(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118255
(43)【公開日】2024-08-30
(54)【発明の名称】医用画像処理装置、医用画像処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 6/03 20060101AFI20240823BHJP
【FI】
A61B6/03 360D
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023024597
(22)【出願日】2023-02-20
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成25年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、COIプログラム、COI拠点「自分で守る健康社会拠点」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 一郎
(72)【発明者】
【氏名】小野 稔
(72)【発明者】
【氏名】山内 治雄
(72)【発明者】
【氏名】月原 弘之
(72)【発明者】
【氏名】青山 岳人
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA22
4C093AA26
4C093CA35
4C093DA02
4C093FF17
4C093FF20
4C093FF22
4C093FF23
4C093FF28
(57)【要約】
【課題】医用画像が非特異的な構造を含む場合に、計測の精度を向上させること。
【解決手段】実施形態に係る医用画像処理装置は、取得部と、特定部と、算出部と、補正部とを備える。取得部は、医用画像データを取得する。特定部は、前記医用画像データに含まれる第1の領域と、前記第1の領域と関連する第2の領域とを特定する。算出部は、前記第2の領域に関する特徴量を算出する。補正部は、前記特徴量に基づいて、前記第1の領域に関する情報を補正する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医用画像データを取得する取得部と、
前記医用画像データに含まれる第1の領域と、前記第1の領域と関連する第2の領域とを特定する特定部と、
前記第2の領域に関する特徴量を算出する算出部と、
前記特徴量に基づいて、前記第1の領域に関する情報を補正する補正部と、
を備える、医用画像処理装置。
【請求項2】
前記補正部は、前記特徴量に基づいた補正方法で前記第1の領域に関する情報を補正する、請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項3】
前記特徴量と、前記補正方法とが対応付けられたテーブルを記憶する記憶部を更に備え、
前記補正部は、前記特徴量と前記テーブルとに基づいて、前記第1の領域に関する情報を補正する、請求項2に記載の医用画像処理装置。
【請求項4】
前記特定部は、前記第1の領域に関する情報の算出に影響する領域を前記第2の領域として特定する、請求項1から3のいずれか1つに記載の医用画像処理装置。
【請求項5】
前記第2の領域は、石灰化領域である、請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項6】
前記取得部は、大動脈弁を含む画像データを前記医用画像データとして取得し、
前記補正部は、前記第2の領域の容積及び弁尖の前記第2の領域の重心からの距離に基づいて、前記補正方法を選択する、請求項2に記載の医用画像処理装置。
【請求項7】
前記第2の領域は、複数の種類の領域で構成される、請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項8】
前記医用画像データの使用目的と、前記特徴量と、前記第2の領域とが対応付けられたテーブルを記憶する記憶部を更に備え、
前記特定部は、前記使用目的に対応付けられた前記第2の領域を特定し、
前記算出部は、前記使用目的に対応付けられた前記特徴量を算出する、請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項9】
前記補正部は、前記特徴量に基づいて、前記第1の領域に関する計測値を補正する、請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項10】
前記取得部は、大動脈弁を含む画像データを前記医用画像データとして取得し、
前記算出部は、前記特徴量に基づいて、Nadir面の位置を補正し、補正された前記Nadir面の位置に基づいて、前記大動脈弁のeH(effective Height)を前記計測値として補正する、請求項9に記載の医用画像処理装置。
【請求項11】
前記補正部は、前記第1の領域を分割する基準線を、前記特徴量に基づいて補正する、請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項12】
医用画像データを取得し、
前記医用画像データに含まれる第1の領域と、前記第1の領域と関連する第2の領域とを特定し、
前記第2の領域に関する特徴量を算出し、
前記特徴量に基づいて、前記第1の領域に関する情報を補正する、医用画像処理方法。
【請求項13】
医用画像データを取得し、
前記医用画像データに含まれる第1の領域と、前記第1の領域と関連する第2の領域とを特定し、
前記第2の領域に関する特徴量を算出し、
前記特徴量に基づいて、前記第1の領域に関する情報を補正する手順を
コンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、医用画像処理装置、医用画像処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
治療計画を立案する際には、各患者における解剖構造を正しく把握することが重要である。この目的で、医用画像から、人体の各解剖構造を抽出したり、医用画像から解剖構造の特徴を算出したりする場合がある。例えば、大動脈弁の画像から、断面を抽出し、弁尖領域を抽出する場合がある。
【0003】
しかしながら、石灰化等の非特異的な構造を有する弁に対して、臨床的に有用な計測が難しい場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-206240号公報
