(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011832
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】ベルト装置、転写装置、画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 21/16 20060101AFI20240118BHJP
G03G 15/16 20060101ALI20240118BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
G03G21/16 147
G03G15/16
G03G15/00 550
G03G21/16 180
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022114101
(22)【出願日】2022-07-15
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100207181
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 朋
(72)【発明者】
【氏名】高木 広彰
【テーマコード(参考)】
2H171
2H200
【Fターム(参考)】
2H171FA02
2H171FA10
2H171FA15
2H171FA30
2H171GA09
2H171JA03
2H171JA23
2H171JA29
2H171JA52
2H171JA59
2H171KA10
2H171KA12
2H171KA23
2H171KA25
2H171KA26
2H171LA01
2H171LA20
2H171QA04
2H171QA08
2H171QA24
2H171QA25
2H171QA29
2H171QB14
2H171QB32
2H171QB52
2H171QC03
2H171QC22
2H171TB13
2H171UA03
2H171UA07
2H171XA03
2H200FA09
2H200GA12
2H200GA23
2H200GA33
2H200GA47
2H200JA02
2H200JB06
2H200JB45
2H200JB46
2H200JC03
2H200JC07
2H200JC15
2H200JC16
2H200LA06
2H200LA17
2H200LA24
2H200MA04
2H200MA14
2H200MB06
(57)【要約】
【課題】押さえ部材に駆動力を伝達する伝達部にかかる力を低減することを課題とする。
【解決手段】周回走行する中間転写ベルト2と、中間転写ベルト2を押さえる押さえ部材101と、押さえ部材101に駆動力を伝達する伝達部と、を備えた転写装置20であって、押さえ部材101は、中間転写ベルト2を押さえる押さえ姿勢と中間転写ベルト2から退避した退避姿勢とを往復可能に設けられ、伝達部が押さえ部材101に駆動力を伝達することにより、押さえ部材101が退避姿勢に変更され、押さえ部材101は、自重により押さえ姿勢の側へ姿勢を変更することを特徴とする。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周回走行するベルト部材と、
前記ベルト部材を押さえる押さえ部材と、
前記押さえ部材に駆動力を伝達する伝達部と、を備えたベルト装置であって、
前記押さえ部材は、前記ベルト部材を押さえる押さえ姿勢と前記ベルト部材から退避した退避姿勢とを往復可能に設けられ、
前記伝達部が前記押さえ部材に駆動力を伝達することにより、前記押さえ部材が前記退避姿勢に変更され、
前記押さえ部材は、自重により前記押さえ姿勢の側へ姿勢を変更することを特徴とするベルト装置。
【請求項2】
自身の回転により前記伝達部に駆動力を伝達する第1の軸と、
前記第1の軸に設けられ、前記押さえ姿勢において前記第1の軸に力を加えて前記第1の軸の位相を固定する固定部材と、を備えた請求項1記載のベルト装置。
【請求項3】
前記伝達部は、
前記第1の軸を回転軸とする第1リンク部材と、
自身の回転により、前記押さえ部材に駆動力を伝達する第1カムと、
前記第1リンク部材と前記第1カムとの間で駆動力を伝達する、一または複数の他のリンク部材と、
前記退避姿勢における前記第1リンク部材の回転位相の方向へ前記第1リンク部材を付勢する付勢部材と、を有する請求項2記載のベルト装置。
【請求項4】
前記第1の軸に固定される操作部材を備えた請求項2記載のベルト装置であって、
前記操作部材の操作により前記第1の軸を回転させることができるベルト装置。
【請求項5】
前記ベルト部材は、少なくとも弾性層を有し、互いに材質が異なる複数の層によって構成される請求項1記載のベルト装置。
【請求項6】
前記第2の軸は複数の軸部により構成され、
前記複数の軸部が、前記第1カムを介して連結される請求項3記載のベルト装置。
【請求項7】
前記伝達部が、
前記第1カムが設けられ、前記他のリンク部材から駆動力を伝達される第2の軸と、
前記第1カムの回転により揺動するカムフォロワとを有する請求項3記載のベルト装置であって、
前記カムフォロワは、前記退避姿勢あるいは前記押さえ姿勢において、前記第1カムに当接される第1被当接部および第2被当接部を有し、
前記第1カムが、前記第1被当接部と前記第2被当接部との間に配置されるベルト装置。
【請求項8】
前記第1カムは前記第1被当接部および前記第2被当接部に当接する第1当接部および第2当接部を有し、
前記第1被当接部および前記第2被当接部間の距離が、前記第1当接部および前記第2当接部間の距離よりも小さい請求項7記載のベルト装置。
【請求項9】
請求項1から8いずれか1項に記載のベルト装置を備えた転写装置。
【請求項10】
転写部材を備えた請求項9記載の転写装置であって、
前記第1の軸が、前記押さえ部材が前記退避姿勢から前記押さえ姿勢に変更する方向に回転することにより、前記転写部材を潜像担持体から離間する方向へ移動させる転写装置。
【請求項11】
請求項9記載の転写装置を備えた画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルト装置、転写装置、および、転写装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
中間転写ベルト等のベルト部材は、ベルトの幅方向端部の温度上昇や室内の湿度などの影響により、ベルトが外周側へ反ってしまう場合がある。
【0003】
これに対して、ベルト部材を外周面側から押さえる押さえ部材を設けることにより、ベルトの反りを改善することができる。
【0004】
例えば特許文献1(特許第6394151号公報)の画像形成装置には、ベルト部材の端部を押さえる押さえ部材が設けられる。押さえ部材は回転する保持部材に装着されている。各一次転写ローラを感光体から接離させる接離機構が保持部材を回転させることにより、押さえ部材をベルト部材に対して接離させることができる。
【0005】
しかし特許文献1の画像形成装置では、各一次転写ローラを感光体に対して接離させる機構とベルト押さえをベルト部材に対して接離させる機構とが連動していた。このため、ベルト押さえを動作させるために全ての一次転写ローラを感光体から離間させる動作が伴うなど、ベルト押さえを接離動作させるために大きな力が必要であった。このため、ベルト押さえに駆動力を伝達する伝達部の各部材が破損しやすくなったり、破損を防止するためにこれらの部材に相応の強度が必要になってしまう。このため、伝達部の各部材の設計に制約を受けたり、コストアップするという課題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
押さえ部材に駆動力を伝達する伝達部にかかる力を低減することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明は、周回走行するベルト部材と、前記ベルト部材を押さえる押さえ部材と、前記押さえ部材に駆動力を伝達する伝達部と、を備えたベルト装置であって、前記押さえ部材は、前記ベルト部材を押さえる押さえ姿勢と前記ベルト部材から退避した退避姿勢とを往復可能に設けられ、前記伝達部が前記押さえ部材に駆動力を伝達することにより、前記押さえ部材が前記退避姿勢に変更され、前記押さえ部材は、自重により前記押さえ姿勢の側へ姿勢を変更することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、押さえ部材に駆動力を伝達する伝達部にかかる力を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図3】押さえ部材に駆動力を伝達する伝達部の構成を示す斜視図で、退避姿勢の状態を示す図である。
【
図4】押さえ部材に駆動力を伝達する伝達部の構成を示す斜視図で、押さえ姿勢の状態を示す図である。
【
