(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118164
(43)【公開日】2024-08-30
(54)【発明の名称】制御装置、通信システム、端末連携決定方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04B 7/024 20170101AFI20240823BHJP
H04W 28/16 20090101ALI20240823BHJP
H04W 16/28 20090101ALI20240823BHJP
H04B 7/0413 20170101ALI20240823BHJP
H04B 7/0452 20170101ALI20240823BHJP
H04B 7/08 20060101ALI20240823BHJP
H04B 7/06 20060101ALI20240823BHJP
【FI】
H04B7/024
H04W28/16
H04W16/28 130
H04B7/0413
H04B7/0452 110
H04B7/08 740
H04B7/06 910
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023024437
(22)【出願日】2023-02-20
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
(74)【代理人】
【識別番号】110004381
【氏名又は名称】弁理士法人ITOH
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100124844
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 隆治
(72)【発明者】
【氏名】村山 大輔
(72)【発明者】
【氏名】中平 俊朗
(72)【発明者】
【氏名】村田 英一
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA03
5K067EE22
5K067EE25
5K067HH22
5K067KK03
(57)【要約】
【課題】端末連携MIMO技術において、端末連携方法を決定するための技術を提供する。
【解決手段】端末連携MIMOにより通信を行う無線通信システムにおいて使用される制御装置において、少なくとも2つの連携端末グループに関する情報を取得する情報取得部と、前記情報に基づいて、前記2つの連携端末グループ間の干渉影響状況を判断し、当該干渉影響状況に基づいて、前記2つの連携端末グループ間の端末連携方法を決定する決定部とを備える。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
端末連携MIMOにより通信を行う無線通信システムにおいて使用される制御装置であって、
少なくとも2つの連携端末グループに関する情報を取得する情報取得部と、
前記情報に基づいて、前記2つの連携端末グループ間の干渉影響状況を判断し、当該干渉影響状況に基づいて、前記2つの連携端末グループ間の端末連携方法を決定する決定部と
を備える制御装置。
【請求項2】
前記情報は、前記2つの連携端末グループ間の距離又は受信品質であり、前記決定部は、前記距離又は前記受信品質の大きさと、干渉影響状況に相当する予め定めた範囲を示す値とを比較することにより前記端末連携方法を決定する
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記決定部は、前記干渉影響状況に基づいて、前記2つの連携端末グループは1つのグループとして端末連携通信が可能であること、前記2つの連携端末グループ間に干渉があるためリソースを分割すること、及び、前記2つの連携端末グループはそれぞれ独立に端末連携通信が可能であること、のうちのいずれかを決定する
請求項1に記載の制御装置。
【請求項4】
前記決定部は、前記干渉影響状況に基づいて、各連携端末グループにおけるヘルパー端末の数、及びディテクター端末の数を算出する
請求項1に記載の制御装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のうちいずれか1項に記載の制御装置と、端末連携MIMOにより通信を行う基地局とを備える通信システム。
【請求項6】
端末連携MIMOにより通信を行う無線通信システムにおいて使用される制御装置が実行する端末連携決定方法であって、
少なくとも2つの連携端末グループに関する情報を取得する情報取得ステップと、
前記情報に基づいて、前記2つの連携端末グループ間の干渉影響状況を判断し、当該干渉影響状況に基づいて、前記2つの連携端末グループ間の端末連携方法を決定する決定ステップと
を備える端末連携決定方法。
【請求項7】