【特許文献2】特開2019-55230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書及び図面の開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、医用画像が非特異的な構造を含む場合に、計測の精度を向上させることである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る医用画像処理装置は、取得部と、特定部と、算出部と、補正部とを備える。取得部は、医用画像データを取得する。特定部は、前記医用画像データに含まれる第1の領域と、前記第1の領域と関連する第2の領域とを特定する。算出部は、前記第2の領域に関する特徴量を算出する。補正部は、前記特徴量に基づいて、前記第1の領域に関する情報を補正する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、実施形態に係るX線CT装置の構成の一例を示した図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態に係る医用画像装置が行う処理について説明した図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態に係る医用画像装置が行う処理について説明した図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態に係る医用画像装置が行う処理の流れについて説明したフローチャートである。
【
図5】
図5は、第1の実施形態に係る医用画像装置が行う処理について説明した図である。
【
図6】
図6は、第1の実施形態に係る医用画像装置が行う処理について説明した図である。
【
図7】
図7は、第1の実施形態に係る医用画像装置が行う処理について説明した図である。
【
図8】
図8は、第1の実施形態に係る医用画像装置が行う処理について説明した図である。
【
図9】
図9は、第1の実施形態に係る医用画像装置が行う処理について説明した図である。
【
図10】
図10は、第1の実施形態の第1の変形例に係る医用画像装置が行う処理について説明した図である。
【
図11】
図11は、第1の実施形態の第1の変形例に係る医用画像装置が行う処理について説明した図である。
【
図12】
図12は、第1の実施形態の第2の変形例に係る医用画像装置が行う処理について説明した図である。
【
図13】
図13は、第2の実施形態に係る医用画像装置が行う処理の流れについて説明したフローチャートである。
【
図14】
図14は、第2の実施形態に係る医用画像装置が行う処理について説明した図である。
【
図15】
図15は、第2の実施形態の第1の変形例に係る医用画像装置が行う処理について説明した図である。
【
図16】
図16は、第2の実施形態の第1の変形例に係る医用画像装置が行う処理について説明した図である。
【
図17】
図17は、第2の実施形態の第1の変形例に係る医用画像装置が行う処理について説明した図である。
【
図18】
図18は、第2の実施形態の第1の変形例に係る医用画像装置が行う処理について説明した図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、医用画像処理装置、医用画像処理方法及びプログラムの実施形態について詳細に説明する。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、実施形態に係る医用画像処理装置としての画像処理装置140が、X線CT装置101の一部である場合における構成例を示している。なお、実施形態に係る医用画像処理装置としての画像処理装置140は、X線CT装置101の一部である場合に限られず、例えば超音波診断装置、磁気共鳴イメージング装置など、X線CT装置以外の医用画像診断装置の一部であってもよい。また、別の例として、画像処理装置140は、これらの医用画像診断装置とは独立に構成されていてもよい。
【0010】
図1に示すように、実施形態に係るX線CT装置101は、架台装置110と、寝台装置130と、画像処理装置140とを有する。なお、
図1は、説明のために架台装置110を複数方向から描画したものであり、X線CT装置101が架台装置110を1つ有する場合を示す。
【0011】
架台装置110は、X線管111と、X線検出器112と、回転フレーム113と、X線高電圧装置114と、制御装置115と、ウェッジ116と、コリメータ117と、DAS(Data Acquisition System)118とを有する。
【0012】
X線管111は、熱電子を発生する陰極(フィラメント)と、熱電子の衝突を受けてX線を発生する陽極(ターゲット)とを有する真空管である。X線管111は、X線高電圧装置114からの高電圧の印加により、陰極から陽極に向けて熱電子を照射することで、被検体Pに対し照射するX線を発生する。例えば、X線管111には、回転する陽極に熱電子を照射することでX線を発生させる回転陽極型のX線管がある。
【0013】
なお、X線管111及び制御装置115は、X線照射部の一例である。X線照射部は、既知の物質及び透過長からなるファントムに対して低フラックススキャンを実行する。具体的には、X線照射部は、初期電流強度及びX線管の各管電圧設定で、エアスキャン及び、複数の異なる物質からなるファントムに対するスキャンを実行することにより低フラックススキャンを実行する。
【0014】
回転フレーム113は、X線管111とX線検出器112とを対向支持し、制御装置115によってX線管111とX線検出器112とを回転させる円環状のフレームである。例えば、回転フレーム113は、アルミニウムを材料とした鋳物である。なお、回転フレーム113は、X線管111及びX線検出器112に加えて、X線高電圧装置114やウェッジ116、コリメータ117、DAS118等を更に支持することもできる。更に、回転フレーム113は、
図1において図示しない種々の構成を更に支持することもできる。
【0015】
ウェッジ116は、X線管111から照射されたX線量を調節するためのフィルタである。具体的には、ウェッジ116は、X線管111から被検体Pへ照射されるX線の分布が、予め定められた分布になるように、X線管111から照射されたX線を透過して減衰するフィルタである。例えば、ウェッジ116は、ウェッジフィルタ(wedge filter)やボウタイフィルタ(bow-tie filter)であり、所定のターゲット角度や所定の厚みとなるようにアルミニウム等を加工したフィルタである。
【0016】
コリメータ117は、ウェッジ116を透過したX線の照射範囲を絞り込むための鉛板等であり、複数の鉛板等の組み合わせによってスリットを形成する。なお、コリメータ117は、X線絞りと呼ばれる場合もある。また、
図1においては、X線管111とコリメータ117との間にウェッジ116が配置される場合を示すが、X線管111とウェッジ116との間にコリメータ117が配置される場合であってもよい。この場合、ウェッジ116は、X線管111から照射され、コリメータ117により照射範囲が制限されたX線を透過して減衰させる。
【0017】
X線高電圧装置114は、変圧器(トランス)及び整流器等の電気回路を有し、X線管111に印加する高電圧を発生する高電圧発生装置と、X線管111が発生するX線に応じた出力電圧の制御を行うX線制御装置とを有する。高電圧発生装置は、変圧器方式であってもよいし、インバータ方式であってもよい。なお、X線高電圧装置114は、回転フレーム113に設けられてもよいし、図示しない固定フレームに設けられても構わない。
