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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118070
(43)【公開日】2024-08-30
(54)【発明の名称】加工装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 55/06 20060101AFI20240823BHJP
   B23Q 11/12 20060101ALI20240823BHJP
   B23Q 1/00 20060101ALI20240823BHJP
   B23Q 17/00 20060101ALI20240823BHJP
   B23Q 11/08 20060101ALI20240823BHJP
   B23Q 11/00 20060101ALI20240823BHJP
   B24B 41/06 20120101ALI20240823BHJP
   B24B 49/10 20060101ALI20240823BHJP
   H01L 21/677 20060101ALI20240823BHJP
【FI】
B24B55/06
B23Q11/12 A
B23Q1/00 C
B23Q17/00 A
B23Q11/08 Z
B23Q11/00 P
B24B41/06 A
B24B41/06 L
B24B49/10
H01L21/68 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023024253
(22)【出願日】2023-02-20
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(72)【発明者】
【氏名】ソ ジュンヨン
(72)【発明者】
【氏名】田中 万平
【テーマコード(参考)】
3C011
3C029
3C034
3C047
3C048
5F131
【Fターム(参考)】
3C011BB02
3C011DD02
3C029EE01
3C034AA07
3C034AA13
3C034AA19
3C034BB73
3C034BB92
3C034CA11
3C034CA30
3C034CB14
3C034DD10
3C047FF03
3C047FF06
3C047FF08
3C047HH12
3C048AA07
5F131AA02
5F131BA31
5F131BA32
5F131BA37
5F131BA52
5F131CA12
5F131DA32
5F131DA33
5F131DA36
5F131DA42
5F131DB22
5F131DB62
5F131DB72
5F131EA05
5F131EA06
5F131EA14
5F131EA22
5F131EA24
5F131EB03
5F131EB31
5F131GA03
5F131GA13
5F131GA83
5F131GA84
5F131GA88
5F131HA28
5F131HA29
5F131HA42
5F131HA44
5F131JA16
5F131JA20
5F131JA22
5F131JA23
5F131JA24
5F131JA26
5F131JA27
5F131JA32
(57)【要約】
【課題】加工装置においてカセットに収容される被加工物の汚れを防止する。
【解決手段】カセットステージ室(13)と、カセットステージ(31)に載置したカセット(30)に被加工物を搬入及び搬出する搬送室(14)と、カセットステージ室と搬送室との境の搬入出口(24)と、加工ユニット(40)を備えた加工室(15)と、搬送室と加工室との境の通過口(25)と、吸気口(74)から加工室内の空気を吸気する吸気ユニット(70)と、吸気口と吸気ユニットを連通する吸気路(77)と、吸気ユニットから排気の水分と塵を除去するフィルタユニット(80)と、吸気ユニットの排気をカセットステージ室に入れる入口(76)と、吸気ユニットと入口を連通する導入路(79)と、を備え、カセットステージ室の入口から入った空気を、搬入出口、搬送室、通過口、加工室、吸気口、吸気路、吸気ユニット、導入路、入口の順に循環させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を加工する加工装置であって、
被加工物を保持するチャックテーブルと、
被加工物を加工具で加工する加工ユニットと、
該加工具と該チャックテーブルとを収容して被加工物を加工する加工室と、
被加工物を加工する加工位置と該チャックテーブルに被加工物を搬入及び搬出する搬送位置とに該チャックテーブルを移動させる移動機構と、
該加工室に形成され該チャックテーブルが通過する通過口と、
被加工物を収納したカセットを載置するカセットステージと、
該搬送位置に移動した該チャックテーブルと該カセットステージに載置した該カセットとに対し被加工物を搬入及び搬出する搬送機構と、
該カセットステージを収容したカセットステージ室と、
該搬送機構により被加工物を搬入及び搬出する搬送室と、
該カセットステージ室と該搬送室との境に形成し、該カセットステージに載置した該カセットに被加工物の搬入及び搬出を可能とする搬入出口と、
該加工室内の空気を吸気する吸気ユニットと、
該加工室に形成され該吸気ユニットによって該加工室内の空気を吸気する吸気口と、
該吸気口と該吸気ユニットとを連通する吸気路と、
該吸気ユニットから該排気の水分、塵を除去するフィルタユニットと、
該カセットステージ室に形成され該吸気ユニットの排気を入れる入口と、
該吸気ユニットと該入口とを連通する導入路と、
を備え、
該カセットステージ室の該入口から入った空気を、該搬入出口、該搬送室、該通過口、該加工室、該吸気口、該吸気路、該吸気ユニット、該導入路、該入口の順に、循環させる、加工装置。
【請求項2】
電気制御部品を収容する電装室を備え、
該電装室と該カセットステージ室との境に形成し、該カセットステージ室の空気を該電装室に入れる電装入口と、該電装室内から空気を取り出す電装出口と、該電装出口と該吸気ユニットとを連通する電装連通路と、を備え、
