方、上記粒子の平均粒径は、0.01μm以上であることが好ましく、0.5μm以上であることがさらに好ましい。
【0047】
粒子の含有量は、基材フィルム中に5質量%以下であるのが好ましく、0.0003質量%以上3質量%以下であるのがより好ましく、0.01質量%以上2質量%以下であるのがさらに好ましい。
粒子の平均粒径が上記範囲内であれば、基材フィルムの表面粗度が粗過ぎることがなく、後工程において各種の硬化組成物からなる硬化樹脂層を形成させる場合等に生じる不具合を抑制することができる。
【0048】
基材フィルムに粒子を添加する方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を採用することができる。例えば、ポリエステル等の原料樹脂を製造する任意の段階において添加することができる。基材フィルムがポリエステルである場合は、好ましくはエステル化もしくはエステル交換反応終了後、添加するのが良い。
【0049】
(他の成分)
基材フィルムには、必要に応じて、他の成分として、例えば従来公知の酸化防止剤、帯電防止剤、熱安定剤、潤滑剤、染料、顔料、紫外線吸収剤等を含有してもよい。
【0050】
(厚み)
基材フィルムの厚みは、必要十分な剛性と繰り返し折り曲げ性を得ることができる点から、例えば9μm~125μmであるのが好ましく、さらに好ましくは12μm以上100μm以下であることがより好ましく、20μm以上75μm以下であるのがさらに好ましい。
【0051】
(製法)
基材フィルムは、例えば樹脂組成物を溶融製膜方法や溶液製膜方法により形成することができる。多層構造の場合は、共押出してもよい。
また、一軸延伸又は二軸延伸したものであってもよく、剛性の点から、二軸延伸フィルムが好ましい。
【0052】
<多孔質ケイ素膜(A)>
本積層フィルムは、基材フィルム上に、硬化樹脂層を介して多孔質ケイ素膜(A)を備える。多孔質ケイ素膜は、酸化ケイ素(シリカ)を主成分とする孔を有する膜である。
【0053】
<<屈折率>>
本発明の多孔質ケイ素膜の屈折率は1.20以上1.50以下であることが好ましい。屈折率が1.20以上であると、本積層フィルムの可視光線透過率が良好に維持され、多孔質ケイ素膜の機械的強度が担保される。以上の観点から、多孔質ケイ素膜の屈折率は1.23以上であることが好ましく、1.25以上がより好ましく、1.28以上がさらに好ましく、1.30以上が特に好ましい。
一方、多孔質ケイ素膜の屈折率が1.50以下であると、本積層フィルムの低反射性を達成することができ、光学用フィルム(反射防止フィルム)として用いる場合に十分な効果が得られる。以上の観点から、多孔質ケイ素膜の屈折率は、1.48以下が好ましく、1.45以下がより好ましく、1.43以下がさらに好ましく、1.40以下が特に好ましい。
なお、屈折率は、分光エリプソメーター法、反射率測定、反射分光スペクトル測定あるいはプリズムカプラーなどの光学的手法で測定された波長400nm~700nm、より好ましくは波長444~653nmにおける値をいい、好ましくは分光エリプソメーターで測定されたものをいう。分光エリプソメーターで測定する場合、測定値をCauthyモデルまたはTauc-Lorentzモデルでフィッティングすることで、屈折率を見積もることができる。
【0054】
<<組成>>
多孔質ケイ素膜中の酸化ケイ素(シリカ)含有量は、本発明の効果を著しく損なわない限り、特に制限はないが、例えば、酸化ケイ素組成において、ケイ素を含む全ての陽性元素に対するケイ素の割合が、通常50mol%以上、好ましくは70mol%以上、より好ましくは80mol%以上、特に好ましくは90mol%以上であることが好ましい。ケイ素の含有割合が50mol%以上であると、シリカ系多孔質体の表面粗さが過度に大きくなることがなく、機械的強度が低下することもない。また、ケイ素の含有割合は高いほど表面平滑性のよい多孔質ケイ素膜が形成される。したがって、上限は理想的には100mol%である。
【0055】
<<構造>>
本発明に係る多孔質ケイ素膜は、多孔質構造を有するため、その空孔によって、屈折率を低く維持することができる。空孔は、通常、トンネル状や独立空孔がつながった連結孔等の連続的な空孔であることが好ましい。なお、連続的な空孔は電子顕微鏡により確認することができる。
【0056】
また、機械強度の高い骨格とするためには、規則構造を有さない方がよく、具体的には、XRDパターン(X線回折パターン)において、回折角(2θ)=0.5°~10°の領域に、回折ピーク強度(面積)が標準偏差の2倍(すなわち2σ)以上の回折ピークを有さないことが好ましい。ここで、回折ピークとは、以下の定義により算出される周期構造サイズDが10Å以上となる回折ピークをいう。また、σは標準偏差を表わす。
周期構造サイズDは、下記式(i)に示すScherrer式に基づき算出できる。なお、式(i)において、Scherrer数Kは0.9であり、測定に用いたX線波長をλとする。ブラッグ角θおよび実測半価幅βoは、それぞれプロファイルフィティング法により算出する。試料由来の半価幅βは、下記式(ii)を用いて補正計算する。標準Siの回折ピークより計算した実測半価幅の回帰曲線を作成し、該当する角度の半価幅を読み取り装置由来半価幅βiとする。なお、Dの単位はÅ(オングストローム)であり、β、βo及びβiの単位はラジアンとする。
【0057】
【0058】
【0059】
標準偏差σは、以下のように定義される。
【0060】
【0061】
また、空孔サイズや空隙率を調整することで、屈折率、誘電率、密度を調整することができ、それらを調整することで、光学用途の他にも、様々な用途にも応用することができる。
空孔サイズには特に制限はないが、平均孔径は8nm以上16nm以下であることが好ましい。平均孔径が8nm以上であると、毛管力により空孔内に水蒸気が入ることがないため、それにより屈折率が変化したり、光学特性に影響を与えることがない。一方、平均孔径が16nm以下であると、機械強度の優れた多孔質体となり、かつ表面に欠陥ができ、表面性が悪化したり、散乱等のヘーズを生じることがない。以上の観点から、平均孔径は10nm以上であることがさらに好ましく、また14nm以下であることがさらに好ましい。
なお、平均孔径は透過電子顕微鏡(TEM)によって測定することができる。
【0062】
また、空隙率についても特に制限はないが、空隙率は5%以上70%以下であることが好ましく、8%以上65%以下がより好ましく、10%以上60%以下がさらに好ましい。空隙率が5%以上であると、十分に低い屈折率を達成することができ、十分な光学特性が得られる。一方、空隙率が70%以下であると、表面に欠陥ができ、表面性が悪化したり、散乱等によるヘーズの悪化を生じることがない。
また、優れた表面硬度を得る観点からは、空隙率は35%未満であるのが好ましく、30%以下であるのがより好ましく、25%以下であるのがさらに好ましく、20%以下であるのが特に好ましく、15%以下であるのが最も好ましい。
なお、空隙率は屈折率と相関関係があるため、多孔質ケイ素膜の屈折率と、多孔質ケイ素膜を構成する酸化ケイ素(シリカ)の屈折率値から空隙率を評価することができる。具体的には、例えば、反射分光装置等で測定した多孔質ケイ素膜の屈折率の値から、ローレンツ-ローレンツの式により空隙率を算出することができる。また、多孔質ケイ素膜を構成する酸化ケイ素(シリカ)と空気との割合(体積比)は、定法(例えば重量および体積を測定して密度を算出する)により算出することが可能であるため、これにより、空隙率(体積%)を算出することも可能である。
【0063】
<<膜厚>>
本積層フィルムにおける多孔質ケイ素膜の膜厚には特に制限はないが、光学機能層として用いるためには、10~1000nmが好ましく、30~800nmがより好ましく、50~600nmがさらに好ましく、80~500nmがもっとも好ましい。10nm以上であると、基材の平面度の制約がなく、特に基材が大面積化した場合であっても、製膜工程が容易となる。一方、1000nm以下であると、加熱工程において、シリカ系前駆体-基材界面でゾル-ゲル反応の進行が均質になりやすく、多孔質体に歪みが残存し難く、好ましい。
なお、膜厚の測定は、ケーエルエー・テンコール社製P-15型接触式表面粗さ計を用い、測定条件はスタイラス・フォース(触圧)0.2mg、スキャン速度10um/秒として行なえばよい。また分光エリプソメーター、反射分光スペクトル法、プリズムカプラによっても評価できる。
【0064】
<<形状>>
本発明の多孔質ケイ素膜は膜状であって、多孔質ケイ素膜を光学機能層として使用する場合、多孔質ケイ素膜は一定サイズ以上の基材に備えることが好ましい。一定サイズ以上の基材であれば、十分な光学特性が得られやすい。具体的には、0.0025m2以上が好ましく、0.05m2以上がより好ましく、0.1m2以上がさらに好ましく、1m2以上がもっとも好ましい。
【0065】
<<表面性>>
本発明の積層フィルムは、用途に応じて、基材フィルムと多孔質ケイ素膜との間に他の層を設けることができる。本発明では、基材フィルムと多孔質ケイ素膜との間に硬化樹脂層を有することが特徴の一つである。
このような層構成をとることで、多孔質ケイ素膜の耐擦過性が向上する。具体的には、♯0000番のスチールウールで1kg/cm2の荷重をかけながら、多孔質ケイ素膜の表面を100回往復させた後のヘイズ値の変化が1%以下である。
さらに好ましくは、♯0000番のスチールウールで1kg/cm2の荷重をかけながら、多孔質ケイ素膜の表面を500回往復させた後のヘイズ値の変化が1%以下である。
【0066】
ここでヘイズ値の変化とは、耐擦過性試験前のヘイズ値(初期ヘイズ値)に対して、耐擦過性試験後のヘイズ値の変化をいう。具体的には、以下の式により求めた値である。
((耐擦過性試験後のヘイズ値-初期ヘイズ)/初期ヘイズ)×100(%)
【0067】
また、本発明に係る多孔質ケイ素膜の表面の純水接触角が70°以上100°以下であることが好ましい。純水接触角が70°以上であると多孔質ケイ素膜の親水性が過度に高くなりすぎることがなく、多孔質ケイ素膜表面に水分が吸着し、他の層との密着性を低下させる懸念がない。一方、純水接触角が100°以下であると、多孔質ケイ素膜の表面が疎水状態となることがないため、積層する層や基材の制限を受けにくい。
なお、純水接触角は実施例に記載の水滴接触角により、評価することができる。
【0068】
<<耐水性>>
本発明の多孔質ケイ素膜を光学用途に使用する場合には、光学膜厚(屈折率と膜厚の積)を制御することが重要であるため、水中に浸漬処理の前後での膜厚の変化が少ない方が好ましい。具体的には、水浸漬処理の前後での膜厚の変化率は、50%以下が好ましく、30%以下がより好ましく、20%以下が更に好ましく、10%以下が特に好ましい。変化率が小さいことにより、光学用途の適用において性能が低下することがない。
【0069】
また、多孔質ケイ素膜は、水浸漬処理した後にクラックが少ないものが好ましく、そのクラックは目視若しくは光学顕微鏡で観測できる。具体的には、クラックのサイズが100μm以下であることが好ましく、10μm以下がより好ましく、1μm以下がさらに好ましい。クラックのサイズが100μm以下であると、基材との密着性の低下やヘイズが大きくなることがない。
さらに1mm×1mm内に前記クラックが存在しない領域の面積の合計が多孔質ケイ素膜の表面に対して50%以上であることが好ましく、70%以下がより好ましく、85%以上がさらに好ましい。50%以上であると、光学用途として光学性能の安定性や良好な外観が得られる
【0070】
水浸漬処理とは、多孔質ケイ素膜を常温・常湿(温度18℃~28℃、湿度20%~80%RH)の条件下で水に浸し、24時間後に取り出し、乾燥させる。乾燥は、100℃以上の加熱で行わず、風乾により行なう。
また、耐湿熱性の評価として、「高温高湿処理」もある。すなわち、本発明の多孔質ケイ素膜の波長550nmにおける屈折率n1を事前に測定した後、この多孔質ケイ素膜を温度85℃、湿度85%RH、又は温度60℃、湿度90%RHの条件下に静置し、500時間後に取り出す。その後、この多孔質ケイ素膜の波長550nmにおける屈折率n2を再度測定する。このときの屈折率差の絶対値Δn´=|n2-n1|は0.001~0.15が好ましく、0.003~0.12がより好ましく、0.005~0.1が更に好ましく、0.008~0.08が特に好ましい。
【0071】
<硬化樹脂層>
本積層フィルムは、硬化樹脂層を介して多孔質ケイ素膜(A)を備えることが特徴である。硬化樹脂層としては、本積層フィルムに耐擦過性を付与する機能を有するものであれば、特に限定されないが、好適には、(X)ウレタン(メタ)アクリレート、(Y)無機酸化物微粒子及び(Z)多官能(メタ)アクリレートを含む硬化性樹脂組成物(b)の硬化物から形成される硬化樹脂層(B)を含むことが好ましい。
また、硬化樹脂層として、アクリル系樹脂を含む硬化性樹脂組成物(c)の硬化物からなる硬化樹脂層(C)(但し、ウレタン(メタ)アクリレートを除く)を含む態様も好ましい。
さらには、硬化樹脂層が2層構成である場合には、上記硬化樹脂層(B)及び硬化樹脂層(C)の両方を含む態様が特に好ましい。具体的には、基材フィルム側から硬化樹脂層(C)及び硬化樹脂層(B)を順次積層した構成であることが好ましく、硬化樹脂層(B)が、ウレタン(メタ)アクリレート、無機酸化物微粒子及び多官能(メタ)アクリレートを含む硬化性樹脂組成物(b)の硬化物から形成され、前記硬化樹脂層(C)がアクリル系樹脂(但し、ウレタン(メタ)アクリレートを除く)を含む硬化性樹脂組成物(c)の硬化物から形成される態様が好ましい。
【0072】
((X)ウレタン(メタ)アクリレート)
ウレタン(メタ)アクリレートは、イソシアネート系化合物、及び水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物を反応させてなるもの、乃至、イソシアネート系化合物、ポリオール系化合物、及び水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物を反応させてなるものである。ウレタン(メタ)アクリレートは単独で、もしくは2種以上併せて用いることができる。
【0073】
イソシアネート系化合物としては、例えば、芳香族系ポリイソシアネート、脂肪族系ポリイソシアネート、脂環式系ポリイソシアネート等のポリイソシアネート系化合物が挙げられ、これらの中ではジイソシアネート化合物が好ましい。また、イソシアネート系化合物としては、ジイソシアネート化合物をイソシアヌレート化したイソシアヌレート骨格を有するイソシアネート系化合物等が挙げられる。
上記芳香族系ポリイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリフェニルメタンポリイソシアネート、変性ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等が挙げられる。
上記脂肪族系ポリイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、リジントリイソシアネート等が挙げられる。
上記脂環式系ポリイソシアネートとしては、例えば、水添化ジフェニルメタンジイソシアネート、水添化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。
【0074】
これらの中でも、耐黄変性に優れる点で脂肪族系ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネートが好ましい。また、イソシアヌレート骨格を有するイソシアネート系化合物も好ましく、同様の観点から、脂肪族系ジイソシアネート、又は脂環式ジイソシアネートをイソシアヌレート化したイソシアヌレート骨格を有するイソシアネート系化合物も好ましく、これらの中でもイソシアヌレート骨格を有するイソシアネート系化合物がより好ましい。