【0018】
制御装置115は、CPU(Central Processing Unit)等を有する処理回路と、モータ及びアクチュエータ等の駆動機構とを有する。制御装置115は、入力インターフェース143からの入力信号を受けて、架台装置110及び寝台装置130の動作制御を行う。例えば、制御装置115は、回転フレーム113の回転や架台装置110のチルト、寝台装置130及び天板133の動作等について制御を行う。なお、制御装置115は架台装置110に設けられてもよいし、画像処理装置140に設けられてもよい。
【0019】
X線検出器112は、例えば光子計数型検出器またはエネルギー積分型の検出器である。X線検出器112が光子検出型検出器である場合、X線検出器112は、X線管111から照射されて被検体Pを透過したX線に由来する光子であるX線光子が入射するごとに、当該X線光子のエネルギー値を計測可能な信号を出力する。X線検出器112は、X線光子が入射するごとに、1パルスの電気信号(アナログ信号)を出力する複数のX線検出素子を有する。
【0020】
X線検出素子は、例えば、例えば、CdTe(テルル化カドミウム:cadmium telluride)やCdZnTe(テルル化カドミウム亜鉛:cadmium zinc telluride)などの半導体素子(半導体検出素子)にアノード電極及びカソード電極が配置されたものである。
【0021】
X線検出器112は、X線検出素子と、X線検出素子に接続されて、X線検出素子が検出したX線光子を計数する読み出し回路であるASIC(Application Specific Integrated Circuit)とを複数有する。ASICは、X線検出素子が出力した個々の電荷を弁別することで、検出素子に入射したX線光子の数を計数する。また、ASICは、個々の電荷の大きさに基づく演算処理を行なうことで、計数したX線光子のエネルギーを計測する。さらに、ASICは、X線光子の計数結果をデジタルデータとしてDAS118に出力する。
【0022】
DAS118は、X線検出器112から入力された計数処理の結果に基づいて検出データを生成する。検出データは、例えば、サイノグラムである。サイノグラムは、X線管111の各位置において各X線検出素子に入射した計数処理の結果を並べたデータである。サイノグラムは、ビュー方向及びチャネル方向を軸とする2次元直交座標系に、計数処理の結果を並べたデータである。DAS118は、例えば、X線検出器112におけるスライス方向の列単位で、サイノグラムを生成する。DAS118は、生成した検出データを画像処理装置140へ転送する。DAS118は、例えば、プロセッサにより実現される。
【0023】
DAS118が生成したデータは、回転フレーム113に設けられた発光ダイオード(Light Emitting Diode: LED)を有する送信機から、光通信によって、架台装置110の非回転部分(例えば、固定フレーム等。
図1での図示は省略している)に設けられた、フォトダイオードを有する受信機に送信され、画像処理装置140へと転送される。ここで、非回転部分とは、例えば、回転フレーム113を回転可能に支持する固定フレーム等である。なお、回転フレーム113から架台装置110の非回転部分へのデータの送信方法は、光通信に限らず、非接触型の如何なるデータ伝送方式を採用してもよいし、接触型のデータ伝送方式を採用しても構わない。
【0024】
寝台装置130は、撮影対象の被検体Pを載置、移動させる装置であり、基台131と、寝台駆動装置132と、天板133と、支持フレーム134とを有する。基台131は、支持フレーム134を鉛直方向に移動可能に支持する筐体である。寝台駆動装置132は、被検体Pが載置された天板133を、天板133の長軸方向に移動する駆動機構であり、モータ及びアクチュエータ等を含む。支持フレーム134の上面に設けられた天板133は、被検体Pが載置される板である。なお、寝台駆動装置132は、天板133に加え、支持フレーム134を天板133の長軸方向に移動してもよい。
【0025】
画像処理装置140は、メモリ141と、ディスプレイ142と、入力インターフェース143と、処理回路144とを有する。なお、画像処理装置140は架台装置110とは別体として説明するが、架台装置110に画像処理装置140又は画像処理装置140の各構成要素の一部が含まれてもよい。
【0026】
メモリ141は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等により実現される。メモリ141は、例えば、投影データやCT画像データを記憶する。また、例えば、メモリ141は、X線CT装置101に含まれる回路が各種の機能を実現するためのプログラムを記憶する。メモリ141は、X線CT装置101とネットワークを介して接続されたサーバ群(クラウド)により実現されることとしてもよい。
【0027】
ディスプレイ142は、各種の情報を表示する。例えば、ディスプレイ142は、処理回路144によって生成された各種の画像を表示したり、操作者から各種の操作を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)を表示したりする。例えば、ディスプレイ142は、液晶ディスプレイやCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイである。ディスプレイ142は、デスクトップ型でもよいし、画像処理装置140本体と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。また、ディスプレイ142は、表示部の一例である。
【0028】
入力インターフェース143は、操作者から各種の入力操作を受け付けて、受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路144に出力する。また、例えば、入力インターフェース143は、スキャン条件や、CT画像データを再構成する際の再構成条件、CT画像データから後処理画像を生成する際の画像処理条件等の入力操作を操作者から受け付ける。
【0029】
例えば、入力インターフェース143は、マウスやキーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力回路、音声入力回路等により実現される。なお、入力インターフェース143は、架台装置110に設けられてもよい。また、入力インターフェース143は、画像処理装置140本体と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。また、入力インターフェース143は、マウスやキーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、画像処理装置140とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を処理回路144へ出力する電気信号の処理回路も入力インターフェース143の例に含まれる。