該カセットステージ室に入れられた空気を、該搬送室と、該電装室とに2分岐させ、該電装室に入った空気によって、該電装室内を冷却する、請求項1記載の加工装置。
【請求項3】
該カセットステージに載置したカセットは、被加工物を取り出すための取出し口と、取出し口を塞ぐ蓋と、を備え、
該搬入出口を開閉する搬入出口扉と、
該カセットステージに対し該カセットを出し入れするための出し入れ扉と、
該出し入れ扉の開閉を検知する開閉検知部と、
該蓋を開閉する蓋開閉機構と、
該開閉検知部によって該出し入れ扉が閉じられていることを検知しているときに該蓋を閉じることと該搬入出口扉を閉じることとを制御する制御部と、
を備える、請求項1記載の加工装置。
【請求項4】
該吸気ユニットは、気液分離部を備える、請求項1記載の加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示のように、切削ブレードで被加工物を切削する切削装置は、被加工物を保持したチャックテーブルと高速回転する切削ブレードとを相対的に切削送り方向に移動させて、被加工物を切削している。
【0003】
切削装置での切削加工は、被加工物を保持するチャックテーブルと切削ブレードとを収容する加工室内で、加工液である切削水を切削ブレード及びその近傍に供給して行われる。そのため、加工室内には、高速回転する切削ブレードによって切削水の噴霧が飛散する。飛散した切削水の噴霧が切削加工後の被加工物に付着することを防ぐ目的で、ダクトユニットを設けて加工室内の噴霧を含んだ空気を吸引することが行われている。
【0004】
また、特許文献1に開示のように、加工室内から排出される噴霧を含んだ空気を吸引して乾燥空気供給手段へ送り、乾燥させた空気を乾燥空気供給手段から加工室へ戻して、加工室と乾燥空気供給手段との間で空気の循環を行わせている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-103833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
切削装置は、被加工物を保持したチャックテーブルを加工室内に位置させて被加工物の切削加工を行い、切削加工が終了したらチャックテーブルを加工室から出して、被加工物をカセットに収容する。このとき、被加工物を搬送する搬送エリアに加工室内の噴霧が噴出すると、搬送エリアや切削加工後の被加工物を汚し、汚れた被加工物をカセットに収容することになる。
【0007】
特許文献1の切削装置は、加工室と乾燥空気供給手段との間で空気の循環をさせており、加工室の外側の搬送エリアやカセット付近での被加工物の汚れ防止については対策の余地があった。
【0008】
被加工物の研削加工を行う研削装置や研磨加工を行う研磨装置においても、切削装置と同様に加工液を供給して加工を行うため、加工液が噴霧となって搬送エリアや加工後の被加工物を汚すおそれがある。また、乾式研磨加工を行う加工装置において、加工時に発生した加工屑が搬送エリアや加工後の被加工物を汚すおそれがある。
【0009】
したがって、被加工物を切削する切削装置のように加工液が噴霧となる加工装置、または加工屑が発生する加工装置は、きれいな被加工物をカセットに収容させるために空気の循環経路を構成させる、という課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、被加工物を加工する加工装置であって、被加工物を保持するチャックテーブルと、被加工物を加工具で加工する加工ユニットと、該加工具と該チャックテーブルとを収容して被加工物を加工する加工室と、被加工物を加工する加工位置と該チャックテーブルに被加工物を搬入及び搬出する搬送位置とに該チャックテーブルを移動させる移動機構と、該加工室に形成され該チャックテーブルが通過する通過口と、被加工物を収納したカセットを載置するカセットステージと、該搬送位置に移動した該チャックテーブルと該カセットステージに載置した該カセットとに対し被加工物を搬入及び搬出する搬送機構と、該カセットステージを収容したカセットステージ室と、該搬送機構により被加工物を搬入及び搬出する搬送室と、該カセットステージ室と該搬送室との境に形成し、該カセットステージに載置した該カセットに被加工物の搬入及び搬出を可能とする搬入出口と、該加工室内の空気を吸気する吸気ユニットと、該加工室に形成され該吸気ユニットによって該加工室内の空気を吸気する吸気口と、該吸気口と該吸気ユニットとを連通する吸気路と、該吸気ユニットから該排気の水分、塵を除去するフィルタユニットと、該カセットステージ室に形成され該吸気ユニットの排気を入れる入口と、該吸気ユニットと該入口とを連通する導入路と、を備え、該カセットステージ室の該入口から入った空気を、該搬入出口、該搬送室、該通過口、該加工室、該吸気口、該吸気路、該吸気ユニット、該導入路、該入口の順に、循環させる。
【0011】
さらに、電気制御部品を収容する電装室を備え、該電装室と該カセットステージ室との境に形成し、該カセットステージ室の空気を該電装室に入れる電装入口と、該電装室内から空気を取り出す電装出口と、該電装出口と該吸気ユニットとを連通する電装連通路と、を備え、該カセットステージ室に入れられた空気を、該搬送室と、該電装室とに2分岐させ、該電装室に入った空気によって、該電装室内を冷却する。
【0012】
該カセットステージに載置したカセットは、被加工物を取り出すための取出し口と、取出し口を塞ぐ蓋と、を備え、該搬入出口を開閉する搬入出口扉と、該カセットステージに対し該カセットを出し入れするための出し入れ扉と、該出し入れ扉の開閉を検知する開閉検知部と、該蓋を開閉する蓋開閉機構と、該開閉検知部によって該出し入れ扉が閉じられていることを検知しているときに該蓋を閉じることと該搬入出口扉を閉じることとを制御する制御部と、を備える。
【0013】
