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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118662
(43)【公開日】2024-09-02
(54)【発明の名称】ゲッタリング層形成装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20240826BHJP
   B24B 37/00 20120101ALI20240826BHJP
【FI】
H01L21/304 601S
B24B37/00 E
B24B37/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023025062
(22)【出願日】2023-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】邱 暁明
【テーマコード(参考)】
3C158
5F057
【Fターム(参考)】
3C158AA07
3C158AA16
3C158CB03
3C158EA11
3C158EB01
3C158ED00
5F057AA12
5F057BA11
5F057CA11
5F057DA23
5F057DA26
5F057DA31
5F057EA01
(57)【要約】
【課題】研磨されたウェーハの上面(裏面)にゲッタリング層を短時間で効率良く形成することができるゲッタリング層形成装置を提供すること。
【解決手段】ウェーハWの上面にゲッタリング層を形成するゲッタリング層形成装置50は、保持面によってウェーハWの下面を保持する保持テーブル71と、ウェーハWの上面に、僅かな隙間δをあけて超音波振動を発振する発振面を対面させる超音波振動子61と、ウェーハWの上面と超音波振動子61との間の隙間δに、砥粒を含む砥粒水を供給する砥粒水供給部(砥粒水供給源65、配管64、超音波発振器62の供給路62a、超音波振動子62の供給路62a)とを備え、超音波振動子61の発振面から砥粒水に超音波振動を伝播させて砥粒を振動させることによって、ウェーハWの上面にゲッタリング層を形成する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェーハの上面にゲッタリング層を形成するゲッタリング層形成装置であって、
保持面によってウェーハの下面を保持する保持テーブルと、
ウェーハの上面に、僅かな隙間をあけて超音波振動を発振する発振面を対面させる超音波振動子と、
ウェーハの上面と該超音波振動子との間の該隙間に、砥粒を含む砥粒水を供給する砥粒水供給部と、
を備え、
該超音波振動子の発振面から該砥粒水に超音波振動を伝播させて該砥粒を振動させることによって、ウェーハの上面にゲッタリング層を形成する、ゲッタリング層形成装置。
【請求項2】
該保持テーブルを回転させる回転機構を備え、
該超音波振動子の該発振面は、扇形であり、
該保持テーブルを回転させ、ウェーハの上面にゲッタリング層を形成する、請求項1記載のゲッタリング層形成装置。
【請求項3】
該超音波振動子の発振面は、ウェーハの上面全面に対面する、請求項1記載のゲッタリング層形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハの上面に金属イオンの誘導を規制するゲッタリング層を形成するゲッタリング層形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
各種電子機器に対して小型・薄型化が要求されていることから、これらの電子機器に用いられている半導体デバイスも小型・薄型化される傾向にある。すなわち、半導体デバイスの製造工程においては、円板状の半導体ウェーハ(以下、単に「ウェーハ」と称する)の表面が格子状に配列されたストリートと称される分割予定ラインによって多数の矩形領域に区画され、各矩形領域にICやLSIなどのデバイスがそれぞれ形成される。このように多数のデバイスが形成されたウェーハを分割予定ラインに沿って切断することによって、複数の半導体チップが形成される。
【0003】
そして、個々の半導体チップの小型化と薄型化を図るため、通常、ウェーハを分割予定ラインに沿って切断する前に該ウェーハの裏面(デバイスが形成された面とは反対側の面)が所定の厚みに研削されている。このウェーハの研削は、高速回転する研削砥石をウェーハの裏面に押し当てることによってなされるが、この研削によってウェーハの裏面には1μm程度のマイクロクラックからなる加工歪層が形成され、特にウェーハを100μm以下の厚みに研削した場合には、当該ウェーハの抗折強度が低下するという問題が発生する。