【0030】
処理回路144は、X線CT装置101全体の動作を制御する。例えば、処理回路144は、制御機能144a、前処理機能144b、取得機能144c、特定機能144d、算出機能144e、補正機能144fを実行する。ここで、例えば、
図1に示す処理回路144の構成要素である制御機能144a、前処理機能144b、取得機能144c、特定機能144d、算出機能144e、補正機能144fが実行する各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態でメモリ141内に記録されている。処理回路144は、例えば、プロセッサであり、メモリ141から各プログラムを読み出し、実行することで読み出した各プログラムに対応する機能を実現する。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路144は、
図1の処理回路144内に示された各機能を有することとなる。処理回路144は、再構成装置の一例である。
【0031】
制御機能144a、前処理機能144b、取得機能144c、特定機能144d、算出機能144e、補正機能144fは、それぞれ、制御部、前処理部、取得部、特定部、算出部、補正部の一例である。また、制御部は、表示制御手段の一例である。また、メモリ141は、記憶部の一例である。
【0032】
なお、
図1においては、制御機能144a、前処理機能144b、取得機能144c、特定機能144d、算出機能144e、補正機能144fの各処理機能が単一の処理回路144によって実現される場合を示したが、実施形態はこれに限られるものではない。例えば、処理回路144は、複数の独立したプロセッサを組み合わせて構成され、各プロセッサが各プログラムを実行することにより各処理機能を実現するものとしても構わない。また、処理回路144が有する各処理機能は、単一又は複数の処理回路に適宜に分散又は統合されて実現されてもよい。
【0033】
制御機能144aは、入力インターフェース143を介して操作者から受け付けた入力操作に基づいて、各種処理を制御する。具体的には、制御機能144aは、架台装置110で行なわれるCTスキャンを制御する。例えば、制御機能144aは、X線高電圧装置114、X線検出器112、制御装置115、DAS118及び寝台駆動装置132の動作を制御することで、架台装置110における計数結果の収集処理を制御する。一例を挙げると、制御機能144aは、位置決め画像(スキャノ画像)を収集する位置決めスキャン及び診断に用いる画像を収集する撮影(本スキャン)における投影データの収集処理をそれぞれ制御する。
【0034】
また、制御機能144aは、表示制御手段として、メモリ141が記憶する各種画像データに基づく画像などをディスプレイ142に表示させる。
【0035】
前処理機能144bは、DAS118から出力された検出データに対して対数変換処理やオフセット補正処理、チャネル間の感度補正処理、ビームハードニング補正、散乱線補正、ダークカウント補正等の前処理を施すことにより投影データを生成する。
【0036】
処理回路144は、取得機能144cにより、X線検出器112から種々のデータを取得する。また、特定機能144d、算出機能144e、補正機能144fの各機能の詳細については後述する。
【0037】
続いて、実施形態に係る背景について詳細に説明する。
【0038】
治療計画を立案する際には、各患者における解剖構造を正しく把握するのが重要である。この目的で、医用画像から、人体の各解剖構造を抽出したり、医用画像から解剖構造の特徴を算出したりする場合がある。
【0039】
例えば、3次元CT画像として画像化された大動脈弁から、特定の位置における断面像を切り出し、弁尖領域を抽出する場合がある。
図2及び
図3を用いて、このような場合について説明する。
図2は、大動脈弁10の模式図を示し、石灰化領域1a、1b、1cは、大動脈弁10において、石灰化が生じている領域を示す。
図3は、
図2で示される大動脈弁10の構造を3次元CT画像として画像化した場合の、線13に示されている位置での断面像のうちの一部を表す。ここで、
図3において、弁尖領域3は、真の弁尖領域を示し、弁尖領域2は、既存手法で自動抽出された弁尖領域を表す。
【0040】
このように、医用画像が、石灰化領域1a、1b、1c等を含む場合、医用画像から既存の方法で単純に抽出された弁尖領域2は、真の弁尖領域である弁尖領域3とは異なる場合がある。従って、既存の方法で単純に抽出された弁尖領域2を、石灰化等の非特異的な構造に基づいて補正することが望ましい。
【0041】
実施形態にかかる医用画像処理装置は、かかる背景に基づくものであって、実施形態に係る医用画像処理装置は、取得部と、特定部と、算出部と、補正部とを備える。取得部は、医用画像データを取得する。特定部は、当該医用画像データに含まれる第1の領域と、第1の領域と関連する第2の領域とを特定する。算出部は、第2の領域に関する特徴量を算出する。補正部は、特徴量に基づいて、第1の領域に関する情報を補正する。
【0042】
これにより、第1の領域が非特異的な構造を有する場合であっても、第1の領域を、より精度よく抽出することが可能となる。
【0043】
また、実施形態に係る医用画像処理方法は、医用画像データを取得し、医用画像データに含まれる第1の領域と、第1の領域と関連する第2の領域とを特定し、第2の領域に関する特徴量を算出し、当該特徴量に基づいて、第1の領域に関する情報を補正する。
【0044】
また、実施形態に係るプログラムは、医用画像データを取得し、当該医用画像データに含まれる第1の領域と、第1の領域と関連する第2の領域とを特定し、第2の領域に関する特徴量を算出し、特徴量に基づいて、第1の領域に関する情報を補正する手順をコンピュータに実行させる。
【0045】
かかる処理の詳細について、
図5~
図9を適宜参照しながら、
図4を用いて説明する。
【0046】
図4は、第1の実施形態における医用画像処理装置が行う処理の流れを説明したフローチャートである。
【0047】
初めに、ステップS100において、処理回路144は、取得機能144cにより、医用画像データを取得する。一例として、処理回路144は、取得機能144cにより、被検体のX線CT画像を、X線CT装置101から又は院内の画像データベース等から取得する。例えば、処理回路144は、取得機能144cにより、大動脈弁を含む画像データを医用画像データとして取得する。
【0048】
なお、ステップS100において、処理回路144が取得機能144cにより取得する医用画像の種類は、X線CT画像に限られず、例えば、超音波画像、MRI画像、X線画像、PET画像、SPECT画像のような他の医用画像診断装置により撮影された画像であってもよい。また、処理回路144が取得機能144cにより取得する医用画像は、典型的には、対象とする生体組織の3次元の解剖構造の形態情報が格納されている種類の画像が考えられるが、実施形態はこれに限られず、これらの画像を時間方向に複数撮像することによる4次元画像であってもよい。