イソシアネート系化合物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0075】
上記水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート、2-(メタ)アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシプロピルフタレート、カプロラクトン変性2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、脂肪酸変性-グリシジル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート等のエチレン性不飽和基を1個含有する単官能の水酸基含有(メタ)アクリレート;グリセリンジ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-アクリロイル-オキシプロピルメタクリレート等のエチレン性不飽和基を2個含有する2官能の水酸基含有(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等のエチレン性不飽和基を3個以上含有する3官能以上の水酸基含有(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは1種または2種以上組み合わせて使用することができる。
【0076】
これらの中でも、反応性および汎用性に優れ、硬化塗膜の耐擦傷性とのバランスに優れる点で、エチレン性不飽和基を3個以下含有する(メタ)アクリレート系化合物が好ましく、また、中でもエチレン性不飽和基を2個以上含有する多官能(メタ)アクリレート系化合物がより好ましく、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0077】
上記ポリオール系化合物は、水酸基を2個以上有する化合物(但し、上記水酸基含有(メタ)アクリレートは除く。)であればよい。
上記ポリオール系化合物としては、例えば、脂肪族ポリオール、脂環族ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリカーボネート系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、ポリブタジエン系ポリオール、ポリイソプレン系ポリオール、(メタ)アクリル系ポリオール、ポリシロキサン系ポリオール等が挙げられる。
【0078】
上記脂肪族ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、ジメチロールプロパン、ネオペンチルグリコール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、1,4-テトラメチレンジオール、1,3-テトラメチレンジオール、2-メチル-1,3-トリメチレンジオール、1,5-ペンタメチレンジオール、1,6-ヘキサメチレンジオール、3-メチル-1,5-ペンタメチレンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタメチレンジオール、ペンタエリスリトールジアクリレート、1,9-ノナンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール等の2個の水酸基を含有する脂肪族アルコール類、キシリトールやソルビトール等の糖アルコール類、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン等の3個以上の水酸基を含有する脂肪族アルコール類等が挙げられる。
【0079】
上記脂環族ポリオールとしては、例えば、1,4-シクロヘキサンジオール、シクロヘキシルジメタノール等のシクロヘキサンジオール類、水添ビスフェノールA等の水添ビスフェノール類、トリシクロデカンジメタノール等が挙げられる。
【0080】
ポリエーテル系ポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリペンタメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール等のアルキレン構造含有ポリエーテル系ポリオールや、これらポリアルキレングリコールのランダム或いはブロック共重合体が挙げられる。
【0081】
ポリエステル系ポリオールとしては、例えば、多価アルコールと多価カルボン酸との縮合重合物、環状エステル(ラクトン)の開環重合物、多価アルコール、多価カルボン酸及び環状エステルの3種類の成分による反応物等が挙げられる。
【0082】
上記多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4-テトラメチレンジオール、1,3-テトラメチレンジオール、2-メチル-1,3-トリメチレンジオール、1,5-ペンタメチレンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサメチレンジオール、3-メチル-1,5-ペンタメチレンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタメチレンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、シクロヘキサンジオール類(1,4-シクロヘキサンジオール等)、ビスフェノール類(ビスフェノールA等)、糖アルコール類(キシリトールやソルビトール等)等が挙げられる。
【0083】
上記多価カルボン酸としては、例えば、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸等の脂肪族ジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、パラフェニレンジカルボン酸、トリメリット酸等の芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。
【0084】
上記環状エステルとしては、例えば、プロピオラクトン、β-メチル-δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン等が挙げられる。
【0085】
上記ポリカーボネート系ポリオールとしては、例えば、多価アルコールとホスゲンとの反応物、環状炭酸エステル(アルキレンカーボネート等)の開環重合物等が挙げられる。
【0086】
ポリカーボネート系ポリオールに使用される上記多価アルコールとしては、上記ポリエステル系ポリオールの説明中で例示の多価アルコール等が挙げられ、上記アルキレンカーボネートとしては、例えば、エチレンカーボネート、トリメチレンカーボネート、テトラメチレンカーボネート、ヘキサメチレンカーボネート等が挙げられる。
【0087】
なお、ポリカーボネート系ポリオールは、分子内にカーボネート結合を有し、末端がヒドロキシル基である化合物であればよく、カーボネート結合とともにエステル結合を有していてもよい。
【0088】
上記ポリオレフィン系ポリオールとしては、飽和炭化水素骨格としてエチレン、プロピレン、ブテン等のホモポリマーまたはコポリマーを有し、その分子末端に水酸基を有するものが挙げられる。
【0089】
上記ポリブタジエン系ポリオールとしては、炭化水素骨格としてブタジエンの共重合体を有し、その分子末端に水酸基を有するものが挙げられる。
ポリブタジエン系ポリオールは、その構造中に含まれるエチレン性不飽和基の全部または一部が水素化された水添化ポリブタジエンポリオールであってもよい。
【0090】
上記ポリイソプレン系ポリオールとしては、炭化水素骨格としてイソプレンの共重合体を有し、その分子末端に水酸基を有するものが挙げられる。
ポリイソプレン系ポリオールは、その構造中に含まれるエチレン性不飽和基の全部または一部が水素化された水添化ポリイソプレンポリオールであってもよい。
【0091】
上記(メタ)アクリル系ポリオールとしては、(メタ)アクリル酸エステルの重合体または共重合体の分子内にヒドロキシル基を少なくとも2つ有しているものが挙げられ、かかる(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル等が挙げられる。また、(メタ)アクリル酸エステルと、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルとの共重合体でもよい。
【0092】
上記ポリシロキサン系ポリオールとしては、例えば、ジメチルポリシロキサンポリオールやメチルフェニルポリシロキサンポリオール等が挙げられる。
【0093】
上記ポリオール系化合物は1種または2種以上組み合わせて使用することができる。
【0094】
上記イソシアネート系化合物と水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物との付加反応、または、イソシアネート系化合物、水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物、及びポリオールとの付加反応においては、反応系の残存イソシアネート基含有率が0.5質量%以下になる時点で反応を終了させることにより、ウレタン(メタ)アクリレートが得られる。
【0095】
ウレタン(メタ)アクリレートが、イソシアネート系化合物、ポリオール系化合物、及び水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物を反応させてなるものを含む場合、イソシアネート系化合物とポリオール系化合物を反応させて得られたイソシアネート基を有する反応生成物、又は該反応生成物とイソシアネート系化合物の混合物を、水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物と反応させて得るとよい。
このような反応により得られるウレタン(メタ)アクリレートは、イソシアネート系化合物、及び水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物を反応させてなるものと、イソシアネート系化合物、ポリオール系化合物、及び水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物を反応させてなるものの混合物となってもよい。
【0096】
イソシアネート系化合物と水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物との反応においては、反応を促進する目的で触媒を用いることも好ましく、かかる触媒としては、例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、トリメチル錫ヒドロキシド、テトラ-n-ブチル錫、ビスアセチルアセトナート亜鉛、ジルコニウムトリス(アセチルアセトネート)エチルアセトアセテート、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート等の有機金属化合物、オクテン酸錫、ヘキサン酸亜鉛、オクテン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、2-エチルヘキサン酸ジルコニウム、ナフテン酸コバルト、塩化第1錫、塩化第2錫、酢酸カリウム等の金属塩、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ベンジルジエチルアミン、1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン、N,N,N′,N′-テトラメチル-1,3-ブタンジアミン、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン等のアミン系触媒、硝酸ビスマス、臭化ビスマス、ヨウ化ビスマス、硫化ビスマス等の他、ジブチルビスマスジラウレート、ジオクチルビスマスジラウレート等の有機ビスマス化合物や、2-エチルヘキサン酸ビスマス塩、ナフテン酸ビスマス塩、イソデカン酸ビスマス塩、ネオデカン酸ビスマス塩、ラウリル酸ビスマス塩、マレイン酸ビスマス塩、ステアリン酸ビスマス塩、オレイン酸ビスマス塩、リノール酸ビスマス塩、酢酸ビスマス塩、ビスマスリビスネオデカノエート、ジサリチル酸ビスマス塩、ジ没食子酸ビスマス塩等の有機酸ビスマス塩等のビスマス系触媒等が挙げられ、中でも、ジブチル錫ジラウレート、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセンが好適である。これらを単独、あるいは2種以上併せて用いることができる。
【0097】
またイソシアネート系化合物と水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物との反応においては、イソシアネート基に対して反応する官能基を有しない有機溶剤、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、トルエン、キシレン等の芳香族類等の有機溶剤を用いることができる。また、適宜重合禁止剤などを使用してもよい。
【0098】
また、ウレタン(メタ)アクリレートは、水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物及びイソシアネート系化合物、または、水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物、イソシアネート系化合物及びポリオール系化合物の反応生成物であるが、水酸基を有する(メタ)アクリレート及び水酸基を有さない(メタ)アクリレートの混合物とイソシアネート系化合物とを反応することで生成してもよい。あるいは、水酸基を有する(メタ)アクリレート及び水酸基を有さない(メタ)アクリレートの混合物と、イソシアネート系化合物と、ポリオール系化合物とを反応することで生成してもよい。この際、水酸基を有さない(メタ)アクリレートは、未反応物として残存するが、そのまま硬化性樹脂組成物に含有させて使用するとよい。
また、以上説明したイソシアネート系化合物と水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物との反応においては、上記のとおりイソシアネート系化合物の一部又は全部が、イソシアネート系化合物とポリオ―ル系化合物の反応生成物であってもよい。
【0099】
ウレタン(メタ)アクリレートの質量平均分子量は、例えば3000以上100000以下であり、5000以上70000以下が好ましく、8000以上30000以下がより好ましい。前記範囲を満足することで、硬化樹脂層を積層フィルムなどの積層体構成において形成することで、良好なフィルム平面性を確保することができる。
【0100】
ウレタン(メタ)アクリレートの(メタ)アクリロイル基当量は、例えば120g/eq以上250g/eq以下、好ましくは135g/eq以上220g/eq以下、より好ましくは150g/eq以上200g/eq以下である。ウレタン(メタ)アクリレートの(メタ)アクリロイル基当量が上記範囲内であると、架橋点の調整により、適度な架橋密度を有する硬化樹脂層の形成が可能となり、硬化樹脂層を積層フィルムなどの積層体構成において形成することで高硬度性を付与できる。
【0101】
硬化樹脂層中のウレタン(メタ)アクリレートの比率は固形分全量に対して、50質量%以上であるとよく、好ましくは60質量%以上である。
また、硬化樹脂層が二層構成である場合には、硬化樹脂層(B)におけるウレタン(メタ)アクリレートの比率は、固形分全量に対して、50質量%以上であるとよく、好ましくは60質量%以上である。
【0102】
