(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118110
(43)【公開日】2024-08-30
(54)【発明の名称】加工装置
(51)【国際特許分類】
B23Q 11/10 20060101AFI20240823BHJP
B23Q 11/00 20060101ALI20240823BHJP
B24B 57/02 20060101ALI20240823BHJP
B24B 55/06 20060101ALI20240823BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20240823BHJP
【FI】
B23Q11/10 E
B23Q11/00 N
B23Q11/00 Q
B24B57/02
B24B55/06
H01L21/304 622E
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023024359
(22)【出願日】2023-02-20
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 貴之
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(72)【発明者】
【氏名】戎 聖吾
【テーマコード(参考)】
3C011
3C047
5F057
【Fターム(参考)】
3C011BB25
3C011BB31
3C011EE09
3C047FF04
3C047GG01
3C047HH13
5F057AA21
5F057AA53
5F057BA11
5F057BB03
5F057BB06
5F057BB07
5F057BB08
5F057BB09
5F057BB11
5F057BB12
5F057CA14
5F057CA16
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5F057CA32
5F057DA01
5F057DA11
5F057DA14
5F057DA38
5F057EB16
5F057FA28
5F057FA32
5F057FA34
5F057FA36
5F057FA37
5F057FA41
5F057FA43
(57)【要約】
【課題】排出経路の排出能力の低下を抑制する。
【解決手段】被加工物を保持する保持ユニットと、該保持ユニットが保持した該被加工物を加工する加工具が装着された加工ユニットと、該被加工物に加工水を供給する加工水供給ユニットと、を備え、該保持ユニットで保持された該被加工物に該加工水供給ユニットで該加工水を供給しながら該加工ユニットで該被加工物を加工する加工装置であって、該保持ユニットで保持された該被加工物に供給され該保持ユニットの下方に落下した該加工水を受けるウォーターケースと、該ウォーターケースに接続され、該加工水を該ウォーターケースから排出させる経路となる排出経路と、をさらに備え、該排出経路には、超音波振動子が配設され、該超音波振動子は、該排出経路に超音波振動を付与できる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持する保持ユニットと、
該保持ユニットが保持した該被加工物を加工する加工具が装着された加工ユニットと、
該被加工物に加工水を供給する加工水供給ユニットと、を備え、
該保持ユニットで保持された該被加工物に該加工水供給ユニットで該加工水を供給しながら該加工ユニットで該被加工物を加工する加工装置であって、
該保持ユニットで保持された該被加工物に供給され該保持ユニットの下方に落下した該加工水を受けるウォーターケースと、
該ウォーターケースに接続され、該加工水を該ウォーターケースから排出させる経路となる排出経路と、をさらに備え、
該排出経路には、超音波振動子が配設され、
該超音波振動子は、該排出経路に超音波振動を付与できることを特徴とする加工装置。
【請求項2】
該排出経路には、ストレーナーが配設され、
該超音波振動子は、該ストレーナーに該超音波振動を付与できることを特徴とする請求項1に記載の加工装置。
【請求項3】
該排出経路は配管を有し、