図6】押さえ部材周辺の構成を示す図で、退避姿勢の状態を示す図である。
【
図7】押さえ部材周辺の構成を示す図で、押さえ姿勢の状態を示す図である。
【
図8】解除レバーを取り外した状態の退避状態における正面図である。
【
図9】解除レバーを取り外した状態の押さえ状態における正面図である。
【
図10】レバー固定軸および第1~第4リンク部材を示す斜視図である。
【
図11】第1~第4リンク部材の分解斜視図である。
【
図12】第1~第5リンク部材の動作を示す退避状態の正面図である。
【
図13】第1~第5リンク部材の動作を示す正面図で、退避状態から押さえ状態に移行する途中の図である。
【
図14】第1~第5リンク部材の動作を示す押さえ状態の正面図である。
【
図15】退避状態の最下流一次転写部周辺の構成を示す背面図である。
【
図16】押さえ状態の最下流一次転写部周辺の構成を示す背面図である。
【
図17】第2の軸およびその周辺構成を示す斜視図である。
【
図18】
図17から、第2の軸を構成する各軸部を分離した状態の斜視図である。
【
図19】中央側軸部と一方側の端部側軸部との分離状態を示す図である。
【
図20】中央側軸部と他方側の端部側軸部との分離状態を示す図である。
【
図21】第1カムおよびカムフォロワを示す図である。
【
図22】転写装置の概略構成図で、(a)図が各一次転写部が当接状態の図、(b)図がすべての一次転写部が離間状態の図である。
【
図24】カム部材およびその周辺の構成を背面側から見た斜視図である。
【
図25】最下流一次転写部の中間転写ベルトに対する接離構成を画像形成装置の背面側から見た図で、「離間」の状態を示す図である。
【
図26】第1アームおよび第2アーム周辺の構成を示す平面図である。
【
図27】第2アームおよびその周辺の構成を示す斜視図である。
【
図28】第2アームおよびその周辺の構成を背面側から見た斜視図である。
【
図29】検知センサおよびセンサブラケットの接離構成を示す平面図である。
【
図30】「離間」の状態における第2センサブラケットの位置決めの様子を示す平面図である。
【
図31】解除レバー周辺の構成を示す図で、レバー部が退避姿勢に配置された状態の正面図である。
【
図32】解除レバー周辺の構成を示す図で、レバー部が押さえ姿勢に配置された状態の正面図である。
【
図33】中央一次転写ユニットおよび最上流一次転写部の中間転写ベルトに対する接離構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態に係る画像形成装置1の構成を示す図である。
図1に示す画像形成装置1は、潜像担持体としての感光体を複数並置したタンデム方式の構成のカラープリンタである。各感光体は、現像装置から供給された現像剤としてのトナーにより、色分解に対応した色のトナー画像を形成できる。各感光体上で形成されたトナー像を転写ベルトに重畳転写した後、その重畳画像を記録用紙などのシートに対して一括転写することで、シートに多色画像を形成できる。本発明では、画像形成装置として、カラープリンタに限らず、カラー複写機、ファクシミリ装置および印刷機なども含まれること勿論である。
【0012】
図1において、画像形成装置1には、画像形成部1Aが上下方向の中央付近に配置され、その下方に給紙部1Bが、さらに画像形成部1Aの上方に原稿載置台1C1を備えた原稿走査部1Cがそれぞれ配置されている。画像形成部1Aには、中間転写ベルト2が配置されている。中間転写ベルト2は水平方向に展張面を有する。中間転写ベルト2の上方には、色分解色と補色関係にある色の画像を形成するための構成が設けられている。
【0013】
本発明のベルト部材の一態様として、画像を転写するための転写ベルトがある。本実施形態の中間転写ベルト2はこの転写ベルトの一例である。ただし本発明のベルト部材の例は中間転写体としての中間転写ベルト2に限らない。例えば本発明のベルト部材は、記録媒体を搬送し、感光体との間で転写ニップを形成する搬送ベルトであってもよい。
【0014】
画像形成部1Aには、潜像担持体ユニットである複数のPCDU10(Photo Conductor Development Unit)が設けられる。各PCDU10K、10C、10M、10Y、10Tは、補色関係にある色のトナー(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)による画像および透明トナーによる光沢画像を形成できる。各PCDU10K、10C、10M、10Y、10Tには画像を担持可能な、潜像担持体としての感光体3K、3C、3M、3Y、3T(透明トナー)が中間転写ベルト2の展張面に沿って並置されている。なお、以下の説明において、全ての感光体に共通する内容の場合には感光体を符号3により示す。またPCDU10K、10C、10M、10Y、10TをPCDU10とも呼ぶ。PCDU10は少なくとも感光体3を備え、本実施形態では現像装置などを備える。
【0015】
各感光体3K、3C、3M、3Y、3Tは、それぞれ同じ方向(
図1では、反時計方向)に回転可能なドラムで構成されており、その周辺には、回転過程において画像形成処理を実行する帯電装置,書き込み装置5,現像装置6,一次転写部材としての一次転写ローラ7,およびクリーニング装置が配置されている(便宜上、感光体3Tを対象として、各装置の符号にTを付して示してある)。
【0016】
ベルト装置としての転写装置20は、中間転写ベルト2と、転写部材としての複数の一次転写ローラ7(便宜上、一次転写ローラ7Tのみに符号を付して示してある)、複数のローラ2A~2Cを備える。
【0017】
中間転写ベルト2は、各感光体3を備えたPCDU10からのトナー像を順次転写される。中間転写ベルト2は複数のローラ2A~2C、および、
図1に符号をつけていない複数のローラに掛け回されて
図1の矢印方向へ周回走行できる。ローラ2A、2Bは、中間転写ベルト2の各感光体3に対向する対向位置の中間転写ベルト2の走行方向外側の両側で中間転写ベルト2を張架する。二次転写対向ローラ2Cは、中間転写ベルト2を挟んで二次転写装置9に対峙している。
【0018】
二次転写装置9は二次転写ローラ9Aを有する。二次転写ローラ9Aは中間転写ベルト2を挟んで二次転写対向ローラ2Cとの間に二次転写ニップを形成する。二次転写対向ローラ2Cにはトナーと同極性の二次転写バイアスが印加されているのに対し、二次転写ローラ9Aは接地されている。これにより、二次転写ニップには中間転写ベルト2上の多色トナー像をベルト側から二次転写ローラ9A側に向けて静電移動させる二次転写電界が形成される。この二次転写ニップにより、二次転写ニップに搬送されてきたシートに多色トナー画像が転写される。
【0019】
二次転写位置には給紙部1Bから、記録媒体としての用紙が給送される。給紙部1Bは、複数の給紙カセット1B1と、複数の搬送ローラ1B2とを備えている。複数の搬送ローラ1B2は、給紙カセット1B1から繰り出される用紙の搬送路に配置される。
【0020】
書き込み装置5は書き込み光を感光体3K、3C、3M、3Y、3Tに照射し、感光体3K、3C、3M、3Y、3Tに対して画像情報に応じた静電潜像を形成する。この画像情報は原稿走査部1Cに有する原稿載置台1C1上の原稿を走査することにより、あるいは、コンピュータから出力される画像情報により得られる。
【0021】
原稿走査部1Cには、スキャナ1C2および自動原稿給送装置1C3が備えられている。スキャナ1C2は原稿載置台1C1上の原稿を露光走査する。自動原稿給送装置1C3は原稿載置台1C1の上面に配置される。自動原稿給送装置1C3は、原稿載置台1C1上に繰り出される原稿を反転可能な構成を備え、原稿の表裏各面での走査が行えるようになっている。
【0022】
書き込み装置5により形成された感光体3上の静電潜像は、現像装置6(
図1では、便宜上、符号6Tで示してある)によって可視像処理され、中間転写ベルト2に一次転写される。中間転写ベルト2に対して各色のトナー像が重畳転写されると、二次転写装置9により用紙に対して一括して二次転写される。
【0023】
二次転写された用紙は、表面に担持している未定着画像が定着装置11によって定着される。定着装置11は、加熱ローラにより加熱される定着ベルトと定着ベルトに対向当接する加圧ローラとを備えたベルト定着構造を備える。定着ベルトと加圧ローラとの当接領域、つまりニップ領域を設けることにより熱ローラ定着方式の構造に比べて用紙への加熱領域を広げることができる。
【0024】
定着装置11を通過した用紙は、定着装置11の後方に配置されている搬送路切り換え爪によって搬送方向が切り換えられるようになっている。具体的には、搬送路切り換え爪により、排紙部13に向けた搬送路と、反転搬送路RPとに搬送方向が選択される。
【0025】