((Z)多官能(メタ)アクリレート)
硬化樹脂層に含まれる(Z)多官能(メタ)アクリレートは、官能基を2以上有する(メタ)アクリレートであれば特に限定されないが、ウレタン(メタ)アクリレートは、前述の(X)成分とみなし、(Z)成分からは除外される。
多官能(メタ)アクリレートである二官能(メタ)アクリレートとしては、特に限定されるものではないが、例えば1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート等のアルカンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFエチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート等のビスフェノール変性ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エポキシジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0103】
また、三官能以上の多官能(メタ)アクリレートとしては、特に限定されるものではないが、例えば、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等のエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性トリス(アクロキシエチル)イソシアヌレート等のイソシアヌル酸変性トリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは1種のみで用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0104】
これらのうち、具体的には、他の(メタ)アクリレートとの相溶性の点から、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが好ましく、塗膜の耐擦傷性の点から、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、が好ましい。また、耐屈曲性向上あるいは、無機粒子の分散性向上の点でエーテル構造を有する(メタ)アクリレートが好ましく、エチレングリコール構造がさらに好ましい。具体的には、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等が好ましい。
【0105】
(官能基数の比)
本発明の積層フィルムでは、前記(X)ウレタン(メタ)アクリレートの官能基数xと前記多官能(メタ)アクリレートの官能基数zが、下記式(1)を満たすことが好ましい。
x>z ・・・(1)
上記関係を満足することで、さらに良好な繰り返し折り曲げ性が得られる。上記関係式を満足するためには、(Z)(メタ)アクリレートは6官能以下、さらに好ましくは3官能以下であるのがよい。その中でも、前述のように、耐屈曲性向上あるいは、無機粒子の分散性向上の点でエーテル構造を有する(メタ)アクリレートが好ましく、エチレングリコール構造がさらに好ましい。
【0106】
硬化樹脂層が二層構成の場合には、上述の硬化樹脂層は、硬化樹脂層(B)に相当する。したがって、硬化樹脂層(B)は、(X)ウレタン(メタ)アクリレートより構成されることが好ましく、一方、硬化樹脂層(C)は、アクリル系樹脂により形成されることが好ましい。
【0107】
(アクリル系樹脂)
硬化樹脂層(C)を形成する樹脂としては、アクリル系樹脂が好ましい。アクリル系樹脂を用いることで、硬化樹脂層(B)との密着性が向上する。
アクリル系樹脂としては、特に制限はなく、本発明の効果を奏する範囲で、適宜選定されればよく、例えば、(メタ)アクリレートが好ましい。
単官能の(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルへキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、モノブチルヒドロキルフマレート、モノブチルヒドロキシイタコネート等の水酸基含有(メタ)アクリレート等が挙げられる。
また、二官能(メタ)アクリレートとしては、例えば1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート等のアルカンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFエチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート等のビスフェノール変性ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ウレタンジ(メタ)アクリレート、エポキシジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0108】
また、三官能以上の多官能(メタ)アクリレートとしては、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等のエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性トリス(アクロキシエチル)イソシアヌレート等のイソシアヌル酸変性トリ(メタ)アクリレートが挙げられる。
さらに、エポキシ基を有する(メタ)アクリレートが挙げられ、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中でも、特に反応性の良好性、材料の使用のしやすさを考慮するとグリシジル(メタ)アクリレートが好ましく、グリシジルメタクリレートが特に好ましい。
また、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、シトラコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸等のカルボキシル基含有(メタ)アクリレートを好適に挙げることができる。
【0109】
本発明では、上記(メタ)アクリレートを単独で、または2種以上を混合し、重合してベースポリマーを調製することが好ましい。ベースポリマーは後述する溶媒等に溶解又は分散させて、基材フィルムに塗布し、硬化して硬化樹脂層(C)を形成することが好ましい。上記(メタ)アクリレートの組合せについては、特に制限はないが、例えば、グリシジルメタクリレートと、メチルメタクリレート、及びエチルアクリレートを組み合わせて、重合させ、ベースポリマーを得ることができる。
【0110】
(溶媒)
硬化性組樹脂成物は、溶媒により希釈されることで塗布液とするとよい。硬化性樹脂組成物は、液状の塗布液として基材フィルムに塗布し、乾燥し、かつ硬化させることで硬化樹脂層とするとよい。硬化性樹脂組成物を構成する各成分は、溶媒に溶解させてもよく、溶媒中に分散させてもよい。
溶媒としては有機溶媒が好ましい。有機溶媒の具体例として、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒;メチルエチルケトン(MEK)、アセトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロヘキサノン、ジイソブチルケトン等のケトン系溶媒;ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)、アニソール、フェネトール等のエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、エチレングリコールジアセテート等のエステル系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド系溶媒;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒;メタノール、エタノール 、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール系溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン系溶媒等が挙げられる。これらの有機溶媒は1種を単独で使用してもよく、また2種以上を併用してもよい。これらの有機溶媒のうち、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、アルコール系溶媒及びケトン系溶媒が好ましく使用される。
【0111】
有機溶媒の使用量には特に制限はなく、調製される硬化性樹脂組成物の塗布性、液の粘度及び表面張力、固形分の相溶性等を考慮して適宜決定される。硬化性樹脂組成物は、前述の溶媒を用いて、好ましくは固形分濃度が15~80質量%、より好ましくは20~70質量%の塗布液として調製される。なお、硬化性樹脂組成物における「固形分」とは、揮発性成分である溶媒を除いた成分を意味するものであり、固体の成分のみならず、半固形や粘稠な液状物のものをも含むものとする。
【0112】
(その他成分)
硬化性樹脂組成物には、必要に応じて、本発明の主旨を損なわない範囲内で適宜、種々の添加剤を配合することができる。添加剤としては、例えば、光開始剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、有機顔料、有機粒子、無機粒子、難燃剤、レベリング剤、分散剤、チクソトロピー性付与剤(増粘剤)、消泡剤などを併用してもよい。
【0113】
(光開始剤)
硬化性樹脂組成物が光硬化性樹脂組成物の場合、硬化性を向上させるため、光開始剤を含有することが好ましい。光開始剤は、光重合開始剤であり、公知のものを使用することができる。光重合開始剤としては例えば、光ラジカル発生剤、光酸発生剤等が挙げられる。
【0114】
硬化性樹脂組成物に用いることのできる光重合開始剤のうち、光ラジカル発生剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインとそのアルキルエーテル類;アセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン[例えば、商品名「Omnirad(登録商標)651」、IGM RESINS製]、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1,1-ジクロロアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン[例えば、商品名「Omnirad(登録商標)184」、IGM RESINS製]、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン[例えば、商品名「Omnirad(登録商標)1173」、IGM RESINS製]、2-ヒドロキシ-1-(4-(4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル)フェニル)-2-メチルプロパン-1-オン[例えば、商品名「Omnirad(登録商標)127、IGM RESINS製」]、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン[例えば、商品名「Omnirad(登録商標)2959」、IGM RESINS製]、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン[例えば、商品名「Omnirad(登録商標)907」、IGM RESINS製]、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-1-ブタノン等のアルキルフェノン類;2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド[例えば、商品名「Omnirad(登録商標)TPO」、IGM RESINS製]、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド[例えば、商品名「Omnirad(登録商標)819」、IGM RESINS製]等のホスフィンオキシド類;2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-tert-ブチルアントラキノン、1-クロロアントラキノン、2-アミルアントラキノン等のアントラキノン類;ベンゾフェノン及びその各種誘導体;ベンゾイルギ酸メチル、ベンゾイルギ酸エチル等のギ酸誘導体等が挙げられる。これらは1種のみで用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0115】
これらの光ラジカル発生剤の中でも、硬化物の耐光性の観点から、好ましくはアルキルフェノン類、ホスフィンオキシド類、ギ酸誘導体であり、更に好ましくは、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-1-(4-(4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル)フェニル)-2-メチルプロパン-1-オン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド、ベンゾイルギ酸メチルであり、特に好ましくは、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-1-(4-(4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル)フェニル)-2-メチルプロパン-1-オンである。
【0116】
光酸発生剤としては公知のものが使用可能であるが、中でもジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩が硬化性、酸発生効率等の観点から好ましい。具体例を挙げると、ジ(アルキル置換)フェニルヨードニウムのアニオン塩(具体的にはPF6塩、SbF5塩、テトラキス(パーフルオロフェニル)ボレート塩等)が例示できる。
(アルキル置換)フェニルヨードニウムのアニオン塩の具体例としては、ジアルキルフェニルヨードニウムのPF6塩[商品名「Omniad(登録商標)250」、IGM RESINS製]が特に好ましい。これらの光酸発生剤は1種のみで用いても2種以上を組み合わせてもよい。
【0117】
光開始剤の含有量は、硬化性樹脂組成物中の(メタ)アクリロイル基を有する化合物の合計100質量部に対して、硬化性を向上させる観点から、好ましくは0.01質量部以上であり、より好ましくは0.1質量部以上、特に好ましくは1質量部以上である。一方、硬化性樹脂組成物を溶液としたときの塗布液の安定性を維持する観点及び硬化塗膜の平面性の観点から、好ましくは10質量部以下であり、より好ましくは7質量部以下であり、特に好ましくは5質量部以下である。
【0118】
(厚み)
硬化樹脂層の厚みは例えば1~10μm、好ましくは1~8μm、さらに好ましくは1~5μmの範囲がよい。硬化樹脂層の厚みをこれら下限値以上とすると、硬化樹脂層により基材フィルムを適切に保護できる。また、硬化樹脂層の厚みをこれら上限値以下とすると、積層フィルムなどの硬化樹脂層を有する積層体構成において、カールや熱シワを防止でき、良好な平面性を確保できる。
なお、ここで硬化樹脂層が複数の層からなる場合には、層全体の厚みを意味する。
【0119】
(粒子)
硬化樹脂層中には、(Y)無機酸化物微粒子を含有させることが好ましい。特に、平均粒径が5~50nmの無機酸化物微粒子を含有させることが好ましい。無機酸化物微粒子の平均粒径は10~30nmであることが好ましく、さらに好ましくは10~20nmである。平均粒径が5nm未満であると十分な耐SW性を得ることが困難である。一方、平均粒径が50nmを超えると硬化樹脂層の透明性が低下する、あるいは、折り曲げ特性が低下する場合がある。