該超音波振動子は、該配管に該超音波振動を付与できることを特徴とする請求項1に記載の加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物を保持する保持ユニットと、保持ユニットで保持した被加工物を加工する加工ユニットと、を備え、加工水を供給しながら加工ユニットで被加工物を加工する加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、パーソナルコンピュータ等の様々な電子機器に搭載されるデバイスチップの製造工程では、互いに交差する複数の分割予定ライン(ストリート)によって区画された複数の領域にそれぞれデバイスが形成された円板状のウェーハが用いられる。このウェーハを薄化し、その後に分割予定ラインに沿って分割することにより、デバイスをそれぞれ備える複数のデバイスチップが得られる。例えば、ウェーハの薄化には研削装置が使用され、ウェーハの分割には切削装置が使用される。
【0003】
研削装置や切削装置等の加工装置は、被加工物を保持する保持ユニットと、保持ユニットで保持した被加工物を加工する加工ユニットと、加工される被加工物等に純水等の加工水を供給する加工水供給ユニットと、を備える。加工装置で被加工物を加工すると、被加工物や加工具から細かい加工屑が生じる。生じた加工屑は、加工水とともに保持ユニットの周囲のウォーターケースに落下し、ウォーターケースに設けられた排出口を通じて加工装置外に排出される。
【0004】
また、加工装置で被加工物を加工していると、被加工物の端部等が分離して比較的大きい端材が発生することがある。この端材はウォーターケースに落下したときに流れにくく、ウォーターケースの底面に溜まり堆積しやすい。そこで、ウォーターケースから端材を排除しやすくする加工装置や、加工水等の排出経路で端材を回収できる加工装置が開発された(特許文献1から特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-109278号公報
【特許文献2】特開2019-192846号公報
【特許文献3】特開2006-218551号公報
【特許文献4】特開2002-239888号公報
【特許文献5】特開2015-5544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ウォーターケースに接続された排出経路には、端材を留めるための網目構造を有するストレーナー(濾し取り部)が設けられることがある。排出経路に流れ込む端材はストレーナーで溜められ、加工装置のメンテナンス等のタイミングで定期的に除去される。その一方で、加工水に含まれる加工屑は、加工水とともにストレーナーの網目を抜けて排出経路を進む。
【0007】
しかしながら、排出経路に流れ込む加工屑等は、排出経路中で沈殿したり乾燥したりして互いに結合し、より大きな屑になることがある。そして、ストレーナーの網目(孔)よりも大きな屑が発生し、この屑がストレーナーの網目を塞いだり網目に固着したりして、ストレーナーが詰まることがある。また、加工屑や大きな屑は、ストレーナー以外の部分で排出経路の配管の内壁に固着することもある。配管の内壁に屑等が固着すると、排出経路が狭くなり加工水の排出能力が低下する。
【0008】
ストレーナーの詰まりや配管内壁の屑の固着等が深刻になると、排出経路を通じて加工水が適切に排出されず、排出経路で加工水の漏水事故が発生する可能性が高まる。また、この漏水事故を防止するために加工装置を停止させて排出経路の点検や清掃作業を頻繁にしなければならず、加工装置の稼働効率を低下させる要因にもなる。
【0009】
本発明はかかる問題に鑑みてなされたものであり、排出経路の排出能力の低下が抑制された加工装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様によれば、被加工物を保持する保持ユニットと、該保持ユニットが保持した該被加工物を加工する加工具が装着された加工ユニットと、該被加工物に加工水を供給する加工水供給ユニットと、を備え、該保持ユニットで保持された該被加工物に該加工水供給ユニットで該加工水を供給しながら該加工ユニットで該被加工物を加工する加工装置であって、該保持ユニットで保持された該被加工物に供給され該保持ユニットの下方に落下した該加工水を受けるウォーターケースと、該ウォーターケースに接続され、該加工水を該ウォーターケースから排出させる経路となる排出経路と、をさらに備え、該排出経路には、超音波振動子が配設され、該超音波振動子は、該排出経路に超音波振動を付与できることを特徴とする加工装置が提供される。