【0004】
そこで、研削されたウェーハの裏面に研磨或いはエッチングなどを施して加工歪みを除去するようにしている。
【0005】
ところが、ウェーハの裏面を研削した後に該裏面に研磨やエッチングなどを施して加工歪層を除去すると、ゲッタリング効果が失われるという問題が発生する。ここで、ゲッタリング効果とは、ウェーハの内部や裏面にゲッタリングサイト(結晶欠陥・歪など)を形成し、このゲッタリングサイトに金属汚染を引き起こす不純物(重金属不純物など)を捕獲・固着する効果を言う。
【0006】
そこで、特許文献1には、ウェーハにスラリーを供給しながら該ウェーハの裏面を研磨した後、研磨パッドに水を供給し、研磨パッドに付着したスラリーを水によって洗い流し、スラリーがなくなった研磨パッドによってウェーハの裏面を研磨して該裏面にクロスする微細な引っ掻き傷のゲッタリング層を形成する方法が提案されている。
【0007】
また、特許文献2には、別機構である研磨手段とゲッタリング層形成手段を備えることによって、ウェーハの被加工面に短時間でゲッタリング層を形成することができる加工装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2015-046550号公報
【特許文献2】特開2018-039063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1において提案された方法では、スラリーを用いてウェーハを研磨する研磨パッドに付着したスラリーを水で洗い流した後、スラリーがなくなった研磨パッドでゲッタリング層を形成するために、ゲッタリング層の形成に時間が掛かり、効率が悪いという問題がある。
【0010】
また、特許文献2において提案された加工装置においては、ゲッタリング層形成手段の近傍に、ウェーハを洗浄する洗浄手段と、チャックテーブルに対してウェーハを搬入及び搬出するための搬出入手段が配置されているため、これらとの干渉を避けるためにゲッタリング層形成パッドの径を小さくせざるを得ず、ゲッタリング層の形成に時間が掛かるという問題がある。
【0011】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたもので、その目的は、研磨されたウェーハの裏面にゲッタリング層を短時間で効率良く形成することができるゲッタリング層形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するための本発明は、ウェーハの上面にゲッタリング層を形成するゲッタリング層形成装置であって、保持面によってウェーハの下面を保持する保持テーブルと、ウェーハの上面に、僅かな隙間をあけて超音波振動を発振する発振面を対面させる超音波振動子と、ウェーハの上面と該超音波振動子との間の該隙間に、砥粒を含む砥粒水を供給する砥粒水供給部と、を備え、該超音波振動子の発振面から該砥粒水に超音波振動を伝播させて該砥粒を振動させることによって、ウェーハの上面にゲッタリング層を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ウェーハの上面と超音波振動子との間の僅かな隙間に砥粒水を供給するようにしたため、該砥粒水に含まれる砥粒に超音波振動子から発振される超音波振動が伝播し、該砥粒が超音波振動してウェーハの上面に微細な無数の傷を付けることによって該ウェーハの上面にゲッタリング層が形成される。この場合、砥粒水に含まれる砥粒がウェーハの裏面に常に載った状態で超音波振動し、横方向と斜め方向に動く砥粒によってウェーハの上面にはクロスする微細な引っ掻き傷が形成されるため、ゲッタリングサイトに金属汚染を引き起こす不純物(重金属不純物など)を捕獲・固着するためのゲッタリング層がウェーハの上面全面に亘って短時間で効率良く形成される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係るゲッタリング層形成装置を備える加工装置の一部を破断して示す斜視図である。
図2】本発明に係るゲッタリング層形成装置の斜視図である。
図3】本発明に係るゲッタリング層形成装置の超音波振動子を斜め下方から見た斜視図である。
図4】本発明に係るゲッタリング層形成装置によるゲッタリング層形成方法の第1実施形態を示す破断縦断面図である。
図5】本発明に係るゲッタリング層形成装置によるゲッタリング層形成方法の第2実施形態を示す破断縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0016】
[加工装置の構成]