コンピュータを、請求項1ないし4のうちいずれか1項に記載の制御装置における各部として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基地局と複数の端末との間でMIMO(Multi-Input Multi-Output)伝送を行う無線通信システムにおいて、端末同士が連携してMIMO復調処理を行う技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
無線通信システムにおける大容量化の技術として複数のアンテナを用いて同一の無線チャネルで空間分割多重を行うMIMO伝送が、セルラ通信システムや無線LANシステムなどをはじめとして様々な無線通信システムに採用されている。
【0003】
一般に、MIMO伝送では、送受信装置が伝送したい空間ストリーム数以上のアンテナを備えることで、複数の空間ストリームが混在した状態で受信される信号に対して、適切なMIMO復調処理を行って所望の空間ストリームを受信できることが知られている。そのため、MIMO伝送の容量を拡大するには、送受信装置の双方でできるだけ多数のアンテナを備える必要がある。
【0004】
しかしながら、実際には装置上の制約があり、特に端末が備えることができるアンテナ数が装置サイズや消費電力の観点から制約されるため、伝送可能な空間ストリーム数が低下してしまうという課題がある。
【0005】
上記の課題を解決する技術として、非特許文献1には、端末連携MIMO技術が開示されている。端末連携MIMO技術により、端末同士が互いに連携し、自身が受信した信号を、他の端末に対して中継伝送することで、宛先の端末において、あたかも自装置が保有するアンテナ数以上の受信信号を用いてMIMO復調処理を行うことで、MIMO伝送の容量を拡大できる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】"端末が連携する MIMO 受信技術-理論と移動体への応用-" IEICE Fundamentals Review Vol.15 No.3
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
端末連携MIMO技術において、基地局が送信するMIMO信号を高周波数帯の無線通信で結ばれた連携端末グループが受信する。連携端末グループは、比較的近接した複数の端末から構成される。各端末が移動した場合には、例えば、1つの連携端末グループが2つの連携端末グループになったり、2つの連携端末グループが1つの連携端末グループになったりすることが考えられる。
【0008】
しかし、従来技術では、端末の移動を考慮した場合に、どのような端末連携方法をとればよいのかが明確ではない。
【0009】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、端末連携MIMO技術において、端末連携方法を決定するための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
開示の技術によれば、端末連携MIMOにより通信を行う無線通信システムにおいて使用される制御装置であって、
少なくとも2つの連携端末グループに関する情報を取得する情報取得部と、
前記情報に基づいて、前記2つの連携端末グループ間の干渉影響状況を判断し、当該干渉影響状況に基づいて、前記2つの連携端末グループ間の端末連携方法を決定する決定部と
を備える制御装置が提供される。
【発明の効果】
【0011】
開示の技術によれば、端末連携MIMO技術において、端末連携方法を決定するための技術を提供することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】端末連携MIMOのシステム構成例を示す図である。
【
図2】Helper端末10HとDetector端末10Dの概要構成を示す図である。
【
図3】制御装置100を備える通信システムの構成例を示す図である。
【
図5】実施例1の動作を説明するためのシーケンス図である。
【
図6】連携端末グループ1と連携端末グループ2が存在する構成例を示す図である。
【
図7】役割ごとの端末数を決定するための方法を示す図である。
【
図8】実施例1の動作を説明するためのシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態(本実施の形態)を説明する。以下で説明する実施の形態は一例に過ぎず、本発明が適用される実施の形態は、以下の実施の形態に限られるわけではない。
【0014】
(端末連携MIMOのシステム構成例)
図1に、本実施の形態における無線通信システムの構成例を示す。
図1は、本実施の形態において想定している端末連携MIMOのシステム構成例であり、1つの連携端末グループがある場合の構成を示している。
【0015】
図1に示すように、本無線通信システムは、基地局50、及び基地局50配下の複数の端末10を有する。
【0016】