以上のような構成を備えた画像形成装置1では、原稿載置台1C1上に載置された原稿を露光走査することにより、あるいはコンピュータからの画像情報により、一様帯電された感光体3に対して静電潜像が形成され、静電潜像が現像装置6によって可視像処理された後、トナー像が中間転写ベルト2に一次転写される。上記のPCDU10、書き込み装置5、転写装置20、二次転写装置9、定着装置11などは画像を形成する画像形成部を構成する。
【0026】
中間転写ベルト2に転写されたトナー像は、単一色画像の場合にはそのまま給紙部1Bから繰り出された用紙に対して転写され、多色画像の場合には一次転写が繰り返されることで重畳された上で用紙に対して一括して二次転写される。二次転写後の用紙は定着装置11により未定着画像を定着された後、排紙部13あるいは、反転されて再度二次転写位置に向けて給送される。
【0027】
図1において、中間転写ベルト2は、PVDF(フッ化ビニルデン)、ETFE(エチレン-四フッ化エチレン共重合体)、PI(ポリイミド)、PC(ポリカーボネート)等を単層または複数層に構成し、カーボンブラック等の導電性材料を分散させて構成される。中間転写ベルト2の体積抵抗率を10
8~10
12Ωcm、かつ表面抵抗率を10
9~10
13Ωcmの範囲となるよう調整されている。なお、必要に応じ中間転写ベルト2の表面に離型層をコートしても良い。コートに用いる材料としては、ETFE(エチレン-四フッ化エチレン共重合体)、PTFE(ポリ四フッ化エチレン)、PVDF(フッ化ビニルデン)、PEA(パ-フルオロアルコキシフッ素樹脂)、FEP(四フッ化エチレン-六フッ化プロピレン共重合体)、PVF(フッ化ビニル)等のフッ素樹脂が使用できるが、これに限定されるものではない。中間転写ベルト2の製造方法は注型法、遠心成形法等があり、必要に応じてその表面を研磨しても良い。中間転写ベルト2の体積抵抗率が上述した範囲を超えると、転写に必要なバイアスが高くなるため、電源コストの増大を招くため好ましくない。また、転写工程、転写紙剥離工程などで中間転写ベルト2の帯電電位が高くなり、かつ自己放電が困難になるため除電手段を設ける必要が生じる。また、体積抵抗率および表面抵抗率が上記範囲を下回ると、帯電電位の減衰が早くなるため自己放電による除電には有利となるが、転写時の電流が面方向に流れるためトナー飛び散りが発生してしまう。したがって、本実施形態における中間転写ベルト2の体積抵抗率および表面抵抗率は上記範囲内が好ましい。なお、体積抵抗率および表面抵抗率の測定は高抵抗抵抗率計(三菱化学社製:ハイレスタIP)にHRSプローブ(内側電極直径5.9mm,リング電極内径11mm)を接続し、中間転写ベルト2の表裏に100V(表面抵抗率は500V)の電圧を印加して10秒後の測定値を用いた。
【0028】
中間転写ベルト2は、少なくとも一対のローラであるローラ2A、2B、二次転写位置に設けられている二次転写対向ローラ2Cにそれぞれ掛け回されて駆動ローラ2Aが時計方向に回転設定されることで
図1において中間転写ベルト2の内部に示す矢印方向に移動することができるようになっている。ローラ2Aおよび2B間で移動するベルトの転写面が各作像ユニットの感光体3K、3Y、3C、3M、3Tに対向している。中間転写ベルト2を挟んで各感光体と対向する位置には、感光体上の可視像を静電転写するための転写部材に相当する一次転写ローラ7(
図1では、特殊トナーを対象として符号7Tで示してある)がそれぞれ配置されている。
【0029】
本実施形態に用いられる一次転写ローラ7は、発泡樹脂剤を金属製(鉄、SUS、AI等)の芯金に塗布したものである。発泡樹脂剤の肉厚は2mm~10mmである。なお、転写部材としては、公知であるブレード状やブラシ状のものも用いることができる。
【0030】
本実施例では、フルカラー画像形成に用いられるトナーに加えて、画像に白色の下地を形成する目的で白トナーが用いられる。この他、画像の光沢性、転写性を向上させる目的で透明トナーを用いてもよいし、色域を増やすためにライトシアントナー、ライトマゼンタトナーなどが選択される場合もある。赤銅色、青銅色などの色のついた金属色を作成する目的で、金トナー、銀トナーなどの金属色のトナーを下地に用いる場合もある。
【0031】
ところで、中間転写ベルト2のような周回走行するベルト部材では、ベルトの幅方向端部の温度上昇や湿度の影響、張架されたベルトの伸びなどにより、ベルトの幅方向端部が外周側へ反ってしまう。これに対して本実施形態では、中間転写ベルト2の幅方向端部側を外周側から押さえる押さえ部材を設ける。以下、この押さえ部材、および、押さえ部材の姿勢を変更する機構について説明する。
【0032】
図2に示すように、転写フレームの一部であるインナーカバー20Aには、操作部材としての解除レバー71が設けられる。解除レバー71は、操作部としてのレバー部71aを有する。また転写装置20は複数の押さえ部材101を有する。押さえ部材101は、中間転写ベルト2の幅方向端部側でその外周面側を押さえることができる。本実施形態では、中間転写ベルト2の幅方向両側で、その走行方向の2箇所に押さえ部材101A~101Dが配置される。
【0033】
このような押さえ部材101を有する構成は、特に弾性層を有し、互いに材質の異なる複数の層を有するベルト部材に対して適用することが好適である。このようなベルト部材は、温度や湿度に対する膨張率が各層で異なるため、ベルト部材の幅方向端部側が反りやすく、上記押さえ部材を設けることで効果的にベルト部材の反りを矯正できる。本実施形態の中間転写ベルト2は、感光体側に弾性層、一次転写ローラ側に基層とする複数の層を有する。
【0034】
押さえ部材101は、中間転写ベルト2の表面に当接してベルト端部を押さえる押さえ姿勢と、中間転写ベルト2から退避した退避姿勢とを往復できる。例えば、画像形成時には押さえ部材101が退避姿勢をとり、メンテナンス時には押さえ部材101が押さえ姿勢をとって中間転写ベルト2の端部の反りを矯正する。
【0035】
操作者がレバー部71aを回転させることにより、中間転写ベルト2の姿勢を変更することができる。具体的には、レバー部71aが
図3の位置では押さえ部材101が退避姿勢になり、レバー部71aを回転させた
図4の位置では押さえ部材101が押さえ姿勢になる。以下、
図3のレバー部71aの位置を押さえ部材101が退避姿勢になる退避位置、
図4のレバー部71aの位置を押さえ部材101が押さえ姿勢になる押さえ位置とも呼ぶ。また押さえ部材101が退避姿勢に配置される状態を退避状態、押さえ姿勢に配置される状態を押さえ状態とも呼ぶ。
【0036】
レバー部71aの操作力は、第1リンク部材、第2リンク部材、第3リンク部材を介して、
図3に示す第4リンク部材76に伝達される。
【0037】
第4リンク部材76の一端は第5リンク部材77の他端に連結される。第5リンク部材77は第2の軸102の一端が挿入され、第2の軸102を中心に回転する。レバー部71aの操作力は第4リンク部材76を介して第5リンク部材77に伝達され、第5リンク部材77が第2の軸102を中心に回転する。つまり、第2の軸102がレバー部71aの操作力により回転する。第2の軸102の軸方向両側には、第1カム82がそれぞれ設けられる。
【0038】
図5に示すように、第2の軸102に設けられた第1カム82は、カムフォロワ83に当接する。スライド機構105がカムフォロワ83に連動する。スライド機構105は押さえ部材101の孔部101dに挿入されるピン105aを有する。
【0039】
押さえ部材101は、押さえ部101aと保持部101bとを有する。保持部101bは押さえ部101aを保持する。保持部101bは樹脂材により成形される。押さえ部101aは、支持部101a1と、当接部としてのフェルト部材101a2とを有する。支持部101a1はフェルト部材101a2を支持する。フェルト部材101a2は中間転写ベルト2の表面に当接する部分である。フェルト部材101a2を中間転写ベルト2に当接させることで、中間転写ベルト2表面の傷つきを防止できる。また支持部101a1は中間転写ベルト2に摺動する部分ではないため、強度を重視して樹脂材により成形される。
【0040】
次に、第1カム82の回転により押さえ部材101の姿勢が変化する様子について、
図6および
図7を用いて説明する。
図6は押さえ部材101が退避姿勢の図、
図7は押さえ姿勢の図である。
【0041】
図6に示すように、押さえ部材101は、保持部101bに設けられた支点部101eを中心に回転する。この回転により、押さえ部材101は退避姿勢と押さえ姿勢とを往復する。
図6の退避姿勢では、スライド機構105のピン105aが押さえ部材101の孔部101dの
図6の右端側に配置される。これにより、押さえ部材101の支点部101eを中心にした反時計回りの回転が規制され、押さえ部材101が退避姿勢に配置される。
【0042】
図6→
図7のように第1カム82が回転することで、カムフォロワ83を
図6の左方向へ押圧し、カムフォロワ83およびこれに連動するスライド機構105が
図6の左方向へ移動する。これにより、ピン105aが孔部101d内を