以下、本発明に係るゲッタリング層形成装置を備える加工装置の全体構成を図1に基づいて説明する。なお、以下の説明においては、図1に示す矢印方向をそれぞれX軸方向(左右方向)、Y軸方向(前後方向)、Z軸方向(上下方向)とする。
【0017】
図1に示す加工装置1は、ウェーハWの裏面(図1においては、上面)を研削加工及び研磨加工した後、研磨されたウェーハWの上面(裏面)にゲッタリング層を形成する装置であって、被加工物である円板状のウェーハWを吸引保持する4つ(図1には、1つのみ図示)のチャックテーブル10と、研削装置を構成する粗研削ユニット20及び仕上げ研削ユニット30と、研磨装置40及び本発明に係るゲッタリング層形成装置50を主要な構成要素として備えている。ここで、ウェーハWは、薄い円板状の部材であって、単結晶のシリコン母材で構成されており、その表面(図1においては、下面)には、複数の不図示のデバイスが形成されており、これらのデバイスは、ウェーハWの表面に貼着された保護テープTによって保護されている。
【0018】
なお、加工装置1には、ウェーハWの裏面を洗浄する洗浄ユニット70と、研削加工前の複数のウェーハWを収納するカセット81と、研削加工後のウェーハWを収納するカセット82と、カセット81から取り出したウェーハWを位置合わせする位置合わせテーブル83と、カセット81,82に対してウェーハWを出し入れするとともに、カセット81から取り出したウェーハWを位置合わせテーブル83へと搬送する搬出入ロボット84と、位置合わせテーブル83において位置合わせされたウェーハWをウェーハ搬出入領域R1に位置するチャックテーブル10へと搬送する第1搬送手段85と、研磨領域R4において研磨されたウェーハWをチャックテーブル10から取り外して洗浄ユニット70とゲッタリング層形成装置50へと搬送する第2搬送手段86などが備えられているが、これらについての詳細な説明は省略する。
【0019】
ここで、加工装置1の主要な構成要素であるチャックテーブル10、粗研削ユニット20と仕上げ研削ユニット30、研磨装置40及びゲッタリング層形成装置50の構成についてそれぞれ説明する。
【0020】
(チャックテーブル)
本実施形態では4つのチャックテーブル10(図1には、1つのみ図示)は、円板状の部材であって、Z軸方向に垂直な中心軸回りに間欠的に回転(公転)するターンテーブル2上に周方向に等角度ピッチ(90°ピッチ)で配置されている。そして、これらのチャックテーブル10は、ターンテーブル2の間欠的な回転によって該ターンテーブル2のZ軸方向に垂直な軸中心回りに角度90°ずつ公転してウェーハ搬出入領域R1と粗研削領域R2、仕上げ研削領域R3及び研磨領域R4の間を順次移動するとともに、不図示の回転駆動機構によってZ軸方向の垂直な軸中心回りに所定の速度で回転(自転)する。
【0021】
ここで、各チャックテーブル10は、多孔質のセラミックなどで構成された円板状のポーラス部材10Aが中央部にそれぞれ組み込まれており、各ポーラス部材10Aの上面は、円板状のウェーハWを吸引保持する保持面を構成している。そして、各チャックテーブル10のポーラス部材10Aは、真空ポンプなどの不図示の吸引源に選択的に接続される。
【0022】
なお、ターンテーブル2の上面は、径方向に放射状に延びる4つの仕切り板11によって4つの扇形の領域、つまり、ウェーハ搬出入領域R1と、粗研削領域R2と、仕上げ研削領域R3及び研磨領域R4に区画されており、ウェーハ搬出入領域R1を除く3つの粗研削領域R2と仕上げ研削領域R3及び研磨領域R4は、加工室カバー12によって覆われている。
【0023】
(粗研削ユニットと仕上げ研削ユニット)
粗研削ユニット20と仕上げ研削ユニット30は、図1に示すように、Y軸方向(前後方向)に長い矩形ボックス状のベース100の+Y軸方向端部(後端部)にX軸方向(左右方向)に並設される状態で垂直に配置されている。ここで、粗研削ユニット20は、粗研削領域R2に位置するチャックテーブル10の保持面に保持されたウェーハWの上面(裏面)を粗研削するユニットであり、仕上げ研削ユニット30は、仕上げ研削領域R3に位置するチャックテーブル10の保持面に保持されたウェーハWの上面(裏面)を仕上げ研削するユニットであって、両者の基本構成は同じである。
【0024】
すなわち、粗研削ユニット20は、ホルダ21に固定されたスピンドルモータ22と、該スピンドルモータ22によって回転駆動される垂直なスピンドル23と、該スピンドル23の下端に取り付けられた円板状のマウント24と、該マウント24の下面に着脱可能に装着された研削ホイール25とを備えている。ここで、研削ホイール25には、円環状に配置されたブロック状の複数の研削砥石(不図示)が設けられている。