該吸気ユニットは、気液分離部を備えることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の加工装置によれば、加工室内から搬送室及びカセットステージ室への加工液の噴霧や加工屑の噴出を防ぐ気流を生成する空気循環経路を構成して、きれいな被加工物をカセットに収容させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態の加工装置の斜視図である。
図2】本実施形態の加工装置の斜視図である。
図3】加工装置のカセットステージ室の内部を示す斜視図である。
図4】カセットステージとスライド機構の斜視図である。
図5】カセットの斜視図である。
図6】蓋開閉機構の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1及び図2に示す本実施形態の加工装置10は、被加工物の切削加工を行う切削装置である。加工装置10の前後方向をX軸方向、左右方向をY軸方向、上下方向をZ軸方向とする。X軸方向、Y軸方向、Z軸方向は互いに垂直な方向である。加工装置10は、基台11と、基台11の上部を覆う箱型のカバー12と、を備えており、図1及び図2ではカバー12の内部に位置する構成要素の一部を透視して示している。また、図1及び図2では、後述する空気循環経路における空気の流れを一点鎖線の矢印で表している。
【0017】
加工装置10で切削加工する被加工物は、例えば半導体ウェーハである。なお、半導体ウェーハには限定されず、様々な被加工物の切削加工に適用可能である。
【0018】
また、本発明は切削加工を行う加工装置には限定されず、研削加工や研磨加工の際に供給した加工液が噴霧となる加工装置や、加工の際に加工屑が発生する加工装置(例えば、乾式研磨装置)にも適用が可能である。これらの加工装置は、加工液の噴霧または加工屑が加工室外へ噴出した場合に加工後の被加工物を汚すおそれがあり、加工後の被加工物を汚さずにカセットへ収容するという共通の課題を有している。
【0019】
カバー12の内側は複数の隔壁で仕切られており、カセットステージ室13、搬送室14、加工室15、電装室16、カセットステージ導入室17が設けられている。カバー12の前面側に表示パネル18が設けられている。表示パネル18は、加工装置10の動作や制御に関する各種情報を表示する表示デバイスや、オペレーターによる操作を受け付ける入力デバイスとして使用される。
【0020】
カバー12の内部には、中央隔壁20、水平隔壁21、水平隔壁22、垂直隔壁23が設けられている。中央隔壁20はX軸方向及びZ軸方向へ延在しており、中央隔壁20を挟んでY軸方向の一方の側(前方から見て右側)に、カセットステージ室13と搬送室14とカセットステージ導入室17が形成され、Y軸方向の他方の側(前方から見て左側)に加工室15と電装室16が形成されている。水平隔壁21はX軸方向及びY軸方向へ延在しており、水平隔壁21の下側に搬送室14が形成され、水平隔壁21の上側にカセットステージ導入室17が形成されている。水平隔壁22はX軸方向及びY軸方向へ延在しており、水平隔壁22の下側に加工室15が形成され、水平隔壁22の上側に電装室16が形成されている。垂直隔壁23はY軸方向及びZ軸方向へ延在しており、垂直隔壁23の前方にカセットステージ室13が形成され、垂直隔壁23の後方に搬送室14とカセットステージ導入室17が形成されている。カセットステージ室13はZ軸方向に長く、搬送室14とカセットステージ導入室17の両方の前方に位置している。
【0021】
垂直隔壁23には、カセットステージ室13と搬送室14との境に形成されてこれらを連通する搬入出口24が設けられている。中央隔壁20には、搬送室14と加工室15との境に形成されてこれらを連通する通過口25が設けられている。また、中央隔壁20には、カセットステージ室13と電装室16との境に形成されてこれらを連通する電装入口26が設けられている。また、垂直隔壁23には、カセットステージ室13とカセットステージ導入室17との境に形成されてこれらを連通するカセットステージ入口27が設けられている。搬入出口24と通過口25は基台11に近いZ軸方向の低い位置にあり、電装入口26とカセットステージ入口27はカバー12の上面に近いZ軸方向の高い位置にある。
【0022】
電装室16内には、加工装置10の電装系を構成する電気制御部品が配置されている。例えば、加工装置10を統括的に制御する制御部19が電装室16の内部に配置される。制御部19は、プロセッサやメモリなどによって構成されており、メモリに記憶したプログラムに従ってプロセッサが演算処理を行い、加工装置10の各部を制御する。以下の説明において、制御の主体が明記されていない場合は、制御部19によって制御されているものとする。
【0023】
電装室16内に、電気制御部品を冷却する気流を発生させる冷却ファンを備えてもよい。後述するように、電装室16では電装入口26から電装出口75へ向かう空気の流れが形成される。冷却ファンは、電装室16内の当該空気の流れに沿って空気を流すように配置することが好ましい。
【0024】
被加工物はカセット30に収容されて加工装置10へ搬送される。詳細は後述するが、カセット30は着脱可能な蓋47を備えている。加工装置10の外部にカセット30が位置する状態では蓋47が閉じられて、カセット30の内部が密閉される。
【0025】
カセットステージ室13内には、カセット30を載置するカセットステージ31が収容されている。カセットステージ31は基台11上に支持され、後述するスライド機構41(図4参照)によってX軸方向へ移動させることができる。また、カセットステージ31は、ステージ昇降機構49(図4参照)によってZ軸方向へ移動させることができる。
【0026】
カバー12の前面側に出し入れ扉32が設けられている。出し入れ扉32は、カセットステージ31に対しカセット30を出し入れするための扉である。出し入れ扉32を閉じると、カバー12に形成した外部開口33が塞がれる。出し入れ扉32を開くと、外部開口33を通してカセットステージ31へのカセット30の出し入れが可能になる。出し入れ扉32の開閉を検知する開閉検知部34が設けられており、開閉検知部34によって検知された信号は制御部19に送信される。