図6の左方向へ移動する。これにより、ピン105aが押さえ部材101の反時計回りの回転を規制する力が解除され、押さえ部材101は、自重により
図6の反時計回りの方向へ回転する。これにより、
図7に示すように、押さえ部材101が退避姿勢から押さえ姿勢に変更し、中間転写ベルト2に当接する。
【0043】
またこれとは逆に、
図7→
図6のように第1カム82が回転することで、第1カム82に押されてスライド機構105が
図7の右方向へ移動する。これにより、ピン105aが押さえ部材101を押圧し(押さえ部材101に駆動力を伝達し)、押さえ部材101を時計回りに回転させる。これにより、押さえ部材101が退避姿勢に復帰する。押さえ部材101は、自重とピン105aによる規制により、退避姿勢を維持する。
【0044】
次に、
図3に示すレバー部71aと第4リンク部材76との間に設けられ、レバー部71aの操作力を第4リンク部材76側へ伝達する第1~第3リンク部材について、
図8、
図9を用いて説明する。
図8および
図9はインナーカバーおよび操作レバーを取り除いた状態の図であり、
図8は押さえ部材101が退避姿勢の状態の図、
図9は押さえ姿勢の状態の図である。
【0045】
図3に示すレバー部71aの回転軸であるレバー固定軸71bが
図8に示されている。第1リンク部材73は、レバー固定軸71bを介して転写フレームに取り付けられている。レバー固定軸71bは、操作者のレバー部71aに対する操作力により回転する回転軸である。第1リンク部材73はレバー固定軸71bを中心に回転する。レバー固定軸71bは、本発明の第1の軸の一態様である。
【0046】
第1リンク部材73は、連結部73aで後述する第2リンク部材および第3リンク部材と連結されている。また第1リンク部材73は、取付部73bにスプリング78の一端が取り付けられている。スプリング78の他端は転写フレームに固定されている。
【0047】
スプリング78の引張力により、第1リンク部材73は、レバー固定軸71bを中心に
図8の時計回り方向に回転する力を受けている。この引張力により、レバー部71aが
図3に示す退避位置に配置される。一方、操作者が解除レバー71のレバー部71aを
図3→
図4の方向へ回転させると、第1リンク部材73がスプリング78の引張力に抗して反時計回りに回転し、
図9の位置に配置される。このように、スプリング78は、第1リンク部材73を退避姿勢における回転位相の方向へ付勢する付勢部材である。
【0048】
この第1リンク部材73の回転力は、後述の第2リンク部材、第3リンク部材、第4リンク部材76を介して第5リンク部材77へ伝達される。これにより、
図8→
図9のように、第4リンク部材76が
図9の左方向へ移動し、第5リンク部材77が第2の軸102を中心に
図9の時計回りに回転する。これにより、前述のように押さえ部材101がその姿勢を変更する。また第4リンク部材76には規制部材72C、72が取り付けられており、第4リンク部材76に連動してその姿勢を変更する。
【0049】
次に、第2リンク部材および第3リンク部材、そして、これらと連結される第1リンク部材73および第4リンク部材76について、
図10および
図11を用いて説明する。
図10は
図9から規制部材72Tを取り外した状態の斜視図、
図11は各リンク部材の分解斜視図である。
【0050】
図10および
図11に示すように、第1リンク部材73の連結部73aが、第2リンク部材74の一端74aおよび第3リンク部材75の一端75aにそれぞれ設けられた孔部に挿入される。これにより、第1リンク部材73と、第2リンク部材74および第3リンク部材75が連結されている。第2リンク部材74の一端74aと第3リンク部材75の一端75aとの間にはEリングが介在しており、一端74aと一端75aとの接触面積を小さくしている。
【0051】
第2リンク部材74の他端である挿入部74bが第4リンク部材76の孔部76aに挿入され、第2リンク部材74が第4リンク部材76に連結されている。また第3リンク部材75の他端である挿入部75bが第4リンク部材76の長孔76bに挿入されており、挿入部75bは長孔76b内を相対移動可能に設けられる。第1リンク部材73はレバー固定軸71bが挿入される挿入孔73cを有する。
図10に示すように、第1リンク部材73とレバー固定軸71bとの間、連結部73aと第3リンク部材75との間、挿入部75bと第4リンク部材76との間、挿入部74bと第4リンク部材76との間にもそれぞれEリングを介在させている。
【0052】
次に、第1リンク部材73のレバー固定軸71bを中心にした回転により、第2リンク部材74および第3リンク部材75を介して第4リンク部材76に回転力が伝達され、第4リンク部材76が
図8に示す左右方向へ移動する様子について、
図12~
図14を用いて説明する。
図12は退避状態の図、
図13は退避状態から押さえ状態へ移行する途中の図、
図14は押さえ状態の図である。なお、
図13および
図14では、便宜上、挿入部75bと第4リンク部材76との間に介在するEリングの記載を省略している。
【0053】
図12~
図14で、レバー固定軸71bおよび第2の軸102は転写フレームに固定されており、その位置が変化しない。
【0054】
図12→
図13のように、第1リンク部材73がレバー固定軸71bを中心に反時計回りに回転すると、連結部73aで第1リンク部材73に連結された第2リンク部材74および第3リンク部材75が第1リンク部材73に連動してその位置が変化する。この第2リンク部材74および第3リンク部材75の移動に伴って、第2リンク部材74に挿入部74bの位置で連結された第4リンク部材76が
図12の左右方向へ移動し、第5リンク部材77が第2の軸102を中心に回転する。
【0055】
第3リンク部材75の挿入部75bが第4リンク部材76の長孔76bに挿入されることで、第4リンク部材76が移動する位置が定められている。つまり、レバー固定軸71bおよび第2の軸102は転写フレームに固定されており、この2点間に配置された第2リンク部材74および第4リンク部材76の位置はそれぞれ可変である。このため、第2リンク部材74と第4リンク部材76を連結させるだけでは、第1リンク部材73の回転による位置変化に対して、第4リンク部材76の位置が定まらない。しかし、第3リンク部材75の他端である挿入部75bの移動範囲が第4リンク部材76の長孔76b内に規制されることで、第3リンク部材75と第4リンク部材76との相対位置が規制される。これにより、第1リンク部材73と第4リンク部材76との位置を1対1で対応させることができ、第1リンク部材73の回転に対して第4リンク部材76を所定の位置へ移動させることができる。なお
図12に示す退避状態の位置では、第3リンク部材75の挿入部75bが、第4リンク部材76の長孔76bの一端に配置されており、第4リンク部材76が
図12の左方向へそれ以上移動できないように規制されている。また
図14に示す押さえ状態の位置では、挿入部75bが長孔76bの他端に配置されており、第4リンク部材76が
図14の右方向へそれ以上移動できないように規制されている。
【0056】
第1リンク部材73は、操作者が解除レバー71のレバー部71a(
図2参照)を回転させる操作力により、
図12などの反時計回りに回転して
図14に示す押さえ状態の位置まで移動する。一方で、第1リンク部材73はスプリング78により時計回り方向の力が加えられているため、押さえ状態の位置以外で操作力が解除されると、
図12に示す退避状態の位置に自動で復帰する。
【0057】
一方、
図14に示す押さえ状態の場合には、第1リンク部材73がその位置で固定される。このため、操作者が押さえ状態でレバー部71aに対する操作力を解除しても、レバー部71aおよび第1リンク部材73は退避状態の位置に戻らない。この、レバー部71aおよび第1リンク部材73を押さえ状態の位置に固定する固定機構について、
図15および
図16を用いて説明する。
図15および
図16は画像形成装置の背面側から転写装置を見た図で、
図15が退避状態、
図16が押さえ状態の図である。
【0058】
図15に示すように、一次転写ローラ7Tを接離させるための機構である前スライダ32に、スプリング79の一端が接続されている。スプリング79の他端は転写フレームに固定されており、前スライダ32を
図15の左方向へ付勢している。前スライダ32にはカムフォロワ81が取り付けられる。
【0059】
解除レバーの回転軸であるレバー固定軸71bには、固定部材としてのカム80が取り付けられる。
図15の退避状態では、カム80がカムフォロワ81と非接触になっている。一方で
図16に示す押さえ状態では、解除レバーの操作によりカム80が回転することで、カム80がカムフォロワ81に当接する。前スライダ32に設けられたカムフォロワ81は、