【0025】
また、仕上げ研削ユニット30も粗研削ユニット20と同様に、ホルダ31に固定されたスピンドルモータ32と、該スピンドルモータ32によって回転駆動される垂直なスピンドル33と、該スピンドル33の下端に取り付けられた円板状のマウント34と、該マウント34の下面に着脱可能に装着された研削ホイール35とを備えている。ここで、研削ホイール35には、円環状に配置されたブロック状の複数の研削砥石(不図示)が設けられているが、これらの研削砥石は、粗研削ユニット20の研削砥石よりも細かい砥粒によって構成されている。
【0026】
ところで、粗研削ユニット20と仕上げ研削ユニット30は、ベース100の+Y軸方向端部(後端部)にX軸方向(左右方向)に沿って垂直に立設された一対のブロック状のコラム101の各-Y軸方向端面(前面)にそれぞれ設けられた昇降機構3によって昇降可能に支持されている。ここで、両昇降機構3の構成は同じであるため、以下、対応する構成要素には同一符号を付して説明する。
【0027】
各昇降機構3は、粗研削ユニット20と仕上げ研削ユニット30をそれぞれ独立にZ軸方向(上下方向)に沿って昇降動させるものであって、矩形プレート状の昇降板4と、該昇降板4の昇降動をガイドするための一対のガイドレール5をそれぞれ備えている。ここで、各昇降板4には、粗研削ユニット20と仕上げ研削ユニット30がそれぞれ取り付けられている。また、一対のガイドレール5は、コラム101の前面に垂直且つ互いに平行に配設されている。
【0028】
そして、一対のガイドレール5の間には、回転可能なボールネジ6がZ軸方向(上下方向)に沿って垂直に立設されており、該ボールネジ6の上端は、駆動源である正逆転可能なサーボモータ7に連結されている。また、ボールネジ6の下端は、不図示の軸受によってコラム101に回転可能に支持されており、このボールネジ6には、昇降板4の背面に後方(+Y軸方向)に向かって水平に突設された不図示のナット部材が螺合している。
【0029】
したがって、以上のように構成された各昇降機構3のサーボモータ7を起動して各ボールネジ6をそれぞれ正逆転させると、各ボールネジ6に螺合する不図示のナット部材が突設された各昇降板4がガイドレール5に沿って昇降するため、該昇降板4に取り付けられた粗研削ユニット20と仕上げ研削ユニット30もそれぞれZ軸方向(上下方向)に沿って互いに独立して昇降動する。
【0030】
(研磨装置)
研磨装置40は、仕上げ研削ユニット30によって仕上げ研削されたウェーハWの上面(裏面)を研磨する研磨ユニット41を備えており、該研磨ユニット41は、ホルダ42に固定されたスピンドルモータ43と、該スピンドルモータ43によって回転駆動される垂直なスピンドル44と、該スピンドル44の下端に取り付けられた円板状のマウント(プラテン)45と、該マウント45の下面に着脱可能に装着された円板状の研磨パッド46とを備えている。ここで、研磨パッド46の下面には、不織布やウレタンなどの円板状のパッド材(不図示)が接着されている。また、研磨パッド46に砥粒が含まれない場合は、砥粒を含むスラリーを供給する。研磨パッド46に砥粒が含まれる場合は、スラリーに砥粒を含んでいても、含んでいなくてもよい。
【0031】
そして、研磨ユニット41は、昇降機構8によってチャックテーブル10の保持面に対して垂直な方向(Z軸方向)に沿って昇降動可能である。この昇降機構8は、ベース100の左端面(-Y軸方向端面)に垂直に立設された門型の支持枠9を備えており、この支持枠9の前後(Y軸方向両側)には、研磨ユニット41の垂直方向(Z軸方向)に沿う昇降動をガイドするガイド手段47がそれぞれ設けられている。また、支持枠9には、正逆転可能なボールネジ48が垂直に挿通支持されており、このボールネジ48の上端は、支持枠9上に設置されたサーボモータ49に連結されている。また、ボールネジ48の下端は、不図示の軸受によって支持枠9に回転可能に支持されている。なお、ボールネジ48には、ホルダ42の背面に突設された不図示のナット部材が螺合している。
【0032】
したがって、サーボモータ49を起動してボールネジ48を正逆転させると、このボールネジ48に螺合する不図示のナット部材が突設されたホルダ42を備える研磨ユニット41が一対のガイド手段47に沿って垂直方向(Z軸方向)に上下動する。
【0033】
(ゲッタリング層形成装置)
本発明に係るゲッタリング層形成装置50は、図1に示すように、洗浄ユニット70と一体に設けられている。ここで、このゲッタリング層形成装置50の構成の詳細を図2図4に基づいて以下に説明する。