【0011】
好ましくは、該排出経路には、ストレーナーが配設され、該超音波振動子は、該ストレーナーに該超音波振動を付与できる。
【0012】
または、好ましくは、該排出経路は配管を有し、該超音波振動子は、該配管に該超音波振動を付与できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様に係る加工装置では、排出経路に超音波振動子が配設される。そして、超音波振動子は、排出経路に超音波振動を付与できる。例えば、加工装置において被加工物に加工水が供給されつつ被加工物が加工されるとき、超音波振動子を作動させて排出経路に超音波振動を付与しておく。
【0014】
この場合、排出経路においてストレーナーや配管等に付着する屑が振動するため、屑同士が結合しにくくなる。また、結合した屑が分解されやすくなる。さらに、ストレーナーや配管等に付着した屑が剥離しやすくなる。そのため、ストレーナーの網目が大きな屑で塞がれることはなく、また、配管が屑の付着により狭くなることもない。すなわち、排出経路の排出能力が低下しにくく、漏水事故等の不具合も防止される。そして、高頻度に清掃作業を実施する必要もないため、加工装置の稼働効率を向上できる。
【0015】
したがって、本発明の一態様により、排出経路の排出能力の低下が抑制された加工装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2】ウォーターケース及び保持ユニットを模式的に示す斜視図である。
【
図3】排出経路の配管の一部を模式的に示す断面図である。
【
図4】ストレーナーが設けられた排出経路の内部構造を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、各図では、説明の便宜のために各構造物の大きさや形状について簡略化して表示している場合や、外見上に現れる特徴を強調して表示している場合がある。そのため、各構造物は各図に示された形状、大きさ、角度、配置等には限定されない。
【0018】
まず、本実施形態に係る加工装置で加工される被加工物について説明する。
図1には、被加工物1を模式的に示す斜視図が含まれている。被加工物1は、例えば、シリコン等の材料で形成された円板状のウェーハであり、互いに概ね平行でそれぞれ平坦な表面1a及び裏面1bを備える。
【0019】
被加工物1の表面1aには、互いに交差するように格子状に配列された複数の分割予定ライン(不図示)が設定される。被加工物1の表面1aの分割予定ラインで区画された各領域には、それぞれ、IC、LSI等のデバイス(不図示)が形成される。
【0020】
なお、被加工物1の材質、構造、大きさ等に制限はない。例えば被加工物1は、シリコン以外の半導体(GaAs、InP、GaN、SiC等)、サファイア、ガラス(石英ガラス、ホウケイ酸ガラス等)等でなる基板であってもよい。また、デバイスの種類、数量、形状、構造、大きさ、配置等にも制限はなく、被加工物1にはデバイスが形成されていなくてもよい。
【0021】
被加工物1を薄化し、被加工物1を分割予定ラインに沿って分割すると、デバイスをそれぞれ備える複数の薄型のチップ(デバイスチップ)が製造される。被加工物1の分割には、例えば、環状の切削ブレードを備える切削装置や、被加工物1にレーザビームを照射するレーザ加工ユニットを備えるレーザ加工装置が使用される。また、被加工物1の薄化には、被加工物1を裏面1b側から研削する研削装置が使用される。さらに、研削後の被加工物1の裏面1b側に残る研削痕を除去するために、研磨装置が使用される。
【0022】
次に、本実施形態に係る加工装置について説明する。本実施形態に係る加工装置は、被加工物に切削、レーザ加工、研削、研磨、または、洗浄等の加工を実施する装置である。以下、本実施形態に係る加工装置の一例として、被加工物1を研削する研削装置について説明する。しかしながら、本実施形態に係る加工装置は研削装置に限定されない。
【0023】
被加工物1を裏面1b側から研削する際、被加工物1の表面1a側を保護する保護テープ3が予め被加工物1に貼着される。保護テープ3は、被加工物1の裏面1bに対する研削や被加工物1の搬送等の際に加わる衝撃から被加工物1の表面1a側を保護し、デバイスに損傷が生じるのを防止する。保護テープ3は、可撓性を有するフィルム状の基材と、該基材の一方の面に形成された糊層(接着剤層)と、を有する。