図16の左方向へ付勢されている。カムフォロワ81がカム80に当接することで、カム80の位置、つまり、レバー固定軸71bの回転位相が固定される。これにより、解除レバー71のレバー部71aが押さえ状態の位置に固定される。
【0060】
以上のように、レバー部71aが、押さえ位置以外では退避位置に自動復帰する構成とすることで、レバー部71aが押さえ位置あるいは退避位置のいずれかに配置され、その間の中途半端な位置に配置されることを防止できる。従って、押さえ部材101(
図6参照)を押さえ姿勢あるいは退避姿勢のいずれかに配置できる。
【0061】
以上の各動作をまとめると、まず、押さえ部材101は、
図12に示すスプリング78の引張力により第1カム82が所定の位相まで回転することで、
図6に示す退避姿勢に配置される。つまり、スプリング78(
図12参照)→第1リンク部材73→第2リンク部材74(第3リンク部材75)→第4リンク部材76→第5リンク部材77→第2の軸102→第1カム82(
図6参照)の順でスプリング78の引張力が伝達される。そして第1カム82の回転によりカムフォロワ83およびスライド機構105が移動する。スライド機構105のピン105aが孔部101d内を
図7の右側へ移動し、押さえ部材101が時計回りに回転することで退避姿勢に配置される。第2リンク部材74,第3リンク部材75,第4リンク部材76,第5リンク部材77は、第1リンク部材73と、第1カム82および第2の軸102と、の間で駆動力を伝達する他のリンク部材である。
【0062】
一方、操作者がレバー部71aを
図3→
図4のように回転させることで、第1リンク部材73が回転し、上記と同様の順でスライド機構105に対して逆方向に力が働く。これにより、スライド機構105のピン105aが孔部101d内を
図6の左方向へ移動する。これにより、押さえ部材101が反時計回りに回転可能になり、押さえ部材101が自重により
図6→
図7のように反時計回りに回転して押さえ部材101が押さえ姿勢に配置される。
【0063】
このように本実施形態では、自重によって押さえ部材101が押さえ姿勢の側へ姿勢を変更する構成である。従って、押さえ部材101を押さえ姿勢の側へ移動させるために、スプリングのバネ力などの力を作用させる必要がない。従って、押さえ部材101に駆動力を伝達する上記の伝達部を構成する各部材に作用する力を低減できる。従って、伝達部を構成する各部材にかかる力を低減でき、これらの部材の破損を抑制できる。あるいは、これらの部材を強度の低い材料で形成するなど、その強度を相対的に小さくすることができ、設計の自由度の向上やコストダウンが実現できる。上記伝達部は、押さえ部材101に駆動力を伝達して退避姿勢に変更する部分であり、第1リンク部材73、第2リンク部材74、第3リンク部材75、第4リンク部材76、第5リンク部材77、第2の軸102、第1カム82、カムフォロワ83、スライド機構105などを有する。
【0064】
またレバー部71aが
図4の押さえ状態の位置に配置されると、
図16のようにスプリング79の引張力がカムフォロワ81を介してカム80に伝達され、レバー固定軸71bの回転位相が固定される。これにより、スライド機構105が
図7の位置で保持され、押さえ部材101は自重によって押さえ姿勢を維持する。つまり、レバー固定軸71bの回転位相を固定するだけで押さえ部材101は自重によって押さえ姿勢を維持することができる。従って、押さえ部材101が退避姿勢から押さえ姿勢に変更される際と同様、伝達部を構成する各部材に作用する力を低減できる。
【0065】
以上のように本実施形態では、退避姿勢から押さえ姿勢に変更する際、および、押さえ姿勢を維持する際に、伝達部を構成する各部材に作用する力を低減できる。例えば第1カム82には、回転によるカムフォロワ83との摺動負荷、押さえ部材101の自重によりかかる力、押さえ部材101が中間転写ベルトを押すことによる反力のみがかかっている。
【0066】
次に、第2の軸102を分解および取り外しする手順について、
図17~
図20を用いて説明する。以下の説明では、第2の軸102の軸方向両側に設けられる第1カム82のうち、一方側の第1カム82を第1カム82Aとし、他方側の第1カム82を第1カム82Bとする。
【0067】
図17に示すように、第2の軸102を構成する中央側軸部1021が、その軸方向両側で、それぞれ、第1カム82A、82Bを介して端部側軸部にネジ止めされている。第2の軸102は、第1カム82A、82Bを介して、中央側軸部1021と端部側軸部1022(
図19参照)、1023(
図20参照)とが連結されて構成される。
【0068】
第2の軸102を分解して転写装置から取り外す際には、まずネジ107、108を取り外す。ネジ107を取り外すことにより、第1カム82Aと中央側軸部1021とを分離する。ネジ108を取り外すことにより、第1カム82Bと端部側軸部1022とを分離する。そして、第1カム82Bを矢印C方向へ移動させることで
図18の状態とする。これにより、中央側軸部1021を取り外し可能な状態になる。つまり
図19に示すように、第1カム82Bを矢印C方向へ移動させることで、
図17では第1カム82Bを介して連結されていた中央側軸部1021と一方の端部側軸部1022とが分離される。また
図20に示すように、軸方向の他方側では、第1カム82Aの筒状部821に中央側軸部1021の軸方向他方側端部が挿入されている。
図17の状態では、ネジ107により第1カム82Aを介して中央側軸部1021と他方の端部側軸部1023とが連結されている。従って、ネジ107を外すことにより、中央側軸部1021と他方の端部側軸部1023とが分離される。
図18の状態から、中央側軸部1021と第1カム82Bとを斜め方向に押して中央側軸部1021を第1カム82Aの筒状部から抜き出すことで、中央側軸部1021を取り外すことができる。
【0069】
このように本実施形態では、押さえ姿勢を維持する際に第2の軸102や第1カム82A、82Bにかかる力が小さいことから、中央側軸部1021と端部側軸部1022,1023とをネジ止めによる簡易な取付構成とすることができる。従って、上記のように第2の軸102の分解および中央側軸部1021の取り外しを容易に行うことができる。これにより、第2の軸102よりも奥側に配置された画像形成装置内の部品の交換やメンテナンスが容易になる。
【0070】
また第1カム82は、
図20に示すように、第2の軸102を挿入するための筒状部821とカム部822を有する。つまり第1カム82が、駆動力を伝達するカム部822と第2の軸102を構成する複数の軸部1021,1022,1023を連結するための連結部を兼ねている。これにより、部品数を削減できる。
【0071】
次に、解除レバー71の回転範囲を、
図3の退避位置から
図4の押さえ位置までの範囲に限定する機構について、
図21を用いて説明する。
【0072】
解除レバー71の回転範囲は、
図12に示す第5リンク部材77の回転範囲が規制されること、および、挿入部76cの移動範囲が長孔75b内に規制されることにより限定されている。第5リンク部材77の回転範囲は、第5リンク部材77と同軸の第1カム82の回転範囲が規制されることにより規制される。つまり、第1カム82は
図6に示す退避姿勢の位置から
図7に示す押さえ姿勢の位置までの範囲にその回転範囲が規制される。
【0073】
図21に示すように、カムフォロワ83は第1カム82に当接される、第1被当接部としての第1被当接面83a、および、第2被当接部としての第2被当接面83bを有する。また第1カム82は第1被当接面83aに当接する第1当接部82a、および、第2被当接面83bに当接する第2当接部82bを有する。
図6では第1当接部82aが第2被当接面83bに当接することによりカムフォロワ83の位置を規制し、
図7では第1当接部82aが第1被当接面83aに当接することによりカムフォロワ83の位置を規制する。
【0074】
このように、第1カム82の両側にカムフォロワ83の被当接面を配置することで、第1カム82がいずれの方向へ回転した場合でも、第1カム82がカムフォロワ83に当接してスライド機構105を移動させることができる。従って、第1カム82を常にカムフォロワ83に当接させて摺動させる必要がなくなり、スプリングなどを配置する必要がなくなる。
【0075】
第1被当接面83aおよび第2被当接面83b間の距離B2は、第1当接部82aおよび第2当接部82a間の距離B1よりも小さく設けられる。これにより、第1カム82の回転範囲を上記のように規制できる。なお、第1当接部82aおよび第2当接部82a間の距離B1とは、第2の軸102に垂直な平面上において、第2の軸102の中心を通る第1当接部82aおよび第2当接部82a間の最大距離のことである。
【0076】
また本実施形態では、転写装置に設けられた一次転写ローラが感光体から離間する方向へ移動できるように構成されている。そして、レバー部71aの操作により押さえ部材の姿勢を変更する動作に連動して、一次転写ローラを感光体から離間させることができる。この一次転写ローラを感光体から離間させる機構について説明する。