【0034】
ゲッタリング層形成装置50は、研磨装置40によって研磨されたウェーハWの裏面(上面)にゲッタリング層を形成する装置であって、図2に示すように、このゲッタリング層形成装置50においては、昇降板51から垂直下方に延びる丸棒状のロッド52の下端から水平に延びるプレート状のアーム53の先端に、円柱状の超音波ホーン60が垂直に取り付けられている。
【0035】
上記超音波ホーン60は、振動エネルギを効率よく伝達するための共振体であって、この超音波ホーン60の下面には、図3に示すように、扇形の超音波振動子61が突設されている。ここで、図4に示す超音波発振器62は、高周波電源63(交流電源)を駆動源として動作する。そして、超音波振動子61は、超音波発振器62から発振された超音波振動を共振体によって伝達され、下面から超音波振動を下方に発振するものである。
【0036】
また、図4に示すように、超音波ホーン60と超音波発振器62には、垂直方向に各2つの供給路60a,62a(図4には、各1つのみ図示)がそれぞれ形成されており、これらの供給路60a,62aには、配管64を介して砥粒水供給源65が接続されている。ここで、砥粒水供給源65と配管64、超音波発振器62に形成された供給路62aや超音波ホーン60に形成された供給路60aは、砥粒水供給部を構成している。そして、超音波ホーン60に形成された2つの供給路60aは、図3に示すように、超音波ホーン60の下面に、超音波振動子61を挟んでこれの両側に円孔状に開口しており、砥粒水供給源65から延びる配管64は、図4に示すように、超音波発振器62に形成された供給路62aに接続されている。なお、砥粒水供給源65から供給される砥粒水には、砥粒が含まれている。
【0037】
ところで、図2に示すように、扇形の超音波振動子61を下面から突設させた超音波ホーン60は、昇降機構13によって垂直方向(Z軸方向)に昇降可能であるとともに、水平移動機構90によって水平方向(Y軸方向)に移動可能である。
【0038】
ここで、上記昇降機構13は、水平移動機構90の矩形ブロック状のスライダ94に取り付けられたプレート14と、該プレート14に垂直に取り付けられたガイドレール15と、該ガイドレール15の横に垂直に配置された回転可能なボールネジ16と、該ボールネジ16を正逆転させるサーボモータ17などを備えている。ここで、ボールネジ16の上端は、プレート14に取り付けられたサーボモータ17に連結されており、下端は、軸受18によってプレート14に回転可能に支持されている。また、ボールネジ16は、昇降板51に垂直に螺合挿通している。
【0039】
したがって、サーボモータ17を起動してボールネジ16を正逆転させると、これに螺合する昇降板51がガイドレール15に沿って上下動するため、昇降板51にロッド52とアーム53を介して支持された超音波ホーン60が昇降する。
【0040】
また、水平移動機構90は、ベース100(図1参照)上に垂直に立設された支持プレート91に前後方向(Y軸方向)に沿って水平且つ互いに平行に取り付けられた上下一対のガイドレール92と、これらのガイドレール92の間に前後方向(Y軸方向)に沿って配された回転可能なボールネジ93と、上下一対のガイドレール92に沿って前後方向(Y軸方向)に移動可能な矩形ブロック状のスライダ94を備えている。ここで、ボールネジ93の一端(図2の左端)には、駆動源であるサーボモータ95の出力軸(モータ軸)が連結されており、同ボールネジ93の他端(図2の右端)は、軸受96によって支持プレート91に回転可能に支持されている。
【0041】
したがって、サーボモータ95を起動してボールネジ93を正逆転させると、これに螺合するスライダ94が上下一対のガイドレール92に沿って前後方向(Y軸方向)に水平移動するため、該スライダ94にロッド52とアーム53を介して支持された超音波ホーン60もスライダ94と共に上下一対のガイドレール92に沿って前後方向(Y軸方向)に水平移動する。この結果、超音波ホーン60と超音波振動子61は、前後方向(Y軸方向)に水平移動可能であるとともに、垂直方向(Z軸方向)に昇降することができる。
【0042】
[加工装置の作用]
次に、以上のように構成された加工装置1によるウェーハWの研削加工と研磨加工及びゲッタリング層形成方法について説明する。
(研削加工)
【0043】