【0024】
図1は、加工装置(研削装置)2を模式的に示す斜視図である。加工装置2は、各構成を支持する基台4を有する。基台4の前側部分の上面には、カセット載置台6a,6bが設けられている。基台4上には、カセット載置台6a,6bに隣接して被加工物1を搬送する被加工物搬送ロボット10が据え付けられている。
【0025】
カセット載置台6a,6b上には、例えば、加工前の被加工物1を収容したカセット8a,8bが載置される。被加工物1は、カセット8a,8bから順次搬出され、加工装置2で加工され、カセット8a,8bに戻される。そして、カセット8a,8bに収容されていたすべての被加工物1の加工が終了したとき、カセット8a,8bが加工装置2から搬出される。
【0026】
基台4の前側部分の上面には更に、複数の位置決めピンで被加工物1を挟んで被加工物1の位置を調整する位置決めテーブル12と、被加工物1を保持ユニット20に載せる被加工物搬入機構(ローディングアーム)14と、が配設されている。さらに、被加工物1を保持ユニット20から搬出する被加工物搬出機構(アンローディングアーム)16と、加工された被加工物1を洗浄及びスピン乾燥するスピンナ洗浄装置52と、が配設されている。
【0027】
基台4の後側部分の上面には、開口4aが設けられている。開口4a内には、被加工物1を吸引保持する保持ユニット20が上面に載るX軸移動テーブル18が備えられている。X軸移動テーブル18は、図示しないX軸方向移動機構によりX軸方向に移動可能である。X軸移動テーブル18は、X軸方向移動機構の機能により、保持ユニット20上で被加工物1が着脱される搬出入領域22と、保持ユニット20上に吸引保持される被加工物1が加工される加工領域24と、に位置付けられる。
【0028】
保持ユニット(チャックテーブル)20の上面には、被加工物1と同等の径の円板状の多孔質部材が露出している。保持ユニット20の上面は、被加工物1を保持する保持面20aとなる。保持ユニット20は、一端が多孔質部材に通じ他端が図示しない吸引源に接続された吸引路(不図示)を内部に備える。吸引源を作動させると、保持面20a上に載せられた被加工物1に負圧が作用して、被加工物1が保持ユニット20に吸引保持される。また、保持ユニット20は、保持面20aに垂直な軸の周りに回転できる。
【0029】
加工領域24の上方には、被加工物1を加工(研削)する加工ユニット(研削ユニット)26が配設される。加工装置2の基台4の後方端部には支持部28が立設されており、この支持部28により加工ユニット26が支持されている。支持部28の前面には、Z軸方向に伸長する一対のZ軸ガイドレール30が設けられ、それぞれのZ軸ガイドレール30には、Z軸移動プレート32がスライド可能に取り付けられている。
【0030】
Z軸移動プレート32の裏面側(後面側)には、ナット部(不図示)が設けられており、このナット部には、Z軸ガイドレール30に平行なZ軸ボールねじ34が螺合されている。Z軸ボールねじ34の一端部には、Z軸パルスモータ36が連結されている。Z軸パルスモータ36でZ軸ボールねじ34を回転させれば、Z軸移動プレート32は、Z軸ガイドレール30に沿ってZ軸方向に移動する。Z軸移動プレート32の前面側下部には、加工ユニット26が固定されている。Z軸移動プレート32をZ軸方向に移動させれば、加工ユニット26をZ軸方向に移動できる。
【0031】
加工ユニット26は、基端側に連結されたモータにより回転するスピンドル40と、該スピンドル40の先端側に配設されたマウント42に固定具46により固定された加工具(研削ホイール)44と、を備える。換言すると、加工装置2は、被加工物1を加工する加工具44が装着された加工ユニット26を備える。
【0032】
スピンドル40を回転させるモータはスピンドルハウジング38内に備えられおり、該モータを作動させると加工具44がスピンドル40の回転に従って回転する。加工具44の下面側には、ダイヤモンド等で構成される砥粒が結合材に分散固定された複数の研削砥石が環状に配設されている。
【0033】
スピンドル40を回転させて加工具44を回転させると、研削砥石が円環軌道上を回転移動する。そして、加工ユニット26を下降させて回転移動する研削砥石を被加工物1の裏面1bに接触させると、被加工物1が研削される。加工装置(研削装置)2は、図示しない厚み測定器を有し、被加工物1の厚みを監視しつつ研削を進め、被加工物1の厚みが所定の仕上げ厚みとなったときに加工ユニット26の下降を停止して研削を終了する。