【0077】
図22(a)に示すように、一次転写ローラ7Tが、中間転写ベルト2を介して感光体3Tとの間に特別色転写ニップNTを形成する。一次転写ローラ7Cが、中間転写ベルト2を介して感光体3Cとの間にシアン転写ニップNCを形成する。一次転写ローラ7Mが、中間転写ベルト2を介して感光体3Mとの間にマゼンタ転写ニップNMを形成する。一次転写ローラ7Yが、中間転写ベルト2を介して感光体3Yとの間にイエロー転写ニップNYを形成する。一次転写ローラ7Kが、中間転写ベルト2を介して感光体3Kとの間にブラック転写ニップNKを形成する。
【0078】
転写装置20は、中間転写ベルト2の走行方向の最も上流側に配置された最上流一次転写部201と、最も下流側に配置された最下流一次転写部203と、最上流一次転写部201と最下流一次転写部203との間に配置された複数の一次転写部からなる中央一次転写ユニット202とを有する。本実施形態では、最上流一次転写部201はブラック転写ニップNKによりブラックトナー像を、中央一次転写ユニット202は、シアン転写ニップNC、マゼンタ転写ニップNM、イエロー転写ニップNYにより、シアントナー像、マゼンタトナー像、イエロートナー像を、最下流一次転写部203は特別色転写ニップNTにより特別色トナー像を、それぞれ中間転写ベルト2に転写する。また以下の説明では、中間転写ベルト2の走行方向の上流側あるいは下流側を単に上流側あるいは下流側とも称する。
【0079】
中間転写ベルト2の走行方向において、一次転写ローラ7Cと一次転写ローラ7Tとの間には、張架部材としての従動ローラ21Aおよび検知機構としての検知センサ22が設けられる。従動ローラ21Aは中間転写ベルト2を張架する。検知センサ22は中間転写ベルト2上のスケールを検知し、中間転写ベルト2の走行速度を検知する。この検知結果に基づいて中間転写ベルト2の速度を制御することにより、中間転写ベルト2に転写する各色のトナー像の位置ズレを抑制できる。
【0080】
図22(a)において、最上流一次転写部201に設けられた一次転写ローラ7Kが最上流一次転写部材、中央一次転写ユニット202に設けられた一次転写ローラ7Y,7M,7Cが中央側一次転写部材、最下流一次転写部203に設けられた一次転写ローラ7Tが最下流一次転写部材である。中間転写ベルト2の走行方向は
図22(a)に矢印Aで示す方向である。また一次転写ローラ7Tよりも上流側の各一次転写ローラ7K,7Y,7M,7Cは上流側一次転写部材でもある。
【0081】
本実施形態では、最上流一次転写部201で特別色を転写することも、最下流一次転写部203で特別色を転写することもできる。これにより、必要な順番で特別色のトナーを転写することが可能になる。
【0082】
中間転写ベルト2の走行方向において、一次転写ローラ7Cと一次転写ローラ7Tとの間には、第2張架ローラとしての従動ローラ21Aおよび検知機構としての検知センサ22が設けられる。従動ローラ21Aは中間転写ベルト2を張架する。検知センサ22は中間転写ベルト2上のスケールを検知し、中間転写ベルト2の走行速度を検知する。この検知結果に基づいて中間転写ベルト2の速度を制御することにより、中間転写ベルト2に転写する各色のトナー像の位置ズレを抑制できる。
【0083】
本実施形態の転写装置20では、画像形成時のモードに合わせて、各一次転写ローラ7が感光体3に対して中間転写ベルト2を介して当接あるいは離間する。例えば
図22(b)に示すように、すべての一次転写ローラ7Tを感光体3Tから離間させることができる。
図22(b)は一例であり、最上流一次転写部201、中央一次転写ユニット202、最下流一次転写部203の各一次転写ローラ7の当接および離間状態を切り替えることができる。
【0084】
最下流の一次転写ローラ7Tの感光体3Tに対する接離動作に連動して、中間転写ベルト2を張架する張架部材としての従動ローラ21Aおよび従動ローラ33A、検知センサ22も
図22の上下方向である感光体3に接離する方向へ移動する。以下、これらの部材を接離させる第1接離機構について、
図15、
図23~
図30を用いて説明する。
図15は前述の退避状態の図であるが、一次転写ローラ7Tが「当接」状態の図でもある。なお、以下の説明では最下流一次転写部203で特殊色トナー像が転写される場合を示しているが、ブラックトナー像が転写されてもよい。
【0085】
図15に示すように、一次転写ローラ7Tが、回転部材34の一端に設けられる。回転部材34は、回転支点34aを中心に回転可能に設けられる。回転部材34は、一次転写ローラ7Tが設けられる側とは反対側の端部に孔部34bを有する。孔部34bには前スライダ32に設けられたピン32bが挿入されている。スプリング35は画像形成装置の筐体に固定され、回転部材34を、回転支点34aを中心に
図15の時計回りに回転する方向へ付勢している。このスプリング35の付勢力により、一次転写ローラ7Tが中間転写ベルト2に当接している。また中間転写ベルト2を張架する張架部材の一つである従動ローラ33Aが、回転部材33の一端に設けられる。回転部材33は、回転支点33aを中心に回転可能に設けられる。回転部材33は、従動ローラ33Aが設けられる側とは反対側の端部に孔部33bを有する。孔部33bには前スライダ32に設けられる挿入部32aが挿入されている。挿入部32aは前スライダ32に固定された軸部に玉軸受が圧入されて構成される。さらに、従動ローラ21Aは、回転部材21の一端に設けられる。回転部材21は、回転支点21aを中心に回転可能に設けられる。回転部材21は、スプリング39により回転支点21aを中心に時計回りに回転する方向の力を受けている。
【0086】
第1接離機構91には、モータの駆動力を伝達されるカム部材31が設けられる。
図23に示すように、カム部材31はカム31Aとカム31Bとを有し、回転軸31aを中心に回転可能に設けられる。カム31Bは外輪を有する玉軸受であり、回転軸31aに対して偏心したカムである。
【0087】
カム31Aは、それぞれの径の異なる小径部、中径部、大径部を120度ずつ有する。
図24に示すように、カム31Aは、玉軸受からなるカムフォロワ36に当接する。カム31Aの回転によってカム31Aがカムフォロワ36に当接する面を変えることで、前スライダ32を
図15の左右方向へ移動させることができる。
【0088】
図25は、一次転写ローラ7Tが感光体から離間した「離間」状態の図である。
カム31Aの回転により、前スライダ32を
図15よりも右方向へ移動させることで「離間」状態になる。つまり、
図15→
図25のように前スライダ32が右方向へ移動することにより、前スライダ32に設けられた挿入部32a、ピン32b、ピン32cがそれぞれ回転部材33,34,21を押圧し、回転部材33,34,21がそれぞれ反時計回りに回転する。これにより、従動ローラ33A、一次転写ローラ7T、従動ローラ21Aが、感光体から離れる方向である
図25の下方向へ移動する。従動ローラ33A、21Aの移動により、これらのローラに張架される中間転写ベルト2の張架位置が
図25の下方向へ移動する。
【0089】
また
図15→
図25のように前スライダ32が移動することにより、検知センサ22が
図25の下方向へ移動する。これにより、中間転写ベルト2の張架位置に合わせて検知センサ22を移動させることができる。以下、この検知センサ22を移動させるための機構について説明する。
【0090】
図24および
図26に示すように、第1アーム37はカム31Bを把持部37c1,37c2の2箇所で把持する。カム31Bの回転により、第1アーム37は回転支点37aを中心に回転する。
図15→
図25のように前スライダ32が移動することにより、第1アーム37は回転支点37aを中心に
図26の時計回りに回転する。
【0091】
図24に示すように、第1アーム37には、規制部材および抜け止め部材としてのスラスト止め部材60が取り付けられる。スラスト止め部材60は、規制部60bがカム31Bの外周面の位置を規制することで、第1アーム37のカム31Bに対する相対移動方向を規制できる。つまり、第1アーム37がカム31Bの外周面に沿った方向ではない、例えばカム31Bに対して滑り方向へ移動することを規制できる。
【0092】
図27は第1アーム37および第2アーム38の周辺の正面側の斜視図である。
図28は第1アーム37および第2アーム38の背面側の斜視図である。
【0093】
図27に示すように、第2リンク部材としての第2アーム38は、その両端にそれぞれ他の長孔38aと長孔38bとを有する。第1アーム37の一端37bが他の長孔38aに挿入されている。
図28に示すように、第1アーム37の一端37bは軸受40を有する。軸受40は他の長孔38a内を相対移動可能に設けられる。軸受40は他の長孔38aに対する他の挿入部である。