【0027】
カセットステージ31に対してY軸方向の後方側にチャックテーブル35が設けられている。チャックテーブル35は、被加工物を載置して吸引保持するポーラス板と、被加工物を支持したリングフレームを把持するクランプと、を備えており、チャックテーブル35に保持された被加工物はチャックテーブル35と共に移動する。なお、被加工物はリングフレームに装着されない形態で搬送及び加工されてもよく、この場合は、チャックテーブル35はクランプを備えていなくてもよい。
【0028】
チャックテーブル35は基台11上に移動機構36を介して支持されており、移動機構36によってチャックテーブル35をY軸方向へ移動させることができる。詳細な構造の図示を省略するが、移動機構36は、Y軸方向に延在するガイドレール及びボールネジを備えており、ガイドレールによってチャックテーブル35をY軸方向へ移動可能に支持し、モータの駆動力でボールネジを回転させてカセット30をY軸方向に移動させる。なお、移動機構36は当該構成に限定されるものではない。
【0029】
加工室15には、移動機構36によるチャックテーブル35の移動範囲の途中に通過口25が形成されている。通過口25は搬送室14と加工室15を連通しており、チャックテーブル35は、通過口25を通って搬送室14内の搬送位置(図1参照)と加工室15内の加工位置(図2参照)とに移動する。
【0030】
搬送位置に位置するチャックテーブル35とカセットステージ31に載置したカセット30とに対して、搬送機構37を用いて被加工物の搬入及び搬出が行われる。カセット30に対する被加工物の搬入及び搬出は、カセット30から蓋47を取り外した状態で行う。カセット30から蓋47を取り外す構造については後述する。
【0031】
搬送機構37は搬送アーム371を備えている。搬送アーム371は、被加工物の縁部を把持可能な把持部を備えている。搬送アーム371は、中央隔壁20に設けられてX軸方向に延在するガイドレール372に沿って移動可能なスライダに支持されており、アクチュエータの駆動力によってX軸方向へ移動する。
【0032】
カセット30からの被加工物の搬出を行う際には、搬出する被加工物の高さ位置が搬送アーム371に対応するように、ステージ昇降機構49によってカセットステージ31のZ軸方向の位置を調整する。続いて、搬送アーム371をX軸方向の前方へ移動させて把持部によって被加工物を把持し、把持後に搬送アーム371をX軸方向の後方へ移動させてカセット30から被加工物を引き出す。カセット30から引き出された被加工物は、搬入出口24を通って搬送室14に入り、Y軸方向に間隔を空けてX軸方向に延在する一対の仮置きレール373に載せられて位置決めされた後、搬送位置にあるチャックテーブル35に載置される。
【0033】
搬送位置にあるチャックテーブル35への被加工物の載置は、搬送機構37を構成する搬送パッド38を用いて行う。搬送パッド38は、中央隔壁20に設けられてX軸方向に延在するガイドレール381に沿って移動可能なスライダに支持されており、モータによるボールネジ382の回転駆動によって搬送パッド38がX軸方向へ移動する。また、搬送パッド38を支持するスライダは、搬送パッド38をZ軸方向に移動させることが可能な昇降機構を備える。搬送パッド38は、被加工物の上面を吸引保持可能な吸着保持部を備えている。一対の仮置きレール373に載せられた被加工物を搬送パッド38で吸引保持し、搬送パッド38を下降させることによってチャックテーブル35に被加工物を載置する。
【0034】
カセット30への被加工物の搬入を行う際には、一対の仮置きレール373に載せられた被加工物を搬送アーム371の把持部によって把持して、搬送アーム371をX軸方向の前方へ移動させる。搬送アーム371によって押し込まれた被加工物が、搬入出口24を通過してカセットステージ室13に入り、カセット30に収容される。
【0035】
被加工物を切削加工する際には、加工前の被加工物を保持したチャックテーブル35を、移動機構36によって搬送室14内の搬送位置から加工室15内の加工位置へ移動させる。搬送位置から加工位置への移動の際に、チャックテーブル35は通過口25を通過する。そして、加工室15内に設けた加工ユニット40を用いて、チャックテーブル35上の被加工物を切削加工する。詳細な構造の図示を省略するが、加工ユニット40は、X軸方向に延在するスピンドルをモータによって回転させるスピンドルユニットを備え、スピンドルの先端に加工具である切削ブレードが取り付けられる。また、加工ユニット40は、スピンドルユニットをX軸方向に移動させる割り出し送り機構と、スピンドルユニットをZ軸方向に移動させる昇降機構を備えている。
【0036】
加工室15内では、加工ユニット40の昇降機構によってスピンドルユニットを下降させて高速回転する切削ブレードを被加工物に切り込ませ、移動機構36によってチャックテーブル35をY軸方向に加工送りすることで、被加工物の上面の分割予定ラインに沿って切削加工を行う。1つの分割予定ラインに沿って切削加工が完了したら、加工ユニット40の割り出し送り機構によってX軸方向で切削ブレードの位置を変更し、次の分割予定ラインに沿って切削加工を行う。
【0037】
加工ユニット40は、切削ブレードに向けて切削水(加工液)を噴射する切削水ノズルを備えている。切削水供給部401から加工ユニット40の切削水ノズルへ切削水が供給される。切削水ノズルから噴射された切削水は、切削ブレードやスピンドルユニットの冷却、被加工物の切削で生じた加工屑の洗浄、などに用いられる。切削水ノズルから噴射された切削水が高速回転する切削ブレードに当たることにより、加工室15内に切削水の噴霧が飛散する。
【0038】
加工室15での被加工物の切削加工が完了したら、加工後の被加工物を保持したチャックテーブル35を、移動機構36によって加工室15内の加工位置から搬送室14内の搬送位置へ移動させる。加工位置から搬送位置への移動の際に、チャックテーブル35は通過口25を通過する。