【0034】
被加工物1を加工具44で加工すると、被加工物1や加工具44から加工屑や加工熱が発生する。そこで、加工装置2は、保持ユニット20で保持された被加工物1を加工(研削)する間、純水等で構成される加工水(研削水)を被加工物1に供給する加工水供給ユニット48を備える。加工水供給ユニット48は、例えば、図示しない加工水供給源に接続されており、保持ユニット20で保持された被加工物1の裏面1b及び加工ユニット26の加工具44に加工水を供給するノズルである。
【0035】
加工装置2は、保持ユニット20で保持された被加工物1に加工水供給ユニット48で加工水を供給しながら加工ユニット26で被加工物1を加工する。加工屑や加工熱は、加工水により除去される。加工屑や加工熱を取り込んだ加工水は、保持ユニット20の周囲に飛散し落下する。
【0036】
加工装置2は、保持ユニット20で保持された被加工物1に供給され保持ユニット20の下方に落下した加工水を受けるウォーターケース50を開口4a中に備える。
図2は、ウォーターケース50を模式的に示す斜視図である。X軸移動テーブル18の前後の領域は、伸縮可能な防塵防滴カバー19により覆われている。
図2では、防塵防滴カバー19がX軸移動テーブル18から取り外されている。防塵防滴カバー19に飛散した加工水等は、防塵防滴カバー19で受けられて、ウォーターケース50に落下する。
【0037】
ウォーターケース50には、加工水をウォーターケース50から排出させる経路となる排出経路が接続された排出口56が形成されている。排出口56は、
図1及び
図2に示す通り、ウォーターケース50の底面54に形成される。ただし、排出口56の形成位置はこれに限定されず、ウォーターケース50の側面に形成されてもよい。
【0038】
図3は、ウォーターケース50に接続された排出経路58の配管60を模式的に示す断面図である。排出経路58は、例えば、ステンレス鋼等の金属材料やポリ塩化ビニル等の樹脂材料で形成された配管60により構成される。ただし、配管60の材料はこれに限定されない。
【0039】
排出経路58の一端は、排出口56に通じている。排出経路58の他端には、加工装置2が設置された工場等の排水設備や、使用済みの加工水を再生処理して純水を生成し加工装置2に供給する純水生成装置等が接続される。被加工物1や加工具44から生じた加工屑を取り込んだ加工水は、排出経路58を通じて加工装置2から排出される。
【0040】
加工装置2で被加工物1を加工していると、被加工物1の端部や外周部が被加工物1から分離して比較的大きく重い端材が発生することがある。この端材が発生原因に関する事情の一つを次に説明するが、端材の発生原因はこれに限定されない。
【0041】
半導体ウェーハ等の被加工物1の外周部には、角の取られた円弧状の面取り部と呼ばれる形状が形成される。仮にウェーハの外周部に面取り部が形成されていない場合、ウェーハの外周部の角部に欠けやクラック等の損傷が生じ易くなる。そして、外周部に面取り部が形成された被加工物1を加工装置(研削装置)2で研削して所定の厚さまで薄化すると、面取り部が被加工物1の外周部に部分的に残ることでこの外周部にナイフエッジ状の形状が現れ、被加工物1が損傷を受けやすい状態となる。
【0042】
そこで、被加工物1を裏面1b側から研削する前に、被加工物1の外周部を表面1a側から被加工物1の仕上げ厚さ以上の深さまで切削して面取り部を部分的に除去するエッジトリミング加工が実施される。面取り部のエッジトリミング加工により除去されない部分は、被加工物1の研削により消失する。しかしながら、加工装置2で被加工物1を裏面1b側から研削して薄化するとき、当該部分が消失する間際に折れ、比較的大きな端材となって落下する。
【0043】
端材は、加工水や加工屑とともに排出口56を通じてウォーターケース50から排出され、排出経路58を進行する。排出口56に接続された排出経路58には、端材を留めるための網目構造を有するストレーナー(濾し取り部)が設けられることがある。
図4は、ストレーナー62が組み込まれた排出経路58の内部構造を模式的に示す斜視図である。
【0044】