まず、ウェーハWを研削加工する際には、図1に示す搬出入ロボット84によってカセット81から加工前の1枚のウェーハWが取り出され、取り出されたウェーハWが位置合わせテーブル83へと移送される。すると、位置合わせテーブル83においては、ウェーハWが位置合わせされ、位置合わせされたウェーハWは、第1搬送手段85によってウェーハ搬出入領域R1に位置するチャックテーブル10へと移送されて該チャックテーブル10上に保護テープTを下にして吸引保持される。すなわち、ウェーハWが載置されたチャックテーブル10のポーラス部材10Aが不図示の吸引源に接続されて該ポーラス部材10Aに負圧が発生するため、この負圧に引かれてウェーハWがチャックテーブル10の保持面上に吸引保持される。
【0044】
すると、ターンテーブル2がその垂直な軸中心回りに矢印方向(反時計方向)に角度90°だけ回転してチャックテーブル10がウェーハWと共に粗研削領域R2へと移動する。この粗研削領域R2においては、チャックテーブル10の保持面に保持されたウェーハWの裏面(上面)が粗研削ユニット20によって粗研削される。
【0045】
すなわち、不図示の回転駆動機構によってチャックテーブル10が所定の回転速度(例えば、300rpm)で回転駆動されるとともに、粗研削ユニット20のスピンドルモータ22が起動されて不図示の研削砥石が所定の速度(例えば、2000rpm)で回転駆動される。
【0046】
上述のように、チャックテーブル10とこれに保持されたウェーハW及び研削砥石がそれぞれ回転している状態で、昇降機構3を駆動して研削砥石を-Z軸方向に下降させる。すなわち、サーボモータ7が駆動されてボールネジ6が回転すると、このボールネジ6に螺合する不図示のナット部材が設けられた昇降板4が粗研削ユニット20と共に-Z軸方向に下降する。すると、研削砥石の下面(研削面)がウェーハWの上面(裏面)に接触して押圧されることによって、ウェーハWの上面(裏面)が所定の厚みに粗研削される。
【0047】
ウェーハWの上面(裏面)が粗研削ユニット20によって所定厚みに粗研削されると、昇降機構3によって粗研削ユニット20が+Z軸方向に上昇して研削砥石がウェーハWの上面から離間する。すると、ターンテーブル2がその垂直な軸中心回りに角度90°だけ回転し、粗研削領域R2において粗研削されたウェーハWとこれを保持するチャックテーブル10が仕上げ研削領域R3へと移動し、この仕上げ研削領域R3においてウェーハWの上面(裏面)が仕上げ研削ユニット30によって仕上げ研削される。なお、仕上げ研削ユニット30によるウェーハWの仕上げ研削は、粗研削ユニット20によるウェーハWの粗研削と同様になされため、この仕上げ研削についての説明は省略する。
【0048】
(研磨加工)
上述のように、ウェーハWの上面が仕上げ研削ユニット30によって仕上げ研削されると、ターンテーブル2がその垂直な軸中心回りに角度90°だけ回転し、仕上げ研削領域R3においてその上面が仕上げ研削されたウェーハWとこれを保持するチャックテーブル10が研磨領域R4へと移動し、この研磨領域R4においてウェーハWの上面(裏面)が研磨装置40によって研磨される。
【0049】
すなわち、研磨装置40においては、チャックテーブル10とこれに保持されたウェーハWが所定速度で回転駆動されるとともに、研磨ユニット41のスピンドルモータ43(図1参照)が起動されて研磨パッド46が回転駆動される。なお、このとき、研磨パッド46は、ウェーハWの上方に位置して該ウェーハWから離間している。
【0050】
次に、上記状態から昇降機構8によって研磨パッド46がウェーハWに向けて下降し、ウェーハWの上面が研磨剤であるスラリーの供給を受けながら回転する研磨パッド46によって研磨され、研削加工によって該ウェーハWの上面に形成された加工歪層が除去され、該ウェーハWの抗折強度が高められる。
【0051】
上述のように、ウェーハWの上面が研磨パッド46によって研磨されると、昇降機構8によって研磨パッド46が上昇してウェーハWの上面から離間する。その後、ターンテーブル2がその垂直な軸中心回りに角度90°だけ回転し、研磨領域R4においてその上面が研磨されたウェーハWとこれを保持するチャックテーブル10がウェーハ搬出入領域R1へと移動する。すると、このウェーハ搬出入領域R1において、第2搬送手段86によってウェーハWがチャックテーブル10から取り外されてゲッタリング層形成装置50へと搬送され、該ウェーハWの上面にゲッタリング層が以下に説明する方法によって形成される。
【0052】
(ゲッタリング層形成方法)
<第1実施形態>