なお、硬化樹脂層が二層構成の場合には、表層側の硬化樹脂層(B)に上記無機酸化物粒子が配合されることが好ましい。
【0120】
上記無機酸化物微粒子としては、例えばアルミナやシリカなどを挙げることができる。これらの中でも、アルミナは高硬度を有するため、シリカよりも少ない添加量で効果を得られる利点を有する。
無機酸化物微粒子の含有量は、硬化性樹脂組成物の固形分100質量部に対して20~60質量部であることが好ましい。含有量が20質量部以上であると、耐擦過性の向上効果が得られる。一方、含有量が60質量部以下であると、硬化樹脂層の十分な透明性および折り曲げ特性が得られる。
【0121】
硬化樹脂層を形成するための硬化性樹脂組成物は、塗布性を良好とするためにE型粘度計で測定した25℃における粘度が10~60mPa・sであるのが好ましく、中でも30mPa・s以下、その中でも20mPa・s以下、その中でも15mPa・s以下、その中でも12mPa・s以下であるのがさらに好ましい。
【0122】
(各層の厚み)
硬化樹脂層が二層構成の場合には、硬化樹脂層(B)及び(C)のそれぞれの厚みを変更することで、硬化樹脂層(B)及び(C)の弾性率を調整することができ、表面硬度を制御することができる。本積層フィルムでは、基材フィルム側に硬化樹脂層(C)を有し、その外側に硬化樹脂層(B)を有する態様が好ましい。
ここで、硬化樹脂層(C)の厚みよりも、硬化樹脂層(B)の厚みを大きくすることで、表面硬度を向上させることができる。
【0123】
硬化樹脂層(C)の厚みは、1.0μm以上30.0μm以下であるのが好ましい。1.0μm以上であれば、例えば紫外線を照射して硬化樹脂層(C)を硬化させる際、酸素阻害等による硬化不足を防ぐことができる。一方、30.0μm以下であれば、本積層フィルムの表面平滑性を確保しやすくなり、透明性の確保が容易となる。かかる観点から、当該層厚みは、1.0μm以上20.0μm以下であるのが好ましく、1.0μm以上10.0μm以下であるのがより好ましく、1.0μm以上5.0μm以下であるのがさらに好ましい。
他方、硬化樹脂層(B)の層厚みは、1.0μm以上30.0μm以下であるのが好ましく、1.0μm以上20.0μm以下であるのが好ましく、1.0μm以上10.0μm以下であるのがより好ましく、1.0μm以上5.0μm以下であるのがさらに好ましい。
【0124】
本積層フィルムにおける硬化樹脂層の厚み(硬化樹脂層(B)及び硬化樹脂層(C)の合計厚み)は、折り曲げ性の観点から、20.0μm以下、好ましくは10.0μm以下、さらに好ましくは8.0μm以下、その中でも特に6.0μm以下であるのがよい。
【0125】
(粒子の含有量)
硬化樹脂層に含有される粒子の含有量は、1~60質量%とすることができる。この範囲内であると、硬化樹脂層の弾性率を調整することができる。
また、硬化樹脂層を硬化樹脂層(B)と(C)の二層構成とする場合には、硬化樹脂層への粒子の添加方法として、硬化樹脂層(C)には粒子を含有させず、硬化樹脂層(B)には粒子を含有させる態様、あるいは、硬化樹脂層(C)の粒子含有量を、硬化樹脂層(B)のそれよりも少なくする態様がある。このような態様により、硬化樹脂層(C)よりも硬化樹脂層(B)の弾性率が高くなるように調整することができる。
硬化樹脂層(C)にも少量の粒子を含有させる場合の具体例としては、例えば、硬化樹脂層(C)の粒子含有量を1~20質量%とする一方、硬化樹脂層(B)の粒子含有量を20~60質量%として、各層の弾性率を調整することができる。
この際、硬化樹脂層(C)の粒子含有量は1質量%以上が好ましく、2質量%以上がより好ましく、5質量%以上であるのがさらに好ましい。一方、上限値については、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましく、10質量%以下であるのがさらに好ましい。
なお、硬化樹脂層の層構成は、前述のとおり、基材フィルム側から硬化樹脂層(C)及び硬化樹脂層(B)を順次積層した構成である。また、硬化樹脂層が含有する粒子の種類については後述する。
【0126】
(層の表面状態)
硬化樹脂層の表面は、凹凸であっても平坦であってもよいが、外観(表面光沢)の観点から、平坦であるのが好ましい。一方、防眩性付与の観点からは凹凸であるのがよい。要求特性に応じて、任意に選択することができる。
なお、硬化樹脂層が、上述の二層構成の場合には、硬化樹脂層(C)の表面は、凹凸であっても平坦であってもよいが、外観(表面光沢)の観点からは、平坦であるのが好ましい。
また、硬化樹脂層(B)の表面も、凹凸であっても平坦であってもよいが、外観(表面光沢)の観点から、平坦であるのが好ましい。一方、防眩性付与の観点からは凹凸であるのがよい。要求特性に応じて、任意に選択することができる。
【0127】
<中屈折率層及び高屈折率層>
本積層フィルムは、硬化樹脂層が高屈折率層の役目を担うことが可能であり、通常であれば、反射防止性能を付与するためには、高屈折率層、低屈折率層と2層を設けなければならないところ、本発明では、最初の高屈折率層を省略して、低屈折率層として多孔質ケイ素膜(A)を1層設けるだけで、反射防止性能を付与できる。なお、硬化樹脂層が二層構成の場合には、硬化樹脂層(B)が高屈折率層となる。
【0128】
硬化樹脂層上に反射防止層を設ける方法として、例えば、生産性向上の観点から、多色刷り印刷装置を用いることができる。すなわち、高屈折率層と低屈折率層とを少なくとも1組以上組み合わせて構成される反射防止層をロールtoロール方式により連続塗布して、所望する積層数だけ、硬化樹脂層上に形成するのが好ましい。
多色刷り印刷装置は、ロールから本積層フィルムを巻き出し、連続的にグラビア印刷等で高屈折率層と低屈折率層を交互に積層し、乾燥し、検査を受けて巻き取る装置である。連続的にロール トゥ ロールで、高屈折率層と低屈折率層を印刷することが可能であるため、生産効率が高い。
【0129】
本積層フィルムは、多孔質ケイ素膜(A)と硬化樹脂層との間に、屈折率が1.6以上1.8未満の中屈折率層及び屈折率が1.8以上の高屈折率層から選択される少なくとも1種の層を含む態様も好ましい。このような態様をとることで、多孔質ケイ素膜(A)の反射防止性能をより向上させることができる。
より具体的には、基材フィルム側から、硬化樹脂層/中屈折率層/多孔質ケイ素膜(A)の積層構成、硬化樹脂層/高屈折率層/多孔質ケイ素膜(A)の積層構成、硬化樹脂層/高屈折率層/中屈折率層/多孔質ケイ素膜(A)の積層構成がある。
【0130】
<<積層フィルムの製造方法>>
硬化樹脂層は、硬化性樹脂組成物、すなわち硬化させることができる性能を有する樹脂組成物を硬化させて形成することができる。また、硬化樹脂層が、二層構成の場合は、硬化樹脂層(B)及び硬化樹脂層(C)はいずれも、硬化性樹脂組成物を硬化させて形成することができる。すなわち、硬化樹脂層は、例えば質量平均分子量が1,000~500,000の範囲である硬化性樹脂組成物を基材フィルム上に塗布し硬化させて形成することができる。
より具体的には、基材フィルムの少なくとも片面側表面に、硬化性樹脂組成物を塗布し硬化させて硬化樹脂層を形成する。また、二層構成の場合には、基材フィルムの少なくとも片面側表面に、硬化性樹脂組成物(c)を塗布し硬化させて硬化樹脂層(C)を形成した後、その上に、硬化性樹脂組成物(b)を塗布し硬化させて硬化樹脂層(B)を形成することで、本積層フィルムを製造することができる。この際、硬化樹脂層(B)と硬化樹脂層(C)の硬化を同時に行うようにしてもよい。
また、硬化樹脂層(C)を形成した後、一旦、フィルムをロール状に巻き取り、再度、フィルムを巻出して、硬化樹脂層(C)上に硬化性樹脂組成物を塗布し硬化させて硬化樹脂層(B)を形成してもよい。また、基材フィルム表面に硬化樹脂層(C)を形成した後、連続して、硬化性樹脂組成物を塗布し、硬化させて硬化樹脂層(B)を形成してもよい。なお、積層フィルムの製造方法はかかる方法に何ら限定されるものではない。
【0131】
<硬化性樹脂組成物>
硬化樹脂層を形成するための硬化性樹成組成物は、硬化性単量体のほか、必要に応じて、光重合開始剤、溶剤、粒子、架橋剤、その他の成分を含有してもよい。以下、硬化樹脂層が前述の二層構成である場合について、詳細に説明する。
【0132】
本積層フィルムにおいて、硬化樹脂層(C)の弾性率よりも、硬化樹脂層(B)の弾性率が大きいことが好ましい。そのためには、硬化樹脂層(C)を形成する硬化性樹脂組成物(c)の質量平均分子量を、硬化樹脂層(B)を形成する硬化性樹脂組成物(b)の質量平均分子量よりも大きくすることが好ましい。このことにより、硬化樹脂層(C)よりも硬化樹脂層(B)の弾性率が高くなるように調整することができる。
特に、硬化樹脂層(C)及び(B)の合計厚みを小さくしつつ、表面硬度を維持して繰返し折曲げ特性を高めることができる観点から、硬化樹脂層(C)を形成する硬化性樹脂組成物(c)の質量平均分子量を、硬化樹脂層(B)を形成する硬化性樹脂組成物(b)の質量平均分子量よりも大きくすることにより、硬化樹脂層(C)よりも硬化樹脂層(B)の弾性率が高くなるように調整することもできる。
【0133】
かかる観点から、硬化樹脂層(C)を形成するベースポリマーすなわち硬化性樹脂組成物(c)の質量平均分子量は1,000以上であるのが好ましく、中でも3,000以上、その中でも5,000以上であるのがさらに好ましい。一方、上限値に関しては、200,000以下であるのが好ましく、中でも100,000以下、その中でも50,000以下であるのがさらに好ましい。
他方、硬化樹脂層(B)を形成する硬化性樹脂組成物(b)に含まれるベース樹脂、すなわちウレタン(メタ)アクリレートの質量平均分子量は、3000以上100000以下であることが好ましく、5000以上70000以下がより好ましく、8000以上30000以下がさらに好ましい。
【0134】
なお、本発明において、「(メタ)アクリレート」という表現を用いる場合、「アクリレート」及び「メタクリレート」の一方又は両方を意味するものとする。「(メタ)アクリロイル」という表現を用いる場合、「アクリロイル」及び「メタクリロイル」の一方又は両方を意味するものとする。「(メタ)アクリル」という表現を用いる場合、「アクリル」及び「メタクリル」の一方又は両方を意味するものとし、他の類似表現も同様である。
また、本発明で用いられる(メタ)アクリロイル基を有する化合物の(メタ)アクリロイル基濃度の表現として(メタ)アクリロイル基当量(g/eq)を示すことがある。(メタ)アクリロイル基当量とは、(メタ)アクリロイル基1個あたりの平均分子量である。例えば、数平均分子量10,000の(メタ)アクリレート系化合物の1分子あたりの(メタ)アクリロイル基が10個の場合、(メタ)アクリロイル基当量は、10,000/10=1,000g/eqとなる。
【0135】
硬化樹脂層が二層構成の場合には、上述の硬化樹脂層は、硬化樹脂層(B)に相当する。したがって、硬化樹脂層(B)は、(X)ウレタン(メタ)アクリレートより構成される。一方、硬化樹脂層(C)は、アクリル系樹脂により形成されることが好ましい。
【0136】
<硬化樹脂層の形成方法>
上記のとおり、硬化樹脂層は、硬化性樹脂組成物を基材フィルム表面に塗布し、乾燥して塗布層を形成し、その塗布層を硬化することで得ることができる。
硬化性樹脂組成物を塗布する方法としては、例えば、エアドクターコート、ブレードコート、ロッドコート、バーコート、ナイフコート、スクイズコート、含浸コート、リバースロールコート、トランスファロールコート、グラビアコート、キスロールコート、キャストコート、スプレーコート、カーテンコート、カレンダコート、押出コート等従来公知の塗布方法を用いることができる。
乾燥条件は、特に限定されず、室温付近で行ってもよいし、加熱により行ってもよく、例えば25~120℃程度、好ましくは50~100℃、より好ましくは60~90℃である。また、乾燥時間は、溶媒が十分に揮発できる限り特に限定されず、例えば10秒~30分程度、好ましくは15秒~10分程度である。
【0137】
硬化性樹脂組成物の硬化方法は、硬化性樹脂組成物の硬化メカニズムに応じて適宜選択すればよく、硬化性樹脂組成物が熱硬化性樹脂組成物であれば加熱することで硬化させればよい。また、光硬化性樹脂組成物であればエネルギー線を照射して硬化させればよい。
【0138】
本発明の積層フィルムにおいて、光硬化性樹脂組成物を硬化させる際に用いることのできる活性エネルギー線には、紫外線、電子線、X線、赤外線及び可視光線が含まれる。これらの活性エネルギー線のうち硬化性と樹脂劣化防止の観点から好ましいのは紫外線及び電子線である。
硬化性樹脂組成物の硬化方法は、成形時間および生産性の観点、及び加熱による各部材の熱収縮及び熱劣化を防止できる観点などから、エネルギー線照射により硬化することが好ましい。エネルギー線の照射は、いずれの面側から行ってもよく、基材フィルム側から行ってもよいし、基材フィルムの反対側から行ってもよい。
【0139】
本発明の積層フィルムを製造する際、硬化性樹脂組成物を紫外線照射により硬化させる場合には、種々の紫外線照射装置を用いることができ、その光源としてはキセノンランプ、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、LED-UVランプ等を使用することができる。紫外線の照射量(単位はmJ/cm2)は、通常50~3,000mJ/cm2であり、硬化性樹脂組成物の硬化性、硬化物(硬化膜)の可撓性等の観点から好ましくは100~1,000mJ/cm2であり、積層フィルムの平面性の観点から、より好ましくは100~500mJ/cm2の範囲であり、各硬化工程で必要とされる(メタ)アクリロイル基の反応率に応じて適宜決定される。
特に厳しい環境下で使用する場合には、紫外線の照射量を多くして、当該硬化性樹脂組成物の硬化物の表面硬度を調整することが好ましい。
【0140】
また、本発明の積層フィルムを製造する際、硬化性樹脂組成物を電子線照射で硬化させる場合は、種々の電子線照射装置を使用することができる。電子線の照射量(Mrad)は、通常、0.5~20Mradであり、硬化性樹脂組成物の硬化性、硬化物の可撓性、基材の損傷防止等の観点から好ましくは1~15Mradの範囲であるが、各硬化工程で必要とされる(メタ)アクリロイル基の反応率に応じて適宜決定される。
【0141】
(屈曲耐久性)
上記構成を備えた積層フィルムは、本基材フィルムの表面に、特定の硬化樹脂層を設けることで、実用的な繰り返し特性をさらに高めることができる。特に硬化樹脂層が二層構成の場合は、基材フィルムの表面に、硬化樹脂層(C)を設け、しかも、硬化樹脂層(C)の弾性率を硬化樹脂層(B)の弾性率よりも低くすることができ、実用的な繰り返し特性をさらに高めることができる。
よって、本積層フィルムは、屈曲耐久性評価(外曲げ、R=2.0の条件下)において20万回以上折り曲げても、クラックが生じない耐久性を得ることができる。
【0142】
(フィルムヘイズ)
本積層フィルムは、光学用途への適用を想定する場合、フィルムヘイズ(初期ヘイズ)が2.5%以下であることが好ましい。中でも2.0%以下であるのが好ましく、さらに好ましくは1.5%以下である。
【0143】
<積層フィルムの製造方法>
本発明の製造方法は、基材フィルム上に、多孔質ケイ素膜を備える積層フィルムの製造方法であって、次の工程1及び2をこの順に含む。
[工程1]アルコキシシラン化合物、水、有機溶媒、酸触媒及び界面活性剤を含む多孔質ケイ素膜前駆体組成物(a)を、硬化樹脂層を介して基材フィルム上に塗布する工程
[工程2]前記基材フィルムの最高温度が120℃以下であり、かつ、前記基材フィルムの温度が40℃以上である時間が5分以上300分以下であるように加熱して、多孔質ケイ素膜を形成する工程
【0144】
[工程1]