【0039】
搬送室14の後方の基台11上には洗浄部39が設けられている。洗浄部39は、回転可能なスピンナテーブルと、スピンナテーブルに向けて洗浄水やエアを噴射するノズルとを備えており、スピンナテーブル上に被加工物を保持し、ノズルから洗浄水を噴射して、被加工物を洗浄する。
【0040】
搬送位置にあるチャックテーブル35から洗浄部39への被加工物の移動は、搬送パッド38を用いて行う。搬送パッド38は、加工後の被加工物を吸引保持してチャックテーブル35から受け取り、X軸方向の後方へ移動して洗浄部39のスピンナテーブルまで移動する。搬送パッド38からスピンナテーブルに被加工物が受け渡され、洗浄部39で被加工物が洗浄される。搬送パッド38は、洗浄後の被加工物を吸引保持して洗浄部39のスピンナテーブから受け取り、X軸方向の前方へ移動して一対の仮置きレール373に被加工物を載せる。
【0041】
一対の仮置きレール373に載せられた洗浄後の被加工物を、搬送機構37の搬送アーム371が把持してX軸方向に押し込んでカセット30に収容させる。
【0042】
カセット30に収容すべき全ての被加工物の収容が完了したら、蓋47を閉じてから出し入れ扉32を開き、外部開口33を通してカセット30を加工装置10の外側へ搬出する。
【0043】
まとめると、加工装置10は以下のように動作する。出し入れ扉32を開いて、加工前の被加工物を収納したカセット30をカセットステージ室13のカセットステージ31に搬入する。カセットステージ31に載置したカセット30から蓋47を取り外す。カセット30から被加工物を取り出して搬送室14内の搬送位置で待機するチャックテーブル35に載せ、チャックテーブル35を搬送位置から加工室15内の加工位置へ移動させる。加工室15内で加工ユニット40を用いて被加工物に切削加工を行う。切削加工後にチャックテーブル35を加工室15内の加工位置から搬送室14内の搬送位置へ移動させる。加工後の被加工物をチャックテーブル35から洗浄部39に搬送して洗浄し、洗浄後に被加工物をカセットステージ室13内のカセット30に戻す。被加工物を収容した後でカセット30に蓋47を取り付ける。出し入れ扉32を開いて、加工後の被加工物を収めたカセット30をカセットステージ室13から搬出する。
【0044】
図3から図6を参照して、カセット30とカセットステージ室13の詳細な構造を説明する。カセットステージ31の上面には複数の突起311が設けられており、カセット30の底面に設けた複数の孔(図示略)が突起311に嵌合して、カセットステージ31に対するカセット30の位置が定められる。
【0045】
図4に示すように、カセットステージ31は、スライド機構41によってX軸方向へ移動可能に支持されている。スライド機構41は、ベース部42と、ベース部42上に設けた一対のガイドレール43及びボールネジ44と、ボールネジ44を回転させるモータ45と、を備えている。ガイドレール43及びボールネジ44はX軸方向に延在しており、ベース部42がガイドレール43に沿って移動可能に支持され、ベース部42の下部に設けたナット部(図示略)がボールネジ44に螺合している。モータ45を駆動してボールネジ44を回転させると、ベース部42がX軸方向に移動する。また、カセットステージ31は、ステージ昇降機構49によってZ軸方向へ移動可能に支持されている。
【0046】
図5に示すように、カセット30は六面体の箱型であり、被加工物を取り出すための取出し口46が一つの面に形成され、取出し口46を塞ぐ蓋47を備えている。カセット30の内部には、上下方向に間隔を空けて複数段の収納部(図示略)が形成されており、各段の収納部にそれぞれ被加工物を収納可能である。つまり、カセット30に複数の被加工物を収容できる。
【0047】
蓋47には複数のカギ穴48が設けられている。カギ穴48をロック位置にセットした状態では、カセット30内部の蓋ロック機構(図示略)によって、蓋47が取出し口46を塞ぐ位置で固定される。カギ穴48をロック位置からロック解除位置に回転させることによって、蓋ロック機構のロックが解除されて蓋47を取り外すことが可能になる。
【0048】
カセットステージ室13の内部に、カセット30の蓋47を開閉する蓋開閉機構50が設けられる。図3に示すように、蓋開閉機構50は、X軸方向でカセットステージ31と垂直隔壁23との間に配置されている。図6に示すように、蓋開閉機構50は、ベース部51と、ベース部51に対してX軸方向に移動可能な中間支持部52と、中間支持部52に対してZ軸方向に移動可能な蓋保持部53と、を備えている。ベース部51は基台11の内部に固定されている。
【0049】
ベース部51上には、X軸方向に延在する一対のガイドレール541及びボールネジ542と、ボールネジ542を回転させるモータ543と、からなるスライド機構54が設けられている。中間支持部52は、一対のガイドレール541に沿ってX軸方向に移動可能に支持されると共に、ボールネジ542に螺合している。モータ543を駆動してボールネジ542を回転させると、中間支持部52がX軸方向に移動する。
【0050】
中間支持部52の前面には、Z軸方向に延在する一対のガイドレール551及びボールネジ552と、ボールネジ552を回転させるモータ553と、からなる昇降機構55が設けられている。蓋保持部53は、一対のガイドレール551に沿ってZ軸方向に移動可能に支持されると共に、ボールネジ552に螺合している。モータ553を駆動してボールネジ552を回転させると、蓋保持部53がZ軸方向に移動する。
【0051】
蓋保持部53の前面531には複数のカギ56が設けられている。複数のカギ56は、カセット30の蓋47に設けた複数のカギ穴48に対応する位置関係で設けられており、各カギ56は各カギ穴48に進入可能な形状を有する。蓋保持部53の内部には、モータなどの駆動源を用いてカギ56を回転させる回転駆動機構(図示略)が設けられている。カギ56がカギ穴48に進入した状態で回転駆動機構によってカギ56を回転させることにより、カセット30の蓋ロック機構のロック解除動作やロック動作を行わせることができる。