第1実施形態に係るゲッタリング層形成方法は、図3に示す扇形の超音波振動子61を下面から突設させた超音波ホーン60を用いてウェーハWの上面にゲッタリング層を形成する方法であって、この方法においては、図4に示すように、洗浄ユニット70に設けられた保持テーブル71上にウェーハWが保護テープTを下にして載置される。ここで、保持テーブル71は、回転機構72によってその軸心CLを中心として所定の速度で回転する円板状部材であって、その上面中央部には、多孔質の円板状のポーラス部材71Aが組み込まれている。なお、このポーラス部材71Aの上面は、ウェーハWを吸引保持する保持面を構成しており、ポーラス部材71Aは、真空ポンプなどの不図示の吸引源に選択的に接続される。
【0053】
また、図1に示すように、洗浄ユニット70には、保持テーブル71に吸引保持されたウェーハWの上面に向かって洗浄水を噴射する洗浄水ノズル73と、エアを噴射するエアノズル74が設けられている。なお、洗浄ユニット70には、洗浄時に上昇して保持テーブル71の周囲を覆う昇降動可能な角筒状のカバー75が設けられている。
【0054】
而して、図4に示すように、ウェーハWが保護テープTを下にして保持テーブル71上に載置されると、ポーラス部材71Aが不図示の吸引源に接続される。すると、ポーラス部材71Aに負圧が発生し、この負圧に引かれてウェーハWが保持テーブル71の保持面上に吸引保持される。
【0055】
上述のように、ウェーハWが保持テーブル71の保持面上に吸引保持されると、図2に示すゲッタリング層形成装置50の水平移動機構90によって超音波ホーン60と超音波振動子61が水平方向に移動し、これらが保持テーブル71の軸心CLに重なるとともに、これらの外周がウェーハWの外周から径方向に図示のΔr(本実施形態では、1mm)だけ突出するように水平方向に位置決めされる。そして、この状態から、図2に示す昇降機構13によって超音波ホーン60と超音波振動子61がウェーハWに向かって下降し、図4に示すように、超音波振動子61の発振面(下面)とウェーハWの上面との間に僅かな隙間δ(設定範囲として0.5~2mm、本実施形態では、1mm)が形成される。
【0056】
上記状態において、回転機構72によって保持テーブル71とこれに吸引保持されたウェーハWが軸心CLを中心として図4の矢印方向(反時計方向)に所定の速度で回転駆動された状態で、砥粒水供給源65からの砥粒水が配管64から超音波発振器62の供給路62aと超音波ホーン60の供給路60aを経て超音波ホーン60の下面に開口する2つの供給路60a(図3参照)から超音波振動子61とウェーハWとの間の僅かな隙間δに供給されるとともに、超音波発振器62が駆動される。すると、超音波振動子61とウェーハWとの間の隙間δに供給される砥粒水に含まれる砥粒に超音波振動子61から超音波振動が伝播する。この結果、砥粒水に含まれる砥粒が超音波振動してウェーハWの裏面に微細な無数の傷を付けるため、該ウェーハWの裏面前面にゲッタリング層が形成される。特に、本実施の形態では、超音波振動子61とウェーハWとの間の僅かな隙間δに供給される砥粒水に含まれる砥粒がウェーハWの裏面に常に載った状態で超音波振動し、横方向と斜め方向に動く砥粒によってウェーハWの裏面には、クロスする微細な引っ掻き傷が全面に亘って形成されるため、ゲッタリングサイトに金属汚染を引き起こす不純物(重金属不純物など)を捕獲・固着するためのゲッタリング層が短時間で効率良く形成される。
【0057】
<第2実施形態>
第2実施形態においては、図5に示すように、一対の超音波ホーン60と超音波振動子61が用いられ、これら一対の超音波ホーン60と超音波振動子61は、ウェーハWの上面全面を上方から覆うように配置されている。具体的には、2つの超音波ホーン60と超音波振動子61は、これらの外周が水平方向においてウェーハWの外周から図示のΔr(本実施形態では、1mm)だけ径方向に突出するようにウェーハWの全面を上方から覆うように配置されている。なお、本実施形態においても、各超音波振動子61には、図3に示す扇形のものが使用されている。つまり、中心角60°の扇形の超音波振動子61と一対の超音波ホー60ンが周方向に60°ピッチ(等角度ピッチ)で配置されている。
【0058】
ここで、各超音波発振器62の外周側には、供給路62aが縦方向にそれぞれ形成されるとともに、各超音波ホーン60の外周側には、超音波発振器62に形成された各供給路62aに連通する供給路60aが径方向外方に向かってそれぞれ斜めに形成されており、これらの供給路60aは、2つの超音波ホーン60と超音波振動子61との間の隙間δ1に向かってそれぞれ開口している。そして、砥粒水供給源65から延びる配管64は、各超音波発振器62に形成された供給路62aにそれぞれ接続されている。
【0059】
上記状態において、図2に示す昇降機構13によって一対の超音波ホーン60と超音波振動子61がウェーハWに向かって下降し、図5に示すように、各超音波振動子61の発振面(下面)とウェーハWの上面との間にそれぞれ僅かな隙間δ(設定範囲として0.5~2mm、本実施形態では、1mm)が形成される。