ストレーナー62は、例えば、排出経路58を塞ぐように配設される板状の部材であり、排出経路58に設けられる回収ボックス64の下流側に配設される。なお、回収ボックス64の上流側は
図3に示す配管60に接続されており、回収ボックス64の下流側は
図4に示す下流配管70に接続されている。
【0045】
ストレーナー62は、排出経路58の上流側から下流側に通じた網目(複数の孔62a)が形成されている。網目を構成する各孔62aは、加工水や加工屑等が支障なく通過できる大きさ及び形状で形成されており、その一方で、端材が通りにくい大きさ及び形状で形成されている。
【0046】
細かな加工屑とともに排出経路58に流れ込む端材はストレーナー62により進行が止められ、回収ボックス64に溜められる。そして、加工装置2のメンテナンス等のタイミングで定期的に回収ボックス64から除去される。その一方で、加工水に含まれる加工屑は、加工水とともにストレーナー62の網目(複数の孔62a)を抜けて下流配管70に進む。しかしながら、排出経路58に流れ込む加工屑等は、排出経路58中で沈殿したり乾燥したりして互いに結合し、より大きな屑になることがある。
【0047】
そして、ストレーナー62の網目(複数の孔62a)よりも大きな屑が発生し、この屑がストレーナー62の孔62aを塞いだり孔62aに固着したりして、ストレーナー62が詰まることがある。また、加工屑や大きな屑は、ストレーナー62以外の部分で排出経路58の配管60の内壁に固着することもある。配管60の内壁に屑等が固着すると、排出経路58が狭くなり加工水の排出能力が低下する。
【0048】
ストレーナー62の詰まりや配管60の内壁への屑の固着等が深刻になると、排出経路58を通じて加工水が適切に排出されず、排出経路58で加工水の漏水事故が発生する可能性が高まる。また、この漏水事故を防止するために加工装置2を停止させて排出経路58の点検や清掃作業を頻繁にしなければならず、加工装置2の稼働効率を低下させる要因にもなる。
【0049】
そこで、本実施形態に係る加工装置2では、排出経路58に超音波振動子68が配設され、排出経路58に超音波振動が付与される。
図3には、排出経路58の配管60に配設された超音波振動子68が模式的に示されており、
図4には、排出経路58のストレーナー62の近傍に配設された超音波振動子68が模式的に示されている。
【0050】
ここで、超音波振動子68は、超音波帯に属する周波数の振動を発生できる機器であり、加工装置2の電源等に接続されている。超音波振動子68に特に制限はなく、例えば、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸鉛、タンタル酸リチウム等の圧電セラミックスを備える超音波振動子68が排出経路58に配設される。
【0051】
本実施形態に係る加工装置2は、被加工物1を加工する間、超音波振動子68を作動させて排出経路58に超音波振動を付与する。この状態で加工水を被加工物1に供給して加工ユニット26を加工すると、被加工物1及び加工具44から発生した加工屑を取り込んだ加工水は、超音波振動が付与された排出経路58に到達する。
【0052】
そして、配管60及びストレーナー62に超音波振動が付与されていると、加工水に含まれる加工屑が配管60の内壁やストレーナー62に付着しにくくなる。また、僅かに配管60の内壁等に加工屑が付着したとしても、既存の加工屑に新たな加工屑が到達したときに屑同士が結合しにくい。また、結合した屑が超音波振動により分解されやすく、配管60の内壁に付着した加工屑も剥離しやすい。
【0053】
そのため、ストレーナー62の網目(孔62a)が大きな屑で塞がれることはなく、また、配管60が屑の付着により狭くなることもない。すなわち、排出経路58の排出能力が低下しにくく、漏水事故等の不具合も防止される。そして、高頻度に清掃作業を実施する必要もないため、加工装置2の稼働効率を向上できる。
【0054】
なお、排出経路58における超音波振動子68の配設位置にも特に制限はない。例えば、
図3に示すように、ウォーターケース50の排出口56の近傍において排出経路58の配管60に超音波振動子68を配設してもよい。この場合、超音波振動子68が発生させる超音波振動により排出口56の近傍における排出経路58への加工屑の付着等が抑制される。
【0055】
また、例えば、