【0052】
また、蓋保持部53の前面531には、複数の吸引保持部57が設けられている。吸引保持部57は吸引源58に接続した吸盤で構成されており、吸引源58を駆動して吸引保持部57に吸引力を作用させることができる。
【0053】
カセットステージ室13にカセット30を搬入してカセットステージ31に載せたら、蓋開閉機構50を用いて蓋47を取り外す。蓋47を取り外す際には、蓋開閉機構50が以下のように動作する。昇降機構55によって蓋保持部53を上方に移動させ、蓋保持部53の前面531を蓋47に対向させる。スライド機構54によって中間支持部52をX軸方向の前方に移動させて、蓋保持部53を蓋47に接近させる。蓋保持部53の前面531が蓋47に接すると共に、複数のカギ56がそれぞれ対応するカギ穴48に進入する。回転駆動機構によって各カギ56を回転させて、カセット30の蓋ロック機構のロックを解除させる。吸引源58を駆動して吸引保持部57に吸引力を作用させると、蓋保持部53の前面531に蓋47が密着する。蓋保持部53が蓋47を吸着保持した状態で、スライド機構54によって中間支持部52をX軸方向の後方に移動させて蓋保持部53をカセット30から離間させると、蓋47がカセット30から外れる。昇降機構55によって蓋保持部53を下方に移動させると、蓋保持部53と共に蓋47が下方に移動する。昇降機構55の動作により、蓋保持部53と蓋47をカセットステージ31の上面よりも低い位置まで移動させる。
【0054】
このようにして、蓋開閉機構50を用いて、蓋47を取り外してカセットステージ室13の下部に格納することができる。なお、蓋開閉機構50は、搬入出口24が閉じているときにのみ駆動するように制御される。蓋47を取り外したら、スライド機構41によってカセットステージ31をX軸方向で後方(垂直隔壁23側)に移動させ、カセット30の取出し口46を搬入出口24に近づける。これにより、搬送機構37の搬送アーム371を用いてカセット30に対して被加工物の出し入れを行う状態になる。
【0055】
カセット30に蓋47を取り付ける際には、蓋開閉機構50は上記の取り外す動作とは逆の動作を行う。スライド機構41によってカセットステージ31をX軸方向で前方(垂直隔壁23から離れる側)に移動させる。続いて、昇降機構55によって蓋保持部53を上方に移動させ、蓋47がカセット30の取出し口46に対向するようにする。スライド機構54によって中間支持部52をX軸方向の前方に移動させて、蓋保持部53に保持された蓋47が取出し口46を塞ぐようにする。回転駆動機構によって各カギ56を回転させ、各カギ穴48をロック位置にして蓋ロック機構をロック状態にさせる。最後に、吸引源58の駆動を停止して吸引保持部57を介した吸引力を解除する。
【0056】
図3に示すように、カセットステージ室13の内部で搬入出口24に隣接する位置に、搬入出口扉60が設けられている。搬入出口扉60は、X軸方向で搬入出口24(垂直隔壁23)と蓋開閉機構50との間に配置されている。搬入出口扉60は、扉開閉機構61によってZ軸方向に移動して、搬入出口24を開閉することが可能である。
【0057】
制御部19は、開閉検知部34によって出し入れ扉32が閉じられていることを検知しているときに、扉開閉機構61による搬入出口扉60の開閉動作、および、蓋開閉機構50による蓋47の開閉動作を可能に制御している。
【0058】
上記のように、加工装置10における被加工物の切削加工は、被加工物を保持するチャックテーブル35と加工ユニット40(切削ブレード)とを収容する加工室15内で切削水を供給して行われる。そのため、加工室15内には、高速回転する切削ブレードによって切削水の噴霧が飛散する。切削水の噴霧には加工屑が含まれており、切削水の噴霧が付着して汚れた状態の被加工物をカセット30に収納してしまうと、被加工物の品質低下や製品不良の原因となる。その対策として、加工装置10は、飛散した切削水の噴霧が、切削加工後の被加工物や被加工物の搬送経路に付着することを防ぐために、噴霧処理用の構造を備えている。
【0059】
図1及び図2に示すように、気液分離部71を内蔵した吸気ユニット70を備える。吸気ユニット70は、加工装置10から離れた場所に配置してもよいし、加工装置10に付随する位置(例えば、基台11の内部、基台11の外面に沿う位置など)に配置してもよい。吸気ユニット70は吸気部72と排気部73を有する。吸気ユニット70は吸気ポンプを備えており、吸気部72から空気を吸引して気液分離部71に導き、気液分離部71を通った空気を排気部73から排出する。気液分離部71は多数の壁部を内部に有しており、切削水の噴霧を含んだ空気が壁部に当たると、水分を落下させて空気に含まれる水分量を低減させる。
【0060】
加工室15には吸気口74が形成され、電装室16には電装出口75が形成され、カセットステージ導入室17には入口76が形成されている。吸気口74は、吸気路77を介して吸気ユニット70の吸気部72に接続している。電装出口75は、電装連通路78を介して吸気ユニット70の吸気部72に接続されている。入口76は、導入路79を介して吸気ユニット70の排気部73に接続されている。
【0061】
入口76とカセットステージ導入室17との間にフィルタユニット80を備えている。フィルタユニット80は、通過する空気から水分や塵を除去するフィルタ材(水分吸着フィルタ、集塵フィルタなど)を内蔵している。
【0062】
切削水の噴霧を含んだ加工室15内の空気は、吸気口74から吸気されて吸気路77を通り、吸気部72から吸気ユニット70に入る。吸気口74は、切削水の噴霧を含んだ空気を効率的に吸気できるように、加工ユニット40の切削ブレードが回転して切削水を跳ね上げる方向の延長上に配置されている。吸気ユニット70で気液分離部71による気液分離が行われ、空気中に含まれていた水分の一部が回収される。