工程1は、多孔質ケイ素膜を形成するための前駆体組成物(a)を形成しておき、硬化樹脂層を介して基材フィルム上に塗布する工程である。なお、基材フィルムに硬化樹脂層を形成する工程については、前述のとおりである。
【0145】
(前駆体組成物(a))
本発明の多孔質ケイ素膜の製造方法において用いる前駆体組成物(a)には、アルコキシシラン化合物(以下、単に「アルコキシシラン」と記載する。)、水、有機溶媒、触媒及び界面活性剤が含まれる。
特に前駆体組成物(a)は、2種以上のアルコキシシラン、その加水分解物及び部分縮合物と、水と、有機溶媒と、鋳型剤としての界面活性剤と触媒とを含み、該組成物中の全アルコキシシラン由来の珪素原子に対する水の割合(mol/mol)が10以上50以下であることが好ましい。
【0146】
(アルコキシシラン)
本発明で使用するアルコキシシランとしては、テトラアルコキシシラン、モノアルキルトリアルコキシシラン、ジアルキルジアルコキシシラン、トリアルキルアルコキシシラン、これらの加水分解物及び部分縮合物(オリゴマー等)などが挙げられる。アルコキシシランは、2種以上併用することが好ましく、また、これらのアルコキシシランの加水分解物及び部分縮合物を含むことが好ましい。
【0147】
((テトラアルコキシシラン))
テトラアルコキシシランの種類に制限は無い。好適なものの例を挙げると、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ(n-プロポキシ)シラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ(n-ブトキシ)シラン、テトラ(t-ブトキシ)シラン、テトラ(n-ペントキシ)シラン、テトラ(イソペントキシ)シランなどが挙げられる。
粗乾燥工程におけるシリカ系前駆体の安定性の観点では、テトラメトキシシラン及びテトラエトキシシラン並びにそれらのオリゴマーが好ましく、テトラエトキシシランがさらに好ましい。
ただし、テトラアルコキシシランは経時的に加水分解及び部分縮合を生じやすいため、テトラアルコキシシランのみを用意した場合でも、通常はそのテトラアルコキシシランの加水分解物及び部分縮合物がテトラアルコキシシランと共存することが多い。
【0148】
((モノアルキルトリアルコキシシラン))
モノアルキルトリアルコキシシランの種類に制限は無い。好適なものの例を挙げると、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリ-n-プロポキシシラン、トリイソプロポキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ-n-プロポキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリ-n-プロポキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、n-プロピルトリ-n-プロポキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、イソプロピルトリ-n-プロポキシシラン、フルオロトリメトキシシラン、フルオロトリエトキシシラン、イソプロピルトリ-n-プロポキシシラン、トリフルオロメチルトリメトキシシラン、ペンタフルオロエチルトリメトキシシラン、(3,3,3-トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、(3,3,3-トリフルオロプロピル)トリエトキシシラン、ヘプタデカトリフルオロデシルトリメトキシシラン、トリフルオロメチルトリメトキシシラン、ペンタフルオロフェニルトリメトキシシラン、ペンタフルオロフェニルトリエトキシシラン、トリエトキシ-1H、1H、2H、2H-トリデカフルオロ-n-オクチルシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリ-n-プロポキシシラン、フェニルトリイソプロポキシシラン。
また、ケイ素原子に置換するアルキル基が反応性官能基を有する3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロイロキシプロピルトリメトキシシラン、3-カルボキシプロピルトリメトキシシラン、3-トリハイドロキシシリル-1-プロパン-スルフォン酸等がある。
【0149】
((ジアルキルジアルコキシシラン))
ジアルキルジアルコキシシランの種類に制限は無い。好適なものの例を挙げると、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、メチルジ-n-プロポキシシラン、メチルジイソプロポキシシラン、エチルジメトキシシラン、エチルジエトキシシラン、エチルジ-n-プロポキシシラン、エチルジイソプロポキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジ-n-プロポキシシラン、ジメチルジイソプロポキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジ-n-プロポキシシラン、ジエチルジイソプロポキシシラン、ジ-n-プロピルジメトキシシラン、ジ-n-プロピルエトキシシラン、ジ-n-プロピルジ-n-プロポキシシラン、ジ-n-プロピルジイソプロポキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジイソプロピルエトキシシラン、ジイソプロピルジ-n-プロポキシシラン、ジイソプロピルジイソプロポキシシラン、ジ-n-ブチルジメトキシシラン、ジ-n-ブチルエトキシシラン、ジ-n-ブチルジ-n-プロポキシシラン、ジ-n-ブチルジイソプロポキシシラン、ジ-sec-ブチルジメトキシシラン、ジ-sec-ブチルエトキシシラン、ジ-sec-ブチルジ-sec-プロポキシシラン、ジ-sec-ブチルジイソプロポキシシラン、ジ-tert-ブチルジメトキシシラン、ジ-tert-ブチルエトキシシラン、ジ-tert-ブチルジ-n-プロポキシシラン、ジ-tert-ブチルジイソプロポキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジ-n-プロポキシシラン、ジフェニルジイソプロポキシシラン等がある。また、ケイ素原子に置換するアルキル基が反応性官能基を有するN-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン等がある。
【0150】
((トリアルキルアルコキシシラン))
トリアルキルアルコキシシランの種類に制限は無い。好適なものの例を挙げると、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリエチルエトキシシラン、トリ-n-プロピルメトキシシラン、トリ-n-プロピルエトキシシラン等がある。
【0151】
((他のアルコキシシラン))
他のアルコキシシランを挙げると、ビス(トリメトキシシリル)メタン、ビス(トリエトキシシリル)メタン、1,2-ビス(トリメトキシシリル)エタン、1,2-ビス(トリエトキシシリル)エタン、1,4-ビス(トリメトキシシリル)ベンゼン、1,4-ビス(トリエトキシシリル)ベンゼン、1,3,5-トリス(トリメトキシシリル)ベンゼン等の有機残基が2つ以上のトリアルコキシシリル基を結合したものがある。
【0152】
アルコキシシランの中でも、多孔質構造の骨格を強固にするためには、テトラアルコキシシラン、モノアルキルトリアルコキシシラン、ジアルキルジアルコキシシランが好ましく、テトラアルコキシシランがより好ましい。
さらに、多孔質ケイ素膜の耐環境性の観点では、芳香族炭化水素基又は脂肪族炭化水素基を有するモノアルキルトリアルコキシシラン及びジアルキルジアルコキシシランが好ましい。具体的には、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエチルシランなどが好ましいものとして挙げられる。
【0153】
((好ましい組み合わせ))
アルコキシシランを2種以上併用する場合、ゾル-ゲル反応の制御という観点では、その組み合わせとしては、テトラアルコキシシランとモノアルキルトリアルコキシシラン、モノアルキルトリアルコキシシラン同士が好ましい。
基材への濡れ性の観点では、テトラアルコキシシランとジアルキルジアルコキシシラン、モノアルキルトリアルコキシシランとジアルキルジアルコキシシランが好ましい。
膜の平滑性向上の観点からは、3種以上のアルコキシシランを用いることが好ましい。
【0154】
((アルコキシシランの比率))
2種以上のアルコキシシランを併用する場合、その配合比率は、本発明の効果を著しく損なわない限り特に制限はない。2種のアルコキシシランを併用する場合、例えば、形成される多孔質ケイ素膜の耐水性の観点から、アルコキシシランのケイ素原子換算で、2:8~5:5が好ましく、3:7~5:5がより好ましく、4:6~5:5がもっとも好ましい。
【0155】
さらに、多孔質構造の骨格を強固にするとの観点では、テトラアルコキシシランを含むことが有効であり、テトラアルコキシシラン由来のケイ素原子の、全アルコキシシランのケイ素原子に対する割合が、通常0.15(mol/mol)以上、好ましくは0.3(mol/mol)以上、より好ましくは0.35(mol/mol)以上であり、また、通常0.9(mol/mol)以下、好ましくは0.8(mol/mol)以下、より好ましくは0.7(mol/mol)以下である。
【0156】
ここで、全アルコキシシランのケイ素原子とは、前駆体組成物(a)に含有される全てのアルコキシシランが有するケイ素原子の数の合計をいう。したがって、組成物がアルコキシシラン以外にケイ素原子を有する化合物を含有していたとしても、当該化合物が有するケイ素原子は前記の割合の算出には関与しない。なお、前記のアルコキシシランのケイ素原子の割合は、Si-NMRにより測定することができる。
【0157】
前駆体組成物(a)中に、ケイ素を含有する化合物(ケイ素原子含有化合物)は、通常0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上含有されていることが好ましく、また通常50質量%以下、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下含有されていることが好ましい。0.01質量%を下回ると、加熱工程において多孔質体の表面性が悪化し、外観不良になる恐れがある。一方、50質量%を越えると基材の平面性の影響を受けやすくなり、製膜工程におけるゾル-ゲル反応が面方向で不均一になる恐れがある。
【0158】
また、得られる多孔質ケイ素膜の膜厚制御の観点から、前記ケイ素原子含有化合物や下記に説明する鋳型材などを含む固形分濃度は通常0.02質量%以上であり、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上である。また通常50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、35質量%以下がさらに好ましい。
【0159】
本発明で用いる組成物は水を含有する。水はゾル-ゲル反応においては必須であり、本発明では組成物の表面張力を制御し、製膜工程において良質なシリカ系前駆体を形成する上で重要な役割を担う。用いる水の純度には特に制限はないが、通常は、イオン交換及び蒸留のうち、いずれか一方または両方の処理を施した水を用いればよい。ただし、例えば光学用途積層体のような微小不純物を特に嫌う用途分野に、得られた多孔質ケイ素膜を用いる場合には、より純度の高い多孔質ケイ素膜が望ましいため、蒸留水をさらにイオン交換した超純水を用いることが好ましい。また、不純物の中でも100nm以上のコンタミはシリカ系組成物におけるゾル-ゲル反応の進行に影響を与える恐れがある。例えば0.01μm~0.5μmの孔径を有するフィルターを通した水を用いればよい。
【0160】
水の使用量として、全アルコキシシランのケイ素原子に対する水の割合が、通常10(mol/mol)以上、好ましくは11(mol/mol)以上、より好ましくは12(mol/mol)以上とする。また、30(mol/mol)以下、20(mol/mol)以下とする。全アルコキシシランのケイ素原子に対する水の割合が前記の範囲よりも小さいと、ゾル-ゲル反応のコントロールが難しく、ポットライフも短く、また、不均質な状態で膜が形成され、表面が荒れて耐摩耗性が劣る可能性がある。また、前記の範囲よりも大きいと、ゾル-ゲル反応が進みにくくなるため反応に時間がかかってしまうため耐水性が低下する可能性がある。なお、水の量は、カールフィッシャー法(電量滴定法)により算出できる。
【0161】
本発明で用いる前駆体組成物(a)は有機溶媒を含有する。溶媒としてはアルコール類が最も適している。アルコール類は、前記アルコキシシラン、その加水分解物、さらには部分縮合物に対して親和性を有するため、多孔質体形成中のゾル-ゲル反応を均質に進行させるために好ましい。さらに製膜工程に生じる気-液(組成物)界面、固(基材)-液(組成物)界面において安定した状態を保つことで、良質なシリカ系前駆体をえることができる。
【0162】
アルコール類の種類に制限は無い。好適なものの例を挙げると、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、t-ブタノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、2-メチル-1-ブタノール、3-メチル-1-ブタノール、2-メチル-2-ブタノール、3-メチル-2-ブタノール、2,2-ジメチル-1-プロパノール、1-ヘキサノール、2-ヘキサノール、3-ヘキサノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、2-エトキシエタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどの1価アルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコールなどの2価アルコール、グリセリンなどの3価アルコール、シクロヘキサノールなどの脂環式アルコール、ベンジルアルコールなどの芳香族アルコール、などが挙げられる。なお、これらの1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0163】
これらの中でも、含有するアルコキシシランの加水分解反応の進行の観点から1価アルコール、2価アルコールが好ましく、1価アルコールがより好ましい。
また、得られるシリカ体の表面性の観点から、メタノール、エタノール、1-プロパノール、t-ブタノール、2-プロパノール、2-メチル-1-プロパノール、1-ブタノール、1-ペンタノール、エチルアセテート、酢酸メチル、イソブチルアセテートなどが好ましい。したがって、これらの中から選ばれる少なくとも2種を用いることが好ましい。
【0164】
また、製膜工程におけるシリカ系前駆体の構造形成を容易にし、基材との濡れ性向上の観点から、沸点は110℃以下が好ましく、100℃以下がより好ましく、90℃以下がさらに好ましい。例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、t-ブタノール、2-プロパノールなどが好ましい。
一方、加熱工程において多孔質構造の変形を抑制する観点から、沸点は100℃以上が好ましく、110℃以上がより好ましく、120℃以上がより好ましい。例えば、2-メチル-1-プロパノール、1-ブタノール、1-ペンタノールが好ましい。
【0165】