基地局50は、複数のアンテナを備え、複数ストリームのMIMO信号を送信する機能を備える。各端末は1つのアンテナを備え、端末10同士は無線通信により連携し、互いに信号を送受信可能である。なお、端末10が複数のアンテナを備えても構わない。
図1には、端末間の連携の通信が連携リンクとして示されている。
【0017】
端末10はHelper端末(ヘルパー端末)とDetector端末(ディテクター端末)のうちのいずれかに分類される。なお、Detector端末をDetection端末と呼んでもよい。
【0018】
図1のシステムでは、一例として、連携端末グループにおいて、3台の端末10がHelper端末として機能し、別の3台の端末10がDetector端末として機能している。
【0019】
Helper端末は、基地局50から受信した信号をDetector端末に中継し、Detector端末はHelper端末からの中継信号を元にMIMO復号処理(復調処理を含む)を行う。なお、Detector端末は基地局50からの受信信号とHelper端末からの中継信号の両方を用いてMIMO復号処理を行ってもよい。
【0020】
図1は、説明のための一例として、1台の基地局50と6台の端末10が存在し、基地局50が4本のアンテナを持って4つの空間ストリームのMIMO信号を送信し、6台の端末10がその信号を受信することで、端末連携MIMO受信が実施される場合の例を示している。
【0021】
本実施の形態における端末連携によるMIMO伝送では、一例として、基地局50からHelper端末への無線通信をSub6帯(6GHz以下の周波数帯)で行い、Helper端末からDetector端末への無線通信を28GHz帯等の高い周波数帯で行う。
【0022】
Helper端末からDetector端末への通信に関して、Helper端末は、基地局50から受信した信号をそのまま非再生中継によりDetector端末に送信してもよいし、基地局50から受信した信号に対して標本化と量子化を行って取得した波形データをDetector端末に送信してもよいが、本実施の形態では波形データを送信することを想定している。
【0023】
Helper端末からDetector端末に波形データを送信するために、多くのリソースが必要となるが、上記のように高周波帯を用いるので空間多重も効きやすく、Helper端末とDetector端末の間の区間に関しては常にリソースに余裕があるという状況を想定する。
【0024】
本実施の形態における複数の端末10は、同じ構成を有していてもよいし、役割(Helper、Detector)に応じて異なる構成であってもよい。複数の端末10が同じ構成を有する場合、その役割に応じて動作が異なる。
【0025】
図2は、Helper端末10HとDetector端末10Dそれぞれの概要構成例を示す図である。
図2に示すように、Helper端末10Hは、信号受信部1、信号送信部2を含む。Detector端末10Dは、信号受信部3、復号処理部4を含む。
【0026】
Helper端末10Hの信号受信部1は、基地局50から送信された信号を受信して波形データを生成する。信号送信部2は、その波形データをブロードキャスト(あるいはマルチキャスト)で送信する。
【0027】
Detector端末10Dの信号受信部3は、1以上のHelper端末10Hからブロードキャストされた信号(波形データ)を受信する。復号処理部4は、信号受信部3により受信した信号に対してMIMO復号処理を行う。Detector端末10Dは、residual interference coefficient (RIC)の値等、確からしさの指標に基づいて、復調後のビット系列を共有しあうエラーコントロール動作を行ってもよい。この動作を行う場合、
図2のDetector端末10Dには、信号送信部が含まれる。
【0028】
(端末連携方法を決定するためのシステム構成例)
前述したとおり、従来技術では、端末の移動を考慮した場合に、どのような端末連携方法をとればよいのかが明確ではなかった。この課題を解決するために、本実施の形態では、制御装置100が、少なくとも2つの連携端末グループ間の干渉影響状況を判断し、その干渉影響状況に基づいて、端末連携方法を決定することとしている。2つの連携端末グループ間の干渉影響状況は、例えば、2つの連携端末グループ間の距離あるいは受信品質(ここではSIR(Signal-to-Interference Ratio)を用いる)により判断される。干渉影響状況を示す情報として、距離と受信品質以外の情報を使用してもよい。
【0029】
本実施の形態における端末連携方法は、後述するように、端末連携形態と、各連携端末グループにおける各端末10の役割を含む。
【0030】
図3に、制御装置100を備える通信システムの構成例を示す。
図3に示すように、本通信システムにおいて、制御装置100が、1つ以上の連携端末グループにおける各端末の情報(位置、SIR等)を収集し、収集した情報に基づいて、複数の連携端末グループをマージする、リソースを分割する、複数の連携端末グループを独立に扱うなどの処理を決定する。更に、制御装置100は、各連携端末グループ内での各端末10の役割(Helper又はDetector)を決定する。