【0094】
図27に示すように、長孔38bには軸受41が挿入される。軸受41は、段ネジ42により、保持部材としての第1センサブラケット43に固定される。軸受41は長孔38b内を移動可能に設けられる。軸受41は長孔38bに対する挿入部である。
【0095】
カム部材31の回転により、
図15の状態から前スライダ32を
図15の右側へ移動させて最下流一次転写部203を「離間」の状態にすることで、カム31Bが回転し、第1アーム37は回転支点37aを中心にして時計回りに回転する。これにより、第1アーム37の一端37bが
図15の下方向へ移動する。これにより、
図25に示すように、一端37bが他の長孔38aの一端まで移動して他の長孔38aを形成する壁面部に当接し、第2アーム38を
図25の左下方向へ引き込む。これにより、軸受41が長孔38bの一端まで相対移動して長孔38bを形成する壁面部に当接する。そして、第2アーム38が第1センサブラケット43を
図25の左下方向へ引き込む。
【0096】
図29は第1センサブラケット43および検知センサ22周辺の構成を示す図で、
図15などから回転部材21を取り外した状態の図である。
図29では便宜上、検知センサ22および第2センサブラケット44を簡略化して記載している。
【0097】
図29に示すように、第1センサブラケット43は回転支点43aを中心に回転可能に設けられる。第1センサブラケット43は、画像形成装置の筐体に固定されたスプリング45により、回転支点43aを中心に
図29の反時計回りに回転する方向の力を受けている。また第1センサブラケット43には規制ブラケット63が固定されている。規制ブラケット63の孔部63aに、前スライダ32のピン32dが挿入されている。
図15の「当接」状態では、ピン32dが孔部63aを形成する壁面部に当接することで、前スライダ32が第1センサブラケット43に、回転支点43aを中心に
図29の時計回りに回転する力を加えている。
【0098】
第1センサブラケット43に設けられたスタッド43bを介して、第2センサブラケット44が第1センサブラケット43に固定されている。第2センサブラケット44は検知センサ22を保持する。第2センサブラケット44は、スプリング62(
図15参照)の一端が取り付けられるフック44aと、第1当接部44bと、第2当接部44cとを有する。
【0099】
第2センサブラケット44は、
図15の「当接」状態では、スプリング62により付勢されて、回転支点43aを中心に時計回りに回転する方向へ移動し、第1当接部44bが、画像形成装置の筐体に設けられたスタッド64に当接する位置で位置決めされている。
【0100】
また
図25の「離間」状態では、ピン32dが右方向へ移動することにより、
図29に示すように、ピン32dが規制ブラケット63を
図29の左方向へ押圧する力が解除されるとともに、前述のように第2アーム38が第1センサブラケット43を
図29の左下の方向へ引き込むことにより、第1センサブラケット43が回転支点43aを中心に
図29の時計回りに回転する。これにより、スタッド43bを介して第1センサブラケット43に固定された第2センサブラケット44が
図29の上方向へ移動し、検知センサ22も
図29の上方向へ移動する。この際、
図30に示すように、第2センサブラケット44の第2当接部44cが、回転部材21の位置決め部21bに当接する位置で、第2センサブラケット44が位置決めされる。つまり、第2センサブラケット44および検知センサ22の
図29などの上方向への移動が規制され、検知センサ22が位置決めされる。
【0101】
以上のように本実施形態では、前スライダ32が
図15→
図25のように
図25の右方向へ移動することにより、一次転写ローラ7T、従動ローラ21A、従動ローラ33A、検知センサ22がそれぞれ感光体から離間する方向へ移動する。
【0102】
上記の説明ではモータの駆動力により前スライダ32が移動する場合を示したが、レバー部71aに対する操作力によっても前スライダ32を
図25の右方向へ移動させることができる。このレバー部71aの操作による前スライダ32の移動について説明する。
【0103】
前述の
図3→
図4のようにレバー部71aを退避位置から押さえ位置へ移動させることで、レバー部71aの回転支点であるレバー固定軸71bが
図15→
図16のように回転する。この途中で、カム80が前スライダ32に取り付けられたカムフォロワ81に当接し、カムフォロワ81を介して前スライダ32を
図15→
図16のように右側へ移動させる。これにより、モータによってカム部材31を回転させて
図15→
図15のように「当接」状態から「離間」状態へ移動させた場合と同様、
図15→
図16のように、一次転写ローラ7T、従動ローラ21A、従動ローラ33A、検知センサ22をそれぞれ感光体から離間する方向へ移動させることができる。
【0104】
このように本実施形態では、押さえ部材101を押さえ姿勢に変更する操作に連動して、一次転写ローラや中間転写ベルトを張架する張架部材を感光体から離間する方向へ移動させることができる。これにより、メンテナンス時の作業手順を減らすことができる。
【0105】
本実施形態の固定部材であるカム80は、押さえ位置および退避位置から押さえ位置に変化する所定の領域でカムフォロワ81に当接すればよく、その周方向の全域にカム面を有する必要はない。また、押さえ部材101を押さえ姿勢に保持するためだけであれば、固定部材は、押さえ姿勢の位相でカムフォロワ81に当接し、レバー固定軸71bを押さえ姿勢の位相に固定することができればよい。この場合固定部材は、例えば、レバー固定軸71bの周方向の特定の方向へ延びる突起とすることができるなど、必ずしも本実施形態のようなカム形状を有する必要はない。
【0106】
ところで、画像形成装置1に設けられたPCDU10(
図1参照)は、画像形成装置1本体に対して着脱可能に設けられる。そして、PCDU10の取り外し方向の移動を規制する規制部材が、転写装置20に設けられる。以下、この規制部材について説明する。
【0107】
図31に示すように、転写装置20の上方にはPCDU10が配置される。PCDU10を
図31の紙面垂直方向に移動させることで、PCDU10を画像形成装置本体に対して着脱することができる。
【0108】
転写装置20に設けられた検知センサ22は、PCDU10の取り外し動作時にPCDU10に干渉する位置に配置されている。このため、PCDU10を着脱する際には、検知センサ22をPCDU10から離間させる。このように検知センサ22は、転写装置20に設けられ、PCDU10に対して接離方向に移動する接離部である。なお、PCDU10に対して離間する方向は
図31の矢印D1方向であり、PCDU10に対して接近する方向は
図31の矢印D2方向である。
【0109】
転写装置20は規制部材72を有する。
図31の規制部材72は、PCDU10の取り外し動作時にPCDU10に干渉する位置に設けられる。つまり、PCDU10の取り外し方向に垂直な面である
図31の紙面上において、PCDU10と重なる位置に配置されている。規制部材72がPCDU10に干渉することにより、PCDU10の画像形成装置に対する取り外し方向である
図31の紙面手前方向への移動を規制する。
【0110】
規制部材72はPCDU10が検知センサ22に当接する位置よりも取り外し方向の手前の位置でPCDU10に当接し、PCDU10の取り外しを規制する。なお、
図31ではPCDU10T、10Cに規制部材72が設けられる場合を示しているが、前述した5つのPCDU10の任意の位置に規制部材72を設けることができる。
【0111】
解除レバー71を
図31→
図32のように回転させることにより、前述のように、検知センサ22を感光体から離間する方向へ移動させることができる。これにより、
図32のように、検知センサ22をPCDU10の取り外し動作時にPCDU10に干渉しない位置に配置できる。また解除レバー71を
図31→
図32のように回転させることにより、規制部材72をPCDU10の取り外し動作時にPCDU10に干渉しない位置に配置できる。なお、
図31の解除レバー71の位置が、前述の
図3等に示す押さえ部材101が退避姿勢の位置であり、
図32の位置が押さえ部材101が押さえ姿勢の位置である。
【0112】
次に、解除レバー71の操作に連動して、規制部材72がその姿勢を変更する様子について説明する。
【0113】
前述のように、操作者が解除レバー71を操作して
図3から
図4の位置へ回転させることができる。これにより、押さえ部材101を退避位置から押さえ位置へ移動させることができる。またこの解除レバー71の
図31の退避位置から
図32の押さえ位置への回転により、規制部材72を回転させることができる。前述のように、解除レバー71の回転により、
図8→