さらに上記の沸点が異なるアルコール類を混合してもよく、その際、各工程における共沸を抑制するために、組み合わせるアルコール類の沸点の差は5℃以上であることが好ましく、10℃以上がより好ましく、20℃以上がさらに好ましい。また、全アルコール類に対する高沸点側のアルコール類の割合は、通常5質量%以上であり、好ましくは10質量%以上、より好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上、特に好ましくは80質量%以上とする。なお、当該割合の上限は通常98質量%である。上限を超えると、得られる多孔質ケイ素膜の表面性が低下する恐れがあり、下限を下回ると十分な効果が得られない危険性がある。
【0166】
本発明で用いる前駆体組成物(a)には上記アルコール類以外の有機溶媒を含有してもよい。基材との濡れ性や製膜工程における造膜性をより向上させるために、アルコール類以外の有機溶媒を用いることができる。
好適な有機溶媒の例を挙げると、酢酸メチル、エチルアセテート、イソブチルアセテート、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等のエーテル類またはエステル類; アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類; ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N-エチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、N-メチルアセトアミド、N-エチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、N-ホルミルモルホリン、N-アセチルモルホリン、N-ホルミルピペリジン、N-アセチルピペリジン、N-ホルミルピロリジン、N-アセチルピロリジン、N,N’-ジホルミルピペラジン、N,N’-ジホルミルピペラジン、N,N’-ジアセチルピペラジン等のアミド類;γ-ブチロラクトン等のラクトン類;テトラメチルウレア、N,N’-ジメチルイミダゾリジン等のウレア類;ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。
【0167】
また、有機溶媒全体の使用量は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。ただし、通常0.05質量%以上、中でも0.1質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましく、10質量%以上がさらに好ましい。また、通常50質量%以下、中でも40質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましい。有機溶媒の使用量が少なすぎても、多すぎても十分な効果を得られない可能性がある。
【0168】
本発明の製造方法で用いる前駆体組成物(a)は鋳型材として界面活性剤を含有することが好ましい。界面活性剤を含有する組成物を基材に塗布してシリカ系前駆体を形成した後、抽出工程で界面活性剤の全部または一部を除去することで、多孔質構造を有するシリカ膜が得られる。
多孔質構造形成の観点から界面活性剤の質量平均分子量は、通常500以上であり、1,000以上が好ましく、2,000以上がより好ましく、5,000以上が特に好ましい。質量平均分子量が小さすぎると、多孔質ケイ素膜の多孔度を高く維持することが困難な場合があり、低屈折率な多孔質シリカ膜を安定して製造することができない可能性がある。一方、質量平均分子量の上限に制限はないが、通常100,000以下、好ましくは70,000以下、より好ましくは40,000以下である。質量平均分子量が大きすぎると組成物が増粘し、造膜性が低下する可能性がある。
【0169】
界面活性剤としては公知の何れかを用いることができる。その種類、組み合わせ、比率には特に制限はなく、以下の2種以上の界面活性剤を用いてもよい。
具体的な例として、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリイソブチレングリコールなどのノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤、親油基がフッ化炭素基のフッ素系界面活性剤、親油基がシロキサン鎖のシリコーン系界面活性剤、親油基がアルキル基の界面活性剤等から2種以上が選択されることが好ましく、中でもノニオン系界面活性剤とフッ素系界面活性剤( 特にパーフルオロアルキル基を含有するもの)との組合せ、及びノニオン系界面活性剤とシリコーン系界面活性剤(特にシロキサン結合を含有するもの)との組合せから選択されることが好ましい。これらの界面活性剤の親水基は、例えば、水酸基、カルボニル基、カルボキシル基等が好ましい。またポリエーテル、ポリグリセリン等も好ましい。
【0170】
上述したものの中でも、アルコキシシラン化合物の加水分解および脱水縮合反応をより容易に制御するためには、酸類若しくは金属キレート化合物が好ましく、酸類がさらに好ましい。
なお、触媒は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0171】
触媒の使用量は本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。ただし、アルコキシシランに対して、通常0.001mol倍以上、中でも0.003mol倍以上、特には0.005mol倍以上が好ましく、また、通常0.8mol倍以下、中でも0.5mol倍以下、特には0.1mol倍以下が好ましい。触媒の使用量が少なすぎると加水分解反応が適度に進まず、製造後にシリカ体中にシラノール基などの活性基が残存しやすくなり、シリカ体の耐水性が低下する可能性があり、多すぎると反応制御が困難になり、製造中に触媒濃度が更に高くなることで、シリカ体の表面性が低下する可能性がある。
【0172】
また、造膜性の観点で組成物のpHが6以下であることが好ましい。より好ましくは5以下、さらに好ましくは3以下、特に好ましくは2以下である。この範囲にすることで製造時に基材の表面改質を同時に行うことができ、より造膜性が向上する傾向になる。
【0173】
本発明で用いる組成物には、上述したアルコキシシラン化合物、水、有機溶媒、触媒、鋳型材以外の成分を含有していてもよい。また、当該成分は1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0174】
上述した組成物を構成する各成分を混合して、前駆体組成物(a)を調製する。この際、各成分の混合の順番に制限は無い。また、各成分は、全量を一回で混合してもよく、2回以上に分けて連続又は断続的に混合してもよい。
ただし、従来、制御困難とされているゾル-ゲル反応を制御して、前駆体組成物(a)をより工業的に調合するためには、以下の要領で混合することが好ましい。すなわち、アルコキシシラン、水及び溶媒を混合し、その混合物を一定のゾル-ゲル反応(熟成)させることでアルコキシシランをある程度加水分解及び脱水重縮合させる。そして、その混合物に鋳型材を混合して組成物を調合する。これにより、ゾル-ゲル反応条件下で、アルコキシシランと鋳型材との親和性を維持することができる。なお、熟成は前記の混合物と鋳型材とを混合した後で行なってもよい。
【0175】
前記熟成の際、アルコキシシランの加水分解・脱水重縮合反応を進めるためには、加熱することが好ましい。加熱条件として、用いる溶媒の沸点を超えなければ、特に制限は無いが、通常30℃以上、中でも40℃以上、50℃以上とすることがさらに好ましく、55℃以上とすることがもっとも好ましい。加熱温度が低すぎると反応時間が長くなり、十分なゾル-ゲル反応が進まず、アルコキシシランと鋳型材との親和性が得られない可能性がある。一方、加熱温度の上限は、100℃以下が好ましく、90℃以下がより好ましく、80℃以下がさらに好ましい。100℃を超えると組成物中の鋳型材の分子運動が激しくなり、上記同様、アルコキシシランと鋳型材との親和性が制御できなくなる可能性がある。
【0176】
また、加熱を伴う熟成時間に制限は無いが、通常10分以上、好ましくは20分以上、より好ましくは30分以上、より好ましくは60分以上、また、通常20時間以下、好ましくは15時間以下、より好ましくは8時間以下、さらに好ましくは4時間以下である。熟成時間が短すぎると均一に反応を進めることが難しくなる可能性があり、長すぎると熟成温度を低くする必要があり、十分なゾル-ゲル反応が進まず、アルコキシシランと鋳型材との親和性が得られない可能性がある。
【0177】
さらに、熟成時の圧力条件に制限は無いが、通常は常圧で熟成を行なうことが好ましい。圧力が変化すると溶媒の沸点も変化し、熟成中の溶媒が揮発(蒸発)することで、組成比が変化して、シリカ系組成物の安定性が低くなる可能性がある。
また、熟成後、塗布工程前に用いる組成物は有機溶媒を更に混合して希釈することが好ましい。これにより、組成物内でのゾル-ゲル反応速度を低下させることができ、組成物のポットライフを長く維持することが可能となる。また、多孔質ケイ素膜の製造における歩留まりの観点では、加熱を伴わない熟成を行うことが好ましい。加熱を伴わない熟成は、組成物の調製後に行ってもよい。組成物のポットライフの観点では、中和工程を行ったり、触媒除去工程を行ってもよい。
【0178】
本発明の多孔質ケイ素膜の製造方法では、アルコキシシラン、水、有機溶媒、界面活性剤を含む組成物を硬化樹脂層を有する基材フィルムに塗布し、界面活性剤の抽出工程を経て多孔質ケイ素膜を有する積層体を得ることができる。
本発明においては、上記組成物を用い、さらに、上記の抽出工程を経ることから、屈折率が1.20~1.35以下と低く、かつ硬化樹脂層を有する基材フィルムとの密着性に優れた多孔質ケイ素膜を有する積層体を製造することができる。
【0179】
[工程2]
工程2は、前記基材フィルムの最高温度が120℃以下であり、かつ、前記基材フィルムの温度が40℃以上である時間が5分以上300分以下であるように加熱して、多孔質ケイ素膜を形成する工程である。本工程は、ゾル-ゲル反応を進行させてアルコキシシランを加水分解及び脱水重縮合させるとともに、水及び有機溶媒を乾燥したり、鋳型剤である界面活性剤の一部を乾燥除去したりするために行われる。
残留溶媒による影響や層内にクラックが発生するのを抑制する観点から、加熱温度は、45℃以上115℃以下が好ましく、50℃以上110℃以下がより好ましく、55℃以上105℃以下がさらに好ましく、60℃以上100℃以下が特に好ましい。また同様の観点から、加熱時間は、10分以上240分以下が好ましく、15分以上180分以下がより好ましく、20分以上150分以下がさらに好ましい。
【0180】
[製膜方法]
本発明において、その製膜方法に特に制限はなく、例えば、スプレーコーター、ダイコーター、バーコーター、テーブルコーター、アプリケーター、ドクターブレードコーター、ディップコーター、インクジェット法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法などが挙げられる。
【0181】
特に、製膜時のゾル-ゲル反応を組成物の組成に依らず、安定した状態でシリカ系前駆体とするためには、組成物の吐出部と基材との距離を制御し、さらに該組成物を流延することが好ましい。吐出部と基材からできる限られた空間の中で膜化することで、一定の環境下でゾル-ゲル反応を進めることができ、均質なシリカ系前駆体を形成できる。具体的には組成物の吐出部と基材との距離は100μm以下が好ましく、80μm以下がより好ましく、70μm以下がさらに好ましく、50μm以下がもっとも好ましい。100μmを超えると、吐出部周辺と基材周辺でゾル-ゲル反応の進行に違いが生じ、ウェット状態で膜中に対流が発生するため、安定してシリカ体を得ることができない傾向がある。一方、下限としては0.1μm以上が好ましく、0.3μm以上がより好ましく、0.5μm以上がさらに好ましく、0.8μm以上がもっとも好ましい。0.1μmを下回ると組成物への流延時のシェアが大きくなり、ゾル-ゲル反応が安定に進まない恐れがある。
【0182】
さらに、光学機能層として信頼性の高い膜厚制御を広範囲(大面積)で実現するためには、ダイコーター、バーコーター、テーブルコーター、アプリケーター、ドクターブレードコーターなどが好ましく、ダイコーターがより好ましい。
ダイコート法により製膜する場合、溶液供給点よりシリカ系組成物を一定流量で供給し、それをスリットを経てダイリップより吐出することにより基材表面上にシリカ系前駆体を形成させるもので、基材を一定速度で搬送させることにより、目的とする多孔質ケイ素膜を形成し得るものである。
【0183】
スリットの幅には特に制限はないが、通常5μm以上、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上、また、通常、100μm以下、好ましくは80μm以下、より好ましくは50μm以下である。下限値を下回るとコンタミにより目詰まりを起こす恐れがあり、上限値を超えると均一な膜を製膜できない恐れがある。
ダイリップ(スリット)と基板との間隔(距離)であるGapには特に制限はないが、通常、5μm以上、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上、さらに好ましくは30μm以上、また、通常、100μm以下、好ましくは80μm以下、より好ましくは50μm以下の範囲にすることにより、良質なシリカ系前駆体を得ることができる。
【0184】
吐出する流量には特に制限はないが、通常、1~100cc/分、好ましくは1~50cc/分、より好ましくは1~20cc/分、さらに好ましくは2~10cc/分、もっとも好ましくは3~6cc/分である。上記下限値以上であると流延時のスリット速度の精度を懸念する必要がなく、基材の大面積化が容易となる。一方、上記上限値以下であると、シリカ系組成物に対流が生じないことから、安定なウェット膜を形成することができる。
【0185】
塗工速度には特に制限はないが、通常、5~300mm/秒、好ましくは10~200mm/秒、より好ましくは20~100mm/秒、さらに好ましくは30~80mm/秒、もっとも好ましくは40~60mm/秒である。上記下限値以上であると、製膜工程におけるシリカ系前駆体の流延条件を精密に制御する必要がなく、生産性を向上させることができる。一方、上記上限値以下であると、製膜工程においてシリカ系前駆体に過度のせん断応力がかからないため、鋳型材とシリカ成分とで構成される構造が破壊されることがない。
【0186】
塗工停止時間には特に制限はないが、通常、0.1~3秒、好ましくは0.1~2秒、より好ましくは0.2~1秒、さらに好ましくは0.2~0.8秒、もっとも好ましくは0.3~0.6秒である。上記下限値以上であると、基材フィルムの硬化性樹脂層とシリカ系前駆体の界面状態が安定し、硬化性樹脂層との密着性が低下することがない。また、膜表面のレベリングが進むため、膜の外観が良好となる。一方、上記上限値以下であると、硬化樹脂層とシリカ系前駆体の界面でのゾル-ゲル反応が進行しすぎることがなく、流延時に局所的な欠陥が生じない。
【0187】
塗工距離には特に制限はないが、通常、0.05~500m、好ましくは0.1~300m、より好ましくは0.5~100m、さらに好ましくは0.8~50m、もっとも好ましくは1~5mである。上記下限値以上であると、製膜工程における流延初期の不安定な状態を前駆体全体に及ぼすことがなく、上記上限値以下であると、前駆体組成物(a)中の局所的な不均一構造により、多孔質ケイ素膜の表面性に影響を与えることがない。
【0188】
ダイリップと基板支持台の水平出し精度は、通常、±5μm以下、好ましくは±2μm以下、より好ましくは±1μm以下とすることで再現性よく塗布することができる。