【0031】
制御装置100は、基地局50であってもよい。つまり、基地局50が制御装置100の機能を含んでいてもよい。また、ある端末10が、制御装置100の機能を含んでいてもよい。
【0032】
また、制御装置100は、基地局50及び端末10のいずれとも異なる装置であってもよい。例えば、制御装置100は、5Gコアネットワーク上のノードであってもよい。また、制御装置100は、5Gコアネットワークの外部のデータネットワーク上のアプリケーションサーバであってもよい。制御装置100は物理マシンであってもよいし、クラウド上の仮想マシンであってもよい。
【0033】
図4に、制御装置100の構成例を示す。
図4に示すように、制御装置100は、情報取得部110、端末連携方法決定部120、通信制御部130、及びデータ格納部140を備える。なお、端末連携方法決定部120を「決定部」と呼んでもよい。
【0034】
情報取得部110は、各端末10についての情報を取得する。取得した情報はデータ格納部140に格納される。端末連携方法決定部120は、情報取得部110により取得された情報をデータ格納部140から読み出し、当該情報に基づいて、端末連携方法を決定する。通信制御部130は、決定された端末連携方法による端末連携MIMO通信が行われるように、端末10及び基地局50を制御する。なお、通信制御部130は、制御装置100の外部に備えられてもよい。
【0035】
(実施例について)
以下、制御装置100の具体的な動作例として、実施例1と実施例2を説明する。実施例1と実施例2のいずれにおいても、端末連携MIMOにおける初期の複数の連携端末グループ(少なくとも2つの連携端末グループ)が与えられている状態からスタートし、時間の経過(つまり、端末10の移動)に伴って、複数の連携端末グループをマージする(マージせずにリソースを分割する、独立に扱う)等の処理を行うことを想定する。以下、記載の便宜上、連携端末グループを「グループ」と呼ぶ場合がある。
【0036】
また、以下では、2つの隣接する連携端末グループ間での処理を説明しているが、任意の2つの隣接する連携端末グループ間で、以下で説明する処理を行うことで、任意の数の連携端末グループ間での端末連携方法を決定することが可能である。
【0037】
また、下記の実施例1、2において、どの端末10がどの連携端末グループに属するかについては予め決められていてもよいし、制御装置100は、S101/S201において各端末10から収集された情報(位置情報、SIR等)に基づき、どの端末10がどの連携端末グループに属するかを決定してもよい。
【0038】
(実施例1)
実施例1では、制御装置100は、2つの連携端末グループの間の距離を把握し、その距離に基づいて端末連携方法を決定する。2つの連携端末グループの間の距離とは、例えば、重心間の距離である。実施例1における動作例を
図5のシーケンス図の手順に沿って説明する。なお、実際には複数の端末10が存在するが、
図5には図示の便宜上、1つの端末10のみを示している。
【0039】
図5のシーケンスは、一定時間ごとに自動的に実行されてもよいし、オペレータからの指示により実行されてもよい。
【0040】
<S101>
S101において、情報取得部110は、複数の端末10における各端末10の位置情報を取得する。位置情報の取得方法についてはどのような方法を用いてもよい。
図5のように、端末10から位置情報を取得してもよいし、ネットワーク上の位置情報サーバ等から端末10の位置情報を取得してもよい。情報取得部110により取得された位置情報はデータ格納部140に格納される。
【0041】
<S102>
S102において、端末連携方法決定部120が、S101で取得した情報に基づいて、端末連携方法を決定する。具体的には下記のとおりである。
【0042】
ここでは、
図6に示す構成を例にとって説明を行う。S101の情報取得を行った段階で、
図6に示す連携端末グループ1と連携端末グループ2があるものとする。連携端末グループ1と連携端末グループ2はそれぞれ、基地局50との間で端末連携MIMOによる無線通信を行っている。また、図示のように、各グループにはHelper端末とDetector端末が存在する。
【0043】
S102ではまず、端末連携方法決定部120は、連携端末グループ1と連携端末グループ2のぞれぞれの重心位置を算出する。つまり、端末連携方法決定部120は、連携端末グループ1について、連携端末グループ1に属する各端末10の位置情報をデータ格納部140から取得して、各端末10の位置情報から重心位置を算出し、これを連携端末グループ1の重心位置とする。連携端末グループ2についても同様である。
【0044】