図9のように第1リンク部材73がレバー固定軸71bを中心に反時計回りに回転する。この回転力が、第2リンク部材74,第3リンク部材75を介して第4リンク部材76に伝達され、第4リンク部材76が
図9の左方向へ移動する。
【0114】
規制部材72C,72Tは、その一端側が第4リンク部材76に取り付けられている。このため、
図8→
図9の第4リンク部材76の移動により、規制部材72C,72Tがその姿勢を変更する。
【0115】
規制部材72C,72Tには長孔72aが設けられる。長孔72a内には、転写フレームに固定された軸84,85がそれぞれ挿入されている。軸84あるいは軸85が長孔72a内を相対移動可能な範囲で、規制部材72C、72Tの姿勢が規制されている。この規制により、規制部材72C、72Tは、第4リンク部材76の移動に伴って
図8あるいは
図9の姿勢を往復する。つまり、
図31のPCDU10に干渉する位置と、
図32のPCDUに干渉しない位置とを往復する。
【0116】
以上のように本実施形態では、解除レバー71の操作により、規制部材72によるPCDUの取り外し方向の移動の規制を解除できる。つまり本実施形態では、解除レバー71の操作により、規制部材72の規制解除、押さえ部材101(
図3参照)の退避姿勢から押さえ姿勢への移動、一次転写ローラ7および検知センサ22(
図22参照)の感光体3から離間する方向への移動を同時に行うことができる。つまり、規制部材72の規制解除、押さえ部材101の押さえ姿勢への移動、検知センサ22の感光体3から離間する方向への移動を同時に行うことにより、PCDU10を画像形成装置1本体から取り外し可能な状態とすることができる。解除レバー71の操作のみによりこれらを行うことができるため、PCDU10を画像形成装置1本体から取り外す動作を簡略化できる。また、規制部材72の規制の解除を怠るなど、特定の部材が移動されない状態でPCDU10の取り外し動作を開始する、といったことを防止できる。ただし、必ずしもこれらの動作が連動する必要はない。
【0117】
以上の説明では、最下流一次転写部の一次転写ローラ7Tが押さえ部材101に連動して感光体から離間する場合を示したが、その他の任意の一次転写ローラが感光体から離間してもよい。
【0118】
次に、中央一次転写ユニット202に設けられる各一次転写ローラ7C,7M,7Yを中間転写ベルト2に対して接離させる、第2移動機構としての第2接離機構92、および、最上流一次転写部201に設けられる一次転写ローラ7Kを接離させる、第3移動機構としての第3接離機構93について、
図33を用いて説明する。
【0119】
図33に示すように、第2接離機構92は、回転部材46~48、カム51およびカムフォロワ52を有する。第3接離機構93は、回転部材49,カム53およびカムフォロワ54を有する。第2接離機構92はカム51を回転させる駆動源としてのモータを、第3接離機構93はカム53を回転させる駆動源としてのモータをそれぞれ備える。
【0120】
回転部材46,47,48,49が、回転支点46a、47a、48a、49aを中心に回転可能に設けられる。回転部材46の一端には一次転写ローラ7Cが設けられる。回転部材47の一端には一次転写ローラ7Mが設けられる。回転部材48の一端には一次転写ローラ7Yが設けられる。回転部材49の一端には一次転写ローラ7Kが設けられる。各回転部材46~49はスプリングにより
図33の時計回りに回転する方向へ付勢され、各一次転写ローラ7を中間転写ベルト2を介して感光体に当接させている。
【0121】
カム51の回転によりカムフォロワ52が回転し、最上流一次転写部201の前スライダ50が
図33の右方向へ移動する。これにより、回転部材46~48の各一次転写ローラ7を設ける側と反対側の端部が押圧され、各回転部材46~48はスプリングの付勢力に抗して
図33の反時計回りに回転する。これにより、各一次転写ローラ7C,7M,7Yが各感光体から離間する。またカム53の回転により、カムフォロワ54が回転し、回転部材49の一次転写ローラ7Kを設ける側と反対側の端部が押圧される。これにより、回転部材49はスプリングの付勢力に抗して
図33の反時計回りに回転し、一次転写ローラ7Kが感光体から離間する。以上のようにして、最上流一次転写部201の一次転写ローラ7Kと中央一次転写ユニット202の各一次転写ローラ7C,7M,7Yとが独立して各感光体に対する接離動作を行う。
【0122】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。
【0123】
以上の説明では、操作部材が転写装置に設けられる場合を示したが、画像形成装置の筐体など、画像形成装置内の適宜の位置に設けられていてもよい。
【0124】
記録媒体としては、用紙P(普通紙)の他、厚紙、はがき、封筒、薄紙、塗工紙(コート紙やアート紙等)、トレーシングペーパ、OHPシート、プラスチックフィルム、プリプレグ、銅箔等が含まれる。
【0125】
本発明の態様は、例えば以下の通りである。
<1>
周回走行するベルト部材と、
前記ベルト部材を押さえる押さえ部材と、
前記押さえ部材に駆動力を伝達する伝達部と、を備えたベルト装置であって、
前記押さえ部材は、前記ベルト部材を押さえる押さえ姿勢と前記ベルト部材から退避した退避姿勢とを往復可能に設けられ、
前記伝達部が前記押さえ部材に駆動力を伝達することにより、前記押さえ部材が前記退避姿勢に変更され、
前記押さえ部材は、自重により前記押さえ姿勢の側へ姿勢を変更することを特徴とするベルト装置である
<2>
自身の回転により前記伝達部に駆動力を伝達する第1の軸と、
前記第1の軸に設けられ、前記押さえ姿勢において前記第1の軸に力を加えて前記第1の軸の位相を固定する固定部材と、を備えた<1>記載のベルト装置である
<3>
前記伝達部は、
前記第1の軸を回転軸とする第1リンク部材と、
自身の回転により、前記押さえ部材に駆動力を伝達する第1カムと、
前記第1リンク部材と前記第1カムとの間で駆動力を伝達する、一または複数の他のリンク部材と、
前記退避姿勢における前記第1リンク部材の回転位相の方向へ前記第1リンク部材を付勢する付勢部材と、を有する<2>記載のベルト装置である
<4>
前記第1の軸に固定される操作部材を備えた<2>または<3>記載のベルト装置であって、
前記操作部材の操作により前記第1の軸を回転させることができるベルト装置である
<5>
前記ベルト部材は、少なくとも弾性層を有し、互いに材質が異なる複数の層によって構成される<1>から<4>いずれか記載のベルト装置である
<6>
前記第2の軸は複数の軸部により構成され、
前記複数の軸部が、前記第1カムを介して連結される<3>、または、<3>に係る<4>、または、<3>に係る<5>記載のベルト装置である
<7>
前記伝達部が、
前記第1カムが設けられ、前記他のリンク部材から駆動力を伝達される第2の軸と、
前記第1カムの回転により揺動するカムフォロワとを有する<3>、または、<3>に係る<4>、または、<3>に係る<5>、または、<6>記載のベルト装置であって、
前記カムフォロワは、前記退避姿勢あるいは前記押さえ姿勢において、前記第1カムに当接される第1被当接部および第2被当接部を有し、
前記第1カムが、前記第1被当接部と前記第2被当接部との間に配置されるベルト装置である
<8>
前記第1カムは前記第1被当接部および前記第2被当接部に当接する第1当接部および第2当接部を有し、
前記第1被当接部および前記第2被当接部間の距離が、前記第1当接部および前記第2当接部間の距離よりも小さい<7>記載のベルト装置である
<9>
<1>から<8>いずれか記載のベルト装置を備えた転写装置である。
<10>
転写部材を備えた<9>記載の転写装置であって、
前記第1の軸が、前記押さえ部材が前記退避姿勢から前記押さえ姿勢に変更する方向に回転することにより、前記転写部材を潜像担持体から離間する方向へ移動させる転写装置である。
<11>
<9>または<10>記載の転写装置を備えた画像形成装置である。
【符号の説明】
【0126】
1 画像形成装置
2 中間転写ベルト(ベルト部材または中間転写体)
3 感光体(潜像担持体)
7 一次転写ローラ(一次転写部材)
20 転写装置(ベルト装置)
20A インナーカバー(転写フレーム)
22 検知センサ(接離部)
71 解除レバー(操作部材)
71a レバー部(操作部)
71b レバー固定軸(第1の軸)
73 第1リンク部材
74 第2リンク部材(他のリンク部材)
75 第3リンク部材(他のリンク部材)
76 第4リンク部材(他のリンク部材)
77 第5リンク部材(他のリンク部材)
78 スプリング(付勢部材)
80 カム(固定部材)
82 第1カム
83 カムフォロワ
101 押さえ部材
102 第2の軸
1021 中央側軸部(第2の軸を構成する軸部)
1022,1023 端部側軸部(第2の軸を構成する軸部)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0127】