【0063】
吸気ユニット70の気液分離部71を通った空気は、排気部73から排気されて導入路79を通り、入口76に入る。入口76に入った吸気ユニット70からの排気はフィルタユニット80を通過し、空気中の水分や塵が除去される。フィルタユニット80を通過した空気は、加工屑を含まない浄化された状態になっており、カセットステージ導入室17内を進み、カセットステージ入口27を通ってカセットステージ室13に流入する。カセットステージ室13に流入した空気は、搬送室14と電装室16とに2分岐される。
【0064】
<第1の空気循環経路>
カセットステージ入口27からカセットステージ室13に流入した空気は、搬入出口24を通って搬送室14に進み、さらに通過口25を通って加工室15に進む。加工室15内の空気は、吸気口74から吸気ユニット70へ吸気される。つまり、加工装置10は、カセットステージ室13のカセットステージ入口27から入った空気を、搬入出口24、搬送室14、通過口25、加工室15、吸気口74、吸気路77、吸気ユニット70(気液分離部71)、導入路79、フィルタユニット80、カセットステージ導入室17、カセットステージ入口27、の順に循環させる第1の空気循環経路を構成している。
【0065】
第1の空気循環経路に備えた吸気ユニット70とフィルタユニット80とによって空気中の水分や塵を取り除き、浄化された空気をカセットステージ室13と搬送室14に流入させるため、加工室15で加工した後の被加工物に対して、切削水の噴霧を起因とする汚れが付着することを防止できる。特に、搬送室14から通過口25を通って加工室15に進む浄化済みの空気の気流が形成されるため、切削加工後にチャックテーブル35を加工室15内の加工位置から搬送室14内の搬送位置に移動させる際などに、加工室15内に充満した切削水の噴霧が通過口25から搬送室14へ噴出することを阻止する効果が得られる。その結果、切削加工後の被加工物を搬送するエリアである搬送室14及びカセットステージ室13が、切削水の噴霧で汚れないクリーンな状態を保つことができる。
【0066】
仮に、加工室15から噴出した切削水の噴霧で搬送室14やカセットステージ室13が汚れてしまうと、洗浄部39で被加工物を洗浄したとしても、その後の搬送過程で被加工物が汚れてしまい、汚れた被加工物をカセット30に収容することになる。
【0067】
これに対して本実施形態の加工装置10では、加工室15内の切削水の噴霧を含んだ空気を吸気口74から吸引し、吸気ユニット70とフィルタユニット80で水分及び塵の除去を行った空気をカセットステージ室13に導入し、搬送室14、加工室15の順で循環させる循環経路を構成している。従って、カセットステージ室13と搬送室14において被加工物を汚すことなく搬送して、きれいな被加工物をカセット30に収容させることができる。
【0068】
特に、フィルタユニット80による浄化後の空気を導入する最上流をカセットステージ室13にしているため、カセット30に収容される被加工物に加工屑などのゴミが付着されることを効果的に防止できる。
【0069】
また、加工室15内から吸引した空気を、吸気ユニット70に設けた気液分離部71による気液分離を行ってからフィルタユニット80に送るため、空気中に切削水の噴霧として含まれていた水分を効率的に除くことができる。その結果、フィルタユニット80のメンテナンスの頻度を低減させることができる。
【0070】
また、搬送室14の上部にカセットステージ導入室17を設け、カセットステージ導入室17の上流部分にフィルタユニット80を配している。この構成によれば、大型のフィルタユニット80を設置するスペースを確保しやすく、吸気ユニット70からの排気に含まれる水分及び塵を効率的に除去できる。
【0071】
カセットステージ室13にカセット30を出し入れするときに出し入れ扉32が開かれる。そして、制御部19は、開閉検知部34によって出し入れ扉32が閉じられていることを検知しているときに、カセット30の蓋47を閉じることと、搬入出口扉60を閉じることとを制御する。換言すれば、出し入れ扉32を開く前に、蓋47と搬入出口扉60が確実に閉じているように制御する。さらに、制御部19は、搬入出口扉60によって搬入出口24を閉じているときにのみ、蓋開閉機構50による蓋47の開閉動作を可能に制御する。
【0072】
上記の制御により、外部開口33と搬入出口24が同時に開放した状態にはならず、カセットステージ室13にカセット30を出し入れする際に、加工装置10の外部からカセットステージ室13を経由して搬送室14に塵などが進入することを防ぎ、搬送室14をクリーンな状態に保つことができる。また、搬入出口24が閉じた状態では、カセットステージ入口27からカセットステージ室13に流入した空気が外部開口33を通って加工装置10の外側に向けて流れるため、加工装置10の外部から外部開口33を通って塵などの異物がカセットステージ室13へ入ることを抑制する効果も得られる。
【0073】
また、上記の制御により、カセットステージ31に載置したカセット30の取出し口46と外部開口33とが同時に開放した状態にはならず、カセットステージ室13の内部が外気と遮断されたクリーンな状態で、カセット30からの被加工物の出し入れを行うことができる。
【0074】
以上のような、蓋47付きのカセット30の使用や、出し入れ扉32の開閉状態の検知に基づく搬入出口扉60の開閉制御や蓋47の開閉制御は、加工装置10がクリーンルーム内に設置されておらず装置外部からカセットステージ室13への異物の進入リスクが高い場合に特に有用性が高い。
【0075】
<第2の空気循環経路>
カセットステージ入口27からカセットステージ室13に流入した空気は、電装入口26を通って電装室16に進み、電装出口75から出て電装連通路78を通り、吸気部72から吸気ユニット70に入る。つまり、加工装置10では、カセットステージ室13のカセットステージ入口27から入った空気を、電装入口26、電装室16、電装出口75、電装連通路78、吸気ユニット70(気液分離部71)、導入路79、フィルタユニット80、カセットステージ導入室17、カセットステージ入口27の順に循環させる第2の空気循環経路を構成している。