続いて、端末連携方法決定部120は、連携端末グループ1の重心位置と連携端末グループ2の重心位置との間の距離を、連携端末グループ1と連携端末グループ2との間の距離として算出する。この距離は、現在の2つの連携端末グループ間の干渉影響状況に対応する情報である。
【0045】
端末連携方法決定部120は、連携端末グループ1と連携端末グループ2との間の距離の範囲(干渉影響の程度に相当)ごとに定めた端末連携形態に従って、現在の連携端末グループ1と連携端末グループ2との間の干渉影響状況(実施例1では距離)における端末連携形態を決定する。
【0046】
ここでは、端末連携形態として、「マージ」、「干渉」、「独立」の3つがあるものとし、端末連携方法決定部120は、グループ間距離に基づいて、下記の判断を実行する。下記のA、Bは予め定めた値であり、A<Bである。
【0047】
「グループ間距離<A」の場合:
端末連携方法決定部120は、連携端末グループ1と連携端末グループ2の全体の端末を1つの端末連携グループとして、当該1つの端末連携グループで端末連携通信を行うと決定する。この端末連携形態では、2つのグループを1つのグループに結合(マージ)することになるので、この端末連携形態を「マージ」と呼ぶ。
図6の連携端末グループ3は、連携端末グループ1と連携端末グループ2がマージされた場合のイメージを示している。
【0048】
また、この場合、端末連携方法決定部120は、基地局50と端末連携グループとの間の通信に関して、連携端末グループ1と連携端末グループ2に同一のリソースを割り当てることを決定する。なお、本明細書において、特に断らない限り、「リソース」は、「時間・周波数リソース」である。
【0049】
「A≦グループ間距離<B」の場合:
端末連携方法決定部120は、各々のグループが独立に端末連携通信を行うと決定する。この端末連携形態では、2つのグループが存在するが、2つのグループ間に、基地局と端末との間の通信についての干渉があることが想定されるので、この端末連携形態を「干渉」と呼ぶ。なお、この「干渉」は、Helper端末からDetector端末への通信についての、2つのグループ間での干渉であってもよい。
【0050】
なお、本明細書での「干渉」は、2つのグループ間における、基地局と端末との間の通信についての干渉であってもよいし、2つのグループ間における、Helper端末からDetector端末への通信についての干渉であってもよい。
【0051】
この場合、端末連携方法決定部120は、基地局50と端末連携グループとの間の通信に関して、連携端末グループ1と連携端末グループ2に別々のリソースを割り当てることを決定する。なお、連携端末グループ1にリソース1を割り当て、連携端末グループ2にリソース2を割り当てる場合に、リソース1とリソース2の合計は、「マージ」(及び「独立」)の場合のリソースに等しい。
【0052】
「グループ間距離≧B」の場合:
端末連携方法決定部120は、各々のグループが独立に端末連携通信を行うと決定する。この端末連携形態では、2つのグループ間に干渉はなく(干渉は小さく)、2つのグループはそれぞれ他グループからの干渉を受けることなく独立に端末連携通信を行うことができるので、この端末連携形態を「独立」と呼ぶ。
【0053】
この場合、端末連携方法決定部120は、基地局50と端末連携グループとの間の通信に関して、「マージ」の場合と同様に、連携端末グループ1と連携端末グループ2に同一のリソースを割り当てることを決定する。
【0054】
<S102:端末10の役割の決定について>
S102において、端末連携方法決定部120は更に、決定した端末連携形態における連携端末グループでの各端末10の役割を決定する。具体的には下記のとおりである。
【0055】
連携端末グループ1と連携端末グループ2にはそれぞれN台の端末10が存在し、各端末10はHelper端末とDetector端末のいずれにもなれるものとする。
【0056】
下記では、連携端末グループ1と連携端末グループ2が「マージ」された場合、そのマージ後のグループは1つの連携端末グループ3であるとする。連携端末グループ3における端末10の数は2N台となる。
【0057】
端末連携方法決定部120は、1つの連携端末グループに対して、連携トラフィック量の制約からHelper端末の数をL以下として決定する。Lは、予め定めた数である。Lの値は、例えばHelper端末とDetector端末との間で送受信されるサンプリング波形データの容量の合計が、許容できるリソース使用率以下で送受信できる上限数とするとよい。また、端末連携方法決定部120は、1つの連携端末グループに対して、Detector端末の数を最低1台として決定する。
【0058】
より詳細には、端末連携方法決定部120は、
図7の表に記載された方法で、各連携端末グループにおけるHelper端末の数と、Detector端末の数を決定する。
【0059】