【0049】
また、ステップS100の処理の開始について、典型的には、ユーザの指示によりステップS100の処理が開始される。しかしながら、実施形態はこれらの例に限られない。一例として、PACS等の医用画像の保管装置への画像の保管状況を処理回路144が監視し、新しい画像が保管された際に、処理回路144がステップS100の処理を開始してもよい。
【0050】
この際、処理回路144は、当該新しい画像が予め定める条件を満足するか否かを判定し、満足する場合にステップS100の処理を開始してもよい。当該条件としては、例えば画像の状態を判定できる条件が挙げられる。一例として、撮像プロトコルを条件として心臓を対象とする撮像プロトコルで撮像された画像の場合に、処理回路144はステップS100の処理を開始してもよい。また、別の例として、再構成方法を条件として、処理回路144は、拡大再構成された画像が新しく保管された場合に、ステップS100の処理を開始してもよい。また、別の例として、上述の条件を組み合わせた条件をもとに、処理回路144は、ステップS100の処理を開始してもよい。
【0051】
続いて、ステップS200において、処理回路144は、特定機能144dにより、ステップS100で取得した医用画像データに含まれる第1の領域を特定する。一例として、第1の領域は、大動脈弁の領域である。すなわち、処理回路144は、特定機能144dにより、ステップS100で取得したX線CT画像に含まれる大動脈弁の領域を特定する。換言すると、処理回路144は、特定機能144dにより、ステップS100で取得したX線CT画像上における大動脈弁の領域の各画素の座標情報を取得する。
【0052】
第1の領域を特定する具体的な処理として、処理回路144は、特定機能144dにより、ユーザインターフェースを用いて手動で第1の領域の位置の入力を受け付けることにより、特定してもよい。また、別の例として、処理回路144は、特定機能144dにより、既知の領域抽出技術によりCT画像に描出される解剖学的構造に基づいて第1の領域を特定してもよい。既知の領域抽出技術としては、例えば、CT値に基づく大津の二値化法、領域拡張法、スネーク法、グラフカット法、ミーンシフト法などが挙げられる。
【0053】
なお、処理回路144は、特定機能144dにより様々な方法で、ステップS100で取得された医用構造から第1の領域を特定してもよい。一例として、処理回路144は、特定機能144dにより、深層学習等の機械学習技術を用いて事前に準備された学習用データに基づいて構築される第1の領域の形状モデルを用いて第1の領域を特定してもよい。
【0054】
なお、画像全体に対してグラフカット法等の処理を実施すると計算コストが過剰に高くなる可能性があるため、処理回路144は、特定機能144dにより、第1の領域に関連し、且つ、第1の領域よりも大きいがステップS100で取得された画像全体よりは小さい領域である関連領域を特定し、特定した関連領域にのみ上述の機械学習を用いた処理を行って第1の領域を特定してもよい。ここで、例えば第1の領域が大動脈弁である場合には、関連領域は心臓領域や左心室及び左心室の周囲の領域等である。処理回路144は、特定機能144dにより、関連領域を、ユーザインターフェースを用いて手動設定により特定してもよい。
【0055】
続いて、ステップS300において、処理回路144は、特定機能144dにより、ステップS200で特定した第1の領域と関連する第2の領域を、特定する。第2の領域は、第1の領域に関する情報の算出に影響する領域である。一例として、第1の領域が、大動脈弁の領域である場合、第1の領域に関する情報の算出に影響する領域である第2の領域は、例えば
図3の石灰化領域1a、1b、1c等である。第2の領域である石灰化領域1a、1b、1cの存在により、医用画像から単純に抽出された弁尖領域2は、真の弁尖領域3とは異なったものとなっている。このことから、石灰化領域は、第1の領域である大動脈弁の領域に関する情報である弁尖領域の情報に算出に影響する領域である第2の領域の一例であると考えられる。
【0056】
なお、第1の領域が大動脈弁の領域である場合の第2の領域の別の例としては、弁尖の逸脱している領域や、弁尖に穴が開いている領域などが挙げられる。
【0057】
第2の領域が石灰化領域の場合、ステップS300において、処理回路144は、特定機能144dにより、ステップS100で取得されたCT画像上の大動脈弁周囲の領域における石灰化領域が示す各画素の座標情報を取得する。
【0058】
なお、処理回路144は、特定機能144dにより、所定のGUIを用いてユーザからの入力を受け付けることにより手動で第2の領域を特定してもよい。また、別の例として、処理回路144は、特定機能144dにより、既知の領域抽出技術を用いて第2の領域を特定してもよい。また、別の例として、処理回路144は、特定機能144dにより、機械学習技術を用いて第2の領域を特定してもよい。また、別の例として、処理回路144は、特定機能144dにより、既知の検出技術を用いてから、検出された位置に対して領域抽出技術を適用し第2の領域を抽出してもよい。ここで、処理回路144は、特定機能144dにより、第2の領域を抽出するための領域抽出技術を適用する範囲をステップS200で特定した第1の領域に基づいて決定してもよい。第2の領域は複数の領域であってもよい。
【0059】
続いて、ステップS400において、処理回路144は、算出機能144eにより、第2の領域に関する特徴量を算出する。ここで、第2の領域に関する特徴量としては、例えば、サイズに関する特徴(最大径、容積、等)を表す量、形状に関する特徴(球形度、線形度、等)を表す量、性状に関する特徴(テクスチャ特徴、平均画素値、等)表す量、第1の領域との位置関係に関する特徴(距離、角度、等)を表す量などがある。
【0060】
これらの特徴量算出には、既知のどのような手法を用いてもよい。典型的には、処理回路144は、ステップS400において算出する特徴量の種類は予め設定しておく。一例として、処理回路144は、算出機能144eにより、「石灰化領域の容積」と「石灰化領域の重心と大動脈弁の弁尖との距離」を、算出する特徴量の種類として設定する。
【0061】
なお、ステップS300において、複数の第2の領域を抽出した場合は、処理回路144は、算出機能144eにより、複数の第2の領域のそれぞれに対して特徴量を算出する。
【0062】
続いて、ステップS500Aにおいて、処理回路144は、補正機能144fにより、ステップS400で算出された第2の領域の特徴量に基づいて、後述のステップS600Aで行う補正方法を決定する。
【0063】
具体的には、記憶部としてのメモリ141は、ステップS300において算出された特徴量と、補正方法とが対応付けられたテーブルを記憶する。処理回路144は、補正機能144fにより、当該特徴量に基づいた補正方法で、第1の領域に関する情報を補正する。すなわち、処理回路144は、補正機能144fにより、当該特徴量とテーブルとに基づいて、第1の領域に関する情報を補正する。