使用し得るダイの形状としては、溶液等を横方向に均一に分配し得るものであれば特に制限はない。例としては、一般のフィルムキャスティング時に使用されるTダイ形状のもの、あるいはフィッシュテイルダイ形状のもの、あるいはコートハンガーダイ形状のもの等が挙げられる。さらには、ダイ横方向への分配をより均一にしやすくするために、ダイリップ間隔の調整機構を有するものであることが望ましい。
【0189】
製膜時のウェット膜厚には特に制限はないが、通常、0.1~100μmであり、0.5~80μmが好ましく、1~55μmがより好ましく、5~40μmがさらに好ましく、10~25μmがもっとも好ましい。この範囲内であると、製膜工程における前駆体組成物(a)のゾル-ゲル反応の進行を制御することが容易となり、硬化樹脂層との濡れ性の影響を受けにくく、膜のレベリング効果が良好に維持され、膜の外観が悪化することがない。
【0190】
例えば、ダイコートの場合、該ウェット膜厚は吐出液量と基板の移動速度で制御する機構が好ましく、通常、5μm以上、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上、また、通常、60μm以下、好ましくは50μm以下、より好ましくは40μm以下の範囲にすることにより、塗布ムラの少ない均一な多孔質ケイ素膜を得ることができる。
【0191】
(製膜工程の環境)
製膜工程を行う際の相対湿度には特に制限はないが、相対湿度を制御することによりさらに安定した連続コーティングが可能となる。
【0192】
例えば、相対湿度が通常20%RH以上、好ましくは25%RH以上、より好ましくは30%RH以上、さらに好ましくは35%RH、また、通常85%RH以下、好ましくは80%RH以下、より好ましくは75%以下RHの環境下においてシリカ系前駆体の製膜を行なうようにすることが好ましい。
製膜工程を行なう際の温度に制限は無いが、通常0℃以上、好ましくは10℃以上、より好ましくは15℃以上、さらに好ましくは20℃以上、もっとも好ましくは25℃以上、また、通常100℃以下、好ましくは80℃以下、より好ましくは70℃以下、さら好ましくは60℃以下、もっとも好ましくは50℃以下である。シリカ系前駆体を製造する際の温度が低すぎるとゾル-ゲル反応の進行が遅くなり、均質なシリカ系前駆体を得られない恐れがあり、高すぎると縮合反応が急速に起こることで、未加水分解のアルコキシシランが多く残存することで、多孔質ケイ素膜の耐久性に影響を与える恐れがある。
【0193】
さらに、製膜工程を行う際のクリーン度には特に制限はないが、基材上に存在するコンタミを核とした膜欠陥や核周辺でのゾル-ゲル反応の進行を抑制する観点から、通常、塵埃径0.5μm以上の塵埃数3,000,000以下が好ましく、50,000以下がより好ましく、5,000以下がさらに好ましい。
また、製造工程における雰囲気に制限は無い。例えば、空気雰囲気中でシリカ系前駆体の製膜を行なっても良く、例えばアルゴン等の不活性雰囲気中でシリカ系前駆体の塗布を行なってもよい。
【0194】
[工程3]
工程3は、工程2によって形成した多孔質ケイ素膜に真空紫外線を照射する工程を含む。真空紫外線を照射することによって、鋳型材である界面活性剤を分解し、除去する工程である。この工程を経ることによって、多孔質ケイ素膜の孔がさらに作られ、多孔質ケイ素膜の屈折率を低減させることができる。
【0195】
[工程4]
工程4は、工程2によって形成した多孔質ケイ素膜を溶剤と接触させる工程である。多孔質ケイ素膜を溶剤と接触させることで、鋳型材である界面活性剤を抽出する工程である。多孔質ケイ素膜の孔を増加させることができ、より低屈折率化させることができる。
なお、工程4と工程3はいずれか一方を行ってもよく、両方を行ってもよい。また、工程3と工程4を両方行う場合は、いずれを先に行ってもよいが、より好ましくは工程3、工程4の順である。工程3によって、分解した界面活性剤を除去することができるためである。
【0196】
工程4で用いられる溶剤としては、特に制限されないが、鋳型材と親和性の高い物質がよい。親和性の高い溶剤であれば、鋳型材を溶解しやすく、シリカ成分により形成された構造から鋳型材を除去しやすいためである。溶剤としては、極性溶剤が好ましく、中でも一価アルコール類、多価アルコール類、ケトン類、エーテル類、エステル類、アミド類の1種、又は2種以上の親水性溶剤が好ましい。2種類以上の親水性溶剤を組み合わせる際は、混合して用いても、それぞれの溶媒で単独に処理して組み合わせることもできる。さらには、同種の処理液を繰り返し作用させることもできる。
【0197】
抽出方法は特に制限されない。例えばシリカ系前駆体を溶剤中に浸漬すること、表面を溶剤で洗浄すること、溶剤を噴霧すること、蒸気を吹きつけることなどが挙げられる。また、前駆体を溶剤に浸漬して、超音波を利用したり、溶剤を攪拌したりして、積極的に鋳型材を抽出することも可能である。
また、抽出の際に加熱をしてもよい。加熱温度は通常200℃以下であればよい。好ましくは180℃以下、より好ましくは120℃以下である。また、通常室温以上、好ましくは40℃以上、より好ましくは60℃以上である。
以上のように、抽出処理を行なうことにより多孔質ケイ素膜を有する積層体を得ることができるが、抽出処理の後に、必要に応じて乾燥工程、冷却工程等の後処理工程等を実施することも可能である。
【0198】
乾燥工程とは、抽出工程で抽出に使用した溶剤を多孔質ケイ素膜より除去する工程である。乾燥工程における温度は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常200℃以下、好ましくは180℃以下、より好ましくは120℃以下、更に好ましくは100℃以下で、また通常室温以上、好ましくは40℃以上、より好ましくは60℃以上である。
また、乾燥工程における雰囲気は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であり、例えば、真空環境、不活性ガス環境であってもよい。
【0199】
<後処理>
本発明の製造方法では、上述の製膜工程(工程[2])の後に、シリカ系前駆体中のアルコール類または触媒を除去することを目的として、シリカ系前駆体を粗乾燥させる粗乾燥工程を行なってもよい。粗乾燥工程を行なうことで、シリカ系前駆体中のアルコール類や水や触媒が除去され、前駆体中に存在する鋳型材とシリカ成分が安定した状態で構造を形成し、シリカ系前駆体の構造を安定化することができる。
【0200】
粗乾燥工程における粗乾燥の手法は制限されない。例えば加熱乾燥、減圧乾燥、通風乾燥等が挙げられる。これらは1種を単独で実施してもよく、2種以上を組み合わせて実施してもよい。
粗乾燥の手段も任意である。例えば粗乾燥を加熱乾燥により行なう場合、加熱乾燥の手段の例として、ホットプレート、オーブン、赤外線照射、電磁波照射等が挙げられる。また通風加熱乾燥の手段としては、例えば送風乾燥オーブン等が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0201】
粗乾燥時の温度は制限されないが、通常は室温以上であることが好ましい。特に加熱乾燥を行なう場合、その温度は通常20℃以上、好ましくは30℃以上、さらに好ましくは40℃以上、もっとも好ましくは60℃以上、また、通常200℃以下、好ましくは180℃以下、さらに好ましくは150℃以下、もっとも好ましくは100℃ 以下の範囲が望ましい。なお、加熱乾燥時の温度は一定でもよいが、変動してもよい。
【0202】
粗乾燥時の圧力も制限されないが、特に減圧乾燥を行なう場合、通常は常圧以下、好ましくは10kPa以下、より好ましくは1kPa以下がより好ましい。
粗乾燥時の湿度も制限されないが、シリカ系前駆体の吸湿を防ぐため、通常は60%RH程度以下とすることが望ましく、好ましくは常圧で30%RH以下、或いは真空状態(湿度0%RH)とすることが望ましい。
【0203】
粗乾燥時の雰囲気も制限されず、大気雰囲気でも、窒素雰囲気等の不活性ガス雰囲気でも、真空雰囲気でもよい。これらはシリカ系前駆体の特性等を考慮して選択すればよい。但し、通常はクリーンな雰囲気であることが好ましい。
粗乾燥時間も制限されず、シリカ系前駆体中のアルコール類や水や触媒が除去できれば任意であるが、粗乾燥時の温度・圧力・湿度等の条件や、組成物中に含まれるアルコール類や溶媒の沸点、プロセス速度、シリカ系前駆体の特性等を考慮して決定することが好ましい。通常1秒以上、好ましくは1分以上、より好ましくは1時間以上、また、通常100時間以下、好ましくは24時間以下、より好ましくは3時間以下の範囲が望ましい。
【0204】
上述した製膜工程の後に、シリカ系前駆体を酸または、塩基と接触させることもできる。この工程により、シリカ系前駆体のアルコキシシラン類の加水分解縮合反応を促進させ、シリカ系前駆体の構造体を維持して安定した多孔質膜を形成できて、好ましい。接触させる好ましい酸としては、塩化水素、ぎ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸などの気化しやすい酸類が挙げられる。また、好ましい塩基としては、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン,トリメチルアミン、アチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、n-プロピルアミン、イソプロピルアミン、n-ブチルアミン、シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン等、が挙げられる。
【0205】
シリカ系前駆体を酸または塩基と接触させる方法としては、酸または塩基の液体又は溶液もしくは蒸気が用いられる。また、後述する抽出工程で使用する有機溶媒に酸または塩基を溶解し抽出工程と同時に接触させることもできる。
また、酸・塩基処理の際に加熱を行なってもよい。加熱温度は、通常室温以上40℃以上100℃以上で、好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下、特に好ましくは120℃以下である。
【0206】
アルカリ接触処理を行なう時間は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常30秒以上、好ましくは10分以上、より好ましくは30分以上、また、通常5時間以下、好ましくは2時間以下、より好ましくは1時間以下である。
アルカリ処理を行なう際の圧力は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、減圧環境としてもよく、加熱工程では、圧力を、通常0.2MPa以下、好ましくは0.15MPa以下、より好ましくは0.1MPa以下とする。一方、圧力の下限に制限は無いが、通常10-4MPa以上、好ましくは10-3MPa以上、より好ましくは10-2MPa以上である。圧力が低すぎるとアルコキシシランのゾル-ゲル反応よりもアルコール類の揮発が進行し、吸湿性の高い多孔質ケイ素膜となりやすく、光学特性の環境依存性に影響を与える恐れがある。
【0207】
また、得られた多孔質ケイ素膜をシリル化剤で処理することで、多孔質ケイ素膜の表面をより機能性に優れたものにできる。具体例を挙げると、シリル化剤で処理することにより、多孔質ケイ素膜に撥水性、撥油性、防汚性、防曇性、光触媒能、滑雪性などを付与することが可能である。
【0208】
シリル化剤としては、例えば、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、メチルジエトキシシラン、ジメチルビニルメトキシシラン、ジメチルビニルエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン等のアルコキシシラン類; トリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、メチルジクロロシラン、ジメチルクロロシラン、ジメチルビニルクロロシラン、メチルビニルジクロロシラン、メチルクロロジシラン、トリフェニルクロロシラン、メチルジフェニルクロロシラン、ジフェニルジクロロシランなどのクロロシラン類;ヘキサメチルジシラザン、N,N’-ビス(トリメチルシリル)ウレア、N-トリメチルシリルアセトアミド、ジメチルトリメチルシリルアミン、ジエチルトリエチルシリルアミン、トリメチルシリルイミダゾールなどのシラザン類;(3,3,3-トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、(3,3,3-トリフルオロプロピル)トリエトキシシラン、ペンタフルオロフェニルトリメトキシシラン、ペンタフルオロフェニルトリエトキシシラン等のフッ化アルキル基やフッ化アリール基を有するアルコキシシラン類;などが挙げられる。なお、シリル化剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0209】
シリル化の具体的操作としては、例えば、シリル化剤を多孔質ケイ素膜に塗布したり、シリル化剤中に多孔質ケイ素膜を浸漬したり、多孔質ケイ素膜をシリル化剤の蒸気中に曝したりすることにより、行なうことができる。
また、後処理の別の例としては、本発明の多孔質ケイ素膜を多湿条件下で熟成することで、多孔質構造中に存在する未反応シラノールを減らすことができ、これにより、シリカ体の耐環境性をより向上させることも可能である。さらには、多孔質ケイ素膜の上に他の無機酸化物膜を形成することで、機械強度や耐アルカリ性を向上させることも可能である。
【0210】
多孔質ケイ素膜(A)は、他の層と組み合わせることもできる。用いられる用途に応じて適宜選択され、他の層と組み合わせることで、上記の表面反射防止膜の他に、紫外線反射膜、近赤外線反射膜、赤外線反射膜等、さらには、ディスプレイ等の発光デバイスに適用することで光取り出し膜(または輝度向上膜)としても用いることができる。組み合わせる他の層の具体例として、高屈折率層、散乱層、金属層、偏光層、熱線遮断層、紫外線劣化防止層、親水性層、防汚性層、防曇層、防湿層、防曇層、光触媒層、耐腐食層、耐指紋性層、接着層、ハード層、ガスバリア層、導電性層、アンチグレア層、拡散層等が挙げられる。これらの層は、透光基材のいずれの面に形成されていてもよく、また多孔質ケイ素膜上に積層されていてもよい。なお、これらの層は光学フィルター中に、1種単独で用いてもよく、また2種以上を任意の組合せで用いてもよい。また、特性に影響を及ぼさない限り、上記の各構成間に他の層があっても構わない。
【0211】
<画像表示装置用表面保護フィルム>
本発明の積層フィルムは、反射防止性能を備えるとともに、耐擦過性及びフレキシブル性に優れることから、画像表示装置用表面保護フィルムとして最適である。特に、前面板用などの用途に好適に用いることができる。
画像表示装置としては、例えば液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、無機ELディスプレイ、電子ペーパー、プラズマディスプレイ、及びマイクロエレクトロメカニカルシステム(MEMS)ディスプレイなどが挙げられる。
【0212】
<フレキシブル画像表示装置>
また、上記画像表示装置用表面保護フィルムを用いたフレキシブル画像表示装置も、本発明の範囲内である。本発明の画像表示装置用表面保護フィルムは、反射防止性能を備え、かつ耐擦過性及びフレキシブル性に優れるため、該フィルムを構成部材として備えることで、機能性の高いフレキシブル画像表示装置を提供することができる。
【0213】
<<語句の説明>>
本発明においては、「フィルム」と称する場合でも「シート」を含むものとし、「シート」と称する場合でも「フィルム」を含むものとする。
また、本明細書において、「X~Y」(X,Yは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくはYより小さい」の意も包含するものである。