図7に示すとおり、端末連携形態が「マージ」の場合、連携端末グループ3におけるHelper端末の上限数(=グループ内連携可能数)はLである。端末連携方法決定部120は、Lと2N-1のうちの小さいほうを連携端末グループ3におけるHelper端末の数として決定し、2N-Lと1のうちの大きいほうを連携端末グループ3におけるDetector端末の数として決定する。
【0060】
端末連携形態が「干渉」の場合、連携端末グループ1と連携端末グループ2それぞれのHelper端末の上限数(=グループ内連携可能数)はL/2である。端末連携方法決定部120は、連携端末グループ1と連携端末グループ2それぞれに対して、L/2とN-1のうちの小さいほうをHelper端末の数として決定し、N-L/2と1のうちの大きいほうをDetector端末の数として決定する。
【0061】
端末連携形態が「独立」の場合、連携端末グループ1と連携端末グループ2それぞれのHelper端末の上限数(=グループ内連携可能数)はLである。端末連携方法決定部120は、連携端末グループ1と連携端末グループ2それぞれに対して、LとN-1のうちの小さいほうをHelper端末の数として決定し、N-Lと1のうちの大きいほうをDetector端末の数として決定する。
【0062】
なお、各端末10の役割の決定について、端末連携方法決定部120は、連携端末グループにおいて、上記のようにして定めた数になるように、任意に各端末10をHelper端末とDetector端末に振り分けることとしてもよいし、例えば、端末10の能力あるいはバッテリ量(残電力量)に応じて、各端末10をHelper端末とDetector端末に振り分けてもよい。
【0063】
<S103、S104>
図5のS103、S104において、制御装置100の通信制御部130は、端末連携方法決定部120により決定された端末連携方法(端末連携形態と役割数)で端末連携MIMO通信が行われるように、各端末10と基地局50に制御情報を送信する。
【0064】
例えば、基地局50に対しては、2つの連携端末グループ1、2を「マージ」する、2つの連携端末グループ1、2を「干渉」として扱う(つまり、リソースを分ける)、あるいは、2つの連携端末グループ1、2を「独立」として扱う、旨の情報(割り当てるリソースに関する情報を含む)を通知する。各端末10に対しては、その端末10の属する連携端末グループが、「マージ」、「干渉」、「独立」のいずれであるかを通知するとともに、その端末10の役割を通知する。
【0065】
なお、制御装置100の機能が基地局50内にある場合、S104の制御は、基地局50内部での命令に相当する。また、制御装置100の機能が端末10内にある場合、S103の制御は、その端末10に関して、端末10内部での命令に相当する。
【0066】
(実施例2)
次に、実施例2を説明する。実施例2については、実施例1と異なる点を主に説明する。実施例2でも、
図6に示す構成を前提として説明する。
【0067】
実施例2では、制御装置100は、2つの連携端末グループにおける各端末10のSIRを把握し、当該SIRに基づいて端末連携方法を決定する。実施例2における動作例を
図8のシーケンス図の手順に沿って説明する。なお、実際には複数の端末10が存在するが、
図8には図示の便宜上、1つの端末10のみを示している。
【0068】
図8のシーケンスは、一定時間ごとに自動的に実行されてもよいし、オペレータからの指示により実行されてもよい。
【0069】
<S201>
ここでは、連携端末グループ1と連携端末グループ2は互いに隣接グループであるとする。各端末10にとって、隣接グループは、自グループ以外の1以上のグループ(他グループ)のうち、信号強度が最大となるグループである。この信号強度は、基地局50から送信される他グループ宛の信号を受信する強度であってもよいし、他グループのHelper端末から送信される信号を受信する強度であってもよい。
【0070】
各グループの各端末10は、「(自グループ宛信号の強度)/(隣接グループ宛信号の強度)」によりSIR(受信品質に例)を算出する。各グループの信号について、複数パスが存在するため、各端末10は、複数パスの信号強度における最大値、最小値、又は平均値をそのグループの信号強度とする。
【0071】
自グループ宛信号とは、基地局50から自グループ宛に送信される信号であり、隣接グループ宛信号とは、基地局50から隣接グループ宛に送信される信号であることを想定する。ただし、これに限定されるわけではなく、自グループ宛信号は、自グループのHelper端末から送信される信号であり、隣接グループ宛信号は、隣接グループのHelper端末から送信される信号であってもよい。
【0072】
各連携端末グループの各端末10は、例えば定期的に、算出したSIRを制御装置100に送信する。制御装置100の情報取得部110は、当該SIRを取得して、取得したSIRをデータ格納部140に格納する。
【0073】
なお、各連携端末グループにおいて、特定の端末10のみがSIRを算出し、制御装置100に送信してもよい。
【0074】
<S202>