【0064】
かかる例が、
図5に示されている。
図5は、ステップS300において算出された特徴量である、「第2の領域である石灰化領域の容積」及び「第2の領域である石灰化領域の重心と大動脈弁の弁尖との距離」と、補正方法とが対応付けられたテーブルを示している。処理回路144は、補正機能144fにより、第2の領域の容積及び弁尖の第2の領域の重心からの距離に基づいて、後述のステップS600Aにおける補正方法を選択する。
【0065】
例えば、石灰化領域の容積がn2mm3以上であり、弁尖の石灰化領域の重心からの距離がX3mm以上である場合、処理回路144は、補正機能144fにより、「手動補正」を、ステップS600Aにおける補正方法として選択する。また、石灰化領域の容積がn2mm3以上であり、弁尖の石灰化領域の重心からの距離がX2mm以上X3mm未満の場合、または石灰化領域の容積がn1mm3以上n2mm3未満であり、弁尖の石灰化領域の重心からの距離がX3mm以上の場合、処理回路144は、補正機能144fにより、「石灰化領域を削除したのち穴埋めを行う自動補正」を、ステップS600Aにおける補正方法として選択する。また、その他の場合、処理回路144は、補正機能144fにより、補正を行わない旨決定する。
【0066】
なお、補正方法には、上述の方法以外にも、例えば他弁尖領域との比較を行う方法が挙げられる。この場合、大動脈弁は右冠尖、左冠尖、無冠尖の3つの弁尖があるが、処理回路144は、補正機能144fにより、第1の領域である弁尖以外の弁尖における第2の領域に対応する位置の弁尖の構造に基づいて、第1の領域を補正する。第1の領域が肺である場合には、処理回路144は、補正機能144fにより、対側領域など類似する構造を有する比較可能な領域の構造情報に基づいて、第2の領域を補正する。
【0067】
また、上述の補正方法は代表的な例を列挙したものにすぎず、実施形態では、これ以外の補正方法も考えられる。一例として、処理回路144は、補正機能144fにより、石灰化領域の大きさに基づいて画像を切り出し、切り出した領域に対してのみステップS200で示したような領域抽出技術を再度適用するようにしてもよい。この場合において、処理回路144は、補正機能144fにより、領域抽出技術を適用する際の各種パラメータ(例えば、大津の二値化法による閾値、DilationやErosionなどのモルフォロジー処理のカーネルサイズ、グラフカット法におけるエネルギー関数、機械学習法におけるハイパーパラメータ等)をステップS300において算出された特徴量に基づいて決定するようにしてもよい。
【0068】
続いて、ステップS600Aにおいて、処理回路144は、補正機能144fにより、ステップS500Aにおいて決定された補正方法に基づいて、第1の領域に関する情報について補正を行う。
【0069】
はじめに、
図6~
図8を用いて、ステップS500Aにおいて、「手動補正」が選択された場合の補正処理について説明する。
【0070】
はじめに、
図6に示されるように、処理回路144は、補正機能144fにより、第2の領域である石灰化領域1aの特徴量に基づいて、手動補正範囲21を算出する。一例として、処理回路144は、補正機能144fにより、第2の領域である石灰化領域1aの中心座標とサイズに基づいて、手動補正範囲21の大きさを算出する。手動補正範囲21の形状としては、例えば矩形が選択される。
【0071】
続いて、処理回路144は、図示しない受付機能により、手動補正範囲21内にある所定の弁尖領域2の一部である領域20の修正を、ユーザから受けつけ、手動で修正可能とする。かかるGUIとしては、一例として、ユーザが入力インターフェース143を用いて真の弁尖領域3に対応する画素を指定することにより、当該指定された画素を第1の領域として指定するGUIなどが挙げられる。
【0072】
処理回路144が図示しない受付機能により、ユーザから弁尖領域2の位置の修正を受け付けると、処理回路144は、補正機能144fにより、弁尖領域2の位置の修正を行う。
図7の弁尖領域22は、このようにしてユーザからの修正が反映された弁尖領域2を示している。
【0073】
図8に、ユーザからの入力を受け付けるユーザインターフェースの一例が示されている。
図8で手動補正範囲21内の白丸で示された点21a、21b、21c、21d等は、ユーザが操作可能な移動点を示している。これらのユーザが操作可能な移動点は、例えば、手動補正範囲21の中における弁尖領域2において、等間隔に配置される。ユーザがこれらの点21a、21b、21c、21dなどの移動点を移動させることで、処理回路144は、図示しない受付機能により、弁尖領域2の位置の修正を受け付ける。処理回路144は、補正機能144fにより、受け付けた入力結果を反映させて弁尖領域2の位置の修正を行い、補正後の弁尖領域22を生成する。
【0074】
なお、処理回路144は、ユーザからの弁尖領域2の位置の修正を、手動補正範囲21内でのみ受け付けるものとしてもよい。これにより、位置の修正をユーザが無制限に行える場合と比較してユーザの負荷を軽減することができ、ユーザの操作を補佐することができる。
【0075】
続いて、
図9を用いて、ステップS500Aにおいて、「石灰化領域を削除したのち穴埋めを行う自動補正」が選択された場合の補正処理について説明する。
【0076】
この場合、処理回路144は、補正機能144fにより、第2の領域である石灰化領域1bの特徴に基づいて、補正範囲31を算出する。一例として、処理回路144は、補正機能144fにより、第2の領域である石灰化領域1bの大きさに基づいて、補正範囲31を算出する。補正範囲31の形状は、例えば円形で与えられる。続いて、処理回路144は、補正機能144fにより、補正範囲31内における弁尖領域2を消去する。続いて、処理回路144は、補正機能144fにより、弁尖領域2に対してClosing処理を行って補正後の弁尖を生成する。なお、処理回路144は、弁尖領域2の全体に対してClosing処理を行うのではなく、補正範囲31の周囲のみに対してClosing処理を実行してもよい。これにより、処理回路144は、補正機能144fにより、石灰化がないと仮定した場合における弁尖領域2の領域を抽出することができる。
【0077】
なお、上述の
図6~9では、説明の簡略化のために、抽出される第2の領域や補正範囲などを2次元的な領域として説明したが、実施形態はこれに限られず、処理回路144が補正機能144fにより補正を行う補正範囲や、抽出される第2の領域は、3次元的な領域であってもよく、またこれらの補正処理などは、3次元的に行われる処理であってもよい。
【0078】
以上のように、第1の実施形態では、処理回路144は、第2の領域の特徴量を算出し、これに応じて、第1の領域に係る情報の補正を行う補正方法を選択した。これにより、特徴量に応じて補正方法を柔軟に選択することができ、計測の精度を向上させることができる。また、第1の実施形態による方法により、医用画像が非特異的な構造を含む場合であっても、計測の精度を向上させることができる。