図3に示すように、配管60を囲むように複数の超音波振動子68を排出経路58に配設してもよい。この場合、超音波振動子68が発生する超音波振動により配管60の全周にわたって加工屑の付着等が抑制される。
【0056】
さらに、例えば、
図4に示すように、排出経路58に組み込まれたストレーナー62の近傍にて、排出経路58の配管60に超音波振動子68が配設されてもよい。例えば、超音波振動子68は、回収ボックス64の天板66に配設される。この場合、超音波振動子68が発生する超音波振動がストレーナー62に伝播し、ストレーナー62の孔62aへの加工屑の付着等が抑制される。
【0057】
なお、超音波振動子68は、常時作動している必要はない。超音波振動子68は、例えば、加工ユニット26による被加工物1の加工が進行しており加工屑を取り込んだ加工水が排出経路58に流れ込むときのみ作動してもよい。この場合、加工屑の排出経路58への付着を抑制できる。
【0058】
また、超音波振動子68は、例えば、加工ユニット26による被加工物1の加工が実施されていないときに作動してもよい。この場合、加工水供給ユニット48から純水を噴出させウォーターケース50に純水を落下させ、排出経路58に純水を流しておくと、排出経路58に付着した加工屑を粉砕できるとともに排出経路58から加工屑を剥離できる。
【0059】
さらに、超音波振動子68は、加工ユニット26による被加工物1の加工が実施している間に停止してもよい。この場合、超音波振動子68が発生する超音波振動が加工に影響することがない。
【0060】
また、超音波振動子68は、加工装置2の電源が入れられている間、常に作動してもよい。この場合、排出経路58における加工屑の付着が最大限防止されるとともに、排出経路58に付着した加工屑の粉砕や剥離が最大限促進される。
【0061】
以上に説明する通り、本実施形態に係る加工装置2では、超音波振動子68が排出経路58に超音波を付与することにより排出経路58の排出能力が低下しにくく、漏水事故等の不具合も防止される。そして、高頻度に清掃作業を実施する必要もないため、加工装置2の稼働効率を向上できる。
【0062】
なお、本発明は上記実施形態の記載に限定されず、種々変更して実施可能である。例えば、上記実施形態では、被加工物1の加工により比較的大きな端材が発生し、排出経路58を進む端材がストレーナー62により止められ、回収ボックス64に端材が溜まる場合について説明したが、本発明の一態様に係る加工装置2はこれに限定されない。
【0063】
すなわち、本発明の一態様に係る加工装置2では、加工により回収対象となる端材が発生しなくてもよく、排出経路58にストレーナー62が組み込まれなくてもよく、回収ボックス64が排出経路58に設けられなくてもよい。すなわち、ストレーナー62及び回収ボックス64は省略可能である。
【0064】
加工装置2で端材が発生しなくても、被加工物1に供給される加工水が加工屑を取り込み排出経路58に流れる場合、加工屑の付着等に起因して排出経路58の機能が低下することが考えられる。その場合においても、本発明の一態様に係る加工装置2では、超音波振動子68が排出経路58に超音波振動を付与することにより加工屑の付着を抑制でき、また、加工屑の粉砕や剥離を促進できるため、排出経路58の排出能力の低下を抑制できる。
【0065】
なお、上記実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0066】
1 被加工物
1a 表面
1b 裏面
3 保護テープ
2 加工装置
4 基台
4a 開口
6a,6b カセット載置台
8a,8b カセット
10 被加工物搬送ロボット
12 位置決めテーブル
14 被加工物搬入機構(ローディングアーム)14
16 被加工物搬出機構(アンローディングアーム)16
18 X軸移動テーブル
19 防塵防滴カバー
20 保持ユニット
20a 保持面
22 搬出入領域
24 加工領域
26 加工ユニット
28 支持部
30 Z軸ガイドレール
32 Z軸移動プレート
34 Z軸ボールねじ
36 Z軸パルスモータ
38 スピンドルハウジング
40 スピンドル
42 マウント
44 加工具
46 固定具
48 加工水供給ユニット
50 ウォーターケース
52 スピンナ洗浄装置
54 底面
56 排出口
58 排出経路
60 配管
62 ストレーナー
62a 孔
64 回収ボックス
66 天板
68 超音波振動子
70 下流配管