S202において、端末連携方法決定部120が、S201で取得したSIRに基づいて、端末連携方法を決定する。具体的には下記のとおりである。
【0075】
まず、端末連携方法決定部120は、連携端末グループ1と連携端末グループ2における、SIRを送信した全端末10のSIRの平均値を算出する。なお、平均値以外の量(例:最大値又は最小値)を算出してもよい。ここで算出した値を以降の判断で使用するSIRとする。このSIRを「連携端末グループ1と連携端末グループ2との間のSIR」と呼んでもよい。このSIRは、現在の2つの連携端末グループ間の干渉影響状況に対応する情報である。
【0076】
続いて、端末連携方法決定部120は、SIRの範囲(干渉影響の程度に相当)ごとに定めた端末連携形態に従って、現在の連携端末グループ1と連携端末グループ2との間の干渉影響状況(実施例2ではSIR)における端末連携形態を決定する。
【0077】
実施例1と同じく、端末連携形態として、「マージ」、「干渉」、「独立」の3つがあるものとし、端末連携方法決定部120は、SIRに基づいて、下記の判断を実行する。下記のA、Bは予め定めた値であり、A<Bである。
【0078】
「SIR<A」の場合:
端末連携方法決定部120は、連携端末グループ1と連携端末グループ2の全体の端末を1つの端末連携グループとして、当該1つの端末連携グループで端末連携通信を行うと決定する。この端末連携形態では、2つのグループを1つのグループに結合(マージ)することになるので、この端末連携方法を「マージ」と呼ぶ。
図6の連携端末グループ3は、連携端末グループ1と連携端末グループ2がマージされた場合のイメージを示している。
【0079】
また、この場合、端末連携方法決定部120は、基地局50と端末連携グループとの間の通信に関して、連携端末グループ1と連携端末グループ2に同一のリソースを割り当てることを決定する。
【0080】
「A≦SIR<B」の場合:
端末連携方法決定部120は、各々のグループが独立に端末連携通信を行うと決定する。この端末連携形態では、2つのグループが存在するが、2つのグループ間に、基地局と端末との間の通信についての干渉があることが想定されるので、この端末連携形態を「干渉」と呼ぶ。なお、この「干渉」は、Helper端末からDetector端末への通信についての、2つのグループ間での干渉であってもよい。
【0081】
この場合、端末連携方法決定部120は、基地局50と端末連携グループとの間の通信に関して、連携端末グループ1と連携端末グループ2に別々のリソースを割り当てることを決定する。なお、連携端末グループ1にリソース1を割り当て、連携端末グループ2にリソース2を割り当てる場合に、リソース1とリソース2の合計は、「マージ」(及び「独立」)の場合のリソースに等しい。
【0082】
「SIR≧B」の場合:
端末連携方法決定部120は、各々のグループが独立に端末連携通信を行うと決定する。この端末連携形態では、2つのグループ間に干渉はなく(干渉は小さく)、2つのグループはそれぞれ他グループからの干渉を受けることなく独立に端末連携通信を行うことができるので、この端末連携形態を「独立」と呼ぶ。
【0083】
この場合、端末連携方法決定部120は、基地局50と端末連携グループとの間の通信に関して、「マージ」の場合と同様に、連携端末グループ1と連携端末グループ2に同一のリソースを割り当てることを決定する。
【0084】
<S202:端末10の役割の決定について>
S202において、端末連携方法決定部120は更に、決定した端末連携形態における連携端末グループでの各端末10の役割を決定する。具体的な処理内容は、実施例1での処理内容と同じである。
【0085】
<S203、S204>
図8のS203、S204において、制御装置100の通信制御部130は、端末連携方法決定部120により決定された端末連携方法(端末連携形態と役割数)で端末連携MIMO通信が行われるように、各端末10と基地局50に制御情報を送信する。具体的な処理内容は、実施例1でのS103、S104での処理内容と同じである。
【0086】
(ハードウェア構成例)
本実施の形態で説明した制御装置100(基地局50又は端末10でもよい)は、例えば、コンピュータにプログラムを実行させることにより実現できる。このコンピュータは、物理的なコンピュータであってもよいし、クラウド上の仮想マシンであってもよい。
【0087】
すなわち、制御装置100は、コンピュータに内蔵されるCPUやメモリ等のハードウェア資源を用いて、制御装置100で実施される処理に対応するプログラムを実行することによって実現することが可能である。上記プログラムは、コンピュータが読み取り可能な記録媒体(可搬メモリ等)に記録して、保存したり、配布したりすることが可能である。また、上記プログラムをインターネットや電子メール等、ネットワークを通して提供することも可能である。
【0088】
図9は、上記コンピュータのハードウェア構成例を示す図である。