【0079】
(第1の実施形態の第1の変形例)
上述の例では、第2の領域の種類が、石灰化領域という一つの種類の領域のみからなる場合を説明した。しかしながら、第2の領域は複数の種類の領域で構成されていてもよい。一例として、
図10に示されているように、第2の領域が、石灰化領域1bだけでなく、弁尖に穴の開いている領域である、領域1d及び領域1eとからなる場合を考える。この場合、ステップS600Aにおいて、処理回路144は、補正機能144fにより、領域1d、1eについて、補正処理を行う。具体的には、
図11に示されているように、処理回路144は、補正機能144fにより、領域1d、1eのそれぞれについて、補正範囲40、41を設定し、当該補正範囲内の弁尖領域2を削除し、補正後の弁尖42、43及び44を生成する。一方で、石灰化領域1bについては、処理回路144は、補正機能144fにより、
図9で説明した方法により補正後の弁尖を生成する。
【0080】
なお、上にあげた例では、領域1d、1eについて、ステップS400において特徴量は算出せず、特徴量に関わらず、対応する弁尖領域2の領域を削除する補正を行っているが、ステップS400において算出する特徴量を予め設定し、それらを算出し、ステップS500Aにおいて当該特徴量の大きさに基づいて補正方法を変更してもよい。
【0081】
(第1の実施形態の第2の変形例)
第1の実施形態では、ステップS300において抽出される第2の領域の種類や、ステップS400で算出される特徴量の種類は、予め定められている場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限られず、実施形態で抽出される第2の領域や算出される特徴量の種類を、第1の領域に基づいて算出する計測項目の種類に応じて自動で設定してもよい。
【0082】
このような実施形態の背景について簡単に説明すると、第1の領域の抽出は、抽出自体は目的ではなく、抽出した構造に基づいて第1の領域の形態的な特徴を算出するために利用される場合も多い。例えば、処理回路144がステップS600Aで抽出した弁尖領域に基づいて弁尖の面積や周長などを算出し、算出された情報が医師に提供されることで、それら算出された情報は、治療計画の際の情報として活用されることができる。
【0083】
ここで、一般に、医用ソフトウェア等では、第1の領域に応じて算出すべき計測項目が予め定義され、当該計測項目における計測値が算出される。従って、計測すべき計測項目に応じてステップS400において算出する特徴量の種類が自動で設定されてもよい。すなわち、計測項目の種類と第2の領域の種類又は特徴量の種類との関係性が予め定義され、ユーザが指定した計測項目の種類に応じて抽出される第2の領域又は算出される特徴量が自動で設定されるようにしてもよい。
【0084】
別の例として、ユーザにソフトウェアを利用する目的を指定させ、その目的に基づいて抽出される第2の領域又は算出される特徴量が自動で設定されるようにしてもよい。すなわち、記憶部としてのメモリ141は、
図12に示されているように、医用画像データの使用目的と、当該目的に対応する計測項目と、第2の領域と、第2の領域に関する特徴量とが対応付けられたテーブルを記憶してもよい。ステップS300において、処理回路144は、特定機能144dにより、記憶部としてのメモリ141から当該テーブルを取得し、当該医用画像データの使用目的に対応付けられた第2の領域を特定する。また、ステップS400において、処理回路144は、算出機能144eにより、記憶部としてのメモリ141から当該テーブルを取得し、当該医用画像データの使用目的に対応付けられた特徴量を算出する。
【0085】
(第1の実施形態の第3の変形例)
なお、
図5や
図12に示すような対応関係は、ソフトウェア利用時にユーザが設定できるようにしてもよい。実施形態に係る医用画像処理装置は、ユーザにより、計測項目、第2の領域、算出する第2の領域の特徴量、補正方法の設定等が可能なGUIを備えてもよい。一例として、実施形態に係る医用画像処理装置は、記憶部としてのメモリ141に、計測項目、第2の領域、算出する第2の領域の特徴量、補正方法などの設定の候補値を記憶し、処理回路144の制御機能144aにより、ディスプレイ142を通じて例えばドロップダウンリストの形で当該候補値をユーザに提示し、ユーザからの入力を受け付けてもよい。
【0086】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、第2の領域に基づいて、第1の領域の補正を行う場合を、石灰化領域に基づいて大動脈弁の弁尖を補正する場合を例に取り説明した。しかしながら、実施形態はこれに限られない。第2の実施形態では、第2の領域に基づいて、第1の領域を補正するのではなく、第1の領域に関する計測値を補正する場合について説明する。
【0087】
第2の実施形態の背景について説明すると、多くの臨床アプリケーションでは、第1の領域の抽出はそれ自身が目的ではなく、実際には、抽出された第1の領域をもとに形態的特徴、動態的特徴、性状、血行動態や気流などの周囲の流体的特徴等の第1の領域の特徴の算出が行われる。従って、第2の実施形態においては、実施形態に係る医用画像処理装置も、第2の領域に基づいて、第1の領域に係る計測値の補正を行う。
【0088】
図13は、第2の実施形態に係る医用画像処理装置としての画像処理装置140が行う処理の流れを示したフローチャートである。ステップS100,S200、S300及びステップS400についてはすでに第1の実施形態において説明した処理と同様の処理であり、また、ステップS500Bについても、ステップS500Aと同様の処理を行うので、繰り返しての説明は省略する。
【0089】
ステップS250において、処理回路144は、算出機能144eにより、計測値を算出する。一例として、処理回路144は、算出機能144eにより、大動脈弁のeH(effective Height)の計測を行う。この場合、ステップS100において、処理回路144は、取得機能144cにより、大動脈弁を含む医用画像データを医用画像データとして取得する。ステップS250において、処理回路144は、算出機能144eにより、第2の領域である石灰化領域を考慮せずに、補正前の計測値である大動脈弁のeHを算出する。
【0090】
図14に、かかる状況が示されている。
図14の左図及び右図は、大動脈弁の構造を表し、石灰化領域1fは、第2の領域である石灰化領域を示している。
図14の左図は、ステップS250における補正前の計測値であるeHの算出を示し、
図14の右図は、ステップ600Bにおける補正後の計測値であるeHの算出について示している。
【0091】