【0060】
上記状態において、砥粒水供給源65からの砥粒水を配管64から超音波発振器62の供給路62aと超音波ホーン60の供給路60aを経て2つの超音波ホーン60と超音波振動子61との間の隙間δ1に向けて供給するとともに、各超音波発振器62をそれぞれ駆動する。すると、砥粒水が隙間δ1から一対の超音波振動子61とウェーハWとの間に形成された僅かな隙間δへと供給され、この研削水に含まれる砥粒に超音波振動子61から超音波振動が伝播する。すると、砥粒水に含まれる砥粒が超音波振動してウェーハWの上面(裏面)に微細な無数の傷を付けるため、該ウェーハWの裏面にゲッタリング層が全面に亘って形成される。
【0061】
そして、本実施の形態においても、前記第1実施形態と同様に、超音波振動子61とウェーハWとの間の僅かな隙間δに供給される砥粒水に含まれる砥粒がウェーハWの上面(裏面)に常に載った状態で超音波振動し、横方向と斜め方向に動く砥粒によってウェーハWの裏面にはクロスする微細な引っ掻き傷が形成されるため、ゲッタリングサイトに金属汚染を引き起こす不純物(重金属不純物など)を捕獲・固着するためのゲッタリング層が短時間で効率良く形成される。なお、本実施形態においては、保持テーブル71とその保持面に吸引保持されたウェーハWは、回転することなく静止している。なお、この場合において、ウェーハWを回転させてもよい。
【0062】
(洗浄・乾燥工程)
以上のように、ゲッタリング層形成装置50によって上面(裏面)にゲッタリング層が形成されたウェーハWは、洗浄ユニット70の洗浄水ノズル73から噴射される洗浄水によってその上面(裏面)が洗浄され、洗浄後のウェーハWの上面は、エアノズル74から噴射されるエアによって乾燥される。
【0063】
上述のように、洗浄ユニット70によって上面(裏面)が洗浄及び乾燥処理されたウェーハWは、搬出入ロボット84によって保持テーブル71から取り外されてカセット82へと搬送され、該カセット82内に収容されることによって、ウェーハWに対する一連の加工(粗研削と仕上げ研削、研磨及びゲッタリング層の形成)が終了する。
【0064】
なお、以上の実施形態では、底面に扇形の1つの超音波振動子61が突設された超音波ホーン60を用いたが、この扇形の超音波振動子61は、分割されていてもよい。例えば、超音波振動子61は、中心と外周との間に境を形成し2分割されていて、中心側の超音波振動子と外周側の超音波振動子とを各々超音波振動させる超音波ホーンでもよい。
【0065】
その他、本発明は、以上説明した実施の形態に適用が限定されるものではなく、特許請求の範囲及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0066】
1:加工装置)、2:ターンテーブル、3:昇降機構、4:昇降板、
5:ガイドレール、6:ボールネジ、7:サーボモータ、8:昇降機構、9:支持枠、
10:チャックテーブル、10A:ポーラス部材、11:仕切り板、
12:加工室カバー、13:昇降機構、14:プレート、15:ガイドレール、
16:ボールネジ、17:サーボモータ、18:軸受、20:粗研削ユニット、
21:ホルダ、22:スピンドルモータ、23:スピンドル、24:マウント、
25:研削ホイール、30:仕上げ研削ユニット、31:ホルダ、
32:スピンドルモータ、33:スピンドル、34:マウント、35:研削ホイール、
40:研磨装置、41:研磨ユニット、42:ホルダ、43:スピンドルモータ、
44:スピンドル、45:マウント、46:研磨パッド、47:ガイド手段、
48:ボールネジ、49:サーボモータ、50:ゲッタリング層形成装置、
51:昇降板、52:ロッド、53:アーム、60:超音波ホーン、60a:供給路、
61:超音波振動子、62:超音波発振器、62a:供給路、63:交流電源、
64:配管、65:砥粒水供給源、70:洗浄ユニット、71:保持テーブル、
71A:ポーラス部材、72:回転機構、73:洗浄水ノズル、74:エアノズル、
75:カバー、81,82:カセット、83:位置合わせテーブル、
84:搬出入ロボット、85:第1搬送手段、86:第2搬送手段、
90:水平移動機構、91:支持プレート、92:ガイドレール、93:ボールネジ、
94:スライダ、95:サーボモータ、96:軸受、100:ベース、101:コラム、CL:保持テーブルの軸心、R1:ウェーハ搬出入領域、
R2:粗研削領域、R3:仕上げ研削領域、R4:研磨領域、T:保護テープ、
W:ウェーハ、δ,δ1:隙間
図1
図2
図3
図4
図5