図9のコンピュータは、それぞれバスBSで相互に接続されているドライブ装置1000、補助記憶装置1002、メモリ装置1003、CPU1004、インタフェース装置1005、表示装置1006、入力装置1007、出力装置1008等を有する。なお、当該コンピュータは、更にGPUを備えてもよい。
【0089】
当該コンピュータでの処理を実現するプログラムは、例えば、CD-ROM又はメモリカード等の記録媒体1001によって提供される。プログラムを記憶した記録媒体1001がドライブ装置1000にセットされると、プログラムが記録媒体1001からドライブ装置1000を介して補助記憶装置1002にインストールされる。但し、プログラムのインストールは必ずしも記録媒体1001より行う必要はなく、ネットワークを介して他のコンピュータよりダウンロードするようにしてもよい。補助記憶装置1002は、インストールされたプログラムを格納すると共に、必要なファイルやデータ等を格納する。
【0090】
メモリ装置1003は、プログラムの起動指示があった場合に、補助記憶装置1002からプログラムを読み出して格納する。CPU1004は、メモリ装置1003に格納されたプログラムに従って、制御装置100に係る機能を実現する。インタフェース装置1005は、ネットワーク等に接続するためのインタフェースとして用いられる。表示装置1006はプログラムによるGUI(Graphical User Interface)等を表示する。入力装置1007はキーボード及びマウス、ボタン、又はタッチパネル等で構成され、様々な操作指示を入力させるために用いられる。出力装置1008は演算結果を出力する。
【0091】
(実施の形態のまとめ、効果等)
本実施の形態で説明した技術により、端末連携MIMOを使用する無線通信システムにおいて、連携端末グループ間の距離あるいはSIRに応じて、端末連携形態と、連携端末グループにおける端末の役割を決定することができる。これにより、端末の移動がある際に、端末配置状況に応じて連携端末グループを更新することで、最大の通信速度を維持することが可能となる。
【0092】
以上の実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
【0093】
<付記>
(付記項1)
端末連携MIMOにより通信を行う無線通信システムにおいて使用される制御装置であって、
メモリと、
前記メモリに接続された少なくとも1つのプロセッサと、
を含み、
前記プロセッサは、
少なくとも2つの連携端末グループに関する情報を取得し、
前記情報に基づいて、前記2つの連携端末グループ間の干渉影響状況を判断し、当該干渉影響状況に基づいて、前記2つの連携端末グループ間の端末連携方法を決定する
制御装置。
(付記項2)
前記情報は、前記2つの連携端末グループ間の距離又は受信品質であり、前記プロセッサは、前記距離又は前記受信品質の大きさと、干渉影響状況に相当する予め定めた範囲を示す値とを比較することにより前記端末連携方法を決定する
付記項1に記載の制御装置。
(付記項3)
前記プロセッサは、前記干渉影響状況に基づいて、前記2つの連携端末グループは1つのグループとして端末連携通信が可能であること、前記2つの連携端末グループ間に干渉があるためリソースを分割すること、及び、前記2つの連携端末グループはそれぞれ独立に端末連携通信が可能であること、のうちのいずれかを決定する
付記項1又は2に記載の制御装置。
(付記項4)
前記プロセッサは、前記干渉影響状況に基づいて、各連携端末グループにおけるヘルパー端末の数、及びディテクター端末の数を算出する
付記項1ないし3のうちいずれか1項に記載の制御装置。
(付記項5)
付記項1ないし4のうちいずれか1項に記載の制御装置と、端末連携MIMOにより通信を行う基地局とを備える通信システム。
(付記項6)
端末連携MIMOにより通信を行う無線通信システムにおいて使用される制御装置が実行する端末連携決定方法であって、
少なくとも2つの連携端末グループに関する情報を取得する情報取得ステップと、
前記情報に基づいて、前記2つの連携端末グループ間の干渉影響状況を判断し、当該干渉影響状況に基づいて、前記2つの連携端末グループ間の端末連携方法を決定する決定ステップと
を備える端末連携決定方法。
(付記項7)
コンピュータを、付記項1ないし4のうちいずれか1項に記載の制御装置における各部として機能させるためのプログラムを記憶した非一時的記憶媒体。
【0094】
以上、本実施の形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0095】
10 端末
50 基地局
100 制御装置
110 情報取得部
120 端末連携方法決定部
130 通信制御部
140 データ格納部
1000 ドライブ装置
1001 記録媒体
1002 補助記憶装置
1003 メモリ装置
1004 CPU
1005 インタフェース装置
1006 表示装置
1007 入力装置
1008 出力装置