ステップS250において、処理回路144は、算出機能144eにより、第2の領域である石灰化領域1fの有無については考慮せず、補正前のNadir面50を算出し、補正前のNadir面50と各弁尖におけるArantius bodyの点との距離を算出することにより、補正前のeHの値を計測値として算出する。
【0092】
続いて、処理回路144は、ステップS300からステップS500Bの処理を行う。これらの処理は、第1の実施形態ですでに説明した処理と同様の処理であるので、重ねての説明については省略する。これらのステップにより、石灰化領域1fの影響を考慮して、大動脈における弁尖領域を補正することが可能となる。
【0093】
続いて、ステップS600Bにおいて、
図14の右図で示されるように、処理回路144は、補正機能144fにより、第2の領域である石灰化領域1fの影響を考慮して、補正後のNadir面51を算出する。すなわち、処理回路144は、補正機能144fにより、ステップS400で算出された第2の領域に関する特徴量に基づいて、Nadir面の位置を補正する。具体的には、処理回路144は、補正機能144fにより、Nadir面51を算出するときに、石灰化領域1fの影響を考慮することが必要か否かの判定を行う。処理回路144が、補正機能144fにより、Nadir面51を算出するにあたって、石灰化領域1fの影響を考慮することが必要と判定した場合、処理回路144は、補正機能144fにより、ステップS500Bで決定された補正方法により、第1の実施形態における
図4のステップS600Aで説明した補正を行い、弁尖領域の補正を行う。続いて、処理回路144は、補正機能144fにより、補正された弁尖領域に基づいて、補正後のNadir面51を算出し、算出されたNadir面51に基づいて、補正後の大動脈弁のeHを、計測値として補正する。このように、処理回路144は、補正機能144fにより、ステップS400で算出された第2の領域に関する特徴量に基づいて、第1の領域に関する計測量を補正する。処理回路144は、制御機能144aにより、ディスプレイ142を通じて、補正後の計測値をユーザに表示する。
【0094】
以上のように、第2の実施形態では、処理回路144が、補正機能144fにより、第2の領域に関する特徴量に基づいて、第1の領域に関する計測量を補正する。このことにより、第1の領域に例えば石灰化領域等、非特異的な構造がある場合であっても、臨床的に有用な計測値を精度よく算出することができる。
【0095】
(第2の実施形態の第1の変形例)
第2の実施形態では、補正する対象の計測値が一つである場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限られない。第2の実施形態の第1の変形例においては、補正する対象の計測値が複数である場合の例について説明する。一例として、前述のステップS600Bにおいて、処理回路144が、第1の領域を分割する基準線を、第2の領域に関する特徴量に基づいて補正する場合について説明する。
【0096】
図15及び
図16は、上行大動脈におけるNadir面から腕頭動脈の入り口までの領域を示しており、
図15は、石灰化領域1g、1h、1i等を考慮しない補正前の基準線4a、4b、4c、4d、4e、4fの配置を、
図16は、石灰化領域1g、1h、1i等を考慮した補正後の基準線4a、4b、5c、5d、5e、4f等の配置を示している。ここで、基準線とは、例えば上行大動脈の周長や径等の特徴量を算出するための基準となる線であり、処理回路144は、これらの基準線を用いて、上行大動脈の周長や径等の計測値を算出する。
【0097】
ここで、石灰化領域等を考慮しない場合、
図15に示されるように、処理回路144は、算出機能144eにより、芯線60に垂直に、一定間隔で基準線4a~4fを設定する。しかしながら、石灰化領域を避けて基準線を設定したほうが、上行大動脈の周長や径等等の計測値の算出という観点からは有利である場合がある。
【0098】
従って、第2の実施形態の第1の変形例においては、ステップS600Bにおいて、
図15における基準線4c、4d、4eの代わりに、
図16に示されるように、処理回路144は、石灰化領域1g、1h、1iを避けて基準線5c、5d、5eを設定し、これらの補正後の基準線を用いて補正後の計測値を算出する。このようにして、処理回路144は、補正機能144fにより補正後の計測値を算出する。
【0099】
図17及び
図18は、基準線を補正する別の例について示している。
図17及び
図18も、上行大動脈におけるNadir面から腕頭動脈の入り口までの領域を示しており、
図17は、血管壁が細くなっている点70、71、72等を考慮しない補正前の基準線6a、6b、6c、6d、6e、6fの配置を、
図18は、血管壁が細くなっているこれらの点を考慮した補正後の基準線6a、6b、7c、6d、7e、6f等の配置を示している。ここで、これら血管壁が細くなっている点を通るように基準線を設定したほうが、計測値の算出という観点からは有利である場合がある。
【0100】
従って、この例においては、ステップS600Bにおいて、
図17における基準線6c、6eの代わりに、
図18に示されるように、処理回路144は、これら血管壁が細くなっている点を通るように基準線7c,7eを設定し、これらの補正後の基準線を用いて補正後の計測値を算出する。このようにして、処理回路144は、補正機能144fにより補正後の計測値を算出する。
【0101】
以上のように、第2の実施形態の第1の変形例においては、処理回路144が、第1の領域を分割する基準線を、第2の領域に関する特徴量に基づいて補正する。これにより、算出する計測値の精度を向上することができる。
【0102】
(第2の実施形態の第2の変形例)
第2の実施形態について、これまでの例では、補正後の計測値のみをユーザに提示する例について説明した。しかしながら、実施形態はこれらに限られない。処理回路144は、制御機能144aにより、補正前の計測値と補正後の計測値との両方の計測値をディスプレイ142を通じてユーザに表示してもよい。また、別の例として、処理回路144は、制御機能144aにより、補正前の計測値と補正後の計測値とのうちいずれか又は両方の計測値をディスプレイ142を通じてユーザに表示してもよい。また、別の例として、処理回路144は、ユーザに、実施形態に係るアプリケーションを使用する目的を入力させ、当該目的に合わせて、処理回路144が、アプリケーションが補正前または補正後のうちどちらか又は両方の計測値をディスプレイ142を通じてユーザに表示するかを設定してもよい。
【0103】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、医用画像が非特異的な構造を含む場合に、計測の精度を向上させることができる。
【0104】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0105】
141 メモリ
144 処理回路
144a 制御機能
144b 前処理機能
144c 取得機能
144d 特定機能
144e 算出機能
144f 補正機能