また、「X以上」(Xは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「好ましくはXより大きい」の意を包含し、「Y以下」(Yは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「好ましくはYより小さい」の意も包含するものである。
【実施例0214】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。但し、本発明は、以下の実施例により何ら限定されるものではない。
本発明で用いた測定法及び評価方法は次のとおりである。
【0215】
(1)全光線透過率
JIS K 7136に準拠し、村上色彩技術研究所製ヘーズメーターHM-150を使用して、積層フィルムの全光線透過率を測定した。なお、光入射面は多孔質ケイ素膜側とした。
【0216】
(2)ヘイズ
JIS K 7136に準拠し、村上色彩技術研究所製ヘーズメーターHM-150を使用して、積層フィルムのヘイズ値(初期ヘイズ)を測定した。なお、光入射面は多孔質ケイ素膜側とした。
【0217】
(3)耐擦過性
積層フィルムの多孔質ケイ素膜表面を、摩擦試験機(大栄科学精器製作所社製、RT-300)にて#0000番のスチールウール(商品名:BONSTAR、日本スチールウール社製)を用いて、1kg荷重をかけながら、速度50mm/secで往復摩擦した。
往復摩擦を100回行った摩擦試験後の積層フィルム及び、往復摩擦を500回行った摩擦試験後の積層フィルムについてヘイズ値を測定し、初期ヘイズ値との差(ΔHaze)を求めた。
耐擦過性について、往復摩擦を100回行った摩擦試験後のヘイズ値変化(ΔHaze(100))及び、往復摩擦を500回行った摩擦試験後のヘイズ値変化(ΔHaze(500))の値がいずれも1%以下であるものを◎、ΔHaze(100)が1%以下であり、ΔHaze(500)が1%を超えるものを○、ΔHaze(100)が1%を超えるものを×と判定した。
【0218】
(4)反射率
積層フィルムの多孔質ケイ素膜を有する側の裏面に黒色テープ(3M製、Scotch117BLA50X20)を貼りつけたものを準備し、干渉式膜厚測定装置(フィルメトリクス社製「F20」)を用いて、反射率スペクトルを測定した。なお、光源はハロゲンランプ、測定波長は380~800nm、スリット幅は0.5nm間隔とした。
得られた反射率スペクトルから、波長550nmにおける反射率を読み取った。
【0219】
(5)屈曲耐久性
折り曲げ試験機(ユアサシステム機器社製、DLDMLH-FS)を用いて、25℃50%RHの環境下、積層フィルムの多孔質ケイ素膜側が外側表面となるように、最小半径R=2.0mmにて20万回の繰り返し折り曲げ試験を行った。
試験後の積層フィルムを目視観察し、クラックが発生したものを×、外観に変化がなかったものを○と判定した。
【0220】
(6)水滴接触角
積層フィルムにおける多孔質ケイ素膜表面の水滴接触角を、接触角計(協和化学社製、Drop Master500)を用いて測定した。
【0221】
(7)鉛筆硬度
積層フィルムの多孔質ケイ素膜側の表面に、鉛筆硬度試験機(安田精機社製、No.553-M)を用いて、JIS S6006で規定する試験用鉛筆を750gの荷重条件で押し当て、JIS K5600-5-4:1999に規定する鉛筆硬度試験を行った。表面に傷がつかない最も高い鉛筆硬度を、積層フィルムの鉛筆硬度として評価した。
【0222】
(8)屈折率
積層フィルムの多孔質ケイ素膜を有する側の裏面に黒色テープ(3M製、Scotch117BLA50X20)を貼りつけたものを準備し、反射分光装置(大塚電子株式会社製「OPTM」)を用いて、波長444nm、532nm及び653nmにおける屈折率を測定し、得られた3点の屈折率の平均値を屈折率値とした。なお、スポット径はφ5μm、スリット幅は0.5nm間隔とした。
【0223】
(9)膜厚
積層フィルムの多孔質ケイ素膜を有する側の裏面に黒色テープ(3M製、Scotch117BLA50X20)を貼りつけたものを準備し、干渉式膜厚測定装置(フィルメトリクス社製「F20」)を用いて、多孔質ケイ素膜の膜厚を測定した。
【0224】
実施例及び比較例において使用した各種材料は、以下のようにして準備したものである。
【0225】
<多孔質ケイ素膜前駆体組成物(a)>
(a-1)
テトラエトキシシラン(TEOS)1.0g、鋳型剤としての非イオン性界面活性剤(シグマアルドリッチ社製、「Pluronic F127」)0.2g、エタノール40.0g、水34.5g及び、濃度1mol/Lの塩酸水溶液1.0gを25℃で24時間攪拌し、多孔質ケイ素膜前駆体組成物(a-1)を調製した。
【0226】
(a-2)
テトラエトキシシラン(TEOS)1.0g、鋳型剤としての界面活性剤(シグマアルドリッチ社製、「Pluronic F127」)0.08g、エタノール40.0g、水10.0g及び、濃度1mol/Lの塩酸水溶液2.4gを25℃で24時間攪拌し、多孔質ケイ素膜前駆体組成物(a-2)を調製した。
【0227】
(a-3)
テトラエトキシシラン(TEOS)1.0g、鋳型剤としてのアニオン性界面活性剤(セチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB))0.8g、エタノール39.0g、水3.5g及び、濃度1mol/Lの塩酸水溶液0.01gを25℃で24時間攪拌し、多孔質ケイ素膜前駆体組成物(a-3)を調製した。
【0228】
(a-4)
テトラエトキシシラン(TEOS)1.0g、鋳型剤としての界面活性剤(セチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB))1.4g、エタノール39.0g、水3.5g及び、濃度1mol/Lの塩酸水溶液0.01gを25℃で24時間攪拌し、多孔質ケイ素膜前駆体組成物(a-4)を調製した。
【0229】
<硬化性樹脂組成物(b)>
36質量部のウレタンアクリレート(三菱ケミカル株式会社製 紫光「UV-1700B」、10官能、126g/eq、質量平均分子量:10,500)に、微細アルミナ粒子(表面修飾ナノ粒子、CIKナノテック社製 ALMIBK-H06、平均粒径20nm)40質量部、光重合開始剤(IGM Resins B.V社製 Omnirad127)5質量部、防汚剤(ダイキン社製 DAC-HP)2質量部、柔軟剤として、ポリエチレングリコールジアクリレート(PEGDA、共栄社化学社製 ライトアクリレート14EG-A、2官能)24質量部を加えて硬化性樹脂組成物(b)を調製した。
【0230】
<硬化性樹脂組成物(c)>
撹拌機、還流冷却管及び温度計を取り付けた反応器に、グリシジルメタクリレート(三菱ケミカル社製「アクリエステルG」)98質量部、メチルメタクリレート(三菱ケミカル社製「アクリエステルM」)1質量部、エチルアクリレート(三菱ケミカル社製)1質量部、メルカプトプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製「KBM803」)1.9質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)157.3質量部を仕込み、撹拌開始後に系内を窒素置換し、55℃に昇温した。ここへ、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(富士フィルム和光純薬工業社製「V-65」)1質量部を添加した後、系内を65℃まで昇温した。3時間撹拌した後、さらに、V-65を0.5質量部添加して65℃で3時間撹拌した。
系内を100℃まで昇温し、30分間撹拌した後、p-メトキシフェノール(富士フィルム和光純薬工業社製)0.45質量部、PGM138.1質量部を加え、再度系内を100℃まで昇温した。次に、トリフェニルホスフィン(富士フィルム和光純薬工業社製)3.1質量部を添加した後、アクリル酸(三菱ケミカル社製)50.7質量部を加え、110℃まで昇温した。同温度で6時間撹拌し、側鎖に(メタ)アクリロイル基を有するアクリル系樹脂(官能基数:220g/eq、質量平均分子量:15,000)の溶液を得た。なお、反応液の組成はX(溶液中の固形分)/PGM=30/70(質量比)であった。
作製したアクリル系樹脂100質量部に対し、5質量部の光重合開始剤(IGM Resins B.V社製 Omnirad127)を加えて硬化性樹脂組成物(c)を調製した。
【0231】
<高屈折率組成物(d)>
上記アクリレートA0.57g、酸化ジルコニウム(株式会社製日本触媒、ジルコスターZP-153)1.45g、2-ヒドロキシエチルメタクリレートアシッドホスフェート(城北化学工業株式会社製、JPA―514)0.02g、光重合開始剤(IGM Resins B.V社製 Omnirad127)0.01gをMEK/PGM混合溶媒7.95gに溶解させ、高屈折率組成物(d)を調整した。
【0232】
<低屈折率組成物(e)>
ペンタエリスリトールトリアクリレート0.16g、中空シリカ(日揮触媒化成社製、スルーリア4110)1.20g、パーフルオロポリエーテル(DIC社製、RS-58)0.02g、光重合開始剤(IGM Resins B.V社製 Omnirad127)0.01gをプロパノール23.64gに溶解させ、低屈折率組成物(e)を調製した。
【0233】
[実施例1]
基材フィルム(2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、三菱ケミカル社製「ダイアホイルT600」、厚み:50μm)上に、硬化性樹脂組成物(c)を、バーコーターで塗布厚み(乾燥後)が2μmになるように、25℃で塗布し、90℃で1min加熱して乾燥させた後、積算光量で200mJ/cm2の紫外線照射を大気雰囲気化で施して硬化性樹脂組成物(c)を硬化し、硬化樹脂層(C)を得た。
次に、前記硬化性硬化樹脂層(C)を被覆するように、硬化性樹脂組成物(b)を、バーコーターで乾燥後の塗布厚みが3μmになるように塗布し、90℃で1min加熱して乾燥させた後、積算光量で400mJ/cm2の紫外線照射を窒素雰囲気下で施して硬化性樹脂組成物(b)を硬化し、基材フィルム/硬化樹脂層(C)/硬化樹脂層(B)の積層構成からなる、硬化樹脂層を備えた基材フィルムを得た。
【0234】
(製膜工程)
前記硬化樹脂層を備えた基材フィルムの硬化樹脂層上に、多孔質ケイ素膜前駆体組成物(a-1)を#6バーコーターにてバーコート塗布した後、温度25℃、湿度50%にて1時間静置した。
(加熱工程)
次に、60℃に設定した熱処理オーブンで1時間加熱し、さらに100℃で1時間加熱することで、基材フィルム上に、硬化樹脂層を介して多孔質ケイ素膜(A)を備える積層フィルムを得た。
(後処理工程)
上記積層フィルムを50℃に加熱したエタノールに1時間浸漬し、多孔質ケイ素膜とする鋳型剤である界面活性剤の抽出除去を行った。最終的な多孔質ケイ素膜の膜厚は100nm、空隙率は10%、屈折率は1.45であった。
【0235】
[実施例2]
多孔質ケイ素膜前駆体組成物(a-1)の代わりに多孔質ケイ素膜前駆体組成物(a-2)を用いる以外は、実施例1と同様に積層フィルムを作製した。
多孔質ケイ素膜の膜厚は100nm、空隙率は10%、屈折率は1.48であった。
【0236】
[実施例3]
実施例1と同様の手順により、基材フィルム/硬化樹脂層(C)/硬化樹脂層(B)の積層構成からなる、硬化樹脂層を備えた基材フィルムを得た。
【0237】
(製膜工程)
前記硬化樹脂層を備えた基材フィルムの硬化樹脂層上に、多孔質ケイ素膜前駆体組成物(a-3)を#6バーコーターにてバーコート塗布した後、温度25℃、湿度50%にて1時間静置した。
(加熱工程)
次に、60℃に設定した熱処理オーブンで1時間加熱し、さらに100℃で1時間加熱することで、基材フィルム上に、硬化樹脂層を介して多孔質ケイ素膜(A)を備える積層フィルムを得た。
(後処理工程)
上記積層フィルムを、50℃のエタノールに1時間浸漬し、多孔質ケイ素膜とする鋳型剤である界面活性剤の抽出除去を行った。
多孔質ケイ素膜の膜厚は350nm、空隙率は35%、屈折率は1.39であった。
【0238】
[実施例4]
多孔質ケイ素膜前駆体組成物(a-3)の代わりに多孔質ケイ素膜前駆体組成物(a-4)を用いる以外は、実施例3と同様に積層フィルムを作製した。
多孔質ケイ素膜の膜厚は350nm、空隙率は35%、屈折率は1.35であった。
【0239】
[比較例1]
基材フィルム(2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、三菱ケミカル社製「ダイアホイルT600」、厚み:50μm)の表面に、直接多孔質ケイ素膜(A)を製膜する以外は、実施例1と同様に積層フィルムを作製した。
比較例1の積層フィルムは、硬化樹脂層を有しない積層フィルムであった。
【0240】
[比較例2]
基材フィルム(2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、三菱ケミカル社製「ダイアホイルT600」、厚み:50μm)の表面に、直接多孔質ケイ素膜(A)を製膜する以外は、実施例4と同様に積層フィルムを作製した。
比較例2の積層フィルムは、硬化樹脂層を有しない積層フィルムであった。
【0241】
[比較例3]
実施例1と同様の手順により、基材フィルム/硬化樹脂層(C)/硬化樹脂層(B)の積層構成からなる、硬化樹脂層を備えた基材フィルムを得た。
前記硬化樹脂層を備えた基材フィルムの硬化樹脂層上に、高屈折率組成物(d)を#2バーコーターにてバーコート塗布した後、25℃で塗布し、70℃で1min加熱して乾燥させた後、積算光量で400mJ/cm2の紫外線照射を窒素雰囲気化で施して高屈折率組成物(d)を硬化し、高屈折率層(D)を得た。
次に、前記高屈折率層(D)を被覆するように、低屈折率組成物(e)を、#6バーコーターにてバーコート塗布した後、25℃で塗布し、70℃で1min加熱して乾燥させた後、積算光量で400mJ/cm2の紫外線照射を窒素雰囲気化で施して低屈折率組成物(e)を硬化し、基材フィルム/硬化樹脂層(C)/硬化樹脂層(B)/高屈折率層(D)/低屈折率層(E)の積層構成からなる、硬化樹脂層を備えた基材フィルムを得た。
【0242】
【0243】
[考察]
上記実施例及び比較例の結果から、基材フィルム上に、硬化樹脂層を介して多孔質ケイ素膜(A)を備える積層フィルムであって、♯0000番のスチールウールで1kg/cm2の荷重をかけながら、前記多孔質ケイ素膜の表面を100回往復させた後のヘイズ値の変化が1%未満である積層フィルムであれば、優れた反射防止性能を備えながらも、耐擦過性及びフレキシブル性との両立が可能であることが分かった。
中でも実施例1及び4は、摩耗試験500回後のΔHAZEが1%未満であり、特に耐擦過性に優れる結果であった。
また、実施例1及び2は空隙率が35%未満であり、硬度にも優れる結果であった。
これに対し、比較例1及び比較例2は硬化樹脂層を有しない積層フィルムであるため、耐擦過性が著しく劣る結果となった。
比較例3の積層フィルムは、多孔質ケイ素膜(A)の代わりに中空シリカを含む低屈折率層(E)を備えた積層フィルムである。このため、実施例に比べて耐擦過性に劣るとともに、屈曲耐久性試験においてもクラックが生じる不具合が見られた。
本発明によれば、反射防止性能を備えるとともに、耐擦過性及びフレキシブル性に優れた積層フィルムを提供することができる。該積層フィルムは、フレキシブル性に優れるため、折り曲げたり、折り畳んだりする画像表示画面(ディスプレイ)を有するフレキシブル携帯端末用として有用である。
また、相反する機能である、フレキシブル性と耐擦過性を両立することができ、かつ優れた反射防止性能を有することから、光学用途に極めて有効であり、その工業的価値は高い。