【0076】
電装室16内には熱源となる電気制御部品(制御部19など)が多く配置されており高温になりやすいが、電装入口26から電装出口75への空気の流れによって、電装室16内を冷却する効果が得られる。
【0077】
電装室16内を通る空気は、吸気ユニット70とフィルタユニット80の通過後においても、汚れていない水蒸気の状態で所定の割合の水分を含有している。従って、電装室16内を空気が通る際に電気制御部品から熱を奪いやすく、優れた冷却効果を得ることができる。
【0078】
電装室16内を冷却した空気は、電装出口75から電装連通路78を経て吸気ユニット70に戻されて循環するので、電気制御部品から熱を奪った後の高温の空気を加工装置10の外部に放出することがなく、加工装置10の周囲の温度変化を招くおそれがない。加工装置10をクリーンルームなどの閉鎖空間に設置して装置周辺の温度管理を厳密に行う場合には、装置からの排気による周辺温度の変動を防ぐことが求められる。本実施形態の構成は、第2の循環経路内での空気の流れによって電装室16内の冷却を完結することができ、加工装置10の周辺温度に排気による影響を及ぼさない点において優れている。
【0079】
以上に説明した通り、本実施形態の加工装置10は、加工室15内で生じる切削水(加工液)の噴霧が搬送室14やカセットステージ室13に噴出されることを防ぐ気流を生成する空気の循環経路を構成しており、カセット30に収容される被加工物に加工屑などのゴミが付着されることを防止できる。
【0080】
また、カセットステージ室13に流入した空気を搬送室14と電装室16とに2分岐させ、空気の循環経路の一部に電装室16を組み込むことによって、電装室16内の冷却を行っている。この構成によって、高温になりがちな電装室16内を、複雑な冷却機構を要さずに効率的に冷却できる。
【0081】
上記実施形態は本発明を適用した一例であり、上記実施形態とは異なる構成を備えていてもよい。例えば、先に述べた通り、切削加工ではなく、研削加工や研磨加工などを行う加工装置に本発明を適用することが可能である。つまり、加工の際に、加工液や加工屑が飛散して被加工物を汚す可能性がある加工装置全般に適用が可能である。
【0082】
加工装置における空気の循環経路についても、上記実施形態には限定されずに変更が可能である。例えば、吸気ユニット70からの排気を加工装置10内に導く入口(上記実施形態の入口76に相当する部位)をカセットステージ室13の上面などに設け、カセットステージ導入室17を経由せずにカセットステージ室13にきれいな空気を流入させてもよい。吸気ユニット70の排気を受け入れる入口を、カセットステージ導入室17に接続させた場合と、カセットステージ室13に接続させた場合のいずれも、本発明では吸気ユニットの排気を入れる入口をカセットステージ室に形成した構成として包括される。換言すれば、上記実施形態のカセットステージ導入室17は、本発明におけるカセットステージ室の一部を構成している。
【0083】
加工装置がクリーンルーム内に設置されている場合に、蓋を備えない開放タイプのカセットを用いることが可能である。この場合、上記実施形態の蓋開閉機構50を省略した構成を適用してもよい。また、出し入れ扉32を備えない開放構造のカセットステージ室を適用することも可能である。
【0084】
但し、加工装置がクリーンルーム内に設置されている場合でも、カセットステージ室や搬送室をできるだけ汚さずにカセットへの被加工物の出し入れを行うという課題が存在する。従って、加工装置がクリーンルーム内に設置されている場合に、蓋付きのカセットや、出し入れ扉を備えるタイプのカセットステージ室を適用することも可能である。
【0085】
なお、本発明の実施の形態は上記の実施形態や変形例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらには、技術の進歩又は派生する別技術によって、本発明の技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、本発明の技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様をカバーしている。
【産業上の利用可能性】
【0086】
以上説明したように、本発明は、加工液が噴霧となる加工装置、また、加工屑を発生させる加工装置において、きれいな被加工物をカセットに収容させる空気の循環経路を構成することができ、精密機器を製造する加工装置などに特に適している。
【符号の説明】
【0087】
10 :加工装置
11 :基台
12 :カバー
13 :カセットステージ室
14 :搬送室
15 :加工室
16 :電装室
17 :カセットステージ導入室
18 :表示パネル
19 :制御部
20 :中央隔壁
21 :水平隔壁
22 :水平隔壁
23 :垂直隔壁
24 :搬入出口
25 :通過口
26 :電装入口
27 :カセットステージ入口
30 :カセット
31 :カセットステージ
32 :出し入れ扉
33 :外部開口
34 :開閉検知部
35 :チャックテーブル
36 :移動機構
37 :搬送機構
38 :搬送パッド
39 :洗浄部
40 :加工ユニット
41 :スライド機構
46 :取出し口
47 :蓋
48 :カギ穴
49 :ステージ昇降機構
50 :蓋開閉機構
51 :ベース部
52 :中間支持部
53 :蓋保持部
54 :スライド機構
55 :昇降機構
56 :カギ
57 :吸引保持部
58 :吸引源
60 :搬入出口扉
61 :扉開閉機構
70 :吸気ユニット
71 :気液分離部
72 :吸気部
73 :排気部
74 :吸気口
75 :電装出口
76 :入口
77 :吸気路
78 :電装連通路
79 :導入路
80 :フィルタユニット
371 :搬送アーム
401 :切削水供給部
図1
図2
図3
図4
図5
図6